(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034922
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】米菓用品質改良剤
(51)【国際特許分類】
A23G 3/34 20060101AFI20240306BHJP
A23L 29/10 20160101ALI20240306BHJP
【FI】
A23G3/34 104
A23L29/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139495
(22)【出願日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】390010674
【氏名又は名称】理研ビタミン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山田 拓志
【テーマコード(参考)】
4B014
4B035
【Fターム(参考)】
4B014GG03
4B014GL06
4B014GL10
4B014GL11
4B014GP02
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4B035LP43
(57)【要約】
【課題】米菓の製造において、冷蔵工程における餅生地の硬化を促進し、且つその餅生地を用いて得られる米菓の食感を改良することのできる米菓用品質改良剤を提供する。
【解決手段】(1)グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルを有効成分とする、米菓用品質改良剤。(2)前記(1)に記載の米菓用品質改良剤を含有する、米菓。(3)グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルを添加した餅生地を冷却する工程を含む、米菓の製造方法。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルを有効成分とする、米菓用品質改良剤。
【請求項2】
請求項1に記載の米菓用品質改良剤を含有する、米菓。
【請求項3】
グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルを添加した餅生地を冷蔵する工程を含む、米菓の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米菓用品質改良剤に関する。
【背景技術】
【0002】
あられ、おかき、せんべい等の米菓は、もち米、うるち米、又はそれらの穀粉を主原料として餅生地を製造し、この餅生地を所定形状に成型した後、焼き上げ又はフライすることによって製造されている。
【0003】
更に詳しく説明すると、例えば、あられ、おかき等の所謂もち米菓においては、主原料としてもち米を用い、これを水に浸漬した後、水切りし、蒸し機等で蒸し上げ、餅つき機にて餅を搗き上げる。この餅生地を練り出し機で練り出し、棒状あるいは箱等に入れて成型し、これを2~5℃に急冷し、2~3日放置して硬化する。硬化した餅生地を切断機でそれぞれの形に成型し、天日又は通風乾燥機で、水分20%前後まで乾燥させ、200~260℃で焼き上げ、油、醤油等の調味料を塗布して仕上げ、必要があれば更に乾燥を行って製品とする。
【0004】
上記の様な方法にて製造される米菓においては、米菓の種類にもよるが、近年軽い食感が好まれる傾向にあり、軽い食感を有する米菓が望まれている。また、餅生地の冷蔵・硬化工程に多大な時間やスペース、エネルギーコストを要するため、餅生地の硬化時間を短縮する技術が切望されている。
【0005】
上記課題のうち、米菓を軽い食感に改良する手段の一つとして食品用乳化剤の利用が知られており、特許文献1では、米菓に油脂、及び/又は乳化剤を配合することを特徴とするソフトな食感を有する米菓類の製造方法が提案されている。また、特許文献2では、膨化性に優れソフトな食感を有する米菓を製造する手段として、ポリグリセリン脂肪酸エステルからなることを特徴とする米菓用改質剤が提案されている。
【0006】
しかしながら、上記の従来技術においては、食品用乳化剤が餅生地の冷蔵硬化に及ぼす影響は検討されていない。一般的に、一部の乳化剤は澱粉の老化を抑制する機能を有するため、食品用乳化剤を米菓の食感改良目的で使用した場合、餅生地の冷蔵硬化を抑制し、硬化工程が長くなってしまう可能性や、成型時にべた付いてしまう可能性もあった。
