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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034929
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】スクリーン版製造装置
(51)【国際特許分類】
   B41C 1/055 20060101AFI20240306BHJP
   B41C 1/05 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
B41C1/055 511
B41C1/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139507
(22)【出願日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】504123421
【氏名又は名称】日本プリメックス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】509154327
【氏名又は名称】株式会社JAM
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100188156
【弁理士】
【氏名又は名称】望月 義時
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(74)【代理人】
【識別番号】100167793
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 学
(72)【発明者】
【氏名】権守 芳一
(72)【発明者】
【氏名】三浦 慎也
【テーマコード(参考)】
2H084
【Fターム(参考)】
2H084AA13
2H084BB04
2H084BB07
2H084BB13
2H084CC10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】コンパクトな構成でスクリーン版を作製することができスクリーン版製造装置を提供する。
【解決手段】スクリーン版製造装置における搬送機構は、搬送ローラ141と、テンション部と有し、テンション部は、スクリーンマスタの幅方向に配置された複数のテンションローラ142と、複数のテンションローラ142を収容する収容ケース161であって、回転軸Axを中心として回動可能に構成された収容ケース161と、収容ケース161を所定の固定位置に固定するロック機構168と、収容ケース161が固定位置に位置している状態で、テンションローラ142を搬送ローラ141側に向けて押し付ける付勢部材162と、を有し、テンションローラ142は、収容ケース161が固定位置に位置している状態で、付勢部材162からの付勢力によって搬送ローラ141側に向けて押し付けられている。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シルク上に熱溶融フィルムが形成されたスクリーンマスタを移動させながら、前記熱溶融フィルムを加熱穿孔するスクリーン版製造装置であって、
前記スクリーンマスタの前記熱溶融フィルムを溶融させて穿孔する加熱穿孔部と、
前記スクリーンマスタを前記加熱穿孔部の側へ案内する搬送ガイドと、
前記穿孔した前記スクリーンマスタを搬出する搬送機構と、
を備え、
前記搬送機構は、
前記加熱穿孔部よりも前記スクリーンマスタの搬送方向下流側に位置する搬送ローラと、
前記スクリーンマスタの搬送路を挟んで前記搬送ローラの反対側に位置し、前記スクリーンマスタに対して圧力を加えるテンション部と、
有し、
前記テンション部は、
前記スクリーンマスタの幅方向に配置された複数のテンションローラと、
前記複数のテンションローラを収容しかつ開口部が形成され、前記複数のテンションローラを前記開口部から外部に露出させた状態で保持するとともに、前記スクリーンマスタの幅方向に延在する回転軸を中心として回動可能に構成された収容ケースと、
前記収容ケースを所定の固定位置に固定するロック機構と、
前記収容ケースが前記固定位置に位置している状態で、前記テンションローラを前記搬送ローラ側に向けて押し付ける付勢部材と、
を有し、
前記テンションローラは、前記ロック機構により前記収容ケースが前記固定位置に固定されているとき、前記付勢部材からの付勢力によって前記搬送ローラ側に向けて押し付けられている、
スクリーン版製造装置。
【請求項2】
前記収容ケースは、
開口部が形成され、当該開口部から前記テンションローラを露出させた状態で前記テンションローラを保持するローラホルダ部材と、
前記ローラホルダ部材に対して上方から嵌合するように設けられるローラカバー部材と、
を有し、
前記ローラホルダ部材と前記ローラカバー部材とは、前記回転軸と同軸の回転中心周りに互いに回動するように構成されており、
前記付勢部材は、前記ローラホルダ部材とローラカバー部材との間に配置されたコイルバネである、
請求項1に記載のスクリーン版製造装置。
【請求項3】
前記収容ケースの回動中心である前記回転軸は、前記収容ケースのうち前記スクリーンマスタの搬送方向の上流側となる位置に位置しており、
前記テンションローラは、前記回転軸よりも前記スクリーンマスタの搬送方向の下流側に配置され、
前記付勢部材は、前記テンションローラのさらに下流側に配置されている、
請求項1又は2に記載のスクリーン版製造装置。
【請求項4】
前記ローラホルダ部材は、
前記テンションローラの軸を支持する軸支持部が形成され、前記開口部を構成する第1の開口が形成されたアッパーホルダ部材と、
前記アッパーホルダ部材の下側に配置される部材であって、前記開口部を構成する第2の開口が形成されたロアホルダ部材と、
を有し、
前記軸支持部は、前記アッパーホルダ部材の一部を折り曲げた折曲げ部として設けられている、
請求項2に記載のスクリーン版製造装置。
【請求項5】
前記ローラホルダ部材は、
前記開口部を構成する第1の開口が形成されたアッパーホルダ部材と、
前記アッパーホルダ部材の下側に配置される部材であって、前記開口部を構成する第2の開口が形成されたロアホルダ部材と、
を有し、
前記テンションローラの軸を支持する軸支持部を構成する部材が、固定具又は溶接により前記アッパーホルダ部材又はロアホルダ部材に固定されている、
請求項2に記載のスクリーン版製造装置。
【請求項6】
シルク上に熱溶融フィルムが形成されたスクリーンマスタを移動させながら、前記熱溶融フィルムを加熱穿孔するスクリーン版製造装置であって、
ロールから引き出された前記スクリーンマスタを搬送する搬送機構と、
前記搬送機構によって搬送される前記スクリーンマスタの前記熱溶融フィルムを溶融させるサーマルヘッドを有する加熱穿孔部と、
前記スクリーンマスタを前記サーマルヘッドの側へと案内する搬送ガイドと、
を備え、
前記搬送機構は、
前記加熱穿孔部よりも前記スクリーンマスタの搬送方向下流側に位置する搬送ローラと、
前記スクリーンマスタの搬送路を挟んで前記搬送ローラの反対側に位置し、前記スクリーンマスタに対して圧力を加えるテンション部と、
有し、
前記テンション部は、
前記スクリーンマスタの幅方向に配置された複数のテンションローラと、
