(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034846
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】腫瘍サンプラー及び腫瘍サンプリングキット
(51)【国際特許分類】
A61B 10/02 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
A61B10/02 110H
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139368
(22)【出願日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】522266025
【氏名又は名称】地方独立行政法人東京都立病院機構
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100141025
【弁理士】
【氏名又は名称】阿久津 勝久
(72)【発明者】
【氏名】大谷 亮平
(57)【要約】
【課題】本発明は、腫瘍から腫瘍横断的な検体を、3次元的構造を保ったまま採取することができる腫瘍サンプラー及び腫瘍サンプリングキットの提供を目的とする。
【解決手段】腫瘍Tから検体Sを採取する腫瘍サンプラー2であって、検体Sを採取する遠位端開口部211を備える採取管21と、前記遠位端開口部211を閉鎖する一対の蓋体221と、を備え、前記一対の蓋体221が、前記遠位端開口部211を閉鎖する隔壁を形成することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍から検体を採取する腫瘍サンプラーであって、
前記検体を採取する遠位端開口部を備える採取管と、
前記遠位端開口部を閉鎖する一対の蓋体と、
を備え、
前記一対の蓋体が、前記遠位端開口部を閉鎖する隔壁を形成することを特徴とする腫瘍サンプラー。
【請求項2】
請求項1に記載の腫瘍サンプラーにおいて、
前記採取管の長手方向に沿ってスライド可能なスライド体を備え、
前記一対の蓋体は、前記スライド体に接続されると共に、前記採取管を挟む位置に設けられ、前記スライド体をスライドさせることにより、前記蓋体が前記遠位端開口部を開放する開放状態と、前記蓋体が前記遠位端開口部を閉鎖する閉鎖状態との間で、移動することを特徴とする腫瘍サンプラー。
【請求項3】
請求項2に記載の腫瘍サンプラーにおいて、
前記スライド体は、前記採取管の外周を囲む筒状又は環状をなしていることを特徴とする腫瘍サンプラー。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の腫瘍サンプラーにおいて、
前記蓋体は各々、弾性を有すると共に折れ曲り可能な折れ曲り部を備え、
前記開放状態で前記折れ曲り部が押し伸ばされ、前記閉鎖状態で前記折れ曲り部が互いに対向する側に折れ曲がることを特徴とする腫瘍サンプラー。
【請求項5】
請求項2または3に記載の腫瘍サンプラーにおいて、
前記スライド体は、前記閉鎖状態で、前記一対の蓋体によって閉止されるスライド体開口部を備えることを特徴とする腫瘍サンプラー。
【請求項6】
請求項5に記載の腫瘍サンプラーにおいて、
前記スライド体開口部は、前記スライド体の直径方向における端から中央に向かって、前記採取管の先方に漸次突出する傾斜を有していることを特徴とする腫瘍サンプラー。
【請求項7】
請求項2または3に記載の腫瘍サンプラーにおいて、
前記スライド体を前記採取管の長手方向に沿ってスライドさせるハンドルを備えることを特徴とする腫瘍サンプラー。
【請求項8】
請求項7に記載の腫瘍サンプラーにおいて、
前記採取管は、前記ハンドルの移動を案内するハンドルガイド部を備えることを特徴とする腫瘍サンプラー。
【請求項9】
請求項7に記載の腫瘍サンプラーにおいて、
前記採取管を保持する本体を備え、前記本体は、前記ハンドルと接触して当該ハンドルの移動を規制するハンドル規制部を備えることを特徴とする腫瘍サンプラー。
【請求項10】
請求項1または2に記載の腫瘍サンプラーにおいて、
前記蓋体は各々、先端に切断刃を備えることを特徴とする腫瘍サンプラー。
【請求項11】
請求項1または2に記載の腫瘍サンプラーにおいて、
前記遠位端開口部は、前記検体を採取する採取刃を備えることを特徴とする腫瘍サンプラー。
【請求項12】
請求項1または2に記載の腫瘍サンプラーであって、
前記採取管の近位端開口部に、液体の圧入具と接続する接続部を備えることを特徴とする腫瘍サンプラー。
【請求項13】
請求項9に記載の腫瘍サンプラーにおいて、
前記本体は、手術ナビゲーション用のマーカーの固定部を備えることを特徴とする腫瘍サンプラー。
【請求項14】
請求項1または2に記載の腫瘍サンプラーにおいて、
前記遠位端開口部は、当該遠位端開口部の開口面積を分割するように配置された分割部を備えることを特徴とする腫瘍サンプラー。
【請求項15】
請求項1または2に記載の腫瘍サンプラーと、
前記腫瘍サンプラーにより採取した前記検体を、前記採取管に沿って排出した形状を維持しつつ保持する保持部を備えた検体分割器具と、
を備え、
前記保持部には、保持された前記検体の排出方向に沿ってメスを挿通可能なスリットを備えていることを特徴とする腫瘍サンプリングキット。
