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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034935
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】アンカー保持具及びグラウト充填方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/80 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
E02D5/80 Z
E02D5/80 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139516
(22)【出願日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀内 銀
(72)【発明者】
【氏名】ウサレム ハッサン
【テーマコード(参考)】
2D041
【Fターム(参考)】
2D041GB01
2D041GC11
(57)【要約】
【課題】対象物の孔の中心部にアンカーを安定して保持することができるアンカー保持具及びグラウト充填方法を提供する。
【解決手段】アンカー保持具10は、拡縮して孔壁103内に装着されるグリップカラー12と、グリップカラー12に押し込まれる円錐台状の挿入部60と、挿入部60と一体形成され孔102の縁部と対面する基体部62と、を備え、挿入部60をグリップカラー12に押し込むことでグリップカラー12を拡径させ孔壁103内に固定するプラグ14と、プラグ14の中心部に形成され、挿入されたアンカー18を孔102の中心部に芯だしする保持孔30と、プラグ14の保持孔30の周りに形成され、グラウトを孔102内へ注入するホース20を差し込み可能な挿通口32と、プラグ14の保持孔30の周りに形成され、孔102内の空気を排気する排気口34と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡縮して孔壁内に装着される環状体と、
前記環状体に押し込まれる円錐台状の挿入部と、前記挿入部と一体形成され前記孔の縁部と対面する基体部と、を備え、前記挿入部を前記環状体に押し込むことで前記環状体を拡径させ前記孔壁内に固定するプラグと、
前記プラグの中心部に形成され、挿入されたアンカーを前記孔の中心部に芯だしする保持孔と、
前記プラグの前記保持孔の周りに形成され、グラウトを前記孔内へ注入するホースを差し込み可能な挿通口と、
前記プラグの前記保持孔の周りに形成され、前記孔内の空気を排気する排気口と、
を有するアンカー保持具。
【請求項2】
拡幅して孔の孔壁内に装着される環状体と、
前記孔の内部に配置され、前記環状体の軸方向の一方に接触する接触部と、
前記接触部と一体形成され前記環状体に挿入されると共に、アンカーが挿通され、かつ端部にねじ部が形成された管状部と、
前記孔の外面と対面し、前記環状体の軸方向の他方に接触すると共に、中心孔に前記管状部が挿通されるプラグと、
前記ねじ部に螺合し、ねじ込むことで前記接触部を前記プラグ側へ引き戻し、前記環状体を拡大させる固定部材と、
前記管状部、前記接触部及び前記プラグの中央部の周りに形成され、グラウトを前記孔内へ注入するホースを差し込み可能な挿通部と、
前記管状部、前記接触部及び前記プラグの中央部の周りに形成され、前記孔内の空気を排気する排気口と、
を有するアンカー保持具。
【請求項3】
拡幅して孔の孔壁内に密着する環状体と、
前記孔の内部に配置され、前記環状体の軸方向の一方に接触する接触部と、
前記接触部と一体形成され外周側に前記環状体が装着されると共に、中央部にアンカーが挿入される円孔と前記円孔の周りにねじ孔が形成された装着部と、
前記孔の外面に対面し、前記環状体の軸方向の他方に接触すると共に、中央部に前記アンカーが挿通される中心孔が形成されたプラグと、
前記ねじ孔へねじ込まれると共に前記プラグに形成された貫通孔へ挿通されるボルトと、
前記プラグの側で前記ボルトに螺合され、締め付けることで、前記装着部を前記プラグ側へ引き戻し、前記環状体を拡径させるナットと、
前記装着部及び前記プラグの中央部の周りに形成され、グラウトを前記孔内へ注入するホースを差し込み可能な挿通部と、
前記装着部及び前記プラグの中央部の周りに形成され、前記孔内の空気を排気する排気口と、
を有するアンカー保持具。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のアンカー保持具を用いて前記孔の中心部にアンカーを保持する工程と、
前記アンカー保持具に差し込まれたホースからグラウトを前記孔内へ注入すると共に前記排気口から前記孔内の空気を排気する工程と、
前記グラウトが硬化した後に前記アンカー保持具を撤去する工程と、
を有するグラウト充填方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンカー保持具及びグラウト充填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からアンカー施工方法が提案されている。例えば、特許文献1に記載のアンカー施工方法は、対象物に上下方向に沿って孔を削孔する削孔工程と、対象物の孔の底面にアンカー筋の本体部の先端に設けられた自碇部を挿入して、アンカー筋を対象物に定着するアンカー定着工程と、対象物の孔内に充填材を充填する充填材注入工程と、を有している。定着工程では、対象物の孔を塞ぐように型枠をアンカー筋に取り付けることで、アンカー筋を対象物に対して安定させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-009455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のアンカー施工方法では、対象物に上下方向に沿って孔を削孔しており、対象物の孔の周囲の上面に配置された型枠にアンカー筋に取り付けている。