(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034897
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
E02F 9/22 20060101AFI20240306BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
E02F9/22 H
E02F9/22 L
B60L15/20 J
B60L15/20 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139456
(22)【出願日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】松尾 興祐
(72)【発明者】
【氏名】金子 悟
(72)【発明者】
【氏名】吉村 正利
(72)【発明者】
【氏名】関野 聡
(72)【発明者】
【氏名】歌代 浩志
【テーマコード(参考)】
2D003
5H125
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB01
2D003AB03
2D003AB04
2D003AC01
2D003BA01
2D003BB03
2D003BB12
2D003CA02
2D003CA10
2D003DA02
2D003DA04
2D003DB01
2D003DB02
2D003DB03
2D003DC02
2D003FA02
5H125AA12
5H125BA00
5H125CA01
5H125CA15
5H125DD16
5H125EE08
5H125EE09
5H125EE41
5H125EE51
5H125EE70
(57)【要約】
【課題】車輪がスリップした場合に駆動力を制限可能な作業車両であって、より早期に車輪のスリップを検知することにより、作業効率の向上が可能な作業車両を提供する。
【解決手段】作業車両は、車輪を有する車体と、車体に搭載された油圧ポンプと、油圧ポンプから吐出される作動油によって駆動される油圧アクチュエータを有する作業装置と、油圧アクチュエータの圧力を検出する圧力センサと、車輪を駆動する走行駆動装置と、走行駆動装置の駆動力を検出する駆動力センサと、走行駆動装置の駆動力を制御する制御装置と、を備える。制御装置は、圧力センサの検出結果に基づいて、作業装置が作業対象物から受ける反力に応じた油圧アクチュエータの推力を演算し、走行駆動装置の駆動力が上昇中であるにもかかわらず油圧アクチュエータの推力が増加していないことを含むスリップ判定条件が成立した場合には、駆動力を制限する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を有する車体と、
前記車体に搭載された油圧ポンプと、
前記油圧ポンプから吐出される作動油によって駆動される油圧アクチュエータを有する作業装置と、
前記油圧アクチュエータの圧力を検出する圧力センサと、
前記車輪を駆動する走行駆動装置と、
前記走行駆動装置の駆動力を検出する駆動力センサと、
前記走行駆動装置の駆動力を制御する制御装置と、を備えた作業車両において、
前記制御装置は、
前記圧力センサの検出結果に基づいて、前記作業装置が作業対象物から受ける反力に応じた前記油圧アクチュエータの推力を演算し、
前記走行駆動装置の駆動力が上昇中であるにもかかわらず前記油圧アクチュエータの推力が増加していないことを含むスリップ判定条件が成立した場合には、前記駆動力を制限する
ことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
請求項1に記載の作業車両において、
前記スリップ判定条件には、前記作業装置により前記作業対象物を掘削する作業が行われている掘削作業状態であることが含まれる
ことを特徴とする作業車両。
【請求項3】
請求項2に記載の作業車両において、
前記走行駆動装置に設けられる走行電動機の回転速度を検出するモータ速度センサを備え、
前記制御装置は、
前記モータ速度センサの検出結果に基づいて、前進する前記車体が減速しているか否かを判定し、
前進する前記車体が減速していること、及び、前記油圧アクチュエータの推力が所定値以上であること、を含む、掘削作業判定条件が成立した場合に、前記掘削作業状態であると判定する
ことを特徴とする作業車両。
【請求項4】
請求項2に記載の作業車両において、
前記スリップ判定条件には、前記作業装置が操作されていないことが含まれる
ことを特徴とする作業車両。
【請求項5】
請求項1に記載の作業車両において、
前記制御装置は、
前記スリップ判定条件が成立したときの前記油圧アクチュエータの推力に基づいて、摩擦係数推定値を演算し、
前記摩擦係数推定値に基づいて駆動力上限値を演算し、
前記走行駆動装置の駆動力が前記駆動力上限値を超えないように、前記駆動力を制御する
ことを特徴とする作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
作業車両として、例えば、車体を移動させるための走行装置と、土砂などを掘削するためのバケット及びアームを有する作業装置と、を備えたホイールローダが知られている。このような作業車両が行う作業の一つである掘削作業は、オペレータが例えばアクセルペダルを操作することで車体を前進させるための駆動力を上昇させながら、バケットを地山等の作業対象物に貫入させ、バケットを上昇させることで作業対象物を掬いとる作業である。
【0003】
作業車両が掘削作業中、車体を前進させるための駆動力がタイヤと地面との間の最大静止摩擦力を超えた場合に、タイヤがスリップしてしまう。掘削作業中にスリップが生じると、バケットを作業対象物に対して十分に貫入することができないため、作業効率が低下する。オペレータは、掘削作業中にスリップしない程度の駆動力を感覚で調整しなければならないため、オペレータの操作負担が大きい。
【0004】
そこで、作業車両の掘削作業時のスリップの発生を自動的に抑制する技術が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1には、「作業機が備えられ、エンジンの動力が駆動力伝達経路を介してタイヤに駆動力として伝達される作業車両の駆動力制御装置であって、駆動力伝達経路に設けられ、タイヤに伝達される駆動力が変更自在の駆動力可変手段と、タイヤスリップが発生したことを検出するタイヤスリップ検出手段と、駆動力を計測する駆動力計測手段と、駆動力がタイヤスリップ検出時点の駆動力未満になるように、駆動力可変手段を制御する駆動力制御手段とを備えたことを特徴とする作業車両の駆動力制御装置」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術のように、車輪速(タイヤの速度)に基づいてスリップを検出する技術では、車輪速が緩やかに上昇するようなスリップが発生した場合、車輪速がスリップ判定用の閾値に達するまでに時間を要し、スリップの検出に遅れが生じるおそれがある。スリップの検出に遅れが生じると、スリップが発生している時間がその分長くなるため、作業効率が低下してしまう。
【0007】
本発明は、車輪がスリップした場合に駆動力を自動的に制限することによりオペレータの操作負担を軽減可能な作業車両であって、より早期に車輪のスリップを検知することによりスリップの継続時間を短縮し、作業効率の向上が可能な作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様による作業車両は、車輪を有する車体と、前記車体に搭載された油圧ポンプと、前記油圧ポンプから吐出される作動油によって駆動される油圧アクチュエータを有する作業装置と、前記油圧アクチュエータの圧力を検出する圧力センサと、前記車輪を駆動する走行駆動装置と、前記走行駆動装置の駆動力を検出する駆動力センサと、前記走行駆動装置の駆動力を制御する制御装置と、を備える。前記制御装置は、前記圧力センサの検出結果に基づいて、前記作業装置が作業対象物から受ける反力に応じた前記油圧アクチュエータの推力を演算し、前記走行駆動装置の駆動力が上昇中であるにもかかわらず前記油圧アクチュエータの推力が増加していないことを含むスリップ判定条件が成立した場合には、前記駆動力を制限する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、車輪がスリップした場合に駆動力を自動的に制限することによりオペレータの操作負担を軽減可能な作業車両であって、より早期に車輪のスリップを検知することによりスリップの継続時間を短縮し、作業効率の向上が可能な作業車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】
図2は、ホイールローダの制御システムの構成図である。
【
図3】
図3は、メインコントローラの機能ブロック図である。
【
図4】
図4は、スリップ時推力と摩擦係数推定値との関係を規定する相関マップの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、摩擦係数推定値と駆動力上限値との関係を規定する相関マップの一例を示す図である。
【
図6】
図6は、メインコントローラにより実行される走行駆動力制御のメインフローの一例について示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、
図6の掘削判定フラグの設定処理の一例について示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、
