(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034960
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】基板乾燥装置、基板処理装置及び基板乾燥方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
H01L21/304 648G
H01L21/304 651B
H01L21/304 651L
H01L21/304 647A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139561
(22)【出願日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼北(埀野) 陽子
【テーマコード(参考)】
5F157
【Fターム(参考)】
5F157AA09
5F157AB02
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5F157DB32
5F157DB33
5F157DB34
5F157DB37
5F157DB51
(57)【要約】 (修正有)
【課題】基板のウォーターマークの発生を低減できる基板乾燥装置、基板処理装置及び基板乾燥方法を提供する。
【解決手段】乾燥装置(基板乾燥装置)300は、乾燥室31に搬入された基板Wを受け取る支持部32と、支持部32に支持された基板Wを回転させる駆動機構33と、回転する基板Wの被処理面上に処理液を供給する供給部34と、基板Wの被処理面に対向する対向面35aを有する遮蔽板35と、遮蔽板35を、基板Wに接離する方向に移動させる移動機構36と、対向面35aと基板Wとの間の空間に酸素を含まないガスを供給することにより、基板Wの被処理面上の雰囲気中の酸素を排除する給気部37と、基板Wの被処理面上に供給された処理液の膜厚を測定する測定部38と、測定部38により測定された膜厚と、予め設定された膜厚に適した対向面35aと被処理面との距離(ギャップ)を示す情報に基づいて、ギャップを調整する調整部42と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板が搬入される乾燥室と、
前記乾燥室に搬入された前記基板を受け取る支持部と、
前記支持部に支持された前記基板を回転させる駆動機構と、
回転する前記基板の被処理面上に、処理液を供給する供給部と、
前記被処理面に対向する対向面を有する遮蔽板と、
前記遮蔽板を、前記基板に接離する方向に移動させる移動機構と、
前記対向面と前記基板との間の空間に酸素を含まないガスを供給することにより、前記被処理面上の雰囲気中の酸素を排除する給気部と、
前記被処理面上に供給された前記処理液の膜厚を測定する測定部と、
前記測定部により測定された前記膜厚と、予め設定された前記膜厚に適した前記対向面と前記被処理面との距離を示す情報に基づいて、前記距離を調整する調整部と、
を有する基板乾燥装置。
【請求項2】
前記測定部は、前記遮蔽板に設けられていることを特徴とする請求項1記載の基板乾燥装置。
【請求項3】
前記測定部は、前記被処理面上の前記処理液の複数個所の前記膜厚を測定可能に設けられている請求項1記載の基板乾燥装置。
【請求項4】
前記調整部は、前記複数個所の膜厚のうち、最大の膜厚を基準として、前記距離を調整する請求項3記載の基板乾燥装置。
【請求項5】
前記調整部は、前記処理液の予め設定された前記膜厚に適した前記対向面と前記基板の前記被処理面との距離を、前記移動機構によって前記遮蔽板を昇降させることにより調整する請求項1記載の基板乾燥装置。
【請求項6】
前記基板を回転させながら基板処理液を供給することにより処理する処理装置と、
前記処理装置により処理済の前記基板を回転させながら洗浄液を供給することにより洗浄する洗浄装置と、
請求項1乃至5のいずれかに記載の基板乾燥装置と、
前記洗浄装置において洗浄された前記基板を、前記洗浄装置で供給された前記洗浄液による液膜が形成された状態で搬出し、前記基板乾燥装置に搬入する搬送装置と、
を有することを特徴とする基板処理装置。
【請求項7】
乾燥室内において回転する基板の被処理面上に、供給部が処理液を供給する処理液供給工程と、
測定部が、前記被処理面上に供給された前記処理液の膜厚を測定する膜厚測定工程と、
前記被処理面に対向する対向面を有する遮蔽板を、移動機構が前記基板に接近する方向に移動させる接近工程と、
給気部が、前記対向面と前記基板との間の空間に酸素を含まないガスを供給することにより、前記被処理面上の雰囲気中の酸素を排除する給気工程と、
前記測定部により測定された前記膜厚と、予め設定された前記膜厚に適した前記対向面と前記被処理面との距離を示す情報に基づいて、調整部が前記距離を調整する調整工程と、
前記処理液を、前記基板の回転による遠心力により排出させる乾燥工程と、
を含む基板乾燥方法。
【請求項8】
前記処理液供給工程は、
前記洗浄液による液膜が形成され、支持部に支持された前記基板を駆動機構により回転させながら、前記供給部における第1の揮発性溶剤供給部からの第1の揮発性溶剤の供給により、前記洗浄液による前記液膜を前記第1の揮発性溶剤へ置換する第1の揮発性溶剤供給工程と、
前記供給部における第2の揮発性溶剤供給部から、撥水化膜を形成する撥水化剤を含み、気化する際の表面張力が前記第1の揮発性溶剤よりも小さい第2の揮発性溶剤の供給により、前記第1の揮発性溶剤の液膜を前記第2の揮発性溶剤に置換するとともに、前記基板に前記撥水化膜を形成させる撥水化膜形成工程と、
を含む請求項7記載の基板乾燥方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板乾燥装置、基板処理装置及び基板乾燥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体や液晶パネルなどを製造する製造工程では、ウェーハや液晶基板などの基板の被処理面に処理液を供給して被処理面を処理し、処理後、被処理面を洗浄、乾燥させる基板処理装置が用いられる。
【0003】
