(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034976
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】情報処理装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/04 20120101AFI20240306BHJP
【FI】
G06Q50/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139585
(22)【出願日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】521091446
【氏名又は名称】一般社団法人生コン・残コンソリューション技術研究会
(74)【代理人】
【識別番号】100190621
【弁理士】
【氏名又は名称】崎間 伸洋
(74)【代理人】
【識別番号】100212510
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 翔
(72)【発明者】
【氏名】野口 貴文
(72)【発明者】
【氏名】藤井 成厚
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC03
(57)【要約】
【課題】セメント製品に関するカーボンクレジットを適切に発行又は取引する前提として重要な技術を提案する。
【解決手段】サーバ1は、セメント製品CPの製品情報に応じて求められる吸収能力に基づいて、当該セメント製品の二酸化炭素の吸収量を算出する吸収量算出部31と、算出された吸収量を、セメント製品ごとに関連付けて管理する使用状況管理部33と、セメント製品の使用状況や使用環境に基づいて、吸収量を随時補正する吸収量補正部34とを備え、二酸化炭素の吸収量を信頼性が増したデータベースにて管理する。また、サーバ1は、算出された吸収量に基づいて発行されたカーボンクレジットを、セメント製品ごとに関連付けて記録する認証記録部36をさらに備えてカーボンクレジットを管理し、安心して取引が行えるものとする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温室効果ガス吸収性製品に関する製品情報に応じて求められる温室効果ガス吸収能力に基づいて、前記温室効果ガス吸収性製品が利用されなくなるまでの間の過程における温室効果ガスの吸収量の推定量を取得する吸収量取得手段と、
取得された前記吸収量を、前記温室効果ガス吸収性製品ごとに関連付けて管理する使用状況管理手段と、
前記温室効果ガス吸収性製品の処理状況、使用状況又は使用環境に関する経過情報に基づいて、前記温室効果ガス吸収性製品ごとに関連付けられた前記吸収量を随時補正する吸収量補正手段と、
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
温室効果ガス吸収性製品に関する製品情報に応じて求められる温室効果ガス吸収能力に基づいて、前記温室効果ガス吸収性製品が利用されなくなるまでの間の過程における温室効果ガスの吸収量の推定量を取得する吸収量取得手段と、
取得された温室効果ガスの吸収量を、前記温室効果ガス吸収性製品ごとに関連付けて管理する使用状況管理手段と、
前記温室効果ガス吸収性製品について発行されたカーボンクレジットを、前記温室効果ガス吸収性製品と照合し関連付けて記録する認証記録手段と、
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項3】
前記吸収量補正手段によって補正された補正履歴及び補正結果を前記温室効果ガス吸収性製品ごとに関連付けて管理する履歴管理手段を、さらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記製品情報は、前記温室効果ガス吸収性製品に用いられた原材料の種類、原材料の量、配合、前記温室効果ガス吸収性製品の通気性、含水率、強度、施工条件のうち少なくとも1つ以上を含み、
前記吸収量取得手段は、前記製品情報に応じて求められる吸収能力に基づいて前記吸収量の推定量を取得する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記製品情報は、前記温室効果ガス吸収性製品における経年及び耐用年数を含む、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項6】
将来発行される前記カーボンクレジットの取引価格を決定する取引価格決定手段をさらに備える、
ことを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項7】
温室効果ガス吸収性製品に関する製品情報に応じて求められる温室効果ガス吸収能力に基づいて、前記温室効果ガス吸収性製品が利用されなくなるまでの間の過程における温室効果ガスの吸収量の推定量を取得する吸収量取得ステップと、
取得された前記吸収量を、前記温室効果ガス吸収性製品ごとに関連付けて管理する使用状況管理ステップと、
前記温室効果ガス吸収性製品の処理状況、使用状況又は使用環境に関する経過情報に基づいて、前記温室効果ガス吸収性製品ごとに関連付けられた前記吸収量を随時補正する吸収量補正ステップと、
を有することを特徴とする情報処理方法。
【請求項8】
温室効果ガス吸収性製品に関する製品情報に応じて求められる温室効果ガス吸収能力に基づいて、前記温室効果ガス吸収性製品が利用されなくなるまでの間の過程における温室効果ガスの吸収量の推定量を取得する吸収量取得ステップと、
取得された前記吸収量を、前記温室効果ガス吸収性製品ごとに関連付けて管理する使用状況管理ステップと、
前記温室効果ガス吸収性製品について発行されたカーボンクレジットを、前記温室効果ガス吸収性製品と照合し関連付けて記録する認証記録ステップと、
を有することを特徴とする情報処理方法。
【請求項9】
温室効果ガス吸収性製品に関する製品情報に応じて求められる温室効果ガス吸収能力に基づいて、前記温室効果ガス吸収性製品が利用されなくなるまでの間の過程における温室効果ガスの吸収量の推定量を取得する吸収量取得ステップと、
取得された前記吸収量を、前記温室効果ガス吸収性製品ごとに関連付けて管理する使用状況管理ステップと、
前記温室効果ガス吸収性製品の処理状況、使用状況又は使用環境に関する経過情報に基づいて、前記温室効果ガス吸収性製品ごとに関連付けられた前記吸収量を随時補正する吸収量補正ステップと、
をコンピュータによって実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項10】