【0007】
また、餅生地の硬化を促進する手段としては、特許文献3では、ワキシーコーンスターチ等を米菓生地に配合する方法が提案されている。特許文献4では、アミロース含量50%以上のハイアミロースコーンスターチを米菓生地に配合することで餅生地の硬化を促進する方法が提案されている。更に、特許文献5ではエリスリトール又はグリセロールを有効成分とする餅生地用改良剤を用いることで餅生地の硬化が促進されることが示されている。加えて、特許文献6では、セルロースナノファイバーを含むことを特徴とする餅生地用硬化促進剤を用いることで、冷蔵時の硬化が促進されることが示されている。また、特許文献7では、グルコースを構成糖とし、α-1,4結合を介して連結したグルコース重合度3以上の直鎖状グルカンの非還元末端グルコース残基にα-1,4結合以外の結合を介して連結したグルコース重合度1以上の分岐構造を有し、イソマルトデキストラナーゼ消化により、イソマルトースを生成する分岐α-グルカン混合物を有効成分とする澱粉糊化生地用硬化促進剤を使用することで、餅生地の硬化を促進する方法が開示されている。
【0008】
しかしながら、上記の従来技術においては、餅生地の硬化を促進する一方で、米菓の食感等に悪影響を及ぼしてしまうという問題があり、餅生地の硬化を促進しつつ米菓の品質を向上させる技術が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭55-42524号公報
【特許文献2】特開2012-239390号公報
【特許文献3】特開昭52-102465号公報
【特許文献4】特開平9-28297号公報
【特許文献5】特許第2990895号公報
【特許文献6】特開2020-5530号公報
【特許文献7】特開2016-26477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、米菓の製造において、冷蔵工程における餅生地の硬化を促進し、且つその餅生地を用いて得られる米菓の食感を改良することのできる米菓用品質改良剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題に対して鋭意検討を行った結果、食品用乳化剤の一種であるグリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルを餅生地に添加することで、餅生地において冷蔵時の硬化を促進するとともに、その餅生地を用いた米菓の食感を軽く良好な食感に改良できることを見出し、この知見に基づいて本発明を成すに至った。
【0012】
即ち、本発明は、次の(1)~(3)からなっている。
(1)グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルを有効成分とする、米菓用品質改良剤。
(2)前記(1)に記載の米菓用品質改良剤を含有する、米菓。
(3)グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルを添加した餅生地を冷蔵する工程を含む、米菓の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の米菓用品質改良剤によれば、冷蔵工程における餅生地の硬化を促進し、且つその餅生地を用いた米菓の食感を軽いものに改良することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明で用いられるグリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルは、通常グリセリンモノ脂肪酸エステル(別称:モノグリセライド)とジアセチル酒石酸若しくはジアセチル酒石酸の酸無水物との反応、又はグリセリンとジアセチル酒石酸と脂肪酸との反応により得ることができる。
【0015】
グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルの製法の概略は以下の通りである。即ち、グリセリンモノ脂肪酸エステルを溶融し、これにジアセチル酒石酸の酸無水物を加え、温度120℃前後で約90分間反応する。グリセリンモノ脂肪酸エステルとジアセチル酒石酸の酸無水物との比率はモル比で1/1~1/2が好ましい。更に、反応中は生成物の着色、臭気を防止するために、反応器内を不活性ガスで置換する方が好ましい。得られたグリセリンモノ脂肪酸エステルとジアセチル酒石酸の酸無水物との反応物は、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルの他に、ジアセチル酒石酸、未反応のグリセリンモノ脂肪酸エステル、その他を含む混合物である。