この基板処理装置の乾燥工程においては、パターン同士の間隔や構造、処理液の表面張力などに起因して、例えばメモリセルやゲート周りなどのパターンが倒壊して閉塞することがある。特に、近年の半導体の高集積化や高容量化に伴う微細化に伴って、配線幅や開口幅に対する深さの比率であるアスペクト比が高くなっているため、パターン倒壊は発生しやすくなっている。
【0004】
このようなパターン倒壊を抑制するために、DIW(超純水)などのリンス液によるリンス処理後に、リンス液をIPA(2-プロパノール:イソプロピルアルコール)を用いる基板乾燥方法が提案されている。この基板乾燥方法は、基板表面上のDIW(超純水)を、IPAに置換した後、基板の高速回転により発生する遠心力によって、IPAを基板から振り切って排除することにより乾燥するものである。IPAはDIWよりも表面張力が小さいため、基板表面から離脱する際に、表面張力によるパターン倒壊の可能性を低減できる。
【0005】
このような乾燥工程においては、基板の被処理面上の空間に、純水とともに酸素を含む雰囲気が存在していると、リンス液がIPAに置換されるまでの間に、純水、酸素及び基板の被処理面上のシリコンが反応して、ウォーターマークが発生する。これは、純水、酸素、シリコンの3つの反応に起因するものであるため、このうちの酸素を基板の被処理面上の雰囲気から排除できれば、ウォーターマークの発生を抑制できることになる。
【0006】
そこで、基板と同じ大きさもしくは少し大きな円板の遮蔽板を基板に近接させ、基板と遮蔽板との間に窒素ガスを供給することにより、基板と遮蔽板との間にある酸素雰囲気を排出させることが行われている。このとき、遮蔽板の中心にあるノズルからIPAが基板に供給される。IPAの供給が終わると、基板の回転を高速回転させて、基板の被処理面上のIPAを振り切って、基板を乾燥させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のように、遮蔽板は、基板との間の距離(ギャップ)が狭くなるように、遮蔽板を基板に近接させている。しかし、基板の回転速度(単位時間当たりの回転数)が低い場合には、遮蔽板のノズルから基板の被処理面上に供給される処理液の液膜が厚くなるため、基板の被処理面上の処理液が、遮蔽板の基板と対向する面(対向面)に付着することがある。また、処理液の揺れや撥ねによって、対向面に付着する場合もある。
【0009】
すると、基板の被処理面上の処理液を、基板の回転で振り切って乾燥させても、遮蔽板の対向面に付着した処理液が、基板に再付着してしまう。このように再付着した処理液は、ウォーターマークの原因になる。これに対処するため、遮蔽板を基板から離隔させてギャップを拡大させると、空間が広くなってしまうので、窒素ガスの供給によっても酸素を十分に排出できず、ウォーターマークの原因になる。しかし、基板に対する遮蔽板の位置を、酸素の排出に適しているとともに、処理液の付着が生じない間隔となるように調整することは困難であった。
【0010】
本発明の実施形態は、基板のウォーターマークの発生を低減できる基板乾燥装置、基板処理装置及び基板乾燥方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施形態の基板乾燥装置は、基板が搬入される乾燥室と、前記乾燥室に搬入された前記基板を受け取る支持部と、前記支持部に支持された前記基板を回転させる駆動機構と、回転する前記基板の被処理面上に、処理液を供給する供給部と、前記被処理面に対向する対向面を有する遮蔽板と、前記遮蔽板を、前記基板に接離する方向に移動させる移動機構と、前記対向面と前記基板との間の空間に酸素を含まないガスを供給することにより、前記被処理面上の雰囲気中の酸素を排除する給気部と、前記被処理面上に供給された前記処理液の膜厚を測定する測定部と、前記測定部により測定された前記膜厚と、予め設定された前記膜厚に適した前記対向面と前記被処理面との距離を示す情報に基づいて、前記距離を調整する調整部と、を有する。
【0012】
本発明の実施形態の基板処理装置は、前記基板を回転させながら基板処理液を供給することにより処理する処理装置と、前記処理装置により処理済の前記基板を回転させながら前記洗浄液を供給することにより洗浄する洗浄装置と、請求項1乃至4のいずれかに記載の基板乾燥装置と、前記洗浄装置において洗浄された前記基板を、前記洗浄装置で供給された前記洗浄液による液膜が形成された状態で搬出し、前記基板乾燥装置に搬入する搬送装置と、を有する。
【0013】
本発明の実施形態の基板乾燥方法は、乾燥室内において回転する基板の被処理面上に、供給部が処理液を供給する処理液供給工程と、測定部が、前記被処理面上に供給された前記処理液の膜厚を測定する膜厚測定工程と、前記被処理面に対向する対向面を有する遮蔽板を、移動機構が前記基板に接近する方向に移動させる接近工程と、給気部が、前記対向面と前記基板との間の空間に酸素を含まないガスを供給することにより、前記被処理面上の雰囲気中の酸素を排除する給気工程と、前記測定部により測定された前記膜厚と、予め設定された前記膜厚に適した前記対向面と前記被処理面との距離を示す情報に基づいて、調整部が前記距離を調整する調整工程と、前記処理液を、前記基板の回転による遠心力により排出させる乾燥工程と、を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明の実施形態は、基板のウォーターマークの発生を低減できる基板乾燥装置、基板処理装置及び基板乾燥方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態の基板処理装置を示す簡略構成図である。
【
図2】
図1の基板処理装置の洗浄装置及び乾燥装置を示す構成図である。
【
図4】膜厚とギャップとの関係を示す説明図である。
【
図5】膜厚とギャップとウォーターマーク数の関係を示すグラフである。
【
図6】乾燥装置の基板搬入時(A)、第1の揮発性溶剤供給時(B)を示す内部構成図である。
【
図7】乾燥装置の第2の撥水性溶剤供給時及び膜厚測定時(A)、ギャップ調整時(B)を示す内部構成図である。
【
図8】乾燥装置の基板乾燥時を示す内部構成図である。
【
図9】実施形態の基板乾燥処理の手順を示すフローチャートである。
【
図10】第2の揮発性溶剤供給部の変形例を示す内部構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