【請求項16】
請求項15に記載の腫瘍サンプリングキットにおいて、
前記検体分割器具は、上下に重なる上部材と下部材とを備え、
前記上部材と前記下部材との間に前記保持部が形成されており、
前記スリットは、重ねられた前記上部材と前記下部材とにおいて上下方向に重なる位置にそれぞれ設けられていることを特徴とする腫瘍サンプリングキット。
【請求項17】
請求項16に記載の腫瘍サンプリングキットにおいて、
前記上部材と前記下部材とは、蝶番により開閉自在に設けられていることを特徴とする腫瘍サンプリングキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍から検体を採取する腫瘍サンプラー及び腫瘍サンプリングキットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、脳腫瘍等の腫瘍に関する遺伝子解析技術が急速に進展している。そのため、腫瘍の診断、治療方針決定に関して、遺伝子解析の重要性が今後も増してくるものと思われる。
【0003】
なお、上述のような遺伝子解析に必要となる、検体採取に関連する従来技術として、例えば、特許文献1には、前立腺生検針が開示されている。
【0004】
このような生検針を使用する場合、特許文献1にて開示しているように、医師は右手の手のひらにハンドル44を置き、親指タブ46を外側へ突出させる。また、医師は人差指76の指先を、スタイレット10およびカニューレ20を完全に後退させた案内チューブ30の先端に置き、鋭利部分を有するスタイレット10の先端が指先に押し付けられるようにする。医師は右手だけを用いて人差し指76および案内チューブ30を患者の組織付近の表面と接触する。次に、医師は、スタイレット10の鋭利な先端を組織中へ押し込むことができる。次に医師は左手を用いてブッシュノブ50を前方へ押し、スタイレット10で組織を刺通する。
【0005】
このとき、スタイレット10は、組織を押し退けつつ進入し、スタイレット10に設けられた横スロット14が組織内に進入する際に押し退けられていた組織が横スロット14内に突出する。その後、カニューレ20をスタイレット10に沿ってスライドさせることにより、横スロット14内の組織を切離してコアサンプル42を採取する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平4-63692号公報(米国特許第4600014号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
採取された検体は、病理診断や遺伝子解析などに使用されるが、病理用診断の検体と遺伝子解析の検体とは、3次元的構造を保ち位置情報を対応させたまま解析できることが望ましい。しかしながら、上記従来の生検針は、腫瘍内から検体を採取する際に、スタイレットにより押し退けられて変形した組織が横スロットに突出して収容されるので、採取された検体は変形を繰り返して採取される。そのため、腫瘍の診断、治療方針決定の精度を低下させる懸念にも結びつく。
【0008】
そこで本発明は、腫瘍から腫瘍横断的な検体を、3次元的構造を保ったまま採取することができる腫瘍サンプラー及び腫瘍サンプリングキットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の腫瘍サンプラーは、次の態様を備える。
[態様1]
腫瘍から検体を採取する腫瘍サンプラーであって、
前記検体を採取する遠位端開口部を備える採取管と、
前記遠位端開口部を閉鎖する一対の蓋体と、
を備え、
前記一対の蓋体が、前記遠位端開口部を閉鎖する隔壁を形成することを特徴とする腫瘍サンプラーである。
【0010】
態様1の腫瘍サンプラーによれば、検体を採取する採取管の遠位端開口部を閉鎖する蓋体を備えているので、腫瘍から採取管内に採取した腫瘍横断的な検体を、3次元的構造を保ったまま採取して採取管内に保持することが可能となる。また、蓋体は対をなして設けられており、一対の蓋体が遠位端開口部を閉鎖する隔壁を形成するので、一体に形成されている蓋体よりも各蓋体のサイズが小さい。このため、蓋体が閉鎖する際の蓋体の移動量が小さいため、腫瘍から検体を切離する際における腫瘍及び検体の変形が小さく抑えられるので、状態を保ったままで検体を採取することが可能となる。
【0011】
[態様2]
態様1に記載の腫瘍サンプラーにおいて、
前記採取管の長手方向に沿ってスライド可能なスライド体を備え、
前記一対の蓋体は、前記スライド体に接続されると共に、前記採取管を挟む位置に接続され、前記スライド体をスライドさせることにより、前記蓋体が前記遠位端開口部を開放する開放状態と、前記蓋体が前記遠位端開口部を閉鎖する閉鎖状態との間で、移動することを特徴とする。
【0012】
態様2の腫瘍サンプラーによれば、スライド体を採取管の長手方向に沿ってスライドさせるだけで、遠位端開口部が開放された開放状態と、一対の蓋体により遠位端開口部が閉鎖された閉鎖状態とに容易に切り替えることが可能である。
【0013】
[態様3]
態様2に記載の腫瘍サンプラーにおいて、
前記スライド体は、前記採取管の外周を囲む筒状又は環状をなしていることを特徴とする。
【0014】
態様3の腫瘍サンプラーによれば、スライド体は、採取管の外周を囲む筒状又は環状をなしているので、採取管をガイドとして確実に採取管に沿って移動させることが可能である。
