(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034880
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】アイアンゴルフクラブヘッド
(51)【国際特許分類】
A63B 53/04 20150101AFI20240306BHJP
A63B 102/32 20150101ALN20240306BHJP
【FI】
A63B53/04 E
A63B102:32
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139424
(22)【出願日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】松永 聖史
【テーマコード(参考)】
2C002
【Fターム(参考)】
2C002AA03
2C002CH02
2C002CH03
(57)【要約】
【課題】 新たな構造により、打球の飛距離を増大させることができるアイアンゴルフクラブヘッドを提供する。
【解決手段】 アイアンゴルフクラブヘッド1であって、打撃面を有するフェース部2、打撃面上のフェースセンター、フェースセンターを通過し、かつ、打撃面と直交する仮想垂直面、及び、フェース部2からヘッド後方に延びてヘッド底面を構成するソール部4を含む。ソール部4は、仮想垂直面よりもトウ側を、ソール後端からヘッド前方に延びるトウ側スリット10と、仮想垂直面よりもヒール側を、ソール後端からヘッド前方に延びるヒール側スリット11と、トウ側スリット10とヒール側スリット11との間に区分されたソール中央部14と、トウ側スリット10によりソール中央部14と切り離されたソールトウ部16と、ヒール側スリット11によりソール中央部14と切り離されたソールヒール部18とを含む。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アイアンゴルフクラブヘッドであって、基準状態に置かれたときに、
打撃面を有するフェース部、
前記打撃面上のフェースセンター、
前記フェースセンターを通過し、かつ、前記打撃面と直交する仮想垂直面、
トウ、
前記トウと反対側のヒール、及び、
前記フェース部からヘッド後方に延びてヘッド底面を構成するソール部を含み、
前記ソール部は、
前記仮想垂直面よりもトウ側を、ソール後端からヘッド前方に延びるトウ側スリットと、
前記仮想垂直面よりもヒール側を、前記ソール後端からヘッド前方に延びるヒール側スリットと、
前記トウ側スリットと前記ヒール側スリットとの間に区分されたソール中央部と、
前記トウ側スリットにより前記ソール中央部と切り離されたソールトウ部と、
前記ヒール側スリットにより前記ソール中央部と切り離されたソールヒール部とを含む、
アイアンゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記ソール部は、前記フェース部側に位置する第1部分と、前記第1部分よりもヘッド後方に位置し、かつ、ヘッド上方に立ち上がる第2部分とを含み、
前記第1部分の厚さは、前記第2部分の厚さよりも小さく、
前記トウ側スリット及び前記ヒール側スリットは、前記第2部分を延びている、請求項1に記載のアイアンゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
前記トウ側スリット及び前記ヒール側スリットは、前記第2部分のヘッド前後方向の全範囲に亘って延びている、請求項2に記載のアイアンゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記トウ側スリット及び前記ヒール側スリットは、前記第1部分まで延びている、請求項2に記載のアイアンゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
前記第1部分の厚さが1.0~3.0mmである、請求項2ないし4のいずれか1項に記載のアイアンゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
