IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナソニックシステムネットワークス株式会社の特許一覧

特開2024-34886路側機、路側機通信システム、及び移動体の検出方法
<>
  • 特開-路側機、路側機通信システム、及び移動体の検出方法 図1
  • 特開-路側機、路側機通信システム、及び移動体の検出方法 図2
  • 特開-路側機、路側機通信システム、及び移動体の検出方法 図3
  • 特開-路側機、路側機通信システム、及び移動体の検出方法 図4
  • 特開-路側機、路側機通信システム、及び移動体の検出方法 図5
  • 特開-路側機、路側機通信システム、及び移動体の検出方法 図6
  • 特開-路側機、路側機通信システム、及び移動体の検出方法 図7
  • 特開-路側機、路側機通信システム、及び移動体の検出方法 図8
  • 特開-路側機、路側機通信システム、及び移動体の検出方法 図9
  • 特開-路側機、路側機通信システム、及び移動体の検出方法 図10
  • 特開-路側機、路側機通信システム、及び移動体の検出方法 図11
  • 特開-路側機、路側機通信システム、及び移動体の検出方法 図12
  • 特開-路側機、路側機通信システム、及び移動体の検出方法 図13
  • 特開-路側機、路側機通信システム、及び移動体の検出方法 図14
  • 特開-路側機、路側機通信システム、及び移動体の検出方法 図15
  • 特開-路側機、路側機通信システム、及び移動体の検出方法 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034886
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】路側機、路側機通信システム、及び移動体の検出方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20240306BHJP
   H04W 4/44 20180101ALI20240306BHJP
   H04W 36/32 20090101ALI20240306BHJP
   G08G 1/13 20060101ALI20240306BHJP
   G01S 17/89 20200101ALN20240306BHJP
   G01S 13/91 20060101ALN20240306BHJP
   G01S 13/74 20060101ALN20240306BHJP
【FI】
G08G1/09 F
H04W4/44
H04W36/32
G08G1/13
G01S17/89
G01S13/91
G01S13/74
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139436
(22)【出願日】2022-09-01
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、総務省、令和4年度における第5世代移動通信システムの更なる高度化に向けた研究開発の委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】313005318
【氏名又は名称】パナソニックコネクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安木 慎
(72)【発明者】
【氏名】大野 耕祐
(72)【発明者】
【氏名】上杉 充
(72)【発明者】
【氏名】浅野 弘明
(72)【発明者】
【氏名】上野 剛
(72)【発明者】
【氏名】岡田 亨
(72)【発明者】
【氏名】小坂 和裕
【テーマコード(参考)】
5H181
5J070
5J084
5K067
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC12
5H181CC14
5H181MC22
5J070AB24
5J070AC02
5J070AC11
5J070AE01
5J070AE09
5J070AF01
5J070BC13
5J070BD03
5J070BE01
5J084AA02
5J084AA04
5J084AA05
5J084AA10
5J084AA13
5J084AB01
5J084BA03
5J084BA31
5J084CA65
5K067AA34
5K067KK02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】周辺に存在する複数の物体をセンサによって計測する場合に、それらの物体に含まれる移動体の特定を容易にする路側機、路側機通信システム及び移動体の検出方法を提供する。
【解決手段】路側機4が、周辺に存在する移動体を含む複数の物体を計測することにより計測データを生成するセンサ25と、複数の物体に含まれる移動体に搭載されたユーザ端末と通信し、ユーザ端末に関する情報を取得する通信装置21と、その計測データにおいて、ユーザ端末に関する情報に基づき移動体に関する計測データを区別することにより、計測データに含まれる移動体以外の物体に関する不要な計測データを除去する制御装置26と、を備える構成とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周辺に存在する移動体を含む複数の物体を計測することにより計測データを生成するセンサと、
前記移動体に搭載されたユーザ端末と通信し、前記ユーザ端末に関する情報を取得する通信装置と、
前記計測データにおいて、前記ユーザ端末に関する情報に基づき前記移動体に関する計測データを区別することにより、前記計測データに含まれる前記移動体以外の前記物体に関する不要な計測データを除去する制御装置と、
を備える、
路側機。
【請求項2】
前記ユーザ端末に関する情報には、前記ユーザ端末との通信によって前記通信装置で計測または取得した、識別情報、位置情報、前記通信装置から前記ユーザ端末までの距離のいずれか又はそれらの2以上の組合せが含まれる、請求項1に記載の路側機。
【請求項3】
前記制御装置は、前記不要な計測データが除去された前記計測データに基づき、前記移動体の現在位置を特定し、
前記移動体の現在位置および現在までの位置に基づき、今後の移動経路を予測し、切り替えが必要な場合は、前記ユーザ端末に対して通信先切替指令を送信することにより、自装置から他の通信先への切替時刻を指示する、請求項1または請求項2に記載の路側機。
【請求項4】
前記通信装置は、特定方向のみの電波を送受信可能な指向性のアンテナを備え、
前記位置情報には、前記通信装置から前記ユーザ端末までの距離および前記通信装置を基点として前記ユーザ端末が位置する方向に関する情報が含まれる、請求項2に記載の路側機。
【請求項5】
前記制御装置は、前記計測データにおいて、前記複数の物体に含まれる静止物体に関する計測データを前記不要な計測データとして除去する、請求項1に記載の路側機。
【請求項6】
前記制御装置は、前記計測データにおいて、前記センサの計測可能領域における所定の領域以外に位置する前記物体に関する計測データを前記不要な計測データとして除去し、
前記所定の領域は、前記センサの位置を始点として互いに異なる方向に延びる2本の境界線に挟まれた領域である、請求項1に記載の路側機。
【請求項7】
前記位置情報は、前記移動体の移動にともない更新され、
前記制御装置は、更新された前記位置情報に基づき、前記ユーザ端末の位置が前記センサの計測領域外となるまで、前記計測データにおける前記不要な計測データの除去を繰り返し実行する、請求項2に記載の路側機。
【請求項8】
前記計測データは、前記複数の物体の計測点に対応する複数の点から構成される点群データを含み、
前記制御装置は、一群をなす前記点群データおよび前記ユーザ端末に関する情報に基づき前記移動体の現在位置を特定する、請求項3に記載の路側機。
【請求項9】
前記制御装置は、前記一群をなす点群データが前記移動体以外の他の移動体を含む複数の移動体に関するものである場合、一群をなす前記点群データおよび前記ユーザ端末に関する情報に基づきそれら複数の移動体の位置関係を判定する、請求項8に記載の路側機。
【請求項10】
前記制御装置は、前記一群をなす点群データが前記移動体以外の他の移動体を含む複数の移動体に関するものである場合、前記一群をなす点群データを前記複数の移動体の数に分割し、それら分割された前記点群データの各々を対応する前記移動体に対応づける、請求項8に記載の路側機。
【請求項11】
請求項1または請求項2に記載の前記路側機及び前記ユーザ端末を備えた路側機通信システム。
【請求項12】
前記制御装置は、
前記不要な計測データが除去された前記計測データに基づき、前記移動体の現在位置を特定し、
前記移動体の現在位置および現在までの位置に基づき、今後の移動経路を予測し、切り替えが必要な場合は、前記ユーザ端末に対して通信先切替指令を送信することにより、通信先への切替時刻を指示し、
前記通信先切替指令には、前記移動体の前方に位置する他の移動体との距離に関する間隔情報が含まれ、
前記ユーザ端末は、前記他の移動体との距離を計測し、当該計測した前記他の移動体との距離と前記間隔情報とに基づき、現在の通信先から他の通信先への切り替えの可否を判定する、請求項11に記載の路側機通信システム。
【請求項13】
前記制御装置は、
前記不要な計測データが除去された前記計測データに基づき、前記移動体の現在位置を特定し、
前記移動体の現在位置および現在までの位置に基づき、今後の移動経路を予測し、切り替えが必要な場合は、前記ユーザ端末に対して通信先切替指令を送信することにより、通信先への切替時刻を指示し、
前記通信先切替指令には、前記通信装置と前記ユーザ端末との通信距離に関する通信距離情報が含まれ、
前記ユーザ端末は、前記通信装置との通信距離を計測し、当該計測した通信距離と前記通信距離情報とに基づき、現在の通信先から他の通信先への切り替えの可否を判定する、請求項11に記載の路側機通信システム。
【請求項14】
前記制御装置は、前記不要な計測データが除去された前記計測データに基づき、前記移動体の現在位置を特定し、
前記移動体の現在位置および現在までの位置に基づき、今後の移動経路を予測し、切り替えが必要な場合は、前記ユーザ端末に対して通信先切替指令を送信することにより、通信先への切替時刻を指示し、
前記通信先切替指令には、前記移動体とその周辺に位置する他の移動体との相対位置に関する相対位置情報が含まれ、
前記ユーザ端末は、前記他の移動体の相対位置を計測し、当該計測した相対位置と前記相対位置情報とに基づき、現在の通信先から他の通信先への切り替えの可否を判定する、請求項11に記載の路側機通信システム。
【請求項15】
路側機による移動体の検出方法であって、
