IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧 ▶ 東芝電機サービス株式会社の特許一覧

特開2024-34871藻類判別装置、藻類判別システム、薬剤注入制御システム、藻類判別方法、およびプログラム
<>
  • 特開-藻類判別装置、藻類判別システム、薬剤注入制御システム、藻類判別方法、およびプログラム 図1
  • 特開-藻類判別装置、藻類判別システム、薬剤注入制御システム、藻類判別方法、およびプログラム 図2
  • 特開-藻類判別装置、藻類判別システム、薬剤注入制御システム、藻類判別方法、およびプログラム 図3
  • 特開-藻類判別装置、藻類判別システム、薬剤注入制御システム、藻類判別方法、およびプログラム 図4
  • 特開-藻類判別装置、藻類判別システム、薬剤注入制御システム、藻類判別方法、およびプログラム 図5
  • 特開-藻類判別装置、藻類判別システム、薬剤注入制御システム、藻類判別方法、およびプログラム 図6
  • 特開-藻類判別装置、藻類判別システム、薬剤注入制御システム、藻類判別方法、およびプログラム 図7
  • 特開-藻類判別装置、藻類判別システム、薬剤注入制御システム、藻類判別方法、およびプログラム 図8
  • 特開-藻類判別装置、藻類判別システム、薬剤注入制御システム、藻類判別方法、およびプログラム 図9
  • 特開-藻類判別装置、藻類判別システム、薬剤注入制御システム、藻類判別方法、およびプログラム 図10
  • 特開-藻類判別装置、藻類判別システム、薬剤注入制御システム、藻類判別方法、およびプログラム 図11
  • 特開-藻類判別装置、藻類判別システム、薬剤注入制御システム、藻類判別方法、およびプログラム 図12
  • 特開-藻類判別装置、藻類判別システム、薬剤注入制御システム、藻類判別方法、およびプログラム 図13
  • 特開-藻類判別装置、藻類判別システム、薬剤注入制御システム、藻類判別方法、およびプログラム 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034871
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】藻類判別装置、藻類判別システム、薬剤注入制御システム、藻類判別方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/34 20060101AFI20240306BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20240306BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20240306BHJP
   C02F 1/50 20230101ALI20240306BHJP
【FI】
C12M1/34 B
G01N21/27 A
C12Q1/04
C02F1/50 510D
C02F1/50 520B
C02F1/50 531J
C02F1/50 540D
C02F1/50 550L
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139399
(22)【出願日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 勇太
(72)【発明者】
【氏名】野田 周平
(72)【発明者】
【氏名】水内 理映子
(72)【発明者】
【氏名】今田 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】横山 雄
(72)【発明者】
【氏名】金谷 道昭
【テーマコード(参考)】
2G059
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB20
2G059EE01
2G059EE12
2G059FF01
2G059JJ02
2G059KK01
2G059MM01
4B029AA07
4B029BB04
4B029FA03
4B063QA18
4B063QQ09
4B063QQ18
4B063QR66
4B063QR78
4B063QS39
4B063QX01
(57)【要約】
【課題】 顕微鏡を用いずに簡易な構成で藻類の判別を行えるようにすること。
【解決手段】 実施形態の藻類判別装置は、容器に通水もしくは充填される水の撮像を行う撮像装置から、複数の波長の光に対応する撮像信号を得る信号入力部と、前記撮像信号から、波長毎の信号強度を示す第1の情報を得る信号処理部と、各種の藻類が種類毎に備えている複数の色素にそれぞれ特徴づけられる光の吸収ピークがある複数の波長域の信号強度を示す第2の情報を記憶する記憶部と、前記第1の情報と前記第2の情報とを用いて、前記水に含まれる藻類の判別を行う藻類判別部とを具備する。
【選択図】 図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に通水もしくは充填される水の撮像を行う撮像装置から、複数の波長の光に対応する撮像信号を得る信号入力部と、
前記撮像信号から、波長毎の信号強度を示す第1の情報を得る信号処理部と、
各種の藻類が種類毎に備えている複数の色素にそれぞれ特徴づけられる光の吸収ピークがある複数の波長域の信号強度を示す第2の情報を記憶する記憶部と、
