(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034868
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】導電性組成物、導電体、ストレッチャブル導電材、及び電子デバイス
(51)【国際特許分類】
C08L 83/04 20060101AFI20240306BHJP
C08F 293/00 20060101ALI20240306BHJP
C08L 53/00 20060101ALI20240306BHJP
C08L 83/10 20060101ALI20240306BHJP
C08K 3/02 20060101ALI20240306BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20240306BHJP
H01B 1/00 20060101ALI20240306BHJP
H01B 5/14 20060101ALI20240306BHJP
H01B 7/06 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
C08L83/04
C08F293/00
C08L53/00
C08L83/10
C08K3/02
H01B1/22 A
H01B1/00 A
H01B1/00 L
H01B5/14 Z
H01B7/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139396
(22)【出願日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大庭 一敏
(72)【発明者】
【氏名】城▲崎▼ 梨紗子
(72)【発明者】
【氏名】中里 睦
【テーマコード(参考)】
4J002
4J026
5G301
5G307
5G311
【Fターム(参考)】
4J002BP03Y
4J002CP03W
4J002CP03X
4J002CP04W
4J002CP12W
4J002CP17X
4J002DA076
4J002FA016
4J002FD116
4J002GQ02
4J026HA11
4J026HA22
4J026HA29
4J026HA32
4J026HA38
4J026HA48
4J026HA49
4J026HB11
4J026HB20
4J026HB22
4J026HB38
4J026HB42
4J026HB45
4J026HC11
4J026HC22
4J026HC38
4J026HE02
5G301DA03
5G301DA42
5G301DA48
5G301DD01
5G301DE01
5G307GA03
5G307GB02
5G311BB06
5G311BC01
(57)【要約】
【課題】
本発明は、伸縮時にクラックの発生や抵抗値の断線を効果的に抑制することにより繰り返しの伸縮耐性に優れ、さらに導電性、耐湿熱性、及びシリコーン基材等の伸縮性フィルム基材への基材密着性や連続印刷性が良好な導電組成物、導電体、ストレッチャブル導電材、電子デバイスを提供することを目的とする。
【解決手段】
シリコーン樹脂(A)と、導電性微粒子(F)と、を含む導電性組成物であって、
前記導電性微粒子(F)が、タップ密度2.5g/cm3以下の連鎖状銀粉(f1)を含む、導電性組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン樹脂(A)と、導電性微粒子(F)とを含む導電性組成物であって、
前記導電性微粒子(F)が、タップ密度2.5g/cm3以下の連鎖状銀粉(f1)を含む、導電性組成物。
【請求項2】
前記導電性微粒子(F)の含有率が、導電性組成物に含まれる全固形分量に対して、60~95質量%である、請求項1記載の導電性組成物。
【請求項3】
前記連鎖状銀粉(f1)の含有率が、導電性組成物に含まれる全固形分量に対して、20~69質量%である、請求項1又は2記載の導電性組成物。
【請求項4】
さらに、前記導電性微粒子(F)が、フレーク状銀粉(f2)を含む、請求項1又は2記載の導電性組成物。
【請求項5】
前記シリコーン樹脂(A)が、付加硬化型シリコーン樹脂(a1)を含む、請求項1又は2記載の導電性組成物。
【請求項6】
前記シリコーン樹脂(A)が、シロキサン結合を有する(メタ)アクリルブロック共重合体(a2)を含む、請求項1又は2記載の導電性組成物。
【請求項7】
前記、シロキサン結合を有する(メタ)アクリルブロック共重合体(a2)が、シロキサン結合を有するアクリルモノマー由来の構造単位を有する、請求項6記載の導電性組成物。
【請求項8】
更に、シロキサン結合を有しない(メタ)アクリルブロック共重合体(B)を含む、請求項1又は2記載の導電性組成物。
【請求項9】
請求項1又は2記載の導電性組成物を含有する導電体。
【請求項10】
伸縮性の基材上に、請求項1又は2記載の導電性組成物の硬化物を有する導電体。
【請求項11】
前記伸縮性の基材が、シリコーン基材である、請求項10記載の導電体。
【請求項12】
請求項9記載の導電体を備える、ストレッチャブル導電材。
【請求項13】
請求項12記載のストレッチャブル導電材を備える、電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性組成物、導電体、ストレッチャブル導電材、及び電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な産業分野において導電材料が用いられており、これらの材料の更なる高機能化に関して種々の提案がなされている。特に近年は、フレキシブル性や伸縮性を備えるストレッチャブル導電材の開発が進み、アクチュエータ用途やウェアラブルセンサー用途へ向けた提案がなされている。
特許文献1には、低コストで高い耐久性を有する、伸縮性導電性被膜が開示されており、表面処理が施されていない銀被覆粒子を用い、さらに特定の添加材を組み合わせることにより、被膜伸長時に高い導電性が得られることが開示されている。
特許文献2には、ブロック共重合体と、特定の銀粉とを組み合わせることによって、著しく伸縮性が向上した導電体を得ることができる導電性組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/159374号
【特許文献2】国際公開第2017/026130号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
生体センシング等のヘルスケア機器、ウェアラブル機器、並びにロボティックス等の分野の進展に伴い、導電材料には、従来求められていた導電性のみならず、加工時及び使用時に曲面部や可動部に追随可能な伸縮性が求められる。
【0005】
また、曲面部や可動部に導電材料を用いると、繰り返し伸縮に伴う樹脂の構造破壊により、樹脂にクラックが発生しやすいという問題がある。特に、導電材料の場合には導電性微粒子を添加する場合が大半であり、伸長収縮の変形時に樹脂から導電材が剥離して樹脂中に空隙(ボイド)が発生し、そこを起点としてクラックが生じやすい。その結果、伸縮を重ねるごとに導電性が低下するという問題がある。
さらに、ストレッチャブル導電材を形成するためには、ペースト状等の導電性組成物を伸縮性基材に塗布し印刷パターンを形成させる必要がある。しかしながら、使用する導電性組成物によっては凝集物が発生し、各種伸縮性フィルム基材への(連続)印刷性が低下するという問題がある。また、各種伸縮性フィルム基材とペースト状等の導電組成物との親和性(相溶性)が悪く、特にシリコーン基材やオレフィン基材との基材密着性が十分でなく、導電組成物本来の材料特性を発揮できないという問題がある。
【0006】
本発明は、上記背景に鑑みてなされたものであり、繰り返し伸縮耐性、導電性、耐湿熱性、並びに、シリコーン基材等の伸縮性フィルム基材への基材密着性及び連続印刷性が良好な導電組成物、導電体、ストレッチャブル導電材、及び電子デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者が鋭意検討を重ねたところ、以下の態様において、本発明の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、シリコーン樹脂(A)と、導電性微粒子(F)とを含む導電性組成物であって、前記導電性微粒子(F)が、タップ密度2.5g/cm3以下の連鎖状銀粉(f1)を含む、導電性組成物に関する。
【0009】
また、本発明は、前記導電性微粒子(F)の含有率が、導電性組成物に含まれる全固形分量に対して、60~95質量%である、上記の導電性組成物に関する。
【0010】
また、本発明は、前記連鎖状銀粉(f1)の含有率が、導電性組成物に含まれる全固形分量に対して、20~69質量%である、上記の導電性組成物に関する。
【0011】
また、本発明は、さらに、前記導電性微粒子(F)が、フレーク状銀粉(f2)を含む、上記の導電性組成物に関する。
【0012】
また、本発明は、前記シリコーン樹脂(A)が、付加硬化型シリコーン樹脂(a1)を含む、上記の導電性組成物に関する。
【0013】
また、本発明は、前記シリコーン樹脂(A)が、シロキサン結合を有する(メタ)アクリルブロック共重合体(a2)を含む、上記の導電性組成物に関する。
【0014】
また、本発明は、前記、シロキサン結合を有する(メタ)アクリルブロック共重合体(a2)が、シロキサン結合を有するアクリルモノマー由来の構造単位を有する、上記の導電性組成物に関する。
【0015】
また、本発明は、更に、シロキサン結合を有しない(メタ)アクリルブロック共重合体(B)を含む、上記の導電性組成物に関する。
【0016】
また、本発明は、上記の導電性組成物を含有する導電体に関する。
【0017】
また、本発明は、伸縮性の基材上に、上記の導電性組成物の硬化物を有する導電体に関する。
【0018】
また、本発明は、前記伸縮性の基材が、シリコーン基材である、上記の導電体に関する。
【0019】
また、本発明は、上記の導電体を備える、ストレッチャブル導電材に関する。
【0020】
