(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034896
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】電池用端子およびそれを用いた電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/533 20210101AFI20240306BHJP
H01M 50/55 20210101ALI20240306BHJP
H01M 50/567 20210101ALI20240306BHJP
H01M 50/51 20210101ALI20240306BHJP
【FI】
H01M50/533
H01M50/55 101
H01M50/567
H01M50/51
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139455
(22)【出願日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 繁
(72)【発明者】
【氏名】内田 陽三
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友紀
(72)【発明者】
【氏名】江原 強
【テーマコード(参考)】
5H043
【Fターム(参考)】
5H043AA01
5H043AA13
5H043JA02D
5H043JA02E
5H043LA03E
5H043LA21E
(57)【要約】
【課題】ストレスに対して強い電池用端子、およびその電池用端子を用いた電池を提供すること。
【解決手段】本開示技術の電池用端子は、異種の導電材による2ピース構成であり、外側の第1ピースと内側に配置され集電部20を有する第2ピース15との固定が、第1固定部17と第2固定部18との2箇所でなされており、端子の形状の長尺方向に対して、第1固定部17が、集電部20と第2固定部18との間にあり、短尺方向に対して、集電部20の中央に対する偏りと、第1固定部17の中央に対する偏りとが逆向きであるものである。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池の外装体の内部に配置される発電要素と前記外装体の外部に配置される外部導電部材とを接続する電池用端子であって、
異種の導電材で構成された第1ピースおよび第2ピースを有する2ピース構成であり、 前記第1ピースが、
第1面および第2面を有し第1面が電池における外向きになるように配置され前記外部導電部材と接続される第1板状部と、
前記第1板状部の前記第2面に設けられ前記第2ピースを固定する第1固定部および第2固定部とを有し、
前記第2ピースが、
第1面および第2面を有し平面視にて長尺方向と短尺方向とを有する形状であるとともに、第1面を前記第1板状部の前記第2面に向けて配置され第1孔部および第2孔部が形成されている第2板状部と、
前記第2板状部の前記第2面における長尺方向および短尺方向のいずれについても中央から一方に偏った位置に繋がって設けられ前記発電要素と接続される集電部とを有し、 前記第1固定部は、
前記第1孔部内に位置する第1柱状部と、
前記第2板状部の前記第2面上で前記第1柱状部より大径に広がっている第1傘部とを有し、
前記第2固定部は、
前記第2孔部内に位置する第2柱状部と、
前記第2板状部の前記第2面上で前記第2柱状部より大径に広がっている第2傘部とを有し、
前記第1傘部の少なくとも一部および前記第2傘部の少なくとも一部のいずれか一方または両方が、前記第2板状部の前記第2面に接合されており、
前記第2板状部の長尺方向に対して、前記第1孔部の中心が、前記集電部の付け根の中心と前記第2孔部の中心との間にあり、
前記第2板状部の短尺方向の中央に対して、
前記集電部の付け根の中心が偏っており、
前記第1孔部の中心が、前記集電部の付け根の中心の偏りとは逆向きに偏っている電池用端子。
【請求項2】
請求項1に記載の電池用端子であって、
前記第2板状部の短尺方向の中央に対して、前記第2孔部の中心が、前記集電部の付け根の中心の偏りとは逆向きに偏っている電池用内部端子。
【請求項3】
外装体と、前記外装体の内部に収納された発電要素と、前記発電要素と接続された端子とを有する電池であって、
