(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035001
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】注射器及び注射器ユニット
(51)【国際特許分類】
A61M 5/178 20060101AFI20240306BHJP
A61M 5/31 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
A61M5/178
A61M5/31
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155625
(22)【出願日】2022-09-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】P 2022136543
(32)【優先日】2022-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】519449596
【氏名又は名称】アットドウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100190274
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 滋之
(72)【発明者】
【氏名】中村 秀剛
(72)【発明者】
【氏名】中道 聡
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD08
4C066EE06
4C066FF05
(57)【要約】
【課題】過度な持ち替えを要さず、被注射者の負担を軽減する注射器及び注射器ユニットを提供すること。
【解決手段】開口部が形成された本体部をもつシリンジ部と、変換部と、ボタン部と、スライダ部と、を有する注射器。ボタン部は、変換部を跨いで配置され、先端方向に対し設定角度だけ傾斜した前斜面をもつ一対の脚部を有している。変換部は、ガスケットの後端部に連結されており、脚部の前斜面に摺接する後斜面をもつ一対の係合部を有している。スライダ部は、変換部及びボタン部を先端方向へ移動させる。変換部は、ボタン部を本体部の内側に押し下げる操作に応じて、ガスケットと共に先端方向へ移動する。注射器ユニットは、注射器と、開口部内でのボタン部の最前の位置の調整用である1又は複数の調整部材と、を有する。調整部材は、設定された幅をもち、開口部の両側壁の間に配置されるスペーサを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状で側壁部に平面視長方形状の開口部が形成された本体部をもつシリンジ部と、
前記本体部の先端側に配置されるガスケットの後端部に連結され、前記本体部に収容される変換部と、
前記変換部の前記開口部側に配置され、側部が前記開口部の両側壁に挟まれた状態で前記変換部によって支持されるボタン部と、
前記本体部の側部における前記開口部の位置に配置され、前記変換部及び前記ボタン部を、前記ガスケットが前記本体部の先端側へ向かう方向である先端方向へ移動させるためのスライダ部と、を有し、
前記ボタン部は、
前記先端方向に対し垂直な面での断面形状がU字状になっており、
前記変換部を跨いで配置され、前記先端方向に対し設定角度だけ傾斜した前斜面をもつ一対の脚部を有し、
前記変換部は、
一対の前記脚部に対応づけて形成され、前記前斜面に摺接する後斜面をもつ一対の係合部を有すると共に、前記ボタン部を前記本体部の内側に押し下げる操作に応じて前記先端方向へ移動するものである、注射器。
【請求項2】
前記ボタン部は、
該ボタン部の後端面から前記先端方向に沿って形成された挟持溝を有し、
前記スライダ部は、
前記本体部の外側に配置され、前記開口部の横幅よりも幅が広くなるように形成された操作部と、
前記操作部の前記ボタン部側に設けられ、前記挟持溝に挿入可能に形成された安全突起と、を有する、請求項1に記載の注射器。
【請求項3】
前記安全突起は、
前記ボタン部が前記開口部内における最前の位置に配置され、かつ前記スライダ部が前記開口部内における最後方の位置に配置された状態で、前端面が前記ボタン部の後端面と面一になるよう形成されている、請求項2に記載の注射器。
【請求項4】
前記スライダ部は、
前記本体部の外側に配置され、前記開口部の横幅よりも幅が広くなるように形成された操作部と、
前記操作部に接続され、前記開口部の両側壁の間に配置される挟持部と、
前記挟持部に接続され、前記本体部の内側に配置される補助部と、を有し、
前記補助部は、
前記本体部の内壁に接触するよう、前記先端方向に沿って形成された一対の突起部を有する、請求項1に記載の注射器。
【請求項5】
前記補助部は、
前記ボタン部側において、前記挟持部との間に段差が生じるように形成されており、
一対の前記脚部は、それぞれ、
前記ガスケット側に配置される第1脚部と、
前記スライダ部側に配置される第2脚部と、を有し、
前記ボタン部は、
前記第2脚部の下部から後方へ延伸し、前記挟持部における前記段差から前端に至る底部に係合する一対の抜け防止部を有する、請求項4に記載の注射器。
【請求項6】
前記開口部は、
該開口部内における最前の位置に配置された前記ボタン部の後端面の位置を境に、前記先端方向側の幅が広くなるよう形成されている、請求項1~3の何れか一項に記載の注射器。
【請求項7】
一対の前記脚部は、それぞれ、
前記ボタン部の側壁から延伸し、前記ボタン部が押し下げられる前の状態で前記開口部の側壁に対向する基部を有し、
前記基部は、
前記開口部の側壁側における前記先端方向側の位置に、内側に凹んだ窪みを有する、請求項6に記載の注射器。
【請求項8】
一対の前記脚部は、それぞれ、
前記ボタン部の側壁から延伸する基部と、
前記基部から延伸する沿部と、を有し、
前記沿部は、
前記本体部の内壁に対向するよう配置される対向面が、前記内壁に沿うよう湾曲した形状となっている、請求項1~3の何れか一項に記載の注射器。
【請求項9】
前記スライダ部は、
前記ボタン部側に配置される第1部材と、
前記開口部の後壁側に配置される第2部材と、
前記第1部材と前記第2部材との間に配置される第3部材と、を有し、
前記第3部材は、
前記開口部内における最前の位置に配置された前記ボタン部に前記第1部材が当接し、かつ前記開口部内における最後方の位置に前記第2部材が配置された状態における、前記第1部材と前記第2部材との間隙に嵌め込まれるよう形成されている、請求項1に記載の注射器。
【請求項10】
前記ボタン部は、
後端面から前記先端方向に沿って形成された挟持溝を有し、
前記第1部材は、
前方の端面である押端面から後方の端面である背端面に亘って連通する連通穴を有し、
前記第2部材は、
前記第1部材側に設けられ、前記連通穴に挿入される板状の連通部と、
前記連通部の上部から前記先端方向へ延伸し、前記挟持溝に挿入可能に形成された安全突起と、を有する、請求項9に記載の注射器。
【請求項11】
前記第1部材は、
前方の端面である押端面から後方の端面である背端面に亘って連通する連通穴を有し、
前記第2部材は、
前記第1部材側に設けられ、前記連通穴に挿入される板状の連通部を有し、
前記第3部材は、
前記連通部の上部を挟持する嵌め溝を有すると共に、
前記嵌め溝の各内側壁には突起部が形成されており、
前記連通部は、
各突起部それぞれが係合する案内溝と、
前記案内溝よりも下方に形成され、前記第3部材が前記間隙に嵌め込まれる際、各突起部それぞれが係合する固定溝と、を有する、請求項9に記載の注射器。
【請求項12】
前記スライダ部は、
下部後方にバネ性を有する引っ掛け部を有し、
前記シリンジ部は、
前記ボタン部が前記開口部の前壁と前記スライダ部との双方に当接した状態で前記引っ掛け部に係合する後退防止部を有する、請求項1に記載の注射器。
【請求項13】
前記スライダ部は、
前記ボタン部側に配置される第1スライダと、
前記開口部の後壁側に配置される第2スライダと、を有し、
前記ボタン部は、
該ボタン部の後端面から前記先端方向に沿って形成された挟持溝を有し、
前記第1スライダは、
前方の端面である押端面から後方の端面である背端面に亘って連通する連通穴が形成された第1本体と、
前記第1本体から前記先端方向へ延伸し、前記挟持溝に挿入可能に形成された制限突起と、を有し、
前記第2スライダは、
前記本体部の外側に配置され、前記開口部の横幅よりも幅が広くなるよう形成された操作部と、
前記操作部の前記ボタン部側に設けられ、前記連通穴及び前記挟持溝に挿入可能に形成された安全突起と、を有し、
前記安全突起は、
前記第1スライダの背端面に前記第2スライダが当接した状態で、先端部が前記制限突起上に配置されるものである、請求項1に記載の注射器。
【請求項14】
前記安全突起は、
前記ボタン部が前記開口部内における最前の位置に配置され、かつ前記第2スライダが前記開口部内における最後方の位置に配置された状態で、その前端面が前記ボタン部の後端面と面一になるよう形成されている、請求項13に記載の注射器。
【請求項15】
前記制限突起は、
前記ボタン部が前記開口部内における最前の位置に配置され、かつ前記第1スライダ及び前記第2スライダが前記開口部内における最後方の位置に配置された状態で、その前端面が前記ボタン部の後端面と面一になるよう形成されている、請求項14に記載の注射器。
【請求項16】
請求項1~5、9~15の何れか一項に記載の注射器と、
前記開口部内での前記ボタン部の最前の位置を調整するための1又は複数の調整部材と、を有し、
前記調整部材は、予め設定された幅をもち、前記開口部の両側壁の間に配置されるスペーサを有する、注射器ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液を体内に注入する際に用いられる注射器及び注射器ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、薬液を体内に注入するための器具として注射器が知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。こうした注射器は、ガスケットの後端に設けられたプランジャの押し込み操作により、シリンジとガスケットとの間に充填された薬液を、シリンジ先端に取り付けられた針から吐出するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-167279号公報
【特許文献2】特開2012-249716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の注射器は、プランジャの操作によりエア抜きを行った後、シリンジの先端側を持って血管や筋肉などに針を刺し、さらにプランジャ側に持ち替えて薬液を注入する必要がある。このように、従来の注射器は、エア抜きから薬液の注入までの間に、シリンジの先端側と後端側との持ち替えが必要となり、注射に係る一連の動作が煩雑となる。また、針を刺した後の持ち替え動作では、針先がぶれる恐れもあるため、皮膚細胞組織の損傷や、患者等の被注射者の痛みにも繋がり得る。
【0005】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、過度な持ち替えを要さず、被注射者の負担を軽減する注射器及び注射器ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る注射器は、筒状で側壁部に平面視長方形状の開口部が形成された本体部をもつシリンジ部と、本体部の先端側に配置されるガスケットの後端部に連結され、本体部に収容される変換部と、変換部の開口部側に配置され、側部が開口部の両側壁に挟まれた状態で変換部によって支持されるボタン部と、本体部の側部における開口部の位置に配置され、変換部及びボタン部を、ガスケットが本体部の先端側へ向かう方向である先端方向へ移動させるためのスライダ部と、を有し、ボタン部は、先端方向に対し垂直な面での断面形状がU字状となっており、変換部を跨いで配置され、先端方向に対し設定角度だけ傾斜した前斜面をもつ一対の脚部を有し、変換部は、一対の脚部に対応づけて形成され、上記の前斜面に摺接する後斜面をもつ一対の係合部を有すると共に、ボタン部を本体部の内側に押し下げる操作に応じて先端方向へ移動するものである。
【0007】
本発明の一態様に係る注射器ユニットは、上記の注射器と、開口部内でのボタン部の最前の位置を調整するための1又は複数の調整部材と、を有し、調整部材は、予め設定された幅をもち、開口部の両側壁の間に配置されるスペーサを有するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、本体部に収容される変換部と、側部が開口部の両側壁に挟まれた状態で変換部に支持されるボタン部と、変換部及びボタン部を先端方向に移動させるためのスライダ部と、を有している。ボタン部は、前斜面をもつ一対の脚部を有し、変換部は、ボタン部の前斜面に摺接する後斜面をもつ一対の係合部を有している。したがって、ユーザは、本体部の側部に位置するスライダ部の操作により、ガスケットが連結された変換部を先端方向に移動させてエア抜きを行い、同じく本体部の側部に位置するボタン部の操作により、変換部を更に先端方向へ移動させて、人又は動物等に薬液を注入することができる。したがって、注射に係る一連の動作において、過度な持ち替えを要さず、かつ被注射者の負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る注射器の構成例を示す斜視図である。
