(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034858
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】高周波増幅器、アンテナモジュール、及びレーダモジュール
(51)【国際特許分類】
H03F 3/24 20060101AFI20240306BHJP
H01Q 23/00 20060101ALI20240306BHJP
G01S 7/03 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
H03F3/24
H01Q23/00
G01S7/03 220
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139381
(22)【出願日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【弁理士】
【氏名又は名称】来山 幹雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145023
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 学
(72)【発明者】
【氏名】筒井 孝幸
【テーマコード(参考)】
5J021
5J070
5J500
【Fターム(参考)】
5J021AA05
5J021FA05
5J021FA11
5J021FA26
5J021FA31
5J021HA04
5J070AB24
5J070AC02
5J070AC11
5J070AD05
5J500AA01
5J500AA21
5J500AA41
5J500AC33
5J500AC35
5J500AC46
5J500AC75
5J500AF14
5J500AF16
5J500AH02
5J500AH06
5J500AH09
5J500AH12
5J500AH25
5J500AH29
5J500AK29
5J500AK66
5J500AK68
5J500AM08
5J500AQ02
5J500AQ04
5J500AS14
5J500AT01
5J500WU08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】出力電力を高める高周波増幅器を提供する。
【解決手段】高周波増幅器には、多段に接続された複数の単位増幅回路21を含む複数の多段増幅回路20と、複数の単位増幅回路に電源を供給する電源ライン30と、電源ラインに接続された複数のデカップリングキャパシタ31とが配置され、複数の多段増幅回路の各々の複数の単位増幅回路は、基板の上に第1方向に並んで配置されている。複数の多段増幅回路は、第1方向D1と直交する第2方向D2に並んで配置されている複数の単位増幅回路の各々のトランジスタ22と、次段の単位増幅回路の入力キャパシタまでの第1方向の最短の距離L1は120μm以下である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に配置され、多段に接続された複数の単位増幅回路を含む複数の多段増幅回路と、
前記基板に配置され、前記複数の単位増幅回路に電源を供給する電源ラインと、
前記基板に配置され、前記電源ラインに接続された複数のデカップリングキャパシタと
を備え、
前記複数の単位増幅回路の各々は、入力ノード、出力ノード、少なくとも1つのトランジスタ、前記入力ノードと前記トランジスタのベースまたはゲートとの間に接続された入力キャパシタを含み、
前記複数の多段増幅回路は相互に並列に接続されており、
前記複数の多段増幅回路の各々の前記複数の単位増幅回路は、前記基板の上に第1方向に並んで配置されており、前記複数の多段増幅回路は、前記第1方向と直交する第2方向に並んで配置されており、
前記複数の単位増幅回路の各々の前記トランジスタと、次段の前記単位増幅回路の前記入力キャパシタまでの前記第1方向の最短の距離は120μm以下であり、
前記複数の単位増幅回路のそれぞれに対して前記デカップリングキャパシタが接続されており、
前記複数のデカップリングキャパシタの各々が前記第1方向において占める範囲は、前記複数のデカップリングキャパシタの各々の接続先の前記単位増幅回路に含まれる前記トランジスタから次段の前記単位増幅回路に含まれる前記トランジスタまでの範囲、及び前記複数のデカップリングキャパシタの各々の接続先の前記単位増幅回路に含まれる前記トランジスタから前段の前記単位増幅回路に含まれる前記トランジスタまでの範囲の少なくとも一部分と重なっている高周波増幅器。
【請求項2】
前記複数のデカップリングキャパシタの各々から、前記複数のデカップリングキャパシタの各々の接続先の前記単位増幅回路に含まれる前記トランジスタまでの前記第2方向の最短の距離が120μm以下である請求項1に記載の高周波増幅器。
【請求項3】
前記単位増幅回路の各々は前記トランジスタを2個含み、2個の前記トランジスタは、前記第2方向に並んで配置されて相互に並列に接続されている請求項1または2に記載の高周波増幅器。
【請求項4】
前記複数の多段増幅回路は2つであり、前記複数の多段増幅回路の各々に接続された前記複数のデカップリングキャパシタは前記第1方向に並んで配置されており、
一方の多段増幅回路に接続された前記複数のデカップリングキャパシタの列と、他方の多段増幅回路に接続された前記複数のデカップリングキャパシタの列とは、前記複数の多段増幅回路を前記第2方向に挟む位置に配置されている請求項1または2に記載の高周波増幅器。
【請求項5】
前記複数のデカップリングキャパシタの各々のキャパシタンスは1pF以下である請求項1または2に記載の高周波増幅器。
【請求項6】
さらに、前記複数の多段増幅回路の各々の前記複数の単位増幅回路に対して1つ配置されて、前記電源ラインに接続された共通デカップリングキャパシタを備え、前記共通デカップリングキャパシタは、前記単位増幅回路から前記電源ラインに沿って、前記デカップリングキャパシタの接続箇所より遠い箇所に接続されている請求項1または2に記載の高周波増幅器。
【請求項7】
請求項1または2に記載の高周波増幅器と、
前記複数の多段増幅回路で増幅された高周波信号が入力され、共振周波数が120GHz以上300GHz以下である放射素子と
を備えたアンテナモジュール。