前記第2部分の厚さが3.0mm以上である、請求項2ないし4のいずれか1項に記載のアイアンゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
前記フェース部は、前記打撃面と反対側の背面を備えており、
前記第2部分は、前記打撃面の前記背面との間でキャビティを形成する前面を備えており、
前記キャビティの前記打撃面と直交する方向の長さは、ヘッド上方に向かって増加する、請求項2ないし4のいずれか1項に記載のアイアンゴルフクラブヘッド。
【請求項8】
前記ソール中央部は、第1比重を有する本体と、前記第1比重よりも大きい第2比重を有する錘部材とを含む、請求項1又は2に記載のアイアンゴルフクラブヘッド。
【請求項9】
前記トウ側スリット及び前記ヒール側スリットは、それぞれ、前記仮想垂直面から15~35mmのトウ・ヒール方向の距離を隔てる、請求項1又は2に記載のアイアンゴルフクラブヘッド。
【請求項10】
前記トウ側スリット及び前記ヒール側スリットの幅は、それぞれ、2mm以上である、請求項1又は2に記載のアイアンゴルフクラブヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アイアンゴルフクラブヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
打球の飛距離を増大させることができるアイアンゴルフクラブヘッドが望まれている。一般に、フェース部のスイートスポットでボールを打撃したときに、大きな飛距離が得られる。なお、スイートスポットは、ヘッド重心からフェース部の打撃面に下ろした法線が前記打撃面と交差する点である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、アイアンゴルフクラブヘッドは、芝生の上に直接置かれたゴルフボールを打撃する機会が多く、このため、打撃面の最下端から上方へ約15mm程度の位置で頻繁にボールを打撃する。
【0005】
しかしながら、アイアンゴルフクラブヘッドは、その構造上、スイートスポットを上述のような低い位置に設けることは困難である。
【0006】
本開示は、以上のような実情に鑑み案出なされたもので、新規な構造により、打球の飛距離を増大させることができるアイアンゴルフクラブヘッドを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、アイアンゴルフクラブヘッドであって、基準状態に置かれたときに、打撃面を有するフェース部、前記打撃面上のフェースセンター、前記フェースセンターを通過し、かつ、前記打撃面と直交する仮想垂直面、トウ、前記トウと反対側のヒール、及び、前記フェース部からヘッド後方に延びてヘッド底面を構成するソール部を含み、前記ソール部は、前記仮想垂直面よりもトウ側を、ソール後端からヘッド前方に延びるトウ側スリットと、前記仮想垂直面よりもヒール側を、前記ソール後端からヘッド前方に延びるヒール側スリットと、前記トウ側スリットと前記ヒール側スリットとの間に区分されたソール中央部と、前記トウ側スリットにより前記ソール中央部と切り離されたソールトウ部と、前記ヒール側スリットにより前記ソール中央部と切り離されたソールヒール部とを含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示のアイアンゴルフクラブヘッドは、新規な構造により、打球の飛距離を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態のアイアンゴルフクラブヘッドの正面図である。
【
図2】本実施形態のアイアンゴルフクラブヘッドの背面図である。
【
図3】本実施形態のアイアンゴルフクラブヘッドの底面図である。
【
図7】アイアンゴルフクラブヘッドの基準状態を説明する斜視図である。
【
図8】本実施形態のアイアンゴルフクラブヘッドの後方から見た斜視図である。
【
図9】本実施形態のアイアンゴルフクラブヘッドの後方かつ下方から見た斜視図である。
【
