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  • 特開-防塵及び発塵防止装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000035
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】防塵及び発塵防止装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/10 20060101AFI20231225BHJP
【FI】
H02K5/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098552
(22)【出願日】2022-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭介
(72)【発明者】
【氏名】前田 一朗
【テーマコード(参考)】
5H605
【Fターム(参考)】
5H605AA03
5H605BB01
5H605BB05
5H605BB17
5H605CC01
5H605CC02
5H605CC03
5H605CC10
5H605DD32
5H605EA15
5H605EB33
5H605FF06
(57)【要約】
【課題】防塵と発塵防止を達成するための手段を提供する。
【解決手段】防塵及び発塵防止装置は、筒形に形成され、その一端側に環状体103を有するステータ2と、ステータ2の外周に設けられたステータコア201及びステータ巻線105と、ステータコア201の外側に設けられ、ロータマグネット13を有するアウタロータ1と、アウタロータ1の開口端106に形成された環状摺接部と、環状体103に設けられ、その先端が環状摺接部に摺接すると共に樹脂からなるシール部材104と、を備え、アウタロータ1が回転する時に、シール部材104からの埃の放出又は外部からの埃の侵入を防止する構造である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒形に形成され、その一端側に環状体(103)を有するステータ(2)と、前記ステータ(2)の外周に設けられたステータコア(201)及びステータ巻線(105)と、前記ステータコア(201)の外側に設けられ、ロータマグネット(13)を有するアウタロータ(1)と、前記アウタロータ(1)の開口端(106)に形成された環状摺接部(107)と、前記環状体(103)に設けられ、その先端(104A)が前記環状摺接部(107)に摺接すると共に樹脂からなるシール部材(104)と、を備え、
前記アウタロータ(1)が回転する時に、前記シール部材(104)からの埃の放出又は外部からの埃の侵入を防止することを特徴とする防塵及び発塵防止装置。
【請求項2】
前記シール部材(104)は、前記先端(104A)に形成されたシール片(110)が前記環状摺接部(107)の段部(111)に摺接していることを特徴とする請求項1記載の防塵及び発塵防止装置。
【請求項3】
前記シール部材(104)の前記シール片(110)は、その先端(110A)に形成され曲折自在な舌片、又は、板状に形成された板片よりなることを特徴とする請求項2記載の防塵及び発塵防止装置。
【請求項4】
少なくとも、前記アウタロータ(1)、前記環状体(103)、前記シール部材(104)、前記シール片(110)、前記開口端(106)及び前記環状摺接部(107)により防塵/発塵防止機構(200)を形成することを特徴とする請求項2記載の防塵及び発塵防止装置。
【請求項5】
前記シール部材(104)は、前記ステータ(2)と前記アウタロータ(1)とを組付ける前に、前記環状体(103)に取付けられていることを特徴とする請求項1記載の防塵及び発塵防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防塵及び発塵防止装置に関し、特に、半導体製造用のクリーンルーム内の装置に使用されているモータの埃の防塵及び発塵防止を達成するために、樹脂からなるシール片を用いて防塵及び発塵防止を行うための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種の防塵装置としては、例えば、特許文献1、特許文献2、及び特許文献3の構成を各々開示することができる。
すなわち、特許文献1においては、図4に示されるように、ファンモータは、中心軸CAを中心に回転可能な複数の翼部を有するインペラ400と、インペラ400を回転駆動するモータを備えている。モータは、中心軸CAを中心に回転可能なロータ1と、ロータ1を支持するステータユニット2を備える。ステータユニット2は、ステータと、固定部と、樹脂部21と、被覆部25を備える。ステータでは、インシュレータ202を介してコイル部203がステータコア201に設けられる。固定部はステータを固定する。樹脂部21は、ステータの少なくとも一部及び固定部の一部を覆う。被覆部25は、ステータと樹脂部21との間の界面の端部、樹脂部21と固定部との間の界面の端部、及び、ステータと固定部との間の界面の端部のうちの少なくともいずれか一方を覆う構造である。
【0003】
また、特許文献2においては、図5に示されるように、開放型モータのフレーム51に防塵用カバー50を嵌合させて防塵モータを構成したものである。また、従来の開放型樹脂フレームに圧入嵌合することにより取付可能な防塵用カバーを用いることで、従来の防塵型樹脂フレーム使用モータと同等機能のものをフレーム組立設備の改造や組立条件等の切替ロス等を行うことなく供給できる。
