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  • 特開-転写装置、及び画像形成装置 図1
  • 特開-転写装置、及び画像形成装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034937
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】転写装置、及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/16 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
G03G15/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139519
(22)【出願日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古川 雅士
(72)【発明者】
【氏名】林 聖悟
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 聡哉
(72)【発明者】
【氏名】落合 誠
(72)【発明者】
【氏名】六反 実
(72)【発明者】
【氏名】星尾 拓郎
【テーマコード(参考)】
2H200
【Fターム(参考)】
2H200FA02
2H200FA09
2H200FA16
2H200GA12
2H200GA23
2H200GA34
2H200GA44
2H200GA47
2H200JA02
2H200JB06
2H200JB45
2H200JB46
2H200JB47
2H200JC03
2H200JC15
2H200JC16
2H200JC17
2H200LC09
2H200MA04
2H200MA06
2H200MA14
2H200MA17
2H200MA20
2H200MB02
2H200MB04
2H200MB05
2H200MC01
2H200MC02
2H200MC03
2H200MC20
(57)【要約】
【課題】繰り返し画像を形成した場合にも記録媒体の裏面の汚れが低減される転写装置を提供すること。
【解決手段】外周面にトナー像が転写される中間転写ベルトと、像保持体の表面に形成されたトナー像を前記中間転写ベルトの外周面に一次転写する一次転写部材を有する一次転写装置と、前記中間転写ベルトの外周面に接触して配置され、前記中間転写ベルトの外周面に転写された前記トナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写ベルトを有する二次転写装置と、を備え、前記中間転写ベルトは、押し込み弾性率Aが5000MPa以上であり、前記二次転写ベルトは、押し込み弾性率Bが300MPa以下、且つ、引張弾性率Cが250MPa以上である、転写装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面にトナー像が転写される中間転写ベルトと、
像保持体の表面に形成されたトナー像を前記中間転写ベルトの外周面に一次転写する一次転写部材を有する一次転写装置と、
前記中間転写ベルトの外周面に接触して配置され、前記中間転写ベルトの外周面に転写された前記トナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写ベルトを有する二次転写装置と、
を備え、
前記中間転写ベルトは、押し込み弾性率Aが5000MPa以上であり、
前記二次転写ベルトは、押し込み弾性率Bが300MPa以下、且つ、引張弾性率Cが250MPa以上である、転写装置。
【請求項2】
外周面にトナー像が転写される中間転写ベルトと、
像保持体の表面に形成されたトナー像を前記中間転写ベルトの外周面に一次転写する一次転写部材を有する一次転写装置と、
前記中間転写ベルトの外周面に接触して配置され、前記中間転写ベルトの外周面に転写された前記トナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写ベルトを有する二次転写装置と、
を備え、
前記二次転写ベルトは、引張弾性率Cが250MPa以上であり、
前記中間転写ベルトにおける押し込み弾性率A(MPa)の方が前記二次転写ベルトにおける押し込み弾性率B(MPa)よりも押し込み弾性率が大きく、且つ、両者の差(A-B)が5000MPa以上7500MPa以下である、転写装置。
【請求項3】
前記中間転写ベルトは、前記押し込み弾性率Aが5000MPa以上6700MPa以下である、請求項1又は請求項2に記載の転写装置。
【請求項4】
前記二次転写ベルトは、前記押し込み弾性率Bが10MPa以上300MPa以下である、請求項1又は請求項2に記載の転写装置。
【請求項5】
前記二次転写ベルトは、前記押し込み弾性率Bが10MPa以上100MPa以下である、請求項4に記載の転写装置。
【請求項6】
前記二次転写ベルトは、前記引張弾性率Cが250MPa以上3000MPa以下である、請求項1又は請求項2に記載の転写装置。
【請求項7】
前記中間転写ベルトは、前記トナー像が転写される外周面が、ポリイミドを含んで構成されている、請求項1又は請求項2に記載の転写装置。
【請求項8】
前記二次転写ベルトは、前記中間転写ベルトの外周面に接触する面が、熱可塑性エラストマーを含んで構成されている、請求項1又は請求項2に記載の転写装置。
【請求項9】
像保持体を有し、前記像保持体の表面にトナー像を形成するトナー像形成装置と、
前記像保持体の表面に形成された前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写装置であって、請求項1又は請求項2に記載の転写装置と、
を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写装置、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた画像形成装置(複写機、ファクシミリ、プリンタ等)では、像保持体の表面に形成されたトナー像を記録媒体の表面に転写し、記録媒体上に定着して画像が形成される。なお、こうしたトナー像の記録媒体への転写には、例えば、中間転写ベルトのような導電性の無端ベルトが用いられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、「少なくとも、ポリイミドとカーボンブラックとを含む樹脂ベルトであって、前記樹脂ベルトは示差走査熱量計による熱分析により250℃以上350℃以下の温度範囲に15mJ/mg以上25mJ/mg以下の融解熱が検知されるものであり、前記ポリイミド100質量部に対する前記カーボンブラックの配合量が5~20質量部であり、前記樹脂ベルトは平均厚みが40~120μmであり、前記樹脂ベルトはマルテンス硬度が120N/mm以上280N/mm以下であり、かつ前記樹脂ベルトはJIS K7127に規定されている引張特性試験方法において測定した弾性率が1500MPa以上2500MPa以下であることを特徴とする樹脂ベルト」が開示されている。
【0004】
特許文献2には、「像担持体上に形成されたトナー像を被転写体上に転写して画像を形成する画像形成装置であって、前記像担持体は、基材層と弾性層とを有し、ナノインデンテーション法により測定される前記弾性層の表面硬度が70MPa以上かつ150MPa以下であり、トナー像を被転写体上に転写した後の前記像担持体に当接して前記像担持体の表面に付着した残留物を清掃する金属製の剛体ブレードを有する清掃手段を備え、前記剛体ブレードの厚みは、100μm以上かつ300μm以下であることを特徴とする画像形成装置。」が開示されている。
【0005】
特許文献3には、「基材層の表面に、ゴム材料及び無機フィラーが配合されてなるゴム組成物を用いて、弾性層が設けられてなる電子写真機器用無端ベルトにして、前記弾性層における全有機成分の質量分率が40~75%であると共に、該弾性層の押し込み弾性率(MPa):αと破断歪み(%):βとの積:Pが6000~50000の範囲内にあることを特徴とする電子写真機器用無端ベルト」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-126017号公報
【特許文献2】特開2018-040862号公報
【特許文献3】特開2012-037725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
外周面にトナー像が転写される中間転写ベルトと、像保持体の表面に形成されたトナー像を前記中間転写ベルトの外周面に一次転写する一次転写部材を有する一次転写装置と、前記中間転写ベルトの外周面に接触して配置され、前記中間転写ベルトの外周面に転写された前記トナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写ベルトを有する二次転写装置と、を備える転写装置は、従来、長期的な使用によって、記録媒体の裏面汚れが生じやすい傾向にあった。
そこで本開示では、前記転写装置において、「前記二次転写ベルトの押し込み弾性率が300MPa超え若しくは引張弾性率Cが250MPa未満である場合」、
又は、
「前記中間転写ベルトにおける押し込み弾性率A(MPa)と前記二次転写ベルトにおける押し込み弾性率B(MPa)との差(A-B)が5000MPa未満である場合」
に比べて、繰り返し画像を形成した場合にも記録媒体の裏面の汚れが低減される転写装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、以下の手段により解決される。
<1> 外周面にトナー像が転写される中間転写ベルトと、
像保持体の表面に形成されたトナー像を前記中間転写ベルトの外周面に一次転写する一次転写部材を有する一次転写装置と、
前記中間転写ベルトの外周面に接触して配置され、前記中間転写ベルトの外周面に転写された前記トナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写ベルトを有する二次転写装置と、
を備え、
前記中間転写ベルトは、押し込み弾性率Aが5000MPa以上であり、
前記二次転写ベルトは、押し込み弾性率Bが300MPa以下、且つ、引張弾性率Cが250MPa以上である、転写装置。
<2> 外周面にトナー像が転写される中間転写ベルトと、
像保持体の表面に形成されたトナー像を前記中間転写ベルトの外周面に一次転写する一次転写部材を有する一次転写装置と、
前記中間転写ベルトの外周面に接触して配置され、前記中間転写ベルトの外周面に転写された前記トナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写ベルトを有する二次転写装置と、
を備え、
前記二次転写ベルトは、引張弾性率Cが250MPa以上であり、
前記中間転写ベルトにおける押し込み弾性率A(MPa)の方が前記二次転写ベルトにおける押し込み弾性率B(MPa)よりも押し込み弾性率が大きく、且つ、両者の差(A-B)が5000MPa以上7500MPa以下である、転写装置。
<3> 前記中間転写ベルトは、前記押し込み弾性率Aが5000MPa以上6700MPa以下である、前記<1>又は<2>に記載の転写装置。
<4> 前記二次転写ベルトは、前記押し込み弾性率Bが10MPa以上300MPa以下である、前記<1>又は<2>に記載の転写装置。
<5> 前記二次転写ベルトは、前記押し込み弾性率Bが10MPa以上100MPa以下である、前記<4>に記載の転写装置。
<6> 前記二次転写ベルトは、前記引張弾性率Cが250MPa以上3000MPa以下である、前記<1>又は<2>に記載の転写装置。
<7> 前記中間転写ベルトは、前記トナー像が転写される外周面が、ポリイミドを含んで構成されている、前記<1>又は<2>に記載の転写装置。
