(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034862
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】薬液注入装置
(51)【国際特許分類】
A61M 5/178 20060101AFI20240306BHJP
A61M 5/31 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
A61M5/178
A61M5/31 530
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139386
(22)【出願日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】591072950
【氏名又は名称】立花 克郎
(71)【出願人】
【識別番号】522348941
【氏名又は名称】貴田 浩志
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】立花 克郎
(72)【発明者】
【氏名】貴田 浩志
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD07
4C066EE06
4C066FF05
4C066QQ85
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明の目的は、患者の患部に付与された薬液の効果を効率良く発現するための薬液注入装置を提供することである。
【解決手段】本発明の薬液注入装置1は、薬液が充填される本体2と、本体の先端に設けられ、本体から患者の患部に薬液を付与する薬液付与部3と、本体に取り付けられ、本体内の薬液を薬液付与部に供給する供給装置4と、薬液付与部の近傍に設けられた超音波振動子5と、を有し、超音波振動子は、薬液付与部から薬液が患部に付与された後に、患部に超音波を付与するように構成されていることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液が充填される本体と、
前記本体の先端側に設けられ、前記本体から患者の患部に前記薬液を付与する薬液付与部と、
前記本体の基端側に取り付けられ、前記本体内の前記薬液を前記薬液付与部に供給する供給装置と、
前記薬液付与部の近傍に設けられた超音波振動子と、を有し、
前記超音波振動子は、前記薬液付与部から前記患部に付与される前記薬液に超音波を付与するように構成されていることを特徴とする薬液注入装置。
【請求項2】
前記超音波振動子に電力を供給するための電力供給部と、前記超音波振動子に前記電力供給部からの電力を供給または遮断するスイッチと、前記電力供給部を収容するホルダーとを、さらに有し、
前記ホルダーは、前記本体および前記薬液付与部の少なくとも一部を収容可能に構成されている請求項1に記載の薬液注入装置。
【請求項3】
前記超音波振動子は、前記患部に直接的または間接的に接触するように構成されている請求項2に記載の薬液注入装置。
【請求項4】
前記薬液付与部は、前記薬液を前記患部に注入する注射針を備えており、
前記超音波振動子は、前記注射針が貫通する開口を備えたリング状に形成されている請求項3に記載の薬液注入装置。
【請求項5】
前記薬液付与部および前記超音波振動子は、前記本体に着脱可能に構成されている請求項1に記載の薬液注入装置。
【請求項6】
前記超音波振動子の前記本体と反対側に設けられた接触センサと、
前記接触センサからの信号を受信する制御部と、をさらに有し、
前記制御部は、前記接触センサが前記患部に接触したことを感知したことを示す前記信号を受信した後、前記スイッチをONにして、前記超音波振動子が、前記接触センサを介して前記超音波を前記患部に自動的に付与するように構成されている請求項2ないし4のいずれかに記載の薬液注入装置。
【請求項7】
前記超音波振動子は、前記本体に対して、前記注射針の延在方向に移動可能に構成されている請求項4に記載の薬液注入装置。
【請求項8】
前記スイッチは、前記超音波振動子の前記本体側に設けられた第1の導電部材と、前記本体の前記先端側に設けられた第2の導電部材とを備え、
前記第1の導電部材と前記第2の導電部材とが接触することにより、前記超音波振動子に前記電力供給部からの電力を供給する請求項7に記載の薬液注入装置。
【請求項9】
前記超音波振動子の前記本体と反対側に取り付けられたコイルばねをさらに有し、
前記コイルばねを介して、前記超音波振動子からの前記超音波を前記患部に付与するように構成されている請求項2ないし5のいずれかに記載の薬液注入装置。
【請求項10】
前記ホルダーは、前記スイッチに加え、さらに前記供給装置を設け、
前記ホルダーは、前記本体および前記薬液付与部を着脱可能に収容するように構成されている請求項2ないし5のいずれかに記載の薬液注入装置。
【請求項11】
薬液が充填される本体と、
前記本体の先端側に設けられ、前記本体から患者の患部に前記薬液を付与する薬液付与部と、
前記本体の基端側に取り付けられ、前記本体内の前記薬液を前記薬液付与部に供給する供給装置と、
前記薬液付与部の近傍に設けられた超音波振動子と、
前記超音波振動子に電力を供給するための電力供給部と、
前記超音波振動子に前記電力供給部からの電力を供給または遮断するスイッチと、
前記超音波振動子の前記本体と反対側に設けられた接触センサと、
前記接触センサからの信号を受信する、コンピュータを含む制御部と、を有する薬液注入装置の前記超音波振動子からの超音波の発生およびその停止を制御する制御プログラムであって、
前記制御部が、前記接触センサが前記患部に接触したことを感知したことを示す前記信号を受信した後、前記スイッチをONにして、前記超音波振動子が、前記接触センサを介して超音波を前記患部に付与するステップと、前記スイッチをONにしてから所定時間経過後に、前記スイッチをOFFにして、前記超音波振動子からの前記超音波の発生を停止するステップと、を前記コンピュータに実行させることを特徴とする制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の患部に薬液を注入する薬液注入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、世界的に流行しているSARS-CoV-2ウイルス感染症に対し、mRNAワクチンの臨床応用が実現され、さらなる有効性の向上を目指した研究が急速に進められている。
mRNAは、DNAと比較して、迅速なタンパク質発現、ゲノム挿入リスクが無いといったメリットがある。mRNAは新興感染症に対する遺伝子ワクチンの他、がんワクチンへの応用、更に広範な応用の可能性がある。酵素補充療法や成長因子など分泌因子を局所又は全身への徐放、さらに標的細胞のシグナル制御、分化誘導などの再生医療やゲノム編集治療への応用も期待される。
【0003】
一方でmRNAは生体内、特に細胞外では極めて不安定で、直接注射しても細胞膜を超えて、細胞内へ送達することはできず、生体内の酵素であるRNaseにより、速やかに分解されてしまうという大きな問題がある。
現状では、mRNAを人工脂質(LNP)もしくは高分子ミセルからなるドラッグデリバリーシステム(DDS)キャリアに搭載して、酵素分解を回避し、さらにキャリアにポリエチレングリコール(PEG)修飾などを施し生体内滞留性を向上させている。しかしながら、キャリア搭載されたmRNAの導入効率は必ずしも高くはなく、目標導入量に対して大量のmRNA注射を必要とする。またキャリアの人工脂質による肝・腎障害や、滞留性向上のために用いられるPEGに対するアレルギーなどの副反応の課題も残されている。
【0004】
また、上記のような特性を有するmRNAを、細胞内に送達する方法として、ソノポレーション(超音波穿孔法)の利用が検討されている。ソノポレーションは、超音波照射によって一時的に細胞膜を穿孔し、薬物や遺伝子を含む薬液を細胞内に送達する方法である。具体的には、まず、皮下注射により生体内へmRNAを注入し、その後、mRNAを注入した患部に超音波を照射することにより、細胞膜内にmRNAを送達する方法が考えられる。生体内に注入されたmRNAは、上述したように生体内で不安定であり、体液により移動するため、mRNAの注入後、患部に対して速やかに超音波照射する必要がある。
【0005】
このように薬液を患部に注入し、その後、患部に対して速やかに超音波照射するためには、注射器等の薬液注入装置に患部への超音波照射が可能な超音波振動子が取り付けられた構成を利用することが考えられる。注射器の一部に超音波振動子が組み込まれた構成として、例えば、特許文献1および2に記載された注射器が知られている。
特許文献1の注射器では、注射針の基端側にリング状の超音波振動子が取り付けられており、超音波振動子からの超音波振動が注射針の先端に伝達することにより、注射する際に、患者に与える痛みを和らげる。また、特許文献2の注射器では、注射針部と、注射針部に連接され薬液を供給するポンプ部と、ポンプ部に接触させ連接された超音波発振部とを備え、超音波発振部で生ずる超音波(進行波)によりポンプ部内の薬液を注射針部から患部に注入する。
特許文献1および2の注射器では、いずれも注射針を患部に穿刺し、薬液を注入する際に注射針やポンプ部等に対して超音波照射する構成である。しかしながら、これらの構成では、薬液が注入された患部に対して超音波が十分に照射されないため、ソノポレーションによる薬液の細胞内への送達が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9-239031号公報
【特許文献2】特開2006-20843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の問題点を鑑みたものであり、その目的は、患者の患部に付与された薬液の効果を効率良く発現するための薬液注入装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は以下の(1)~(10)の本発明により達成される。
(1) 薬液が充填される本体と、
前記本体の先端側に設けられ、前記本体から患者の患部に前記薬液を付与する薬液付与部と、
前記本体の基端側に取り付けられ、前記本体内の前記薬液を前記薬液付与部に供給する供給装置と、
前記薬液付与部の近傍に設けられた超音波振動子と、を有し、
前記超音波振動子は、前記薬液付与部から前記患部に付与される前記薬液に超音波を付与するように構成されていることを特徴とする薬液注入装置。
【0009】
(2) 前記超音波振動子に電力を供給するための電力供給部と、前記超音波振動子に前記電力供給部からの電力を供給または遮断するスイッチと、前記電力供給部および前記スイッチが設けられたホルダーとを、さらに有し、
前記ホルダーは、前記本体および前記薬液付与部を収容可能に構成されている上記(1)に記載の薬液注入装置。
【0010】
(3) 前記超音波振動子は、前記患部に直接的または間接的に接触するように構成されている上記(2)に記載の薬液注入装置。
【0011】
(4) 前記薬液付与部は、前記薬液を前記患部に注入する注射針を備えており、
前記超音波振動子は、前記注射針が貫通する開口を備えたリング状に形成されている上記(3)に記載の薬液注入装置。
【0012】
(5) 前記薬液付与部および前記超音波振動子は、前記本体に着脱可能に構成されている上記(1)に記載の薬液注入装置。
【0013】
(6) 前記超音波振動子の前記本体と反対側に設けられた接触センサと、
前記接触センサからの信号を受信する制御部と、をさらに有し、
前記制御部は、前記接触センサが前記患部に接触したことを感知したことを示す前記信号を受信した後、前記スイッチをONにして、前記超音波振動子が、前記接触センサを介して前記超音波を前記患部に自動的に付与するように構成されている状(2)ないし(4)のいずれかに記載の薬液注入装置。
【0014】
(7) 前記超音波振動子は、前記本体に対して、前記注射針の延在方向に移動可能に構成されている上記(4)に記載の薬液注入装置。
【0015】
(8) 前記スイッチは、前記超音波振動子の前記本体側に設けられた第1の導電部材と、前記本体の前記先端側に設けられた第2の導電部材とを備え、
前記第1の導電部材と前記第2の導電部材とが接触することにより、前記超音波振動子に前記電力供給部からの電力を供給する上記(7)に記載の薬液注入装置。
【0016】
(9) 前記超音波振動子の前記本体と反対側に取り付けられたコイルばねをさらに有し、
前記コイルばねを介して、前記超音波振動子からの前記超音波を前記患部に付与するように構成されている上記(2)ないし(5)のいずれかに記載の薬液注入装置。
【0017】
(10) 前記ホルダーは、前記電力供給部および前記スイッチに加え、さらに前記供給装置を設け、