また、本発明は、上記のストレッチャブル導電材を備える、電子デバイスに関する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、繰り返し伸縮耐性、導電性、耐湿熱性、並びに、シリコーン基材等の伸縮性フィルム基材への基材密着性及び連続印刷性が良好な導電性組成物、導電体、ストレッチャブル導電材、及び電子デバイスを提供できるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る導電性組成物、導電体、ストレッチャブル導電材、及び電子デバイスについて順に詳細に説明する。
なお本発明において、硬化物とは、化学反応により硬化したもののみならず、例えば溶剤の揮発等、化学反応以外の方法で硬化したものを包含する。
【0023】
<導電性組成物>
本発明の導電性組成物は、シリコーン樹脂(A)と、導電性微粒子(F)とを含む導電性組成物であって、前記導電性微粒子(F)が、タップ密度2.5g/cm3以下の連鎖状銀粉(f1)を含む、導電性組成物である。
【0024】
<シリコーン樹脂(A)>
本発明の導電性組成物は、成膜性や、シリコーン基材をはじめとした伸縮性基材フィルムに対する密着性や印刷性を付与するために、バインダー性のシリコーン樹脂(A)を含有する。また、本発明においては、シリコーン樹脂(A)を含有することにより、導電層に柔軟性や伸縮性、特にシリコーン基材への密着性、印刷性を付与することができる。そのため、延伸又は収縮に際する導電層の断線が抑制される。更には、伸縮性シリコーン基材をはじめとした伸縮性フィルムへの密着性、連続印刷性が良好になる。
【0025】
シリコーン樹脂(A)の含有率は、導電性組成物に含まれる固形分全量に対し8~40質量%であることが好ましい。より好ましくは10~38質量%であり、15~35質量%であることが更に好ましい。シリコーン樹脂(A)の含有割合が上記範囲であることにより、導電層に十分な柔軟性を付与し、伸長時における導電層のクラック発生を効果的に抑制するとともに、十分な量の導電性微粒子(F)を含有することにより、導電性に優れた導電層を得ることができる。
【0026】
シリコーン樹脂(A)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0027】
前記シリコーン樹脂(A)としては、例えば、硬化タイプのシリコーン樹脂、シロキサン結合を有する開始剤又はモノマーを用いて合成した樹脂が挙げられる。
【0028】
硬化タイプのシリコーン樹脂としては、例えばオルガノポリシロキサン組成物を硬化させたシリコーンエラストマーが挙げられる。オルガノポリシロキサン組成物は、オルガノポリシロキサンを主成分(ベースポリマー)とするものであるが、その硬化方式は特に制限されず、例えば、従来公知の縮合硬化型、付加硬化型、有機過酸化物による硬化型、放射線硬化型等が挙げられる。本発明の導電性組成物においては、その中でも特に、付加硬化型シリコーン樹脂(a1)を用いると、硬化後の収縮が少なく、伸縮導電性の観点から好ましい。
【0029】
(付加硬化型シリコーン樹脂(a1))
付加硬化型シリコーン樹脂(a1)とは、構成成分として、1分子中に不飽和基を少なくとも2個有するポリシロキサン樹脂構成成分と、1分子中にヒドロシリル基を少なくとも2個有するポリシロキサン樹脂構成成分とが反応して生成するシリコーン樹脂である。なお、ヒドロシリル基とは、ケイ素原子に直接水素原子が結合している官能基を意味する。
【0030】
付加硬化型シリコーン樹脂(a1)としては、例えば、信越化学工業株式会社製のKE-1820、KE-1823、KE-1800T-A/B、KE-1031-A/B、KE103、KE-1051J-A/B、KE-1012-A/B、KE106、KE-1282-A/B、KE-1283-A/B、デュポン・東レスペシャルティマテリアルズ株式会社製のSILPOT184、東芝シリコーン株式会社製の商品YSR-3022、TPR-6700、TPR-6720、TPR-6721が挙げられる。
【0031】
(縮合硬化型シリコーン樹脂)
縮合硬化型シリコーン樹脂としては、例えば、KE-441、KE-471、KE-47が挙げられる。
【0032】
<シロキサン結合を有する(メタ)アクリルブロック共重合体(a2)>
また、シリコーン樹脂(A)の好ましい形態として、シロキサン結合を有する(メタ)アクリルブロック共重合体(a2)が挙げられる。シロキサン結合を有する(メタ)アクリルブロック共重合体(a2)は、例えば、シロキサン結合を有する開始剤又はモノマーを用いて合成することができ、伸縮性の観点から、シロキサン結合を有するアクリルモノマーを用いて合成することが好ましい。
尚、本発明において、(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタクリルを総称する用語であり、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートを総称する用語である。
【0033】
シロキサン結合を有する(メタ)アクリルブロック共重合体(a2)の重合に用いられる、シロキサン結合を有するアクリルモノマーとしては、例えばJNC株式会社製の反応性シリコーン(サイラプレーン)FM-0711、FM-0721、FM-0725、TM-0701Tが挙げられる。また、シロキサン結合を有するアクリルモノマーは、前記ソフトセグメント又はハードセグメントのどちらか一方、もしくは両方に共重合してもよいが、伸縮性の観点からソフトセグメントのみに共重合するのがより好ましい。
【0034】
また、シロキサン結合を有する(メタ)アクリルブロック共重合体(a2)の重合に用いられる、シロキサン結合を有する開始剤としては、例えば富士フイルム和光純薬社製の高分子アゾ開始剤「VPS-1001」、「VPS-1001N」が挙げられる。
【0035】
シリコーン樹脂(A)がシロキサン結合を有する(メタ)アクリルブロック共重合体(a2)である場合、当該ブロック共重合体(a2)中の、シロキサン結合を有するアクリルモノマー由来の構造単位の含有率は、ブロック共重合体中の30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが更に好ましく、60質量%以上であることがなお好ましく、70質量%以上であることが特に好ましい。また、100質量%としてもよい。
【0036】
シロキサン結合を有する(メタ)アクリルブロック共重合体(a2)は、後述するように、ソフトセグメント及びハードセグメントを含むことが好ましい。ソフトセグメントは、柔軟で屈曲性の高いポリマー鎖からなるブロック成分であり、ハードセグメントは、結晶化若しくは凝集しやすく、ソフトセグメントより剛性の高いポリマー鎖からなるブロック成分である。そして、シロキサン結合を有する(メタ)アクリルブロック共重合体(a2)は、ソフトセグメントがハードセグメントに挟まれた構成(すなわち、「ハードセグメント-ソフトセグメント-ハードセグメント」のトリブロック構造又は後述する星形ブロック構造)を有することがより好ましい。
【0037】
<シロキサン結合を有しない(メタ)アクリルブロック共重合体(B)>
本発明の導電性組成物は、更に、シロキサン結合を有しない(メタ)アクリルブロック共重合体(B)を含むことも好ましい。
シロキサン結合を有しない(メタ)アクリルブロック共重合体(B)は、ポリマー成分中にシロキサン結合を含まない(メタ)アクリルブロック共重合体を意味する。具体的には、例えばポリメチル(メタ)アクリレート/ポリn-ブチル(メタ)アクリレート/ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリスチレン/ポリn-ブチル(メタ)アクリレート/ポリスチレン等のトリブロック共重合体などが挙げられる。
【0038】
シロキサン結合を有しない(メタ)アクリルブロック共重合体(B)は、後述するように、ソフトセグメント及びハードセグメントを含むことが好ましい。そして、シロキサン結合を有しない(メタ)アクリルブロック共重合体(B)は、ソフトセグメントがハードセグメントに挟まれた構成(すなわち、「ハードセグメント-ソフトセグメント-ハードセグメント」のトリブロック構造又は後述する星形ブロック構造)を有することがより好ましい。
【0039】
シロキサン結合を有しない(メタ)アクリルブロック共重合体(B)は、市販品であってよい。市販品の例は、アルケマ社製のリビング重合を用いて製造されるアクリル系トリブロックコポリマーである。具体的には、ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリメチルメタアクリレートに代表されるSBMタイプ、ポリメチルメタアクリレート-ポリブチルアクリレート-ポリメチルメタアクリレートに代表されるMAMタイプ、及びカルボン酸変性処理又は親水基変性処理されたMAMNタイプ又はMAMAタイプを使用することができる。市販品の別の例は、クラレ社製の、メタクリル酸メチル及びアクリル酸ブチルから誘導されるブロック共重合体である。
【0040】
シロキサン結合を有しない(メタ)アクリルブロック共重合体(B)の含有率は、基材密着性と導電性の両立に優れた導電層形成の観点から、好ましくは全樹脂成分中の50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
【0041】
シロキサン結合を有しない(メタ)アクリルブロック共重合体(B)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
<ソフトセグメント及びハードセグメントを含むブロック共重合体>
以下、シロキサン結合を有する(メタ)アクリルブロック共重合体(a2)、及び、シロキサン結合を有しない(メタ)アクリルブロック共重合体(B)の好ましい形態である、ソフトセグメント及びハードセグメントを含むブロック共重合体について詳述する。
ソフトセグメント及びハードセグメントを含むブロック共重合体としては、下記式(1)で表されるブロック共重合体が挙げられる。
重合体ブロックA-重合体ブロックB・・・(1)
