(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034841
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】パラレルリンク機構、リンク作動装置およびその位置決め方法
(51)【国際特許分類】
F16H 21/54 20060101AFI20240306BHJP
B25J 9/06 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
F16H21/54
B25J9/06 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139358
(22)【出願日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 直彦
【テーマコード(参考)】
3C707
3J062
【Fターム(参考)】
3C707BS24
3C707HT12
3C707HT20
3J062AA21
3J062AA38
3J062AA60
3J062AB21
3J062AB28
3J062AC07
3J062AC10
3J062BA01
3J062BA11
3J062BA14
3J062BA22
3J062CB04
3J062CB28
3J062CB33
(57)【要約】
【課題】原点位置決め作業を自動化することができるパラレルリンク機構、リンク作動装置およびその位置決め方法を提供する。
【解決手段】パラレルリンク機構9は、先端側のリンクハブ13と基端側のリンクハブ12とが棒状部材Rdにより互いに動作可能に連結される。基端側および先端側のリンクハブ12,13に対して、棒状部材Rdおよび各連結部3,4が各々の軸心回りに回転可能に連結される。棒状部材Rdの回転運動を棒状部材Rdに沿った並進部分の並進運動に変換する変換機構1が設けられ、且つ基端側のリンクハブ12および先端側のリンクハブ13を定められた位置に位置決めする位置決め部材2,2が並進部分に設けられる。各連結部3,4と共に棒状部材Rdを回転駆動させる回転駆動源Rsが基端側のリンクハブ12に設けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブが2組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結され、前記各リンク機構が、それぞれ前記基端側のリンクハブおよび前記先端側のリンクハブに一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材と、これら基端側および先端側の端部リンク部材の他端に両端がそれぞれ回転可能に連結された中央リンク部材とを有する球面リンク機構を用いたパラレルリンク機構であって、
前記先端側のリンクハブと前記基端側のリンクハブとは棒状部材により互いに動作可能に連結され、前記棒状部材は、少なくとも基端側の球面リンク機構の球面リンク中心と先端側の球面リンク機構の球面リンク中心とを通過する部材であり、前記棒状部材と前記基端側および先端側のリンクハブとをそれぞれ連結する連結部が設けられ、前記基端側および先端側のリンクハブに対して、前記棒状部材および各連結部が各々の軸心回りに回転可能に連結され、
前記棒状部材の回転運動をこの棒状部材に沿った並進部分の並進運動に変換する変換機構が設けられ、且つ前記基端側のリンクハブおよび前記先端側のリンクハブを定められた位置に位置決めする位置決め部材が前記並進部分に設けられ、
前記各連結部と共に前記棒状部材を回転駆動させる回転駆動源が前記基端側のリンクハブに設けられているパラレルリンク機構。
【請求項2】
請求項1に記載のパラレルリンク機構において、前記変換機構は、前記棒状部材の外周に設けられたねじ部と、このねじ部に螺合され前記棒状部材の回転により並進運動するナット部である前記並進部分とを有する送りねじ機構であるパラレルリンク機構。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のパラレルリンク機構において、前記変換機構は、前記並進部分の回転止めを行う回転止め部材を有するパラレルリンク機構。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のパラレルリンク機構における前記2組以上のリンク機構に、前記先端側のリンクハブの姿勢を任意に制御する姿勢制御用アクチュエータを備えたリンク作動装置。
【請求項5】
基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブが2組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結され、前記各リンク機構が、それぞれ前記基端側のリンクハブおよび前記先端側のリンクハブに一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材と、これら基端側および先端側の端部リンク部材の他端に両端がそれぞれ回転可能に連結された中央リンク部材とを有する球面リンク機構を用いたパラレルリンク機構であり、
前記先端側のリンクハブと前記基端側のリンクハブとは棒状部材により互いに動作可能に連結され、前記棒状部材は、少なくとも基端側の球面リンク機構の球面リンク中心と先端側の球面リンク機構の球面リンク中心とを通過する部材であり、前記棒状部材と前記基端側および先端側のリンクハブとをそれぞれ連結する連結部が設けられ、前記基端側および先端側のリンクハブに対して、前記棒状部材および各連結部が各々の軸心回りに回転駆動可能に連結され、