周辺に存在する移動体を含む複数の物体を計測することにより計測データを生成し、
前記移動体に搭載されたユーザ端末と通信し、前記ユーザ端末に関する情報を取得し、
前記計測データにおいて、前記ユーザ端末に関する情報に基づき前記移動体に関する計測データを区別することにより、前記計測データに含まれる前記移動体以外の前記物体に関する不要な計測データを除去する、移動体の検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、道路周辺に設置される路側機、路側機通信システム、及び移動体の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モバイルネットワークの分野では、5G(第5世代移動体通信システム)が商用化の段階にあり、それにともないトラフィックの大幅な増加が見込まれている。また、そのようなトラフィックの増加に対応するため、従来利用されている周波数帯に比べてより高い周波数帯(例えば、40GHz帯、70GHz帯)の利用が検討されている。
【0003】
利用される周波数が高くなると、電波伝搬特性によって電波の減衰が大きくなる。そのため、移動体通信では、1つの基地局(または、アクセスポイント)によってカバーできるサービスエリアがより小さくなり、基地局をより高密度に配置する必要が生じる。基地局がより高密度化された場合、ユーザ端末がアクセスする基地局とコアネットワークとを接続するためのバックホール(中継回線)は、無線と比べて高コストになり得る有線の敷設をできるだけ避けるように、複数の基地局間の無線通信によるマルチホップ通信で実現することが想定される。
【0004】
そのような無線通信によるバックホールは、各基地局の配置や通信状況等に応じて構築されることが望ましい。そこで例えば、基地局が、ミリ波帯を利用した無線通信経路を用いて他の基地局と接続し、バックホールに関する情報をシステム情報に含めて通知することにより、バックホールをフレキシブルに構築する技術が知られている(特許文献1参照)。
【0005】
また、マルチホップ通信は、道路周辺に設置された複数の路側機によって行われる通信への適用にも好適である。路側機では、センサ(例えば、LiDAR(Light Detection and Ranging)やレーダなど)によって移動体を計測した計測データを取得することにより、その計測データが運転支援情報や交通情報として用いられる。一方、そのような移動体の計測データは、通信トラフィックを抑制するために、不要なデータ(すなわち、移動体以外のデータ)を取り除くことが望ましい。
【0006】
従来、センサによる計測データから不要なデータを取り除く技術に関し、センサにより計測された複数の計測点までの距離や反射強度等の計測点のデータを含む点群データを取得する点群データ取得部と、点群データ取得部が取得した点群データから、所定の領域に含まれる計測点のデータを除去する計測データ除去部と、計測データ除去部により計測点のデータが除去された後の点群データを、サーバに送信する点群データ送信部とを備える送信装置が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第WO2018/096839号公報
【特許文献2】特開2021-043475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献2に記載された従来技術では、所定の領域に含まれる計測点のデータが除去された点群データが取得される。
【0009】
一方、そのように所定の領域に含まれる計測点のデータを除去する方法では、道路状況(存在する移動体の数やそれらの配置など)の変化などによって、周辺の物体の中から移動体を容易に特定できない(すなわち、移動体を誤検出する)場合がある。
【0010】
そこで、本開示は、周辺に存在する複数の物体をセンサによって計測する場合に、それらの物体に含まれる移動体の特定を容易とする路側機、路側機通信システム、及び移動体の検出方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の路側機は、路側機であって、周辺に存在する移動体を含む複数の物体を計測することにより計測データを生成するセンサと、前記移動体に搭載されたユーザ端末と通信し、前記ユーザ端末に関する情報を取得する通信装置と、前記計測データにおいて、前記ユーザ端末に関する情報に基づき前記移動体に関する計測データを区別することにより、前記計測データに含まれる前記移動体以外の前記物体に関する不要な計測データを除去する制御装置と、を備える構成とする。
【0012】
また、本開示の路側機通信システムは、前記路側機及び前記ユーザ端末を備えた構成とする。
【0013】
また、本開示の移動体の検出方法は、路側機による移動体の検出方法であって、周辺に存在する移動体を含む複数の物体を計測することにより計測データを生成し、前記移動体に搭載されたユーザ端末と通信し、前記ユーザ端末に関する情報を取得し、前記計測データにおいて、前記ユーザ端末に関する情報に基づき前記移動体に関する計測データを区別することにより、前記計測データに含まれる前記移動体以外の前記物体に関する不要な計測データを除去する構成とする。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、路側機は、周辺に存在する複数の物体をセンサによって計測する場合に、それらの物体に含まれる移動体を容易に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係る路側機通信システムの全体構成図
図2】NW制御サーバによるユーザ端末とエッジサーバとの通信経路の制御の一例を示す説明図
図3】アクセスポイントの概略構成を示すブロック図
図4】エッジサーバの概略構成を示すブロック図
図5】NW制御サーバの概略構成を示すブロック図
図6】ユーザ端末の概略構成を示すブロック図
図7】第1実施形態に係る通信の切替処理の流れを示すフロー図
図8】通信品質マップの水平方向断面を示す説明図
図9】通信品質マップの鉛直方向断面を示す説明図
図10】点群データの一例を示す説明図
図11】2つのアクセスポイントに関する通信品質マップおよび通信品質の関係を示す説明図
図12】第2実施形態に係るアクセスポイントの概略構成を示すブロック図
図13】第2実施形態に係る通信の切替処理の流れを示すフロー図
図14】一群をなす点群の分割処理に関する説明図
図15】第3実施形態に係るユーザ端末の概略構成を示すブロック図
図16】第3実施形態に係る通信の切替処理の流れを示すフロー図
【発明を実施するための形態】
【0016】
前記課題を解決するためになされた第1の発明は、路側機であって、周辺に存在する移動体を含む複数の物体を計測することにより計測データを生成するセンサと、前記移動体に搭載されたユーザ端末と通信し、前記ユーザ端末に関する情報を取得する通信装置と、前記計測データにおいて、前記ユーザ端末に関する情報に基づき前記移動体に関する計測データを区別することにより、前記計測データに含まれる前記移動体以外の前記物体に関する不要な計測データを除去する制御装置と、を備える構成とする。
【0017】
これによると、周辺に存在する複数の物体をセンサによって計測する場合に、それらの物体に含まれる移動体の特定が容易となる。
【0018】
また、第2の発明は、前記ユーザ端末に関する情報には、前記ユーザ端末との通信によって前記通信装置で計測または取得した、識別情報、位置情報、前記通信装置から前記ユーザ端末までの距離のいずれか又はそれらの2以上の組合せが含まれる構成とする。
【0019】
これによると、ユーザ端末に関する適切な情報に基づき、移動体に関する計測データを簡易な処理によって区別することができる。
【0020】
また、第3の発明は、前記制御装置は、前記不要な計測データが除去された前記計測データに基づき、前記移動体の現在位置を特定し、前記移動体の現在位置および現在までの位置に基づき、今後の移動経路を予測し、切り替えが必要な場合は、前記ユーザ端末に対して通信先切替指令を送信することにより、自装置から他の通信先への切替時刻を指示する構成とする。
【0021】
これによると、不要な計測データが除去された計測データに基づき特定された移動体の現在位置及びその履歴(移動履歴)とそれまでの移動履歴から推定した経路予測によって、ユーザ端末に対して通信先の切り替えを適切に指示することができる。
【0022】
また、第4の発明は、前記通信装置は、特定方向のみの電波を送受信可能な指向性のアンテナを備え、前記位置情報には、前記通信装置から前記ユーザ端末までの距離や前記通信装置に対して前記ユーザ端末が位置する方向などに関する情報が含まれる構成とする。
【0023】
これによると、通信装置からユーザ端末までの距離および通信装置を基点としてユーザ端末が位置する方向に基づき、周辺の物体に含まれる移動体を特定する精度を向上させることができる。
【0024】
また、第5の発明は、前記制御装置は、前記計測データにおいて、前記複数の物体に含まれる静止物体に関する計測データを前記不要な計測データとして除去する構成とする。
【0025】
これによると、静止物体に関する不要な計測データが除去されることにより、周辺の物体に含まれる移動体を特定する精度を向上させることができる。
【0026】
また、第6の発明は、前記制御装置は、前記計測データにおいて、前記センサの計測可能領域における所定の領域以外に位置する前記物体に関する計測データを前記不要な計測データとして除去し、前記所定の領域は、前記センサの位置を始点として互いに異なる方向に延びる2本の境界線に挟まれた領域である構成とする。
【0027】
これによると、センサの計測可能領域における所定の領域以外に位置する物体に関する不要な計測データが除去されることにより、周囲の物体に含まれる移動体を特定する精度を向上させることができる。この場合、例えば、移動体が道路を走行する自動車である場合には、所定の領域をその道路に重なる領域に設定することができる。
【0028】
また、第7の発明は、前記位置情報は、前記移動体の移動にともない更新され、前記制御装置は、更新された前記位置情報に基づき、前記ユーザ端末の位置が前記センサの計測領域外となるまで、前記計測データにおける前記不要な計測データの除去を繰り返し実行する構成とする。
【0029】
これによると、更新された位置情報に基づき、周囲の物体に含まれる移動体を特定する精度を向上させることができる。
【0030】
また、第8の発明は、前記計測データは、前記複数の物体の計測点に対応する複数の点から構成される点群データを含み、前記制御装置は、一群をなす前記点群データおよび前記ユーザ端末に関する情報に基づき前記移動体の現在位置を特定する構成とする。
【0031】