<8> 前記二次転写ベルトは、前記中間転写ベルトの外周面に接触する面が、熱可塑性エラストマーを含んで構成されている、前記<1>又は<2>に記載の転写装置。
<9> 像保持体を有し、前記像保持体の表面にトナー像を形成するトナー像形成装置と、
前記像保持体の表面に形成された前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写装置であって、前記<1>又は<2>に記載の転写装置と、
を備える画像形成装置。
【発明の効果】
【0009】
<1>、<7>又は<8>に係る発明によれば、前記二次転写ベルトの押し込み弾性率Bが300MPa超え若しくは引張弾性率Cが250MPa未満である場合に比べ、繰り返し画像を形成した場合にも記録媒体の裏面の汚れが低減される転写装置が提供される。
<2>、<7>又は<8>に係る発明によれば、前記中間転写ベルトにおける押し込み弾性率A(MPa)と前記二次転写ベルトにおける押し込み弾性率B(MPa)との差(A-B)が5000MPa未満である場合に比べ、繰り返し画像を形成した場合にも記録媒体の裏面の汚れが低減される転写装置が提供される。
<3>に係る発明によれば、前記中間転写ベルトは、前記押し込み弾性率Aが5000MPa未満又は6700MPa超えである場合に比べ、繰り返し画像を形成した場合にも記録媒体の裏面の汚れが低減される転写装置が提供される。
<4>に係る発明によれば、前記二次転写ベルトは、前記押し込み弾性率Bが10MPa未満又は300MPa超えである場合に比べ、繰り返し画像を形成した場合にも記録媒体の裏面の汚れが低減される転写装置が提供される。
<5>に係る発明によれば、前記二次転写ベルトは、前記押し込み弾性率Bが10MPa未満又は100MPa超えである場合に比べ、繰り返し画像を形成した場合にも記録媒体の裏面の汚れが低減される転写装置が提供される。
<6>に係る発明によれば、前記二次転写ベルトは、前記引張弾性率Cが250MPa未満又は3000MPa超えである場合に比べ、繰り返し画像を形成した場合にも記録媒体の裏面の汚れが低減される転写装置が提供される。
<9>に係る発明によれば、前記転写装置において「前記二次転写ベルトの押し込み弾性率Bが300MPa超え若しくは引張弾性率Cが250MPa未満である場合」、又は、「前記中間転写ベルトにおける押し込み弾性率A(MPa)と前記二次転写ベルトにおける押し込み弾性率B(MPa)との差(A-B)が5000MPa未満である場合」場合に比べ、繰り返し画像を形成した場合にも記録媒体の裏面の汚れが低減される画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る二次転写装置の一例を示す概略構成図である。
図2】本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、実施形態の範囲を制限するものではない。
【0012】
本実施形態中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本実施形態中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本実施形態において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本実施形態において実施形態を図面を参照して説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
本実施形態において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。本実施形態において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0013】
[転写装置]
第一の実施形態に係る転写装置は、外周面にトナー像が転写される中間転写ベルトと、像保持体の表面に形成されたトナー像を前記中間転写ベルトの外周面に一次転写する一次転写部材を有する一次転写装置と、前記中間転写ベルトの外周面に接触して配置され、前記中間転写ベルトの外周面に転写された前記トナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写ベルトを有する二次転写装置と、を備え、前記中間転写ベルトは、押し込み弾性率Aが5000MPa以上であり、前記二次転写ベルトは、押し込み弾性率Bが300MPa以下、且つ、引張弾性率Cが250MPa以上である。
【0014】
第二の実施形態に係る転写装置は、外周面にトナー像が転写される中間転写ベルトと、像保持体の表面に形成されたトナー像を前記中間転写ベルトの外周面に一次転写する一次転写部材を有する一次転写装置と、前記中間転写ベルトの外周面に接触して配置され、前記中間転写ベルトの外周面に転写された前記トナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写ベルトを有する二次転写装置と、を備え、前記二次転写ベルトは、引張弾性率Cが250MPa以上であり、前記中間転写ベルトにおける押し込み弾性率A(MPa)の方が前記二次転写ベルトにおける押し込み弾性率B(MPa)よりも押し込み弾性率が大きく、且つ、両者の差(A-B)が5000MPa以上7500MPa以下である。
【0015】
以下、第一の実施形態と第二の実施形態との共通の構成を「本実施形態」と称す。
【0016】
以下、外周面にトナー像が転写される中間転写ベルトと、像保持体の表面に形成されたトナー像を前記中間転写ベルトの外周面に一次転写する一次転写部材を有する一次転写装置と、前記中間転写ベルトの外周面に接触して配置され、前記中間転写ベルトの外周面に転写された前記トナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写ベルトを有する二次転写装置と、を備える転写装置を、「特定転写装置」とも称す。
【0017】
従来、転写手段を構成するベルト上にトナーが蓄積すると、ベルトとクリーニングブレードなどの清掃部材との接触や、転写工程での対抗部材や用紙との摺擦によってトナー押しつぶされ、ベルト表面へのトナーの固着(いわゆるフィルミング)が発生する。その後、画像形成を続けると、無端ベルト表面のフィルミング箇所を起点にトナー清掃をしきれず、無端ベルト表面にトナーが残存し、クリーニング不良が発生する。このトナーのフィルミング現象が、二次転写ベルト上に発生した場合は、記録媒体の裏面(画像形成された面の反対面)が汚染される傾向にあった。
【0018】
一方、本実施形態に係る転写装置は、上記構成を有することにより、画像形成装置に搭載した際に、繰り返し画像を形成した場合にも記録媒体の裏面の汚れが低減される。この作用機序は必ずしも明らかではないが、以下のように推察される。
【0019】
第一の実施形態に係る転写装置は、前記中間転写ベルトは、押し込み弾性率Aが5000MPa以上であり、前記二次転写ベルトは、押し込み弾性率Bが300MPa以下、且つ、引張弾性率Cが250MPa以上である。
第二の実施形態に係る転写装置は、前記二次転写ベルトは、引張弾性率Cが250MPa以上であり、前記中間転写ベルトにおける押し込み弾性率A(MPa)の方が前記二次転写ベルトにおける押し込み弾性率B(MPa)よりも押し込み弾性率が大きく、且つ、両者の差(A-B)が5000MPa以上7500MPa以下である。
上述の様に、本実施形態に係る転写装置では、二次転写ベルトの外周面が、中間転写ベルトの外周面よりも、押し込み弾性率が小さい。そのため、比較的硬い中間転写ベルトと、比較的に柔らかく変形しやすい二次転写ベルトと接触したときに、トナーに加わる応力を低減することが可能となるため、フィルミング現象の発生が抑制され、繰り返し画像を形成した場合にも記録媒体の裏面の汚れが低減される。
【0020】
以下、本実施形態に係る転写装置について、詳細に説明する。
【0021】
[転写装置]
本実施形態に係る転写装置は、外周面にトナー像が転写される中間転写ベルトと、像保持体の表面に形成されたトナー像を前記中間転写ベルトの外周面に一次転写する一次転写部材を有する一次転写装置と、前記中間転写ベルトの外周面に接触して配置され、前記中間転写ベルトの外周面に転写された前記トナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写ベルトを有する二次転写装置と、を備える。
【0022】
(転写装置の特性)
・中間転写ベルトの押し込み弾性率A
第一の実施形態に係る転写装置は、中間転写ベルトの押し込み弾性率Aが5000MPa以上であり、5000MPa以上8000MPa以下であることが好ましく、5000MPa以上6700MPa以下であることがより好ましい。
第二の実施形態に係る転写装置は、中間転写ベルトの押し込み弾性率Aが5000MPa以上であることが好ましく、5000MPa以上8000MPa以下であることがより好ましく、5000MPa以上6700MPa以下であることがさらに好ましい。
【0023】
押し込み弾性率とは、各ベルトの表面層における外周面側から厚み方向に対して数μm程度の領域の硬さの程度を示す指標のことをいい、値が小さいほどベルトの外周面が柔らかく、変形しやすいことを表す。
【0024】
前記押し込み弾性率Aが5000MPa以上7000MPa以下であると、クリーニングブレード等の中間転写ベルトの清掃部材と接触する時に、中間転写ベルト表面の変形が抑制されるため、ブレードとの接触状態が安定しやすいため、トナーすり抜け等も抑制されやすく、中間転写ベルト表面の汚れがより低減され、結果として繰り返し画像を形成した場合にも記録媒体の裏面の汚れがより低減される。
さらに、前記押し込み弾性率Aが7000MPa以下であると、二次転写ベルトと接触したときに、中間転写ベルトの表面層にかかる応力が過度に大きくなることが抑制されるため、中間転写ベルトの破断耐久性に優れる。
【0025】
中間転写ベルトの押し込み弾性率Aは、以下のようにして測定する。
中間転写ベルトを、外周面側から厚み方向200μm×縦20mm×横20mmを切削し、試験片を得た。この試料についてISO 14577-1「金属材料-硬さのためのインデンテーション試験テストと材料パラメーター Part1:試験方法」に規定されている押込み試験を行なった。得られた結果を用いて同付属書Aの「A.5押込み弾性率E I T」に準拠して算出する。
【0026】
中間転写ベルトの押し込み弾性率Aを上記範囲内とする手法は特に制限されないが、例えば、中間転写ベルトをポリイミドなどの硬質の熱硬化性樹脂を含む基材層を備える構成とする手法や、ガラスコート材などのハードコート層を表面に設ける手法や、紫外線照射などで中間転写ベルト表面を改質する手法等が挙げられる。
【0027】
・二次転写ベルトの押し込み弾性率B
第一の実施形態に係る転写装置は、二次転写ベルトの押し込み弾性率Bが300MPa以下であり、10MPa以上300MPa以下であることが好ましく、10MPa以上200MPa以下であることがより好ましく、10MPa以上100MPa以下であることがさらに好ましい。
第二の実施形態に係る転写装置は、二次転写ベルトの押し込み弾性率Bが300MPa以下であることが好ましく、10MPa以上300MPa以下であることがより好ましく、10MPa以上200MPa以下であることがさらに好ましく、10MPa以上100MPa以下であることが特に好ましい。
【0028】
前記押し込み弾性率Bが300MPa以下であると、中間転写ベルトと接触したときにかかる応力が二次転写ベルトの表面層上で発散され易いため、二次転写部での非画像領域のトナーに接触圧としてかかる力が過度に大きくなることが抑制され、フィルミング現象が発生しにくくなる。
前記押し込み弾性率Bが10MPa以上であると、中間転写ベルトと接触したときに、二次転写ベルトの表面層の過度な変形が抑制されるため、クリーニングブレードとの当接状態が安定しやすくなり、トナーすり抜け等抑制されやすく、繰り返し画像を形成した場合にも記録媒体の裏面の汚れがより軽減される。