図6のスリップ判定フラグの設定処理の一例について示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、本実施形態及び比較例に係るホイールローダの各パラメータ(バケット操作量、アーム操作量、走行駆動力、アームシリンダ推力、車輪速、及びスリップ判定フラグ)の時系列変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明に係る作業車両の実施形態について説明する。図面の説明において同一の要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。本実施形態では、作業車両が、電動駆動式のホイールローダである例について説明するが、本発明の作業車両はホイールローダに限定されず、ブルドーザー等であっても良い。また、本実施形態では、エンジン及び発電電動機を駆動源とするハイブリッドシステムが採用される例を挙げて説明するが、エンジンのみを駆動源として用いるシステムが採用されても良い。さらに、以下の説明では、上下、左右、前後の方向及び位置は、作業車両の通常の使用状態、すなわち4つの車輪が走行面に接地している状態を基準とする。
【0012】
-ホイールローダの構成-
図1は、ホイールローダ1の側面図である。
図1に示すように、ホイールローダ1は、電動式の走行駆動装置45が搭載された車体8と、車体8の前部に取り付けられた多関節型の作業装置6とを備えている。車体8は、アーティキュレート操舵式(車体屈折式)のものであり、前部車体8Aと、後部車体8Bと、前部車体8Aと後部車体8Bを連結するセンタージョイント10とを有する。
【0013】
前部車体8Aには作業装置6が取り付けられている。後部車体8Bには、運転室12及びエンジン室16が配置されている。運転室12内には、オペレータが着座する座席と、オペレータによって操作される操作装置が設けられている。エンジン室16には、エンジン20(
図2参照)、エンジン20により駆動される油圧ポンプ30A,30B,30C(
図2参照)、及びバルブ等の油圧機器が搭載されている。
【0014】
作業装置6は、前部車体8Aに上下方向に回動自在に取り付けられるリフトアーム(以下、単にアームと記す)2と、アーム2を駆動する油圧シリンダ(以下、アームシリンダとも記す)4と、アーム2の先端部分に前後方向に回動自在に取り付けられるバケット3と、バケット3を駆動する油圧シリンダ(以下、バケットシリンダとも記す)5とを有する。駆動対象部材であるアーム2は、アームシリンダ4の伸縮動作に応じて動かされる。駆動対象部材であるバケット3は、バケットシリンダ5の伸縮動作に応じて動かされる。なお、アーム2及びアームシリンダ4は、前部車体8Aの左右に1つずつ設けられる。また、本実施形態では、バケット3を作動させるためのリンク機構として、Zリンク式(ベルクランク式)のリンク機構が採用されている。
【0015】
ホイールローダ1は、車体8に設けられた車輪7を駆動する走行駆動装置45を備える。走行駆動装置45は、走行電動機43と、走行電動機43から駆動力(以下、走行駆動力とも記す)が与えられる走行装置11とを含む。走行装置11は、前部車体8Aに取り付けられる車輪7である前輪7Aと、後部車体8Bに取り付けられる車輪7である後輪7Bと、走行電動機43からの走行駆動力(動力)を車輪7に伝達する動力伝達装置とを有する。動力伝達装置は、アクスル、デファレンシャル装置、プロペラシャフト等を含んで構成される。走行電動機43からの動力は、動力伝達装置を介して前輪7A及び後輪7Bの少なくとも一方に伝達される。
【0016】
走行電動機43は、走行装置11の車輪7を動作させる電動モータである。走行電動機43は、エンジン20の動力によって回転する発電電動機40(
図2参照)によって発電された電力により回転駆動される。
【0017】
ホイールローダ1は、前部車体8Aと後部車体8Bとを連結するように設けられる左右一対の油圧シリンダ(以下、ステアリングシリンダとも記す)15を有するステアリング装置22(
図2参照)によって転舵される。
【0018】
-ホイールローダの制御システム-
図2は、ホイールローダ1の制御システムの構成図である。
図2に示すように、ホイールローダ1は、エンジン20と、エンジン20に燃料を供給する燃料噴射装置23と、エンジン20に機械的に接続される発電電動機40と、エンジン20及び発電電動機40に機械的に接続される油圧ポンプ30A,30B,30Cと、油圧ポンプ30Aから吐出される作動油によって駆動される作業装置6と、作業装置6の動作を制御するフロント制御部31と、油圧ポンプ30Bから吐出される作動油によって駆動されるブレーキ装置21と、ブレーキ装置21の動作を制御するブレーキ制御部32と、油圧ポンプ30Cから吐出される作動油によって駆動されるステアリング装置22と、ステアリング装置22を制御するステアリング制御部33と、発電電動機40によって発電された電力によって駆動される走行駆動装置45とを備える。
【0019】
作業装置6及び走行駆動装置45は、エンジン20の動力によって、互いに独立して駆動される。原動機であるエンジン20は、例えば、ディーゼルエンジン等の内燃機関により構成される。発電電動機40は、エンジン20から出力されるトルクによって回転し、発電する発電機として機能する。
【0020】
油圧ポンプ30A,30B,30Cは、エンジン20が出力するトルクによって駆動されて作動油を吐出する。なお、発電電動機40が電動機として機能する場合には、エンジン20及び発電電動機40が出力するトルクによって、油圧ポンプ30A,30B,30Cが駆動される。
【0021】
油圧シリンダ(油圧アクチュエータ)4,5,15,17,18は、エンジン20(
図2参照)が出力するトルクによって回転する油圧ポンプ30A,30B,30Cから吐出される作動油(圧油)によって伸縮駆動される。
【0022】
フロント制御部31は、油圧ポンプ30Aからアームシリンダ4及びバケットシリンダ5へ供給される作動油の圧力、流量及び方向を制御する。これにより、アームシリンダ4及びバケットシリンダ5の伸縮動作が制御される。ブレーキ制御部32は、油圧ポンプ30Bからブレーキシリンダ17及び駐車ブレーキシリンダ18へ供給される作動油の圧力、流量及び方向を制御する。これにより、ブレーキシリンダ17及び駐車ブレーキシリンダ18の伸縮動作が制御される。ステアリング制御部33は、油圧ポンプ30Cからステアリングシリンダ15へ供給される作動油の圧力、流量及び方向を制御する。これにより、ステアリングシリンダ15の伸縮動作が制御される。
【0023】
ホイールローダ1は、車両全体の制御を行う制御装置であるメインコントローラ100と、メインコントローラ100からのエンジン回転速度指令に基づいて燃料噴射装置23を制御するエンジンコントローラ25と、エンジンコントローラ25からの燃料噴射量指令に基づいて燃料噴射量を制御する燃料噴射装置23と、メインコントローラ100から入力される発電電圧指令に基づいて発電電動機40を制御する発電電動機用のインバータ(以下、発電インバータと記す)41と、メインコントローラ100から入力される走行駆動トルク指令に基づいて走行電動機43のトルク(すなわち、走行駆動装置45により発生する走行駆動力)を制御する走行電動機用のインバータ(以下、走行インバータと記す)42と、運転室12内に設けられる各種操作装置(51~57)とを備える。
【0024】
運転室12内には、車体8の進行方向を切り替える前後進切替装置である前後進スイッチ51と、作業装置6のアームシリンダ4(アーム2)を操作するアーム操作装置52と、作業装置6のバケットシリンダ5(バケット3)を操作するバケット操作装置53と、走行駆動装置45を操作するアクセル操作装置56と、ブレーキシリンダ17を操作するブレーキ操作装置57と、駐車ブレーキシリンダ18を操作する駐車ブレーキ操作装置54と、左右一対のステアリングシリンダ15を操作するステアリング操作装置55とが設けられている。前後進スイッチ51は、操作位置として、前進位置(F)、待機位置(N)、及び後進位置(R)を有している。なお、説明の便宜上、作業装置6の操作装置52,53及び走行駆動装置45の操作装置56を総称して、操作装置50とも記す。
【0025】
アーム操作装置52は、アーム操作レバーと、アーム操作レバーの操作量(以下、アーム操作量とも記す)を検出するアーム操作量センサ52aとを備える。バケット操作装置53は、バケット操作レバーと、バケット操作レバーの操作量(以下、バケット操作量とも記す)を検出するバケット操作量センサ53aとを備える。アクセル操作装置56は、アクセルペダルと、アクセルペダルの操作量(以下、アクセル操作量とも記す)を検出するアクセル操作量センサ56aとを備える。ブレーキ操作装置57は、ブレーキペダルと、ブレーキペダルの操作量(以下、ブレーキ操作量とも記す)を検出するブレーキ操作量センサ57aとを備える。ステアリング操作装置55は、ステアリングホイールと、ステアリングホイールの操作量(以下、ステアリング操作量とも記す)を検出するステアリング操作量センサ55aとを備える。アーム操作量センサ52a、バケット操作量センサ53a、アクセル操作量センサ56a、ブレーキ操作量センサ57a、ステアリング操作量センサ55aは、例えば、操作部材(操作レバーまたはペダル)の操作位置に応じた電圧をメインコントローラ100に出力するポテンショメータである。
【0026】
メインコントローラ100は、処理装置(動作回路)としてのCPU(Central Processing Unit)101、記憶装置としてのROM(Read Only Memory)102及びRAM(Random Access Memory)103、入力インタフェース104、出力インタフェース105、並びに、その他の周辺回路を備えたマイクロコンピュータで構成される。なお、エンジンコントローラ25も、メインコントローラ100と同様、処理装置(動作回路)、記憶装置及び入出力インタフェース等を備えたマイクロコンピュータで構成される。メインコントローラ100及びエンジンコントローラ25は、それぞれ1つのマイクロコンピュータで構成してもよいし、複数のマイクロコンピュータで構成してもよい。
【0027】