これによると、一群をなす点群データに基づき、周囲の物体に含まれる移動体の特定が容易となる。
【0032】
また、第9の発明は、前記制御装置は、前記一群をなす点群データが前記移動体以外の他の移動体を含む複数の移動体に関するものである場合、一群をなす前記点群データおよび前記ユーザ端末に関する情報に基づきそれら複数の移動体の位置関係を判定する構成とする。
【0033】
これによると、一群をなす点群データに基づき、周囲の物体に含まれる複数の移動体の位置関係(例えば、前後方向に並ぶ位置関係、左右方向に並ぶ位置関係など)の特定が容易となる。
【0034】
また、第10の発明は、前記制御装置は、前記一群をなす点群データが前記移動体以外の他の移動体を含む複数の移動体に関するものである場合、前記一群をなす点群データを前記複数の移動体の数に分割し、それら分割された前記点群データの各々を対応する前記移動体に対応づける構成とする。
【0035】
これによると、一群をなす点群が複数の移動体に関するものである場合でも、分割された点群データの各々を対応する移動体に対応づけることにより、各移動体の特定が容易となる。
【0036】
また、第11の発明は、前記路側機及び前記ユーザ端末を備えた路側機通信システムとする。
【0037】
これによると、路側機は、不要な計測データが除去されたセンサの計測データに基づき特定された移動体の現在位置とそれまでの位置情報から推定した経路予測よって、ユーザ端末に対して通信の先の切り替えを適切に指示することができる。
【0038】
また、第12の発明は、前記制御装置は、前記不要な計測データが除去された前記計測データに基づき、前記移動体の現在位置を特定し、前記移動体の現在位置および現在までの位置に基づき、今後の移動経路を予測し、切り替えが必要な場合は、前記ユーザ端末に対して通信先切替指令を送信することにより、通信先への切替時刻を指示し、前記通信先切替指令には、前記移動体の前方に位置する他の移動体との距離に関する間隔情報が含まれ、前記ユーザ端末は、前記他の移動体との距離を計測し、当該計測した前記他の移動体との距離と前記間隔情報とに基づき、現在の通信先から他の通信先への切り替えの可否を判定する構成とする。
【0039】
これによると、移動体に搭載されたユーザ端末は、自装置で計測した他の移動体との距離を利用することにより、通信先の切り替えを適切に実行することができる。
【0040】
また、第13の発明は、前記制御装置は、前記不要な計測データが除去された前記計測データに基づき、前記移動体の現在位置を特定し、前記移動体の現在位置および現在までの位置に基づき、今後の移動経路を予測し、切り替えが必要な場合は、前記ユーザ端末に対して通信先切替指令を送信することにより、通信先への切替時刻を指示し、前記通信先切替指令には、前記通信装置と前記ユーザ端末との通信距離に関する通信距離情報が含まれ、前記ユーザ端末は、前記通信装置との通信距離を計測し、当該計測した通信距離と前記通信距離情報とに基づき、現在の通信先から他の通信先への切り替えの可否を判定する構成とする。
【0041】
これによると、移動体に搭載されたユーザ端末は、自装置で計測した通信装置(路側機)との通信距離を利用することにより、通信先の切り替えを適切に実行することができる。
【0042】
また、第14の発明は、前記制御装置は、前記不要な計測データが除去された前記計測データに基づき、前記移動体の現在位置を特定し、前記移動体の現在位置および現在までの位置に基づき、今後の移動経路を予測し、切り替えが必要な場合は、前記ユーザ端末に対して通信先切替指令を送信することにより、通信先への切替時刻を指示し、前記通信先切替指令には、前記移動体とその周辺に位置する他の移動体との相対位置に関する相対位置情報が含まれ、前記ユーザ端末は、前記他の移動体の相対位置を計測し、当該計測した相対位置と前記相対位置情報とに基づき、現在の通信先から他の通信先への切り替えの可否を判定する構成とする。
【0043】
これによると、移動体に搭載されたユーザ端末は、自装置で計測した周辺に位置する他の移動体との相対位置することにより、通信先の切り替えを適切に実行することができる。
【0044】
また、第15の発明は、路側機による移動体の検出方法であって、周辺に存在する移動体を含む複数の物体を計測することにより計測データを生成し、前記移動体に搭載されたユーザ端末と通信し、前記ユーザ端末に関する情報を取得し、前記計測データにおいて、前記ユーザ端末に関する情報に基づき前記移動体に関する計測データを区別することにより、前記計測データに含まれる前記移動体以外の前記物体に関する不要な計測データを除去する構成とする。
【0045】
これによると、周辺に存在する複数の物体をセンサによって計測する場合に、それらの物体に含まれる移動体の特定が容易となる。
【0046】
以下、本開示の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0047】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る路側機通信システム1の全体構成図である。
【0048】
路側機通信システム1(システム1と略称する。)は、マクロセル基地局2、スモールセル基地局3、アクセスポイント(又は基地局)4、エッジサーバ5、ネットワーク制御サーバ(NW制御サーバ6と略称する。)、及びユーザ端末7を備える。
【0049】
システム1が適用されるネットワークでは、複数のスモールセル基地局3の通信エリアであるスモールセルエリア11が、マクロセル基地局2の通信エリアであるマクロセルエリア12上にそれぞれ重畳される。
【0050】
マクロセル基地局2は、例えばLTE(Long Term Evolution)などのUHF帯(周波数:300MHz~3GHz)を代表とするより大きなセルを構築しやすい周波数帯を利用して無線通信を行うものである。マクロセル基地局2は、制御信号を伝送するための制御プレーン(CPlane)の基地局となる。また、マクロセル基地局2は、ユーザデータを伝送するためのユーザプレーン(U-Plane)の基地局として使用される場合もある。
【0051】
スモールセル基地局3は、例えば低SHF帯(周波数:3GHz~6GHz)などのマクロセル基地局2よりも高い周波数を利用して無線通信を行うものである。なお、スモールセル基地局3は、高SHF帯(周波数:6GHz~30GHz帯)を利用するものであってもよい。スモールセル基地局3は、ユーザプレーンの基地局として使用される。
【0052】
アクセスポイント4は、例えば、Wi-Fi(登録商標)による比較的小容量の無線通信や、WiGig(登録商標)による比較的大容量の無線LAN通信を行うものである。アクセスポイント4の通信エリア13は、スモールセルエリア11及びマクロセルエリア12の少なくとも一方に重畳される。
【0053】
ただし、アクセスポイント4は、スモールセル基地局3よりも高い周波数帯を利用して無線通信を行うマイクロセル基地局であってもよい。その場合、アクセスポイント4による無線通信は、5GのNR(New Radio)となる高SHF帯またはEHF帯(ここでは、28GHz帯、40GHz帯、及び70GHz帯など)を利用して行うことができる。また、複数のアクセスポイント4には、そのようなマイクロセル基地局と、無線LAN通信を行う基地局とが共に含まれてもよい。アクセスポイント4としてマイクロセル基地局が用いられる場合、通信エリア13は、マイクロセル基地局の通信エリアであるマイクロセルに相当する。
【0054】
システム1では、複数のRAT(無線通信方式)が混在する通信環境、いわゆるヘテロジーニアスネットワークが構成される。マクロセル基地局2、スモールセル基地局3、及び一部のアクセスポイント4は、コアネットワーク15及びインターネット16からなる有線ネットワークに有線接続されている。コアネットワーク15には、LTEのコアネットワークに相当するEPC(Evolved Packet Core)を構成するMME(Mobility Management Entity)、S-GW(Serving Gateway)、及びP-GW(Packet data network Gateway)や5Gのコアネットワークに相当する5GC(5G Core network)を構成するAMF(Access and Mobility Management Function)、及びUPF(User Plane Function)などが含まれる。また、システム1において、マクロセル基地局2、スモールセル基地局3、アクセスポイント4、エッジサーバ5、NW制御サーバ6、及びユーザ端末7の数や配置は適宜変更することが可能である。
【0055】
エッジサーバ5は、移動するユーザ端末7と物理的に近い位置において、ユーザ端末7に提供するサービスとして種々のアプリケーション(プログラム)を実行する。各エッジサーバ5の配置には、特に制限はないが、ここではアクセスポイント4のいずれかに接続される。
【0056】
NW制御サーバ6(ネットワーク制御装置)は、システム1が適用されたネットワークにおけるエッジサーバ5とユーザ端末7との通信に用いられる通信経路を制御する。NW制御サーバ6は、コアネットワーク15に接続される。ただし、NW制御サーバ6は、コアネットワーク15の一部を構成してもよいし、インターネット16に接続されてもよい。
【0057】
ユーザ端末7は、各ユーザ(図示せず)によって携帯されるスマートフォンやタブレット端末などの無線通信機能を有する情報機器である。ユーザ端末7は、マクロセル基地局2、スモールセル基地局3、及びアクセスポイント4にそれぞれ無線接続することができる。また、ユーザ端末7は、それらマクロセル基地局2、スモールセル基地局3、及びアクセスポイント4を介してエッジサーバ5と通信することにより、エッジサーバ5のアプリケーションを利用することができる。また、ユーザ端末7は、コアネットワーク15及びインターネット16からなる有線ネットワークを介して任意のサーバ(図示せず)と通信することにより、当該サーバのアプリケーションを利用することもできる。
【0058】
図2は、NW制御サーバ6によるユーザ端末7とエッジサーバ5との通信経路の制御の一例を示す説明図である。図2(A)は、従来の通信経路(比較例)であり、図2(B)は、NW制御サーバ6によって構築された通信経路である。
【0059】
図2では、有線ネットワークの接続点18を起点としてツリー状またはメッシュ状に複数のアクセスポイント4が配置されている。各アクセスポイント4は、無線通信によって相互に接続されることにより、バックホールを形成する。なお、図2では、アクセスポイント4を相互に区別するために符号AP1-AP12が付されている。
【0060】