図10】本実施形態のアイアンゴルフクラブヘッドの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態が図面に基づき説明される。
本明細書の実施形態は、いかなる方法においても本開示を限定することを意図するものではない。また、実施形態の中で説明されている様々な例は、他の単独の例と、又は、他のいくつかの例と組み合わされて実施されても良い。
【0011】
図1~3は、それぞれ、本実施形態のアイアンゴルフクラブヘッド(以下、単に「ヘッド」という場合がある。)1の正面図、背面図及び底面図である。また、
図4~6は、それぞれ、
図2のIV-IV線、V-V線及びVI-VI線の断面図である。
【0012】
図1~6に示されるように、ヘッド1は、例えば、フェース部2、トップ3、ソール部4、トウ5、ヒール6及びホーゼル7を含む。本実施形態のヘッド1は、例えば、全体が、金属材料で形成されている。ヘッド1の一部が、例えば、繊維強化プラスチック等の非金属材料で形成されても良い。
【0013】
フェース部2は、ボールを打撃するための面である打撃面21を含む。打撃面21は、当該ヘッド1に意図された主たる打撃領域である。
図1に示されるように、打撃面21には、複数のフェースライン8が形成される。フェースライン8は、トウ・ヒール方向に直線状に延びる細溝である。フェースライン8は、ボールとの摩擦を高めるのに役立つ。なお、
図1以外には、フェースライン8が省略されていることに留意されたい。
【0014】
[基準状態]
図1及び
図2において、ヘッド1は、基準状態とされている。
図7に概念的に示されるように、本明細書において、ヘッド1の「基準状態」とは、打撃面21に形成されたフェースライン8が水平面HPに平行となるように、ヘッド1が水平面HP上に置かれた状態である。基準状態では、ヘッド1のホーゼル7の中心軸線CL(これは、ゴルフクラブシャフトの軸線に相当する)が基準垂直面VPの面内に配される。基準垂直面VPは、水平面HPに対して垂直な平面である。基準状態では、フェースライン8は、水平面HP及び基準垂直面VPの双方に平行である。本明細書及び特許請求の範囲において、特に言及されていない場合、ヘッド1は、基準状態に置かれているものとして、各部の構成が説明されている。
【0015】
図7において、符号αはライ角、符号βはロフト角をそれぞれ示す。ライ角αは、水平面HPとホーゼル7の中心軸線CLとの間の角度である。ロフト角βは、基準垂直面VPと打撃面21との間の角度である。これらのライ角α及びロフト角βは、ヘッド1に予め定められており、通常、商品カタログに掲載されている。
【0016】
[ヘッドの各方向]
ヘッド1において、前側又は前方は、打撃面21の側を意味する。ヘッド1の後側又は後方は、その反対側の面(背面22)の側を意味する。また、ヘッド前後方向は、
図7において、基準垂直面VPと直交するx軸の方向である。また、ヘッド1のトウ・ヒール方向は、ヘッド前後方向と直交する水平なy軸の方向である。ヘッド1の上下方向は、x軸及びy軸にともに直交するz軸の方向である。ヘッド1の「上側」及び「下側」は、それぞれ、基準状態での「上側」及び「下側」を意味する。
【0017】
[ヘッド各部の構造]
図1~2を参照し、フェース部2は、打撃面21と、その反対側の面である背面22とを有する。本実施形態では、打撃面21は、フェースライン8を除いて、単一の平面で形成されている。
【0018】
フェース部2は、フェースセンター23と、仮想垂直面24とをさらに含む。
【0019】
フェースセンター23は、打撃面21上の点であり、フェースライン8の最もトウ5側の端と最もヒール6側の端との間のトウ・ヒール方向の中間位置である。また、フェースセンター23は、前記中間位置において、打撃面21のトップ3側の端とソール部4側の端との間の打撃面21に沿った方向の中間位置でもある。フェースセンター23は、多くのゴルファの理想的な打撃位置の1つである。
【0020】
仮想垂直面24は、フェースセンター23を通過し、かつ、打撃面21と直交する仮想の垂直面である。
【0021】
図5に示されるように、トップ3は、例えば、打撃面21の上縁からヘッド1の後方に延びており、ヘッド1の上面部分を構成する。
