(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034985
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/14 20060101AFI20240306BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240306BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240306BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20240306BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240306BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240306BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240306BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20240306BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20240306BHJP
A61K 8/39 20060101ALI20240306BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20240306BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20240306BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
A61K31/14
A61P31/04
A61P31/12
A61K9/12
A61K47/38
A61K47/10
A61K47/34
A61K8/41
A61K8/73
A61K8/39
A61K8/86
A61K8/34
A61Q19/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022147431
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】399091120
【氏名又は名称】株式会社ピカソ美化学研究所
(72)【発明者】
【氏名】岸本 俊輝
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA24
4C076BB31
4C076CC32
4C076CC35
4C076DD07F
4C076DD38
4C076EE23
4C076EE31
4C076FF36
4C083AC111
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC182
4C083AC302
4C083AC432
4C083AC691
4C083AC692
4C083AD261
4C083AD262
4C083BB04
4C083CC23
4C083EE01
4C083EE10
4C083EE12
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA41
4C206FA42
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA33
4C206NA03
4C206ZB33
4C206ZB35
(57)【要約】
【課題】製剤安定性に優れ、フォーマー容器からキメ細やかな泡を吐出することができるとともに、吐出した泡の肌馴染みが良好であり、べたつきがなく速乾性に優れる皮膚外用剤の提供。
【解決手段】
フォーマー容器から泡状で吐出される皮膚外用剤であって、成分A:ベンゼトニウム塩化物および/又はベンザルコニウム塩化物と、成分B:疎水化ヒドロキシアルキルセルロースと、成分C:非イオン性界面活性剤と、成分D:多価アルコールとを含有することを特徴とする皮膚外用剤とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォーマー容器から泡状で吐出される皮膚外用剤であって、
下記成分A、成分B、成分C、並びに成分Dを含有することを特徴とする皮膚外用剤。
成分A:ベンゼトニウム塩化物および/又はベンザルコニウム塩化物
成分B:疎水化ヒドロキシアルキルセルロース
成分C:非イオン性界面活性剤
成分D:多価アルコール
【請求項2】
前記成分Cの酸化エチレンの付加モル数が10以上80以下である請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項3】