[概要]
図1に示すように、本実施形態の基板処理装置1は、各種の処理を行う装置を収容した複数のチャンバ1aを備え、前工程でカセット(FOUP)1bに複数枚収容されて搬送されてきた基板Wに対して、各チャンバ1a内で1枚ずつ処理を行う枚葉処理の装置である。未処理の基板Wは、カセット1bから搬送ロボット1cによって1枚ずつ取り出され、バッファユニット1dに一時的に載置された後、以下に説明する各種装置により、各チャンバ1aへの搬送及び処理が行われる。
【0017】
基板処理装置1は、処理装置110、洗浄装置120、搬送装置200、乾燥装置300、制御装置400を含む。処理装置110は、例えば、回転する基板Wに、基板処理液(例えば、リン酸水溶液、フッ酸及び硝酸の混合液、酢酸、硫酸及び過酸化水素水の混合液(SPM:Sulfuric hydrogen Peroxide Mixture)等)を供給することによって、不要な膜を除去して回路パターンを残すエッチング装置である。洗浄装置120は、エッチング装置でエッチング処理された基板Wを、洗浄液C(
図2参照)により洗浄する。搬送装置200は、バッファユニット1dと各チャンバ1aとの間、各チャンバ1aの間で基板Wを搬送する。例えば、搬送装置200は、処理装置110において処理済の基板Wを洗浄装置120に搬送し、洗浄装置120において洗浄された基板Wを乾燥装置300に搬送する。乾燥装置(基板乾燥装置)300は、洗浄液Cにより洗浄された基板Wを回転させながら、遠心力によって洗浄液Cを排除することにより、乾燥処理を行う。制御装置400は、上記の各装置を制御する。
【0018】
なお、本実施形態により処理される基板Wは、例えば、半導体ウェーハである。以下、基板Wのパターン等が形成された面を被処理面とする。洗浄装置120における洗浄処理のための洗浄液C(
図2参照)としては、アルカリ洗浄液(APM)、超純水(DIW)を使用する。АPMは、アンモニア水と過酸化水素水を混合した薬液であり、残留有機物を除去するために使用する。DIWは、基板処理液によって処理された後に、基板Wの被処理面上に残留する基板処理液を洗い流すために使用する。また、DIWは、APM処理後、基板Wの被処理面上に残留するAPMを洗い流すために使用する。洗浄液Cによる洗浄後、乾燥装置300においては、処理液として揮発性溶剤を使用する。まず、乾燥装置300では、洗浄液Cを置換するために、処理液として第1の揮発性溶剤(IPA)を使用する。IPAは、表面張力がDIWよりも小さく、揮発性が高いため、DIWを置換して表面張力によるパターン倒壊を低減するために使用する。
【0019】
さらに、本実施形態においては、処理液として第2の揮発性溶剤を用いる。第2の揮発性溶剤は、第1の揮発性溶剤よりも、気化する際の表面張力が小さい溶剤である。また、第2の揮発性溶剤の気化の温度は、第1の揮発性溶剤よりも高い。このような第2の揮発性溶剤としては、PGMEA(プロピレングリコールモノエチルアセテート)を使用することができる。また、第2の揮発性溶剤は、撥水化剤を含むものを用いる。撥水化剤は、基板Wの被処理面の水酸基(-OH)を、官能基(例えば、-CH3、C2H5)へ置換して撥水化膜(Si-O-R(R:官能基))を形成可能な修飾剤である。例えば、撥水化剤としては、シランカップリング剤であるHMDS(ヘキサメチルジシラザン)を用いることができる。以下の説明での第2の揮発性溶剤の供給は、撥水化剤を含む第2の揮発性溶剤を供給する態様で行われる。
【0020】
PGMEAにHMDSを含めたものを用いる理由は、HMDSは水分と反応しやすいためである。つまり、HMDSは、空気中の水分と反応すると、基板Wの被処理面上での撥水効果を失う。このため、HMDSをPGMEAに混合することにより、空気中の水分と反応することを防いで、基板Wに供給することができる。なお、以下の説明では、第1の揮発性溶剤、第2の揮発性溶剤を区別しない場合には、単に処理液とする。
【0021】
[洗浄装置]
洗浄装置120は、
図2に示すように、内部で洗浄処理を行う容器である洗浄室11、基板Wを支持する支持部12、支持部12を回転させる回転機構13、飛散する洗浄液Cを基板Wの周囲から受けるカップ14、洗浄液Cを供給する供給部15を有する。供給部15は、洗浄液Cを滴下するノズル15a、ノズル15aを移動させる移動機構15bが設けられている。
【0022】
支持部12に支持され、回転機構13により回転する基板Wの被処理面に、ノズル15aから洗浄液Cを供給することにより、洗浄処理が行われる。洗浄処理は、処理装置110でエッチング処理された基板Wの被処理面にAPMを供給してAPM洗浄を行い、APM洗浄後に、DIWによる純水リンス処理を行うことにより、基板Wの被処理面に残留していたAPMを純水により洗い流す。これにより、基板Wの被処理面はDIWの洗浄液Cにより液盛りされる。洗浄室11には、基板Wを搬出入する開口11aが設けられ、開口11aは扉11bによって開閉可能に構成されている。
【0023】
[搬送装置]
搬送装置200は、ハンドリング装置20を有する。ハンドリング装置20は、基板Wを把持するロボットハンド21と、移動機構22を有する。ロボットハンド21は、基板Wを把持する。移動機構22は、ロボットハンド21を移動させる。搬送装置200は、バッファユニット1dと各種装置との間、各種装置の間で、基板Wを搬送する。例えば、エッチング処理を終えた基板Wを処理装置110から搬出して、基板Wの被処理面上に洗浄液(DIW)Cの液膜が形成された状態で、洗浄装置120へ搬入する。また、移動機構22は、ロボットハンド21を移動させることにより、洗浄を終えた基板Wを洗浄装置120から搬出してし、基板Wの被処理面上に洗浄液(DIW)Cの液膜が形成された状態で、乾燥装置300へ搬入する。なお、基板Wの被処理面上に洗浄液(DIW)Cの液膜が形成された状態で搬送するのは、基板Wの搬送中に、基板Wの被処理面にパーティクルが付着するのを防止するためである。
【0024】
[乾燥装置]
図2及び