【0029】
押し込み弾性率Bを上記範囲内とする手法は特に制限されないが、例えば、二次転写ベルトに熱可塑性エラストマーを含む弾性層を設ける手法等が挙げられる。
【0030】
二次転写ベルトの押し込み弾性率Bは、中間転写ベルトの押し込み弾性率Aと同様の手法により求めることができる。
【0031】
第一の実施形態に係る転写装置は、中間転写ベルトにおける押し込み弾性率A(MPa)の方が前記二次転写ベルトにおける押し込み弾性率B(MPa)よりも押し込み弾性率が大きいことが好ましく、両者の差(A-B)が5000MPa以上7500MPa以下であることがより好ましく、5800MPa以上7000MPa以下であることがさらに好ましく、5850MPa以上6500MPa以下であることが特に好ましい。
第二の実施形態に係る転写装置は、中間転写ベルトにおける押し込み弾性率A(MPa)の方が前記二次転写ベルトにおける押し込み弾性率B(MPa)よりも押し込み弾性率が大きく、且つ、両者の差(A-B)が5000MPa以上7500MPa以下であり、5800MPa以上7000MPa以下であることが好ましく、5850MPa以上6500MPa以下であることがより好ましい。
【0032】
前記両者の差(A-B)が7500MPa以下であると、中間転写ベルトと接触したときに、二次転写ベルトの表面層の過度な変形が抑制されるため、クリーニングブレードとの当接状態が安定しやすくなり、トナーすり抜け等抑制されやすく、繰り返し画像を形成した場合にも記録媒体の裏面の汚れがより軽減される。
前記両者の差(A-B)が5000MPa以上であると、中間転写ベルトと接触したときにかかる応力が二次転写ベルトの表面層上で発散され易いため、二次転写部での非画像領域のトナーに接触圧としてかかる力が過度に大きくなることが抑制され、フィルミング現象が発生しにくくなる。
【0033】
前記押し込み弾性率A及び押し込み弾性率Bの差(A-B)を上記範囲内とする手法は特に制限されないが、例えば、二次転写ベルトに熱可塑性エラストマーを含む弾性層を設ける手法等が挙げられる。
【0034】
・引張弾性率C
本実施形態に係る転写装置は、二次転写ベルトにおける引張弾性率Cが250MPa以上であり、250MPa以上3000MPa以下であることが好ましく、260MPa以上2000MPa以下であることがより好ましい。
【0035】
引張弾性率とは、JIS K7127に準じて測定した周方向の引張弾性率をいう。
【0036】
前記引張弾性率Cが250MPa以上3000MPa以下であると、ベルト駆動に必要なテンションを加えた場合の変形が抑制され安定性高く駆動できる。そのため、クリーニングブレードの当接状態が安定しやすく、繰り返し画像を形成した場合にも、記録媒体の裏面の汚れがより軽減される。
さらに、前記引張弾性率Cが3000MPa以下であると、二次転写ベルト全体が過度に硬くなり、ベルト表面層等にひびが生じることが抑制され易く、破断耐久性に優れる。
【0037】
二次転写ベルトの引張弾性率Cは、JIS K7127に準じて以下のように測定される。具体的には、ダンベル3号の打ち抜き試験片(幅5mm)を作製し、アイコーエンジンニアリング社製MODEL-1605Nを用いて、引張速度20mm/minで測定された値である。
【0038】
二次転写ベルトの引張弾性率Cを上記範囲内とする手法は特に制限されないが、例えば、二次転写ベルトの基材層に軟質の熱可塑性樹脂を設ける手法、熱可塑性エラストマーを含む弾性層を設ける手法、弾性率の異なる層を積層する手法等が挙げられる。
【0039】
(中間転写ベルト)
・層構成
中間転写ベルトは、外周面にトナー像が転写される。
中間転写ベルトの層構成は、押し込み弾性率Aが先述の範囲以内であれば特に制限されず、基材層の単層体であってもよいし、基材層を含む積層体であってもよい。
基材層を含む積層体は、基材層の外周面上に弾性層を設けた積層体、基材層の内周面上に樹脂層を設けた積層体、基材層の外周面上に弾性層及び基材層の内周面上に樹脂層を設けた積層体が挙げられる。
なお、基材層の外周面上に設ける弾性層、基材層の内周面に樹脂層は、中間転写ベルトに採用されている周知の層が適用される。
【0040】
・基材層
基材層は、例えば、樹脂と、導電剤と、を含む。基材層は、必要に応じて、周知のその他成分を含んでもよい。基材層は、樹脂の代わりにゴム(例えばアクリルゴム)を含む構成であってもよい。
【0041】
-樹脂-
樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂(以下、単にポリイミドとも称す。)、ポリアミドイミド樹脂(以下、単にポリアミドイミドとも称す。)、芳香族ポリエーテルケトン樹脂(例えば、芳香族ポリエーテルエーテルケトン樹脂等)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS樹脂)、ポリエーテルイミド樹脂(PEI樹脂)、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
樹脂は、機械的強度及び導電剤の分散性の観点から、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含むことが好ましく、ポリイミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂の少なくとも一方を含むことがより好ましく。
【0042】
ポリイミド樹脂としては、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との重合体であるポリアミック酸(ポリイミド樹脂の前駆体)のイミド化物が挙げられる。
ポリイミド樹脂としては、例えば、下記一般式(I)で示される構成単位を有する樹脂が挙げられる。
【0043】
【化1】
【0044】
一般式(I)中、Rは4価の有機基を表し、Rは2価の有機基を表す。
で表される4価の有機基としては、芳香族基、脂肪族基、環状脂肪族基、芳香族基と脂肪族基とを組み合わせた基、又はそれらが置換された基が挙げられる。4価の有機基として具体的には、例えば、後述するテトラカルボン酸二無水物の残基が挙げられる。
で表される2価の有機基としては、芳香族基、脂肪族基、環状脂肪族基、芳香族基と脂肪族基とを組み合わせた基、又はそれらが置換された基が挙げられる。2価の有機基として具体的には、例えば、後述するジアミン化合物の残基が挙げられる。
【0045】
ポリイミド樹脂の原料として用いるテトラカルボン酸二無水物として具体的には、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、
3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水物、ペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0046】
ポリイミド樹脂の原料として用いるジアミン化合物の具体例としては、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジクロロベンジジン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、1,5-ジアミノナフタレン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、3,3’-ジメチル4,4’-ビフェニルジアミン、ベンジジン、3,3’-ジメチルベンジジン、3,3’-ジメトキシベンジジン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、2,4-ビス(β-アミノ第三ブチル)トルエン、ビス(p-β-アミノ-第三ブチルフェニル)エーテル、ビス(p-β-メチル-δ-アミノフェニル)ベンゼン、ビス-p-(1,1-ジメチル-5-アミノ-ペンチル)ベンゼン、1-イソプロピル-2,4-m-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、ジ(p-アミノシクロヘキシル)メタン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ジアミノプロピルテトラメチレン、3-メチルヘプタメチレンジアミン、4,4-ジメチルヘプタメチレンジアミン、2,11-ジアミノドデカン、1,2-ビス-3-アミノプロボキシエタン、2,2-ジメチルプロピレンジアミン、3-メトキシヘキサメチレンジアミン、2,5-ジメチルヘプタメチレンジアミン、3-メチルヘプタメチレンジアミン、5-メチルノナメチレンジアミン、2,17-ジアミノエイコサデカン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,10-ジアミノ-1,10-ジメチルデカン、12-ジアミノオクタデカン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、ピペラジン、HN(CHO(CHO(CH)NH、HN(CHS(CHNH、HN(CHN(CH(CHNH等が挙げられる。
【0047】
ポリアミドイミド樹脂としては、繰り返し単位にイミド結合とアミド結合とを有する樹脂が挙げられる。
より具体的には、ポリアミドイミド樹脂は、酸無水物基を有する3価のカルボン酸化合物(トリカルボン酸ともいう)と、ジイソシアネート化合物又はジアミン化合物と、の重合体が挙げられる。
【0048】
トリカルボン酸としては、トリメリット酸無水物及びその誘導体が好ましい。トリカルボン酸の他に、テトラカルボン酸二無水物、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸などを併用してもよい。
【0049】
ジイソシアネート化合物としては、3,3’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、2,2’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、ビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、ビフェニル-3,3’-ジイソシアネート、ビフェニル-3,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジエチルビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、2,2’-ジエチルビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメトキシビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、2,2’-ジメトキシビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、ナフタレン-2,6-ジイソシアネート等が挙げられる。
ジアミン化合物としては、上記のイソシアネートと同様の構造を有し、イソシアナト基
の代わりにアミノ基を有する化合物が挙げられる。
【0050】
中間転写ベルトは、トナー像が転写される外周面が、ポリイミドを含んで構成されていることが好ましい。前記外周面がポリイミドを含んで構成されると、中間転写ベルトとクリーニングブレードとが接触したときに、中間転写ベルトが過度に変形することが抑えられやすく、トナーすり抜け等も抑制されやすく、繰り返し画像を形成した場合にも中間転写ベルト表面の汚れがより低減される。また、転写性に優れる。
【0051】
基材層に対する、樹脂の含有量は、機械的強度及び体積抵抗率調整等の観点から、60質量%以上95質量%以下であることが好ましく、70質量%以上95量%以下であることがより好ましく、75質量%以上90質量%以下であることが更に好ましい。
【0052】
-導電剤-