【
図2】
図1の注射器を部材ごとに例示した分解斜視図である。
【
図4】
図1のシリンジ部を上方からみた平面図である。
【
図6】
図3のA-A’線に沿った概略断面図である。
【
図7】
図3のB-B’線に沿った概略断面図である。
【
図8】
図1の注射器における初期状態を例示した説明図である。
【
図9】
図1の注射器における押出状態を例示した説明図である。
【
図10】
図1の注射器における突っ張り状態を例示した説明図である。
【
図11】
図1の注射器における注入完了状態を例示した説明図である。
【
図12】
図1の注射器における変換部及びボタン部を中心とした構成を模式的に例示した(a)左側面図と(b)背面図とからなる説明図である。
【
図13】
図1の注射器を前提とした、本体部の内径と、ボタン部の幅及び突起部の径と、ストロークとの関係を説明するための模式図である。
【
図14】本発明の実施の形態1の変形例Aに係る注射器の構成例を示す斜視図である。
【
図15】本発明の実施の形態1の変形例Bに係る注射器のボタン部を例示した斜視図である。
【
図16】本発明の実施の形態1の変形例Cに係る注射器のボタン部を例示した斜視図である。
【
図17】本発明の実施の形態2に係る注射器の構成例(初期状態)を示す説明図である。
【
図18】
図17の注射器における押出状態を例示した説明図である。
【
図19】
図17の注射器における突っ張り状態を例示した説明図である。
【
図20】
図17の注射器における嵌め込み状態を例示した説明図である。
【
図21】
図17の注射器における注入完了状態を例示した説明図である。
【
図22】
図17の注射器を部材ごとに例示した分解斜視図である。
【
図23】本発明の実施の形態3に係る注射器の構成例(初期状態)を示す説明図である。
【
図24】
図23の注射器における押出状態を例示した説明図である。
【
図25】
図23の注射器における注入完了状態を例示した説明図である。
【
図26】本発明の実施の形態4に係る注射器の構成例(初期状態)を示す説明図である。
【
図27】
図26のスライダ部を部材ごとに例示した分解斜視図である。
【
図28】
図27の第1スライダと第2スライダとを組み合わせた状態例を示す斜視図である。
【
図29】
図26の注射器における押出状態を例示した説明図である。
【
図30】
図26の注射器における第1突っ張り状態を例示した説明図である。
【
図31】
図26の注射器における第1押下状態を例示した説明図である。
【
図32】
図26の注射器における第2突っ張り状態を例示した説明図である。
【
図33】
図26の注射器における第2押下状態を例示した説明図である。
【
図34】本発明の実施の形態5に係る注射器及び注射器ユニットの構成例を示す斜視図である。
【
図38】
図34の注射器ユニットの初期状態の一例を示す説明図である。
【
図39】
図34の注射器ユニットにおいて、最大量の薬液を投与する場合の各工程を例示した説明図である。
【
図40】
図34の注射器ユニットにおいて、2番目に多い量の薬液を投与する場合の各工程を例示した説明図である。
【
図41】
図34の注射器ユニットにおいて、3番目に多い量の薬液を投与する場合の各工程を例示した説明図である。
【
図42】
図34の注射器ユニットにおいて、最少量の薬液を投与する場合の各工程を例示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1~
図12を参照し、実施の形態1における注射器100の構成例について説明する。各図では便宜上、x軸方向を前後方向、y軸方向を左右方向、z軸方向を上下方向と定義し、以下では各方向を、各部材の向きや位置関係を示すために用いることがある。各図では、煩雑さを避けるため、適宜符号等の一部を省略する。
【0011】
まず、
図1~
図3を参照し、実施の形態1における注射器100の全体的な構成例について説明する。
図1~
図3に示すように、注射器100は、シリンジ部10と、ガスケット20と、変換部30と、ボタン部40と、スライダ部50と、を有している。シリンジ部10の素材としては、透明性を有するPP(ポリプロピレン)、COP(シクロオレフィンポリマー)、PS(ポリスチレン)、PC(ポリカーボネート)などを好適に用いることができる。
図1では、シリンジ部10の背後に見えるガスケット20、変換部30、ボタン部40、及びスライダ部50を破線で示すと共に、シリンジ部10の内壁等についても破線で示している。
【0012】
シリンジ部10は、筒先部11と、本体部12と、蓋部13と、を有している。本体部12は、筒状に形成されており、先端には筒先部11が接続されている。より具体的に、本体部12は、筒状の側壁部12mを有すると共に、側壁部12mと筒先部11とをつなぐ先端部12nを有している。
図1等に例示する先端部12nは、側壁部12mから筒先部11に向けて先細りとなるよう形成されている。本体部12は、側壁部12mに平面視長方形状の開口部15が形成されている。
【0013】
本体部12は、機能的な観点から、薬液貯留部12aと、機構組込み部12bと、補助部12cと、に区分けすることができる。薬液貯留部12aは、ガスケット20が嵌め込まれると共に、薬液Cが充填される部分である。機構組込み部12bは、開口部15が設けられた箇所であり、ガスケット20を2段階で押し出すための押出機構が組み込まれる。押出機構とは、変換部30とボタン部40とスライダ部50とを組み合わせた機構のことである。補助部12cは、注射器100の操作性等をもとに長さが設定され、後端部に蓋部13が取り付けられている。
【0014】
筒先部11は、本体部12よりも内径及び外径が小さい筒状の部材である。筒先部11は、先端に吐出穴11aを有し、注射用の針(図示せず)が装着される部分である。蓋部13は、本体部12の後端部を補強するためのものである。
図1等に例示する蓋部13は、外周が平坦な部分と湾曲した部分とで構成され、平坦な部分が開口部15とは反対側に配置されている。かかる形状の蓋部13を用いれば、ボタン部40を上側に向けた状態で、注射器100を安定的に載置することができ、注射器100の転がりを防ぐことができる。
【0015】
ガスケット20は、本体部12の先端側に配置されるもので、ゴムなどの弾性材料により形成される。ガスケット20は、本体部12の内壁12rに密着するよう、円柱状に形成されている。ガスケット20の前端部21は、薬液貯留部12aの先端側の内面形状に合わせて形成される。本実施の形態1のガスケット20は、前端部21が先細りとなるテーパ状に形成されている。ガスケット20は、後端部に、変換部30と連結するための連結穴(図示せず)が形成されている。
【0016】
ボタン部40は、変換部30の開口部15側に配置され、側部が開口部15の両側壁15b(左右の側壁15b)に挟まれた状態で変換部30によって支持される。ボタン部40は、先端方向に対し垂直な面での断面形状がU字状(コの字状)となっている。先端方向は、ガスケット20が本体部12の先端側へ向かう方向であり、各図におけるx軸正方向、つまり前方向に相当する。
【0017】
ボタン部40は、指などで押される表壁41aと、表壁41aの両側端部から、表壁41aに対し略垂直に延びる一対の側壁41bと、を有している。
図1では、スライダ部50が開口部15の後壁15dに当接し、かつボタン部40がスライダ部50の押端面51cに当接した状態である初期状態を示している。初期状態において、ボタン部40は、前端面41cが前壁15cに対向し、後端面41dが押端面51cに当接するよう配置される。
図2に示すように、ボタン部40のうち、表壁41aと一対の側壁41bとを含み、前端面41c及び後端面41dを有する部分をボタン本体41と称する。
【0018】
初期状態における、ボタン部40の前端面41cと開口部15の前壁15cとの隙間の長さTe(
図3参照)は、筒先部11の先端に取り付けられる注射針及び薬液貯留部12aに溜まった空気を、該注射針の先端から抜くことができる長さに設定される。つまり、長さTeは、注射針の先端からのエア抜き用に設定される。
【0019】
ボタン部40は、後端面41dから先端方向に沿って形成された挟持溝45を有している。本実施の形態1における挟持溝45は、ボタン部40の後端面41dから前端面41cに亘って形成されており、ボタン部40を押し下げたときに、変換部30の芯部33が入る部分となる。ボタン部40は、変換部30を跨いで配置され、先端方向に対し設定角度θだけ傾斜した前斜面4sをもつ一対の脚部42を有している。
【0020】
各図に示す脚部42は、ガスケット20側に配置された第1脚部42aと、スライダ部50側に配置された第2脚部42bと、により構成されている。以下、第1脚部42aと第2脚部42bとを区別せずに指す場合、脚部42と総称することがある。第1脚部42a及び第2脚部42bは、それぞれの前側に、変換部30の後斜面3sと摺接する前斜面4sを有している。そして、ボタン部40は、第2脚部42bの下部から後方へ延伸し、挟持部52における底部52bに係合する一対の抜け防止部43を有している。底部52bは、挟持部52における、補助部53との間の段差から前端へ至る部分である。ボタン部40は、抜け防止部43の上部の平坦面4fが、挟持部52の底部52bに対向するよう配置される。そのため、抜け防止部43が底部52bに引っ掛かり、ボタン部40の抜け落ちが防止される。
【0021】
変換部30は、ガスケット20の後端部に連結され、本体部12に収容されるものである。変換部30は、ガスケット20の連結穴に嵌め込まれる嵌入部31と、嵌入部31に接続された首部32と、首部32に接続された板状の芯部33と、芯部33の両側面に設けられた一対の係合部34と、を有している。一対の係合部34は、一対の脚部42に対応づけて形成され、前斜面4sに摺接する後斜面3sを有している。つまり、後斜面3sの傾斜は、前斜面4sの傾斜と等しくなっている。変換部30は、ボタン部40を本体部12の内側に押し下げる操作に応じて先端方向へ移動するよう構成されている。ボタン部40を本体部12の内側に押し下げる方向は、先端方向に対し垂直な方向であり、以下この方向を「押下方向」ともいう。押下方向は、各図におけるz軸負方向に相当する。
【0022】
各図に示す係合部34は、ガスケット20側に配置された第1係合部34aと、スライダ部50側に配置された第2係合部34bと、により構成されている。第1係合部34aは、第1脚部42aに対応づけられており、第1脚部42aの前斜面4sと摺接する後斜面3sを有している。第2係合部34bは、第2脚部42bに対応づけられており、第2脚部42bの前斜面4sと摺接する後斜面3sを有している。
なお、各図では、変換部30の第1係合部34aが、先端方向に対し設定角度θだけ傾斜した前方補助斜面3tを有する例を示しているが、これは、後述する変形例Bに対応するものである。つまり、第1係合部34aは、前方補助斜面3tを有しなくてもよい。
【0023】
スライダ部50は、変換部30及びボタン部40の後方に配置される。スライダ部50は、変換部30及びボタン部40を先端方向へ移動させるためのものである。スライダ部50は、操作部51と、挟持部52と、補助部53と、安全突起55と、を有している。操作部51は、本体部12の外側に配置され、開口部15の横幅(W2)よりも幅Wsが広くなるよう形成されている。挟持部52は、操作部51の操作面51aとは反対側の面に接続されており、開口部15の両側壁15bの間に挟まれるよう配置される。挟持部52の幅は、開口部15の横幅(W2)と等しいか、それよりも若干短くなっている。
【0024】
補助部53は、挟持部52の、操作部51とは反対側の面に接続され、本体部12の内側に配置される。補助部53は、ボタン部40側において、挟持部52との間に段差が生じるように形成されている。抜け防止部43に係合する底部52bは、挟持部52の前側下部であって、補助部53が欠けている部分のことである。補助部53は、本体部12の内壁12rに接触するよう、先端方向に沿って形成された一対の突起部54を有している。一対の突起部54は、スライダ部50の抜け落ちを防ぐと共に、スライダ部50の安定的なスライド動作を補助するものである。補助部53は、芯部33の後端面と抜け防止部43の後端面とに対向するよう配置される補助端面53cを有している。すなわち、スライダ部50は、押端面51cと補助端面53cとにより、変換部30及びボタン部40を安定的に押し出すことができる。