図3に示すように、乾燥装置300は、乾燥室31、支持部32、駆動機構33、供給部34(第1の揮発性溶剤供給部341、第2の揮発性溶剤供給部342)、遮蔽板35、移動機構36、給気部37、測定部38、カップ39を有する。乾燥室31は、基板Wが搬入される。乾燥室31は、内部において基板Wを乾燥処理するためのチャンバ1aである。乾燥室31は、例えば直方体や立方体などの箱形状である。乾燥室31の内壁は、防塵性を高めるために、シリカによりコーティングされている。乾燥室31には、基板Wを搬出入させるための開口31aが設けられている。開口31aは、扉31bによって開閉可能に設けられている。このような乾燥室31には、後述する供給部34(第1の揮発性溶剤供給部341、第2の揮発性溶剤供給部342)、遮蔽板35、移動機構36、給気部37、測定部38、カップ39が収容されている。
【0025】
また、乾燥室31には、導入口31c、排気口31dが設けられている。導入口31cには、配管、バルブ及び清浄なガス(N2等)を供給する給気装置を含む給気部31eが接続されている。排気口31dには、配管、バルブ及びガスを排気する排気装置を含む排気部31fが接続されている。導入口31cから清浄なガスを乾燥室31内に供給することで、乾燥室31内を正常な雰囲気にすることができる。また、導入口31cからガスを乾燥室31内に供給し、排気口31dから乾燥室31内のガスを排出する構成を作ることで、乾燥室31内の気体の流れを作るようにしている。
【0026】
支持部32は、基板Wを支持する。支持部32は、回転テーブル32a、複数の保持部材32b、回転軸32cを有する。回転テーブル32aは、基板Wよりも大きな径の円筒形状であり、上面が平坦な円盤となっている。複数の保持部材32bは、基板Wの外周に沿う位置に等間隔で配置され、回転テーブル32aの上面との間に間隔を空けて、基板Wを水平状態に保持する。複数の保持部材32bは、図示しない開閉機構によって、基板Wの縁部に接する閉位置と、基板Wの縁部から離れる開位置との間を移動可能に設けられている。回転軸32cは、回転テーブル32aを下方から支持し、回転の中心となる鉛直方向の軸である。
【0027】
駆動機構33は、支持部32に支持された基板Wを回転させる機構である。駆動機構33は、モータ等の駆動源を有し、回転軸32cを介して支持部32を回転させる。
【0028】
供給部34は、回転する基板Wの被処理面上に、処理液を供給する。供給部34は、
図3に示すように、第1の揮発性溶剤供給部341、第2の揮発性溶剤供給部342を有する。第1の揮発性溶剤供給部341は、乾燥室31に搬入され、支持部32に支持された基板Wの被処理面上に、第1の揮発性溶剤Vを供給する。第1の揮発性溶剤供給部341は、ノズル341aを有する。ノズル341aは、基板Wの被処理面の中心付近に向けて第1の揮発性溶剤Vを供給する。ノズル341aには、乾燥室31外の貯留部341bから配管(不図示)を介して第1の揮発性溶剤VであるIPAが供給される(
図6(B)参照)。ノズル341aは、後述する遮蔽板35の中心軸に沿って配置されるとともに、遮蔽板35とともに移動可能に設けられている。
【0029】
洗浄装置120における洗浄処理において、APMによるアルカリ洗浄後のDIWによる純水リンス処理で、最終的に基板Wの被処理面上はDIWの洗浄液Cにより液盛されている。このように液盛された状態で、洗浄装置120から乾燥装置300に搬入された基板Wに対して、IPAが供給されることにより、DIWがIPAに置換される。
【0030】
第2の揮発性溶剤供給部342は、基板Wの被処理面上のDIWを置換したIPAに、第2の揮発性溶剤HであるPGMEA(HMDSを含む溶剤)を供給する(
図7(A)参照)。第2の揮発性溶剤供給部342は、ノズル342a、揺動アーム342b、揺動機構342cを有する。ノズル342aは、基板Wの被処理面の中心付近に向けて第2の揮発性溶剤Hを供給する。ノズル342aには、乾燥室31外の貯留部から配管(いずれも不図示)などを介してPGMEAが供給される。
【0031】
撥水化剤を含む第2の揮発性溶剤Hを供給することにより、基板Wの被処理面に撥水化膜が形成されるので、基板Wの被処理面を親水性のシラノール基から撥水性のメチル基に変えて、基板Wの被処理面上の界面エネルギーを下げることにより、第1の揮発性溶剤Vを浮かび上がらせ、基板Wの被処理面上の液体の除去を促進できる。なお、ここでいう撥水性とは、液体を弾く性質、つまり撥液性をいい、水を弾く性質には限定されない。
【0032】
揺動アーム342bは、先端にノズル342aが設けられ、ノズル342aを、支持部32上の基板Wの被処理面の中心付近に対向する供給位置と、その供給位置から退避して基板Wの搬入や搬出を可能とする退避位置とに移動させる。揺動機構342cは、揺動アーム342bを揺動させる機構である。
【0033】
遮蔽板35は、基板Wの被処理面に対向し、基板Wよりも大きな径を有する板体である。遮蔽板35は円形であり、その下面は基板Wと対向する平坦な対向面35aとなっている。対向面35aは、回転テーブル32aと平行に配置され、支持部32に支持された基板Wと平行に対向する。対向面35aの中心には、第1の揮発性溶剤V及びパージガスを供給するための開口35bが形成されている。
【0034】
また、遮蔽板35の上面には、その中心を含む位置から上方に延びた支持体35cが設けられている。支持体35cの内部には、中心軸に沿って下方に延びて、開口35bに連通した通気路35dが設けられている。通気路35dの上方は、支持体35cの側面に延びた接続口35eに連通している。
【0035】
さらに、通気路35dの内部には、中心軸に沿って、第1の揮発性溶剤供給部341のノズル341aが挿入されている。ノズル341aの下端は、開口35bに達して、基板Wの中心に向かっているので、基板Wの被処理面の中心付近に向けて第1の揮発性溶剤Vが供給可能となる。
【0036】
移動機構36は、遮蔽板35を、基板Wに対して接離する方向に移動させる機構である。移動機構36は、遮蔽板35を、待機位置と供給位置との間で移動させる。待機位置は、遮蔽板35が基板Wの搬入出を妨げることがない高さの位置(
図6(A)参照)である。また、供給位置は、待機位置よりも低く、基板Wに処理液を供給開始する高さの位置(
図6(B)参照)である。移動機構36としては、例えば、遮蔽板35の支持体35cが取り付けられたアームを昇降させるシリンダ、ボールねじ機構など、回転テーブル32aの回転軸32cに平行な方向に、遮蔽板35を移動させる種々の機構を適用可能であるが、詳細は省略する。