式(1)中、重合体ブロックAはガラス転移点Tgが20℃以上のブロック(ハードセグメント)であり、重合体ブロックBはガラス転移点Tgが200℃未満のブロック(ソフトセグメント)を示す。式(1)で表されるブロック共重合体を用いることにより、本実施形態に係る導電性組成物の硬化物が強靭性を発揮する。なお、ガラス転移点Tgは、示差走査熱量測定(DSC)を用いて測定できる。
本明細書では、式(1)を、「A-B」と略記することがある。
【0043】
また、トリブロック構造のブロック共重合体としては、下記式(2)で表されるブロック共重合体が挙げられる。
【0044】
重合体ブロックA-重合体ブロックB-重合体ブロックA・・・(2)
式(2)中、重合体ブロックA及び重合体ブロックBは、式(1)についての記載を援用できる。
本明細書では、式(2)を、「A-B-A」と略記することがある。
【0045】
そして、重合体ブロックAは、Tgが50℃以上のブロックであることが好ましく、重合体ブロックBは、Tgが-20℃以下であるブロックであることが好ましい。
【0046】
また、式(1)及び式(2)に示されるブロック共重合体において、ガラス転移点Tgがより小さい重合体ブロックBがソフトセグメントに対応し、ガラス転移点Tgがより大きい重合体ブロックAがハードセグメントに対応するブロックであることが好ましい。
なお、式(1)及び式(2)を比較すると、引っ張り破断伸度の観点から、式(2)のブロック共重合体を用いることが好ましい。
【0047】
そして、ブロック共重合体は、少なくとも20℃以上30℃以下の範囲において固形であることが好ましい。この温度範囲において固体であることで、柔軟性基材に塗布した場合、又は塗布後、乾燥させた場合に良好なタック性を確保できる。
【0048】
また、重合体ブロックAと重合体ブロックBの質量の比率が、15:85~40:60の範囲であることが好ましい。重合体ブロックAと重合体ブロックBの質量比率が上記範囲内にあると、伸長時に基材に追従し、断線が生じにくくなる。より好ましくは、20:80~35:75である。
【0049】
重合体ブロックAの例としては、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)及びポリスチレン(PS)等が挙げられる。重合体ブロックBの例としては、ポリn-ブチルアクリレート(PBA)及びポリブタジエン(PB)等が挙げられる。ブロック共重合体は、ポリメチル(メタ)アクリレート/ポリn-ブチル(メタ)アクリレート/ポリメチル(メタ)アクリレートのトリブロック共重合体であることが好ましい。尚、本願において(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートを総称する用語であり、他の類似の表現についても同様である。
【0050】
また、シロキサン結合を有する(メタ)アクリルブロック共重合体(a2)と、シロキサン結合を有しない(メタ)アクリルブロック共重合体(B)は、上述した式(1)、(2)で表されるブロック構造以外に、下記式(3)で表される星形ブロック構造であってもよい。
【0051】
[重合体ブロックA-重合体ブロックB]qX・・・(3)
式(3)中、qは2以上6以下の整数である。重合体ブロックA及び重合体ブロックBは、式(1)についての記載を援用できる。
「星形ブロック構造」とは重合体ブロックA-重合体ブロックBのジブロック体が、Xを起点として複数(2~6)結合されてなる(Xと重合体ブロックBが結合されてなる)[重合体ブロックA-重合体ブロックB]qXの構造をいう。Xは開始剤残基及び/若しくはカップリング剤残基、又はその誘導体である。
本明細書では、式(3)を、「[A-B]qX」と略記することがある。
【0052】
更に、「開始剤残基」とは、開始剤由来の部分構造をいい、ブロック共重合体中の開始剤に由来する残基を意味する。また、「カップリング剤残基」とは、カップリング剤由来の部分構造をいい、ブロック共重合体中のカップリング剤に由来する残基を意味する。また、「その誘導体」とは、開始剤残基及び/又はカップリング剤残基の一部が化学変換された構造をいう。例えば、ブロック共重合体の合成時に、開始剤残基及び/又はカップリング剤残基の一部が置換、付加された構造が含まれる。
【0053】
星形ブロック構造の場合の開始剤残基及び/若しくはカップリング剤残基、又はその誘導体Xの分子量は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において特に限定されない。例えば、50~2,500程度とすることができる。重合体ブロックAの連鎖末端に任意で有していてもよい開始剤残基又はその誘導体の分子量も同様に本発明の趣旨を逸脱しない範囲において特に限定されず、例えば、50~2,500程度とすることができる。
【0054】
本明細書における重合体ブロックAのTgは、ブロック共重合体が得られた段階で示差走査熱量測定(DSC)測定して得られた曲線において認められる<重合体ブロックA>TotalのTgであり、JISK7121:2012プラスチックの転移温度測定方法に基づき測定を行い、当該JIS9.3記載の補外ガラス転移開始温度(Tig)により求められる値とする。<重合体ブロックA>Totalに由来するTgは、同様の化学構造を有するブロックではない重合体のTgと同一又は近傍の数値となるので、ジブロック構造、トリブロック構造の場合には重合体ブロックBのTg、星形ブロック構造の場合には[重合体ブロックB]qXのTgと容易に区別が付けられる。<重合体ブロックA>Totalの上記Tg、及びそれぞれの重合体ブロックAのTgは、ブロック共重合体の連鎖末端、即ち、重合体ブロックAの連鎖末端の構造によって値は大きく変わらないので、本明細書においては、重合体ブロック(A)の連鎖末端も含めて、それぞれの重合体ブロックAのTg及び<重合体ブロックA>TotalのTgを判断するものとする。
【0055】
但し、各重合体ブロックAの単量体に由来する構造単位がブロック毎に異なるケースなどにおいて、DSC測定して得られた曲線において、複数のTgが観測される場合には、<重合体ブロックA>TotalのTgに代えて、それぞれの重合体ブロックAのTgにより判断するものとする。その場合には、各重合体ブロックAの重合が完了した時点でサンプリングしてTgを求める。或いは、それぞれの重合体ブロック(A)と同様の化学構造を有する重合体のTgと相関があるので、それぞれの対応する重合体のTgをFoxの式より求め、Tgが20℃以上であるか否かにより判断してもよい。Foxの式は、下記式(4)から求められる値である。
1/(TgA+273.15)=Σ[Wa/(Tga+273.15)]・・・(4)
式(4)中、TgAは重合体ブロックAのTg(℃)であり、Waは重合体ブロックAを構成する単量体aの質量分率であり、Tgaは単量体aの単独重合体(ホモポリマー)のTg(℃)である。なお、Tgaはホモポリマーの特性値として広く知られており、例えば、「POLYMERHANDBOOK,THIRDEDITION」に記載されている値や、メーカのカタログ値を用いることができる。
【0056】
本明細書における重合体ブロックBのTgは、ブロック共重合体がジブロック構造、トリブロック構造の場合には重合体ブロックBそのもののTgとし、星形ブロック構造の場合には[重合体ブロックB]qXのTgとする。ここで、ジブロック構造、トリブロック構造の重合体ブロックB、及び星形ブロック構造の[重合体ブロックB]qXを総称して<重合体ブロックB[X]>と表記する。
<重合体ブロックB[X]>のTgは、ブロック共重合体が得られた段階でDSC測定して得られた曲線において認められる<重合体ブロックB[X]>のTgであり、JISK7121:2012プラスチックの転移温度測定方法に基づき測定を行い、当該JIS9.3記載の補外ガラス転移開始温度(Tig)により求められる値とする。<重合体ブロックB[X]>のTgは、同様の化学構造を有する重合体のTgと同一又は近傍の数値となるので重合体ブロックAに由来するTgと容易に区別が付けられる。
【0057】
シロキサン結合を有する(メタ)アクリルブロック共重合体(a2)、及び、シロキサン結合を有しない(メタ)アクリルブロック共重合体(B)は、ブロック構造が、A-Bのジブロック構造、A-B-Aのトリブロック構造、又は[A-B]qXの星形ブロック構造であることが好ましく、重合体ブロックAの連鎖末端に開始剤残基又はその誘導体、官能基、不活性基、架橋性基、置換基などを有していてもよい。
【0058】
重合体ブロックAのTgは20℃以上であり、40℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましく、80℃以上であることが更に好ましく、100℃以上であることが特に好ましい。重合体ブロックAのTgの上限値は特に限定されないが、例えば300℃、250℃又は200℃とすることができる。この重合体ブロックAのTgは、前述したように<重合体ブロックA>TotalのTgに読み替えられる(以降においても同様とする。)。即ち、<重合体ブロックA>Totalは20℃以上であり、40℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましく、80℃以上であることが更に好ましく、100℃以上であることが特に好ましい。同様に、<重合体ブロックA>Totalの上限値は特に限定されないが、例えば300℃、250℃又は200℃とすることができる。
【0059】
ジブロック構造、トリブロック構造の場合の重合体ブロックBのTg、並びに星形ブロック構造の場合の[重合体ブロックB]qXのTg、即ち、<重合体ブロックB[X]>のTgは、020℃未満であり 、-10℃以下であることが好ましく、-20℃以下であることが特に好ましい。<重合体ブロック(B)[X]>のTgの下限値は特に限定されないが、例えば-100℃、-90℃又は80℃とすることができる。
【0060】
重合体ブロックAのTgと<重合体ブロックB[X]>のTgの温度差は特に限定されないが、75℃以上であることが好ましく、より好ましくは100℃以上、更に好ましくは125℃以上、特に好ましくは150℃以上である。75℃以上とすることにより、ミクロ相分離構造の形成を促進し、物理架橋による効果をより効果的に引き出すことができる。