前記棒状部材の回転運動をこの棒状部材に沿った並進部分の並進運動に変換する変換機構が設けられ、且つ前記基端側のリンクハブおよび前記先端側のリンクハブを定められた位置に位置決めする位置決め部材が前記並進部分に設けられたパラレルリンク機構と、
前記2組以上のリンク機構に、前記先端側のリンクハブの姿勢を任意に制御する姿勢制御用アクチュエータと、を備えたリンク作動装置における原点姿勢を位置決めする位置決め方法であって、
前記姿勢制御用アクチュエータにより前記先端側のリンクハブの姿勢を制御してリンク作動装置を原点姿勢に近い姿勢に設定する準備過程と、
前記棒状部材を回転駆動させる回転過程と、
前記棒状部材の回転により前記並進部分を並進させ、前記位置決め部材により前記基端側のリンクハブおよび前記先端側のリンクハブを定められた位置に拘束する拘束過程と、を有するリンク作動装置の位置決め方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、医療機器または産業機器等の精密で広範な作動範囲を必要とする機器に用いられるパラレルリンク機構、リンク作動装置およびその位置決め方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パラレルリンク機構を備えたリンク作動装置が提案されている(特許文献1)。この
図20に示すリンク作動装置50は精密且つ高速な位置決めができることが利点である。リンク作動装置50は、先端側のリンクハブ51の位置等を検出するためにエンコーダ等のセンサー類を備えており、初期位置の設定のために原点位置決めをリンク作動装置50の立ち上げ時に行う。前記原点位置とは、原則として、折れ角θが0度で且つ旋回角φが0度のリンク作動装置50の姿勢(原点姿勢)である。折れ角θは、基端側のリンクハブ52の中心軸QAに対する先端側のリンクハブ51の中心軸QBの傾斜角度であり、旋回角φは、基端側のリンクハブ52の中心軸QAに対して先端側のリンクハブ51の中心軸QBが傾斜した水平角度である。
【0003】
図21に示すように、リンク作動装置50を精度よく位置決めするためには、定期的に原点位置決めを行うとよい。リンク作動装置50の原点位置決め作業を行う場合、パラレルリンク機構の特に先端側および基端側のリンクハブ51,52を原点位置決め部材53によって物理的に原点姿勢に固定する必要がある。
【0004】
但し、パラレルリンク機構の動作中に原点位置決め部材53が動作を阻害しないように、原点位置決め時以外はパラレルリンク機構から原点位置決め部材53を抜去する。この原点位置決め部材53の挿通、抜去は手動で行う。特に、先端側のリンクハブ51と基端側のリンクハブ52の位置を固定するため、原点位置決め部材53は先端側のリンクハブ51を貫通し基端側のリンクハブ52まで挿通されることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
リンク作動装置50の原点位置決めは、手動で、パラレルリンク機構に原点位置決め部材53を挿通しなければならない。前提としてリンク作動装置50の原点位置決め作業は必須である。
しかし、原点位置決め作業を行うとき一時的にリンク作動装置50の動作範囲に作業者が入る必要がある。また原点位置決め部材53を挿通および抜去する作業、パラレルリンク機構の動作中に原点位置決め部材53を干渉しない場所に退避させる作業等は自動化できない作業であった。その他、リンク作動装置の構成によっては原点位置決め作業を容易に実施できない場合がある。例えば、先端側のリンクハブ51にエンドエフェクタを取り付けたとき、原点位置決め部材53が挿通できない構成の場合、原点位置決め作業を行う度にエンドエフェクタを取り外して先端側のリンクハブ51に原点位置決め部材53を挿通させる必要がある。
【0007】
本発明の目的は、原点位置決め作業を自動化することができるパラレルリンク機構、リンク作動装置およびその位置決め方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のパラレルリンク機構は、基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブが2組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結され、前記各リンク機構が、それぞれ前記基端側のリンクハブおよび前記先端側のリンクハブに一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材と、これら基端側および先端側の端部リンク部材の他端に両端がそれぞれ回転可能に連結された中央リンク部材とを有する球面リンク機構を用いたパラレルリンク機構であって、
前記先端側のリンクハブと前記基端側のリンクハブとは棒状部材により互いに動作可能に連結され、前記棒状部材は、少なくとも基端側の球面リンク機構の球面リンク中心と先端側の球面リンク機構の球面リンク中心とを通過する部材であり、前記棒状部材と前記基端側および先端側のリンクハブとをそれぞれ連結する連結部が設けられ、前記基端側および先端側のリンクハブに対して、前記棒状部材および各連結部が各々の軸心回りに回転可能に連結され、
前記棒状部材の回転運動をこの棒状部材に沿った並進部分の並進運動に変換する変換機構が設けられ、且つ前記基端側のリンクハブおよび前記先端側のリンクハブを定められた位置に位置決めする位置決め部材が前記並進部分に設けられ、
前記各連結部と共に前記棒状部材を回転駆動させる回転駆動源が前記基端側のリンクハブに設けられている。
前記定められた位置は、設計等によって任意に定める値であって、例えば、試験およびシミュレーションのいずれか一方または両方等により適切な値を求めて定められる。