【0015】
[態様4]
態様2又は3に記載の腫瘍サンプラーにおいて、
前記蓋体は各々、弾性を有すると共に折れ曲り可能な折れ曲り部を備え、
前記開放状態で前記折れ曲り部が押し伸ばされ、前記閉鎖状態で前記折れ曲り部が互いに対向する側に折れ曲がることを特徴とする。
【0016】
態様4の腫瘍サンプラーによれば、弾性を有して折れ曲り部を備えた各々の蓋体は、折れ曲り部が押し伸ばされて開放状態となり、互いに対向する側に折れ曲がることにより閉鎖状態となるので、蓋体の弾性変形により採取管を開放すること及び閉鎖することが可能となる。
【0017】
[態様5]
態様2乃至4のいずれか一項に記載の腫瘍サンプラーにおいて、
前記スライド体は、前記閉鎖状態で、前記一対の蓋体によって閉止されるスライド体開口部を備えることを特徴とする。
【0018】
態様5の腫瘍サンプラーによれば、スライド体が備えるスライド体開口部は、閉鎖状態で一対の蓋体によって閉止されるので、スライド体をスライドさせてスライド体開口部を遠位端開口部よりも先方に配置することにより、一対の蓋体を互いに対向する側に折れ曲がらせて遠位端開口部を閉鎖することが可能となる。
【0019】
[態様6]
態様5に記載の腫瘍サンプラーにおいて、
前記スライド体開口部は、前記スライド体の直径方向における端から中央に向かって、前記採取管の先方に漸次突出する傾斜を有していることを特徴とする。
【0020】
態様6の腫瘍サンプラーによれば、スライド体開口部は、スライド体の直径方向における端から中央に向かって、採取管の先方に漸次突出する傾斜を有しているので、スライド体開口部が有する傾斜に合わせて各蓋体を屈曲させるだけでスライド体開口部を閉止することが可能となる。このため、スライド体開口部が平坦な場合よりも蓋体の移動量を小さく抑えることができるので、採取する検体の状態を保ったまま採取することが可能となる。
【0021】
[態様7]
態様2乃至6のいずれか一項に記載の腫瘍サンプラーにおいて、
前記スライド体を前記採取管の長手方向に沿ってスライドさせるハンドルを備えることを特徴とする。
【0022】
態様7の腫瘍サンプラーによれば、スライド体を採取管の長手方向に沿ってスライドさせるハンドルを備えているので、スライド体を採取管の長手方向に沿って容易にスライドさせることが可能となる。
【0023】
[態様8]
態様7に記載の腫瘍サンプラーにおいて、
前記採取管は、前記ハンドルの移動を案内するハンドルガイド部を備えることを特徴とする。
【0024】
態様8の腫瘍サンプラーによれば、採取管にハンドルの移動を案内するハンドルガイド部が備えられているので、ハンドルを容易に且つ確実に採取管に沿わせてスライドさせることが可能となる。
【0025】
[態様9]
態様7または8に記載の腫瘍サンプラーにおいて、
前記採取管を保持する本体を備え、前記本体は、前記ハンドルと接触して当該ハンドルの移動を規制するハンドル規制部を備えることを特徴とする。
【0026】
態様9の腫瘍サンプラーによれば、採取管を保持する本体にハンドルの移動を規制するハンドル規制部を備えているので、ハンドルを適切な量だけ容易に移動させることが可能であり操作性に優れている。このとき、ハンドル規制部は、ハンドルと接触して当該ハンドルのスライドを規制するので、確実にハンドルのスライドを規制することが可能となる。
【0027】
[態様10]
態様1乃至9のいずれか一項に記載の腫瘍サンプラーにおいて、
前記蓋体は各々、先端に切断刃を備えることを特徴とする。
【0028】
態様10の腫瘍サンプラーによれば、各蓋体の先端には、切断刃が設けられているので、一対の蓋体が互いに対向する側に折れ曲がって閉鎖状態となる際に、検体と腫瘍とを切り離しつつ検体を採取することが可能である。このため、検体を採取する際に、検体に作用する負荷を抑え、押しつぶすことなくよりそのままの状態を維持したままで検体を採取することが可能となる。
【0029】
[態様11]
態様1乃至10のいずれか一項に記載の腫瘍サンプラーにおいて、
前記遠位端開口部は、前記検体を採取する採取刃を備えることを特徴とする。
【0030】
態様11の腫瘍サンプラーによれば、遠位端開口部が検体を採取する採取刃を備えているので、遠位端開口部を腫瘍に挿入することにより、腫瘍から検体を切り離しつつ容易に検体を採取することが可能となる。
【0031】
[態様12]
態様1乃至11のいずれか一項に記載の腫瘍サンプラーであって、
前記採取管の近位端開口部に、液体の圧入具と接続する接続部を備えることを特徴とする。
【0032】
態様12の腫瘍サンプラーによれば、採取管の近位端開口部に備えられた液体の圧入具の接続部に圧入具を接続し、一対の蓋体を開放状態とした後に圧入具から液体を圧入することにより、遠位端開口部から、採取した状態を維持したままで検体を採取管から取り出すことが可能である。
【0033】
[態様13]
態様9に記載の腫瘍サンプラーにおいて、
前記本体は、手術ナビゲーション用のマーカーをなすことを特徴とする。
【0034】
態様13の腫瘍サンプラーによれば、本体が手術ナビゲーション用のマーカーをなすので、手術中、医師等は、腫瘍サンプラーの挿入方向や深さについて、マーカーを用いた手術用ナビゲーションシステムによって確認することが可能となる。