【0022】
図1及び
図2に示されるように、トウ5は、ヘッド1のトウ・ヒール方向において、ホーゼル7から最も離れた端部分であり、トップ3とソール部4との間を滑らかに接続する。
【0023】
ヒール6は、ヘッド1のトウ・ヒール方向において、トウ5と反対側に位置する端部分である。ヒール6からホーゼル7が上方へと延びている。
【0024】
図1に示されるように、ホーゼル7は、ゴルフクラブシャフト(図示省略)を受け入れるためのシャフト差込穴7aを備える。シャフト差込穴7aの中心軸線によって、ホーゼル7の中心軸線CLが画定される。
【0025】
図3は、ヘッド1を打撃面21に沿った方向から見たヘッド1の底面図である。
図3ないし4に示されるように、ソール部4は、例えば、フェース部2からヘッド後方に延びてヘッド下面を構成している。ソール部4は、その最もヘッド後方に位置であるソール後端4eまで延びている。ソール後端4eは、
図3の底面図において、最もヘッド後方に位置してトウ・ヒール方向に延びている。
【0026】
図5に示されるように、本実施形態のソール部4は、フェース部側に位置する第1部分41と、第1部分41よりもヘッド後方に位置し、かつ、ヘッド上方に立ち上がる第2部分42とを含む。第2部分42は、フェース部2の背面22から離隔する前面42aを有する。前面42aは、フェース部2の背面22に対向している。前面42aと、フェース部2の背面22との間には、ヘッド底面側に延びるキャビティCが形成される。本実施形態のキャビティCは、いわゆるアンダーカット状のキャビティである。
【0027】
図8及び
図9は、ヘッド1の後方から見た斜視図である。
図8及び
図9に示されるように、ソール部4は、トウ側スリット10と、ヒール側スリット11とを備える。
【0028】
本実施形態のトウ側スリット10は、仮想垂直面24よりもトウ5側の位置に設けられている。また、トウ側スリット10は、例えば、ソール後端4eからヘッド前方に延びている。さらに、トウ側スリット10は、ソール部4をヘッド上下方向に貫通している。
【0029】
本実施形態のヒール側スリット11は、仮想垂直面24よりもヒール6側の位置に設けられている。また、ヒール側スリット11は、例えば、ソール後端4eからヘッド前方に延びている。さらに、ヒール側スリット11は、ソール部4をヘッド上下方向に貫通している。
【0030】
また、ソール部4は、ソール中央部14と、ソールトウ部16と、ソールヒール部18とを備える。
【0031】
ソール中央部14は、ソール部4において、トウ側スリット10とヒール側スリット11との間に区分されている。ソールトウ部16は、ソール部4において、トウ側スリット10よりもトウ5側の部分である。ソールヒール部18は、ソール部4において、ヒール側スリット11よりもヒール6側の部分である。したがって、ソールトウ部16は、トウ側スリット10によりソール中央部14と切り離されている。同様に、ソールヒール部18は、ヒール側スリット11によりソール中央部14と切り離されている。
【0032】
[本実施形態の作用]
図8及び
図9に示したように、本実施形態のヘッド1は、ソール中央部14は、ソールトウ部16及びソールヒール部18から切り離されている。このため、ソール中央部14は、それ単独でヘッド前後方向に撓みやすい。本実施形態のヘッド1は、このような特性に着目し、ボール打撃時に、フェース部2とソール中央部14との間に撓みを発生させ、その撓みの復元力をフェース部2に作用させることでヘッド1の反発性能を高める。以下、この作用をより詳細に述べる。
【0033】
図10は、仮想垂直面24の位置でのヘッド1の拡大断面図である。
図10において、矢印SWはヘッド1のスイング方向を示す。スイングの過程で、ヘッド1の打撃面21にボールが衝突すると、フェース部2は、力f1を受け、ヘッド後方に撓む。この際、ソール中央部14が比較的動きやすく構成されているから、フェース部2とソール中央部14との接続部付近に大きな弾性的な撓み(曲げ)が生じ、そこでは弾性エネルギーが蓄えられる。次に、打撃瞬間から微小時間経過後、フェース部2とソール中央部14との間の撓みが徐々に復元される。この際、ソール中央部14は、スイング方向SWの運動量Pを有するので、復元力の多くがフェース部2を前方に押し戻す反発力として作用する。本実施形態のヘッド1は、このような作用により、フェース部2の反発性能を向上させ、打ち出されたボールの飛距離を増大させる。
