(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034962
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】採血管ホルダ
(51)【国際特許分類】
A61B 5/154 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
A61B5/154 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139563
(22)【出願日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】大木 聡
(72)【発明者】
【氏名】中田 耕司
(72)【発明者】
【氏名】実川 聡
(72)【発明者】
【氏名】小野 和也
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038TA01
4C038UB07
(57)【要約】
【課題】太さの異なる採血管を保持することができる、新規な構造の採血管ホルダを提供する。
【解決手段】採血管78が挿入される筒状のホルダ部14を備えている採血管ホルダ10であって、ホルダ部14の周壁28には、周方向の複数箇所に周壁28の他の部分よりも薄肉とされて内周へ突出する薄肉保持部56が設けられて、複数の薄肉保持部56によって大径の採血管78aを保持する第1保持部64が構成されており、周壁28における薄肉保持部56よりも採血管78の挿入方向先端側には、薄肉保持部56よりも更に内周へ突出する突部66が周方向の複数箇所に設けられて、複数の突部66によって小径の採血管78bを保持する第2保持部72が構成されている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
採血管が挿入される筒状のホルダ部を備えている採血管ホルダであって、
前記ホルダ部の周壁には、周方向の複数箇所に該周壁の他の部分よりも薄肉とされて内周へ突出する薄肉保持部が設けられて、該複数の薄肉保持部によって大径の前記採血管を保持する第1保持部が構成されており、
該周壁における該薄肉保持部よりも該採血管の挿入方向先端側には、該薄肉保持部よりも更に内周へ突出する突部が周方向の複数箇所に設けられて、該複数の突部によって小径の該採血管を保持する第2保持部が構成されている採血管ホルダ。
【請求項2】
前記突部が前記周壁の軸方向に延びている請求項1に記載の採血管ホルダ。
【請求項3】
前記突部の軸方向先端部分は、内周への突出寸法が大きくされた位置決め部とされている請求項2に記載の採血管ホルダ。
【請求項4】
前記薄肉保持部と前記突部が軸方向で連続して設けられている請求項2又は3に記載の採血管ホルダ。
【請求項5】
採血管が挿入される筒状のホルダ部を備えている採血管ホルダであって、
前記ホルダ部は周壁と底壁とを備えており、
該底壁を貫通する連通孔に採血針が挿通されており、
該底壁には径方向両側へ延び出して側方に向けて開口する一対の孔状部が設けられており、
一方の該孔状部は、該採血針の該内腔から該連通孔を通じて流入した血液を外部から視認可能とされたフラッシュバック観察部と連通されており、
他方の該孔状部は、該連通孔に対して非連通とされて、該採血針の該内腔から血液が流入しない対比部とされている採血管ホルダ。
【請求項6】
前記一方の孔状部には、血液の通過を阻止する焼結フィルタが配されている請求項5に記載の採血管ホルダ。
【請求項7】
採血管が挿入される筒状のホルダ部を備えている採血管ホルダであって、
前記ホルダ部は周壁と底壁とを備えており、
該底壁を貫通する連通孔が形成されており、
該底壁には側方に向けて開口する孔状部が設けられており、
該孔状部が該連通孔に対して非連通とされている採血管ホルダ。
【請求項8】
採血管が挿入される筒状のホルダ部を備えている採血管ホルダであって、
前記ホルダ部の底壁には、筒状の雄ルアー部が突出して設けられており、
該雄ルアー部の内腔が該底壁を貫通する連通孔を構成して、該連通孔に採血針が挿通固定されており、
該採血針が該雄ルアー部の突出方向で該雄ルアー部よりも外方へ突出しており、
該雄ルアー部の該連通孔には該採血針の周りに充填材が充填されている採血管ホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、採血針の基端側に設けられて採血管を保持する採血管ホルダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
採血時に患者に穿刺される採血針に取り付けられると共に、採血管を保持する筒状のホルダ部を備えた採血管ホルダが知られている。そして、ホルダ部に採血管が挿入されて保持されることにより、採血針の内腔が採血管に連通されて、採血針の内腔を通じて採血管に血液が流入して採取される。例えば、国際公開第2015/076221号(特許文献1)や特開2018-149026号公報(特許文献2)に開示されているのが、それである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2015/076221号
【特許文献2】特開2018-149026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
[課題1]
ところで、採血管ホルダは、ホルダ部に挿入された採血管を所定の位置で保持するようになっている。例えば、特許文献1では、採血管の外周面がホルダ部の周壁によって保持されることで、採血管がホルダ部への装着状態に保たれるようになっている。しかし、採血管の太さは一定ではないことから、採血管の保持部を構成する周壁の内径よりも小径の採血管は保持することが難しかった。
【0005】
[課題2]
また、特許文献1では、採血針が適切に血管へ穿刺されたことをフラッシュバックによって確認可能とされている。即ち、特許文献1では、採血管ホルダの先端側の底壁に径方向両側へ延びて側方へ開口する一対のフラッシュバック用空間が設けられており、それらフラッシュバック用空間へ血液が流入したことを外部から視認することにより、採血針の血管への穿刺を確認することができる。