前記複数のテンションローラを収容する収容ケースであって、前記複数のテンションローラを開口部から外部に露出させた状態で保持するとともに、前記スクリーンマスタの幅方向に延在する回転軸を中心として回動可能に構成された収容ケースと、
を有し、
前記テンションローラを前記搬送ローラ側に向けて押し付ける押付力を調整可能に設けられている付勢機構と、
を有するスクリーン版製造装置。
【請求項7】
前記付勢機構は、前記テンションローラごとに独立して動作可能な複数の付勢ユニットを有する、
請求項6に記載のスクリーン版製造装置。
【請求項8】
前記付勢機構は、
前記テンションローラを前記搬送ローラ側に押し付ける弾性部材と、
前記弾性部材の形状を変更させることによって前記テンションローラを押し付ける力を変更する調整機構と、
を有する、
請求項6又は7に記載のスクリーン版製造装置。
【請求項9】
前記調整機構は、
前記弾性部材に当接して前記弾性部材の形状を変更させる移動部材と、
モータの駆動力で前記移動部材を動かす駆動機構と、
前記駆動機構の動作を制御する制御回路と、
を備える、
請求項8に記載のスクリーン版製造装置。
【請求項10】
前記制御回路は、
前記スクリーンマスタの穿孔密度が所定の閾値を超える場合、前記テンションローラを押し付ける力が相対的に大きくなるように前記駆動機構を動作させ、
前記スクリーンマスタの穿孔密度が所定の閾値以下の場合には、前記テンションローラを押し付ける力が相対的に小さくなるように前記駆動機構を動作させる、
請求項9に記載のスクリーン版製造装置。
【請求項11】
前記制御回路は、
複数の前記スクリーンマスタの穿孔密度と、複数の前記駆動機構によって動かされる前記移動部材の位置とが関連付けたれた記憶部を参照し、
前記スクリーンマスタの穿孔密度に応じた前記位置に前記移動部材が位置するように前記駆動機構を動作させる、
請求項10に記載のスクリーン版製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーン版製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スクリーン版を用いて用紙やTシャツなどに印刷を行うスクリーン印刷が知られている。特許文献1には、スクリーン版を作製するための装置が開示されている。この装置は、枠体に固定されたスクリーンマスタを加工してスクリーン版を作製するものである。具体的には、この装置は、サーマルヘッドでスクリーンマスタの表面の樹脂を溶融させることで、スクリーン版を作製する(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-198979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のスクリーン版の作製装置は、枠に固定されたスクリーンマスタに対して穿孔を行うものであったため、装置が大型化するという問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、コンパクトな構成でスクリーン版を作製することができるスクリーン版製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態のスクリーン版製造装置は、シルク上に熱溶融フィルムが形成されたスクリーンマスタを移動させながら、前記熱溶融フィルムを加熱穿孔するスクリーン版製造装置であって、前記スクリーンマスタの前記熱溶融フィルムを溶融させて穿孔する加熱穿孔部と、前記スクリーンマスタを前記加熱穿孔部の側へ案内する搬送ガイドと、前記穿孔した前記スクリーンマスタを搬出する搬送機構と、を備え、前記搬送機構は、前記加熱穿孔部よりも前記スクリーンマスタの搬送方向下流側に位置する搬送ローラと、前記スクリーンマスタの搬送路を挟んで前記搬送ローラの反対側に位置し、前記スクリーンマスタに対して圧力を加えるテンション部と、有し、前記テンション部は、前記スクリーンマスタの幅方向に配置された複数のテンションローラと、前記複数のテンションローラを収容しかつ開口部が形成され、前記複数のテンションローラを前記開口部から外部に露出させた状態で保持するとともに、前記スクリーンマスタの幅方向に延在する回転軸を中心として回動可能に構成された収容ケースと、前記収容ケースを所定の固定位置に固定するロック機構と、前記収容ケースが前記固定位置に位置している状態で、前記テンションローラを前記搬送ローラ側に向けて押し付ける付勢部材と、を有し、前記テンションローラは、前記ロック機構により前記収容ケースが前記固定位置に固定されているとき、前記付勢部材からの付勢力によって前記搬送ローラ側に向けて押し付けられている。
【0007】
前記収容ケースは、開口部が形成され、当該開口部から前記テンションローラを露出させた状態で前記テンションローラを保持するローラホルダ部材と、前記ローラホルダ部材に対して上方から嵌合するように設けられるローラカバー部材と、を有し、前記ローラホルダ部材と前記ローラカバー部材とは、前記回転軸と同軸の回転中心周りに互いに回動するように構成されており、前記付勢部材は、前記ローラホルダ部材とローラカバー部材との間に配置されたコイルバネであってもよい。
【0008】
前記収容ケースの回動中心である前記回転軸は、前記収容ケースのうち前記スクリーンマスタの搬送方向の上流側となる位置に位置しており、前記テンションローラは、前記回転軸よりも前記スクリーンマスタの搬送方向の下流側に配置され、前記付勢部材は、前記テンションローラのさらに下流側に配置されていてもよい。
【0009】
前記ローラホルダ部材は、前記テンションローラの軸を支持する軸支持部が形成され、前記開口部を構成する第1の開口が形成されたアッパーホルダ部材と、前記アッパーホルダ部材の下側に配置される部材であって、前記開口部を構成する第2の開口が形成されたロアホルダ部材と、を有し、前記軸支持部は、前記アッパーホルダ部材の一部を折り曲げた折曲げ部として設けられていてもよい。
【0010】
前記ローラホルダ部材は、前記開口部を構成する第1の開口が形成されたアッパーホルダ部材と、前記アッパーホルダ部材の下側に配置される部材であって、前記開口部を構成する第2の開口が形成されたロアホルダ部材と、を有し、前記テンションローラの軸を支持する軸支持部を構成する部材が、固定具又は溶接により前記アッパーホルダ部材又はロアホルダ部材に固定されていてもよい。
【0011】
本発明の他の形態のスクリーン版製造装置は、シルク上に熱溶融フィルムが形成されたスクリーンマスタを移動させながら、前記熱溶融フィルムを加熱穿孔するスクリーン版製造装置であって、ロールから引き出された前記スクリーンマスタを搬送する搬送機構と、前記搬送機構によって搬送される前記スクリーンマスタの前記熱溶融フィルムを溶融させるサーマルヘッドを有する加熱穿孔部と、前記スクリーンマスタを前記サーマルヘッドの側へと案内する搬送ガイドと、を備え、前記搬送機構は、前記加熱穿孔部よりも前記スクリーンマスタの搬送方向下流側に位置する搬送ローラと、前記スクリーンマスタの搬送路を挟んで前記搬送ローラの反対側に位置し、前記スクリーンマスタに対して圧力を加えるテンション部と、有し、前記テンション部は、前記スクリーンマスタの幅方向に配置された複数のテンションローラと、前記複数のテンションローラを収容する収容ケースであって、前記複数のテンションローラを開口部から外部に露出させた状態で保持するとともに、前記スクリーンマスタの幅方向に延在する回転軸を中心として回動可能に構成された収容ケースと、を有し、前記テンションローラを前記搬送ローラ側に向けて押し付ける押付力を調整可能に設けられている付勢機構と、を有する。
