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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034879
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】アイアンゴルフクラブヘッド
(51)【国際特許分類】
   A63B 60/02 20150101AFI20240306BHJP
   A63B 53/04 20150101ALI20240306BHJP
   A63B 102/32 20150101ALN20240306BHJP
【FI】
A63B60/02
A63B53/04 E
A63B102:32
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139423
(22)【出願日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】松永 聖史
【テーマコード(参考)】
2C002
【Fターム(参考)】
2C002AA03
2C002CH02
2C002LL01
(57)【要約】
【課題】 溶接以外の方法で、錘部材をヘッド本体に強固に固着することができるアイアンゴルフクラブヘッドを提供する。
【解決手段】 アイアンゴルフクラブヘッド1であって、ソール部4を有するヘッド本体100と、ソール部4に配された錘部材200と、錘部材200をヘッド本体100に固着するための固定部材300とを含む。ヘッド本体100には、第1孔部101及び第2孔部102が設けられる。第1孔部101は、ソール部4の底面で開口しており、錘部材200は、第1孔部101に、ヘッド下方から第1方向D1で挿入される。第2孔部102は、ヘッド本体100の表面で開口している。固定部材300は、第2孔部102を通り、第1方向D1とは異なる第2方向D2で錘部材200に挿入される。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アイアンゴルフクラブヘッドであって、
ソール部を有するヘッド本体と、
前記ソール部に配された錘部材と、
前記錘部材を前記ヘッド本体に固着するための固定部材とを含み、
前記ヘッド本体には、第1孔部及び第2孔部が設けられており、
前記第1孔部は、前記ソール部の底面で開口しており、
前記錘部材は、前記第1孔部に、ヘッド下方から第1方向で挿入されており、
前記第2孔部は、前記ヘッド本体の表面で開口しており、
前記固定部材は、前記第2孔部から、前記第1方向とは異なる第2方向で前記錘部材に挿入されている、
アイアンゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記固定部材は、雄ねじ部を備え、
前記錘部材は、前記雄ねじ部と係合する雌ねじ部を備える、請求項1に記載のアイアンゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
前記ヘッド本体は、第1比重を有し、前記錘部材は、前記第1比重よりも大きい第2比重を有する、請求項1又は2に記載のアイアンゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記第1方向は、ヘッド上方に向かう方向であり、
前記第2方向は、ヘッド前方に向かう方向である、請求項1又は2に記載のアイアンゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
前記ソール部は、ヘッド前後方向に延びる第1部分と、前記第1部分のヘッド後方でヘッド上方に延びる第2部分とを含み、
前記第1孔部は、前記第1部分に形成されており、
前記第2孔部は、前記第2部分に形成されている、請求項1又は2に記載のアイアンゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
前記錘部材は、トウ・ヒール方向に延びており、
前記固定部材は、前記錘部材のトウ側を固定するためのトウ側固定部材と、前記錘部材のヒール側を固定するためのヒール側固定部材とを含む、請求項1又は2に記載のアイアンゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
前記錘部材は、主部と、前記主部の周囲の少なくとも一部から突出する鍔部とを含み、
前記第1孔部は、前記ソール部の前記底面から凹み、かつ、前記鍔部と当接する底部と、前記底部に形成された前記主部を受け入れるための孔部とを含む、請求項1又は2に記載のアイアンゴルフクラブヘッド。
