(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034876
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】通信制御装置及び通信システム
(51)【国際特許分類】
H04W 36/30 20090101AFI20240306BHJP
H04W 36/04 20090101ALI20240306BHJP
H04W 36/08 20090101ALI20240306BHJP
H04W 36/38 20090101ALI20240306BHJP
【FI】
H04W36/30
H04W36/04
H04W36/08
H04W36/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139420
(22)【出願日】2022-09-01
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、総務省、令和4年度における第5世代移動通信システムの更なる高度化に向けた研究開発の委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】313005318
【氏名又は名称】パナソニックコネクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上杉 充
(72)【発明者】
【氏名】浅野 弘明
(72)【発明者】
【氏名】上野 剛
(72)【発明者】
【氏名】大植 裕司
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067EE02
5K067EE10
5K067HH22
5K067HH23
5K067JJ53
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ユーザ端末との良好な通信品質を確保しながら、通信先の切り替えを行うことのできる通信制御装置及び通信システムを提供する。
【解決手段】ユーザ端末7の通信先の切り替えを指示する通信制御装置4であって、プロセッサ26と、ユーザ端末と通信先との間の通信品質を示す通信品質マップを保持する記憶装置24と、を備え、プロセッサは、ユーザ端末の位置と、記憶装置に保持された通信品質マップと、に基づいて、ユーザ端末に通信先の切り替えを指示する構成とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザ端末の通信先の切り替えを指示する通信制御装置であって、
プロセッサと、前記ユーザ端末と前記通信先との間の通信品質を示す通信品質マップを保持する記憶装置と、を備え、
前記プロセッサは、前記ユーザ端末の位置と、前記記憶装置に保持された前記通信品質マップと、に基づいて、前記ユーザ端末に前記通信先の切り替えを指示する通信制御装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記通信品質マップから、前記ユーザ端末の位置における通信品質を取得し、取得した前記ユーザ端末の位置における通信品質に基づいて、前記通信先の切り替えを指示する請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、所定の予測時間の経過後の前記ユーザ端末の予測位置を取得し、前記通信品質マップから前記予測位置における通信品質を取得し、取得した前記予測位置における通信品質に基づいて、前記通信先の切り替えを指示する請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記ユーザ端末の速度に基づいて、前記予測時間を設定する請求項3に記載の通信制御装置。
【請求項5】
前記通信先として前記ユーザ端末と通信可能なアクセスポイントを含み、
前記プロセッサは、前記アクセスポイントの周辺に係る周辺情報を取得し、前記周辺情報に基づいて、前記通信品質マップを補正する請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記周辺情報に基づいて、前記アクセスポイントからの電波が遮られる遮断領域に係る情報を取得し、取得した前記遮断領域に係る前記情報に基づいて、前記通信品質マップを補正する請求項5に記載の通信制御装置。
【請求項7】
前記ユーザ端末は道路を移動する移動体に搭載され、
前記アクセスポイントはそれぞれ前記道路の路側に設けられた路側機であり、
前記プロセッサは、前記周辺情報を、前記路側に設けられたセンサによって取得する請求項5に記載の通信制御装置。
【請求項8】
前記プロセッサは、前記アクセスポイントを切り替えることによって、前記アクセスポイントと前記ユーザ端末との間の通信が確保できるか否かを判定し、できないと判定した場合には、前記ユーザ端末に広域通信へ切り替えることを指示する請求項5に記載の通信制御装置。
【請求項9】
前記プロセッサは、前記周辺情報を時刻の経過とともに繰り返し取得し、取得した前記周辺情報に基づいて、前記通信品質マップを時刻の経過とともに繰り返し補正する請求項5に記載の通信制御装置。
【請求項10】
前記プロセッサは、前記周辺情報を時刻の経過とともに繰り返し取得し、取得した前記周辺情報に基づいて前記アクセスポイントからの電波が、前記アクセスポイントの周辺の物体によって遮られる遮断領域に係る情報を時刻の経過とともに繰り返し取得し、前記通信品質マップを時刻の経過とともに繰り返し補正する請求項5に記載の通信制御装置。
【請求項11】
前記プロセッサは、前記ユーザ端末から通信品質に係る情報を取得して、前記通信品質マップを補正する請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項12】
請求項1~請求項11のいずれか1つの項に記載の前記通信制御装置を複数含む通信システムであって、
前記プロセッサは、前記記憶装置に記憶された前記通信品質マップと、他の前記通信制御装置から取得した前記通信品質マップとを用いて、前記通信先の切り替えを指示する通信システム。
【請求項13】
前記プロセッサは、前記通信品質マップにおいて通信品質が良好となる領域と、他の前記通信制御装置から取得した前記通信品質マップの通信品質が良好となる領域とが重なっている場合に、前記アクセスポイントの切り替えを指示する請求項12に記載の通信システム。
【請求項14】
前記ユーザ端末と、請求項1~請求項11のいずれか1つの項に記載の前記通信制御装置とを含む通信システムであって、
前記ユーザ端末は、前記通信先の切り替えの指示を受け付けたときに、切替先の通信品質が、切替前の通信品質よりも低い場合には、前記通信先の切り替えを実施しない通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ユーザ端末が通信するべき通信先の切り替えを行うための通信制御装置、及び、通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
モバイルネットワークの分野では、5G(第5世代移動体通信システム)が商用化の段階にある。5Gは、高速かつ大容量にデータの送受信を行うことができるという利点を備えている。
【0003】
5Gを用いて、大容量にデータを一つのサーバに送信して処理を行うように構成すると、そのサーバに負荷がかかり、5Gの利点を生かすことができなくなる。そのため、データや情報の生成および利用ならびにそれらの送受信が特定のエリア内のみで完結するようないわゆる地産地消型のネットワークを構成することが考えられている。
【0004】
高速かつ大容量の通信を実現するため、5Gでは、従来利用されている周波数帯に比べてより高い周波数帯(例えば、40GHz帯、70GHz帯)の利用が検討されている。しかしながら、利用される周波数が高くなると、電波伝搬特性によって電波の減衰が大きくなる。そのため、1つの基地局(または、アクセスポイント)によってカバーできるサービスエリアがより小さくなるという問題がある。
【0005】
そのため、ユーザ端末の位置に応じたアクセスポイントの変更が頻繁に行われることになり、例えば、複数の基地局間の無線通信によるマルチホップ通信の通信経路もまた変更する必要がある。そこで、エッジサーバを配置したネットワークにおいて、エッジサーバとユーザ端末との通信に用いられる無線通信経路を適切に構築することができるネットワーク制御装置が開発されている(例えば、特許文献1)。
【0006】
同様に、移動局の位置及び移動方向情報を用いて通話中チャネル切り替えを行う無線通信システムが公知である(例えば、特許文献2)。特許文献2の無線通信システムでは、移動局の位置情報と予め地理的に設定される位置との比較により次の基地局への切り替え動作を開始する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2021-57738号公報
【特許文献2】特開平11-69411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
