(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034874
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/487 20070101AFI20240306BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20240306BHJP
【FI】
H02M7/487
H02M7/48 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139407
(22)【出願日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬場 俊之
(72)【発明者】
【氏名】安岡 育雄
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 隆太
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA02
5H770DA34
5H770EA01
5H770EA25
5H770LB02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】エネルギー損失を抑制した電力変換装置を提供する。
【解決手段】電力変換装1は、第1直流端子Pと第2直流端子Nとの間に直列に接続された第1乃至第4自己消弧素子T1-T4と、第1自己消弧素子T1と第2自己消弧素子T2との接続点と、第4自己消弧素子T4と第3自己消弧素子T3との接続点と、の間に逆並列接続されたダイオードD5-D6、第5自己消弧素子T5および第6自己消弧素子T6と、を備える。第2自己消弧素子T2および第3自己消弧素子T3は、バイポーラ素子であって、第1自己消弧素子T1および第2自己消弧素子T2を切り替える期間において第3自己消弧素子T3および第4自己消弧素子T4を常にオフし、第3自己消弧素子T3および第4自己消弧素子T4を切り替える期間において第1自己消弧素子T1および第2自己消弧素子T2を常にオフする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1直流端子と前記第1直流端子と異なる電位となる第2直流端子との間に直列に接続された第1乃至第4自己消弧素子と、
一端が前記第1直流端子と電気的に接続された前記第1自己消弧素子と前記第2自己消弧素子との接続点と、他端が前記第2直流端子と電気的に接続された前記第4自己消弧素子と前記第3自己消弧素子との接続点と、の間に逆並列接続された第1ダイオードおよび第2ダイオードと、
前記第1ダイオードに逆並列接続された第5自己消弧素子と、
前記第2ダイオードに逆並列接続された第6自己消弧素子と、
前記第1乃至第6自己消弧素子の動作を制御する制御回路と、を備え、
前記第5自己消弧素子と前記第6自己消弧素子との接続点は、前記第1直流端子の電位と前記第2直流端子の電位との間の電位となる第3直流端子と電気的に接続され、
前記第2自己消弧素子と前記第3自己消弧素子との接続点は交流端子と電気的に接続され、
前記第2自己消弧素子および前記第3自己消弧素子はバイポーラ素子であって、
前記制御回路は、前記第1自己消弧素子および前記第2自己消弧素子を切り替える期間において前記第3自己消弧素子および前記第4自己消弧素子を常にオフし、前記第3自己消弧素子および前記第4自己消弧素子を切り替える期間において前記第1自己消弧素子および前記第2自己消弧素子を常にオフする電力変換装置。
【請求項2】
前記制御回路は、出力指令値と第1搬送波とを比較した値に基づく第1導通制御指令と、前記出力指令値と第2搬送波とを比較した値に基づく第2導通制御指令と、を生成するPWM回路と、
前記第1導通制御指令に基づき前記第1自己消弧素子および前記第2自己消弧素子の制御信号を生成し、前記第2導通制御指令に基づき前記第3自己消弧素子および前記第4自己消弧素子の制御信号を生成し、前記第1導通制御指令の否定値と前記第2導通制御指令の否定値とに基づき前記第5自己消弧素子および前記第6自己消弧素子の制御信号を生成する信号生成回路と、を備え、
前記第1搬送波は前記出力指令値がゼロ以上のときに前記出力指令と交差し、前記第2搬送波は前記出力指令値がゼロ以下のときに前記出力指令と交差する、請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記信号生成回路は、
前記第1導通制御指令のオンタイミングを遅延させた前記第1自己消弧素子の制御信号を出力する第1オン遅延回路と、
前記第1導通制御指令のオフタイミングを遅延させた前記第2自己消弧素子の制御信号を出力する第1オフ遅延回路と、
前記第2導通制御指令のオフタイミングを遅延させた前記第3自己消弧素子の制御信号を出力する第2オフ遅延回路と、
前記第2導通制御指令のオンタイミングを遅延させた前記第4自己消弧素子の制御信号を出力する第2オン遅延回路と、を備える、請求項2記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記信号生成回路は、
前記第1導通制御指令の否定値のオンタイミングを遅延させる第3オン遅延回路と、
前記第2導通制御指令の否定値のオフタイミングを遅延させる第3オフ遅延回路と、
前記第3オン遅延回路の出力値と前記第3オフ遅延回路の出力値との論理積を演算して前記第5自己消弧素子の制御信号を出力する第1論理積回路と、
前記第1導通制御指令の否定値のオフタイミングを遅延させる第4オフ遅延回路と、
前記第2導通制御指令の否定値のオンタイミングを遅延させる第4オン遅延回路と、
前記第4オフ遅延回路の出力値と前記第4オン遅延回路の出力値との論理積を演算して前記第6自己消弧素子の制御信号を出力する第2論理積回路と、を備える、請求項3記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記信号生成回路は、
前記第1導通制御指令の否定値のオンタイミングを遅延させる第3オン遅延回路と、