前記成分Cに対する前記成分Bの含有量の比(成分B/成分C)が、0.1~1.2の範囲を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の皮膚外用剤。
【請求項4】
洗い流さないことを特徴とする請求項1又は2に記載の皮膚外用剤。
【請求項5】
手指の消毒、殺菌、殺ウイルス又は洗浄に用いられる請求項1又は2に記載の皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚外用剤に関する。更に詳しくは、フォーマー容器から泡状で吐出される皮膚外用剤に関する。
【0002】
フォーマー容器に充填して使用される皮膚外用剤は、フォーマー容器内の多孔質膜体を通過して吐出させることによって、空気と混合して泡が形成されるものであり、ハンドソープ、洗顔料、殺菌消毒剤などの皮膚外用剤として汎用されている。中でも、手や指先などの消毒、殺菌、殺ウイルス又は洗浄に用いる皮膚外用剤においては、手軽に消毒、殺菌、殺ウイルス又は洗浄ができ、かつ、速乾性に優れた効果を発揮する洗い流し不要の皮膚外用剤が主流となりつつある。
【0003】
このような簡便な皮膚外用剤の多くは、塗布後の速乾性を高めるとともに、消毒、殺菌、殺ウイルス又は洗浄といった効果を十分に発揮させるべく、エタノールが高配合されている。具体的には、例えば、エタノール14.8質量%~37質量%と、カチオン性殺菌剤と、シクロデキストリン0.2質量%~3質量%と、ノニオン界面活性剤0.01質量%~0.2質量%とを特定の比率で含有する組成物を、フォーマー容器に充填し、泡状で吐出する洗い流さないタイプの殺菌清浄剤組成物などが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
しかしながら、このようなエタノールを高配合した組成物は、速乾性や殺菌力に優れる反面、エタノールによる皮膚刺激を感じ易くなるだけでなく、過度な脱脂により、使用後の肌がカサつき、肌荒れを引き起こし易くなるといった欠点がある。また、エタノールを高配合した組成物をフォーマー容器から吐出する場合には、泡質に劣ることから、肌馴染みが悪いといった欠点もある。
【0005】
一方、エタノールを配合しない試みもなされている。具体的には、例えば、アニオン界面活性剤と、特定のカチオン性ポリマーと、多価アルコールと、特定の高級アルコールとを特定の比率で含有し、フォーマー容器に充填してなることを特徴とする液体皮膚洗浄剤組成物などが提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
【0006】
しかしながら、エタノールによる刺激や過度の脱脂はなくなるものの、カチオン性ポリマーによるべたつき感が際立ち、かつ、速乾性が悪くなるといった欠点がある。
【0007】
このような従来からの欠点を解決するために、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体を起泡成分として含み、フォーマー容器に充填して泡で吐出する外用組成物などの試みも提案されている(例えば、特許文献3を参照)。
【0008】
しかしながら、当該試みによって、刺激感やべたつき感を抑え、速乾性を改善することができるものの、製剤安定性に劣り、セルロース誘導体に起因する析出物や沈殿物が生じ易くなることから、フォーマー容器内の多孔質膜内において目詰まり発生し、均一なキメ細やかな泡が吐出され難いといった欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2016-014082号公報
【特許文献2】特開2021-091641号公報
【特許文献3】国際公開第2020/130035号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、製剤安定性に優れ、フォーマー容器からキメ細やかな泡を吐出することができるとともに、吐出した泡の肌馴染みが良好であり、べたつきがなく速乾性に優れる皮膚外用剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明は、フォーマー容器から泡状で吐出される皮膚外用剤であって、下記成分A、成分B、成分C、並びに成分Dを含有することを特徴とする皮膚外用剤を提供する。
成分A:ベンゼトニウム塩化物および/又はベンザルコニウム塩化物
成分B:疎水化ヒドロキシアルキルセルロース
成分C:非イオン性界面活性剤
成分D:多価アルコール
【0012】
上記成分Cの酸化エチレンの付加モル数が10以上80以下であることが好ましい。
【0013】
上記成分Cに対する上記成分Bの含有量の比(成分B/成分C)が、0.1~1.2の範囲を満たすことが好ましい。
【0014】
本発明の皮膚外用剤は、洗い流さないことが好ましい。
【0015】