図2(A)では、ユーザ端末7とエッジサーバ5との通信において、無線品質を基準にアクセスポイントが選択される例が示されている。この場合、ユーザ端末7は、最も高い無線品質を得られる近隣のアクセスポイントAP1を接続先として選択するため、結果として、より多くのアクセスポイントAP1-AP9を介してエッジサーバ5と通信を行う必要が生じる。図2(A)では、ユーザ端末7とエッジサーバ5との通信経路R1には、各アクセスポイントを有線ネットワークの接続点18に接続するためのバックホールを利用することになる。
【0061】
これに対し、図2(B)では、エッジサーバ5が接続されたアクセスポイントAP9を含む複数のアクセスポイントAP9-AP12がグループ化される(図中の破線の円を参照)。また、NW制御サーバ6は、それらグループ化されたアクセスポイントAP9-AP12によって無線通信経路R2、R3を形成する。さらに、NW制御サーバ6は無線通信経路R2、R3を優先的に利用するようアクセス回線の接続先優先度を決定しユーザ端末7に提供する。これにより、ユーザ端末7は、アクセスポイントAP10またはAP11を接続先として選択し、無線通信経路R2、R3を利用してエッジサーバ5と通信することが可能となる。
【0062】
図3は、アクセスポイント4の概略構成を示すブロック図である。
【0063】
本実施形態では、アクセスポイント4は道路のわき(路側)や交差点に設置された路側機を構成する。ただし、アクセスポイント4は実質的に路側機を構成すればよく、例えば、既設の路側機およびそれと協働する通信装置から構成されてもよい。
【0064】
アクセスポイント4は、指向性通信部21、バックホール通信部22、有線通信部23、記憶部24、センシング部25、及び制御部26を備える。
【0065】
指向性通信部21(通信装置の一例)は、ユーザ端末7と無線通信を行うための通信回路を備える。また、指向性通信部21は、特定方向のみの電波を送受信可能な指向性のアンテナ27を備える。アンテナ27の指向性は、道路を走行する自動車等の移動体(移動体に搭載された通信装置)との通信を容易とするべく、アクセスポイント4の位置を基点として道路が存在する方向の感度を高めるように設定される。指向性通信部21は、例えば、ビームフォーミング技術に基づき送信ビームを形成することにより特定方向の電波強度を高めることができる。なお、指向性通信部21は、ユーザ端末の移動(すなわち、移動体の移動)に応じて、特定方向(すなわち、送信ビームの方向)を変更することもできる。指向性通信部21は、制御部26と共にユーザ端末7と無線通信を行うための通信装置として機能し得る。
【0066】
バックホール通信部22は、周辺のアクセスポイント4と無線通信を行うためのアンテナや回路を備える。これにより、複数のアクセスポイント4によるマルチホップ通信が行われ、ユーザ端末7とエッジサーバ5との通信に用いられる無線通信経路が形成される。
【0067】
有線通信部23は、コアネットワーク15との有線通信を行うための通信回路を備える。ただし、有線通信部23は、必ずしも全てのアクセスポイント4に設けられる必要はなく、有線ネットワークの近隣のアクセスポイント4に必要に応じて設けられる。
【0068】
記憶部24は、ユーザ端末7に関する情報、周辺にあるマクロセル基地局2、スモールセル基地局3、及び他のアクセスポイント4に関する情報、並びに制御部26を構成するプロセッサで実行されるプログラムなどを記憶する。また、記憶部24は、ユーザ端末7が搭載された移動体に関する情報や、アクセスポイント4とユーザ端末7との通信に関する通信情報を記憶することもできる。
【0069】
記憶部24は更に、通信品質マップを記憶している。通信品質マップは、アクセスポイント4の通信可能領域内の各地点における通信相手(ここでは、ユーザ端末7)との無線通信の品質を示す。通信品質マップは、例えば、3次元上の各地点に対して、アクセスポイント4から放出される無線信号の強度が対応づけられたデータ群であってよい。また、通信品質マップは、各地点における無線信号の強度のヒートマップとして可視化され得る。通信品質マップは、アクセスポイント4の設置前や、アクセスポイント4の設置直後に、アクセスポイント4の周辺に物体(物標)がない状況下で、3次元の電磁界シミュレーションや、電磁波強度の測定などを行うことによって得られたものでもよい。
【0070】
センシング部25(センサの一例)は、アクセスポイント4の周辺に存在する複数の物体を計測することにより計測データ(例えば、各物体における各計測点までの距離や方向)を生成するセンサを備える。センサとしては、LIDAR(Light Detection and Ranging、或いはLaser Imaging Detection and Ranging)技術に基づく光学式のセンサを用いることができる。センシング部25によって生成される計測データには、各物体における複数の計測点に対応する3次元の点群データが含まれる。なお、センサとしては、LIDAR技術に基づくセンサに限らず、例えばミリ波レーダや、ステレオカメラ、ソナーなどが単独または複数組み合わされて用いられてもよい。なお、センシング部25は、装置(物理的要素)としては、アクセスポイント4における他の構成要素とは別体として設けられてもよい。
【0071】
制御部26(制御装置の一例)は、無線品質測定部31、位置情報取得部32、経路接続部33、無線制御部34、有線制御部35、測距部36、周辺物体同定部37、通信品質マップ生成部38、計測データ除去部39、及び通信切替指示部40を備える。
【0072】
無線品質測定部31は、他の周辺のアクセスポイント4との無線通信の品質を受信信号強度などの公知の指標に基づき測定する。また、無線品質測定部31は、無線通信の品質の測定結果に基づき無線品質情報を生成する。
【0073】
位置情報取得部32は、自身(アクセスポイント4)の位置情報を取得する。位置情報取得部32は、自装置の位置を適宜測定することにより位置情報を取得するか、記憶部24等に予め記憶された位置情報を用いることができる。
【0074】
経路接続部33は、エッジサーバ5から受信する経路確立指示に基づき、ユーザ端末7とエッジサーバ5との通信に用いられる通信経路を確立する。経路接続部33は、そのような通信経路の確立にあたり、バックホール通信部22による無線通信を制御することにより、周辺のアクセスポイントとのマルチホップ通信を実現する。
【0075】
無線制御部34は、指向性通信部21によるユーザ端末7との無線通信を制御する。無線制御部34は、アクセスポイント4とユーザ端末7との間の通信を確立及び保持するための処理を行う。また、無線制御部34は、ユーザ端末7との通信を確立する際に、ユーザ端末との通信に関する通信情報を取得することができる。通信情報(ユーザ端末7に関する情報の一例)には、ユーザ端末7との通信によってアクセスポイント4で計測または取得した情報が含まれる。そのような情報には、ユーザ端末7からの電波の受信信号強度や、ユーザ端末の端末ID(識別情報の一例)や、ユーザ端末7の位置情報、ユーザ端末7との距離、角度などが含まれる。それらの情報は、アクセスポイント4において単独でまたは2以上が組み合わせて用いられる。
【0076】
有線制御部35は、有線通信部23による通信を制御する。また、有線制御部35は、有線ネットワークにおける通信制御装置や、周辺にあるマクロセル基地局2やスモールセル基地局3との有線通信により、ユーザ端末7の接続先などに関する情報を交換することができる。
【0077】
測距部36は、指向性通信部21と通信するユーザ端末7の位置(アクセスポイント4からユーザ端末7までの距離や、アクセスポイント4を基点としたユーザ端末7の方向を含む)を推定する。測距部36は、例えば、アクセスポイント4の送信ビームの方向とユーザ端末7との制御信号の往復転送時間に基づき、ユーザ端末7の位置を推定することができる。これにより、測距部36は、その推定したユーザ端末7の位置に基づき、ユーザ端末7の位置情報を生成する。ユーザ端末7の位置情報は、移動体(すなわち、移動体に搭載されたユーザ端末7)の移動にともない適宜更新される。なお、測距部36は、アクセスポイント4の周辺に位置する他のアクセスポイント4におけるユーザ端末7からの電波の受信信号強度の情報を取得することにより、各アクセスポイントの位置とそれに対応する受信信号強度とに基づきユーザ端末7の位置を推定してもよい。また、ユーザ端末7の位置情報としては、アクセスポイント4の送信ビームの方向のみの情報だけであってもよく、あるいはユーザ端末7との制御信号の往復転送時間に基づいて測定された距離情報だけであってもよい。
【0078】
周辺物体同定部37は、センシング部25によって取得された計測データに基づいて、アクセスポイント4周辺の物体(物標)の位置や外形を取得する。また、周辺物体同定部37は、後述する計測データ除去部39によって不要な計測データ(すなわち、移動体以外の物体に関する計測データ)が除去された計測データから移動体の位置(例えば、代表点の座標)を特定することができる。周辺物体同定部37は、取得したアクセスポイント4周辺の移動体(物標)の位置や外形を、移動体の移動履歴(移動体に搭載されたユーザ端末7の移動履歴にも相当)として、記憶部24に記憶する。
【0079】
周辺物体同定部37は、更に、記憶部24に記憶された移動体の移動履歴に基づき、移動体の速度、加速度等を算出し、所定時間先までの各時刻における、アクセスポイント4周辺の移動体の位置(以下、推定位置)や外形(すなわち、各移動体の将来の経路)を推定する。
【0080】
通信品質マップ生成部38は、周辺物体同定部37によって取得されたアクセスポイント4の周辺に位置する物体の位置や外形に基づいて、通信品質マップを補正することにより、更新された通信品質マップ(以下、更新通信品質マップ)を生成する。また、本実施形態では、更新通信品質として、周辺物体同定部37によって推定される物体の位置や外形に基づき、将来における通信品質マップを生成可能に構成されている。
【0081】
例えば、通信品質マップ生成部38は、周辺物体同定部37によって同定された物体の位置と外形とに基づき、アクセスポイント4及びユーザ端末7の間で送受信される電波が遮蔽される遮蔽領域Z(図8図9を参照)を取得する。通信品質マップ生成部38は、それぞれの通信品質マップのうち、遮蔽領域Zに対応する部分の無線品質を低下させて、それぞれの更新通信品質マップを生成するとよい。
【0082】
図8(A)及び図9(A)に示すように、初期の通信品質マップは、アクセスポイント4とユーザ端末7との通信品質を示す3次元のマップである。この初期の通信品質マップでは、アクセスポイント4の周辺に存在する物体(少なくとも移動体)の影響は考慮されていない。従って、初期の通信品質マップは、アクセスポイント4が設置されたときに取得される。一方、図8(C)及び図9(C)に示すように、更新通信品質マップは、アクセスポイント4の周辺に位置する物体の位置や外形に基づいて、遮蔽領域Zに対応する部分を補正することにより得られる通信品質を示す3次元のマップであり、物体の移動に伴って変更される。