導電剤としては、導電性(例えば体積抵抗率10Ω・cm未満、以下同様である)又は半導電性(例えば体積抵抗率10Ω・cm以上1013Ω・cm以下、以下同様である)の粉末が挙げられる。
具体的には、導電剤としては、特に制限はないが、例えば、カーボンブラック、金属(例えばアルミニウム、ニッケル等)、金属酸化物(例えば酸化イットリウム、酸化錫等)、イオン導電性物質(例えばチタン酸カリウム、LiCl等)等が挙げられる。
【0053】
導電剤は、その使用目的により選択されるが、カーボンブラックが好ましい。
カーボンブラックとしては、例えば、ケッチェンブラック、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、等が挙げられる。カーボンブラックとしては、表面が処理されたカーボンブラック(以下、「表面処理カーボンブラック」ともいう)を用いてもよい。
表面処理カーボンブラックは、その表面に、例えば、カルボキシ基、キノン基、ラクトン基、ヒドロキシ基等を付与して得られる。表面処理の方法としては、例えば、高温雰囲気下で空気と接触して反応させる空気酸化法、常温(例えば、22℃)下で窒素酸化物又はオゾンと反応させる方法、高温雰囲気下での空気酸化後、低温でオゾンにより酸化する方法等を挙げられる。
【0054】
カーボンブラックの平均粒径としては、分散性、機械的強度、体積抵抗率、成膜性等の観点から、2nm以上40nm以下が好ましく、8nm以上25nm以下がより好ましく、10nm以上15nm以下がさらに好ましい。
【0055】
導電剤(特にカーボンブラック)の平均粒径は、次の方法により測定される。
まず、基材層から、ミクロトームにより、100nmの厚さの測定サンプルを採取し、本測定サンプルをTEM(透過型電子顕微鏡)により観察する。そして、導電剤50個の各々の投影面積に等しい円の直径(すなわち円相当径)を粒子径として、その平均値を平均粒径とする。
【0056】
導電剤の含有量は、機械的強度、体積抵抗率の観点から、基材層に対して10質量%以上50質量%以下が好ましく、12質量%以上40質量%以下がより好ましく、15質量%以上30質量%以下であることが好ましい。
【0057】
-その他成分-
その他成分としては、例えば、機械的強度向上のためのフィラー、ベルトの熱劣化を防止するための酸化防止剤、流動性を向上させるための界面活性剤、耐熱老化防止剤等が挙げられる。
その他成分が含まれる場合、その他の成分の含有量は、基材層に対して、0質量%超10質量%以下が好ましく、0質量%超5質量%以下がより好ましく、0質量%超1質量%以下が更に好ましい。
【0058】
(中間転写ベルトの体積抵抗率)
中間転写ベルトの、500Vの電圧を10秒間印加した際の体積抵抗率の常用対数値は、転写性の観点から、7.0(logΩ・cm)以上13.5(logΩ・cm)以下であることが好ましく、8.5(logΩ・cm)以上13.2(logΩ・cm)以下であることがより好ましく、10.0(logΩ・cm)以上12.5(logΩ・cm)以下であることが特に好ましい。
中間転写ベルトにおける500Vの電圧を10秒間印加した際の体積抵抗率の測定は、以下の方法により行う。
抵抗測定機として、微小電流計(株式会社エーディーシー社製5450)を用い、プローブとしてURプローブ(三菱ケミカルアナリテック(株)製)を使用し、体積抵抗率(logΩ・cm)について、中間転写ベルトを周方向に等間隔で6点、幅方向の中央部及び両端部について3点の計18点、電圧500V、印加時間10秒間、加圧1kgfで測定し、平均値を算出する。また、温度22℃、湿度55%RHの環境下で測定を行うものとする。
【0059】
(中間転写ベルトの表面抵抗率)
中間転写ベルトの、外周面に500Vの電圧を10秒間印加した際の表面抵抗率の常用対数値は、凹凸紙への転写性の観点から、10.0(logΩ/suq.)以上15.0(logΩ/suq.)以下であることが好ましく、10.5(logΩ/suq.)以上14.0(logΩ/suq.)以下であることがより好ましく、11.0(logΩ/suq.)以上13.5(logΩ/suq.)以下であることが特に好ましい。
なお、前記表面抵抗率の単位logΩ/suq.は、表面抵抗率を単位面積当たりの抵抗値の対数値で表すものあり、log(Ω/suq.)、logΩ/suquare、logΩ/□等とも表記する。
中間転写ベルトの外周面における500Vの電圧を10秒間印加した際の表面抵抗率の測定は、以下の方法により行う。
抵抗測定機として、微小電流計(株式会社エーディーシー社製5450)を用い、プローブとしてURプローブ(三菱ケミカルアナリテック(株)製)を使用し、無端ベルトの外周面の表面抵抗率(logΩ/suq.)について、中間転写ベルトの外周面を周方向に等間隔で6点、幅方向の中央部及び両端部について3点の計18点、電圧500V、印加時間10秒間、加圧1kgfで測定し、平均値を算出する。また、温度22℃、湿度55%RHの環境下で測定を行うものとする。
ベルト本体を準備する工程では、周知の中間転写ベルトの製造方法を利用してベルト本体を得る。
【0060】
・中間転写ベルトの膜厚
中間転写ベルトが単層体である場合、中間転写ベルトの厚みは、ベルトの機械的強度の観点から、60μm以上120μm以下であることが好ましく、70μm以上120μm以下であることがより好ましい。
中間転写ベルトが例えば基材層と表面層とからなる積層体である場合、基材層の厚みは、製造適性の観点、及び放電を抑制する観点から、10μm以上100μm以下であることが好ましく、30μm以上80μm以下であることがより好ましい。
中間転写ベルトが例えば基材層と表面層とからなる積層体である場合、表面層の厚みは、1μm以上80μm以下であることが好ましく、20μm以上40μm以下であることがより好ましい。上記表面層の厚みが上記範囲内であると、二次転写ベルトと接触した際にも接触圧が小さく抑えられやすいため、繰り返し画像を形成した場合にも記録媒体の裏面の汚れがより低減される。また、中間転写ベルトの破断耐久性にも優れると考えられる。
【0061】
なお、膜厚は、以下のようにして測定する。
測定対象の層における任意の10箇所について、中間転写ベルトの厚み方向の断面を光学顕微鏡又は走査型電子顕微鏡により観察して、膜厚を測定する。得られた各膜厚の値の算術平均値を各層の厚みとする。
【0062】
(一次転写装置)
一次転写装置において、像保持体の表面に形成されたトナー像を前記中間転写ベルトの外周面に一次転写する一次転写部材は、中間転写ベルトを挟んで像保持体に対向して配置される。一次転写装置おいては、上記一次転写部材により中間転写ベルトに対しトナーの帯電極性と逆極性の電圧を付与することで、トナー像が中間転写ベルトの外周面に一次転写される。
一次転写部材は、一次転写ロールであってもよいし、一次転写ベルトであってもよい。
【0063】
(二次転写装置)
二次転写装置は、前記中間転写ベルトの外周面に接触して配置され、前記中間転写ベルトの外周面に転写された前記トナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写ベルトを有する。
二次転写装置は、例えば、二次転写ベルトと共に、中間転写ベルトのトナー像保持側と反対側に配置される背面部材と、を備えていてもよい。
二次転写装置においては、中間転写ベルト及び記録媒体を二次転写ベルトと背面部材とで挟み込み転写電界を形成することで、中間転写ベルト上のトナー像が記録媒体に二次転写される。なお、背面部材は、例えば、背面ロールが適用される。
【0064】
本実施形態に係る転写装置は、複数の中間転写ベルトを介して、トナー像を記録媒体の表面に転写する転写装置であってもよい。つまり、転写装置は、例えば、像保持体から第1中間転写ベルトにトナー像を一次転写し、さらに、第1中間転写ベルトから第2中間転写ベルトにトナー像を二次転写した後、第2中間転写ベルトから記録媒体にトナー像を三次転写する転写装置であってもよい。なお、第1中間転写ベルトは、第1中間転写ロールであってもよいし、第1中間転写ベルトであってもよい。
転写装置が、複数の中間転写ベルトを備える場合、記録媒体にトナー像を転写する中間転写ベルト(上記でいうところの第2中間転写ベルト)が、少なくとも第一の実施形態における二次転写ベルト、又は、第二の実施形態における二次転写ベルトを適用する。
【0065】
以下、図面を参照して本願の二次転写装置の一例を説明するが、二次転写装置は、押し込み弾性率B及び引張弾性率Cが先述の範囲となるものであれば下記構成に限られず、周知のベルト方式の二次転写装置が採用される。
図1は、本実施形態に係る二次転写装置の一例を示す概略構成図である。
二次転写装置109は、例えば、図1に示すように、中間転写ベルト107の外周面に接触して配置される二次転写ベルト10(本実施形態に係る二次転写ベルト)と、二次転写ベルト10の内周面に接触し、且つ二次転写ベルト10を介して中間転写ベルト107に対向して配置される二次転写ロール12と、二次転写ベルト10の内周面に接触して配置され、二次転写ロールと共に前記二次転写ベルトを張力が掛かった状態で支持する一つ又は複数の支持ロール14A~14F(本実施形態では6つの支持ロール14A~14F)と、を備えている。
【0066】
二次転写ロール12は、その層構造について、特に限定されるものではないが、例えば、三層構造の場合、コア層と中間層とその表面を被覆するコーティング層により構成される。コア層は導電性粒子等の導電剤を分散したシリコーンゴム、ウレタンゴム、またはEPDM等の発泡体で、中間層はこれらの無発泡体で構成される。コーティング層の材料としては、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、またはパーフルオロアルコキシ樹脂などが挙げられる。二次転写ロール12の体積抵抗率は10Ωcm以下であることが望ましい。また、中間層を除いた2層構造としてもよい。
【0067】
二次転写ベルト10の外周面には、二次転写ロール12よりもベルト回転方向下流側に、二次転写ベルト10を介して支持ロール14A(掻取治具対向ロールとして機能するロール)と対向するように、二次転写ベルト10の外周面の付着物(トナー等)を掻き取る掻取治具16(スクレーパ:クリーニング装置の一例)が設けられている。
なお、掻取治具16よりもベルト回転方向上流側には、掻取治具16の面出しを行うため、二次転写ベルト10を内周面側から外周面側に押し上げる面出しロール14Gが備えられている。
【0068】
二次転写ベルト10の外周面には、掻取治具16よりも、ベルト回転方向下流側に、二次転写ベルト10の外周面の付着物(トナー等)を静電的に除去する静電クリーナー18(クリーニング装置の一例)が備えられている。
静電クリーナー18には、例えば、二次転写ベルト10と接触し、付着物(トナー等)を静電的に除去する2つの静電ブラシ20,22と、2つの静電ブラシ20,22に接触しつつ回転して静電ブラシ20,22に付着した付着物(トナー等)を回収する2つの回収ローラ20A,22Aと、2つの回収ローラ20A,22Aに各々接触しつつ回収ローラ20A,22Aに付着した付着物(トナー等)を掻き落とす掻取治具20B,22B(スクレーパ)と、を備える。なお、掻取治具20B,22B(スクレーパ)により掻き落とされた付着物(トナー等)は、静電クリーナー18内(その筐体内)に収容する
そして、静電クリーナー18は、2つの静電ブラシ20,22が支持ロール14C及び14D(静電ブラシ対向ロールとして機能するロール)と各々対向するように、設けられている。
【0069】
-二次転写ベルト-
・層構成
二次転写ベルトは、押し込み弾性率Bと引張弾性率Cとが、先述の範囲を満たすものであれば、基材層の単層体であってもよいし、積層体であってもよい。
積層体は、例えば、下記1)~4)の積層体のいずれであってもよい。
1)基材層の外周面上に弾性層を設けた積層体、
2)基材層の内周面上に樹脂層及び表面層を設けた積層体、