【0009】
この構成によると、基端側および先端側のリンクハブに対して、棒状部材および各連結部が回転可能に連結され、棒状部材の回転運動を並進部分の並進運動に変換する変換機構が設けられている。原点位置決め作業を行うとき、回転駆動源により各連結部と共に棒状部材を所定の回転方向に回転駆動させることで並進部分が棒状部材に沿って並進する。これにより並進部分に設けられた位置決め部材が、対応するリンクハブに近接する方向に並進する。最終的に位置決め部材が基端側および先端側のリンクハブを位置決めすることで原点位置決め作業の自動化を図れる。その後、回転駆動源を前記回転方向とは逆向きに回転駆動させることで、位置決め部材を、対応するリンクハブに対して離隔つまり退避させ、これによりパラレルリンク機構を任意の姿勢に動作させることが可能となる。
【0010】
前記変換機構は、前記棒状部材の外周に設けられたねじ部と、このねじ部に螺合され前記棒状部材の回転により並進運動するナット部である前記並進部分とを有する送りねじ機構であってもよい。この場合、並進部分を棒状部材の長手方向中間付近に設けることができるため、リンク作動装置の構成によらず位置決め部材を、対応するリンクハブに対して近接・離隔することができる。例えば、先端側のリンクハブにエンドエフェクタを取り付けた場合等においても、エンドエフェクタに干渉することなく位置決め部材を自由に並進させることができる。したがって、適用可能なリンク作動装置の汎用性を高めることができる。
【0011】
前記変換機構は、前記並進部分の回転止めを行う回転止め部材を有してもよい。この場合、棒状部材の回転に伴って並進部分が回転することを防止し、位置決め部材を精度よく位置決めすることが可能となる。前記回転止め部材の固定部は、例えば、1個の中央リンク部材に連結される。
【0012】
本発明のリンク作動装置は、本発明のいずれかのパラレルリンク機構における前記2組以上のリンク機構に、前記先端側のリンクハブの姿勢を任意に制御する姿勢制御用アクチュエータを備えている。そのため、本発明のパラレルリンク機構につき前述した各効果が得られる。前記姿勢制御用アクチュエータを備えたため、基端側のリンクハブに対する先端側のリンクハブの姿勢を確定することができる。したがって、姿勢制御用アクチュエータによりパラレルリンク機構を原点姿勢に近い姿勢に制御した後、回転駆動源により棒状部材を所定の回転方向に回転駆動させることで、円滑に原点位置決め作業を行うことが可能となる。
【0013】
本発明のリンク作動装置の位置決め方法は、基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブが2組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結され、前記各リンク機構が、それぞれ前記基端側のリンクハブおよび前記先端側のリンクハブに一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材と、これら基端側および先端側の端部リンク部材の他端に両端がそれぞれ回転可能に連結された中央リンク部材とを有する球面リンク機構を用いたパラレルリンク機構であり、
前記先端側のリンクハブと前記基端側のリンクハブとは棒状部材により互いに動作可能に連結され、前記棒状部材は、少なくとも基端側の球面リンク機構の球面リンク中心と先端側の球面リンク機構の球面リンク中心とを通過する部材であり、前記棒状部材と前記基端側および先端側のリンクハブとをそれぞれ連結する連結部が設けられ、前記基端側および先端側のリンクハブに対して、前記棒状部材および各連結部が各々の軸心回りに回転駆動可能に連結され、
前記棒状部材の回転運動をこの棒状部材に沿った並進部分の並進運動に変換する変換機構が設けられ、且つ前記基端側のリンクハブおよび前記先端側のリンクハブを定められた位置に位置決めする位置決め部材が前記並進部分に設けられたパラレルリンク機構と、
前記2組以上のリンク機構に、前記先端側のリンクハブの姿勢を任意に制御する姿勢制御用アクチュエータと、を備えたリンク作動装置における原点姿勢を位置決めする位置決め方法であって、
前記姿勢制御用アクチュエータにより前記先端側のリンクハブの姿勢を制御してリンク作動装置を原点姿勢に近い姿勢に設定する準備過程と、
前記棒状部材を回転駆動させる回転過程と、
前記棒状部材の回転により前記並進部分を並進させ、前記位置決め部材により前記基端側のリンクハブおよび前記先端側のリンクハブを定められた位置に拘束する拘束過程と、を有する。
前記定められた位置は、設計等によって任意に定める値であって、例えば、試験およびシミュレーションのいずれか一方または両方等により適切な値を求めて定められる。
【0014】
前記準備過程において、姿勢制御用アクチュエータにより先端側のリンクハブの姿勢を制御してリンク作動装置を原点姿勢に近い姿勢に設定する。次に回転過程にて、棒状部材を所定の回転方向に回転駆動させる。その後、拘束過程において、棒状部材の回転により並進部分を棒状部材に沿って並進させ、これにより並進部分に設けられた位置決め部材を、対応するリンクハブに近接する方向に並進させる。最終的に位置決め部材が基端側および先端側のリンクハブを位置決めすることで原点位置決め作業の自動化を図れる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のパラレルリンク機構によると、原点位置決め作業を行うとき、回転駆動源により各連結部と共に棒状部材を所定の回転方向に回転駆動させることで並進部分が棒状部材に沿って並進する。これにより並進部分に設けられた位置決め部材が、対応するリンクハブに近接する方向に並進する。最終的に位置決め部材が基端側および先端側のリンクハブを位置決めすることで原点位置決め作業の自動化を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るリンク作動装置の斜視図である。