前記第2導通制御指令の否定値を出力する第1否定回路と、
前記第1否定回路の出力値のオンタイミングとオフタイミングを遅延させる第1オンオフ遅延回路と、
前記第3オン遅延回路の出力値と前記第1オンオフ遅延回路の出力値との論理積を演算して前記第5自己消弧素子の制御信号を出力する第3論理積回路と、
前記第1導通制御指令の否定値を出力する第2否定回路と、
前記第2否定回路の出力値のオンタイミングとオフタイミングとを遅延させる第2オンオフ遅延回路と、
前記第2導通制御指令の否定値のオンタイミングを遅延させる第4オン遅延回路と、
前記第2オンオフ遅延回路の出力値と前記第4オン遅延回路の出力値との論理積を演算して前記第6自己消弧素子の制御信号を出力する第4論理積回路と、を備える、請求項3記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
中性点クランプ(NPC:Neutral Point Clamped)方式の電力変換回路では、例えばクランプダイオードにより出力電圧を中性点電圧でクランプすることにより、複数の電圧レベルの出力を行うことが出来る。上記NPC方式の電力変換回路において、クランプダイオードに自己消弧素子型の電力半導体素子(アクティブ素子)を付したアクティブNPC方式(以下、A-NPC方式)の電力変換回路も提案されている。A-NPC方式の電力変換回路によれば、電流集中を緩和することが出来るとともに、転流経路を短くしてスイッチング損失およびサージ電圧を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、A-NPC方式の電力変換回路のアクティブ素子として、例えばSi-IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)のようなバイポーラトランジスタを採用した場合、各レグの内側のスイッチング素子においては、スイッチング素子のターンオフ後に残留キャリアによりスイッチング損失が発生することがあった。
【0005】
本発明の実施形態は上記事情を鑑みて成されたものであって、電力変換装置におけるエネルギー損失を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態による電力変換装置は、第1直流端子と前記第1直流端子と異なる電位となる第2直流端子との間に直列に接続された第1乃至第4自己消弧素子と、一端が前記第1直流端子と電気的に接続された前記第1自己消弧素子と前記第2自己消弧素子との接続点と、他端が前記第2直流端子と電気的に接続された前記第4自己消弧素子と前記第3自己消弧素子との接続点と、の間に逆並列接続された第1および第2ダイオードと、前記第1ダイオードに逆並列接続された第5自己消弧素子と、前記第2ダイオードに逆並列接続された第6自己消弧素子と、前記第1乃至第6自己消弧素子の動作を制御する制御回路と、を備え、前記第5自己消弧素子と前記第6自己消弧素子との接続点は、前記第1直流端子電位と前記第2直流端子電位との間の電位となる第3直流端子と電気的に接続され、前記第2自己消弧素子と前記第3自己消弧素子との接続点は交流端子と電気的に接続され、前記第2自己消弧素子および前記第3自己消弧素子はバイポーラ素子であって、前記制御回路は、前記第1自己消弧素子および前記第2自己消弧素子を切り替える期間において前記第3自己消弧素子および前記第4自己消弧素子を常にオフし、前記第3自己消弧素子および前記第4自己消弧素子を切り替える期間において前記第1自己消弧素子および前記第2自己消弧素子を常にオフする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1実施形態の電力変換装置の一構成例を概略的に示す図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す制御回路の一構成例を概略的に示す図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す制御回路の動作の一例を説明するための図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の電力変換装置の動作の一例を説明するためのタイミングチャートである。
【
図5】
図5は、第1実施形態の電力変換装置の動作の一例を説明するためのタイミングチャートである。
【
図6】
図6は、第2実施形態の電力変換装置の制御回路の一構成例を概略的に示す図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態の電力変換装置の動作の一例を説明するためのタイミングチャートである。
【
図8】
図8は、第2実施形態の電力変換装置の動作の一例を説明するためのタイミングチャートである。
【
図9】
図9は、第1実施形態の電力変換装置の動作の一例について説明するための図である。
【
図10】
図10は、第1実施形態の電力変換装置の動作の一例について説明するための図である。
【
図11】
図11は、第2実施形態の電力変換装置の動作の一例について説明するための図である。
【
図12】
図12は、第2実施形態の電力変換装置の動作の一例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の電力変換装置について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、第1実施形態の電力変換装置の一構成例を概略的に示す図である。
本実施形態の電力変換装置は、電力変換回路1と、制御回路CTRと、を備えている。
【0009】
電力変換回路1は、A-NPC方式の3レベルインバータ回路であって、自己消弧素子型の電力半導体素子(自己消弧素子)T1-T6と、ダイオードD1-D6と、コンデンサC1、C2と、を備えている。また、電力変換回路1は、直流端子P、O、Nと、交流端子Aと、を備えている。直流端子(第1直流端子)Pは高電位側端子であり、直流端子(第2直流端子)Nは低電位側端子であり、直流端子(第3直流端子)Oは直流端子Pの電位と直流端子Nの電位との間の中性点電位の端子である。
