(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034890
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20240306BHJP
H01M 10/0587 20100101ALI20240306BHJP
H01M 10/0525 20100101ALI20240306BHJP
H01M 50/474 20210101ALI20240306BHJP
H01M 50/477 20210101ALI20240306BHJP
H01G 11/52 20130101ALI20240306BHJP
H01G 11/14 20130101ALI20240306BHJP
H01M 50/483 20210101ALN20240306BHJP
H01M 50/486 20210101ALN20240306BHJP
H01M 6/10 20060101ALN20240306BHJP
H01M 6/16 20060101ALN20240306BHJP
【FI】
H01M10/04 W
H01M10/0587
H01M10/0525
H01M50/474
H01M50/477
H01G11/52
H01G11/14
H01M50/483
H01M50/486
H01M6/10 Z
H01M6/16 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139446
(22)【出願日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】島村 治成
【テーマコード(参考)】
5E078
5H021
5H024
5H028
5H029
【Fターム(参考)】
5E078AA11
5E078AB02
5E078AB13
5E078CA11
5E078HA05
5E078HA23
5H021AA02
5H021CC09
5H021EE22
5H021EE32
5H021HH03
5H021HH10
5H024CC06
5H024CC07
5H024CC12
5H024DD10
5H024HH13
5H024HH15
5H028AA05
5H028AA07
5H028BB07
5H028CC07
5H028CC08
5H028CC13
5H028HH05
5H029AJ03
5H029AK03
5H029AL07
5H029AM03
5H029AM07
5H029BJ14
5H029CJ07
5H029DJ04
5H029DJ14
5H029HJ03
5H029HJ12
(57)【要約】
【課題】ハイレート特性に優れた信頼性の高い電池を提供する。
【解決手段】ここに開示される電池100は、正極活物質層22aを備える正極22と、負極活物質層24aを備える負極24とが、セパレータ26を介して捲回されてなる捲回電極体20を備える電池が提供される。捲回電極体20は、捲回軸方向WDの両端面が電池ケースの封口板および底壁と対向する向きで電池ケースの内部に配置されている。セパレータ26は、捲回軸方向WDにおいて、負極活物質層24aの封口板側の端からはみ出した第1出代部26aと、負極活物質層24aの底壁側の端からはみ出した第2出代部26bと、を有し、第2出代部26bの長さLbが、第1出代部26aの長さLaよりも大きい。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁と、前記底壁と対向する封口板と、前記底壁の縁辺から前記封口板側に延びる側壁と、を有する電池ケースと、
前記電池ケースに収容され、正極活物質層を備える帯状の正極と、前記正極活物質層よりも幅の広い負極活物質層を備える帯状の負極とが、帯状のセパレータを介して捲回されてなる捲回電極体と、
を備え、
前記捲回電極体は、捲回軸方向の両端面が前記封口板および前記底壁と対向する向きで前記電池ケースの内部に配置され、
前記セパレータは、前記捲回軸方向において、
前記負極活物質層の前記封口板側の端から外方にはみ出した第1出代部と、
前記負極活物質層の前記底壁側の端から外方にはみ出した第2出代部と、
を有し、
前記第2出代部の長さが、前記第1出代部の長さよりも大きい、
電池。
【請求項2】
前記底壁と前記捲回電極体との間に配置され、前記捲回電極体側の面が凹凸形状である間隙形成部をさらに備える、
請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記捲回電極体は、外形が扁平形状であり、外表面が湾曲した一対の湾曲部と、前記一対の湾曲部を連結する外表面が平坦な平坦部とを有し、
前記間隙形成部は、前記捲回電極体の前記平坦部に沿って延びる筋状の凸部を有する、
請求項2に記載の電池。
【請求項4】
前記間隙形成部の前記凸部が複数であり、
複数の前記凸部は、前記捲回電極体側の端部が同一平面内に位置している、
請求項3に記載の電池。
【請求項5】
前記第2出代部の長さに対する前記凸部の高さの割合が、30%以上100%以下である、
請求項3に記載の電池。
【請求項6】
前記第1出代部および前記第2出代部にそれぞれ耐熱層が形成されており、
前記第2出代部の前記耐熱層は、前記第1出代部の前記耐熱層よりも空孔率が大きい、
請求項1から5のいずれか1つに記載の電池。
【請求項7】
前記第2出代部に耐熱層が形成されていない、
請求項1から5のいずれか1つに記載の電池。
【請求項8】
前記第2出代部の長さが、1.25mm以上である、
請求項1から5のいずれか1つに記載の電池。
【請求項9】
電解液をさらに備える、
請求項1から5のいずれか1つに記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電池は、典型的には、電極体と電解質とが電池ケースに収容されて構成されている。これに関連する従来技術文献として、特許文献1,2が挙げられる。例えば特許文献1には、複数枚の方形状の正極と複数枚の方形状の負極とがセパレータを介して積み重ねられてなる積層電極体を備えた電池が開示されている。また特許文献2には、帯状の正極と帯状の負極とが帯状のセパレータを介して捲回されてなる捲回電極体を備え、捲回軸方向の両端面が左右を向くように電池ケースの内部に配置された、所謂、横タブ構造の電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5637245号公報
【特許文献2】特開2012-059364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また従来、捲回電極体を備え、捲回軸方向の両端面が上下を向くように電池ケースの内部に配置された、所謂、上タブ構造電池が知られている。このような電池では、捲回電極体の片方の(下側の)端面が電池ケースの底壁と直接接触し、底壁と端面との間に殆ど間隙が開いていない。本発明者の検討によれば、上記構成では、電池のハイレート特性や安全性に改良の余地があった。