前記ホルダーは、前記本体および前記薬液付与部を着脱可能に収容するように構成されている上記(2)ないし(5)のいずれかに記載の薬液注入装置。
【0018】
(11) 薬液が充填される本体と、
前記本体の先端側に設けられ、前記本体から患者の患部に前記薬液を付与する薬液付与部と、
前記本体の基端側に取り付けられ、前記本体内の前記薬液を前記薬液付与部に供給する供給装置と、
前記薬液付与部の近傍に設けられた超音波振動子と、
前記超音波振動子に電力を供給するための電力供給部と、
前記超音波振動子に前記電力供給部からの電力を供給または遮断するスイッチと、
前記超音波振動子の前記本体と反対側に設けられた接触センサと、
前記接触センサからの信号を受信する、コンピュータを含む制御部と、を有する薬液注入装置の前記超音波振動子からの超音波の発生およびその停止を制御する制御プログラムであって、
前記制御部が、前記接触センサが前記患部に接触したことを感知したことを示す前記信号を受信した後、前記スイッチをONにして、前記超音波振動子が、前記接触センサを介して超音波を前記患部に付与するステップと、前記スイッチをONにしてから所定時間経過後に、前記スイッチをOFFにして、前記超音波振動子からの前記超音波の発生を停止するステップと、を前記コンピュータに実行させることを特徴とする制御プログラム。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、患者の患部に薬液を付与する薬液付与部の近傍に超音波振動子が設けられており、超音波振動子は、薬液付与部から薬液が患部に付与された後に、患部に超音波を付与するように構成されている。係る構成では、薬液を患部に付与し、その後、患部に対して速やかに超音波を付与することができるため、ソノポレーションによる薬液の細胞内への送達が十分に行われ、付与された薬液の効果を効率良く発現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1実施形態にかかる薬液注入装置を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す薬液注入装置のA-A線断面図である。
【
図3】バブル含有液体の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【
図4】
図4(a)~(d)は、バブル含有液体の製造方法を説明するための断面図である。
【
図5】
図4(c)に示す容器を振動させる工程において、水性液体と容器の内面(上面)とが激しく衝突した状態を説明するための部分拡大図である。
【
図6】バブル含有液体の製造方法のその他の例を説明するための図である。
【
図7】
図7(a)は、本発明の第1実施形態にかかる薬液注入装置の変形例を模式的に示す斜視図であり、
図7(b)は、
図7(a)の薬液注入装置を操作する時の握り方を説明するための図である。
【
図8】本発明の第1実施形態にかかる薬液注入装置の変形例の部分断面図である。
【
図9】本発明の第1実施形態にかかる薬液注入装置の変形例の模式図である。
【
図10】本発明の第1実施形態にかかる薬液注入装置の変形例の模式図であり、
図10(a)は、ホルダーを分割した状態を示す図であり、
図10(b)は、薬液注入装置の基端側を示す図である。
【
図11】本発明の第2実施形態にかかる薬液注入装置の断面図である。
【
図12】本発明の第3実施形態にかかる薬液注入装置を模式的に示す斜視図である。
【
図13】本発明の第3実施形態にかかる薬液注入装置の使用方法を説明するためのフローチャートである。
【
図14】本発明の第3実施形態にかかる薬液注入装置の変形例の使用方法を説明するためのフローチャートである。
【
図15】本発明の第4実施形態にかかる薬液注入装置の部分断面図であり、
図15(a)は、注射針を患部に穿刺する前の状態を説明するための図であり、
図15(b)は、注射針を患部に穿刺した状態を説明するための図である。
【
図16】本発明の第5実施形態にかかる薬液注入装置を模式的に示す側面図である。
【
図17】本発明の第6実施形態にかかる薬液注入装置を模式的に示す斜視図であり、
図17(a)は、薬液が充填されたカートリッジを説明するための図であり、
図17(b)および
図17(c)は、
図17(a)のカートリッジを挿入するホルダーを説明するための図である。
【
図18】本発明の第7実施形態にかかる薬液注入装置を模式的に示す斜視図である。
【
図19】本発明の第8実施形態にかかる薬液注入装置が備える、本体、薬液付与部、供給装置および超音波振動子を模式的に示す斜視図である。
【
図20】本発明の第9実施形態にかかる薬液注入装置を説明するための断面図であり、
図20(a)は、薬液注入装置の使用前の状態を説明するための図であり、
図20(b)および(c)は、薬液注入装置の使用中の状態を説明するための図である。
【
図21】本発明の第10実施形態にかかる薬液注入装置が備える、本体、薬液付与部、供給装置および超音波振動子を模式的に示す斜視図である。
【
図22】実施例1において、遺伝子導入後のマウス(48時間飼育後)の注射終了後5分経過後から1分間の相対発光量を積算して撮影した撮影画像である。
【
図23】実施例2において、超音波を所定時間照射した各96ウェル細胞培養プレートのサンプルを、48時間後にルシフェラーゼアッセイで遺伝子導入効率を評価した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の薬液注入装置を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて説明する。説明の都合上、図中の上側を「上」、下側を「下」、左側を「左」、右側を「右」として説明する。
【0022】
<第1実施形態>
1.薬液注入装置
図1は、本発明の第1実施形態にかかる薬液注入装置を模式的に示す斜視図である。
図2は、
図1に示す薬液注入装置のA-A線断面図である。
図1および
図2に示す薬液注入装置1は、薬液が充填される本体2と、本体2の先端側に設けられ、本体2から患者の患部に薬液を付与する薬液付与部3と、本体2の基端側に取り付けられ、前記本体内の前記薬液を前記薬液付与部に供給する供給装置4と、薬液付与部3の近傍に設けられた超音波振動子5とを有する。本実施形態では、本体2がホルダー10の内部に収容されるように構成されている。
以下、各部材について詳細に説明する。
【0023】
図1および
図2に示す本体2、薬液付与部3および供給装置4としては、注射器を用いることができる。
(本体)
本体2は、円筒状の胴体部と、胴体部から先端に向かって縮径する縮径部と、縮径部の先端に設けられた円筒状の連結部22とを備えている。本体2は、注射器本体であり、内部空間21に薬液を充填可能に構成されている。また、連結部22は、後述する注射針31が挿通され、注射針31を支持固定する。
(薬液付与部)
薬液付与部3は、本体2の連結部22に装着され、本体2の内部空間21と連通する注射針31で構成されている。注射針31は、供給装置4の操作により、本体2から患者の患部に薬液を付与する機能を有している。
(供給装置)
供給装置4は、本体2の基端側から挿入され、本体2の内側側面と摺動可能な円筒状の摺動部と、摺動部の基端に設けられ、摺動部よりも径が大きい押圧部とを有している。注射針31を患者の患部に穿刺した後、供給装置4の押圧部を押圧することにより、本体2の内部空間21に充填された薬液が注射針31を通って患部に注入される。
本体2、注射針31、供給装置4は、いずれも、一般的な注射器と同様の材料で形成されている。
【0024】
また、薬液注入装置1は、薬液付与部3の近傍に設けられた超音波振動子5と、超音波振動子5に電力を供給するための電力供給部6と、超音波振動子5に電力供給部6からの電力を供給または遮断するスイッチ7と、本体2を内部に収容するホルダー10とをさらに有している。
図2に示すように、本実施形態の薬液注入装置1では、超音波振動子5、電力供給部6およびスイッチ7が、ホルダー10に設けられる。
【0025】
(超音波振動子)
超音波振動子5は、ホルダー10の先端に取り付けられている。超音波振動子5は、その中央に本体2の連結部22を収容可能な開口を備えたリング状の超音波振動子であり、その開口に連結部22に装着された注射針31が貫通するように構成されている。超音波振動子5には一対の電極(図示せず)が取り付けられ、各電極が電力供給部6と配線(図示せず)により接続されている。超音波振動子5は、電力供給部6から配線を介して一対の電極間に交流電圧が印加されることにより、超音波を発生するように構成される。
【0026】
本実施形態では、本体2がホルダー10に収容された状態で、注射針31を患者の患部に穿刺した際に、超音波振動子5が患部に直接接触するように構成されている。係る構成では、供給装置4の操作により本体2内の薬液を注射針31から患部に注入した後、超音波振動子5から超音波を発生させると、超音波振動子5から患部に対して直接的に超音波を付与することができる。そのため、薬液が付与された患部に対して、ソノポレーションによる薬液の細胞内への送達が十分に行われ、付与された薬液の効果を効率良く発現することができる。
【0027】
超音波振動子5の構成材料としては、交流電圧を加えると振動する圧電材料が用いられ、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等を用いることができる。また、超音波振動子5は、
図1および
図2に示すように、一枚の板状の超音波振動子で構成されてもよいし、板状の超音波振動子を複数枚重ね合わせた構成であってもよい。なお、開口を備えたリング状の外形を有し、後述するような比較的低い周波数の超音波を発生可能である点を考慮すると、市販のランジュバン型超音波振動子を用いることができる。
【0028】
超音波振動子5は、注射針31を収容する連結部22の外径以上の内径を有していれば、特に限定されないが、外径が6~30mm程度、内径が2~10mm程度、厚さが1~10mm程度であることが好ましい。
また、超音波振動子5から発生する超音波の周波数、言い換えれば、患部に付与される超音波の周波数は、20kHz以上1MHz未満であることが好ましく、25kHz以上900kHz以下であることがより好ましく、30kHz以上500kHz以下であることがさらに好ましい。
また、超音波振動子5から超音波を発生させる時間は、特に限定されないが、5~30秒程度であることが好ましく、10~20秒程度であることがより好ましい。
【0029】
(電力供給部)
電力供給部6は、ホルダー10の基端側の内周面に設けられ、配線(図示せず)により、超音波振動子5の一対の電極に接続されるとともに、スイッチ7の回路(図示せず)に接続される。電力供給部6は、ホルダー10の基端側から本体2が挿入される際に本体2と接触しないように厚さが抑えられている。
【0030】
(スイッチ)
スイッチ7は、ホルダー10の基端側の外表面に設けられ、薬液注入装置1の操作者がスイッチ7のONまたはOFFの操作を容易に行うことが可能な部分に位置している。スイッチ7をONにする操作を行うと、超音波振動子5の電極と電力供給部6とが導通となる。電力供給部6からの電力を超音波振動子5に供給して、超音波振動子5が超音波を発生する。また、スイッチ7をOFFにする操作を行うと、超音波振動子5の電極と電力供給部6とが非道通となる。超音波振動子5に供給される電力を遮断して、超音波振動子5からの超音波の発生が止まる。
【0031】
スイッチ7の回路は、ホルダー10の内側に設けられ、かかる回路には、スイッチ7をONにする操作と連動して点灯するLED(図示せず)が設けられている。スイッチ7がONの状態では、ホルダー10内側の点灯したLEDの光によってスイッチ7が光るように構成されている。また、スイッチ7をOFFにする操作を行うことにより、LEDは消灯する。
次に、超音波振動子5、電力供給部6およびスイッチ7が設けられるホルダー10について説明する。
【0032】
(ホルダー)
ホルダー10は、中空の円筒状をなし、本体2の胴体部よりも大きい径を有している。ホルダー10の基端側から本体2、薬液付与部3および供給装置4からなる注射器をホルダー内部に挿入することにより、本体2はホルダー10に収容され、支持される。
ホルダー10の略中央の内周面には、収容された本体2の胴体部と密着して、ホルダー10に対して本体2を支持する支持部材11が設けられている。支持部材11により本体2が支持されることにより、供給装置4の押圧部を意図せず押圧してしまったり、後述するスイッチ7を誤操作する等の誤動作を防止し、薬液注入装置1を安定的に操作することができる。支持部材11としては、特に限定されないが、ホルダー10への本体2の挿入のし易さ、ホルダー10内の本体2のがたつきを防止する観点から、発泡ポリウレタン等の発泡樹脂製のスポンジ部材を用いることができる。