5Gでは、利用される周波数が高くなると、アクセスポイントがカバーできるサービスエリアが小さくなる。また、アクセスポイントに設けられるアンテナの形状やその指向性などによって、良好な通信品質が得られる範囲は複雑な形状をなす。そのため、ユーザ端末との良好な通信品質を確保しつつ、ユーザ端末の位置に応じた適切なタイミングで、通信先を切り替えることのできる技術の開発が望まれている。
【0009】
そこで、本開示は、ユーザ端末との良好な通信品質を確保しながら、通信先の切り替えを行うことのできる通信制御装置及び通信システムを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の通信制御装置は、ユーザ端末の通信先の切り替えを指示する通信制御装置であって、プロセッサと、前記ユーザ端末と前記通信先との間の通信品質を示す通信品質マップを保持する記憶装置と、を備え、前記プロセッサは、前記ユーザ端末の位置と、前記記憶装置に保持された前記通信品質マップと、に基づいて、前記ユーザ端末に前記通信先の切り替えを指示する構成とする。
【0011】
本開示の通信システムは、上記の通信制御装置を複数含む通信システムであって、前記プロセッサは、前記記憶装置に記憶された前記通信品質マップと、他の前記通信制御装置から取得した前記通信品質マップとを用いて、前記通信先の切り替えを指示する構成とする。
【0012】
本開示の通信システムは、前記ユーザ端末と、上記の前記通信制御装置とを含む通信システムであって、前記ユーザ端末は、前記通信先の切り替えの指示を受け付けたときに、切替先の通信品質が、切替前の通信品質よりも低い場合には、前記アクセスポイントの切り替えを実施しない構成とする。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、ユーザ端末との良好な通信品質を確保できるように、通信先の切り替えを行うことのできる通信制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態に係る路側機通信システムの全体構成図
【
図2】NW制御サーバによるユーザ端末とエッジサーバとの通信経路の制御の一例を示す説明図
【
図3】アクセスポイントの概略構成を示すブロック図
【
図7】第1実施形態に係る通信の切替処理の流れを示すフロー図
【
図10】2つのアクセスポイントに関する通信品質マップおよび通信品質の関係を示す説明図
【
図11】第2実施形態に係るユーザ端末の概略構成を示すブロック図
【
図12】第2実施形態に係る通信の切替処理を示すフロー図
【
図13】第3実施形態に係るユーザ端末の概略構成を示すブロック図
【
図14】第3実施形態に係る通信の切替処理の流れを示すフロー図
【発明を実施するための形態】
【0015】
前記課題を解決するためになされた第1の発明は、ユーザ端末の通信先の切り替えを指示する通信制御装置であって、プロセッサと、前記ユーザ端末と前記通信先との間の通信品質を示す通信品質マップを保持する記憶装置と、を備え、前記プロセッサは、前記ユーザ端末の位置と、前記記憶装置に保持された前記通信品質マップと、に基づいて、前記ユーザ端末に前記通信先の切り替えを指示する構成とする。
【0016】
これによると、通信品質マップを利用することにより、良好な通信品質を確保できるように、通信先の切り替えを行うことが可能となる。
【0017】
また、第2の発明は、前記プロセッサは、前記通信品質マップから、前記ユーザ端末の位置における通信品質を取得し、取得した前記ユーザ端末の位置における通信品質に基づいて、前記通信先の切り替えを指示する構成とする。
【0018】
これによると、ユーザ端末の位置に基づいて通信先の切り替えを適切に行うことが可能となる。
【0019】
また、第3の発明は、前記プロセッサは、所定の予測時間の経過後の前記ユーザ端末の予測位置を取得し、前記通信品質マップから前記予測位置における通信品質を取得し、取得した前記予測位置における通信品質に基づいて、前記通信先の切り替えを指示する構成とする。
【0020】
これによると、ユーザ端末が移動する場合でも、ユーザ端末の予測位置に基づいて、通信先を切り替えることが可能となる。
【0021】
また、第4の発明は、前記プロセッサは、前記ユーザ端末の速度に基づいて、前記予測時間を設定する構成とする。
【0022】
これによると、ユーザ端末の速度に応じて、予測時間を適切に設定することが可能となる。
【0023】
また、第5の発明は、前記通信先として前記ユーザ端末と通信可能なアクセスポイントを含み、前記プロセッサは、前記アクセスポイントの周辺に係る周辺情報を取得し、前記周辺情報に基づいて、前記通信品質マップを補正する構成とする。
【0024】
これによると、アクセスポイントの周辺状況に応じて通信品質マップが補正されるため、周辺状況に応じたアクセスポイントの切り替えが可能となる。
【0025】
また、第6の発明は、前記プロセッサは、前記周辺情報に基づいて、前記アクセスポイントからの電波が遮られる遮断領域に係る情報を取得し、取得した前記遮断領域に係る前記情報に基づいて、前記通信品質マップを補正する構成とする。
【0026】
これによると、アクセスポイントからの電波の遮断される場合においても、周辺状況に応じたアクセスポイントの切り替えが可能となる。
【0027】
また、第7の発明は、前記ユーザ端末は道路を移動する移動体に搭載され、前記アクセスポイントはそれぞれ前記道路の路側に設けられた路側機であり、前記プロセッサは、前記周辺情報を、前記路側に設けられたセンサによって取得する構成とする。
【0028】
これによると、アクセスポイントの周辺情報を適切に取得することが可能となる。
【0029】
また、第8の発明は、前記プロセッサは、前記アクセスポイントを切り替えることによって、前記アクセスポイントと前記ユーザ端末との間の通信が確保できるか否かを判定し、できないと判定した場合には、前記ユーザ端末に広域通信へ切り替えることを指示する構成とする。
【0030】
これによると、アクセスポイントとの通信が確保できなくなる場合に、ユーザ端末への広域通信への切り替え指示が行われるため、ユーザ端末の外部への通信が確保できなくなることを防止することが可能となる。
【0031】
また、第9の発明は、前前記プロセッサは、前記周辺情報を時刻の経過とともに繰り返し取得し、取得した前記周辺情報に基づいて、前記通信品質マップを時刻の経過とともに繰り返し補正する構成とする。
【0032】
これによると、アクセスポイントの周辺状況が時刻の経過とともに変化する場合においても、通信品質マップが時刻の経過とともに繰り返し補正されるため、周辺状況の変化に応じたアクセスポイントの切り替えが可能となる。
【0033】
また、第10の発明は、前記プロセッサは、前記周辺情報を時刻の経過とともに繰り返し取得し、取得した前記周辺情報に基づいて前記アクセスポイントからの電波が、前記アクセスポイントの周辺の物体によって遮られる遮断領域に係る情報を時刻の経過とともに繰り返し取得し、前記通信品質マップを時刻の経過とともに繰り返し補正する構成とする。
【0034】
これによると、アクセスポイントからの電波の遮断状況が時刻の経過とともに変化する場合においても、その変化に応じて通信品質マップが補正されるため、周辺状況の変化に応じたアクセスポイントの切り替えが可能となる。
【0035】
また、第11の発明は、前記ユーザ端末から通信品質に係る情報を取得して、前記通信品質マップを補正する構成とする。
【0036】
これによると、ユーザ端末の電波状況に応じて、通信品質マップが補正されるため、より現実の電波強度に即したアクセスポイントの切り替えが可能となる。
【0037】
また、第12の発明は、上記の通信制御装置を複数含む通信システムであって、前記プロセッサは、前記記憶装置に記憶された前記通信品質マップと、他の前記通信制御装置から取得した前記通信品質マップとを用いて、前記通信先の切り替えを指示する構成とする。
【0038】
これによると、通信先の通信品質を考慮した通信先の切り替えが可能となる。
【0039】
また、第13の発明は、前記プロセッサは、前記通信品質マップにおいて通信品質が良好となる領域と、他の前記通信制御装置から取得した前記通信品質マップの通信品質が良好となる領域とが重なっている場合に、前記アクセスポイントの切り替えを指示する構成とする。
【0040】
これによると、アクセスポイント間の通信の切り替えを良好に行うことが可能となる。
【0041】
また、第14の発明は、前記ユーザ端末と、上記の前記通信制御装置とを含む通信システムであって、前記ユーザ端末は、前記通信先の切り替えの指示を受け付けたときに、切替先の通信品質が、切替前の通信品質よりも低い場合には、前記通信先の切り替えを実施しない構成とする。
【0042】
これによると、通信先の切り替えによる通信品質の低下を防止することが可能となる。
【0043】
以下、本開示の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0044】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る通信システムの全体構成図である。