前記端子は、請求項1または請求項2に記載の電池用端子である電池。
【請求項4】
請求項3に記載の電池であって、
前記端子に、他の電池と繋がるバスバーが接合されている電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示技術は、電池用端子に関する。本開示技術はまた、電池用端子を用いた電池にも関する。
【背景技術】
【0002】
従来から電池では、外装体に設けられた穴を貫通する端子が用いられている。特許文献1に記載されている電池では、端子が外装体に対して、その穴を貫通するように配置されている。その状態で、端子と外装体の穴との間を埋めるように絶縁材を一体成形している。端子は外装体の内部で電極体と接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した従来の技術には、端子がダメージを受ける場合があった。端子を外装体の穴に対して配置した後に、バスバーの接合時の熱ストレス、あるいは車両搭載後の走行時の振動ストレス等が掛かるからである。特に、端子自体が2部品を接合した2ピース構成である場合に、ピース間の接合箇所にストレスが集中する傾向があった。
【0005】
本開示技術は、前記した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは、ストレスに対して強い電池用端子、およびその電池用端子を用いた電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示技術の一態様における電池用端子は、電池の外装体の内部に配置される発電要素と外装体の外部に配置される外部導電部材とを接続する端子部材であって、異種の導電材で構成された第1ピースおよび第2ピースを有する2ピース構成であり、第1ピースが、第1面および第2面を有し第1面が電池における外向きになるように配置され外部導電部材と接続される第1板状部と、第1板状部の第2面に設けられ第2ピースを固定する第1固定部および第2固定部とを有し、第2ピースが、第1面および第2面を有し平面視にて長尺方向と短尺方向とを有する形状であるとともに、第1面を第1板状部の第2面に向けて配置され第1孔部および第2孔部が形成されている第2板状部と、第2板状部の第2面における長尺方向および短尺方向のいずれについても中央から一方に偏った位置に繋がって設けられ発電要素と接続される集電部とを有し、第1固定部は、第1孔部内に位置する第1柱状部と、第2板状部の第2面上で第1柱状部より大径に広がっている第1傘部とを有し、第2固定部は、第2孔部内に位置する第2柱状部と、第2板状部の第2面上で第2柱状部より大径に広がっている第2傘部とを有し、第1傘部の少なくとも一部および第2傘部の少なくとも一部のいずれか一方または両方が、第2板状部の第2面に接合されており、第2板状部の長尺方向に対して、第1孔部の中心が、集電部の付け根の中心と第2孔部の中心との間にあり、第2板状部の短尺方向の中央に対して、集電部の付け根の中心が偏っており、第1孔部の中心が、集電部の付け根の中心の偏りとは逆向きに偏っているものである。
【0007】
上記態様における電池用端子では、2ピース構成の第1ピースが電池における一部外向きに配置され第2ピースは電池の外装体の内部に配置される。第1ピースの第1板状部と第2ピースの第2板状部とは、第1板状部に設けられた第1固定部および第2固定部と、第2板状部に設けられた第1孔部および第2孔部とにより固定されている。第2板状部の短尺方向に対して、集電部の偏りと第1固定部の偏りとが逆であることで、第1ピースと第2ピースとの接合がストレスに対して強いものとなっている。
【0008】
上記態様に係る電池用端子ではさらに、第2板状部の短尺方向の中央に対して、第2孔部の中心が、集電部の付け根の中心の偏りとは逆向きに偏っていることが望ましい。第1固定部ばかりでなく第2固定部も集電部の偏りとは逆向きの偏りとされていることで、ストレスへの耐性がさらに良好である。
【0009】
本開示技術の一態様における電池は、外装体と、外装体の内部に収納された発電要素と、発電要素と接続された端子とを有する電池であって、端子の少なくとも一方として前述のいずれかの電池用端子を用いるものである。電池用端子のストレス耐性が高いことで、電池としての信頼性も高い。
【0010】