【0012】
前記付勢機構は、前記テンションローラごとに独立して動作可能な複数の付勢ユニットを有してもよい。
【0013】
前記付勢機構は、前記テンションローラを前記搬送ローラ側に押し付ける弾性部材と、前記弾性部材の形状を変更させることによって前記テンションローラを押し付ける力を変更する調整機構と、を有してもよい。
【0014】
前記調整機構は、前記弾性部材に当接して前記弾性部材の形状を変更させる移動部材と、モータの駆動力で前記移動部材を動かす駆動機構と、前記駆動機構の動作を制御する制御回路と、を備えてもよい。
【0015】
前記制御回路は、前記スクリーンマスタの穿孔密度が所定の閾値を超える場合、前記テンションローラを押し付ける力が相対的に大きくなるように前記駆動機構を動作させ、前記スクリーンマスタの穿孔密度が所定の閾値以下の場合には、前記テンションローラを押し付ける力が相対的に小さくなるように前記駆動機構を動作させてもよい。
【0016】
前記制御回路は、複数の前記スクリーンマスタの穿孔密度と、複数の前記駆動機構によって動かされる前記移動部材の位置とが関連付けたれた記憶部を参照し、前記スクリーンマスタの穿孔密度に応じた前記位置に前記移動部材が位置するように前記駆動機構を動作させてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、コンパクトな構成でスクリーン版を作製することができスクリーン版製造装置を提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態のスクリーン版製造装置の斜視図である。
図2図1のスクリーン版製造装置の一部を省略して内部構造を示す斜視図である。
図3】スクリーン版製造装置の内部の構造を示す模式的な断面図である。
図4】スクリーン版製造装置のブロック図である。
図5】インサートガイドが開閉する動作を模式的に示す図である。
図6】テンションローラ及びその周辺構造を示す模式図である。
図7】本発明の変形例の一つの構成を模式的に示す図である。
図8】第2の実施形形態のスクリーン版製造装置一部を示す模式図である。
図9図8の搬送機構を構成する部品を模式的に示す分解斜視図である。
図10】搬送機構の構造及び動作を説明するための図である。
図11】可動範囲規定構造の例を示す図である。
図12】サーマルヘッドの周辺構造の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の一実施形態のスクリーン版製造装置の斜視図である。図2は、図1のスクリーン版製造装置の一部を省略して内部構造を示す斜視図である。図3は、スクリーン版製造装置の内部の構造を示す模式的な断面図である。図4は、スクリーン版製造装置のブロック図である。以下の説明では、図面に示されている対象物の向きに合わせて上、下、左、右といった方向を示す言葉を用いるが、このような説明は本発明を何ら限定するものではない。
【0020】
[スクリーン版製造装置の概要]
まず、本実施形態のスクリーン版製造装置S100の概要について説明する。スクリーン版製造装置S100は、スクリーン版を製造するための装置であり、図1図4(特に図3)に示すように、主として、筐体10と、搬送路形成部材20と、加熱穿孔部30と、搬送機構40と、制御回路80とを備えている。
【0021】
スクリーン版製造装置S100の電源の方式は任意である。スクリーン版製造装置S100は、一例として、ACアダプタを用いて24Vで駆動可能である。下記では、スクリーン版製造装置S100が不図示のバッテリーを内蔵していることを例示する。
【0022】
スクリーン版製造装置S100は、後述するように、スクリーンマスタSを移動させながら、熱溶融フィルムを加熱穿孔することによって、スクリーン版を製造する装置である。
【0023】
スクリーンマスタSは、一例として、格子状に編み込まれたシルクの表面に樹脂製の熱溶融フィルムが形成されたシート状の部材である。なお、シルクは「紗」とも呼ばれる。
【0024】
スクリーンマスタSは、本実施形態ではロールRから引き出される。スクリーン版は、スクリーンマスタSを切除することによって作製され、スクリーン印刷において印刷される図柄や文字に応じた開口部が形成されている。スクリーン印刷においては、この開口部を通じてインクを印刷対象物に塗布することで、印刷が行われる。
【0025】
スクリーンマスタSは加熱穿孔部30にてサーマルヘッド31とプラテンローラ35に押圧挟持されてサーマルヘッド31の加熱により穿孔される。このような方式においては、溶融される面積によってはスクリーンマスタSに縮みが生じる可能性がある。この縮みにより、製造されるスクリーン版の精度が低下することが想定される。
【0026】
本実施形態のスクリーン版製造装置S100では、搬送機構40の搬送ローラ41及びテンションローラ42によりスクリーンマスタSを挟持することで、縮みを抑制することができる。また、本実施形態では、一例として、テンションローラ42の搬送ローラ41に対する押付力が調整可能となっている。このような構成により、押付力が調整されることにより、スクリーンマスタSの縮みに起因したスクリーン版の精度の低下を防止することができる。
【0027】
(スクリーンマスタ)
スクリーンマスタSは、上記したように、格子状に編み込まれたシルクの表面に樹脂部材が形成された部材である。スクリーンマスタSは、ロールRから引き出された連続した長尺な部材である。シート状部材としては、例えば、テトロン(ポリエステル製、登録商標)、ナイロン(66-ナイロン製、登録商標)、ステンレス(SUS304)、Vスクリーン(ポロアリレート製)等が好ましい。特にテトロン(登録商標)はスクリーン伸びが小さく、テンションの設定を高くでき、印刷時の誤差が小さい。
【0028】
従来のスクリーン版製造装置は、枠体(不図示)に保持されたスクリーンマスタに対してサーマルヘッドが熱を付与し、樹脂材料を溶融させる構成である。これに対して、本実施形態のS100は、スクリーン版製造装置S100はスクリーンマスタSを枠体で保持する必要がないため、スクリーン版製造装置S100の小型化を図ることができる。
【0029】
[スクリーン版製造装置の各部の構成]
(筐体10)
筐体10は、図1に示す一対のサイドフレーム12と、サイドフレーム12どうしを接続する不図示のフレーム部材とを備えている。サイドフレーム12としては、第1サイドフレーム12-1と第2サイドフレーム12-2とが設けられている。
【0030】
第1サイドフレーム12-1と第2サイドフレーム12-2との間の距離は、第1サイドフレーム12-1と第2サイドフレーム12-2との間にロールRが着脱可能にセットできる程度の長さに設定されている。筐体10は、スクリーン版製造装置S100の外形を規定している。筐体10の形状は任意であるが、本実施形態では、筐体10は、横長の直方体形状に形成されている。
【0031】
なお、筐体10は、B5版、A4版、A3版、及びそれ以上のサイズに相当するスクリーンマスタSのロールRを装着できるように構成されていてもよい。
【0032】
(搬送路形成部材20)