メインコントローラ100のROM102は、EEPROM等の不揮発性メモリであり、各種演算が実行可能なプログラムが格納されている。すなわち、メインコントローラ100のROM102は、本実施形態の機能を実現するプログラムを読み取り可能な記憶媒体である。RAM103は揮発性メモリであり、CPU101との間で直接的にデータの入出力を行うワークメモリである。RAM103は、CPU101がプログラムを演算実行している間、必要なデータを一時的に記憶する。なお、メインコントローラ100は、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ等の記憶装置をさらに備えていてもよい。
【0028】
CPU101は、ROM102に記憶されたプログラムをRAM103に展開して演算実行する処理装置であって、プログラムに従って入力インタフェース104及びROM102,RAM103から取り入れた信号に対して所定の演算処理を行う。
【0029】
入力インタフェース104には、各種操作装置(51~57)からの操作信号及び各種センサからのセンサ信号が入力される。入力インタフェース104は、入力された信号をCPU101で演算可能なデータに変換する。出力インタフェース105は、CPU101での演算結果に応じた出力用の信号を生成し、その信号をフロント制御部31、ブレーキ制御部32、ステアリング制御部33、発電インバータ41、走行インバータ42、及びエンジンコントローラ25等に出力する。
【0030】
メインコントローラ100は、各種操作装置から入力される操作信号及びその他の各種センサから入力されるセンサ信号に基づいて、フロント制御部31、ブレーキ制御部32、ステアリング制御部33、発電インバータ41、走行インバータ42、及びエンジンコントローラ25を統括的に制御する。
【0031】
メインコントローラ100に入力される操作信号としては、アクセル操作量センサ56aによって検出されるアクセル操作量、ブレーキ操作量センサ57aによって検出されるブレーキ操作量、アーム操作量センサ52aによって検出されるアーム操作量、バケット操作量センサ53aによって検出されるバケット操作量、ステアリング操作量センサ55aによって検出されるステアリング操作量、及び、前後進スイッチ51から出力される前後進スイッチ51の操作位置を表す信号がある。
【0032】
メインコントローラ100に入力されるセンサ信号としては、車体8とアーム2とを連結する連結軸に設けられるアーム相対角センサ62で検出された角度を表す信号、及び、アーム2とバケット3とを連結する連結軸に設けられるバケット相対角センサ63で検出された角度を表す信号がある。アーム相対角センサ62は、車体8に対するアーム2の相対角(傾斜角)を検出し、検出した角度を表す信号をメインコントローラ100に出力するポテンショメータである。バケット相対角センサ63は、アーム2に対するバケット3の相対角(傾斜角)を検出し、検出した角度を表す信号をメインコントローラ100に出力するポテンショメータである。地面(走行面)に対する車体8の角度は一定であるため、アーム相対角センサ62で検出される角度は、地面に対するアーム2の相対角(傾斜角)に相当するといえる。
【0033】
また、メインコントローラ100に入力されるセンサ信号としては、車輪速センサ61によって検出される車輪速(車輪(駆動輪)7の回転速度)を表す信号がある。車輪速センサ61により検出された車輪速は、車両の走行速度(車速)に変換可能である。車輪速センサ61は、車輪速を検出し、検出した車輪速を表す信号をメインコントローラ100に出力する。さらに、メインコントローラ100に入力されるセンサ信号としては、複数の回転速度センサによって検出されたエンジン20、発電電動機40、油圧ポンプ30A,30B,30C、及び走行電動機43の回転速度を表す信号、アームシリンダ圧センサ75によって検出されたアームシリンダ4の圧力(負荷圧)等を表す信号がある。
【0034】
複数の回転速度センサには、エンジン20の実回転速度を検出するエンジン回転速度センサ64と、走行電動機43の回転速度(以下、モータ速度とも記す)を検出するレゾルバ等のモータ速度センサ58とが含まれる。エンジン回転速度センサ64は、例えば、エンジン20の出力軸に設けられるロータリーエンコーダであり、検出した実エンジン回転速度を表す信号をメインコントローラ100に出力する。なお、エンジン回転速度センサ64は、エンジン20の出力軸に限らず、動力伝達装置を構成するいずれかの軸の回転速度を検出するものであってもよい。この場合、メインコントローラ100が、エンジン回転速度センサ64の検出結果に基づいて、実エンジン回転速度を演算する。
【0035】
モータ速度センサ58は、モータ速度を検出し、検出結果を表す信号をメインコントローラ100及び後述する駆動力センサ65に出力する。モータ速度センサ58によって検出されるモータ速度は、上記車輪速と相関関係がある。つまり、モータ速度センサ58により検出されたモータ速度は、車速に変換可能である。
【0036】
なお、図示する例では、エンジン回転速度センサ64は、メインコントローラ100に接続されているが、エンジンコントローラ25に接続してもよい。この場合、メインコントローラ100は、エンジン回転速度センサ64により検出された実エンジン回転速度を、エンジンコントローラ25を介して取得する。
【0037】
また、メインコントローラ100に入力されるセンサ信号としては、駆動力センサ65によって検出される走行駆動装置45の走行駆動力を表す信号がある。駆動力センサ65は、メインコントローラ100により演算される走行駆動トルクの指令値と、モータ速度センサ58から入力されるモータ速度と、車輪7の半径と、車輪7の慣性定数と、に基づき、走行駆動装置45の走行駆動力を演算し、その演算結果を表す信号をメインコントローラ100に出力する。車輪7の半径及び慣性定数は、例えば、駆動力センサ65が備えるメモリに記憶されている。なお、駆動力センサ65のメモリに記憶されているデータ(車輪7の半径及び慣性定数等)は、メインコントローラ100から出力されるデータにより更新可能である。
【0038】
駆動力センサ65は、以下の式(1)により、走行駆動力FMを演算する。
FM=(TM_COM-M×ΔSM)/R・・・(1)
ここで、TM_COMはメインコントローラ100により演算される走行駆動トルクの指令値であり、Mは車輪7の慣性定数であり、Rは車輪7の半径である。ΔSMは、走行電動機43の角加速度であり、モータ速度センサ58により検出されるモータ速度に基づき算出される。
【0039】
なお、駆動力センサ65は、上記構成に限定されない。例えば、駆動力センサ65は、トルクセンサにより検出される走行電動機43の出力トルク(モータトルク)に基づき、走行駆動力を演算してもよいし、電流センサにより検出される走行電動機43に流れる電流に基づき、走行駆動力を演算してもよい。また、駆動力センサ65が有する機能は、メインコントローラ100が有していてもよい。この場合、上記駆動力センサ65が省略されるとともに、モータ速度センサ58が駆動力に関する物理量(モータ速度)を検出する駆動力センサとして機能し、メインコントローラ100が、モータ速度センサ58の検出結果に基づき、走行駆動力FMを演算する。
【0040】
メインコントローラ100は、アクセル操作量、アーム操作量及びバケット操作量等に基づいて、エンジン20の目標回転速度(以下、目標エンジン回転速度とも記す)を演算する。メインコントローラ100は、目標エンジン回転速度に基づいて、回転速度指令値を演算し、エンジンコントローラ25に出力する。また、メインコントローラ100は、エンジン回転速度センサ64によって検出された実エンジン回転速度をエンジンコントローラ25に出力する。
【0041】
エンジンコントローラ25は、メインコントローラ100から取得した回転速度指令値と、エンジン回転速度センサ64によって検出された実エンジン回転速度とを比較して、実エンジン回転速度が回転速度指令値となるように燃料噴射装置23を制御する。燃料噴射装置23は、エンジンコントローラ25から出力される燃料噴射指令に基づいて、燃料噴射量を制御し、エンジン20を動作させる。
【0042】
このように、メインコントローラ100、エンジンコントローラ25及び燃料噴射装置23は、協働してエンジン20の動作を制御するエンジン制御装置を構成している。
【0043】
メインコントローラ100は、アーム操作装置52及びバケット操作装置53の操作方向及び操作量に基づいて、フロント制御指令を出力する。フロント制御部31は、メインコントローラ100からのフロント制御指令に基づき、油圧ポンプ30Aから吐出される作動油の圧力、流量及び方向を調整し、アームシリンダ4及びバケットシリンダ5を動作させる。フロント制御部31は、油圧ポンプ30Aから吐出される作動油の流れを制御する方向制御弁(流量制御弁)、及び、この方向制御弁のパイロット室に入力されるパイロット圧を生成する電磁弁等を有する。
【0044】
メインコントローラ100は、ブレーキ操作装置57の操作量、及び駐車ブレーキ操作装置54の操作スイッチの操作位置に基づいて、ブレーキ制御指令を出力する。ブレーキ制御部32は、メインコントローラ100からのブレーキ制御指令に基づき、油圧ポンプ30Bから吐出される作動油の圧力、流量及び方向を調整し、ブレーキシリンダ17及び駐車ブレーキシリンダ18を動作させる。ブレーキ制御部32は、油圧ポンプ30Bから吐出される作動油の流れを制御する方向制御弁(流量制御弁)、及び、この方向制御弁のパイロット室に入力されるパイロット圧を生成する電磁弁等を有する。
【0045】
メインコントローラ100は、ステアリング操作装置55のステアリングホイールの操作方向及び操作量に基づいて、ステアリング制御指令を出力する。ステアリング制御部33は、メインコントローラ100からのステアリング制御指令に基づき、油圧ポンプ30Cから吐出される作動油の圧力、流量及び方向を調整し、ステアリングシリンダ15を動作させる。ステアリング制御部33は、油圧ポンプ30Cから吐出される作動油の流れを制御する方向制御弁(流量制御弁)、及び、この方向制御弁のパイロット室に入力されるパイロット圧を生成する電磁弁等を有する。
【0046】