コンデンサC1は、直流端子Pと直流端子Oとの間に接続されている。コンデンサC2は、直流端子Oと直流端子Nとの間に接続されている。
【0010】
自己消弧素子T1-T4は、直流端子Pと直流端子Nとの間に直列に接続されている。すなわち、自己消弧素子(第1自己消弧素子)T1の一端は直流端子Pと電気的に接続され、他端は自己消弧素子(第2自己消弧素子)T2の一端と電気的に接続されている。自己消弧素子T2の他端は自己消弧素子(第3自己消弧素子)T3の一端と電気的に接続され、自己消弧素子T3の他端は自己消弧素子(第4自己消弧素子)T4の一端と電気的に接続されている。自己消弧素子T4の他端は直流端子Nと電気的に接続されている。自己消弧素子T2と自己消弧素子T3との中間接続点は、交流端子Aと電気的に接続されている。
【0011】
本実施形態において、自己消弧素子T1-T4はバイポーラトランジスタであって、例えばSi-IGBTである。なお、本実施形態の電力変換装置では少なくとも自己消弧素子T2、T3がバイポーラ素子であればよく、自己消弧素子T1、T2はバイポーラ素子に限定されずMOSFETなどのユニポーラ素子であってもよい。
ダイオードD1-D4の各々は、自己消弧素子T1-T4の各々に逆並列接続された還流ダイオードである。
【0012】
自己消弧素子(第5自己消弧素子)T5は、自己消弧素子T1および自己消弧素子T2の接続点と、直流端子Oとの間に接続されている。本実施形態では、バイポーラトランジスタであって、例えばSi-IGBTである。なお、自己消弧素子T5は、バイポーラ素子に限定されずMOSFETなどのユニポーラ素子であってもよい。
【0013】
自己消弧素子(第6自己消弧素子)T6は、直流端子Oと、自己消弧素子T3および自己消弧素子T4の接続点との間に接続されている。本実施形態では、バイポーラトランジスタであって、例えばSi-IGBTである。なお、自己消弧素子T6は、バイポーラ素子に限定されずMOSFETなどのユニポーラ素子であってもよい。
【0014】
ダイオードD5、D6の各々はクランプダイオードであって、自己消弧素子T5、T6の各々に逆並列接続されている。すなわち、ダイオード(第1ダイオード)D5は、自己消弧素子T1および自己消弧素子T2の接続点と直流端子Oとの間において、直流端子Oから自己消弧素子T1および自己消弧素子T2の接続点へ向かう方向を順方向として接続されている。ダイオード(第2ダイオード)D6は、自己消弧素子T3および自己消弧素子T4の接続点と直流端子Oとの間において、自己消弧素子T3および自己消弧素子T4の接続点から直流端子Oへ向かう方向を順方向として接続されている。
【0015】
制御回路CTRは、例えば上位制御装置から出力指令を受信し、出力指令に基づいて自己消弧素子T1-T6の制御信号を生成して出力する。制御回路CTRは、例えば、プロセッサと、プロセッサにより実行されるプログラムとを備え、ソフトウエアにより又はソフトウエアとハードウエアとの組み合わせにより種々の機能を実現するように構成され得る。
【0016】
図2は、
図1に示す制御回路の一構成例を概略的に示す図である。
図3は、
図2に示す制御回路の動作の一例を説明するための図である。
制御回路CTRは、PWM回路2と、ゲート信号生成回路3と、を備えている。
PWM回路2は、出力指令(変調波)W1と三角波(搬送波)W2、W3とを比較して、導通制御指令PWM1U、PWM2U、PWM1X、PWM2Xを生成する。三角波W2、W3は、PWM回路2において予め設定された値であってもよく、外部から供給される値であってもよい。
【0017】
図3に示す例では、出力指令W1は例えば振幅Vの正弦波であり、三角波(第1搬送波)W2は最小値がゼロ(若しくは基準電位)であり最大値がV(基準電位+V)以上であり、三角波(第2搬送波)W3は最小値が-V(基準電位-V)以下であり最大値がゼロ(基準電位)である。三角波W2、W3の周期は出力指令W1の周期の1/10である。したがって、三角波W2の波形は出力指令W1の値がゼロ(基準電位)以上である期間(P-O出力期間)において出力指令W1の波形と交差し、三角波W3の波形は出力指令W1がゼロ(基準電位)以下である期間(N-O出力期間)において出力指令W1の波形と交差する。
【0018】
PWM回路2は、出力指令W1の値と三角波W2の値とを比較することにより、導通制御指令(第1導通制御指令)PWM1Uと導通制御指令PWM1Xとを生成する。導通制御指令PWM1Xは導通制御指令PWM1Uの否定値に基づく値であって、出力指令W1と三角波W2との値を比較した結果に応じて、「1(Highレベル)」と「0(Lowレベル)」との2値で切り替えられる。
【0019】
導通制御指令PWM1Uは、出力指令W1が三角波W2以上であるときに「1」となり、出力指令W1が三角波W2未満であるときに「0」となる。導通制御指令PWM1Xは、出力指令W1が三角波W2未満であるときに「1」となり、出力指令W1が三角波W2以上であるときに「0」となる。なお、導通制御指令PWM1Uと導通制御指令PWM1Xとの一方(若しくは両方)にはデッドタイムDTが付与され、導通制御指令PWM1Uと導通制御指令PWM1Xとが同時に「1」となることが回避される。
【0020】
PWM回路2は、出力指令W1の値と三角波W3の値とを比較することにより、導通制御指令(第2導通制御指令)PWM2Uと導通制御指令PWM2Xとを生成する。導通制御指令PWM2Xは導通制御指令PWM2Uの否定値に基づく値であって、出力指令W1と三角波W3との値を比較した結果に応じて、「1(Highレベル)」と「0(Lowレベル)」との2値で切り替えられる。
【0021】
導通制御指令PWM2Uは、出力指令W1が三角波W3未満であるときに「1」となり、出力指令W1が三角波W3以上であるときに「0」となる。導通制御指令PWM2Xは、出力指令W1が三角波W3以上であるときに「1」となり、出力指令W1が三角波W3未満であるときに「0」となる。なお、導通制御指令PWM2Uと導通制御指令PWM2Xとの一方(若しくは両方)にはデッドタイムDTが付与され、導通制御指令PWM2Uと導通制御指令PWM2Xとが同時に「1」となることが回避される。