【0016】
上記グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、食用可能な動植物油脂を起源とする脂肪酸であれば特に制限はなく、例えば炭素数6~24の直鎖の飽和脂肪酸(例えば、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等)又は不飽和脂肪酸(例えば、パルミトオレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、γ-リノレン酸、α-リノレン酸、アラキドン酸等)が挙げられる。これら脂肪酸は、一種類のみを単独で用いてもよく、二種類以上を任意に組み合わせて用いても良い。
【0017】
本発明に用いられるグリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルとしては、例えば、ポエムW-60(商品名;構成脂肪酸:パルミチン酸/ステアリン酸;理研ビタミン社製)、PANODAN 517 KOSHER(商品名;構成脂肪酸:飽和脂肪酸;ダニスコ社製)、PANODAN AB100 VEG-FS MB(商品名;構成脂肪酸:不飽和脂肪酸;ダニスコ社製)、ADMUL DATEM 1935(商品名;構成脂肪酸:飽和脂肪酸;ケリー社製)等が商業的に製造・販売されており、本発明ではこれらを用いることができる。
【0018】
本発明の米菓用品質改良剤は、上記グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルを有効成分とするものである。本発明の米菓用品質改良剤は、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルをそのまま米菓の製造に用いても良く、又はグリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルを含有する製剤を調製し、これを米菓用品質改良剤として米菓の製造に用いても良い。
【0019】
本発明の米菓用品質改良剤の使用対象である米菓は、餅生地を加工して製造されるものであれば特に制限はないが、例えば、あられ、おかき、揚げ餅等のもち米を主原料とするもち米菓や、煎餅、ライスクラッカー等のうるち米を主原料とするうるち米菓等が挙げられる。これら米菓のうち、もち米菓は、通常餅生地を冷蔵して硬化させる工程を含むため、冷蔵工程における餅生地の硬化を促進できる本発明の米菓用品質改良剤の使用対象として好ましい。
【0020】
ここで、餅生地とは、(1)もち米若しくはうるち米そのもの(以下、「原料米」という)、(2)原料米を製粉した米粉(例えば、もち米を製粉した餅粉)、原料米から単離した澱粉、又はそれらの混合物(以下、「原料粉」という)に水を加えて加熱することで糊化した後、混練等を施して固形化又はゲル化したものをいう。
【0021】
本発明の米菓用品質改良剤の使用方法に特に制限はなく、米菓の製造において、餅生地に添加することができる。
【0022】
餅生地の調製方法に特に制限はないが、例えば、原料米を水に浸漬したもの又は原料粉に水を加えて混合したものを加熱する工程(蒸煮工程)を施した後に搗く又は練る工程(餅つき工程)を実施することにより調製することができる。
【0023】
本発明の米菓用品質改良剤を餅生地に添加するタイミングとしては、餅生地中に該改良剤を万遍なく分散させる観点から、例えば、蒸煮工程前に原料米や原料粉に該改良剤を加えて混合する、又は蒸煮工程後餅つき工程前に該改良剤を加えることが好ましい。
【0024】
また、本発明の米菓用品質改良剤を餅生地に添加する方法に特に制限はないが、餅生地用品質改良剤の形態や性状に応じて適宜添加することができる。より具体的には、(1)粉末状のものは、原料粉と粉粉混合する、(2)粉末状ではなく、常温の水に分散するものは、常温の水に分散し、これを添加する、(3)粉末状ではなく、常温の水には分散しないが加熱すれば分散するものは、加熱した水に分散した後、これを冷却してから添加する、(4)常温で粘度の低い液体で水に分散しないものは、原料粉に加えてミキサー等で撹拌する、(5)常温で粘度の高い液体又は固体で水に分散しないものは、加熱融解してから原料粉に加えてミキサー等で撹拌する方法を実施することができる。
【0025】