【0005】
すなわち、ハイレート充放電では、充放電時に捲回電極体の端面から電解液を急速に出入りさせる必要がある。しかし、下側の端面が底壁で塞がれていると、捲回電極体への電解液の出入りが抑制されてしまう。その結果、重力の影響を大きく受けて捲回電極体への液浸透が遅くなり、抵抗が高くなって、ハイレート特性が悪化することがある。また、例えば電池内で内部短絡等が発生し、捲回電極体の内部でガスが発生した場合、下側の端面が底壁で塞がれていると、発生したガスが上側の(もう片方の)端面に集中する。その結果、ガスの勢いが急激に増して、電池ケース、特には封口板が破損する虞がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、ハイレート特性に優れた信頼性の高い電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明により、底壁と、上記底壁と対向する封口板と、上記底壁の縁辺から上記封口板側に延びる側壁と、を有する電池ケースと、上記電池ケースに収容され、正極活物質層を備える帯状の正極と、上記正極活物質層よりも幅の広い負極活物質層を備える帯状の負極とが、帯状のセパレータを介して捲回されてなる捲回電極体と、を備える電池が提供される。上記捲回電極体は、捲回軸方向の両端面が上記封口板および上記底壁と対向する向きで上記電池ケースの内部に配置されている。上記セパレータは、上記捲回軸方向において、上記負極活物質層の上記封口板側の端から外方にはみ出した第1出代部と、上記負極活物質層の上記底壁側の端から外方にはみ出した第2出代部と、を有する。上記第2出代部の長さが、上記第1出代部の長さよりも大きい。
【0008】
セパレータの第2出代部の長さを、第1出代部の長さよりも大きくすることで、捲回電極体と底壁との間に液保持領域を確保することができる。これにより、ハイレート充放電の際に下側の端面から捲回電極体の内部へ電解液をスムーズに出入りさせることができ、ハイレート特性を向上できる。また、捲回電極体の内部でガスが発生した場合には、発生したガスを上下の両端面から分散して排出させることができる。したがって、封口板の一部分に噴出ガスが集中して当たることを防いで、電池ケースがガスの勢いで破損することを抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る電池を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1のII-II線に沿う模式的な縦断面図である。
【
図3】
図3は、
図1のIII-III線に沿う模式的な横断面図である。
【
図4】
図4は、
図2のIV-IV線に沿う模式的な縦断面図である。
【
図6】
図6は、間隙形成部を模式的に示す斜視図である。
【
図7】
図7は、間隙形成部を模式的に示すXY平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、ここで開示される技術のいくつかの好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって、ここで開示される技術の実施に必要な事柄(例えば、ここで開示される技術を特徴付けない電池の一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここで開示される技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、本明細書において範囲を示す「A~B」の表記は、「A以上B以下」の意と共に、「Aを超える」および「B未満」の意を包含するものとする。
【0011】
なお、本明細書において「電池」とは、電気エネルギーを取り出し可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、一次電池と二次電池とを包含する概念である。また、本明細書において「二次電池」とは、電解質を介して正極と負極の間で電荷担体が移動することによって繰り返し充放電が可能な蓄電デバイス全般をいう。電解質は、液状電解質(電解液)、ゲル状電解質、固体電解質のいずれであってもよい。二次電池は、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等のいわゆる蓄電池(化学電池)の他に、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ(物理電池)等も包含する。
【0012】
<第1実施形態>
図1は、電池100を模式的に示す斜視図である。
図2は、
図1のII-II線に沿う模式的な縦断面図である。
図3は、
図1のIII-III線に沿う模式的な横断面図である。
図4は、
図2のIV-IV線に沿う模式的な縦断面図である。なお、以下の説明において、図面中の符号L、R、F、Rr、U、Dは、左、右、前、後、上、下を表す。また、図面中の符号Xは、電池100の短辺方向(厚み方向)を示し、符号Yは、短辺方向と直交する電池100の長辺方向を示し、符号Zは、電池100の上下方向を示す。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、電池100の設置形態を何ら限定するものではない。
【0013】
図2に示すように、電池100は、電池ケース10と、複数の捲回電極体20(
図3、
図4も参照)と、正極端子30と、負極端子40と、正極集電部材50と、負極集電部材60と、間隙形成部70と、を備えている。電池100は、間隙形成部70を備えることが好ましい。ただし、間隙形成部70は必須ではなく、他の実施形態において間隙形成部70を備えていてなくてもよい。図示は省略するが、電池100は、ここではさらに電解液を備えている。電池100は、非水電解液二次電池である。電池100は、リチウムイオン二次電池等の二次電池であることが好ましい。なかでも、電解液を備えた非水電解液二次電池であることが好ましい。電池100が電解液を備える場合、ここに開示される技術を適用することが殊に効果的である。
【0014】
電池ケース10は、捲回電極体20を収容する筐体である。
図1に示すように、電池ケース10は、ここでは扁平かつ有底の直方体形状(角形)の外形を有する。電池ケース10の材質は、従来から使用されているものと同じでよく、特に制限はない。電池ケース10は、金属製であることが好ましく、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金等からなることがより好ましい。
図2に示すように、電池ケース10は、開口12hを有する外装体12と、開口12hを封口する封口板(蓋体)14と、を備えている。外装体12および封口板14は、捲回電極体20のサイズや、収容数(1つまたは複数。ここでは複数。)等に応じた大きさを有している。
【0015】
外装体12は、上面に開口12hを有する有底かつ角型の容器である。外装体12は、