【0022】
ゲート信号生成回路3は、導通制御指令PWM1U、PWM1X、PWM2U、PWM2Xに基づいて、自己消弧素子T1-T6に対するゲート信号を生成して出力する。
自己消弧素子T1、T2の制御指令は導通制御指令PWM1Uに基づき生成され、自己消弧素子T3、T4の制御指令は導通制御指令PWM2Uに基づき生成される。自己消弧素子T5、T6の制御指令は導通制御指令PWM1X、PWM2Xに基づき生成される。
【0023】
本実施形態では、
図3に示すように、自己消弧素子T1、T2をスイッチングさせる期間において、自己消弧素子T3、T4は常にオフとなる。逆に、自己消弧素子T3、T4をスイッチングさせる期間において、自己消弧素子T1、T2は常にオフとなる。
【0024】
ゲート信号生成回路3は、遅延回路30-37と、論理積回路(AND)38、39と、を備えている。
遅延回路30には導通制御指令PWM1Uが入力される。遅延回路30は、導通制御指令PWM1Uのオンタイミングをディレイ期間TD1だけ遅延させて出力するオン遅延回路(第1オン遅延回路)である。遅延回路30の出力信号は、自己消弧素子T1のゲート信号である。
【0025】
遅延回路31には導通制御指令PWM1Uが入力される。遅延回路31は、導通制御指令PWM1Uのオフタイミングをディレイ期間TD1だけ遅延させて出力するオフ遅延回路(第1オフ遅延回路)である。遅延回路31の出力信号は、自己消弧素子T2のゲート信号である。
遅延回路32には導通制御指令PWM2Uが入力される。遅延回路32は、導通制御指令PWM2Uのオフタイミングをディレイ期間TD1だけ遅延させて出力するオフ遅延回路(第2オフ遅延回路)である。遅延回路32の出力信号は、自己消弧素子T3のゲート信号である。
【0026】
遅延回路33には導通制御指令PWM2Uが入力される。遅延回路33は、導通制御指令PWM2Uのオンタイミングをディレイ期間TD1だけ遅延させて出力するオン遅延回路(第2オン遅延回路)である。遅延回路33の出力信号は、自己消弧素子T4のゲート信号である。
遅延回路34には導通制御指令PWM1Xが入力される。遅延回路34は、導通制御指令PWM1Xのオンタイミングをディレイ期間TD2だけ遅延させて出力するオン遅延回路(第3オン遅延回路)である。
【0027】
遅延回路35には導通制御指令PWM2Xが入力される。遅延回路35は、導通制御指令PWM2Xのオフタイミングをディレイ期間TD2だけ遅延させて出力するオフ遅延回路(第3オフ遅延回路)である。
遅延回路36には導通制御指令PWM1Xが入力される。遅延回路36は、導通制御指令PWM1Xのオフタイミングをディレイ期間TD2だけ遅延させて出力するオフ遅延回路(第4オフ遅延回路)である。
【0028】
遅延回路37には導通制御指令PWM2Xが入力される。遅延回路37は、導通制御指令PWM2Xのオンタイミングをディレイ期間TD2だけ遅延させて出力するオン遅延回路(第4オン遅延回路)である。
なお、本実施形態では、デッドタイムDT、ディレイ期間TD2およびディレイ期間TD1の間には下記の関係があるものとして説明する。これに限らず、オンタイミングのディレイ期間とオフタイミングのディレイ期間とを異なる期間に設定してもよく、各ディレイ期間を必ずしも同じに設定する必要はない。
TD1=TD2、DT<TD1(=TD2)
【0029】
論理積回路(第1論理積回路)38には、遅延回路34の出力値と遅延回路35の出力値とが入力される。論理積回路38は、遅延回路34の出力値と遅延回路35の出力値との論理積を演算して出力する。論理積回路38の出力信号は、自己消弧素子T5のゲート信号である。
【0030】
論理積回路(第2論理積回路)39には、遅延回路36の出力値と遅延回路37の出力値とが入力される。論理積回路39は、遅延回路36の出力値と遅延回路37の出力値との論理積を演算して出力する。論理積回路39の出力信号は、自己消弧素子T6のゲート信号である。
【0031】
次に、本実施形態の電力変換装置の動作の一例について説明する。
図4は、第1実施形態の電力変換装置の動作の一例を説明するためのタイミングチャートである。
ここでは、電力変換回路1の出力端子から、直流端子P又は直流端子Oの入力値が出力されるとき(P-O出力期間)の、導通制御指令PWM1U、PWM1X、PWM2U、PWM2Xと、自己消弧素子T1-T6のゲート信号との一例を示している。
【0032】
まず、時刻t1において、導通制御指令PWM1Xが1から0になると、自己消弧素子T5のゲート信号は1から0となり、自己消弧素子T5はオフされる。
続いて、時刻t1からデッドタイムDTが経過した後の時刻t2において、導通制御指令PWM1Uがゼロから1となると、自己消弧素子T2のゲート信号が0から1となり、自己消弧素子T2がオンされる。
【0033】
続いて、遅延回路36により、時刻t1からディレイ期間TD2だけ遅れた時刻t3において、自己消弧素子T6のゲート信号が1から0となり、自己消弧素子T6はオフされる。
続いて、遅延回路30により、時刻t2からディレイ期間TD1だけ遅れた時刻t4において、自己消弧素子T1のゲート信号がゼロから1となり、自己消弧素子T1がオンされる。
【0034】
デッドタイムDT、ディレイ期間TD2およびディレイ期間TD1の間には、DT<TD2<DT+TD1の関係があるので、自己消弧素子T2のオン時刻t2は、自己消弧素子T6のオフ時刻t3より先行し、時刻t3は自己消弧素子T1のオン時刻t4より先行している。
【0035】
次に、時刻t5において、導通制御指令PWM1Uが1から0になると、自己消弧素子T1のゲート信号は1から0となり、自己消弧素子T1はオフされる。
続いて、時刻t5からデッドタイムDTが経過した後の時刻t6において、導通制御指令PWM1Xが0から1となると、自己消弧素子T6のゲート信号が0から1となり、自己消弧素子T6がオンされる。
【0036】
続いて、遅延回路31により、時刻t5からディレイ期間TD1だけ遅れた時刻t7において、自己消弧素子T2のゲート信号が1から0となり、自己消弧素子T2はオフされる。