温室効果ガス吸収性製品に関する製品情報に応じて求められる温室効果ガス吸収能力に基づいて、前記温室効果ガス吸収性製品が利用されなくなるまでの間の過程における温室効果ガスの吸収量の推定量を取得する吸収量取得ステップと、
取得された前記吸収量を、前記温室効果ガス吸収性製品ごとに関連付けて管理する使用状況管理ステップと、
前記温室効果ガス吸収性製品について発行されたカーボンクレジットを、前記温室効果ガス吸収性製品と照合し関連付けて記録する認証記録ステップと、
をコンピュータによって実行させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化の原因である温室効果ガスは、人間の経済活動等によってその排出量が大幅に増加しており、そのため、世界の平均気温は1880年から2012年の間に0.85℃上昇しているといわれている。また、このまま状況が改善されずに温暖化が進めば、21世紀末には、最大で平均気温が4.8℃も上昇する可能性があるとされている。
【0003】
1997年に京都議定書が策定されて以降、温室効果ガス排出量の削減が義務付けられ、企業や組織等のCSR(Corporate Social Responsibility)やCSV(Creating Shared Value)の一環として、カーボンクレジット(二酸化炭素排出権)の取引が注目されている。このカーボンクレジットとは、省エネや植林活動等によって削減又は吸収された、温室効果ガスの一つである二酸化炭素(CO2)の効果を定量化(数値化)し、取引可能な形態にしたものである。
【0004】
ところで、コンクリートには、二酸化炭素を固定(吸収)することが知られている。つまり、コンクリートの材料の一つであるセメントは水と反応して水酸化カルシウム(Ca(OH)2)等のセメント水和物が生成する。一方、コンクリートの微細な間隙(毛管孔)を通じて表面から内部へ浸透した二酸化炭素は、このセメント水和物と反応し、炭酸カルシウム(CaCO3)として固定される。
【0005】
また、二酸化炭素排出量の削減のために、その排出量の測定や排出権の取引につき種々の技術が提案されている。例えば、コンクリート自体が有する二酸化炭素吸収能力に着目し、コンクリート製の部品、構造物又は廃材による二酸化炭素吸収能力を鑑定すると共に、二酸化炭素排出権を活用するシステムが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1は、コンクリートの素材属性に応じて二酸化炭素吸収能力を算出しているため、時間と共に変化する二酸化炭素吸収能力が不明確となり、二酸化炭素排出権の取引参画への阻害要因となっていた。
【0008】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、温室効果ガス吸収性製品に関するカーボンクレジットを適切に発行又は取引する前提として重要な技術を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、
温室効果ガス吸収性製品に関する製品情報に応じて求められる温室効果ガス吸収能力に基づいて、前記温室効果ガス吸収性製品が利用されなくなるまでの間の過程における温室効果ガスの吸収量の推定量を取得する吸収量取得手段と、
取得された前記吸収量を、前記温室効果ガス吸収性製品ごとに関連付けて管理する使用状況管理手段と、
前記温室効果ガス吸収性製品の処理状況、使用状況又は使用環境に関する経過情報に基づいて、前記温室効果ガス吸収性製品ごとに関連付けられた前記吸収量を随時補正する吸収量補正手段と、
を備えることを特徴とする情報処理装置である。
【0010】
また、本発明の一態様は、
温室効果ガス吸収性製品に関する製品情報に応じて求められる温室効果ガス吸収能力に基づいて、前記温室効果ガス吸収性製品が利用されなくなるまでの間の過程における温室効果ガスの吸収量の推定量を取得する吸収量取得手段と、
取得された温室効果ガスの吸収量を、前記温室効果ガス吸収性製品ごとに関連付けて管理する使用状況管理手段と、
前記温室効果ガス吸収性製品について発行されたカーボンクレジットを、前記温室効果ガス吸収性製品と照合し関連付けて記録する認証記録手段と、
を備えることを特徴とする情報処理装置である。
【0011】
また、前記吸収量補正手段によって補正された補正履歴及び補正結果を前記温室効果ガス吸収性製品ごとに関連付けて管理する履歴管理手段を、さらに備えるとよい。
【0012】
また、前記製品情報は、前記温室効果ガス吸収性製品に用いられた原材料の種類、原材料の量、配合、前記温室効果ガス吸収性製品の通気性、含水率、強度、施工条件のうち少なくとも1つ以上を含み、前記吸収量取得手段は、前記製品情報に応じて求められる吸収能力に基づいて前記温室効果ガスの吸収量の推定量を取得するとよい。
【0013】
また、前記製品情報は、前記温室効果ガス吸収性製品における経年及び耐用年数を含むとよい。
【0014】
また、将来発行される前記カーボンクレジットの取引価格を決定する取引価格決定手段を、さらに備えるとよい。
【0015】
また、本発明の一態様は、
温室効果ガス吸収性製品に関する製品情報に応じて求められる温室効果ガス吸収能力に基づいて、前記温室効果ガス吸収性製品が利用されなくなるまでの間の過程における温室効果ガスの吸収量の推定量を取得する吸収量取得ステップと、
取得された前記吸収量を、前記温室効果ガス吸収性製品ごとに関連付けて管理する使用状況管理ステップと、
前記温室効果ガス吸収性製品の処理状況、使用状況又は使用環境に関する経過情報に基づいて、前記温室効果ガス吸収性製品ごとに関連付けられた前記吸収量を随時補正する吸収量補正ステップと、
を有することを特徴とする情報処理方法である。
【0016】
また、本発明の一態様は、
温室効果ガス吸収性製品に関する製品情報に応じて求められる温室効果ガス吸収能力に基づいて、前記温室効果ガス吸収性製品が利用されなくなるまでの間の過程における温室効果ガスの吸収量の推定量を取得する吸収量取得ステップと、
取得された温室効果ガスの吸収量を、前記温室効果ガス吸収性製品ごとに関連付けて管理する使用状況管理ステップと、
前記温室効果ガス吸収性製品について発行されたカーボンクレジットを、前記温室効果ガス吸収性製品と照合し関連付けて記録する認証記録ステップと、
を有することを特徴とする情報処理方法である。
【0017】
また、本発明の一態様は、
温室効果ガス吸収性製品に関する製品情報に応じて求められる温室効果ガス吸収能力に基づいて、前記温室効果ガス吸収性製品が利用されなくなるまでの間の過程における温室効果ガスの吸収量の推定量を取得する吸収量取得ステップと、
取得された前記吸収量を、前記温室効果ガス吸収性製品ごとに関連付けて管理する使用状況管理ステップと、
前記温室効果ガス吸収性製品の処理状況、使用状況又は使用環境に関する経過情報に基づいて、前記温室効果ガス吸収性製品ごとに関連付けられた前記吸収量を随時補正する吸収量補正ステップと、