また、ホルダー10は、その先端側に、ホルダー10の外側から本体2内の薬液の量を確認するための窓部8と、ホルダー10の中央よりやや基端側に、薬液注入装置1を操作し易くするためのグリップ9とを備えている。
【0033】
(窓部)
窓部8は、ホルダー10内に収容された本体2の内部空間21を、ホルダー10の外側から見ることができるように光透過性を有する材料で形成され、窓部8を通して、内部空間21内の薬液の量を確認することができる。そのため、操作者は、患部への薬液の注入が完了したことを確認してから、スイッチ7の操作による患部への超音波付与を行うことができる。
(グリップ)
また、グリップ9は、ホルダー10の外周に沿って設けられた円環状の部材であり、例えば、各種ゴム材料や各種エラストマー材料で形成することができる。グリップ9が設けられることにより、薬液注入装置1を操作し易くなり、薬液注入装置1の操作を安全に行うことができる。例えば、人差し指と中指をグリップ9に掛けた状態であれば、供給装置4を親指で操作(押圧)した後、ホルダー10を持ち替えることなく、親指でスイッチ7を操作することができる。
【0034】
2.使用方法
上記の薬液注入装置1は、以下のようにして用いられる。
具体的には、まず、蓋がゴム栓で構成され、内部に患部に付与する薬液が封入された薬液含有容器を準備する。次に、薬液注入装置1の注射針31をゴム栓に穿通し、その後、供給装置4を吸引方向(
図2の右側方向)に操作することにより、薬液含有容器内から薬液を吸引する。そして、ゴム栓から注射針31を抜去し、薬液を吸引した薬液注入装置1の注射針31を患者の患部に穿刺する。その際に、超音波振動子5が患部に接触した状態となる。次に、供給装置4の押圧部を注入方向(
図2の左側方向)に押圧して、薬液を患部に注入する。本体2内の薬液を注射針31から患部に注入した後、スイッチ7をONにする操作を行い、超音波振動子5から超音波を発生させて、患部に対して超音波を付与する。以上の手順で、患部に薬液が注入された後、速やかに患部に超音波が付与されることにより、ソノポレーションによる薬液の患部の細胞内への送達が十分に行われ、付与された薬液の効果を効率良く発現することができる。
なお、患部に対する超音波の付与は、薬液を患部に注入した後に限られない。例えば、薬液を患部に注入しながら、スイッチ7をONにする操作を行い、超音波振動子5から超音波を発生させて、患部に対して超音波を付与するようにしてもよい。
なお、薬液含有容器からゴム栓を外した状態で、薬液含有容器内から薬液を直接吸引してもよい。
【0035】
薬液注入装置1の使用後、ホルダー10から注射器(本体2、薬液付与部3および供給装置4)を取り外す。別の患者に使用する際には、新たな注射器を準備し、ホルダー10の基端側から注射器を挿入することにより、薬液注入装置1として使用することができる。
【0036】
3.薬液
患部へ付与する薬液は、水性液体中に薬物が分散した液体である。
水性液体としては、例えば、蒸留水、純水、超純水、イオン交換水、RO水等の水、Saline(塩化ナトリウム濃度が0.9%程度の生理食塩水)、PBS(phosphate buffered saline)、KCl点滴液等の塩水溶液、グルコース、スクロース等の糖水溶液、アミノ酸水溶液、タンパク質水溶液、銅、鉄、金、プラチナ等の金属イオンを含む金属イオン水溶液、ナトリウム、マグネシウム、リン、カリウム、カルシウム、マンガン、クロム、亜鉛等の各種ミネラルを含むミネラル水溶液、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC等の水溶性ビタミンおよび/またはビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK等の脂溶性ビタミンを含むビタミン水溶液、炭水化物水溶液、抗体水溶液、RNA、DNAおよびこれらの誘導体等を含む核酸を含む核酸水溶液、各種色素を含む色素水溶液、塩化ガドリニウム、硫化ガドリニウム等のガドリニウム化合物を含むガドリニウム水溶液等が挙げられる。これらは、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
薬物としては、疾病の治療に有効であれば特に限定されないが、遺伝子、薬剤等を含む。具体的には、mRNA、ncRNA、オリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、遺伝子・核酸(pDNA、siRNA)、ペプチド、リボザイム、抗体、オリゴ糖、多糖、トリプルヘリックス分子、ウイルスベクター、プラスミド、低分子有機化合物、抗癌剤、低分子薬、金属等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
これらの薬物のうち、mRNAは、DNAと比較して、迅速なタンパク質発現、ゲノム挿入リスクが無いといったメリットがあり、SARS-CoV-2ウイルス感染症等の新興・再興ウイルス感染症に対し、mRNAワクチンの臨床応用が実現されている。しかしながら、mRNAは生体内、特に細胞外では極めて不安定で、直接注射しても細胞膜を超えて、細胞内へ送達することはできず、生体内の酵素であるRNaseにより、速やかに分解されてしまうという大きな問題がある。
そのため、現状では、mRNAを人工脂質(LNP)もしくは高分子ミセルからなるドラッグデリバリーシステム(DDS)キャリアに搭載して、酵素分解を回避し、さらにキャリアにポリエチレングリコール(PEG)修飾などを施し生体内滞留性を向上させている。しかしながら、キャリア搭載されたmRNAの導入効率は必ずしも高くはなく、目標導入量に対して大量のmRNA注射を必要とする。またキャリアの人工脂質による肝・腎障害や、滞留性向上のために用いられるPEGに対するアレルギーなどの副反応の課題も残されている。
【0039】
本発明者は、鋭意検討した結果、mRNAを含む薬液として、バブル径が1μm未満のウルトラファインバブル(ナノバブル)を含有するバブル含有液体を用いることにより、キャリアとして人工脂質を用いることなく、またキャリアに対してPEG修飾を行うことなく、mRNAを生体内で安定させることができることを見出した。さらに本発明者は、患部に付与されたナノバブルが超音波照射により成長し破裂することによって、ソノポレーションの効果を飛躍的に高め、細胞内にmRNAを効率良く送達することができることを見出した。
以下、薬液として、水性液体中に薬物としてのmRNAおよびバブルが分散したバブル含有液体について説明する。
【0040】
3-1.バブル含有液体
かかるバブル含有液体は、水性液体と、水性液体中に分散した、mRNAおよびガスを含むバブル(気泡)とを有する。バブル含有液体中の多くのmRNAは、バブル内に内包されたり、バブルの外表面に付着した状態で存在する。
【0041】
バブル含有液体中の水性液体の含有量は、50wt%以上であるのが好ましい。これにより、水性液体中にmRNAを内包または担持したバブルを均一に分散させることができる。
また、バブル含有液体中のmRNAの含有量は、0.1~35wt%であることが好ましく、1~20wt%であることがより好ましい。
【0042】
ガスは、バブルを製造する際の温度(20℃程度)において、気体状の物質である。また、ガスは、バブルを体内に注入した状態において、すなわち、体内の温度(37℃程度)においても、気体状の物質である。
【0043】
ガスとしては、特に限定されないが、例えば、空気、一酸化炭素、一酸化窒素、硫化水素、亜酸化窒素、酸素、二酸化炭素、水素等のガスや、窒素、ヘリウム、アルゴン、キセノン、クリプトンのような不活性ガス、六フッ化硫黄、十フッ化二硫黄、トリフルオロメチル硫黄ペンタフルオリドのようなフッ化硫黄、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、エチレン、プロピレン、プロパジエン、ブテン、アセチレン、プロピン、パーフルオロプロパン、パーフルオロブタン、パーフルオロペンタンのような低分子量炭化水素類またはこれらのハロゲン化物、ジメチルエーテルのようなエーテル類、ケトン類、エステル類等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
バブル含有液体中のバブルは、所定量のガスが微分散または溶解している水性液体を用いることにより形成される。ここで、水性液体中のガスの含有量が多いほど、水性液体中に、十分に多量のバブルを存在させつつ、バブル同士の衝突による合体や消滅を抑制することができる。これにより、バブル含有液体中に、バブルを多量に含ませることができるとともに、バブルの経時安定性をより向上させることができる。
バブル含有液体中のバブルの含有量は、1.0×105/ml以上であることが好ましく、1.0×106/ml以上であることがより好ましく、1.0×107/ml以上であることがさらに好ましい。このようなバブル含有液体を用いることにより、薬液として少量のバブル含有液体を用いた場合でも、十分に効率良く細胞内にmRNAを送達することができる。
【0045】
ところで、水性液体中のバブルは、その表面(ガスと水性液体との間の気液界面)に存在する水分子のクラスター構造に起因して、安定化が図られると考えられる。水分子のクラスター構造は、水分子の一部が電離することで生じた若干量の水素イオン(H+)および水酸化物イオン(OH-)を含んでいる。これらのイオン(特に、水酸化物イオン)の影響で、バブルは帯電している。これにより、バブル同士は、電気的な反発力により合体(付着)することが抑制されると考えられる。
また、バブルが帯電することにより、キャリア材料を用いることなく、mRNAがバブルの外表面に付着した状態を維持することができると考えられる。
さらに、バブル径が1000nm以下のウルトラファインバブル(ナノバブル)は、数十ミクロン~数百ミクロンのマイクロバブルに比べて、バブル同士の合体(付着)がより抑制され、水性液体中でより安定的に存在することができる。
【0046】
また、バブル含有液体は、さらに、糖類、塩類、タンパク質、脂質のうち少なくとも1種以上を含むことができる。これらの糖類、塩類、タンパク質は、バブルを水性液体中に安定的に保持するように作用するバブル保持剤として機能する。したがって、バブル保持剤を含有するバブル含有液体では、水性液体中にバブルを安定的に保持(保存)することができる。そのため、バブル含有液体は、長期間保存した場合でも、含まれるバブルの数およびサイズの変動を抑え、バブルの経時安定性に優れる。
【0047】
糖類(多糖類を含む)としては、例えば、グルコース、スクロース、デキストリン等が挙げられる。また、タンパク質としては、例えば、アルブミン、グロブリン等が挙げられる。塩類としては、例えば、NaCl、KCl、Na2HPO4、KH2PO4およびC3H5NaO3や、鉄イオン、金イオン、銅イオン等の各種金属イオンの塩化物等が挙げられる。これらの物質の中でも、タンパク質を用いることが好ましく、特に、アルブミンを用いることがより好ましい。
【0048】
バブル含有液体中のバブル保持剤の含有量は、特に限定されないが、使用する水性液体の種類に応じて、適宜変更することが好ましい。例えば、バブル含有液体中のバブル保持剤の含有量は、0.001~50wt%であることが好ましく、0.005~50wt%であることがより好ましい。バブル保持剤の含有量が上記範囲内であれば、バブル含有液体は、長期間保存した場合でも、含まれるバブルの数およびサイズの変動をより確実に抑えることができ、バブルの経時安定性をより向上させることができる。
【0049】
なお、バブル含有液体中の水性液体の含有量[wt%]と、バブル含有液体中のバブル保持剤の含有量[wt%]との比率は、50:50~99.999:0.001であることが好ましい。水性液体とバブル保持剤との含有比率が上記範囲内であれば、バブル含有液体を長期間保存した場合でも、含まれるバブルの数およびサイズの変動をより確実に抑えることができ、バブルの経時安定性をより向上させることができる。
特に、バブル保持剤としてタンパク質(アルブミン等)を用いる場合には、バブル含有液体中の水性液体の含有量[wt%]と、バブル含有液体中のタンパク質の含有量[wt%]との比率は、50:50~99.999:0.001であることが好ましく、50:50~99.995:0.005であることがより好ましい。
【0050】
このような成分で構成されたバブルの径は、後述するバブル含有液体の製造方法の各工程の条件を変更することにより変化する。すなわち、製造されるバブルは、ミクロンサイズ(数百マイクロメートル程度)、または、ナノサイズ(数百ナノメートル程度)を有することとなる。
【0051】