【0035】
[態様14]
態様1乃至13のいずれか一項に記載の腫瘍サンプラーにおいて、
前記遠位端開口部は、当該遠位端開口部の開口面積を分割するように配置された分割部を備えることを特徴とする。
【0036】
態様14の腫瘍サンプラーによれば、遠位端開口部には、当該遠位端開口部の開口面積を分割するように配置された分割部が設けられているので、遠位端開口部を腫瘍に挿入する際に、遠位端開口部内に採取される検体を、採取しつつ分割部により分割することが可能となる。このため、採取管内に検体を採取するだけで、採取した検体を分割することが可能となる。
【0037】
[態様15]
態様1乃至14のいずれか一項に記載の腫瘍サンプラーと、
前記腫瘍サンプラーにより採取した前記検体を、前記採取管に沿って排出した形状を維持しつつ保持する保持部を備えた検体分割器具と、
を備え、
前記検体分割器具は、前記保持部と繋がって、保持された前記検体の排出方向に沿ってメスを挿通可能なスリットを備えていることを特徴とする腫瘍サンプリングキットである。
【0038】
態様15の腫瘍サンプリングキットによれば、検体分割器具は、検体を採取管に沿って排出した形状を維持しつつ保持する保持部を備えているので、検体の状態を排出した状態で保持することが可能である。また、保持部には、検体分割器具は、保持部と繋がって、保持された検体の排出方向に沿ってメスを挿通可能なスリットを備えているので、スリットにメスを挿通させて移動することにより保持部に保持した検体を、検体の排出方向に容易に分割することが可能となる。
【0039】
[態様16]
態様15に記載の腫瘍サンプリングキットにおいて、
前記検体分割器具は、上下に重なる上部材と下部材とを備え、
前記上部材と前記下部材との間に前記保持部が形成されており、
前記スリットは、重ねられた前記上部材と前記下部材とにおいて上下方向に重なる位置にそれぞれ設けられていることを特徴とする。
【0040】
態様16の腫瘍サンプリングキットによれば、検体分割器具が備える上下に重なる上部材と下部材との間に保持部が設けられているので、検体分割器具により検体を全周に亘って覆うことができるので、検体をより採取したままの状態で保持することが可能となる。また、上部材と下部材とにおいて上下方向に重なる位置にスリットが設けられているので、採取した状態を維持したままで、検体を分割することが可能となる。
【0041】
[態様17]
態様16に記載の腫瘍サンプリングキットにおいて、
前記上部材と前記下部材とは、蝶番により開閉自在に設けられていることを特徴とする。
【0042】
態様17の腫瘍サンプリングキットによれば、検体分割器具が備える上部材と下部材とは蝶番により開閉自在に設けられているので、上部材と下部材との間に設けられた保持部に、検体をより容易に保持させることが可能であり作業性に優れている。
本発明の他の特徴については、本明細書および添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0043】
本発明の腫瘍サンプラー及び腫瘍サンプリングキットによれば、腫瘍から腫瘍横断的な検体を、3次元的構造を保ったまま採取することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本実施形態に係る腫瘍サンプラーの開放状態を示す斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る腫瘍サンプラーの閉鎖状態を示す斜視図である。
【
図3】
図3(a)は、本実施形態に係る腫瘍サンプラーを示す上面図であり、
図3(b)は、本実施形態に係る腫瘍サンプラーを示す側面図である。
【
図5】
図5(a)は、開放状態における遠位端開口部の拡大図であり、
図5(b)は、閉鎖状態における遠位端開口部の拡大図である。
【
図6】
図6(a)は、検体分割器具を示す上面図であり、
図6(b)は、検体分割器具を示す側面図であり、
図6(c)は、検体分割器具を遠位端側から見た図であり、
図6(d)は、検体分割器具を近位端側から見た図である。
【
図7】腫瘍サンプラーの変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明の腫瘍サンプリングキット1に関する一実施形態を、図面を参照して説明する。
図1に示すように、腫瘍サンプリングキット1は腫瘍から検体を採取する腫瘍サンプラー2と、腫瘍サンプラー2により採取された検体Sの保持部を備えた検体分割器具3と、を備えている。
【0046】
各図において対応する部分は、同じ符号を付して説明は適宜省略する。なお、本実施形態において、腫瘍サンプラーの医師等に近い端を近位端側(proximal end side)Pといい、腫瘍サンプラーの医師等の操作者から遠い端を遠位端側(distal end side)Dという。
図1~
図3に、近位端側P、遠位端側Dを矢印で示す。
【0047】
まず、腫瘍サンプラー2の構成について説明する。
図1、
図2に本実施形態に係る腫瘍サンプラーの斜視図を示す。また、
図3(a)は、本実施形態に係る腫瘍サンプラー2を示す上面図であり、
図3(b)は同じく側面図である。
図4は、採取管の遠位端開口の拡大断面図である。
【0048】