発電インバータ41及び走行インバータ42は、直流部(直流母線)44によって接続されている。発電インバータ41は、メインコントローラ100からの発電電圧指令に基づき、発電電動機40から供給される電力を利用して直流部44のバス電圧を制御する。走行インバータ42は、メインコントローラ100の走行駆動トルク指令に基づき、直流部44の電力を利用して走行電動機43を駆動させる。
【0047】
本実施形態では、エンジン20が出力するトルクによって油圧ポンプ30A,30B,30Cが駆動され、油圧ポンプ30A,30B,30Cから吐出される作動油によって、作業装置6、ブレーキ装置21及びステアリング装置22が駆動される。また、本実施形態では、エンジン20が出力するトルクによって発電電動機40が駆動され、発電電動機40で発生する電力によって走行電動機43が駆動される。
【0048】
アーム操作装置52のアーム操作レバーが操作されると、アームシリンダ4の伸縮動作によりアーム2が上下方向に回動(俯仰動)する。バケット操作装置53のバケット操作レバーが操作されると、バケットシリンダ5の伸縮動作によりバケット3が前後方向に回動(ダンプ動作またはクラウド動作)する。
【0049】
ステアリング操作装置55のステアリングホイールが操作されると、ステアリングシリンダ15の伸縮動作に伴って後部車体8Bに対し前部車体8Aがセンタージョイント10を中心にして左右に屈折(転舵)する。アクセル操作装置56のアクセルペダルが操作されると、走行電動機43の駆動により車輪7が回転し、ホイールローダ1が走行する。
【0050】
前後進スイッチ51が前進位置(F)に操作されている状態で、アクセル操作装置56のアクセルペダルが踏み込まれると、車輪7が前進方向に回転し、車体8が前進走行する。前後進スイッチ51が後進位置(R)に操作されている状態で、アクセル操作装置56のアクセルペダルが踏み込まれると、車輪7が後進方向に回転し、車体8が後進走行する。前後進スイッチ51が待機位置(N)に操作されている状態では、アクセル操作装置56のアクセルペダルが踏み込まれても、車輪7は回転せず、車体8は走行しない。なお、前後進スイッチ51が前進位置(F)または後進位置(R)に操作されている状態では、アクセルペダルが踏み込まれていなくても、極低速で車体8が前進走行または後進走行(クリープ走行)する。
【0051】
-メインコントローラの機能-
図3は、メインコントローラ100の機能ブロック図である。メインコントローラ100は、各センサからの検出信号に基づき、走行駆動トルク指令を生成し、走行インバータ42に出力することで、走行駆動装置45により発生する走行駆動力を制御する。以下、
図3を参照して、メインコントローラ100により走行駆動トルク指令を生成する際の各機能の詳細について説明する。
【0052】
図3に示すように、メインコントローラ100は、ROM102に記憶されているプログラムを実行することにより、モータ速度変化量演算部112、推力演算部110、推力変化量演算部111、駆動力変化量演算部113、掘削作業判定部114、スリップ判定部115、スリップ時推力保持部116、摩擦係数推定部117、駆動力上限値演算部118、走行要求駆動力演算部119、最小値選択部120、及びトルク指令生成部121として機能する。
【0053】
モータ速度変化量演算部112は、モータ速度センサ58で検出されたモータ速度SMの時間変化率(以下、速度変化率とも記す)ΔSMを演算する。モータ速度SMは、車体8が前進する場合には正の値となり、車体8が後進する場合には負の値となる。モータ速度変化量演算部112は、所定の制御周期で繰り返し検出されるモータ速度SMの前回値SMaと今回値SMbとの差(SMb-SMa)を前回値SMaを検出した時刻taから今回値SMbを検出した時刻tbまでの時間Δt(=tb-ta)で除することにより、速度変化率ΔSM(=(SMb-SMa)/(tb-ta))を算出する。したがって、速度変化率ΔSMは、前進する車体8が加速しているときには正の値となり、前進する車体8が減速しているときには負の値となる。また、速度変化率ΔSMは、車体8が一定速度で走行しているときには0となる。
【0054】
掘削作業判定部114は、作業装置6により地山等の作業対象物を掘削する作業が行われている掘削作業状態であるか、作業装置6により作業対象物を掘削する作業が行われていない非掘削作業状態であるかを判定する。掘削作業判定部114は、掘削作業状態であると判定した場合には掘削判定フラグFLdigをオンに設定し(FLdig=1)、非掘削作業状態であると判定した場合には掘削判定フラグFLdigをオフに設定する(FLdig=0)。
【0055】
掘削判定フラグFLdigは、掘削作業状態であるか非掘削作業状態であるかを示すものである。したがって、メインコントローラ100は、掘削判定フラグFLdigの設定状態に基づき、ホイールローダ1が掘削作業状態であるか否かを判定できる。
【0056】
掘削作業判定部114は、掘削作業条件が成立した場合に掘削作業状態であると判定する。ホイールローダ1が地山等の作業対象物に向かって前進し、その後、作業装置6が作業対象物に突入すると、車体8が減速するとともに作業装置6が作業対象物から受ける反力が増加する。反力の増加に応じてアームシリンダ4の推力も増加する。このため、本実施形態では、掘削作業条件は、以下の(条件I)及び(条件II)を含む。
(条件I) 前進する車体8が減速していること。
(条件II) アームシリンダ4の推力が所定値以上であること。
【0057】
前進する車体8が減速しているか否かは、モータ速度変化量演算部112で演算された速度変化率ΔSMに基づき判定できる。掘削作業判定部114は、速度変化率ΔSMが予め定められた速度変化率閾値S1以下である場合には、(条件I)が満たされていると判定する。掘削作業判定部114は、速度変化率ΔSMが速度変化率閾値S1よりも大きい場合には、(条件I)は満たされていないと判定する。速度変化率閾値S1は、予めROM102に記憶されている。速度変化率閾値S1は、ホイールローダ1が作業対象物に突入することにより、前進する車体8が減速しているか否かを判定するための閾値であり、0から余裕値(>0)を減算した値である。つまり、速度変化率閾値S1は0よりも小さい(S1<0)。この余裕値は、車体8の振動による走行電動機43の速度の変化やモータ速度センサ58の検出誤差などに起因する誤判定を防止するために、計算もしくは実験により予め定められる。
【0058】
作業装置6が作業対象物から反力を受けることによって増加するアームシリンダ4の推力は、アームシリンダ4のボトム側油室(不図示)内の作動油の圧力と比例関係にある。このため、本実施形態では、アームシリンダ圧センサ75で検出されたアームシリンダ圧PAに基づき、(条件II)が満たされているか否かを判定する。
【0059】
アームシリンダ圧センサ75は、
図2に示すように、アームシリンダ4のボトム側油室(不図示)とフロント制御部31とを接続する油路に設けられる圧力センサであって、アームシリンダ4のボトム側油室内の作動油の圧力(アームシリンダ圧)P
Aを検出し、検出結果を表す信号をメインコントローラ100に出力する。
図3に示す掘削作業判定部114は、アームシリンダ圧P
Aがシリンダ圧閾値P1以上である場合には、(条件II)が満たされていると判定する。掘削作業判定部114は、アームシリンダ圧P
Aがシリンダ圧閾値P1未満である場合には、(条件II)は満たされていないと判定する。シリンダ圧閾値P1は、計算もしくは実験において掘削作業が開始されたときに検出されたアームシリンダ圧に相当し、予めROM102に記憶されている。
【0060】
掘削作業判定部114は、掘削判定フラグFLdigがオフに設定されている場合であって、(条件I)及び(条件II)の全てが満たされた場合、掘削作業条件が成立したと判定する。すなわち、掘削作業判定部114は、ホイールローダ1の状態が非掘削作業状態から掘削作業状態に移行したと判定し、掘削判定フラグFLdigをオフからオンに切り替える(FLdig=1)。なお、掘削作業判定部114は、掘削判定フラグFLdigがオフに設定されている場合であって、(条件I)及び(条件II)のいずれかが満たされていない場合、掘削作業条件は成立していないと判定する。すなわち、掘削作業判定部114は、非掘削作業状態が継続されていると判定する。つまり、掘削判定フラグFLdigはオフ状態を維持する。
【0061】
ホイールローダ1は、掘削作業を終了すると、後進走行を行って作業対象物から離れる。このため、本実施形態に係る掘削作業判定部114は、前後進スイッチ51の操作位置に基づき、掘削作業終了条件が成立したか否か、すなわちホイールローダ1が作業状態から非作業状態に移行したか否かを判定する。掘削作業終了条件には、前後進スイッチ51が後進位置(R)に操作されていることを含む。
【0062】
掘削作業判定部114は、掘削判定フラグFLdigがオンに設定されている場合であって、前後進スイッチ51が後進位置(R)に操作されたときには、掘削作業終了条件が成立したと判定する。すなわち、掘削作業判定部114は、ホイールローダ1が作業状態から非作業状態に移行したと判定し、掘削判定フラグFLdigをオンからオフに切り替える(FLdig=0)。掘削作業判定部114は、掘削判定フラグFLdigがオンに設定されている場合であって、前後進スイッチ51が後進位置(R)に操作されていないときには、掘削作業終了条件は成立していないと判定する。すなわち、掘削作業判定部114は、掘削作業状態が継続されていると判定する。つまり、掘削判定フラグFLdigはオン状態を維持する。
【0063】
推力演算部110は、以下の式(2)により、アームシリンダ推力FAを演算する。
FA=PA×SA・・・(2)
ここで、PAはアームシリンダ圧センサ75で検出されたアームシリンダ圧であり、SAは予めROM102に記憶されているアームシリンダ4の受圧面積(断面積)である。アームシリンダ推力FAは、掘削作業状態において、作業装置6が作業対象物から受ける反力の増加に応じて増加する。
【0064】