【請求項8】
請求項1または2に記載の高周波増幅器と、
前記高周波増幅器で増幅された高周波信号を電波として放射する複数の送信アンテナと、
前記複数の送信アンテナから放射され、ターゲットで反射された電波を受信する複数の受信アンテナと、
前記複数の送信アンテナで送信する高周波信号と前記複数の受信アンテナで受信されたエコー信号とに基づいてターゲットまでの距離及びターゲットが存在する方位を求める信号処理回路と
を備えたレーダモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波増幅器、アンテナモジュール、及びレーダモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
高度情報化社会の進展に伴い、無線通信システムの伝送容量は増大の一途を辿っている。伝送容量の増大の要請に対応すべく、定期的に通信システムの更新がなされている。現在、第5世代移動通信システム(5G)が実用化されており、次世代(第6世代)移動通信システムの実用化に向けて、検討が行われている。
【0003】
伝送容量の増大には、変調帯域幅を拡大することが、直接的に効果があるものの、現在の5Gで用いられているミリ波帯で飛躍的に帯域幅を拡大するのは困難である。よって、さらに高い周波数を割り当てることが検討されている。無線通信に用いる周波数には、大気中での電波の減衰率が低いという特性が求められる。大気中における電波の減衰率が低い周波数帯として、120GHz以上180GHz以下、220GHz以上300GHz以下のサブテラヘルツ帯が有望視されている。
【0004】
下記の特許文献1に、中和回路を用いた超高周波帯の増幅回路が開示されている。この超高周波帯の増幅回路は、多段に接続されたトランジスタと、各段に配置された中和回路とを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の超高周波帯の増幅回路では、高出力が必要な場合に所望の出力電力を得ることが困難である。本発明の目的は、出力電力を高めることが可能な高周波増幅器を提供することである。本発明の他の目的は、この高周波増幅器を用いたアンテナモジュール及びレーダモジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点によると、
基板と、
前記基板に配置され、多段に接続された複数の単位増幅回路を含む複数の多段増幅回路と、
前記基板に配置され、前記複数の単位増幅回路に電源を供給する電源ラインと、
前記基板に配置され、前記電源ラインに接続された複数のデカップリングキャパシタと
を備え、
前記複数の単位増幅回路の各々は、入力ノード、出力ノード、少なくとも1つのトランジスタ、前記入力ノードと前記トランジスタのベースまたはゲートとの間に接続された入力キャパシタを含み、
前記複数の多段増幅回路は相互に並列に接続されており、
前記複数の多段増幅回路の各々の前記複数の単位増幅回路は、前記基板の上に第1方向に並んで配置されており、前記複数の多段増幅回路は、前記第1方向と直交する第2方向に並んで配置されており、
前記複数の単位増幅回路の各々の前記トランジスタと、次段の前記単位増幅回路の前記入力キャパシタまでの前記第1方向の最短の距離は120μm以下であり、
前記複数の単位増幅回路のそれぞれに対して前記デカップリングキャパシタが接続されており、
前記複数のデカップリングキャパシタの各々が前記第1方向において占める範囲は、前記複数のデカップリングキャパシタの各々の接続先の前記単位増幅回路に含まれる前記トランジスタから次段の前記単位増幅回路に含まれる前記トランジスタまでの範囲、及び前記複数のデカップリングキャパシタの各々の接続先の前記単位増幅回路に含まれる前記トランジスタから前段の前記単位増幅回路に含まれる前記トランジスタまでの範囲の少なくとも一部分と重なっている高周波増幅器が提供される。
【0008】
本発明の他の観点によると、
前記の高周波増幅器と、
前記複数の多段増幅回路で増幅された高周波信号が入力され、共振周波数が120GHz以上300GHz以下である放射素子と
を備えたアンテナモジュールが提供される。
【0009】
本発明のさらに他の観点によると、
前記高周波増幅器と、
前記高周波増幅器で増幅された高周波信号を電波として放射する送信アンテナと、
前記送信アンテナから放射され、ターゲットで反射された電波を受信する受信アンテナと、
前記送信アンテナで送信する高周波信号と前記受信アンテナで受信された受信信号とに基づいてターゲットまでの距離を算出する信号処理回路と
を備えたレーダモジュールが提供される。
【発明の効果】
【0010】
複数の単位増幅回路の各々のトランジスタと、次段の単位増幅回路の入力キャパシタまでの第1方向の最短の距離が120μm以下であるため、波長の短いサブテラヘルツ帯の高周波信号に対して段間のインピーダンス整合をとることが容易である。また、複数の単位増幅回路のそれぞれに対してデカップリングキャパシタが接続されているため、段間のインピーダンス整合条件を揃えることができる。
【0011】
複数のデカップリングキャパシタの各々が第1方向において占める範囲が、デカップリングキャパシタの接続先の単位増幅回路に含まれるトランジスタから、次段の単位増幅回路に含まれるトランジスタまでの範囲、及び前段の単位増幅回路に含まれるトランジスタまでの範囲の少なくとも一部分と重なる構成とされていることにより、デカップリングキャパシタの各々のキャパシタンスを所望の値に設定することが可能になる。
【0012】
複数の多段増幅回路を並列に接続し、かつ段間のインピーダンス整合をとることにより、出力電力を高めることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、第1実施例による高周波増幅器の等価回路図である。
【
図2】
図2は、第1実施例による高周波増幅器の1つの単位増幅回路の各構成要素のレイアウトを示す図である。
【
図3】
図3は、第1実施例による高周波増幅器のトランジスタ、入力キャパシタ、ベースバラスト抵抗素子、及び配線を、断面構造に着目して示す図である。
【
図4】
図4は、第1実施例による高周波増幅器の複数の構成要素の平面視における位置関係を示す図である。
【
図5】
図5は、キャパシタの面積とキャパシタンスとの関係を示すグラフである。
【
図6】