具体的に、バブルの平均径は、特に限定されないが、10nm~1μm程度であるのが好ましく、10nm~800nm程度であるのがより好ましく、50nm~500nm程度であるのがさらに好ましい。バブルの平均径が上記範囲内であれば、生体内での安定性が高く、患部に超音波が付与される前にバブルが消滅することを抑制することができる。また、上記範囲内の平均径を有するバブルは、前述したような比較的低い周波数(20kHz以上1MHz未満)の超音波の付与によりより確実に破裂して、ソノポレーションの効果を飛躍的に高め、細胞内にmRNAを効率良く送達することができる。また、バブルを破裂させるために、超音波診断に用いられるような、比較的高い周波数(1MHz以上)の超音波を発生させる必要がないため、電力供給部6を小型化することができ、また、消費電力を抑えることができる。
【0052】
なお、バブル含有液体中のバブルの平均径は、例えば、レーザー回折・散乱法、ナノ粒子トラッキング解析法、電気抵抗法、AFM(Atomic Force Microscope)、レーザー顕微鏡による観測等により測定することができる。なお、レーザー回折・散乱法によるバブルの平均径を測定する装置としては、ベックマン・コールター社製のフローサイトメーター(商品名;CytoFlex)を用いることができる。また、ナノ粒子トラッキング解析法によるバブルの平均径を測定する装置としては、Malvern社製のナノ粒子解析システム(商品名:nanosight)を用いることができる。また、AFMを測定する装置としては、Malvern社製の共振式粒子計測システム(商品名:アルキメデス)を用いることができる。
【0053】
上述したようなバブル含有液体は、例えば、以下に記載するバブル含有液体の製造方法により製造することができる。以下、バブル含有液体の製造方法の一例について説明する。
【0054】
3-2.バブル含有液体の製造方法
図3は、バブル含有液体の製造方法を説明するためのフローチャートである。
図4(a)~(d)は、バブル含有液体の製造方法を説明するための断面図である。
図5は、
図4(c)に示す容器を振動させる工程において、水性液体と容器の内面(上面)とが激しく衝突した状態を説明するための部分拡大図である。
【0055】
バブル含有液体の製造方法は、
図3に示すように、工程(S1)~(S5)の5つの工程を有する。工程(S1)は、水性液体とその他の成分とを含む混合液、および混合液が注入されるバブル製造用容器(以下、単に「製造容器」という)を準備する工程である。工程(S2)は、混合液を製造容器の所定の高さまで注入する工程である。工程(S3)は、製造容器内にガスを充填して、製造容器内を加圧した状態で製造容器を密閉する工程である。工程(S4)は、混合液が容器の内面に繰り返し衝突するように、所定の回転数で製造容器を振動させる工程である。工程(S5)は、製造容器を静置する工程である。
かかるバブル含有液体の製造方法では、あらかじめ、水性液体中に上述した任意のその他の成分を分散または溶解させて混合液とし、この混合液中にバブルを生成させることにより、バブル含有液体を得ることができる。以下、これらの工程について順次説明する。
【0056】
[S1] 準備工程
図4(d)に示すバブル50を含有するバブル含有液体100を製造する際には、まず、水性液体およびその他の成分を調製容器に入れて、その他の成分を水性液体に分散または溶解させる。これにより、混合液60を調製する。すなわち、調製容器内に水性液体およびその他の成分を所定量加えた後、攪拌して、その他の成分を水性液体に分散または溶解させる。
【0057】
水性液体およびその他の成分としては、それぞれ、前述した水性液体および各種成分が使用される。
【0058】
次に、製造容器70を準備する。
製造容器70は、開口部を備え、混合液60を収容する容器本体71と、容器本体71を密閉するための蓋72とを有している。
【0059】
容器本体71は、特に限定されないが、
図4(a)に示すような外形が有底円筒状をなしていることが好ましい。また、容器本体71として、容量が0.5~20ml程度のバイアル瓶を用いる。
【0060】
蓋72は、
図4(b)~(d)に示すように、容器本体71の瓶口に密着する円盤状のゴム栓(セプタム)721と、ゴム栓721を容器本体71の瓶口に固定する締付部722とを備えている。
【0061】
[S2]混合液を製造容器に注入する工程
調製された混合液60を容器本体71(製造容器70)の所定の高さまで注入する。
図4(a)では、Y[mm]まで注入する。したがって、
図4(a)に示すように、混合液60が注入された状態の容器本体71は、その上部に空隙部61を有する。
【0062】
[S3]製造容器を密閉する工程
次に、容器本体71にガスを充填させて、製造容器70内を加圧した状態で密閉する(
図4(b)参照)。具体的には、混合液60が注入された容器本体71の空隙部61を、ガスでパージした後、蓋72を容器本体71の開口部(瓶口)に締付ける。これにより、製造容器70内に混合液60とガスとが密閉される。
【0063】
容器本体71の空隙部61をガスでパージする方法としては、例えば、混合液60が注入された容器本体71をチャンバー内に移動させる。次に、チャンバー内の空気をガスで置換する。その後、蓋72を容器本体71の開口部に締付けることにより、製造容器70内に混合液60とガスとを密閉することができる。
ガスとしては、前述した各種ガスが使用される。
【0064】
次に、ガスが充填された注射器を準備する。そして、注射器の注射針をゴム栓721に刺通する。その後、注射器から製造容器70内にさらにガスを加えることにより、製造容器70内が加圧される。その後、ゴム栓721から注射針を抜去する。これにより、製造容器70内がガスにより加圧された状態で密閉された製造容器70を得ることができる。
【0065】
かかるバブル含有液体の製造方法では、製造容器70内の圧力(空隙部61に充填されたガスの圧力)を1.0atmより大きくする。特に、製造容器70内の圧力は、1.5~10atmであるのが好ましく、2~5atmであるのがより好ましい。これにより、ガスの一部が混合液60に微分散または溶解する。
【0066】
混合液60にガスが微分散または溶解することにより、工程(S4)において、混合液60と製造容器70とが衝突して衝撃波が発生する際に、バブル50が発生し易くなる。これにより、工程(S4)において、混合液60中により多くのバブル50を生成させることができる。
なお、本工程では、製造容器70内を加圧した状態(製造容器70内の圧力を1.0atmよりも大きくした状態)としているが、製造容器70内を加圧することなく、次工程(S4)を行ってもよい。
【0067】
[S4]製造容器を振動させる工程
次に、混合液60が、製造容器70の上下面および側面(特に、上下面)に繰り返し衝突するように、製造容器70を振動させる。
図4(c)に示すように、製造容器70が、ほぼその長手方向(
図4(c)では、鉛直方向)に往復運動するように、製造容器70を振動させる。
【0068】
本工程では、工程(S3)で密閉した製造容器70(
図4(c)の下図)を上方向に振動させる(
図4(c)の真中の図)。これにより、混合液60は、製造容器70の中間付近に移動する。更に製造容器70を上方向に振動させると、混合液60が製造容器70の上部に移動して、蓋72の下面(ゴム栓721)に衝突する(
図4(c)の上図)。この際に、
図5に示すように、衝撃波が発生する。この衝撃波の圧力により、ガスが混合液60中に微分散し、バブル50が形成する。このバブル50内には、振動により混合液60に微分散または溶解したガスが含まれる。
【0069】
一方、製造容器70(
図4(c)の上図)を下方向に振動させる(
図4(c)の真中の図)。これにより、混合液60は、製造容器70の中間付近に移動する。更に製造容器70を下方向に振動させると、混合液60が製造容器70の下部に移動して、製造容器70の下面に衝突する(
図4(c)の下図)。この時も、
図5に示すように、衝撃波が発生する。
【0070】
また、製造容器70を鉛直方向に振動させる際に、混合液60は、製造容器70の内側の側面とも衝突する。この時も、
図5に示すように、衝撃波が発生する。
【0071】
以上の操作を繰り返し行うことによって、混合液60中に均一なサイズのバブル50を多量に安定的に生成させることができる。
【0072】
かかるバブル含有液体の製造方法では、十分に微細で、均一なサイズのバブル50を得るために、製造容器70を5000rpm以上で振動させるのが好ましい。これにより、混合液60と製造容器70とが衝突する際に発生する衝撃波の大きさ(圧力)が十分に大きくなり、混合液60中に生じるバブル50が微細化され、そのサイズを均一にすることができる。
【0073】
上記のような回転数で製造容器70を振動させることができる装置としては、例えば、ビーズ方式の高速細胞破砕システム(ホモジナイザー)を用いることができる。
【0074】
製造容器70を振動させる際に、製造容器70の長手方向の振動幅は、0.7X~1.5X[mm]程度であるのが好ましく、0.8X~1X[mm]程度であるのがより好ましい。これにより、製造容器70の振動時に、混合液60と製造容器70の下面および蓋72とを確実に衝突させることができ、混合液60と製造容器70の下面および蓋72との衝突回数を十分に多くすることができる。また、このように十分な振動幅で製造容器70を振動させることにより、混合液60が製造容器70内を移動する速度が大きくなる。そのため、混合液60と製造容器70の下面および蓋72との衝突時に発生する衝撃波の大きさが十分に大きくなる。結果として、混合液60中に微細なバブル50を多量に生成させることができる。
【0075】
[S5]製造容器を静置する工程
上記条件で製造容器70を振動させた後、製造容器70を静置する(
図4(d)参照)。これにより、製造容器70内に、均一なサイズのバブル50(
図1参照)を多量に含有するバブル含有液体100を製造することができる。また、同時に、バブル含有液体100が封入されたバブル含有容器(以下、単に「バブル含有容器」という)を得ることができる。
【0076】
なお、上述した工程(S2)~(S4)は、一定の温度下で行われるのが好ましい。各溶液の温度を一定に維持するための方法としては、例えば、上述した各工程(S2)~(S4)をグローブボックスや恒温槽内で行う方法が挙げられる。
以上の工程(S1)~(S5)を経て、平均径が10~1000nm程度のバブル50を含有するバブル含有液体100が製造される。
【0077】
なお、従来のバブルの製造方法では、大掛かりな還流装置や、バブルの製造装置を構成する様々なシステム(チューブ、ノズル、コンプレッサ等)が必要であった。そのため、食品分野や医療分野等に用いられるバブルを製造する際に、清潔で、かつ無菌環境を維持するのが困難であった。これに対して、上記の方法では、バブル含有液体100の製造に気密性の高い製造容器70を用いるため、混合液60およびガスを製造容器70内に含有した状態で、例えば、γ線滅菌等による滅菌処理を製造容器70内の混合液60に施せばよい。これにより、製造容器70内が滅菌されるため、バブル含有液体100を滅菌環境下で製造することができる。
【0078】
上記のようにして得られたバブル含有液体100中において、バブル50は安定的に存在することができる。そのため、得られたバブル含有液体100は、室温にて長期保存することができる。具体的には、10~36か月間もの期間にわたって保存することができる。また、これだけ長期間保存した後でも、混合液60中でのバブル50の安定性が高いため、再度バブル含有容器を振動させたりする必要なく、使用することが可能である。また、製造容器として、容量が小さい製造容器70を用いることができるので、バブル含有容器の単価を抑えることができる。そのため、上記のようにして得られたバブル含有容器は、医療機関等にとっては、取扱い易いというメリットがある。
【0079】
また、必要に応じて、工程(S4)後、工程(S5)前に、または、工程(S5)後に、製造容器70に対して、遠心分離処理を行ってもよい。この処理により、製造容器70内に生成されたバブル50を、所望の径別に分離することができる。
【0080】
上述したように、工程(S1)~(S5)を行うことにより、均一なサイズのバブル50を多量に安定的に含有するバブル含有液体100を製造することができる。ただし、バブル含有液体の製造方法は、これに限定されない。例えば、前述した工程(S6)を、工程(S4)を行った後に行い、その後、工程(S5)を経て、バブル含有液体100を得てもよい。また、工程(S5)の後に、工程(S4)を少なくとも1回以上繰り返し行うようにしてもよい。
【0081】
なお、バブル含有液体100としては、本発明者らによって執筆された以下の論文に記載された方法によっても製造することができ、その開示は全体として参照により本明細書に組み込まれる。
(1)「Echographic and physical characterization of albumin-stabilized nanobubbles」Akiko Watanabe,Katsuro Tachibanaら,Heliyon,Volume 5,Issue 6,June 2019,e01907