上記態様に係る電池ではさらに、端子に、他の電池と繋がるバスバーが接合されていることが望ましい。バスバーが接合されるときにも電池用端子にストレスが掛かるので、ストレス耐性の高い電池用端子を用いることの意義が大きい。
【発明の効果】
【0011】
本開示技術によれば、ストレスに対して強い電池用端子、およびその電池用端子を用いた電池が提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】
図1の電池における蓋体および外部端子の斜視図である。
【
図3】実施の形態に係る電池用端子の斜視図である。
【
図4】
図3の電池用端子の断面図(その1)である。
【
図6】
図3の電池用端子の断面図(その2)である。
【
図8】第2ピースに下向きの力が掛かる状況を説明する模式図である。
【
図9】第2ピースに外向きの力が掛かる状況を説明する模式図である。
【
図10】固定部に掛かるモーメントの大きさについてのシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図11】バスバーを用いた電池スタックを示す斜視図である。
【
図12】バスバー溶接時の状況を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示技術を具体化した実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は、電池の端子部分に用いられる電池用端子およびそれを用いた電池として本開示技術を具体化したものである。本形態に係る電池1は、概略、
図1に示されるように、外装体2の内部に発電要素3を収納したものである。
【0014】
外装体2は、箱体4と蓋体5とで構成されている。電池1は全体として平板角形状の外形のものである。その上部の蓋体5の長手方向両端付近には、正負の外部端子6、7が設けられている。外部端子6、7の箇所にはそれぞれ、電池用端子8、9が、絶縁材10を介して取り付けられている。外部端子6、7の電池用端子8、9はそれぞれ、外装体2の内部で、発電要素3の正負の電極板と接続されている。
図1の電池1の電池用端子8、9には、後述するバスバー11が取り付けられる。
【0015】
図1に示した電池1における蓋体5および外部端子6、7を
図2に示す。
図2に示されるものは、蓋体5に電池用端子8、9を取り付け、絶縁材10で固定した段階のものである。蓋体5における外部端子6、7の箇所には実際には穴が開けられており、電池用端子8、9はその穴を貫通して配置されている。
図2中の電池用端子8、9の下端部12、13に発電要素3が取り付けられる。そして発電要素3を箱体4に収納して蓋体5を箱体4に接合することで
図1の電池1が得られる。
【0016】
電池用端子8、9のうちの負極用のものである電池用端子8を
図3に示す。電池用端子8は、上方の第1ピース14と下方の第2ピース15とを有する2ピース構成ものである。第1ピース14と第2ピース15とは異種の導電材で構成されている。ここでは、第1ピース14がアルミ製で第2ピース15が銅製であることとする。発電要素3と接続される下端部12は第2ピース15の一部である。
【0017】
電池用端子8の断面図を
図4に示す。
図4は、
図3中のA-A箇所の断面図である。この断面は、蓋体5の短辺と平行な断面である。電池用端子8では
図4に示されるように、第1ピース14が第1板状部16と固定部17とを有し、第2ピース15が第2板状部19と集電部20とを有している。
【0018】
第1ピース14について、第1板状部16の第1面21は、電池1における外向きとなる面である。固定部17は、
図3中では見えていなかった部位であるが、第2ピース15を第1ピース14に固定するための部位である。固定部17は、第1板状部16の第2面22に設けられている。第1板状部16は、バスバー11と接続される部位でもある。
【0019】
第2ピース15について、第2板状部19は、第1板状部16と重ねられている板状の部位である。第2板状部19の第1面23が第2面22に向けられている。集電部20は、第2板状部19の第2面24から下方に繋がって設けられている。集電部20の下端部12が、発電要素3の負極板と接続される部位である。
【0020】
電池用端子8を下方から見た底面図を
図5に示す。
図5中の上下方向は、第2板状部19の長尺方向であり、蓋体5の長辺と平行な方向である。