【0025】
安全突起55は、操作部51のボタン部40側に設けられ、ボタン部40の挟持溝45に挿入可能に形成されている。安全突起55は、ボタン部40が開口部15内における最前の位置に配置され、かつスライダ部50が開口部15内における最後方の位置に配置された状態である突っ張り状態において、先端面55cがボタン部40の後端面41dと面一になるよう形成されている。本実施の形態1において、ボタン部40の開口部15内における最前の位置は、前壁15cに当接する位置であり、スライダ部50の開口部15内における最後方の位置は、後壁15dに当接する位置である。かかる構成により、ユーザがボタン部40を押し下げると、ボタン部40は、後端面41dが先端面55cに接した状態で押下方向に移動する。すなわち、突っ張り状態において、スライダ部50は、後端面51dが開口部15の後壁15dに当接した状態にある。そのため、ボタン部40の前後方向の移動は、安全突起55によって抑制されるので、ボタン部40及びこれに係合している変換部30の後退を防ぐことができる。よって、ボタン部40の押下方向への移動が、そのまま、変換部30の先端方向への移動に変換される。
【0026】
ここで、安全突起55は、操作部51だけに接続されたものであってもよいが、各図に例示する安全突起55は、操作部51から挟持部52に亘って設けられている。つまり、安全突起55は、上下方向の高さが、操作部51に接続された部分の高さと、挟持部52に接続された部分の高さとの和になっている。よって、安全突起55は、ボタン部40の押し下げが完了するまで、ボタン部40との間に一定の接触範囲を確保することができ、ボタン部40を安定した状態で下方へ案内することができる。
【0027】
ここで、シリンジ部10への押出機構の組付けは、例えば下記の順序で行われる。
(1)ガスケット20を、変換部30に嵌め込む。
(2)ガスケット20を嵌め込んだ変換部30を、ガスケット20を先端方向に向けた状態で、シリンジ部10の後端の穴から挿入する。
(3)ボタン部40を、変換部30に対応づけて開口部15から嵌め込む。
(4)スライダ部50を、開口部15からボタン部40の後方に嵌め込む。
(5)細ピンなどを使用して、各部材をシリンジ部10の後方に配置する。
【0028】
また、薬液Cの薬液貯留部12aへの充填は、例えば、筒先部11の先端に、カニューレのような細いパイプを挿入して行う。変換部30、ボタン部40、及びスライダ部50は、それぞれ、樹脂などにより一体的に形成される。
【0029】
次に、
図4を参照し、本実施の形態1のシリンジ部10の具体的な構成例について説明する。
図4に示すように、薬液貯留部12aの長さをS
1とし、機構組込み部12bの長さ、つまり開口部15の長さをT
0とし、補助部12cの長さをS
2とする。長さS
1は、ガスケット20のサイズ、及び予め設定された薬液Cの投与量などをもとに設定される。前壁15cは、先端方向の位置が実質的に可変となるよう構成してもよい。すなわち、シリンジ部10は、長さS
1と長さT
0とのバランス調整が可能な構成を採ってもよい。このようにすれば、ストロークHに対する移動量Lを、長さS
1が最大のときに合わせる等により、薬液Cの投与量の調整が可能となる。長さS
2は、シリンジ部10の強度及び持ちやすさ等の観点から設定される。長さT
0は、突っ張り状態において、安全突起55の先端面55cがボタン部40の後端面41dと面一になるよう設定される。
【0030】
開口部15は、該開口部15内における最前の位置に配置されたボタン部40の後端面41dの位置を境に、先端方向側の幅が広くなるよう形成されている。本実施の形態1において、ボタン部40の開口部15内における最前の位置は、前壁15cに当接する位置である。すなわち、開口部15の両側壁15bには、前壁15cに当接した状態のボタン部40の後端面41dの位置に段差部15sが形成されている。前壁15cに当接した状態のボタン部40は、後方へ向けて幅狭となる段差部15sによって後方への移動が妨げられる。よって、ボタン部40を前壁15cに当接させた後、スライダ部50を後方へ移動させる際、スライダ部50の移動につられてボタン部40が後退するような事態を回避することができる。
【0031】
前壁15cから段差部15sまでの領域R
1の長さT
1は、ボタン部40の長さTkに基づいて設定される。本実施の形態1の場合、長さT
1は、長さTkと等しいか、長さTkよりも若干長くなるように設定される。領域R
1の幅W
1は、ボタン部40の押下操作の円滑性及び安定性などを考慮し、操作時の抵抗が極力小さくなるように設定される。段差部15sから後壁15dまでの領域R
2の幅は、全体として幅W
1よりも狭くなっている。本実施の形態1において、領域R
2の幅は、後壁15dから長さT
3内側の箇所までの幅W
3が、それ以外の箇所の幅W
2よりも狭くなっている。このように、後壁15dの近傍で幅を狭めたのは、後壁15dに当接させたスライダ部50を定置させるためである。したがって、長さT
3は、スライダ部50の後端部に対応づけて設定され、
図4にも示すように、長さT
0に比べて非常に短くなっている。幅W
2は、ボタン部40及びスライダ部50の摺動性を損なわない範囲で、適宜調整するとよい。
【0032】
次いで、
図5及び
図6を参照し、ボタン部40の具体的な構成について補足する。一対の脚部42は、それぞれ、側壁41bから延伸する基部4aを有している。基部4aは、ボタン部40が押し下げられる前の状態で、開口部15の側壁15bに対向するよう配置される。本実施の形態1の基部4aは、開口部15の側壁15b側における先端方向側の位置に、内側に凹んだ窪み4kを有している。
図5の例では、第1脚部42a及び第2脚部42bのそれぞれに窪み4kが形成されている。かかる構成により、開口部15の両側壁15bに挟持された状態の基部4aは、先端方向側には相対的に進みやすく、後方には進みにくくなる。したがって、ボタン部40を前壁15cに当接させた後、スライダ部50を後方へ移動させる際、スライダ部50の移動につられてのボタン部40の移動を抑制することができる。開口部15に段差部15sを設けると共に、一対の脚部42に窪み4kを形成すれば、ボタン部40の後退をより精度よく防ぐことができる。
【0033】
図5に例示するように、第1脚部42a及び第2脚部42bは、何れも、側壁41bから延伸する基部4aと、基部4aから延伸する沿部4bと、を有している。沿部4bは、本体部12の内壁12rに接触するよう、先端方向に沿って形成された突起部4mを有している。突起部4mは、
図6にも示すように、一対の脚部42のそれぞれに設けられており、ボタン部40の抜け落ちを防ぐと共に、ボタン部40の安定的なスライド動作を補助するものである。
【0034】
沿部4bは、対向面4rが内壁12rに沿うよう湾曲した形状となっている。対向面4rは、沿部4bにおいて、本体部12の内壁12rに対向するよう配置される箇所である。かかる構成を採れば、
図6からも分かるように、ボタン部40が押されていない状態において、一対の脚部42と芯部33とが対向する範囲を大きくすることができるため、ボタン部40の押し下げ時の安定性を高めることができる。また、対向面4rが本体部12の内壁12rと同程度に湾曲しているため、ボタン部40の押し下げにより、沿部4bの下端部を本体部12の内壁12rまで、あるいはその近傍まで近づけることができる。よって、ボタン部40の押し下げ可能な距離であるストロークHを極力長く確保することができる。
【0035】
図5に例示する抜け防止部43は、板状の平坦部4hと、沿部4bと同等の形状である沿部4jと、を有している。すなわち、突起部4mは、第2脚部42bから抜け防止部43に亘って設けられており、対向面4rも、第2脚部42bから抜け防止部43に亘って内壁12rに沿う湾曲形状となっている。
【0036】
続いて、
図7を参照し、スライダ部50と本体部12との位置関係ついて補足する。
図7では、便宜上、部材間の境界を破線で示している。
図7に示すように、操作部51と挟持部52との境界に位置する左右の角部Eは、前後方向に沿って線状に延びており、開口部15の上端によって支持される。また、スライダ部50は、一対の突起部54の位置における幅が、開口部15の横幅(W
2)よりも広くなっており、突起部54の接触端Fが内壁12rに接触し得る状態となっている。一対の突起部54それぞれの接触端Fは、前後方向に沿って線状に延びている。すなわち、スライダ部50は、操作部51と突起部54との間の挟持部52が、断面視で相対的に凹んだ形状となっており、シリンジ部10における開口部15の両側壁15bの箇所が、それぞれ、スライダ部50の角部Eと接触端Fとにより拘束される(2線拘束)。したがって、開口部15は、スライダ部50を安定的に摺動させるためのレールとして機能する。
【0037】
次に、
図8~
図11を参照し、注射器100を用いた注射に係る一連の動作について説明する。
図8~
図11では、押出機構の動作状態を明示するため、シリンジ部10の半分をカットしてその一部を例示している。また、各図では、薬液Cの移動が分かるよう、薬液Cが充填される箇所にドットを付している。
【0038】
図8は、
図1と同じく初期状態の注射器100を示す。
図9は、開口部15内における最前の位置に配置されたボタン部40にスライダ部50が当接した状態である押出状態の注射器100を示す。
図9では、ボタン部40が、開口部15の前壁15cとスライダ部50の押端面51cとの双方に当接している。
図10は、突っ張り状態の注射器100を示す。
図11は、
図10の突っ張り状態においてボタン部40が押し下げられた状態である注入完了状態の注射器100を示す。
【0039】
初期状態(
図8)の注射器100において、スライダ部50を先端方向にスライドさせると、変換部30及びボタン部40も先端方向へスライドし、
図9の押出状態のように、ボタン部40が開口部15の前壁15cに当接した状態で押出機構の動きが止まる。
図8から
図9への推移において、ガスケット20は、変換部30と共に先端方向へ長さTe(
図3参照)だけ移動する。すなわち、ユーザは、スライダ部50の操作により、注射器100を初期状態から押出状態に遷移させることで、エア抜きを行うことができる。以降、初期状態から押出状態に遷移させることを「エア抜き」ともいう。
【0040】
押出状態(
図9)の注射器100では、薬液貯留部12aに、予め設定された規定量の薬液Cが残留している。押出状態の注射器100において、スライダ部50を後方へスライドさせると、スライダ部50だけが後方へ移動し、スライダ部50の動作は、
図10の突っ張り状態のように、開口部15の後壁15dに当接したときに停止する。その際、安全突起55は、挟持溝45から徐々に抜かれていく。
【0041】
突っ張り状態(
図10)の注射器100において、安全突起55は、先端面55cがボタン部40の後端面41dと面一になる。したがって、ユーザは、ボタン部40を、安全突起55の先端面55cに沿って押し下げることができる。挟持溝45から安全突起55が抜かれた後、ボタン部40は、主として、前斜面4sと変換部30の後斜面3sとの間の静止摩擦力と、変換部30に連結されたガスケット20とシリンジ部10との間の静止摩擦力とにより、その位置が保持される。
【0042】
突っ張り状態の注射器100において、ボタン部40が押し下げられると、ボタン部40の押下方向への移動が、変換部30において先端方向への移動に変換され、ガスケット20が本体部12の先端側へ移動する。本実施の形態1の注射器100は、ボタン部40を最大限(ストロークH分)押し下げたとき、
図11のように、ガスケット20が本体部12の先端部分に当接し、筒先部11に取り付けられた注射針から被注射者等に規定量の薬液Cが注入される。
【0043】
次いで、
図12及び
図13を参照し、ストロークH、移動量L、設定角度θ、本体部12の内径D(mm)、突起部4mの径α(mm)、ボタン部40の幅W(mm)、及び薬液Cの規定量(投薬量)と、これらの関係について説明する。移動量Lは、ボタン部40を最大限押し下げたときのガスケット20の先端方向への移動距離である。突起部4mは、断面円形状のものに限定されないが、ここでは近似的に円形状と考える。
【0044】
図12からも分かるように、設定角度θと、ストロークH、移動量Lとの間には、「tanθ=H/L」の関係があり、これを設定角度θについて整理すると、下記式(1)のようになる。
【0045】
(数1)
θ=arctan(H/L) ・・・ (1)
【0046】
ストロークHは、各部の長さを
図13のように捉え、三平方の定理から、「(W/2+α/2)
2+(H/2)
2≒(D/2)
2」のように整理できる。これをストロークHについて整理すると、下記式(2)のようになる。なお、式(2)では、「(D
2-4(W/2+α/2)
2)」の全体にルート(√)がかかっている。