本発明の皮膚外用剤は、手指の消毒、殺菌、殺ウイルス又は洗浄に用いられることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の皮膚外用剤は、必須構成要件を満たすことにより、従来のフォーマー容器から泡状で吐出される皮膚外用剤と比べて、析出物や沈殿物がなく製剤安定性に優れることから、キメ細やかな泡質の泡を吐出することができるという効果を奏する。
【0017】
また、本発明の皮膚外用剤は、吐出された泡の肌馴染みが良好であり、細部にまで均一に塗布することができるという効果を奏するとともに、泡で塗布することから、肌へのべたつきがなく、速乾性においても優れた効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
本発明の皮膚外用剤は、フォーマー容器から泡状で吐出されるものであって、成分A:ベンゼトニウム塩化物および/又はベンザルコニウム塩化物と、成分B:疎水化ヒドロキシアルキルセルロースと、成分C:非イオン性界面活性剤と、成分D:多価アルコールとを含有する。
【0020】
上記フォーマー容器は、フォーマー容器内に充填された皮膚外用剤を空気と混合して泡状として吐出できるものであれば特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。具体的なフォーマー容器の形態としては、例えば、ポンプヘッドを押し下げることで泡を吐出するポンプフォーマー容器や、胴体部分を押すことで泡を吐出することができるスクイズフォーマー容器などが挙げられる。本発明においては、よりキメの細やかな泡を形成させる観点、並びに老若男女が簡便に使用できる利便性の観点から、ポンプヘッドを押し下げることで泡を吐出するポンプフォーマー容器を用いることが好ましい。
【0021】
一般的なフォーマー容器は、泡を形成するための多孔質膜体を備えている。本発明においてもフォーマー容器内に充填された上記皮膚外用剤が該多孔質膜体を通過することで泡が形成される。上記多孔質膜体の材質としては、例えば、ナイロン、ポリエステル、ポリオレフィンなどのプラスチック材料が挙げられる。また、上記多孔質膜体のメッシュも特に限定されないが、キメ細やかな泡を形成させる観点、並びにフォーマー容器の押し易さの観点から、100メッシュ~400メッシュであることが好ましい。
【0022】
以下、本発明の皮膚外用剤に用いられる各成分の詳細を説明する。
【0023】
[成分A]
上記成分Aは、ベンゼトニウム塩化物および/又はベンザルコニウム塩化物である。すなわち、上記成分Aは、ベンゼトニウム塩化物およびベンザルコニウム塩化物の一方又は双方である。本発明においては、上記成分Aを用いることにより、皮膚の消毒、殺菌、殺ウイルス又は洗浄といった効果を発揮させることができる。特に手指の消毒、殺菌、殺ウイルス又は洗浄において各段に優れた効果を発揮する。
【0024】
本発明において上記成分Aは、市販品を用いることもできる。上記成分Aの市販品は、単独原料であっても、他成分との混合原料であっても、所望の効果が発揮されるのであれば特に限定されない。
【0025】
本発明の皮膚外用剤中の成分Aの含有量は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、通常、消毒、殺菌、殺ウイルス又は洗浄効果を付与する観点から、皮膚外用剤100質量%中、0.001質量%~0.1質量%であることが好ましく、0.01質量%~0.05質量%であることがより好ましい。なお、上記成分Aの含有量は、純分に換算した量である。
【0026】
[成分B]
上記成分Bは、疎水化ヒドロキシアルキルセルロースである。上記疎水化ヒドロキシアルキルセルロースとは、ヒドロキシアルキルセルロースにおいて疎水性基としてアルコキシ基を有する化合物のことをいう。本発明においては、上記成分Bを用いることにより、キメ細やかな泡質の泡を形成させることができ、良好な塗布時の使用感が得られるようになる。
【0027】
上記ヒドロキシアルキルセルロースとしては、例えば、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースなどが挙げられる。
【0028】
上記アルコキシ基は、直鎖状であっても分岐状であっても特に限定されないが、疎水性を高める観点から、直鎖状の長鎖アルコキシ基であることが好ましい。具体的な長鎖アルコキシ基としては、例えば、ドデシロキシ基(ラウロキシ基)、トリデシロキシ基、テトラデシロキシ基(ミリスチロキシ基)、ペンタデシロキシ基、ヘキサデシロキシ基(セチロキシ基)、ヘプタデシロキシ基、オクタデシロキシ基(ステアロキシ基)、ノナデシロキシ基、イコシロキシ基、ヘンエイコシロキシ基およびドコシロキシ基などが挙げられる。
【0029】
上記成分Bとしては、例えば、ドデシロキシヒドロキシアルキルセルロース(ラウロキシヒドロキシアルキルセルロース)、テトラデシロキシヒドロキシアルキルセルロース(ミリスチロキシヒドロキシアルキルセルロース)、ヘキサデシロキシヒドロキシアルキルセルロース(セチロキシヒドロキシアルキルセルロース)、オクタデシロキシヒドロキシアルキルセルロース(ステアロキシヒドロキシアルキルセルロース)などが挙げられる。これらの成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0030】