図6は、高周波増幅器の出力とゲインとの関係のシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図7】
図7は、第2実施例による高周波増幅器の等価回路図である。
【
図8】
図8は、第2実施例による高周波増幅器の複数の構成要素の平面視における位置関係を示す図である。
【
図9】
図9は、第3実施例によるアンテナモジュールのブロック図である。
【
図10】
図10は、第4実施例によるアンテナモジュールのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1実施例]
図1から
図6までの図面を参照して、第1実施例による高周波増幅器について説明する。
図1は、第1実施例による高周波増幅器の等価回路図である。第1実施例による高周波増幅器は、相互に並列に接続された2つの多段増幅回路20を含む。多段増幅回路20の各々は、多段、例えば5段に接続された複数の単位増幅回路21を含む。複数の単位増幅回路21の各々は、入力ノード21in、出力ノード21out、2つのトランジスタ22、2つの入力キャパシタ23、2つのベースバラスト抵抗素子24を含む。
【0015】
トランジスタ22として、例えばヘテロ接合バイポーラトランジスタが用いられる。2つのトランジスタ22は相互に並列に接続されている。2つのトランジスタ22のエミッタはグランド電位に接続されている。2つのトランジスタ22のコレクタは、出力ノード21outに接続されるとともに、電源ライン30を介して電源電圧Vccに接続されている。電源ライン30を介して単位増幅回路21の各々に電源が供給される。
【0016】
2つのトランジスタ22のベースと入力ノード21inとの間に、それぞれ入力キャパシタ23が接続されている。入力ノード21inに入力された高周波信号が、入力キャパシタ23を介してトランジスタ22のベースに入力される。ベースバラスト抵抗素子24を介して、トランジスタ22のベースにバイアスが供給される。すなわち、トランジスタ22のベースがベースバラスト抵抗素子24を介してバイアス回路に接続される。
【0017】
複数の単位増幅回路21に対して、1つずつデカップリングキャパシタ31が接続されている。すなわち、複数のデカップリングキャパシタ31の各々が、複数の単位増幅回路21の各々とペアを構成している。デカップリングキャパシタ31は、接続先(ペアを構成する相手)の単位増幅回路21に、電源ライン30を介して接続されている。電源ライン30のうち、デカップリングキャパシタ31が接続された箇所から、単位増幅回路21までの部分は、高周波信号に対して伝送線路26とみなされる。
【0018】
単位増幅回路21の出力ノード21outと、次段の単位増幅回路21の入力ノード21inまでの配線は、高周波信号に対して伝送線路25とみなされる。
【0019】
入力信号Pinが、2つの多段増幅回路20の各々の初段の単位増幅回路21の入力ノード21inに入力される。2つの多段増幅回路20の最終段の単位増幅回路21の出力ノード21outが相互に接続されている。相互に接続された出力ノード21outから、増幅された出力信号Poutが出力される。
【0020】
図2は、1つの単位増幅回路21の各構成要素のレイアウトを示す図である。2つの多段増幅回路20の各構成要素は、共通の基板上に配置されており、1つの多段増幅回路20に含まれる複数の単位増幅回路21は、一方向に並んで配置されている。複数の単位増幅回路21が並ぶ方向を第1方向D1ということとする。基板面内で、第1方向D1に直交する方向を第2方向D2ということとする。
図2において、左側が多段増幅回路20の前段の側であり、右側が後段の側である。
【0021】
1つの単位増幅回路21に含まれる2つのトランジスタ22は、第2方向D2に並んで配置されている。2つのトランジスタ22を第1方向D1(
図2において左方向)にずらした位置に、2つの入力キャパシタ23が配置されている。2つの入力キャパシタ23を第2方向D2(
図2において下方向)にずらした位置に、ベースバラスト抵抗素子24が配置されている。ベースバラスト抵抗素子24の各々は、2本の高抵抗の金属パターンで構成される。
図2においてベースバラスト抵抗素子24に濃い右上がりのハッチングを付している。
【0022】
トランジスタ22のそれぞれに、ベース電極40B、エミッタ電極40E、及びコレクタ電極40Cが接続されている。
図2において、コレクタ電極40Cに濃い右上がりのハッチングを付している。例えば、ベース電極40Bは、平面視において第1方向D1に長い形状を有しており、2つのエミッタ電極40Eが、ベース電極40Bを第2方向D2に挟む位置に配置されている。コレクタ電極40Cは、平面視において第2方向D2の前段の側に向かって開いたU字状の形状を有しており、ベース電極40B及びエミッタ電極40Eが配置された領域を三方から取り囲んでいる。
【0023】
トランジスタ22ごとに配置されたベース配線41Bが、ベース電極40Bと入力キャパシタ23の一方の電極とを接続している。
図2において、ベース配線41Bに濃い右下がりのハッチングを付している。2つの入力キャパシタ23の他方の電極が、共通のコレクタ配線42Cに接続されている。コレクタ配線42Cは、下層のコレクタ配線41Cを介して前段の2つのトランジスタ22のコレクタ電極40Cに接続されている。
図2において、下層のコレクタ配線41Cに右下がりのハッチングを付し、上層のコレクタ配線42Cに淡い右上がりのハッチングを付している。
【0024】
ベース配線41Bは、ベース電極40Bとの接続箇所から第2方向D2に延び、ベースバラスト抵抗素子24の一方の端部に接続されている。2つのベースバラスト抵抗素子24の他端に、共通のベースバイアス配線32が接続されている。
図2において、ベースバイアス配線32に淡い右下がりのハッチングを付している。
【0025】
図3は、トランジスタ22、入力キャパシタ23、ベースバラスト抵抗素子24、及び配線を、断面構造に着目して示す図である。なお、
図3は、これらの構成要素を特定の切断面で切断した断面を示しているわけではない。
【0026】
半導体からなる基板50の上に、サブコレクタ層51を介してトランジスタ22が配置されている。さらに、基板50の上に、絶縁膜55を介して入力キャパシタ23及びベースバラスト抵抗素子24が配置されている。