続いて、遅延回路34により、時刻t6からディレイ期間TD2だけ遅れた時刻t8において、自己消弧素子T5のゲート信号が0から1となり、自己消弧素子T5がオンされる。
【0037】
デッドタイムDT、ディレイ期間TD2およびディレイ期間TD1の間には、DT<TD2<DT+TD1の関係があるので、自己消弧素子T6のオン時刻t6は、自己消弧素子T2のオフ時刻t7より先行し、時刻t7は自己消弧素子T5のオン時刻t8より先行している。
【0038】
ここで、例えば、自己消弧素子T3、T5がオンされているときには、ダイオードD2および自己消弧素子T5を介して交流端子Aから直流端子Oへ電流が流れる経路と、自己消弧素子T3およびダイオードD6を介して交流端子Aから直流端子Oへ電流が流れる経路ができる。この状態で自己消弧素子T3をオフすると、自己消弧素子T3およびダイオードD6を介して交流端子Aから直流端子Oへ電流が流れる経路が遮断され、ダイオードD2および自己消弧素子T5を介して交流端子Aから直流端子Oへ電流が流れる経路のみが残る。続いて、自己消弧素子T5をオフして、ダイオードD1、D2を介して交流端子Aから直流端子Pへ電流が流れる経路へ転流させる。このとき、自己消弧素子T3の残留キャリアの影響により、自己消弧素子T3およびダイオードD6を介して交流端子Aから直流端子Oへ電流が流れる経路にもパルス電流が流れ、自己消弧素子T3に電圧が印加されるため、自己消弧素子T3においてスイッチング損失が発生する。
【0039】
これに対し、本実施形態では、P-O出力期間において、自己消弧素子T3は常にオフでありオンすることがないので、T3に残留キャリアが発生せず、自己消弧素子T3にスイッチング損失が発生することはない。
【0040】
また、例えば自己消弧素子T1、T2がオンされ、直流端子Pから交流端子Aへ電流が流れているときに、自己消弧素子T1をターンオフが出来ない故障が発生し、更にデッドタイムDT経過後に自己消弧素子T5がオンすると、直流端子Pから自己消弧素子T1、T5を介して直流端子Oへ電流が流れる経路で短絡する。その後、更に自己消弧素子T3がオンすると、自己消弧素子T1-T3およびダイオードD6を介して直流端子Pから直流端子Oへ電流が流れる経路が更に短絡し、短絡による故障範囲が大きくなる。
【0041】
これに対し、本実施形態の電力変換装置において、例えば自己消弧素子T1をターンオフできない故障が発生したとき、P-O出力期間では自己消弧素子T3は常にオフでありオンすることがないので、短絡経路は自己消弧素子T1から自己消弧素子T5までの範囲となり、短絡による故障の範囲を小さくすることができる。
【0042】
図5は、第1実施形態の電力変換装置の動作の一例を説明するためのタイミングチャートである。
ここでは、電力変換回路1の出力端子から、直流端子N又は直流端子Oの入力値が出力されるとき(N-O出力期間)の、導通制御指令PWM1U、PWM1X、PWM2U、PWM2Xと、自己消弧素子T1-T6のゲート信号との一例を示している。
【0043】
まず、時刻t9において、導通制御指令PWM2Xが1から0になると、自己消弧素子T6のゲート信号は1から0となり、自己消弧素子T6はオフされる。
続いて、時刻t9からデッドタイムDTが経過した後の時刻t10において、導通制御指令PWM2Uが0から1となると、自己消弧素子T3のゲート信号が0から1となり、自己消弧素子T3がオンされる。
【0044】
続いて、遅延回路35により、時刻t9からディレイ期間TD2だけ遅れた時刻t11において、自己消弧素子T5のゲート信号が1から0となり、自己消弧素子T5はオフされる。
続いて、遅延回路33により、時刻t10からディレイ期間TD1だけ遅れた時刻t12において、自己消弧素子T4のゲート信号が0から1となり、自己消弧素子T4がオンされる。
【0045】
デッドタイムDT、ディレイ期間TD2およびディレイ期間TD1の間には、DT<TD2<DT+TD1の関係があるので、自己消弧素子T3のオン時刻t10は、自己消弧素子T5のオフ時刻t11より先行し、時刻t11は自己消弧素子T4のオン時刻t12より先行している。
【0046】
次に、時刻t13において、導通制御指令PWM2Uが1から0になると、自己消弧素子T4のゲート信号は1から0となり、自己消弧素子T4はオフされる。
続いて、時刻t13からデッドタイムDTが経過した後の時刻t14において、導通制御指令PWM2Xが0から1となると、自己消弧素子T5のゲート信号が0から1となり、自己消弧素子T5がオンされる。
【0047】
続いて、遅延回路32により、時刻t13からディレイ期間TD1だけ遅れた時刻t15において、自己消弧素子T3のゲート信号が1から0となり、自己消弧素子T3はオフされる。
続いて、遅延回路37により、時刻t14からディレイ期間TD2だけ遅れた時刻t16において、自己消弧素子T6のゲート信号が0から1となり、自己消弧素子T6がオンされる。
【0048】
デッドタイムDT、ディレイ期間TD2およびディレイ期間TD1の間には、DT<TD2<DT+TD1の関係があるので、自己消弧素子T5のオン時刻t14は、自己消弧素子T3のオフ時刻t15より先行し、時刻t15は自己消弧素子T6のオン時刻t16より先行している。
【0049】
ここで、例えば、自己消弧素子T2、T6がオンされているときには、ダイオードD5および自己消弧素子T2を介して直流端子Oから交流端子Aへ電流が流れる経路と、自己消弧素子T6およびダイオードD3を介して直流端子Oから交流端子Aへ電流が流れる経路ができる。この状態で自己消弧素子T2をオフすると、ダイオードD5および自己消弧素子T2を介して直流端子Oから交流端子Aへ電流が流れる経路が遮断され、自己消弧素子T6およびダイオードD3を介して直流端子Oから交流端子Aへ電流が流れる経路のみが残る。続いて、自己消弧素子T6をオフして、ダイオードD3、D4を介して直流端子Nから交流端子Aへ電流が流れる経路へ転流させる。このとき、自己消弧素子T2の残留キャリアの影響により、ダイオードD5おより自己消弧素子T2を介して直流端子Oから交流端子Aへ電流が流れる経路にもパルス電流が流れ、自己消弧素子T2に電圧が印加されるため、自己消弧素子T2においてスイッチング損失が発生する。