【0083】
本実施形態では、通信品質マップ生成部38は、周辺物体同定部37によって取得されたアクセスポイント4の周辺に位置する物体(特に、移動体)の将来の位置及びその外形に基づき、将来における各時刻の更新通信品質マップを生成することができる。通信品質マップ生成部38は、将来における各時刻の更新通信品質マップを記憶部24に記憶させることができる。
【0084】
計測データ除去部39は、センシング部25が取得した計測データにおいて、アクセスポイント4と通信を行う移動体以外の物体に関する不要な計測データを除去(すなわち、処理対象から除外)する。計測データ除去部39は、アクセスポイント4(指向性通信部21)とユーザ端末7との通信に関する通信情報に基づき不要な計測データを除去することができる。また、計測データ除去部39は、不動点群除去部39Aおよび指向性通信情報除去部39Bを有する。
【0085】
不動点群除去部39Aは、センシング部25が取得した計測データに基づいて静止物体(建物、樹木など)に関する計測データを不要な計測データとして除去する。例えば、不動点群除去部39Aは、移動体が存在しない計測データを予め基準データとして取得しておくことにより、その基準データとの比較により、静止物体に関する計測データを抽出することができる。静止物体に関する計測データが除去された計測データには、移動体(静止していないと判断された物体は全て移動体とみなされる)に関する計測データのみが含まれる。
【0086】
指向性通信情報除去部39Bは、ユーザ端末7の端末ID(識別情報の一例)と、測距部36によって生成されたユーザ端末7の位置情報とに基づき、アクセスポイント4の通信相手(ここでは、ユーザ端末7を搭載した移動体)以外の計測データを不要な計測データとして除去する。ユーザ端末7の位置情報には、例えば、アクセスポイント4からユーザ端末までの距離とアクセスポイント4を基点としてユーザ端末7が位置する方向に関する情報のうち両方あるいはどちらか一方の情報が含まれる。指向性通信情報除去部39Bは、ユーザ端末7の識別情報や位置情報などに基づき、ユーザ端末7が搭載された移動体に関する計測データを、移動体以外の物体に関する計測データと区別する(すなわち、ターゲットの移動体に関する計測データのみを抽出する)ことにより、それ以外の不要な計測データを除去することができる。
【0087】
例えば、指向性通信情報除去部39Bは、測距部36によって生成された位置情報に基づき、ユーザ端末7の位置座標(ユーザ端末7の代表点の座標)を取得し、その位置座標から所定の距離範囲内の計測点をユーザ端末7(またはユーザ端末7が搭載された移動体)に関する計測データとして抽出することができる。これにより、ユーザ端末7が搭載された移動体に関する計測データは、移動体以外の物体に関する計測データと区別される。そして、指向性通信情報除去部39Bは、それら抽出した計測データ以外の計測データを不要な計測データとして除去することができる。なお、アクセスポイント4が複数のユーザ端末7と同時に通信を行う場合には、個々の通信ごとに同様の除去を実施することにより、それら複数のユーザ端末7に関する計測データ以外の計測データが除去される。
【0088】
通信切替指示部40は、ユーザ端末7の将来の経路(所定の複数の予測時刻に対応する複数の到達地点を含む)を予測し、アクセスポイント4とユーザ端末7との通信品質より、他のアクセスポイント4の方が良好となる位置にユーザ端末7が到達するか否かを判定し、他のアクセスポイント4の方が良好となる位置に到達すると予測された場合には、ユーザ端末7に対して、到達予測時刻(あるいはその時刻より少し前の時刻)とともに通信先の切り替え(すなわち、他のアクセスポイント4へのハンドオーバ)を指示する。この切替指示には、通信品質が最も良好となるアクセスポイント4に係る情報(例えば、アクセスポイントID)が含まれているとよい。一方で、通信切替指示部40は、各予測時刻における接続中のアクセスポイント4との通信品質に加え、通信先(ハンドオーバ先)の候補となる周辺のアクセスポイント4との通信品質を考慮し、ユーザ端末7の将来の経路が、良好でなくなる位置に到達すると推定された場合には、ユーザ端末7に対して、到達予測時刻(あるいはその時刻より少し前の時刻)とともに広域通信への切り替え(すなわち、マクロセル基地局2またはスモールセル基地局3への通信接続)を指示する。
【0089】
通信切替指示部40は、例えば、更新通信品質マップを用いて、周辺物体同定部37によって特定された移動体の推定位置(推定経路上の全ての位置)におけるユーザ端末7と自身との通信で用いられる電波の強度(通信品質)を推定する。通信切替指示部40は、推定された電波の強度が所定の閾値以上(通信品質が通信閾値以上と記載する)であるときには、ユーザ端末7は通信品質が良好な推定位置にあると判定することができる。通信切替指示部40は、通信品質が良好でなくなる位置にユーザ端末7が到達するか否かを、ユーザ端末7と、通信品質が最も良好となるアクセスポイント4との通信で用いられる電波の強度が所定の電波閾値以下になるか否かに基づいて判定してもよい。
【0090】
通信切替指示部40は、隣接する他のアクセスポイント4(同様の機能を有する周辺のアクセスポイント4)から当該他のアクセスポイント4の更新通信品質マップを適宜取得することができる。隣接するアクセスポイント4の更新通信品質マップの取得は、通信切替指示部40が、隣接するアクセスポイント4に対して、ユーザ端末7の将来の経路(各予測時刻)に対応する更新通信品質マップを要求し、隣接するアクセスポイント4が対応する更新通信品質マップを送信することによって行われてもよい。また、隣接する他のアクセスポイント4の更新通信品質マップの取得は、他のアクセスポイント4が、所定時間ごとに取得した更新通信品質マップを、通信切替指示部40に対して定期的に送信することによって行われてもよい。すなわち、更新通信品質マップの取得は、隣接するアクセスポイント4同士で、更新通信品質マップが相互に送信(交換)されることによって、行われてもよい。
【0091】
通信切替指示部40は、所定時間後までの各時刻のユーザ端末7の位置と、自装置としてのアクセスポイント4の更新通信品質マップと、隣接するアクセスポイント4の更新通信品質マップとに基づき、各予測時刻におけるユーザ端末7との通信品質が最も良好となるアクセスポイント4を通信先(ハンドオーバ先)の候補として抽出する。ただし、自装置としてのアクセスポイント4の通信品質が最も良好となる場合には、所定時間が経過するまではそのまま通信が継続される。
【0092】
なお、上述の制御部26における各部の機能の少なくとも一部は、1以上のプロセッサが所定の制御プログラムを実行することにより実現可能である。
【0093】
図4は、エッジサーバ5の概略構成を示すブロック図である。
【0094】
エッジサーバ5は、通信部41、記憶部42、及び制御部43を備える。
【0095】
通信部41は、自装置が接続されたアクセスポイント4と通信を行うための通信回路を備える。
【0096】
記憶部42は、ユーザ端末7に関する情報、周辺にあるマクロセル基地局2、スモールセル基地局3、及びアクセスポイント4に関する情報、並びに制御部43を構成するプロセッサで実行されるプログラムなどを記憶する。
【0097】
制御部43は、経路確立指示部45、トラフィック情報収集部46、アクセスポイント動作指示部47、通信制御部48、及びアプリケーション部49を備える。
【0098】
経路確立指示部45は、NW制御サーバ6から受信する情報に基づき、アクセスポイント4に通信経路を確立させるための経路確立指示を送信する。
【0099】
トラフィック情報収集部46は、ユーザ端末7とエッジサーバ5との通信に関し、無線通信経路を形成する各アクセスポイント4間のトラフィックの情報を収集する。なお、トラフィック情報収集部46は、適宜省略されてもよい。
【0100】
アクセスポイント動作指示部47は、NW制御サーバ6から受信する情報に基づき、アクセスポイント4に対して動作指示を送信する。そのような動作指示には、アクセスポイント4に対する起動または停止の指示が含まれる。なお、アクセスポイント動作指示部47は、適宜省略されてもよい。
【0101】
通信制御部48は、通信部41による通信を制御する。また、通信制御部48は、周辺のアクセスポイント4やユーザ端末7と必要な情報を交換する。
【0102】
アプリケーション部49は、ユーザ端末7へのサービス内容に応じて種々のアプリケーションを実行する。アプリケーションによる処理には、例えば、スマート工場に設置されたセンサの出力(検出結果)の格納または提供や、交差点などの交通映像その他の検出情報の格納または提供などが含まれる。
【0103】
なお、上述の制御部43における各部の機能の少なくとも一部は、1以上のプロセッサが所定の制御プログラムを実行することにより実現可能である。
【0104】
図5は、NW制御サーバ6の概略構成を示すブロック図である。
【0105】
NW制御サーバ6は、通信部51、記憶部52、及び制御部53を備える。
【0106】
通信部51は、コアネットワーク15を介してエッジサーバ5やユーザ端末7と通信を行うための通信回路を備える。
【0107】
記憶部52は、ユーザ端末7に関する情報、周辺にあるマクロセル基地局2、スモールセル基地局3、及びアクセスポイント4に関する情報、並びに制御部53を構成するプロセッサで実行されるプログラムなどを記憶する。
【0108】
制御部53は、情報収集部61、グループ化部62、経路設定部63、トラフィック分析部64、接続先優先度設定部65、サービスエリア設定部66、エッジサーバ動作制御部67、アクセスポイント動作制御部68、及び通信制御部69を備える。
【0109】
情報収集部61は、各アクセスポイント4から周辺機器情報を収集する。この周辺機器情報には、各アクセスポイント4間の無線通信の品質に関する無線品質情報、各アクセスポイント4の位置情報、及び各アクセスポイント4に接続されたエッジサーバ5の有無に関するエッジサーバ情報が含まれる。
【0110】
グループ化部62は、収集された周辺機器情報に基づき、管理下にある複数のアクセスポイント4から、特定のエリアでネットワークを構成するアクセスポイント4を抽出し、それらをグループ化する。これにより、少なくとも1組以上のアクセスポイント4のグループが生成される。「特定のエリア」には、例えば、スマート工場内や、交差点を含む所定領域などが含まれる。なお、アクセスポイント4のグループの少なくとも一部は、オペレータによって設定されてもよい。また、グループ化部62は、後述するトラフィック分析部64によるトラフィックの分析結果に基づき、既存のアクセスポイント4のグループを再構成することができる。なお、本実施形態では、各アクセスポイント4は、それぞれ対応する路側機を構成し得る。