【0027】
トランジスタ22は、サブコレクタ層51の上面の一部の領域に積層されたコレクタ層22C、ベース層22B、及びエミッタ層22Eを含む。サブコレクタ層51の上面にコレクタ電極40Cが配置されており、サブコレクタ層51を介してコレクタ層22Cに電気的に接続されている。エミッタ層22Eの上に配置されたエミッタ電極40Eがエミッタ層22Eに電気的に接続されている。エミッタ層22Eの上に配置されたベース電極40Bが、エミッタ層22Eを貫通する合金化領域を介してベース層22Bに電気的に接続されている。
【0028】
入力キャパシタ23は、絶縁膜55の上に配置された下部電極23L、下部電極23Lの上面の一部の領域に配置された誘電体膜23D、及び誘電体膜23Dの上に配置された上部電極23Uを含む。入力キャパシタ23は、金属-絶縁膜-金属(MIM)構造を有する。なお、デカップリングキャパシタ31(
図1)も、入力キャパシタ23と同様の積層構造を有する。ベースバラスト抵抗素子24は、絶縁膜55の上に配置された高抵抗の金属パターンで構成される
【0029】
トランジスタ22、入力キャパシタ23、及びベースバラスト抵抗素子24の上に、層間絶縁膜を介して1層目の配線層M1及び2層目の配線層M2が配置されている。1層目の配線層M1に、コレクタ配線41C、ベース配線41B、エミッタ配線41E、ベースバイアス配線41BBが配置されている。ベース配線41Bは、層間絶縁膜(図示せず)を貫通する複数のビア(
図3において参照符号を付していない。)を介して、ベース電極40B、入力キャパシタ23の上部電極23U、及びベースバラスト抵抗素子24の一方の端部に接続されている。
【0030】
2層目の配線層M2に、コレクタ配線42C、エミッタ配線42E、及びベースバイアス配線42BBが配置されている。2層目のコレクタ配線42Cは、ビア、1層目のコレクタ配線41C、及びビアを介してコレクタ電極40Cに接続されている。コレクタ電極40Cに接続されたコレクタ配線42Cは、次段の単位増幅回路21(
図1)に接続される。前段の単位増幅回路21に接続された2層目のコレクタ配線42Cが、ビア、1層目のコレクタ配線41C、及びビアを介して入力キャパシタ23の下部電極23Lに接続されている。ベースバイアス配線42BBは、ビア、1層目のベースバイアス配線41BB、及びビアを介してベースバラスト抵抗素子24に接続されている。
【0031】
図4は、第1実施例による高周波増幅器の複数の構成要素の平面視における位置関係を示す図である。2つの多段増幅回路20の各々を構成する複数の単位増幅回路21が第1方向D1に並んで配置されている。2つの多段増幅回路20は、第2方向D2に並んで配置されている。
【0032】
一方の多段増幅回路20に接続される複数のデカップリングキャパシタ31は、第1方向D1に並んで配置されており、他方の多段増幅回路20に接続される複数のデカップリングキャパシタ31も、第1方向D1に並んで配置されている。一方の多段増幅回路20に接続された複数のデカップリングキャパシタ31の列と、他方の多段増幅回路20に接続された複数のデカップリングキャパシタ31の列とは、2つの多段増幅回路20を第2方向D2に挟む位置に配置されている。ペアを構成する単位増幅回路21とデカップリングキャパシタ31とは、第2方向D2に並んで配置されている。
【0033】
複数の単位増幅回路21の各々のトランジスタ22に接続されたコレクタ配線41Cが、電源ライン30に連続している。電源ライン30の各々は、コレクタ配線41Cから、接続先(ペアを構成する相手)のデカップリングキャパシタ31に向かって延びる。電源ライン30は、平面視においてデカップリングキャパシタ31の一部分と重なっており、重なり箇所においデカップリングキャパシタ31の一方の電極に接続されている。また、電源ライン30に電源電圧Vccが印加される。
【0034】
複数の単位増幅回路21の各々のトランジスタ22と、次段の単位増幅回路21の入力キャパシタ23までの第1方向D1の最短の距離をL1と標記する。トランジスタ22から測定する距離の起算点は、コレクタ層22C(
図3)の縁とする。コレクタ層22Cの側面がテーパ状に傾斜(傾斜角が90°未満)している場合は、側面の下端の位置を距離の起算点とする。コレクタ層22Cの側面が逆テーパ状に傾斜(傾斜角が90°より大きい)している場合は、側面の上端の位置を距離の起算点とする。入力キャパシタ23までの距離を測定するときの終点は、下部電極23L(
図3)の縁とする。下部電極23Lの側面がテーパ状に傾斜している場合は、側面の下端を、距離を測定するときの終点とする。下部電極23Lの側面が逆テーパ状に傾斜している場合は、側面の上端を、距離を測定するときの終点とする。複数の単位増幅回路21の各々のトランジスタ22と、次段の単位増幅回路21の入力キャパシタ23とを接続するコレクタ配線41C、42Cは、高周波信号に対して伝送線路25(
図1)とみなされる。
【0035】
複数のデカップリングキャパシタ31の各々から、接続先(ペアを構成する相手)の単位増幅回路21のトランジスタ22までの第2方向D2の最短の距離をL2と標記する。デカップリングキャパシタ31から測定する距離の起算点は、デカップリングキャパシタ31の下部電極の縁とする。デカップリングキャパシタ31の下部電極の側面がテーパ状に傾斜している場合は、側面の下端を距離の起算点とする。デカップリングキャパシタ31の下部電極の側面が逆テーパ状に傾斜している場合は、側面の上端を距離の起算点とする。トランジスタ22までの距離を測定するときの終点は、コレクタ層22C(
図3)の縁とする。コレクタ層22Cの側面がテーパ状に傾斜している場合は、側面の下端の位置を、距離を測定するときの終点とする。コレクタ層22Cの側面が逆テーパ状に傾斜している場合は、側面の上端の位置を、距離を測定するときの終点とする。トランジスタ22と、ペアを構成する相手のデカップリングキャパシタ31とを接続する電源ライン30は、高周波信号に対して伝送線路26(
図1)とみなされる。
【0036】