【0061】
本発明における重量平均分子量(Mw)は、後述する実施例に記載する方法で求められる値である。シロキサン結合を有する(メタ)アクリルブロック共重合体(a2)、及び、シロキサン結合を有しない(メタ)アクリルブロック共重合体(B)のMwは、20,000以上500,000以下であることが好ましい。この範囲とすることにより、ブロック共重合体を導電性組成物として用いた場合に、伸縮強度と導電安定性を両立することができる。Mwの好ましい範囲は25,000~400,000であり、より好ましい範囲は30,000~300,000である。多分散度(Mw/Mn)は特に限定されないが、1~2.5であることが好ましく、1~2.0であることがより好ましく、1~1.8であることが更に好ましく、伸縮強度に影響を与えるミクロ相分離構造の形成を促進する観点からは多分散度を1~1.5、1~1.3とすることが特に好ましい。
【0062】
各重合体ブロックAのMwはそれぞれ異なっていてもよいが、伸縮性の観点からは実質的に同一であることが好ましい。同様に、各重合体ブロックBのMwはそれぞれ異なっていてもよいが、伸縮性の観点からは実質的に同一であることが好ましい。
【0063】
各重合体ブロックAの単量体に由来する構造単位は、ブロック毎に異なる単量体に由来する構造単位から構成されていてもよいし、ブロック間で同一の単量体に由来する構造単位から構成されていてもよい。重合体ブロックA同士は、単量体に由来する構造単位の60質量%以上が互いに共通していることが好ましく、70質量%が共通していることがより好ましく、80質量%以上が共通していることが更に好ましい。同様に、各重合体ブロックBは、ブロック毎に異なる単量体に由来する構造単位から構成されていてもよいし、ブロック間で同一の単量体に由来する構造単位から構成されていてもよい。好ましくは、重合体ブロックB同士は、単量体に由来する構造単位の60質量%以上が互いに共通していることが好ましく、70質量%が共通していることがより好ましく、80質量%以上が共通していることが更に好ましい。なお、ここで共通するとは、単量体の配列までは問わず、成分が共通していることを意味する。
【0064】
シロキサン結合を有する(メタ)アクリルブロック共重合体(a2)、及び、シロキサン結合を有しない(メタ)アクリルブロック共重合体(B)の結合形式は、ストレッチャブル導電材としての特性である、伸縮性及び伸縮導電性をより効果的に高める観点からは、A-B-A型のトリブロック構造、[A-B]qXのうちのq=2の2分岐構造、q=3の3分岐構造が好ましい。重合体ブロックA及び重合体ブロックBはそれぞれ独立に、1種単独又は2種以上の単量体由来の構造単位を有する。
【0065】
シロキサン結合を有する(メタ)アクリルブロック共重合体(a2)、及び、シロキサン結合を有しない(メタ)アクリルブロック共重合体(B)の好適例として、重合体ブロックAがメタクリル酸エステル由来の構造単位を50質量%以上含み、重合体ブロックBがアクリル酸エステル由来の構造単位を70質量%以上含むブロック共重合体が挙げられる。重合体ブロックA中のメタクリル酸エステル由来の構造単位は、より好ましくは60質量%以上であり、更に好ましくは70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上である。また、メタクリル酸エステル由来の構造単位を100質量%としてもよい。
【0066】
また、重合体ブロックB中のアクリル酸エステル由来の構造単位は、より好ましくは80質量%以上であり、更に好ましくは85質量%以上、90質量%以上、95質量%以上である。また、アクリル酸エステル由来の構造単位を100質量%としてもよい。重合体ブロックA、がメタクリル酸エステル由来の構造単位を50質量%以上含み、且つ重合体ブロックBがアクリル酸エステル由来の構造単位を70質量%以上含むことによって、より伸縮性に優れ、安定した伸縮導電性を発現することができる。
【0067】
重合体ブロックAのメタクリル酸エステル由来の構造単位を形成する単量体として、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ノルマルブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ターシャリブチルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ノルマルヘキシルメタクリレート、イソヘキシルメタクリレート、イソヘプチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、イソオクチルメタクリレート、ノルマルオクチルメタクリレート、イソノニルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、テトラデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、べへニルメタクリレート、イソステアリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、t-ブチルシクロヘキシルメチルメタクリレート、イソボロニルメタクリレート、トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、シクロデシルメタクリレート、シクロデシルメチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、t-ブチルベンゾトリアゾールフェニルエチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ナフチルメタクリレート、アリルメタクリレート等の、脂肪族、脂環族、芳香族アルキルメタクリレート類が例示できる。
また、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートなどのヒドロキシアルキル基の炭素数が2~4であるヒドロキシアルキルメタクリレート、グリセリンアクリレート、グリセリンメタクリレート等の水酸基を含有するメタクリル酸系モノマー類;メトキシメチルメタクリレート、メトキシエチルメタクリレート、メトキシプロピルメタクリレート、エトキシメチルメタクリレート、エトキシエチルメタクリレート、エトキシプロピルメタクリレートなどのアルコキシ基の炭素数が1~4であり、アルキル基の炭素数が1~4であるアルコキシアルキルメタクリレート等のアルコキシアルキルメタクリレート類;(ポリアルキレン)グリコールモノアルキル、アルキレン、アルキンエーテル又はエステルのモノメタクリレート類;アクリル酸やアクリル酸二量体を含む酸基(カルボキシ基、スルホン酸、リン酸)を有するメタクリル酸系モノマー類;酸素原子含有のメタクリル酸系モノマー類;アミノ基を有するメタクリル酸系モノマー類;窒素原子含有のメタクリル酸系モノマー類等を用いることができる。更に、その他、3個以上の水酸基をもつモノメタクリレート類、ハロゲン原子含有メタクリレート類、ケイ素原子含有のメタクリル酸系モノマー類、紫外線を吸収する基を有するメタクリル酸系モノマー類、α位水酸基メチル置換アクリレート類も例示できる。また、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンのポリアルキレングリコール付加物のメタクリル酸エステル等の、2個以上の付加重合性基を有するメタクリル酸系モノマー類を用いてもよい。
【0068】
重合体ブロックAのメタクリル酸エステル由来以外の構造単位を形成する単量体としては、メタクリル酸エステルと重合し得る他の単量体を用いることができる。具体的には、スチレン、アクリロニトリル等が挙げられる。
【0069】
重合体ブロックAの好適な例として、メチルメタクリレート由来の構造単位を50質量%以上含む態様が挙げられる。より好ましくはメチルメタクリレート由来の構造単位が60質量%以上であり、80質量%以上であることが更に好ましい。また、重合体ブロックA、の100質量%がメチルメタクリレート由来の構造単位であってもよい。
【0070】
重合体ブロックBのアクリル酸エステル由来の構造単位を形成する単量体として、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ノルマルブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、ターシャリブチルアクリレート、イソアミルアクリレート、ペンチルアクリレート、ノルマルヘキシルアクリレート、イソヘキシルアクリレート、イソヘプチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ノルマルオクチルアクリレート、イソノニルアクリレート、イソデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、テトラデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、べへニルアクリレート、イソステアリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、t-ブチルシクロヘキシルメチルアクリレート、イソボロニルアクリレート、トリメチルシクロヘキシルアクリレート、シクロデシルアクリレート、シクロデシルメチルアクリレート、ベンジルアクリレート、t-ブチルベンゾトリアゾールフェニルエチルアクリレート、フェニルアクリレート、ナフチルアクリレート、アリルアクリレートなどの、脂肪族、脂環族、芳香族アルキルアクリレート類が例示できる。