図1に示すように、底壁12aと、底壁12aの長辺から延び相互に対向する一対の長側壁12bと、底壁12aの短辺から延び相互に対向する一対の短側壁12cと、を備えている。底壁12aは、内側面がフラット(平ら)である。底壁12aは、略矩形状である。底壁12aは、開口12h(
図2参照)と対向している。長側壁12bは、短側壁12cよりも面積が大きい。長側壁12bおよび短側壁12cは、底壁12aの縁辺から封口板14側に延びる側壁の一例である。
【0016】
封口板14は、開口12hを塞ぐように外装体12に取り付けられた板状部材である。封口板14は、外装体12の底壁12aと対向している。封口板14は、略矩形状である。電池ケース10は、外装体12の開口12hの周縁に封口板14が接合(例えば溶接接合)されることによって、一体化されている。これによって、電池ケース10は気密に封止(密閉)されている。
【0017】
図2に示すように、封口板14には、注液孔15と、ガス排出弁17と、端子引出孔18、19と、が設けられている。注液孔15は、外装体12に封口板14を組み付けた後、電池ケース10の内部に電解液を注液するための貫通孔である。注液孔15は、電解液の注液後に封止部材16によって封止されている。ガス排出弁17は、電池ケース10内の圧力が所定値以上になったときに破断して、電池ケース10内のガスを外部に排出するように構成された薄肉部である。端子引出孔18、19は、封口板14の長辺方向Yの両端部にそれぞれ形成されている。端子引出孔18、19は、封口板14を上下方向Zに貫通している。
【0018】
正極端子30は、封口板14の長辺方向Yの一方の端部(
図1、
図2の左端部)に取り付けられている。負極端子40は、封口板14の長辺方向Yの他方の端部(
図1、
図2の右端部)に取り付けられている。正極端子30および負極端子40は、端子引出孔18、19に挿通され、一部が封口板14の表面に露出している。正極端子30および負極端子40は、バスバー等の外部接続部材を介して、他の二次電池や外部機器と接続される。
【0019】
正極端子30は、
図2に示すように、電池ケース10の内部で、正極集電部材50を介して捲回電極体20の正極22(
図5参照)と電気的に接続されている。正極端子30は、金属製であることが好ましく、例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金からなることがより好ましい。正極端子30は、ガスケット92によって封口板14と絶縁されている。ガスケット92は、樹脂製であることが好ましい。
【0020】
負極端子40は、電池ケース10の内部で、負極集電部材60を介して捲回電極体20の負極24(
図5参照)と電気的に接続されている。負極端子40は、金属製であることが好ましく、例えば銅または銅合金からなることがより好ましい。負極端子40は、ガスケット92によって封口板14と絶縁されている。
【0021】
図3、
図4に示すように、電池100では、電池ケース10内に複数個(具体的には2個)の捲回電極体20が収容されている。ただし、1つの電池ケース10内に配置される捲回電極体20の数は特に限定されず、3個以上であってもよいし、1個であってもよい。複数の捲回電極体20は、ここでは樹脂製シートからなる電極体ホルダ29に覆われた状態で、電池ケース10の内部に配置されている。
【0022】
捲回電極体20は、電池ケース10の内部に収容されている。
図5は、捲回電極体20の構成を示す模式図である。なお、
図5等における符号LDは、帯状に製造される捲回電極体20の長手方向(即ち、搬送方向)を示している。符号WDは、長手方向LDと略直交する方向であり、捲回電極体20の捲回軸方向を示している。捲回軸方向WDは、電池100の上下方向Zと略平行である。
【0023】
図5に示すように、捲回電極体20は、帯状の正極22と帯状の負極24とが帯状のセパレータ26を介して絶縁された状態で積層され、捲回軸WLを中心として長手方向に捲回されて構成されている。
図2に示すように、電池100において、捲回電極体20の両端面(すなわち、正極22と負極24とが積層された積層面、
図5の捲回軸方向WDの両端)は、底壁12aおよび封口板14と対向している。捲回電極体20の上部には、後述する正極タブ群25と負極タブ群27とが突出している。電池100は、捲回電極体20の上方に正極タブ群25と負極タブ群27とが位置する、所謂、上タブ構造である。
【0024】
図3に示すように、捲回電極体20は、ここでは外形が扁平形状である。扁平形状の捲回電極体20は、外表面が湾曲した一対の湾曲部20rと、一対の湾曲部20rを連結する外表面が平坦な一対の平坦部20fと、を有している。捲回電極体20は、捲回軸方向WDが上下方向Zと略一致するように電池ケース10の内部に収容されている。一対の湾曲部20rは、外装体12の一対の短側壁12cと対向している。一対の平坦部20fは、外装体12の長側壁12bと対向している。
【0025】
正極22は、
図5に示すように、帯状の部材である。正極22は、帯状の正極集電体22cと、正極集電体22cの少なくとも一方の表面上に固着された正極活物質層22aおよび正極保護層22pと、を備えている。正極活物質層22aは、電池性能の観点から、正極集電体22cの両面に形成されていることが好ましい。ただし、正極保護層22pは必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。
【0026】
正極22を構成する各部材には、一般的な電池(例えば、リチウムイオン二次電池)で使用され得る従来公知の材料を特に制限なく使用できる。例えば、正極集電体22cは、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなることが好ましく、ここでは金属箔、具体的にはアルミニウム箔である。
【0027】
正極22では、
図5に示すように、捲回軸方向WDの一方の端辺から外側(
図5の左側)に向かって複数の正極タブ22tが突出している。複数の正極タブ22tは、長手方向LDに沿って所定の間隔を空けて(間欠的に)設けられている。正極タブ22tは、ここでは正極22の一部である。正極タブ22tは、正極活物質層22aが形成されていない領域である。正極タブ22tの少なくとも一部には正極集電体22cが露出している。複数の正極タブ22tは、相互にサイズや形状が異なっていてもよい。
【0028】
複数の正極タブ22tは、捲回電極体20の捲回軸方向WDの一方の端部で積層され、正極タブ群25を構成している(
図2、
図4参照)。複数の正極タブ22tは、折り曲げられて湾曲している。複数の正極タブ22tの先端部は、正極集電部材50と接合されている。複数の正極タブ22t(正極タブ群25)は、正極集電部材50を介して正極端子30と電気的に接続されている。
【0029】
正極活物質層22aは、
図5に示すように、正極集電体22cの長手方向LDに沿って、帯状に設けられている。正極活物質層22aの幅(