【0045】
通信システム(システム1と略称する。路側機通信システムともいう。)は、マクロセル基地局2、スモールセル基地局3、アクセスポイント4(又は基地局)、エッジサーバ5、ネットワーク制御サーバ(NW制御サーバ6と略称する。)、及びユーザ端末7を備える。
【0046】
システム1が適用されるネットワークでは、複数のスモールセル基地局3の通信エリアであるスモールセルエリア11が、マクロセル基地局2の通信エリアであるマクロセルエリア12上にそれぞれ重畳される。
【0047】
マクロセル基地局2は、例えばLTE(Long Term Evolution)などのUHF帯(周波数:300MHz~3GHz)を代表とするより大きなセルを構築しやすい周波数帯を利用して無線通信を行うものである。マクロセル基地局2は、制御信号を伝送するための制御プレーン(CPlane)の基地局となる。また、マクロセル基地局2は、ユーザデータを伝送するためのユーザプレーン(U-Plane)の基地局として使用される場合もある。
【0048】
スモールセル基地局3は、例えば低SHF帯(周波数:3GHz~6GHz)などのマクロセル基地局2よりも高い周波数を利用して無線通信を行うものである。なお、スモールセル基地局3は、高SHF帯(周波数:6GHz~30GHz帯)を利用するものであってもよい。スモールセル基地局3は、ユーザプレーンの基地局として使用される。
【0049】
アクセスポイント4(通信制御装置の一例)は、例えば、Wi-Fi(登録商標)による比較的小容量の無線通信や、WiGig(登録商標)による比較的大容量の無線LAN通信を行うものである。アクセスポイント4の通信エリア13は、スモールセルエリア11及びマクロセルエリア12の少なくとも一方に重畳される。
【0050】
ただし、アクセスポイント4は、スモールセル基地局3よりも高い周波数帯を利用して無線通信を行うマイクロセル基地局であってもよい。その場合、アクセスポイント4による無線通信は、5GのNR(New Radio)となる高SHF帯またはEHF帯(ここでは、28GHz帯、40GHz帯、及び70GHz帯など)を利用して行うことができる。また、複数のアクセスポイント4には、そのようなマイクロセル基地局と、無線LAN通信を行う基地局とがともに含まれてもよい。アクセスポイント4としてマイクロセル基地局が用いられる場合、通信エリア13は、マイクロセル基地局の通信エリアであるマイクロセルに相当する。
【0051】
システム1では、複数のRAT(無線通信方式)が混在する通信環境、いわゆるヘテロジーニアスネットワークが構成される。マクロセル基地局2、スモールセル基地局3、及び一部のアクセスポイント4は、コアネットワーク15及びインターネット16からなる有線ネットワークに有線接続されている。コアネットワーク15には、LTEのコアネットワークに相当するEPC(Evolved Packet Core)を構成するMME(Mobility Management Entity)、S-GW(Serving Gateway)、及びP-GW(Packet data network Gateway)や5Gのコアネットワークに相当する5GC(5G Core network)を構成するAMF(Access and Mobility Management Function)、及びUPF(User Plane Function)などが含まれる。また、システム1において、マクロセル基地局2、スモールセル基地局3、アクセスポイント4、エッジサーバ5、NW制御サーバ6、及びユーザ端末7の数や配置は適宜変更することが可能である。
【0052】
エッジサーバ5は、移動するユーザ端末7と物理的に近い位置において、ユーザ端末7に提供するサービスとして種々のアプリケーション(プログラム)を実行する。各エッジサーバ5の配置には、特に制限はないが、ここではアクセスポイント4のいずれかに接続される。
【0053】
NW制御サーバ6(ネットワーク制御装置)は、システム1が適用されたネットワークにおけるエッジサーバ5とユーザ端末7との通信に用いられる通信経路を制御する。NW制御サーバ6は、コアネットワーク15に接続される。ただし、NW制御サーバ6は、コアネットワーク15の一部を構成してもよいし、インターネット16に接続されてもよい。
【0054】
ユーザ端末7は、各ユーザ(図示せず)によって携帯されるスマートフォンやタブレット端末などの無線通信機能を有する情報機器である。ユーザ端末7は、マクロセル基地局2、スモールセル基地局3、及びアクセスポイント4にそれぞれ無線接続することができる。また、ユーザ端末7は、それらマクロセル基地局2、スモールセル基地局3、及びアクセスポイント4を介してエッジサーバ5と通信することにより、エッジサーバ5のアプリケーションを利用することができる。また、ユーザ端末7は、コアネットワーク15及びインターネット16からなる有線ネットワークを介して任意のサーバ(図示せず)と通信することにより、当該サーバのアプリケーションを利用することもできる。
【0055】
図2は、NW制御サーバ6によるユーザ端末7とエッジサーバ5との通信経路の制御の一例を示す説明図である。
図2(A)は、従来の通信経路(比較例)であり、
図2(B)は、NW制御サーバ6によって構築された通信経路である。
【0056】
図2では、有線ネットワークの接続点18を起点としてツリー状またはメッシュ状に複数のアクセスポイント4が配置されている。各アクセスポイント4は、無線通信によって相互に接続されることにより、バックホールを形成する。なお、
図2では、アクセスポイント4を相互に区別するために符号AP1-AP12が付されている。
【0057】
図2(A)では、ユーザ端末7とエッジサーバ5との通信において、無線品質を基準にアクセスポイントが選択される例が示されている。この場合、ユーザ端末7は、最も高い無線品質を得られる近隣のアクセスポイントAP1を接続先として選択するため、結果として、より多くのアクセスポイントAP1-AP9を介してエッジサーバ5と通信を行う必要が生じる。
図2(A)では、ユーザ端末7とエッジサーバ5との通信経路R1には、各アクセスポイントを有線ネットワークの接続点18に接続するためのバックホールを利用することになる。
【0058】
これに対し、
図2(B)では、エッジサーバ5が接続されたアクセスポイントAP9を含む複数のアクセスポイントAP9-AP12がグループ化される(図中の破線の円を参照)。また、NW制御サーバ6は、それらグループ化されたアクセスポイントAP9-AP12によって無線通信経路R2、R3を形成する。更に、NW制御サーバ6は無線通信経路R2、R3を優先的に利用するようアクセス回線の接続先優先度を決定しユーザ端末7に提供する。これにより、ユーザ端末7は、アクセスポイントAP10またはAP11を接続先として選択し、無線通信経路R2、R3を利用してエッジサーバ5と通信することが可能となる。
【0059】
図3は、アクセスポイント4の概略構成を示すブロック図である。
【0060】
本実施形態では、アクセスポイント4は道路のわき(路側)や交差点に設置された路側機を構成する。だたし、アクセスポイント4は実質的に路側機を構成すればよく、例えば、既設の路側機およびそれと協働する通信装置から構成されてもよい。
【0061】
アクセスポイント4は、指向性通信部21、バックホール通信部22、有線通信部23、記憶部24、センシング部25、及び制御部26を備える。
【0062】
指向性通信部21(通信装置の一例)は、ユーザ端末7と無線通信を行うための通信回路を備える。また、指向性通信部21は、特定方向のみの電波を送受信可能な指向性のアンテナ27を備える。アンテナ27の指向性は、道路を走行する自動車等の移動体(移動体に搭載された通信装置)との通信を容易とするべく、アクセスポイント4の位置を基点として道路が存在する方向の感度を高めるように設定される。指向性通信部21は、例えば、ビームフォーミング技術に基づき送信ビームを形成することにより特定方向の電波強度を高めることができる。なお、指向性通信部21は、ユーザ端末7の移動(すなわち、移動体の移動)に応じて、特定方向(すなわち、送信ビームの方向)を変更することもできる。指向性通信部21は、制御部26とともにユーザ端末7と無線通信を行うための通信装置として機能し得る。
【0063】
バックホール通信部22は、周辺のアクセスポイント4と無線通信を行うためのアンテナや回路を備える。これにより、複数のアクセスポイント4によるマルチホップ通信が行われ、ユーザ端末7とエッジサーバ5との通信に用いられる無線通信経路が形成される。
【0064】
有線通信部23は、コアネットワーク15との有線通信を行うための通信回路を備える。ただし、有線通信部23は、必ずしも全てのアクセスポイント4に設けられる必要はなく、有線ネットワークの近隣のアクセスポイント4に必要に応じて設けられる。
【0065】
記憶部24は、ユーザ端末7に関する情報、周辺にあるマクロセル基地局2、スモールセル基地局3、及び他のアクセスポイント4に関する情報、並びに制御部26を構成するプロセッサで実行されるプログラムなどを記憶する。また、記憶部24は、ユーザ端末7が搭載された移動体に関する情報や、アクセスポイント4とユーザ端末7との通信に関する通信情報を記憶することもできる。