【請求項8】
前記第1方向は、ヘッド上方に向かう方向であり、
前記第2方向は、トウ側及び/又はヒール側に向かう方向である、請求項1又は2に記載のアイアンゴルフクラブヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アイアンゴルフクラブヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
打球の飛距離を増大させることができるアイアンゴルフクラブヘッドが望まれている。一般に、フェース部のスイートスポットでボールを打撃したときに、大きな飛距離が得られる。スイートスポットは、ヘッド重心からフェース部の打撃面に下ろした法線が打撃面と交差する点である。
【0003】
アイアンゴルフクラブヘッドは、芝生の上に直接置かれたゴルフボールを打撃する機会が多い。このため、アイアンゴルフクラブヘッドは、打撃面の最下端から上方へ約15mm程度の位置で頻繁にボールを打撃する。したがって、アイアンゴルフクラブヘッドの飛距離を増大させるために、ヘッド本体のソール部に、それよりも比重が大きい錘部材を配置し、ヘッド重心をより低く設計することが重要である(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-221181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、錘部材は、ヘッド本体とは異なる化学成分を有することから、ヘッド本体に対して十分な接合強度で溶接することが難しい。
【0006】
代替的に、錘部材が、ヘッド底部から挿入されるねじを用いてヘッド本体に固着されることが想定され得る。しかし、この場合、ねじの挿入方向がスイング時の遠心力の作用方向と一致し、スイング毎にねじが緩みやすく、ひいては、錘部材がヘッド本体から容易に脱落するおそれがある。
【0007】
本開示は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、溶接以外の方法で、錘部材をヘッド本体に強固に固着することができるアイアンゴルフクラブヘッドを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、アイアンゴルフクラブヘッドであって、ソール部を有するヘッド本体と、前記ソール部に配された錘部材と、前記錘部材を前記ヘッド本体に固着するための固定部材とを含み、前記ヘッド本体には、第1孔部及び第2孔部が設けられており、前記第1孔部は、前記ソール部の底面で開口しており、前記錘部材は、前記第1孔部に、ヘッド下方から第1方向で挿入されており、前記第2孔部は、前記ヘッド本体の表面で開口しており、前記固定部材は、前記第2孔部を通り、前記第1方向とは異なる第2方向で前記錘部材に挿入されている。
【発明の効果】
【0009】
本開示のアイアンゴルフクラブヘッドは、上記の構成を採用したことにより、溶接以外の方法で、錘部材をヘッド本体に強固に固着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態のアイアンゴルフクラブヘッドの正面図である。
図2】本実施形態のアイアンゴルフクラブヘッドの背面図である。
図3】本実施形態のアイアンゴルフクラブヘッドの底面図である。
図4】本実施形態のアイアンゴルフクラブヘッドの底面かつ後方から見た斜視図である。
図5】本実施形態のアイアンゴルフクラブヘッドの上方かつ後方から見た斜視図である。
図6】本実施形態のアイアンゴルフクラブヘッドの分解斜視図である。
図7図2のVII-VII線の拡大断面図である。
図8図2のVIII-VIII線の断面図である。
図9図2のIX-IX線の断面図である。
図10】本実施形態の錘部材の斜視図である。
図11】他の実施形態のアイアンゴルフクラブヘッドの底面図である。
図12図11のアイアンゴルフクラブヘッドの分解斜視図である。
図13】アイアンゴルフクラブヘッドの基準状態を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態が図面に基づき説明される。
本明細書の実施形態は、いかなる方法においても本開示を限定することを意図するものではない。また、実施形態の中で変形例として説明されている特徴は、単独で又は他の様々な例との組み合わせで使用され得る。また、各実施形態を通して、共通する要素については、同一の参照符号が付されており、重複する説明は省略される。