3)基材層の内周面上に樹脂層を設けた積層体、
4)基材層の外周面上に弾性層及び表面層、並びに、基材層の内周面上に樹脂層を設けた積層体。
【0070】
上記の中でも、二次転写ベルトは、基材層と基材層の外周面上に設けられる弾性層とを含む積層体であることが好ましく、基材層と基材層の外周面上に設けられる弾性層及び表面層とを含む積層体であることがさらに好ましい。
二次転写ベルトの層構成が、上記弾性層(より好ましくは熱可塑性エラストマーを含む弾性層)を含む積層体である場合、二次転写ベルトの押し込み弾性率Bと引張弾性率Cとを先述の範囲に調整しやすい。
【0071】
・基材層
二次転写ベルトにおける基材層の好ましい態様は、中間転写ベルトにおける基材層の好ましい態様と同様である。
【0072】
・弾性層
弾性層は、例えば、弾性材料を含んで構成される。
弾性材料としては、例えば、ゴム材料、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。弾性材料は1種単独の使用であってもよく、2種以上の併用であってもよい。
【0073】
ゴム材料としては、例えば、アクリルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ブチルゴム、ポリウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロルヒドリン-エチレンオキシド共重合ゴム、エピクロルヒドリン-エチレンオキシド-アリルグリシジルエーテル三元共重合ゴム、エチレン-プロピレン-ジエン3元共重合ゴム(EPDM)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム(NBR)、天然ゴム、及びこれらを混合したゴム等が挙げられる。
上記の中でも、ゴム材料としては、押し込み弾性率B及び引張弾性率Cを好適な範囲とする観点から、アクリルゴム及びブタジエンゴムの少なくとも一方を含むことが好ましい。ゴム材料は1種単独の使用であってもよく、2種以上の併用であってもよい。
【0074】
熱可塑性エラストマーとしては、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエーテル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー(以下、単にポリウレタンとも称す)、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、(メタ)アクリル系熱可塑性エラストマー、ポリジエン系熱可塑性エラストマー、シリコーン変性ポリカーボネート系熱可塑性エラストマー、フッ素系共重合体系等が挙げられる。
上記の中でも、熱可塑性エラストマーとしては、押し込み弾性率B及び引張弾性率Cを好適な範囲とする観点から、スチレン系熱可塑性エラストマー及びポリウレタン系熱可塑性エラストマーの少なくとも一方を含むことが好ましい。熱可塑性エラストマーは1種単独の使用であってもよく、2種以上の併用であってもよい。
【0075】
熱可塑性エラストマーとは、例えば、常温(25℃)においてゴムの性質を有し、高温において熱可塑性樹脂と同じく軟化する性質を有するエラストマーのことをいう。
【0076】
上記の中でも、弾性材料としては、熱可塑性エラストマーを含むことが好ましい。
つまり、二次転写ベルトは、前記中間転写ベルトの外周面に接触する面が、熱可塑性エラストマーを含んで構成されていることが好ましく、基材層と、熱可塑性エラストマーを含む弾性層とを含む積層体で構成されていることがより好ましい。
二次転写ベルトは、熱可塑性エラストマーを含むと、ゴム材料を用いる場合と比較し、二次転写ベルトの絶縁破壊電圧を上げやすくなり、二次転写部での高電圧印可時のベルト破壊がより低減される。これにより、繰り返し画像を形成した場合にも、クリーニングブレードの当接状態が適度に保たれ、記録媒体の裏面の汚れがより低減される。
【0077】
弾性層は、発泡剤、導電剤、発泡助剤、整泡剤、触媒等の弾性材料以外のその他の材料をさらに含んで構成されていてもよい。
【0078】
発泡剤としては、水;アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、ジアゾアミノベンゼン等のアゾ化合物;ベンゼンスルホニルヒドラジド、4,4’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド等のベンゼンスルホニルヒドラジド類;熱分解により炭酸ガスを発生する炭酸水素ナトリウム等の重炭酸塩;窒素ガスを発生するNaNOとNHClの混合物;酸素を発生する過酸化物;などが挙げられる。
【0079】
導電剤としては、電子導電剤やイオン導電剤が挙げられる。導電剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
電子導電剤としては、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック;熱分解カーボン、グラファイト;アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼等の金属又は合金;酸化錫、酸化インジウム、酸化チタン、酸化錫-酸化アンチモン固溶体、酸化錫-酸化インジウム固溶体等の導電性金属酸化物;絶縁物質の表面を導電化処理した物質;などの粉末が挙げられる。
上記の中でも電子導電剤としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラックを含むことが好ましい。
電子導電剤の含有量は、弾性材料100質量部に対して、1質量部以上40質量部以下が好ましく、15質量部以上35質量部以下がより好ましい。
【0080】
イオン導電剤としては、例えば、四級アンモニウム塩(例えば、ラウリルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウム、オクタドデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム又は変性脂肪酸・ジメチルエチルアンモニウムの過塩素酸塩、塩素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、エトサルフェート塩、臭化ベンジル塩又は塩化ベンジル塩)、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加硫酸エステル塩、高級アルコール燐酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加燐酸エステル塩、ベタイン、高級アルコールエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル等が挙げられる。
イオン導電剤の含有量は、弾性材料100質量部に対して、0.1質量部以上5.0質量部以下が好ましく、0.5質量部以上3.0質量部以下がより好ましい。
【0081】
その他の添加剤としては、例えば、軟化剤、可塑剤、硬化剤、加硫剤、加硫促進剤、酸化防止剤、界面活性剤、カップリング剤、充填剤(シリカ、炭酸カルシウム等)などの、弾性材料に添加され得る公知の材料が挙げられる。
【0082】
-弾性層の形成-
弾性層の形成方法は、特に制限はなく、公知の方法が用いられる。
例えば、弾性材料及び必要に応じて用いるその他の成分を含む組成物を調製し、この組成物を円筒形状の押出成形する方法、巨大な弾性体から、円筒形状に切り出す方法、溶解可能な溶媒に溶かし塗工する方法などが挙げられる。なお、円筒状の弾性体が得られた後、必要に応じて、更に形状を整えてもよいし、表面を研磨するなどの後処理を行ってもよい。
【0083】
・表面層
表面層は、例えば、高分子材料を含有するフィルム又はシートであってよい。
高分子材料としては、先述の弾性層にて挙げたゴム材料及び熱可塑性エラストマーが挙げられる。
【0084】
表面層は、ポリウレタンとフッ素含有樹脂粒子とを含有することが好ましい。
ポリウレタン(先述の弾性層におけるポリウレタン径熱可塑性エラストマーを指す)は、一般的に、ポリイソシアネートとポリオールとを重合して合成される。ポリウレタンはハードセグメントとソフトセグメントとを有していることが好ましい。
【0085】
フッ素含有樹脂粒子としては、例えば、4フッ化エチレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、6フッ化プロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、2フッ化2塩化エチレン樹脂、及びこれらの共重合体のいずれかからなる粒子の1種又は2種以上が好ましい。これらの中でも、フッ素含有樹脂粒子としては、4フッ化エチレン樹脂粒子(例えばポリテトラフルオロエチレン樹脂粒子)が好ましい。
【0086】
フッ素含有樹脂粒子の平均一次粒径は、10nm以上500nm以下が好ましく、50nm以上300nm以下がより好ましく、80nm以上200nm以下が更に好ましい。
【0087】
表面層は、酸化防止剤、架橋剤、難燃剤、着色剤、界面活性剤、分散剤、フィラー等の添加剤を含んでいてもよい。
【0088】
表面層の平均厚みは、二次転写ベルトの耐久性の観点から、0.1μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましく、1μm以上が更に好ましく、二次転写ベルトの押し込み弾性率B及び引張弾性率Cを好適な範囲とする観点から、50μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、10μm以下が更に好ましい。
【0089】
(二次転写ベルトの膜厚)
二次転写体ベルト全体の厚みは、ベルトの機械的強度の観点から、10μm以上であることが好ましく、50μm以上550μm以下であることが好ましく、80μm以上460μm以下であることがより好ましい。
二次転写体ベルトが例えば基材層を含む積層体である場合、基材層の厚みは、製造適性の観点、及び放電を抑制する観点から、10μm以上150μm以下であることが好ましく、50μm以上140μm以下であることがより好ましい。
二次転写体ベルトが例えば弾性層を含む積層体である場合、弾性層の厚みは、50μm以上350μm以下であることが好ましく、50μm以上320μm以下であることがより好ましい。上記弾性層の厚みが上記範囲内であると、中間転写ベルトと接触した際にも接触圧が小さく抑えられやすいため、フィルミング現象が発生しにくくなる。
なお、二次転写ベルトにおける各層の膜厚の測定は、中間転写ベルトの膜厚測定の方法と同様の手法が適用できる。
【0090】
[画像形成装置]
以下、本実施形態に係る転写装置を備える画像形成装置について説明する。
【0091】
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体を有し、前記像保持体の表面にトナー像を形成するトナー像形成装置と、前記像保持体の表面に形成された前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写装置と、を備える。そして、前記転写装置は、上記本実施形態に係る転写装置が適用される。
【0092】
図2は、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