本実施形態の腫瘍サンプラー2は、円筒状をなす採取管21と、採取管21の長手方向に沿ってスライド可能なスライド体22と、採取管21を近位端側Pで保持(固定)する本体23と、採取管21の近位端に設けられたシリンジ接続部24と、スライド体22をスライド操作するためのハンドル25と、を備えている。
【0049】
図4に示すように、採取管21は、先端となる遠位端開口部211に、腫瘍(組織)Tから検体Sを採取する採取刃212が備えられている。採取刃212は、遠位端開口部211の先端に向かって、内径が漸次大きくなる傾斜をなし、先端に向かって肉厚が漸次薄くなるように形成されている。採取管21に形成された採取刃212を用いることにより、組織Tから検体Sを円柱状に切断することができる。
【0050】
採取管21の外周面には、長手方向に沿ってガイド管213が固定されている。ガイド管213は、円筒状をなし、採取管21の遠位端側D及び近位端側Pを除き設けられている。
【0051】
以下の腫瘍サンプラー2の説明においては、
図1、
図2に示すように、採取管21の内径をなす円の中心の鉛直上にガイド管213が位置する状態において上下の方向を特定して説明する。また、腫瘍サンプラー2を構成する各部材については単体の状態であっても、採取管21の中心の鉛直上にガイド管213が位置する状態にて上下方向を特定して説明する。また以下の説明では、採取管21の長手方向を単に長手方向という。
【0052】
採取管21の近位端側Pには、当該採取管21が挿通された状態で本体23が設けられており、採取管21は本体23よりも近位端側Pに突出している。本体23は、例えば、直方体状のブロックでなり、長手方向と直交する平面の断面は、採取管21の直径よりわずかに大きく形成されている。
【0053】
本体23には、手術ナビゲーション用のマーカーを設置することが可能である。このマーカーは、手術用ナビゲーションシステムにおいて、ポインタープローブの先端位置を検出する機構にて用いる反射マーカーとすることが可能である。手術用ナビゲーションシステムでは、ナビゲーションを行う際の光学的基準点となるリファレンスフレームと本体23の表面に設けた反射マーカーの反射光を、赤外線カメラにより、三角計測の原理で位置測定を行い、ポインタープローブの先端の位置情報を術前に撮影したCTまたはMRIなどの画像上にリアルタイムに表示することが可能である。
【0054】
また、本体23は、採取管21よりも上方に突出しており、突出している部位には、遠位端側Dに延出された本体延出部231が設けられている。
【0055】
本体延出部231は、ほぼ水平に延出された水平延出部232と、水平延出部232の遠位端側Dの端から上方に延出された上方延出部233と、を有している。水平延出部232は、採取管21の上方に間隔を空けて設けられており、長手方向に沿って長孔232aが設けられている。
【0056】
長孔232aには、ハンドル25と、採取管21の遠位端側Dに設けられるスライド体22とを繋ぐロッド25aが挿通される。具体的には、水平延出部232の上方に設けられて長手方向に移動するハンドル25から垂設されたロッド25aが、長孔232aに挿通され、水平延出部232より下側で屈曲され、採取管21と水平延出部232との間を遠位端側Dに延出されている。
【0057】
ロッド25aは、採取管21上に設けられているガイド管213に挿通されてガイド管213の遠位端側Dに突出し、その先端がスライド体22に接合されている。このため、スライド体22は、近位端側Pでハンドル25を長手方向にスライド操作することによりガイド管213に案内され、遠位端側Dにて採取管21に沿って長手方向に移動する。ここで、ガイド管213が、ハンドル25の移動を案内するハンドルガイド部に相当する。
【0058】
水平延出部232の遠位端側Dの端に設けられた上方延出部233は、ハンドル25と長手方向に対向する位置に設けられている。上方延出部233は、遠位端側Dに移動したハンドル25と接触して当該ハンドル25の移動を規制するハンドル規制部をなしている。
【0059】
採取管21において本体23の近位端側Pに突出している近位端開口部に、シリンジ接続部24が設けられている。シリンジ接続部24は、採取管21内に生理食塩水を注入する注射器(液体の圧入具)を接続させる治具である。そのため、注射器本体の頭部形状と適合する内腔を備え、例えば、ゴムなどの装着性、保持性を有する弾性体により構成されている。シリンジ接続部24に接続された注射器で、押圧動作が行われた場合、当該注射器内の生理食塩水が、このシリンジ接続部24を介して、採取管21の内腔に圧入される。
【0060】
蓋体221の後述する開放状態で、生理食塩水の水圧によって、採取管21の遠位端から内腔に取り込まれた検体Sを、人が触れることなく、また、把持することなく、遠位端開口部211から吐出させることが可能となる。なお、採取管21は、一例として、病理検体採取管、及び遺伝子解析用検体採取管とすることもできる。
【0061】
スライド体22は、採取管21の外周を囲む筒状又は環状をなし、採取管21の外周面との間に僅かなクリアランスが設けられている。このため、スライド体22は、ハンドル25の操作により、採取管21に案内されて長手方向に沿って滑らかにスライドするように構成されている。
【0062】