図5の捲回軸方向WDの長さ)L1は、負極活物質層24aの幅L2よりも小さい。正極活物質層22aは、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な正極活物質(例えば、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物等のリチウム遷移金属複合酸化物)を含んでいる。正極活物質層22aは、正極活物質以外の任意成分、例えば、導電材、バインダ、各種添加成分等を含んでいてもよい。導電材としては、例えばアセチレンブラック(AB)等の炭素材料を使用し得る。バインダとしては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)等を使用し得る。
【0030】
正極保護層22pは、正極活物質層22aよりも電気伝導性が低くなるように構成された層である。正極保護層22pは、
図5に示すように、正極集電体22cの長手方向LDに沿って、帯状に設けられている。正極保護層22pは、捲回軸方向WDにおいて正極集電体22cと正極活物質層22aとの境界部に設けられている。正極保護層22pは、ここでは正極集電体22cの捲回軸方向WDの一方の端部、具体的には、正極タブ22tのある側の端部(
図5の左端部)に設けられている。正極保護層22pを備えることで、セパレータ26が破損した際に正極22が負極活物質層24aと直接接触して電池100が内部短絡することを防止できる。
【0031】
正極保護層22pは、絶縁性の無機フィラーを含んでいる。無機フィラーの一例として、アルミナ等のセラミック粒子が挙げられる。正極保護層22pは、無機フィラー以外の任意成分、例えば、バインダ、導電材、各種添加成分等を含んでいてもよい。バインダおよび導電材は、正極活物質層22aに含み得るとして例示したものと同じであってもよい。
【0032】
負極24は、
図5に示すように、帯状の部材である。負極24は、帯状の負極集電体24cと、負極集電体24c少なくとも一方の表面上に固着された負極活物質層24aと、を備えている。負極活物質層24aは、電池性能の観点から、負極集電体24cの両面に形成されていることが好ましい。
【0033】
負極24を構成する各部材には、一般的な電池(例えば、リチウムイオン二次電池)で使用され得る従来公知の材料を特に制限なく使用できる。例えば、負極集電体24cは、銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなることが好ましく、ここでは金属箔、具体的には銅箔である。
【0034】
負極24では、
図5に示すように、捲回軸方向WDの一方の端辺から外側(
図5の左側)に向かって複数の負極タブ24tが突出している。複数の負極タブ24tは、長手方向LDに沿って所定の間隔を空けて(間欠的に)設けられている。捲回軸方向WDにおいて、負極タブ24tは正極タブ22tと同じ側(
図5の左側)の端部に設けられている。負極タブ24tは、ここでは負極24の一部である。負極タブ24tは、負極活物質層24aが形成されず、負極集電体24cが露出した領域である。複数の負極タブ24tは、相互にサイズや形状が異なっていてもよい。
【0035】
複数の負極タブ24tは、捲回電極体20の捲回軸方向WDの一方の端部で積層され、負極タブ群27を構成している(
図2参照)。図示は省略するが、複数の負極タブ24tは、正極タブ22tと同様に、折り曲げられて湾曲している。複数の負極タブ24tの先端部は、負極集電部材60と接合されている。複数の負極タブ24t(負極タブ群27)は、負極集電部材60を介して正極端子30と電気的に接続されている。
【0036】
負極活物質層24aは、
図5に示すように、負極集電体24cの長手方向LDに沿って、帯状に設けられている。負極活物質層24aの幅(
図5の捲回軸方向WDの長さ)L2は、正極活物質層22aの幅L1よりも大きい。負極活物質層24aは、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な負極活物質(例えば、黒鉛等の炭素材料)を含んでいる。負極活物質層24aは、負極活物質以外の任意成分、例えば、バインダ、分散剤、各種添加成分等を含んでいてもよい。バインダとしては、例えばスチレンブタジエンゴム(SBR)等のゴム類を使用し得る。分散剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)等のセルロール類を使用し得る。
【0037】
セパレータ26は、
図5に示すように、帯状の部材である。セパレータ26は、正極22の正極活物質層22aと、負極24の負極活物質層24aと、を絶縁する部材である。セパレータ26は、ここでは捲回電極体20の最外周を構成している。セパレータ26は、電荷担体が通過し得る微細な貫通孔が複数形成された絶縁シートである。セパレータ26は、ここでは1つの捲回電極体20に2枚使用されている。
【0038】
セパレータ26は、多孔性シートからなっていてもよい。多孔性シートは、イオン透過性および絶縁性を有している。多孔性シートの具体例として、微多孔薄膜、織布、不織布等が挙げられる。多孔性シートの材質は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のオレフィン系樹脂、セルロース等の樹脂が好適である。多孔性シートは、単層構造であってもよく、2層以上の構造、例えば3層構造であってもよい。例えば、PE層からなっていてもよく、PP層/PE層/PP層のような積層構造であってもよい。多孔性シートの厚みは、5~30μmが好ましい。多孔性シートがPP層/PE層/PP層の積層構造を有する場合、PP層の厚みは1~10μmが好ましく、PE層の厚みは2~10μmが好ましい。
【0039】
セパレータ26は、樹脂製の多孔性シートからなる基材部と、基材部の少なくとも一方の表面上に形成された耐熱層(Heat Resistance Layer:HRL)と、を有していてもよい。耐熱層は、基材部の正極22側および/または負極24側の表面に設けられている。耐熱層の厚みは、2~12μmであることが好ましい。正極22および/または負極24との接着性や密着性を向上する目的等から、耐熱層の上には、例えばドット状、ライン状等、種々の形状で接着剤を付与した接着層がさらに設けられていてもよい。
【0040】
耐熱層は、典型的には、無機フィラーとバインダとを含む層である。無機フィラーとしては、例えば、ベーマイト、アルミナ、チタニア(ルチル型またはアナターゼ型、ただし、アナターゼ型の場合は、耐熱層が負極24に接触しないように配置。)、ジルコニア、マグネシア、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛等を使用し得る。バインダとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、アクリル樹脂、アラミド、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等を使用し得る。バインダの含有量は、耐熱層の総量を100質量%としたときに、2~40質量%であることが好ましい。なお、耐熱層上に接着層を設けない場合は、耐熱層中のバインダの割合を高めて、正極22および/または負極24との密着性を向上してもよい。