【0004】
また、特許文献3においては、図6に示されるように、カバー70は、コイル66の上方において環状に広がる第1環状部71と、第1環状部71の外周部から下方へ向けて延びる側壁部73と、側壁部73の下端部から回路基板68の上面に沿って径方向外側または径方向内側へ広がる第2環状部72と、を有する。第1環状部71の内周部は、軸受保持部64Aに近接する。第2環状部72は、ベース部64Bに近接する。側壁部73は、ティース68の径方向外側の端面より径方向内側において、複数のティース68の隙間を塞ぎつつ、軸方向に延びている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-198521号公報
【特許文献2】実開平6-21354号公報
【特許文献3】特開2013-21903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の各特許文献1~3に開示されたアウタロータ型のモータにおいては、次のような課題が存在していた。
すなわち、図4の特許文献1の構造においては、外部からの防水性及び防塵性を向上させるためにステータの形状を変更し、さらに、インペラ400と被覆部25の形状を凹部と凸部の組合せとしているが、インペラ400は重量があるため、回転時のブレが起こりやすく、このブレが大きいために、前述の凹部と凸部の隙間Gが大きくならざるを得なかった。
【0007】
また、図5の特許文献2の構造の場合、モータシャフト59の外周にメタル軸受53が設けられ、このメタル軸受53の外周に含油フェルト55を配設し、その外面をカバー52と防塵用カバー50で覆う構造であるが、油を含浸させたフェルトは、モータの製造ラインにおいて扱いに手間がかかり、生産効率を向上させることは極めて困難であった。
【0008】
また、図6の特許文献3の構造においては、回転部60を回転自在に保持するための静止部62との軸方向に沿う隙間Gが大きいため摺動部分がないことにより、発塵の可能性は低いが、アウタロータの内径管理の具合によっては、防塵及び発塵防止が困難になる可能性もあった。
【0009】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、特に、半導体製造用のクリーンルーム内の埃に対する防塵及び発塵防止を達成し、所定のシール片を用いて防塵/発塵防止を行うための新規な改良に関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による防塵及び発塵防止装置は、筒形に形成され、その一端側に環状体を有するステータと、前記ステータの外周に設けられたステータコア及びステータ巻線と、前記ステータコアの外側に設けられ、ロータマグネットを有するアウタロータと、前記アウタロータの開口端に形成された環状摺接部と、前記環状体に設けられ、その先端が前記環状摺接部に摺接すると共に樹脂からなるシール部材と、を備え、前記アウタロータが回転する時に、前記シール部材からの埃の放出又は外部からの埃の侵入を防止する構造であり、また、前記シール部材は、その先端に形成されたシール片が前記環状摺接部の段部に摺接している構造であり、また、前記シール部材の前記シール片は、その先端に形成され曲折自在な舌片、又は、板状に形成された板片よりなる構造であり、また、少なくとも、前記アウタロータ、環状体、シール部材、シール片、開口端及び環状摺接部により防塵/発塵防止機構を形成する構造であり、また、前記シール部材は、前記ステータと前記アウタロータとを組付ける前に、前記環状体に取付けられている構造である。
【発明の効果】
【0011】
本発明による防塵及び発塵防止装置は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、筒形に形成され、その一端側に環状体を有するステータと、前記ステータの外周に設けられたステータコア及びステータ巻線と、前記ステータコアの外側に設けられ、ロータマグネットを有するアウタロータと、前記アウタロータの開口端に形成された環状摺接部と、前記環状体に設けられ、その先端が前記環状摺接部に摺接すると共に樹脂からなるシール部材と、を備え、前記アウタロータが回転する時に、前記シール部材からの埃の放出又は外部からの埃の侵入を防止することにより、シール部材が樹脂で形成されているため、従来よりも大幅にコストダウンとなり、従来の金属製に比べると、騒音が少なく、発塵の発生も少なくなり、モータの信頼性も向上する。
また、前記シール部材は、その先端に形成されたシール片が前記環状摺接部の段部に摺接していることによって、防塵と発塵防止を達成できる。
また、前記シール部材の前記シール片は、その先端に形成され曲折自在な舌片、又は、板状に形成された板片よりなることにより、部品の大小に拘わらず、迅速に部品成形を行うことができる。
また、少なくとも、前記アウタロータ、環状体、シール部材、シール片、開口端及び環状摺接部により防塵/発塵防止機構を形成することにより、サブアッセンブリーとして事前に用意でき、生産効率を上げることができる。