【0047】
(数2)
H=√(D2-4(W/2+α/2)2) ・・・ (2)
【0048】
ここで、投薬量をV(mm3:μL)とすると、内径D及び移動量Lとの関係は、「V=π×(D/2)2×L」となり、これを移動量Lについて整理すると、下記式(3)のようになる。
【0049】
(数3)
L=4V/(πD2) ・・・ (3)
【0050】
上記の各種パラメータの設定は、ボタン部40の押し込み時の抵抗感、ボタン部40の押し込みの確実性、移動量L、投薬量Vなどを勘案して調整するとよい。設定角度θが大きくなるほど、ボタン部40の押し下げ時の抵抗が小さくなる。そのため、設定角度θを大きくするほど、より軽いタッチで薬液Cの注入を行うことができる。ただし、設定角度θを大きくし過ぎると、移動量Lが短くなるため、薬液Cの投与量が減少する点に留意を要する。なお、実施の形態1において、設定角度θは、例えば45°~65°の範囲内で設定される。もっとも、設定角度θは、注射器全体の大きさや薬液Cの投与量などに応じ、上記範囲の内外で任意に調整可能である。後述する実施の形態2~5についても同様である。
【0051】
以上のように、本実施の形態1の注射器100は、本体部12に収容される変換部30と、側部が開口部15の両側壁15bに挟まれた状態で変換部30に支持されるボタン部40と、変換部30及びボタン部40を先端方向に移動させるためのスライダ部50と、を有している。ボタン部40は、前斜面4sをもつ一対の脚部42を有し、変換部30は、ボタン部40の前斜面4sに摺接する後斜面3sをもつ一対の係合部34を有している。したがって、ユーザは、本体部12の側部に位置するスライダ部50の操作で変換部30を先端方向に移動させてエア抜きを行い、同じく本体部12の側部に位置するボタン部40の操作で更に変換部30を先端方向へ移動させて、注射対象に液体を注入することができる。よって、注射に係る一連の動作において、過度な持ち替えを要さず、かつ被注射者の負担を軽減することができる。
【0052】
また、従来の注射器は、プランジャの押し込み操作に一定の力を要するため、針の位置と操作箇所とが離れていることも相俟って、手ぶれが発生しやすくなる。注射時の手ぶれは、針を穿刺した後に針の位置がずれる可能性があり、穿刺部周辺の損傷にも繋がり得る。この点、注射器100であれば、ボタン部40を押すという単純な操作により、ガスケット20に連結された変換部30を先端方向へ移動させ、人又は動物の体内などに薬液Cを注入することができる。注射器100は、人差し指のみでボタン部40を押すことが可能である。よって、残りの指を用いて注射器100を支えることができるため、注射時の操作安定性につながる。
【0053】
さらに、本実施の形態1のボタン部40は、後端面41dから先端方向に沿って形成された挟持溝45を有している。そして、スライダ部50は、操作部51のボタン部40側に設けられ、ボタン部40の挟持溝45に挿入可能に形成された安全突起55を有している。そのため、安全突起55が挟持溝45に挿入された状態では、ボタン部40を押し下げることができない。よって、エア抜き時など、注射を行う前の段階でボタン部40が押され、薬液Cが吐出されてしまうような誤操作を防ぐことができる。
【0054】
本実施の形態1における挟持溝45は、ボタン部40の後端面41dから前端面41cに亘って形成されている。そのため、スライダ部50が後退して安全突起55が抜かれた後は、挟持溝45の底面45uが芯部33と対向する状態、つまり芯部33が挟持溝45に挿入可能な状態となる。よって、ボタン部40に上から力を加えると、芯部33が挟持溝45に入り込むため、ボタン部40を押し下げることができる。つまり、挟持溝45は、ボタン部40の誤操作を防止する機能と共に、ボタン部40の押し下げ可能な距離であるストロークHを芯部33との間にもたらすものである。
【0055】
安全突起55は、ボタン部40が開口部15の前壁15cに当接し、かつスライダ部50が開口部15の後壁15dに当接した状態で、先端面55cがボタン部40の後端面41dと面一になるよう形成されている。かかる構成により、ボタン部40を押し下げると、後端面41dが安全突起55の先端面55cに接触した状態で、ボタン部40が押下方向に移動する。その際、スライダ部50は、開口部15の後壁15dにより後退が阻止されている。そのため、ボタン部40は、安全突起55により後退が阻止された状態で押し下げられる。したがって、ボタン部40の押下方向への動作が、そのまま、変換部30の先端方向への動作に変換され、薬液貯留部12aに充填された規定量の薬液Cを確実に人体等へ注入することができる。
【0056】
スライダ部50は、開口部15の横幅(W2)よりも幅Wsが広くなるように形成された操作部51と、操作部51に接続され、開口部15の両側壁15bの間に配置される挟持部52と、挟持部52に接続され、本体部12の内側に配置される補助部53と、を有していてもよい。そして、補助部53は、本体部12の内壁12rに接触するよう、先端方向に沿って形成された一対の突起部54を有していてもよい。このようにすれば、開口部15の各側壁15bは、挟持部52に対向する状態で、操作部51の両側端部と一対の突起部54とにより挟まれる。したがって、開口部15は、スライダ部50を前後方向に円滑に摺動させるためのレールとして機能する。また、スライダ部50は、一対の突起部54により、シリンジ部10からの抜け落ちが防止される。
【0057】
補助部53は、ボタン部40側において、挟持部52との間に段差が生じるように形成してもよい。一対の脚部42は、それぞれ、ガスケット20側に配置される第1脚部42aと、スライダ部50側に配置される第2脚部42bと、を有していてもよい。そして、ボタン部40は、第2脚部42bの下部から後方へ延伸し、挟持部52における底部52bに係合する一対の抜け防止部43を有していてもよい。スライダ部50は、一対の突起部54によって抜け落ちが抑制されているところ、ボタン部40は、初期状態及び押出状態において、抜け防止部43が挟持部52の底部52bに対向するよう配置される。そのため、ボタン部40の抜け落ちを、より確実に防ぐことができる。
【0058】
開口部15は、前壁15cに当接した状態のボタン部40の後端面41dの位置を境に、先端方向に向けて幅が広くなるよう形成されている。すなわち、開口部15の両側壁15bには、前壁15cに当接した状態のボタン部40の後端面41dの位置に段差部15sが形成されている。したがって、ボタン部40は、スライダ部50に対する操作で先端方向へ移動する際、開口部15において相対的に幅の狭い部分(幅W2)から幅の広い部分(幅W1)へ移動することになる。そして、幅W2の領域に入ったボタン部40は、後方へ向けて幅狭となる段差部15sによって後方への移動が妨げられる。よって、ボタン部40を前壁15cに当接させた後、スライダ部50を後方へ移動させる際、スライダ部50の移動につられてボタン部40が後退するような事態を回避することができる。
【0059】
一対の脚部42は、それぞれ、側壁41bから延伸する基部4aを有しているが、基部4aは、開口部15の側壁15b側における先端方向側の位置に窪み4kを有していてもよい。このようにすれば、基部4aは、窪み4kによって前側の抵抗が弱まるため、ボタン部40の先端方向への移動の円滑化を図ることができる。また、基部4aは、窪み4kの存在により、後ろ側の抵抗が相対的に強まるため、ボタン部40の後退を抑制することができる。
【0060】
一対の脚部42は、それぞれ、側壁41bから延伸する基部4aと、基部4aから延伸する沿部4bと、を有していてもよい。沿部4bは、本体部12の内壁12rに対向するよう配置される対向面4rが、本体部12の内壁12rに沿うよう湾曲した形状となっている。このようにすれば、ボタン部40が押されていない状態での一対の脚部42と芯部33とが重なる領域を大きくすることができるため、ボタン部40の載置安定性を高めることができる。また、沿部4bは、内側に向けて先細りとなるテーパ状となっており、
図6にも示すように、芯部33側に一定の長さを有している。ただし、対向面4rの形状は、内壁12rに沿っているため、載置安定性を保ちつつ、最大限のストロークHを確保することができる。
【0061】
<変形例A>
図14を参照し、実施の形態1の変形例Aに係る注射器100Aについて説明する。注射器100と同等の構成部材については同一の符号を用いて説明は省略又は簡略化する。本変形例Aの注射器100Aは、ボタン部40Aの一対の脚部42が、先端方向に対し設定角度θだけ傾斜した前斜面4sと、先端方向に対し設定角度θだけ傾斜した後方補助斜面4tと、を有している。したがって、脚部42は、側面視で平行四辺形状となっている。前斜面4sは、各脚部42の前側に設けられ、後方補助斜面4tは、各脚部42の後ろ側に設けられている。
【0062】
また、注射器100Aは、変換部30Aの一対の係合部34は、それぞれ、第1係合部34aと第2係合部34bとにより構成されている。第1係合部34aは、第1脚部42aの前斜面4sと摺接する後斜面3sを有している。本変形例Aの第2係合部34bは、脚部42の後方補助斜面4tと摺接する前方補助斜面3tを有している。
【0063】
変換部30A及びボタン部40Aの他の構成は、それぞれ、前述した変換部30及びボタン部40の構成と同様である。注射器100Aにおいて、シリンジ部10、ガスケット20、及びスライダ部50は、前述した注射器100のものと同様である。注射器100Aにも、上述した注射器100の各構成及び代替構成を適用することができる。
【0064】
注射器100Aのように、変換部30Aの第1係合部34aと第2係合部34bとによってボタン部40Aの脚部42を挟むように構成すれば、脚部42を前後で2つに分けなくても、ボタン部40Aを安定的に支えることができる。すなわち、注射器100Aは、ボタン部40Aの脚部42が、第1係合部34aと第2係合部34bとの間の溝状の部分を摺動するようになっている。つまり、第1係合部34aと第2係合部34bとは、ユーザによってボタン部40Aが押し下げられる際、脚部42を案内するレールとして機能する。そのため、ユーザは、ボタン部40Aの操作を円滑に且つ安定的に行うことができる。他の効果等については、前述した注射器100と同様である。
【0065】
<変形例B>
図15を参照し、実施の形態1の変形例Bに係る注射器100のボタン部40Bの構成について説明する。本変形例Bの注射器100において、シリンジ部10、ガスケット20、変換部30、及びスライダ部50は、前述した注射器100のものと同様である。ただし、変換部30は、
図2の例のように、先端方向に対し設定角度θだけ傾斜した前方補助斜面3tを有する必要がある。上述したボタン部40及び40Aと同様の構成部材については同一の符号を用いて説明は省略又は簡略化する。
【0066】
本変形例Bの注射器100におけるボタン部40Bは、一対の脚部42における第1脚部42aが、変換部30の後斜面3sと摺接する前斜面4sと共に、変換部30の前方補助斜面3t(
図2参照)と摺接する後方補助斜面4tを有している。つまり、第1脚部42aは、側面視で平行四辺形状となっている。よって、ボタン部40Bの第1脚部42aは、変換部30の第1係合部34aと第2係合部34bとにより、両サイドから挟まれる。したがって、ボタン部40Bは、変換部30によって安定的に支えられるため、ボタン部40Bの操作安定性を高めることができる。他の効果等については、実施の形態1の本編の注射器100及び変形例Aの注射器100Aと同様である。
【0067】
<変形例C>
図16を参照し、実施の形態1の変形例Cに係る注射器100のボタン部40Cの構成について説明する。本変形例Cの注射器100において、シリンジ部10、ガスケット20、変換部30、及びスライダ部50は、前述した注射器100のものと同様である。上述したボタン部40、40A、及び40Bと同様の構成部材については同一の符号を用いて説明は省略又は簡略化する。
【0068】
本変形例Cのボタン部40Cは、押下方向について、前端面41cの長さVaよりも、後端面41dの長さVbの方が短くなっている。そして、表壁41aは、下方に湾曲する形状となっている。そのため、ユーザは、ボタン部40Cを垂直に押すことを意識しなくても、ボタン部40Cを自然なタッチで押し下げることができる。つまり、かかる構成により、ボタン部40Cに対する円滑かつ容易な操作が実現可能となる。長さVaと長さVbとの差は、注射器100の全体的なサイズや、ストロークH、移動量Lなどに応じて設定するとよい。
図16では、表壁41aが下方に湾曲するように形成された例を示しているが、これに限定されない。例えば、表壁41aは、中央の箇所が凹んだ形状であってもよく、平坦な形状であってもよい。本変形例Cにおけるボタン部40Cの構成は、変形例Aにおけるボタン部40Aに適用してもよく、変形例Bにおけるボタン部40Bに適用してもよい。
【0069】
実施の形態2.