をコンピュータによって実行させるためのコンピュータプログラムである。
【0018】
また、本発明の一態様は、
温室効果ガス吸収性製品に関する製品情報に応じて求められる温室効果ガス吸収能力に基づいて、前記温室効果ガス吸収性製品が利用されなくなるまでの間の過程における温室効果ガスの吸収量の推定量を取得する吸収量取得ステップと、
取得された温室効果ガスの吸収量を、前記温室効果ガス吸収性製品ごとに関連付けて管理する使用状況管理ステップと、
前記温室効果ガス吸収性製品について発行されたカーボンクレジットを、前記温室効果ガス吸収性製品と照合し関連付けて記録する認証記録ステップと、
をコンピュータによって実行させるためのコンピュータプログラムである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、温室効果ガス吸収性製品に関するカーボンクレジットを適切に発行又は取引する前提として重要な技術を提案することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】二酸化炭素吸収量力トレースシステムの概要を示す図である。
【
図2】二酸化炭素吸収量力トレースシステムの構成を示す図である。
【
図5】二酸化炭素吸収量トレース処理の一例を示すフローチャートである。
【
図6】二酸化炭素吸収量のトレースの一例を示す図である。
【
図7】カーボンクレジット管理処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】カーボンクレジット管理処理の一例を示すフローチャートである。
【
図9】カーボンクレジットにおける取引価格決定処理の一例を示すフローチャートである。
【
図10】カーボンクレジットの取引の一例を示す図である。
【
図11】カーボンクレジットの取引におけるコールオプションの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<概要>
以下、本実施形態について、図面を用いて説明する。
図1は、本実施形態に係る二酸化炭素吸収量力トレースシステムの概要を示す図である。
本実施形態では、サーバ1は、セメント製品CPが有する二酸化炭素吸収能力に基づいて、当該セメント製品CPが将来に渡って吸収する二酸化炭素の吸収量(推定値)を算出する。また、サーバ1は、各種情報に基づいて、算出された二酸化炭素の吸収量(推定値)を随時補正する。なお、サーバ1は、補正された二酸化炭素の吸収量等を履歴管理する。これにより、カーボンクレジットの取引者に対して、信頼性を高めることができる。
また、セメント製品以外にも温室効果ガスを吸収し固定する能力を有する物を以下、「温室効果ガス吸収性製品」とする。例えば、他には、バイオマス由来のバイオ燃料などがある。
【0022】
なお、本実施形態では、サーバ1は、二酸化炭素の吸収量に対応するカーボンクレジット(将来発行される予定のカーボンクレジット)を取引者CTへ売買する取引を行う例についても説明する。
また、サーバ1は、算出されたセメント製品CPの吸収量に基づいて、カーボンクレジット認証機関により発行されたカーボンクレジットを管理する。すなわち、取引者CTは、サーバ1を介してカーボンクレジットの取引を行うことができる。
なお、本実施形態では、サーバ1は、二酸化炭素吸収量トレース装置、及びカーボンクレジット管理装置として機能するが、何れか一方として機能してもよい。また、カーボンクレジットは二酸化炭素に限定されず、温室効果ガス全般を対象とする。
【0023】
なお、サーバ1は、
図1に示すように、以下の各種情報を取得するものとする。
・セメント製品事業者PBから、セメント製品CPの製品情報を取得
・セメント製品事業者PBから、セメント製品CPの使用状況に関する経過情報を取得
・情報収集会社DGから、セメント製品CPの処理状況又は使用環境に関する経過情報を取得
・セメント製品事業者PBから、セメント製品CPの製造計画情報を取得
・セメント生産者PRから、セメントCEの販売情報を取得
【0024】
セメント製品CPは、原材料であるセメントCEそのもの、又はセメントCEを原材料として作られたコンクリート製品である。
コンクリート製品には、予め工場で製造されたプレキャスト製品、現場でコンクリートを打設した建造物(構造物)、廃材利用製品(廃セメント材)、セメントCEに水を練り混ぜた糊状のセメントペースト、セメントペーストに砂を混ぜたセメントモルタル等が含まれる。
また、コンクリート製品には、例えば、マンションやビルディング、ダム、港湾、橋梁といった巨大建築物、高架道路の支柱、縁石、護岸ブロック、枕木、桁、電柱、塀、等が含まれる。また、コンクリート製品には、ある一定の地域の建設物、例えば、千代田区のビル群のような、所定の範囲に設けられた建設物等(バルク品)等が含まれる。
なお、土壌の中には、細菌やカビ等たくさんの微生物がおり、土壌有機物を分解して二酸化炭素を出している。ゆえに、セメント製品CPとして、例えば、ビルの土台に埋め込まれる杭(パイル)や、土中に埋設されるヒューム管、マンホール、側溝も含んでもよい。
本実施形態では、サーバ1は、セメント製品CPの製造時(例えば、建設時)から廃棄時(例えば、解体時)までの間、或いは二次用途に使用可能なコンクリート廃材の発生時から廃棄時までの間、といった当該セメント製品が利用されなくなるまでの間の二酸化炭素の吸収能力を推定する。本実施形態の温室効果ガス吸収性製品には、近年新たに開発された「CCC」(Calcium Carbonate Concrete/カルシウムカーボネートコンクリート)が含まれる。
「CCC」とは、粉砕した使用済みコンクリートに化学処理を行って、二酸化炭素の吸収能力と固定能力を増大させたコンクリート製品である。
この製品の化学処理(製造方法)を詳述する。まず使用済みコンクリートを砕いてCaを取り出しやすい状態で水槽に入れ、同時に空気中からCO2を取り込む。次に、水槽内のCaとCO2の石灰岩に戻す反応を利用して結合材となる炭酸カルシウムを生成する。最後に、砕いた使用済みコンクリートの粒子間に生成した炭酸カルシウムを析出、硬化させて、コンクリート製品とする。
なお、温室効果ガス吸収性製品には、上述のバイオ燃料の他、温室効果ガスの吸収や固定の能力を増大させた、様々な処理方法により得られるコンクリート製品も含まれる。
また、本明細書において「処理状況」とは、回収したセメント製品を粉砕し上述の化学処理を行うことで、温室効果ガス吸収能力(吸収限界)を増大させた性状の状況をいう。
【0025】
セメント製品事業者PBは、セメント製品CPを製造する事業者である。セメント製品事業者PBとしては、例えば、建設会社、ビルオーナ、セメント製品製造者、解体業者、廃セメント材二次利用者等を挙げることができる。