【0111】
経路設定部63は、ユーザ端末7とエッジサーバ5との通信に用いられる1以上の無線通信経路を設定する。そのような無線通信経路は、グループ化されたアクセスポイント4のマルチホップ通信によって形成される。なお、そのような無線通信経路の少なくとも一部は、オペレータによって設定されてもよい。
【0112】
トラフィック分析部64は、ユーザ端末7とエッジサーバ5との通信に用いられた無線通信経路におけるトラフィック情報をエッジサーバ5から順次取得する。それらの取得されたトラフィック情報は記憶部52に蓄積される。また、トラフィック分析部64は、蓄積されたトラフィック情報に基づき、例えば経路設定部63によって設定された無線通信経路のトラフィックの分布を予測するなどのトラフィックの分析を行う。トラフィック分析部64は、対象のグループに含まれないグループ外のアクセスポイント4を用いる迂回経路の検出を行うこともできる。
【0113】
接続先優先度設定部65は、ユーザ端末7が利用するエッジサーバ5のサービスの種別に応じて、ユーザ端末7の接続先の候補の優先度を設定する。また、接続先優先度設定部65は、設定した接続先の候補の優先度に基づき接続先優先度情報を生成する。ユーザ端末7の接続先の候補は、通常はアクセスポイント4のいずれかであるが、必要に応じてマクロセル基地局2やスモールセル基地局3が接続先の候補となり得る。また、接続先優先度情報には、接続先の候補の優先順位が含まれる。これに限らず、接続先優先度情報には、例えば、接続先の候補の優先順位を決定するための基準(ルール)に関する情報が含まれてもよい。
【0114】
サービスエリア設定部66は、各アクセスポイント4からの周辺機器情報に基づき、それらのサービスエリア(通信エリアの範囲)を設定する。そのようなサービスエリアは、ユーザ端末7が利用するエッジサーバ5のサービスの種別に応じて設定される。また、サービスエリア設定部66は、設定したサービスエリアの範囲に関するサービスエリア情報を生成する。なお、サービスエリア情報の少なくとも一部は、オペレータによって設定されてもよい。
【0115】
エッジサーバ動作制御部67は、エッジサーバ5におけるアプリケーションの起動などを含めエッジサーバ5の動作を制御する。
【0116】
アクセスポイント動作制御部68は、アクセスポイント4の起動および停止を含めアクセスポイント4の動作を制御する。
【0117】
通信制御部69は、通信部51による通信を制御する。また、通信制御部69は、周辺のアクセスポイント4、エッジサーバ5、及びユーザ端末7と必要な情報を交換することができる。
【0118】
なお、上述の制御部53における各部の機能の少なくとも一部は、1以上のプロセッサが所定の制御プログラムを実行することにより実現可能である。
【0119】
図6は、ユーザ端末7の概略構成を示すブロック図である。
【0120】
本実施形態では、ユーザ端末7は、移動体(ここでは、自動車)に搭載される端末装置である。ユーザ端末7は、例えば、自動車に設けられた車載器によって構成され得る。また、ユーザ端末7は、自動車のユーザ(運転者や乗員)によって携帯される携帯型のコンピュータであってもよい。
【0121】
ユーザ端末7は、無線通信部71、記憶部72、及び制御部74を備える。
【0122】
無線通信部71は、マクロセル・スモールセル通信部71A、前方指向性通信部71B、及び後方指向性通信部71Cを備える。
【0123】
マクロセル・スモールセル通信部71Aは、マクロセル基地局2またはスモールセル基地局3と無線通信を行うためのアンテナや通信回路を備える。
【0124】
前方指向性通信部71Bは、前方(すなわち、自動車の移動方向)に位置するアクセスポイント4との通信を容易とするべく、前方の電波を送受信可能な指向性のアンテナ及び通信回路を備える。
【0125】
後方指向性通信部71Cは、後方(すなわち、自動車の移動方向とは逆の方向)に位置するアクセスポイント4との通信を容易とするべく、後方の電波を送受信可能な指向性のアンテナ及び通信回路を備える。
【0126】
記憶部72は、自装置に関する情報、周辺にあるマクロセル基地局2、スモールセル基地局3、及びアクセスポイント4に関する情報、並びに制御部74を構成するプロセッサで実行されるプログラムなどを記憶する。
【0127】
制御部74は、接続先選択部81、アプリケーション部82、及び無線制御部83を備える。
【0128】
接続先選択部81は、NW制御サーバ6から受信するグループ化情報、接続先優先度情報、及びサービスエリア情報に基づき、アクセスポイント4等の接続先を選択する。これにより、ユーザ端末7は、その選択された接続先及びそれを含む無線通信経路を介してエッジサーバ5と通信可能である。
【0129】
アプリケーション部82は、ユーザ端末7で実行されるアプリケーションの内容に応じた処理を実行し、無線通信部71を介してエッジサーバ5との間でアプリケーションデータを送受信する。
【0130】
無線制御部83は、無線通信部71によるアクセスポイント4との無線通信や、マクロセル基地局2及びスモールセル基地局3との無線通信を制御する。
【0131】
なお、上述の制御部74における各部の機能の少なくとも一部は、1以上のプロセッサが所定の制御プログラムを実行することにより実現可能である。
【0132】
図7は、第1実施形態に係る通信の切替処理の流れを示すフロー図である。切替処理では、アクセスポイント4aからの指示によってユーザ端末7の通信先の切り替えが実行される。切替処理は、制御部26(プロセッサ)が所定のプログラム(切替プログラム)を実行することによって実現される。図8(A)は、通信品質マップの水平方向断面図の例である。図8(B)は、センシング部25によって取得された物体の位置や外形を示している。図8(C)は図8(A)の通信品質マップを、センシング部25の計測結果を考慮して補正することによって得られた最新通信の品質マップの水平方向断面図の例である。図9(A)は、通信品質マップの鉛直方向断面図の例である。図9(B)は、センシング部25によって取得された物体の位置や外形を示している。図9(C)は図9(A)の通信品質マップを、センシング部25の計測結果を考慮して補正することによって得られた更新通信品質マップの鉛直方向断面図の例である。図10は、センシング部25の計測によって得られた点群データの一例を示す説明図である。図11(A)は、2つのアクセスポイント4a、4bの各々対応する通信品質マップを示す説明図である。図11(B)は、2つのアクセスポイント4a、4bに対する自動車V3の位置と通信品質との関係を示す説明図である。
【0133】
図7に示す切替処理において、まず、ユーザ端末7は、アクセスポイント4に対して接続要求を送信する(ST100)。アクセスポイント4aは、ユーザ端末7から接続要求を受信し、ユーザ端末7との間の通信の接続を確立する(ST101)。このとき、アクセスポイント4aは、接続要求を送信したユーザ端末7からその端末のIDを取得することができる。図7では、切替処理を実行する(すなわち、接続中の)アクセスポイント4aと、それに隣接する(すなわち、ユーザ端末7の通信先の候補となる)1つのアクセスポイント4bとが存在する場合について説明する。ただし、アクセスポイント4aの周辺には、隣接する他のアクセスポイントが更に存在してもよい。
【0134】
次に、制御部26は、記憶部24に記憶された通信品質マップを取得する(ST102)。この通信品質マップには、ユーザ端末7の将来の経路(すなわち、各予測時刻)に対応する更新通信品質マップを生成するためのもとになる情報が含まれる。また、この通信品質マップには、切替処理を実行するアクセスポイント4aの通信品質マップに加え、隣接する他のアクセスポイント4bから取得した更新通信品質マップも含まれる。図8(A)及び図9(A)には、切替処理を実行するアクセスポイント4a(すなわち、自装置としてのアクセスポイント)の通信品質マップの例が示されている。図8(A)及び図9(A)では、通信品質マップは、通信品質が高くなるにつれて色が濃くなるヒートマップとして示されている。なお、他のアクセスポイント4bの更新通信品質マップについてもアクセスポイント4aと同様に設定される。
【0135】
次に、制御部26は、センシング部25によるセンシングを行い、アクセスポイント4a周辺の物体を検出する(ST103)。図8および図9では、道路わきに設置されたアクセスポイント4aの周辺に存在する物体として、自動車V1-V3および建物B1(静止物体の一例)が示されている。
【0136】
本実施形態では、センシング部25は、各物体の各計測点に関する距離、位置、及び反射強度などに基づき点群データを取得する。点群データは、例えば、図10に示すように、各物体における複数の計測点に対応する複数の点からなる点群データとして得られる。なお、図10中では、点群は各物体に重ねた×印で示されている。センシング部の測定可能領域(測定可能空間)は、指向性通信部21の通信可能領域(通信可能空間)をカバーするように設定される。その後、制御部26は点群データを公知の手法によって解析することによって、各物体を検出し、それぞれの物体のおおよその位置や外形を取得する。
【0137】
なお、センシング部25は、センサの計測可能領域における所定の領域以外に位置する物体に関する計測データを不要な計測データとして除去することもできる。そのような所定の領域は、例えば、図10に示すように、アクセスポイント4a(センサ)の位置を始点として互いに異なる方向に延びる2本の境界線L1、L2に挟まれた領域(より厳密には図面に垂直な方向を含む空間)として設定することができる。この例では、境界線L1、L2に挟まれた領域の外に位置する自動車V1に関するデータが、不要なデータとして除去され得る。
【0138】
図8(B)及び図9(B)では、センシング部25によって同定されたアクセスポイント4a周辺の物体の外形Yが四角の枠体によって示されている。
【0139】
その後、制御部26はアクセスポイント4aのアンテナ27の位置や向き、その指向性などに基づき、取得した物体の外形を用いて、物体によって遮蔽され、アクセスポイント4aからの電波が届かない影となる遮蔽領域Zを取得する。その後、制御部26は、通信品質マップ(図8(A)及び図9(A))を、遮蔽領域Zに係る情報を用いて補正することによって、更新通信品質マップ(図8(C)及び図9(C))を生成する(ST104)。
【0140】