【0006】
しかし、例えば血液が一対のフラッシュバック用空間の一方だけに流れ込むと、他方のフラッシュバック用空間を確認した場合に、適切に穿刺されているにも拘らず誤って穿刺をやり直してしまうおそれがある。また、フラッシュバック用空間の周壁の透明度等によっては、フラッシュバック用空間への血液の流入を目視で判別し難い場合もあった。
【0007】
[課題3]
また、特許文献2は、特許文献1のような径方向に延びるフラッシュバック用空間がホルダ部の底壁に設けられておらず、ホルダ部の底壁が薄肉の略円板状となっている。このような構造では、底壁の変形剛性が比較的に小さくなり易く、ホルダ部を持って穿刺等の操作をする際に、底壁が変形してホルダ部に挿入された採血管に外力が伝達されてしまう場合もあった。
【0008】
[課題4]
また、ホルダ部に対して別体の留置針を接続して使用するルアーアダプタタイプの採血管ホルダの場合には、ホルダ部の底壁に対して中空のコネクタが接続される。このような構造では、採血に際してコネクタ内の空間を血液で満たす必要があり、コネクタ内の空間の分だけ血液を余分に採取しなければならず、患者への負荷が大きくなってしまう。
【0009】
本発明の解決課題は、上記[課題1]~[課題4]の少なくとも1つを解決可能とされた、新規な構造の採血管ホルダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0011】
第1の態様は、採血管が挿入される筒状のホルダ部を備えている採血管ホルダであって、前記ホルダ部の周壁には、周方向の複数箇所に該周壁の他の部分よりも薄肉とされて内周へ突出する薄肉保持部が設けられて、該複数の薄肉保持部によって大径の前記採血管を保持する第1保持部が構成されており、該周壁における該薄肉保持部よりも該採血管の挿入方向先端側には、該薄肉保持部よりも更に内周へ突出する突部が周方向の複数箇所に設けられて、該複数の突部によって小径の該採血管を保持する第2保持部が構成されているものである。
【0012】
本態様に従う構造とされた採血管ホルダによれば、外径寸法が相互に異なる複数種類の採血管を、第1保持部と第2保持部とによって何れも保持することができる。即ち、大径の採血管は、ホルダ部の周壁に設けられた複数の薄肉保持部で構成された第1保持部によって保持される。また、第1保持部の内径よりも小径の採血管は、第1保持部を構成する薄肉保持部よりも採血管挿入方向の先端側に設けられた複数の突部の内周側まで挿入されることにより、複数の突部で構成された第2保持部によって保持される。
【0013】
複数の薄肉保持部によって構成された第1保持部は、採血管の挿入時の抵抗が小さく、採血管を容易に挿入することができる。また、複数の突部で構成された第2保持部は、第1保持部よりも強い保持力で採血管をより安定的に保持することができる。例えばホルダ部に挿入された採血管に穿刺される採血針の基端部分がラバースリーブで覆われている場合には、採血管の挿入時に当該ラバースリーブが採血管の挿入先端に押し当てられて収縮し、ラバースリーブの弾性力が採血管を挿入方向と反対側へ押し戻すように作用することが考えられる。このような場合に、ラバースリーブの変形量が小さい採血管の挿入状態では、採血管が薄肉保持部で構成された第1保持部によって保持されることから、比較的に小さいラバースリーブの弾性力に抗し得る保持力を確保しつつ、採血管の挿入操作の容易性を高めることができる。一方、採血管がより先端側まで挿入されてラバースリーブの変形量が大きくなると、突起で構成された第2保持部によって第1保持部よりも高い保持強度で採血管が保持されることから、ラバースリーブの弾性力がより強く採血管に作用しても、採血管の押し戻しを防ぐことができる。
【0014】
また、例えば、第1保持部によって大径の採血管を保持する際には、採血管のホルダ部への挿入先端が突部に突き当てられることによって、採血管のホルダ部に対する挿入端が規定される。これにより、採血管が第1保持部(薄肉保持部)に対して採血管の挿入方向で適当な位置に位置決めされて、採血管が第1保持部によって安定して保持される。
【0015】
第2の態様は、第1の態様に記載された採血管ホルダにおいて、前記突部が前記周壁の軸方向に延びているものである。
【0016】
本態様に従う構造とされた採血管ホルダによれば、小径の採血管が第2保持部によって保持される際に、軸方向に延びる突部によって採血管が軸方向の広い範囲で保持されることから、ホルダ部による採血管の保持がより安定する。
【0017】
第3の態様は、第2の態様に記載された採血管ホルダにおいて、前記突部の軸方向先端部分は、内周への突出寸法が大きくされた位置決め部とされているものである。
【0018】
本態様に従う構造とされた採血管ホルダによれば、小径の採血管が第2保持部によって保持される際に、採血管のホルダ部への挿入先端が突部の位置決め部に突き当てられることによって、採血管の挿入端が規定される。これにより、採血管が第2保持部(突部)に対して軸方向で適当な位置に位置決めされて、採血管が第2保持部によって安定して保持される。
【0019】
第4の態様は、第2又は第3の態様に記載された採血管ホルダにおいて、前記薄肉保持部と前記突部が軸方向で連続して設けられているものである。
【0020】
本態様に従う構造とされた採血管ホルダによれば、薄肉とされて比較的に変形し易い薄肉保持部によって、突部の外周側への変位許容量を調節することができる。これにより、小径の採血管を突部の内周側へ挿入する際の抵抗や、第2保持部による採血管の保持力等を、調節することができる。
【0021】
第5の態様は、採血管が挿入される筒状のホルダ部を備えている採血管ホルダであって、前記ホルダ部は周壁と底壁とを備えており、該底壁を貫通する連通孔に採血針が挿通されており、該底壁には径方向両側へ延び出して側方に向けて開口する一対の孔状部が設けられており、一方の該孔状部は、該採血針の該内腔から該連通孔を通じて流入した血液を外部から視認可能とされたフラッシュバック観察部と連通されており、他方の該孔状部は、該連通孔に対して非連通とされて、該採血針の該内腔から血液が流入しない対比部とされているものである。
【0022】
