(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034971
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】建築物
(51)【国際特許分類】
E04H 5/02 20060101AFI20240306BHJP
E04D 13/064 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
E04H5/02 A
E04D13/064 D
E04D13/064 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139577
(22)【出願日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】岡本 真由美
(72)【発明者】
【氏名】茅岡 彰人
(57)【要約】
【課題】木質の板材で形成された張出し部分に強度を低下させることなく樋を設けることができるようにすることである。
【解決手段】外壁2から張り出す板状の張出し部分10を有する建築物1であって、張出し部分10が、木質の板材で形成され、上面11aに開口する溝11bが設けられた本体部11と、溝11bにおいて本体部11に固定された金属製の樋12と、を有することを特徴とする建築物1。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁から張り出す板状の張出し部分を有する建築物であって、
前記張出し部分が、
木質の板材で形成され、上面に開口する溝が設けられた本体部と、
前記溝において前記本体部に固定された金属製の樋と、を有することを特徴とする建築物。
【請求項2】
前記張出し部分が、木質の屋根の軒部分を構成している、請求項1に記載の建築物。
【請求項3】
前記張出し部分が、庇を構成している、請求項1に記載の建築物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば屋根の軒部分や庇など、外壁から張り出す板状の張出し部分を有する建築物に関する。
【背景技術】
【0002】
倉庫や工場、住宅などの種々の建築物は、玄関や窓から雨や日射などが侵入することを抑制するために、例えば屋根の軒部分や庇など、外壁から張り出す張出し部分が設けられるのが一般的である。
【0003】
従来、このような建築物において、張出し部分の上面に溝状の樋を設けることで、張出し部分の先端から雨水等が垂れ落ちることを抑制するようにしたものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、木材の利用を促進するために、倉庫や工場などの建築物においても、屋根や庇などを木質の板材で形成することが提案されている。
【0006】
しかし、木質の板材で形成された張出し部分では、上面に溝状の樋を設けた構成とすると、樋を設けた部分において張出し部分の強度が不足するので、樋を設けることが困難になる、という問題点があった。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、木質の板材で形成された張出し部分に強度を低下させることなく樋を設けることができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の建築物は、外壁から張り出す板状の張出し部分を有する建築物であって、前記張出し部分が、木質の板材で形成され、上面に開口する溝が設けられた本体部と、前記溝において前記本体部に固定された金属製の樋と、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の建築物は、上記構成において、前記張出し部分が、木質の屋根の軒部分を構成しているのが好ましい。
【0010】
本発明の建築物は、上記構成において、前記張出し部分が、庇を構成しているのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、木質の板材で形成された張出し部分に強度を低下させることなく樋を設けることができるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る建築物の正面視での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明の一実施形態に係る建築物1について詳細に例示説明する。
【0014】
本実施形態に係る建築物1は、
図1に示すように、例えば、外壁2、内壁3、屋根支持構造4及び屋根5を有する構成とすることができる。この建築物1は、倉庫や工場などに用いることができるものであり、外壁2と内壁3との間に、屋根5と床7との間で広がる無柱空間6を有している。
【0015】
内壁3は、無柱空間6に隣接する空間を無柱空間6に対して区画している。屋根支持構造4はトラス構造を有しており、外壁2と内壁3との間に架け渡されて屋根5を支持している。
【0016】
建築物1は、外壁2及び内壁3に垂直な一対の正面壁8(
図1では一方のみを示す)をさらに有し、無柱空間6が、四方が外壁2、内壁3及び一対の正面壁8に囲われて閉塞された構成であってもよい。