【0012】
図1~3は、それぞれ、本実施形態のアイアンゴルフクラブヘッド(以下、単に「ヘッド」という場合がある。)1の正面図、背面図及び底面図である。また、図4及び5は、それぞれヘッド1の後方から見た斜視図、図6は、ヘッド1の分解斜視図である。図7ないし9は、それぞれ、図2のVII-VII線、VIII-VIII線、及び、IX-IX線の断面図である。
【0013】
図1~9に示されるように、ヘッド1は、例えば、フェース部2、トップ3、ソール部4、トウ5、ヒール6及びホーゼル7を含む。本実施形態のヘッド1は、例えば、全体が、金属材料で形成されている。ヘッド1は、一部が、例えば、繊維強化プラスチック等の非金属材料で形成されても良い。
【0014】
フェース部2は、ボールを打撃するための面である打撃面21を含む。打撃面21は、当該ヘッド1に意図された主たる打撃領域である。図1に示されるように、打撃面21には、複数のフェースライン8が形成される。フェースライン8は、トウ・ヒール方向に直線状に延びる細溝である。フェースライン8は、ボールとの摩擦を高めるのに役立つ。なお、図1以外には、フェースライン8が省略されていることに留意されたい。
【0015】
[基準状態]
図1ないし3において、ヘッド1は、基準状態とされている。図13に概念的に示されるように、本明細書において、ヘッド1の「基準状態」とは、打撃面21に形成されたフェースライン8が水平面HPに平行となるように、ヘッド1が水平面HP上に置かれた状態である。基準状態では、ヘッド1のホーゼル7の中心軸線CL(これは、ゴルフクラブシャフトの軸線に相当する)が基準垂直面VPの面内に配される。基準垂直面VPは、水平面HPに対して垂直な平面である。基準状態では、フェースライン8は、水平面HP及び基準垂直面VPの双方に平行である。本明細書及び特許請求の範囲において、特に言及されていない場合、ヘッド1は、基準状態に置かれているものとして、各部の構成が説明されている。図13において、符号αはライ角、符号βはロフト角をそれぞれ示す。ライ角αは、水平面HPとホーゼル7の中心軸線CLとの間の角度である。ロフト角βは、基準垂直面VPと打撃面21との間の角度である。これらのライ角α及びロフト角βは、ヘッド1に予め定められており、通常、商品カタログに掲載されている。
【0016】
[ヘッドの各方向]
ヘッド1において、前側又は前方は、打撃面21の側を意味する。ヘッド1の後側又は後方は、その反対側の面(背面22)の側を意味する。また、ヘッド前後方向は、図13において、基準垂直面VPと直交するx軸の方向である。また、ヘッド1のトウ・ヒール方向は、ヘッド前後方向と直交する水平なy軸の方向である。ヘッド1の上下方向は、x軸及びy軸にともに直交するz軸の方向である。ヘッド1の「上」及び「下」は、それぞれ、基準状態での「上」及び「下」を意味する。
【0017】
[ヘッド各部の構造]
図1~2及び7~9を参照し、フェース部2は、打撃面21と、その反対側の面である背面22とを有する。本実施形態では、打撃面21は、フェースライン8を除いて、単一の平面で形成されている。
【0018】
図1に示されるように、フェース部2は、さらに、フェースセンター23と、仮想垂直面24とを含む。
【0019】
フェースセンター23は、打撃面21上の点であり、フェースライン8の最もトウ5側の端と最もヒール6側の端との間のトウ・ヒール方向の中間位置である。また、フェースセンター23は、打撃面21の前記中間位置において、トップ3側の端とソール部4側の端との間の打撃面21に沿った方向の中間位置である。フェースセンター23は、多くのゴルファの理想的な打撃位置の1つである。
【0020】
仮想垂直面24は、フェースセンター23を通過し、かつ、打撃面21と直交する仮想の垂直面である。
【0021】
トップ3は、例えば、打撃面21の上縁からヘッド1の後方に延びており、ヘッド1の上面部分を構成する。
【0022】
トウ5は、ヘッド1のトウ・ヒール方向において、ホーゼル7から最も離れた端部分であり、トップ3とソール部4との間を滑らかに接続する。
【0023】
ヒール6は、ヘッド1のトウ・ヒール方向において、トウ5と反対側に位置する端部分である。ヒール6からホーゼル7が上方へと延びている。
【0024】
図1に示されるように、ホーゼル7は、ゴルフクラブシャフト(図示省略)を受け入れるためのシャフト差込穴7aを備える。シャフト差込穴7aの中心軸線によって、ホーゼル7の中心軸線CLが画定される。
【0025】