推力変化量演算部111は、推力演算部110で演算されたアームシリンダ推力FAの時間変化率(以下、推力変化率とも記す)ΔFAを演算する。推力変化量演算部111は、所定の制御周期で繰り返し演算されるアームシリンダ推力FAの前回値FAaと今回値FAbとの差(FAb-FAa)を前回値FAaを検出した時刻taから今回値FAbを検出した時刻tbまでの時間Δt(=tb-ta)で除することにより、推力変化率ΔFA(=(FAb-FAa)/(tb-ta))を算出する。したがって、推力変化率ΔFAは、アームシリンダ推力FAが増加しているときには正の値となり、アームシリンダ推力FAが減少しているときには負の値となる。また、推力変化率ΔFAは、アームシリンダ推力FAが一定である場合には0となる。
【0065】
駆動力変化量演算部113は、駆動力センサ65で検出された走行駆動力FMの時間変化率(以下、駆動力変化率とも記す)ΔFMを演算する。駆動力変化量演算部113は、所定の制御周期で繰り返し検出される走行駆動力FMの前回値FMaと今回値FMbとの差(FMb-FMa)を前回値FMaを検出した時刻taから今回値FMbを検出した時刻tbまでの時間Δt(=tb-ta)で除することにより、駆動力変化率ΔFM(=(FMb-FMa)/(tb-ta))を算出する。したがって、駆動力変化率ΔFMは、走行駆動力FMが増加しているときには正の値となり、走行駆動力FMが減少しているときには負の値となる。また、駆動力変化率ΔFMは、走行駆動力FMが一定である場合には0となる。
【0066】
スリップ判定部115は、スリップ判定条件が成立した場合には、車輪7がスリップしていると判定し、スリップ判定条件が成立していない場合には、車輪7がスリップしていないと判定する。スリップ判定条件には、以下の(条件1)~(条件5)が含まれる。スリップ判定部115は、(条件1)~(条件5)の全てが満たされた場合に、スリップ判定条件が成立していると判定し、スリップ判定フラグFLslipをオンに設定する(FLslip=1)。なお、スリップ判定部115は、(条件1)~(条件5)のいずれかが満たされていない場合には、スリップ判定条件は成立していないと判定し、スリップ判定フラグFLslipをオフに設定する(FLslip=0)。
(条件1) 掘削作業状態であること。
(条件2) アームシリンダ推力が増加していないこと。
(条件3) 走行駆動力が上昇中であること。
(条件4) アーム操作装置が操作されていないこと。
(条件5) バケット操作装置が操作されていないこと。
【0067】
スリップ判定部115は、掘削判定フラグFLdigの設定状態に基づき、(条件1)が満たされているか否かを判定する。スリップ判定部115は、掘削判定フラグFLdigがオンに設定されている場合(FLdig=1)には(条件1)が満たされていると判定し、掘削判定フラグFLdigがオフに設定されている場合(FLdig=0)には(条件1)は満たされていないと判定する。
【0068】
スリップ判定部115は、推力変化率ΔFAに基づき、(条件2)が満たされているか否かを判定する。スリップ判定部115は、推力変化率ΔFAが推力変化率閾値FA1以下である場合には(条件2)が満たされていると判定し、推力変化率ΔFAが推力変化率閾値FA1よりも大きい場合には(条件2)は満たされていないと判定する。推力変化率閾値FA1は、スリップ開始時のアームシリンダ推力の急減(抜け)が発生したか否かを判定するための閾値であり、計算もしくは実験により定められる。推力変化率閾値FA1は0以下の値であり、ROM102に記憶されている。
【0069】
スリップ判定部115は、駆動力変化率ΔFMに基づき、(条件3)が満たされているか否かを判定する。スリップ判定部115は、駆動力変化率ΔFMが0よりも大きい場合には(条件3)が満たされていると判定し、駆動力変化率ΔFMが0以下の場合には(条件3)は満たされていないと判定する。
【0070】
スリップ判定部115は、アーム操作量センサ52aによって検出されたアーム操作量RAに基づき、(条件4)が満たされているか否かを判定する。スリップ判定部115は、アーム操作量RAの絶対値|RA|がアーム操作量閾値RA1以下である場合には(条件4)が満たされていると判定し、アーム操作量RAの絶対値|RA|がアーム操作量閾値RA1よりも大きい場合には(条件4)は満たされていないと判定する。アーム操作量閾値RA1は、アーム操作装置52が操作されている状態であるか否かを判定するための閾値であり、ROM102に記憶されている。アーム操作量閾値RA1は、例えば、アーム上げの最大操作量を100%、アーム下げ側の最大操作量を-100%としたとき、5%程度の操作量に相当する。
【0071】
スリップ判定部115は、バケット操作量センサ53aによって検出されたバケット操作量RBに基づき、(条件5)が満たされているか否かを判定する。スリップ判定部115は、バケット操作量RBの絶対値|RB|がバケット操作量閾値RB1以下である場合には(条件5)が満たされていると判定し、バケット操作量RBの絶対値|RB|がバケット操作量閾値RB1よりも大きい場合には(条件5)は満たされていないと判定する。バケット操作量閾値RB1は、バケット操作装置53が操作されている状態であるか否かを判定するための閾値であり、ROM102に記憶されている。バケット操作量閾値RB1は、例えば、バケットダンプ側の最大操作量を100%、バケットクラウド側の最大操作量を-100%としたとき、5%程度の操作量に相当する。
【0072】
スリップ時推力保持部116は、スリップ判定フラグFLslipがオフからオンに切り替わったときのアームシリンダ推力FA、すなわちスリップ判定条件が成立したときのアームシリンダ推力FAをスリップ時推力FA_slipとして保持する(FA_slip=FA)。スリップ時推力FA_slipは、スリップ判定フラグFLslipが少なくともオンからオフに切り替わるまでの間、保持され続ける。また、スリップ時推力FA_slipは、スリップ判定フラグFLslipがオンからオフに切り替わった後、再度オンになるまでの間、保持され続けてもよい。
【0073】
摩擦係数推定部117は、予めROM102に記憶されている相関マップM
μ(
図4参照)を参照し、スリップ時推力保持部116によって保持されたスリップ時推力F
A_slipに基づいて、摩擦係数推定値μを演算する。相関マップM
μは、スリップ時推力F
A_slipと摩擦係数推定値μとの関係を規定する規定データである。相関マップM
μは、例えば、ルックアップテーブル形式で記憶されていてもよいし、関数形式(近似式)で記憶されていてもよい。
【0074】
図4の相関マップM
μに示されているように、スリップ時推力F
A_slipに対する摩擦係数推定値μは、非線形の特性を有している。相関マップM
μは、スリップ時推力F
A_slipが0のときには摩擦係数推定値μが0となり、スリップ時推力F
A_slipが0から大きくなるほど摩擦係数推定値μが大きくなる特性を規定している。この相関マップM
μの特性は、予め計算もしくは実験によって決定される。相関マップM
μの傾き(摩擦係数推定値の増加量/スリップ時推力の増加量)が大きいほど、あるスリップ時推力F
A_slipにおける摩擦係数推定値μは大きくなる。
【0075】
図3に示す駆動力上限値演算部118は、予めROM102に記憶されている相関マップM
L(
図5参照)を参照し、摩擦係数推定部117によって演算された摩擦係数推定値μに基づいて、駆動力上限値F
M_LIMを演算する。相関マップM
Lは、摩擦係数推定値μと駆動力上限値F
M_LIMとの関係を規定する規定データである。相関マップM
Lは、例えば、ルックアップテーブル形式で記憶されていてもよいし、関数形式(近似式)で記憶されていてもよい。
【0076】
図5に示すように、相関マップM
Lは、摩擦係数推定値μが0のときには駆動力上限値F
M_LIMが最小値F
M_LIM_MINとなり、摩擦係数推定値μが0から所定値μpまでは大きくなるほど駆動力上限値F
M_LIMが大きくなり、摩擦係数推定値μが所定値μp以上では、駆動力上限値F
M_LIMが最大値F
M_LIM_MAXとなる特性を規定している。駆動力上限値F
M_LIMの最大値F
M_LIM_MAXは、走行電動機43が出力可能な最大駆動力に相当する。駆動力上限値F
M_LIMの最小値F
M_LIM_MINは、ホイールローダ1を前進させることが可能な最低限の駆動力に相当する。この相関マップM
Lの特性は、予め計算もしくは実験によって決定される。相関マップM
Lの傾き(駆動力上限値の増加量/摩擦係数推定値の増加量)が大きいほど、ある摩擦係数推定値μにおける駆動力上限値F
M_LIMは大きくなる。
【0077】
なお、駆動力上限値FM_LIMは、スリップ判定フラグFLslipがオンに設定されている場合のみ、相関マップMLの特性によって演算された結果を用いる。スリップ判定フラグFLslipがオフに設定されている場合、駆動力上限値演算部118は、駆動力上限値FM_LIMに最大値FM_LIM_MAXに設定する。したがって、スリップ判定条件が成立した場合には、相関マップMLの特性によって設定された駆動力上限値FM_LIMによって走行駆動力FMが制限される。一方、スリップ判定条件が成立していない場合には、駆動力上限値FM_LIMに最大値FM_LIM_MAXが設定されるため、走行駆動力は実質的に制限されない。
【0078】
図3に示す走行要求駆動力演算部119は、モータ速度センサ58により検出されたモータ速度S
M、及び、アクセル操作量センサ56aにより検出されたアクセル操作量に基づいて、走行要求駆動力を演算する。ROM102には、走行要求駆動力の演算に用いられる走行要求駆動力テーブルが記憶されている。走行要求駆動力テーブルは、アクセル操作量の増減に応じて走行要求駆動力が増減するように、アクセル操作量に応じた駆動力カーブが複数記憶されている。走行要求駆動力テーブルは、アクセル操作量が大きくなるほど走行要求駆動力が大きくなり、走行電動機43の回転速度(モータ速度)が速くなるほど走行要求駆動力が小さくなるように設定されている。
【0079】