前記第1の情報と前記第2の情報とを用いて、前記水に含まれる藻類の判別を行う藻類判別部と、
を具備する藻類判別装置。
【請求項2】
前記第2の情報は、
各種の藻類が共通に備えている色素に特徴づけられる光の吸収ピークがある波長域の信号強度を示す共通情報と、
各種の藻類が個別に備えている色素に特徴づけられる光の吸収ピークがある波長域の信号強度を示す個別情報と
を含む、
請求項1に記載の藻類判別装置。
【請求項3】
前記個別情報は、
各藻類につき、少なくとも藻類の綱、当該綱が有する色素、および当該色素に特徴づけられる光の吸収ピークがある波長域の信号強度の情報を含む、
請求項2に記載の藻類判別装置。
【請求項4】
前記個別情報は、さらに、
各綱に属している複数の目、科、または属のそれぞれに対応するスペクトルの情報を含む、
請求項3に記載の藻類判別装置。
【請求項5】
前記藻類判別部は、
前記第1の情報と前記第2の情報とを用いて、前記水の中に、ある特定の藻類が存在するか否かを判定する、
請求項1に記載の藻類判別装置。
【請求項6】
前記藻類判別部は、
前記第1の情報から、光の吸収ピークがある複数の波長域を求め、求めた複数の波長域から、前記第2の情報を用いて該当する複数の色素を特定する、
請求項1に記載の藻類判別装置。
【請求項7】
前記藻類判別部は、
前記特定した複数の色素から、該当する藻類の綱を特定する、
請求項6に記載の藻類判別装置。
【請求項8】
前記藻類判別部は、
前記第1の情報からスペクトルを求め、求めたスペクトルから、前記第2の情報を用いて該当する藻類の目、科、または属を特定する、
請求項1に記載の藻類判別装置。
【請求項9】
前記水に含まれる藻類につき、当該水の単位容積当たりの藻類の数を求める演算部をさらに具備する、
請求項1に記載の藻類判別装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の藻類判別装置と、
前記撮像装置と、
を具備する、藻類判別システム。
【請求項11】
請求項9に記載の藻類判別装置と、
前記演算部により求められた前記水の単位容積当たりの藻類の数に応じて、水処理施設での薬剤の注入を制御する薬剤注入制御装置と
を具備する、薬剤注入制御システム。
【請求項12】
藻類判別装置が実行する藻類判別方法であって、
容器に通水もしくは充填される水の撮像を行う撮像装置から、複数の波長の光に対応する撮像信号を得ることと、
前記撮像信号から、波長毎の信号強度を示す第1の情報を得ることと、
前記第1の情報と、各種の藻類が種類毎に備えている複数の色素にそれぞれ特徴づけられる光の吸収ピークがある複数の波長域の信号強度を示す第2の情報とを用いて、前記水に含まれる藻類の判別を行うことと
を含む藻類判別方法。
【請求項13】
コンピュータに、
容器に通水もしくは充填される水の撮像を行う撮像装置から、複数の波長の光に対応する撮像信号を得る機能と、
前記撮像信号から、波長毎の信号強度を示す第1の情報を得る機能と、
前記第1の情報と、各種の藻類が種類毎に備えている複数の色素にそれぞれ特徴づけられる光の吸収ピークがある複数の波長域の信号強度を示す第2の情報とを用いて、前記水に含まれる藻類の判別を行う機能と
を実現させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、藻類判別装置、藻類判別システム、薬剤注入制御システム、藻類判別方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
河川や沼湖の生態系を評価する際には、藻類などの水中の生物の種類や現存量を把握することが求められる。例えば対象となる水の中の藻類の種類を判別するためには、河川等から水を採水し、採水した水を容器に通水もしくは充填した上で、その水の中にある藻類を、顕微鏡を用いて観察する。
【0003】
顕微鏡を用いることにより、画像に写る藻類の姿を拡大させることができ、藻類の形状を確認しやすくなる。藻類の形状を確認できると、藻類の種類を判別しやすくなる。
【0004】
しかしながら、顕微鏡は一般に高価であり、藻類判別のためのシステムを構築するにあたりコストの増加を招く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6946015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、顕微鏡を用いずに簡易な構成で藻類の判別を行うことが可能な、藻類判別装置、藻類判別システム、薬剤注入制御システム、藻類判別方法、およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の藻類判別装置は、容器に通水もしくは充填される水の撮像を行う撮像装置から、複数の波長の光に対応する撮像信号を得る信号入力部と、前記撮像信号から、波長毎の信号強度を示す第1の情報を得る信号処理部と、各種の藻類が種類毎に備えている複数の色素に特徴づけられる複数の光の吸収ピークがある複数の波長域の信号強度を示す第2の情報を記憶する記憶部と、前記第1の情報と前記第2の情報とを用いて、前記水に含まれる藻類の判別を行う藻類判別部とを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る藻類判別システムの構成の一例を示す図である。
図2図2は、撮像装置40の具体的な構成の一例を示す図である。