搬送路形成部材20は、図3に示すように、加熱穿孔部30までのスクリーンマスタSの搬送路を形成する部材であり、ガイドプレート21、インサートガイド22及びスクリーンガイド23を含む。
【0033】
ガイドプレート21は、ロールRから引き出されたスクリーンマスタSを加熱穿孔部30の側へと案内する。ガイドプレート21は、スクリーンマスタSの幅方向に延在している。ガイドプレート21は、スクリーンマスタSをスムーズに搬送できるように、加熱穿孔部30側に向かって傾斜している。
【0034】
スクリーンガイド23は、ガイドプレート21上に配置された一対の部材であり、スクリーンマスタSの両側をガイドする。
【0035】
インサートガイド22は、ガイドプレート21の上部に配置されている。インサートガイド22は、ガイドプレート21と協働して、スクリーンマスタSを加熱穿孔部の側へと案内する。インサートガイド22は、ガイドプレート21の傾斜に沿って平行に延びる傾斜した通路を形成している。また、インサートガイド22は、この例では、断面形状が略三角形となるように形成されている。この三角形形状の一面とガイドプレート21との面で形成される隙間(スクリーンマスタの搬送路)は容易に調整可能である。その隙間は0.5~5mmが好ましく、0.5~3mmがより好ましい。インサートガイド22は、スクリーンマスタSの搬送方向(図3の横方向)に沿う長さが比較的長く形成されており、これにより、スクリーンマスタSを加熱穿孔部30の側に向けて良好にガイドできるようになっている。このような構成によれば、搬送路が比較的長く形成されており、スクリーンマスタSの詰まり等の発生が低減する。
【0036】
インサートガイド22は、一例として、水平方向の回転軸周りに回動するように構成されている。具体的には、インサートガイド22は、プラテンローラ35(詳細下記)と同軸に設けられた回転軸を中心として回動する。
【0037】
(加熱穿孔部30)
加熱穿孔部30は、スクリーンマスタSに対して熱を加えることによってスクリーンマスタSを穿孔する部分である。加熱穿孔部30は、図3に示すように、サーマルヘッド31、支持プレート32、弾性体33、及びプラテンローラ35を有している。
【0038】
なお、サーマルヘッド31は、詳細な図示は省略するが、ブロック状の部材と、その上部に配置された複数の発熱体とを有する構造であってもよい。ブロック部材は、スクリーンマスタSの幅方向に配置されたサーマルヘッド31より大きく、サーマルヘッド31から発生する熱を放熱する冷却機能を有する。
【0039】
サーマルヘッド31は、スクリーンマスタSの幅方向に配列された複数の発熱体を有する。発熱体は、一例として発熱抵抗体である。サーマルヘッド31は、スクリーンマスタSの熱溶融フィルムを溶融させる。複数の発熱抵抗体は、制御回路80が生成した印刷データに応じて、所定のタイミングで発熱する。スクリーンマスタSのうち穿孔するべき領域に配置された発熱抵抗体が発熱し、その他の発熱抵抗体は発熱しないことにより、スクリーンマスタSの幅方向の領域の所定の領域のみが穿孔される。
【0040】
支持プレート32は、スクリーンマスタS側に近づく方向と離れる方向とに移動可能に構成されている。支持プレート32は、具体的には、一例として上下方向に移動可能に構成されている。
【0041】
弾性体33は、サーマルヘッド31の下方に配置されており、支持プレート32に対して上向きの付勢力を付与する。これにより、サーマルヘッド31がプラテンローラ35へ押し付けられる。このような構成により、スクリーンマスタSがプラテンローラ35とサーマルヘッド31により挟持される。
【0042】
プラテンローラ35は、スクリーンマスタSが搬送される搬送路を挟んで、サーマルヘッド31の反対側(図示の上方)に配置されている。プラテンローラ35は、弾性を有する円形断面のローラ部材を有し、不図示の軸によって回転可能に支持されている。本実施形態では、一例として、プラテンローラ35の軸は固定であり軸の位置は移動しない。しかしながら、サーマルヘッド31が固定され、プラテンローラ35が移動するようにしてもよい。
【0043】
プラテンローラ35がサーマルヘッド31に当接したままの状態でスクリーンマスタSに穿孔する。プラテンローラ35がサーマルヘッド31に当接する圧力は一例で一定である。本実施形態の構成では、サーマルヘッド31とプラテンローラ35との間の圧力を弾性体33の付勢により調整され、スクリーンマスタSの張りを調整でき、スクリーンマスタSを穿孔する前の撓みも防止できるのでスクリーンマスタSに精度よく穿孔することができる。
【0044】
図5は、インサートガイド22が開閉する動作を模式的に示す図である。図5(a)~図5(c)に示すように、インサートガイド22は、インサートレバー25と一体的に構成され、プラテンローラ35と同軸の回転軸(不図示)を中心として回動する。インサートレバー25は、図2に示すようにインサートガイド22の両サイドに設けられている。インサートレバー25は、図5に示すように、支持プレート32の一部に当接するカム部25aを有している。カム部25aは、一例で、複数の段部(カム形状部分)を有する形状に形成されている。
【0045】
図5(a)に示すようなインサートガイド22が最も閉じた状態では、サーマルヘッド31とプラテンローラ35とが互いに当接する。この状態から、図5(b)のような位置まで、インサートガイド22を回動させると、インサートレバー25のカム部25aの1段部が支持プレート32の一部に当接して支持プレート32が押し下げられ、サーマルヘッド31が少し下方に移動する。ただし、図5(b)の状態では、未だ、プラテンローラ35はサーマルヘッド31に当接している。
【0046】
インサートガイド22を、さらに図5(c)のような位置まで回動させると、カム部25aの2段部と支持プレート32との当接により、支持プレート32がさらに押し下げられる。その結果、サーマルヘッド31がさらに下方に移動し、サーマルヘッド31とプラテンローラ35との間の隙間dが開くこととなる。
【0047】
このようにインサートガイド22を回動させて、サーマルヘッド31とプラテンローラ35との間の隙間を広げることができる構成によれば、例えば、スクリーンマスタSをサーマルヘッド31とプラテンローラ35との間にセットする際の作業が行い易い。また、例えば、サーマルヘッド31を清掃する際にも作業性良く清掃を行うことができる。
【0048】
(搬送機構40)
搬送機構40は、ロールRから引き出され、加熱穿孔部30で穿孔されたスクリーンマスタSを搬出する機構である。搬送機構40は、図2図3及び図4に示すように、搬送ローラ41と、テンションローラ42と、モータ43(図4)及びローラ駆動機構44(図4)を有している。
【0049】
搬送ローラ41は、図3に示すように、加熱穿孔部30よりも搬送方向下流側に配置されている。搬送ローラ41は、断面が円形に形成された弾性を有するローラであり、スクリーンマスタSの下面(樹脂フィルムが塗布されている側である表側)を支持する。搬送ローラ41は、本実施形態では、水平方向の回転軸周りに回転可能に構成されている。
【0050】