このため、例えば、対象物に水平方向に沿って孔を削孔する構造では、孔の周囲の縦壁に型枠を配置することができず、対象物の孔の内部でアンカー筋の位置がずれる場合がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、対象物の孔の中心部にアンカーを安定して保持することができるアンカー保持具及びグラウト充填方法を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様に記載のアンカー保持具は、拡縮して孔壁内に装着される環状体と、前記環状体に押し込まれる円錐台状の挿入部と、前記挿入部と一体形成され前記孔の縁部と対面する基体部と、を備え、前記挿入部を前記環状体に押し込むことで前記環状体を拡径させ前記孔壁内に固定するプラグと、前記プラグの中心部に形成され、挿入されたアンカーを前記孔の中心部に芯だしする保持孔と、前記プラグの前記保持孔の周りに形成され、グラウトを前記孔内へ注入するホースを差し込み可能な挿通口と、前記プラグの前記保持孔の周りに形成され、前記孔内の空気を排気する排気口と、を有する。
【0007】
第1態様に記載のアンカー保持具によれば、環状体を孔壁内に配置した状態で、プラグの円錐台状の挿入部を環状体に押し込み、挿入部と一体形成された基体部を孔の縁部と対面させる。プラグの挿入部により環状体が拡径され、環状体が孔壁内に固定される。プラグの中心部に形成された保持孔にアンカーを挿入することで、アンカーを孔の中心部に芯だしする。このため、孔の中心部にアンカーを安定して保持することができる。
プラグには、グラウト注入用の挿通口と、グラウトを注入することで孔内から空気を排気する排気口が設けられており、挿通口に差し込まれたホースからグラウトを孔内に注入することで、グラウト注入作業を容易に行うことができる。
【0008】
第2態様に記載のアンカー保持具は、拡幅して孔の孔壁内に装着される環状体と、前記孔の内部に配置され、前記環状体の軸方向の一方に接触する接触部と、前記接触部と一体形成され前記環状体に挿入されると共に、アンカーが挿通され、かつ端部にねじ部が形成された管状部と、前記孔の外面と対面し、前記環状体の軸方向の他方に接触すると共に、中心孔に前記管状部が挿通されるプラグと、前記ねじ部に螺合し、ねじ込むことで前記接触部を前記プラグ側へ引き戻し、前記環状体を拡径させる固定部材と、前記管状部、前記接触部及び前記プラグの中央部の周りに形成され、グラウトを前記孔内へ注入するホースを差し込み可能な挿通部と、前記管状部、前記接触部及び前記プラグの中央部の周りに形成され、前記孔内の空気を排気する排気口と、を有する。
【0009】
第2態様に記載のアンカー保持具によれば、管状部を環状体に挿入した状態で、接触部、環状体及び管状部が孔の内部に配置される。そして、プラグの中心孔に管状部を挿通させた後、管状部の端部のねじ部に固定部材を螺合し、ねじ込むことで接触部をプラグ側に引き戻して、環状体を拡大して孔壁内に密着させる。管状部にアンカーを挿入することで、アンカーを孔の中心部に芯だしする。このため、孔の中心部にアンカーを安定して保持することができる。
プラグには、グラウト注入用の挿通部と、グラウトを注入することで孔内から空気を排気する排気口が設けられており、挿通部に差し込まれたホースからグラウトを孔内に注入することで、グラウト注入作業を容易に行うことができる。
【0010】
第3態様に記載のアンカー保持具は、拡幅して孔の孔壁内に密着する環状体と、前記孔の内部に配置され、前記環状体の軸方向の一方に接触する接触部と、前記接触部と一体形成され外周側に前記環状体が装着されると共に、中央部にアンカーが挿入される円孔と前記円孔の周りにねじ孔が形成された装着部と、前記孔の外面に対面し、前記環状体の軸方向の他方に接触すると共に、中央部に前記アンカーが挿通される中心孔が形成されたプラグと、前記ねじ孔へねじ込まれると共に前記プラグに形成された貫通孔へ挿通されるボルトと、前記プラグの側で前記ボルトに螺合され、締め付けることで、前記装着部を前記プラグ側へ引き戻し、前記環状体を拡径させるナットと、前記装着部及び前記プラグの中央部の周りに形成され、グラウトを前記孔内へ注入するホースを差し込み可能な挿通部と、前記装着部及び前記プラグの中央部の周りに形成され、前記孔内の空気を排気する排気口と、を有する。
【0011】
第3態様に記載のアンカー保持具によれば、装着部の外周側に環状体を装着し、ボルトがねじ孔へねじ込まれ、プラグの貫通孔へ挿通される。この状態で、装着部及び環状体が孔の内部に配置される。プラグの側でボルトにナットが螺合される。そして、ナットを締め付けることで、装着部をプラグ側へ引き戻して環状体を拡大させることで、環状体を孔壁内に密着させる。プラグの中心孔及び装着部の円孔にアンカーを挿入することで、アンカーを孔の中心部に芯だしする。このため、孔の中心部にアンカーを安定して保持することができる。
プラグには、グラウト注入用の挿通部と、グラウトを注入することで孔内から空気を排気する排気口が設けられており、挿通部に差し込まれたホースからグラウトを孔内に注入することで、グラウト注入作業を容易に行うことができる。
【0012】
第4態様に記載のグラウト充填方法は、第1態様から第3態様までのいずれか1つに記載のアンカー保持具を用いて前記孔の中心部にアンカーを保持する工程と、前記アンカー保持具に差し込まれたホースからグラウトを前記孔内へ注入すると共に前記排気口から前記孔内の空気を排気する工程と、前記グラウトが硬化した後に前記アンカー保持具を撤去する工程と、を有する。
【0013】