上記成分Bの中でも、泡質を更に高めるとともに、肌馴染みをより良好にする観点から、オクタデシロキシヒドロキシアルキルセルロース(ステアロキシヒドロキシアルキルセルロース)を用いることが好ましく、中でも、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロースと称される、オクタデシロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース(ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース)を用いることがより好ましい。
【0031】
本発明において上記成分Bは、市販品を用いることもできる。上記成分Bの市販品は、単独原料であっても、他成分との混合原料であっても、所望の効果が発揮されるのであれば特に限定されない
【0032】
本発明の皮膚外用剤中の成分Bの含有量は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、通常、キメ細やかな泡質の泡を形成する観点、並びに、肌馴染みを高めて使用感を良好にする観点から、皮膚外用剤100質量%中、0.02質量%~0.1質量%であることが好ましく、0.04質量%~0.07質量%であることがより好ましい。なお、上記成分Bの含有量は、純分に換算した量である。
【0033】
[成分C]
上記成分Cは、非イオン界面活性剤である。本発明においては、上記成分Cを用いることにより、上記成分Bに起因する析出物や沈殿物の発生を抑え、優れた製剤安定性を発揮させることができる。加えて、上記成分Bに起因する析出物や沈殿物の発生に附随して生じる上記成分Aの吐出量の減少をも抑制でき、成分Aが奏する、皮膚の消毒、殺菌、殺ウイルス又は洗浄といった効果を最大限に発揮させることができるようになる。
【0034】
上記成分Cとしては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などが挙げられる。これらの成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0035】
上記成分Cの中でも、上記成分Bに起因する析出物や沈殿物の発生を抑える観点、並びに製剤安定性をより一層高める観点から、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を用いることが好ましく、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を用いることがより好ましい。
【0036】
また、上記成分Cの酸化エチレンの付加モル数は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、上記成分Bに起因する析出物や沈殿物の発生を抑える効果を更に高める観点、並びに析出物や沈殿物の発生に附随して生じる上記成分Aの吐出量の減少を更に抑える観点から、10以上80以下であることが好ましく、20以上60以下であることがより好ましい。
【0037】
本発明において上記成分Cは、市販品を用いることもできる。上記成分Cの市販品は、単独原料であっても、他成分との混合原料であっても、所望の効果が発揮されるのであれば特に限定されない
【0038】
本発明の皮膚外用剤中の成分Cの含有量は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、通常、格段に優れた製剤安定性を付与する観点から、皮膚外用剤100質量%中、0.02質量%~0.3質量%であることが好ましく、0.04質量%~0.2質量%であることがより好ましい。なお、上記成分Cの含有量は、純分に換算した量である。
【0039】
なお、本発明においては、上記成分Bに起因する析出物や沈殿物の発生をより一層抑え、格段に優れた製剤安定性を発揮させる観点、並びに析出物や沈殿物の発生に附随して生じる上記成分Aの吐出量の減少をより一層抑える観点から、上記成分Cに対する上記成分Bの含有量の比(成分B/成分C)は、0.1~1.2の範囲を満たし調製することが好ましく、0.3~1.0の範囲を満たし調製することがより好ましい。
【0040】
[成分D]
上記成分Dは、多価アルコールである。多価アルコールとは、炭化水素の2個以上の水素を水酸基で置換したアルコール類の総称である。本発明においては、上記成分Dを用いることにより、上記成分Dの剤中の溶解性を高めて格段に優れた製剤安定性を発揮させることが可能となる。
【0041】