【0066】
記憶部24は更に、通信品質マップを記憶している。通信品質マップは、アクセスポイント4の通信可能領域内の各地点における通信相手(ここでは、ユーザ端末7)との無線通信の品質を示す。通信品質マップは、例えば、3次元上の各地点に対して、アクセスポイント4から放出される無線信号の強度が対応づけられたデータ群であってよい。また、通信品質マップは、各地点における無線信号の強度のヒートマップとして可視化され得る。通信品質マップは、アクセスポイント4の設置前や、アクセスポイント4の設置直後に、アクセスポイント4の周辺に物体(物標)がない状況下で、3次元の電磁界シミュレーションや、電磁波強度の測定などを行うことによって得られたものでもよい。
【0067】
センシング部25(センサの一例)は、アクセスポイント4の周辺に存在する複数の物体を計測することにより計測データ(例えば、各物体における各計測点までの距離や方向)を生成するセンサを備える。センサとしては、LIDAR(Light Detection and Ranging、或いはLaser Imaging Detection and Ranging)技術に基づく光学式のセンサを用いることができる。センシング部25によって生成される計測データには、各物体における複数の計測点に対応する3次元の点群データが含まれる。なお、センサとしては、LIDAR技術に基づくセンサに限らず、例えばミリ波レーダや、ステレオカメラ、ソナーなどが単独または複数組み合わされて用いられてもよい。なお、センシング部25は、装置(物理的要素)としては、アクセスポイント4における他の構成要素とは別体として設けられてもよい。
【0068】
制御部26(制御装置の一例)は、無線品質測定部31、位置情報取得部32、経路接続部33、無線制御部34、有線制御部35、測距部36、周辺物体同定部37、通信品質マップ生成部38、及び通信切替指示部40を備える。
【0069】
無線品質測定部31は、他の周辺のアクセスポイント4との無線通信の品質を受信信号強度などの公知の指標に基づき測定する。また、無線品質測定部31は、無線通信の品質の測定結果に基づき無線品質情報を生成する。
【0070】
位置情報取得部32は、位置情報取得部32自身が設けられたアクセスポイント4の位置情報を取得する。位置情報取得部32は、自装置の位置を適宜測定することにより位置情報を取得するか、記憶部24等に予め記憶された位置情報を用いることができる。
【0071】
経路接続部33は、エッジサーバ5から受信する経路確立指示に基づき、ユーザ端末7とエッジサーバ5との通信に用いられる通信経路を確立する。経路接続部33は、そのような通信経路の確立にあたり、バックホール通信部22による無線通信を制御することにより、周辺のアクセスポイント4とのマルチホップ通信を実現する。
【0072】
無線制御部34は、指向性通信部21によるユーザ端末7との無線通信を制御する。無線制御部34は、アクセスポイント4とユーザ端末7との間の通信を確立及び保持するための処理を行う。また、無線制御部34は、ユーザ端末7との通信を確立する際に、ユーザ端末7との通信に関する通信情報を取得することができる。通信情報(ユーザ端末7に関する情報の一例)には、ユーザ端末7との通信によってアクセスポイント4で計測または取得した情報が含まれる。そのような情報には、ユーザ端末7からの電波の受信信号強度や、ユーザ端末7の端末ID(識別情報の一例)や、ユーザ端末7の位置情報、ユーザ端末7との距離、角度 など が含まれる。それらの情報は、アクセスポイント4において単独でまたは2以上が組み合わせて用いられる。
【0073】
有線制御部35は、有線通信部23による通信を制御する。また、有線制御部35は、有線ネットワークにおける通信制御装置や、周辺にあるマクロセル基地局2やスモールセル基地局3との有線通信により、ユーザ端末7の接続先などに関する情報を交換することができる。
【0074】
測距部36は、指向性通信部21と通信するユーザ端末7の位置(アクセスポイント4からユーザ端末7までの距離や、アクセスポイント4を基点としたユーザ端末7の方向を含む)を推定する。測距部36は、例えば、アクセスポイント4の送信ビームの方向とユーザ端末7との制御信号の往復転送時間に基づき、ユーザ端末7の位置を推定することができる。これにより、測距部36は、その推定したユーザ端末7の位置に基づき、ユーザ端末7の位置情報を生成する。ユーザ端末7の位置情報は、移動体(すなわち、移動体に搭載されたユーザ端末7)の移動にともない適宜更新される。なお、測距部36は、アクセスポイント4の周辺に位置する他のアクセスポイント4におけるユーザ端末7からの電波の受信信号強度の情報を取得することにより、各アクセスポイントの位置とそれに対応する受信信号強度とに基づきユーザ端末7の位置を推定してもよい。また、ユーザ端末7の位置情報としては、アクセスポイント4の送信ビームの方向のみの情報だけであってもよく、あるいはユーザ端末7との制御信号の往復転送時間に基づいて測定された距離情報だけであってもよい。
【0075】
周辺物体同定部37は、センシング部25によって取得された計測データに基づいて、アクセスポイント4周辺の物体(物標)の位置や外形を取得する。
【0076】
周辺物体同定部37は、取得したアクセスポイント4周辺の移動体(物標)の位置や外形を、移動体の移動履歴(移動体に搭載されたユーザ端末7の移動履歴にも相当)として、記憶部24に記憶する。
【0077】
周辺物体同定部37は、更に、記憶部24に記憶された移動体の移動履歴に基づき、移動体の速度、加速度等を算出し、所定時間先までの各時刻における、アクセスポイント4周辺の移動体の位置(以下、推定位置)や外形(すなわち、各移動体の将来の経路)を推定する。
【0078】
通信品質マップ生成部38は、周辺物体同定部37によって取得されたアクセスポイント4の周辺に位置する物体の位置や外形に基づいて、通信品質マップを補正することにより、更新された通信品質マップ(以下、更新通信品質マップ)を生成する。また、本実施形態では、更新通信品質として、周辺物体同定部37によって推定される物体の位置や外形に基づき、将来における通信品質マップを生成可能に構成されている。
【0079】
例えば、通信品質マップ生成部38は、周辺物体同定部37によって同定された物体の位置と外形とに基づき、アクセスポイント4及びユーザ端末7の間で送受信される電波が遮蔽される遮蔽領域Z(
図8、
図9を参照)を取得する。通信品質マップ生成部38は、それぞれの通信品質マップのうち、遮蔽領域Zに対応する部分の無線品質を低下させて、それぞれの更新通信品質マップを生成するとよい。
【0080】
図8(A)及び
図9(A)に示すように、初期の通信品質マップは、アクセスポイント4とユーザ端末7との通信品質を示す3次元のマップである。この初期の通信品質マップでは、アクセスポイント4の周辺に存在する物体(少なくとも移動体)の影響は考慮されていない。したがって、初期の通信品質マップは、アクセスポイント4が設置されたときに取得される。一方、
図8(C)及び
図9(C)に示すように、更新通信品質マップは、アクセスポイント4の周辺に位置する物体の位置や外形に基づいて、遮蔽領域Zに対応する部分を補正することにより得られる通信品質を示す3次元のマップであり、物体の移動に伴って変更される。
【0081】
本実施形態では、通信品質マップ生成部38は、周辺物体同定部37によって取得されたアクセスポイント4の周辺に位置する物体(特に、移動体)の将来の位置及びその外形に基づき、将来における各時刻の更新通信品質マップを生成することができる。通信品質マップ生成部38は、将来における各時刻の更新通信品質マップを記憶部24に記憶させることができる。
【0082】
通信切替指示部40は、ユーザ端末7の将来の経路(所定の複数の予測時刻に対応する複数の到達地点を含む)を予測し、アクセスポイント4とユーザ端末7との通信品質より、他のアクセスポイント4の方が良好となる位置にユーザ端末7が到達するか否かを判定し、他のアクセスポイント4の方が良好となる位置に到達すると予測された場合には、ユーザ端末7に対して、到達予測時刻(あるいはその時刻より少し前の時刻)とともに通信先の切り替え(すなわち、他のアクセスポイント4へのハンドオーバ)を指示する。この切替指示には、通信品質が最も良好となるアクセスポイント4に係る情報(例えば、アクセスポイントID)が含まれているとよい。一方で、通信切替指示部40は、各予測時刻における接続中のアクセスポイント4との通信品質に加え、通信先(ハンドオーバ先)の候補となる周辺のアクセスポイント4との通信品質を考慮し、ユーザ端末7の将来の経路が、良好でなくなる位置に到達すると推定された場合には、ユーザ端末7に対して、到達予測時刻(あるいはその時刻より少し前の時刻)とともに広域通信への切り替え(すなわち、マクロセル基地局2またはスモールセル基地局3への通信接続)を指示する。
【0083】