【
図3】同リンク作動装置の非拘束時の縦断面図である。
【
図5】同リンク作動装置のパラレルリンク機構の1つのリンク機構を直線で表現した図である。
【
図6】同パラレルリンク機構の変換機構の斜視図である。
【
図8A】同リンク作動装置の拘束時の正面図である。
【
図8B】同リンク作動装置の拘束時の側面図である。
【
図9】同リンク作動装置の拘束時の縦断面図である。
【
図10】同パラレルリンク機構の変換機構を部分的に変更した形態の斜視図である。
【
図11】本発明の第2の実施形態に係るリンク作動装置の斜視図である。
【
図13】同リンク作動装置の非拘束時の縦断面図である。
【
図15A】同リンク作動装置のパラレルリンク機構の変換機構の斜視図である。
【
図15B】同変換機構を別の方向から見た斜視図である。
【
図16】同リンク作動装置の拘束時の斜視図である。
【
図17A】同リンク作動装置の拘束時の正面図である。
【
図17B】同リンク作動装置の拘束時の側面図である。
【
図18】同リンク作動装置の拘束時の縦断面図である。
【
図19A】同パラレルリンク機構の拘束時の変換機構の斜視図である。
【
図19B】同変換機構を部分的に変更した形態の斜視図である。
【
図20】従来例のリンク作動装置のリンク機構本体の斜視図である。
【
図21】同リンク作動装置の原点位置決め作業を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1の実施形態]
本発明の実施形態に係るパラレルリンク機構およびこのパラレルリンク機構を備えたリンク作動装置を
図1ないし
図9と共に説明する。以下の説明は、リンク作動装置の位置決め方法についての説明も含む。
<リンク作動装置の概略構造>
図1に示すように、リンク作動装置7は、パラレルリンク機構9と、このパラレルリンク機構9の姿勢を任意に制御する姿勢制御用アクチュエータ10と、制御装置Cuとを備える。リンク作動装置7は、例えば、医療機器または産業機器等に用いられる。リンク作動装置7は、後述する先端側のリンクハブ13に取り付けられたエンドエフェクタ(図示せず)を、図示外のワークに対し位置決めして作業を行う。制御装置Cuは、姿勢制御用アクチュエータ10および後述する回転駆動源Rsに電気的に接続され、これら姿勢制御用アクチュエータ10および回転駆動源Rsは、制御装置Cuにより同期制御される。
【0018】
<パラレルリンク機構>
図2に示すように、パラレルリンク機構9は、後述する変換機構1、位置決め部材2、および回転駆動源Rsを備える。パラレルリンク機構9は、基端側のリンクハブ12に対し先端側のリンクハブ13を3組のリンク機構14を介して姿勢変更可能に連結したものである。リンク機構14の組数は2組であってもよく4組以上であってもよい。パラレルリンク機構9は市場において独立して取引可能に構成されている。
【0019】
各リンク機構14は、基端側の端部リンク部材15、先端側の端部リンク部材16、および中央リンク部材17を有し、4つの回転対偶からなる4節連鎖のリンク機構をなす。基端側の端部リンク部材15は、この基端側の端部リンク部材15の一端が第1の回転軸22a回りに回転可能に基端側のリンクハブ12に連結されている。先端側の端部リンク部材16は、この先端側の端部リンク部材16の一端が第2の回転軸22b回りに回転可能に先端側のリンクハブ13に連結されている。
【0020】
中央リンク部材17は、この中央リンク部材17の一端において第3の回転軸22c回りに回転可能に基端側の端部リンク部材15の他端に連結されている。これと共に、中央リンク部材17は、この中央リンク部材17の他端において第4の回転軸22d回りに回転可能に先端側の端部リンク部材16の他端に連結されている。
【0021】
第1の回転軸22aは、基端側のリンクハブ12と基端側の端部リンク部材15との各回転対偶部T1(
図5)の中心軸回りの回転軸である。第2の回転軸22bは、先端側のリンクハブ13と先端側の端部リンク部材16の回転対偶部T2(
図5)の中心軸回りの回転軸である。第3の回転軸22cは、基端側の端部リンク部材15と中央リンク部材17との各回転対偶部T3(
図5)の中心軸回りの回転軸である。第4の回転軸22dは、先端側の端部リンク部材16と中央リンク部材17との各回転対偶部T4(
図5)の中心軸回りの回転軸である。
【0022】
パラレルリンク機構9は、2つの球面リンク機構9a,9bを組み合わせた構造である。基端側の第1の球面リンク機構9aにおいて、基端側のリンクハブ12の中心軸QA(
図5)と、第1の回転軸22aおよび第3の回転軸22cの各中心軸は、基端側の球面リンク中心PA(
図5)において交わっている。先端側の第2の球面リンク機構9bにおいて、先端側のリンクハブ13の中心軸QB(
図5)と、第2の回転軸22bおよび第4の回転軸22dの各中心軸は、先端側の球面リンク中心PB(
図5)において交わっている。
【0023】
3組のリンク機構14は、幾何学的に同一形状をなす。幾何学的に同一形状とは、
図5に示すように、各リンク部材15,16,17を直線で表現した幾何学モデル、すなわち各回転対偶部T1,T3,T4,T2と、これら回転対偶部T1,T3,T4,T2間を結ぶ直線とで表現したモデルが、どのような姿勢をとっていても、中央リンク部材17の中央部に対する基端側部分と先端側部分が対称を成す形状であることを言う。なお各回転対偶部T1,T3,T4,T2を、以下の説明において「各回転対偶部T1等」と言う場合がある。
