(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034994
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】嚥下鍛錬装置および嚥下鍛錬システム
(51)【国際特許分類】
A61N 1/36 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
A61N1/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022148591
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】504230246
【氏名又は名称】鈴木 計芳
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 計芳
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053BB06
4C053BB36
4C053JJ01
4C053JJ24
4C053JJ40
(57)【要約】
【課題】 嚥下障害に関して、咀嚼物を飲み込む動作に関与する各種筋肉の機能を回復させることが出来るようにする。
【解決手段】 人体の喉部に触れるベルト1の内側に、導子である帯状の電極2,2をベルト1の長手方向に向けて設け、このベルト1の両端に面ファスナーのオス10と面ファスナーのメス11とを設けて、喉に巻き付けられるようにした。また電極21となる舌圧子12で舌を押え付けられるようにした。そして、低周波パルス発振器の出力部31の一方の出力端を電極2,2に、また他方の出力端を舌圧子12の電極21に電気的に接続した。これにより、舌と喉との両方に電極を接触させて、舌から喉までの間に低周波パルス電流を印加することが出来るようになった。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低周波パルス電流の発生部と、このパルス電流を人体の舌部に印加するための舌用導子と、およびこのパルス電流を人体の喉部に印加するための喉用導子とを備えて、前記舌用導子および喉用導子は各々人体への接触手段を有している、嚥下鍛錬装置。
【請求項2】
周波数の異なる2つのパルス電流の発生部と、各々のパルス電流を人体の舌部に印加するための舌用導子と、および各々のパルス電流を人体の喉部に印加するための喉用導子とを備えて、前記舌用導子および喉用導子は各々人体への接触手段を有している、嚥下鍛錬装置。
【請求項3】
前記喉用導子の人体への接触手段が首の回りを巻くためのベルトである、請求項1または請求項2に記載の嚥下鍛錬装置。
【請求項4】
前記喉用導子の人体への接触手段が首の後ろ側から喉側に前に回すクリップである、請求項1または請求項2に記載の嚥下鍛錬装置。
【請求項5】
前記喉用導子の人体への接触手段が喉の部位に着脱自在となる粘着パッドである、請求項1または請求項2に記載の嚥下鍛錬装置。
【請求項6】
前記喉用導子の人体への接触手段が喉の部位に着脱自在となる吸盤である、請求項1または請求項2に記載の嚥下鍛錬装置。
【請求項7】
前記喉用導子の人体への接触手段が、二股状の持ち手の先に前記喉用導子が設られたものである、請求項1または請求項2に記載の嚥下鍛錬装置。
【請求項8】
前記舌用導子の人体への接触手段が舌圧子である、請求項1または請求項2に記載の嚥下鍛錬装置。
【請求項9】
前記舌用導子の人体への接触手段が舌に触れるための指サックである、請求項1または請求項2に記載の嚥下鍛錬装置。
【請求項10】
前記舌用導子の人体への接触手段が舌に着脱自在となる吸盤である、請求項1または請求項2に記載の嚥下鍛錬装置。
【請求項11】
人体の喉部への接触手段にて喉部に接触させる喉用導子と、舌部への接触手段にて舌部に接触させる舌用導子と、低周波パルス電流の発生部とを備え、この発生部から発生したパルス電流を前記喉用導子と舌用導子とに印加する、嚥下鍛錬システム。
【請求項12】