図17~
図22を参照し、実施の形態2における注射器200の構成例について説明する。上述した実施の形態1と同様の構成部材については同一の符号を用いて説明は省略又は簡略化する。
【0070】
注射器200は、シリンジ部10と、ガスケット20と、変換部30と、ボタン部40と、スライダ部150と、を有している。スライダ部150は、ボタン部40側に配置される第1部材60と、開口部15の後壁15d側に配置される第2部材70と、第1部材60と第2部材70との間に配置される第3部材80と、を有している。
【0071】
ここでまず、
図17~
図21に基づき、注射器200を用いた注射に係る一連の動作について説明する。
図17~
図21では、押出機構の動作状態を明示するため、シリンジ部10の半分をカットしてその一部を例示している。また、各図では、薬液Cの移動が分かるよう、薬液Cが充填される箇所にドットを付している。
【0072】
図17には初期状態の注射器200を示し、
図18には押出状態の注射器200を示し、
図19には突っ張り状態の注射器200を示し、
図20には嵌め込み状態の注射器200を示し、
図21には注入完了状態の注射器200を示す。これら全ての状態の注射器200をおいて、第1部材60はボタン部40に当接している。初期状態と押出状態では、第1部材60と第2部材70と第3部材80とが密集している。
【0073】
図17に示す初期状態は、第2部材70が開口部15の後壁15d近傍に配置され、かつボタン部40が第1部材60の押端面51c(
図22参照)に当接した状態である。本実施の形態2において、第2部材70は、初期状態のとき、後壁15dとの間に1.0mm程度の隙間が空くよう配置される。もっとも、初期状態における第2部材70と後壁15dとの隙間は、適宜調整可能である。
図18に示す押出状態は、ボタン部40が、開口部15の前壁15cと第1部材60の押端面51cとの双方に当接した状態である。ユーザは、スライダ部150の操作により、注射器200を初期状態から押出状態に遷移させることで、エア抜きを行うことができる。
【0074】
図19に示す突っ張り状態は、押出状態の注射器200において、第2部材70を後方に摺動させ、開口部15の後壁15dに当接させた状態である。突っ張り状態では、ボタン部40側に残存する第1部材60と、後方にスライドさせた第2部材70との間に間隙90が生じる。
図20に示す嵌め込み状態は、突っ張り状態で生じた間隙90に第3部材80を嵌め込んだ状態である。第3部材80は、開口部15内における最前の位置に配置されたボタン部40に第1部材60が当接し、かつ開口部15内における最後方の位置に第2部材70が配置された状態における、第1部材60と第2部材70との間隙90に嵌め込まれるよう形成されている。本実施の形態2において、ボタン部40の開口部15内における最前の位置は、前壁15cに当接する位置である。第2部材70の開口部15内における最後方の位置は、後壁15dに当接する位置である。
【0075】
図21に示す注入完了状態は、突っ張り状態の注射器200において、ボタン部40が押し下げられた状態である。
図20の嵌め込み状態において、ボタン部40の後端面41dは、第1部材60の押端面51cに当接した状態となっている。したがって、ボタン部40を、第1部材60の押端面51cに沿って押し下げることができる。ボタン部40を押し下げると、ボタン部40の押下方向への動作が、変換部30において先端方向への動作に変換され、ガスケット20が本体部12の先端側へ移動する。本実施の形態2の注射器200は、ボタン部40を最大限(ストロークH分)押し下げたとき、
図21のように、ガスケット20が本体部12の先端部分に当接し、筒先部11に取り付けられた注射針から被注射者等に規定量の薬液Cが注入される。
【0076】
次いで、
図22の分解斜視図を参照し、スライダ部150の構成について具体的に説明する。なお、
図22では、シリンジ部10を省略している。第1部材60は、開口部15の横幅(W
2)よりも幅が広い第1操作部61と、開口部15の両側壁15bの間に配置される第1挟持部62と、本体部12の内側に配置される第1補助部63と、を有している。第1補助部63は、本体部12の内壁12rに接触するよう、先端方向に沿って形成された一対の突起部64を有している。突起部64の形状は、実施の形態1の突起部54と同様である。
【0077】
第1部材60は、前方の端面である押端面51cから後方の端面である背端面60dに亘って連通する連通穴65を有している。連通穴65は、第1操作部61と第1挟持部62と第1補助部63とに亘って前後方向に連通する穴である。第1補助部63は、ボタン部40側において、第1挟持部62との間に段差が生じるように形成されている。本実施の形態2において、抜け防止部43に係合する底部62bは、第1挟持部62の前側下部であって、第1補助部63が欠けている部分のことである。
【0078】
第2部材70は、開口部15の横幅(W2)よりも幅が広い第2操作部71と、開口部15の両側壁15bの間に配置される第2挟持部72と、本体部12の内側に配置される第2補助部73と、を有している。第2補助部73は、本体部12の内壁12rに接触するよう、先端方向に沿って形成された一対の突起部74を有している。突起部74の形状は、実施の形態1の突起部54と同様である。
【0079】
第2部材70は、第1部材60側に設けられた板状の連通部75と、連通部75の上部から先端方向へ延伸する安全突起76と、を有している。連通部75は、第2操作部71、第2挟持部72、及び第2補助部73の左右方向における中央の箇所から先端方向に延伸しており、少なくとも第2補助部73に接続されている。連通部75は、第2操作部71と第2挟持部72と第2補助部73に亘って形成され、これら全てに接続されていてもよい。
【0080】
連通部75は、一部又は全部が連通穴65に挿入される。連通部75は、初期状態(
図17)及び押出状態(
図18)では、その全体が連通穴65に挿入された状態となる。連通部75は、突っ張り状態(
図19)、嵌め込み状態(
図20)、及び注入完了状態(
図21)では、その一部が連通穴65に挿入された状態となる。連通部75の上部には、第3部材80が嵌められる。
【0081】
安全突起76は、第1部材60の連通穴65に挿入可能に形成されている。安全突起76は、初期状態(
図17)及び押出状態(
図18)において、ボタン部40の挟持溝45に、連通穴65を介して挿入された状態となっている。安全突起76が挟持溝45に挿入された状態では、ボタン部40を押し下げることができない。よって、エア抜き時など、注射を行う前の段階でボタン部40が押され、薬液Cが吐出されてしまうような誤操作を防ぐことができる。安全突起76は、突っ張り状態(
図19)、嵌め込み状態(
図20)、及び注入完了状態(
図21)においては、ボタン部40の挟持溝45から抜かれた状態となっている。したがって、ボタン部40を、第1部材60の押端面51cに沿って押し下げることができる。安全突起76は、嵌め込み状態において、先端面76cがボタン部40の後端面41dと面一になるよう形成してもよい。このようにすれば、嵌め込み状態のボタン部40が、押端面51c及び先端面76cに接触するため、ボタン部40の押下操作の安定性を高めることができる。
【0082】
本実施の形態2における第3部材80は、断面U字状に形成され、連通部75の上部を挟持する嵌め溝85を有している。第3部材80は、先端方向の幅W
8が、第1補助部63の後端と第2補助部73の前端とを当接させたときの、第1操作部61と第2操作部71との間に生じる隙間の幅Wh(
図18参照)と等しく、かつ間隙90の幅Wk(
図19参照)と等しくなるように形成されている。すなわち、注射器200は、上記隙間の幅Whと間隙90の幅Wが等しくなるよう構成されている。
【0083】
第3部材80は、嵌め溝85の各内側壁に、先端方向に沿って形成された突起部85aが形成されている。第2部材70の連通部75は、第2操作部71側の上部の両側壁に、第3部材80の各突起部85aそれぞれが係合する案内溝75aと、第3部材80が間隙90に嵌め込まれる際、各突起部85aそれぞれが係合する固定溝75bと、を有している。固定溝75bは、案内溝75aよりも下方に形成されている。
図22の例において、案内溝75a及び固定溝75bは、先端方向に沿って形成されている。
【0084】
以上のように、本実施の形態2の注射器200は、本体部12に収容される変換部30と、側部が開口部15の両側壁15bに挟まれた状態で変換部30に支持されるボタン部40と、変換部30及びボタン部40を先端方向に移動させるためのスライダ部150と、を有している。ボタン部40は、前斜面4sをもつ一対の脚部42を有し、変換部30は、ボタン部40の前斜面4sに摺接する後斜面3sをもつ一対の係合部34を有している。したがって、ユーザは、本体部12の側部に位置するスライダ部150の操作で変換部30を先端方向に移動させてエア抜きを行い、同じく本体部12の側部に位置するボタン部40の操作で更に変換部30を先端方向へ移動させて、注射対象に液体を注入することができる。したがって、注射に係る一連の動作において、過度な持ち替えを要さず、かつ被注射者の負担を軽減することができる。