走行要求駆動力演算部119は、アクセル操作量の大きさに対応する駆動力カーブを選択し、走行電動機43の回転速度(モータ速度)SMに基づいて走行要求駆動力FM_REQを算出する。例えば、走行要求駆動力演算部119は、アクセル操作装置56がフル操作されたときには、実線の駆動力カーブを選択し、選択した駆動力カーブを参照し、走行電動機43の回転速度に基づいて走行要求駆動力FM_REQを算出する。
【0080】
最小値選択部120は、駆動力上限値演算部118によって演算された駆動力上限値FM_LIM、及び、走行要求駆動力演算部119によって演算された走行要求駆動力FM_REQのうちで最小のものを選択し、選択した値を走行目標駆動力FM_TGTとして決定する。
【0081】
トルク指令生成部121は、最小値選択部120で選択された走行目標駆動力FM_TGTに基づき、走行駆動トルク指令TM_COMを生成する。トルク指令生成部121により生成された走行駆動トルク指令TM_COMは、走行インバータ42及び駆動力センサ65に出力され、駆動力センサ65により検出される走行駆動力が走行目標駆動力となるように走行電動機43が制御される。
【0082】
-走行駆動力制御のフロー-
図6~
図8を参照して、スリップを抑制するために、メインコントローラ100により実行される制御の内容について説明する。
図6は、メインコントローラ100により実行される走行駆動力制御のメインフローの一例について示すフローチャートであり、
図7は、
図6の掘削判定フラグの設定処理の一例について示すフローチャートであり、
図8は、
図6のスリップ判定フラグの設定処理の一例について示すフローチャートである。
【0083】
図6のフローチャートに示す処理は、例えばイグニッションスイッチ(エンジンキースイッチ)がオンされることにより開始され、図示しない初期設定が行われた後、所定の制御周期で繰り返し実行される。なお、初期設定において、スリップ判定フラグFLslip及び掘削判定フラグFLdigはオフに設定される。また、
図6~
図8のフローチャートに示す処理は、所定の制御周期で繰り返し取得される各センサでの検出結果(例えば、アームシリンダ圧P
A、アーム操作量R
A、バケット操作量R
B)、各演算部の演算結果(例えば、アームシリンダ推力F
A、推力変化率ΔF
A、速度変化率ΔS
M、駆動力変化率ΔF
M)、及び、前後進スイッチ51からの操作位置を表す信号等に基づき実行される。
【0084】
図6に示すように、ステップS100において、掘削作業判定部114は、掘削判定フラグFLdigの設定処理を実行する。
図7に示すように、掘削判定フラグの設定処理が開始されると、ステップS110において、掘削作業判定部114は、現在設定されている掘削判定フラグFLdigがオンであるか否かを判定する。現在設定されている掘削判定フラグFLdigがオフであると判定された場合には、処理がステップS120へ進む。現在設定されている掘削判定フラグFLdigがオンであると判定された場合には、処理がステップS150へ進む。
【0085】
ステップS120において、掘削作業判定部114は、モータ速度変化量演算部112によって演算されたモータ速度の時間変化率である速度変化率ΔS
Mが速度変化率閾値S1以下であるか否かを判定する。速度変化率ΔS
Mが速度変化率閾値S1以下であると判定された場合には、処理がステップS130へ進む。速度変化率ΔS
Mが速度変化率閾値S1よりも大きいと判定された場合には、
図7に示す掘削判定フラグの設定処理が終了する。
【0086】
ステップS130において、掘削作業判定部114は、アームシリンダ圧センサ75で検出されたアームシリンダ圧P
Aがシリンダ圧閾値P1以上であるか否かを判定する。アームシリンダ圧P
Aがシリンダ圧閾値P1以上であると判定された場合には、処理がステップS140へ進む。アームシリンダ圧P
Aがシリンダ圧閾値P1未満であると判定された場合には、
図7に示す掘削判定フラグの設定処理が終了する。
【0087】
ステップS140において、掘削作業判定部114は、掘削判定フラグをオンに設定し(FLdig=1)、
図7に示す掘削判定フラグの設定処理を終了する。
【0088】
ステップS150において、掘削作業判定部114は、前後進スイッチ51からの操作位置信号に基づいて、前後進スイッチ51が後進位置(R)に操作されているか否かを判定する。前後進スイッチ51が後進位置(R)に操作されていると判定された場合には、処理がステップS160へ進む。前後進スイッチ51が後進位置(R)に操作されていないと判定された場合には、
図7に示す掘削判定フラグの設定処理が終了する。
【0089】
ステップS160において、掘削作業判定部114は、掘削判定フラグをオフに設定し(FLdig=0)、
図7に示す掘削判定フラグの設定処理を終了する。
【0090】
掘削判定フラグの設定処理が終了すると、処理が
図6のステップS200に進む。
図6に示すように、ステップS200において、スリップ判定部115は、スリップ判定フラグFLslipの設定処理を実行する。
図8に示すように、スリップ判定フラグの設定処理が開始されると、ステップS210において、スリップ判定部115は、上記ステップS110と同様、現在設定されている掘削判定フラグFLdigがオンであるか否かを判定する。現在設定されている掘削判定フラグFLdigがオンであると判定された場合には、処理がステップS220へ進む。現在設定されている掘削判定フラグFLdigがオフであると判定された場合には、処理がステップS270へ進む。
【0091】
ステップS220において、スリップ判定部115は、駆動力変化量演算部113によって演算された走行駆動力FMの時間変化率である駆動力変化率ΔFMが0よりも大きいか否かを判定する。駆動力変化率ΔFMが0よりも大きいと判定された場合には、処理がステップS230へ進む。駆動力変化率ΔFMが0以下であると判定された場合には、処理がステップS270へ進む。
【0092】
ステップS230において、スリップ判定部115は、推力変化量演算部111によって演算されたアームシリンダ推力FAの時間変化率である推力変化率ΔFAが推力変化率閾値FA1以下であるか否かを判定する。推力変化率ΔFAが推力変化率閾値FA1以下であると判定された場合には、処理がステップS240へ進む。推力変化率ΔFAが推力変化率閾値FA1よりも大きいと判定された場合には、処理がステップS270へ進む。
【0093】
ステップS240において、スリップ判定部115は、アーム操作量センサ52aによって検出されたアーム操作量RAがアーム操作量閾値RA1以下であるか否かを判定する。アーム操作量RAがアーム操作量閾値RA1以下であると判定された場合には、処理がステップS250へ進む。アーム操作量RAがアーム操作量閾値RA1よりも大きいと判定された場合には、処理がステップS270へ進む。
【0094】
ステップS250において、スリップ判定部115は、バケット操作量センサ53aによって検出されたバケット操作量RBがバケット操作量閾値RB1以下であるか否かを判定する。バケット操作量RBがバケット操作量閾値RB1以下であると判定された場合には、処理がステップS260へ進む。バケット操作量RBがバケット操作量閾値RB1よりも大きいと判定された場合には、処理がステップS270へ進む。
【0095】
ステップS260において、スリップ判定部115は、スリップ判定フラグをオンに設定し(FLslip=1)、
図8に示すスリップ判定フラグの設定処理を終了する。ステップS270において、スリップ判定部115は、スリップ判定フラグをオフに設定し(FLslip=0)、
図8に示すスリップ判定フラグの設定処理を終了する。スリップ判定フラグの設定処理が終了すると、処理が
図6のステップS310に進む。
【0096】
図6に示すように、ステップS310において、スリップ時推力保持部116及び駆動力上限値演算部118は、現在設定されているスリップ判定フラグFLslipがオンであるか否かを判定する。現在設定されているスリップ判定フラグFLslipがオンであると判定された場合には、処理がステップS320へ進む。現在設定されているスリップ判定フラグFLslipがオフである場合には、処理がステップS350へ進む。
【0097】
ステップS320において、スリップ時推力保持部116は、推力演算部110によって演算されたアームシリンダ推力FAをスリップ時推力FA_slipとして保持する。つまり、スリップ時推力保持部116は、スリップ判定フラグFLslipがオフからオンに切り替わったときのアームシリンダ推力FAをスリップ時推力FA_slipとして保持する。ステップS320の処理が終了すると、処理がステップS330に進む。
【0098】
ステップS330において、摩擦係数推定部117は、ステップS320で保持されたスリップ時推力F
A_slipに基づいて、相関マップM
μ(
図4参照)の特性によって摩擦係数推定値μを演算して、ステップS340へ進む。
【0099】
ステップS340において、駆動力上限値演算部118は、ステップS330で演算された摩擦係数推定値μに基づいて、相関マップM
L(
図5参照)の特性によって駆動力上限値F
M_LIMを演算する。
【0100】
ステップS350において、駆動力上限値演算部118は、駆動力上限値F
M_LIMを最大値F
M_LIM_MAXに設定する。ステップS340またはステップS350の処理が完了すると、本制御周期における
図6に示すフローチャートの処理を終了し、次の制御周期において、ステップS100の処理からステップS340またはステップ350までの処理を再び実行する。
【0101】
このように、スリップ判定フラグがオフからオンに切り替わることによりスリップが検知されると、スリップが検知されたときの推力FA_slipに基づいて駆動力上限値FM_LIMが設定される。このため、走行駆動力FMがFM_LIM_MIN以上FM_LIM_MAX以下の範囲内で定められた駆動力上限値FM_LIMを超えないように制限される。一方、スリップが検知されない場合には、駆動力上限値は常に最大値FM_LIM_MAXに設定されるため、走行駆動力が制限されることがない。つまり、走行駆動力FMは、アクセル操作量センサ56a及びモータ速度センサ58の検出結果に応じて演算された走行要求駆動力FM_REQとなるように制御される。