(2)「Nanobubble Mediated Gene Delivery in Conjunction With a Hand-Held Ultrasound Scanner」Hiroshi Kida, Katsuro Tachibanaら,Front.Pharmacol.,01 April 2020 Sec.Translational Pharmacology
(3)「Influence of Nanobubble Size Distribution on Ultrasound-Mediated Plasmid DNA and Messenger RNA Gene Delivery」Hiroshi Kida,Katsuro Tachibanaら,Front.Pharmacol.,01 June 2022 Sec.Translational Pharmacology
【0082】
また、バブル含有液体100は、以下に記載する方法によって製造することもできる。
図6は、バブル含有液体の製造方法のその他の例を説明するための図である。
図6に示すように、その中央に薄膜73が設けられた製造容器70を準備する。製造容器70の薄膜73により仕切られた図中左側の空間には、凍結乾燥法により形成されたバブルパウダーおよびmRNAパウダーを配置し、製造容器70の薄膜73により仕切られた図中左側の空間には、水性液体を配置する。
この薄膜73は、バブルパウダーおよびmRNAパウダーと、水性液体とが混合されるのを防止する機能を有しており、
図6に示す状態では、各パウダーと水性液体とが混ざらないようになっている。一方、製造容器70を振動させて、各パウダーおよび水性液体が薄膜73に衝突することにより、薄膜73が破れて、各パウダーと水性液体とが混ざり合い、バブル含有液体100を得ることができる。
一般的に、薬剤と水性液体とを混ぜると、混ぜた直後から薬物の効力の劣化が始まる。
図6に示すような製造容器70を用いることにより、患者の患部に薬液を注入する直前に薬物が劣化していないバブル含有液体100を準備することができるため、より治療効果を高めることができる。
【0083】
以上、本実施形態の薬液注入装置について説明したが、ホルダー10としては、
図1および
図2に示す形状に限られず、例えば、
図7(a)に示すようなホルダー10を用いることができる。
【0084】
図7(a)は、本発明の第1実施形態にかかる薬液注入装置の変形例を模式的に示す斜視図であり、
図7(b)は、
図7(a)の薬液注入装置を操作する時の持ち方を説明するための図である。
図7(a)に示すホルダー10は、上側に操作者の人差し指、中指、薬指が嵌るように構成された3つの凹部111を備えている。また、
図7(a)のホルダー10では、電力供給部6が、基端側の隣接する凹部111間の盛り上がった部分(凸部)のホルダー10内周面に設けられており、スイッチ7が、ホルダー10の先端側に設けられている。なお、
図7(b)に示すように、スイッチ7は、操作者が薬液注入装置1を把持した状態で、操作者の小指の指先の腹で押圧することが可能な位置に設けられている。
【0085】
図7(a)に示す薬液注入装置1は、
図7(b)に示すようにして、操作者に把持されて、操作される。すなわち、操作者は、薬液注入装置1の注射針31を患者の患部に穿刺した後、供給装置4の押圧部を親指で押圧して、薬液を患部に注入する。本体2内の薬液を注射針31から患部に注入した後、小指でスイッチ7を押圧してONにする操作を行い、超音波振動子5から超音波を発生させて、患部に対して超音波を付与する。したがって、操作者は、薬液注入装置1を把持したまま、大きく手を動かすことなく、親指と小指とを僅かに動かすだけで、患部への薬液の注入および患部への超音波の付与を行うことができる。また、かかるホルダー10の形状では、操作者の人差し指、中指、薬指でホルダー10(薬液注入装置1)をしっかり把持することができるため、操作の安定性が向上し、誤操作をより確実に防止することができる。
【0086】
また、本実施形態の薬液注入装置としては、
図8に示すようなスイッチ7を用いることもできる。
【0087】
図8は、本発明の第1実施形態にかかる薬液注入装置の変形例の部分断面図である。
図8に示す薬液注入装置1では、超音波振動子5の基端側と先端側とに一対の電極501、502が取り付けられている。また、スイッチ7は、ホルダー10の先端部の上側に設けられ、電極502と接続される第1のスイッチ部75と、ホルダー10の先端部の下側に設けられ、電極501と接続される第2のスイッチ部76とを備えている。
【0088】
かかる構成の薬液注入装置1では、第1のスイッチ部75と第2のスイッチ部76とを、ホルダー10の内側に向かって同時に押圧することにより、超音波振動子5の各電極501、502と電力供給部6とが導通する。その結果、各電極501、502には、
図8の矢印に示す方向に電流が流れて、超音波振動子5の一対の電極501、502間に交流電圧が印加され、超音波を発生する。なお、かかる構成の薬液注入装置1では、電極502が患部に直接接触して、超音波振動子5が患部に電極502を介して間接的に接触するように構成されている。電極502は、超音波振動子5が発生する超音波を、患部に効率良く付与することができる。
【0089】
図8に示す構成では、第1のスイッチ部75および第2のスイッチ部76のいずれか一方を押圧しただけでは、超音波振動子5の一対の電極501、502間に交流電圧が印加されることはない。そのため、誤って第1のスイッチ部75および第2のスイッチ部76のいずれか一方を押圧してしまった時に、超音波を発生させてしまう等の誤操作を防止することができる。
【0090】
また、上述した本実施形態の薬液注入装置では、操作者がスイッチ7を直接押圧等して操作する構成であるが、
図9に示すような構成のスイッチ7を用いることもできる。
【0091】
図9は、本発明の第1実施形態にかかる薬液注入装置の変形例の模式図である。
図9に示す薬液注入装置1では、超音波振動子5が、その基端側に設けられた2つの電極接点503を備えている。超音波振動子5は、2つの電極接点503間に交流電圧が印加されることにより、超音波を発生する。
ホルダー10は、超音波振動子5がホルダー10の先端部に接触または離間するようにして、超音波振動子5を支持する図示しない支持部を有する。薬液注入装置1の使用前の状態において、ホルダー10と超音波振動子5とは、互いに離間している。また、ホルダー10は、先端側に2つの電極接点503と対向して配置された一対の電極101を備える。すなわち、
図9に示す薬液注入装置1では、超音波振動子5の代わりに、ホルダー10の先端側に一対の電極101が設けられている。また、一対の電極101は、電力供給部6に図示しない配線で接続されている。
【0092】
かかる構成の薬液注入装置1では、ホルダー10の先端部を超音波振動子5に近づけていき、2つの電極接点503と一対の電極101とが接触した際に、これらが導通し、電力供給部6からの電力を超音波振動子5に供給して、超音波振動子5が超音波を発生する。すなわち、2つの電極接点503および一対の電極101は、互いに接触することにより、電力供給部6からの電力を超音波振動子5に供給するスイッチ7として機能する。
かかる構成の薬液注入装置1では、患者の患部に注射針31を介して薬液を注入する際には、超音波振動子5をホルダー10から離間した状態とする。その後、薬液を患部に注入した後に、2つの電極接点503と一対の電極101とが接触するまでホルダー10を先端方向に押圧することにより、超音波振動子5から超音波を発生させて、患部に対して超音波を付与することができる。また、超音波振動子5からホルダー10を離間させることにより、超音波振動子5に供給される電力を遮断して、超音波振動子5からの超音波の発生が止まる。
かかる構成では、ホルダー10を先端方向に押圧するという極めて簡単な操作で、患部への超音波の付与を行うことができる。
【0093】
さらに、
図10に示すような構成のスイッチ7を用いることもできる。
【0094】
図10は、本発明の第1実施形態にかかる薬液注入装置の変形例の模式図であり、
図10(a)は、ホルダーを分割した状態を示す図であり、
図10(b)は、薬液注入装置の基端側を示す図である。
図10(a)に示す薬液注入装置1では、ホルダー10が、その長手方向に2分割される構成であり、第1の半割部102と、第2の半割部103とを備えている。電力供給部6は、第2の半割部103の内周面に設けられており、第1の半割部102に第2の半割部103を取り付けてホルダー10とした際に、超音波振動子5と電力供給部6との配線(図示せず)が接続されるように構成されている。
また、第1の半割部102および第2の半割部103は、それぞれの基端部に、凹状に形成された導電部104を有している。第1の半割部102および第2の半割部103の導電部104同士が導通することにより、電力供給部6からの電力を超音波振動子5に供給することができるように構成されている。
【0095】
供給装置4は、
図10(b)に示すように、押圧部から立設する2つのコネクタ401を備えている。2つのコネクタ401同士は、図示しない配線により接続される。
かかる構成の薬液注入装置1は、
図10(a)に示すように、第1の半割部102により本体2を支持した状態で、第1の半割部103を第1の半割部102に取り付けることにより組み立てられる。
その後、注射針31を患者の患部に穿刺し、供給装置4を押圧することにより、薬液を患部に注入する。その後、供給装置4を押圧し続けて、第1の半割部102および第2の半割部103に設けられた各導電部104に2つのコネクタ401が接触した際に、これらが導通し、電力供給部6からの電力を超音波振動子5に供給して、超音波振動子5が超音波を発生する。すなわち、各導電部104および2つのコネクタ401は、互いに接触することにより、電力供給部6からの電力を超音波振動子5に供給するスイッチ7として機能する。
かかる構成では、ホルダー10を組み立てて薬液注入装置1とした状態でなければ、スイッチ7が作動することはない。そのため、薬液注入装置1を使用しないにもかかわらず、誤操作でスイッチ7をONにしてしまい、電力供給部6からの電力を無駄遣いしてしまうという不具合の発生を防止することができる。
【0096】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態にかかる薬液注入装置について説明する。
【0097】
図11は、本発明の第2実施形態にかかる薬液注入装置の断面図である。
以下、第2実施形態の薬液注入装置について、前記第1実施形態の薬液注入装置との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0098】
本実施形態では、
図11に示すように、薬液付与部3が、注射針31と、注射針31を挿通する支持部32と、支持部32の本体2側の外周に設けられた固定部33とを備えている。
注射針31は、前述した第1実施形態の薬液注入装置1が備える注射針31と同様の注射針を用いることができる。
支持部32は、円筒状をなし、その略中央を注射針31が挿通して、注射針31を支持固定している。
また、固定部33は、支持部32と本体2の連結部22とを固定するように構成されている。
本実施形態では、注射針31を支持固定する支持部32、固定部33および超音波振動子5が互いに固定されている。
【0099】
また、本実施形態において、連結部22には、注射針31を挿通する開口が設けられているが、前述した第1実施形態の薬液注入装置のように、注射針31は連結部22に支持固定されていない。
注射針31は、支持部32に装着され、連結部22の開口を介して本体2の内部空間21と連通する。
超音波振動子5は、ホルダー10の先端側の内周面に着脱可能に取り付けられる。本実施形態では、超音波振動子5の外周面に一対の電極(図示せず)が取り付けられ、超音波振動子5をホルダー10に取り付けた際に、各電極が電力供給部6と接続される。
【0100】
かかる構成の薬液注入装置1においても、前述した第1実施形態の薬液注入装置1と同様の手順で、患部への薬液の注入および患部への超音波の付与を行うことができる。
本実施形態では、注射針31(および支持部32、固定部33)と超音波振動子5とが、本体2およびホルダー10から着脱可能に構成されており、薬液注入装置1の使用後、本体2およびホルダー10から注射針31(および支持部32、固定部33)および超音波振動子5を取り外し、別の患者に使用する際には、同じ構成の新たな注射針31(および支持部32、固定部33)および超音波振動子5を本体2およびホルダー10に装着する。かかる構成では、1人の患者に対して、極めて少量の薬液を投与する治療方法において、注射器自体を患者毎に取り換えることなく、注射針31および超音波振動子5のみを交換することにより、本体2内の薬液を無駄にすることなく使いきることができる。特に、コストが高い薬液を使用する場合には、本実施形態の薬液注入装置1を用いることにより、治療コストを抑えることができる。