【0034】
以上のように、本実施形態のヘッド1は、これまでアイアンゴルフクラブヘッドで行われてきたヘッド低重心設計とは異なる新規な構造により、打球の飛距離を増大させることができる。ただし、本開示は、飛距離のさらなる増大を図るために、これまで行われてきたヘッド低重心化設計技術と組み合わせて実施されても良いのはいうまでもない。以下に、本開示のさらに好ましい態様が説明される。
【0035】
[第1部分の厚さ]
図10に示されるように、第1部分41の厚さt1は、第2部分42の厚さt2よりも小さく構成されても良い。この場合、ボール打撃の瞬間、第1部分41が起点となって、ソール中央部14(第2部分42)は、フェース部2側へより大きく撓みやすい。そして、ソール中央部14の撓み量が大きくなると、それに比例してフェース部2に作用する復元力(反発力)も大きくなる。したがって、この例では、フェース部2の反発性能のさらなる向上効果が期待できる。とりわけ、第1部分41の厚さt1を小さくすると、打撃面21のより低い位置でボールを打撃したときでも、十分な反発性能の向上効果が期待できる。
【0036】
第1部分41の厚さt1は、特に制限されるものではないが、ソール中央部14の撓みを促進する観点では、例えば、3.0mm以下、好ましくは2.5mm以下、さらに好ましくは2.0mm以下とされても良い。一方、ヘッド1の耐久性という観点では、第1部分41の厚さt1は、例えば、1.0mm以上、好ましくは1.5mm以上とされても良い。本明細書において、第1部分41の厚さt1は、フェース部2の打撃面21と平行に測定される厚さとして定義される。
【0037】
[第2部分の厚さt2]
第2部分42の厚さt2は、特に制限されるものではないが、第1部分41の厚さt1よりも大きいのが望ましい。これは、第2部分42の重量を増大させ、ひいては、スイング中の第2部分42の運動エネルギーを大きくする。したがって、この例では、フェース部2に作用する復元力(反発力)が大きくなり、さらなるヘッド1の反発性能の向上効果が期待できる。
【0038】
第2部分42の厚さt2は、特に制限されるものではないが、ソール中央部14の撓みを促進する観点では、例えば、3.0mm以上、より好ましくは4.0mm以上、さらに好ましくは5.0mm以上とされても良い。一方、ヘッド1の実用上の上限重量等の観点では、第2部分42の厚さt2は、例えば、20mm以下、好ましくは15mm以下、さらに好ましくは10mm以下とされても良い。本明細書において、第2部分42の厚さt2は、フェース部2の打撃面21と平行に測定される厚さとして定義される。
【0039】
[キャビティの形状]
キャビティCの打撃面21と直交する方向の長さLは、ヘッド上方に向かって増加するのが望ましい。このようなキャビティCの形状は、ボール打撃の瞬間、第1部分41を起点として、第2部分42をフェース部2の側により大きく撓ませることができる。したがって、この例では、さらなるヘッド1の反発性能を向上効果が期待できる。なお、キャビティCの前記長さLは、特に制限されないが、ボール打撃時、撓んだ第2部分42がフェース部2の背面22に当接しない程度で適宜定められれば良い。
【0040】
[トウ側スリット、ヒール側スリットの好ましい例]
図4及び
図6に示されるように、ソール部4が第2部分42を備える場合、トウ側スリット10及びヒール側スリット11は、第2部分42を延びているのが望ましい。第2部分42は、その厚さが相対的に大きい。この第2部分42に、トウ側スリット10及びヒール側スリット11を設けることにより、ボール打撃時にソール中央部14がより撓みやすくなる。このような観点では、
図4及び
図6に示されるように、トウ側スリット10及びヒール側スリット11は、第2部分42のヘッド前後方向の全範囲に亘って延びているのがさらに望ましい。
【0041】