テンションローラ42は、本実施形態では、図2に示すようにスクリーンマスタSの幅方向に沿って複数配置されている。具体的には、テンションローラ42-1、テンションローラ42-2、テンションローラ42-3の3つのテンションローラ42が配置されている。なお、テンションローラの数はこれに限定されるものではない。テンションローラ42は、スクリーンマスタSの搬送路を挟んで搬送ローラ41の反対側に位置し、スクリーン版製造装置S100の動作時には、スクリーンマスタSを搬送ローラ41に対して押し付ける。
【0051】
モータ43は、搬送ローラ41を回転させる駆動力を発生させる駆動源である。モータ43は、一例として電磁モータ、例えばステッピングモーターであり、モータ43の動作は、制御回路80によって制御される。スクリーン版製造装置S100において、モータ43は1つのみ設けられていてもよいし、複数設けられていてもよい。
【0052】
ローラ駆動機構44は、複数のギアからなるギア列を含む機構であり、モータ43の駆動力を所定のギア比で搬送ローラ41に伝達する。なお、モータ43は、プラテンローラ35を回転させるための駆動機構の駆動力を発生させるものであってもよい。このように、モータ43が、プラテンローラ35と搬送ローラ41とを回転させる共通の駆動源として設けられている場合、スクリーン版製造装置S100の構成を簡素化、かつ、コンパクトにでき、コスト低減する点で有利である。
【0053】
(制御回路80)
制御回路80は、スクリーン版製造装置S100の各部の動作を制御するための回路である。制御回路80は、例えばCPU(Central Processing Unit)であり、記憶部に記憶されたプログラムを実行することにより、データ取得部及び印刷部等として機能する。図4に示すように、一例として、モータ43及びサーマルヘッド31に対して制御信号を供給してそれらの動作を制御する。
【0054】
制御回路80は、外部から文字、イメージ等のデータをデータ取得部で取得し、そのデータを基にスクリーンマスタSにおけるどの領域をどのように穿孔するかを示す印刷データを生成する。制御回路80は、例えば最終的に形成するべき画像の二次元データに基づき、スクリーンマスタSに対する印刷データを生成する。印刷データの具体的な生成手法については、従来公知の技術を利用できるため、詳細な説明は省略する。
【0055】
(付勢機構50)
図6は、テンションローラ42及びその周辺構造を示す模式図である。テンションローラ42及びその周辺構造について、図6を参照して詳細に説明する。上述したように、スクリーンマスタSに対して熱を加えて所定の領域を加熱穿孔する場合、スクリーンマスタSの縮みの問題が生じうる。すなわち、サーマルヘッドで紙に印字する場合と異なり、スクリーンマスタSにおいては、サーマルヘッド31からの熱でシルクの表面の樹脂材料が溶かされるため、溶かされる樹脂材料の領域が大きいほど、スクリーンマスタSの収縮が生じやすい傾向がある。
【0056】
スクリーンマスタSが収縮すると、場合によってはスクリーン版が歪み、スクリーン版の精度が低下する。このような問題を解決するため、本実施形態のスクリーン版製造装置S100では、一例で、付勢機構50が設けられている。付勢機構50は、テンションローラ42を搬送ローラ41側に向けて所定の押圧力で押し付ける機構である。
【0057】
付勢機構50には、一例で、搬送ローラ41の幅方向に複数のバネが設けられている。
【0058】
なお、本実施形態では、このようにテンションローラ42ごとに付勢機構50が付勢ユニットとして設けられている構成を例示するが、付勢機構50は複数のテンションローラ42に対して1つ設けられていてもよい。図6では、互いに独立して動作可能な付勢機構50-1、付勢機構50-2、及び付勢機構50-3が描かれている。付勢機構50-1、付勢機構50-2、及び付勢機構50-3は、一例としていずれも同様の構成を有する。以下の説明では、付勢機構50-1を例として付勢機構50について説明する。
【0059】
付勢機構50は、図6に模式的に示すように、ローラ支持部材51、弾性部材52、移動プレート53、固定プレート54、及び調整ネジ55を有している。
【0060】
ローラ支持部材51は、テンションローラ42を回転可能に支持する部材である。ローラ支持部材51は、具体的には、テンションローラ42の回転軸と搬送ローラ41の回転軸とが平行になるように、テンションローラ42を支持する。ローラ支持部材51は、搬送ローラ41に対して近づく方向及び遠ざかる方向(図の上下方向)に移動可能に構成されている。
【0061】
弾性部材52は、テンションローラ42を搬送ローラ41の側に押し付ける部材であり、一例としてコイルバネ又は板バネである。
【0062】
移動プレート53、固定プレート54及び調整ネジ55は、テンションローラ42を押し付ける力を変更する調整機構を構成している。具体的には、移動プレート53、固定プレート54及び調整ネジ55は、弾性部材52の形状を変更させることによって、弾性部材52からの付勢力を変化させ、テンションローラ42を押し付ける力を変更する。
【0063】
移動プレート53は、弾性部材52の上方に配置され、上下方向に可動に設けられている。移動プレート53には、調整ネジ55の一部が係合しており、調整ネジ55の回転に応じて移動プレート53は調整ネジ55の軸方向に沿って上下方向に移動する。移動プレート53が下方に移動すると、弾性部材52が縮められ、弾性部材52がテンションローラ42を搬送ローラ41側に向けて付勢する。
【0064】
固定プレート54は、例えば筐体10の一部品として固定的に配置された部材であり、調整ネジ55が通されている。調整ネジ55は、例えば、固定プレート54のネジ孔を通って上下方向に延在している。調整ネジ55は、一例として、ユーザによってドライバにより回される。調整ネジ55を一例として右回りに回転させると、調整ネジ55が下方に移動する。なお、図6の例では、調整ネジ55を右回りに回転させると、固定プレート54の位置は変わらず、調整ネジ55がねじ込まれながら調整ネジ55と移動プレート53とが下方に移動していく構成であるが、本発明はこのような具体的な構成に限定されるものではなく、種々変更可能である。
【0065】
[スクリーン版製造装置S100の動作]
以上のように構成されたスクリーン版製造装置S100は、下記のように動作する。まず、一例として、ユーザは、スクリーン版製造装置S100のサイドフレーム12の間にロールRを装着し、ロールRから引き出されたスクリーンマスタSをガイドプレート21に沿うように引き回して、加熱穿孔部30に通す。スクリーンマスタSを加熱穿孔部30に通す際には、ユーザは、インサートガイド22を持ち上げるように回動させて開口させ、サーマルヘッド31がプラテンローラ35から離れた状態で、サーマルヘッド31とプラテンローラ35との間に挿通させる。ユーザは、さらに、スクリーンマスタSを搬送機構40側に引き回し、スクリーンマスタSが搬送ローラ41とテンションローラ42とによって保持される状態となるように、スクリーンマスタSをセットする。
【0066】
このように、スクリーンマスタSがセットされた状態で、スクリーン版製造装置S100の制御回路80は、入力された画像データに基づいて、当該画像データを形成するための印刷データを生成する。制御回路80は、プラテンローラ35、搬送ローラ41及びサーマルヘッド31を動作させ、生成した印刷データに基づき搬送しつつ、スクリーンマスタSの所定の位置を加熱穿孔する。
【0067】