本実施形態では、制御部26は、通信品質マップにおいて、アクセスポイント4aから送信される電波の物体による遮蔽を考慮する(具体的には、遮蔽領域Z内と、物体の外形Yの内部において、通信品質を低下させる)ことによって、更新通信品質マップを取得する。このように、通信品質マップをセンシング部25による計測結果(取得された計測データ)に基づき補正して更新通信品質マップを構成するため、簡素な手法によって周辺状況に即した無線品質を取得することができる。
【0141】
次に、制御部26は、ステップST103のセンシングによって得られた物体に関する点群データから移動体(ここでは、自動車V1-V3)以外の不要な点群データ(ここでは、建物B1に関する点群データ)を除去する(ST105)。なお、図10では、説明の便宜上、静止物体に関する点群として建物B1に関する点群のみが示されているが、実際には、道路その他の静止物体の点群についても取得され得る。したがって、ステップST105では、建物B1以外の不要な点群データも除去され得る。
【0142】
なお、図7に示す通信の切替処理は、移動体がセンシング部25の計測領域外となるまで繰り返し実行され得る。制御部26は、移動体の位置が変化した(すなわち、移動体が移動した)場合には、更新されたユーザ端末7の位置情報に基づき、移動体に関する点群データを区別(抽出)することにより、不要な点群データを除去することができる。
【0143】
続いて、制御部26は、ステップST105において不要な点群データが除去された点群データから移動体としての自動車V1-V3(すなわち、自動車V1-V3にそれぞれ搭載されたユーザ端末7)の現在位置を特定する。特定された現在位置は、それまでに特定された位置とともに自動車V1-V3の移動履歴として記憶部24に記憶される。さらに、制御部26は自動車V1-V3の移動履歴に基づき、今後の自動車V1-V3がとると思われる経路を推定し、更新品質マップを用いて、その推定された経路上の各自動車V1-V3の全ての位置(すなわち、各予測時刻)について、アクセスポイント4a、4bとの間で良好な通信品質Pが得られるか否かを判定する(ST106)。
【0144】
図8および図9に示されたヒートマップでは、アクセスポイント4aの通信可能領域が符号E1で示され、良好な通信品質の得られる領域が符号E2で示されている。したがって、ステップST106では、自動車V2、V3(すなわち、自動車V2、V3にそれぞれ搭載されたユーザ端末7)は、アクセスポイント4aとの間で現時点では良好な通信品質の得られる位置にあるが、少し後には通信品質が良好でない領域に入ると予測されるため、良好な通信品質が得られなくなる時刻を予測し、その時刻(あるいはそれより少し前の時刻)を切替時刻とする。
【0145】
本実施形態では、制御部26は、ステップST106において、各ユーザ端末7の推定経路上の全ての位置を取得し、それらの位置において、接続中のアクセスポイント4aとのユーザ端末7の通信、及び隣接する他のアクセスポイント4bとのユーザ端末7の通信の少なくとも一方について、更新通信品質マップにおける通信品質が通信閾値以上であるときに、良好な通信品質が得られる位置にユーザ端末7がある(ST106でYes)と判定する。制御部26は、例えば図11(A)、(B)に示すように、自動車V3について、推定された将来の経路上(図11(A)中の二点鎖線を参照)の各地点において、いずれかのアクセスポイント4a、4bにおいて通信閾値以上の通信品質が得られるかを判定する。ここでは、自動車V3の現在位置を点P0とし、点P3に到達するまでを推定された将来の経路とすると、ユーザ端末7は、その推定された将来の経路上の全ての地点において、図11(B)に示すように、アクセスポイント4a、4bの少なくとも一方に対する通信品質が通信閾値以上となっている。
【0146】
そこで、制御部26は、判定対象のユーザ端末7の推定された経路上(すなわち、各予測時刻)の全てにおいて、その接続中のアクセスポイント4aとの通信品質が他のアクセスポイント4bと比べて良好か否かを判定する(ST107)。そこで、接続中のアクセスポイント4aとの通信品質がより良好である場合(ST107でYes)、再びステップST102に戻り、上述の場合と同様の処理が実行される。
【0147】
一方、ステップST107において、判定対象のユーザ端末7が推定された経路上において良好な通信品質が得られなくなる位置または他のアクセスポイント4bの通信品質がより良好となり、アクセスポイント4bへの切り替えが推奨される位置(切替推奨位置)に到達すると推定された場合(ST107でNo)、アクセスポイント4aは、そのユーザ端末7(図11では、自動車V3に搭載されたユーザ端末7)に対して他のアクセスポイント4bへの切り替えを指示する信号(通信先切替指令の一例)を送信する(ST108)。つまり、もしユーザ端末7の通信先の候補の1つである他のアクセスポイント4bとユーザ端末7との間で上記切替推奨位置における通信品質がアクセスポイント4aよりも良好である場合は、ユーザ端末7に対して他のアクセスポイント4bへの切り替え(通信接続)を、上記切替時刻とともに指示する。例えば図11(A)、(B)では、制御部26は、所定時刻のステップST107の処理において、自動車V3(判定対象のユーザ端末7)について、他のアクセスポイント4bよりも良好な通信品質が得られなくなる位置(点P2)に到達すると推定する。これにより、制御部26は、ステップST108において、その予測時刻より少し前の時刻(ここでは、自動車V3が点P1の位置ある時刻に相当)において、自動車V3に搭載されたユーザ端末7に対してアクセスポイント4bへの切り替えを指示する信号送信することができる。
【0148】
その切り替えを指示する信号を受信したユーザ端末7は、ハンドオーバの指示を受けた切り替え先の他のアクセスポイント4bに対して、現在接続中のアクセスポイント4aから通信接続を切り替える(ST111)。これにより、ユーザ端末7によるアクセスポイント4aからアクセスポイント4bへの切り替えが適切に行われる。このとき、アクセスポイント4aのステップST101と同様に、アクセスポイント4bは、ユーザ端末7からハンドオーバの要求(接続要求)を受信し、ユーザ端末7との間で通信の接続を確立する(ST112)。その後は、アクセスポイント4bは、アクセスポイント4aによる上述の一連の処理と同様の処理を実行する。また、このとき、ユーザ端末7は、例えば、後方指向性通信部71Cによって通信が実施される後方(車両後方)のアクセスポイントから、前方指向性通信部71Bによって通信が実施される前方(車両前方)のアクセスポイントに対して通信接続を切り替えることもできる。
【0149】
一方、ステップST106において、アクセスポイント4aは、推定経路上において接続中のアクセスポイント4aとの判定対象のユーザ端末7の間の通信において良好な通信品質が得らない位置(切替推奨位置)に到達すると判断され、かつ隣接する他のアクセスポイント4bとの間でも上記切替推奨位置での通信品質が良好でない場合、そのユーザ端末7に対して、上記切替時刻とともに、広域通信への切り替え(RAT切替)を指示する信号(通信先切替指令の一例)を送信する(ST109)。その切り替えを指示する信号を受信したユーザ端末7は、指定された切替時刻までの間にアクセスポイント切り替えのための準備をしておき、指定された切替時刻に現在接続中のアクセスポイント4aから通信先をマクロセル基地局2またはスモールセル基地局3に切り替える(ST110)。これにより、ユーザ端末7がアクセスポイント4aとの通信が確保できなくなる(例えば、ユーザ端末7が他の自動車の遮蔽領域Zに位置することによって電波が遮蔽される)より前に、ユーザ端末7への広域通信への切替指示が行われるため、瞬断をすることなくユーザ端末7の外部への通信が確保できなくなることを防止することができる。
【0150】
なお、自動車V3が点P3に到達した場合、アクセスポイント4aの通信品質は通信閾値以下となるため、その周辺に切り替え可能なアクセスポイントが存在しない場合には、事前に広域通信への切り替えが必要となる。ただし、図11に示す例では、アクセスポイント4bへの切り替えが行われるため、ユーザ端末7は広域通信に切り替えることなくアクセスポイント4bを介してより高い周波数帯を利用した通信を継続することができる。
【0151】
ユーザ端末7は、通信先がアクセスポイント4bに切り替わった後は、アクセスポイント4bでは、点Qにおいて、接続中のアクセスポイント4aとの判定対象のユーザ端末7の間の通信において切替推奨位置に到達すると判断され、かつ隣接する他のアクセスポイントとの間でもユーザ端末7はその切替推奨位置での通信品質が良好でない(ここでは、他のアクセスポイントが存在しない)と判断されるため、点Qに到達する少し前の時刻において、そのユーザ端末7に対して、切替時刻とともに、広域通信への切り替えを指示する信号が送信される。
【0152】
このように、制御部26は、アクセスポイント4aの周辺状況に基づき、補正された更新通信品質マップを用いて通信切替の要否を判定する。アクセスポイント4aの周辺に物体が存在し、無線信号が遮蔽される領域が動的に変化する状況であっても、その状況に即した通信切替が可能となる。
【0153】
(第2実施形態)
図12は、第2実施形態に係る路側機通信システム1におけるアクセスポイント4の概略構成を示すブロック図である。図12では、図3に示した第1実施形態に係るアクセスポイント4と同様の構成要素については、同一の符号が付されている。第2実施形態において、以下で特に言及しない事項については、第1実施形態の場合と同様であるため詳細な説明を省略する。
【0154】
図12に示すように、第2実施形態に係るアクセスポイント4は、制御部26において計測データ分割部141を有する。計測データ分割部141は、センシング部25によって取得され、かつ計測データ除去部39によって不要な計測データ(ここでは、点群データ)が除去された一群をなす点群データについて、各移動体に対応するように分割する処理を行うことが可能である。より詳細には、計測データ分割部141は、得られた一群をなす点群データが、複数の移動体(ここでは、自動車)に関するものである場合、その一群をなす点群データを移動体の数に分割し、それら分割された点群データの各々を対応する移動体に対応づける。周辺物体同定部37は、その分割された各点群データから各移動体の位置を特定することができる。
【0155】
図13は、第2実施形態に係る通信の切替処理の流れを示すフロー図である。図14は、計測データ分割部141による一群をなす点群の分割処理に関する説明図である。
【0156】
図13に示すように、第2実施形態に係る通信の切替処理では、図7に示したステップST100-ST105とそれぞれ同様のステップST200-ST205が実施される。