また、水酸基を含有するアクリル酸系モノマー類;グリコール基を有するアクリル酸系モノマー類;(ポリアルキレン)グリコールモノアルキル、アルキレン、アルキンエーテル又はエステルのモノアクリレート類;アクリル酸やアクリル酸二量体を含む酸基(カルボキシ基、スルホン酸、リン酸)を有するアクリル酸系モノマー類;酸素原子含有のアクリル酸系モノマー類;アミノ基を有するアクリル酸系モノマー類;窒素原子含有のアクリル酸系モノマー類等を用いることができる。更に、その他、3個以上の水酸基をもつモノアクリレート類、ハロゲン原子含有アクリレート類、ケイ素原子含有のアクリル酸系モノマー類、紫外線を吸収する基を有するアクリル酸系モノマー類、α位水酸基メチル置換アクリレート類も例示できる。また、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンのポリアルキレングリコール付加物のアクリル酸エステル等の、2個以上の付加重合性基を有するアクリル酸系モノマー類を用いてもよい。
【0071】
重合体ブロックBのアクリル酸エステル由来以外の構造単位としては、アクリル酸エステルと重合し得る他の単量体を用いることができる。例えば、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸等が挙げられる。
【0072】
重合体ブロックBの好適な例として、ブチルアクリレート由来の構造単位を70質量%以上含む態様が挙げられる。より好ましくはブチルアクリレート由来の構造単位が80質量%以上であり、90質量%以上であることが更に好ましい。また、重合体ブロックBの100質量%がブチルアクリレート由来の構造単位であってもよい。
【0073】
シロキサン結合を有する(メタ)アクリルブロック共重合体(a2)、及び、シロキサン結合を有しない(メタ)アクリルブロック共重合体(B)の好適な例として、重合体ブロックA中にメチルメタクリレート由来の構造単位を50質量%以上含み、且つ重合体ブロックB中にブチルアクリレート由来の構造単位を70質量%以上含む態様が例示できる。このようなブロック共重合体を、シロキサン結合を有する(メタ)アクリルブロック共重合体(a2)、及び/又は、シロキサン結合を有しない(メタ)アクリルブロック共重合体(B)に用いれば、優れたストレッチャブル導電材を提供できる。重合体ブロックA中のメチルメタクリレート由来の構造単位は、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上としてもよく、100質量%以上としてもよい。重合体ブロックB中のブチルアクリレート由来の構造単位は、80質量%以上、90質量%以上としてもよく、100質量%としてもよい。
【0074】
シロキサン結合を有する(メタ)アクリルブロック共重合体(a2)、及び/又は、シロキサン結合を有しない(メタ)アクリルブロック共重合体(B)を用いることによって、重合体ブロックAと重合体ブロックBが海島構造(体心立方)、シリンダー(ヘキサゴナル)、ジャイロイド、ラメラ相等の分子レベルでの相分離構造(ミクロ相分離構造)を形成することができる。ミクロ相分離構造を形成することによって、優れた伸縮性を付与し、伸縮に伴うクラック発生(断線)を効果的に抑制できる導電性組成物を提供できる。伸縮性をより効果的に高める観点からは、重合体ブロックAが島、重合体ブロックBが海に相当する海島構造であることがより好ましい。なお、ミクロ相分離構造は、原子間力顕微鏡(AtomicForceMicroscope、AFM)を用いて観察することにより確認できる。
【0075】
シロキサン結合を有する(メタ)アクリルブロック共重合体(a2)、及び、シロキサン結合を有しない(メタ)アクリルブロック共重合体(B)における、、重合体ブロックAと重合体ブロックBとの総量に対する重合体ブロックAの含有率は特に限定されないが、海島構造のミクロ相分離構造を容易に得る観点からは、1~50質量%であることが好ましく、15~30質量%であることがより好ましい。また、粘着性を効果的に引き出す観点からは、重合体ブロックAと重合体ブロックBとの総量に対する重合体ブロックA全体の含有率が、1~35質量%であることが好ましく、5~30質量%であることがより好ましい。ブロック共重合体における、重合体ブロックAと重合体ブロックBとの総含有率は特に限定されないが、ミクロ相分離構造を容易に得る観点からは、ブロック共重合体の全質量に対して、重合体ブロックAと重合体ブロックBとの総含有率が90.0~99.9質量%であることが好ましく、98.0~99.9質量%であることがより好ましい。
【0076】
シロキサン結合を有する(メタ)アクリルブロック共重合体(a2)、及び、シロキサン結合を有しない(メタ)アクリルブロック共重合体(B)は、導電性を良好に保つ観点から、ブロック共重合体のエチレン性不飽和単量体の90質量%以上が疎水性のエチレン性不飽和単量体であることが好ましい。ここで「疎水性のエチレン性不飽和単量体」とは、20℃での水中への溶解性が6.5g/100mL以下の単量体をいう。疎水性のエチレン性不飽和単量体としては、上述したアルキル(メタ)アクリレート類、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類、酢酸ビニル、塩化ビニル等のビニル類、スチレン等の芳香族類等が例示できる。
【0077】
[官能基]
シロキサン結合を有する(メタ)アクリルブロック共重合体(a2)、及び、シロキサン結合を有しない(メタ)アクリルブロック共重合体(B)は官能基を有していてもよい。官能基としては、例えば、メルカプト基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基、グリシジル基、(メタ)アクリル基、加水分解性シリル基、ニトリル基、イソシアネート基が挙げられる。
【0078】
[反応性官能基]
シロキサン結合を有する(メタ)アクリルブロック共重合体(a2)、及び、シロキサン結合を有しない(メタ)アクリルブロック共重合体(B)は、上記官能基の中でも、メルカプト基、ヒドロキシ基、アミノ基、及びカルボキシ基からなる群より選択される一種以上の反応性官能基を有することが好ましい。
【0079】
[ブロック共重合体の製造方法]
以下、本実施形態のシロキサン結合を有する(メタ)アクリルブロック共重合体(a2)、及び、シロキサン結合を有しない(メタ)アクリルブロック共重合体(B)の製造方法の一例について説明するが、これに限定されるものではない。
【0080】
シロキサン結合を有する(メタ)アクリルブロック共重合体(a2)、及び、シロキサン結合を有しない(メタ)アクリルブロック共重合体(B)の製造方法は特に限定されないが、ラジカル重合及びイオン重合により製造する方法が好適である。イオン重合はアニオン重合、カチオン重合がある。ラジカル重合の種類は特に限定されないが、リビングラジカル重合が好適である。また、反応性末端ジブロック構造を得た後に、カップリング剤を用いてブロック共重合体を得ることもできる。
【0081】
アニオン重合の例としては、無機酸塩の存在下で重合開始剤として有機希土類金属複合体又は有機アルカリ金属化合物を用いて重合する方法、有機アルミニウム化合物の存在下で重合開始剤として有機アルカリ金属化合物を用いて重合する方法がある。
リビングラジカル重合の例としては、ニトロキシド系の触媒を用いた重合/NMP法、遷移金属錯体系の触媒を用いた原子移動ラジカル重合/ATRP法、可逆的付加開裂連鎖移動剤を使用する可逆的付加-開裂連鎖移動重合/RAFT法、有機テルル系の触媒を用いた重合/TERP法、ヨウ素系化合物を触媒に用いたヨウ素移動重合/RCMP法(可逆配位媒介重合)又はRTCP法(可逆移動触媒重合)が例示できる。
【0082】
別の方法として、重合起点を2~6有するいずれかの重合開始剤を用いて重合体ブロックB及び重合体ブロックA、をこの順に逐次重合により得る工程を含む、[重合体ブロックA-重合体ブロックB]qXで表されるブロック共重合体の製造方法がある。
【0083】
別の方法として、重合開始剤を起点として、重合体ブロックA、重合体ブロックB、重合体ブロックAをこの順に逐次重合により得る工程を含む、重合体ブロックA-重合体ブロックB-重合体ブロックA型のトリブロック構造で表されるブロック共重合体の製造方法がある。
【0084】
また、重合体ブロックB、重合体ブロックAを任意の順に逐次重合することによりA-B型のジブロック構造を得、A-B型のジブロック構造の分子末端に必要に応じて反応性末端を導入し、この反応性末端と反応性を示す連結ユニットを3~6有するいずれかのカップリング剤を用いてカップリング反応を行う工程を含む、[重合体ブロックA-重合体ブロックB]qXで表されるブロック共重合体の製造方法がある。
【0085】
<その他のバインダー樹脂>
また、必要に応じて、シリコーン樹脂(A)、及びシロキサン結合を有しない(メタ)アクリルブロック共重合体(B)以外の樹脂成分として、その他のバインダー樹脂を併用してもよい。シリコーン樹脂(A)及びシロキサン結合を有しない(メタ)アクリルブロック共重合体(B)以外の樹脂成分の含有率は、導電性に優れた導電層形成の観点から、好ましくは全樹脂成分中の50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
その他のバインダー樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0086】
シリコーン樹脂(A)、並びに、必要に応じて含有するシロキサン結合を有しない(メタ)アクリルブロック共重合体(B)、及びその他のバインダー樹脂を含む、バインダー樹脂総量の含有率は、導電性組成物の全固形分量中、1~90質量%であることが好ましく、5~60質量%であることがより好ましく、10~40質量%であることが更に好ましい。
【0087】
<導電性微粒子(F)>
導電性微粒子(F)は、導電層内で複数の導電性微粒子が接触して導電性を発現するものであり、本発明においては、高温で加熱することなく導電性が得られるものの中から適宜選択して用いられる。本発明に用いられる導電性微粒子としては、金属微粒子、カーボン微粒子、導電性酸化物微粒子などが挙げられる。金属微粒子としては、例えば、金、銀、銅、ニッケル、クロム、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、インジウム、アルミニウム、タングステン、モルブテン、白金等の金属単体粉のほか、銅-ニッケル合金、銀-パラジウム合金、銅-スズ合金、銀-銅合金、銅-マンガン合金などの合金粉、前記金属単体粉又は合金粉の表面を、銀などで被覆した金コート粉などが挙げられる。また、カーボン微粒子としては、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブなどが挙げられる。また、導電性酸化物微粒子としては、酸化銀、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ルテニウムなどが挙げられる。