本態様に従う構造とされた採血管ホルダによれば、採血針の穿刺時に採血針の内腔から連通孔に流入した血液が、1つのフラッシュバック観察部以外へ流れることがなく、1つのフラッシュバック観察部の目視によって穿刺状態フラッシュバックの有無をより確実に把握することができる。
【0023】
一方の孔状部であるフラッシュバック観察部と、他方の孔状部である対比部とをそれぞれ目視して、フラッシュバック観察部の色と対比部の色とを比較することにより、血液の流入によるフラッシュバック観察部の色の変化をより確実に把握可能となって、フラッシュバックの有無をより確実に判定することができる。
【0024】
第6の態様は、第5の態様に記載された採血管ホルダにおいて、前記一方の孔状部には、血液の通過を阻止する焼結フィルタが配されているものである。
【0025】
本態様に従う構造とされた採血管ホルダによれば、フラッシュバック観察部に流入した血液が一方の孔状部を通じて外部へ漏れるのを、焼結フィルタによって防止することができる。
【0026】
第7の態様は、採血管が挿入される筒状のホルダ部を備えている採血管ホルダであって、前記ホルダ部は周壁と底壁とを備えており、該底壁を貫通する連通孔が形成されており、該底壁には側方に向けて開口する孔状部が設けられており、該孔状部が該連通孔に対して非連通とされているものである。
【0027】
本態様に従う構造とされた採血管ホルダによれば、ホルダ部の底壁の厚さが大きくされて変形剛性の向上や底壁を含むホルダ部外周面の把持が容易となり、例えば穿刺や留置針への接続等の操作性の向上や採血管への入力の低減等が図られる。また、底壁を単に厚くすると成形時のヒケ等で寸法精度が低下して採血針の位置決め精度の低下等も懸念されるが、厚くされた底壁に孔状部を設けたことで、そのような懸念も回避される。また、ホルダ部の強度や剛性の向上等を検討する際にも、ホルダ部の底壁全体を単に厚肉にする場合に比して、軽量化、形成材料の削減、成形不良の防止などが期待できる。
【0028】
第8の態様は、採血管が挿入される筒状のホルダ部を備えている採血管ホルダであって、前記ホルダ部の底壁には、筒状の雄ルアー部が突出して設けられており、該雄ルアー部の内腔が該底壁を貫通する連通孔を構成して、該連通孔に採血針が挿通固定されており、該採血針が該雄ルアー部の突出方向で該雄ルアー部よりも外方へ突出しており、該雄ルアー部の該連通孔には該採血針の周りに充填材が充填されているものである。
【0029】
本態様に従う構造とされた採血管ホルダによれば、雄ルアー部がホルダ部の底壁から突出して一体的に設けられており、雄ルアー部に対して採血針が挿通されていると共に、雄ルアー部と採血針の間が充填材によって充填されている。これにより、雄ルアー部の内腔全体が空隙のままとされる場合に比して、雄ルアー部内の空間が狭くされており、採血時に雄ルアー部内を満たすための血液量を少なくすることができる。従って、人体から取り出す血液量を少なくしながら、必要な量の採血を効率的に行うことができて、患者への負荷が小さい低侵襲な採血を実現することができる。また、採血針が雄ルアー部よりも外方へ突出していることから、採血針の内腔への充填材の入り込みを容易に防止できるし、採血針の開口を容易に目視確認可能になると共に、雄ルアー部に接続される外部採血流路に対して採血針の先端開口を接近位置させることも可能になる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、上記[課題1]~[課題3]の少なくとも1つを解決することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の第1実施形態としての採血管ホルダを示す正面図
【
図3】
図1の採血管ホルダを側方から見た図であって、
図8のIII矢視に相当する図
【
図7】
図1に示す採血管ホルダの断面図であって、
図8のVII-VII断面に相当する図
【
図10】
図1の採血管ホルダの針先がプロテクタで保護された状態を示す斜視図
【
図11】
図7に示す採血管ホルダに大径の採血管をセットした状態の縦断面図
【
図12】
図7に示す採血管ホルダに小径の採血管をセットした状態の縦断面図
【
図13】本発明の第2実施形態としての採血管ホルダを示す縦断面図
【
図14】本発明の第3実施形態としての採血管ホルダを示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0033】
図1~
図9には、本発明の第1実施形態としての採血管ホルダ10が示されている。採血管ホルダ10は、皮膚に穿刺される医療用の採血針12(
図3等参照)と、後述する採血管78を保持するホルダ部14とを、備えている。以下の説明において、原則として、上下方向とは、採血針12の針軸方向(採血管ホルダ10の軸方向)である
図1中の上下方向を言う。また、原則として、採血針12の皮膚に穿刺される側である
図1中の上側を先端側とし、採血針12において採血管78が接続される側である
図1中の下側を基端側とする。周方向とは、特に断りがない限り、ホルダ部14の周壁28(後述)の周方向を言う。
【0034】
より詳細には、本実施形態の採血針12は、内腔16を有する中空針であって、先端と基端にそれぞれ鋭利な針先18,20(
図5,
図6参照)を備えた両頭針とされている。特に、先端側の針先18には、皮膚に穿刺し易いように、軸方向に対して傾斜する傾斜面で構成された刃面22が設けられている。
【0035】
採血針12は、ホルダ部14に取り付けられている。ホルダ部14は、全体として筒状とされており、採血管78を保持する本体部24を有している。本体部24は、硬質の合成樹脂によって形成されており、好適には内部の様子を視認可能となるように透明とされている。本体部24は、全体として略有底円筒形状とされており、円板状の底壁26と、底壁26の外周縁部から基端側へ延び出す筒状の周壁28とを有している。底壁26は、略軸直角方向に広がっており、中央部分を軸方向に貫通する連通孔30が形成されることで環状とされている。周壁28は、基端側へ向けて僅かに拡径しながら延びるテーパー筒状とされており、基端には外周へ突出するフランジ状部32が一体形成されている。
【0036】