【0037】
給気部37は、対向面35aと基板Wとの間の空間に酸素を含まないガスを供給することにより、基板Wの被処理面上の雰囲気中の酸素を排除する。給気部37は、このガス(以下、パージガスとする)を供給する給気装置37aを含み、図示はしないが、弁を有する配管を介して接続口35eに接続されている。パージガスとしては、N2などの不活性ガスを用いる。遮蔽板35が基板Wに近接することで、遮蔽板35の対向面35aと基板Wの被処理面上との間に狭い空間が形成される。給気部37からパージガスを供給することにより、通気路35dを介して、開口35bから基板Wの中心付近にパージガスが吹き出すことで、この狭い空間内の酸素が排除される。つまり、結果的に基板Wの被処理面上に存在する酸素が排除されることになる。
【0038】
測定部38は、支持部32に支持された基板Wの被処理面上に供給されたの処理液の膜厚を測定する。測定部38は、遮蔽板35に設けられている。また、測定部38は、処理液の複数個所を測定可能に設けられている。より具体的には、測定部38は、検出部38aを有する。検出部38aとしては、例えば、レーザ変位計やカメラなどを用いる。検出部38aは、遮蔽板35の中心から外周に向かう半径方向に沿って、複数配設されている。例えば、遮蔽板35の対向面35aに下端が開口するように、半径方向の中心軸に近い位置、外周に近い位置、その中間位置に形成された3つの穴35fに、それぞれ検出部38aが埋め込まれている。検出部38aの検出面は、穴35fの開口から基板Wに向かう。
【0039】
測定部38による膜厚測定法としては、例えば、光干渉原理を用いることができる。なお、別の例として、支持部32内に重量計を用いることが可能である。この重量計を用いる場合には、基板Wの被処理面上の液膜の重量(液膜の重量=液膜を含む基板の重さ-基板の重さ)を理論的あるいは実験的に液膜の厚さに換算する。
【0040】
カップ39は、支持部32を周囲から囲むように円筒形状に形成されている(
図2参照)。カップ39の周壁の上部は、径方向の内側に向かって傾斜し、支持部32上の基板Wが露出するように開口している。カップ39は、回転する基板Wから飛散した洗浄液Cを受けて、下方に流す。カップ39の底面には、流れ落ちる洗浄液Cを排出するための排出口(不図示)が形成されている。なお、カップ39は、駆動機構33に接続され、支持部32とともに昇降可能に設けられている。
【0041】
[制御装置]
制御装置400は、基板処理装置1の各部を制御するコンピュータである。制御装置400は、プログラムを実行するプロセッサと、プログラムや動作条件などの各種情報を記憶するメモリ、各要素を駆動する駆動回路を有する。なお、制御装置400は、情報を入力する入力装置、情報を表示する表示装置を有している。
【0042】
制御装置400は、処理装置110、洗浄装置120、搬送装置200、乾燥装置300を制御する。例えば、制御装置400は、支持部32に支持された基板Wを回転させながら、第1の揮発性溶剤供給部341からの第1の揮発性溶剤Vの供給により洗浄液Cの液膜を第1の揮発性溶剤Vへ置換させ、第2の揮発性溶剤供給部342からの第2の揮発性溶剤Hの供給により基板Wの被処理面上に供給された第1の揮発性溶剤Vを、第2の揮発性溶剤Hへ置換させた後、第2の揮発性溶剤Hの液膜を基板Wの回転による遠心力により排出させる。なお、後述するように、制御装置400は、測定部38による測定結果の処理液の膜厚に応じて、対向面35aと処理液表面との距離を調整する。
【0043】
このような制御装置400は、機構制御部41、調整部42、記憶部43を有する。機構制御部41は、各部の機構を制御する。例えば、機構制御部41は、駆動機構33を制御することにより、支持部32の回転速度、回転開始及び回転停止のタイミングを制御する。また、機構制御部41は、検出部38aの膜厚の測定及び移動機構36の動作を制御することにより、遮蔽板35の高さを変えて、対向面35aと処理液表面との距離を調整する。さらに、機構制御部41は、第1の揮発性溶剤供給部341による第1の揮発性溶剤Vの吐出、第2の揮発性溶剤供給部342によるノズル342aの揺動及び第2の揮発性溶剤Hの吐出、給気部37によるパージガスの供給などの動作を制御する。
【0044】
調整部42は、測定部38により測定された処理液の膜厚(以下、単に膜厚とする)と、予め設定された膜厚に適した対向面35aと基板Wの被処理面との距離(以下、ギャップとする)を示す情報に基づいて、ギャップを調整する。つまり、調整部42は、処理液の膜厚に適した対向面35aと基板Wの被処理面との距離を、移動機構36によって遮蔽板35を昇降させることにより調整する。基本的には、ギャップが狭すぎると、基板Wの処理液と対向面35aとの接触が生じる。これにより、基板Wの乾燥時に、被処理面に対向面35aに付着した処理液が落下して残留する。残留した処理液が乾燥すると、ウォーターマークとなって現れる。このようなウォーターマークは、液滴が点々と被処理面上にランダムに付着することによるものであるため、散点的に現れることになる。一方、ギャップが広すぎると、対向面35aと被処理面との間に掲載される窒素雰囲気に酸素が入り込みやすくなる。このため、被処理面のシリコン、水が酸素と反応したウォーターマークが増大する。
【0045】
発明者は、対向面35aに処理液が付着しないギャップとして、処理液の膜厚に応じた最適な値が存在することに着目した。つまり、発明者は、ギャップ及び膜厚と、ウォーターマークの発生数との間には相関があり、膜厚に対して、ウォーターマークの発生数が許容値未満となるギャップが存在することを見出した。簡単な例としては、
図4(A)に示すように、処理液Lの膜厚が厚い場合にはギャップGを大きくして、
図4(B)に示すように、膜厚が薄い場合にはギャップGを小さくすることになる。
【0046】
但し、処理液Lの膜厚は、基板W毎に常に同じになるとは限らず、処理液Lの種類や温度、基板Wの回転速度、液膜の表面のうねりなどによっても異なる。このため、これらの条件によっても、対向面35aへの処理液の付着のし易さは異なる。そこで、膜厚に対して、ウォーターマークが許容値未満となるギャップをあらかじめ実験により求めておくことが好ましい。記憶部43は、このような膜厚とギャップの関係を示す情報を、記憶しておく。つまり、予め膜厚に適した対向面35aと被処理面との距離を示す情報が設定されている。