第4態様に記載のグラウト充填方法によれば、アンカー保持具を用いて孔の中心部にアンカーを保持する。アンカー保持具に差し込まれたホースからグラウトを孔内へ注入すると共に排気口から孔内の空気を排気する。そして、グラウトが硬化した後にアンカー保持具を撤去する。このため、アンカー保持具により、孔の中心部にアンカーを安定して保持した状態で、孔内にグラウトを注入することができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、対象物の孔の中心部にアンカーを安定して保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態のアンカー保持具を示す分解側面図である。
図2】(A)は、第1実施形態のアンカー保持具を用いて、構造体の孔にアンカーを保持した状態を示す側面図であり、(B)は、構造体の孔にグラウトを充填して硬化させた状態を示す断面図である。
図3-1】(A)は、第1実施形態のアンカー保持具のグリップカラーを示す側面図であり、(B)は、グリップカラーを示す正面図である。
図3-2】(A)は、変形例のグリップカラーを示す側面図であり、(B)は、変形例のグリップカラーを示す正面図である。
図4】(A)は、第1実施形態のアンカー保持具のプラグを示す断面図であり、(B)は、プラグを示す正面図である。
図5】(A)は、プラグにアンカーを挿通した第1例を示す断面図であり、(B)は、プラグにアンカーを挿通した第1例を示す正面図である。
図6】(A)は、プラグにアンカーを挿通した第2例を示す断面図であり、(B)は、プラグにアンカーを挿通した第2例を示す正面図であり、(C)は、プラグにアンカーを挿通した第3例を示す断面図である。
図7】第2実施形態のアンカー保持具を示す分解側面図である。
図8】第2実施形態のアンカー保持具を用いて構造体の孔にアンカーを保持した状態を示す図である。
図9】(A)は、第2実施形態のアンカー保持具の挿入プラグを示す正面図であり、(B)は、挿入プラグを示す断面図であり、(C)は、第2実施形態のアンカー保持具の挿入プラグ、プラグ本体及び蝶ナットを示す正面図である。
図10】(A)は、第2実施形態のアンカー保持具を用いて構造体の孔にアンカーを保持した状態を示す斜視図であり、(A)は、第2実施形態のアンカー保持具を用いて構造体の孔にアンカーを保持した状態の一部を断面で示す斜視図である。
図11】第3実施形態のアンカー保持具を示す分解斜視図である。
図12】(A)は、第3実施形態のアンカー保持具を用いて構造体の孔にアンカーを保持した状態を示す概略構成図であり、(B)は、アンカー保持具を用いて構造体の孔にアンカーを保持した状態を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態について、図面を基に詳細に説明する。各図面において、本発明と関連性の低いものは図示を省略している。
【0017】
<第1実施形態>
第1実施形態のアンカー保持具及びグラウト充填方法について説明する。
【0018】
[アンカー保持具の全体構成]
図1は、第1実施形態のアンカー保持具10を示す分解側面図であり、図2(A)は、アンカー保持具10を用いて、構造体100の孔102にアンカー18を保持した状態を示す側面図である。
【0019】
図1及び図2(A)に示すように、アンカー保持具10は、構造体100の孔102の中心部にアンカー18を保持するための治具である。構造体100は、コンクリートで構成されており、構造体100の鉛直方向の外面101には、水平方向に沿って孔102が形成されている。構造体100の孔102は、円形状の孔壁103を有しており、孔102の内径は深さ方向に等しい。
【0020】
アンカー保持具10は、環状体の一例としてのグリップカラー12と、グリップカラー12を拡径させて孔壁103内に固定するプラグ14と、を備えている。さらに、アンカー保持具10は、プラグ14をグリップカラー12に固定する複数(第1実施形態では4つ)のボルト16を備えている。図示を省略するが、アンカー18の軸方向の少なくとも一部には、ねじ部が形成されている。
【0021】
プラグ14には、アンカー18が挿入される保持孔30と、グラウトを注入するホース20を差し込み可能な挿通口32と、孔102内の空気を排気する排気口34とが設けられている。排気口34には、孔102内の空気を排気するためのホース22が差し込まれる。プラグ14の詳細については後に説明する。
【0022】
(グリップカラー12)
図3-1(A)、(B)に示すように、グリップカラー12は、環状の本体部40を備えている。本体部40の周方向の一箇所には、本体部40の周方向と交差する方向(第1実施形態では直交する方向)に沿ってスリット42が形成されている。本体部40は、スリット42によって周方向の一箇所が切断されている。本体部40は、周方向と直交する方向(軸方向)の一方側の外径が他方側の外径に対して徐々に大きくなる形状である。本体部40の軸方向の一方の縁部(外径が大きい側の縁部)には、半径方向外側に延びた板状の延出部44が設けられている。一例として、延出部44は、本体部40の周方向に間隔をおいて4つ設けられている。延出部44には、ボルト16のねじ部16Aがねじ込まれるねじ孔45が形成されている。
【0023】
本体部40の軸方向の一方の縁部には、V字状の切欠き部46が複数形成されており、本体部40の軸方向の他方の縁部には、V字状の切欠き部47が複数形成されている。切欠き部46と切欠き部47は、本体部40の周方向に沿って互い違いに配置されている。なお、この構成に代えて、切欠き部46と切欠き部47の一方又は両方がない構成でもよい。本体部40の外周面には、複数のスロット48が形成されている。スロット48は、例えば、矩形状の枠又は区画であり、本体部40の外周面から半径方向外側に突出している。スロット48は、枠の内部に孔が形成されていてもよい。
【0024】