【0088】
本発明においては、中でも、銀粉、銅粉、銀コート粉、銅合金粉、導電性酸化物粉、及びカーボン微粒子からなる群より選択される一種以上の導電性微粒子を含むことが好ましい。これらの導電性微粒子(F)を用いることにより、焼結を経ることなく、導電性に優れた導電層を形成することができる。
【0089】
導電性微粒子(F)の形状は特に限定されず、不定形、凝集状、鱗片状、微結晶状、球状、フレーク状、ワイヤー状等を適宜用いることができる。成形時の導電性維持の観点や導体パターンの基材への密着性の観点から、凝集状、鱗片状、フレーク状、ワイヤー状のものが好ましい。
【0090】
導電性微粒子(F)の平均粒子径は、特に限定されないが、導電性組成物中での分散性や、導電層としたときの導電性の点から、0.1μm以上50μm以下が好ましく、0.5μm以上30μm以下がより好ましい。
なお本発明において導電性微粒子(F)の平均粒子径は以下のように算出する。JISM8511(2014)記載のレーザ回折・散乱法に準拠し、レーザ回折・散乱式粒度分布測定装置(日機装株式会社製:マイクロトラック9220FRA)を用い、分散剤として市販の界面活性剤ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社製:トリトンX-100)を0.5体積%含有する水溶液に導電性微粒子(F)を適量投入し、撹拌しながら40Wの超音波を180秒照射した後、測定を行った。求められたメディアン径(D50)の値を導電性微粒子(F)の平均粒径とした。
【0091】
本発明において導電性微粒子(F)は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明の導電性組成物中の導電性微粒子(F)の含有割合は、用途等に応じて適宜調整すればよく特に限定されないが、導電性組成物に含まれる固形分全量に対し、40~99質量%であることが好ましく、60~95質量%であることが好ましい。導電性微粒子(F)の含有割合が上記下限値以上であれば、導電性に優れた導電層を形成することができる。また、導電性微粒子(F)の含有割合が上記上限値以下であれば、シリコーン樹脂(A)の含有割合を高めることができ、成膜性や、伸縮性フィルムへの密着性が向上し、また、導電層に柔軟性や伸縮性を付与することができる。
【0092】
<連鎖状銀紛(f1)>
本発明の導電性組成物は、導電性微粒子(F)として、タップ密度が2.5g/cm3以下である連鎖状銀粉(f1)を含む。ここで連鎖状銀粉とは、微小粒子が集合し集合粒子を形成している銀粉であって、具体的には凝集銀粉や銀粒子が枝状に分岐したもの、すなわち樹枝状の銀粉等が挙げられる。また、連鎖状銀粉(f1)は、1μm以下の微小粒子が集合し集合粒子を形成している連鎖状銀粉であることが好ましい。
【0093】
連鎖状銀紛(f1)のタップ密度は、0.3~1.5g/cm3であることがより好ましく、0.3~1.0g/cm3であることがさらに好ましい。詳しいメカニズムは明らかではないが、タップ密度が2.5g/cm3以下であると、銀粉の体積が大きくなり、接触点が増えるため、より導通がしやすくなると考えられる。その結果、導電体に強い伸縮を加えたとしても、優れた抵抗値が得られる。なお、本明細書においてタップ密度は、ISO3953に準じて測定し、測定する際のタップ回数は1000回とした。
【0094】
BET法により測定した前記連鎖状銀粉(f1)の比表面積は、好ましくは1.0~5.0m2/gである。
【0095】
連鎖状銀粉(f1)の、レーザー解析散乱式粒度分布測定法による平均粒径(D50)は、好ましくは3~15μmである。
【0096】
連鎖状銀粉(f1)の含有率は、導電性組成物に含まれる全固形分量に対して、20~69質量%であることが好ましく、30~65質量%であることがより好ましい。上記範囲内であると、低い抵抗値と伸縮時の導電安定性との両立が可能となる。特に、連鎖状銀粉(f1)の含有率が、導電性組成物に含まれる全固形分量に対して69質量%以下であることにより、伸縮性フィルム基材への印刷性(密着性)が良好な導電体を得ることができる。上記含有率は、より好ましくは50~69質量%である。連鎖状銀紛(f1)を上記含有率にすることによって、上述するシリコーン樹脂(A)の伸縮性を優れたものとすることができる。更に、最適化されたミクロ相分離構造の自己組織化(セグメントの集合)によって、シリコーン樹脂(A)と連鎖状銀紛(f1)との親和性がより向上し、導電性微粒子(F)の分散性が良化すると考えられる。それによって、伸縮(弾性変形)に耐えうる理想的な導電パス設計と、印刷適性向上のための理想的な分散設計が可能となり、繰り返し伸縮耐性、基材密着性及び連続印刷性に優れた導電性組成物を作成することができる。
【0097】
連鎖状銀粉(f1)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0098】
<フレーク状銀紛(f2)>
本発明の導電性組成物は、導電性微粒子(F)として、さらにフレーク状銀紛(f2)を含むことが好ましい。
フレーク状銀紛(f2)を、上述する連鎖状銀粉(f1)と併用することで、より低い抵抗値と伸縮時の導電安定性との両立が可能となる。また、伸縮性フィルム基材への印刷性(密着性)がより良好な導電体を容易に得ることができる。
【0099】
ここでフレーク状銀粉とは、銀粉末1つの扁平部長手方向及び扁平部短手方向の長さに対する厚みがそれぞれ独立に10分の1以下である葉状の銀粉のことをいう。本発明においては、フレーク状銀紛(f2)の銀粉末1つの扁平部長手方向及び扁平部短手方向の長さは、それぞれ独立して1μm~100μmの範囲にあることが好ましく、厚みは0.05μm~1μmの範囲のものがより好ましい。
【0100】
フレーク状銀紛(f2)のレーザー回折法により測定した50%粒子径(D50)は、1μm~20μmであることが好ましく、より好ましくは、3μm~15μmである。50%粒子径(D50)が1μm以上であることにより、良好な導電性を発現しやすく、20μm以下であることにより、導電層の膜厚が厚くなりすぎないことから、伸縮性導電性デバイスとして使用した際に屈曲性が良好になる。さらに50%粒子径(D50)が導電層の厚さより大きいフレーク状銀粉を用いることで、伸縮導電性をより向上できる。なお、本明細書における50%粒子径(D50)は、粒度分布計(島津製作所社製「SALD-3100」)を用いたレーザー回折法により、溶媒として水を用いて測定した値である。
【0101】
フレーク状銀紛(f2)のかさ密度は、0.2~0.7g/cm3であることが好ましく、より好ましくは、0.4~0.6g/cm3である。かさ密度が上記範囲にあることにより、良好な導電性を発現しやすい。なお、本発明のかさ密度とは、JIS-Z2504に則った方法で測定した値である。
【0102】
フレーク状銀紛(f2)は、上記の通り1μm~20μmの50%粒子径(D50)、かつ0.2g/cm3~0.7g/cm3のかさ密度であることが好ましい。フレーク状銀粉は、導電層中で重なり合う事で導電性を発現するが、上記の粒子径とかさ密度を有することにより、導電層中での重なり合いが良好となり、伸縮性電子デバイスとして使用する場合の屈曲性にも優れる。
【0103】
導電層中におけるフレーク状銀粉は、必ずしも配向していなくともよいが、フレーク状銀粉の扁平部を塗膜面と概ね平行に配向する事で、フレーク状銀粉同士の接点が増えて導電性が向上する。一方、フレーク状銀粉が不規則な配向の場合、フレーク状銀粉同士の接触点が少なくなり、所望の導電特性を実現するためのフレーク状銀粉の量を多くする必要が生じる。
【0104】
本発明においてフレーク状銀紛とは、例えば、一般的なフレーク形状、鱗片形状、板形状が挙げられる。
【0105】
また、フレーク状銀粉は、比表面積が0.3~4.0m2/g、タップ密度が1~4g/cm3であることが好ましい。
【0106】
前記フレーク状銀紛は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。前記フレーク状銀粉の含有率は、導電性組成物に含まれる全固形分量に対して、0.5~85質量%であることが好ましく、1~75質量%であることがより好ましい。
【0107】
また、導電性微粒子(F)は、本発明の効果を損なわない範囲で、連鎖状銀粉(f1)及びフレーク状銀紛(f2)以外の他の導電性微粒子を含有してもよい。他の導電性微粒子としては、銀コート銅、カーボン等が挙げられる。
【0108】
<その他成分>
本発明の導電性組成物は、必要に応じてさらに、架橋剤、分散剤、耐摩擦向上剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、芳香剤、酸化防止剤、有機顔料、無機顔料、消泡剤、シランカップリング剤、可塑剤、難燃剤、保湿剤等のその他成分を含有してもよい。
【0109】
<導電体及び導電層>
本発明の導電性組成物を伸縮性フィルム上にスクリーン印刷等で印刷することにより、導電性に優れた導電体を形成することができる。そして、前記導電体からなる導電層を有するストレッチャブル導電材を容易に作製することができる。
【0110】
導電層の形成方法は特に限定されないが、本発明においては、スクリーン印刷法、パッド印刷法、ステンシル印刷法、スクリーンオフセット印刷法、ディスペンサー印刷法、グラビアオフセット印刷法、反転オフセット印刷法、マイクロコンタクト印刷法により形成することが好ましく、スクリーン印刷法により形成することがより好ましい。
スクリーン印刷法においては、導電回路パターンの高精細化に対応すべく微細なメッシュ、特に好ましくは300~650メッシュ程度の微細なメッシュのスクリーンを用いることが好ましい。この時のスクリーンの開放面積は約20~50%が好ましい。スクリーン線径は約10~70μmが好ましい。
