(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034861
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】チョコレート生地、チョコレート、及びチョコレート菓子
(51)【国際特許分類】
A23G 1/32 20060101AFI20240306BHJP
A23G 1/00 20060101ALI20240306BHJP
A23G 1/36 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
A23G1/32
A23G1/00
A23G1/36
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139385
(22)【出願日】2022-09-01
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】307013857
【氏名又は名称】株式会社ロッテ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】村松 美紀
(72)【発明者】
【氏名】鮫島 一輝
(72)【発明者】
【氏名】是永 春奈
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅樹
【テーマコード(参考)】
4B014
【Fターム(参考)】
4B014GB01
4B014GG07
4B014GG11
4B014GG14
4B014GG18
4B014GK03
4B014GK05
4B014GK12
4B014GL07
4B014GP01
4B014GP12
4B014GP14
(57)【要約】
【課題】カカオ感及びミルク感のバランスに優れたチョコレートの提供。
【解決手段】カカオマスと、全粉乳と、クリームパウダーと、バターミルクパウダーと、を含む、チョコレート生地。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カカオマスと、
全粉乳と、
クリームパウダーと、
バターミルクパウダーと、
を含む、チョコレート生地。
【請求項2】
前記全粉乳の量が、前記チョコレート生地を基準として、5.0~20.0質量%であり、
前記クリームパウダーの量が、前記チョコレート生地を基準として、1.0~8.2質量%であり、
前記バターミルクパウダーの量が、前記チョコレート生地を基準として、1.0~9.5質量%である、請求項1に記載のチョコレート生地。
【請求項3】
前記全粉乳の量が、前記チョコレート生地を基準として、10.0~13.3質量%であり、
前記クリームパウダーの量が、前記チョコレート生地を基準として、1.5~3.4質量%であり、
前記バターミルクパウダーの量が、前記チョコレート生地を基準として、3.0~8.2質量%である、請求項1に記載のチョコレート生地。
【請求項4】
前記カカオマスの量が、前記チョコレート生地を基準として、35~55質量%である、請求項1に記載のチョコレート生地。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のチョコレート生地を含む、チョコレート。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載のチョコレート生地を含む、チョコレート菓子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チョコレート生地、チョコレート、及びチョコレート菓子に関する。
【背景技術】
【0002】
チョコレートに関して、様々な製品及びその製造方法が知られている。例えば、特許文献1は、「カカオマス由来の好ましくない香味成分を低減させ、乳成分由来の好ましい香味を保持する油脂性菓子生地の製造方法」の提供を課題として、「カカオマスを含み、且つ14重量%以上の乳固形分を含有する油脂性菓子生地の製造方法おいて、原材料を2つに分割し、第1油脂性菓子生地と第2油脂性菓子生地を、各々異なる条件でコンチングを実施して別々に調製した後に、前記両油脂性菓子生地を混合することを特徴とする油脂性菓子生地の製造方法。」を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
チョコレートの新しい味わいとして、カカオ感及びミルク感の両方のバランスに優れたチョコレートが求められている。ここで言うカカオ感とは、カカオ分が多めに含まれていながら、(カカオ由来の香ばしさやコク感はそのままに)カカオの苦味が悪目立ちしないことである。また、ミルク感とは、生乳感のことである。カカオ感を高める方法としては、通常カカオ原料を多く配合することが挙げられる。しかし、この方法ではカカオ由来の苦味が目立ち、同時にチョコレートのミルク感を感じにくくなる。一方、ミルク感を高める方法としては、全粉乳を多く配合することが挙げられるが、この方法ではカカオの配合量が相対的に下がってしまうためカカオ感を感じにくくなってしまう。このように、カカオ感とミルク感のバランスに優れたチョコレートを製造することは困難であった。
【0005】