具体的な成分Dとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロパンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-デカンジオール、1,2-ドデカンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン(濃グリセリン)、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、1,2,4-ブタントリオール、グルコース、マルトース、マルチトール、スクロース、マンニトール、ソルビトール、キシリロール、エリスリトール、トレハロース、グルコシルトレハロースなどが挙げられる。これらの成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0042】
上記成分Dの中でも、製剤安定性をより一層高める観点から、1,3-ブチレングリコール、プロパンジオール、プロプレングリコールおよびグリセリンから選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましい。本発明においては、上記成分Cの剤中の溶解性の観点から、1,3-ブチレングリコールおよび/又はプロパンジオールを多価アルコール総量中50%以上の割合で含むことが好ましく、70%以上の割合で含むことがより好ましい。
【0043】
本発明において上記成分Dは、市販品を用いることもできる。上記成分Dの市販品は、単独原料であっても、他成分との混合原料であっても、所望の効果が発揮されるのであれば特に限定されない。
【0044】
本発明の皮膚外用剤中の成分Dの含有量は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、通常、格段に優れた製剤安定性を付与する観点から、皮膚外用剤100質量%中、1質量%~7質量%であることが好ましく、2質量%~5質量%であることがより好ましい。なお、上記成分Dの含有量は、純分に換算した量である。
【0045】
なお、本発明の皮膚外用剤は、塗布時の刺激を低減させる観点から、エタノールを含まないか、又はエタノールを含み且つ皮膚外用剤100質量%中のエタノールの含有量が1質量%以下であるであることが好ましい。
【0046】
[その他成分]
本発明の皮膚外用剤には、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、上記した成分の他に、陽イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤などの上記成分Aおよび成分C以外の界面活性剤;油脂、ロウ類、炭化水素油、飽和脂肪酸、高級アルコール、脂肪酸エステル油、シリコーン油などの油剤;皮膜形成剤、紫外線吸収剤、美白剤、抗炎症剤、清涼剤、pH調整剤、防腐剤、中和剤、香料、精製水などを目的応じて適宜配合することができる。
【0047】
本発明の皮膚外用剤は、上記した必須構成成分を充足することにより、優れた製剤安定性を有することで、キメ細やかな泡質の泡を吐出することができるとともに、肌馴染みが良好であり、肌へのべたつきを抑えることが可能となる。また、本発明の皮膚外用剤は、フォーマー容器から泡状で吐出されることから、皮膚外用剤をそのまま肌へ塗布した場合と比較して、速乾性に関しても良好な感触が得られるという効果も奏する。
【0048】
本発明の皮膚外用剤の性状は、所望の効果が十分に付与されるのであれば特に限定されないが、フォーマー容器から吐出する観点から、液状であることが好ましい。
【0049】
本発明の皮膚外用剤の製造方法は、特に限定されないが、例えば、公知の方法により製造することができる。具体的には、例えば、上記各構成成分を混合し、公知の方法、例えば、ディスパーミキサー、ホモミキサー、ディスパーミルなどを用いて攪拌する方法が挙げられるが、本発明はこれら製造方法にのみ限定されるものではない。
【0050】
本発明のフォーマー容器から泡状で吐出された皮膚外用剤は、洗い流しを行っても、洗い流しを行わなくとも、所望の効果が十分に付与されるのであれば特に限定されないが、上記成分Aが奏する、皮膚の消毒、殺菌、殺ウイルス又は洗浄といった効果を最大限に発揮させる観点から、洗い流しを行わずに使用することが好ましい。
【0051】
本発明の皮膚外用剤は、上記した成分Aの効果を最大限に発揮させる観点、並びに使用感に優れる観点から、手指の消毒、殺菌、殺ウイルス又は洗浄に用いることが最も好ましい。また、本発明の皮膚外用剤組成物は、化粧品、医薬部外品、指定医薬部外品、医薬品、雑貨の何れの形態であっても良い。
【実施例0052】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。なお、配合量は、特記しない限り「質量%」を表す。また、評価はすべて、20℃、湿度50%の恒温恒湿の一定条件下で実施した。
【0053】
実施例および比較例では、下記の成分を用いた。
【0054】
[成分A]