画像形成装置100は、例えば、図2に示すように、いわゆるタンデム方式であり、それぞれ電子写真感光体からなる4つの像保持体101a~101dの周囲に、その回転方向に沿って順次、像保持体101a~101dの表面を帯電させる帯電装置102a~102d、帯電された像保持体101a~101dの表面を露光し、静電潜像を形成する露光装置114a~114d(静電潜像形成装置の一例)、トナーを含む現像剤を収容し、像保持体101a~101dの表面に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置103a~103d、像保持体101a~101d上のトナー像を中間転写ベルト107に転写する一次転写装置(一次転写ロール)105a~105d、中間転写ベルト107の外周面に接触して配置され、中間転写ベルト107の外周面に転写された前記トナー像を記録媒体(用紙K)の表面に一括転写(二次転写)する二次転写ベルト10を有する二次転写装置109、像保持体クリーニング装置104a~104dが配置されている。
尚、転写後の像保持体101a~101dの表面に残留している残留電位を除去するために除電器を備えていてもよい。
【0093】
また、像保持体101a~101d上のトナー像が転写される中間転写ベルト107が、支持ロール106a~106d、駆動ロール111および対向ロール108に支持され、ベルト支持装置107bを形成している。これらの支持ロール106a~106d、駆動ロール111および対向ロール108により、中間転写ベルト107は、各像保持体101a~101dの表面に接触しながら各像保持体101a~101dと一次転写装置105a~105dとで挟まれる領域を矢印Aの方向に移動し得る。一次転写装置105a~105dが中間転写ベルト107を介して像保持体101a~101dに接触する部位が一次転写部となり、像保持体101a~101dと一次転写装置105a~105dとの接触部には一次転写電圧が印加される。
【0094】
また、一次転写装置105a~105dよりも、中間転写ベルト107の回転方向(矢印A)下流側において、中間転写ベルト107の外周面には二次転写装置109(本実施形態に係る二次転写装置109)が配置されている。そして、二次転写装置109の二次転写ロール12と対向するように、二次転写ベルト10及び中間転写ベルト107を介して、対向ロール108が中間転写ベルト107の内周面に接触して配置されている。
二次転写装置109(その二次転写ロール12)が中間転写ベルト107および二次転写ベルト116を介して対向ロール108に接触する部位が二次転写部となり、二次転写ベルト10を介した二次転写ロール12と対向ロール108との接触部には二次転写電圧が印加される。
二次転写装置109は、二次転写ロール12(背面ロール)と、中間転写ベルト107のトナー像保持面側(つまり中間転写ベルト107の外周面側)に配置され、前記中間転写ベルトの外周面に転写された前記トナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写ベルト10と、を備えて構成されている。
そして、転写後の中間転写ベルト107の外周面と接触するように、中間転写ベルトクリーニング装置112,113が配置されている。
【0095】
また、二次転写部を通過し、用紙等の記録媒体115に転写されたトナー像を定着するための定着装置110が設けられている。
【0096】
(転写装置)
ここで、例えば、中間転写ベルト107と、一次転写装置105a~105dと、二次転写ベルトを有する二次転写装置109と、その他、中間転写ベルトクリーニング装置112,113と、対向ロール108等を含むロール群と、を有するユニットが本実施形態に係る転写装置に相当する。
【0097】
中間転写ベルト107は、導電性を付与したポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ゴム等のベルト状のもの(中間転写ベルト)が使用される。
【0098】
対向ロール108は、二次転写ロール12の対向電極を形成する。対向ロール108の層構造は、単層又は多層のいずれでもよい。例えば単層構造の場合は、シリコーンゴム、ウレタンゴム、またはEPDM等にカーボンブラック等の導電性粒子が適量配合されたロールで構成される。二層構造の場合は、上記のゴム材料で構成される弾性層の外周面を高抵抗層で被覆したロールから構成される。
なお、対向ロール108と二次転写ロール12のシャフトとには、通常1kV以上6kV以下の電圧が印加される。対向ロール108のシャフトへの電圧印加に代えて、対向ロール108に接触させた電気良導性の電極部材と二次転写ロール12とに電圧を印加してもよい。上記電極部材としては、金属ロール、導電性ゴムロール、導電性ブラシ、金属プレート、または導電性樹脂プレート等が挙げられる。
【0099】
中間転写ベルトクリーニング装置112,113としては、クリーニングブレードの他、ブラシクリーニング、またはロールクリーニング等が用いられる、これらの中でもクリーニングブレードを用いることが望ましい。また、クリーニングブレードの材質としてはウレタンゴム、ネオプレンゴム、またはシリコーンゴム等が挙げられる。
【0100】
以下、本実施形態に係る画像形成装置100のその他要素について、説明する。
【0101】
(像保持体)
像保持体101a~101dとしては、公知の電子写真感光体が広く適用される。電子写真感光体としては、感光層が無機材料で構成される無機感光体や、感光層が有機材料で構成される有機感光体などが用いられる。有機感光体においては、露光により電荷を発生する電荷発生層と、電荷を輸送する電荷輸送層を積層する機能分離型有機感光体や、電荷を発生する機能と電荷を輸送する機能を果たす単層型有機感光体が好適に用いられる。また、無機感光体においては、感光層がアモルファスシリコンにより構成されているものが、好適に用いられる。
像保持体101a~101dの形状には特に限定はなく、例えば、円筒ドラム状、シート状またはプレート状等、公知の形状が採用される。
【0102】
(帯電装置)
帯電装置102a~102dとしては、特に制限はなく、例えば、導電性(ここで、帯電装置における「導電性」とは例えば体積抵抗率が10Ω・cm未満を意味する。)または半導電性(ここで、帯電装置における「半導電性」とは例えば体積抵抗率が10乃至1013Ωcmを意味する。)のローラ、ブラシ、フィルム、またはゴムブレード等を用いた接触型帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器など、公知の帯電器が広く適用される。これらの中でも接触型帯電器が望ましい。
帯電装置102a~102dは、像保持体101a~101dに対し、通常、直流電流を印加するが、交流電流を更に重畳させて印加してもよい。
【0103】
(露光装置)
露光装置114a~114dとしては、特に制限はなく、例えば、像保持体101a~101dの表面に、半導体レーザー光、LED(Light Emitting Diode、発光ダイオード)光、若しくは液晶シャッタ光等の光源、又はこれらの光源からポリゴンミラーを介して定められた像様に露光し得る光学系機器など、公知の露光装置が広く適用される。
【0104】
(現像装置)
現像装置103a~103dとしては、目的に応じて選択され、例えば、一成分系現像剤または二成分系現像剤をブラシ、またはローラ等を用い接触又は非接触させて現像する公知の現像器などが挙げられる。
【0105】
本実施形態の画像形成装置100に用いるトナー(現像剤)は特に限定されず、例えば、結着樹脂と着色剤を含んで構成される。
【0106】
結着樹脂としては、スチレン類、モノオレフィン類、ビニルエステル類、α-メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、ビニルエーテル類、またはビニルケトン類等の単独重合体および共重合体が例示され、特に代表的な結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン-アクリル酸アルキル共重合体、スチレン-メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、またはポリプロピレン等が挙げられる。更に、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、またはパラフィンワックス等も挙げられる。
【0107】
着色剤としては、マグネタイト、フェライト等の磁性粉、カーボンブラック、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・ブルー15:1、またはC.I.ピグメント・ブルー15:3等が代表的なものとして挙げられる。
【0108】
トナーには、帯電制御剤、離型剤、他の無機粒子等の公知の添加剤を内添加処理や外添加処理してもよい。
【0109】
離型剤としては、低分子ポリエチレン、低分子ポリプロピレン、フィッシャートロプシュワックス、モンタンワックス、カルナバワックス、ライスワックス、またはキャンデリラワックス等が代表的なものとして挙げられる。
【0110】
帯電制御剤としては、公知のものが使用されるが、アゾ系金属錯化合物、サリチル酸の金属錯化合物、または極性基を含有するレジンタイプ等の帯電制御剤が用いられる。
【0111】
他の無機粒子としては、粉体流動性、帯電制御等の目的で、平均1次粒径が40nm以下の小径無機粒子を用い、更に、付着力低減の為、それより大径の無機又は有機粒子を併用してもよい。これらの他の無機粒子は公知のものが使用される。
また、小径無機粒子については表面処理することにより、分散性が高くなり、粉体流動性をあげる効果が大きくなるため有効である。
【0112】
トナーの製造方法としては、高い形状制御性を得られることから、乳化重合凝集法や溶解懸濁法等などの重合法が望ましく用いられる。また、これらの方法で得られたトナーをコアにして、更に凝集粒子を付着、加熱融合してコアシェル構造をもたせる製造方法を行ってもよい。
【0113】
なお、外添剤を添加する場合、トナーおよび外添剤をヘンシェルミキサー又はVブレンダー等で混合することによって製造し得る。また、トナーを湿式にて製造する場合は、湿式にて外添してもよい。
【0114】
(一次転写装置)
一次転写装置105a~105dは、転写ロールで構成され、単層又は多層のロールのいずれでもよい。例えば、単層構造の場合は、発泡または無発泡のシリコーンゴム、ウレタンゴム、またはEPDM等にカーボンブラック等の導電性粒子が適量配合されたロールで構成される。
【0115】
(像保持体クリーニング装置)
像保持体クリーニング装置104a~104dは、一次転写工程後の像保持体101a~101dの表面に付着する残存トナーを除去するためのものであり、クリーニングブレードの他、ブラシクリーニング、またはロールクリーニング等が用いられる。これらの中でもクリーニングブレードを用いることが望ましい。また、クリーニングブレードの材質としてはウレタンゴム、ネオプレンゴム、またはシリコーンゴム等が挙げられる。
【0116】
(定着装置)
定着装置110としては、例えば、熱ローラ定着器、加圧ローラ定着器、またはフラッシュ定着器など公知の定着器が広く適用される。
【0117】
(画像形成プロセス)
この画像形成装置100で画像形成を行う際には、像保持体101aが矢印Cの方向に回転するとともに、その表面が帯電装置102aによって帯電された後、レーザー光等の露光装置114aにより第1色目の静電潜像が形成される。像保持体101aの表面に形成された静電潜像はその色に対応するトナーを含む現像剤を収容した現像装置103aにより、トナーで現像(顕像化)されてトナー像が形成される。なお、現像装置103a~103dには、各色の静電潜像に対応するトナー(例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)がそれぞれ収容されている。
【0118】
像保持体101a上に形成されたトナー像は、一次転写部を通過する際に、一次転写装置105aによって中間転写ベルト107上に静電的に転写(一次転写)される。以降、第1色目のトナー像を保持した中間転写ベルト107上に、一次転写装置105b~105dによって、第2色目、第3色目、第4色目のトナー像が順次重ね合わせられるよう一次転写され、最終的に多色の多重トナー像が得られる。
【0119】