複数のデカップリングキャパシタ31の各々が第1方向D1において占める範囲Acは、接続先の単位増幅回路21のトランジスタ22が占める第1方向D1における範囲Atを包含している。また、範囲Acは、接続先の単位増幅回路21のトランジスタ22から、次段の単位増幅回路のトランジスタ22までの第1方向D1における範囲Ag及び前段の単位増幅回路21のトランジスタ22までの第1方向D1における範囲Agの両方と部分的に重複している。なお、範囲Acは、次段の側の範囲Ag及び前段の側の範囲Agの一方とのみ、部分的に重複していてもよい。すなわち、範囲Acは、次段の側の範囲Ag及び前段の側の範囲Agと部分的に重複していればよい。
【0037】
次に、距離L1及びL2の好ましい値について説明する。
多段増幅回路20の段間のインピーダンス整合をとるために、トランジスタ22と次段の入力キャパシタ23とを接続する伝送線路25(
図1)の長さ、及びトランジスタ22と、接続先のデカップリングキャパシタ31とを接続する伝送線路26の長さを、伝送される高周波信号の波長の1/8程度またはそれ以下にすることが好ましい。
【0038】
以下の考察では、第6世代移動体通信システムでの使用が想定される周波数120GHz以上300GHz以下のサブテラヘルツ帯の高周波信号を増幅すると仮定する。この周波数帯の電波の大気中における波長は1mm以上2.5mm以下である。基板50の誘電率等を考慮すると、基板50に配置された配線を伝送される高周波信号の波長は、約380μm以上960μm以下である。
【0039】
多段増幅回路20の段間のインピーダンス整合をとるために、伝送線路25、26のそれぞれの長さを、伝送線路を伝送される高周波信号の波長約380μm以上960μm以下の1/8程度、またはそれ以下にすることが好ましい。高周波信号の周波数が120GHzである場合、伝送線路25、26のそれぞれの長さを120μm以下にすることが好ましい。伝送線路25、26のこの長さの条件を満たすために、トランジスタ22と次段の入力キャパシタ23までの第1方向D1の距離L1、及びデカップリングキャパシタ31からトランジスタ22までの第2方向D2の距離L2のそれぞれを、120μm以下にすることが好ましい。
【0040】
次に、
図5を参照してデカップリングキャパシタ31のキャパシタンスについて説明する。トランジスタ22と次段の入力キャパシタ23までの第1方向D1の距離L1が120μm以下である場合、デカップリングキャパシタ31の各々の第1方向D1の寸法も距離L1によって制約を受ける。また、デカップリングキャパシタ31の各々の第2方向D2の寸法は、高周波信号の波長に比べて十分短くすることが好ましい。したがって、デカップリングキャパシタ31の各々の面積の上限値が、距離L1や高周波信号の波長によって制限される。
【0041】
図5は、キャパシタの面積とキャパシタンスとの関係を示すグラフである。横軸はキャパシタンスを単位[pF]で表し、縦軸はキャパシタの面積を単位[μm
2]で表す。なお、キャパシタの面積は、上部電極と下部電極とが対向する領域の面積を意味する。誘電体膜の誘電率及び膜厚は、実際に適用することが可能であると思われる値に設定した。
【0042】
距離L1及び高周波信号の波長を考慮すると、デカップリングキャパシタ31の各々の面積の上限は3500μm
2程度であると想定される。この場合、
図5から、デカップリングキャパシタ31の各々のキャパシタンスは1pF以下になる。
【0043】
次に、
図6を参照して、第1実施例による高周波増幅器の出力とゲインとの関係のシミュレーション結果について説明する。
図6は、高周波増幅器の出力とゲインとの関係のシミュレーション結果を示すグラフである。横軸は出力を単位[dBm]で表し、縦軸はゲインを単位[dB]で表す。グラフ中の実線は、
図1に示した1段目から5段目までのデカップリングキャパシタ31のキャパシタンスを0.8pFとした場合のシミュレーション結果を示し、破線は、1段目から3段目までのデカップリングキャパシタ31のキャパシタンスを0.8pFとし、5段目のデカップリングキャパシタ31のキャパシタンスを1.2pFとした場合のシミュレーション結果を示す。5段目のデカップリングキャパシタ31のキャパシタンスを1.2pFとした構成では、4段目にデカップリングキャパシタを配置するスペースがほとんど無くなるため、4段目にはデカップリングキャパシタを配置していない。増幅する高周波信号の周波数は140GHzとした。
図4に示した距離L1を30μmとし、距離L2を23μmとした。
【0044】
5段目のデカップリングキャパシタ31のキャパシタンスを1.2pFとし、4段目にデカップリングキャパシタを配置しない構成より、1段目から5段目までのデカップリングキャパシタ31のキャパシタンスをすべて0.8pFとした構成の方が、ゲインが高くなっていることがわかる。各段のデカップリングキャパシタ31のキャパシタンスを1pF以下にしても、十分なゲイン及び出力が得られることが確認された。
【0045】
各段のデカップリングキャパシタ31のキャパシタンスを1pFより大きくすると、より大きなゲインが得られると考えられるが、1つの段のデカップリングキャパシタ31のキャパシタンスを大きくすると、前段または後段にデカップリングキャパシタを配置するスペースがなくなってしまう。各段のデカップリングキャパシタ31のキャパシタンスを1pF以下にすると、すべての段にデカップリングキャパシタ31を配置することが可能であるとともに、十分なゲインを得ることも可能である。
【0046】
次に、第1実施例の優れた効果について説明する。
第1実施例では、多段増幅回路20の各々が、単位増幅回路21を5段に接続した構成とされているため、十分大きなゲインを実現することができる。特に、サブテラヘルツ帯の高周波信号を増幅する際に十分なゲインを実現するためには、多段増幅回路20の各々を3段以上の構成にすることが好ましい。また、第1実施例では、2つの多段増幅回路20を並列に接続しているため、出力信号の大電力化を図ることが可能である。
【0047】
また、第1実施例では、単位増幅回路21のトランジスタ22から次段の入力キャパシタ23までの第1方向D1の距離L1(
図4)を、サブテラヘルツ帯の高周波信号の波長に対応するまで短くすることにより、段間のインピーダンス整合をとることが容易になる。
【0048】
複数の単位増幅回路21に接続される電源ライン30(
図4)を共通化するとともに、共通の電源ラインにデカップリングキャパシタ31を接続した構成では、多段増幅回路20の段間のインピーダンス整合をとることが困難である。これに対して第1実施例では、多段増幅回路20の単位増幅回路21ごとにデカップリングキャパシタ31が接続されている。さらに、トランジスタ22からデカップリングキャパシタ31までの第2方向D2の距離L2(