一例として、スロット48は、切欠き部46と切欠き部47との間に2個ずつ配置されており、2個のスロット48は、切欠き部46又は切欠き部47の近接する縁部と略平行に配置されている。切欠き部46と切欠き部47の間の2個のスロット48は、本体部40の軸方向と交差するように斜め方向に配置されている。さらに、当該2個のスロット48と隣り合う2個のスロット48は、当該2個のスロット48の延長線と交差し、かつ本体部40の軸方向と交差するように当該2個のスロット48と異なる斜め方向に配置されている。すなわち、切欠き部46と切欠き部47の間の2個のスロット48は、本体部40の周方向において、方向が交互になるように配置されている。
【0025】
グリップカラー12は、スリット42を設けることで、拡縮が可能となっている。グリップカラー12にプラグ14の後述の挿入部60が挿入されることにより、グリップカラー12は、孔102の形状や挿入部60に追随して拡張変形(拡径)する。グリップカラー12の拡径により、複数のスロット48が孔壁103(図2参照)に密着することで、孔壁103に生じる摩擦力によってプラグ14が孔壁103に固定されるようになっている。
【0026】
(変形例のグリップカラー52)
図3-2(A)、(B)には、変形例のグリップカラー52が示されている。なお、グリップカラー12と同一構成部分は同一の符号を付して、同一構成部分の説明を省略する。
【0027】
アンカー保持具10は、グリップカラー12に代えて、変形例のグリップカラー52を用いてもよい。図3-2(A)、(B)に示すように、グリップカラー52は、本体部40の軸方向の他方の縁部(外径が小さい側の縁部)に半径方向外側に突出する爪54を備えている。爪54は、本体部40の外周面から逆V字状に突出している。爪54は、本体部40の軸方向の他方の縁部(切欠き部47以外の部分)に複数形成されている。
【0028】
変形例のグリップカラー52では、プラグ14の後述の挿入部60が挿入されることにより、グリップカラー52が拡径され、複数の爪54が孔壁103(図2参照)に密着することで、孔壁103に生じる摩擦力によってグリップカラー52が孔壁103に固定されるようになっている。
【0029】
(プラグ14)
図4(A)、(B)に示すように、プラグ14は、くさび型のプラグであり、円錐台状の挿入部60と、挿入部60と一体形成された基体部62と、を備えている。挿入部60は、構造体100の孔102(図1及び図2参照)の内径よりも小さく、孔102の内部に挿入可能とされている。挿入部60は、円形状の外周面の外径が基体部62側から先端部60A側に向かって徐々に小さくなる形状とされている。すなわち、側面視にて挿入部60の外周面は、軸方向に対して傾斜している。挿入部60の外周面は、グリップカラー12(図3-1参照)の軸方向に対して傾斜する内周面に沿うように形成されている。第1実施形態では、挿入部60の外径は、グリップカラー12の内径よりも僅かに大きい。これにより、挿入部60をグリップカラー12に押し込むことで、グリップカラー12を拡径させることが可能である。
【0030】
基体部62の外径は、構造体100の孔102(図1及び図2参照)の内径よりも大きい。一例として、基体部62の外径は、軸方向に等しい。挿入部60をグリップカラー12に押し込んで構造体100の孔102に配置したときに、基体部62を構造体100の孔102の縁部(すなわち、外面101)に対面させることが可能である(図2参照)。
【0031】
プラグ14の中心部には、上記のように保持孔30が形成されている。保持孔30は、円形であり、挿入部60及び基体部62を軸方向に貫通している。図5(A)、(B)に示すように、アンカー18は、円柱状の部材である。プラグ14の保持孔30の内径は、アンカー18の外径D1にほぼ等しく、保持孔30にアンカー18が挿入可能とされている。アンカー18の外径D1は、例えば19mmである。第1実施形態では、アンカー18の外径D1と保持孔30の内径は、プラグ14の保持孔30にアンカー18が挿入された状態で、アンカー18にほとんどガタつきが生じないような寸法に設定されている。プラグ14は、グリップカラー12を介して孔壁103内に固定されることで、プラグ14の保持孔30に挿入されたアンカー18を構造体100の孔102の中心部に芯だしすることが可能である。
【0032】
図4(A)、(B)に示すように、プラグ14の保持孔30の周りに挿通口32が形成されている。挿通口32は、円形であり、挿入部60及び基体部62を軸方向に貫通している。挿通口32には、グラウトを注入する管状のホース20が差し込まれる。
【0033】
プラグ14の保持孔30の周りに排気口34が形成されている。排気口34は、円形であり、挿入部60及び基体部62を軸方向に貫通している。排気口34には、構造体100の孔102内の空気抜きのための管状のホース22が差し込まれる。
【0034】
プラグ14の基体部62の外周部付近には、ボルト16のねじ部16Aが貫通する複数の貫通孔66が形成されている。第1実施形態では、貫通孔66は、グリップカラー12の延出部44のねじ孔45の位置に合わせて4つ設けられている。これにより、プラグ14の貫通孔66にボルト16のねじ部16Aが貫通され、ねじ部16Aがグリップカラー12の延出部44のねじ孔45にねじ込まれるようになっている(図2参照)。
【0035】
(グラウト充填方法の一例)
次に、アンカー保持具10を用いたグラウト充填方法の一例について説明する。
【0036】
図1に示すように、アンカー18をプラグ14の保持孔30に挿入し、ホース20をプラグ14の挿通口32に差し込み、ホース22をプラグ14の排気口34に差し込む。
【0037】
次いで、グリップカラー12を構造体100の孔102の内部に配置する。
【0038】
次いで、プラグ14の挿入部60をグリップカラー12に押し込むことで、グリップカラー12を拡径させ、プラグ14の基体部62を構造体100の孔102の縁部(外面101)に対面させる。そして、ボルト16のねじ部16Aをプラグ14の貫通孔66に貫通させ、ねじ部16Aをグリップカラー12のねじ孔45にねじ込む。これにより、図2に示すように、複数のボルト16でプラグ14をグリップカラー12に固定する。