図3は、ヘッド1を打撃面21に沿った方向から見たヘッド1の底面図である。図3に示されるように、ソール部4は、例えば、フェース部2からヘッド後方に延びる。ソール部4は、底面4aを構成する。この底面4aは、図3に示されるように、ヘッド1の底面図で見える部分である。
【0026】
図7に良く示されるように、本実施形態のソール部4は、フェース部2側に位置する第1部分41と、第1部分41のヘッド後方側でヘッド上方に立ち上がる第2部分42とを含む。第2部分42は、フェース部2の背面22から離隔している。したがって、第2部分42とフェース部2の背面22との間には、ヘッド底面側に延びるキャビティCが形成される。本実施形態のキャビティCは、いわゆるアンダーカット状のキャビティとされている。
【0027】
図6は、ヘッド1の分解斜視図である。図6に示されるように、本実施形態のヘッド1は、ヘッド本体100と、錘部材200と、錘部材200をヘッド本体100に固定するための固定部材300とを含む。
【0028】
[ヘッド本体]
ヘッド本体100は、ソール部4を含む。本実施形態のヘッド本体100は、さらに、フェース部2及びホーゼル7を含む。すなわち、本実施形態のヘッド本体100は、ヘッド1から、錘部材200及び固定部材300を除いた部分である。
【0029】
ヘッド本体100は、例えば、第1比重を有する金属材料から構成される。前記金属材料としては、例えば、チタン、チタン合金、ステンレス鋼、マレージング鋼、炭素鋼等が挙げられる。他の例では、ヘッド本体100は、比重が異なる複数の金属材料を用いて構成されても良い。この場合、ヘッド本体100の比重(第1比重)は、各材料が有する比重をそれらの体積で重み付けした平均値で特定されるものとする。
【0030】
ヘッド本体100には、第1孔部101及び第2孔部102が設けられている。
【0031】
[第1孔部]
第1孔部101は、錘部材200を配置するための凹み又は孔である。本実施形態では、第1孔部101は1個設けられている。第1孔部101は、ソール部4の底面4aで開口している。第1孔部101は、底面4a上を延びる開口縁101aと、開口縁101aからヘッド内方に延びる側面101bと、底部101cと、孔部101dとを含む。
【0032】
第1孔部101の開口縁101aは、例えば、トウ・ヒール方向に長く延びる閉じた輪郭形状を有する。より具体的には、開口縁101aは、仮想垂直面24を横切るように延びている。なお、本実施形態の開口縁101aは、例えば、矩形状の輪郭を有するが、このような形状に限定されるものではない。
【0033】
第1孔部101の側面101bは、開口縁101aからヘッド内方に延びる孔部内周面を規定する。本実施形態の側面101bは、図7に示されるように、開口縁101aから第1方向D1に沿って延びている。第1方向D1は、例えば、本質的に、ヘッド下方からヘッド上方に向かう方向である。より詳細には、本実施形態の第1方向D1は、完全な垂直方向ではなく、垂直方向に対してある角度θで傾斜する。傾斜の向きは、例えば、ヘッド後方であるが、これ以外でも良い。ここで、角度θは45度よりも小さい。したがって、本実施形態の第1方向D1は、水平成分よりも垂直成分が支配的であることから、ヘッド下方からヘッド上方に向かう方向といえる。
【0034】
第1孔部101の底部101cは、ソール部4の底面4aから凹んだ位置にある。底部101cは、例えば、底面4aに沿った面を含み、例えば、側面101bから棚状に張り出している。
【0035】
第1孔部101の底部101cには、孔部101dが形成されている。孔部101dは、開口縁101aの輪郭形状よりも小さい輪郭形状を有する。本実施形態の孔部101dは、例えば、トウ・ヒール方向に長く延びる閉じた輪郭形状を有する。より具体的には、孔部101dも、仮想垂直面24を横切るように延びる。孔部101dは、例えば、矩形状の輪郭を有するが、このような形状に限定されない。さらに、本実施形態の孔部101dは、第1部分41を貫通する貫通孔として形成されている。他の例では、孔部101dは、底部を有する凹みであっても良い。
【0036】
[第2孔部]
第2孔部102は、固定部材300を配置するための空間である。第2孔部102は、例えば、ヘッド本体100に複数設けられている。本実施形態の第2孔部102は、仮想垂直面24よりもトウ5側に配されたトウ側第2孔部102aと、仮想垂直面24よりもヒール6側に配されたヒール側第2孔部102bとを含む。
【0037】