図3図3は、容器30の構成の一例を示す図である。
図4図4は、藻類判別システムが判別の対象としている藻類の分類を概略的に示す図である。
図5図5は、各種の藻類と色素との関係を概略的に示す図である。
図6図6は、藻類判別システムが判別の対象としている各種の藻類の吸収スペクトルを示すとともに各種の色素の光の吸収ピークがある波長域とを示す図である。
図7図7は、撮像装置40が出力する撮像信号から藻類判別装置50側で得られる情報の一例を模式的に示す図である。
図8図8は、各種の藻類の姿が写った画像の例を示す図である。
図9図9は、藻類判別装置50の機能構成の一例を示す図である。
図10図10は、第2の情報J2の一例を示す図である。
図11図11は、判定基準を用いて特定の藻類(綱)が有する色素の吸収ピークの有無を判定する手法の一例を示す図である。
図12図12は、判定基準を用いて特定の藻類(属など)のスペクトルの有無を判定する手法の一例を示す図である。
図13図13は、藻類判別装置50の動作の一例を説明するための図である。
図14図14は、薬剤注入制御装置90の動作の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、実施の形態について説明する。
【0010】
<藻類判別システムの構成>
図1に、実施形態に係る藻類判別システムの構成の一例を示す。
【0011】
図1に示される藻類判別システムは、光源20、容器30、レンズ31、および検出器32を備えた撮像装置40と、藻類判別装置50とを含む。撮像装置40と藻類判別装置50とは、ケーブルを用いて有線で接続されていてもよいし、無線通信装置を用いて無線で接続されていてもよい。また、撮像装置40と藻類判別装置50とは、所定のネットワーク経由で接続されていてもよい。
【0012】
光源20は、藻類の撮影に使用される照明である。光源20は、その波長分布が分かればどのような発光原理を有するものであってもよい。例えば、LED(Light-Emitting Diode)、レーザ、もしくはハロゲンランプを用いて構成されてもよい。光源20から発せられた光は、容器30中の水を照らす。
【0013】
容器30は、河川や沼湖から採取された水を通水もしくは充填する透明の入れ物である。容器30は、例えばフローセルもしくは顕鏡プレートであってもよい。容器30の素材は、サンプルがないときの透過光強度を取得可能なものであればどのような素材であってもよい。図1の例では、容器30の中の水に、撮像対象となる藻類Aが含まれている。容器30を透過した光は、レンズ31へ向かう。
【0014】
レンズ31は、容器30を透過した光を通し、検出器32のセンサ部に集光させる。なお、レンズ31は、必ずしも必要とされるものではない。
【0015】
検出器32は、容器30からレンズ31を通じて送られる光をセンサ部で受光することにより容器30中の水を撮像し、撮像で得られた画像もしくはシグナルを撮像信号として出力する撮像素子を有する。シグナルは、特定点における信号強度を示す信号であり、実質的に1画素分に相当する信号である。検出器32は、例えば、フォトダイオード(PD)、アバランシェ・フォトダイオード(APD)、光電子倍増管(PMT: Photomultiplier Tube)、電荷結合素子(CCD: Charge Coupled Device)、もしくは相補型金属酸化膜半導体(CMOS: Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)を用いて構成されてもよい。容器30の水の中に藻類Aが存在する場合、藻類Aの全部または一部が写った撮像信号が藻類判別装置50へ送られる。
【0016】
また、検出器32は、検出器32は、複数の波長の光にそれぞれ対応する信号を出力する。なお、複数の波長は、それぞれ任意に選択できるように構成されてもよい。例えば、検出器32は、任意の波長に対する分光特性を有するものであってもよいし、そのような特性を有しておらず後述する各種のカラーフィルタのいずれかを通過する任意の波長の光(例えば単色光)を受光するものであってもよい。
【0017】
<撮像装置40の構成>
図2に、撮像装置40の具体的な構成の一例を示す。
【0018】
図2に示される撮像装置40は、前述した光源20、容器30、レンズ31、および検出器32に加え、光学フィルタ33をさらに備える。光学フィルタ33は、容器30とレンズ31との間の空間に配置され、各種のカラーフィルタを有する。各種のカラーフィルタは、それぞれ、所定の波長の光(色)を通過させ、他の波長の光(色)を減衰させる。カラーフィルタ毎に、通過させる波長(色)が異なる。
【0019】
このような光学フィルタ33を駆動部(図示せず)で回転/停止させることにより、光軸10に任意のカラーフィルタを挿入させることができるようになっている。光学フィルタ33を回転/停止させる操作は、藻類判別装置50側で実施することが可能である。
【0020】
なお、光学フィルタ33は、必ずしも必要とされるものではない。光学フィルタ33を設けず、検出器32側で任意の波長を選択できるように構成してもよい。また、検出器32側で任意の波長を選択する機能が無くても、複数の波長の光にそれぞれ対応する信号を出力できるのであれば、そのような機能は無くても問題はない。
【0021】
図3に、容器30の構成の一例を示す。
【0022】