【0047】
図5に、膜厚とギャップとウォーターマーク数の関係を示す。なお、ここでいうウォーターマーク数は、対向面35aではなく、基板Wに形成されたウォーターマークの数である。膜厚が薄い数μmの場合、ギャップが3mm程度(例えば2~5mm)と小さい方が、ウォーターマーク数が少ない。ギャップが10mmより大きくなる場合は、対向面35aと被処理面との間のN
2雰囲気を維持することが難しくなるため、徐々にウォーターマーク数が増加する傾向にある。このため、膜厚が数μmの場合には、遮蔽板35と基板Wとの間の好ましいギャップの範囲が、3~10mmとなる。より好ましくは、測定された膜厚の最大値が、10μm以下であれば、3mm程度のギャップを保つ。例えば、膜厚の最大値が10μmであれば、ギャップを3mmとする。
【0048】
一方、膜厚が厚い数mmの場合、ギャップが3mm程度(例えば2~5mm)と小さいと、ウォーターマーク数が増加する。これは、基板Wの被処理面上の液膜が遮蔽板35に接触することで、基板Wが汚染されるためである。また、ギャップが20mmより大きい場合は、対向面35aと被処理面との間のN2雰囲気を維持することが難しくなるため、ウォーターマーク数が増加する。このため、膜厚が数mmの場合には、遮蔽板35と基板Wとの間の好ましいギャップの範囲が、7~20mmとなる。より好ましくは、測定された膜厚が1mm以上であれば、5mm程度のギャップを保つ。例えば、膜厚の最大値が3mmであれば、ギャップを8mmとする。このように、膜厚が厚くなると、遮蔽板35への液跳ねのリスクが高まるため、ギャップを広くとる必要がある。
【0049】
また、基板Wの被処理面上に処理液が供給中であって、遮蔽板35が基板Wに近接した状態の時に、常に処理液の膜厚を測定している状況でリアルタイムでギャップ調整を行う場合にも、上記と同様に、測定された膜厚が厚い場合、薄い場合に応じて、常に最適なギャップを維持できるように遮蔽板35の高さが調整される。このように、膜厚の測定と遮蔽板35の昇降を連動させることによって、対向面35aと被処理面との間のN2雰囲気を維持した状態で、対向面35aへの処理液が付着することを低減できる。
【0050】
さらに、調整部42は、測定部38により測定された複数個所の膜厚のうち、最大の膜厚を基準として、ギャップを調整する。処理液の種類を変更した場合、基板Wの回転速度が変化した場合など、処理液が波打つ場合、膜厚が基板Wの被処理面上の箇所によって相違する。このうち、最も厚い箇所において、対向面35aへの付着が生じやすいため、この箇所を基準としてギャップを調整することにより、膜厚変動を早期に検知して、処理液の付着を低減できる。
【0051】
[動作]
以上のような本実施形態の基板処理装置1の動作を、上記の
図1~
図5に加えて、
図6~
図8の説明図、
図9のフローチャートを参照して説明する。なお、以下のような手順により基板Wを処理することにより基板Wを製造する基板製造方法、基板Wを乾燥させる基板乾燥方法も、本実施形態の一態様である。
【0052】
まず、
図2に示すように、処理装置110におけるエッチング処理後の基板Wは、搬送装置200により洗浄装置120に搬入される。洗浄装置120においては、基板Wを保持した支持部12が回転しながら、供給部15が基板Wの被処理面の回転中心にAPMを供給してアルカリによるリンス処理を行った後、DIWを供給することによる純水リンス処理を行う。搬送装置200は、洗浄後、DIWである洗浄液Cによって液盛された基板Wを、洗浄装置120から搬出し、乾燥装置300に搬入する。
【0053】
図6(A)に示すように、被処理面に洗浄液Cの液膜(DIW)が形成された状態で、乾燥装置300の乾燥室31の開口31aから搬入された基板Wを、支持部32の保持部材32bが保持する(ステップS01)。
図6(B)に示すように、駆動機構33が支持部32とともに基板Wを回転させるとともに、給気部37によって給気部37が、パージガスを対向面35aの開口37bから排出させる(ステップS02)。そして、遮蔽板35が待機位置から処理液の供給位置まで下降して(ステップS03)、第1の揮発性溶剤供給部341が、基板Wの被処理面の回転中心に第1の揮発性溶剤VであるIPAを供給する(ステップS04)。
【0054】
これにより、基板Wの回転による遠心力によって、IPAが基板Wの被処理面の全域に行き渡り、基板Wの被処理面上に液盛されたDIWがIPAに置換されるアルコールリンス処理が行われる。なお、ここでは、DIWよりも表面張力が低いIPAに置換されるため、基板Wの被処理面上に形成されるパターンの間に働く表面張力が低減される。
【0055】
そして、
図7(A)に示すように、駆動機構33が支持部32とともに基板Wを回転させながら、遮蔽板35が待機位置まで上昇して、第2の揮発性溶剤供給部342の揺動アーム342bが揺動することにより、基板Wの被処理面の回転中心の上方までノズル342aが移動し、ノズル342aが回転中心に、第2の揮発性溶剤HであるPGMEAを供給する(ステップS05)。これにより、基板Wの回転による遠心力によって、PGMEAが基板Wの被処理面の全域に行き渡るとともに、PGMEAに含まれたHMDSが、基板Wの被処理面に結合して撥水化膜が形成される。つまり、基板Wの被処理面上に存在する第1の揮発性溶剤Vが、第2の揮発性溶剤HのPGMEAに置換され、PGMEAに含まれたHMDSによって、被処理面の水酸基が官能基に置換して撥水化膜が形成されることになる。
【0056】
さらに、
図7(B)に示すように、揺動アーム342bがノズル342aを基板Wの上方から退避させて、遮蔽板35が基板Wに接近しながら、第1の揮発性溶剤供給部341が、基板Wの被処理面の回転中心に第1の揮発性溶剤VであるIPAを供給する(ステップS06)。PGMEAに含まれたHMDSは、大気中の水分と反応するとパーティクルが発生する。このため、第2の揮発性溶剤Hが残留すると、基板Wの被処理面上にパーティクルが残留することになる。そこで、本実施形態では、第2の揮発性溶剤Hを供給した後、基板Wの被処理面上に再度、第1の揮発性溶剤Vを供給して、第2の揮発性溶剤Hを洗い流す。これとともに、測定部38の検出部38aは、基板Wの被処理面上の膜厚の測定を開始する(ステップS07)。