中間転写ベルト107上に形成された多重トナー像は、二次転写部を通過する際に、記録媒体115に静電的に一括転写される。トナー像が転写された記録媒体115は、定着装置110に搬送され、加熱や加圧等により定着処理された後、機外に排出される。
【0120】
一次転写後の像保持体101a~101dは、それぞれ像保持体クリーニング装置104a~104dにより残留トナーが除去される。一方、二次転写後の中間転写ベルト107は、中間転写ベルトクリーニング装置112,113により残留トナーが除去され、次の画像形成プロセスに備える。
【0121】
上述した実施形態においては、像保持体が複数個で構成される所謂タンデム方式の画像形成装置を説明したが、像保持体が1個で、色数分だけ中間転写ベルトが回転・作像プロセスを行う所謂複数サイクル方式(例えば4サイクル方式等)の画像形成装置であっても良い。
【実施例0122】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」はすべて質量基準である。
【0123】
<実施例1>
(中間転写ベルトの作製)
3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と4,4’-ジアミノジフェニルエーテルとの重合体からなるポリアミック酸をN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に溶解したPI前駆体溶液を準備した。PI前駆体溶液は、ポリアミック酸のイミド化後のポリイミド樹脂の固形分率が18質量%の溶液とした。
次に、PI前駆体溶液に、ポリアミック酸の固形分100質量部に対し、カーボンブラック(FW200:オリオンエンジニアドカーボン社製、平均粒径=13nm)を23質量部になるよう添加し、混合・攪拌することにより、カーボンブラック分散PI前駆体溶液を調製した。
次に、アルミニウム製の円筒体(φ366)の外面に円筒体を回転させながら、円筒体外面にディスペンサーを介して、500mmの幅で、カーボンブラック分散PI前駆体溶液を吐出した。
その後、円筒体を水平のまま、140℃で30分間加熱乾燥させ、最高温度が320℃となるように120分加熱し、厚さ80μmのベルト本体(つまり、ポリイミド樹脂層の単層体)を363mmの幅にカットした。
【0124】
(一次転写ロールの作製)
-弾性層の形成-
・弾性発泡体として、EP70((株)イノアックコーポレーション製)を用い、これを外径26mm且つ内径8mmの円筒形状に切り出し、円筒状の弾性発泡体を得た。
【0125】
-導電性被覆層の形成-
カーボンブラックが36質量%含有され、且つ、分散された水分散体と、アクリル系エマルジョン(日本ゼオン(株)製、商品名「Nipol LX852」)と、を質量比1:1にて混合した処理液に、上記の方法で得られた弾性発泡体を、20℃で10分間浸漬した。その後、処理液が付着した弾性発泡体を、100℃に設定されたキュア炉中で60分間加熱して乾燥し、水分を除去すると共にアクリル樹脂を架橋させた。架橋により硬化したアクリル樹脂によって、弾性発泡体の露出面に、カーボンブラックを含む導電性被覆層を形成した。以上のようにして、弾性発泡体と、弾性発泡体の露出面を被覆する導電性被覆層と、から構成される弾性層を得た。
【0126】
次いで、得られた弾性層に、表面に接着剤を付与した導電性支持部材(SUS製、直径8mm)を差し込み、弾性層表面を研磨することで、外径18.7mmの一次転写ロール部材を得た。
【0127】
(二次転写ベルトの作製)
-基材層の形成-
二次転写ベルトの基材層用塗布液として、カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液の調製を次のように行った。ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)とp-フェニレンジアミン(PDA)を含むポリアミド酸N-メチル-2-ピロリドン(NMP)溶液(ユニチカ社製UイミドKX/固形分濃度20質量%)中に導電剤であるカーボンブラック(SPECIAL Black 4、エボニックデグサジャパン社製)を固形分質量比で8質量%投入し、ジェトミル分散機(ジーナス社製:GeanusPY)で分散処理(200N/mm、5パス)を行った。得られたカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を、ステンレス製20μmメッシュに通過させて、異物及びカーボンブラック凝集物を取り除いた。更に、攪拌しながら真空脱泡を15分間行い、最終的な溶液を調製し二次転写ベルトの基材層用塗布液とした。
外径φ40mmの円筒体を用意した。
円筒体を回転させながら、円筒体の外面にらせん塗布にて上記二次転写ベルトの基材層用塗布液を塗布した。その後、円筒体を水平としたまま、90℃で30分間乾燥させた後、320℃で2時間、塗膜を加熱し、イミド化反応(焼成)を行い、長さ350mm、膜厚60μmの基材層を形成した。
【0128】
-弾性層(A)の形成-
旭化成社製スチレン系熱可塑性エラストマー(タフテックH1221)100質量部に対し、導電剤であるカーボンブラック(Special Black 4 Degussa製)30質量部とを2軸押し出し機で混練り後、押し出し成形し、チューブ(外径50.mm、内径40.0mm)を作製した。得られたチューブの内部に基材層を導電性接着剤を用いて貼り合わせた後に、表面を円筒研磨機でトラバース研磨、ついで仕上げ研磨として鏡面研磨を施し、表面層の上に厚さ240μmの弾性層を形成した。
【0129】
-表面層の形成-
PTFE(フッ素含有樹脂粒子、polytetrafluoroethylene)含有ウレタン樹脂(ボンデライトT862A、ヘンケルジャパン社)に硬化剤(ロックタイトWH-1、ヘンケルジャパン社)を1質量%添加し、水で希釈してPTFE量を10質量%に調製し、これを表面層塗布液とした。
基材Aの中心軸を水平方向にして基材Aを回転させながら、基材Aの外周面に塗布液を散布した。次いで、温度150℃且つ35分間の熱風乾燥を行って、弾性層表面に表面層を形成した。表面層の平均厚は3μmとし、二次転写ベルトを得た。
【0130】
<実施例2>
実施例1に記載の二次転写ベルトの作製の際に基材層を下記の仕様の基材層(B)に変更するほかは同じ製法とし、転写装置を得た。
【0131】
―基材層(B)の形成―
酸性カーボンブラックとして、Printex150T(pH4で有機揮発分10%、DBP吸油量150ml/100g、Degussa社製)を用い、マトリックス樹脂としてのポリエステル樹脂として、非結晶性ポリエステル樹脂であるPETG6763(イーストマンケミカル(株)製)を用い、前記カーボンブラックを窒素雰囲気中で、80℃で60分間加熱して付着水分を除去した後で、前記ポリエステル樹脂100質量部あたり、酸性カーボンブラック35質量部、滑剤として、リケスターEW-90(理研ビタミン(株))を0.5質量部、添加して、加圧ニーダーを用いて、150℃の設定温度で、20分間混練・分散した。
さらに、2本ロールを用いて、シート形状にし、裁断して、粉砕機で粉状として、酸性カーボンブラックを微分散させた非結晶性ポリエステル樹脂組成物を製造した。
この樹脂組成物を1軸押出機を用い240℃の加熱温度で、チューブ形状に押出成形し、厚み0.13mmで、幅350mm、内径40mmの無端状の基材層を形成した。
【0132】
<実施例3>
実施例1に記載の二次転写ベルトの作製の際に弾性層を下記の仕様の弾性層(B)に変更するほかは同じ製法とし、転写装置を得た。
【0133】
-弾性層(B)の作製-
ポリウレタン系熱可塑性エラストマー(BASFジャパン社製、エラストラン(登録商標)ET870-11V)100質量部と、導電剤であるカーボンブラック(Special Black 4 Degussa製)30質量部とを2軸押し出し機で混練り後、押し出し成形し、チューブ(外径50.0mm、内径40.0mm)を作製した。
得られたチューブの内部に基材層を導電性接着剤を用いて貼り合わせた後に、表面を円筒研磨機でトラバース研磨、ついで仕上げ研磨として鏡面研磨を施し、二次転写ベルトを得た。
【0134】
<実施例4>
実施例2に記載の二次転写ベルトの作製の際に弾性層を先述の弾性層(B)に変更するほかは同じ製法とし、転写装置を得た。
【0135】
<比較例1>
基材層を用いずに下記に記載の弾性層(C)を備える二次転写ベルトとした以外は、実施例1と同様の仕様として(つまり、弾性層(C)の上に実施例1と同様の表面層を形成する等して)転写装置を得た。
【0136】
-弾性層(C)の作製-
下記に示す材料を、2軸混練機を用いて混練した。得られた混練物をメチルイソブチルケトンに溶解し、35%の溶液として、弾性層用塗工液を得た。
【0137】
・アクリルゴム(ニポールAR12、日本ゼオン社製):100部
・ステアリン酸(ビーズステアリン酸つばき、日油株式会社):1部
・赤リン(ノーバエクセル140F、燐化学工業社製):10部
・水酸化アルミニウム(ハイジライトH42M、昭和電工社製):60部
・ヘキサメチレンジアミンカーバメイト(Diak.No1、デュポン ダウ エラストマージャパン社製):0.6部
・架橋促進剤(VULCOFACACT55、70% 1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7と二塩基酸との塩、及び、30% アモルファスシリカの混合物、Safic alca社製):1部
・過塩素酸テトラブチルアンモニウム(QAP-01、日本カーリット社製):0.3部
【0138】
外径40mmの円筒状金型を回転させながら、上記の弾性層用塗工液をノズルから吐出させて、らせん状に弾性層用塗工液を400mmの幅で塗布した。塗布量は、弾性層の膜厚が500μmとなるような条件とし、170℃で3時間加熱し、厚さ500μmの弾性層を形成した。得られた弾性層の表面を研磨し、幅355mmになるように切断することで、内径40mm、厚さ450μm、幅355mmの弾性層(C)を形成した。
【0139】
<比較例2>
弾性層<C>と表面層の膜厚を表1に記載の値に変更する他は比較例1と同様の製法で転写装置を得た。
【0140】
<比較例3>
実施例1に記載の二次転写ベルトに対し、弾性層と表面層を用いずに、基材層の膜厚を表1に記載の値に変更する他は実施例1と同様の製法で転写装置を得た。
【0141】
<比較例4>
比較例3に記載の中間転写ベルトを下記に記載の中間転写ベルト<B>とした他は、比較例3と同様の製法で転写装置を得た。
【0142】
-中間転写ベルト<B>の作製-
25℃での粘度が30Pa・sのポリアミドイミド溶液(日立化成社製、HPC-9000、溶媒:N-メチルピロリドン)に、導電剤であるカーボンブラック(商品名:スペシャルブラック4、デグザヒュルス社製)を固形分質量比で30質量部混合し、次いで対向衝突型分散機により分散し、これに界面活性剤(商品名:LS009、楠本化成社製)を5000ppm加えてポリアミドイミド塗布液を得た。
次に、アルミニウム製の円筒体(φ366)の外面に円筒体を回転させながら、円筒体外面にディスペンサーを介して、500mmの幅で、ポリアミドイミド塗布液を吐出した。その後、円筒体を水平のまま、170℃で15分間加熱乾燥させ、次いで、200℃で80分焼成し、厚さ80μmのベルト本体(つまり、ポリアミドイミドの単層体)を363mmの幅にカットした。
【0143】
<比較例5>
実施例1に記載の中間転写ベルトの作製の際に、厚さ80μmの基材層(つまり、ポリイミドの単層体)の上に比較例1に記載の弾性層(C)で作製した弾性層用塗工液を用い、同一の製法で弾性層の膜厚が120μmになるように変更した他は、実施例1と同様の製法とし、転写装置を得た。
【0144】
<実施例5>
実施例1に記載の中間転写ベルトの作製の際に、カーボンブラック含有量を表に示す量に変更した他は、実施例1と同様の製法とし、転写装置を得た。