図5は、1組のリンク機構14を直線で表現した図である。この実施形態のパラレルリンク機構9は回転対称タイプで、基端側のリンクハブ12および基端側の端部リンク部材15と、先端側のリンクハブ13および先端側の端部リンク部材16との位置関係が、中央リンク部材17の中心線Cに対して回転対称となる位置構成になっている。実施の形態1及び2では中心線Cに対して鏡面対称になる位置構成になっている。
【0024】
基端側のリンクハブ12と先端側のリンクハブ13と3組のリンク機構14とで、基端側のリンクハブ12に対し先端側のリンクハブ13が直交2軸周りに回転自在な2自由度機構が構成されている。言い換えると、基端側のリンクハブ12に対して先端側のリンクハブ13を、回転が2自由度で姿勢変更自在な機構としている。この2自由度機構は、コンパクトでありながら、基端側のリンクハブ12に対する先端側のリンクハブ13の可動範囲を広くとれる。
【0025】
基端側のリンクハブ12の中心軸QAに対して、先端側のリンクハブ13の中心軸QBが傾斜した垂直角度を、折れ角θという。この折れ角θの最大値を最大折れ角θmaxという。また、基端側のリンクハブ12に対する先端側のリンクハブ13の旋回角φを0°~360°の範囲に設定できる。旋回角φは、基端側のリンクハブ12の中心軸QAに対して先端側のリンクハブ13の中心軸QBが傾斜した水平角度のことである。
【0026】
基端側のリンクハブ12に対する先端側のリンクハブ13の姿勢変更は、基端側のリンクハブ12の中心軸QAと先端側のリンクハブ13の中心軸QBとの交点Oを回転中心として行われる。
図2は、基端側のリンクハブ12の中心軸QAと先端側のリンクハブ13の中心軸QBが同一線上にある状態を示し、
図5は、中心軸QAに対して中心軸QBが或る作動角(折れ角)をとった状態を示す。基端側のリンクハブ12に対する先端側のリンクハブ13の姿勢が変化しても、基端側と先端側の球面リンク中心PA,PB間の距離Lは変化しない。
【0027】
図4に示す3組のリンク機構14は、円周方向に120度間隔を空けた円周等配に配置されているが、必ずしも円周等配である必要はない。
図1に示す基端側のリンクハブ12は、例えば平面視で六角形状の基端支持部材12aと、基端支持部材12aの上部に固定された基端部材本体12bとを有する。基端部材本体12bは、基端支持部材12aに同心に配置された六角筒形状でその中央部に、後述する連結部3を回転自在に支持する円形の孔が形成されている。基端部材本体12bの平面視における孔の中心は、基端側の球面リンク中心PA(
図5)に一致する。基端支持部材12aの外周部には、軸方向一方に突出する3個のフランジ12aaが円周等配で基端支持部材12aと一体に配置されている。
【0028】
各回転対偶部T1(
図5)等に、回転対偶部の回転抵抗低減手段として図示外の軸受がそれぞれ設けられている。基端側のリンクハブ12と基端側の端部リンク部材15の回転対偶部T1(
図5)においては、各フランジ12aaに前記軸受等を介して、第1の回転軸22aが回転自在に連結されている。第1の回転軸22aに、基端側の端部リンク部材15の一端が連結され、これら第1の回転軸22aと基端側の端部リンク部材15とが一体に回転する。
【0029】
図4に示すように、先端側のリンクハブ13は、基端部材本体12b(
図1)と同様の六角筒形状でその中央部に、後述する連結部4を回転自在に支持する円形の孔13aが形成されている。先端側のリンクハブ13の平面視における孔13aの中心は、先端側の球面リンク中心PBに一致する。先端側のリンクハブ13の外周面には、径方向外方に突出する3個の第2の回転軸22bが円周等配で支持されている。各第2の回転軸22bの軸心は、先端側のリンクハブ13の中心軸QBと交差する。第2の回転軸22bに、先端側の端部リンク部材16の一端が回転自在に連結されている。
図2のように、先端側の端部リンク部材16の他端には、中央リンク部材17の他端に回転自在に連結された第4の回転軸22dが連結されている。
【0030】
<棒状部材および連結部>
図3は、
図4のIII-III線断面図である。
図3に示すように、先端側のリンクハブ13と基端側のリンクハブ12とは、棒状部材Rdにより互いに動作可能に連結されている。棒状部材Rdは、少なくとも基端側の第1の球面リンク機構9aにおける球面リンク中心PA(
図5)と、先端側の第2の球面リンク機構9bにおける球面リンク中心PB(
図5)とを通過する部材である。棒状部材Rdと基端側および先端側のリンクハブ12,13とをそれぞれ連結する基端側および先端側の連結部3,4が設けられている。基端側および先端側のリンクハブ12,13に対して、棒状部材Rdおよび各連結部3,4が各々の軸心回りに回転可能に連結されている。換言すれば、棒状部材Rd、基端側および先端側の連結部3,4は、リンクハブ12,13に対し独立して回転可能である。以下の説明において、棒状部材Rd、基端側および先端側の連結部3,4を、「棒状部材等」という場合がある。
【0031】
棒状部材Rdは、軸部材5aと、この軸部材5aの長手方向中間部に嵌合固定される円筒部材5bとを有する。軸部材5aの長手方向一端部が基端側のリンクハブ12に連結され、軸部材5aの長手方向他端部が先端側のリンクハブ13に連結されている。
【0032】
図1に示すように、基端側および先端側の連結部3,4としては、それぞれボールを備えたツェッパ形等速ジョイント等の等速ジョイントが適用されている。等速ジョイントが適用される各連結部3,4は、
図3に示す内外輪IR,ORと、内外輪IR,OR間に介在する複数のボールBd(
図4)と、これらボールBd(
図4)を保持する図示外の保持器とを備える。基端部材本体12b(