情報収集会社DGは、使用環境に関する経過情報を収集する事業者である。
セメント生産者PRは、セメント製品CPの原材料となるセメントCEを生産し販売する事業者である。
カーボンクレジット認証機関CMは、所定のカーボンオフセット認証制度に基づいて、カーボンオフセット認証、又はカーボンニュートラル認証等を行う機関である。
取引者CTは、カーボンクレジットの販売や購入等の取引を行う者(ユーザ)である。
【0026】
製品情報は、セメント製品CPに関する吸収能力を求めるためのパラメータである。製品情報としては、例えば、セメント製品CPの名称や品番、セメントCEの種類、セメントCEの量及び配合、セメント含有量、通気性、含水率、強度、表面積(特に空気に接する表面部分の面積)、セメント製品CPの表層部における空隙の大きさ又は容積(%)といった物理的構造の他、セメント製品CPの種類(名称)や大きさ(数量)、重さ、耐用年数、経年、施工条件等を挙げることができる。なお、耐用年数は、事業用不動産の鉄筋コンクリート造の建て替え年数から47年が目安である。同様に、非事業用の耐用年数は70年が目安である。
【0027】
経過情報は、時系列ごとのセメント製品CPの状態である。経過情報としては、例えば、セメント製品CPの生産(建設)日や、セメント製品CPの設置(建設)場所(住所)、設置方法、周囲の環境(地理的状況)のほか、当該セメント製品CPの通気性、含水率、強度、配合、施工条件、等を含むファクタ等を挙げることができる。
【0028】
製造計画情報は、製造を予定しているセメント製品CPの製品情報である。
【0029】
販売情報は、セメントCEの販売日時や販売先、セメントCEの種類、量といったセメントCEに関する情報である。
【0030】
<システム構成>
図2は、二酸化炭素吸収量力トレースシステムの構成を示す図である。本実施形態に係る二酸化炭素吸収量力トレースシステムにおいて、サーバ1、セメント製品事業者端末2、セメント生産者端末3、モニタリング装置4、カーボンクレジット管理装置5と、取引者端末6等が、インターネット等の所定のネットワークNを介して相互に接続して構成される。
【0031】
サーバ1は、セメント製品CPが二酸化炭素の吸収量をトレースする装置であると共に、トレースされた二酸化炭素の吸収量に基づいて発行されたカーボンクレジット、及び将来発行される予定のカーボンクレジットを管理する装置であって、演算処理機能や、通信機能を有する。このサーバ1は、例えば、サーバ装置や、パーソナルコンピュータ等の電子機器により実現される。
【0032】
セメント製品事業者端末2は、セメント製品事業者PBが操作するコンピュータであり、演算処理機能、通信機能を有する装置である。このセメント製品事業者端末2は、例えば、デスクトップ又はラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、スマートフォン等により実現される。
【0033】
セメント生産者端末3は、セメント生産者PRが操作するコンピュータであり、演算処理機能、通信機能を有する装置である。このセメント生産者端末3もまた、例えば、デスクトップ又はラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、スマートフォン等により実現される。
【0034】
モニタリング装置4は、情報収集会社DGに設置された装置であって、演算処理機能や、通信機能を有する。このモニタリング装置4は、例えば、サーバ装置や、パーソナルコンピュータ等の電子機器により実現される。モニタリング装置4としては、例えば、セメント製品CPの使用環境が分かる気象情報を収集、測定する気象観測装置を挙げることができる。
モニタリング装置4によって取得される使用環境に関する経過情報としては、例えば、温度(気温)や湿度、大気中のCO2濃度、日照時間、大雨、大雪、強風、暴風雪、高波、雷、降ひょう、潮位、等といった気象情報を挙げることができる。ゆえに、モニタリング装置4より定期的に使用環境に関する経過情報を取得する。
【0035】
カーボンクレジット管理装置5は、二酸化炭素の吸収量に基づいてカーボンクレジットを発行する装置であって、演算処理機能や、通信機能を有する。
カーボンクレジットとは、二酸化炭素の排出削減量や吸収量を測定し、この排出削減量や吸収量をクレジットとして認証することで発行されるものであって、取引の対象となる。このカーボンクレジットは、形を有しない無体物であるため、適切な管理が行われないと重複して取引されたり、実際の二酸化炭素削減の裏付けがなかったりする心配が生じる。そのため、カーボンクレジットは、その裏付けとして実際の二酸化炭素の削減や吸収があることを保証する適切な認定制度と、同一のカーボンクレジットが重複して取引されないような適切な管理が求められる。ゆえに、カーボンクレジットを有効化するために、カーボンクレジット認証機関のような独立した第三者審査機関が、一連のプロセスや証憑を総合的に評価、判断して、審査を行うことが求められている。
なお、カーボンクレジット管理装置5は、上述のカーボンクレジット認証機関とは異なる別機関に設置された装置である。カーボンクレジット管理装置5は、セメント製品CPを取り巻く環境に基づいて、将来の吸収量に基づいて将来発行される予定のカーボンクレジットの予測値を算出する。カーボンクレジット管理装置5は、例えば、サーバ装置や、パーソナルコンピュータ等の電子機器により実現される。
【0036】
取引者端末6は、取引者CTが操作するコンピュータであり、演算処理機能、通信機能を有する装置である。この取引者端末6もまた、例えば、デスクトップ又はラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、スマートフォン等により実現される。
【0037】
<ハードウェア構成>
図3は、本実施形態に係るサーバ1のハードウェア構成を示すブロック図である。
サーバ1は、CPU(Central Processing Unit)11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、バス14と、入出力インターフェース15と、出力部16と、入力部17と、記憶部18と、通信部19と、ドライブ20と、を備えている。
【0038】
CPU11は、ROM12に記憶されているプログラム、又は、記憶部18からRAM13にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。すなわち、CPU11は、プログラムに従って各種の処理を実行する、サーバ1全体の動作を制御するプロセッサである。また、プログラムは、例えば、サーバ1の各部を動作させるためのオペレーティングシステムやファームウェア、或いは、後述の機能ブロックを実現するためのアプリケーションソフトウェアといったプログラムである。