【0041】
図5に示すように、捲回軸方向WDにおいて、セパレータ26の幅は、負極活物質層24aの幅L2よりも大きい。セパレータ26は、負極活物質層24aの上端(封口板14側の端、
図5の左端)から外方にはみ出した第1出代部26aと、負極活物質層24aの下端(底壁12a側の端、
図5の右端)から外方にはみ出した第2出代部26bと、を有する。第1出代部26aおよび第2出代部26bは、正極22および/または負極24を含まない、セパレータのみの部分である。本実施形態では、第2出代部26bの長さLb[mm]が、第1出代部26aの長さLa[mm]よりも大きい。すなわち、Lb>Laである。
【0042】
これにより、捲回電極体20と底壁12aとの間に、セパレータ26(詳しくは、第2出代部26b)による液保持領域を確保することができる。捲回電極体20と底壁12aとの間に第2出代部26bを介して液保持させることによって、ハイレート充放電時に下側の端面から捲回電極体20の内部への電解液の出入りがスムーズになり、ハイレート特性を向上できる。また、捲回電極体20の内部でガスが発生した場合には、発生したガスを下の端面からも排出させることができる。したがって、封口板14の一部分に噴出ガスが集中して当たることを防いで、電池ケース10がガスの勢いで破損することを防止できる。
【0043】
特に限定されるものではないが、第1出代部26aの長さLaは、概ね0.1mm以上、例えば0.5mm以上、1mm以上、好ましくは1.25mm以上であって、概ね10mm以下、例えば5mm以下、3mm以下であるとよい。第2出代部26bの長さLbは、概ね0.2mm以上、例えば0.7mm以上、1mm以上、好ましくは1.25mm以上、より好ましくは1.5mm以上、例えば2mm以上、3mm以上、5mm以上であって、概ね20mm以下、例えば15mm以下、10mm以下であるとよい。上記した効果をより高いレベルで発揮するためには、第1出代部26aの長さLaに対する第2出代部26bの長さLbの比(Lb/La)が、概ね1.2以上、好ましくは2以上、例えば4以上であるとよい。上記比(Lb/La)の上限は、概ね20以下、例えば15以下、12以下、10以下であってもよい。
【0044】
好適な一態様では、第1出代部26aおよび第2出代部26bに、それぞれ耐熱層が形成されており、第2出代部26bの耐熱層の方が、第1出代部26aの耐熱層よりも空孔率が大きい。これにより、上記した効果を、より高いレベルで発揮できる。特に限定されるものではないが、第1出代部26aの空孔率Vaは、概ね30~49%、例えば35~45%であるとよい。第2出代部26bの空孔率Vbは、概ね50%以上、例えば50~80%であるとよい。また、第2出代部26bの空孔率Vbと第1出代部26aの空孔率Vaとの差(Vb-Va)は、概ね10%以上、例えば20%以上であるとよい。
【0045】
なお、本明細書において「空孔率」とは、一定の大きさの耐熱層の真密度と見かけ密度とから、次の式:1-(見かけ密度/真密度);で算出した値をいう。真密度(g/cm3)は、耐熱層の構成成分の密度と含有割合に基づいて算出できる。また、見かけ密度は、耐熱層の体積(cm3)と質量(g)から算出できる。
【0046】
なお、第1出代部26aと第2出代部26bとで空孔率が異なる耐熱層は、例えばグラビアロールを用いた塗工方法で、セパレータ基材上に2段階に分けて耐熱層を形成することで作製できる。すなわち、まず第1段階として、第1出代部26aの巻き方向の一方側の部分上に耐熱層形成用のスラリーを塗工し、乾燥して第1耐熱層を作製する。次いで第2段階として、それ以外(第2出代部26bや負極24との対向部)の巻き方向の部分上に耐熱層形成用のスラリーを塗工し、乾燥して第2耐熱層を作製する。このとき、第1段階と第2段階の各塗工条件は、セパレータ基材をグラビアロールへ送る移動速度は同じくし、かつ、グラビアロールの回転数を、次の条件:(第1段階のグラビアロール回転数)>(第2段階のグラビアロール回転数);とすることで、第1耐熱層の空孔率を小さく、第2耐熱層の空孔率を大きくすることができる。なお、第1耐熱層と第2耐熱層間の境界部は、耐熱層のない部分が存在しないように作製してもよい。
【0047】
また、安全性を向上させるために、負極24との対向部の耐熱層の空孔率を、第1出代部26aの巻き方向部分と同じように小さくさせたい場合では、第1段階として、第2出代部26bの巻き方向の部分上に、耐熱層形成用のスラリーを塗工し、乾燥して、耐熱層を作製し、その後、第2段階としてそれ以外(第1出代部26aや負極24との対向部)の巻き方向の部分上を、耐熱層形成用のスラリーを塗工し、乾燥して耐熱層を作製してもよい。その場合の塗工条件は、第1段階と第2段階におけるセパレータ基材をグラビアロールへ送る移動速度は同じで、グラビアロールの回転数、次の条件:(第1段階のグラビアロール回転数)<(第2段階のグラビアロール回転数);とすることで、第1段階に形成した耐熱層の空孔率を大きく、第2段階に形成した耐熱層の空孔率を小さくすることができる。この場合も、第1段階目で作製した耐熱層と第2段階目で作製した耐熱層間の境界部は、耐熱層のない部分が存在しないように作製してもよい。また、塗工方法であるが、グラビアロールを用いた塗工方法以外でも可能である。例えば、ダイヘッドを用いた塗工方法等が挙げられる。
【0048】
好適な他の一態様では、第2出代部26bに耐熱層が形成されていない。この場合、第2出代部26bにおける耐熱層の空孔率Vbは100%であるとも言える。これにより、液保持領域をさらに広く確保することができ、上記した効果をより高いレベルで発揮できる。なお、第1出代部26aには、耐熱層が形成されていてもよいし、耐熱層が形成されていなくてもよい。なお、第2出代部26bに耐熱層を備えていない場合は、第2出代部26b以外(第1出代部26aや負極24との対向部)の巻き方向の部分上のみにグラビアロールを用いて耐熱層形成用のスラリーを塗工し、乾燥することによって、所定の空孔率の耐熱層を作製できる。
【0049】
好適な他の一態様では、第2出代部26bの表面に接着層が形成されている。接着層は、多孔性シートの上に直接形成されていてもよく、耐熱層上に形成されていてもよい。これにより、電解液が接着層を伝って移動しやすくなり、上記した効果をさらに高いレベルで発揮できる。なお、第1出代部26aには、接着層が形成されていてもよいし、耐熱層が形成されていなくてもよい。
【0050】