サーマルヘッド31による加熱穿孔が完了した後、制御回路80はプラテンローラ35及び搬送機構40を動作させて所定の距離だけスクリーンマスタSを下流側へと送る。こうした、加熱穿孔と搬送の動作を連続して行うことで、スクリーンマスタSに対して所定の印刷データに応じた開口部を形成する。一連の加熱穿孔動作が完了した後、ユーザは、スクリーンマスタSの一部をスクリーンマスタSから切り離す。これにより、スクリーン印刷用のスクリーン版が作製される。
【0068】
(作用効果)
以上のように構成された本実施形態のスクリーン版製造装置S100は、シート状のスクリーンマスタSを穿孔し、スクリーン版を形成するものであるので、枠体に保持されたスクリーンマスタSを搬送する必要のある装置と比較して、スクリーン版製造装置S100をコンパクトに構成することができる。
【0069】
また、スクリーン版製造装置S100においては、搬送機構40が有する搬送ローラ41及びテンションローラ42のうち、テンションローラ42の位置が可変に設けられており、これによりテンションローラ42の搬送ローラ41に対する押付力が調整可能となっている。このような構成により、押付力を調整しスクリーンマスタSを安定的に保持することによって、スクリーンマスタSの縮みに起因したスクリーン版の精度の低下を防止することができる。
【0070】
具体的な使用例の一例としては、例えば、スクリーンマスタSの中央部の穿孔密度が比較的高く、両端部では穿孔密度が比較的低いデータの場合、ユーザは、3つの付勢機構50のうち中央部については付勢力を高めて、両端部は付勢力を弱めるように調整をしてもよい。
【0071】
<変形例>
上記実施形態では、調整ネジ55がユーザによって回されることを例示した。しかし、本発明の一形態のスクリーン版製造装置は、駆動機構によって自動的に調整ネジ55を回転させてもよい。図7は、本発明の変形例の一つの構成を模式的に示す図である。
【0072】
図7のスクリーン版製造装置は、第1の実施形態の構成に加えて、駆動機構90を備えている。具体的には、図7のスクリーン版製造装置は、上記の実施形態と同様、弾性部材52に当接して弾性部材52の形状を変更させる移動部材である移動プレート53等と、制御回路80とを備え、さらに、移動プレート53を動かすための駆動機構90を備えている。
【0073】
駆動機構90は、例えば調整ネジ55に当接して調整ネジ55回転させる回転部材(不図示)と、その回転部材を回転させる駆動部とを有している。駆動部は、一例としてモータ等の駆動源を含む。
【0074】
制御回路80は、駆動機構90に対して制御信号を送信し、駆動機構90の動作を制御する。制御回路80は、例えば、スクリーンマスタSの穿孔密度に応じて自動的に付勢機構50がテンションローラ42を付勢する力を調整してもよい。具体的には、制御回路80は、印刷データに基づいて、スクリーンマスタSの穿孔密度を特定し、特定した穿孔密度所定の閾値を超える場合、テンションローラ42を押し付ける力が相対的に大きくなるように駆動機構90を動作させる。こうすることで、穿孔密度が比較的大きいとき(換言すれば、スクリーンマスタSに縮みが生じやすいとき)、テンションローラ42と搬送ローラ41とによるスクリーンマスタSの保持力を上昇させ、安定的にスクリーンマスタSを挟持しつつ搬送することが可能となる。
【0075】
制御回路80は、また、一例で、スクリーンマスタSの穿孔密度が所定の閾値以下の場合には、テンションローラを押し付ける力が相対的に小さくなるように駆動機構90を動作させてもよい。
【0076】
なお、上記における「穿孔密度」は、具体的には一例として、テンションローラ42が3つの場合には、スクリーンマスタSを幅方向に3つの分割し、各テンションローラ42に対応する領域の穿孔密度に応じて、各テンションローラ42の押付力が調整されてもよい。
【0077】
基準となる穿孔密度が段階的に設定されている場合、それに応じて、移動プレート53が位置するべき複数の位置が予め設定されていてもよい。例えば、穿孔密度が最も大きい第1密度の場合には、移動プレート53が最も下方である第1位置に移動し、穿孔密度が第1密度よりも小さい第2密度の場合には、移動プレート53が第1位置よりも上方の第2位置に移動し、穿孔密度が第2密度よりも小さい第3密度の場合には、移動プレート53が第2位置よりも上方の第3位置に移動するといったように、複数の穿孔密度と、それぞれの穿孔密度に対応する複数の位置とが関連付けられていてもよい。
【0078】
このような対応テーブルのデータは、制御回路80の記憶部に保存されていてもよく、この場合、制御回路80は、複数のスクリーンマスタSの穿孔密度と、複数の駆動機構によって動かされる移動部材の位置とが関連付けられた記憶部を参照し、スクリーンマスタの穿孔密度に応じた位置に移動部材が位置するように、駆動機構90を自動的に動作させてもよい。
【0079】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。一例として、上記の実施形態では、弾性部材52でテンションローラ42を付勢する構成を例示したが、本発明の一形態においては、弾性部材52は省略されてもよい。また、テンションローラ42は、3つに限らず、2つ又は4つ以上設けられていてもよい。また、テンションローラ42を移動させるのではなく、搬送ローラ41の位置を可変とすることで、テンションローラ42と搬送ローラ41との間の保持力が調整可能に構成されてもよい。
【0080】
<第2の実施形態>
スクリーン版製造装置のテンションローラ及びその周辺構造は、以下のようなものであってもよい。図8は、第2の実施形形態のスクリーン版製造装置S110の一部を示す模式図である。図9は、図8の搬送機構を構成する部品を模式的に示す分解斜視図である。
【0081】
本実施形態のスクリーン版製造装置S110は、上記実施形態と異なる構成の搬送機構140を備える。その他の構成は、一例として、上記実施形態のものと同様であるため、重複する説明は省略する。
【0082】
搬送機構140は、搬送ローラ141と、テンション部160とを有する。搬送ローラ141は、第1の実施形態の搬送ローラ41と同様の構成を有する。
【0083】
テンション部160は、スクリーンマスタSの搬送路を挟んで搬送ローラ141の反対側に位置している。テンション部160は、スクリーンマスタSに対して押圧力を加える構造部である。テンション部160は、具体的には、テンションローラ142と、収容ケース161と、付勢部材(付勢機構)162と、ロック機構168とを有する。
【0084】
図8では、詳細な図示を省略しているが、テンションローラ142としては、第1の実施形態と同様、複数のテンションローラ142が設けられている。
【0085】
収容ケース161は、複数のテンションローラ142を収容する収容ケースである。収容ケース161は、例えば金属製である。収容ケース161は、具体的には、図8に示すように、この例では、やや平たい四角形の断面形状を有する。これにより長いので収容ケースの撓みをなくすことができる。収容ケース161は、一例としてローラホルダ部材165と、ローラカバー部材163とを有している。
【0086】
なお、図8及び図9のような構成において、例えば、ローラカバー部材163の剛性を高める部材が、ローラカバー部材163に固定されていてもよい。このような部材としては、例えば、ローラカバー部材163の長手方向に延在するブラケット部材であってもよい。