【0039】
RAM13には、CPU11が各種の処理を実行する上において必要なデータ等も適宜記憶される。
CPU11、ROM12及びRAM13は、バス14を介して相互に接続されている。このバス14にはまた、入出力インターフェース15も接続されている。
入出力インターフェース15には、出力部16、入力部17、記憶部18、通信部19及びドライブ20が接続されている。
【0040】
出力部16は、ディスプレイやスピーカ等で構成され、各種情報を画像や音声として出力する。
入力部17は、キーボードやマウス、マイク等で構成され、ユーザUの指示操作を受け付ける。入力部17は、受け付けた指示操作に応じて各種情報を入力する。なお、例えば、タッチパネルにより、出力部16と入力部17とを一体にして実現してもよい。
【0041】
記憶部18は、サーバ1が情報処理を実行するために必要な各種データを記憶するものであって、例えば、ハードディスクやDRAM(Dynamic Random Access Memory)等で構成される。
通信部19は、インターネットを含むネットワークNを介して他の装置との間で通信を行う。
【0042】
ドライブ20には、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリ等よりなる、リムーバブルメディア21が適宜装着される。ドライブ20によってリムーバブルメディア21から読み出されたプログラムは、必要に応じて記憶部18にインストールされる。
また、リムーバブルメディア21は、記憶部18に記憶されている各種データも、記憶部18と同様に記憶することができる。
【0043】
なお、サーバ1は単体で動作する装置に限らず、ネットワークNを介して通信を行うことで協調動作する分散型サーバシステムや、一般にクラウドサーバ又はクラウドストレージと称される、インターネット等のネットワークNに接続された一つ以上のサーバが含まれ得る。
また、セメント製品事業者端末2、セメント生産者端末3、モニタリング装置4、カーボンクレジット管理装置5と、取引者端末6のハードウェア構成は、上述のサーバ1のハードウェア構成と同様のため、説明は省略する。
【0044】
<機能構成>
図4は、本実施形態に係るサーバ1における機能的構成の一例を示す機能ブロック図である。
サーバ1のCPU11においては、動作する際に、吸収量算出部31、吸収量取得部32、使用状況管理部33、吸収量補正部34、履歴管理部35、認証記録部36、価格決定部37等が機能する。
【0045】
吸収量算出部31は、セメント製品CPに関する製品情報に応じて求められる吸収能力に基づいて、当該セメント製品CPが利用されなくなるまでの間の過程における二酸化炭素の吸収量(推定値)を算出する。また、吸収量補正部34は、補正された吸収量を、製品ごとに関連付けて管理する。
セメント製品CPにおける二酸化炭素の吸収量(推定値)の算出は、公知の方法を用いることができる。例えば、二酸化炭素が反応して炭酸カルシウムとして固定されることとなるセメント水和物、具体的には、炭酸化反応の反応物質である水酸化カルシウムやカルシウムシリケート水和物の量に基づいて算出することができる。
製品情報として、セメント製品CPに用いられたセメントCEの種類、セメントCEの量、配合、当該セメント製品CPの通気性、含水率、強度、施工条件を含みファクタのうち何れか一以上が含まれるとよい。
また、上述の製品情報には、セメント製品CPの経年耐用年数が含まれるとよい。
この際、二酸化炭素の吸収量は、例えば、上述したファクタごとにセメント製品CPの使用条件を複数のレベル(例えば、レベルA乃至レベルC)に分け、レベルごとに所定の係数を乗じて求めることができる。
【0046】
また、吸収量算出部31は、セメント製品CPの製造計画情報や、セメント製品CPの原材料となるセメントCEの販売情報を、セメント製品CPに関する製品情報とし、当該製品情報に応じて求められる吸収能力に基づいて吸収量を予測して算出するものとしてもよい。すなわち、製造計画に基づいて製造されたセメント製品CPや、販売されたセメントCEを用いて製造されたセメント製品CPが、利用されなくなるまでの間の吸収量(推定値)の予測値を算出するものでもある。
【0047】
なお、吸収量算出部31は、セメント製品CPに関する製品情報や、セメント製品CPの製造計画情報、セメントCEの販売情報を、他の装置等から取得してもよく、予め記憶部18に設けられた各種DBから取得するものとしてもよい。
【0048】
吸収量取得部32は、セメント製品に関する製品情報に応じて求められる吸収能力に基づいて、当該セメント製品が利用されなくなるまでの間の過程における吸収量を取得する。
本実施形態では、吸収量取得部32は、上述の吸収量算出部31によって求められた吸収量を取得するものとするが、これに限定されず、外部装置において算出された吸収量を取得してもよい。そのため、上述の吸収量算出部31の構成は必須ではない。
【0049】
使用状況管理部33は、吸収量算出部31で算出された吸収量を、セメント製品CPごとに関連付けて管理する。
具体的には、使用状況管理部33は、吸収量算出部31が上述のファクタに応じて算出した吸収量や、吸収量算出部31がセメント製品CPの経年耐用年数に応じて算出した吸収量を、セメント製品CPごとに関連付けて管理する。
すなわち、使用状況管理部33は、例えば、セメント製品CPの通気性、含水率、強度、セメントCEの種類、配合、施工条件のほか、温度(気温)や湿度、大気中のCO2濃度等といった気象情報を含むファクタや、年耐用年数に応じて求められる吸収能力に基づいて算出した吸収量を、セメント製品CPごとに関連付けて管理する。
また、使用状況管理部33は、吸収量補正部34が経過情報に基づいて補正した吸収量や、吸収量算出部31が製造計画情報に応じて算出した吸収量、もしくは吸収量算出部31がセメントCEの販売情報に基づいて算出した吸収量(予測値)を、セメントCEの販売情報ごとに関連付けて管理するものとしてもよい。
【0050】
なお、使用状況管理部33は、例えば、分散型台帳技術(ブロックチェーン)を用いて、吸収量を管理するとよい。
分散型台帳技術とは、誰が、いつ、どんな情報を台帳に書き込んだのかを、偽造や改ざんが極めて困難な形で記録又は保管し、複数の当事者(企業)が一つの台帳を共有するために用いる技術である。分散型台帳技術は、例えば、複数の当事者から構成する団体(企業コンソーシアム)が情報を共有するための、コンソーシアム型ブロックチェーン技術であるとよい。この分散型台帳技術は、既存の情報システム技術に比べれば台帳の信頼性を向上させ、平等な情報共有を実現するものである。
【0051】
吸収量補正部34は、セメント製品CPの使用状況や使用環境に関する経過情報に基づいて、セメント製品CPごとに関連付けられた吸収量を随時補正する。