また、前記シール部材は、前記ステータと前記アウタロータとを組付ける前に、前記環状体に取付けられているため、複雑な構成のシール部材でも組込みが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態による防塵及び発塵防止装置を示す半断面図である。
図2図1の要部の拡大図である。
図3図1の他の形態を示す半断面図である。
図4】従来のモータの防塵及び発塵防止装置を示す半断面図である。
図5図4の他の従来形態を示す半断面図である。
図6図4の他の従来形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、半導体製造用のクリーンルーム内の装置に使用されているモータの埃の防塵及び外部からの発塵防止を達成するために、樹脂からなるシール部材のシール片を用いて防塵及び発塵防止を行うことである。
【実施例0014】
以下、図面と共に本発明による防塵及び発塵防止装置の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例(図4)と同一又は同等の部分には、同一符号を付して説明する。
図1において100で示されるものは、例えば、半導体製造用部屋に配設された各種装置に設けられているモータの断面図であり、このモータ100の中心軸CAは、図1の左側を省略とする半断面図として示されている。
【0015】
前記モータ100は、アウタロータ1とステータ2の組合せからなるアウタロータ型の構造であり、前記ステータ2には、一対の軸受2a、2bを介して前記ステータ2と回転軸101とアウタロータ1が一体で回転できる構造である。
【0016】
前記ステータ2の一端、すなわち、図1の上端には環状体103が一体又は別体で設けられ、この環状体103の下部には環状のシール部材104が設けられている。
前記ステータ2は、全体が筒形に形成されると共に、その一端側に前記環状体103が設けられ、前記ステータ2の外周には、ステータコア201とステータ巻線105が設けられている。
【0017】
図1の要部の拡大図である図2の構造において、前記ステータコア201の外側には、ロータマグネット13を有するアウタロータ1が設けられ、このアウタロータ1の開口端106の内側には、環状摺接部107が形成され、前記環状摺接部107には、前記環状体103に設けられその先端104Aが前記環状摺接部107に摺接すると共に樹脂からなるシール部材104が設けられている。また、前記シール部材104の先端104Aにはシール片110が設けられ、前記シール片110の先端110Aが前記環状摺接部107及び段部111に摺接又は当接して、防塵又は発塵防止を達成している。
前記ステータ巻線105が励磁されて前記アウタロータ1が回転する時に、前記シール部材104からの埃の放出又は外部からの埃の侵入を防止することができる構造である。
【0018】
また、前述の従来構造においては、防塵の摺接構造として、金属対金属であったが、本実施の形態においては金属対樹脂の構造であるため、コストダウンと構造の両方の効果を得ることができる。
【0019】
また、図3に示される図1の他の形態においては、図1及び図2に示される防塵/発塵防止機構200の具体的構造が異なるため、図3の防塵/発塵防止機構200のみ説明し、それ以外の構造は、図1の説明時に説明済みであるので、図3の説明において二重説明を避けるため、図1と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0020】
図3において、符号103で示されるものは、前記ステータ2の一部(図3で上部)に一体に形成された環状体であり、この環状体103の角部103Aの段部に固定され、シール片110を一体に有するシール部材104(全体が樹脂成形物)が前記環状体103に対して一体状に設けられている。
前記シール片110は、環状の前記シール部材104に対して一体成形で形成され、前記シール片110は、樹脂製であるため、断面で見て曲折自在(可能)な舌片を形成している。さらに、図3においては、前記シール片110の先端110Aが環状摺接部107の段部111に摺接することにより、前記アウタロータ1が回転する時に、前記シール部材104からの埃の放出又は外部からの埃の侵入を防止することができる。
【0021】
すなわち、図1図2)と図3の形態では、一部の形態が異なるが、同一作用及び同一目的を有するものである。
尚、図1図2)と図3における防塵/発塵防止機構200は、少なくとも前述のアウタロータ1、環状体103、シール部材104、シール片110、開口端106及び環状摺接部107から構成されている。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、半導体製造用のクリーンルーム内で用いられている装置のモータの埃の防塵及び発塵防止を達成するために樹脂で構成してあるため、アウタロータを高速回転させた場合でも、環状摺接部に対して安全にアウタロータの回転を確保することができる。
【符号の説明】
【0023】
1 アウタロータ
2 ステータ
2a 軸受
2b 軸受
13 ロータマグネット
100 モータ
101 回転軸
103 環状体
103A 角部
104 シール部材
104A 先端
105 ステータ巻線
106 開口端
107 環状摺接部
110 シール片
110A 先端
111 段部
200 防塵/発塵防止機構
201 ステータコア
CA 中心軸
G 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6