本体部24の底壁26には、先端へ向けて突出する内筒部34が設けられている。内筒部34は、本体部24の周壁28よりも小径の円筒形状とされており、本実施形態では本体部24と一体形成されている。内筒部34は、底壁26の連通孔30の周囲において突出しており、連通孔30が筒状とされた内筒部34の中心孔を構成している。連通孔30の先端部分を構成する内筒部34の中心孔は、先端側が基端側よりも大径とされており、途中に基端側へ向けて小径となるテーパー状の部分を有している。
【0037】
内筒部34の周囲には、外筒部36が内筒部34と同心的に設けられている。外筒部36は、底壁26から先端へ向けて突出しており、内筒部34よりも突出寸法が小さくされている。外筒部36には、内周面に突出する環状の内側突起38と、外周面に突出する環状の外側突起40とが設けられており、内側突起38が外側突起40よりも先端側に位置している。
【0038】
本体部24の底壁26には、基端側へ突出する基端側突出部42が設けられている。基端側突出部42は、保持部44と覆い部45とを備えている。保持部44は連通孔30の周囲において基端側へ突出しており、保持部44の中心孔が連通孔30の基端部分を構成している。覆い部45は、保持部44よりも大径とされており、保持部44の周囲を囲むように設けられている。なお、本実施形態の基端側突出部42は、底壁26からの突出長さが内筒部34よりも短くされている。
【0039】
採血針12は、軸方向の途中が底壁26を貫通する連通孔30に挿通されており、ホルダ部14に対して接着等の手段で固定されている。本実施形態では、内筒部34の内周に設けられたテーパー状の部分が接着剤の貯留領域とされており、当該貯留領域に注入された接着剤によって、採血針12とホルダ部14とが相互に接着されている。採血針12は、内筒部34よりも先端側に突出していると共に、保持部44よりも基端側に突出している。
【0040】
内筒部34よりも先端側に突出した採血針12の先端側には、図示しないキャップが取り付けられていてもよく、それによって使用前に採血針12の先端側の針先18に誤って触れるのを防ぐことができる。このようなキャップを装着する場合には、例えば、内筒部34と外筒部36の径方向間に挿し入れられたキャップの基端部分が、内筒部34に外嵌される及び/又は外筒部36に内嵌されることにより、キャップを装着状態に保持することができる。本実施形態では、キャップが外筒部36に内嵌されて装着されるようになっており、キャップの外周面に設けられた突起が外筒部36の内側突起38と軸方向で係止されることによって、キャップの意図しない抜けが防止される。また、使用前の初期状態において外筒部36とキャップとに跨って貼付される未使用確認シールを採用することもできる。これによれば、未使用確認シールが切断されているかを目視で確認することにより、採血管ホルダ10が未使用であるか否かを判別することができる。
【0041】
ホルダ部14には、穿刺後の採血針12の先端側の針先18を保護するプロテクタが設けられていてもよく、それによって、使用後の誤穿刺を防ぐことができる。プロテクタは、採血針12の先端側の針先18を覆うものであればよいが、例えば、特許第7054465号公報のプロテクタ等が適用可能である。即ち、プロテクタ46は、採血針12に対して揺動可能な態様でホルダ部14に予め取り付けられており、採血針12の抜針後に採血針12に接近するように揺動させられることによって、採血針12の全体を収容して保護する(
図10参照)。このようなプロテクタ46を設ける場合には、例えば、外筒部36をプロテクタ46の装着部として利用することが可能であり、プロテクタ46側に設けられた筒状のカラー部47を外筒部36に外挿状態で取り付けることによって、プロテクタ46をホルダ部14に装着することができる。なお、プロテクタは、採血針12全体を覆うことが安全性等の観点からより望ましいが、例えば針先18だけを部分的に覆うものであってもよい。また、プロテクタ46は、カラー部47においてホルダ部14(外筒部36)に対して回転可能とされていることが望ましく、プロテクタ46がホルダ14に対して回転不能とされる場合には、採血針12の穿刺の邪魔にならないように、例えば採血針12の針先18の刃面22を上方へ向けた状態でホルダ14の上方にプロテクタ46が位置する態様が望ましい。
【0042】
基端側突出部42よりも基端側に突出した採血針12の基端部分は、ラバースリーブ48によって覆われている。ラバースリーブ48は、ゴム製の小径袋状の部材であって、ホルダ部14の基端側突出部42に取り付けられている。ラバースリーブ48は、先端側開口部が保持部44と覆い部45との径方向間に挿し入れられて、液密に取り付けられている。本実施形態では、
図5等に示すように、ラバースリーブ48の先端側開口部が保持部44に密着状態で外嵌されることによって液密性が確保されているが、例えば、ラバースリーブ48の先端側開口部が覆い部45の内周面に密着することによって液密性が確保されていてもよい。ラバースリーブ48は、保持部44と覆い部45との少なくとも一方(本実施形態では保持部44)に対して接着されていることが望ましい。採血針12は、ホルダ部14の軸方向の中央付近まで延びており、採血針12におけるホルダ部14の内側へ突出する部分の全体がラバースリーブ48によって覆われている。これにより、未使用時に採血針12の基端側の針先20が露出するのを防止することができる。
【0043】
採血針12の外周面と基端側突出部42の内周面との間には、僅かに隙間があり、採血針12の先端側から内腔16へ流入した血液が、ラバースリーブ48内を経由して、連通孔30へ流れ込むようになっている。連通孔30へ流れ込んだ血液は、基端側突出部42に設けられたフラッシュバック観察部50へ流れ込むようになっている。フラッシュバック観察部50は、連通孔30から後述する凹部52aまで径方向に貫通する孔によって構成されている。
【0044】
フラッシュバック観察部50が延びる径方向において、底壁26には、外周面に開放された孔状部としての凹部52が形成されている。凹部52は、
図5,