【0050】
これに対し、本実施形態によれば、N-O出力期間において、自己消弧素子T2は常にオフでありオンすることがないので、自己消弧素子T2にスイッチング損失が発生することはない。
【0051】
また、例えば自己消弧素子T3、T4がオンされ、交流端子Aから直流端子Nへ電流が流れているときに、自己消弧素子T4をターンオフが出来ない故障が発生し、更にデッドタイムDT経過後に自己消弧素子T6がオンすると、直流端子0から自己消弧素子T4、T6を介して直流端子Nへ電流が流れる経路で短絡する。その後、更に自己消弧素子T2がオンした場合、自己消弧素子T2-T4およびダイオードD5を介して直流端子Oから直流端子Nへ電流が流れる経路が更に短絡し、短絡による故障範囲が大きくなる。
【0052】
これに対し、本実施形態の電力変換装置において、例えば自己消弧素子T4をターンオフできない故障が発生したとき、N-O出力期間では自己消弧素子T2は常にオフでありオンすることがないので、短絡経路は自己消弧素子T6から自己消弧素子T4までの範囲となり、短絡による故障の範囲を小さくすることができる。
すなわち、本実施形態によれば、電力変換装置におけるエネルギー損失を抑制することができる。
【0053】
次に、第2実施形態の電力変換装置について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において上述の第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態の電力変換装置は、制御回路の構成が上述の第1実施形態の電力変換装置と異なっている。
【0054】
図6は、第2実施形態の電力変換装置の制御回路の一構成例を概略的に示す図である。
本実施形態の電力変換装置において、制御回路CTRは、PWM回路2と、ゲート信号生成回路3と、を備えている。
PWM回路2の構成は、上述の第1実施形態における制御回路CTRと同様である。すなわち、PWM回路2は、出力指令(変調波)W1と三角波(搬送波)W2、W3とを比較して、導通制御指令PWM1U、PWM2U、PWM1X、PWM2Xを生成し、ゲート信号生成回路3へ出力する。
【0055】
ゲート信号生成回路3は、導通制御指令PWM1U、PWM1X、PWM2U、PWM2Xに基づいて、自己消弧素子T1-T6に対するゲート信号を生成して出力する。
導通制御指令PWM1Uは自己消弧素子T1、T2の制御指令であり、導通制御指令PWM2Uは自己消弧素子T3、T4の制御指令である。導通制御指令、PWM1U、PWM2U、PWM1X、PWM2Xは、自己消弧素子T5、T6の制御指令である。上述の第1実施形態と同様に、自己消弧素子T1、T2をスイッチングさせる期間において、自己消弧素子T3、T4は常にオフとなる。逆に、自己消弧素子T3、T4をスイッチングさせる期間において、自己消弧素子T1、T2は常にオフとなる。
【0056】
ゲート信号生成回路3は、遅延回路30-34、35b、35c、36b、36c、37と、否定回路35a、36aと、論理積回路(AND)38、39と、を備えている。
遅延回路30には導通制御指令PWM1Uが入力される。遅延回路30は、導通制御指令PWM1Uのオンタイミングをディレイ期間TD1だけ遅延させて出力するオン遅延回路(第1オン遅延回路)である。遅延回路30の出力信号は、自己消弧素子T1のゲート信号である。
【0057】
遅延回路31には導通制御指令PWM1Uが入力される。遅延回路31は、導通制御指令PWM1Uのオフタイミングをディレイ期間TD1だけ遅延させて出力するオフ遅延回路(第1オフ遅延回路)である。遅延回路31の出力信号は、自己消弧素子T2のゲート信号である。
遅延回路32には導通制御指令PWM2Uが入力される。遅延回路32は、導通制御指令PWM2Uのオフタイミングをディレイ期間TD1だけ遅延させて出力するオフ遅延回路(第2オフ遅延回路)である。遅延回路32の出力信号は、自己消弧素子T3のゲート信号である。
【0058】
遅延回路33には導通制御指令PWM2Uが入力される。遅延回路33は、導通制御指令PWM2Uのオンタイミングをディレイ期間TD1だけ遅延させて出力するオン遅延回路(第2オン遅延回路)である。遅延回路33の出力信号は、自己消弧素子T4のゲート信号である。
遅延回路34には導通制御指令PWM1Xが入力される。遅延回路34は、導通制御指令PWM1Xのオンタイミングをディレイ期間TD2だけ遅延させて出力するオン遅延回路(第3オン遅延回路)である。
【0059】
否定回路(第1否定回路)35aには導通制御指令PWM2Uが入力される。否定回路35aは、導通制御指令PWM2Uの否定値を遅延回路35bへ出力する。
遅延回路35bと遅延回路35cとは、否定回路35aの出力値のオンタイミングとオフタイミングとをそれぞれ遅延させるオンオフ遅延回路(第1オンオフ遅延回路)である。
【0060】
遅延回路35bには否定回路35aの出力値(導通制御指令PWM2Uの否定値)が入力される。遅延回路35bは、入力された導通制御指令PWM2Uの否定値のオフタイミングをディレイ期間TD3だけ遅延させて出力するオフ遅延回路(第5オフ遅延回路)である。
遅延回路35cには遅延回路35bの出力値が入力される。遅延回路35cは、入力された導通制御指令PWM2Uの否定値のオンタイミングをディレイ期間TD4だけ遅延させて出力するオン遅延回路(第5オン遅延回路)である。
【0061】
否定回路(第2否定回路)36aには導通制御指令PWM1Uが入力される。否定回路36aは、導通制御指令PWM1Uの否定値を遅延回路36bへ出力する。
遅延回路36bと遅延回路36cとは、否定回路36aの出力値のオンタイミングとオフタイミングとをそれぞれ遅延させるオンオフ遅延回路(第2オンオフ遅延回路)である。
【0062】
遅延回路36bには否定回路36aの出力値(導通制御指令PWM1Uの否定値)が入力される。遅延回路36bは、入力された導通制御指令PWM1Uの否定値のオフタイミングをディレイ期間TD3だけ遅延させて出力するオフ遅延回路(第6オフ遅延回路)である。