図4)を、サブテラヘルツ帯の高周波信号の波長に対応するまで短くしている。この構成を採用することにより、段間のインピーダンス整合をとることが容易になる。
【0049】
各段のデカップリングキャパシタ31が第1方向D1において占める範囲Ac(
図4)が、トランジスタ22が占める範囲Atを包含し、かつ前段側または次段側のトランジスタ22までの範囲Agと部分的に重複している。このような構成にすることにより、トランジスタ22から次段の入力キャパシタ23までの第1方向D1の距離L1を、サブテラヘルツ帯の高周波信号の波長に対応するまで短くしても、所望のキャパシタンスを確保することが可能になる。
【0050】
なお、
図4に示した例では、デカップリングキャパシタ31から見て第2方向D2に遠い方のトランジスタ22までの距離が、距離L2より長くなっているが、2つのトランジスタ22の間隔をある程度狭くすれば、2つのトランジスタ22の間隔は、インピーダンス整合をとる際の大きな問題にはならない。
【0051】
次に、第1実施例の変形例について説明する。
第1実施例では、2つの多段増幅回路20を並列に接続しているが、3つ以上の多段増幅回路20を並列に接続してもよい。並列に接続された多段増幅回路20の数を増やすことにより、出力電力をより大きくすることが可能になる。多段増幅回路20の並列接続数を3つ以上にする場合、多段増幅回路20の各々に接続される複数のデカップリングキャパシタ31の列を、接続先の多段増幅回路20に沿うように(並走するように)配置するとよい。
【0052】
第1実施例では、単位増幅回路21の各々が、相互に並列に接続された2つのトランジスタ22を含んでいるが、単位増幅回路21の各々が1つのトランジスタ22を含むようにしてもよい。
【0053】
第1実施例では、多段増幅回路20の各々に含まれる複数の単位増幅回路21が第1方向D1に平行な一直線上に並んで配置されているが、必ずしも一直線上に配置される必要はない。例えば、第1方向D1に並ぶ複数の単位増幅回路21に、順番に通し番号を付したとき、偶数番目の単位増幅回路21を、奇数番目の単位増幅回路21に対して第2方向D2にずらして配置してもよい。このような配置は、「千鳥状の配置」ということができる。この場合も、複数の単位増幅回路21が第1方向D1に並んで配置されているということができる。
【0054】
第1実施例では、トランジスタ22として、ヘテロ接合バイポーラトランジスタを用いているが、その他に、電界効果トランジスタ(FET)、高電子移動度トランジスタ(HEMT)等を用いてもよい。トランジスタ22としてFET、HEMT等を用いる場合は、本明細書の説明で用いたトランジスタ22のベース、コレクタ、及びエミッタを、それぞれゲート、ドレイン、ソースと読み替えればよい。
【0055】
[第2実施例]
次に、
図7及び
図8を参照して第2実施例による高周波増幅器について説明する。以下、
図1から
図6までの図面を参照して説明した第1実施例による高周波増幅器と共通の構成については説明を省略する。
【0056】
図7は、第2実施例による高周波増幅器の等価回路図である。第2実施例では、多段増幅回路20ごとに、複数の単位増幅回路21のそれぞれに接続された電源ライン30が1本の電源ライン30Bに共通化されている。共通化された電源ライン30Bとグランド電位との間に共通デカップリングキャパシタ36が接続されている。すなわち、共通デカップリングキャパシタ36は、単位増幅回路21から電源ライン30、30Bに沿って、デカップリングキャパシタ31の接続箇所より遠い箇所に接続されている。共通デカップリングキャパシタ36のキャパシタンスは、単位増幅回路21ごとに配置されたデカップリングキャパシタ31の各々のキャパシタンスより大きい。
【0057】
図8は、第2実施例による高周波増幅器の複数の構成要素の平面視における位置関係を示す図である。平面視において、共通化された電源ライン30Bと重なるように共通デカップリングキャパシタ36が配置されている。電源ライン30Bは、共通デカップリングキャパシタ36との重なり箇所において、共通デカップリングキャパシタ36の一方の電極に接続されている。
【0058】
共通デカップリングキャパシタ36は、第1方向D1に関して多段増幅回路20が占める範囲のほぼ中央に配置されている。また、第2方向D2に関して、共通デカップリングキャパシタ36は、多段増幅回路20から見て複数のデカップリングキャパシタ31の列よりも遠い位置に配置されている。共通デカップリングキャパシタ36の面積は、単位増幅回路21ごとに配置されたデカップリングキャパシタ31の各々の面積より大きい。
【0059】
次に、第2実施例の優れた効果について説明する。
第2実施例においても第1実施例と同様に、出力信号の大電力化を図り、かつ段間のインピーダンス整合を容易に行うことができるという優れた効果が得られる。さらに第2実施例では、電源ライン30Bに共通デカップリングキャパシタ36を接続することにより、電源ノイズを抑制する効果を高めることができる。
【0060】
なお、単位増幅回路21から見て共通デカップリングキャパシタ36より近い位置において、デカップリングキャパシタ31が電源ライン30に接続されているため、共通デカップリングキャパシタ36が段間のインピーダンス整合に与える影響は小さい。
【0061】
次に、第2実施例の変形例について説明する。
第2実施例では、多段増幅回路20ごとに1つの共通デカップリングキャパシタ36を接続しているが、多段増幅回路20の各々に、複数の共通デカップリングキャパシタ36を接続してもよい。例えば、1つの多段増幅回路20に2つの共通デカップリングキャパシタ36を接続してもよい。
【0062】
[第3実施例]
次に、
図9を参照して第3実施例によるアンテナモジュールについて説明する。第3実施例によるアンテナモジュールは、第1実施例または第2実施例による高周波増幅器を搭載しており、サブテラヘルツ帯の高周波信号の送受信を行う。
【0063】
図9は、第3実施例によるアンテナモジュール230のブロック図である。第3実施例によるアンテナモジュール230は、高周波信号処理回路(RFIC)200、複数の放射素子212、及び高周波信号処理回路200と複数の放射素子212のそれぞれとを接続する複数の給電線211を含む。放射素子212の各々の共振周波数は、サブテラヘルツ帯の周波数(例えば120GHz以上300GHz以下)である。