図9に示すように、基端側突出部42を挟んだ径方向の両側にそれぞれ設けられており、一方の凹部52aがフラッシュバック観察部50を通じて基端側突出部42の連通孔30に連通されていると共に、他方の凹部52bが基端側突出部42の連通孔30に連通されることなく独立して設けられている。凹部52bの底部には、フラッシュバック観察部50と略同じ直径で連通孔30までは達しない凹所が形成されている。なお、
図9では、見易さのために採血針12の図示が省略されている。
【0045】
フラッシュバック観察部50と連通された一方の凹部52aには、焼結フィルタ54が径方向に圧縮された状態で配されている。焼結フィルタ54は、例えば金属粉体やセラミック粉体等の焼結材料を加圧成形した後で加熱して焼結することで得られる多孔質フィルタであって、空気の通過を許容し、血液の通過を阻止する。従って、フラッシュバック観察部50に血液が流入する際に、フラッシュバック観察部50内の空気が焼結フィルタ54を通じて外部へ排出されると共に、フラッシュバック観察部50内へ流れ込んだ血液の外部への漏出が焼結フィルタ54によって防止される。焼結フィルタ54は、凹部52aの底側に嵌め付けられているが、例えば、凹部52aの開口部に嵌め付けられていてもよく、この場合には凹部52aの底側もフラッシュバックの観察用領域として用いられ得る。なお、焼結フィルタ54は、樹脂等の焼結助材(バインダ)を用いた焼結体であってもよいし、焼結助材を使用しないバインダレスの焼結体であってもよい。
【0046】
ところで、ホルダ部14における本体部24の周壁28には、周方向の4箇所にそれぞれ薄肉保持部56が設けられている。薄肉保持部56は、
図7,
図8に示すように、周壁28の他の部分よりも薄肉とされていると共に、内周側へ凸となるように湾曲した縦断面形状を有しており、内周端を通る仮想円Aの直径が周壁28の他の部分の内径よりも小さくされている。より具体的には、薄肉保持部56は、上側端部が下方へ向けて内周側へ傾斜する上テーパー部58とされていると共に、下側端部が上方へ向けて内周側へ傾斜する下テーパー部60とされており、それら上下テーパー部58,60の間が軸方向に対して略平行に広がる中間部62とされている。本実施形態の薄肉保持部56は、軸方向長さ寸法が周方向幅寸法よりも大きくされた略長円形の外形を有しており、上下テーパー部58,60が軸方向外側に向けて幅狭となっていると共に、中間部62が軸方向において略一定の幅寸法とされている。薄肉保持部56は、周壁28の軸方向の途中に設けられている。4つの薄肉保持部56,56,56,56は、周壁28において周方向で略均等に位置しており、周方向で相互に離隔して配された4つの薄肉保持部56,56,56,56によって、採血管78a(後述)を周方向の4箇所で保持する第1保持部64が構成されている。なお、薄肉保持部56の中間部62は、
図8に示す周壁28の横断面において、内周へ向けて凸となる湾曲形状とされている。
【0047】
ホルダ部14における本体部24の周壁28には、内周へ突出する突部66が周方向の4箇所にそれぞれ設けられている。突部66は、軸方向(上下方向)に直線的に延びる板状乃至はリブ状とされており、内周へ向けて径方向に突出している。突部66の軸方向基端部分である下部は、突出先端位置が上下方向において略一定とされた嵌合部68とされていると共に、突部66の軸方向先端部分である上部は、嵌合部68よりも内周側への突出寸法が大きく、突出先端位置が上方へ行くに従って内周側となるテーパー状の位置決め部70とされている。要するに、各突部66の下部(嵌合部68)において突出先端を通る仮想円Bの内径寸法が上下位置に拘らず略一定とされると共に、各突部66の上部(位置決め部70)において突出先端を通る仮想円Bの内径寸法が上方へ向けて小さくなっている。突部66は、薄肉保持部56よりも先端側(上側)に設けられて、薄肉保持部56よりも内周へ突出しており、各突部66の突出先端を通る仮想円Bの直径が、各薄肉保持部56の内周端を通る仮想円Aの直径よりも小さくされている。突部66は、上端が底壁26と一体的に連続しており、周壁28と底壁26とに跨って隅部に設けられている。このように有底円筒状のホルダ部14の隅部に設けられた突部66は、ホルダ部14の変形剛性の向上を図る補強リブとしての機能も有している。
【0048】
4つの突部66,66,66,66は、周方向において4つの薄肉保持部56,56,56,56と対応する位置に配されており、薄肉保持部56の先端側に突部66が連続して設けられている。本実施形態では、突部66の下端が薄肉保持部56の上端よりも下方に位置しており、突部66の下端部の周方向両側に薄肉保持部56が位置している。突部66は、周方向中央に関する対称形状とされた薄肉保持部56の周方向中央部分に位置決めされている。そして、周方向で相互に離隔して配された4つの突部66,66,66,66によって、採血管78b(後述)を周方向の4箇所で保持する第2保持部72が構成されている。
【0049】
図1~
図3に示すように、周方向で隣り合う薄肉保持部56,56の間には、周壁28の外周面に突出して上下方向に直線的に延びる滑止め部74が設けられている。滑止め部74によって、ホルダ部14の外周面を把持する際に、周方向に手が滑るのを防ぎやすくなっている。なお、滑止め部74は、手の滑りを抑えるものであれば、具体的な形状等が限定されるものではなく、例えば、粗面化(シボ)、凹凸、摩擦抵抗の大きい材質による部分的なコーティング等によって実現することもできる。
【0050】
周壁28の周上の一部には、刃面表示部76が設けられている。刃面表示部76は、周方向で隣り合う薄肉保持部56,56の周方向間に設けられており、採血針12の刃面22の向きと対応する周方向位置に設けられることによって、採血針12の刃面22の向きが容易に把握可能とされている。刃面表示部76は、凹部52a,52bが延びる径方向に対して直交する径方向に設けられており、穿刺時に刃面表示部76(刃面22)を患者の肌と反対側に向けることで、凹部52a,52bとフラッシュバック観察部50とが患者の穿刺部位に対して側方へ延びる向きとなる。刃面表示部76は、具体的な形状が特に限定されるものではなく、外部から認識可能であればよいが、本実施形態では、例えば周方向の一か所に設けられた上向きの矢印とされており、周壁28の外周面に突出して設けられていることで、目視だけでなく手触りによっても認識可能とされている。