【0057】
調整部42は、記憶部43に記憶された膜厚とギャップの情報を参照して、測定された膜厚から、最適なギャップとなるように、機構制御部41を介して、移動機構36を作動させ、遮蔽板35の対向面35aと基板Wとのギャップを調整する(ステップS08)。つまり、処理液の供給中に、遮蔽板35に処理液が付着しないように、ギャップを調整する。このとき、給気部37がパージガスを対向面35aと基板Wとの間に供給しているので、ギャップの雰囲気から酸素が排出される。
【0058】
そして、
図8に示すように、基板Wを回転させながら、所定時間が経過するまで(ステップS09のNO)、第1の揮発性溶剤Vの液膜を、遠心力によって振り切る乾燥処理が行われる。なお、この間にも、測定部38による膜厚の測定(ステップS07)と、調整部42によるギャップの調整が行われる(ステップS08)。
【0059】
このように、第2の揮発性溶剤Hを用いて撥水化膜を形成することにより、パターンの倒壊を低減して、基板Wを乾燥させることができる。つまり、上記のように、IPAの液膜に浸透した撥水化剤によって、パターン間に撥水化膜が形成され、親液性が低下して液体の接触角が上がる。これにより、基板Wの表面上にある液体の表面張力がより一層低くなるため、パターン同士が引き合う力を弱くすることができ、パターン倒壊を抑制できる。また、パージガスによって、遮蔽板35の対向面35aと基板Wとの間の酸素を排除するため、酸素との反応によってウォーターマークの発生を防止できる。
【0060】
所定時間経過後(ステップS09のYES)、駆動機構33が支持部32とともに基板Wの回転を停止し(ステップS10)、遮蔽板35が上昇する(ステップS11)、そして、搬送装置200が基板Wを開口31aから搬出する(ステップS12)。
【0061】
[効果]
(1)以上のような本実施形態の乾燥装置(基板乾燥装置)300は、基板Wが搬入される乾燥室31と、乾燥室31に搬入された基板Wを受け取る支持部32と、支持部32に支持された基板Wを回転させる駆動機構33と、回転する基板Wの被処理面上に、処理液を供給する供給部34と、基板Wの被処理面に対向し、基板Wよりも大きな径の対向面35aを有する遮蔽板35と、遮蔽板35を、基板Wに接離する方向に移動させる移動機構36と、対向面35aと基板Wとの間の空間に酸素を含まないガスを供給することにより、基板Wの被処理面上の雰囲気中の酸素を排除する給気部37と、基板Wの被処理面上に供給された処理液の膜厚を測定する測定部38と、測定部38により測定された膜厚と、予め設定された膜厚に適した対向面35aと被処理面との距離(ギャップ)を示す情報に基づいて、ギャップを調整する調整部42とを有する。
【0062】
より具体的には、調整部42は、処理液の予め設定された膜厚に適した対向面35aと基板Wの被処理面とのギャップを、移動機構36によって遮蔽板35を昇降させることにより調整する。
【0063】
本実施形態の基板処理装置1は、基板Wを回転させながら基板処理液を供給することにより処理する処理装置110と、処理装置110により処理済の基板Wを回転させながら洗浄液Cを供給することにより洗浄する洗浄装置120と、乾燥装置300と、洗浄装置120において洗浄された基板Wを、洗浄装置120で供給された洗浄液Cによる液膜が形成された状態で搬出し、乾燥装置300に搬入する搬送装置200と、を有する。
【0064】
本実施形態の基板乾燥方法は、乾燥室31内において回転する基板Wの被処理面上に、供給部34が処理液を供給する処理液供給工程と、測定部38が、基板Wの被処理面上に供給された処理液の膜厚を測定する膜厚測定工程と、基板Wの被処理面に対向し、基板Wよりも大きな径の対向面35aを有する遮蔽板35を、移動機構36が基板Wに接近する方向に移動させる接近工程と、給気部37が、対向面35aと基板Wとの間の空間に酸素を含まないパージガスを供給することにより、基板Wの被処理面上の雰囲気中の酸素を排除する給気工程と、測定部38により測定された膜厚と、予め設定された膜厚に適した対向面35aと被処理面との距離(ギャップ)を示す情報に基づいて、調整部42がギャップを調整する調整工程と、処理液を、基板Wの回転による遠心力により排出させる乾燥工程と、を含む。
【0065】
このように、処理液の膜厚に応じて、対向面35aと処理液表面との距離を調整するため、パージガスによる酸素を排除するとともに、対向面35aへの処理液の付着を防げることで、基板Wの乾燥工程で、対向面35aからの処理液の落下によるウォーターマークの発生を防止できる。つまり、対向面35aに処理液が付着すると、被処理面上の液膜を排除している途中で、対向面35aから処理液が落下して、乾燥処理が行われている被処理面に付着し、その付着した部分だけが残って、最終的には自然乾燥によるウォーターマークを形成させる。しかし、本実施形態では、遮蔽板35が基板Wに近接した状態で処理液を供給している状態から、処理液を振り切って乾燥させるまでの間、遮蔽板35に処理液が付着しないため、処理液の落下によるウォーターマークの発生を防ぐことができる。
【0066】
(2)測定部38は、遮蔽板35に設けられている。このため、基板Wの被処理面上に処理液が供給中であって、遮蔽板35が基板Wに近接した状態の時に、常に対向面35aに対する測定対象までの距離を正確に測定し、リアルタイムに膜厚を検出することができるので、膜厚の変動に応じて、ギャップを調整して処理液の付着を低減できる。
【0067】
(3)測定部38は、処理液の複数個所を測定可能に設けられている。このため、基板Wの面内で膜厚にばらつきがあっても、複数箇所の測定結果に基づいて最適なギャップを決定できる。
【0068】
(4)調整部42は、複数個所の膜厚のうち、最大の膜厚を基準として、ギャップを調整する。このため、対向面35aに最も処理液が付着し易い膜厚を基準にギャップを調整するので、処理液の付着を防ぐギャップに調整できる。
【0069】
(5)処理液供給工程は、洗浄液Cによる液膜が形成され、支持部32に支持された基板Wを駆動機構33により回転させながら、第1の揮発性溶剤供給部341からの第1の揮発性溶剤Vの供給により洗浄液Cによる液膜を第1の揮発性溶剤Vへ置換する第1の揮発性溶剤供給工程と、第2の揮発性溶剤供給部342から、撥水化膜を形成する撥水化剤を含み、気化する際の表面張力が第1の揮発性溶剤Vよりも小さい第2の揮発性溶剤Hの供給により、第1の揮発性溶剤Vの液膜を第2の揮発性溶剤Hに置換するとともに、基板Wに撥水化膜を形成させる撥水化膜形成工程と、を含む。