【0039】
この状態で、プラグ14の挿入部60によって拡径されたグリップカラー12は孔壁103に密着しており、孔壁103内にグリップカラー12を介してプラグ14が固定される。このため、プラグ14の中心部に形成された保持孔30に挿入されたアンカー18を構造体100の孔102の中心部に芯だしすることができる。
【0040】
その後、ホース20からグラウトを構造体100の孔102内へ注入する。このとき、ホース22から孔102内の空気が排気される。ホース22は、グラウトの注入量に応じてプラグ14から徐々に引き抜くことで、ホース22から孔102内の空気がスムーズに排気される。
【0041】
次いで、ホース20をプラグ14から引き抜いた後、ホース20の端部からのグラウトの漏れ止めを行う。これにより、構造体100の孔102内へのグラウトの充填が完了する。
【0042】
グラウトの所要の強度発現後(例えば、必要な期間のグラウトの養生後)、ボルト16を外してグリップカラー12及びプラグ14を構造体100の孔102から取り外す。これにより、図2(B)に示すように、構造体100の孔102内に充填されたグラウト110によって、アンカー18が横向きに固定される。
【0043】
[作用及び効果]
アンカー保持具10では、グリップカラー12を構造体100の孔壁103内に配置した状態で、プラグ14の円錐台状の挿入部60をグリップカラー12に押し込み、挿入部60と一体形成された基体部62を孔102の縁部と対面させる。プラグ14の挿入部60によりグリップカラー12が拡径され、グリップカラー12が孔壁103内に固定される。プラグ14の中心部に形成された保持孔30にアンカー18を挿入することで、アンカー18を孔102の中心部に芯だしする。このため、構造体100の孔102の中心部にアンカー18を安定して保持することができる。
【0044】
プラグ14には、グラウト注入用の挿通口32と、グラウトを注入することで孔102内から空気を排気する排気口34が設けられている。このため、アンカー保持具10では、挿通口32に差し込まれたホース20からグラウトを孔102内に注入することで、グラウト注入作業を容易に行うことができる。
【0045】
また、グラウト充填方法は、アンカー保持具10を用いて構造体100の孔102の中心部にアンカー18を保持する工程を備えている。グラウト充填方法は、アンカー保持具10のプラグ14に差し込まれたホース20からグラウトを孔102内へ注入すると共に排気口34から孔102内の空気を排気する工程を備えている。さらに、グラウト充填方法は、グラウトが硬化した後にアンカー保持具10を撤去する工程を備えている。
【0046】
このため、グラウト充填方法では、アンカー保持具10により、構造体100の孔102の中心部にアンカー18を安定して保持した状態で、孔102内にグラウトを注入することができる。また、グラウトが硬化した後にアンカー保持具10を撤去することで、図2(B)に示すように、構造体100の孔102内に充填されたグラウト110によって、アンカー18が横向きに固定される。このとき、グラウト110と構造体100におけるコンクリート面に凹凸が発生し、接合面でのせん断耐力が向上する。
【0047】
<アンカーの径が異なる場合の例>
図6(A)及び図6(B)には、プラグ14の保持孔30の内径に対して、アンカー70の外径が小さい場合の例が示されている。図6(A)及び図6(B)に示すように、プラグ14の保持孔30の内径に対して、アンカー70の外径D2が小さい場合は、プラグ14の保持孔30の内壁とアンカー70の外面との間に楔部材72を挿入する。保持孔30の内壁は、例えば19mmであり、アンカー70の外径D2は、例えば16mmである。楔部材72は、例えば、ゴム又はスポンジで形成された楔形状の部材であり、フレキシブルに変形が可能である。楔部材72により、保持孔30の内壁とアンカー70の外面との隙間を埋めることができる。
【0048】
図6(C)には、プラグ14の保持孔30の内径に対して、アンカー74の外径が小さい場合の他の例が示されている。図6(C)に示すように、プラグ14の保持孔30の内径に対して、アンカー74の外径D3が更に小さい場合は、プラグ14の保持孔30の内壁とアンカー74の外面との間に楔部材76を挿入する。アンカー74の外径D3は、例えば13mであり、楔部材76の厚さは、楔部材72の厚さよりも厚い。楔部材76の材質は、楔部材72と同様である。楔部材76により、保持孔30の内壁とアンカー74の外面との隙間を埋めることができる。
【0049】
<第2実施形態>
次に、図7図10を用いて、第2実施形態のアンカー保持具及びグラウト充填方法について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0050】
[アンカー保持具の全体構成]
図7図10に示すように、アンカー保持具120は、環状体の一例としてのタイト材122と、タイト材122の一方に接触する後述の接触部130を有する挿入プラグ124と、タイト材122の他方に接触するプラグ本体126と、を備えている。さらに、アンカー保持具120は、挿入プラグ124の後述のねじ部134に螺合する蝶ナット128を備えている。プラグ本体126は、プラグの一例である。蝶ナット128は、固定部材の一例である。
【0051】
(挿入プラグ124)
挿入プラグ124は、構造体100の孔102の内部に配置される接触部130と、接触部130と一体形成された管状部132と、を備えている(図9(A)及び図9(B)参照)。接触部130は、環状の板状体であり、接触部130の外径は孔102の内径よりも小さい。管状部132の外径は、接触部130の外径よりも小さく、接触部130の半径方向内側の端部が管状部132に繋がっている。管状部132の内径は、軸方向に沿ってほぼ等しい。接触部130は、構造体100の孔102の内部でタイト材122の軸方向の一方に接触する(図8参照)。