各第2孔部102は、ヘッド本体100の表面で開口している。本実施形態の第2孔部102は、いずれも、ヘッド本体100のソール部4の表面で開口している。より詳細には、第2孔部102は、ソール部4の第2部分42に形成されている。また、第2孔部102は、第2方向D2に軸中心線を有する円柱状の空間である。より詳細には、第2孔部102は、ヘッド後方側の大径部103と、それに段差部104を介して連なる小径部105とを含む。本実施形態の第2孔部102は、第2部分42を貫通する貫通孔として形成されている。
【0038】
[錘部材]
ヘッド本体100のソール部4には、錘部材200が配される。より詳細には、ソール部4に設けられた第1孔部101に、錘部材200が配される。錘部材200は、第2比重を有する金属材料で構成される。第2比重は、ヘッド本体100の第1比重よりも大きい。したがって、錘部材200は、ヘッド重心をより低い位置に調整するのに役立つ。
【0039】
第2比重は、第1比重よりも大きければ特に制限されるものではないが、好ましくは9.0以上、より好ましくは10.0以上、さらに好ましくは12.0以上とされる。錘部材200を構成する金属材料は、例えば、ステンレス鋼、Wを含む合金等が好適である。とりわけ、第2比重をより高めるために、W及びNiを含む合金が好適である。このような合金は、ヘッド本体100に対する溶接性が著しく悪化するが、本実施形態の錘部材200は、溶接を用いずにヘッド本体100に強固に固定され得るため、比重を最大限高めることができる。
【0040】
図10には、本実施形態の錘部材200の拡大斜視図を示す。図6及び図10に示されるように、錘部材200は、主部201と、主部201の周囲の少なくとも一部から突出する鍔部202とを含む。
【0041】
主部201は、トウ・ヒール方向(y)に沿って長く延びている。本実施形態の主部201は、仮想垂直面24を横切る。主部201の仮想垂直面24での断面は、例えば、矩形状である。主部201は、ヘッド前後方向の幅Wを有する。この幅Wを調整することで、ヘッド重量のトウ・ヒール方向の位置が調整され得る。本実施形態では、ホーゼル7の重量とバランスさせるために、主部201の幅Wは、例えば、トウ5側に向かって連続的に大きくなっている。他の例では、主部201の幅Wは、ヒール6側に向かって大きくなっていても良い。
【0042】
主部201には、固定孔203が形成されている。本実施形態では、複数の固定孔203が形成されている。固定孔203は、例えば、仮想垂直面24よりもトウ5側に配されたトウ側固定孔203aと、仮想垂直面24よりもヒール6側に配されたヒール側固定孔203bとを含む。この例では、各固定孔203は、雌ねじ部が形成されたねじ孔として構成されている。
【0043】
鍔部202は、例えば、主部201の全周囲に設けられている。すなわち、鍔部202は、主部201のヘッド前方、ヘッド後方、トウ側及びヒール側にそれぞれ突出している。他の例では、鍔部202は、主部201のヘッド前方及びヘッド後方にのみ設けられても良い。また、図7ないし9に示されるように、鍔部202は、第1孔部101の側面101bに適合するような側面202aを備える。
【0044】
図6及び7に示されるように、錘部材200は、第1孔部101に、ヘッド下方から第1方向D1で挿入される。より詳細には、本実施形態の錘部材200は、主部201を上に向けた状態で、第1孔部101の開口縁101aに位置合わせし、かつ、第1方向D1に移動させて、第1孔部101に挿入される。これにより、図7ないし9から確認されるように、第1孔部101に、錘部材200が装着(仮装着)される。このとき、錘部材200の固定孔203は、その軸心が、第2孔部102の軸中心とほぼ揃うように設計されている。
【0045】
この装着状態では、錘部材200の主部201は、第1孔部101の孔部101dを通って、キャビティC側へと突出する。また、錘部材200の鍔部202は、第1孔部101の底部101cに当接し、以後の上向きの移動が制限される。さらに、鍔部202の側面202aは、第1孔部101の側面101bに対向するように配置される。また、図6から明らかなように、錘部材200は、ソール部4でヘッド外部に露出して底面4aの一部を構成する。好ましい例として、本実施形態の鍔部202は、第1孔部101に固定されたときに、ヘッド本体100のソール部4の底面と連続する表面を形成する。
【0046】
[固定部材]
固定部材300は、第1孔部101に装着された錘部材200を、ヘッド本体100に固定するために用いられる。本実施形態の固定部材300は、第2孔部102にそれぞれ対応するトウ側固定部材300aと、ヒール側固定部材300bとを含む。
【0047】