そこで、本発明は、カカオ感及びミルク感のバランスに優れたチョコレート生地、チョコレート(特にミルクチョコレート)、及びチョコレート菓子(以下、チョコレート生地、チョコレート、及びチョコレート菓子をまとめて「チョコレート等」という。)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等が鋭意検討した結果、カカオマスに加えて、乳製品として、全粉乳、クリームパウダー、及びバターミルクパウダーの全てを使用することにより、カカオ感及びミルク感のバランスに優れたチョコレート等が得られることを見出した。
【0007】
なお、特許文献1には、チョコレートの成分として、全粉乳、クリームパウダー、及びバターミルクパウダーが例示されているものの、これら全てを使用することは開示されていない。
【0008】
本発明は以下の実施形態を含む。
[1]
カカオマスと、
全粉乳と、
クリームパウダーと、
バターミルクパウダーと、
を含む、チョコレート生地。
[2]
前記全粉乳の量が、前記チョコレート生地を基準として、5.0~20.0質量%であり、
前記クリームパウダーの量が、前記チョコレート生地を基準として、1.0~8.2質量%であり、
前記バターミルクパウダーの量が、前記チョコレート生地を基準として、1.0~9.5質量%である、[1]に記載のチョコレート生地。
[3]
前記全粉乳の量が、前記チョコレート生地を基準として、10.0~13.3質量%であり、
前記クリームパウダーの量が、前記チョコレート生地を基準として、1.5~3.4質量%であり、
前記バターミルクパウダーの量が、前記チョコレート生地を基準として、3.0~8.2質量%である、[1]又は[2]に記載のチョコレート生地。
[4]
前記カカオマスの量が、前記チョコレート生地を基準として、35~55質量%である、[1]~[3]のいずれかに記載のチョコレート生地。
[5]
[1]~[4]のいずれかに記載のチョコレート生地を含む、チョコレート。
[6]
[1]~[4]のいずれかに記載のチョコレート生地を含む、チョコレート菓子。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、カカオ感及びミルク感のバランスに優れたチョコレート等を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0011】
<定義>
「チョコレート類の表示に関する公正競争規約」
カカオマス、チョコレート生地、チョコレート、チョコレート菓子、及びミルクチョコレートの定義は、「チョコレート類の表示に関する公正競争規約」(令和3年12月10日一部変更)に従う。これらの具体的な定義は以下の通りである。また、以下の定義において記載されている用語の定義も前記規約に従う。
【0012】
「カカオマス」とは、カカオニブ(カカオビーンズからシェルを技術的に可能な限り除いたものをいう。)を、そのいかなる構成分も除去又は添加することなく、機械的方法により磨砕したもの(アルカリ処理等をしたものを含む。)を意味する。
【0013】
「チョコレート生地」とは、カカオビーンズから調製したカカオマス、ココアバター、ココアケーキ又はココアパウダーを原料とし、必要により糖類、乳製品、ココアバター以外の食用油脂、香料等を加え、通常の工程を経て製造したものであって、
カカオ分が全重量の35パーセント以上(ココアバターが全重量の18パーセント以上)であって、水分が全重量の3パーセント以下のもの(ただし、カカオ分が全重量の21パーセントを下らず(ココアバターが全重量の18パーセント以上)、かつ、カカオ分と乳固形分の合計が全重量の35パーセントを下らない範囲内(乳脂肪が全重量の3パーセント以上)で、カカオ分の代わりに、乳固形分を使用することができる。)を意味する。
【0014】
「チョコレート」とは、チョコレート生地のみのもの及びチョコレート生地が全重量の60パーセント以上のチョコレート加工品を意味する。
【0015】
「チョコレート菓子」とは、チョコレート生地が全重量の60パーセント未満のチョコレート加工品を意味する。
【0016】
「ミルクチョコレート」とは、チョコレートのうちチョコレート生地の乳固形分がチョコレート生地の重量の14パーセント以上(乳脂肪分がチョコレート生地の重量の3パーセント以上)のものを意味する。
【0017】
「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」
「全粉乳」、「クリームパウダー」、及び「バターミルクパウダー」の定義は、「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」(令和2年12月4日一部改正)に従う。これらの具体的な定義は以下の通りである。また、以下の定義において記載されている用語の定義も前記省令に従う。
【0018】
「全粉乳」とは、生乳、牛乳、特別牛乳又は生水牛乳からほとんど全ての水分を除去し、粉末状にしたものを意味する。
【0019】
「クリームパウダー」とは、生乳、牛乳、特別牛乳又は生水牛乳の乳脂肪分以外の成分を除去したものからほとんど全ての水分を除去し、粉末状にしたものを意味する。
【0020】
「バターミルクパウダー」とは、バターミルクからほとんどすべての水分を除去し、粉末状にしたものを意味する。
【0021】