【0157】
制御部26(計測データ分割部141)は、ステップST205によって得られた一群をなす(すなわち、一纏になる)点群データが存在する位置について、ユーザ端末7との通信(すなわち、測距部36によるユーザ端末7の位置推定)に基づき複数の移動体(ここでは、端末IDが異なる複数のユーザ端末7)が存在するか否かを判定する(ST206)。そこで、一群をなす点群データの位置に複数の移動体が存在する場合(ST206においてYes)、制御部26は、その一群をなす点群データを移動体の数(ここでは、端末IDの数)に分割し、それら分割された点群データの各々を対応する移動体に対応づける(ST207)。
【0158】
例えば、図14(A)に示すように、一群をなす点群データの位置に複数の自動車V4、V5が存在する場合を考える。この場合、制御部26は、図14(B)に示すように、その一群をなす点群データ150を自動車V4、V5の数(ここでは、自動車V4、V5に搭載されたユーザ端末7の端末IDの数である2つ)に分割し、それら分割された点群データ151、152の各々を対応する自動車V4、V5に対応づけることができる。ここで、制御部は、一群をなす点群データ150に含まれる複数の点の座標が道路に沿って延びるように分布するため、その重心を通りかつ道路の延在方向に直交する分割ラインL3によって点群データ150を分割することができる。なお、一群をなす点群が、道路を並走する2台の自動車に関するものである場合、制御部は、その重心を通りかつ道路と平行に延びる分割ラインによって一群をなす点群データ150を分割することができる。このように、制御部26は、一群をなす点群データ150が複数の移動体(ここでは、自動車V4、V5)に関するものである場合、それら点群データ150および通信情報(移動体に搭載されたユーザ端末7の位置情報など)に基づきそれら複数の移動体の位置関係を判定することができる。
【0159】
制御部26は、上述の図7におけるステップST106と同様に、更新通信品質マップを用いて、その分割された点群データに基づき特定された各ユーザ端末7の予測経路上の全ての位置において、アクセスポイント4a、4bとの間で良好な通信品質の得られる位置にあるか否かを判定する(ST208)。
【0160】
その後、図7に示したステップST107-ST112とそれぞれ同様のステップST209-ST214が実施される。
【0161】
(第3実施形態)
図15は、第3実施形態に係る路側機通信システム1におけるユーザ端末7の概略構成を示すブロック図である。図15では、図6に示した第1実施形態に係るユーザ端末7と同様の構成要素については、同一の符号が付されている。第3実施形態において、以下で特に言及しない事項については、第1実施形態の場合と同様であるため詳細な説明を省略する。
【0162】
図15に示すように、第3実施形態に係るユーザ端末7は、センシング部125を有する。センシング部125は、移動体(その移動体に搭載されたユーザ端末7)の周辺に存在する複数の物体を計測することにより計測データ(例えば、各物体における各計測点までの距離や方向)を生成するセンサを備える。センサとしては、LIDAR技術に基づく光学式のセンサを用いることができる。センシング部125によって生成される計測データには、各物体における複数の計測点に対応する3次元の点群データが含まれる。なお、センサとしては、LIDAR技術に基づくセンサに限らず、例えばミリ波レーダや、ステレオカメラ、ソナーなどが単独または複数組み合わされて用いられてもよい。なお、センシング部125は、装置(物理的要素)としては、ユーザ端末7における他の構成要素とは別体として設けられてもよい。
【0163】
また、無線制御部83は、アクセスポイント4と通信することにより、アクセスポイント4の位置(自装置からアクセスポイント4までの距離や、自装置を基点としたアクセスポイント4の方向を含む)を推定することができる。
【0164】
図16は、第3実施形態に係る通信の切替処理の流れを示すフロー図である。
【0165】
図16に示すように、第3実施形態に係る通信の切替処理では、図7に示したステップST100-ST106とそれぞれ同様のステップST300-ST306が実施される。
【0166】
アクセスポイント4aは、ステップST307において、判定対象のユーザ端末7がその予測経路上の全ての位置において、他のアクセスポイント4bと比べて良好な通信品質が得られなくなる位置に到達すると予測された場合、そのユーザ端末7に対して他のアクセスポイント4bへの切り替えを指示する信号を、切替時刻とともに送信する(ST308)。このとき、他のアクセスポイント4bへの切り替えを指示する信号には、ユーザ端末7が搭載された自動車の前方を走行する他の自動車との距離の情報(間隔情報の一例)が付加される。
【0167】
ユーザ端末7は、アクセスポイント4からの切り替えを指示する信号を受信すると、センシング部125によって計測した前方の自動車の距離と、アクセスポイント4から受信した距離の情報とを比較し、それらの距離が一致するか否か(所定の誤差範囲にあるか否か)を判定する(ST311)。そこで、ユーザ端末7は、それらの距離が一致すると判定した場合(ST311においてYes)、ハンドオーバ先のアクセスポイント4に対して、指定された切替時刻に、現在接続中のアクセスポイント4から通信接続を切り替える(ST312)。アクセスポイント4bは、ユーザ端末7からハンドオーバの要求(接続要求)を受信し、ユーザ端末7との間で通信の接続を確立する(ST313)。一方、ユーザ端末7は、それらの距離が一致しないと判定した場合(ST311においてNo)、ハンドオーバを実行しない。これにより、ユーザ端末7が、他の自動車(他のユーザ端末7)に向けて送信された切り替えを指示する信号を受信した場合でも、誤ったハンドオーバが実行されることを回避できる。
【0168】
例えば、図8に示した自動車V3(それに搭載されたユーザ端末7)に対する他のアクセスポイント4bへの切り替えを指示する信号には、自動車V3とその前方を走行する他の自動車V2(それに搭載されたユーザ端末7)との距離の情報が付加される。これにより、自動車V3に搭載されたユーザ端末7が、自動車V2に搭載されたユーザ端末7に向けて送信された切り替えを指示する信号を受信した場合でも、誤ったハンドオーバが実行されることを回避できる。
【0169】
ステップST309、ST310については、図7に示したステップST109、ST110とそれぞれ同様のステップである。
【0170】
なお、上記ステップST311では、前方の自動車の距離について判定が行われたが、これに限らず、周辺に存在する他の移動体(自動車)との相対距離について判定が行われてもよい。その場合、センシング部125は、他の移動体との相対距離を計測する。また、ステップST308では、他のアクセスポイント4bへの切り替えを指示する信号には、ユーザ端末7が搭載された自動車の周辺に存在する他の移動体との相対距離に関する相対位置情報が付加される。
【0171】
また、上記ステップST311では、ユーザ端末7とアクセスポイント4との通信距離について判定が行われてもよい。その場合、無線制御部83は、アクセスポイント4と通信することにより、アクセスポイント4の位置を推定(計測)する。また、ステップST308では、他のアクセスポイント4bへの切り替えを指示する信号には、ユーザ端末7との通信距離に関する通信距離情報が付加される。
【0172】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施形態にも適用できる。また、上記の実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施形態とすることも可能である。
【0173】
例えば、上記実施形態に示したアクセスポイント4は、ITS(Intelligent Transport Systems)スポットとして利用される既存の路側機としても機能することができる。その場合、アクセスポイント4の構成要素の一部が、既存の路側機とは独立した装置として設けられ、アクセスポイント4が既存の路側機と協働するようにしてもよい。
【0174】
また、アクセスポイント4によって不要な計測データを除去された計測データは、アクセスポイント4とユーザ端末7との通信(具体的には、ユーザ端末7の通信先の切り替え)以外の他の用途に用いられてもよい。また、アクセスポイント4の通信は、必ずしもマルチホップ通信を必須とするものではない。
【0175】
また、路側機通信システム1において、ユーザ端末7が搭載される移動体としては、自動車等の車両に限らず、走行装置を備えたロボットなど任意の移動体であってよい。路側機通信システム1に用いられる移動体としては、アクセスポイント4との通信の遮蔽が生じるような移動体が好適である。
【産業上の利用可能性】
【0176】
本開示に係る路側機、路側機通信システム、及び移動体の検出方法は、周辺に存在する複数の物体をセンサによって計測する場合に、それらの物体に含まれる移動体の特定を容易とする効果を有し、道路周辺に設置される路側機、路側機通信システム、及び移動体の検出方法などとして有用である。
【符号の説明】
【0177】
1 :路側機通信システム
2 :マクロセル基地局
3 :スモールセル基地局
4 :アクセスポイント(基地局)
5 :エッジサーバ
6 :NW制御サーバ
7 :ユーザ端末
11:スモールセルエリア
12:マクロセルエリア
13:通信エリア
15:コアネットワーク
16:インターネット
18:接続点
21:指向性通信部
22:バックホール通信部
23:有線通信部
24:記憶部
25:センシング部
26:制御部(制御装置の一例)
27:アンテナ
31:無線品質測定部
32:位置情報取得部
33:経路接続部
34:無線制御部
35:有線制御部
36:測距部
37:周辺物体同定部
38:通信品質マップ生成部
39:計測データ除去部
39A:不動点群除去部
39B:指向性通信情報除去部
40:通信切替指示部
41:通信部
42:記憶部
43:制御部
51:通信部
52:記憶部
53:制御部
71:無線通信部
71A:マクロセル・スモールセル通信部
71B:前方指向性通信部
71C:後方指向性通信部
72:記憶部
74:制御部
81:接続先選択部
82:アプリケーション部
83:無線制御部
125:センシング部
141:計測データ分割部
150:点群データ
151:点群データ
152:点群データ
B1:建物(静止物体の一例)
L1、L2:境界線
L3:分割ライン
V1-V3:自動車(移動体の一例)
Y :外形
Z :遮蔽領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16