本実施形態では、通信切替指示部40は、現在の時刻から所定時間(以下、予測時間)ずつ追加することによって予測時刻を設定する。すなわち、将来の経路を設定するための予測時刻の差が予測時間に対応する。通信切替指示部40は、予測時間を、ユーザ端末7の移動速度に応じて設定する。詳細には、通信切替指示部40は、予測時間を、ユーザ端末7の移動速度が高くなるにつれて短くなるように設定する。
【0084】
通信切替指示部40は、例えば、更新通信品質マップを用いて、周辺物体同定部37によって特定された移動体の推定位置(推定経路上の全ての位置)におけるユーザ端末7と、通信切替指示部40を含むアクセスポイント4との通信で用いられる電波の強度(通信品質)を推定する。通信切替指示部40は、推定された電波の強度が所定の閾値以上(通信品質が通信閾値以上と記載する)であるときには、ユーザ端末7は通信品質が良好な推定位置にあると判定することができる。通信切替指示部40は、通信品質が良好でなくなる位置にユーザ端末7が到達するか否かを、ユーザ端末7と、通信品質が最も良好となるアクセスポイント4との通信で用いられる電波の強度が所定の電波閾値以下になるか否かに基づいて判定してもよい。
【0085】
通信切替指示部40は、隣接する他のアクセスポイント4(同様の機能を有する周辺のアクセスポイント4)から当該他のアクセスポイント4の更新通信品質マップを適宜取得することができる。隣接するアクセスポイント4の更新通信品質マップの取得は、通信切替指示部40が、隣接するアクセスポイント4に対して、ユーザ端末7の将来の経路(各予測時刻)に対応する更新通信品質マップを要求し、隣接するアクセスポイント4が対応する更新通信品質マップを送信することによって行われてもよい。また、隣接する他のアクセスポイント4の更新通信品質マップの取得は、他のアクセスポイント4が、所定時間ごとに取得した更新通信品質マップを、通信切替指示部40に対して定期的に送信することによって行われてもよい。すなわち、更新通信品質マップの取得は、隣接するアクセスポイント4同士で、更新通信品質マップが相互に送信(交換)されることによって、行われてもよい。
【0086】
通信切替指示部40は、所定時間後までの各時刻のユーザ端末7の位置と、自装置としてのアクセスポイント4の更新通信品質マップと、隣接するアクセスポイント4の更新通信品質マップとに基づき、各予測時刻におけるユーザ端末7との通信品質が最も良好となるアクセスポイント4を通信先(ハンドオーバ先)の候補として抽出する。ただし、自装置としてのアクセスポイント4の通信品質が最も良好となる場合には、所定時間が経過するまではそのまま通信が継続される。
【0087】
なお、上述の制御部26における各部の機能の少なくとも一部は、1以上のプロセッサが所定の制御プログラムを実行することにより実現可能である。
【0088】
図4は、エッジサーバ5の概略構成を示すブロック図である。
【0089】
エッジサーバ5は、通信部41、記憶部42、及び制御部43を備える。
【0090】
通信部41は、自装置が接続されたアクセスポイント4と通信を行うための通信回路を備える。
【0091】
記憶部42は、ユーザ端末7に関する情報、周辺にあるマクロセル基地局2、スモールセル基地局3、及びアクセスポイント4に関する情報、並びに制御部43を構成するプロセッサで実行されるプログラムなどを記憶する。
【0092】
制御部43は、経路確立指示部45、トラフィック情報収集部46、アクセスポイント動作指示部47、通信制御部48、及びアプリケーション部49を備える。
【0093】
経路確立指示部45は、NW制御サーバ6から受信する情報に基づき、アクセスポイント4に通信経路を確立させるための経路確立指示を送信する。
【0094】
トラフィック情報収集部46は、ユーザ端末7とエッジサーバ5との通信に関し、無線通信経路を形成する各アクセスポイント4間のトラフィックの情報を収集する。なお、トラフィック情報収集部46は、適宜省略されてもよい。
【0095】
アクセスポイント動作指示部47は、NW制御サーバ6から受信する情報に基づき、アクセスポイント4に対して動作指示を送信する。そのような動作指示には、アクセスポイント4に対する起動または停止の指示が含まれる。なお、アクセスポイント動作指示部47は、適宜省略されてもよい。
【0096】
通信制御部48は、通信部41による通信を制御する。また、通信制御部48は、周辺のアクセスポイント4やユーザ端末7と必要な情報を交換する。
【0097】
アプリケーション部49は、ユーザ端末7へのサービス内容に応じて種々のアプリケーションを実行する。アプリケーションによる処理には、例えば、スマート工場に設置されたセンサの出力(検出結果)の格納または提供や、交差点などの交通映像その他の検出情報の格納または提供などが含まれる。
【0098】
なお、上述の制御部43における各部の機能の少なくとも一部は、1以上のプロセッサが所定の制御プログラムを実行することにより実現可能である。
【0099】
図5は、NW制御サーバ6の概略構成を示すブロック図である。
【0100】
NW制御サーバ6は、通信部51、記憶部52、及び制御部53を備える。
【0101】
通信部51は、コアネットワーク15を介してエッジサーバ5やユーザ端末7と通信を行うための通信回路を備える。
【0102】
記憶部52は、ユーザ端末7に関する情報、周辺にあるマクロセル基地局2、スモールセル基地局3、及びアクセスポイント4に関する情報、並びに制御部53を構成するプロセッサで実行されるプログラムなどを記憶する。
【0103】
制御部53は、情報収集部61、グループ化部62、経路設定部63、トラフィック分析部64、接続先優先度設定部65、サービスエリア設定部66、エッジサーバ動作制御部67、アクセスポイント動作制御部68、及び通信制御部69を備える。
【0104】
情報収集部61は、各アクセスポイント4から周辺機器情報を収集する。この周辺機器情報には、各アクセスポイント4間の無線通信の品質に関する無線品質情報、各アクセスポイント4の位置情報、及び各アクセスポイント4に接続されたエッジサーバ5の有無に関するエッジサーバ情報が含まれる。
【0105】
グループ化部62は、収集された周辺機器情報に基づき、管理下にある複数のアクセスポイント4から、特定のエリアでネットワークを構成するアクセスポイント4を抽出し、それらをグループ化する。これにより、少なくとも1組以上のアクセスポイント4のグループが生成される。「特定のエリア」には、例えば、スマート工場内や、交差点を含む所定領域などが含まれる。なお、アクセスポイント4のグループの少なくとも一部は、オペレータによって設定されてもよい。また、グループ化部62は、後述するトラフィック分析部64によるトラフィックの分析結果に基づき、既存のアクセスポイント4のグループを再構成することができる。なお、本実施形態では、各アクセスポイント4は、それぞれ対応する路側機を構成し得る。
【0106】
経路設定部63は、ユーザ端末7とエッジサーバ5との通信に用いられる1以上の無線通信経路を設定する。そのような無線通信経路は、グループ化されたアクセスポイント4のマルチホップ通信によって形成される。なお、そのような無線通信経路の少なくとも一部は、オペレータによって設定されてもよい。
【0107】
トラフィック分析部64は、ユーザ端末7とエッジサーバ5との通信に用いられた無線通信経路におけるトラフィック情報をエッジサーバ5から順次取得する。それらの取得されたトラフィック情報は記憶部52に蓄積される。また、トラフィック分析部64は、蓄積されたトラフィック情報に基づき、例えば経路設定部63によって設定された無線通信経路のトラフィックの分布を予測するなどのトラフィックの分析を行う。トラフィック分析部64は、対象のグループに含まれないグループ外のアクセスポイント4を用いる迂回経路の検出を行うこともできる。
【0108】
接続先優先度設定部65は、ユーザ端末7が利用するエッジサーバ5のサービスの種別に応じて、ユーザ端末7の接続先の候補の優先度を設定する。また、接続先優先度設定部65は、設定した接続先の候補の優先度に基づき接続先優先度情報を生成する。ユーザ端末7の接続先の候補は、通常はアクセスポイント4のいずれかであるが、必要に応じてマクロセル基地局2やスモールセル基地局3が接続先の候補となり得る。また、接続先優先度情報には、接続先の候補の優先順位が含まれる。これに限らず、接続先優先度情報には、例えば、接続先の候補の優先順位を決定するための基準(ルール)に関する情報が含まれてもよい。
【0109】
サービスエリア設定部66は、各アクセスポイント4からの周辺機器情報に基づき、それらのサービスエリア(通信エリアの範囲)を設定する。そのようなサービスエリアは、ユーザ端末7が利用するエッジサーバ5のサービスの種別に応じて設定される。また、サービスエリア設定部66は、設定したサービスエリアの範囲に関するサービスエリア情報を生成する。なお、サービスエリア情報の少なくとも一部は、オペレータによって設定されてもよい。
【0110】
エッジサーバ動作制御部67は、エッジサーバ5におけるアプリケーションの起動などを含めエッジサーバ5の動作を制御する。
【0111】