スクリーン版の種類としては、ポリエステルスクリーン、コンビネーションスクリーン、メタルスクリーン、ナイロンスクリーン等が挙げられる。また、高粘度なペースト状態のものを印刷する場合は、高張力ステンレススクリーンを使用することができる。
スクリーン印刷のスキージは丸形、長方形、正方形いずれの形状であってもよく、またアタック角度(印刷時の版とスキージの角度)を小さくするために研磨スキージも使用することができる。その他の印刷条件等は従来公知の条件を適宜設計すればよい。
【0111】
導電性組成物の硬化方法は特に限定されないが、例えば、本発明の導電性組成物をスクリーン印刷により印刷後、加熱して乾燥することにより硬化することができる。
また、導電性組成物が架橋剤を含有する場合は、更に、加熱により架橋反応を行い硬化する。架橋剤を含有しない場合は、溶剤の十分な揮発のため、また、架橋剤を含有する場合は、溶剤の十分な揮発及び架橋反応のために、加熱温度は80~230℃、加熱時間としては10~120分とすることが好ましい。これにより、パターン状の導電層を得ることができる。パターン状導電層は、必要に応じて、導電パターンを被覆するように、絶縁層を設けてもよい。絶縁層としては、特に限定されず、公知の絶縁層を適用することができる。
【0112】
導電層の膜厚は、求められる導電性等に応じて適宜調整すればよく、特に限定されないが、例えば、0.5μm以上20μm以下とすることができ、1μm以上15μm以下とすることが好ましい。
【0113】
<ストレッチャブル導電材>
また、当該導電性組成物によれば、繰り返しの伸縮に伴う導電性の低下が抑制され、導電体の伸縮性基材への印刷性が向上し、前記導電体からなる導電層と、後述する伸縮性フィルム基材との密着性に優れたストレッチャブル導電材の製造が可能となる。
そして、当該導電性組成物を用いて製造されたストレッチャブル導電材は、平坦でない曲面部や可動部に追随可能な基材表面に用いた場合であっても、導電性の低下が抑制される。
【0114】
[伸縮性基材]
本発明において用いられる伸縮性フィルム基材は、伸縮時の破損又はひび割れに対する耐性を有する、天然材料又は合成材料からなる。
伸縮性フィルム基材は、23℃で100MPa未満のヤング率を有する基材が好ましい。23℃におけるヤング率は、50MPa未満であることが好ましく、10MPa未満であることがより好ましく、1MPa未満であることが更に好ましい。更に、伸縮性フィルム基材は、23℃で150%以上の引張破断伸度を有する基材が好ましい。23℃における引張破断伸度は、200%以上であることが好ましく、400%以上であることがより好ましい。伸縮性フィルム基材が23℃で100MPa未満のヤング率及び150%以上の引張破断伸度を有すると、伸縮時の破損又はひび割れが起こりにくく、ストレッチャブル導電材に適した基材として用いることが可能となる。
【0115】
伸縮性フィルム基材は、例えば、熱可塑性エラストマー、プラスチック、繊維、不織布、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ニトリルゴム、ニトリルブタジエンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、多硫化ゴム、アクリルゴム、スチレンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、クロロピレンゴム、ウレタンゴム、ブチルゴム、エチレンゴム、プロピレンゴム、エチレンプロピレンゴム、エポキシゴム、ブタジエンゴム、天然ゴム、イソプレンゴムから選択でき、これら材料の2種以上からなる積層フィルムであってもよい。また、フィルム基材の形状は、板状、フィルム状等の平面状の他、曲面形状又は複雑な形状であってもよい。
【0116】
前記熱可塑性エラストマーは、例えばポリウレタン系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエステル系、塩化ビニル系、スチレン系ブロックポリマー、アクリル系ブロックポリマーが挙げられる。
【0117】
前記プラスチックは、例えばポリビニルアルコール、トリアセチルセルロース、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリシクロオレフィン、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリカーボネート、ポリノルボルネン、ポリアリレート、ポリアクリル、ポリフェニレンサルファイド、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリアミド、及びポリイミドが挙げられる。
【0118】
伸縮性フィルム基材は、伸縮性の観点から、中でも、ポリウレタン、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、スチレンゴム、アクリルゴム、エポキシゴムが特に好ましく、本発明の導電性組成物との密着性の観点から、シリコーンゴムが更に好ましい。
【0119】
伸縮性フィルム基材の厚みは特に制限されないが、例えば1~500μmとすることができる。また、10~100μm、20~50μmとしてもよい。伸縮性フィルム基材の厚みが上記範囲であると、フィルムの巻き取り性、加工性の点で優れる。一方、伸縮性フィルム基材が薄いと強度が不足する傾向がある。また、フィルム基材が厚すぎると柔軟性が悪く、フィルム基材が被着体の形状に追随しなくなる虞がある。
【0120】
また、必要に応じ、導電性組成物の印刷性を向上させるなどの目的で、伸縮性フィルム基材にアンカーコート層を設け、当該アンカーコート層上に導電性組成物を印刷してもよい。アンカーコート層は、フィルム基材との密着性、更には導電性組成物との密着性が良好で成型時に伸縮性フィルムに追従するものであれば、特に限定されず、また樹脂ビーズ等の有機フィラーや金属酸化物等の無機フィラーを必要に応じて添加してもよい。アンカーコート層を設ける方法は特に限定されず、従来公知の塗工方法にて塗布、乾燥、硬化して得ることができる。
【0121】
また更に必要に応じて、成形体表面の傷つき防止のため、伸縮性フィルム基材にハードコート層を設け、その反対の面に導電性組成物及び必要に応じて加飾層を印刷してもよい。ハードコート層は、伸縮性フィルム基材との密着性、更には表面硬度が良好で成型時に伸縮性フィルムに追従するものであれば、特に限定されず、また樹脂ビーズ等の有機フィラーや金属酸化物等の無機フィラーも必要に応じて添加してもよい。ハードコート層を設ける方法は特に限定されず、従来公知の塗工方法にて塗布、乾燥、硬化して得ることができる。
【0122】
ストレッチャブル導電材は、支持体上に積層して積層体として用いてもよい。支持体は特に限定されないが、伸縮性フィルム基材の伸縮性を生かすために伸縮性材料であることが好ましい。具体例としては、伸縮性プラスチックフィルム、伸縮性繊維が例示できる。伸縮性繊維はテキスタイル生地でもよい。また、支持体に凹部を設け、この凹部に伸縮性導体を埋設してもよい。
【0123】
ストレッチャブル導電材と支持体の接合は、ストレッチャブル導電材の粘着性を利用して接合してもよいし、ラミネートにより接合してもよい。また、接着層、易接着層を介して接合することもできる。
【0124】
このようにして得られたストレッチャブル導電材は、それ自体が製品であってもよいし、部材として用いてもよい。ストレッチャブル導電材は、例えば、伸縮性配線、伸縮性電極として好適である。また、ストレッチャブル導電材は伸縮性電磁波シールド層、伸縮性放熱層などのフィルムとして利用できる。また、所望の形状の導電性を有する成形体としても用いることができる。
【実施例0125】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、以降の説明において特に断りが無い場合には、「部」とあるのは「質量部」を、「%」とあるのは「質量%」を意味するものとする。また、溶剤以外は不揮発分換算値である。
【0126】
[重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及びMw/Mnの測定]
GPC(商品名:GPCV-2000、日本ウォーターズ社製、カラム:TSKgel、α-3000、移動相:10mMトリエチルアミン/ジメチルホルムアミド溶液)を用い、標準物質としてポリスチレン(分子量427,000、190,000、96,400、37,400、10,200、2,630、440、92)を使用して検量線を作成し、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を測定した。この測定値から多分散度(PDI=Mw/Mn)を算出した。
【0127】
[縮合硬化型シリコーン樹脂]
・信越化学工業(株)製の「KE-441」を用いた。
[付加硬化型シリコーン樹脂(a1)]
・信越化学工業(株)製の「KE―1800T-A/B」を用いた。
[ブロック共重合体a2-1、a2-2]
・後述する樹脂製造例1、2を用いた。
[シロキサン結合を含まないブロック共重合体(B3)]
・クラレ(株)製のアクリル系ブロック共重合体「LA2330」を用いた。
[ポリウレタン(比較例用)]
・後述する樹脂製造例3を用いた。
[ポリエステル(比較例用)]
・東洋紡社製バイロン(登録商標)290を用いた。
【0128】
(単量体)
MMA:メチルメタクリレート
DCPMA:メタクリル酸ジシクロペンタニル
nBA:n-ブチルアクリレート
【0129】
(重合開始剤)
・BM1448:4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタンサンメチル(BORONMOLECULAR社製)(RAFT重合用)
・AIBN:2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(和光純薬社製)
【0130】
<樹脂製造例1:ブロック共重合体(a2-1)の合成>