【0101】
かかる第2実施形態の薬液注入装置によっても、前記第1実施形態の薬液注入装置と同様の作用・効果を生じる。
【0102】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態にかかる薬液注入装置について説明する。
【0103】
図12は、本発明の第3実施形態にかかる薬液注入装置を模式的に示す斜視図である。
以下、第3実施形態の薬液注入装置について、前記第1および第2実施形態の薬液注入装置との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0104】
本実施形態では、超音波振動子5の本体2と反対側に接触センサ12を備えている以外は、前述した第1実施形態の薬液注入装置と同様である。
図12に示すように、接触センサ12は、超音波振動子5の本体2と反対側に設けられている。そのため、本実施形態の薬液注入装置1では、注射針31を患者の患部に穿刺する際に、接触センサ12が患部に直接接触して、超音波振動子5が患部に接触センサ12を介して間接的に接触するように構成されている。
【0105】
接触センサ12は、その中央に本体2の連結部22を収容可能な開口を備えたリング状の接触センサであり、その開口に連結部22に装着された注射針31が貫通するように構成されている。接触センサ12の開口径および外径は、超音波振動子5と略同じである。
接触センサ12は、電力供給部6およびスイッチ7と配線(図示せず)により接続される。また、本実施形態の薬液注入装置1では、接触センサ12が患者の患部に接触したことを感知する信号を受けて、スイッチ7に所定のタイムスケジュールで自動的にON/OFFの信号を電力供給部6に送信する、マイクロプロセッサ(コンピュータ)を含む制御部(図示せず)を有している。また、制御部は、超音波振動子からの超音波の発生およびその停止を制御するための制御プログラムを保存するROMと、データを一時保存するためのRAMと、ROM内の制御プログラムを実行するCPUとを備える。
本実施形態の薬液注入装置は、以下のようにして用いられる。
【0106】
図13は、本発明の第3実施形態にかかる薬液注入装置の使用方法を説明するためのフローチャートである。
図13に示すように、まず、薬液が充填された薬液注入装置の注射針を患者の患部に穿刺する(S6)。次に、供給装置4の押圧部を注入方向に押圧して、薬液を患部に注入する(S7)。
【0107】
本体2内の薬液を患部に注入した後、接触センサ12を患部に接触させると(S8)、制御部は、接触センサ12が患者の患部に接触したことを感知する信号を受信した後、スイッチ7をONにする制御を行い、電力供給部6からの電力を超音波振動子5に供給して、超音波振動子5が所定の時間にわたって超音波を発生する(S9)。
一方、本体2内の薬液を患部に注入した後、接触センサ12が患部に接触していない状態であると(S8)、制御部は、ホルダー10に設けられたスピーカー(図示せず)から警報音を鳴らす(S10)。または、制御部は、ホルダー10の外表面に設けられたLED表示部(図示せず)を、接触センサ12が患部に接触していない状態を示す赤色に点灯させる(S10)。接触センサ12が患部に接触するまで、ステップS10の状態が維持され、待機状態となる(S11)。
その後、ステップ9でスイッチ7をONにしてから所定時間経過後に、制御部は、スイッチ7をOFFにする制御を行い、超音波振動子5に供給される電力を遮断して、超音波振動子5からの超音波の発生が止まる(S12)。
上述したステップS9およびステップS12は、制御部に含まれるマイクロプロセッサで実行される制御プログラムにより実行可能である。
なお、前述した第1実施形態と同様に、患部に対する超音波の付与は、薬液を患部に注入した後に限られない。例えば、薬液を患部に注入しながら、接触センサ12を患部に接触させることにより、ステップS9およびステップS12が実行されてもよい。
【0108】
本実施形態の薬液注入装置1では、スイッチ7が、電力供給部6と同様にホルダー10の基端側の内周面に設けられている。操作者はスイッチ7を操作することなく、制御部が、接触センサ12が患者の患部に接触したことを感知する信号を受信した後、所定のタイムスケジュールでスイッチ7を自動的にON/OFFとする制御を行うように構成されている。かかる構成の薬液注入装置1では、操作者が患部に薬液を注入することに集中することができるとともに、薬液注入が完了する前に誤ってスイッチ7をONにする操作をしてしまう等の誤操作を防止することができる。
【0109】
また、本実施形態の薬液注入装置1としては、さらに、本体2内の薬液量をモニターする液量センサ(図示せず)をホルダー10に搭載した構成を採用することもできる。
かかる液量センサは、電力供給部6と配線(図示せず)により接続されている。また、かかる構成の薬液注入装置1では、液量センサが本体2内の薬液がなくなったことを感知する信号を制御部に送信するように構成されている。
かかる構成の薬液注入装置1は、以下のようにして用いられる。
図14は、本発明の第3実施形態にかかる薬液注入装置の変形例の使用方法を説明するためのフローチャートである。
【0110】
図14に示すように、まず、薬液が充填された薬液注入装置の注射針を患者の患部に穿刺する(S6)。次に、供給装置4の押圧部を注入方向に押圧して、薬液を患部に注入する(S7)。
次に、本体2内の薬液がなくなると、液量センサが本体2内の薬液がなくなったことを感知する信号を制御部に送信する(S7-2)。なお、かかる構成の薬液注入装置1では、制御部が、液量センサが本体2内の薬液がなくなったことを感知する信号を受信する前では、接触センサ12が患者の患部に接触したことを感知する信号を受信しても、スイッチ7をONにする操作を行わない。すなわち、本体2内の薬液がなくなる前では、接触センサ12を患部に接触させても、スイッチ7がONになることはない。
本体2内の薬液がなくなった状態で、接触センサ12を患部に接触させると(S8)、制御部は、液量センサが本体2内の薬液がなくなったことを感知する信号、および接触センサ12が患者の患部に接触したことを感知する信号を受信する。その後、制御部は、スイッチ7をONにする制御を行い、電力供給部6からの電力を超音波振動子5に供給して、超音波振動子5が所定の時間にわたって超音波を発生する(S9)。その後、ステップ9でスイッチ7をONにしてから所定時間経過後に、制御部は、スイッチ7をOFFにする制御を行い、超音波振動子5に供給される電力を遮断して、超音波振動子5からの超音波の発生が止まる(S12)。また、接触センサ12が患部に接触していない状態であると(S8)、
図13と同様に、警報音を鳴らしたり、または警報光を点灯(LED表示部を赤色に点灯)させ(S10)、その状態が維持される(S11)。
【0111】
上述したステップS7-2、ステップS9およびステップS12は、制御部に含まれるマイクロプロセッサで実行される制御プログラムにより実行可能である。
なお、かかる構成の薬液注入装置1は、接触センサ12および液量センサを備えているが、接触センサ12を取り外した構成とすることもできる。この場合には、制御部が、液量センサが本体2内の薬液がなくなったことを感知する信号を受信した後、所定のタイムスケジュールでスイッチ7を自動的にON/OFFとする制御を行うように構成する。
【0112】
接触センサ12は、メカニカルスイッチ、感圧導電性ゴム、圧電材料等で構成され、超音波振動子5が発生する超音波を、患部に効率良く付与することができる。
【0113】
かかる第3実施形態の薬液注入装置によっても、前記第1および第2実施形態の薬液注入装置と同様の作用・効果を生じる。
【0114】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態にかかる薬液注入装置について説明する。
【0115】
図15は、本発明の第4実施形態にかかる薬液注入装置の部分断面図であり、
図15(a)は、注射針を患部に穿刺する前の状態を説明するための図であり、
図15(b)は、注射針を患部に穿刺した状態を説明するための図である。
以下、第4実施形態の薬液注入装置について、前記第1ないし第3実施形態の薬液注入装置との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0116】
本実施形態では、超音波振動子5の構成およびホルダー10の先端側の構成が、前述した第1実施形態の薬液注入装置と異なる。
本実施形態の薬液注入装置1では、超音波振動子5が、本体2に対して、注射針31の延在方向に移動可能に構成されている。
より具体的には、
図15(a)および(b)に示すように、超音波振動子5は、その基端側(右側)に固定された摺動部51を有する。摺動部51は、ホルダー10の先端側の内周面に取り付けられ、注射針31の延在方向(基端方向、先端方向)に摺動可能に構成されている。また、摺動部51の本体2側には、第1の導電部材52が設けられている。
また、ホルダー10は、本体2を内部に収容する外壁部と、外壁部の内周面に固定され、本体2の縮径部を支持固定する本体固定部15とを備えている。また、本体固定部15の先端側には、第1の導電部材52と対向して配置された第2の導電部材13が設けられている。第1の導電部材52および第2の導電部材13は、電力供給部6に図示しない配線で接続されている。
【0117】
図15(a)に示すように、注射針31を患部に穿刺する前の状態では、超音波振動子5の本体2とは反対側の表面が、注射針31の先端よりも本体2から離れた位置に存在する。そのため、
図15(a)の状態では、注射針31が超音波振動子5およびホルダー10(本体固定部15)により画定される空間内に収容されている。
この状態から、超音波振動子5を患部に接触させ、さらに第1の導電部材52と第2の導電部材13とが接触するまで薬液注入装置1を患部に押し当てると、
図15(b)に示すように、注射針31の先端が超音波振動子5およびホルダー10により画定される空間から先端方向に突出する。これにより、注射針31を患者の患部に穿刺することができる。
【0118】
薬液注入装置1を患部に押し当てて、
図15(b)の状態になると、第1の導電部材52と第2の導電部材13とが導通し、電力供給部6からの電力を超音波振動子5に供給して、超音波振動子5が超音波を発生する。すなわち、第1の導電部材52および第2の導電部材13は、互いに接触することにより、電力供給部6からの電力を超音波振動子5に供給するスイッチとして機能する。
また、
図15(b)の状態から、薬液注入装置1を患部から離れる方向に動かすと、第1の導電部材52と第2の導電部材13とが離間し、超音波振動子5に供給される電力を遮断して、超音波振動子5からの超音波の発生が止まる。
【0119】
かかる構成の薬液注入装置1では、薬液注入装置1を患部に押し当て、第1の導電部材52と第2の導電部材13とが接触する前の段階で薬液を患部に注入する。その後、薬液を患部に注入した後に、第1の導電部材52と第2の導電部材13とが接触するまで薬液注入装置1を患部に押し当てることにより、超音波振動子5から超音波を発生させて、患部に対して超音波を付与することができる。本実施形態の薬液注入装置1では、薬液注入装置1を患部に押し当てる強さを変えるという極めて簡単な操作で、患部への超音波の付与およびその停止を行うことができる。
【0120】
かかる第4実施形態の薬液注入装置によっても、前記第1ないし第3実施形態の薬液注入装置と同様の作用・効果を生じる。
【0121】
<第5実施形態>
次に、本発明の第5実施形態にかかる薬液注入装置について説明する。
【0122】
図16は、本発明の第5実施形態にかかる薬液注入装置の模式的に示す側面図である。
以下、第5実施形態の薬液注入装置について、前記第1ないし第4実施形態の薬液注入装置との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0123】
本実施形態では、本体2として、前述した各実施形態で使用する注射器本体の代わりに、内部に薬液が充填され、開口部がゴム栓23で封止されたバイアル瓶を用いる。
バイアル瓶内には、薬液と前述した各種ガスが封入されており、バイアル瓶内の圧力は1.0atmよりも大きくなっている。なお、バイアル瓶内の圧力は、1.5~10atmであるのが好ましく、2~5atmであるのがより好ましい。
また、本実施形態では、前述した第2実施形態で使用する注射針31および超音波振動子5と、同様の構成の注射針31および超音波振動子5を用いることができ、これらは、本体2およびホルダー10から着脱可能に構成されている。
【0124】
また、本実施形態の薬液注入装置1では、