【0051】
なお、採血管ホルダ10は、ホルダ部14に採血管78(後述)が挿入される前の状態において、周壁28の基端開口がフランジ状部32に貼着された通気性シートで覆われている。これによれば、例えば、ブリスターパックによる個別包装を行うことなく、そのままの状態で梱包容器中に収納した後、滅菌ガスによる滅菌処理を行うことで、ホルダ部14内を滅菌することができる。尤も、通気性シートは必須の構成ではなく、通気性シートを貼り付けない場合には、ブリスターパックによる個別包装を行う等して、梱包容器中に収納することができる。
【0052】
このような本実施形態に従う構造とされた採血管ホルダ10は、先ず、採血針12の先端側が患者の血管に穿刺される。穿刺時に、採血針12の刃面22は、患者の肌と反対側に向けられるが、本実施形態では、刃面22の向きをホルダ部14の刃面表示部76によって簡単に把握することが可能とされており、穿刺作業の容易化が図られている。
【0053】
採血針12の先端側が血管に適切に穿刺されると、血管から採血針12の内腔16に流入した血液が、内腔16の基端開口からラバースリーブ48内へ流れ込み、ラバースリーブ48内から連通孔30を介してフラッシュバック観察部50へ流れ込む。フラッシュバック観察部50に流れ込んだ血液は、ホルダ部14が透明とされていることによって外部から目視可能とされており、フラッシュバック観察部50内の血液を観察することによって、採血針12が血管に適切に穿刺されていることを確認できる。
【0054】
ホルダ部14に1つのフラッシュバック観察部50だけが設けられており、採血針12の内腔16へ流れ込んだ血液がより確実にフラッシュバック観察部50へ導かれることから、フラッシュバック観察部50の視認による穿刺の成否の確認がより高い信頼性で実現される。
【0055】
血液の流入前にフラッシュバック観察部50を満たす空気は、血液の流入時に通気性の焼結フィルタ54が配された凹部52aを通じて外部へ排出される。これにより、血液のフラッシュバック観察部50への流入経路上の空気が血液の流入を妨げることはない。また、フラッシュバック観察部50に流れ込んだ血液は、血液の通過を阻止する焼結フィルタ54によって、凹部52aを通じた外部への漏出を阻止されている。これにより、クランプ等で血液の流れを止めることなく、血液がフラッシュバック観察部50内に留まって、血液の漏出による汚染や患者への負担等が回避される。
【0056】
ホルダ部14は、フラッシュバック観察部50と連通された凹部52aと、凹部52aと同じ形状の凹部52bとを備えており、凹部52bは連通孔30から隔てられていることから血液の流入による色の変化が生じない。従って、血液の流入によるフラッシュバック観察部50の色の変化が、対比部としての凹部52bの形成部分との対比によって、より明確に使用者に認識される。
【0057】
凹部52a,52bが設けられた底壁26は、厚さが大きくされることで変形剛性の向上や底壁を含むホルダ部14の外周面の把持の容易化が図られており、例えば穿刺や留置針への接続(後述する第3実施形態参照)等の操作性の向上や、採血管78への入力の低減等が図られる。また、底壁26を単に厚くすると、成形時のヒケ等で寸法精度が低下して、採血針12の位置決め精度の低下等も懸念されるが、厚くされた底壁26に凹部52a,52bを設けたことで、そのような懸念も回避される。また、ホルダ部14の強度や剛性の向上等を検討する際にも、ホルダ部14の底壁26全体を単に厚肉にする場合に比して、軽量化、形成材料の削減、成形不良の防止などが期待できる。
【0058】
次に、採血針12が血管に穿刺された採血管ホルダ10のホルダ部14に対して、採取した血液を収容するための採血管78がセットされる。即ち、採血管78がホルダ部14の周壁28に下端開口から挿入されて、採血針12の基端部分が採血管78の上側開口を塞ぐゴム栓を貫通し、採血針12の内腔16の基端開口が採血管78内に位置させられる。これにより、患者の血管に穿刺された採血針12の内腔16を通じて採血管78内へ血液が採取される。なお、採血針12の基端側の針先20は、採血管78の上面(ゴム栓)に押し当てられることによって、採血針12の基端部分を覆うラバースリーブ48を貫通する。ラバースリーブ48は、採血管78のゴム栓を貫通することなく、ホルダ部14の底壁26と採血管78の上面との間に押し縮められて配されている。
【0059】
採血管ホルダ10は、
図11,
図12に示すように、太さの異なる採血管78を共通のホルダ部14によって、何れも保持することが可能とされている。以下の説明では、外径寸法が大きい太い採血管を採血管78a、外径寸法が小さい細い採血管を採血管78bとする。
【0060】
すなわち、太い採血管78aがホルダ部14に挿入されると、
図11に示すように、採血管78aは、ホルダ部14の4つの薄肉保持部56,56,56,56(第1保持部64)が外周面の周方向4箇所に押し当てられることによって、ホルダ部14に対して位置決めされて、ホルダ部14への挿入状態に保持される。また、採血管78aの挿入先端が4つの突部66,66,66,66に軸方向で突き当てられることにより、採血管78aのホルダ部14に対する軸方向の挿入端が規定される。これにより、太い採血管78aは、第1保持部64の内周へ適切に挿入されると共に、先端側への意図しない移動が防止されて、第1保持部64によって安定して保持される。尤も、突部66との当接による採血管78aの挿入端の規定(先端側への移動制限)は必須ではなく、例えば、採血管78aが突部66から基端側へ離れた位置で第1保持部64によって保持されるようにしてもよい。
【0061】
第1保持部64を構成する薄肉保持部56は、周壁28の他の部分よりも薄肉とされて、厚さ方向の弾性変形が許容されていることから、第1保持部64によって保持可能な採血管78aの外径寸法がより幅広く設定されている。しかも、薄肉保持部56は、略円形断面の周壁28において周上部分的に設けられていると共に、外形が略長円形とされていることから、薄肉化による過度な剛性の低下が防止されており、第1保持部64による採血管78の安定した保持が可能とされている。