アクセスポイント動作制御部68は、アクセスポイント4の起動および停止を含めアクセスポイント4の動作を制御する。
【0112】
通信制御部69は、通信部51による通信を制御する。また、通信制御部69は、周辺のアクセスポイント4、エッジサーバ5、及びユーザ端末7と必要な情報を交換することができる。
【0113】
なお、上述の制御部53における各部の機能の少なくとも一部は、1以上のプロセッサが所定の制御プログラムを実行することにより実現可能である。
【0114】
図6は、ユーザ端末7の概略構成を示すブロック図である。
【0115】
本実施形態では、ユーザ端末7は、移動体(ここでは、自動車)に搭載される端末装置である。ユーザ端末7は、例えば、自動車に設けられた車載器によって構成され得る。また、ユーザ端末7は、自動車のユーザ(運転者や乗員)によって携帯される携帯型のコンピュータであってもよい。
【0116】
ユーザ端末7は、無線通信部71、記憶部72、及び制御部74を備える。
【0117】
無線通信部71は、アクセスポイント4と無線通信を行うためのアンテナや通信回路を備える。また、無線通信部71は、マクロセル基地局2やスモールセル基地局3との無線通信を行うためのアンテナや通信回路を備える。
【0118】
記憶部72は、自装置に関する情報、周辺にあるマクロセル基地局2、スモールセル基地局3、及びアクセスポイント4に関する情報、並びに制御部74を構成するプロセッサで実行されるプログラムなどを記憶する。
【0119】
制御部74は、接続先選択部81、アプリケーション部82、及び無線制御部83を備える。
【0120】
接続先選択部81は、NW制御サーバ6から受信するグループ化情報、接続先優先度情報、及びサービスエリア情報に基づき、アクセスポイント4等の接続先を選択する。これにより、ユーザ端末7は、その選択された接続先及びそれを含む無線通信経路を介してエッジサーバ5と通信可能である。
【0121】
アプリケーション部82は、ユーザ端末7で実行されるアプリケーションの内容に応じた処理を実行し、無線通信部71を介してエッジサーバ5との間でアプリケーションデータを送受信する。
【0122】
無線制御部83は、無線通信部71によるアクセスポイント4との無線通信や、マクロセル基地局2及びスモールセル基地局3との無線通信を制御する。
【0123】
なお、上述の制御部74における各部の機能の少なくとも一部は、1以上のプロセッサが所定の制御プログラムを実行することにより実現可能である。
【0124】
図7は、第1実施形態に係る通信の切替処理の流れを示すフロー図である。切替処理では、アクセスポイント4aからの指示によってユーザ端末7の通信先の切り替えが実行される。切替処理は、制御部26(プロセッサ)が所定のプログラム(切替プログラム)を実行することによって実現される。
図8(A)は、通信品質マップの水平方向断面図の例である。
図8(B)は、センシング部25によって取得された物体の位置や外形を示している。
図8(C)は
図8(A)の通信品質マップを、センシング部25の計測結果を考慮して補正することによって得られた最新通信の品質マップの水平方向断面図の例である。
図9(A)は、通信品質マップの鉛直方向断面図の例である。
図9(B)は、センシング部25によって取得された物体の位置や外形を示している。
図9(C)は
図9(A)の通信品質マップを、センシング部25の計測結果を考慮して補正することによって得られた更新通信品質マップの鉛直方向断面図の例である。
【0125】
図7に示す切替処理において、まず、ユーザ端末7は、アクセスポイント4に対して接続要求を送信する(ST100)。アクセスポイント4aは、ユーザ端末7から接続要求を受信し、ユーザ端末7との間の通信の接続を確立する(ST101)。このとき、アクセスポイント4は、接続要求を送信したユーザ端末7からその端末のIDを取得することができる。
図7では、切替処理を実行する(すなわち、接続中の)アクセスポイント4aと、それに隣接する(すなわち、ユーザ端末7の通信先の候補となる)1つのアクセスポイント4bとが存在する場合について説明する。ただし、アクセスポイント4aの周辺には、隣接する他のアクセスポイント4が更に存在してもよい。
【0126】
次に、制御部26は、記憶部24に記憶された通信品質マップを取得する(ST102)。この通信品質マップには、ユーザ端末7の将来の経路(すなわち、各予測時刻)に対応する更新通信品質マップを生成するためのもとになる情報が含まれる。また、この通信品質マップには、切替処理を実行するアクセスポイント4aの通信品質マップに加え、隣接する他のアクセスポイント4bから取得した更新通信品質マップも含まれる。
図8(A)及び
図9(A)には、切替処理を実行するアクセスポイント4a(すなわち、自装置としてのアクセスポイント4)の通信品質マップの例が示されている。
図8(A)及び
図9(A)では、通信品質マップは、通信品質が高くなるにつれて色が濃くなるヒートマップとして示されている。なお、他のアクセスポイント4bの更新通信品質マップについても、アクセスポイント4aと同様に設定される。
【0127】
次に、制御部26は、センシング部25によるセンシングを行い、アクセスポイント4a周辺の物体を検出する(ST103)。
図8および
図9では、道路わきに設置されたアクセスポイント4aの周辺に存在する物体として、自動車V1-V3および建物B1(静止物体の一例)が示されている。
【0128】
センシング部25の測定可能領域(測定可能空間)は、指向性通信部21の通信可能領域(通信可能空間)をカバーするように設定される。制御部26はセンシング部25による検出結果(例えば、点群データ)を公知の手法によって解析することによって、物体それぞれの代表位置や外形を取得する。
【0129】
図8(B)及び
図9(B)では、センシング部25によって同定されたアクセスポイント4a周辺の物体の外形Yが四角の枠体によって示されている。
【0130】
その後、制御部26はアクセスポイント4aのアンテナ27の位置や向き、その指向性などに基づき、取得した物体の外形を用いて、物体によって遮蔽され、アクセスポイント4aからの電波が届かない影となる遮蔽領域Zを取得する。その後、制御部26は、通信品質マップ(
図8(A)及び
図9(A))を、遮蔽領域Zに係る情報を用いて補正することによって、更新通信品質マップ(
図8(C)及び
図9(C))を生成する(ST104)。
【0131】
本実施形態では、制御部26は、通信品質マップにおいて、アクセスポイント4aから送信される電波の物体による遮蔽を考慮する(具体的には、遮蔽領域Z内と、物体の外形Yの内部において、通信品質を低下させる)ことによって、更新通信品質マップを取得する。このように、通信品質マップをセンシング部25による計測結果(取得された計測データ)に基づき補正して更新通信品質マップを構成するため、簡素な手法によって周辺状況に即した無線品質を取得することができる。
【0132】
続いて、制御部26は、ステップST105において、センシング部25によって取得された体それぞれの代表位置や外形に基づき、自動車V1-V3(すなわち、自動車V1-V3にそれぞれ搭載されたユーザ端末7)の現在位置を特定する。特定された現在位置は、それまでに特定された位置とともに自動車V1-V3の移動履歴として記憶部24に記憶される。更に、制御部26は自動車V1-V3の移動履歴に基づき、今後の自動車V1-V3がとると思われる経路を推定する。
【0133】
続いて、制御部26は、ステップST106において、更新品質マップを用いて、その推定された経路上の各自動車V1-V3の全ての位置(すなわち、各予測時刻)について、アクセスポイント4a、4bとの間で良好な通信品質が得られるか否かを判定する(ST106)。
【0134】
図8および
図9に示されたヒートマップでは、アクセスポイント4aの通信可能領域が符号E1で示され、良好な通信品質の得られる領域が符号E2で示されている。したがって、ステップST106では、自動車V2、V3(すなわち、自動車V2、V3にそれぞれ搭載されたユーザ端末7)は、アクセスポイント4aとの間で現時点では良好な通信品質の得られる位置にあるが、少し後には通信品質が良好でない領域に入ると予測されるため、良好な通信品質が得られなくなる時刻を予測し、その時刻(あるいはそれより少し前の時刻)を切替時刻とする。
【0135】
図10に示すように、良好な通信品質の得られる領域は、隣り合う2つのアクセスポイント4a、4bとで重なるように構成されている。また、制御部26は、アクセスポイント4aの通信品質マップにおいて通信品質が良好となる領域と、他のアクセスポイント4bから取得した前記通信品質マップの通信品質が良好となる領域と重なっている場合に、アクセスポイント4a、4bの切替指示を行う。そのため、アクセスポイント4a、4bとの間の通信の乗り換えが途切れることなく、スムーズに行うことが可能となる。
【0136】