ここで、二酸化炭素吸収能力は、セメント製品CPの状態やセメント製品CPが晒される環境に依存する。ゆえに、上述した使用状況や使用環境に関する経過情報に基づいて随時補正することで、信頼性が増した精緻なデータとすることができる。
【0052】
履歴管理部35は、吸収量補正部34によって補正された補正履歴及び補正結果を管理する。
補正履歴は、補正内容のうち、補正を行った年月日情報の他、使用状況や使用環境を含む履歴情報である。
補正結果は、補正内容のうち、二酸化炭素の吸収量を補正した結果(補正後の吸収量)である。
なお、履歴管理部35は、例えば、記憶部18に補正履歴及び補正結果を記録することにより管理してもよいが、上述の分散型台帳技術(ブロックチェーン)を用いて、補正履歴及び補正結果を管理するとよい。すなわち、セメント製品CPの保管、流通、利用、又は破砕後の二次利用といった各過程における使用状況や使用環境に基づいて随時補正された補正内容は、ブロックチェーン技術を用いて管理されるとよい。
本実施形態においては、セメント製品CPの保管、流通、利用、又は破砕後の二次利用といった各過程における使用状況や使用環境を追跡し、この使用状況や使用環境に関する経過情報に基づいて二酸化炭素の吸収量を随時補正(更新)してデータベース化するものである。
なお、二酸化炭素の吸収量を新たに補正する際には、ブロックチェーンで管理された第1の補正結果に対して、新たな補正(更新)を実施して第2の補正履歴と補正結果を生成して、ブロックチェーンで管理するとよい。
これにより、セメント製品CPの使用状況や使用環境に基づいて補正(更新)された結果や履歴を、補正ごとに記録しているので、吸収量算出に対する信頼性が増し、カーボンクレジットの取引が安心して行えるものとなる。
【0053】
認証記録部36は、セメント製品CPについて発行されたカーボンクレジットを、セメント製品CPと照合し関連付けて記録する。すなわち、カーボンクレジット認証機関CM等の所定の機関によって発行(認証)されたカーボンクレジットをセメント製品CPと関連付けて記録する。
【0054】
価格決定部37は、カーボンクレジットの販売又は購入を希望する価格を受け付け、実際に発行されたカーボンクレジットや、将来発行されるカーボンクレジットの取引価格を決定する。
【0055】
例えば、取引価格は、例えば、算出した二酸化炭素の吸収量に、所定の単価を乗じた額を採用するものとしてよいし、カーボンクレジット量に基づき、市況(需要)に応じて、例えば、入札と同じような仕組みで決定されるようにしてもよい。
この際、価格決定部37は、カーボンクレジットを取得するために要した費用や、取引価格における所定の割合を、手数料として取引価格に含めるものとしてもよい。
【0056】
また、価格決定部37は、上述のファクタに応じて算出された吸収量(推定値)に基づいて、カーボンクレジットの取引価格を決定してもよい。
また、価格決定部37は、セメント製品における経年耐用年数に応じて算出された吸収量(推定値)に基づいて、カーボンクレジットの取引価格を決定してもよい。
すなわち、価格決定部37は、実際に発行されたカーボンクレジットではなく、将来発行されると見込まれるカーボンクレジットを対象として、取引価格を決定してもよい。
【0057】
また、価格決定部37は、経過情報に応じて補正された吸収量に基づいて、取引価格を決定してもよい。すなわち、価格決定部37は、実際に発行されたカーボンクレジットではなく、経過情報に応じて随時補正された補正後の吸収量に対応するカーボンクレジットを、先物商品取引の対象とすることができる。
【0058】
また、価格決定部37は、セメント製品CPの製造計画情報に応じて予測された吸収量に基づいて、取引価格を決定してもよい。これにより、価格決定部37は、実際に発行されたカーボンクレジットではなく、製造が見込まれるセメント製品CPの製造計画情報に応じて、将来発行が予測される(認証前の)カーボンクレジットを先物商品取引の対象とすることができる。
【0059】
さらに、価格決定部37は、セメントCEの販売情報に応じて予測された吸収量に基づいて、取引価格を決定してもよい。これにより、価格決定部37は、実際に発行されたカーボンクレジットではなく、セメントCEの販売情報に応じて製造が見込まれるセメント製品CPに基づいて、将来発行予定のカーボンクレジットを先物商品取引の対象とすることができる。
【0060】
また、
図4に示すサーバ1の記憶部18においては、二酸化炭素吸収量情報DB41、カーボンクレジット情報DB42が設けられている。
二酸化炭素吸収量情報DB41には、セメント製品の二酸化炭素吸収量が、セメント製品ごとに関連付けられて記憶される。
カーボンクレジット情報DB42には、セメント製品CPのカーボンクレジットが、セメント製品ごとに関連付けられて記憶される。
【0061】
この二酸化炭素吸収量情報DB41やカーボンクレジット情報DB42は、必ずしもサーバ1の記憶部18に設けられる必要はなく、サーバ1とネットワークNを介して通信な、例えば、クラウドサーバ等の外部記憶装置に記憶させるものとしてもよい。
【0062】
また、サーバ1は、図示しないが、必要に応じて、セメント製品情報DBや、セメント製品製造計画情報DB、セメント販売情報DBを備えるものとしてもよい。
セメント製品情報DBは、上述したセメント製品CPの製品情報と共に、セメント製品CPの使用状況や使用環境に関する経過情報を記憶する。また、セメント製品製造計画情報DBは、製造を予定しているセメント製品CPの製品情報を記憶する。また、セメント販売情報DBは、セメントCEの販売日時や販売先、セメントCEの種類、量といったセメントCEに関する情報を記憶する。
【0063】
<処理内容>
次に、サーバ1での二酸化炭素吸収量(推定値)トレース処理の流れの一例について説明する。
図5は、本実施形態に係る二酸化炭素吸収量トレース処理の一例を示す図である。
ステップS11において、吸収量算出部31が、セメント製品情報を取得する。
【0064】
ステップS12において、吸収量算出部31は、製品情報に応じて求められる吸収能力に基づいて、当該セメント製品CPが利用されなくなるまでの間の過程における二酸化炭素の吸収量を算出する。また、吸収量算出部31は、セメント製品CPの通気性、含水率、強度、施工条件といったファクタのうち何れか一以上、又はセメント製品CPの経年耐用年数を考慮して、二酸化炭素の吸収量を算出してもよい。つまり、ステップS12において算出された吸収量に、さらに上述したファクタに基づいて取り決めた所定の係数を乗じることで、さらにセメント製品CPの実情に合った精緻なデータとすることができる。例えば、経年のファクタについては、経過年数ごとに二酸化炭素の吸収量が変化することがあり、コンクリート製品の用途や加えられる薬品により吸収量が変化することが知られている。