本実施形態の固定部材300は、例えば、ねじ部材として形成されている。より詳細には、固定部材300は、頭部301と、軸部302とを含む。
【0048】
頭部301には、固定部材300をその軸線周りで回動させるための各種のレンチが挿入可能な溝部が形成されている。また、頭部301は、第2孔部102の大径部103の内径よりも僅かに小さく、かつ、小径部105の内径よりも大きい円柱状に形成されている。
【0049】
軸部302は、雄ねじ部として形成されている。この雄ねじ部は、錘部材200に形成された固定孔203の雌ねじ部に係合可能とされている。また、軸部302の最大外径は、第2孔部102の小径部105の内径よりも僅かに小さく形成されている。
【0050】
また、本実施形態の固定部材300は、第2孔部102を通り、第1方向D1とは異なる第2方向D2で錘部材200に挿入される。図6及び7に示されるように、本実施形態の第2方向D2は、ヘッド前方に向かう方向である。
【0051】
[錘部材の固定]
次に、固定部材300を用いて、ヘッド本体100に錘部材200を固定する方法が説明される。まず、上述のように、第1孔部101を第1孔部101に第1方向D1で挿入する。これにより、第1孔部101に錘部材200が装着(仮装着)される。
【0052】
次に、固定部材300が第2孔部102に差し込まれる。これにより、固定部材300の軸部302は、第2孔部102の小径部105を通り、第1孔部101に装着(仮装着)されている錘部材200の固定孔203に対向する。
【0053】
次に、固定部材300が、レンチ等の工具を用いて締め付けられる。これにより、固定部材300は、第1方向D1とは異なる第2方向D2で前記錘部材に挿入される。すなわち、固定部材300の軸部302は、ねじ込まれながら、錘部材200の固定孔203に進入する。固定部材300の頭部301が第2孔部102の段差部104と当接した後のさらなるねじ込みにより、錘部材200は、第2部分42に引き寄せられ、ヘッド本体100に強固に固定される。
【0054】
本実施形態のヘッド1は、上記の構成を採用したことにより、溶接以外の方法で、ソール部4に錘部材200を配置することができる。したがって、本実施形態のヘッド1は、より低い位置にヘッド重心を備えることができ、打球の飛距離を増大させるのに役立つ。好ましい態様では、錘部材200を高比重化及び/又は大型化すること等により、ヘッド1の水平面HPからのスイートスポットの高さは、好ましくは22mm以下、より好ましくは21mm以下、さらに好ましくは20mm以下とされる。
【0055】
また、本実施形態のヘッド1は、錘部材200の第1孔部101への挿入方向(第1方向D1)と、固定部材300の錘部材200への挿入方向(第2方向D2)とが異なる。したがって、固定部材300が、錘部材200の第1孔部101からの離脱(第1方向D1と逆方向の移動)を効果的に阻止する。また、錘部材200がヘッド本体100に強固に固定され得る。加えて、本実施形態の第2方向D2は、スイング時の遠心力の作用方向と一致していないため、固定部材300は、スイング時に緩み難く、ひいては、長期間に亘って錘部材200のヘッド本体100からの離脱を抑制できる。
【0056】
さらに、本実施形態では、図7に示されるように、錘部材200の主部201がヘッド上部に向かってヘッド後方に傾斜している。このため、主部201と、ヘッド後方に延びる鍔部202との間には、鋭角をなす入隅部205が形成される。この入隅部205は、固定部材300を締め付けるに従い、第1孔部101のヘッド後方側の底部101cと、孔部101dとが交わる鋭角をなす出隅部101eと強く嵌合し、錘部材200の位置が安定する。したがって、錘部材200のガタツキ等を防止できる点で好ましい。
【0057】
なお、ヘッド1において、錘部材200を永続的に交換する意図がない場合、固定部材300と錘部材200との間、及び/又は、固定部材300とヘッド本体100との間に、接着剤などが充填され、両者の接合強度がさらに高められても良い。一方、錘部材200は、交換可能とされても良い。例えば、錘部材200は、形状及び/又は重量が異なる複数種類が予め準備されても良い。この場合、固定部材300は、レンチ等の工具を用いて、錘部材200に対して着脱自在に装着される。そして、各種のニーズに応じて、ユーザー又は製造者が複数の錘部材200の中から選択された1の錘部材200がヘッド本体100に装着され得る。さらに、既に装着されている錘部材200が、他の錘部材200に交換され得る。
【0058】