図5中の左右方向は、第2板状部19の短尺方向であり、蓋体5の短辺と平行な方向である。
図5から分かるように集電部20は、第2板状部19における長尺方向と短尺方向とのいずれについても中央から一方に偏った位置に繋がって設けられている。
【0021】
電池用端子8の別の断面での断面図を
図6に示す。
図6は、
図4中のB-B箇所の断面図である。この断面は、蓋体5の長辺と平行な断面である。
図7に第2ピース15を単体として示す。
図5、
図6から分かるように、
図4に示した固定部17は、実際には第1固定部17と第2固定部18との2つある。第1固定部17と第2固定部18とは、第1板状部16の長尺方向(第2板状部19の長尺方向と同じ)に並んで設けられている。
【0022】
図6、
図7に示されるように、第2板状部19には、第1孔部25および第2孔部26が形成されている。第1孔部25および第2孔部26はそれぞれ、第1固定部17、第2固定部18を貫通させるための部位である。第1固定部17は第1柱状部27と第1傘部28とを有しており、第2固定部18は第2柱状部29と第2傘部30とを有している。
【0023】
第1柱状部27、第2柱状部29はそれぞれ、第1孔部25、第2孔部26の内部に位置する部分である。第1傘部28、第2傘部30はそれぞれ、第2面24上で第1柱状部27、第2柱状部29より大径に広がっている部分である。第1傘部28、第2傘部30はそれぞれ、第1柱状部27、第2柱状部29を介して第2面22に繋がっている。
【0024】
第1固定部17、第2固定部18はもともとは、第1傘部28、第2傘部30がなく、第1柱状部27、第2柱状部29のみで、その長さが第2板状部19の厚さより長い形状、つまりリベット状であったものである。第1面23を第2面22に重ね合わせた後にリベット加工により第1傘部28、第2傘部30を形成して電池用端子8として一体化したものである。第1ピース14はアルミ製であるためリベット加工は容易である。リベット加工後に第1傘部28、第2傘部30のいずれか一方または両方の少なくとも一部が、第2面24に対して超音波接合等により接合されている。第2面24と第1傘部28または第2傘部30との接合部31を
図4(第1傘部28が接合される場合)、
図6(両方が接合される場合)では太線で示している。
【0025】
図5中には、集電部20の付け根の中心32、第1孔部25の中心33、第2孔部26の中心34を重ねて示している。これらの位置関係を説明する。これら3つの中心位置の位置関係には、第2板状部19の長尺方向(上下方向)についての位置関係と、短尺方向(左右方向)についての位置関係との2つがある。
【0026】
長尺方向の位置関係を説明する。長尺方向については、第1孔部25の中心33が、集電部20の付け根の中心32と第2孔部26の中心34との間にある。
図5中では上から、中心32、中心33、中心34の順番となっている。このことの意味は、第1固定部17と第2固定部18とが長尺方向について異なる位置にある、ということである。第1ピース14と第2ピース15との結合箇所が、長尺方向について異なる位置に配置されているため、近接した2箇所の場合と比較して結合強度上有利である。
【0027】
短尺方向の位置関係を説明する。まず前述のことから、集電部20の付け根の中心32が、短尺方向の中央Cから一方に偏って位置している。
図5中では中心32は中央Cより左に偏っている。これに対して第1孔部25の中心33は、中央Cに対して、中心32とは逆向きに偏って位置している。
図5中では中心33は中央Cより右に偏っている。
図5中ではさらに、第2孔部26の中心34も中心33と同様に右に偏って位置している。
【0028】
集電部20の付け根の中心32と第1孔部25の中心33とが中央Cに対して逆向きに偏っていることによる意義を説明する。この偏りの意義は、後の工程において電池用端子8に掛かるストレスの軽減にある。電池用端子8に対しては後の工程で、第2ピース15に対して力が掛かる場合がある。例えば、
図8に示すように第2ピース15を下向きに引っ張る垂直方向の力Gが掛かる場合がある。この場合には第1固定部17に対して、
図8中で反時計回りのモーメントMAが発生する。例えば発電要素3の取り付け後で蓋体5への挿入前の段階では、発電要素3の重量により
図8のようなことが起こりうる。あるいは、