【0085】
また、スライダ部150は、ボタン部40側に配置される第1部材60と、開口部15の後壁15d側に配置される第2部材70と、第1部材60と第2部材70との間に配置される第3部材80と、により構成されている。第3部材80は、開口部15の前壁15cに当接したボタン部40に第1部材60が当接し、かつ開口部15の後壁15dに第2部材70が当接した状態における、第1部材60と第2部材70との間隙90に嵌め込まれるよう形成されている。したがって、開口部15の後壁15dに当接した第2部材70と、間隙90に嵌められた第3部材80とにより、第1部材60の後退が防止される。そのため、押し下げられたボタン部40は、位置決めされた第1部材60の押端面51cに後端面41dが当接した状態で、押下方向に沿って移動する。よって、ボタン部40の押下方向への動作が、そのまま、変換部30の先端方向への動作に変換される。
【0086】
さらに、第1部材60は、押端面51cから背端面60dに亘って連通する連通穴65を有している。そして、第2部材70は、連通穴65に挿入される板状の連通部75と、ボタン部40の挟持溝45に挿入可能に形成された安全突起76と、を有している。よって、初期状態及び押出状態のように、安全突起76が挟持溝45に挿入された状態において、ボタン部40の誤操作を防ぐことができる。また、注射器200の一連の動作において、連通部75が連通穴65に挿入されているため、ユーザは、スライダ部150の操作を安定的に行うことができる。
【0087】
第3部材80は、連通部75の上部を挟持する嵌め溝85を有すると共に、嵌め溝85の各内側壁には突起部85aが形成されている。そして、連通部75は、各突起部85aそれぞれが係合する案内溝75aと、案内溝75aよりも下方に形成され、第3部材80が間隙90に嵌め込まれる際、各突起部85aそれぞれが係合する固定溝75bと、を有している。すなわち、注射器200は、案内溝75aを有することから、第2部材70の動作に第3部材80を追従させることができるため、第3部材80に対する操作を最小限に留めることができる。また、注射器200は、固定溝75bを有することから、第3部材80を間隙90に嵌め込んだ状態を、より安定的に維持することができる。したがって、ボタン部40の押下操作、つまり薬液注入のための操作の安定性を高めることができる。加えて、製造誤差等により、第3部材80の間隙90への嵌め込みが多少緩くなった場合でも、間隙90に嵌め込んだ第3部材80の位置を安定した状態で固定することができる。
【0088】
他の効果等については、実施の形態1と同様である。注射器200には、実施の形態1の注射器100における各構成及び代替構成を適用することができ、変形例A~変形例Cの各構成についても適用することができる。例えば、各図では、第2係合部34bが前方補助斜面3tを有しない例を示しているが、これに限らず、第2係合部34bは、
図2等と同様、前方補助斜面3tを有するように形成してもよい。そして、注射器200は、ボタン部40の代わりに、変形例Bのボタン部40Bを有する構成としてもよい。第3部材80の形状は、各図の形状に限定されない。ただし、第3部材80は、先端方向の幅W
8が、幅Wh及び幅Wkと等しくなるよう形成する必要がある。
【0089】
実施の形態3.
図23~
図25を参照し、実施の形態3における注射器300の構成例について説明する。
図23~
図25では、押出機構の動作状態を明示するため、シリンジ部10の半分をカットしてその一部を例示している。また、各図では、薬液Cの移動が分かるよう、薬液Cが充填される箇所にドットを付している。上述した実施の形態1及び2と同様の構成部材については同一の符号を付して説明は省略又は簡略化する。
【0090】
図23~
図25に示すように、注射器300は、シリンジ部210と、ガスケット20と、変換部30と、ボタン部40と、スライダ部250と、を有している。すなわち、本実施の形態3の注射器300は、シリンジ部210の構成及びスライダ部250の構成に特徴があり、他の構成部材の構成は、実施の形態1及び2の注射器と同様である。
【0091】
スライダ部250は、開口部15の横幅(W2)よりも幅Wsが広くなるように形成された操作部51と、操作部51に接続され、開口部15の両側壁15bの間に配置される挟持部52と、挟持部52に接続され、本体部12の内側に配置される補助部53と、を有している。補助部53は、本体部12の内壁12rに接触するよう、先端方向に沿って形成された一対の突起部54を有している。
【0092】
そして、スライダ部250は、下部後方にバネ性を有する引っ掛け部58を有している。各図に例示する引っ掛け部58は、補助部53の下端部に、先端方向側の端部である前方端部58aが接続された板状又は棒状の部材である。引っ掛け部58は、補助部53の下端部と、前方端部58aとは反対側の端部である後方端部58bとの間に隙間が生じるように構成されており、後方端部58b側の箇所に下方から力が加わると該隙間が狭まり、加わった力が除かれると元の状態に戻る。つまり、引っ掛け部58は、前方端部58aを固定端とし、後方端部58bを自由端とする片持ちばねとして機能する。
【0093】
シリンジ部210は、ボタン部40が開口部15の前壁15cとスライダ部250との双方に当接した状態(押出状態)で引っ掛け部58に係合する後退防止部18を有している。後退防止部18は、押出状態における後方端部58bの位置に対応づけて形成されている。各図に例示する後退防止部18は、本体部12の内壁12r下部の、押出状態における後方端部58bの位置から一定範囲前方の箇所が相対的に低くなるよう形成されている。つまり、後退防止部18は、押出状態における後方端部58bの位置に、後方に向けて高くなる段部18hを有している。
【0094】
ここで、注射器300を用いた注射に係る一連の動作について説明する。
図23に示す初期状態は、スライダ部250が開口部15の後壁15dに当接し、かつボタン部40がスライダ部250に当接した状態である。
図24に示す押出状態は、上述の通りであり、
図25に示す注入完了状態は、押出状態においてボタン部40が押し下げられた状態である。これら全ての状態において、スライダ部250はボタン部40に当接している。
【0095】
初期状態(
図23)において、引っ掛け部58は、後方端部58bが本体部12の内壁12rに接触した状態となっている。ユーザが、スライダ部250を先端方向に移動させ、押出状態(
図24)になると、後方端部58bが後退防止部18の段部18hに引っ掛かる。つまり、押出状態では、引っ掛け部58が後退防止部18に係合し、スライダ部250の後退が妨げられている。そのため、ユーザは、ボタン部40をスライダ部250の前側の端面に沿って真っ直ぐに押し下げることができる。ユーザは、注射器300を初期状態から押出状態にすることで、エア抜きとボタン部40の後退防止とを同時に行うことができる。
【0096】
ボタン部40を押し下げると、ボタン部40の押下方向への動作が、変換部30において先端方向への動作に変換され、ガスケット20が本体部12の先端側へ移動する。本実施の形態3の注射器300は、ボタン部40を最大限(ストロークH分)押し下げたとき、
図25のように、ガスケット20が本体部12の先端部分に当接し、筒先部11に取り付けられた注射針から被注射者等に規定量の薬液Cが注入される。
【0097】
以上のように、本実施の形態3の注射器300は、本体部12に収容される変換部30と、側部が開口部15の両側壁に挟まれた状態で変換部30に支持されるボタン部40と、変換部30及びボタン部40を先端方向に移動させるためのスライダ部250と、を有している。ボタン部40は、前斜面4sをもつ一対の脚部42を有し、変換部30は、ボタン部40の前斜面4sに摺接する後斜面3sをもつ一対の係合部34を有している。したがって、ユーザは、本体部12の側部に位置するスライダ部250の操作で変換部30を先端方向に移動させてエア抜きを行い、同じく本体部12の側部に位置するボタン部40の操作で更に変換部30を先端方向へ移動させて、注射対象に液体を注入することができる。したがって、注射に係る一連の動作において、過度な持ち替えを要さず、かつ被注射者の負担を軽減することができる。
【0098】
また、スライダ部250は、下部後方にバネ性を有する引っ掛け部58を有している。そして、シリンジ部210は、ボタン部40が開口部15の前壁15cとスライダ部250との双方に当接した状態で引っ掛け部58に係合する後退防止部18を有している。そのため、押し下げられたボタン部40は、位置決めされたスライダ部250に後端面41dが当接した状態で、押下方向に沿って移動する。よって、ボタン部40の押下方向への動作が、そのまま、変換部30において先端方向への動作に変換される。後退防止部18及び引っ掛け部58の形状は、各図の例に限らず、押出状態におけるスライダ部250の後退防止が可能な範囲で適宜変更することができる。他の効果等については、実施の形態1及び2と同様である。注射器300には、実施の形態1及び2の注射器における各構成及び代替構成を適用することができ、変形例A~変形例Cの各構成についても適用することができる。
【0099】
実施の形態4.