【0102】
-動作-
以下、
図9を参照して、本実施形態に係るホイールローダ1の掘削作業中の動作の一例と作用効果について説明する。
図9は、本実施形態に係るホイールローダ1の各パラメータ(バケット操作量R
B、アーム操作量R
A、走行駆動力F
M、アームシリンダ推力F
A、車輪速V
W、及びスリップ判定フラグFLslip)の時系列変化を示す図である。
【0103】
また、本実施形態の作用効果を明確にするため、車輪速センサ61により検出される車輪速VWに基づきスリップ判定フラグの設定処理を実行する比較例と比べながら説明する。なお、本実施形態に係るホイールローダ1と本実施形態の比較例に係るホイールローダとでは、オペレータの操作手順及び操作量は同じであるものとする。
【0104】
比較例に係るホイールローダのメインコントローラは、上記(条件2)に代えて、以下の(条件2’)を用いて、スリップが発生しているか否かを判定する。つまり、比較例に係るホイールローダのメインコントローラは、(条件1)、(条件2’)、(条件3)~(条件5)の全てが満たされた場合に、スリップ判定条件が成立していると判定し、スリップ判定フラグFLslipをオフからオンに切り替える。
(条件2’)車輪速VWが車輪速閾値VW0以上であること(VW≧VW0)
ここで、車輪速閾値VW0は、予めROM102に記憶されている。車輪速閾値VW0は、実験等によりスリップが発生したときの車輪速に基づき定められる。なお、車輪速閾値VW0は、車体8の振動による車輪速の変化や車輪速センサ61の検出誤差などに起因するスリップの誤検知を防止するために、実験等においてスリップが発生したときの車輪速に余裕値(>0)を加算した値が採用される。
【0105】
図9において、本実施形態の各パラメータの時系列変化は実線で示し、比較例の各パラメータの時系列変化は破線で示す。
図9(a)~(g)の横軸は、時刻(経過時間)を示す。
図9(a)の縦軸はバケット操作量センサ53aで検出されたバケット操作量R
Bを示し、
図9(b)の縦軸はアーム操作量センサ52aで検出されたアーム操作量R
Aを示している。
図9(c)の縦軸は比較例における駆動力センサ65で検出された走行駆動力F
M’を示し、
図9(d)の縦軸は本実施形態における駆動力センサ65で検出された走行駆動力F
Mを示している。
図9(e)の縦軸は推力演算部110で演算されたアームシリンダ推力F
Aを示し、
図9(f)の縦軸は車輪速センサ61で検出された車輪速V
Wを示し、
図9(g)の縦軸はスリップ判定フラグFLslipを示している。
【0106】
図9は、ホイールローダ1が作業対象物に突入し、掘削判定フラグFLdigがオフからオンに切り替えられた後の時系列変化を示している。
図9において、時刻t
0は、地山等の作業対象物にバケット3が貫入している状態において、バケット3を作業対象物にさらに貫入させるためにオペレータがアクセルペダルをさらに踏み込み始めた時刻である。つまり、時刻t
0は、車体8を前進させる方向の走行駆動力F
M,F
M’が上昇し始める時刻である。アクセルペダルに対する踏み込み操作は、緩やかに行われる。時刻t
1は、アームシリンダ推力F
Aに基づきスリップを検知する本実施形態において、スリップ判定フラグFLslipがオフからオンに切り替わった時刻である。時刻t
2は、車輪速V
Wに基づきスリップを検知する比較例において、スリップ判定フラグFLslipがオフからオンに切り替わった時刻である。
【0107】
図9(a)及び
図9(b)に示すように、作業対象物にバケット3が貫入している状態では、バケット操作量R
B及びアーム操作量R
Aは変化していない。つまり、作業装置6は、作業対象物への突入姿勢(
図1に示す姿勢)を維持している。この姿勢では、作業対象物に対してバケット3が貫入しやすいように、バケット3の底面が地面と平行となっている。
【0108】
図9(c)及び
図9(d)に示すように、時刻t
0からのアクセル操作量(不図示)の増加に伴って、走行駆動力F
M,F
M’が徐々に増加する。また、
図9(e)に示すように、走行駆動力の増加に追随してアームシリンダ推力F
Aが徐々に増加する。走行駆動力F
Mが車輪7に生じる最大静止摩擦力を超えるとスリップが発生する。スリップが発生すると、車輪7に生じる摩擦力が最大静止摩擦力から動摩擦力に切り替わり、アームシリンダ推力F
Aが急減し始める。
【0109】
図9(f)及び
図9(g)に示すように、比較例に係るホイールローダでは、車輪速センサ61により検出される車輪速V
Wがスリップを誤検知しない程度の車輪速閾値V
W0まで上昇した場合に、スリップ判定フラグFLslipがオフからオンに切り替えられる。
図9(c)に示すように、比較例に係るホイールローダでは、時刻t
2でスリップ判定フラグFLslipがオフからオンに切り替わり、その後、走行駆動力F
M’が駆動力上限値F
M_LIM’を超えないように制限される。走行駆動力F
M’が駆動力上限値F
M_LIM’まで制限されることにより、その後のスリップの発生が防止される。
【0110】
これに対して、本実施形態では、車輪速V
Wではなく、アームシリンダ推力F
Aが増加していないことをスリップ判定条件の一つとしている(条件2)。
図9(e)に示すように、アームシリンダ推力F
Aは、スリップの発生により直ちに急減する。このため、本実施形態では、
図9(g)に示すように、比較例に比べて早いタイミングである時刻t
1において、スリップ判定フラグFLslipがオフからオンに切り替えられる。
図9(d)に示すように、本実施形態に係るホイールローダ1では、時刻t
1でスリップ判定フラグFLslipがオフからオンに切り替わり、その後、走行駆動力F
Mが駆動力上限値F
M_LIMまで制限されることにより、その後のスリップの発生が防止される。
【0111】
以上のように、比較例では、車輪速VWがスリップを誤検知しない程度の車輪速閾値VW0以上となるまでスリップを検知することができない。それに対し本実施形態では、車輪速VWを用いることなく、スリップ開始直後のアームシリンダ推力の挙動に基づいて、スリップを検知することができるため、よりスムーズに掘削作業をすることができる。また、本実施形態では、スリップしている時間が比較例よりも短いため、作業現場の走行面が車輪7により削られる時間を短くすることができる。その結果、その後の走行面の補修作業等の手間を比較例に比べて軽減することができる。さらに、本実施形態では、スリップしている時間が比較例よりも短いため、タイヤの摩耗量を比較例よりも低減することができる。なお、スリップの検知による駆動力の制限は、オペレータの操作によらず、自動で行われるため、オペレータの操作負担を軽減することができる。
【0112】
上述した実施形態によれば、次の作用効果を奏する。
【0113】
(1)ホイールローダ(作業車両)1は、車輪7を有する車体8と、車体8に搭載された油圧ポンプ30Aと、油圧ポンプ30Aから吐出される作動油によって駆動されるアームシリンダ(油圧アクチュエータ)4を有する作業装置6と、アームシリンダ4の圧力を検出するアームシリンダ圧センサ(圧力センサ)75と、車輪7を駆動する走行駆動装置45と、走行駆動装置45の駆動力を検出する駆動力センサ65と、走行駆動装置45の駆動力を制御するメインコントローラ(制御装置)100と、を備える。メインコントローラ100は、アームシリンダ圧センサ75の検出結果に基づいて、作業装置6が作業対象物から受ける反力に応じたアームシリンダ4の推力を演算する。メインコントローラ100は、走行駆動装置45の駆動力(走行駆動力FM)が上昇中であるにもかかわらずアームシリンダ4の推力(アームシリンダ推力FA)が増加していないこと(すなわち、(条件2)及び(条件3))を含むスリップ判定条件が成立した場合には、駆動力を制限する。
【0114】
本実施形態によれば、車輪7がスリップした場合に駆動力を自動的に制限することによりスリップ状態を解消し、その後のスリップの発生を防止しつつ作業を継続できるため、オペレータの操作負担を軽減することができる。さらに、本実施形態によれば、車輪速に基づきスリップを検知する技術(例えば、上述した比較例)に比べて、より早期に車輪7のスリップを検知することによりスリップの継続時間を短縮し、掘削作業の作業効率を向上することができる。
【0115】
(2)スリップ判定条件には、作業装置6により作業対象物を掘削する作業が行われている掘削作業状態であること(すなわち、(条件1))が含まれる。メインコントローラ100は、掘削作業状態であるときに(条件2)~(条件5)が成立した場合には走行駆動力FMを制限する。一方、メインコントローラ100は、掘削作業状態でないときには、(条件2)~(条件5)が成立した場合であっても走行駆動力FMを制限しない。
【0116】
この構成によれば、掘削作業が行われているときに発生する車輪7のスリップを適切に検知することができ、掘削作業が行われていないときのスリップの誤検知を防止することができる。
【0117】
(3)ホイールローダ1は、走行駆動装置45に設けられる走行電動機43の回転速度(モータ速度)を検出するモータ速度センサ58を備えている。メインコントローラ100は、モータ速度センサ58の検出結果に基づいて、前進する車体8が減速しているか否かを判定する。メインコントローラ100は、(条件I)前進する車体8が減速していること、及び、(条件II)アームシリンダ4の推力が所定値以上であること、を含む、掘削作業判定条件が成立した場合に、掘削作業状態であると判定する。本実施形態では、メインコントローラ100は、走行電動機43の速度変化率ΔSMが速度変化率閾値S1以下である場合に、(条件I)が成立したと判定し、アームシリンダ4の圧力PAがシリンダ圧閾値P1以上である場合に、(条件II)が成立したと判定する。なお、速度変化率閾値S1は0よりも小さい(S1<0)。なお、上記(条件II)の所定値は、シリンダ圧閾値P1にアームシリンダ4の受圧面積を乗じた値に相当する。