遅延回路36cには遅延回路36bの出力値が入力される。遅延回路36cは、入力された導通制御指令PWM1Uの否定値のオンタイミングをディレイ期間TD4だけ遅延させて出力するオン遅延回路(第6オン遅延回路)である。
【0063】
遅延回路37には導通制御指令PWM2Xが入力される。遅延回路37は、導通制御指令PWM2Xのオンタイミングをディレイ期間TD2だけ遅延させて出力するオン遅延回路(第4オン遅延回路)である。
なお、本実施形態では、デッドタイムDT、ディレイ期間TD1-TD4の間には下記の関係があるものとして説明する。これに限らず、オンタイミングのディレイ期間とオフタイミングのディレイ期間とを異なる期間に設定してもよく、各ディレイ期間を必ずしも同じに設定する必要はない。
TD1=TD2、TD3=TD4=DT、DT<TD1(=TD2)
【0064】
論理積回路(第3論理積回路)38には、遅延回路34の出力値と遅延回路35cの出力値とが入力される。論理積回路38は、遅延回路34の出力値と遅延回路35cの出力値との論理積を演算して出力する。論理積回路38の出力信号は、自己消弧素子T5のゲート信号である。
【0065】
論理積回路(第4論理積回路)39には、遅延回路36cの出力値と遅延回路37の出力値とが入力される。論理積回路39は、遅延回路36cの出力値と遅延回路37の出力値との論理積を演算して出力する。論理積回路39の出力信号は、自己消弧素子T6のゲート信号である。
【0066】
次に、本実施形態の電力変換装置の動作の一例について説明する。
図7は、第2実施形態の電力変換装置の動作の一例を説明するためのタイミングチャートである。
ここでは、電力変換回路1の出力端子から、直流端子P又は直流端子Oの入力値が出力されるとき(P-O出力期間)の、導通制御指令PWM1U、PWM1X、PWM2U、PWM2Xと、自己消弧素子T1-T6のゲート信号との一例を示している。
【0067】
まず、時刻t17において、導通制御指令PWM1Xが1から0になると、自己消弧素子T5のゲート信号は1から0となり、自己消弧素子T5はオフされる。
続いて、時刻t17からデッドタイムDTが経過した後の時刻t18において、導通制御指令PWM1Uが0から1となると、自己消弧素子T2のゲート信号が0から1となり、自己消弧素子T2がオンされる。
【0068】
続いて、遅延回路36bにより、時刻t18からディレイ期間TD3だけ遅れた時刻t19において、自己消弧素子T6のゲート信号が1から0となり、自己消弧素子T6はオフされる。
続いて、遅延回路30により、時刻t18からディレイ期間TD1だけ遅れた時刻t20において、自己消弧素子T1のゲート信号が0から1となり、自己消弧素子T1がオンされる。ここで、ディレイ期間TD3およびディレイ期間TD1の間には、TD3<TD1の関係があるので、自己消弧素子T2のオン時刻t18は、自己消弧素子T6のオフ時刻t19より先行し、時刻t19は自己消弧素子T1のオン時刻t20より先行している。
【0069】
次に、時刻t21において、導通制御指令PWM1Uが1から0になると、自己消弧素子T1のゲート信号は1から0となり、自己消弧素子T1はオフされる。
続いて、遅延回路36cにより、時刻t21からディレイ期間TD4だけ遅れた時刻t22において、自己消弧素子T6のゲート信号が0から1となり、自己消弧素子T6がオンされる。
【0070】
続いて、遅延回路31により、時刻t21からディレイ期間TD1だけ遅れた時刻t23において、自己消弧素子T2のゲート信号が1から0となり、自己消弧素子T2はオフされる。
続いて、遅延回路34により、時刻t22からディレイ期間TD2だけ遅れた時刻t24において、自己消弧素子T5のゲート信号が0から1となり、自己消弧素子T5がオンされる。ここで、デッドタイムDT、ディレイ期間TD1、ディレイ期間TD2およびディレイ期間TD4の間には、TD4<TD1、TD1<DT+TD2の関係があるので、自己消弧素子T6のオン時刻t22は、自己消弧素子T2のオフ時刻t23より先行し、時刻t23は自己消弧素子T5のオン時刻t24より先行している。
【0071】
上記によれば、本実施形態でも第1実施形態と同様に、P-O出力期間において、自己消弧素子T3は常にオフでありオンすることがないので、T3に残留キャリアが発生せず、自己消弧素子T3にスイッチング損失が発生することはない。
【0072】
また、本実施形態の電力変換装置において、例えば自己消弧素子T1をターンオフできない故障が発生したとき、P-O出力期間では自己消弧素子T3は常にオフでありオンすることがないので、短絡経路は自己消弧素子T1から自己消弧素子T5までの範囲となり、短絡による故障の範囲を小さくすることができる。
【0073】
図8は、第2実施形態の電力変換装置の動作の一例を説明するためのタイミングチャートである。
ここでは、電力変換回路1の出力端子から、直流端子N又は直流端子Oの入力値が出力されるとき(N-O出力期間)の、導通制御指令PWM1U、PWM1X、PWM2U、PWM2Xと、自己消弧素子T1-T6のゲート信号との一例を示している。
【0074】
まず、時刻t25において、導通制御指令PWM2Xが1から0になると、自己消弧素子T6のゲート信号は1から0となり、自己消弧素子T6はオフされる。
続いて、時刻t25からデッドタイムDTが経過した時刻t26において、導通制御指令PWM2Uが0から1となると、自己消弧素子T3のゲート信号が0から1となり、自己消弧素子T3がオンされる。
【0075】
続いて、遅延回路35bにより、時刻t26からディレイ期間TD3だけ遅れた時刻t27において、自己消弧素子T5のゲート信号が1から0となり、自己消弧素子T5はオフされる。
続いて、遅延回路33により、時刻t26からディレイ期間TD1だけ遅れた時刻t28において、自己消弧素子T4のゲート信号が0から1となり、自己消弧素子T4がオンされる。ここで、デッドタイムDT、ディレイ期間TD3およびディレイ期間TD1の間には、TD3<TD1の関係があるので、自己消弧素子T3のオン時刻t26は、自己消弧素子T5のオフ時刻t27より先行し、時刻t27は自己消弧素子T4のオン時刻t28より先行している。