電極体ホルダ29は、複数の捲回電極体20の左方、右方、前方、後方、下方を覆っている。これによって、捲回電極体20が外装体12と直接接触することが防止されている。電極体ホルダ29の材質は、所定の絶縁性を有する限りにおいて特に限定されない。一例として、ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)等のポリオレフィン樹脂、パーフルオロアルコキシアルカン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂等の合成樹脂が挙げられる。
【0051】
電極体ホルダ29の高さ(上下方向Zの長さ)は、捲回電極体20の電極部と外装体12の直接接触が防止されており、かつ外装体12に収まる限りにおいて、任意である。本実施形態のように捲回電極体20の最外周がセパレータ26で構成されている場合、電極体ホルダ29は、捲回電極体20の外周のすべて覆う必要はなく、その高さは15mm以下でもよい。一方、捲回電極体20の最外周が電極(典型的には負極24)である場合、電極体ホルダ29は、捲回電極体20の電極部と外装体12の直接接触が防止されるのに必要な高さ、すなわち、捲回電極体20の上部(封口板14側)以外を覆うことができる高さとなる。また、捲回電極体20の電極部と外装体12との直接接触が防止されている限りにおいて、電極体ホルダ29には、電解液が出入りできる細孔や、角部に亀裂があってもよい。
【0052】
電解液としては、一般的な電池(例えば、リチウムイオン二次電池)で使用されるものを特に制限なく使用できる。一例として、非水系溶媒に支持塩を溶解させた非水電解液が挙げられる。非水系溶媒の一例として、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等のカーボネート系溶媒が挙げられる。支持塩の一例として、LiPF6等のフッ素含有リチウム塩が挙げられる。電解液は、必要に応じて添加剤を含有してもよい。ただし、電解液は固体状(固体電解質)で、捲回電極体20と一体化されていてもよい。
【0053】
正極集電部材50は、ここでは封口板14に付設されている。正極集電部材50は、捲回電極体20の正極タブ群25と正極端子30とを電気的に接続している。正極集電部材50は、
図2に示すように、封口板14の内側面に沿って長辺方向Yに延びている。正極集電部材50の長辺方向Yの一方(
図2の右側)の端部は、正極タブ群25、すなわち、積層された複数の正極タブ22tと電気的に接続されている。正極集電部材50の長辺方向Yの他方(
図2の左側)の端部は、正極端子30の下端部30cと電気的に接続されている。正極集電部材50は、導電性に優れた金属から構成されていることが好ましく、例えばアルミニウムやアルミニウム合金で構成されている。正極集電部材50は、正極タブ22tおよび/または正極端子30と同種の金属で構成されていてもよい。正極集電部材50は、内部絶縁部材94によって封口板14の内側面と絶縁されている。
【0054】
負極集電部材60は、ここでは封口板14に付設されている。負極集電部材60は、捲回電極体20の負極タブ群27と負極端子40とを電気的に接続している。負極集電部材60は、
図2に示すように、封口板14の内側面に沿って長辺方向Yに延びている。負極集電部材60の長辺方向Yの一方(
図2の左側)の端部は、負極タブ群27、すなわち、積層された複数の負極タブ24tと電気的に接続されている。負極集電部材60の長辺方向Yの他方(
図2の右側)の端部は、負極端子40の下端部40cと電気的に接続されている。負極集電部材60は、導電性に優れた金属から構成されていることが好ましく、例えば銅や銅合金で構成されている。負極集電部材60は、負極タブ24tおよび/または負極端子40と同種の金属で構成されていてもよい負極集電部材60は、内部絶縁部材94によって封口板14の内側面と絶縁されている。
【0055】
間隙形成部70は、
図2に示すように、底壁12aと捲回電極体20との間に配置されている。間隙形成部70は、捲回電極体20の一方の端面(
図2の下側の端面)と対向している。間隙形成部70を備えることで、上記した効果をさらに高いレベルで発揮できる。すなわち、間隙形成部70は、捲回電極体20での電解液の滞りや偏りを低減させることに効果があり、また捲回電極体20の内部で発生したガスを排出させるためのガイドの役割も果たす。したがって、間隙形成部70を備えることで、ハイレート特性や、内部短絡等に対する信頼性や安全性を向上できる。
【0056】
間隙形成部70は、ここでは電極体ホルダ29および電池ケース10とは別体である。間隙形成部70は、
図2に示すように、ここでは捲回電極体20と共に電極体ホルダ29の内部に配置されている。間隙形成部70は、捲回電極体20の下端部(詳しくは、下側の端面)に当接している。ただし、他の実施形態において、間隙形成部70は、電極体ホルダ29と一体であり、電極体ホルダ29の一部であってもよい。
【0057】
間隙形成部70は、ここでは絶縁性を有する。間隙形成部70の材質は、耐電解液性を有する限りにおいて特に限定されない。間隙形成部70は、ここでは樹脂製である。間隙形成部70を構成する樹脂の一例として、ポリオレフィン系樹脂、アミド樹脂、イミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、塩化ビニル等が挙げられる。なかでも、高耐熱性樹脂が好ましい。
【0058】
ただし、他の実施形態において、間隙形成部70は、電極体ホルダ29の外部に配置されていてもよい。その場合、間隙形成部70は、電極体ホルダ29の下面に当接していてもよい。間隙形成部70は、電池ケース10の底壁12aと一体に形成されていてもよい。間隙形成部70は、導電性を有していてもよく、例えば金属製であってもよい。一例として、Al,Mg,Ti,Fe,ステンレス鋼,Ni,Sn,Cu,Zn等の金属や合金、あるいは電池ケース10と同一成分からなる金属や合金が挙げられる。間隙形成部70の表面は、酸化物等のセラミックで覆われていてもよい。間隙形成部70は、樹脂や金属以外に、例えば、セラミック製、炭素や炭化物製、珪素や珪化物製等であってもよい。
【0059】
図6は、電極体ホルダ29の内部に配置された間隙形成部70を模式的に示す斜視図である。
図7は、間隙形成部70を模式的に示すXY平面図である。なお、
図7では、電極体ホルダ29の図示を省略し、電池ケース10の底壁12aとの相対関係を表している。間隙形成部70は、ここでは1つである。ただし、電池ケース10の内部に収容される捲回電極体20が複数の場合、間隙形成部70の数は、捲回電極体20と同数であってもよい。
【0060】
図6に示すように、間隙形成部70は、ここではリブ構造を有する。間隙形成部70は、筋状(帯状)の複数の凸部72を有する。複数の凸部72は、同一の形状およびサイズである。凸部72の短辺方向Xから見た断面形状は、四角形状(詳しくは矩形状)である。ただし、他の実施形態において、凸部72の断面形状は、三角形状、台形状、半円状等であってもよい。間隙形成部70は、捲回電極体20側の面(