【0087】
ローラホルダ部材165は、開口165hを有し、当該開口165hからテンションローラ142を露出させた状態でテンションローラ142を保持する部材である。ローラカバー部材163は、テンションローラ142を覆うようにローラホルダ部材165に対して上方から取り付けられる部材である。ローラカバー部材163は、具体的にはローラホルダ部材165に嵌合するように設けられる。これらのより詳細な構造は、図9を参照して後述する。
【0088】
収容ケース161の内部にテンションローラ142が配置されている本実施形態の構成によれば、テンションローラ142、付勢部材162を収容ケース161内に収めたのでコンパクトにすることができる。また、このような構成によれば、テンションローラ142及びその周辺構造にホコリや異物が付着しにくく、テンションローラ142、ひいては搬送機構140の性能を長期に亘って維持できるという利点がある。
【0089】
収容ケース161は、図8に示すように開口部161hを有している。開口部161hは、収容ケース161の下面(すなわち、搬送ローラ141に対向する面)に形成されている。テンションローラ142は、上記開口部161hから外部に露出する状態で保持され、このような構成により、スクリーンマスタSが搬送ローラ141とテンションローラ142とによって挟持されるようになっている。
【0090】
付勢部材162は、テンションローラ142を搬送ローラ141側に向けて押し付けるための部材である。付勢部材162は、一例としてコイルバネである。付勢部材162の周辺構造について図9を参照しながら詳細に説明する。なお、図9では、説明の都合上、部材の一部を省略している。
【0091】
ローラホルダ部材165は、この例では、アッパーホルダ部材165Aとロアホルダ部材165Bとが積層された積層構造となっている。これらの部材は、例えばネジ等で互いに固定されてもよい。なお、ローラホルダ部材165は、必ずしも積層構造である必要はなく、単一の部材で構成されていてもよい。
【0092】
アッパーホルダ部材165Aは、図9に示すように、テンションローラ142の位置に対応する位置に形成された複数の開口165hを有している。アッパーホルダ部材165Aは、具体的には、開口165h-1、開口165h-2、及び開口165h-3を有している。開口165hは、収容ケース161の開口部161h(図8)を構成している。
【0093】
アッパーホルダ部材165Aには、テンションローラ142の軸を支持する軸支持部165gが形成されている。軸支持部165gは、開口165hの両端に1つずつ形成されている。軸支持部165gは、例えば板状、棒状、四角状でも良く、本実施形態では、アッパーホルダ部材165Aの部材の一部を折り曲げた折曲げ部として設けられている。軸支持部165gは、例えば、アッパーホルダ部材165Aの下面に対して垂直に形成されている。
【0094】
軸支持部165gは、アッパーホルダ部材165Aとは別部材として設けられていてもよいが、本実施形態のような構成によれば、構造が簡素化し、組立の作業性も良好な構造が提供される。なお、軸支持部165gは、例えば板状の部材が溶接や、ネジなどの固定具によってアッパーホルダ部材165Aに固定されたものであってもよい。また、このように別部材として用意された軸支持部165gがロアホルダ部材165B(詳細下記)に溶接や固定具などによって固定されてもよい。
【0095】
ロアホルダ部材165Bは、アッパーホルダ部材165Aの下側に配置される。開口165iは開口165hより大きくてもよいし、同じ大きさでもよい。ロアホルダ部材165Bには、アッパーホルダ部材165Aと同様、開口部161h(図8)を構成する開口165iが形成されている。ロアホルダ部材165Bは、具体的には、開口165i-1、開口165i-2、及び開口165i-3を有している。
【0096】
図8の断面図では、ローラホルダ部材165は単一の部材のように模式的に描かれているが、具体的には、ローラホルダ部材165は、一例として、断面形状がコ字型に形成されたアッパーホルダ部材165A及びロアホルダ部材165Bを重ねることによって構成されている。
【0097】
ローラカバー部材163は、ローラホルダ部材165を上部から覆うカバーである。ローラカバー部材163及びローラホルダ部材165は、例えば、図8に示されている回転軸Axを中心として互いに回動するように連結されている。回転軸Axは、スクリーンマスタSの搬送方向の上流側の収容ケース161の上部側に設けられている。また、ローラカバー部材163がロックされた状態で、ローラホルダ部材165が、スクリーン版製造装置S100の左右方向に延在する回転中心を中心として、ローラカバー部材163に対して僅かに回動するように動くようになっている。
【0098】
このように構成されている理由は、ローラカバー部材163がロック機構168に固定された状態で、ローラホルダ部材165が弾性的にローラカバー部材163に対して移動できるようにするためである。このような構成によれば、例えばスクリーンマスタSの厚みが変動するような場合であっても、テンションローラ142がスクリーンマスタSの厚み方向に自由に動くことが可能となる。
【0099】
本実施形態では、特に、テンションローラ142は、回転軸Axよりも下流側に配置され、付勢部材162は、テンションローラ142のさらに下流側に配置されている。付勢部材162は、テンションローラ142と回転軸Axとの間に配置されていてもよいが、本実施形態のように、付勢部材162が回転中心である回転軸Axに対してテンションローラ142よりも遠い位置に配置されている場合、付勢部材162の付勢力が比較的小さくても、ローラホルダ部材165をローラカバー部材163に対して良好に移動させることができる。付勢部材162は、テンションローラ142の押圧力を掛けられる構成であれば、どの配置でもよい。
【0100】
本実施形態の構成においては、回転軸Axを中心として、ローラホルダ部材165がローラカバー部材163に対して上方へ動く。図8の状態では、付勢部材162によって、ローラホルダ部材165に対してローラホルダ部材165をローラカバー部材163から離す向き(図示下方)の力が加わっている。この状態で、ローラホルダ部材165に対して図示上向きの力が加わった場合、図10(c)のようにローラホルダ部材165が僅かに上方に移動する。
【0101】
本実施形態の構成においては、図8及び図10(a)に示す回転軸Axを中心として収容ケース161が全体的に回動するように構成されている。収容ケース161の回動中心である回転軸Axは、収容ケース161のうちスクリーンマスタSの搬送方向の上流側となる位置に位置している。図10(b)は、収容ケース161が所定の固定位置に位置し、テンションローラ142と搬送ローラ141が接した状態であり、図10(a)は収容ケース161が固定位置に位置する前の開状態である。
【0102】
図10(a)~図10(c)を参照しながらテンション部160の動作について説明する。図10は、搬送機構の構造及び動作を説明するための図である。まず、図10(a)に示すように、ユーザは、開状態の収容ケース161を回転軸Ax周り下向きの方向に回動させる。
【0103】