固定部材300の比重(以下、第3比重という。)は、特に制限されるものではないが、ヘッド重心をより低く設計するために、例えば、第1比重と等しいか、それよりも大きいのが望ましい。
【0059】
[他の実施形態]
図11は、他の実施形態のヘッド1の底面図、図12は、その分解斜視図である。この実施形態においても、図11及び図12に示されるように、第1方向D1は、先の実施形態と同様、ヘッド上方に向かう方向である。一方、この実施形態において、第2方向D2は、トウ側及び/又はヒール側に向かう方向である。すなわち、この実施形態では、第2孔部102は、ヘッド本体100のトウ5側の端面、及び、ヒール6側の端面にそれぞれ設けられている。また、錘部材200のトウ側の端面及びヒール側の端面には、それぞれ、第2方向D2に沿って延びるトウ側第2孔部102a及びヒール側第2孔部102bが形成されている。このような実施形態においても、先の実施形態と同様の作用が奏される。
【0060】
特に、この実施形態では、トウ側固定部材300a及びヒール側固定部材300bの重量が、先の実施形態に比べて、それぞれ、よりトウ側及びヒール側に配分される。したがって、この実施形態では、ヘッド重心を通る垂直軸周りの慣性モーメントがより大きくなり、ミスショット時の打球の方向性が改善されるという効果が期待される。
【0061】
以上、本開示の実施形態が説明されたが、本開示は、上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の態様に変形することができる。例えば、上記実施形態では、固定部材300は、ねじを例示したが、これに制限されるものではない。例えば、固定部材300は、錘部材200の固定孔203にカシメ又は圧入等で固着可能なキー等の機械要素でも良い。さらに、本開示は、均等物を含む。
【0062】
[付記]
本開示は以下の態様を含む。
【0063】
[本開示1]
アイアンゴルフクラブヘッドであって、
ソール部を有するヘッド本体と、
前記ソール部に配された錘部材と、
前記錘部材を前記ヘッド本体に固着するための固定部材とを含み、
前記ヘッド本体には、第1孔部及び第2孔部が設けられており、
前記第1孔部は、前記ソール部の底面で開口しており、
前記錘部材は、前記第1孔部に、ヘッド下方から第1方向で挿入されており、
前記第2孔部は、前記ヘッド本体の表面で開口しており、
前記固定部材は、前記第2孔部を通り、前記第1方向とは異なる第2方向で前記錘部材に挿入されている、
アイアンゴルフクラブヘッド。
[本開示2]
前記固定部材は、雄ねじ部を備え、
前記錘部材は、前記雄ねじ部と係合する雌ねじ部を備える、本開示1に記載のアイアンゴルフクラブヘッド。
[本開示3]
前記ヘッド本体は、第1比重を有し、前記錘部材は、前記第1比重よりも大きい第2比重を有する、本開示1又は2に記載のアイアンゴルフクラブヘッド。
[本開示4]
前記第1方向は、ヘッド上方に向かう方向であり、
前記第2方向は、ヘッド前方に向かう方向である、本開示1又は2に記載のアイアンゴルフクラブヘッド。
[本開示5]
前記ソール部は、ヘッド前後方向に延びる第1部分と、前記第1部分のヘッド後方でヘッド上方に延びる第2部分とを含み、
前記第1孔部は、前記第1部分に形成されており、
前記第2孔部は、前記第2部分に形成されている、本開示1又は2に記載のアイアンゴルフクラブヘッド。
[本開示6]
前記錘部材は、トウ・ヒール方向に延びており、
前記固定部材は、前記錘部材のトウ側を固定するためのトウ側固定部材と、前記錘部材のヒール側を固定するためのヒール側固定部材とを含む、本開示1又は2に記載のアイアンゴルフクラブヘッド。
[本開示7]
前記錘部材は、主部と、前記主部の周囲の少なくとも一部から突出する鍔部とを含み、
前記第1孔部は、前記ソール部の前記底面から凹み、かつ、前記鍔部と当接する底部と、前記底部に形成された前記主部を受け入れるための孔部とを含む、本開示1又は2に記載のアイアンゴルフクラブヘッド。
[本開示8]
前記第1方向は、ヘッド上方に向かう方向であり、
前記第2方向は、トウ側及び/又はヒール側に向かう方向である、本開示1又は2に記載のアイアンゴルフクラブヘッド。
【符号の説明】
【0064】
1 ヘッド
4 ソール部
4a ソール部の底面
41 第1部分
42 第2部分
100 ヘッド本体
101 第1孔部
102 第2孔部
200 錘部材
201 主部
202 鍔部
300 固定部材
D1 第1方向
D2 第2方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13