本実施形態では、制御部26は、ステップST106において、各ユーザ端末7の推定経路上の全ての位置を取得し、それらの位置において、接続中のアクセスポイント4aとのユーザ端末7の通信、及び隣接する他のアクセスポイント4bとのユーザ端末7の通信の少なくとも一方について、更新通信品質マップにおける通信品質が通信閾値以上であるときに、良好な通信品質が得られる位置にユーザ端末7がある(ST106でYes)と判定する。制御部26は、例えば
図10(A)、(B)に示すように、自動車V3について、推定された将来の経路上(
図10(A)中の二点鎖線を参照)の各地点において、いずれかのアクセスポイント4a、4bにおいて通信閾値以上の通信品質が得られるかを判定する。ここでは、自動車V3の現在位置を点P0とし、点P3に到達するまでを推定された将来の経路とすると、ユーザ端末7は、その推定された将来の経路上の全ての地点において、
図10(B)に示すように、アクセスポイント4a、4bの少なくとも一方に対する通信品質が通信閾値以上となっている。
【0137】
そこで、制御部26は、判定対象のユーザ端末7の推定された経路上(すなわち、各予測時刻)の全てにおいて、その接続中のアクセスポイント4aとの通信品質が他のアクセスポイント4bと比べて良好か否かを判定する(ST107)。そこで、接続中のアクセスポイント4aとの通信品質がより良好である場合(ST107でYes)、再びステップST102に戻り、上述の場合と同様の処理が実行される。
【0138】
一方、ステップST107において、判定対象のユーザ端末7が推定された経路上において良好な通信品質が得られなくなる位置または他のアクセスポイント4bの通信品質がより良好となり、アクセスポイント4bへの切り替えが推奨される位置(切替推奨位置)に到達すると推定された場合(ST107でNo)、アクセスポイント4aは、そのユーザ端末7(
図10では、自動車V3に搭載されたユーザ端末7)に対してアクセスポイント4bの切り替えを指示する信号(通信先切替指令の一例)を送信する(ST108)。つまり、もしユーザ端末7の通信先の候補の1つである他のアクセスポイント4bとユーザ端末7との間で上記切替推奨位置における通信品質がアクセスポイント4bよりも良好である場合は、ユーザ端末7に対して他のアクセスポイント4bへの切り替え(通信接続)を、上記切り替え時刻とともに指示する。例えば
図10(A)、(B)では、制御部26は、所定時刻のステップST107の処理において、自動車V3(判定対象のユーザ端末7)について、他のアクセスポイント4bよりも良好な通信品質が得られなくなる位置(点P2)に到達すると推定する。これにより、制御部26は、ステップST108において、その予測時刻より少し前の時刻(ここでは、自動車V3が点P1の位置ある時刻に相当)において、自動車V3に搭載されたユーザ端末7に対してアクセスポイント4bへの切り替えを指示する信号送信することができる。
【0139】
その切り替えを指示する信号を受信したユーザ端末7は、ハンドオーバの指示を受けた切り替え先の他のアクセスポイント4bに対して、現在接続中のアクセスポイント4aから通信接続を切り替える(ST111)。これにより、ユーザ端末7によるアクセスポイント4aからアクセスポイント4bへの切り替えが適切に行われる。このとき、アクセスポイント4aのステップST101と同様に、アクセスポイント4bは、ユーザ端末7からハンドオーバの要求(接続要求)を受信し、ユーザ端末7との間で通信の接続を確立する(ST112)。その後は、アクセスポイント4bは、アクセスポイント4aによる上述の一連の処理と同様の処理を実行する。
【0140】
一方、ステップST106において、アクセスポイント4aは、推定経路上において接続中のアクセスポイント4aとの判定対象のユーザ端末7の間の通信において良好な通信品質が得らない位置(切替推奨位置)に到達すると判断され、かつ隣接する他のアクセスポイント4bとの間でも上記切替推奨位置での通信品質が良好でない場合、そのユーザ端末7に対して、上記切替時刻とともに、広域通信への切り替え(RAT切替)を指示する信号(通信先切替指令の一例)を送信する(ST109)。その切り替えを指示する信号を受信したユーザ端末7は、指定された切替時刻までの間にアクセスポイント切り替えのための準備をしておき、指定された切替時刻に現在接続中のアクセスポイント4aから通信先をマクロセル基地局2またはスモールセル基地局3に切り替える(ST110)。これにより、ユーザ端末7がアクセスポイント4aとの通信が確保できなくなる(例えば、ユーザ端末7が他の自動車の遮蔽領域Zに位置することによって電波が遮蔽される)より前に、ユーザ端末7への広域通信への切替指示が行われるため、瞬断をすることなくユーザ端末7の外部への通信が確保できなくなることを防止することができる。
【0141】
なお、自動車V3が点P3に到達した場合、アクセスポイント4aの通信品質は通信閾値以下となるため、その周辺に切り替え可能なアクセスポイントが存在しない場合には、事前に広域通信への切り替えが必要となる。ただし、
図10に示す例では、アクセスポイント4bへの切り替えが行われるため、ユーザ端末7は広域通信に切り替えることなくアクセスポイント4bを介してより高い周波数帯を利用した通信を継続することができる。
【0142】
ユーザ端末7は、通信先がアクセスポイント4bに切り替わった後は、アクセスポイント4bでは、点Qにおいて、接続中のアクセスポイント4aとの判定対象のユーザ端末7の間の通信において切替推奨位置に到達すると判断され、かつ隣接する他のアクセスポイントとの間でもユーザ端末7はその切替推奨位置での通信品質が良好でない(ここでは、他のアクセスポイントが存在しない)と判断されるため、点Qに到達する少し前の時刻において、そのユーザ端末7に対して、切替時刻とともに、広域通信への切り替えを指示する信号が送信される。
【0143】
このように、制御部26は、アクセスポイント4aの周辺状況に基づき、補正された更新通信品質マップを用いて通信切替の要否を判定する。アクセスポイント4aの周辺に物体が存在し、無線信号が遮蔽される領域が動的に変化する状況であっても、その状況に即した通信切替が可能となる。
【0144】
図8(A)及び
図9(A)に示すように、アクセスポイント4に指向性を有するアンテナ27が設けられた場合、電波の照射方向に延びる軸線Lに沿って通信品質の良好となる領域E1、E2が形成される。そのため、
図8(A)及び
図9(A)に示すように、アクセスポイント4が路側に設けられ、近傍の道路上を走行する自動車V1~V3にユーザ端末7が設けられた場合、ユーザ端末7において得られる通信品質は、自動車V1~V3が軸線Lに近づくにつれて一旦高まり、軸線Lから離れるにつれて低下する。
図8(A)及び
図9(A)から理解できるように、通信品質の良好となるか否かは、アクセスポイント4とユーザ端末7との距離のみで判定することが難しい。本実施形態では、制御部26は、通信品質マップを用いて、通信先の切り替えを指示するため、通信品質の良好となる領域E1、E2が複雑な形状をなす場合であっても、適切な通信先の切替指示が行われる。
【0145】
図8及び
図9ではアクセスポイント4に設けられたアンテナ27が正面方向に指向性を有する場合について示したが、この態様には限定されない。アクセスポイント4に設けられるアンテナ27は正面を中心に左右または上下に指向方向を変更可能に構成され、アンテナ27はその指向方向を左右または上下のいずれかの方向にスィープする機能を有していてもよい。
【0146】
本実施形態では、通信切替指示部40は、予測時間を、ユーザ端末7の移動速度が速ければ速いほど、予測時間が短く設定される。そのため、ユーザ端末7の移動速度が高い場合であっても、通信品質の良好となる領域E1内において、通信品質の評価が行われる。よって、行うべき通信の切り替えが行われることなく、ユーザ端末7が通信品質の良好となる領域E1を通過することが防止できる。
【0147】
上記実施形態では、制御部26は
図7のST102~ST107を繰り返し実行する。これにより、制御部26は周辺情報を時刻の経過とともに繰り返し取得し(ST103)、周辺情報に基づいて遮断領域に係る情報を時刻の経過とともに繰り返し取得する。その後、制御部26は通信品質マップを時刻の経過とともに繰り返し補正し、更新通信品質マップを時刻の経過とともに繰り返し生成する(ST104)。このように、アクセスポイント4の周辺状況が時刻の経過とともに変化する場合においても、通信品質マップが時刻の経過とともに繰り返し補正されて、更新通信品質マップが生成されるため、周辺状況の変化に応じた通信切替が可能となる。
【0148】
(第2実施形態)
図11は、第2実施形態に係るシステム1によるユーザ端末7の構成を示すブロック図である。第2実施形態のシステム1の構成に関し、アクセスポイント4、エッジサーバ5、NW制御サーバ6の構成、また、その他、特に言及しない事項については第1実施形態の場合と同様とする。また、第2実施形態を説明する図面では、第1実施形態に係るシステム1の各構成要素と同様の構成要素について同一の符号が付されている。
【0149】
第1実施形態に係るシステム1では、センシング部25による検出結果(取得されたデータ)に基づき補正した更新通信品質マップに基づいて、ユーザ端末7にアクセスポイント4の切替指示が行われる。しかし、周辺に位置する物標や、天候などの種々の要因によっては、更新通信品質マップによって予測される通信品質と、ユーザ端末7とアクセスポイント4との間の通信品質との間に乖離が生じる場合がある。