収容ケース161は、図10(b)のような位置まで移動すると、ロック機構168がローラカバー部材163の一部に係合し、収容ケース161が所定の固定位置に固定される。この状態では、一例として、付勢部材162が図10(a)の状態よりもやや縮められ、付勢部材162からの付勢力によってテンションローラ142が搬送ローラ141側に向けて押し付けられている。
【0104】
なお、ロック機構168は、収容ケース161の一部と係合する部材であればどのような形状のものであってもよく、例えば、係合爪が形成されたロックレバーであってもよい。ロックレバーの位置自体が、例えば図示上下方向に可変に設けられており、これにより、収容ケース161を固定する位置が調整可能となっていてもよい。
【0105】
図10(b)の状態で、例えば、テンションローラ142に対して図示上向きの力が加わった場合、ローラカバー部材163はロック機構168によって固定されているので移動はしないものの、ローラホルダ部材165はローラカバー部材163に近づくように回動し移動する。このような構成によれば、上述したように、例えばスクリーンマスタSの厚みが変動するような場合であっても、テンションローラ142がスクリーンマスタSの厚み方向に自由に動くことが可能となり、テンションローラ142及び搬送ローラ141によってスクリーンマスタSは良好に保持される。
【0106】
以上説明したような第2の実施形態の構成では、スクリーン版製造装置S110はテンション部160を備えており、このテンション部160は、テンションローラ142と、収容ケース161と、ロック機構168と、付勢部材162とを有し、テンションローラ142が収容ケース161の内部に収容された構成となっている。
【0107】
また、テンションローラ142は、収容ケース161が固定位置に位置している状態で、付勢部材162からの付勢力によって搬送ローラ141側に向けて押し付けられる。特に、ローラホルダ部材165に設けられたテンションローラ142は、スクリーンマスタSの厚み方向に移動可能に構成されているので、例えば、スクリーンマスタSの厚みが変動してもスクリーンマスタSを良好に挟持して搬送することができる。
【0108】
<変形例>
以上、第2の実施形態の具体例について説明したが、本実施形態に開示された発明は、上記の具体的な構成に限定されるものではなく、種々変更可能である。
【0109】
例えば、上記では、ローラホルダ部材165がローラカバー部材163に対して回転軸Ax周りに動くようになっていることを説明したが、ローラカバー部材163に対するローラホルダ部材165の可動範囲を規定するための構造は一例として図11のような構成であってもよい。図11は、可動範囲規定構造の例を示す図である。
【0110】
具体的には、図11の可動範囲規定構造では、ローラホルダ部材165に縦方向の長孔165kが形成されている。ローラカバー部材163の側面には固定ネジ169が止められている。その固定ネジ169の先端部が長孔165kを貫通している。このような構成によれば、長孔に対する固定ネジ169の可動範囲に対応する可動範囲でローラホルダ部材165がローラカバー部材163に対して回動移動可能となる。なお、可動範囲規定構造は、複数設けてあり、例えば、2個でもよく、3個でもよい。
【0111】
長孔165kと固定ネジ169とでこのように可動範囲を規定する方式は、複雑な構造を要しない点で、コンパクトなスクリーン版製造装置S110に特に有利である。長孔165kの縦方向の長さは、一例として、固定ネジ169の軸部の直径よりも十分に長く(例えば、3倍以上)、一方、長孔165kの横方向の長さは、固定ネジ169の軸部と接触しない程度で良く、固定ネジ169の軸部の直径とほぼ同等(例えば、1.5倍未満)であってもよい。
【0112】
また、上記実施形態では、図5(c)に示すようにサーマルヘッド31が水平の姿勢のまま下方に移動する構成を例示したが、サーマルヘッド31の周辺構造は図12のような構成であってもよい。図12は、サーマルヘッド31の周辺構造の模式図である。図12の例では、支持プレート32の一部が支持体39に支持されており、図のようにインサートレバー25が持ち上げられると開状態になる。支持プレート32の搬送方向下流側の一部がインサートレバー25のカム部25aが当接し、支持プレート32が下方に押され、その結果、支持プレート32は支持体39によって支持されている箇所を支点として下方に回動し、開状態になる。
【0113】
以上、第1及び第2の実施形態について説明したが、両実施形態が組み合わされてもよい。例えば、第2の実施形態のようなテンション部160において、第1の実施形態のように、テンションローラ142の押付力が個別に調整可能に構成されていてもよい。具体的には、例えば、収容ケース161に第1の実施形態のような調整ネジ55が設けられ、調整ネジ55を回すことで押付力が調整可能となっていてもよい。調整ネジ55は、例えば図7のような駆動機構90が回転させてもよい。
【0114】
本発明の変形及び変更に関し、例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【0115】
(付記)
本明細書は、下記の発明を開示する:
1.シルク上に熱溶融フィルムが形成されたスクリーンマスタを移動させながら、前記熱溶融フィルムを加熱穿孔するスクリーン版製造装置であって、ロールから引き出された前記スクリーンマスタを搬送する搬送機構と、前記搬送機構によって搬送される前記スクリーンマスタの前記熱溶融フィルムを溶融させるサーマルヘッドと、前記スクリーンマスタを前記サーマルヘッドの側へと案内する搬送ガイドと、を備え、前記搬送機構は、前記サーマルヘッドよりも前記スクリーンマスタの搬送方向下流側に配置され、駆動源からの動力によって回転するように構成された搬送ローラと、前記スクリーンマスタの搬送路を挟んで前記搬送ローラの反対側に位置し、前記スクリーンマスタの幅方向に配置された複数のテンションローラと、前記テンションローラを前記搬送ローラ側に向けて押し付ける付勢機構であって、前記搬送ローラ側への押付力が調整可能に設けられている付勢機構と、を有するスクリーン版製造装置。
【符号の説明】
【0116】
10 筐体
12 サイドフレーム
12-1 第1サイドフレーム
12-2 第2サイドフレーム
20 搬送路形成部材
21 ガイドプレート
22 インサートガイド
23 スクリーンガイド
25 インサートレバー
25a カム部
30 加熱穿孔部
31 サーマルヘッド
32 支持プレート
33 弾性体
35 プラテンローラ
40 搬送機構
41 搬送ローラ
42 テンションローラ
43 モータ
44 ローラ駆動機構
50 付勢機構
51 ローラ支持部材
52 弾性部材
53 移動プレート
54 固定プレート
55 調整ネジ
80 制御回路
90 駆動機構
140 搬送機構
141 搬送ローラ
142 テンションローラ
160 テンション部
161 収容ケース
161h 開口部
162 付勢部材
163 ローラカバー部材
165 ローラホルダ部材
165A アッパーホルダ部材
165B ロアホルダ部材
165g 軸支持部
165h 開口
165k 長孔
165i 開口
168 ロック機構
169 固定ネジ
Ax 回転軸
R ロール
S スクリーンマスタ
S100 スクリーン版製造装置
S110 スクリーン版製造装置


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12