ソール部4が第1部分41を備える場合、トウ側スリット10及びヒール側スリット11は、第1部分41まで延びていても良い。このような例では、ボール打撃時にソール中央部14がより一層撓みやすくなる。一方、フェース部2の耐久性を損ねないように、トウ側スリット10及びヒール側スリット11は、フェース部2には達しないように終端させるのが望ましい。より具体的には、
図4に示されるように、フェース部2の最小厚さを通り、かつ、打撃面21と平行な仮想のフェース最薄肉ラインYを定義したときに、トウ側スリット10及びヒール側スリット11は、このフェース最薄肉ラインYに達することなく終端するのが良い。
【0042】
トウ側スリット10及びヒール側スリット11のトウ・ヒール方向の位置は、特に制限されるものではない。種々のゴルファの打撃位置の分布を考慮すると、トウ側スリット10及びヒール側スリット11は、それぞれ、その分布範囲の外側に設けられるのが望ましい。これにより、ボール打撃時にソール中央部14をより撓みやすく構成することができる。このような観点では、
図2に示されるように、トウ側スリット10及びヒール側スリット11は、それぞれ、仮想垂直面24から15~35mmのトウ・ヒール方向の距離Aを隔てるのが望ましい。
【0043】
図3に示されるように、トウ側スリット10及びヒール側スリット11の幅Wは、特に制限されるものではない。好ましい例では、トウ側スリット10及びヒール側スリット11の幅Wは、一般的なボール打撃時に、ソール中央部14の撓みが、ソールトウ部16及びソールヒール部18と接触することで妨げられないように定められる。一例として、トウ側スリット10及びヒール側スリット11のそれぞれの幅Wは、例えば、1mm以上、より好ましくは2mm以上とされる。また、トウ側スリット10及びヒール側スリット11のそれぞれの幅Wは、例えば5mm以下、好ましくは4mm以下、さらに好ましくは3mm以下とされる。また、
図3の底面図において測定されるトウ側スリット10及びヒール側スリット11のヘッド前後方向の長さは、例えば5mm以上、好ましくは10mm以上とされても良い。
【0044】
[錘部材]
図10に示されるように、ソール部4は、第1比重を有する本体421と、第1比重よりも大きい第2比重を有する錘部材422とを含むことができる。このような構成は、これまで説明された好ましい例とともに、又は、それらとは別に単独で適用されても良い。
【0045】
本実施形態の錘部材422は、例えば、ソール部4のソール中央部14の後方かつ低所に配置されている。これは、ソール後端4e側により多くの重量を配分することを可能とし、ソール部4が、フェース部2との接続部を起点として、フェース部2の側により撓みやすくなる。また、錘部材422は、ヘッド1の低重心化を図ることもできる。
【0046】
ソール中央部14が第1部分41と第2部分42とを含んで構成されている場合、錘部材422は、第2部分42に配置されるのが好ましい。特に好ましい態様では、第2部分42は、本体421と錘部材422とから構成されている。
【0047】
本体421は、第2部分42の前面を構成する前壁部421aと、前壁部421aの上部からヘッド後方に延びて第2部分42の上面を構成する上壁部421bとを含む。この例では、本体421は、ヘッド1のフェース部2やホーゼル7を構成する金属で、これらと一体に構成されている。本体421の金属材料としては、例えば、炭素鋼、ステンレス、マレージング鋼、チタン、チタン合金等が挙げられる。
【0048】
錘部材422は、前壁部421aと、上壁部421bとが囲む下方側の空間に配される。好ましい例では、錘部材422は、前壁部421aに接触する第1面S1と、上壁部421bに接触する第2面S2と、ソール部4の外表面を形成する第3面S3とを含む、例えば、中実構造である。ボール打撃時に第2部分42をより大きく撓ませるために、前壁部421aと第1面S1との接触長さは、例えば、5mm以上であるのが望ましい。同様に、上壁部421bと第2面S2との接触長さは、例えば、5mm以上であるのが望ましい。
【0049】