【0070】
このため、遮蔽板35が基板Wに近接した状態の時に、処理液に揺らぎが発生しやすい置換中に、常に膜厚をリアルタイムに測定して、膜厚変動に追従させてギャップを調整できるので、より確実に対向面35aへの処理液の付着を低減できる。
【0071】
(変形例)
(1)測定部38は、揺動するアームの先端に検出部38aが設けられ、アームの揺動により基板Wの処理面に対向する位置に移動した検出部38aによって測定する構成であってもよい。この場合、アームの揺動に従って検出部38aが移動しながら、又は検出部38aが間欠的に停止して、複数箇所を測定するようにしてもよい。検出部38aの数も、上記の態様には限定されない。1つであっても、2つであっても、4つ以上であってもよい。
【0072】
(2)第1の揮発性溶剤Vは、IPAには限定されない。例えば、HFE(ハイドロフルオロエーテル)等を用いることができる。撥水化剤としてのシランカップリング剤は、HMDSには限定されない。例えば、TMSDEA(テトラメチルシリルジエチルアミン)等を用いることができる。第2の揮発性溶剤Hも、上記のPGMEAには限定されない。例えば、IPAを用いてもよい。
【0073】
(3)処理装置110の処理は、最終的に洗浄と乾燥が必要となる処理であれば、処理の内容及び基板処理液は、上記で例示したものには限定されない。処理対象となる基板Wについても、上記で例示したものには限定されない。また、洗浄装置120に使用される洗浄液C、乾燥装置300において使用される処理液も、上記で例示したものには限定されない。なお、乾燥装置300において使用される処理液は、遠心力によって基板Wから排除される液体であればよく、洗浄液Cも、ここでいう処理液に含まれる場合がある。
【0074】
(4)乾燥装置300は、洗浄装置120と共通化してもよい。すなわち、乾燥装置300と共通のチャンバ1a内に、洗浄液Cを供給する供給部15を設けてもよい。これにより、乾燥処理の前に、回転する基板Wの被処理面にノズル15aから洗浄液Cを供給することにより、洗浄処理が行うことができる。例えば、処理装置110でエッチング処理され、乾燥装置300のチャンバ1aに搬入された基板Wの被処理面にAPMを供給してAPM洗浄を行い、APM洗浄後に、DIWによる純水リンス処理を行うことにより、基板Wの被処理面に残留していたAPMを純水により洗い流してもよい。なお、洗浄装置120と乾燥装置300とを共通化するなど、乾燥装置300と他の装置を共通化して一つの処理装置として構成する場合、この装置を乾燥装置300と見做すことができる。
【0075】
(5)第2の揮発性溶剤供給部342を、遮蔽板35から第2の揮発性溶剤Hを供給する構成としてもよい。例えば、
図10に示すように、第2の揮発性溶剤供給部342のノズル342aを、基板Wの被処理面の中心付近に向けて第2の揮発性溶剤Hを供給可能に設ける。つまり、ノズル342aを、通気路35dの内部に、中心軸に沿って挿入するとともに、遮蔽板35とともに移動可能に設ける。ノズル342aには、乾燥室31外の図示しない貯留部から配管を介して、第2の揮発性溶剤HであるHMDSを含むPGMAが供給される。ノズル342aの下端は、開口35bに達して、基板Wの中心に向かっているので、基板Wの被処理面の中心付近に向けて第2の揮発性溶剤Hが供給可能となる。
【0076】
これにより、上記の第1の揮発性溶剤V(IPA)供給→第2の揮発性溶剤H(HMDSを含むPGMA)供給→第1の揮発性溶剤V(IPA)供給→乾燥という工程において、ノズル341aから最初の第1の揮発性溶剤Vを基板Wの被処理面に供給するときに、遮蔽板35を基板Wに近接した位置にすることができ、さらに、ノズル342aから第2の揮発性溶剤Hを供給するとき、ノズル341aから再度第1の揮発性溶剤Vを供給するときにも、遮蔽板35を基板Wに近接した位置することができる。このため、最初の第1の揮発性溶剤Vの供給時から、第2の揮発性溶剤Hの供給時、再度の第1の揮発性溶剤Vの供給時、乾燥までの工程において、上記のように、測定部38によって基板Wの被処理面上の処理液の膜厚を測定し、調整部42が、測定された膜厚と、膜厚に適した対向面35aと被処理面とのギャップを示す情報に基づいて、ギャップを調整することができる。これにより、全ての工程において、遮蔽板35への処理液の付着を防止して、処理液の落下によるウォーターマークの発生を防ぐことができる。
【0077】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態及び各部の変形例を説明したが、この実施形態や各部の変形例は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。前述したこれら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明に含まれる。
【符号の説明】
【0078】
1 基板処理装置
1a チャンバ
1b カセット
1c 搬送ロボット
1d バッファユニット
11 洗浄室
11a 開口
11b 扉
12 支持部
13 回転機構
14 カップ
15 供給部
15a ノズル
15b 移動機構
20 ハンドリング装置
21 ロボットハンド
22 移動機構
31 乾燥室
31a 開口
31b 扉
31c 導入口
31d 排気口
31e 給気部
31f 排気部
32 支持部
32a 回転テーブル
32b 保持部材
32c 回転軸
33 駆動機構
34 供給部
35 遮蔽板
35a 対向面
35b 開口
35c 支持体
35d 通気路
35e 接続口
35f 穴
36 移動機構
37 給気部
37a 給気装置
38 測定部
38a 検出部
39 カップ
41 機構制御部
42 調整部
43 記憶部
110 処理装置
120 洗浄装置
200 搬送装置
300 乾燥装置
341 第1の揮発性溶剤供給部
341a ノズル
341b 貯留部
342 第2の揮発性溶剤供給部
342a ノズル
342b 揺動アーム
342c 揺動機構
400 制御装置