【0062】
また、採血管78aが比較的に基端側で第1保持部64によって保持された状態では、ラバースリーブ48の弾性力(後述)等に対する大きな抗力が要求されないことから、採血管78aの外周面を弾性的に保持する複数の薄肉保持部56で第1保持部64を構成して、採血管78aを第1保持部64へ小さな力で簡単に挿入可能とすることができる。
【0063】
一方、第1保持部64の内径寸法(上述した仮想円Aの内径寸法)よりも細い採血管78bがホルダ部14に挿入される場合には、
図12に示すように、採血管78bが第1保持部64では保持されず、採血管78bが4つの突部66,66,66,66の各嵌合部68の内周側まで挿入される。これにより、4つの突部66,66,66,66の嵌合部68,68,68,68によって採血管78bの上端部分の外周面が保持されて、細い採血管78bが4つの突部66,66,66,66で構成された第2保持部72によって保持される。
【0064】
採血管78bの挿入先端は、各突部66の位置決め部70に軸方向で当接することによって、ホルダ部14に対する軸方向の挿入位置が規定されており、採血管78bの挿入先端部分が第2保持部72に適切に挿入されて保持される。
【0065】
突部66の嵌合部68は、軸方向に連続して延びていることから、第2保持部72に挿入された採血管78bは、嵌合部68によって軸方向の広い範囲に亘って連続的に保持される。これにより、第2保持部72による採血管78bの安定した保持が実現されると共に、第2保持部72で保持された採血管78bの傾き等も防止される。しかも、突部66を軸方向に直線的に延びる形状としたことにより、突部66を有するホルダ部14の内面の成形に際して、金型の成形品からの取外しが容易とされて、製造の容易化や不良の発生回避等が図られ得る。
【0066】
突部66は、比較的に薄肉とされた薄肉保持部56の軸方向延長上に配されており、下端部の径方向での変位が薄肉保持部56の変形によって許容され易くなっていることから、採血管78bを嵌合部68の内周へ挿入し易い。また、突部66の上部は、周壁28と底壁26とに跨って隅部に設けられていることから、径方向の変位が生じ難く、第2保持部72に挿入された採血管78bの安定した保持が可能とされている。
【0067】
採血管78がホルダ部14に挿入される際に、採血針16の基端側の針先20を覆うラバースリーブ48が採血管78の挿入先端面によって先端側へ押し込まれて、ラバースリーブ48が底壁26と採血管78の間で圧縮される。それゆえ、ホルダ部14に挿入された採血管78には、ラバースリーブ48の弾性力が、ホルダ部14への挿入位置に応じた大きさで基端側への押し戻し力として作用する。従って、採血管78の保持位置が比較的に基端側とされる場合には、採血管78に作用する押し戻し力が小さく、薄肉保持部56で構成された第1保持部64による外周面の弾性的な保持によって、採血管78を十分に保持することができる。一方、採血管78の保持位置がより先端側とされる場合には、採血管78に作用する押し戻し力が大きくなるが、先端側において採血管78を保持する第2保持部72が突部66によって構成されていることから、第2保持部72が第1保持部64よりも大きな保持力を得易い構造とされている。それゆえ、ラバースリーブ48の大きな弾性力が採血管78に作用しても、採血管78を第2保持部72によって安定して保持することができて、採血管78の基端側への移動や抜けを防ぐことができる。このように、第1保持部64と第2保持部72が相互に異なる構造とされていることにより、採血管78に作用する基端側への抜け力に対する抗力が、過剰になることなく必要な大きさで有効に発揮される。
【0068】
図13には、本発明の第2実施形態としての採血管ホルダ80が示されている。採血管ホルダ80は、採血針12と、採血管78を保持するホルダ部82とを備えている。以下の説明において、第1実施形態と実質的に同一の部材及び部位については、図中に同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0069】
ホルダ部82は、底壁26に設けられた凹部52aと凹部52bが、何れも有底凹状とされて連通孔30に対して非連通とされている。要するに、凹部52aに連通するフラッシュバック観察部50が設けられておらず、凹部52aは連通孔30から独立して形成されている。
【0070】
このような本実施形態に従う構造とされた採血管ホルダ10によれば、第1実施形態と同様に、底壁26の変形剛性が凹部52a,52bの形成によって大きく確保されて、底壁26の外周面を把持して操作する際の操作性の向上や、ホルダ部82で保持された採血管78への入力の低減などが図られる。また、上記の如き強度や剛性の向上を図りつつ、軽量化や形成材料の削減を実現できると共に、成形時のヒケの発生なども防止され易くなる。
【0071】
なお、本実施形態のホルダ部82は、第1実施形態のホルダ部14に対して、凹部52aと連通孔30を連通するフラッシュバック観察部50の有無においてのみ相違していることから、金型構造の大部分を共通化することができる。即ち、ホルダ部82では、ホルダ部14の成形金型における凹部52aとフラッシュバック観察部50を成形する入れ子に代えて、凹部52aだけを成形する入れ子を採用すればよく、他の部分では金型構造を共通とすることができる。このように、フラッシュバック観察部50を有する第1実施形態のホルダ部14と、フラッシュバック観察部50がない第2実施形態のホルダ部82とを、金型構造の共通化を図りながら作り分けることができる。
【0072】
図14には、本発明の第3実施形態としての採血管ホルダ90が示されている。採血管ホルダ90は、採血針92とホルダ部82とを備えている。
【0073】