【0150】
そこで、ユーザ端末7の制御部74は、通信品質測定部84を備えている。通信品質測定部84は、自らが設けられたユーザ端末7及びアクセスポイント4との間の通信品質を測定する。
【0151】
また、通信品質測定部84は、自らが設けられたユーザ端末7によって広域通信を行った場合の通信品質についても、測定可能に構成されている。
【0152】
図12は、第2実施形態に係るシステム1による通信の切替処理の流れを示すフロー図である。
【0153】
ユーザ端末7は、アクセスポイント4から通信切替を指示する信号を受信すると、ユーザ端末7の制御部74(プロセッサ)は、切替先の通信品質と、切替前の通信品質(すなわち、ユーザ端末7が通信しているアクセスポイント4の通信品質)とを比較する(ST301)。
【0154】
制御部74は、切替先の通信品質が、切替元の通信品質よりも良好である場合には、指示に従い、切り替えを実施する(ST302)。
【0155】
一方、制御部74は、切替先の通信品質が、切替前の通信品質よりも低い場合には、通信の切り替えを実施しない。これによって、アクセスポイント4の切り替えによって、通信品質が低下することを防止できる。
【0156】
制御部74は、現在通信を行っているアクセスポイント4の間の通信品質が、切替先の通信品質よりも良好である場合には、通信の切り替えを実施せず、現在通信を行っているアクセスポイント4の間の通信を継続する。これにより、更新通信品質マップによって予測される通信品質が現実と乖離している場合においても、良好な通信品質を確保することが可能となる。
【0157】
(第3実施形態)
図13は、第3実施形態に係るシステム1によるユーザ端末7の構成を示すブロック図である。第3実施形態のシステム1の構成に関し、アクセスポイント4、エッジサーバ5、NW制御サーバ6の構成、また、その他、特に言及しない事項については第1実施形態の場合と同様とする。また、第3実施形態を説明する図面では、第1実施形態に係るシステム1の各構成要素と同様の構成要素について同一の符号が付されている。
【0158】
第1実施形態に係るシステム1では、通信品質マップを、遮蔽領域Zを考慮して補正することによって更新通信品質マップを取得していた。しかし、アクセスポイント4周辺に位置する建物の変化などによって、更新通信品質マップが実際の通信品質の状況を反映しないことがある。
【0159】
そこで、第3実施形態において、ユーザ端末7の制御部74は、第2実施形態と同様の通信品質測定部84に加えて、通信品質通知部85を備えている。通信品質通知部85は、アクセスポイント4から通信品質の送信を要求する要求信号を受信すると、通信品質測定部84によって取得した通信品質との関係を示すデータ(以下、実通信品質データ)を、例えば、テーブル形式のデータとして、アクセスポイント4に送信する。
【0160】
図14は、第3実施形態に係るシステムによる通信の切替処理の流れを示すフロー図である。
図14に示すように、センシング部25の検出結果に基づいて、アクセスポイント4の周辺に位置する物体の位置及び外形を取得した後(ST103)、ユーザ端末7に通信品質の送信を要求する要求信号を送信し、ユーザ端末7から実通信品質データを取得する(ST501)。
【0161】
その後、制御部26は、アクセスポイント4の周辺に位置する物体の位置や外形、ユーザ端末7の位置、及び、実通信品質データに基づいて、通信品質マップを補正することにより、更新通信品質マップを生成する(ST502)。
【0162】
更新通信品質マップの取得が完了すると、制御部26は、第1実施形態と同様、ユーザ端末7の位置を取得し、その経路を推定する。その後、制御部26は、第1実施形態と同様に、生成した更新通信品質マップに基づいて、ユーザ端末7が推定された経路上において、いずれかのアクセスポイント4によって通信を行ったときに、良好な通信品質が得られるかを判定する(ST106)。得られると判定したときには、第1実施形態と同様に、制御部26は本アクセスポイント4との通信が良好かを判定し、そうでない場合にはアクセスポイント4の切り替えをユーザ端末7に指示する(ST108)。いずれのアクセスポイント4によっても良好な通信品質が得られると判定したときには、ユーザ端末7に広域通信への切り替えを指示する(ST109)。
【0163】
このように、アクセスポイント4の制御部26は、ユーザ端末7によって取得された実通信品質データに基づいて、更新通信品質マップを生成する。そのため、ユーザ端末7の電波状況に応じて、通信品質マップが補正されることになり、より現実の電波強度に即した通信の切り替えが可能となる。
【0164】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施形態にも適用できる。また、上記の実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施形態とすることも可能である。
【0165】
例えば、ユーザ端末7とエッジサーバ5との通信は、上述のようにアクセスポイント4間の無線通信に基づく無線通信経路によって実現されるが、本開示ではユーザ端末7とエッジサーバ5との通信に用いられる通信経路の一部に有線が用いられることを排除しない。
【0166】
上記実施形態では、制御部26は、通信品質マップと、ユーザ端末7の位置とに基づいて、良好な通信品質が得られるか否かを判定していたが、ユーザ端末7の電波の受信範囲を考慮し、通信品質マップと、ユーザ端末7の受信品質マップとを、ユーザ端末7の位置と、ユーザ端末7の方向とに基づいて、良好な通信品質が得られるか否かを判定してもよい。このときには、制御部26は、ユーザ端末7から姿勢に係る情報と、ユーザ端末7の受信品質マップとを取得するように構成されているとよい。ユーザ端末7の移動を考慮するときには、制御部26はユーザ端末7が設けられた車両の旋回方向等を推定し、その旋回方向に合致するように受信品質マップを回転させるなどによって、受信品質マップを補正するように構成されているとよい。
【0167】
また、システム1において、ユーザ端末7が搭載される移動体が自動車である例を記載したがこの態様には限定されず、ユーザ端末7が搭載される移動体は通信の遮蔽が生じ得る任意の移動体であってよい。例えば、ユーザ端末7が搭載される移動体は、4輪自動車等の車両の他、バイク・自転車等の二輪車や、歩行者、トラクターや耕運機等の各種機械、走行装置を備えたロボットなど、道路を移動する任意の移動体であってよい。その他、ユーザ端末7が搭載される移動体は、船舶、航空機、ヘリコプター、ドローン等であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0168】
本開示に係る通信制御装置は、ユーザ端末と通信可能なアクセスポイントを備えたネットワークにおいて、ユーザ端末との良好な通信品質を確保できる効果を有し、アクセスポイントの切り替えを行うことのできる通信制御装置などとして有用である。
【符号の説明】
【0169】
1 :通信システム
2 :マクロセル基地局
3 :スモールセル基地局
4 :アクセスポイント(通信制御装置)
4a :アクセスポイント
5 :エッジサーバ
6 :NW制御サーバ
7 :ユーザ端末
11 :スモールセルエリア
12 :マクロセルエリア
13 :通信エリア
15 :コアネットワーク
16 :インターネット
18 :接続点
21 :指向性通信部
22 :バックホール通信部
23 :有線通信部
24 :記憶部(記憶装置)
25 :センシング部
26 :制御部(プロセッサ)
27 :アンテナ
31 :無線品質測定部
32 :位置情報取得部
33 :経路接続部
34 :無線制御部
35 :有線制御部
36 :測距部
37 :周辺物体同定部
38 :通信品質マップ生成部
40 :通信切替指示部
41 :通信部
42 :記憶部
43 :制御部
45 :経路確立指示部
46 :トラフィック情報収集部
47 :アクセスポイント動作指示部
48 :通信制御部
49 :アプリケーション部
51 :通信部
52 :記憶部
53 :制御部
61 :情報収集部
62 :グループ化部
63 :経路設定部
64 :トラフィック分析部
65 :接続先優先度設定部
66 :サービスエリア設定部
67 :エッジサーバ動作制御部
68 :アクセスポイント動作制御部
69 :通信制御部
71 :無線通信部
72 :記憶部
74 :制御部
81 :接続先選択部
82 :アプリケーション部
83 :無線制御部
84 :通信品質測定部
85 :通信品質通知部
AP1 :アクセスポイント
AP1-AP9 :アクセスポイント
AP10 :アクセスポイント
AP9 :アクセスポイント
AP9-AP12 :アクセスポイント
B1 :建物
E1 :領域
E2 :領域
L :軸線
R1 :通信経路
R2 :無線通信経路
R3 :無線通信経路
V1 :自動車
V2 :自動車
V3 :自動車
Y :外形
Z :遮蔽領域