餅生地に対する本発明の米菓用品質改良剤の添加量に特に制限はないが、本発明の効果が十分に発揮される観点及び費用対効果の観点から、例えば、原料米又は原料粉100質量部に対するグリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルの添加量が0.05~1.0質量部、好ましくは0.1~0.5質量部となるように調整することができる。
【0026】
本発明の米菓用品質改良剤又は米菓用品質改良剤を添加した餅生地には、本発明の効果を阻害しない範囲で、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル以外の任意の成分を含有させてもよい。このような成分としては、例えば、油脂、蛋白質、糖類、米以外の澱粉、澱粉分解物等の多糖類(但し、後述のイヌリン及び粉末セルロースを除く)、糖アルコール(但し、後述のエリスリトール、デキストリンを除く)、加工澱粉、無機塩、増粘剤、固結防止剤、酸化防止剤、賦形剤、保存料、調味料、酸味料、甘味料、着色料、香料、その他の食品添加物等が挙げられる。
【0027】
また、任意の成分としては、上記したもの以外に、本発明の効果を更に高める観点から、餅生地硬化促進作用を有する成分を用いることができる。そのような成分としては、例えば、エリスリトール、イヌリン、粉末セルロース、結晶化能が比較的高い一部のデキストリン等が特に好ましく用いられる。
【0028】
本発明の米菓用品質改良剤を添加した餅生地を用いて米菓を製造する方法に特に制限はなく、公知の方法により製造することができる。例えば、餅生地を型に入れて冷蔵し硬化する工程(硬化工程)、硬化した餅生地を切断する等して成型する工程(成型工程)、切断された餅生地を乾燥する工程(乾燥工程)、餅生地を焼成又は油調して加熱する工程(加熱工程)を順次実施することにより、米菓を製造することができる。
【0029】
尚、硬化工程では、餅生地が切断等の成型に必要な硬度になるまで冷蔵することができる。冷蔵温度は、例えば、0℃~10℃、好ましくは1℃~5℃であって良い。また、冷蔵時間は、例えば、1時間以上、5時間以上、10時間以上若しくは15時間以上であっても良く、10日以下、5日以下、3日以下、30時間以下若しくは20時間以下であっても良く、又はこれらの組み合わせであっても良い。
【0030】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例0031】
[揚げ餅の製造及び評価]
(1)原材料
1)餅粉(商品名:餅粉S;波里社製)
2)グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル1(商品名:ポエムW-60;構成脂肪酸:パルミチン酸/ステアリン酸;理研ビタミン社製)
3)グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル2(商品名:PANODAN 517 KOSHER;構成脂肪酸:飽和脂肪酸;ダニスコ社製)
4)グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル3(商品名:ADMUL DATEM 1935;構成脂肪酸:飽和脂肪酸;ケリー社製)
5)グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル4(商品名:PANODAN AB 100 VEG-FS MB;構成脂肪酸:不飽和脂肪酸;ダニスコ社製)
6)グリセリン脂肪酸エステル1(商品名:エマルジーP-100;構成脂肪酸:パルミチン酸/ステアリン酸;理研ビタミン社製)
7)グリセリン脂肪酸エステル2(商品名:エマルジーOL-100H;構成脂肪酸:オレイン酸;理研ビタミン社製)
8)ジグリセリン脂肪酸エステル1(商品名:ポエムDS-100A;構成脂肪酸:ステアリン酸;理研ビタミン社製)
9)ジグリセリン脂肪酸エステル2(商品名:ポエムDO-100V;構成脂肪酸:オレイン酸;理研ビタミン社製)
10)デカグリセリン脂肪酸エステル1(商品名:ポエムJ-0081HV;構成脂肪酸:ステアリン酸;40%ハイドレート品;理研ビタミン社製)
11)デカグリセリン脂肪酸エステル2(商品名:ポエムJ-3081V;構成脂肪酸:オレイン酸;理研ビタミン社製)
12)プロピレングリコール脂肪酸エステル(商品名:リケマールPO-100V;構成脂肪酸:オレイン酸;理研ビタミン社製)
13)ソルビタン脂肪酸エステル(商品名:ポエムO-80V;構成脂肪酸:オレイン酸;理研ビタミン社製)
14)グリセリンコハク酸脂肪酸エステル(商品名:ポエムB-30;構成脂肪酸:パルミチン酸/ステアリン酸;理研ビタミン社製)