採血針92は、ホルダ部82から先端側への突出部分の長さが短くされていると共に、先端側の針先18及び刃面22が設けられていない。採血針92の先端は、内筒部34よりも先端側となる外方へ突出していることが望ましい。尤も、採血針92は、必ずしもホルダ部82から先端側へ突出していなくてもよく、例えば、先端が内筒部34の内周に位置していてもよい。前記実施形態と同様に内筒部34は一体成形等によって本体部24と一体形成されており、内筒部34の内腔は、ホルダ部82の底壁26を貫通する連通孔30を構成している。そして、連通孔30に挿通された採血針92が内筒部34を貫通している。また、内筒部34の内周面と採血針92の外周面との間は、充填材としての接着剤94によって略全体が充填されており、採血針92が内筒部34に対して接着剤94で固定されている。本実施形態では、採血針92の先端が内筒部34よりも先端側へ僅かに突出していることから、接着剤94が中空針である採血針92の先端開口を覆ったり、接着剤94が採血針92の内腔16へ入るのを防ぐことができる。
【0074】
本実施形態の採血管ホルダ90は、ホルダ部82の内筒部34に留置針1が接続されることによって、採血に用いられる。留置針1は、
図14に二点鎖線で仮想的に示すように、例えば、先端に針先を有する中空針2の基端側に一対の翼部3,3を備えた針ハブ4が設けられている。更に、針ハブ4から基端側へ延び出すチューブ5が設けられており、チューブ5の基端に雌ルアーコネクタ6が設けられている。そして、中空針2が患者の血管に穿刺されると共に、雌ルアーコネクタ6が雄ルアー部としての内筒部34に外挿状態で取り付けられて接続されることにより、血液が採血針92の内腔16へ流入する。本実施形態では、採血針92の先端が雌ルアーコネクタ6が接続される内筒部34よりも先端側に位置していることから、採血針92の先端開口を外部採血流路であるチューブ5の基端開口(雌ルアーコネクタ6側の開口)に接近させることができる。
【0075】
このように、採血針を適宜に選択することによって、留置針1に接続されるルアーアダプタータイプの採血管ホルダ90を構成することも可能である。
【0076】
ルアーアダプタータイプの採血管ホルダ90において、雄ルアー部である内筒部34は、ホルダ部82と一体形成されて、ホルダ部82の底壁26から先端側へ突出しており、その内腔に採血針92が挿通されていると共に、採血針92との間が接着剤94によって充填されている。これらによって、内筒部34の内周側には、血液を採血管へ導くための採血針92の内腔16以外の空間が小さくされており、本実施形態では内腔16以外の空間がほとんどない。それゆえ、採血完了後に内筒部34内に留まる血液の量を少なくすることができて、必要な採血量を比較的に少量の血液採取によって効率的に得ることができ、脱血による患者の身体的及び精神的な負荷を軽減することができる。
【0077】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、前記実施形態に示した薄肉保持部56の具体的な形状は、あくまでも例示であって、必ずしも長円形の外形とされている必要はないし、軸方向両側が傾斜形状(上下テーパー部58,60)で軸方向中央部分が非傾斜形状(中間部62)に限定されるものでもない。
【0078】
突部は、軸方向に延びる形状とされていることが望ましいが、スポット的な突起状でもよいし、周方向に所定の長さで延びていてもよい。また、前記実施形態の突部66は、軸方向の全長に亘って略一定の厚さ寸法とされていたが、厚さ寸法が軸方向で変化していてもよく、例えば、軸方向上方へ向けて厚肉となる形状等も採用され得る。
【0079】
前記実施形態における突部66の位置決め部70は、嵌合部68に対する内周側への突出高さの差が上方へ向けて徐々に大きくなるテーパー形状とされていたが、例えば、嵌合部68に対する内周側への突出高さの差が上下方向で略一定とされた段差状の位置決め部も採用可能である。
【0080】
第1保持部64を構成する薄肉保持部56の数と、第2保持部72を構成する突部66の数は、採血管78を保持可能であれば何れも特に限定されず、互いに異なる数であってもよい。また、複数の薄肉保持部56の周方向での配置と、複数の突部66の周方向での配置も、何れも特に限定されない。具体的には、例えば、薄肉保持部56と突部66は、前記実施形態のように周方向で同じ位置に設けられて軸方向に連続して配置されていることが望ましいが、周方向で相互に離れた位置に設けられていてもよい。
【0081】
前記実施形態では、径方向の両側に凹部52a,52bが設けられた構造を例示したが、例えば、3つ以上の凹部52を設けることも可能である。この場合に、それら複数の凹部52は周方向で略均等に配されることが望ましいが、例えば径方向の両側に配された凹部52,52と、それらに対して直交する径方向に延びる凹部52とを設ける等、複数の凹部52を周方向で不均等に配置してもよい。
【0082】
フラッシュバック観察部50は、血液をより確実に流入させるために1つだけであることが望ましいが、複数設けることもできる。具体的には、例えば、前記第1実施形態の構造において、凹部52bと連通孔30をつなぐフラッシュバック観察部50が設けられていてもよい。この場合には、凹部52bにも焼結フィルタ54が配されていることが望ましい。
【0083】
ホルダ部14は、全体が内部を視認可能となる透明な材料で形成されている必要はなく、例えば、フラッシュバック観察部50の壁部が透明(半透明を含む)とされて内部を視認可能とされていれば、他の部分は不透明であってもよい。
【符号の説明】
【0084】
10 採血管ホルダ(第1実施形態)
12 採血針
14 ホルダ部
16 内腔
18 針先
20 針先
22 刃面
24 本体部
26 底壁
28 周壁
30 連通孔
32 フランジ状部
34 内筒部(雄ルアー部)
36 外筒部
38 内側突起
40 外側突起
42 基端側突出部
44 保持部
45 覆い部
46 プロテクタ
47 カラー部
48 ラバースリーブ
50 フラッシュバック観察部
52(52a,52b) 凹部(孔状部)
54 焼結フィルタ
56 薄肉保持部
58 上テーパー部
60 下テーパー部
62 中間部
64 第1保持部
66 突部
68 嵌合部
70 位置決め部
72 第2保持部
74 滑止め部
76 刃面表示部
78(78a,78b) 採血管
80 採血管ホルダ(第2実施形態)
82 ホルダ部
90 採血管ホルダ(第3実施形態)
92 採血針
94 接着剤(充填材)
1 留置針
2 中空針
3 翼部
4 針ハブ
5 チューブ
6 雌ルアーコネクタ