図16に示すように、ホルダー10が、本体2を内部に収容する外壁部14と、外壁部14の先端に取り付けられ、その中心に超音波振動子5が挿通可能な開口を有する板状部17と、外壁部14の内周面に沿って注射針31の延在方向(基端方向、先端方向)に移動可能に構成され、本体2のゴム栓23に固定される本体固定部15とを備えている。
さらに、超音波振動子5の側面にばね固定部531が設けられ、ばね固定部531の本体2と反対側(先端側)に第1のコイルばね53の一端が取り付けられており、第1のコイルばね53の他端が板状部17に取り付けられている。また、本体固定部15の先端側に第2のコイルばね54が取り付けられている。
【0125】
第1のコイルばね53には、供給装置4により本体2を押圧して、ゴム栓23が超音波振動子5の基端部に接触するまで本体固定部15が先端側に移動した際に、第2のコイルばね54とともに、本体固定部15を基端側に押し返そうとする弾性力が働く。すなわち、供給装置4により本体2を押圧しても、ゴム栓23が超音波振動子5の基端部に接触していない状態では、第1のコイルばね53は変形しない。
第2のコイルばね54には、供給装置4により本体2を押圧して、本体固定部15が先端側に移動した際に、本体固定部15を基端側に押し返そうとする弾性力が働く。第2のコイルばね54には、本体固定部15が先端側に移動する際に、常に、本体固定部15を基端側に押し返そうとする弾性力が働く。
【0126】
かかる構成の薬液注入装置1では、患部に薬液注入装置1の先端(板状部17)を接触させた状態で、供給装置4の押圧部を押圧することにより、まず、第2のコイルばね54の先端が板状部17に当接して、第2のコイルばね54のみが変形(収縮)して本体固定部15が先端側に移動し、注射針31がゴム栓23を穿通する。さらに供給装置4の押圧部を押圧し続けることにより、第1のコイルばね53および第2のコイルばね54のいずれも変形し、超音波振動子5が板状部17の開口を挿通して患者の患部に接触するとともに、注射針31を患部に穿刺することができる。
本体2(バイアル瓶)内はガスにより加圧されているため、注射針31がゴム栓23を穿通すると、本体2内の薬液が注射針31を通って本体2の外側へと排出される。そのため、供給装置4の操作により、注射針31を患者の患部に穿刺すると、患部に薬液が注入される。
【0127】
患部に薬液を注入した後、スイッチ7をONにする操作を行い、超音波振動子5から超音波を発生させて、患部に対して超音波を付与する。その後、スイッチ7をOffにする操作を行い、超音波振動子5に供給される電力を遮断して、超音波振動子5からの超音波の発生が止まる。
【0128】
かかる構成の薬液注入装置1では、注射器を使用することなく、薬液が封入されたバイアル瓶を本体2としてそのまま用いることができる。そのため、薬液含有容器から注射器で本体2内に薬液を吸引する手間が省けるとともに、注射器の使用量を削減することができるというメリットがある。
【0129】
かかる第5実施形態の薬液注入装置によっても、前記第1ないし第4実施形態の薬液注入装置と同様の作用・効果を生じる。
【0130】
<第6実施形態>
次に、本発明の第6実施形態にかかる薬液注入装置について説明する。
【0131】
図17は、本発明の第6実施形態にかかる薬液注入装置を模式的に示す斜視図であり、
図17(a)は、薬液が充填されたカートリッジを説明するための図であり、
図17(b)および
図17(c)は、
図17(a)のカートリッジを挿入するホルダーを説明するための図である。
以下、第6実施形態の薬液注入装置について、前記第1ないし第5実施形態の薬液注入装置との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0132】
図17(a)に示すように、本実施形態では、本体2として、前述した第5実施形態と同様に、内部に薬液が充填され、開口部がゴム栓23で封止されたバイアル瓶を用いる。本実施形態においても、バイアル瓶内の圧力は1.0atmよりも大きくなっている。
また、本実施形態では、前述した第2および第5実施形態で使用する注射針31および超音波振動子5と同様の構成の注射針31および超音波振動子5を用いることができ、超音波振動子5の本体2と反対側(先端側)に第1のコイルばね53が取り付けられている。
本実施形態では、これらの本体2、超音波振動子5、注射針31および第1のコイルばね53が一体となって、
図17(b)および(c)に示すホルダー10のカートリッジ200として用いられる。
【0133】
本実施形態の薬液注入装置1では、
図17(b)および(c)に示すように、ホルダー10の略中央に、カートリッジ200を取り外しするための開閉部16が設けられている。
また、本実施形態のホルダー10は、電力供給部6、スイッチ7に加え、供給装置4を備える。
かかる構成の薬液注入装置1は、ホルダー10の開閉部16を開けてカートリッジ200をホルダー10に装着させた後、第5実施形態の薬液注入装置1と同様の手順により、患部への薬液の注入、および患部への超音波の付与を行うことができる。薬液注入装置1の使用後、ホルダー10の開閉部16を開けて使用済みのカートリッジ200を取り出し、新たなカートリッジ200を取り付けることにより、薬液注入装置1を直ぐに使用することができる。
【0134】
かかる構成の薬液注入装置1では、注射器を使用することなく、薬液が封入されたバイアル瓶を本体2としてそのまま用いることができる。また、本体2、超音波振動子5、注射針31および第1のコイルばね53が一体となったカートリッジ200を予め複数準備することにより、複数の患者に対して、連続して薬液注入装置1を使用することができる。
【0135】
かかる第6実施形態の薬液注入装置によっても、前記第1ないし第5実施形態の薬液注入装置と同様の作用・効果を生じる。
<第7実施形態>
次に、本発明の第7実施形態にかかる薬液注入装置について説明する。
【0136】
図18は、本発明の第7実施形態にかかる薬液注入装置を模式的に示す斜視図である。
以下、第7実施形態の薬液注入装置について、前記第1ないし第6実施形態の薬液注入装置との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0137】
本実施形態の薬液注入装置1は、薬液付与部3および連結部22の構成が異なる以外は、前述した第1実施形態の薬液注入装置と同様である。
図18に示すように、本実施形態の薬液注入装置1では、薬液付与部3が、本体2の連結部22の先端に固定されたスポンジ部34を備えている。また、連結部22が、挿通口221を有する。
【0138】
挿通口221は、供給装置4の操作により、本体2からスポンジ部34に薬液を供給する機能を有している。
スポンジ部34は、挿通口221を介して供給された薬液を、その内部に保持する機能を有している。薬液が内部に保持されたスポンジ部34を患者の患部に接触させることにより、スポンジ部34に保持された薬液がゆっくりと患者の皮膚表面から患部に浸透する。
本実施形態の薬液注入装置1は、前述した各実施形態のように、注射針を患者の患部に穿刺して、薬液を患部に注入することなく、皮膚表面から経皮的に患部に薬液を付与するようにして用いられる。
なお、本実施形態では、皮膚表面から皮下の細胞に浸透する種類の薬液を使用する。
【0139】
かかる構成の薬液注入装置1は、第1実施形態の薬液注入装置1と同様の手順により、患部への薬液の付与、および患部への超音波の付与を行うことができる。
【0140】
かかる第7実施形態の薬液注入装置によっても、前記第1ないし第6実施形態の薬液注入装置と同様の作用・効果を生じる。
<第8実施形態>
次に、本発明の第8実施形態にかかる薬液注入装置について説明する。
【0141】
図19は、本発明の第8実施形態にかかる薬液注入装置が備える、本体、薬液付与部、供給装置および超音波振動子を模式的に示す斜視図である。
以下、第8実施形態の薬液注入装置について、前記第1ないし第7実施形態の薬液注入装置との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0142】
本実施形態の薬液注入装置1は、本体2および供給装置4の構成が異なる以外は、前述した第2実施形態の薬液注入装置と同様である。
図19に示すように、本実施形態の薬液注入装置1では、本体2として、前述した第2実施形態の薬液注入装置1の注射器本体の代わりに、先端側および基端側に開口部を備えたバイアル瓶を用いる。また、供給装置4として、注射器を用いる。
本実施形態では、本体2は、先端側および基端側の開口部を封止するゴム栓23、24を備えている。また、本体2は、その内部に本体2の内周面に沿って先端方向または基端方向に移動可能に構成されたインナーピストン25を備えている。本体2の内部空間21は、インナーピストン25より先端側に薬液が充填される第1の空間211と、インナーピストン25より基端側にガスが充填される第2の空間212とを有する。
このような本体2は、まず、先端側の開口部から薬液を第1の空間211に充填し、その後、基端側の開口部からガスを第2の空間212に充填することにより得られる。
【0143】
供給装置4は、内部にガスが充填された注射器本体41と、注射器本体41の先端に装着される注射針42と、注射器本体41の基端側から挿入されるピストン43とを備えている。供給装置4の注射針41をゴム栓24に穿通し、ピストン43を押圧して第2の空間212内にさらにガスを加えることにより、第2の空間212内が加圧される。第2の空間212内のガスの圧力が大きくなると、インナーピストン25に先端側に移動する方向への力が働く。なお、ガスとしては、特別な種類のガスを使用する必要はなく、空気を用いることができる。
また、本実施形態では、第2実施形態の薬液供給装置1と同様に、注射針31を支持する支持部32とゴム栓23とが固定部33により固定される。注射針31は、ゴム栓23を穿通して、第1の空間211と連通する。
【0144】
本実施形態の薬液注入装置1は、以下のようにして使用することができる。
まず、薬液注入装置1の注射針31を患者の患部に穿刺する。次に、供給装置4の注射針41をゴム栓24に穿通し、ピストン43を押圧して注射器本体41内のガスを第2の空間212内に注入する。これにより、第2の空間212内が加圧されて、インナーピストン25に先端側に移動することにより、第1の空間211内の薬液が注射針31を通って、患部に薬液が注入される。
【0145】
その後、前述した第2実施形態と同様の手順により、患部への超音波の付与を行うことができる。
【0146】
かかる構成の薬液注入装置1では、薬液が封入されたバイアル瓶を本体2としてそのまま用いることができる。そのため、薬液含有容器から注射器で本体2内に薬液を吸引する手間が省ける。また、供給装置4として用いる注射器は、患者の患部に注射するために使用されないため、再利用することができる。
【0147】
かかる第8実施形態の薬液注入装置によっても、前記第1ないし第7実施形態の薬液注入装置と同様の作用・効果を生じる。
<第9実施形態>
次に、本発明の第9実施形態にかかる薬液注入装置について説明する。
【0148】
図20は、本発明の第9実施形態にかかる薬液注入装置を説明するための断面図であり、
図20(a)は、薬液注入装置の使用前の状態を説明するための図であり、
図20(b)および(c)は、薬液注入装置の使用中の状態を説明するための図である。
以下、第9実施形態の薬液注入装置について、前記第1ないし第8実施形態の薬液注入装置との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0149】
図20(a)に示すように、本実施形態の薬液注入装置1では、ホルダー10が、本体2を注射針31の延在方向に摺動可能に支持する支持部140と、支持部140の基端側に、本体2と支持部140との間に後述する第2のばね部46を収容可能に形成され溝部141と、基端142とを備えている。支持部140は、その先端において、ホルダー10の外周壁と結合している。
なお、本実施形態の薬液注入装置1で使用される本体2は、その基端が、胴体部よりも大きい径を有するフランジ部26を備えている。
【0150】
供給装置4は、前述した第1実施形態と同様の構成の摺動部410と、押圧部420とを有する。さらに、供給装置4は、摺動部410の先端に設けられ、本体2の内部空間21内に充填された薬液を密封するゴム栓430と、ホルダー10に取り付けられ、薬液注入装置1の使用前の状態で押圧部420の外周部と当接するストッパー44と、押圧部420の基端側に配置された第1のばね部45と、一部が溝部141に収容されるように配置された第2のばね部46とを備えている。
【0151】
ゴム栓430は、押圧部420が先端側に押圧された際に、摺動部410とともに、本体2の内周壁に沿って先端方向に移動するように構成されている。また、摺動部410は本体2の内周壁との摩擦抵抗がないのに対し、ゴム栓430は、本体2の内周壁との摩擦抵抗が比較的大きい。そのため、