図3は、容器30がフローセルである場合の例を示している。なお、ここでは水を通水するフローセルの例を示すが、代わりに、例えば水を充填した状態で使用する容器(顕鏡プレートなど)を採用しても構わない。
【0023】
フローセルは、例えばある水源から取得された原水が通過する流路を内部に有する。フローセルの流路では、原水がほぼ静止することなく流れ続ける。具体的には、フローセルは、本体301、採水管302、および排水管303を備える。
【0024】
採水管302は、水源から採水された原水の一部が本体301に流入するための流入口を有する。流入口から流入する原水は、高低差やポンプ等により水圧がかかっており、矢印の方向に流れる。採水管302の流入口から流入した原水は、採水管302を通過して本体301へ流入する。
【0025】
本体301は、内部に流路を有する。本体301は、少なくとも撮像装置40の撮影対象となる領域においては、仮に原水が透明であれば光源20からの光を波長によらず均一に透過させるように透明の部材を用いて構成される。
【0026】
排水管303は、本体301を通過した原水を排出するための排水口を有する。排水口から排出される原水は、特定の箇所へ廃棄されてもよいし、水源へ戻されてもよい。
【0027】
<藻類の種類>
次に、藻類判別システムが判別の対象としている各種の藻類について説明する。
【0028】
図4に、藻類判別システムが判別の対象としている藻類の分類を概略的に示す。
【0029】
藻類は、大きく「綱」に分類され、「綱」はさらに「目」、「科」、「属」など(以降、「属など」と称す。)に小分類される。
【0030】
「綱」の例としては、藍藻(綱)、珪藻(綱)などがある。そのほか、図示されていない緑藻(綱)、黄金色藻(綱)といったものもある。「属など」の例としては、藍藻(綱)の中には、フォルミジウム、オシラトリア、アナベナなどがあり、珪藻(綱)の中には、アウラコセイラなどがある。
【0031】
<藻類の光合成色素>
次に、藻類判別システムが判別の対象としている各種の藻類が備えている光合成色素(以降、「色素」と称す。)について説明する。
【0032】
図5に、各種の藻類と色素との関係を概略的に示す。
【0033】
藍藻(綱)は、クロロフィルaのほか、フィコシアニンなどの色素を有する。珪藻(綱)は、クロロフィルaのほか、フコキサンチン、ジアトキサンチン、ジアジノキサンチンなどの色素を有する。図示されていない緑藻(綱)、黄金色藻(綱)も、いくつかの色素を有する。
【0034】
図6に、藻類判別システムが判別の対象としている各種の藻類の吸収スペクトル(以降、「スペクトル」と称す。)を示すとともに各種の色素の光の吸収ピーク(吸収極大)がある波長域を示す。図6のグラフにおいて、縦軸は光の透過率を、横軸は波長を示す。光の透過率は、信号強度に相当するものとみなすことができる。
【0035】
図6のグラフには、藍藻の属であるフォルミジウム、オシラトリア、およびアナベナのスペクトル、ならびに珪藻の属であるアウラコセイラのスペクトルが示されている。
【0036】
図6中のCHL-aは、クロロフィルaにより光が特に吸収される波長域を示す。また、図6中のPHYは、フィコシアニンにより光が特に吸収される波長域を示す。
【0037】
フォルミジウム、オシラトリア、アナベナ、およびアウラコセイラは、いずれも、クロロフィルaにより特に440 nm付近および680 nm付近で光が吸収されている。クロロフィルaは、藻類全般に見られる色素である。したがって、クロロフィルaの吸収ピークがある440 nm付近および680 nm付近の色相の情報を用いることにより、撮像装置40で撮像した領域の中に藻類が存在するか否かがわかる。
【0038】
藍藻の属であるフォルミジウム、オシラトリア、およびアナベナは、フィコシアニンにより特に620 nm付近の光が吸収されている。フィコシアニンは、藍藻以外の藻類が有していることは少なく、藍藻に特有の色素といえる。したがって、フィコシアニンの吸収ピークがある620 nm付近の色相の情報と、クロロフィルaの吸収ピークがある440 nm付近および680 nm付近の色相の情報とを用いることにより、撮像装置40で撮像した領域の中に藻類が存在するか否か、および、藻類が存在する場合にはその藻類が藍藻であるのか藍藻以外の藻類であるのかがわかる。すなわち、藍藻の有無がわかる。判別の具体的な手法については後で述べる。
【0039】
同様の手法により、藍藻の有無を判別するだけでなく珪藻の有無を判別することも可能である。
【0040】
例えば、珪藻の属であるアウラコセイラは、図示しないフコキサンチン、ジアトキサンチン、ジアジノキサンチンにより、それぞれ所定の波長域で光が吸収される。したがって、それらの波長域の色相の情報と、クロロフィルaの吸収ピークがある440 nm付近および680 nm付近の色相の情報とを用いることにより、撮像装置40で撮像した領域の中に藻類が存在するか否か、および、藻類が存在する場合にはその藻類が珪藻であるのか、それとも珪藻以外の藻類であるのかがわかる。すなわち、珪藻の有無がわかる。
【0041】
緑藻の有無、黄金色藻の有無なども、同様の手法により判別することが可能である。
【0042】
藍藻の属であるフォルミジウム、オシラトリア、アナベナ等のそれぞれの有無は、それらのスペクトルの波形の特徴から判別することが可能である。判別の具体的な手法については後で述べる。
【0043】