図26~
図33を参照し、実施の形態4における注射器400の構成例について説明する。
図26及び
図29~
図33では、押出機構の動作状態を明示するため、シリンジ部10の半分をカットしてその一部を例示している。また、これらの各図では、薬液Cの移動が分かるよう、薬液Cが充填される箇所にドットを付している。上述した実施の形態1~3と同様の構成部材については同一の符号を用いて説明は省略又は簡略化する。
【0100】
図26は、注射器400の初期状態を例示した説明図である。
図26に示すように、注射器400は、シリンジ部10と、ガスケット20と、変換部30と、ボタン部40と、スライダ部350と、を有している。スライダ部350は、ボタン部40側に配置される第1スライダ160と、開口部15の後壁15d側に配置される第2スライダ170と、を有している。なお、
図26に示す初期状態は、第2スライダ170が開口部15の後壁15dに当接し、かつボタン部40が第1スライダ160の押端面51cに当接した状態である。各図におけるボタン部40は、変形例Bにおけるボタン部40Bと同様に構成されており、押下方向について、前端面41cの長さVaよりも、後端面41dの長さVbの方が長くなっている。もっとも、ボタン部40は、各図の構成例に限定されず、実施の形態1等で開示したボタン部40、40A~40Cと同様の構成を採ってもよい。
【0101】
第1スライダ160は、前方の端面である押端面51cから後方の端面である背端面60dに亘って連通する連通穴65h(
図27参照)が形成された第1本体160Aを有している。第1本体160Aは、開口部15の横幅(W
2)よりも幅が広い第1操作部161と、開口部15の両側壁15bの間に配置される第1挟持部162と、本体部12の内側に配置される第1補助部163と、を有している。第1補助部163は、本体部12の内壁12rに接触するよう、先端方向に沿って形成された一対の突起部164を有している。突起部164の形状は、実施の形態1の突起部54と同様である。
【0102】
第1スライダ160は、第1本体160Aから先端方向へ延伸し、ボタン部40の挟持溝45に挿入可能に形成された制限突起165を有している。各図に例示する第1補助部163は、ボタン部40の一対の抜け防止部43に対応づけて形成され、下部から前方へ延伸する一対の補助突起63tを有している。制限突起165は、ボタン部40が開口部15内における最前の位置に配置され、かつ第1スライダ160及び第2スライダ170が開口部15内における最後方の位置に配置された状態(
図32及び
図33参照)で、その先端面65cがボタン部40の後端面40dと面一になるよう形成されている。各図に例示する制限突起165は、第1操作部161及び第1挟持部162に接続されている。
【0103】
第2スライダ170は、本体部12の外側に配置され、開口部15の横幅(W2)よりも幅が広くなるよう形成された第2操作部171を含む第2本体170Aを有している。第2本体170Aは、開口部15の両側壁15bの間に配置される第2挟持部172と、本体部12の内側に配置される第2補助部173と、を有している。第2補助部173は、本体部12の内壁12rに接触するよう、先端方向に沿って形成された一対の突起部174を有している。突起部174の形状は、実施の形態1の突起部54と同様である。
【0104】
第2スライダ170は、第2操作部171のボタン部40側に設けられ、連通穴65h及び挟持溝45に挿入可能に形成された安全突起175を有している。安全突起175は、第1スライダ160の背端面60dに第2スライダ170が当接した状態(
図32及び
図33等参照)で、先端部75nが制限突起165上に配置される。安全突起175は、ボタン部40が開口部15内における最前の位置に配置され、かつ第2スライダ170が開口部15内における最後方の位置に配置された状態(
図30~
図33参照)で、その先端面75cがボタン部40の後端面40dと面一になるよう形成されている。
【0105】
ここで、
図27及び
図28を参照し、第1スライダ160及び第2スライダ170の具体的な構成について補足する。
図28は、安全突起175が連通穴65hに挿入され、第1スライダ160の背端面60dと第2スライダ170の当接端面70cとが接触している状態である接触状態を示す。当接端面70cは、第2本体170Aの前方の端面である。
【0106】
図27に示すように、安全突起175は、第2本体170Aの当接端面70cから前方へ延びる基部75mと、基部75mから前方へ延びる先端部75nと、を有している。先端部75nは、接触状態において制限突起165上に配置される。
図28に例示するように、本実施の形態4における先端部75nは、接触状態において、先端面75cが制限突起165の先端面65cと面一になるよう形成されている。
【0107】
先端部75nの高さHnは、予め設定された初動投与量に合わせて設定される。初動投与量は、薬液Cの種類等に応じて設定され、適宜変更することができる。本実施の形態4において、第1スライダ160の補助突起63tは、初期状態等において、抜け防止部43の下端からの距離Z(
図26、
図29、
図30参照)が、先端部75nの高さHnと等しくなるよう形成されている。なお、制限突起165の高さHcは、ボタン部40の操作安定性を考慮して設定するとよい。
【0108】
続いて、
図26及び
図29~
図33を参照し、注射器400を用いた注射に係る一連の動作について説明する。
図29は、押出状態の注射器400を示す。押出状態は、開口部15内における最前の位置に配置されたボタン部40が、接触状態にあるスライダ部350の押端面51cに当接している状態である。
図30は、第1突っ張り状態の注射器400を示す。第1突っ張り状態は、開口部15内における最前の位置に配置されたボタン部40が、分離状態にあるスライダ部350の押端面51cに当接している状態である。スライダ部350の分離状態とは、背端面60dと当接端面70cとが接触しておらず、第1スライダ160の押端面51cと安全突起175の先端面75cとが面一になっている状態のことである。
図31は、第1突っ張り状態においてボタン部40が押し下げられた状態である第1押下状態の注射器400を示す。
図32は、第2突っ張り状態の注射器400を示す。第2突っ張り状態は、ボタン部40が開口部15内における最前の位置に配置され、接触状態にあるスライダ部350が開口部15内における最後方の位置に配置された状態である。本実施の形態4において、接触状態にあるスライダ部350の開口部15内における最後方の位置は、第2スライダ170が後壁15dに当接する位置である。
図33は、第2突っ張り状態においてボタン部40が押し下げられた状態である第2押下状態の注射器400を示す。
【0109】
図29に示す押出状態において、ボタン部40は、開口部15の前壁15cに当接している。ユーザは、スライダ部350の操作により、注射器400を初期状態から押出状態に遷移させることで、エア抜きを行うことができる。押出状態の注射器400において、ユーザが第2スライダ170を後方へ摺動させると、安全突起175の先端部75nが挟持溝45から徐々に抜かれていく。そして、
図30に示す第1突っ張り状態のように、第2スライダ170が後壁15dに当接すると、先端部75nが挟持溝45から完全に抜かれる。
【0110】
このように、第1突っ張り状態の注射器400は、挟持溝45の底面45uと第1スライダ160の制限突起165との間に、先端部75nの高さHnに相当する幅の隙間が生じている。したがって、ユーザは、ボタン部40を押端面51cに沿って、底面45uが制限突起165に当接するまで押し下げ、
図31に示す第1押下状態にすることができる。なお、ボタン部40が高さHn分押し下げられると、ガスケット20は本体部12の先端側へ「Hn/tanθ」だけ移動する。
図31の例では、抜け防止部43の下端が補助突起63tの上端に当接している。つまり、補助突起63tは、注射器400の第1突っ張り状態において、ボタン部40の押下操作に対する補助的なリミッタとして機能する。
【0111】
第1押下状態の注射器400において、ユーザが第1スライダ160を後方へ摺動させると、制限突起165が挟持溝45から徐々に抜かれていき、補助突起63tの上端と抜け防止部43の下端との対向面積が徐々に減少する。そして、
図32に示す第2突っ張り状態のように、第1スライダ160が第2スライダ170に当接すると、制限突起165が挟持溝45から完全に抜かれ、抜け防止部43と補助突起63tとが対向しない状態となる。
【0112】
第2突っ張り状態の注射器400において、制限突起165は、先端面65cがボタン部40の後端面41dと面一になる。したがって、ユーザは、ボタン部40を先端面65cに沿って押下方向に移動させ、
図33に示す第2押下状態にすることができる。注射器400は、第2突っ張り状態において、
図32のように、先端部75nの先端面75cがボタン部40の後端面41dと面一になるよう構成されている。したがって、ユーザは、ボタン部40の押下操作をより安定的に行うことができる。ユーザは、第1突っ張り状態から第1押下状態への遷移に係る動作と、第2突っ張り状態から第2押下状態への遷移に係る動作とにより、ボタン部40をストロークH分押し下げることができる。つまり、ユーザは、注射器400を用いることにより、規定量の薬液Cを、被注射者等に対し2段階に分けて注入することができる。
【0113】
注射器400は、第2突っ張り状態において、
図32のように、抜け防止部43の後端と補助突起63tの前端とが面一になるよう構成してもよい。このようにすれば、ボタン部40とスライダ部350との接触面積が増えると共に、ボタン部40を下方でも支持することができるため、ボタン部40の操作時の安定性を更に高めることができる。
【0114】
以上のように、本実施の形態4の注射器400は、本体部12に収容される変換部30と、側部が開口部15の両側壁15bに挟まれた状態で変換部30に支持されるボタン部40と、変換部30及びボタン部40を先端方向に移動させるためのスライダ部350と、を有している。したがって、ユーザは、本体部12の側部に位置するスライダ部350に対する操作でエア抜きを行い、同じく本体部12の側部に位置するボタン部40の操作で更に変換部30を先端方向へ移動させ、注射対象に液体を注入することができる。したがって、注射に係る一連の動作において、過度な持ち替えを要さず、かつ被注射者の負担を軽減することができる。
【0115】
また、本実施の形態4のスライダ部350は、第1スライダ160と第2スライダ170とを有している。第1スライダ160は、連通穴65hが形成された第1本体160Aと、挟持溝45に挿入可能に形成された制限突起165と、を有している。第2スライダ170は、連通穴63h及び挟持溝45に挿入可能に形成された安全突起175を有している。そして、安全突起175は、第1スライダ160の背端面60dに第2スライダ170が当接した状態で、先端部75nが制限突起165上に配置される。そのため、初期状態(
図26)及び押出状態(
図29)のように、先端部75nが挟持溝45に挿入された状態では、ボタン部40を押し下げることができない。よって、エア抜き時など、注射を行う前の段階でボタン部40が押され、薬液Cが吐出されてしまうような誤操作を防ぐことができる。
【0116】
安全突起175は、ボタン部40が開口部15内における最前の位置に配置され、かつ第2スライダ170が開口部15内における最後方の位置に配置された状態で、その先端面75cがボタン部40の後端面40dと面一になるよう形成されている。すなわち、第1突っ張り状態(
図30)の注射器400は、挟持溝45に制限突起165が挿入され、かつ挟持溝45から先端部75nが抜かれた状態となっている。したがって、注射器400は、第1突っ張り状態において、制限突起165をボタン部40の押下操作に対するリミッタとして機能させ、先端部75nの高さHnに応じた初動投与量の薬液吐出を実現することができる。
【0117】
制限突起165は、ボタン部40が開口部15内における最前の位置に配置され、かつ第1スライダ160及び第2スライダ170(接触状態にあるスライダ部350)が開口部15内における最後方の位置に配置された状態で、その先端面65cがボタン部40の後端面40dと面一になるよう形成されている。すなわち、注射器400は、第2突っ張り状態(
図32)において、ボタン部40の後端面40dが制限突起165の先端面65cに接触する状態にある。第2突っ張り状態の注射器400は、開口部15の後壁15dにより、第2スライダ170を介して第1スライダ160の後退が阻止されているため、ユーザは、ボタン部40を先端面65cに沿って押下方向に移動させることができる。
【0118】
上記のとおり、注射器400は、規定量の薬液Cを2段階に分けて吐出できるよう構成されている。したがって、ユーザは、第1突っ張り状態の注射器400において、ボタン部40を押し下げて初動投与量の薬液Cを被注射者に注入し、該被注射者の容態を確認した上で、残りの薬液Cを注入するか否かを判断することができる。そのため、注射器400によれば、被注射者の体調などに合わせた柔軟な薬液投与を実現することができる。すなわち、ユーザは、注射器400を用いることで、例えば、20μLの薬液Cを被注射者に注入した後、該被注射者の容態の安定性を確認してから30μLの薬液Cを追加注入する、といったように、2段階の薬液投与を行うことができる。他の効果等については、実施の形態1~3と同様である。注射器400には、実施の形態1の注射器100における各構成及び代替構成を適用することができ、変形例A~変形例Cの各構成についても適用することができる。
【0119】
ところで、開口部15の前壁15cの先端方向における位置は、ボタン部40の前端面41cが前壁15cに当接した状態でのガスケット20の位置、つまり薬液Cの規定量に基づいて設定される。ただし、薬液Cの規定量は、一定とは限らないため、前壁15cの位置が固定されていると、規定量ごとに注射器を製造する必要が生じる。そのため、実施の形態1~4の注射器は、シリンジ部10、210における前壁15c又はその近傍に、ボタン部40、40A~40Cの可動域を可変とする調整機構を設けてもよい。調整機構は、開口部15における前壁15cに相当する位置を、前後方向に調整可能とするものである。調整機構は、複数の投与量に対応する段階的な調整が可能な構成を採ってもよく、例えばスライド式で、任意の投与量の設定が可能な構成を採ってもよい。このようにすれば、押し下げる際のボタン部40、40A~40Cの位置が可変となり、前壁15cの位置が実質的に調整可能となる。そのため、ストロークHに対する移動量Lに余力を持たせることにより、薬液Cの投与量の調整が可能となる。
【0120】
実施の形態5.