【0052】
管状部132の外径は、タイト材122の内径よりも若干小さく、管状部132は、タイト材122に挿入可能とされている。また、管状部132の内径は、アンカー18の外径よりも大きく、管状部132の内部にアンカー18が挿通される。管状部132の端部(接触部130と反対側の端部)の外周面には、蝶ナット128が螺合可能なねじ部134が形成されている(図7及び図9(B)参照)。
【0053】
接触部130には、グラウトを注入するホース20を差し込み可能な挿通口136と、孔102内の空気を排気する排気口138とが設けられている(図9(A)参照)。挿通口136は、挿通部の一例である。挿通口136及び排気口138は、接触部130における管状部132と繋がる中心孔の周りに形成されている。排気口138には、孔102内の空気を排気するためのホース22が差し込まれる。
【0054】
(プラグ本体126)
プラグ本体126は、環状の部材であり、中心孔127が形成されている。プラグ本体126は、タイト材122の軸方向の他方に接触する(図8参照)。一例として、プラグ本体126の外径は、構造体100の孔102の内径よりも大きい。プラグ本体126は、構造体100の孔102の外面101と対面するように配置される(図8参照)。
【0055】
中心孔127の内径は、管状部132の外径よりも大きく、プラグ本体126の中心孔127に管状部132が挿通される(図8参照)。このため、プラグ本体126の中心孔127には、アンカー18が挿入された管状部132が挿通可能である。管状部132の軸方向の長さは、プラグ本体126の軸方向の長さよりも長い。プラグ本体126の中心孔127に管状部132が挿通された状態で、管状部132の端部のねじ部134がプラグ本体126よりも外側に露出可能とされている。
【0056】
プラグ本体126には、グラウトを注入するホース20を差し込み可能な挿通部140と、孔102内の空気を排気するためのホース22を差し込み可能な排気部142とが設けられている(図9(C)参照)。挿通部140及び排気部142は、プラグ本体126の中心孔127の周りに形成されている。挿通部140は、プラグ本体126の外周面からU字状に切り欠かれると共に軸方向の全長に形成された切欠き部である。同様に排気部142は、プラグ本体126の外周面からU字状に切り欠かれると共に軸方向の全長に形成された切欠き部である。排気部142は、排気口の一例である。
【0057】
(タイト材122)
タイト材122は、アンカー18の周方向に沿って配置されるドーナツ状の部材である。一例として、タイト材122は、中空状部材であり、内部に周方向に沿って孔部122Aが形成されている。この構成に代えて、タイト材122は、孔部122Aが無い構成でもよい。タイト材122は、弾性変形が可能な部材(例えば、ゴム系の部材など)で形成されており、半径方向外側に拡幅が可能である(拡径が可能である)。
【0058】
タイト材122には、ホース20が貫通する貫通部150と、ホース22が貫通する貫通部152が形成されている(図10(B)参照)。
【0059】
(蝶ナット128)
蝶ナット128は、雌ねじ164が形成された筒部160と、筒部160から外側に延びた一対の羽根部162と、を備えている。蝶ナット128の雌ねじ164は、管状部132のねじ部134に螺合し、蝶ナット128をねじ込むことで挿入プラグ124の接触部130をプラグ本体126側へ引き戻す。これにより、接触部130とプラグ本体126との間隔(軸方向の間隔)が狭まり、接触部130とプラグ本体126との間に配置されたタイト材122を拡大(拡径)させるようになっている(図8参照)。
【0060】
(グラウト充填方法の一例)
次に、アンカー保持具120を用いたグラウト充填方法の一例について説明する。
【0061】
図7に示すように、挿入プラグ124の管状部132をタイト材122に挿入する。アンカー18を挿入プラグ124の管状部132に挿入する。また、ホース20を挿入プラグ124の挿通口136に差し込み、ホース22を挿入プラグ124の排気口138に差し込む。
【0062】
そして、挿入プラグ124の管状部132をプラグ本体126の中心孔127に挿入し、挿入プラグ124の接触部130及びタイト材122を構造体100の孔102の内部に配置し、プラグ本体126を構造体100の外面101に接触させる(図8参照)。このとき、プラグ本体126の挿通部140にホース20を挿通させ、プラグ本体126の排気部142にホース22を挿通させる。
【0063】
図8及び図10(A)、(B)に示すように、挿入プラグ124の管状部132のねじ部134に蝶ナット128の雌ねじ164を螺合させ、蝶ナット128をねじ込むことで挿入プラグ124の接触部130をプラグ本体126側に引き戻す。これにより、接触部130とプラグ本体126との間のタイト材122を拡大して孔壁103内に密着させる。これにより、孔壁103内にタイト材122を介して挿入プラグ124が固定される。
【0064】
その後のグラウトの注入する工程、及び必要な期間のグラウトの養生後にアンカー保持具120を取り外す工程は、第1実施形態と同様である。
【0065】
[作用及び効果]
アンカー保持具120では、挿入プラグ124の管状部132をタイト材122に挿入した状態で、挿入プラグ124の接触部130、タイト材122及び管状部132の一部が構造体100の孔102の内部に配置される。そして、プラグ本体126の中心孔127に管状部132を挿通させる。その後、管状部132の端部のねじ部134に蝶ナット128を螺合し、ねじ込むことで接触部130をプラグ本体126側に引き戻して、タイト材122を拡大して孔壁103内に密着させる。管状部132にアンカー18を挿入することで、アンカー18を孔102の中心部に芯だしする。このため、孔102の中心部にアンカー18を安定して保持することができる。