スライド体22の遠位端となるスライド体開口部22aは、スライド体22が採取管21に挿通され、例えば、上端及び下端から中央に向かって漸次先端側に突出する傾斜を有している。
【0063】
スライド体22の遠位端側Dには、腫瘍Tへの刺通側となる先方側に突出させて、遠位端開口部211を閉鎖可能とする一対の蓋体221が設けられている。一対の蓋体221は、スライド体22に接続されており、両者は一体となってスライドする。一対の蓋体221は、板状をなしており、スライド体22の上下にそれぞれ、互いに対向するように配置されている。尚、一対の蓋体221は、スライド体開口部22aの傾斜の基端と一致して互いに対向し採取管21を挟むように設けられていれば、上下に位置していなくとも構わない。
【0064】
各蓋体221は、採取管21の直径とほぼ同一の幅を有しており、弾性を有すると共に折れ曲る折れ曲り部221aとを備えている。腫瘍サンプラー2では、腫瘍Tへの挿入がスムーズになるように、スライド体22及び蓋体221の採取管21の外周方向への突出量が小さく抑えられている。各蓋体221は、折れ曲り部221aよりも近位端側Pの部位がスライド体22に固定され、折れ曲り部221aよりも遠位端側Dの蓋本体部221bがスライド体開口部22aから突出している。各蓋本体部221bの先端には切断刃221cが形成されている。
【0065】
スライド体22は、ハンドル25のスライド操作により、
図1及び
図5(a)に示す第1配置と、
図2及び
図5(b)に示す第2配置と、をとることができる。第1配置は、採取管21の遠位端開口部211が蓋体221の切断刃221cよりも遠位端側Dに突出している。第1配置では、
図5(a)に示すように、折れ曲り部221aが採取管21によって押し伸ばされて蓋体221がほぼ平坦となり、蓋体221がスライド体開口部22a及び採取管21の遠位端開口部211を開放した開放状態となる。
【0066】
一方、第2配置では、採取管21の遠位端開口部211が折れ曲り部221aの位置または折れ曲り部221aよりも近位端側Pに位置している。第2配置では、
図5(b)に示すように、蓋体221が折れ曲り部221aを起点に折れ曲り、採取管21の遠位端開口部211がスライド体22内に収容され、スライド体開口部22aを閉止して遠位端開口部211が閉鎖された閉鎖状態となる。
【0067】
第1配置の開放状態及び第2配置の閉鎖状態を可能とするため、各蓋体221は、弾性を有し、各々の折れ曲り部221aは互いに対向する方向に予め屈曲形成されている。蓋体221の材質としては、例えば、適宜な弾性を有する金属材料とすることができる。
【0068】
腫瘍サンプラー2は、ハンドル25の近位端側Pへのスライド操作により、スライド体22が近位端側Pへスライドして開放状態となる。開放状態で、採取刃212を備えた採取管21の先端が、各蓋体221の切断刃221cを超えており、このまま採取管21が腫瘍Tにゆっくりと差し込まれる。
【0069】
そして、ハンドル25の遠位端側Dへのスライド操作により、スライド体22が遠位端側Dへスライドする。このとき、スライド体22のスライドに伴って上下の蓋体221が採取管21の先端よりも突出しつつ、折れ曲り部221aを起点として互いに対向する側に倒れ折れ曲る。各蓋体221は折れ曲りつつ、各切断刃221cが斜め方向に組織Tから検体Sを切り離し、上下の切断刃221cが互いに近づいていく。ハンドル25を本体23の上方延出部233に接触するまで移動させると、上下の切断刃221c同士が、スライド体開口部22aの突出している先端部の位置にて互いに接触し、スライド体22の内外を仕切る隔壁を形成する。これにより、蓋体221によりスライド体開口部22aが閉止され、遠位端開口部211が閉鎖された閉鎖状態(第2配置)となり、採取管21内に検体Sが収容される。スライド体開口部22aが蓋体221により閉止されて遠位端開口部211が閉鎖された閉鎖状態で、腫瘍サンプラー2を引き抜くことにより、採取管21内に検体Sが採取される。
【0070】
検体Sが収容された腫瘍サンプラー2のハンドル25の近位端側Pへのスライド操作により、スライド体22が近位端側Pへスライドする。このとき、スライド体22のスライドに伴って上下の蓋体221が採取管21により互いに離れる方向に押し広げられて押し伸ばされた状態となり、採取管21の遠位端開口部211が蓋体221よりも先方に突出すると共に遠位端開口部211が開放される。
【0071】
遠位端開口部211が開放された状態で、シリンジ接続部24に、生理食塩水等が収容されている注射器を接続し、押圧動作を行うことにより、生理食塩水がシリンジ接続部24を介して採取管21の内腔に圧入され、採取管21内に収容されていた検体Sが排出される。
排出される検体Sは、例えば、
図1,
図6に示すような検体分割器具3に排出され、必要に応じてメスなどを用いて分割される。
【0072】
検体分割器具3は、平面視が長方形状のほぼ直方体状をなしており、上面3aに検体Sを保持する保持部としての保持溝31が設けられている。保持溝31は、上面3aの長手方向に沿って短手方向の中央に設けられている。保持溝31は、長手方向における一方の端側が開放されており、他方の端側は、ほぼ塞がれている。
【0073】
保持溝31の幅は上述した腫瘍サンプラー2が備える採取管21の内径とほぼ同一に形成されており、深さは、採取管21の内径の直径よりも深く形成されている。保持溝31の底面は、長手方向と直交する面の断面形状が、下方に窪むほぼ半円形状をなしている。