ベンゼトニウム塩化物:商品名「日本薬局方 ベンゼトニウム塩化物」(渡辺ケミカル株式会社製)
ベンザルコニウム塩化物:商品名「サニゾール B-50」(花王株式会社製)
[成分B]
ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース:商品名「サンジェロース 90L」(大同化成工業株式会社製)
[成分C]
POE(20)硬化ヒマシ油:商品名「NIKKOL HCO-20」(日本サーファクタント工業株式会社製)
POE(40)硬化ヒマシ油:商品名「NIKKOL HCO-40」(日本サーファクタント工業株式会社製)
POE(60)硬化ヒマシ油:商品名「NIKKOL HCO-60」(日本サーファクタント工業株式会社製)
POE(20)POP(6)デシルテトラデシルエーテル:商品名「NIKKOL SG-DTD620(日光ケミカルズ(シンガポール)社製)
POE(30)POP(6)デシルテトラデシルエーテル:商品名「NIKKOL SG-DTD630(日光ケミカルズ(シンガポール)社製)
[成分D]
1,3-ブチレングリコール:商品名「1,3-ブチレングリコールUK」(株式会社ダイセル社製)
プロパンジオール:商品名「Zemea Select プロパンジオール」(デュポンテートアンドライルバイオプロダクツ製)
プロピレングリコール:商品名「プロピレングリコール」(AGC株式会社製)
グリセリン:商品名「局方濃グリセリン」(花王株式会社製)
【0055】
(試料の調製1)
表1および表2に記した組成に従い、実施例1~8および比較例1~8の皮膚外用剤を常法に準じて調製し、下記評価に供した。結果を表1および表2に記す。なお、表中の配合量は、全ての純分換算した値である。
【0056】
(試験例1:製剤安定性の評価)
実施例および比較例で得られた各試料を、50g容量の透明広口容器(マヨ瓶)にそれぞれ充填し、50℃の恒温槽にて1週間保管した。保管後の剤の状態を目視観察し、下記評価基準に従い評価した。なお、評価は、5名の専門評価員が実施し、各評価員の評価を総合して決定した。
【0057】
<製剤安定性の評価基準>
○(良好):製造直後と対比して、透明状態を維持し続けている(変化が全く認められない)
△(不十分):製造直後と対比して、透明状態を維持しているが、僅かな析出(オリ)や沈殿が認められる
×(不良):製造直後と対比して、透名状態を維持しておらず、明らかな析出(オリ)や沈殿が認められる
【0058】
(試験例2:吐出性の評価)
実施例および比較例で得られた各試料を、ポンプヘッドを押すことで泡を吐出するポンプフォーマー容器に充填し、50℃の恒温槽にて1週間保管した。保管後、ポンプフォーマー容器からの吐出形態を目視観察し、下記評価基準に従い評価した。なお、評価は、5名の専門評価員が実施し、各評価員の評価を総合して決定した。
【0059】
○(良好):泡を吐出できる
×(不良):泡を吐出できない
【0060】
(試験例3:泡質、並びに使用感の評価)
実施例および比較例で得られた各試料を試験例2で使用した同一のポンプフォーマー容器に充填し、1プッシュ分(0.3g)を両手の左右何れか一方の手の平に塗布後、残る一方の手を用いてすり合わせるように両手の平、甲、指先に馴染ませてもらい、使用試験を実施した。
【0061】
塗布直後の「泡質」に関して目視評価を行い、次いで、延展時の「肌馴染み」、「べたつき感」、「速乾性」に関して官能評価を行い、下記1点~5点の評価点に従ってスコア付けをした。なお、評価は、5名の専門評価員が実施し、各評価員の評価を総合判断して決定した。
【0062】
「泡質」の評価は、均一でキメが細かい泡が形成されているほど高得点とした。「肌馴染み」の評価は、手全体に馴染ませた際の馴染むスピードが速く、細部にまで均一に塗布できるほど高得点とした。「べたつき感」の評価は、手全体に馴染ませた際にべたつき感がないほど高得点とした。「速乾性」の評価は、手に馴染ませた際の乾きの早さが速いほど高得点とした。
【0063】
下記5段階の評価基準に従って評価した。結果は、専門評価パネルの平均点を算出し、下記判定基準に従って判定を行った。
【0064】
<評価基準>
5点:非常に良い
4点:良い
3点:普通
2点:不良
1点:非常に不良
【0065】
<判定基準>
◎:平均4.0点以上
○:平均3.0点以上4.0点未満
△:平均2.0点以上3.0点未満
×:平均2.0点未満
【0066】
【0067】
【0068】
表1の結果からも明らかなように、本発明の必須構成成分を充足する実施例1~8は、製剤安定性に優れていることから、ポンプフォーマー容器からキメ細やかな泡質の泡を吐出できることが分かる。また、本発明の皮膚外用剤は、吐出された泡の肌馴染みに優れ、細部にまで均一に塗布することができ、肌へのべたつきがなく、速乾性において優れた効果を発揮していることが分かる。これに対して、本発明の必須構成成分を充足しない比較例1~8では、本発明の効果の全てを最大限に発揮できていないことが分かる。