【0066】
挿入プラグ124には、グラウト注入用の挿通口136と、グラウトを注入することで孔102内から空気を排気する排気口138が設けられている。また、プラグ本体126には、グラウト注入用の挿通部140と、グラウトを注入することで孔102内から空気を排気する排気部142が設けられている。このため、挿通口136と挿通部140に差し込まれたホース20からグラウトを孔102内に注入することで、グラウト注入作業を容易に行うことができる。
【0067】
また、グラウト充填方法では、アンカー保持具120により、構造体100の孔102の中心部にアンカー18を安定して保持した状態で、孔102内にグラウトを注入することができる。
【0068】
<第3実施形態>
次に、図11及び図12を用いて、第3実施形態のアンカー保持具及びグラウト充填方法について説明する。なお、前述した第1及び第2実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0069】
[アンカー保持具の全体構成]
図11及び図12(A)、(B)に示すように、アンカー保持具200は、環状体の一例としてのタイト材202と、タイト材202の一方に接触する後述の接触部220を有する挿入プラグ204と、タイト材202の他方に接触するプラグ本体206と、を備えている。さらに、アンカー保持具200は、挿入プラグ204の後述のねじ孔226にねじ込まれるボルト218と、ボルト218に螺合されるナットの一例としての長ナット216と、を備えている。アンカー保持具200は、長ナット216(ボルト218の反対側)にねじ込まれるボルト208と、ボルト208を支持するサポート部材210と、を備えている。プラグ本体206は、プラグの一例である。第3実施形態では、ボルト218及びボルト208は2本であり、長ナット216は2個であるが、ボルト218、ボルト208及び長ナット216の数は変更可能である。
【0070】
構造体300には、水平方向に沿って孔302が形成されている(図12参照)。孔302は、内径が深さ方向に等しい挿入部302Aを備えている。
【0071】
(タイト材202)
タイト材202は、弾性変形が可能な環状の部材(例えば、ゴム系の部材など)で形成されており、拡幅が可能である(拡径が可能である)。タイト材202は、拡幅して構造体300の孔302の挿入部302Aの孔壁303内に密着可能である。
【0072】
(挿入プラグ204)
挿入プラグ204は、構造体300の孔302の内部に配置される接触部220と、接触部220と一体形成された円筒状の装着部222と、を備えている。接触部220の半径方向内側の端部に装着部222が設けられている。装着部222はタイト材202と接触するが、孔302の内部に直接に接触しない。装着部222の中心部には、円孔224が形成されている。円孔224の内径は、アンカー212の外径よりも大きく、装着部222の円孔224にアンカー212が挿入可能とされている。接触部220は、構造体300の孔302の内部でタイト材202の軸方向の一方に接触する(図12参照)。
【0073】
装着部222の外径は、タイト材202の内径よりも若干小さく、装着部222の外周側にタイト材202が装着される。装着部222には、円孔224の周りにボルト208のねじ部208Aがねじ込まれるねじ孔226が形成されている(図11参照)。
【0074】
装着部222には、グラウトを注入するホース20を差し込み可能な挿通口228と、孔302内の空気を排気する排気口230とが設けられている。挿通口228は、挿通部の一例である。挿通口228及び排気口230は、装着部222の円孔224の周りに形成されている。排気口230には、孔302内の空気を排気するためのホース22が差し込まれる。
【0075】
(プラグ本体206)
プラグ本体206は、環状の部材であり、アンカー212が挿通される中心孔236が形成されている。プラグ本体206は、タイト材202の軸方向の他方に接触する(図12参照)。一例として、プラグ本体206の外径は、構造体300の孔302の内径よりも大きく、プラグ本体206は、構造体300の孔302の外面301と対面するように配置される(図12参照)。
【0076】
プラグ本体206には、中心孔236の周りに、ボルト218のねじ部が貫通する貫通孔238が形成されている。さらに、プラグ本体206には、グラウトを注入するホース20を差し込み可能な挿通口240と、孔302内の空気を排気するためのホース22を差し込み可能な排気口242とが設けられている(図11参照)。挿通口240及び排気口242は、プラグ本体206の中心孔236の周りに形成されている。挿通口240は、挿通部の一例である。プラグ本体206には、ホース20を支える湾曲形状の支持部244と、ホース22を支える湾曲形状の支持部246とが設けられている。
【0077】
(ボルト218、長ナット216、ボルト208及びサポート部材210)
図12(A)、(B)に示すように、ボルト218のねじ部は、挿入プラグ204の側から装着部222のねじ孔226へねじ込まれる。ボルト218の頭部は、挿入プラグ204におけるねじ孔226の周りのザグリに挿入される。ボルト218のねじ部は、プラグ本体206の貫通孔238へ挿通される。構造体300の孔302の外側では、ボルト218のねじ部に長ナット216が螺合される。
【0078】
図11に示すように、サポート部材210は、アンカー212が挿通される円孔250と、円孔250の周りにボルト208のねじ部208Aが挿通される孔部252と、を備えている。サポート部材210は、円孔250にアンカー212が挿通されることで、アンカー212の位置ずれを抑制し、孔部252にボルト208のねじ部208Aが挿通されることで、ボルト208の位置ずれを抑制するようになっている(図12(A)、(B)参照)。ボルト208のねじ部208Aには、ナット260が螺合され、ナット260はサポート部材210に接触させる。また、ボルト208のねじ部208Aは、長ナット216(ボルト218と反対側)にねじ込まれる。