図1)の孔に、図示外のすべり軸受等を介して、基端側の連結部3の外輪ORが回転自在に支持されている。前記基端側の連結部3の内輪IRは、基端側のリンクハブ12に対して、
図5に示す基端側の球面リンク中心PAを起点に折れ角θ、旋回角φをそれぞれ角度変位可能で
図3に示す棒状部材Rdの中心軸回りの3自由度に回転する。
【0033】
図4のように、先端側のリンクハブ13の孔13aに、図示外のすべり軸受等を介して、先端側の連結部4の外輪ORが回転自在に支持されている。前記先端側の連結部4の内輪IRは、先端側のリンクハブ13に対して、先端側の球面リンク中心PBを起点に、基端側同様、3自由度に回転する。なお
図3の連結部3,4は、等速ジョイントに限定されるものではなく、例えば、カルダンジョイント等のユニバーサルジョイント等の連結構造を適用し得る。
【0034】
<変換機構、位置決め部材等について>
図6に示すように、変換機構1は、棒状部材Rdの回転運動をこの棒状部材Rdの長手方向に沿った2つの円環状の並進部分23,23の並進運動に変換する、回転‐並進変換機構である。変換機構1は、棒状部材Rdの長手方向中間付近に配置される。並進部分23,23には、基端側および先端側のリンクハブ12,13(
図3)を定められた位置に位置決めする位置決め部材2,2が設けられている。変換機構1は、ねじ部25a,25b、および、ナット部である並進部分23,23を有する送りねじ機構Fsと、各並進部分23の回転止めを行う回転止め部材26とを有する。
【0035】
ねじ部25a,25bは、
図3に示す棒状部材Rdにおける円筒部材5bの外周に設けられている。
図6のねじ部25a,25bは、この例では台形ねじが適用されているが、滑りねじまたはボールねじを適用することも可能である。ねじ部25a,25bは、ねじの巻き方向を長手方向中間部を境に先端側と基端側とで逆方向に設定し、これら基端側および先端側のねじ部25a,25bを同一ピッチに設定している。並進部分23,23は基端側および先端側のねじ部25a,25bに螺合され棒状部材Rdの回転により並進運動する。よって、棒状部材25a,25bの回転に対して2つの並進部分23,23は逆方向に等しい距離を併進する。
【0036】
各位置決め部材2は、各並進部分23の外周面から放射状に複数(この例では6本)突出し、且つ対応するリンクハブ側に向けて屈曲して所定距離延びる熊手状の挿通部2aを備える。
図1に示すように、基端部材本体12b、先端側のリンクハブ13には、対応する位置決め部材2(
図6)の挿通部2a(
図6)を挿入・離脱可能な複数(この例では6箇所)の位置決め用孔haが円周等配に形成されている。なお位置決め用孔haは6箇所でなくてもよいが、リンク機構14(
図2)の組数に合わせてバランスのとれた数および配置がよい。位置決め用孔haの数は、例えば、3、6または4箇所が望ましい。
【0037】
図6に示すように、回転止め部材26は、1つの中央リンク部材17に一体化されリンク中央側に向けて突出する回転止め支持部26aと、この回転止め支持部26aの先端部分から基端側および先端側にそれぞれ延びるガイド部26b,26bとを有する。回転止め支持部26aの先端部には、棒状部材Rdを回転可能に支持する支持孔が形成されている。回転止め支持部26aの基端部が中央リンク部材17に固定され一体化されている。基端側および先端側のガイド部26b,26bには、対応する位置決め部材2における複数の挿通部2aのうち、いずれか1つの挿通部2aを併進方向に沿って案内する長孔形状のガイド孔26baが形成されている。
【0038】
したがって、棒状部材Rdの一方向の回転により2つの並進部分23,23が逆方向に並進し、位置決め部材2の各挿通部2aが、
図7のように、基端部材本体12b、先端側のリンクハブ13の位置決め用孔haにそれぞれ挿入することで、
図8Aのように、基端側および先端側のリンクハブ12,13を定められた位置に同時に拘束する。この状態において棒状部材Rdを他方向に回転することで、位置決め部材2の各挿通部2aが位置決め用孔haから離脱し得る。
【0039】
<回転駆動源>
図3に示すように、基端側のリンクハブ12には、各連結部3,4と共に棒状部材Rdを回転駆動させる回転駆動源Rsが設けられている。この回転駆動源Rsは、基端側のリンクハブ12の中心軸回りに、棒状部材Rdの基端側の連結部3を回転させる原点位置決め用の駆動源である。回転駆動源Rsは、制御装置Cu(
図1)により制御可能に構成されている。回転駆動源Rsは、例えば、図示外の減速機構を備えたロータリアクチュエータ等であり、回転駆動源Rsの駆動本体が基端支持部材12aの下部に固定されている。回転駆動源Rsの回転出力部は、基端側のリンクハブ12の中心軸と同軸に配置されると共に、前記連結部3の外輪ORに連結されている。よって、基端側および先端側のリンクハブ12,13に対して、棒状部材Rdおよび各連結部3,4が各々の軸心回りに回転駆動可能に連結される。
【0040】
<姿勢制御用アクチュエータ>
図4に示すように、リンク作動装置7は、3組のリンク機構14のすべてに姿勢制御用アクチュエータ10を備える。姿勢制御用アクチュエータ10は、
図1に示す制御装置Cuにより制御可能である。各姿勢制御用アクチュエータ10は、図示外の減速機構を備えたロータリアクチュエータであり、基端支持部材12aのフランジ12aaに第1の回転軸22aと同軸上に設置されている。
図4に示す3組のリンク機構14のうち少なくとも2組に姿勢制御用アクチュエータ10を設ければ、
図1に示す基端側のリンクハブ12に対する先端側のリンクハブ13の姿勢を確定することができる。
【0041】