錘部材422の第2の比重は、本体421の第1比重よりも大きければ特に制限されないが、例えば、10.0以上、好ましくは12.0以上とされても良い。錘部材422は、タングステンを含む合金が好適である。
【0050】
トウ側スリット10及びヒール側スリット11は、そのまま空隙とされても良い。他の例では、トウ側スリット10及びヒール側スリット11は、ボール打撃時のソール中央部14の変形を阻害しない程度に十分に柔らかい、ゴム、樹脂、エラストマー等のカバー又はインサート(いずれも図示省略)が配されても良い。これらのカバー又はインサートは、トウ側スリット10及びヒール側スリット11に異物等が詰まるのを防ぐことができる。
【0051】
以上、本開示の実施形態が説明されたが、本開示は、上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の態様に変形することができる。また、本開示は、均等物を含む。
【0052】
[付記]
本開示は以下の態様を含む。
【0053】
[本開示1]
アイアンゴルフクラブヘッドであって、基準状態に置かれたときに、
打撃面を有するフェース部、
前記打撃面上のフェースセンター、
前記フェースセンターを通過し、かつ、前記打撃面と直交する仮想垂直面、
トウ、
前記トウと反対側のヒール、及び、
前記フェース部からヘッド後方に延びてヘッド底面を構成するソール部を含み、
前記ソール部は、
前記仮想垂直面よりもトウ側を、ソール後端からヘッド前方に延びるトウ側スリットと、
前記仮想垂直面よりもヒール側を、前記ソール後端からヘッド前方に延びるヒール側スリットと、
前記トウ側スリットと前記ヒール側スリットとの間に区分されたソール中央部と、
前記トウ側スリットにより前記ソール中央部と切り離されたソールトウ部と、
前記ヒール側スリットにより前記ソール中央部と切り離されたソールヒール部とを含む、
アイアンゴルフクラブヘッド。
[本開示2]
前記ソール部は、前記フェース部側に位置する第1部分と、前記第1部分よりもヘッド後方に位置し、かつ、ヘッド上方に立ち上がる第2部分とを含み、
前記第1部分の厚さは、前記第2部分の厚さよりも小さく、
前記トウ側スリット及び前記ヒール側スリットは、前記第2部分を延びている、本開示1に記載のアイアンゴルフクラブヘッド。
[本開示3]
前記トウ側スリット及び前記ヒール側スリットは、前記第2部分のヘッド前後方向の全範囲に亘って延びている、本開示2に記載のアイアンゴルフクラブヘッド。
[本開示4]
前記トウ側スリット及び前記ヒール側スリットは、前記第1部分まで延びている、本開示2に記載のアイアンゴルフクラブヘッド。
[本開示5]
前記第1部分の厚さが1.0~3.0mmである、本開示2ないし4のいずれかに記載のアイアンゴルフクラブヘッド。
[本開示6]
前記第2部分の厚さが3.0mm以上である、本開示2ないし4のいずれかに記載のアイアンゴルフクラブヘッド。
[本開示7]
前記フェース部は、前記打撃面と反対側の背面を備えており、
前記第2部分は、前記打撃面の前記背面との間でキャビティを形成する前面を備えており、
前記キャビティの前記打撃面と直交する方向の長さは、ヘッド上方に向かって増加する、本開示2ないし4のいずれかに記載のアイアンゴルフクラブヘッド。
[本開示8]
前記ソール中央部は、第1比重を有する本体と、前記第1比重よりも大きい第2比重を有する錘部材とを含む、本開示1又は2に記載のアイアンゴルフクラブヘッド。
[本開示9]
前記トウ側スリット及び前記ヒール側スリットは、それぞれ、前記仮想垂直面から15~35mmのトウ・ヒール方向の距離を隔てる、本開示1又は2に記載のアイアンゴルフクラブヘッド。
[本開示10]
前記トウ側スリット及び前記ヒール側スリットの幅は、それぞれ、2mm以上である、本開示1又は2に記載のアイアンゴルフクラブヘッド。
【符号の説明】
【0054】
1 ヘッド
2 フェース部
4 ソール部
4e ソール後端
5 トウ
6 ヒール
10 トウ側スリット
11 ヒール側スリット
14 ソール中央部
16 ソールトウ部
18 ソールヒール部
21 打撃面
22 背面
23 フェースセンター
24 仮想垂直面
41 第1部分
42 第2部分
42a 前面
421 本体
422 錘部材
C キャビティ