人体の喉部への接触手段にて喉部に接触させる喉用導子と、舌部への接触手段にて舌部に接触させる舌用導子と、低周波パルス電流の発生部とを、周波数の異なる2つのパルス電流に対応するように備え、この発生部から発生した2つのパルス電流を各々の前記喉用導子と舌用導子とに印加する、嚥下鍛錬システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、口から咽頭に至る部位の筋肉を鍛錬するための、殊に嚥下障害を鍛錬によって克服するための嚥下鍛錬装置、嚥下鍛錬システムに関する。
【背景技術】
【0002】
脳梗塞などの疾病や老化によって嚥下障害などの問題が引き起こされることが知られている。嚥下障害があると唾液や食物や胃液などが気管に入ってしまうことが起こる。就寝中に唾液が知らず知らずに気管に入ることも起こる。これによって誤嚥性肺炎を発病することもあるが、これは高齢者にとっては死に至る可能性が高い恐ろしい病気である。
【0003】
舌の筋肉に付いては舌出しなどの運動によって機能を回復させることが出来るが、咀嚼物を飲み込む動作に関与する各種筋肉に付いては、実際に食事を摂らないことには、物を飲み込む筋力を付けることは出来ない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
とは言うものの、嚥下には口腔や咽頭や食道にある多数の神経や筋が連携して働くために、食事が摂れないのに食事を摂らせることはかなり難しいのが現状である。嚥下運動は3期に分けられるが、特に第2期では舌筋や中咽頭筋や下咽頭筋が連携して働いており、これ等の筋肉を実際に動かすことで機能を回復させるしか手がない。この他にも顎二腹筋後腹、顎二腹筋前腹、肩甲舌骨筋、胸鎖乳突筋、鎖骨頭、咬筋、肩甲挙筋、甲状舌骨筋、胸骨甲状筋、斜角筋などの各種筋肉が働いている。
【0005】
従ってこのような問題を解決して、何とか咀嚼物を飲み込む動作に関与する各種筋肉の機能を回復させることは出来ないだろうか、と言うのがこの発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決の先立ち当発明者は、食事をしていない時間であっても、喉部に外部から低周波電流を当てることで、喉の筋肉を収縮させて筋力回復や増強を行うことが出来る技術があったことを想起した。しかしながら低周波電流を喉部の外部から当てるのでは、その周辺にしか低周波電流の作用が及んでいないのではないかと考えた。そしてついに、舌筋から喉の筋肉に掛けて、口の内部の舌を通じて低周波電流を当てることで、これ等の筋肉を収縮させて筋力回復や増強を行うことが出来るのではないか、と言うことに想到したのである。
【0007】
すなわち上記の課題は、低周波パルス電流の発生部と、このパルス電流を人体の舌部に印加するための舌用導子およびこのパルス電流を人体の喉部に印加するための喉用導子を備え、前記喉用導子および舌用導子は各々人体への接触手段を有しているものとすることによって達成される。低周波パルス電流の発生部には一般的なものを使用して良いため、この発明の要部は低周波パルス電流を、舌筋を通じて、喉部に印加するための導子周りの構成にあると言って良い。
【0008】
発生部から発振される低周波パルス電流を導子を介して人体の舌部と喉部との間に印加すると、この低周波パルス電流が、咀嚼物を飲み込む動作に関与する舌部と喉部との間の各種筋肉を収縮させるので、筋肉が鍛錬されてその筋力が増強する。従って実際に食事を摂った時と同じように物を飲み込む筋力を付けることが出来る。ここで特に重要な点は、低周波パルス電流を口内の舌部に印加している点である。この低周波パルス電流の舌部および喉部への印加は、テレビを見たり読書をしたりしている間にも行うことが可能であるし、また家庭のみならず出先での筋肉鍛錬を可能にしている。これは正しくトレーニングであると言うことが出来る。
【0009】
この発明の導子はパルス電流を、舌の筋肉に流すべく舌に接触させるための手段と喉の筋肉に流すべく喉に接触させるための手段とを有していることが特徴である。導子は電極であって、肌にピリピリとした刺激を与えることが少ない、好ましくは導電ポリエステル製のものを使用する。この発明のように、嚥下障害を克服すべく舌の筋肉と喉の筋肉とを鍛錬するための低周波パルスによる鍛錬装置と言うものはこれまでになく、また舌と喉との両方に電極を接触させる機能を有するものもこれまでになかった。嚥下に係る舌および喉の筋肉をトレーニングさせようとするものはこの発明が最初のものである。