藍藻における各種の属(フォルミジウム、オシラトリア、アナベナ等)の有無に限らず、珪藻における各種の属(アウラコセイラ等)の有無も、同様の手法により判別することが可能である。緑藻における各種の属の有無、黄金色藻における各種の属の有無なども、同様の手法により判別することが可能である。
【0044】
<撮像信号から得られる情報>
図7に、撮像装置40が出力する撮像信号から藻類判別装置50側で得られる情報の一例を模式的に示す。
【0045】
図7の例では、容器30の中の水に藻類Aが存在している。検出器32は、藻類Aを含む領域を撮像し、複数の波長にそれぞれ対応する複数の画像Gを出力する。なお、ここでは、撮像装置40から画像が出力される場合の例が示されているが、画像ではなく、上述したシグナルが出力されるように構成してもよい。
【0046】
図7に示される画像Gの例では、50 nmの間隔で波長400 nm,450 nm,500 nm,550 nm,600 nm,650 nm,750 nmにそれぞれ対応する複数の画像Gが得られるものとなっている。
【0047】
複数の画像Gの数や各波長の間隔は、適宜変えてもよい。例えば判別対象とする藻類が有する色素の特徴が特に現われる帯域(例えば色素の吸収ピークがある波長域の周辺)においては、50 nmよりも短い間隔で、より多くの画像Gが得られるようにしてもよい。また、判別対象の藻類のスペクトルの形をより捉えやすくするため、波長が短い帯域から長い帯域までより広い範囲で、各波長の間隔をより短くして、より多くの画像Gが得られるようにしてもよい。
【0048】
また、個々の波長に対応する画像Gが同時に全て生成されるようにしてもよいが、一部のいくつかの波長に対応する画像Gのみが生成されるようにしてもよい。例えば、判別対象とする藻類の種類に合わせて、その藻類が有する色素の特徴が特に現われる帯域(例えば色素の吸収ピークがある波長域の周辺)の各波長に対応する画像Gのみが生成されるようにしてもよい。
【0049】
波長の選択は、上述したように光学フィルタ33を操作することにより行われるようにしてもよいし、光学フィルタ33を用いずに検出器32の内部で行われるようにしてもよい。個々の波長や画像取得倍率は、判別対象の藻類の大きさや種類に応じて適宜変更してもよい。
【0050】
図7では、画像Gに棒状のフォルミジウムの姿が写った例が示されているが、画像Gに写り得る藻類の形状は種類によって様々である。図8に、各種の藻類の姿が写った画像の例を示す。
【0051】
図8には、(a)アナベナ、(b)オシラトリア、(c)フォルミジウム、および(d)ミクロキスティスの姿が写った画像の例が示されている。
【0052】
図8に示されるように、藻類には、数珠が繋がったようなもの、糸状のもの、棒状のもの、球状のものなどがあり、形状は様々である。
【0053】
一般に、藻類を判別するには、顕微鏡を用いて藻類の形状を確認することが求められるが、本実施形態では、高価な顕微鏡を用いずに、藻類を判別することを可能にする。また、本実施形態では、顕微鏡を用いずに、撮像装置から出力される画像に基づいて藻類の判別を行うことを可能にするが、画像を用いずに、シグナルに基づいて藻類の判別を行うことをも可能にする。画像を用いる場合は、藻類判別を高精度に行うことが可能であるが、画像を用いずにシグナルを用いる場合は、処理の負担が軽くなり短時間で藻類判別の結果を出力することが可能となる。
【0054】
<藻類判別装置50の機能構成>
図9に、藻類判別装置50の機能構成の一例を示す。
【0055】
図9に示される藻類判別装置50は、撮像装置40から出力される撮像信号Cを取得したり、必要に応じて撮像装置40を制御したり、藻類の判別を行って得られた結果を表示装置80の画面に表示させたり、水処理施設100に設けられる薬剤注入制御装置90へ薬剤注入制御に必要な情報を提供したりする。藻類判別装置50および薬剤注入制御装置90は、薬剤注入制御システムを構成する。なお、表示装置80は、藻類判別装置50に備えられるものとして構成してもよい。
【0056】
藻類判別装置50は、コンピュータにより実現されるものであり、各種の機能として、撮像制御部41、信号入力部51、信号処理部52、記憶部53a、藻類判別部53、表示制御部54、および演算部55を有する。これらの機能は、コンピュータに備えられる中央演算装置等のプロセッサが実行するプログラムとして実現される。ただし、記憶部53aはプログラムやデータを記憶する記憶媒体として実現される。
【0057】
撮像制御部41は、撮像装置40を制御するものであり、例えば検出器32に対し、出力する複数の画像Gの数や各波長の間隔を調整したり、個々の波長や画像取得倍率を調整したりすることが可能である。
【0058】
信号入力部51は、撮像装置40から出力される撮像信号Cを入力(取得)する。
【0059】
信号処理部52は、信号入力部51により入力された撮像信号Cから、波長毎の信号強度(光の透過率に相当)を示す第1の情報J1を得る。第1の情報J1の詳細については、後で述べる。
【0060】
記憶部53aは、プログラムやデータを記憶するものであり、例えば各種の藻類が種類毎に備えている複数の色素にそれぞれ特徴づけられる光の吸収ピークがある複数の波長域(ピーク波長域)の信号強度(光の透過率に相当)を示す第2の情報J2を記憶する。第2の情報J2の詳細については、後で述べる。
【0061】
藻類判別部53は、第1の情報J1と第2の情報J2とを用いて、容器30の中の水に含まれる藻類の判別を行い、その判別結果を、表示制御部54を通じて表示装置80に表示させる。