【0065】
ステップS13において、使用状況管理部33は、算出された吸収量をセメント製品CPごとに関連付けて、例えば、分散型台帳技術を用いて管理する。
【0066】
ステップS14において、吸収量補正部34は、経過情報が有るか否か判定する。
その結果、吸収量補正部34が、経過情報が有ると判定した場合(S14-YES)、ステップS15に進み、そうでない場合(S14-NO)は、サーバ1での一連の動作は終了する(END)。
【0067】
ステップS15において、吸収量補正部34は、セメント製品CPごとに関連付けられた吸収量を随時補正(更新)する。吸収量補正部34は、上述したように、セメント製品CPの使用状況や使用環境に関する経過情報に基づいて、吸収量の補正を行い、セメント製品ごとに関連付けて管理する。
【0068】
ステップS16において、履歴管理部35は、補正された補正履歴及び補正結果を、セメント製品と関連付けて、ブロックチェーンを用いて管理する。
以上がサーバ1での基本的な二酸化炭素吸収量トレース処理の流れとなる。
【0069】
図6は、二酸化炭素吸収量のトレースの一例を示す図である。
図6に示す表を用いることで、セメントが、セメント製品、建材、第一の廃材、道路骨材、第二の廃材と点々流通していく過程で、例えば、どのセメントが、どの建材に用いられているかを管理(トレース)することができる。これにより、セメントに対してカーボンクレジットが発行され、さらに当該セメントを用いた建材に対してカーボンクレジットが発行されるといった、二重発行を抑制することができる。そして、セメント製品におけるカーボンクレジットの取引の信頼性を担保することができる。
具体的には、セメント番号と、セメント製品番号と、建材認識番号と、第一の廃材の認識番号と、道路骨材の認識番号と、第二の廃材の認識番号と、を互いに関連付けて管理するものである。
セメント番号は、セメント製品CPの製造に用いられるセメントCEを識別するために付与した番号である。
セメント製品番号は、このセメントCEを用いて製造したセメント製品CPを識別するために付与した番号である。
建材認識番号は、セメント製品CPを用いた建材を識別するために付与した番号である。
第一の廃材の認識番号は、建材の解体から発生する廃材(以下、便宜上「第一の廃材」という。)を識別するために付与した番号である。
骨材認識番号は、建材を解体して得た第一の廃材から再生された骨材を識別するために付与した番号である。
第二の廃材の認識番号とは、第二の廃材を識別するために付与した番号である。
ここで、第二の廃材とは、コンクリート製品を解体して第一の廃材を生成した後、この第一の廃材を再生して新たなコンクリート製品を生成し、更にこの新たなコンクリート製品を解体して生成された廃材をいう。
図6においては、例えば、セメントC00003を用いて製造されたセメント製品K0001の一部は、建材B001の一部になり、その後、第一の廃材D01の一部になり、さらに、道路骨材R01の一部になり、そして、第二の廃材DD01の一部になっていることがわかる。
【0070】
次に、サーバ1でのカーボンクレジット管理処理の流れの一例について説明する。
図7は、本実施形態に係るカーボンクレジット管理処理の一例を示す図である。
ステップS21からステップS23までの処理は、上述したステップS11からステップS13までの処理と同様のため説明は省略する。
【0071】
ステップS24において、認証記録部36は、吸収量算出部31において算出された吸収量に基づいて発行されたカーボンクレジットが有る(発行済)か否か判定する。
【0072】
その結果、認証記録部36が、カーボンクレジットが有ると判定した場合(S24-YES)、ステップS25に進み、そうでない場合(S24-NO)は、サーバ1での一連の動作は終了する(END)。
【0073】
ステップS25において、認証記録部36は、発行されたカーボンクレジットを、セメント製品CPと照合し関連付けて記録する。
以上がサーバ1での基本的なカーボンクレジット管理処理の流れとなる。
【0074】
次に、サーバ1での詳細なカーボンクレジット管理処理の流れについて説明する。
図8は、本実施形態に係るカーボンクレジット管理処理の一例を示す図である。
ステップS31からステップS33までの処理は、上述したステップS11からステップS13までの処理と同様のため、説明を省略する。
ステップS34において、吸収量補正部34は、経過情報が有るか否か判定する。
その結果、吸収量補正部34が、経過情報が有ると判定した場合(S34-YES)、ステップS35に進み、そうでない場合(S34-NO)は、ステップS37に進む。
ステップS35の処理は、上述したステップS15と同様のため、説明を省略する。
【0075】
ステップS36において、履歴管理部35は、例えば、吸収量補正部34が経過情報に応じて随時補正した補正履歴及び補正結果をブロックチェーンにより、セメント製品ごとに関連付けて管理する。
また、ステップS37及びステップS38の処理は、上述したステップS24及びステップS25と同様のため、説明を省略する。
【0076】
なお、吸収量算出部31は、セメント製品CPの製造計画情報に基づいて製造されるセメント製品CPの利用されなくなるまでの間の過程における二酸化炭素の吸収量を予測して算出してもよい。
また、吸収量算出部31は、セメントCEの販売情報に基づいて製造されるセメント製品CPの利用されなくなるまでの間の過程における二酸化炭素の吸収量を予測して算出してもよい。
【0077】
図9は、本実施形態に係るカーボンクレジットにおける取引価格決定処理の一例を示す図である。
ステップS41において、価格決定部37は、カーボンクレジットの単価を取得する。
ステップS42において、上述の二酸化炭素の吸収量に、上述の単価を乗じて、取引価格を決定する。
なお、価格決定部37は、カーボンクレジットの販売又は購入を希望する取引価格を受け付け、販売を希望する最低取引価格に基づき、受け付けた購入を希望する取引価格のうちで最高値となる取引価格を売却価格として決定してもよい。
以上がサーバ1での具体的なカーボンクレジット管理処理の流れとなる。
【0078】
図10は、カーボンクレジットの取引の一例を示す図である。
図10は、建材を吸収量取引の対象として、利用されなくなるまでの間の過程における二酸化炭素の予想吸収量と、実際の二酸化炭素吸収量と、排出者が取引する二酸化炭素排出量と、投資家が取引する二酸化炭素吸収量と、取引の可能性を示している。また、