【0074】
保持溝31の幅方向における中央には長手方向に沿ってメスが挿通可能なスリット32が設けられている。スリット32は、長手方向に貫通し、保持溝31の底面よりも僅か下まで設けられている。すなわち、スリット32は上下方向には貫通していない。
【0075】
腫瘍サンプラー2により採取された検体Sは、検体分割器具3の保持溝31の上方に長手方向に沿って配置された腫瘍サンプラー2から排出され保持溝31に沿って保持される。
【0076】
保持溝31に保持された検体Sは、スリット32に沿ってメスを挿通することにより、保持溝31に収容された状態を維持しつつ長手方向に沿って分割される。このとき、保持溝31の塞がれている端において検体Sの長手方向の移動が規制されるので、開放されている端側からメスを投入すると検体Sを容易に分割することが可能となる。また、分割された検体Sは、保持溝31に沿って移動させ開放されている端側から容易に取り出すことが可能となる。分割された検体Sは、それぞれ病理検査、遺伝子解析に使用される。
【0077】
本実施形態の腫瘍サンプラー2の全体又は採取管21、スライド体22及び蓋体221、また、検体分割器具3の全体又は保持溝31が滅菌可能な耐熱性を有する材料(オートクレーブ可能な材料)から形成することができる。このような材料としては、例えば、ステンレススチール等の金属とすることができる。代替的には、腫瘍サンプラー2及び検体分割器具3の全体又は一部を樹脂製材料から形成し、使い捨てとすることもできる。
【0078】
本実施形態の腫瘍サンプラー2によれば、検体Sを採取する採取管21の遠位端開口部211を閉鎖する蓋体221を備えているので、腫瘍Tへゆっくりと挿入し、蓋体221を閉めて引き抜くことにより、腫瘍Tから採取管21内に採取した円柱状の腫瘍横断的な検体Sを、3次元的構造を保ったまま採取して採取管21内に保持することが可能となる。
【0079】
また、遠位端開口部211が検体Sを採取する採取刃212を備えているので、遠位端開口部211を腫瘍Tに挿入することにより、腫瘍Tから検体Sを切り離しつつ容易に検体Sを採取することが可能となる。
【0080】
また、蓋体221が設けられているので、腫瘍サンプラー2を引き抜く際に検体Sが遠位端開口部211から抜け出てしまうことを防止することができる。
【0081】
また、蓋体221は対をなして設けられており、一対の蓋体221が遠位端開口部211を閉鎖する隔壁を形成するので、一体に形成されている蓋体よりも各蓋体221のサイズが小さい。このため、蓋体221が閉鎖する際の蓋体221の移動量が小さいため、腫瘍Tから検体Sを切離する際における腫瘍T及び検体Sの変形が小さく抑えられるので、状態を保ったままで検体Sを採取することが可能となる。
【0082】
また、各蓋体221が備える、弾性を有する折れ曲り部221aは、開放状態で押し伸ばされ、閉鎖状態で互いに対向する側に折れ曲がるので、蓋体221の弾性変形により採取管21を開放すること及び閉鎖することが可能となる。
【0083】
また、採取管21の長手方向に沿ってスライド可能なスライド体22において、採取管21を挟む位置に設けられた一対の蓋体221は、スライドさせることにより、遠位端開口部211を開放する開放状態と、遠位端開口部211を閉鎖する閉鎖状態との間で移動するので、スライド体22を採取管21の長手方向に沿ってスライドさせるだけで、遠位端開口部211を開放すること及び閉鎖することが可能であり、開放状態と閉鎖状態とを容易に切り替えることも容易であり作業性に優れている。
【0084】
また、各蓋体221の先端には、切断刃221cが設けられているので、一対の蓋体221が互いに対向する側に折れ曲がって閉鎖状態となる際に、検体Sと腫瘍Tとを切り離しつつ、一対の蓋体221が折れ曲がることにより検体Sに作用する負荷を抑え、押しつぶすことなく、3次元的構造を保ったままで検体Sを採取することが可能である。
【0085】
また、前記スライド体22は、採取管21の外周を囲む筒状又は環状をなしているので、採取管21をガイドとして確実に採取管21に沿って移動させることが可能である。
【0086】
また、スライド体22が備えるスライド体開口部22aは、閉鎖状態で一対の蓋体221によって閉止されるので、スライド体22をスライドさせてスライド体開口部22aを遠位端開口部211よりも先方に配置することにより、一対の蓋体221を互いに対向する側に折れ曲がらせて遠位端開口部211を閉鎖することが可能となる。
【0087】
また、スライド体開口部22aは、スライド体22の直径方向における端から中央に向かって、採取管21の先方に漸次突出する傾斜を有しているので、スライド体開口部22aが有する傾斜に合わせて各蓋体221が屈曲するだけでスライド体開口部22aを閉止することが可能となる。このため、スライド体開口部が長手方向と直交して平坦な場合よりも蓋体221の移動量を小さく抑えることができるので、採取する検体Sの状態を保ったまま採取することが可能となる。
【0088】
また、腫瘍サンプラー2は、スライド体22を採取管21の長手方向に沿ってスライドさせるハンドル25を備えているので、スライド体22を手元にて採取管21の長手方向に沿って容易にスライドさせることが可能となる。