【0017】
なお、建築物1の内壁3、屋根支持構造4などの構成は、上記に限らず種々変更可能である。また、建築物1は、倉庫や工場などに用いることができるものに限らず、例えば住宅などの他の用途に用いることができるものであってもよい。
【0018】
屋根5は、木質の板材(例えば木質の断熱パネル)で形成されており、外壁2と内壁3との間に架け渡されるとともに屋根支持構造4により支持されて無柱空間6の上方を覆っている。本実施形態では、屋根5は、内壁3の側よりも外壁2の側が低くなるように傾斜している。
【0019】
屋根5は、その上面に縦ハゼ葺きなどの屋根葺き構造5aを設けた構成とすることもできる。
【0020】
図2、
図3に示すように、屋根5は、外壁2の側において外壁2から外側に張り出している。屋根5の外壁2から張り出した張出し部分10は、木質の屋根5の軒部分を構成している。張出し部分10は、屋根5と同様に傾斜するとともに、その先端は外壁2に沿って真っ直ぐに延びた形状となっている。
【0021】
張出し部分10は、屋根5の一部として木質の板材で形成された本体部11を有している。本体部11には、その上面11aに開口する溝11bが設けられている。本実施形態では、溝11bは、本体部11の先端側寄りの部分の上面11aに開口し、外壁2と平行に、本体部11の外壁2に沿う方向の一端から他端にまで真っ直ぐに延びて設けられており、その断面は矩形形状となっている。
【0022】
本体部11は、その下面11cに、例えばCLT(Cross Laminated Timber)材などで形成された化粧板11dが張り付けられた構成としてもよい。。これにより、張出し部分10を下方から視認したときの美観を高めることができる。
【0023】
張出し部分10には、金属製の樋12が設けられている。本実施形態では、樋12は、鋼材製である。樋12は、溝11bにおいて本体部11に固定され、上向きに開口して配置されている。樋12は、溝11bに沿って本体部11の外壁2に沿う方向の一端から他端にまで真っ直ぐに延びている。張出し部分10に樋12が設けられることで、張出し部分10を流れる雨水等を樋12により集めて、張出し部分10の先端からの雨水等の垂れ落ちを抑制することができる。
【0024】
なお、詳細は図示しないが、樋12の長手方向の両端部ないし途中部分に、樋12が集めた雨水等を排出するための縦樋を設けるようにしてもよい。
【0025】
樋12は、その外周面を溝11bの内周面に密着させた状態で、例えば接着剤等により溝11bにおいて本体部11に固定されている。本実施形態では、樋12は、平な板状の底壁12aと、底壁12aに垂直な一対の側壁12bとを有する断面コの字形状となっており、底壁12aを溝11bの底面に密着させ、一対の側壁12bをそれぞれ溝11bの側面に密着させた状態で本体部11に固定されている。
【0026】
このように、本実施形態の建築物1では、木質の板材で形成された本体部11の上面11aに溝11bを設け、この溝11bにおいて金属製の樋12を本体部11に固定することで樋12を設ける構成としたので、木質の板材で形成された本体部11に溝11bを形成しても、当該溝11bが設けられた部分における本体部11の強度を金属製の樋12によって補強されるようにして、木質の板材で形成された張出し部分(軒部分)10に、その強度を低下させることなく樋12を設けることができる。
【0027】
また、本体部11の板厚を増加させることなく、木質の板材で形成された張出し部分10に、その強度を低下させることなく樋12を設けることができるので、本体部11及び本体部11が一体に設けられる屋根5として適切な厚みの木質の板材を用いることができるようにして、張出し部分10に樋12を設けた建築物1の建築コストを低減することができる。
【0028】
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0029】
例えば、前記実施形態では、溝11bは断面が矩形形状とされ、金属製の樋12は断面がコの字形状とされているが、これに限らず、例えば溝11bの断面を半円形とし、樋12の断面を円弧状とするなど、他の形状であってもよい。
【0030】
また、前記実施形態では、樋12を鋼材製としたが、これに限らず、本体部11を補強することができるものであれば、樋12を他の金属製としてもよい。
【0031】
さらに、前記実施形態では、張出し部分10が屋根5の軒部分である場合を示したが、これに限らず、
図4に示すように、張出し部分10は、屋根5とは別に、窓20などの上方において外壁2から張り出して設けられた庇に構成されていてもよい。この場合においても、本体部11は外壁2から張り出して設けられ、その上面11aに設けられた溝11bに金属製の樋12が固定された構成とされることで、木質の板材で形成された庇(張出し部分10)に、その強度を低下させることなく樋12を設けることができる。
【符号の説明】
【0032】
1 建築物
2 外壁
3 内壁
4 屋根支持構造
5 屋根
5a 屋根葺き構造
6 無柱空間
7 床
8 正面壁
10 張出し部分
11 本体部
11a 上面
11b 溝
11c 下面
11d 化粧板
12 樋
12a 底壁
12b 側壁
20 窓