【0118】
この構成によれば、ホイールローダ1が作業対象物に突入すると、直ちに掘削作業状態と判定される。これにより、ホイールローダ1による掘削作業の開始時点において、適切に掘削作業状態と判定することができる。
【0119】
(4)メインコントローラ100は、走行駆動力の時間変化率である駆動力変化率ΔFMを演算し、アームシリンダ4の推力の時間変化率である推力変化率ΔFAを演算する。また、スリップ判定条件には、作業装置6が操作されていないこと(すなわち、(条件4)及び(条件5))が含まれる。本実施形態に係るメインコントローラ100は、掘削作業状態であること、駆動力変化率ΔFMが0よりも大きいこと、推力変化率ΔFAが推力変化率閾値FA1以下であること、作業装置6を構成するアーム2及びバケット3が操作されていないこと、の全てが満たされた場合に、車輪7がスリップしていると判定する。
【0120】
アームシリンダ4の推力は、作業装置6が操作されることにより変化する場合がある。本実施形態では、作業装置6が操作されていないことをスリップ判定条件に含めているため、アームシリンダ4の推力の急減(抜け)が、スリップに起因するものである場合に限定することができる。したがって、本実施形態によれば、作業装置6が操作された場合におけるスリップの誤検知を防止することができる。
【0121】
(5)メインコントローラ100は、スリップ判定条件が成立したときのアームシリンダ4の推力(スリップ時推力)に基づいて、摩擦係数推定値μを演算し、演算された摩擦係数推定値μに基づいて駆動力上限値FM_LIMを演算する。さらに、メインコントローラ100は、走行駆動装置45の駆動力FMが駆動力上限値FM_LIMを超えないように、駆動力を制御する。
【0122】
この構成によれば、アームシリンダ4の推力FAに応じて非線形に変化する摩擦係数推定値μを演算してから駆動力上限値FM_LIMを設定することにより、スリップしない範囲での駆動力の限界まで駆動力を増加させることができるので、掘削作業効率をさらに向上できる。
【0123】
次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0124】
<変形例1>
上記実施形態では、メインコントローラ100が、摩擦係数推定値μを演算し、演算された摩擦係数推定値μを用いて駆動力上限値FM_LIMを演算する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、メインコントローラ100は、スリップ時推力FA_slipと駆動力上限値との関係を規定する相関マップを用いて、駆動力上限値を演算してもよい。また、メインコントローラ100は、スリップが検知されたときの駆動力センサ65により検出された走行駆動力FMの95%程度を駆動力上限値(固定値)として設定してもよい。
【0125】
<変形例2>
駆動力の制限方法は、駆動力上限値を超えないように走行駆動力を制御する例に限定されることもない。例えば、メインコントローラ100は、スリップを検知した場合、スリップ時推力FA_slipに応じた補正係数cを演算し、走行要求駆動力FM_REQに補正係数cを乗じることにより走行目標駆動力FM_TGTを演算してもよい。なお、補正係数cは、0よりも大きく1よりも小さい値である(0<c<1)。また、補正係数cは、スリップ時推力FA_slipが大きいほど、大きい値となる。
【0126】
<変形例3>
非掘削作業状態から掘削作業状態へ移行したか否かの判定方法は、上記実施形態で説明した方法に限定されない。つまり、掘削作業条件は、上記実施形態で説明した例に限定されない。例えば、掘削作業判定部114は、アクセル操作装置56のアクセル操作量が所定値以上であり、かつ、速度変化率ΔSMが速度変化率閾値S1以下である場合に、掘削作業条件が成立したと判定してもよい。本変形例によれば、アクセルペダルが踏み込まれている状態でホイールローダ1が作業対象物に突入した際に、掘削作業状態と判定される。なお、(条件I)が満たされているか否かを速度変化率ΔSMに基づき判定する例について説明したが、車輪速センサ61により検出される車輪(駆動輪)の速度の時間変化率に基づき、(条件I)が満たされているか否かを判定してもよい。
【0127】
<変形例4>
また、掘削作業状態から非掘削作業状態へ移行したか否かの判定方法は、上記実施形態で説明した方法に限定されない。つまり、掘削作業終了条件は、上記実施形態で説明した例に限定されない。例えば、作業装置6の姿勢が、バケット3の底面が地面に対して平行となっている突入姿勢からバケット3のクラウド動作によりバケット3の底面の延長線と地面とのなす角度が所定値以上となっている運搬姿勢となった場合に、掘削作業終了条件が成立したと判定してもよい。なお、作業装置6の姿勢は、アーム相対角センサ62及びバケット相対角センサ63により検出することができる。
【0128】
<変形例5>
上記実施形態において、メインコントローラ100は、外乱及びノイズの影響を避けるため、各種判定及び計算に用いる値に対して移動平均処理またはローパスフィルタ処理を施してもよい。移動平均処理またはローパスフィルタ処理することで、摩擦係数推定値μや駆動力上限値FM_LIMの急激な変動を抑制することができる。その結果、掘削作業における駆動力制限時の安定性及び操作性の向上を図ることができる。
【0129】
<変形例6>
上記実施形態では、走行装置11に動力を供給する単一の走行電動機43が、ホイールローダ1に搭載される例について説明したが、本発明はこれに限定されない。複数の走行電動機43を備えたホイールローダ1に本発明を適用してもよい。本発明は、例えば、左側の前輪7Aを駆動する走行電動機43と、右側の前輪7Aを駆動する走行電動機43とを備えたホイールローダ1に適用することができる。また、本発明は、例えば、左右一対の前輪7A及び左右一対の後輪7Bのそれぞれを駆動する4つの走行電動機43を備えたホイールローダ1に適用することもできる。なお、走行電動機43は、変速機を介して車輪7と接続されていてもよいし、車輪7に一体化する構成としてもよい。
【0130】
<変形例7>
上記実施形態では、作業車両が電動駆動式のホイールローダ1である例について説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明は、例えば、トルクコンバータ駆動式のホイールローダ、エンジン20の動力を油圧に変換して車輪7に伝達するHST(Hydraulic Static Transmission)駆動式のホイールローダに適用してもよい。また、左右の車輪7の速度差を制限する差動制限装置を備えたホイールローダに本発明を適用してもよい。
【0131】
<変形例8>
上記実施形態で説明したメインコントローラ100の機能は、それらの一部または全部をハードウェア(例えば各機能を実行するロジックを集積回路で設計する等)で実現してもよい。
【0132】
<変形例9>
上記実施形態では、作業車両が、ホイールローダ1である例について説明したが、本発明はこれに限定されない。ブルドーザー等の作業装置を備えた種々の作業車両に本発明を適用することができる。
【0133】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。上述した実施形態及び変形例は本発明を理解し易く説明するために例示したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。なお、図中に示した制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上で必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0134】
1…ホイールローダ(作業車両)、2…アーム、3…バケット、4…アームシリンダ(油圧シリンダ、油圧アクチュエータ)、5…バケットシリンダ(油圧シリンダ、油圧アクチュエータ)、6…作業装置、7…車輪、8…車体、8A…前部車体、8B…後部車体、10…センタージョイント、11…走行装置、20…エンジン、25…エンジンコントローラ、30A,30B,30C…油圧ポンプ、31…フロント制御部、32…ブレーキ制御部、33…ステアリング制御部、40…発電電動機、41…発電インバータ、42…走行インバータ、43…走行電動機、45…走行駆動装置、50…操作装置、51…前後進スイッチ、52…アーム操作装置、52a…アーム操作量センサ、53…バケット操作装置、53a…バケット操作量センサ、56…アクセル操作装置、56a…アクセル操作量センサ、58…モータ速度センサ、61…車輪速センサ、62…アーム相対角センサ、63…バケット相対角センサ、65…駆動力センサ、75…アームシリンダ圧センサ(圧力センサ)、100…メインコントローラ(制御装置)、110…推力演算部、111…推力変化量演算部、112…モータ速度変化量演算部、113…駆動力変化量演算部、114…掘削作業判定部、115…スリップ判定部、116…スリップ時推力保持部、117…摩擦係数推定部、118…駆動力上限値演算部、119…走行要求駆動力演算部、120…最小値選択部、121…トルク指令生成部、FA…アームシリンダ推力、FA_slip…スリップ時推力、FA1…推力変化率閾値、FLdig…掘削判定フラグ、FM…走行駆動力(駆動力)、FM_LIM…駆動力上限値、FM_LIM_MAX…駆動力上限値の最大値、FM_LIM_MIN…駆動力上限値の最小値、FM_REQ…走行要求駆動力、FM_TGT…走行目標駆動力、ML,Mμ…相関マップ、P1…シリンダ圧閾値、PA…アームシリンダ圧、RA…アーム操作量、RA1…アーム操作量閾値、RB…バケット操作量、RB1…バケット操作量閾値、S1…速度変化率閾値、SM…モータ速度、TM_COM…走行駆動トルク指令、VW…車輪速、VW0…車輪速閾値、ΔFA…推力変化率(油圧アクチュエータの推力の時間変化率)、ΔFM…駆動力変化率(駆動力の時間変化率)、ΔSM…速度変化率(走行電動機の回転速度の時間変化率)、μ…摩擦係数推定値