図10は、この建材を解体することで発生する廃材から再生された骨材を取引の対象として、利用されなくなるまでの間の過程における二酸化炭素の予想吸収量と、実際の二酸化炭素吸収量と、排出者が取引する二酸化炭素排出量と、投資家が取引する二酸化炭素吸収量と、取引の可能性を示している。つまり、1年目から9年目までは建材として利用していたが、10年目に建材を解体して骨材として利用していた場合の二酸化炭素吸収量の取引がわかるように示している。
【0079】
図11(a)~
図11(c)は、カーボンクレジットの取引におけるコールオプションの一例を示す図である。例えば、投資家甲が100万円でカーボンクレジットを買う権利を購入し、期日での価格が300万円となった場合、差し引き200万円の儲けとなる。逆に、投資家乙が100万円でカーボンクレジットを買う権利を購入し、期日での価格が50万円に下がった場合には、差し引き50万円の損失となる(
図11(a))。また、カーボンクレジット取引の損益を見極めるために、
図11(b)、
図11(c)のようなグラフによる見通しを立てることができる。
また、二酸化炭素吸収量の取引は、セメント製品CPの重量単位(10トン)である他、建材としての棟数(10棟)としてもよい。前者の吸収量は不変であるが、後者では物件の譲渡により変動する。
【0080】
<本実施形態の有利な効果>
以上のように、本実施形態におけるサーバは、セメント製品CPが有する二酸化炭素吸収能力(吸収量)を、セメント製品CPの使用状況や使用環境に関するトレース情報に基づいて随時補正することができる。すなわち、セメント製品CPが製造されてから当該セメント製品CPが利用されなくなるまでの間、当該セメント製品CPの使用状況や使用環境をトレースし、この経過情報に基づいて、セメント製品CPが有する二酸化炭素吸収量を随時補正してデータベース化することができる。
また、本実施形態におけるサーバは、セメント製品CPが利用されなくなるまでの間の過程における二酸化炭素の吸収量を算出し、この吸収量に基づいて発行されたカーボンクレジットを、セメント製品CPごとに関連付けて管理することができる。すなわち、サーバによって算出又は管理される二酸化炭素吸収量に基づいて発行されたカーボンクレジットを管理することができる。
ゆえに、二酸化炭素の吸収量を管理する信頼性が増した精緻なデータとすることができる。従って、この吸収量に基づいて発行されたカーボンクレジットの取引を安心して行うことができる。
【0081】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、上述した実施の形態は、本発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は、本発明に含まれるものである。
【0082】
(変形例)
上述の本実施形態では、一般に温室効果を有するとされている温室効果ガスの代表例である二酸化炭素を、取引等の対象とする例に説明したが、これに限定されない。例えば、温室効果ガスとなり得る、メタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)、ハイドロフルオロカーボン類(HFCs)、パーフルオロカーボン類(PFCs)、六フッ化硫黄(SF6)、三フッ化窒素(NF3)といったコンクリート中のセメント水和物と反応可能な酸性のガス等を、トレース、管理又は取引等の対象としてもよい。
【0083】
(その他)
また、例えば、上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実装させることもできる。換言すると、上述の機能的構成は例示に過ぎず、特に限定されない。すなわち、上述した一連の処理を全体として実行できる機能が情報処理システムに備えられていれば足り、この機能を実現するためにどのような機能ブロックを用いるかは、特に上述の例に限定されない。
【0084】
また、機能ブロックの存在場所も、
図4に特に限定されず、任意でよい。例えば、サーバの機能ブロックを他の装置等に移譲させてもよい。逆に他の装置の機能ブロックをサーバ等に移譲させてもよい。
また、一つの機能ブロックは、ハードウェア単体で構成してもよいし、ソフトウェア単体で構成してもよいし、それらの組合せで構成してもよい。
【0085】
一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータ等にネットワークや記録媒体からインストールされる。コンピュータは、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータであってもよい。また、コンピュータは、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能なコンピュータ、例えば、サーバの他、汎用のスマートフォンや、パーソナルコンピュータであってもよい。
【0086】
このようなプログラムを含む記録媒体は、ユーザ等にプログラムを提供するために装置本体とは別に配布される図示せぬリムーバブルメディアにより構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザ等に提供される記録媒体等で構成される。プログラムはネットワークを介して配信可能であることから、記録媒体は、ネットワークに接続された、或いは接続可能なコンピュータに搭載、或いはアクセス可能なものであってもよい。
【0087】
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的或いは個別に実行される処理をも含むものである。また、本明細書において、システムの用語は、複数の装置や複数の手段等より構成される全体的な装置を意味するものとする。
【0088】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、これらの実施形態は、例示に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明はその他の様々な実施形態を取ることが可能であり、上記実施形態と変形例の各構成を組合せることも可能である。さらに、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略や置換等種々の変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、本明細書等に記載された発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0089】
1:サーバ 2:セメント製品事業者端末 3:セメント生産者端末
4:モニタリング装置 5:カーボンクレジット管理装置 6:取引者端末
11:CPU 18:記憶部 19:通信部
31:吸収量算出部 32:吸収量取得部 33:使用状況管理部
34:吸収量補正部 35:履歴管理部 36:認証記録部
37:価格決定部 41:二酸化炭素吸収量情報DB
42:カーボンクレジット情報DB