【0062】
例えば、藻類判別部53は、容器30の中の水に、藻類が存在するか否か、判別対象とする特定の藻類(綱)が存在するか否か、特定の藻類(綱)が存在する場合にはその中に特定の藻類(属など)が存在するか否かなどを判定する。藻類の判別の具体的な手法については後で述べる。
【0063】
表示制御部54は、藻類判別部53により行われた藻類判別の結果を表示装置80の画面に表示する。
【0064】
演算部55は、容器30中の水に含まれる藻類につき、当該水の単位容積当たりの藻類の数を求める。具体的な演算方法については後で述べる。
【0065】
水処理施設100には、着水井101や薬剤注入部102が設けられるほか、前述した薬剤注入制御装置90が設けられる。
【0066】
薬剤注入制御装置90は、演算部55により求められた水の単位容積当たりの藻類の数に応じて、薬剤注入部102により行われる薬剤(粉末活性炭など)の注入を制御する。
【0067】
<第1の情報J1>
第1の情報J1は、撮像装置40が撮像した領域の画像(またはシグナル)に対応する情報であり、波長毎の信号強度を示すものである。
【0068】
例えば、撮像装置40が撮像した領域の中に判別対象の藻類(例えば、藍藻)が写っている場合、第1の情報J1には、その藻類が備えている複数の色素(例えば、クロロフィルa、フィコシアニン)にそれぞれ特徴づけられる光の吸収ピーク(440 nm付近および680 nm付近、ならびに620 nm付近)がある複数の波長域の信号強度(光の透過率に相当)の情報が含まれている。
【0069】
<第2の情報J2>
第2の情報J2は、各種の藻類を判別するための基準となる情報を藻類の種類毎にデータベースにまとめたものである。
【0070】
図10に、第2の情報J2の一例を示す。ただし、図10の表に示されるものは一例であって、これに限定されるものではない。情報の形式や内容は適宜変形してもよい。
【0071】
図10の表に示されるように、第2の情報J2は、藻類全般に共通する共通情報と、藻類の種類に応じて異なる個別情報とを含む。
【0072】
情報項目としては、少なくとも藻類の「綱」、当該綱が有する「色素」、当該色素に特徴づけられる光の吸収ピークがある「ピーク波長域」、当該ピーク波長域における「信号強度(波形)」、当該綱の有無の判定に使用する「判定基準」、当該綱の目、科、または属である「属など」、および当該属などが示す「スペクトル」がある。なお、図10では図示されていないが、各種の「属など」の有無の判定に使用する「判定基準」がさらにあってもよい。
【0073】
各種の綱の有無の判定に使用する「判定基準」は、特定の綱が有する色素の吸収ピークの有無を判定するための複数の閾値を含むものであってもよい。また、各種の属などの有無の判定に使用する「判定基準」は、特定の属などのスペクトルの有無を判定するための複数の閾値を含むものであってもよい。当該複数の閾値は、スペクトルのパターンマッチングを行う場合に使用されてもよい。いずれの「判定基準」も、藻類の種類ごとに機械学習を行って補正を行うことで判定の精度を高めてもよい。
【0074】
共通情報は、各種の藻類が共通に備えている色素に特徴づけられる光の吸収ピークがある波長域(ピーク波長域)の信号強度などを示し、藻類の有無の判定に使用される。
【0075】
具体的には、藻類全般に関する情報として、色素「クロロフィルa」、2つのピーク波長域「Lp,Lq」、2つの信号強度「Ip,Iq」、2つの判定基準「Rp,Rq」といった情報が備えられる。
【0076】
個別情報は、各種の藻類(綱)が個別に備えている色素に特徴づけられる光の吸収ピークがある波長域(ピーク波長域)の信号強度などを示すとともに、各種の藻類(属など)のスペクトルなどを示し、藻類の種類(綱、属など)の判別に使用される。
【0077】
例えば、藍藻(綱)の判別に使用する情報として、色素「フィコシアニン」、ピーク波長域「Lr」、信号強度「Ir」、判定基準「Rr」といった情報が備えられる。また、藍藻に属する「フォルミジウム」の判別に使用する情報として、スペクトル「Sa1」が、「オシラトリア」の判別に使用する情報として、スペクトル「Sa2」が備えられる。
【0078】
また、珪藻(綱)の判別に使用する情報として、色素「フコキサンチン」、ピーク波長域「Ls」、信号強度「Is」、判定基準「Rs」といった情報が備えられる。また、珪藻に属する「アウラコセイラ」の判別に使用する情報として、スペクトル「Sb1」が備えられる。
【0079】
<藻類判別部53が有する各種の機能>
藻類判別部53は、前述したように第1の情報J1と第2の情報J2とを用いて、容器30の中の水に含まれる藻類の判別を行う。
【0080】
・藻類の有無の判定
藻類判別部53は、第2の情報J2の中のクロロフィルaの2つの判定基準「Rp,Rq」に基づき、クロロフィルaの2つのピーク波長域「Lp,Lq」における2つの信号強度「Ip,Iq」に相当するものが第1の情報J1の中に存在するか否かを判定する。存在する場合には、撮像装置40で撮像した領域の中に藻類が存在すると判定する。
【0081】
・特定の藻類(綱)の判別