RAFT法によりシリコーン樹脂(a2-1)に用いられるアクリル変性ブロック共重合体(a2-1)を合成した。具体的には、窒素ガス導入管、撹拌機を備えた2,000mLフラスコに、BM1448(RAFT剤)2.8g、AIBN(アゾビスイソブチロニトリル)1.2g、MMA76.9gをメチルエチルケトン溶媒250g中で、75℃の環境下、6時間反応させプレポリマーを得た。1H-NMRから算出したMMAの転化率はどちらも99.5%以上であった。次いで、AIBN0.5g、FM-0721(JNC社製の反応性シリコーン/サイラプレーン)350.0g、nBA100.0gをプレポリマー溶液全量に加え、75℃で24時間反応させた。1H-NMRから算出した2段目モノマーFM-0721、nBAの転化率は99.5%であった。更に、AIBN1.2g、MMA76.9gをプレポリマー溶液全量に加え、75℃で6時間反応させた。1H-NMRから算出した3段目モノマーMMAの転化率はどちらも99.5%以上であった。その後、室温まで冷却し、濾過、洗浄及び乾燥によって、ソフトセグメントにシリコーン組成が変性された、A-B-Aトリブロック構造のアクリル変性ブロック共重合体(a2-1)を得た。また得られたブロック共重合体(a2-1)のMwは95,000で分子量分布(Mw/Mn)は1.3であった。シロキサン結合を有するアクリルモノマー由来の構造単位の含有率は、ブロック共重合体中の約58.0質量%であった。
【0131】
<樹脂製造例2:ブロック共重合体(a2-2)の合成>
RAFT法によりシリコーン樹脂(A)に用いられるアクリル変性ブロック共重合体(a2-2)を合成した。具体的には、窒素ガス導入管、撹拌機を備えた2,000mLフラスコに、BM1448(RAFT剤)2.8g、AIBN1.2g、DCPMA76.9gをメチルエチルケトン溶媒250g中で、75℃の環境下、6時間反応させプレポリマーを得た。1H-NMRから算出したDCPMAの転化率はどちらも99.5%以上であった。次いで、AIBN0.5g、FM-0711(JNC社製の反応性シリコーン/サイラプレーン)250.0g、nBA200.0gをプレポリマー溶液全量に加え、75℃で24時間反応させた。1H-NMRから算出した2段目モノマーFM-0711の転化率は99.5%であった。更に、AIBN1.2g、DCPMA76.9gをプレポリマー溶液全量に加え、75℃で6時間反応させた。1H-NMRから算出した3段目モノマーDCPMAの転化率はどちらも99.5%以上であった。その後、室温まで冷却し、濾過、洗浄及び乾燥によって、ソフトセグメントにシリコーン組成が変性された、A-B-Aトリブロック構造のアクリル変性ブロック共重合体(a2-2)を得た。また得られたブロック共重合体(a2-2)のMwは112,000で分子量分布(Mw/Mn)は1.5であった。シロキサン結合を有するアクリルモノマー由来の構造単位の含有率は、ブロック共重合体中の約41.4質量%であった。
【0132】
<樹脂製造例3:ポリウレタンの合成(比較例用)>
比較に用いられるポリウレタン樹脂を合成した。具体的には、窒素ガス導入管、撹拌機を備えた2,000mLフラスコに、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(分子量1000)783.0gとIPDI(イソホロンジイソシアネート)200.0gとを仕込み、徐々に昇温し、90℃にて6時間反応させた。その後、室温まで冷却し、濾過、洗浄及び乾燥によって、比較用のポリウレタン樹脂を得た。
【0133】
(導電性組成物、ストレッチャブル導電材の製造)
導電性微粒子、溶剤、伸縮性フィルム基材として以下のものを用いた。
<導電性微粒子(F)>
(連鎖状銀紛(f1))
・f1-1(タップ密度0.7g/cm3、平均粒径10.0μm)
・f1-2(タップ密度1.3 g/cm3、平均粒径4.2μm)
(フレーク状銀紛(f2))
・f2-1(タップ密度1.1g/cm3、平均粒径5.2μm)
(その他導電性微粒子)
・銀コート銅粉、銀被覆量10%、平均粒子径2μm
・カーボン、平均粒子径15μm
<溶剤>
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル、沸点231℃
<伸縮性フィルム基材>
・シリコーンゴム基材:
十川ゴム社製/K-125、厚さ500μm、引張破断伸度310%、ヤング率1.0MPa(23℃)を使用した。
【0134】
<導電性組成物(K1)の製造>
[実施例1]
縮合硬化型シリコーン樹脂41.0部をジエチレングリコールモノブチルエーテル30.0部に溶解させ、導電性微粒子(f1-1)19.0部、銀コート銅40.0部を撹拌混合し、3本ロールミル(小平製作所製)で混練することで導電性組成物(K1)を得た。
【0135】
<導電性組成物(K2)~(K13)、(L1)~(L5)の製造>
[実施例2-13、比較例1-5]
実施例1において、樹脂、溶剤、導電性微粒子の種類及び配合量を表1のように変更し、必要に応じて、配合比を変更した以外は、それぞれ実施例1と同様にして、導電性組成物(K2)~(K13)、(L1)~(L5)を得た。なお、表2中の各材料の数値はいずれも質量部である。
【0136】
【0137】
<ストレッチャブル導電材の製造>
続いて、上記シリコーンゴム基材に、実施例1~13、比較例1~5で製造した導電性組成物(K1)~(K13)、(L1)~(L5)を、スクリーン印刷機(ミノスクリーン社製、ミノマットSR5575半自動スクリーン印刷機)によって印刷した。次いで、熱風乾燥オーブンで150℃30分加熱することで、幅20mm、長さ60mm、厚み10μmの四角形ベタ状及び線幅3mm、長さ60mm、厚み10μmの直線状のパターンを有する導電層を備えたストレッチャブル導電材をそれぞれ得た。
【0138】
<評価>
(導電性|初期の体積抵抗率)
各実施例及び比較例に係るストレッチャブル導電材の体積抵抗率を測定した。具体的には、上記実施例及び比較例で作製した、幅20mm、長さ60mm、厚み10μmの四角形ベタ状のストレッチャブル導電材を試験片として用いた。表面抵抗測定器(品番:ロレスタ(登録商標)AP MCP-T400、プローブ:ASPプローブ(4探針プローブ、三菱ケミカル社製)を用い、温度が25℃及び相対湿度が50%の雰囲気中で、JIS K7194に準拠して得られた試験片の体積抵抗率を測定した。
初期状態について以下の基準により評価した。
+++:2.0×10-4Ω・cm未満
++:2.0×10-4Ω・cm以上、9.9×10-3Ω・cm未満
+:9.9×10-3Ω・cm以上、9.9×10-1Ω・cm未満
NG:9.9×10-1Ω・cm以上
【0139】
(耐湿熱性)
また、上記ストレッチャブル導電材に対し、85℃、相対湿度85%の環境下で10日経過後の体積抵抗率を上記同様の方法で測定し、初期からの変化率(試験後変化)について、以下の基準により評価した。
[変化率(%)]
=[(試験前の試験片の体積抵抗率)-(試験後の試験片の体積抵抗率)]÷[(試験前の試験片の体積抵抗率)]
+++:変化率が20%以下
++:変化率が20%を超えて、50%以下
+:変化率が50%を超えて、100%以下
NG:変化率が100%を超える
【0140】
(繰り返し伸縮耐性|抵抗値変化)
各実施例及び比較例に係るストレッチャブル導電材の20mm×60mmサイズのサンプルについて、その端部をテンシロン引張試験装置に固定して、25℃、相対湿度50%、速度4mm/sの速さで50%まで伸長し、その後2s保持し、そしてその後4mm/sの速さで除荷し、2s保持する伸縮サイクルを1,000回繰り返し、1,000回後の変化率を以下の式により算出した。
[変化率(%)]
=[(R1,000)-(R0)]÷[(R0)]×100
ここで、R1,000は1,000回繰り返した伸縮サイクル直後の抵抗値、R0は測定開始前の同フィルムを用いた抵抗値を示す。以下の基準により評価した。
+++:変化率が20%以下
++:変化率が20%を超えて、50%以下
+:変化率が50%を超えて、100%以下
NG:変化率が100%を超える
【0141】
(基材密着性)
各実施例及び比較例に係るストレッチャブル導電材に形成された、幅20mm、長さ60mmの四角形ベタ状の導電層に対し、ガードナー社製1mm間隔クロスカットガイドを使用してカッターナイフで当該導電層を貫通するように10x10マスの碁盤目状の切れ込みを入れ、ニチバン社製セロハンテープを貼り付け噛み込んだ空気を抜いてよく密着させたのち、垂直に引きはがした。塗膜の剥離度合いをASTM-D3519規格に従って下記のように評価した。
+++:評価5B~4B、密着性が良い
++:評価上は5B~4Bであるが、塗膜が凝集破壊し、表面側の塗膜の一部が脱離する
+:評価4B~3B、密着性がやや劣る
NG:評価3B以下、密着性が悪い
【0142】
(連続印刷性)
上記シリコーンゴム基材に、実施例1~13、比較例1~5で製造した導電性組成物(K1)~(K13)、(L1)~(L5)を、スクリーン印刷機(ミノスクリーン社製、ミノマットSR5575半自動スクリーン印刷機)によって100枚の連続印刷試験を実施し、印刷されたパターンについて、印刷直後の印刷面を目視および実態顕微鏡で観察し、また寸法を測定し、滲みや擦れが発生しているか否かを確認した。
【0143】
[滲み又は擦れの判定基準]
[滲み]:印刷直後に、製版寸法に対して5%以上太っている箇所がある場合
[擦れ]:印刷直後に、製版寸法に対して5%以上欠けている箇所がある場合
【0144】
[連続印刷性の判定基準]
++:滲みや擦れが発生せずに印刷できる回数が80回以上
+:滲みや擦れが発生せずに印刷できる回数が25回以上79回以下
NG:滲みや擦れが発生せずに印刷できる回数が24回以下
【0145】
本発明の実施例1~13の結果から、本発明により、伸縮時にクラックの発生や抵抗値の断線を効果的に抑制することにより繰り返しの伸縮耐性に優れ、さらに導電性、耐湿熱性、及びシリコーン基材等の伸縮性フィルム基材への基材密着性や連続印刷性が良好な導電組成物及びストレッチャブル導電材が得られた。これらは上記特性により、電子デバイス用途での利用に好適である。