【0079】
長ナット216は、プラグ本体206と接触する。ボルト218に螺合する長ナット216を締め付けることで、装着部222をプラグ本体206の側へ引き戻す。これにより、挿入プラグ204の接触部220とプラグ本体206との間隔(軸方向の間隔)が狭まり、装着部222の外周側に配置されたタイト材202を拡径させるようになっている(図12(B)参照)。
【0080】
[作用及び効果]
アンカー保持具200では、挿入プラグ204の装着部222の外周側にタイト材202を装着し、ボルト218のねじ部が挿入プラグ204の装着部222のねじ孔226へねじ込まれる。この状態で、装着部222及びタイト材202が構造体300の孔302の内部に配置される。ボルト218のねじ部は、プラグ本体206の貫通孔238に挿通される。ボルト218のねじ部に長ナット216が螺合される。長ナット216は、プラグ本体206と接触し、長ナット216を締め付けることで、装着部222をプラグ本体206側へ引き戻す。これにより、接触部220とプラグ本体206との間隔が狭まり、タイト材202を拡大させることで、タイト材202を孔302の挿入部302Aの孔壁303内に密着させる。プラグ本体206の中心孔236及び装着部222の円孔224にアンカー212を挿入することで、アンカー212を孔302の中心部に芯だしする。このため、構造体300の孔302の中心部にアンカー212を安定して保持することができる。
【0081】
プラグ本体206には、グラウト注入用の挿通口240と、グラウトを注入することで孔302内から空気を排気する排気口242が設けられている。また、挿入プラグ204には、グラウト注入用の挿通口228と、グラウトを注入することで孔302内から空気を排気する排気口230が設けられている。このため、挿通口240及び挿通口228に差し込まれたホース20からグラウトを孔302内に注入することで、グラウト注入作業を容易に行うことができる。
【0082】
また、第3実施形態のグラウト充填方法では、アンカー保持具200を用いて構造体300の孔302の中心部にアンカー212を保持する。アンカー保持具200のプラグ本体206及び挿入プラグ204に差し込まれたホース20からグラウトを孔302内へ注入すると共に、排気口230及び排気口242から孔302内の空気を排気する。そして、グラウトが硬化した後にアンカー保持具200を撤去する。このため、グラウト充填方法では、アンカー保持具200により、構造体300の孔302の中心部にアンカー212を安定して保持した状態で、孔302内にグラウトを注入することができる。
【0083】
<その他>
尚、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0084】
上記第3実施形態では、挿入プラグ204の装着部222の外周側にタイト材202が装着されたが、本開示はこの構成に限定するものではない。例えば、プラグ本体206に一体形成された装着部を設け、この装着部の外周側にタイト材を設ける構成でもよい。また、第3実施形態では、ボルト208とサポート部材210が設けられているが、ボルト208とサポート部材210が無い構成でもよい。
【0085】
上記第1~第3実施形態では、空気抜きのためのホース22を差し込んだが、本開示はこの構成に限定するものではない。例えば、ホース22が無くても空気抜きが可能な場合は、アンカー保持具にホース22を差し込む必要はない。
【0086】
上記第1~第3実施形態のグラウト充填方法では、グラウトの注入に応じてホース20及びホース22を引き抜いたが、本開示はこの構成に限定するものではない。例えば、グラウトを充填した後、ホースを引き抜かない場合もある。
【0087】
上記第1~第3実施形態では、アンカーを構造体の孔に横向きに固定したが、本開示はこの構成に限定するものではない。例えば、アンカーを構造体の孔に下向きに固定してもよいし、アンカーを構造体の孔に上向きに固定してもよい。アンカーを構造体の孔に上向きに固定するときは、例えば、アンカー保持具のプラグを構造体の孔の縁部に支持する支持部材を設けてもよい。
【0088】
更に、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得る。複数の実施形態及び変形例等は、適宜、組み合わされて実施可能である。
【符号の説明】
【0089】
10 アンカー保持具
12 グリップカラー(環状体)
14 プラグ
16 ボルト
18 アンカー
20 ホース
22 ホース
30 保持孔
32 挿通口
34 排気口
52 グリップカラー(環状体)
60 挿入部
62 基体部
70 アンカー
74 アンカー
102 孔
103 孔壁
110 グラウト
120 アンカー保持具
122 タイト材(環状体)
126 プラグ本体(プラグ)
127 中心孔
128 蝶ナット(固定部材)
130 接触部
132 管状部
134 ねじ部
136 挿通口(挿通部)
138 排気口
140 挿通部
142 排気部(排気口)
200 アンカー保持具
202 タイト材(環状体)
206 プラグ本体(プラグ)
212 アンカー
216 長ナット(ナットの一例)
218 ボルト
220 接触部
222 装着部
224 円孔
226 ねじ孔
228 挿通口(挿通部)
230 排気口
236 中心孔
238 貫通孔
240 挿通口(挿通部)
242 排気口
301 外面
302 孔
303 孔壁
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12