15)デキストリン(商品名:AmyloSoln;昭和産業社製)
16)エリスリトール(商品名:天然甘味料エリスリトール;日本ガーリック社製)
17)イヌリン(商品名:フラクトファイバー;フジ日本精糖社製)
18)粉末セルロース(商品名:ハンフロックHL200/30;J.RETTENMAIER&SOHNE社製)
【0032】
(2)餅生地の配合
上記原材料を用いて調整した餅生地1~25の配合を表1~4に示す。このうち表1及び2の餅生地1~11は本発明に係る実施例であり、表3及び4の餅生地12~24はそれらに対する比較例であり、表4の餅生地25は、乳化剤及び餅生地硬化促進作用を有する原材料(即ち、デキストリン、エリスリトール、イヌリン、粉末セルロース)を使用しない対照である。
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
(3)餅生地の調製
表1~4の配合に従って、餅生地1~25を調製した。先ず、餅粉に常温の水を加え、均一になるまで手混ぜした。これをクッキングペーパーで包み、卓上餅つき機(型式:PFC―M116;東芝社製)にて25分間蒸した。蒸した生地を取り出し、餅生地用の撹拌羽を取り付けた前記卓上餅つき機にて13分間餅生地を練り、餅生地1~25を得た。尚、餅生地への乳化剤及び餅生地硬化促進作用を有する原材料の添加方法は、餅生地2~6、8~12及び20~24では、水以外の原料をビニール袋内で良く混合したものを使用した。また、餅生地7では、一部の水に乳化剤を加え、常温で混合して乳化剤を分散させたものを使用した。また、餅生地1、14~17では、一部の水に乳化剤を加え、約70℃で加熱混合して乳化剤を分散させたものを冷却して使用した。また、餅生地18については、常温の乳化剤をミキサーを用いて一部の餅粉にまぶして使用した。また、餅生地13及び19については、約70℃で加熱融解した乳化剤をミキサーを用いて一部の餅粉にまぶして使用した。
【0038】
(4)冷蔵後の餅生地の硬さの評価
(3)で得た餅生地をそれぞれ縦21cm×横6cm×高さ4.5cmのプラスチック製容器に流し込み、食品用ラップフィルムで包装し、5℃の冷蔵庫にて5日間保管したものを用いて、冷蔵後の硬さの評価試験を実施した。試験では、テクスチャーアナライザー(型式:TA.XT plus;Stable Micro Systems社製)を使用して所定の条件(針型プローブ:P/2N;進入速度:3mm/sec)で各生地の気泡を含まない部分を突き刺し、5.0mmの深さまで突き刺した際の最大応力(g)を計測した。前記試験を各生地5か所ずつ行い、得られた測定値の平均値を算出し、餅生地25の最大応力の平均値を100として、それに対する相対値を餅生地1~24について求めた。結果を表4に示す。
【0039】
(5)揚げ餅の作製
(4)で冷蔵した餅生地1~25をそれぞれ幅4cmに切断し、スライサー(製品名:モチスラ;曙産業社製)を用いて厚さ約2.0mmにスライスした後、更に端を切り落として一辺が4.0cmの正方形に成型した。これを網に乗せ、通風乾燥機にて60℃で生地水分値が約7.0%になるまで乾燥した。乾燥した餅生地を約250℃のナタネ油にて片面50秒ずつ揚げ、網の上で粗熱を取り、揚げ餅1~25を得た。
【0040】
(6)食感の評価
揚げ餅1~25をそれぞれ喫食し、食感について官能試験を行った。官能試験では、表5に示す評価基準に従い、「硬さ」「口溶け」の評価項目について10名のパネラーで評価を行い、評点の平均点を求め、以下の基準に従って記号化した。結果を表6に示す。
〔基準〕
◎:極めて良好 平均値3.5以上
○:良好 平均値2.5以上、3.5未満
△:やや悪い 平均値1.5以上、2.5未満
×:悪い 平均値1.5未満
【0041】
【0042】
【0043】
表6の結果から明らかなように、本発明の実施例である餅生地1~11は、対照の餅生地25に比べて冷蔵後の硬化が促進されており、且つ揚げ餅1~11の食感も対照の揚げ餅25に比べて良好であった。これに対し、餅生地12は、硬化が抑制されてしまい、揚げ餅12の食感は、対象の揚げ餅25と比較して良好とは言えなかった。また、揚げ餅13~20の食感は、対照の揚げ餅25に比べて良好だったものの、餅生地13~20では、対照の餅生地25に比べて冷蔵後の硬化を抑制してしまっていた。また、餅生地21~24は、対象の餅生地25に比べて冷蔵後の効果は促進されていたものの、揚げ餅21~24の食感は、対象の揚げ餅25と比較して良好とは言えなかった。