【0064】
高周波信号処理回路200は、中間周波増幅器201、アップダウンコンバート用ミキサ202、送受信切替スイッチ203、パワーディバイダ204、複数の移相器205、複数のアッテネータ206、複数の送受信切替スイッチ207、複数のパワーアンプ208、複数のローノイズアンプ209、及び複数の送受信切替スイッチ210を含む。複数の送受信切替スイッチ210が、それぞれ複数の給電線211を介して複数の放射素子212に接続されている。複数のパワーアンプ208のそれぞれに、第1実施例または第2実施例による高周波増幅器が用いられる。
【0065】
まず、送信機能について説明する。ベースバンド信号処理回路100から、中間周波増幅器201を介してアップダウンコンバート用ミキサ202に、中間周波信号が入力される。アップダウンコンバート用ミキサ202は、中間周波信号をアップコンバートして高周波信号を生成する。生成された高周波信号は、送受信切替スイッチ203を介してパワーディバイダ204に入力される。パワーディバイダ204で分配された高周波信号の各々が、移相器205、アッテネータ206、送受信切替スイッチ207、パワーアンプ208、送受信切替スイッチ210、給電線211を経由して複数の放射素子212の各々に入力される。
【0066】
次に、受信機能について説明する。放射素子212の各々で受信された高周波信号が、給電線211、送受信切替スイッチ210、ローノイズアンプ209、送受信切替スイッチ207、アッテネータ206、移相器205を経由してパワーディバイダ204に入力される。パワーディバイダ204で合成された高周波信号が、送受信切替スイッチ203を経由して、アップダウンコンバート用ミキサ202に入力される。アップダウンコンバート用ミキサ202は、高周波信号をダウンコンバートして中間周波信号を生成する。生成された中間周波信号は、中間周波増幅器201を経由してベースバンド信号処理回路100に入力される。なお、アップダウンコンバート用ミキサ202が、高周波信号を直接ベースバンド信号にダウンコンバートするダイレクトコンバージョン方式を採用してもよい。
【0067】
次に、第3実施例の優れた効果について説明する。
第3実施例によるアンテナモジュール230の複数のパワーアンプ208のそれぞれに、第1実施例または第2実施例による高周波増幅器が用いられているため、サブテラヘルツ帯において、出力信号の大電力化を図り、かつパワーアンプ208の段間のインピーダンス整合を容易に行うことができるという優れた効果が得られる。
【0068】
[第4実施例]
次に、
図10を参照して第4実施例によるレーダモジュールについて説明する。第4実施例によるレーダモジュールは、第1実施例または第2実施例による高周波増幅器を搭載しており、サブテラヘルツ帯の電波を用いる。例えば、このレーダモジュールは、TDMA(Time Divisional Multiple Access)、FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)、及びMIMO(Multiple-Input Multiple-Output)の機能を有する。
【0069】
図10は、第4実施例によるレーダモジュール300のブロック図である。第4実施例によるレーダモジュール300は、複数の送信アンテナ301T、複数の受信アンテナ301R、複数のパワーアンプ302、複数のスイッチ303、複数のローノイズアンプ304、複数のミキサ305、及びローカル発振器306を含む。パワーアンプ302として、第1実施例または第2実施例による高周波増幅器が用いられる。送信アンテナ301T及び受信アンテナ301Rの各々の共振周波数は、例えばサブテラヘルツ帯(例えば、120GHz以上300GHz以下)の周波数である。
【0070】
複数の送信アンテナ301Tの各々は、パワーアンプ302及びスイッチ303を介してローカル発振器306に接続されている。複数の受信アンテナ301Rの各々は、ローノイズアンプ304を介してミキサ305に接続されている。信号処理回路310が、レーダモジュール300を制御するとともに、レーダモジュール300で得られた信号の処理を行う。
【0071】
次に、レーダモジュール300の機能について説明する。
ローカル発振器306が、信号処理回路310から入力されるチャープ制御信号Scに基づいて、時間と共に周波数が線形に上昇または低下するローカル信号SLを出力する。ローカル信号SLは、複数のスイッチ303の各々を介してパワーアンプ302に入力されるとともに、複数のミキサ305の各々に入力される。
【0072】
スイッチ303は、信号処理回路310からのスイッチング制御信号Ssによってオンオフ制御される。スイッチ303がオンになると、オンになったスイッチ303に接続されたパワーアンプ302にローカル信号SLが入力される。パワーアンプ302で増幅されたローカル信号SLが送信アンテナ301Tに供給され、送信アンテナ301Tから放射される。
【0073】
送信アンテナ301Tから放射された電波がターゲットで反射されて受信アンテナ301Rの各々で受信される。受信アンテナ301Rで受信されたエコー信号Seが、それぞれローノイズアンプ304で増幅されてミキサ305に入力される。ミキサ305の各々は、増幅されたエコー信号Seとローカル信号SLとを乗算することにより、ビート信号Sbを生成する。生成されたビート信号Sbが信号処理回路310に入力される。
【0074】
信号処理回路310は、複数のミキサ305から入力された複数のビート信号Sbに基づいて、ターゲットまでの距離及びターゲットが存在する方位を求める。すなわち、信号処理回路310は、送信アンテナ301Tから送信する高周波信号と受信アンテナ301Rで受信されたエコー信号Seとに基づいてターゲットまでの距離及びターゲットが存在する方位を求める。
【0075】
次に、第4実施例の優れた効果について説明する。
第4実施例によるレーダモジュール300の複数のパワーアンプ302のそれぞれに、第1実施例または第2実施例による高周波増幅器が用いられているため、サブテラヘルツ帯において、出力信号の大電力化を図り、かつパワーアンプ302の段間のインピーダンス整合を容易に行うことができるという優れた効果が得られる。これにより、サブテラヘルツ帯の電波を用いたレーダモジュールを実現することができる。