図9に示すように第2ピース15を外向きに倒そうとする水平方向の力Fが掛かる場合がある。この場合には第1固定部17に対して、
図9中で反時計回りのモーメントMBが発生する。例えば発電要素3を蓋体5に挿入するときに
図9のようなことが起こりうる。
【0029】
これらの場合におけるモーメントMA、モーメントMBの大きさには、前述の短尺方向における第1孔部25の中心33の配置が大きく影響する。中心33の短尺方向位置により、支点位置に対する中心33の距離が左右されるからである。このことについての本発明者によるシミュレーション結果を
図10に示す。
図10のグラフにおける横軸は、短尺方向における中心33の位置である。
図10中で左側が
図5中での左偏り、つまり集電部20と同じ側への偏りに相当し、右側が
図5中での左偏り、つまり集電部20と反対側への偏りに相当する。
図10の縦軸は、モーメントMA、モーメントMBの大きさである。シミュレーション上、力G、力Fの大きさは一定としている。
【0030】
図10を見ると、モーメントMAのグラフとモーメントMBのグラフとでは線形に違いがある。まずモーメントMAのグラフに着目する。モーメントMAのグラフは、緩やかな傾斜の右肩上がりの線形である。つまり、力Gが一定であれば、中心33が左偏りであるほどモーメントMAが小さく、右偏りであるほどモーメントMAが大きい。ただし右偏りの場合にモーメントMAが大きいとはいえ、その程度はごく僅かである。
【0031】
これに対してモーメントMBのグラフは、全体としての傾斜の向きがモーメントMAの傾斜とは逆である。それだけではなくモーメントMBのグラフは、中央よりも左側の領域では、左側に偏るほどその傾斜そのものが急峻となっている。このため、中心33が集電部20と同じ側に偏っていると、水平方向の力Fが掛かった場合のモーメントMBが非常に大きく、接合部31等にダメージが発生する可能性がある。
【0032】
このため本形態では第1孔部25および第1固定部17を前述のように、短尺方向に関して集電部20の付け根の中心32とは逆向きに偏らせた配置としているのである。これにより、第2ピース15に水平方向の力Fが掛かった場合でも、接合部31に大きなダメージが発生しないようにしている。
図5中での第1孔部25の中心33の左右方向での位置は、
図10中でモーメントMAのグラフとモーメントMBのグラフとが交差する辺り、に相当する位置である。この位置が、水平方向の力Fと垂直方向の力Gとの両方を考慮してもそのトータルでの影響が最も小さいと考えられる位置である。
【0033】
同様のことは、第2孔部26の中心34の位置についても言える。中心34の位置も中心33の位置と同様、集電部20とは逆向きに偏った位置に配置することが好ましい。ただし第2孔部26の中心34の位置の影響よりも、前述の第1孔部25の中心33の位置の影響の方が大きい。
図5における長尺方向の説明で述べたように長尺方向で見れば、中心34の集電部20からの距離よりも、中心33の集電部20からの距離の方が短いからである。
【0034】
上記で「集電部20の付け根の中心32」と述べたが、これについては例えば、
図5中にて集電部20が占めている領域、つまり集電部20の付け根の幾何学上の重心を用いることができる。あるいは、集電部20が占めている領域の左右方向の最大範囲の中央でかつ上下方向の最大範囲の中央に相当する位置を中心32としてもよい。
【0035】
電池用端子8にストレスが掛かる状況としては上記の他に、バスバー11の取り付け時が挙げられる。バスバー11とは、
図11に示すような電池スタック35において電池1同士の接続を行う導電部材である。
図11でバスバー11は、隣り合う電池1の一方の電池用端子8と他方の電池用端子9とを接続している。
図11中には2つの電池1しか現れていないが実際の電池スタック35ではもっと多数の電池1がバスバー11を介して直列に接続されている。
【0036】
このため電池用端子8に対してバスバー11を接合する工程が存在する。電池用端子8のうちバスバー11と接合されるのは、第1ピース14の第1板状部16である。より詳細には、電池1の外部端子6の箇所にて外向きに配置されている第1面21である。第1面21へのバスバー11への接合には、レーザー溶接その他の溶接が用いられる。
図11中に示される矢印Lは、レーザー溶接に照射するレーザー光を意図している。