リンク作動装置7は、各姿勢制御用アクチュエータ10を回転駆動することで、パラレルリンク機構9が作動する。詳しくは、姿勢制御用アクチュエータ10を回転駆動すると、その回転が前記減速機構を介して減速して第1の回転軸22aに伝達される。それにより基端側のリンクハブ12に対する先端側のリンクハブ13の姿勢が任意に変更される。先端側のリンクハブ13には、図示外のエンドエフェクタが取り付けられている。前記エンドエフェクタは、例えば、グリッパを含むハンド、洗浄用ノズル、ディスペンサ、溶接トーチ、画像処理機器等が挙げられる。
【0042】
<制御系について>
図1に示す制御装置Cuは、姿勢制御用アクチュエータ10および回転駆動源Rsをそれぞれ制御する。制御装置Cuは、姿勢制御用アクチュエータ10を制御することで、リンク作動装置7の折れ角θ(
図5)および旋回角φ(
図5)を制御する。さらに制御装置Cuは、回転駆動源Rsを制御することで、前記折れ角θ=0度、旋回角φ=0度となる原点位置決め作業を行う。制御装置Cuは、例えば、姿勢制御用アクチュエータ10の動作量等を原点位置としてメモリMrに書き換え可能に記録する。
【0043】
<原点位置決めの手順>
リンク作動装置7における原点姿勢を位置決めする位置決め方法は、姿勢制御用アクチュエータ10により先端側のリンクハブ13の姿勢を制御してリンク作動装置7を原点姿勢に近い姿勢に設定する準備過程と、
図3に示す棒状部材Rdを回転駆動させる回転過程と、棒状部材Rdの回転により
図2に示す並進部分23,23を並進させ、位置決め部材2,2により基端側のリンクハブ12および先端側のリンクハブ13を定められた位置に拘束する拘束過程と、予圧付与過程と、原点位置設定過程と、を有する。各過程は前記制御装置Cu(
図1)により実行される。
【0044】
具体的には、次の手順(1)~(6)に従えば、リンク作動装置7が稼働できる状態から自動で原点位置決め作業を行える。前記「稼働できる状態」とは、各位置決め部材2の挿通部2a(
図6)が、対応するリンクハブ12,13の位置決め用孔ha(
図1)に挿入されておらず、姿勢制御用アクチュエータ10によりリンク作動装置7が姿勢を変更でき、回転駆動源Rsにより棒状部材等が回転できる状態を指す。
【0045】
(1)
図3のように、姿勢制御用アクチュエータ10によりリンク作動装置7が原点姿勢に近い姿勢をとる(準備過程)。
(2)回転駆動源Rsにより棒状部材等が回転する(回転過程)。
(3)棒状部材等の回転運動が変換機構1によって
図2の並進部分23,23の並進運動に変換され、
図8Aおよび
図8Bのように、位置決め部材2,2が、パラレルリンク機構9の中央部から基端側および先端側のリンクハブ12,13に向かって並進する(拘束過程)。
(4)
図9のように、各位置決め部材2の挿通部2aが、対応するリンクハブ12,13の位置決め用孔haに挿入され、
図7のようにリンク作動装置7の姿勢が拘束される(拘束過程)。
【0046】
(5)前記姿勢を拘束した状態でパラレルリンク機構9にトルクを加えることでリンク作動装置7に予圧を付与する(予圧付与過程)。この予圧付与過程では、例えば、姿勢制御用アクチュエータ10により、前記姿勢にあるリンク作動装置7に対して、各回転対偶部T1(
図5)等および機構部等に生じるガタを片側方向に寄せようとする力である予圧を付与する。
(6)リンク作動装置7に前記予圧が付与された状態で、基端側および先端側の端部リンク部材15,16、中央リンク部材17の位置関係、姿勢制御用アクチュエータ10の動作量、および加わったトルクの少なくともいずれか1つを出力し、原点位置として記録する(原点位置設定過程)。
その後(4)→(3)→(2)→(1)の順にリンク作動装置7を動作させ、
図1のようにリンク作動装置7の姿勢の拘束を解く。
【0047】
<作用効果>
以上説明したパラレルリンク機構9によると、基端側および先端側のリンクハブ12,13に対して、棒状部材等が回転可能に連結され、
図6のように棒状部材Rdの回転運動を併進部分23,23の並進運動を変換する変換機構1が設けられている。原点位置決め作業を行うとき、
図3の回転駆動源Rsにより各連結部3,4と共に棒状部材Rdを所定の回転方向に回転駆動させることで
図6の並進部分23,23が棒状部材Rdに沿って並進する。これにより並進部分23,23に設けられた位置決め部材2,2が、対応するリンクハブに近接する方向に並進する。最終的に位置決め部材2,2が
図3に示す基端側および先端側のリンクハブ12,13を位置決めすることで原点位置決め作業の自動化を図れる。その後、回転駆動源Rsを前記回転方向とは逆向きに回転駆動させることで、位置決め部材2,2を、対応するリンクハブ12,13に対して離隔つまり退避させ、これによりパラレルリンク機構9を任意の姿勢に動作させることが可能となる。
【0048】
図6に示す変換機構1は、棒状部材Rdの外周に設けられたねじ部25a,25bと、このねじ部25a,25bに螺合され棒状部材Rdの回転により並進運動するナット部である並進部分23,23と、を有する送りねじ機構Fsである。この場合、並進部分23,23を棒状部材Rdの長手方向中間付近に設けることができるため、
図3のように、リンク作動装置7の構成によらず位置決め部材2,2を、対応するリンクハブ12,13に対して近接・離隔することができる。例えば、先端側のリンクハブ13にエンドエフェクタを取り付けた場合等においても、エンドエフェクタに干渉することなく位置決め部材2,2を自由に並進させることができる。したがって、適用可能なリンク作動装置7の汎用性を高めることができる。
【0049】
図6のように変換機構1は、並進部分23,23の回転止めを行う回転止め部材26を有する。このため、棒状部材Rdの回転に伴って並進部分23,23が回転することを防止し、位置決め部材2,2を精度よく位置決めすることが可能となる。