【0145】
<実施例6>
中間転写ベルトにおけるカーボンブラックの含有量を表1に示す量とした以外は比較例4と同様の手法により中間転写ベルトを得た。これを、実施例4に記載の二次転写ベルトと組み合わせることにより、転写装置を得た。
【0146】
<実施例7>
実施例1に記載の二次転写ベルトにおいて、表面層を備えない構成とした以外は、実施例1と同様の製法とし、転写装置を得た。
【0147】
<実施例8~実施例9>
実施例1に記載の二次転写ベルトにおいて、基材の膜厚を表1に記載の値に調整し、且つ、弾性層として比較例1に記載の弾性層<C>を用いた仕様とし、転写装置を得た。
【0148】
<実施例10>
実施例2に記載の二次転写ベルトにおいて、弾性層の膜厚を表1に記載の値に調整し、転写装置を得た。
【0149】
<実施例11>
実施例3に記載の二次転写ベルトにおいて、基材層と弾性層の膜厚を表1に記載の値に調整し、転写装置を得た。
【0150】
<実施例12>
実施例1に記載の二次転写ベルトにおいて、弾性層を下記に記載の弾性層<D>に変更した以外は実施例1と同様の製法とし、転写装置を得た。
【0151】
-弾性層<D>の作製-
下記に示す化合物を、2軸混練機を用いて混練した。得られた化合物をシクロヘキサノン中に溶解し35%の溶液として、弾性層用塗工液を得た。
【0152】
・アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR) (ニポールDN101(日本ゼオン製)):100部
・樹脂架橋剤(スミライトレジン PR-11078(住友ベークライト株式会社製):10部
・ステアリン酸(ビーズステアリン酸つばき、日油株式会社):1部
・水酸化アルミニウム(ハイジライトH42M、昭和電工社製):60部
【0153】
外径40mmの円筒状金型を回転させながら、弾性層用塗工液をノズルから吐出させて、らせん状に弾性層用塗工液を400mmの幅で塗布した。塗布量は、弾性層の膜厚が300μmとなるような条件とし、170℃で3時間加熱し、厚さ300μmの弾性層を形成した。得られた弾性層の表面を研磨し、幅355mmになるように切断することで、内径40mm、厚さ200μm、幅355mmの弾性層D)を形成した。
【0154】
<実施例13>
実施例2に記載の転写装置において、中間転写ベルトを実施例4に記載の中間転写ベルトに変更し、転写装置を得た。
【0155】
<評価>
〔画像形成装置の作製〕
各例の転写装置を、画像形成装置「富士フイルムビジネスイノベーション社製ApeosProC810」の改造機の、転写装置内に組み込み、各例の画像形成装置を得た。
【0156】
〔記録媒体の裏面汚れの評価〕
各例の画像形成装置に、A3普通紙でK100%ベタ画像の片面を10000枚通紙した後、10001枚目の出力紙の裏面汚れを目視で確認し、下記の基準で通紙裏面の汚れを評価した。結果を表2に示す。
G1:裏面に汚れが生じていない
G2:裏面に薄く汚れが確認できるが許容できる範囲内である
G3:裏面に筋状の画像欠陥が確認できる
G4:裏面に濃い筋状の画像欠陥が確認できる
【0157】
〔中間転写ベルトの破断耐久性の評価〕
各例の画像形成装置にて、中間転写ベルトにおけるベルト破断が発生するまでの稼働サイクル数の評価を行った。具体的に、中間転写ベルトが1周する回転数を1サイクルと数えたとき、破断が発生するまでのサイクル数を破断サイクル数とした。結果を表2に示す。
G1:1000kcycle以上
G2:500kcycle以上
G3:500kcycle未満
【0158】
〔2次転写ベルトの破断耐久性の評価〕
各例の画像形成装置に、A3普通紙でK100%ベタ画像の片面を400000枚通紙後、画像形成装置内の転写装置から二次転写ベルトを取り出し、各層における破断部、つまり、ひびの発生状況をマイクロスコープで観察し、下記の基準で評価した。結果を表2に示す。
G1:各層全域にひびが発生していない
G2:いずれか一層の一部に小さいひびが発生しているが許容できる範囲内である
G3:いずれか一の一部に大きなひびが発生しているが破断はしていない
G4:ベルトが破断している
【0159】
〔中間転写ベルトのクリーニング性の評価〕
各例の画像形成装置における電源仕様を、改造(2次転写部の給電ロールを評価機本体内蔵の電源から切り離して、外部電源(TRek社製 MODEL 610D)に接続し、給電ロールに外部から直接電圧を印加できるように改造)した。これにより、上記外部電源にてプリント時に給電ロールに印加される転写電圧を0kVに設定した。
A3普通紙でCyanベタ(濃度100%)画像を片面出力し、中間転写ベルト上にトナーがほぼ未転写の状態でブレードクリーニングし、クリニーニング後の中間転写ベルト上残トナーを透明なセロハンテープでテープ転写し、白紙に張り付けた。その残トナーを目視観察し、下記の基準で評価した。結果を表2に示す。
G1:トナーの残存なし
G2:トナーがわずかに残存している(許容レベル)
G3:トナーが明らかに残存している(許容レベルを超える)
【0160】
〔二次転写ベルトの耐圧性の評価〕
上記中間転写ベルトのクリーニング性の評価に用いた評価機を用いて、外部電源から10kVの電圧を7時間印加した後の二次転写ベルトの表面の観察を行うことで耐圧試験を実施した。下記の基準で、目視で評価した。結果を表2に示す。
G1:放電痕の発生なし
G2:放電痕はあるが貫通穴なし
G3:放電痕及び貫通穴あり
【0161】
【表1】
【0162】
【表2】
【0163】
表1~表2に示す通り、実施例の転写装置は、比較例の転写装置に比べて、通紙裏面の汚れが低減されることがわかった。また、実施例の転写装置は、中間転写ベルトの破断耐久性、二次転写ベルトの破断耐久性、中間転写ベルトのクリーニング性にも優れることがわかった。
【0164】
(((1))) 外周面にトナー像が転写される中間転写ベルトと、
像保持体の表面に形成されたトナー像を前記中間転写ベルトの外周面に一次転写する一次転写部材を有する一次転写装置と、
前記中間転写ベルトの外周面に接触して配置され、前記中間転写ベルトの外周面に転写された前記トナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写ベルトを有する二次転写装置と、
を備え、
前記中間転写ベルトは、押し込み弾性率Aが5000MPa以上であり、
前記二次転写ベルトは、押し込み弾性率Bが300MPa以下、且つ、引張弾性率Cが250MPa以上である、転写装置。
(((2))) 外周面にトナー像が転写される中間転写ベルトと、
像保持体の表面に形成されたトナー像を前記中間転写ベルトの外周面に一次転写する一次転写部材を有する一次転写装置と、
前記中間転写ベルトの外周面に接触して配置され、前記中間転写ベルトの外周面に転写された前記トナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写ベルトを有する二次転写装置と、
を備え、
前記二次転写ベルトは、引張弾性率Cが250MPa以上であり、
前記中間転写ベルトにおける押し込み弾性率A(MPa)の方が前記二次転写ベルトにおける押し込み弾性率B(MPa)よりも押し込み弾性率が大きく、且つ、両者の差(A-B)が5000MPa以上7500MPa以下である、転写装置。
(((3))) 前記中間転写ベルトは、前記押し込み弾性率Aが5000MPa以上6700MPa以下である、前記(((1)))又は(((2)))に記載の転写装置。
(((4))) 前記二次転写ベルトは、前記押し込み弾性率Bが10MPa以上300MPa以下である、前記(((1)))~(((3)))のいずれか1つに記載の転写装置。
(((5))) 前記二次転写ベルトは、前記押し込み弾性率Bが10MPa以上100MPa以下である、前記(((4)))に記載の転写装置。
(((6))) 前記二次転写ベルトは、前記引張弾性率Cが250MPa以上3000MPa以下である、前記(((1)))~(((5)))のいずれか1つに記載の転写装置。
(((7))) 前記中間転写ベルトは、前記トナー像が転写される外周面が、ポリイミドを含んで構成されている、前記(((1)))~(((6)))のいずれか1つに記載の転写装置。
(((8))) 前記二次転写ベルトは、前記中間転写ベルトの外周面に接触する面が、熱可塑性エラストマーを含んで構成されている、前記(((1)))~(((7)))のいずれか1つに記載の転写装置。
(((9))) 像保持体を有し、前記像保持体の表面にトナー像を形成するトナー像形成装置と、
前記像保持体の表面に形成された前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写装置であって、前記(((1)))~(((8)))のいずれか1項に記載の転写装置と、
を備える画像形成装置。
【0165】
(((1)))、(((7)))又は(((8)))に係る発明によれば、前記二次転写ベルトの押し込み弾性率Bが300MPa超え若しくは引張弾性率Cが250MPa未満である場合に比べ、繰り返し画像を形成した場合にも記録媒体の裏面の汚れが低減される転写装置が提供される。
(((2)))、(((7)))又は(((8)))に係る発明によれば、前記中間転写ベルトにおける押し込み弾性率A(MPa)と前記二次転写ベルトにおける押し込み弾性率B(MPa)との差(A-B)が5000MPa未満である場合に比べ、繰り返し画像を形成した場合にも記録媒体の裏面の汚れが低減される転写装置が提供される。
(((3)))に係る発明によれば、前記中間転写ベルトは、前記押し込み弾性率Aが5000MPa未満又は6700MPa超えである場合に比べ、繰り返し画像を形成した場合にも記録媒体の裏面の汚れが低減される転写装置が提供される。
(((4)))に係る発明によれば、前記二次転写ベルトは、前記押し込み弾性率Bが10MPa未満又は300MPa超えである場合に比べ、繰り返し画像を形成した場合にも記録媒体の裏面の汚れが低減される転写装置が提供される。
(((5)))に係る発明によれば、前記二次転写ベルトは、前記押し込み弾性率Bが10MPa未満又は100MPa超えである場合に比べ、繰り返し画像を形成した場合にも記録媒体の裏面の汚れが低減される転写装置が提供される。
(((6)))に係る発明によれば、前記二次転写ベルトは、前記引張弾性率Cが250MPa未満又は3000MPa超えである場合に比べ、繰り返し画像を形成した場合にも記録媒体の裏面の汚れが低減される転写装置が提供される。
(((9)))に係る発明によれば、前記転写装置において「前記二次転写ベルトの押し込み弾性率Bが300MPa超え若しくは引張弾性率Cが250MPa未満である場合」、又は、「前記中間転写ベルトにおける押し込み弾性率A(MPa)と前記二次転写ベルトにおける押し込み弾性率B(MPa)との差(A-B)が5000MPa未満である場合」場合に比べ、繰り返し画像を形成した場合にも記録媒体の裏面の汚れが低減される画像形成装置が提供される。
【符号の説明】
【0166】
10 二次転写ベルト
10A 突起部
12 二次転写ロール
14A~14F 支持ロール
14G 面出しロール
16 掻取治具
18 静電クリーナー
20,22 静電ブラシ
20A,22A 回収ローラ
20B,22B 掻取治具
101a、101b、101c、101d 像保持体
102a、102b、102c、102d 帯電装置
103a、103b、103c、103d 現像装置
104a、104b、104c、104d 像保持体クリーニング装置
105a、105b、105c、105d 一次転写装置
106a、106b、106c、106d 支持ロール
107 中間転写ベルト
107b 中間転写ベルト支持装置(ベルト支持装置)
108 対向ロール
109 二次転写装置
110 定着装置
111 駆動ロール
112 中間転写ベルトクリーニングブレード
113 中間転写ベルトクリーニングブラシ
114a、114b、114c、114d 露光装置
115 記録媒体
図1
図2