図6の上面)が、フラット(平ら)でなく、例えば凹凸形状であることが好ましい。
【0061】
上記した効果を高いレベルで発揮する観点から、第2出代部26bの長さLbに対する凸部72の高さH(
図6の上下方向Zの垂直長さ)の割合((H/Lb)×100)は、概ね10%以上、例えば30%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは80%以上であるとよい。上記割合((H/Lb)×100)は、100%以下であることが好ましい。言い換えれば、凸部72の高さHは、第2出代部26bの長さLb以下であることが好ましい。これにより、第2出代部26bの折れ曲がりを少なくして、捲回電極体20を間隙形成部70の上に整然と配置させることができる。また、第2出代部26bが凸部72で強く圧縮されることを防止できる。
【0062】
複数の凸部72は、ここでは上面が平坦である。複数の凸部72の上端部は、上下方向Zの位置が揃っている。複数の凸部72の捲回電極体20側の端部(
図6の上面)は、電池ケース10の内側面に平行な同一平面内に位置している。これにより、第2出代部26bが凸部72によって局所的に強く圧縮されることを防止すると共に、電解液やガスの通り道を安定して確保できる。
【0063】
図7に示すように、複数の凸部72は、それぞれ、電池100の長辺方向Y、言い換えれば、捲回電極体20の平坦部20fに沿って直線状に延びている。複数の凸部72は、長辺方向Yに平行に配置されている。ただし、複数の凸部72は、短辺方向Xに平行に配置されていてもよい。複数の凸部72は、例えば切削加工によって間隙形成部70として一体に形成されていてもよいし、それぞれ別体として用意され、例えば接着剤や溶接等で、電極体ホルダ29の下面や底壁12aに取り付けられていてもよい。
【0064】
凸部72の本数、形状、サイズ等は特に限定されない。凸部72の本数は、例えば3~20本であることが好ましく、5~10本であることがより好ましい。凸部72の本数は、ここでは3本である。凸部72は、長辺方向Yの途中に途切れた部分(凹部)を有し、破線状に設けられていてもよい。また、凸部72は、一部、あるいは全部がドット状に設けられていてもよい。また、間隙形成部70は、凸部72に加えて、あるいは凸部72にかえて、凹部を有していてもよい。
【0065】
XY平面において、間隙形成部70の外形70aは、電池ケース10の底壁12aと同形状であってもよい。XY平面において、間隙形成部70の外形70aは、捲回電極体20の下端面の全体を覆うサイズであることが好ましい。底壁12aの全体面積を100%としたときに、間隙形成部70の外形70aは、概ね50%以上の面積、例えば80~99%、90~98%の面積であってもよい。
【0066】
上記した効果を高いレベルで発揮する観点から、電池ケース10の底壁12aの長辺長さLyに対する凸部72の長辺長さの割合((Dy/Ly)×100)は、概ね10%以上、例えば30%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは80%以上であって、例えば95%以下であるとよい。また、間隙形成部70の外形70aの短辺長さDxを100%としたときに、凸部72の短辺長さdの合計(ここではd×3)の割合(d×3/Dx)は、20%~50%であることが好ましい。
【0067】
<電池の用途>
電池100は各種用途に利用可能であるが、ハイレート特性が必要となる用途、例えば移動体(典型的には、乗用車、トラック等の車両)に搭載されるモータ用の動力源(駆動用電源)として、好適に用いることができる。車両の種類は特に限定されないが、例えば、プラグインハイブリッド自動車(PHEV;Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、ハイブリッド自動車(HEV;Hybrid Electric Vehicle)、電気自動車(BEV;Battery Electric Vehicle)等が挙げられる。
【0068】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に限定することを意図したものではない。
【0069】
<試験例1:比較例1、例1~8>
まず、
図5に示すような捲回電極体を作製した。このとき、セパレータの負極活物質層の幅方向の両端からはみ出した部分、すなわち、第1出代部および第2出代部の長さが、それぞれ、表1に示すLa、Lbとなるように、正極と負極とセパレータとを捲回した。なお、セパレータの第1出代部および第2出代部に耐熱層を設けた場合は、表1の「耐熱層の空孔率」の欄に空孔率を示し、耐熱層を設けなかった場合は「無」と示した。また、セパレータに接着層を設けた場合は、表1の「接着層」の欄に「あり」と示し、接着層を設けなかった場合は「無」と示した。そして、作製した捲回電極体を用いて、試験用の電池を構築した。
【0070】
[評価1:ハイレート充放電サイクル試験]
上記構築した電池に対して高負荷の充放電サイクルを実施した。具体的には、電池を、2.5Cの充電レートで240秒間充電する充電処理と、30Cの放電レートで20秒間放電する放電処理と、を1000サイクル繰り返した。充電と放電と間のレスト時間は、120秒間とした。なお、1Cとは、電池の理論容量(Ah)を1時間で満充電することができる電流値を意味する。そして、1サイクル後の電池抵抗に対する1000サイクル後の電池抵抗を、抵抗増加率(劣化率)として算出した。結果を表1に示す。
【0071】
[評価2:釘刺し試験]
上記構築した電池を満充電(4.2V)まで充電した後、60℃に加温し、釘刺し試験を行った。具体的には、(株)ダイドーハント製の丸釘(N65、φ3mm)を、電池の中央付近に貫通させて、釘を刺し部分から1cm離れた箇所で電池の表面温度を測定し、最高温度を記録した。結果を表1に示す。なお、表1には、比較例1の最高温度を100とした相対値を表している。
【0072】
【0073】
表1に示すように、第1出代部の長さLaと第2出代部の長さLbとが等しい比較例1では、ハイレート充放電サイクル後の抵抗増加率が最も大きかった。また、釘差し試験時の最高温度が最も高かった。この理由としては、捲回電極体と電池ケースの底壁との距離が例1~8に比べて近く、両者の間に十分な電解液が保持できなかったために、捲回電極体の液浸透性が低下したことが考えられる。詳しくは、重力の影響を大きく受けて、捲回電極体の下端部からの液浸透が遅くなり、例えば捲回電極体の上下方向で電解液の濃度ムラが発生したことが考えられる。その結果、局所的に電解液の液枯れが生じ、ハイレート充放電時の抵抗が増加したと考えられる。
【0074】