【0076】
次に、時刻t29において、導通制御指令PWM2Uが1から0になると、自己消弧素子T4のゲート信号は1から0となり、自己消弧素子T4はオフされる。
続いて、遅延回路35cにより、時刻t29からディレイ期間TD4だけ遅れた時刻t30において、自己消弧素子T5のゲート信号が0から1となり、自己消弧素子T5がオンされる。
【0077】
続いて、遅延回路32により、時刻t29からディレイ期間TD1だけ遅れた時刻t31において、自己消弧素子T3のゲート信号が1から0となり、自己消弧素子T3はオフされる。
続いて、遅延回路37により、時刻t30からディレイ期間TD2だけ遅れた時刻t32において、自己消弧素子T6のゲート信号が0から1となり、自己消弧素子T6がオンされる。ここで、デッドタイムDT、ディレイ期間TD1、ディレイ期間TD2およびディレイ期間TD4の間には、TD4<TD1、TD1<DT+TD2の関係があるので、自己消弧素子T5のオン時刻t30は、自己消弧素子T3のオフ時刻t31より先行し、時刻t31は自己消弧素子T6のオン時刻t32より先行している。
【0078】
上記によれば、本実施形態において上述の第1実施形態と同様に、N-O出力期間において、自己消弧素子T2は常にオフでありオンすることがないので、自己消弧素子T2にスイッチング損失が発生することはない。
【0079】
また、本実施形態の電力変換装置において、例えば自己消弧素子T4をターンオフできない故障が発生したとき、N-O出力期間では自己消弧素子T2は常にオフでありオンすることがないので、短絡経路は自己消弧素子T6から自己消弧素子T4までの範囲となり、短絡による故障の範囲を小さくすることができる。
すなわち、本実施形態によれば、電力変換装置におけるエネルギー損失を抑制することができる。
【0080】
また以下に、第1実施形態および第2実施形態の電力変換装置において、例えば自己消弧素子T1がオンされているときに、電力変換回路1の動作を停止(ゲートブロック)するときの動作について説明する。
【0081】
図9および
図10は、第1実施形態の電力変換装置の動作の一例について説明するための図である。
図9には、第1実施形態の電力変換装置において自己消弧素子T1がオンされているタイミングを含む、自己消弧素子T1、T2、T5、T6のゲート信号のタイミングチャートの一例を示し、
図10には
図9に示すゲート信号により自己消弧素子T1、T2、T5、T6が動作したときに電力変換回路1に流れる電流の経路を示している。
【0082】
自己消弧素子T1がオンされているタイミングでは自己消弧素子T2がオンされ、自己消弧素子T5、T6がオフされている。なお、この期間では自己消弧素子T3、T4は常にオフである。この状態では、自己消弧素子T1、T2を介して直流端子Pから交流端子A1への経路1Aに電流が流れている。
【0083】
このときに、ゲートブロックGBが行われると、自己消弧素子T1がオフされることにより、電力変換回路1に流れる電流は、ダイオードD5および自己消弧素子T2を介して直流端子Oから交流端子A1へ流れる経路1Bへ転流する。更に自己消弧素子T2がオフされると、電力変換回路1に流れる電流は、ダイオードD3、D4を介して直流端子Nから交流端子A1へ流れる経路1Cへ転流し、電力変換回路1の動作が停止される。
【0084】
図11および
図12は、第2実施形態の電力変換装置の動作の一例について説明するための図である。
図11には、第2実施形態の電力変換装置において自己消弧素子T1がオンされているタイミングを含む、自己消弧素子T1、T2、T5、T6のゲート信号のタイミングチャートの一例を示し、
図12には
図11に示すゲート信号により自己消弧素子T1、T2、T5、T6が動作したときに電力変換回路1に流れる電流の経路を示している。
【0085】
自己消弧素子T1がオンされているタイミングでは自己消弧素子T2がオンされ、自己消弧素子T5、T6がオフされている。なお、この期間では自己消弧素子T3、T4は常にオフである。この状態では、自己消弧素子T1、T2を介して直流端子Pから交流端子A1への経路2Aに電流が流れている。
【0086】
このときに、ゲートブロックGBが行われると、自己消弧素子T1がオフされることにより、電力変換回路1に流れる電流は、ダイオードD5および自己消弧素子T2を介して直流端子Oから交流端子A1へ流れる経路2Bへ転流する。更に、本実施形態では自己消弧素子T1がオフされた後自己消弧素子T2がオフされる前に、自己消弧素子T6がオンされる。この状態において、電力変換回路1には、ダイオードD5および自己消弧素子T2を介して直流端子Oから交流端子A1へ電流が流れる経路に加え、自己消弧素子T6およびダイオードD3を介して直流端子Oから交流端子A1へ流れる電流の経路2Cが生じる。
【0087】
続いて自己消弧素子T2がオフされると、経路2Bは遮断され、電力変換回路1に流れる電流は、経路2Cのみ流れる。最後に自己消弧素子T6がオフされると、電力変換回路1に流れる電流はダイオードD3、D4を介して直流端子Nから交流端子A1へ流れる経路2Eへ転流し、電力変換回路1の動作が停止される。
【0088】
上記のように、第2実施形態の電力変換装置によれば、自己消弧素子T1と自己消弧素子T2とがオフした後に、自己消弧素子T6のみがオンした状態となり、出力電流Ioutが正極性のとき、ダイオードD5から自己消弧素子T2に流れている電流を、自己消弧素子T6からダイオードD3を経由する経路からダイオードD4からダイオードD3を経由する経路に転流できるため、低インダクタンスの転流ループで電力変換回路1を停止することができる。
【0089】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0090】
1…電力変換回路、2…PWM回路、3…ゲート信号生成回路、30-37…遅延回路、35a、35b…否定回路、35c…遅延回路、36a…否定回路、36b、36c…遅延回路、38、39…論理積回路、C1、C2…コンデンサ、D1-D6…ダイオード、T1-T6…自己消弧素子