【0050】
図1の制御装置Cuは、リンク作動装置7に予圧が付与された状態で、例えば、姿勢制御用アクチュエータ10の動作量等を出力し、原点位置としてメモリMrに記録する。このため、制御装置Cuは、記録された原点位置に基づいて定期的に原点位置決めを行うことで、リンク作動装置7のガタの影響を排除して各姿勢制御用アクチュエータ10を制御することができるようになる。したがって、基端側のリンクハブ12に対する先端側のリンクハブ13の姿勢変形精度を高めることができる。
【0051】
[変更形態]
前記パラレルリンク機構9により、
図2に示す基端側の球面リンク機構9aと先端側の球面リンク機構9bは鏡面対称に理論上保たれる。したがって、原点を位置決めするのは、先端側の球面リンク機構9b、基端側の球面リンク機構9aのいずれか一方でもよい。この場合、並進部分23および位置決め部材2をそれぞれ1つに低減することができるため、全体構造が簡単化し製造コストの低減を図れる。
【0052】
基端側の球面リンク機構9aに負荷がかかることが多いため、例えば、
図10のように、原点を位置決めする位置決め部材2を先端側にのみ配置してもよい。この場合、図示しないが、棒状部材Rdのうち基端側の部分を先端側の部分よりも大径に設計することも可能である。これにより基端側の球面リンク機構9a(
図3参照)の剛性を高め、位置決め精度の向上を図れる。
【0053】
ねじ部25a,25b、位置決め部材2の挿通部2a、位置決め用孔ha(
図9)、回転止め部材26のガイド部26bおよび支持孔等の摺動部の少なくともいずれか1つに摩擦低減部材を設けてもよい。摩擦低減部材としては、例えば、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)等公知の表面処理部材を適用し得る。摺動部に摩擦低減部材を使用すると、摺動部の摩耗が低減し寿命が延びるうえ、ガタが減り位置精度の向上を図れる。
図9に示す棒状部材Rdおよび連結部3,4は中空になっていてもよい。この場合、棒状部材Rdおよび連結部3,4の内部に、エンドエフェクタのケーブルを通すことができる。
【0054】
<他の実施形態について>
以下の説明においては、各実施形態で先行して説明している事項に対応している部分には同一の参照符号を付し、重複する説明を略する。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、特に記載のない限り先行して説明している実施形態と同様とする。同一の構成は同一の作用効果を奏する。各実施形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0055】
[第2の実施形態:
図11~
図19A]
図11に示すように、位置決め部材は、各円環状の並進部分23の軸方向外側端面に設けられた円板状のパッド2Aであってもよい。
図12Aおよび
図12Bに示すように、このパッド2Aは、対応するリンクハブ側に向かうに従って径方向外方に拡径するテーパ形状の金属製である。
図13は、
図14のXIII-XIII線断面図である。
図13のように、パッド2Aは、対応するリンクハブに対向する平坦面2Aaが最大となるように形成されている。
【0056】
図15Aおよび
図15Bのように、パッド2Aの前記平坦面2Aaは、棒状部材Rdの中心軸に対して垂直な平面となるように形成されている。回転止め部材26における基端側および先端側のガイド部26b,26bは、棒状部材Rdの中心軸に平行で所定距離延びるロッドから成る。各パッド2Aの円周方向の一部には、前記ロッドに案内される貫通孔状のガイド孔2Abが形成されている。パッド2Aは、摩擦材等から成る金属製であってもよい。
【0057】
この構成によると、
図16のように各並進部分23を並進させ、
図17Aおよび
図17Bのように、位置決め部材であるパッド2Aの平坦面2Aaを対応するリンクハブ12,13に押し当てることで、
図18のようにパラレルリンク機構9を原点姿勢に拘束する。この場合、第1の実施形態のような位置決め部材とリンクハブ間の挿通がないため、姿勢制御用アクチュエータ10の位置合わせが原点位置からずれていても、パッド2Aの押圧力により原点位置にパラレルリンク機構9を矯正し、拘束することができる。したがって原点位置決め作業の自動化を図れる。その他第1の実施形態と同様の作用効果を奏する。
図19Aに示す回転止め部材26の前記ロッドは、棒状部材Rdの中心軸に対して傾いていてもよい。
【0058】
[変更形態]
図12Aのパラレルリンク機構9により、基端側の球面リンク機構9aと先端側の球面リンク機構9bは鏡面対称に理論上保たれる。したがって、
図19Bに示すように、位置決め部材であるパッド2Aを先端側にのみ配置してもよい。その他、図示しないが、パッド2Aを基端側にのみ配置してもよい。これらの場合、並進部分23および位置決め部材をそれぞれ1つに低減することができるため、全体構造が簡単化し製造コストの低減を図れる。
【0059】
以上、本発明の実施形態を説明したが、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0060】
1…変換機構、2…位置決め部材、2A…パッド(位置決め部材)、3,4…連結部、7…リンク作動装置、9…パラレルリンク機構、9a,9b…球面リンク機構、10…姿勢制御用アクチュエータ、12…基端側のリンクハブ、13…先端側のリンクハブ、14…リンク機構、15…基端側の端部リンク部材、16…先端側の端部リンク部材、17…中央リンク部材、23…並進部分、25a,25b…ねじ部、26…回転止め部材、Fs…送りねじ機構、Rd…棒状部材、Rs…回転駆動源