【0010】
また上記の課題は、周波数の異なる2つのパルス電流の発生部と、各々のパルス電流を人体の舌部に印加するための舌用導子と、および各々のパルス電流を人体の喉部に印加するための喉用導子とを備え、前記舌用導子および喉用導子は各々人体への接触手段を有していることを特徴とする、嚥下鍛錬装置とすることにより達成される。干渉波を利用する低周波パルス電流の発生部には一般的なものを使用して良いため、この発明の要部は低周波パルス電流を舌部および喉部に印加するための導子周りの構成にあると言うことが出来る。
【0011】
発生部から発振される低周波パルス電流を導子を介して人体の舌部と喉部との間に印加すると、咀嚼物を飲み込む動作に関与する舌部と喉部との間の各種筋肉を収縮させ、筋肉を鍛錬して筋力を増強させようと言う点については、上述した請求項1の発明と同じであるが、さらに喉部の深度の大きな筋肉の部位にパルス電流を印加しようと言うのが、この請求項2の発明である。すなわち周波数の異なる2つの低周波パルス発振器(発生部)を用意して、ターゲットとなる喉の筋肉中に二対の導子から2つの低周波パルス電流を交差させて加えて相互干渉を起こさせることにより、喉の筋肉中に干渉波の低周波刺激を与えるようにするのである。舌部に付いても基本的には同様であるが、舌部のサイズからして二対の導子の距離は近くなる。
【0012】
これ等二対の導子は、上述したように身体に接触させるための手段を有していることが特徴である。導子は電極であって、肌にピリピリとした刺激を与えることの少ないものを用いるようにする。好適な例として導電ポリエステル製のものを上げる。この発明のように嚥下障害を克服すべく舌から喉の筋肉を鍛錬するための干渉波の低周波刺激による鍛錬装置と言うものはこれまでになく、また舌や喉に二対の電極を接触させる機能を有するものもこれまでになかった。嚥下に係る舌や喉の筋肉のトレーニングが出来るのはこの発明ならではである。
【0013】
さてこの発明では、前記喉に接触させるための手段が、前記導子を喉の筋肉の部位に位置させて首の回りを巻くためのベルトであるものとすることが出来る。導子が喉の部位に当たるようにしてベルトを首の回りに巻くようにするのである。これにより導子を容易にかつ確実に喉の部位に接触させ得る。なお、導子をベルトに対して首周りの方向に移動させることを調節可能に設けるようにすると、大人から子供まで、首の筋肉の位置に応じて導子の位置を微調節させることが出来るようになる。ベルトにはバックルや面ファスナーなどの止め具を取り付けておく。
【0014】
またこの発明では、前記喉に接触させるための手段が、前記導子を喉の筋肉の部位に位置させて首の後ろ側から喉側に前に回すクリップであるものとし得る。クリップ(ネックバンド)を首の後ろ側から前側に向けて掛けるようにすると、クリップに設けた導子が喉の筋肉がある喉の部位の皮膚に接触して固定される。クリップによれば喉への着脱が容易であると言う利点がある。
【0015】
またこの発明では、前記喉に接触させるための手段が、前記導子を喉の部位に位置させて喉の部位に着脱自在となる粘着パッドであるものとすることが出来る。前記導子が粘着パッドと言う顎に触れる面の特殊な構造によって、喉の筋肉がある喉の部位の皮膚に吸着することが出来るようになったのである。粘着パッドは皮膚に対して着脱自在である。
【0016】
またこの発明では、前記喉に接触させるための手段が、前記導子を喉の部位に位置させて喉の部位に着脱自在となる吸盤であるものとすることが出来る。吸盤と言う喉に触れる面の特殊な構造により、前記導子が喉の皮膚に吸着することが出来る。吸盤は皮膚に対して着脱が自在なものである。
【0017】
またこの発明では、前記喉に接触させるための手段が、前記導子を喉の部位に位置させる二股状の持ち手であってその先に前記導子が設られた、前記導子が喉の部位に着離自在であるものとすることが出来る。二股状の持ち手を手に持って、二股状の左右の先に設けられた左右の導子を喉の筋肉がある喉の部位の皮膚に押し当てるようにして用いる。その力加減や左右の導子を押し当てる位置は、これを持つ手で自在に調節することが可能である。なお前記導子をコロとして構成すれば、喉の筋肉に沿って導子を転がし接触させることが出来、よりトレーニングらしく感じられるものとなる。