判別対象の藻類(綱)が例えば「藍藻」である場合、藻類判別部53は、第2の情報J2の中のフィコシアニンの判定基準「Rr」に基づき、フィコシアニンのピーク波長域「Lr」における信号強度「Ir」に相当するものが第1の情報J1の中に存在するか否かを判定するとともに、第2の情報J2の中のクロロフィルaの2つの判定基準「Rp,Rq」に基づき、クロロフィルaの2つのピーク波長域「Lp,Lq」における2つの信号強度「Ip,Iq」に相当するものが第1の情報J1の中に存在するか否かを判定する。両方とも存在する場合には、撮像装置40で撮像した領域の中に「藍藻」が存在すると判定する。
【0082】
・特定の藻類(属など)の判別
判別対象の藻類(属など)が例えば「フォルミジウム」である場合、藻類判別部53は、第2の情報J2の中のフォルミジウムのスペクトル「Sa1」の波形に相当するものが第1の情報J1に存在するか否かを判定する。存在する場合には、撮像装置40で撮像した領域の中に「フォルミジウム」が存在すると判定する。
【0083】
また、判別対象の藻類(属など)が例えば「オシラトリア」である場合、藻類判別部53は、第2の情報J2の中のオシラトリアのスペクトル「Sa2」の波形に相当するものが第1の情報J1に存在するか否かを判定する。存在する場合には、撮像装置40で撮像した領域の中に「オシラトリア」が存在すると判定する。
【0084】
・色素の特定
藻類判別部53は、第1の情報J1から、複数の光の吸収ピークがある複数の波長域(ピーク波長域)を求め、求めた複数の波長域から、第2の情報J2を用いて該当する複数の色素を特定する機能を有し、さらに、特定した複数の色素から、該当する藻類の綱を特定する機能を有する。
【0085】
例えば、第2の情報J2を用いることで、複数の色素として「クロロフィルa」および「フィコシアニン」を特定することができた場合、これらの色素を有する藻類の綱「藍藻」を特定することができるので、撮像装置40で撮像した領域の中に「藍藻」が存在すると判定することができる。
【0086】
・属などの特定
藻類判別部53は、第1の情報J1からスペクトルを求め、求めたスペクトルから、第2の情報J2を用いて該当する藻類の目、科、または属を特定する機能を有する。第1の情報J1からスペクトルを求める際には、例えば曲線近似などの手法を用いてもよい。
【0087】
例えば、第2の情報J2からスペクトル「Sa1」を特定することができた場合、このスペクトルを示す藻類の属「フォルミジウム」を特定することができるので、撮像装置40で撮像した領域の中に「フォルミジウム」が存在すると判定することができる。
【0088】
また、第2の情報J2からスペクトル「Sa2」を特定することができた場合、このスペクトルを示す藻類の属「オシラトリア」を特定することができるので、撮像装置40で撮像した領域の中に「オシラトリア」が存在すると判定することができる。
【0089】
<判定基準の使用例>
図11に、判定基準を用いて特定の藻類(綱)が有する色素の吸収ピークの有無を判定する手法の一例を示す。また、図12に、判定基準を用いて特定の藻類(属など)のスペクトルの有無を判定する手法の一例を示す。ただし、ここで示されるものは一例であって、これらの例に限定されるものではない。
【0090】
図11及び図12の各グラフにおいて、縦軸は光の透過率を、横軸は波長を示す。光の透過率は、信号強度に相当するものとみなすことができる。各グラフ中、実線で描かれた曲線の上の複数の点は、第2の情報J2の中の判定基準(以降、「基準データ」と称す。)に相当し、一点鎖線で描かれた曲線上の複数の点は、第1の情報J1に示される信号強度(以降、「実測データ」と称す。)に相当する。
【0091】
なお、ここでは複数の点を用いて判定を行う場合の例を示すが、複数の点を用いる代わりに、複数の点が通る近似曲線もしくは曲線(スペクトル)を用いて判定を行うことも可能である。また、当該判定は、例えばパターンマッチングの手法を用いて行ってもよい。
【0092】
図11には、特定の藻類(綱)が有する特定の色素の吸収ピークがある波長域の周辺を対象に、実測データPx,Py,Pzが示されている。これらの実測データに対し、基準データP1,P0,P2が適用される。
【0093】
基準データP0は、特定の藻類(綱)が有する特定の色素の吸収ピークがある波長域の中心の波長λpに位置する。実測データPyも波長λpに位置する。
【0094】
基準データP1,P2は、それぞれ波長λpから一定以上離れた波長λp-1,λp+1に位置する。実測データPx,Pzも波長λp-1,λp+1に位置する。
【0095】
基準データP1と基準データP0との透過率の差はD1であり、基準データP2と基準データP0との透過率の差はD2である。
【0096】
例えば、実測データPxの透過率が基準データP1の透過率以上であり、実測データPyの透過率が基準データP0の透過率以下であり、実測データPzの透過率が基準データP2の透過率以上であれば、判定基準を満たし、上記特定の藻類(綱)が存在すると判定される。図11の例では、実測データPx,Py,Pzの透過率は判定基準を満たすので、上記特定の藻類(綱)が存在すると判定される。
【0097】
図12には、特定の藻類(属など)が有する特定の色素の吸収ピークがある波長域の周辺を対象に、実測データとして3つの実測データPx,Py,Pzが示されている。これらの実測データに対し、基準データPa,Pb,Pcが適用される。なお、ここで説明する手法は、特定の色素の吸収ピークがある波長域の周辺に限らず、他の波長域においても適用可能である。
【0098】
基準データPbは、特定の藻類(綱)が有する特定の色素の吸収ピークがある波長域の中心の波長λpに位置する。実測データPyも波長λpに位置する。