図20(b)に示すように、押圧部420が先端方向に移動する初期の段階では、本体2内を摺動部410およびゴム栓430が移動することなく、ゴム栓430の摩擦抵抗によって、本体2(および注射針31)が先端方向に移動する。
【0152】
ストッパー44は、
図20(a)に示す薬液注入装置1の使用前の状態で、押圧部420の外周部と当接して、押圧部420が先端側に移動することを防止する機能を有している。本実施形態では、押しボタン(図示せず)の操作(押圧操作)により、ストッパー44が
図20(a)中の矢印方向に移動するように構成されている。ストッパー44が図中の矢印方向に移動することにより、押圧部420の移動防止状態が解除され、第1のばね部45の付勢力(弾性力)により、押圧部420が先端方向に移動することができる。
【0153】
第1のばね部45は、一端がホルダー10の基端部に固定され、他端が押圧部420に固定されている。薬液注入装置1の使用前の状態において、第1のばね部45は収縮しており、押圧部420を先端方向に押圧しようとする弾性力が働く。
第2のばね部46は、その一部が溝部141に収容され、一端がフランジ部26に固定され、他端が支持部140に固定されている。薬液注入装置1の使用前の状態において、第2のばね部46は伸張しており、いずれの部材に対しても弾性力は働かない。その後、押しボタンの操作(押圧操作)により、押圧部420の移動防止状態が解除されると、本体2(および注射針31)が先端方向に移動することに伴い、第2のばね部46は収縮していき、支持部140に対して、フランジ部26(本体2)を基端側に押し返そうとする付勢力(弾性力)が働く。
【0154】
また、超音波振動子5は、前述した各実施形態で使用する超音波振動子5と同様に、リング状の超音波振動子5を用いることができる。本実施形態では、超音波振動子5が支持部140の内周壁に支持固定されている。
【0155】
また、本実施形態の薬液注入装置1は、前述した第3実施形態の薬液注入装置1と同様に、操作者により押しボタンが操作された信号を受けて、スイッチ7に所定のタイムスケジュールで自動的にON/OFFの信号を電力供給部6に送信する制御部(図示せず)を有している。
制御部は、押しボタンが操作された信号を受信した後、所定時間後にスイッチ7をONにする制御を行い、電力供給部6からの電力を超音波振動子5に供給して、超音波振動子5が所定の時間にわたって超音波を発生する。その後、スイッチ7をOFFにする制御を行い、超音波振動子5に供給される電力を遮断して、超音波振動子5からの超音波の発生が止まる。
【0156】
かかる構成の薬液注入装置1では、患部に薬液注入装置1の先端を接触させた状態で、押しボタンを押圧することにより、ストッパー44が
図20(a)中の矢印方向に移動して、押圧部420の移動防止状態が解除される。その後、第1のばね部45の付勢力により、押圧部420が先端方向に移動する。押圧部420が先端方向に移動する初期の段階では、本体2の内周壁とゴム栓430との摩擦抵抗によって、フランジ部26が支持部140の基端142と当接するまで、本体2(および注射針31)が先端方向に移動し、患者の患部に注射針31が穿刺される(
図20(b))。その後、第2のばね部46のフランジ部26(本体2)を基端側に押し返そうとする付勢力(弾性力)が、本体2の内周壁とゴム栓430との摩擦力よりも大きくなることにより、本体2内をゴム栓が先端方向に移動して、注射針31を介して薬液が患部に注入される(
図20(c))。その後、制御部が、所定のタイムスケジュールでスイッチ7を自動的にON/OFFとする制御を行う。
【0157】
かかる構成の薬液注入装置1では、患部に薬液注入装置1の先端を接触させた状態で、押しボタンを押圧するだけで、患部への薬液の注入、および患部への超音波の付与を行うことができる。極めて簡単な操作で患部の治療を行うことができるため、薬液注入装置1の使用に熟練していない操作者であっても、患部に付与された薬液の効果を効率良く発現させることができる。
【0158】
かかる第9実施形態の薬液注入装置によっても、前記第1ないし第8実施形態の薬液注入装置と同様の作用・効果を生じる。
<第10実施形態>
次に、本発明の第10実施形態にかかる薬液注入装置について説明する。
【0159】
図21は、本発明の第10実施形態にかかる薬液注入装置が備える、本体、薬液付与部、供給装置および超音波振動子を模式的に示す斜視図である。
以下、第10実施形態の薬液注入装置について、前記第1ないし第9実施形態の薬液注入装置との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0160】
本実施形態の薬液注入装置1は、本体2および供給装置4の構成が異なる以外は、前述した第8実施形態の薬液注入装置と同様である。
図21に示すように、本実施形態の薬液注入装置1では、本体2として、前述した第2実施形態の薬液注入装置1の注射器本体の代わりに、先端側に開口部と、略中央に設けられ、内径が周囲より小さいくびれ部27とを備えたバイアル瓶を用いる。本体2は、くびれ部27よりも図中左側の第1の空間213と、くびれ部27よりも図中右側の第2の空間214とを備え、第1の空間213および第2の空間214は薬液で満たされている。
また、本体2の第2の空間214には、本体2内の薬液の液圧により収縮した状態のゴム製のバルーン47が配置され、本実施形態の供給装置4として機能する。このバルーン47は、注射針31がゴム栓23を穿通して第1の空間213と連通した際に、本体2の内部圧力が解放されることにより、膨張する。その結果、第2の空間214内の薬液が第1の空間213へと移動し、その液圧により薬液が注射針31を通って、患部に薬液が注入されるように構成されている。なお、バルーン47は、膨張しても、くびれ部27により、第1の空間213への移動が防止され、第2の空間214内に留まるように構成される。
また、本実施形態では、第2実施形態の薬液供給装置1と同様に、注射針31を支持する支持部32とゴム栓23とが固定部33により固定される。注射針31は、ゴム栓23を穿通して、第1の空間211と連通する。
【0161】
本実施形態の薬液注入装置1は、以下のようにして使用することができる。
本実施形態では、注射針31および超音波振動子5を本体2に取り付けた後、注射針31を患者の患部に穿刺すると、本体2の内部圧力の解放に伴い、バルーン47が膨張する。その結果、第2の空間214内の薬液が第1の空間213へと移動し、その液圧により、自動的に薬液が注射針31を通って、患部に薬液が注入される。
【0162】
その後、前述した第2実施形態と同様の手順により、患部への超音波の付与を行うことができる。
【0163】
かかる構成の薬液注入装置1では、注射針31を患者の患部に穿刺した後、操作者が供給装置4を操作することなく、自動的に薬液を患部に注入することができる。また、薬液が封入されたバイアル瓶を本体2としてそのまま用いることができる。そのため、薬液含有容器から注射器で本体2内に薬液を吸引する手間が省ける。
【0164】
かかる第10実施形態の薬液注入装置によっても、前記第1ないし第9実施形態の薬液注入装置と同様の作用・効果を生じる。
【実施例0165】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
(実施例1)アルブミンナノバブルとソノポレーターを用いた動物皮膚へのレポーター遺伝子導入
1.材料と方法
(1)ナノバブル
0.06%アルブミン/opti-MEM溶液を用いて、
図3に示す工程(S1)~(S5)を経て、ナノバブル含有液体を作成した。なお、製造容器に封入するガスとして、C
3F
8を使用した。
(2)遺伝子
哺乳動物細胞発現のルシフェラーゼのプラスミドベクターであるpGL4.51[luc2/CMV/Neo] (プロメガ株式会社) 6358bpを使用した。
(3)動物
16週齢の雄のC57BL/6Jマウスを使用した。なお、実験当日にマウスの背部の除毛を行った。
【0166】
(4)遺伝子+ナノバブル液の動物への投与と超音波照射
1注射当たり1000ngの遺伝子をナノバブル含有液体に混合して薬液を得た。次に、形成された複合体を含む100μLの薬液をイソフルラン吸入麻酔下のマウスの背部の左右に2か所、皮内注射した。その後、SP100(SONIDEL社)のトランスデューサをアコースティックゲルと塗り、背部右側の注射部位に圧着し、周波数1MHz、強度5W/cm、バースト比100Hz、デューティサイクル50%で30秒間、超音波を照射した。
【0167】
(5)遺伝子発現解析
遺伝子導入後のマウスを48時間飼育した後、吸入麻酔下に30mg/mLのD-ルシフェリン100μLを腹腔内注射した。次に、IVIS Lumina II(Xenogen社)内に、マウスに背臥位をとらせ、Living Image version 3.2(Xenogen社)を使って注射終了後5分経過後から1分間の相対発光量を積算して撮影した。
【0168】
2.結果と考察
撮影画像を
図22に示す。
図22に示すように、遺伝子とナノバブルを混合して注射した後、超音波照射をした部位では発光が観察された。また、遺伝子とナノバブルを混合して注射した後、超音波照射をしなかった部位では発光が観察されなかった。以上の結果から、超音波照射によってナノバブルの音響キャビテーションが生じ、細胞膜穿孔により表皮細胞への遺伝子導入が生じたと考えられる。
【0169】
(実施例2)In vitro実験
1.材料と方法
まず、実施例1と同じナノバブル含有液体(0.06%アルブミン/opti-MEM溶液、製造容器に封入するガス:C
3F
8)を準備した。
次に、HSC-2またはアストロサイト自然不死化株(C8-D1A)を培養した96ウェル細胞培養プレートにPEG-PLL/pNL1.3.CMV 200ngミセル(N/P=2)とバブル含有液体とを加えた。
その後、係る96ウェル細胞培養プレートに、振動子の直径0.8cm、40kHzの超音波を0秒、5秒、15秒それぞれ照射したサンプルを3つ準備し、48時間後にルシフェラーゼアッセイで遺伝子導入効率を評価した(後述する
図23のE、FおよびG)。
また、比較のため、ナノバブル含有液体の代わりに、0.06%アルブミン/opti-MEM溶液を用いて準備した96ウェル細胞培養プレートに、振動子の直径0.8cm、40kHzの超音波を0秒、5秒、15秒それぞれ照射したサンプルを3つ準備し、48時間後にルシフェラーゼアッセイで遺伝子導入効率を評価した(後述する
図23のB、CおよびD)。
評価結果を、
図23に示す。なお、
図23の縦軸は、遺伝子導入効率の指標として相対発光量の値(RLU値)を示しており、図中のAは、ネガティブコントロールを示す。
【0170】
図23に示すように、ミセル化pDNAでは、実施例2のナノバブル含有液体を用いることにより、ナノバブルを含まない溶液を用いた場合に比べて、遺伝子導入の増加が認められた。特に、実施例2のナノバブル含有液体を用いて、超音波を15秒照射した際(
図23のG)には、ナノバブルを含まない溶液を用いた場合に比べて、著しい遺伝子導入の増加が認められた。
【0171】
以上、本発明の薬液注入装置を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されず、各部材は、同様の機能を発揮し得る任意の部材と置換することができる。
例えば、前記第1ないし第10実施形態の任意の構成を組み合わせることもできる。
1…薬液注入装置、10…ホルダー、101…電極、102…第1の半割部、103…第2の半割部、104…導電部、11…支持部材、111…凹部、12…接触センサ、13…第2の導電部材、14…外壁部、140…支持部、141…溝部、142…基端、15…本体固定部、16…開閉部、17…板状部、2…本体、21…内部空間、211…第1の空間、212…第2の空間、213…第1の空間、214…第2の空間、22…連結部、221…挿通口、23…ゴム栓、24…ゴム栓、25…インナーピストン、26…フランジ部、27…くびれ部、3…薬液付与部、31…注射針、32…支持部、33…固定部、34…スポンジ部、4…供給装置、401…コネクタ、41…注射器本体、42…注射針、43…ピストン、44…ストッパー、45…第1のばね部、46…第2のばね部、47…バルーン、410…摺動部、420…押圧部、430…ゴム栓、5…超音波振動子、501、502…電極、503…電極接点、51…摺動部、52…第1の導電部材、53…第1のコイルばね、531…ばね固定部、54…第2のコイルばね、6…電力供給部、7…スイッチ、75…第1のスイッチ部、76…第2のスイッチ部、8…窓部、9…グリップ、50…バブル、60…混合液、61…空隙部、70…製造容器、71…容器本体、72…蓋、73…薄膜、721…ゴム栓、722…締付部、100…バブル含有液体、200…カートリッジ