これに対して、第1出代部の長さLaと第2出代部の長さLbとが、Lb>Laを満たす例1~5では、比較例1に比べてハイレート充放電サイクル後の抵抗増加率が小さく抑えられていた。この理由としては、捲回電極体と電池ケースの底壁との間に十分な空間を確保することができ、その空間に十分な電解液を保持できたことが考えられる。これにより、液浸透が重力の影響を受けにくくなったことや、セパレータの第2出代部を伝って電解液が捲回電極体の内部に出入りしやすくなったことが考えられる。その結果、捲回電極体で電解液不足が生じにくく、また電解液を均一に分布させることができ、ハイレート充放電のように電解液の大きな移動量が求められる状況であっても、それに対応することが可能となったと考えられる。
【0075】
また、例1~5では、釘差し試験時の最高温度が比較例1に比べて低く抑えられていた。この理由としては、捲回電極体の内部で発生したガスが、捲回電極体の上側と下側の両端面から、ガス排出弁に向かってスムーズに移動し、外部に排出された結果、ガスとともに熱も外部に排出され、電池の最高温度が低く抑えられたことが考えられる。
【0076】
また、例4、例6、例7の比較から、セパレータの第2出代部に接着層を設けない、あるいは耐熱層の空孔率を大きくすることで、上記した効果がより高いレベルで発揮されることがわかった。この理由としては、電解液の保持空間が大きくなり、多くの電解液を保持することができたためと考えられる。また、釘刺し試験においても、高温のガスとともに熱がスムーズに排出されたことが考えられる。
【0077】
また、例4、例8の比較から、セパレータの表面に接着層を設けることで、上記した効果がより高いレベルで発揮されることがわかった。この理由としては、電解液が接着層を伝って移動しやすくなったことが考えられる。
【0078】
<試験例2:例9~19>
捲回電極体と電池ケースの底壁との間に間隙形成部を配置したこと以外は、例2と同様に試験用の電池を構築し、試験例1と同様に評価を行った。なお、間隙形成部の外形は、電池ケースの底壁と同形状で、XY平面視において、底壁の90~95%の面積とした。また、間隙形成部を構成する凸部の本数、断面形状、サイズ等は、表2に示す通りとした。例9~11では、間隙形成部の厚み(短辺方向Xの長さ)を、0.3mmとし、間隙形成部70の外形の短辺長さDxに対する、凸部の短辺長さdの合計(ここではd×3)の割合((d×3/Dx)×100)は、30%とした。結果を表2に示す。
【0079】
【0080】
表2に示すように、例2と、例9~11との比較から、捲回電極体と電池ケースの底壁との間に間隙形成部を配置した例9~11では、例2に比べてハイレート充放電サイクル後の抵抗増加率が小さく抑えられ、また釘差し試験時の最高温度が例2に比べて低く抑えられ、良好な結果となった。
【0081】
また、例10と、例12、例13との比較から、第2出代部の長さLbに対する凸部の高さHの割合(H/Lb(%))を大きくすることで、上記した効果がより高いレベルで発揮されることがわかった。また、例10と、例14、例15との比較から、底壁の長辺長さLyに対する凸部の長辺長さDyの割合(Dy/Ly(%))を大きくすることで、上記した効果がより高いレベルで発揮されることがわかった。これらの理由としては、第2出代部の折れ曲がりを少なくして、捲回電極体を整然と配置させることができたため、捲回電極体と電池ケースの底壁との間により広い空間を安定して確保することができた結果、電解液の滞りや偏りを低減させる効果によってハイレート特性が向上し、発生したガス排出のガイドとしての役割がより良く発揮されたと考えられる。
【0082】
また、例10と、例16~18との比較から、間隙形成部を構成する凸部の数を多くすることで、上記した効果がより高いレベルで発揮されることがわかった。なかでも凸部の本数が、概ね5~20本(例えば5~10本)である場合、より効果的であった。
【0083】
また、例10と、例19との比較から、捲回電極体と電池ケースの底壁の間に間隙形成部の配置した場合であっても、セパレータの第2出代部における耐熱層の空孔率を大きくすることで、上記した効果がより高いレベルで発揮されることがわかった。
【0084】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、上記実施形態は一例に過ぎない。本発明は、他にも種々の形態にて実施することができる。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記した実施形態の一部を他の変形態様に置き換えることも可能であり、上記した実施形態に他の変形態様を追加することも可能である。また、その技術的特徴が必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することも可能である。
【0085】
以上の通り、ここで開示される技術の具体的な態様として、以下の各項に記載のものが挙げられる。
項1:底壁と、上記底壁と対向する封口板と、上記底壁の縁辺から上記封口板側に延びる側壁と、を有する電池ケースと、上記電池ケースに収容され、正極活物質層を備える帯状の正極と、上記正極活物質層よりも幅の広い負極活物質層を備える帯状の負極とが、帯状のセパレータを介して捲回されてなる捲回電極体と、を備え、上記捲回電極体は、捲回軸方向の両端面が上記封口板および上記底壁と対向する向きで上記電池ケースの内部に配置され、上記セパレータは、上記捲回軸方向において、上記負極活物質層の上記封口板側の端から外方にはみ出した第1出代部と、上記負極活物質層の上記底壁側の端から外方にはみ出した第2出代部と、を有し、上記第2出代部の長さが、上記第1出代部の長さよりも大きい、電池。
項2:上記底壁と上記捲回電極体との間に配置され、上記捲回電極体側の面が凹凸形状である間隙形成部をさらに備える、項1に記載の電池。
項3:上記捲回電極体は、外形が扁平形状であり、外表面が湾曲した一対の湾曲部と、上記一対の湾曲部を連結する外表面が平坦な平坦部とを有し、上記間隙形成部は、上記捲回電極体の上記平坦部に沿って延びる筋状の凸部を有する、項2に記載の電池。
項4:上記間隙形成部の上記凸部が複数であり、複数の上記凸部は、上記捲回電極体側の端部が同一平面内に位置している、項3に記載の電池。
項5:上記第2出代部の長さに対する上記凸部の高さの割合が、30%以上100%以下である、項3または4に記載の電池。
項6:上記第1出代部および上記第2出代部にそれぞれ耐熱層が形成されており、上記第2出代部の上記耐熱層は、上記第1出代部の上記耐熱層よりも空孔率が大きい、項1から5のいずれか1つに記載の電池。
項7:上記第2出代部に耐熱層が形成されていない、項1から6のいずれか1つに記載の電池。
項8:上記第2出代部の長さが、1.25mm以上である、項1から7のいずれか1つに記載の電池。
項9:電解液をさらに備える、項1から8のいずれか1つに記載の電池。
【符号の説明】
【0086】
10 電池ケース
12 外装体
14 封口板
20 捲回電極体
20r 湾曲部
20f 平坦部
22 正極
24 負極
26 セパレータ
26a 第1出代部
26b 第2出代部
70 間隙形成部
72 凸部
100 電池