<チョコレート生地>
本発明の一実施形態は、カカオマスと、全粉乳と、クリームパウダーと、バターミルクパウダーと、を含む、チョコレート生地に関する。
【0022】
本実施形態に係るチョコレート生地では、カカオマスに加えて、全粉乳、クリームパウダー、及びバターミルクパウダーの全てを使用することにより、優れたバランスでカカオ感及びミルク感を得ることができる。
【0023】
優れたバランスでカカオ感及びミルク感が得られる理由としては、異なる風味を持つ乳原料を混ぜ合わせることで、チョコレート等におけるミルク感を感じるタイミングがずれ、カカオ感を感じた後にミルク感を感じるようになることが想定される。ただし、本発明は上記想定理由によって何ら限定されるものではない。
【0024】
カカオマスの量は、チョコレート生地を基準として、好ましくは35~55質量%であり、より好ましくは37.5~52.5質量%であり、更に好ましくは40~50質量%である。
【0025】
全粉乳の量は、チョコレート生地を基準として、好ましくは3.0~25.0質量%であり、より好ましくは5.0~20.0質量%であり、更に好ましくは10.0~13.3質量%である。
【0026】
クリームパウダーの量は、チョコレート生地を基準として、好ましくは0.5~10.0質量%であり、より好ましくは1.0~8.2質量%であり、更に好ましくは1.5~3.4質量%である。
【0027】
バターミルクパウダーの量は、チョコレート生地を基準として、好ましくは0.5~10.0質量%であり、より好ましくは1.0~9.5質量%であり、更に好ましくは3.0~8.2質量%である。
【0028】
カカオマス、全粉乳、クリームパウダー、及びバターミルクパウダーの量を前記範囲内とすることにより、カカオ感及びミルク感のバランスの良さをより向上させることができる。
【0029】
チョコレート生地は、更なる成分を含んでいてもよい。更なる成分としては、例えば、ココアバター、ココアケーキ、ココアパウダー、糖類、乳製品(全粉乳、クリームパウダー、及びバターミルクパウダーを除く。)、食用油脂(ココアバターを除く。)、乳化剤、及び香料が挙げられる。
【0030】
特に限定するものではないが、チョコレート生地における乳固形分の量が、チョコレート生地を基準として、14質量%以上であり、かつ、チョコレート生地における乳脂肪分の量が、チョコレート生地を基準として、3質量%以上であることが好ましい。
【0031】
<チョコレート及びチョコレート菓子>
本発明の一実施形態は、前記チョコレート生地を含む、チョコレートに関する。
本発明の一実施形態は、前記チョコレート生地を含む、チョコレート菓子に関する。
【0032】
チョコレート及びチョコレート菓子としては、例えば、チョコレート生地に可食物を混合し又は練り込んだもの、チョコレート生地で殻を作り、内部に可食物を入れたもの、可食物をチョコレート生地で被覆したもの、チョコレート生地を可食物で被覆したもの、及びチョコレート生地を可食物と接合したもの、が挙げられる。可食物としては、例えば、ナッツ、フルーツ、液状物、キャンディー、ビスケット、及び糖類が挙げられる。
【実施例0033】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれに限定されるものではない。
【0034】
<チョコレートの製造>
ココアバター8質量%、砂糖28質量%、食用油脂1質量%、乳化剤0.2質量%、及び香料0.1質量%、並びに下記表1に示す量のカカオマス、全粉乳、クリームパウダー、及びバターミルクパウダーを使用して、チョコレートを製造した。下記実施例及び比較例のチョコレートは、上記の「チョコレート生地」の定義を満たすものである。
【表1】
【0035】
<チョコレートの評価>
本評価について事前に訓練を受けた7人の官能評価パネリストが、各実施例及び比較例で製造したチョコレートを試食し、甘味の強度、苦味の強度、生乳感の強度、及び香り立ち(ミルク感及びバニラ感の香り)の速度について評価を行った。各評価項目の評価基準及び評価結果は以下のとおりであり、比較例1のチョコレートをコントロールとした。
【0036】
[甘味の強度]
3点:コントロールよりも顕著に強い
2点:コントロールよりも強い
1点:コントロールよりも少し強い
0点:コントロールと同程度
【0037】
【0038】
[苦味の強度]
3点:コントロールよりも顕著に弱い
2点:コントロールよりも弱い
1点:コントロールよりも少し弱い
0点:コントロールと同程度
【0039】
【0040】
[生乳感の強度]
3点:コントロールよりも顕著に強い
2点:コントロールよりも強い
1点:コントロールよりも少し強い
0点:コントロールと同程度
【0041】
【0042】
[香り立ちの速度]
3点:コントロールよりも顕著に速い
2点:コントロールよりも速い
1点:コントロールよりも少し速い
0点:コントロールと同程度
【0043】
【0044】
各実施例及び比較例のチョコレートの組成と評価を表6にまとめる。この結果から理解されるように、カカオマスに加えて、全粉乳、クリームパウダー、及びバターミルクパウダーの全てを使用することにより、苦味が抑えられた程よいカカオ感及びミルク感のバランスに優れたチョコレートを製造することができた。
【表6】