【0037】
図12に示すように、バスバー11の接合時には、バスバー11および第1板状部16の一部が局所的に溶融し、溶融部36が形成される。溶融部36が形成される時点では、バスバー11および第1板状部16における溶融部36以外の箇所も平時に比べてかなり高温となっており、熱膨張している。その後、バスバー11および第1板状部16の温度が常温に戻る際に、そのサイズも熱膨張前のサイズに戻る。このときに溶融部36が再凝固するので、溶融部36およびその周囲は強く収縮しようとする。溶融部36は溶接痕となる。
【0038】
この、溶融部36およびその周囲の強い収縮により、接合後の第1板状部16およびバスバー11は、張力Tが掛かった状態となる。この張力Tは電池用端子8におけるストレス要因となる。しかし本形態では、第1ピース14と第2ピース15との接続が、2箇所の固定部17、18によりなされている。このため、柱状部が2箇所(第1柱状部27、第2柱状部29)あり、電池用端子8の全体としての剛性が高い。このため、再凝固時の収縮による張力Tが掛かった状態でも、接合部31があまり劣化しない。
【0039】
さらに、電池スタック35は、車両用の車載電池として使用される場合がある。その場合には車両の走行時の振動が電池1内の電池用端子8へのストレスとして継続的に作用する場合がある。しかしその場合でも、本形態の構成であれば電池用端子8のストレス耐性が高い。その理由は前述と同じく、電池用端子8において第1固定部17、第2固定部18が集電部20とは逆向きに偏って設けられていることによる。また、固定部(17、18)が1つの電池用端子8に2箇所設けられていることによる。
【0040】
以上詳細に説明したように本実施の形態によれば、電池1の2ピース構成の電池用端子8について、第1ピース14と第2ピース15との固定を、2箇所の固定部(第1固定部17、第2固定部18)で行うとともに、これらの短尺方向における位置を、集電部20とは逆向きに偏った位置に配置している。これにより、第1ピース14と第2ピース15との固定後に受けることがあるストレスに対して強い電池用端子8、およびその電池用端子8を用いた電池1が実現されている。
【0041】
本実施の形態および実施例は単なる例示にすぎず、本開示技術を何ら限定するものではない。したがって本開示技術は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。例えば、第1固定部17と第2固定部18とのサイズが違っていてもよい。
図13はその例であり、
図5と同じ視線でのものである。
図13の例では、第1固定部17の第1傘部28よりも第2固定部18の第2傘部30の方が大きくなっている。大小関係はこれと逆でもよい。また、第1傘部28のサイズと第2傘部30のサイズとに差があるものに限らず、第1柱状部27の径と第2柱状部29の径とに差があるものであってもよい。この場合、第1孔部25の径と第2孔部26の径とにも差がある。
【0042】
また、第1固定部17と第2固定部18とで、短尺方向における中央Cからの偏り量は同じでなくてもよい。さらに、第1固定部17のみが集電部20と逆向きの偏りになっていれば十分であり、第2固定部18については、中央Cに配置され、あるいは集電部20と同じ向きの偏りになっていてもよい。ただし第2固定部18も集電部20と逆向きの偏りになっていた方がより有利である。
【0043】
また、本開示技術の適用対象となる電池用端子は、負極用に限らず正極用であってもよい。負極用と正極用との両方に本開示技術を適用してもよい。第1ピース14と第2ピース15との材種としては、前述のアルミと銅に限らず、他の種類の金属または合金であってもよい。電池1の電池種は問わない。
【符号の説明】
【0044】
1 電池 9 電池用端子
2 外装体 11 バスバー
3 発電要素 14 第1ピース
5 蓋体 15 第2ピース
8 電池用端子 16 第1板状部
17 第1固定部 26 第2孔部
18 第2固定部 27 第1柱状部
19 第2板状部 28 第1傘部
20 集電部 29 第2柱状部
21 第1板状部の第1面 30 第2傘部
22 第1板状部の第2面 31 接合部
23 第2板状部の第1面 32 集電部の付け根の中心
24 第2板状部の第2面 33 第1孔部の中心
25 第1孔部 34 第2孔部の中心