【0089】
また、採取管21にハンドルの移動を案内するガイド管213が備えられているので、ハンドル25を容易に且つ確実に採取管21に沿わせてスライドさせることが可能となる。
【0090】
また、採取管21を保持する本体23にハンドル25の移動を規制する上方延出部233を備えているので、一対の蓋体221をスライド体開口部22aの傾斜に沿って当接する適切な量だけ移動させることができる。このため、誤ってハンドル25を移動させ過ぎることによる蓋体221の損傷を防止することが可能である。このとき、上方延出部233は、ハンドル25と接触して当該ハンドル25のスライドを規制するので、確実に蓋体221の損傷を防止することが可能となる。
【0091】
また、採取管21の近位端開口部に注射器と接続するシリンジ接続部24を備えているので、採取管21のシリンジ接続部24に注射器などの圧入具を接続し、一対の蓋体221を開放状態とした後に圧入具から生理食塩水を圧入することにより、遠位端開口部211から、採取した状態を維持したままで検体Sを採取管21から取り出すことが可能である。
【0092】
また、本体23は、手術ナビゲーション用のマーカーをなすので、手術中、医師等は、腫瘍サンプラー2の挿入方向や深さについて、マーカーを用いた手術用ナビゲーションシステムによって確認することが可能となる。
【0093】
また、腫瘍サンプラー2と、採取した検体Sを保持する検体分割器具3と、を備えた本実施形態の腫瘍サンプリングキット1によれば、検体分割器具3が、検体Sを採取管21に沿って排出した形状を維持しつつ保持する保持溝31を備えているので、検体Sの状態を排出した状態で保持することが可能である。また、検体分割器具3には、保持溝31と繋がるスリット32が設けられており、スリット32は検体Sの排出方向に沿ってメスが挿通可能なので、スリット32にメスを挿通させて移動することにより保持溝31に保持した検体Sを、検体Sの排出方向に容易に分割することが可能となる。
【0094】
また、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【0095】
例えば、上記実施形態においては、採取した検体Sを、検体分割器具3を用いて分割する例について説明したが、これに限らず、
図7に示すように、遠位端開口部211に、直径方行に亘るワイヤーや仕切り板等により遠位端開口部211の開口面積を分割するように配置された分割部211aを備え、検体Sを採取する際に検体Sを分割する構成としても構わない。この場合には、遠位端開口部211内に検体Sを、採取しつつ分割部211aにより分割することが可能となる。このため、採取管21内に検体Sを採取するだけで検体Sを分割することが可能となる。
【0096】
また、上記実施形態においては、検体分割器具3が、検体Sが載置されて保持される構成としたが、これに限るものではない。例えば、
図8に示すように、検体分割器具3が上下に重なる上部材33と下部材34とを備えており、上部材33と下部材34とを重ねることにより、上保持溝33aと下保持溝34aとが重なって円柱状をなす検体Sの保持部35が形成される構成であっても構わない。この場合の上部材33には、上保持溝33aの幅方向における中央に、上下方向に貫通するスリット33bが設けられており、下部材34には、上述した検体分割器具3のスリット32と同様に下保持溝34aの僅か下までスリット34bが設けられている。そして、上部材33のスリット33bと、下部材34のスリット34bとは、上下方向に重なる位置にそれぞれ設けられている。
【0097】
このような検体分割器具3を備えた腫瘍サンプリングキット1によれば、検体分割器具3が備える上下に重なる上部材33と下部材34との間に保持部35が設けられているので、検体分割器具3により検体Sを全周に亘って覆うことができる。このため、3次元的構造を保ったままの状態で検体Sを保持することが可能となる。また、上部材33と下部材34とにおいて上下方向に重なる位置にスリット33b、34bが設けられているので、採取した状態をより維持したままで、検体Sを分割することが可能となる。
【0098】
また、検体分割器具3が上下に重なる上部材33と下部材34とを備えている場合には、
図8に示すように、上部材33と下部材34とが、蝶番36により開閉自在に設けられていることが望ましい。この場合には、上部材33と下部材34との間に設けられた保持部35に、検体Sをより容易に保持させることが可能であり、作業性の向上を図ることが可能となる。
【符号の説明】
【0099】
1 腫瘍サンプリングキット
2 腫瘍サンプラー
3 検体分割器具
3a 検体分割器具の上面
4 メス
21 採取管
22 スライド体
22a スライド体開口部
23 本体
24 シリンジ接続部
25 ハンドル
25a ロッド
31 保持溝
32 スリット
33 上部材
33a 上保持溝
33b スリット
34 下部材
34a 下保持溝
34b スリット
211 遠位端開口部
212 採取刃
213 ガイド管
22a スライド体開口部
221 蓋体
221a 折れ曲り部
221b 蓋本体部
221c 切断刃
231 本体延出部
232 水平延出部
232a 長孔
233 上方延出部
D 遠位端側
P 近位端側
S 検体
T 腫瘍(組織)