【0076】
第4実施例では、FMCW方式のレーダモジュールについて説明したが、第1実施例または第2実施例による高周波増幅器は、その他の方式のレーダモジュールのパワーアンプとして用いることも可能である。
【0077】
上述の各実施例は例示であり、異なる実施例で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。複数の実施例の同様の構成による同様の作用効果については実施例ごとには逐次言及しない。さらに、本発明は上述の実施例に制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【0078】
本明細書に記載した上記実施例に基づき、以下の発明を開示する。
<1>
基板と、
前記基板に配置され、多段に接続された複数の単位増幅回路を含む複数の多段増幅回路と、
前記基板に配置され、前記複数の単位増幅回路に電源を供給する電源ラインと、
前記基板に配置され、前記電源ラインに接続された複数のデカップリングキャパシタと
を備え、
前記複数の単位増幅回路の各々は、入力ノード、出力ノード、少なくとも1つのトランジスタ、前記入力ノードと前記トランジスタのベースまたはゲートとの間に接続された入力キャパシタを含み、
前記複数の多段増幅回路は相互に並列に接続されており、
前記複数の多段増幅回路の各々の前記複数の単位増幅回路は、前記基板の上に第1方向に並んで配置されており、前記複数の多段増幅回路は、前記第1方向と直交する第2方向に並んで配置されており、
前記複数の単位増幅回路の各々の前記トランジスタと、次段の前記単位増幅回路の前記入力キャパシタまでの前記第1方向の最短の距離は120μm以下であり、
前記複数の単位増幅回路のそれぞれに対して前記デカップリングキャパシタが接続されており、
前記複数のデカップリングキャパシタの各々が前記第1方向において占める範囲は、前記複数のデカップリングキャパシタの各々の接続先の前記単位増幅回路に含まれる前記トランジスタから次段の前記単位増幅回路に含まれる前記トランジスタまでの範囲、及び前記複数のデカップリングキャパシタの各々の接続先の前記単位増幅回路に含まれる前記トランジスタから前段の前記単位増幅回路に含まれる前記トランジスタまでの範囲の少なくとも一部分と重なっている高周波増幅器。
【0079】
<2>
前記複数のデカップリングキャパシタの各々から、前記複数のデカップリングキャパシタの各々の接続先の前記単位増幅回路に含まれる前記トランジスタまでの前記第2方向の最短の距離が120μm以下である<1>に記載の高周波増幅器。
【0080】
<3>
前記単位増幅回路の各々は前記トランジスタを2個含み、前記単位増幅回路の各々に含まれる2個の前記トランジスタは、前記第2方向に並んで配置されて相互に並列に接続されている<1>または<2>に記載の高周波増幅器。
【0081】
<4>
前記複数の多段増幅回路は2つであり、前記複数の多段増幅回路の各々に接続された前記複数のデカップリングキャパシタは前記第1方向に並んで配置されており、
一方の多段増幅回路に接続された前記複数のデカップリングキャパシタの列と、他方の多段増幅回路に接続された前記複数のデカップリングキャパシタの列とは、前記複数の多段増幅回路を前記第2方向に挟む位置に配置されている<1>乃至<3>のいずれか1つに記載の高周波増幅器。
【0082】
<5>
前記複数のデカップリングキャパシタの各々のキャパシタンスは1pF以下である<1>乃至<4>のいずれか1つに記載の高周波増幅器。
【0083】
<6>
さらに、前記複数の多段増幅回路の各々の複数の前記単位増幅回路に対して1つ配置されて、前記電源ラインに接続された共通デカップリングキャパシタを備え、前記共通デカップリングキャパシタは、前記単位増幅回路から前記電源ラインに沿って、前記デカップリングキャパシタの接続箇所より遠い箇所に接続されている<1>乃至<5>のいずれか1つに記載の高周波増幅器。
【0084】
<7>
<1>乃至<6>のいずれか1つに記載の高周波増幅器と、
前記複数の多段増幅回路で増幅された高周波信号が入力され、共振周波数が120GHz以上300GHz以下である放射素子と
を備えたアンテナモジュール。
【0085】
<8>
<1>乃至<6>のいずれか1つに記載の高周波増幅器と、
前記高周波増幅器で増幅された高周波信号を電波として放射する複数の送信アンテナと、
前記複数の送信アンテナから放射され、ターゲットで反射された電波を受信する複数の受信アンテナと、
前記複数の送信アンテナで送信する高周波信号と前記複数の受信アンテナで受信されたエコー信号とに基づいてターゲットまでの距離及びターゲットが存在する方位を求める信号処理回路と
を備えたレーダモジュール。
【符号の説明】
【0086】
20 多段増幅回路
21 単位増幅回路
21in 入力ノード
21out 出力ノード
22トランジスタ
22B ベース層
22C コレクタ層
22E エミッタ層
23 入力キャパシタ
23D 誘電体膜
23L 下部電極
23U 上部電極
24 ベースバラスト抵抗素子
25、26 伝送線路
30、30B 電源ライン
31 デカップリングキャパシタ
32 ベースバイアス配線
36 共通デカップリングキャパシタ
40B ベース電極
40C コレクタ電極
40E エミッタ電極
41B ベース配線
41BB ベースバイアス配線
41C コレクタ配線
41E エミッタ配線
42BB 2層目のベースバイアス配線
42C 2層目のコレクタ配線
42E 2層目のエミッタ配線
50 基板
51 サブコレクタ層
55 絶縁膜
100 ベースバンド信号処理回路
200 高周波信号処理回路
201 中間周波増幅回路
202 アップダウンコンバート用ミキサ
203 送受信切替スイッチ
204 パワーディバイダ
205 移相器
206 アッテネータ
207 送受信切替スイッチ
208 パワーアンプ
209 ローノイズアンプ
210 送受信切替スイッチ
211 給電線
212 放射素子
230 アンテナモジュール
300 レーダモジュール
301R 受信アンテナ
301T 送信アンテナ
302 パワーアンプ
303 スイッチ
304 ローノイズアンプ
305 ミキサ
306 ローカル発振器
310 信号処理回路