【0018】
次にこの発明では、前記舌用導子の人体への接触手段が舌圧子であるものとすることが出来る。舌圧子は圧舌子とも呼称され、口や喉を検査するに際して舌を押さえておくために使用される道具である。一般的には殺菌消毒を管理しつつ使用するステンレス製になるものが使用されているため、この発明でもこれまたはこれに類するものを使用して良い。或いは使い捨ての木製のものに導子を設けたものとしても良い。舌を押さえる道具である点で、舌圧子は上記接触手段として好適である。
【0019】
またこの発明では、前記舌用導子の人体への接触手段が舌に触れるための指サックであるものとすることが出来る。指サックに上記導子を設けておき、指先に装着して、導子が舌先に接触するようにして用いるのである。
【0020】
またこの発明では、前記舌用導子の人体への接触手段が舌に着脱自在となる吸盤であるものとすることが出来る。舌は唾液で濡れているために吸盤が吸着しやすく、また吸盤を外す際には特段の困難はない。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば発生部で発生させた低周波パルス電流を、舌に接触させるための手段を有する導子から舌の筋肉に、また喉に接触させるための手段を有する導子から喉の筋肉に流すようにしたので、咀嚼物を飲み込む動作に関与する各種筋肉の機能をトレーニングとして簡単に回復させることが出来るようになった。舌と喉との両方に電極を接触させて舌と喉との間に低周波パルス電流を印加すると言う、正にこれまでにはない機能の賜物である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施例1のベルト1を展開した説明図である。
【
図6】実施例3の粘着パッド5~52の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0023】
図1乃至
図3によりこの実施例を説明する。このものは人体の喉部に触れるベルト1の内側に、導子である2条の帯状の電極2を上下に離してベルト1の長手方向に向けて設けると共に、このベルト1の両端に面ファスナーのオス10とメス11とを設けたものである。ベルト1は皮革製であり、電極2,2は導電ポリエステル製のものとした。なお電極2,2には、
図3のブロック図で表す低周波パルス発振器の出力部31の一方の出力端と電気的に接続するための電線20が接続されている。
【0024】
図2は舌圧子12であるが、このものはステンレス製に成り、すなわち舌圧子12自体が電極21であって、低周波パルス発振器の出力部31の他方の出力端と電気的に接続するための電線22が接続されている。
【0025】
その低周波パルス発振器であるが、これを構成する各種電子部品の動作を制御する制御部3と、低周波パルスを発振してその波形を成形する所の発振部波形成形部30と、これを外部の導子(電極2,21)に出力するための出力部31と、制御部3等に電力を供給するための電源部30とから構成されている。従って、出力部31から出力された低周波パルスは電極20および電極22を介して、舌の筋肉と喉の筋肉の間に流される。
【0026】
このため、一方の導子である電極2,2の側が喉部に触れるようにして、ベルト1で首の回りを巻き、面ファスナーのオス10とメス11とで止め合わせるようにすると共に、他方の導子である電極21が舌部に触れるように、舌圧子12で舌部を押え付けるようにして使用するのである。こうして電極2と電極21との間に低周波パルスが発生して舌の筋肉と喉の筋肉の間に直列的に加えられるので、嚥下に係る喉の筋肉がトレーニングされることになる。
このクリップ4を首の後ろ側から前側に向けて掛けるようにすると、クリップ4の両端部に設けた電極23,23が喉の筋肉がある喉の部位の皮膚に接触して固定される。バネ性を有するクリップ4(ネックバンド)によれば、電極23,23の喉への着脱が容易であると言う利点がある。また指サック42を人差し指などの指にはめて、電極25を舌部に接触させる。こうして低周波パルス発振器をON状態にして、低周波パルス電流が舌の筋肉と喉の筋肉の間に直列的に加えられるように使用する。