【0099】
基準データPa,Pcは、それぞれ波長λpから一定以上離れた波長λp-1,λp+1に位置する。実測データPx,Pzも波長λp-1,λp+1に位置する。
【0100】
基準データPaは、透過率Taを中心に、透過率の上限値Ta+1および下限値Ta-1を備える。基準データPbは、透過率Tbを中心に、透過率の上限値Tb+1および下限値Tb-1を備える。基準データPcは、透過率Tcを中心に、透過率の上限値Tc+1および下限値Tc-1を備える。
【0101】
例えば、実測データPxの透過率が基準データPaの透過率の上限値Ta+1および下限値Ta-1の範囲内にあり、実測データPyの透過率が基準データPbの透過率の上限値Tb+1および下限値Tb-1の範囲内にあり、実測データPzの透過率が基準データPcの透過率の上限値Tc+1および下限値Tc-1の範囲内にあれば、判定基準を満たし、上記特定の藻類(属など)が存在すると判定される。図12の例では、実測値の透過率Px,Py,Pzは判定基準を満たすので、上記特定の藻類(属など)が存在すると判定される。
【0102】
<薬剤の注入制御>
図9に示される演算部55は、前述したように、容器30中の水に含まれる藻類につき、当該水の単位容積当たりの藻類の数を求める。その演算方法を以下に示す。
【0103】
例えば、容器30の深さ(例えば0.1 mm)を示す情報が予め取得され、また、検出器32の画素数、画素サイズおよび光学倍率を示す情報が予め取得される。なお、取得される画像には、複数個の藻類が写っているものとする。
【0104】
演算部55は、検出器32の画素数、画素サイズおよび光学倍率から、画像取得面積(取得された画像に写る水の面積)を算出し、容器30の深さを用いて画像取得容積(取得された画像に写る水の容積)を求める。一方で、演算部55は、取得された画像に含まれている藻類の数を求める。これらの演算結果から、水の単位容積当たりの藻類の数を算出する。単位は例えばcells/mLとする。
【0105】
演算部55は、算出した結果を示す情報を、表示制御部54を通じて表示装置80の画面に表示させるとともに、薬剤注入制御装置90へ伝える。薬剤注入制御装置90へは、藻類の種類を示す情報も伝えられる。
【0106】
薬剤注入制御装置90は、演算部55により求められた水の単位容積当たりの藻類の数に応じて、薬剤注入部102により行われる薬剤の注入を制御する。例えば、水の単位容積当たりの藻類(例えば、フォルミジウム)の数がある閾値を超えた場合に、薬剤注入部102により行われる粉末活性炭の着水井101への注入量または注入率を増加させる、あるいは停止していた注入を開始する。
【0107】
なお、ここでは、薬剤が、着水井101へ注入する粉末活性炭である場合の例を挙げたが、薬剤は粉末活性炭に限らない。薬剤は、藻類の種類によっては、混和池などに注入する凝集剤や塩素剤としてもよい。
【0108】
<藻類判別装置50の動作例>
図13を参照して、藻類判別装置50の動作の一例を説明する。
【0109】
最初に、撮像制御部41は、必要に応じて撮像装置40の検出器32を制御し、信号入力部51は、撮像装置40から出力される撮像信号Cを入力(取得)する(ステップS1)。
【0110】
次に、信号処理部52は、信号入力部51により入力された撮像信号Cから、波長毎の信号強度を示す第1の情報J1を得る(ステップS2)。
【0111】
次に、藻類判別部53は、記憶部53aから、各種の藻類が種類毎に備えている複数の色素にそれぞれ特徴づけられる光の吸収ピークがある複数の波長域(ピーク波長域)の信号強度を示す第2の情報J2の一部又は全てを読み出す(ステップS3)。
【0112】
そして、藻類判別部53は、第1の情報J1と第2の情報J2とを用いて、容器30の中の水に含まれる藻類の判別を行い(ステップS4)、その判別結果を、表示制御部54を通じて表示装置80に表示出力する(ステップS5)。
【0113】
次に、演算部55は、容器30中の水に含まれる藻類につき、当該水の単位容積当たりの藻類の数を演算し(ステップS6)、その演算結果と当該藻類の種類を示す情報とを薬剤注入制御装置90に供給する(ステップS7)。
<薬剤注入制御装置90の動作例>
図14を参照して、薬剤注入制御装置90の動作の一例を説明する。
【0114】
最初に、薬剤注入制御装置90は、藻類判別装置50側から供給される演算結果と当該藻類の種類を示す情報とを取得する(ステップS11)。
【0115】
次に、薬剤注入制御装置90は、水の単位容積当たりの藻類の数に応じて、薬剤注入部102により行われる薬剤の注入を制御する(ステップS12)。
【0116】
以上詳述したように、実施形態によれば、顕微鏡を用いずに簡易な構成で藻類の判別を行うことができる。
【0117】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0118】
10…光軸、20…光源、30…容器、31…レンズ、32…検出器、33…フィルタ、40…撮像装置、41…撮像制御部、50…藻類判別装置、51…信号入力部、52…信号処理部、53…藻類判別部、53a…記憶部、54…表示制御部、55…演算部、80…表示装置、90…薬剤注入制御装置、101…着水井、102…薬剤注入部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14