図34~
図42を参照し、実施の形態5における注射器ユニット800の構成例について説明する。上述した実施の形態1~4と同様の構成部材については同一の符号を用いて説明は省略又は簡略化する。各図に例示する注射器ユニット800は、注射器500と、注射器500における薬液Cの吐出量を調整するための調整ユニット510と、を有している。注射器500は、シリンジ部110と、ガスケット20と、変換部30と、ボタン部40と、スライダ部50と、を有している。なお、シリンジ部110は、透明性を有する樹脂等により形成されるが、
図34及び
図38では、説明の便宜上、内部の構成部材等の透過を表現していない。
【0121】
各図に例示する調整ユニット510は、2つの調整部材により構成されている。一方の調整部材は第1調整部材121と称し、他方の調整部材は第2調整部材122と称する。
図34に示すように、第1調整部材121は、断面視U字状の枠部材121uと、開口部15の両側壁15bの間に配置されるスペーサ121wと、を有している。第2調整部材122は、断面視U字状の枠部材122uと、開口部15の両側壁15bの間に配置されるスペーサ122wと、を有している。
【0122】
枠部材121u及び枠部材122uは、それぞれ、本体部12の外周に沿うように形成され、本体部12の挟持が可能となっている。スペーサ121wは、枠部材121uの内面であって、枠部材121uの湾曲の方向に沿った中央の箇所に設けられている。
図35に示すように、スペーサ121wは、枠部材121uの内面における、先端方向に沿う一方の端部に形成された、幅Pの板状の部材である。枠部材121uの内面とは、枠部材121uにおいて本体部12側に向けられる面である。スペーサ122wは、枠部材122uの内面であって、枠部材121uの湾曲の方向に沿った中央の箇所に設けられている。
図36に示すように、スペーサ122wは、枠部材122uの内面における、先端方向に沿う一方の端部に形成された、幅Qの板状の部材である。枠部材122uの内面とは、枠部材122uにおいて本体部12側に向けられる面である。スペーサ121wの幅Pは、スペーサ122wの幅Qよりも狭くなっている。幅P及び幅Qは、薬液投与における段階的な調整量を決める要素であり、任意に設定し、変更することができる。以降、スペーサ121wとスペーサ122wとを区別せずに指す場合、これらをスペーサ120と総称する。
【0123】
図34に破線で示すように、第1調整部材121及び第2調整部材122は、本体部12における、前壁15cに隣接する位置、あるいは後壁15dに隣接する位置に、スペーサ120が開口部15に入った状態で取り付けることができる。第1調整部材121は、前壁15c側に取り付ける場合、スペーサ121wが後方を向くように配置し、後壁15d側に取り付ける場合、スペーサ121wが前方を向くように配置する。したがって、第1調整部材121と第2調整部材122との双方を前壁15c側に取り付ける場合は、第1調整部材121が第2調整部材122よりも前方に配置される。第1調整部材121と第2調整部材122との双方を後壁15d側に取り付ける場合は、第1調整部材121が第2調整部材122よりも後方に配置される。
【0124】
図37に示すように、シリンジ部110は、実施の形態1におけるシリンジ部10と同様に構成されている。ただし、シリンジ部110の開口部15は、長さT
5が、
図4のシリンジ部10における開口部15の長さT
0よりも、調整ユニット510におけるスペーサ120の幅の総和分、つまり幅Pと幅Qの合計分長くなっている(T
5=T
0+P+Q)。調整ユニット510におけるスペーサ120の幅の総和とは、調整ユニット510が有する全ての調整部材のスペーサ120の幅の合計であり、以下「スペーサ120の幅の総和」という。すなわち、長さT
5は、ボタン部40の後端面41dと安全突起55の先端面55cとが面一の状態での、ボタン部40の前端面41cからスライダ部50の後端面51dまでの長さよりも、スペーサ120の幅の総和分長くなっている。また、前壁15cから段差部15sまでの長さT
6は、実施の形態1における長さT
1よりも、調整ユニット510におけるスペーサ120の幅の総和分長くなっている。
【0125】
本実施の形態5において、ボタン部40の開口部15内における最前の位置は、前壁15c側に調整ユニット510が取り付けられているときは、該調整ユニット510に当接する位置である。同様に、スライダ部50の開口部15内における最後方の位置は、後壁15d側に調整ユニット510が取り付けられているときは、該調整ユニット510に当接する位置である。
【0126】
次いで、
図38~
図42を参照し、調整ユニット510を構成する調整部材の使い分けによる薬液Cの投与量の調整手法について説明する。本実施の形態5における調整ユニット510は、スペーサ120の幅が異なる2つの調整部材を有するため、薬液Cの投与量を4段階で調整することができる。例えば、注射器ユニット800の初期状態は、
図38のように、ボタン部40及びスライダ部50が、開口部15における最後方の位置に配置され、かつ調整ユニット510が開口部15の前壁15c側に取り付けられた状態に設定される。調整部材を前壁15c側に取り付けると、そのスペーサ120により、エア抜き時におけるボタン部40の先端方向への移動が妨げられる。ガスケット20は、エア抜き時において、ボタン部40の先端方向への移動に連動するため、前壁15c側に多くの調整部材を取り付けた方が、エア抜き後の薬液貯留部12aに、より多くの薬液Cを残留させることができる。したがって、投与可能な薬液Cの量は、
図39、
図40、
図41、
図42の順に段階的に減少する。
【0127】
ここでは、
図38に例示する初期状態を前提に、薬液Cの投与量の調整手法について説明する。
図39~
図42では、突っ張り状態の注射器500を例示し、他の状態については省略する。突っ張り状態は、ボタン部40が開口部15内で配置可能な最前の箇所に位置し、かつスライダ部50が開口部15内で配置可能な最後尾の箇所に位置する状態である。安全突起55は、突っ張り状態において、先端面55cがボタン部40の後端面41dと面一になるよう形成されている。なお、
図39~
図42では、各構成部材を概略的に示すと共に、シリンジ部10の半分をカットしてその一部を例示している。ストロークHに対する移動量Lは、前壁15c側に第1調整部材121及び第2調整部材122が取り付けられた状態に合わせて調整されているものとする。
【0128】
図39は、注射器ユニット800における最大量の薬液Cを投与する場合に対応する。この場合は、前壁15c側の調整ユニット510を取り外す必要がない。そのため、ユーザは、エア抜きを行った後(S11)、スライダ部50を後方に摺動させて突っ張り状態とし(S12:
図39の状態)、ボタン部40をストロークH分押し下げることにより(S13)、移動量Lに応じた薬液Cを被注射者等に注入することができる。
【0129】
図40は、注射器ユニット800において2番目に多い第2量の薬液Cを投与する場合に対応する。この場合、まずユーザは、第1調整部材121を前壁15c側から取り外し(S21)、エア抜きを行う(S22)。このとき、ガスケット20は、
図39の場合よりも幅Pだけ前進した状態となる。次いでユーザは、後壁15d側に第1調整部材121を取り付け(S23)、スライダ部50を後方に摺動させて突っ張り状態とする(S24:
図40の状態)。続いてユーザは、ボタン部40を最大限押し下げることにより(S25)、ガスケット20の移動量「L-P」に応じた薬液Cを被注射者等に注入することができる。
【0130】
図41は、注射器ユニット800において3番目に多い第3量の薬液Cを投与する場合に対応する。この場合、まずユーザは、第2調整部材122を前壁15c側から取り外し(S31)、エア抜きを行う(S32)。このとき、ガスケット20は、
図39の場合よりも幅Qだけ前進した状態となる。次いでユーザは、後壁15d側に第2調整部材122を取り付け(S33)、スライダ部50を後方に摺動させて突っ張り状態とする(S34:
図41の状態)。続いてユーザは、ボタン部40を最大限押し下げることにより(S35)、ガスケット20の移動量「L-Q」に応じた薬液Cを被注射者等に注入することができる。
【0131】
図42は、注射器ユニット800における最少量の薬液Cを投与する場合に対応する。この場合、まずユーザは、第1調整部材121及び第2調整部材122を前壁15c側から取り外し(S41)、エア抜きを行う(S42)。このとき、ガスケット20は、
図39の場合よりも幅「P+Q」だけ前進した状態となる。次いでユーザは、後壁15d側に第1調整部材121及び第2調整部材122を取り付け(S43)、スライダ部50を後方に摺動させて突っ張り状態とする(S44:
図42の状態)。続いてユーザは、ボタン部40を最大限押し下げることにより(S45)、ガスケット20の移動量「L-(P+Q)」に応じた薬液Cを被注射者等に注入することができる。
【0132】
例えば、ガスケット20の移動量Lに50μLの投与量が対応づけられ、ガスケット20の0.3mmの移動に10μLの投与量が対応づけられ、幅Pが0.3mmであり、幅Qが0.6mmである仮定する。すると、
図39の場合は50μLの薬液Cを投与でき、
図40の場合は40μLの薬液Cを投与でき、
図41の場合は30μLの薬液Cを投与でき、
図42の場合は20μLの薬液Cを投与できることになる。最大量、第2量、第3量、最少量は、ストロークHに対する移動量Lの調整、幅P及び幅Qの調整、採用するシリンジ部110のサイズ等により、任意に変更可能である。
【0133】
上記の説明では、注射器ユニット800が、注射器100と同様に構成された注射器500を有する例を示したが、これに限定されない。注射器500は、注射器100A、200、300、400と同様に構成されたものであってよい。つまり、本実施の形態5の構成は、調整ユニット510におけるスペーサ120の幅の総和に基づき、開口部15の長さを調整すれば、実施の形態1~4の何れの構成にも適用することができる。注射器500を注射器300と同様に構成した場合において、投与量を減らすときは、ボタン部40を操作しない方の手などを用いてスライダ部250の後退を防ぐとよい。
【0134】
第1調整部材121は、第2調整部材122と同様、枠部材121uの幅とスペーサ121wの幅とが同程度となるよう形成してもよい。このようにすれば、第1調整部材121と第2調整部材122とを重ねて配置する場合(
図34、
図38、
図39、
図42)、これらの前後は問わない。各図では、開口部15の両側壁15bによって挟持される形状、つまり両側壁15bの間に嵌め込まれ得る形状のスペーサ120を例示したが、これに限定されない。スペーサ120は、ボタン部40の開口部15内での前進を妨げることが可能な範囲で、種々の形状を採ることができる。
【0135】
以上のように、本実施の形態5における注射器ユニット800は、注射器500と、第1調整部材121及び第2調整部材122からなる調整ユニット510と、を有している。第1調整部材121及び第2調整部材122は、それぞれ、予め設定された幅をもち、開口部15の両側壁15bの間に配置されるスペーサ120を有している。第1調整部材121のスペーサ121wの幅Pと、第2調整部材122のスペーサ122wの幅Qとは、異なる長さに設定されている。よって、薬液Cの投与量を4段階で調整することができるため、被注射者ごとの投与量調整、あるいは被注射者の体調やバイタル等に合わせた投与量調整などが可能となる。
【0136】
調整ユニット510は、1つの調整部材により構成してもよい。この場合、注射器ユニット800は、薬液Cの投与量を2段階で調整可能となる。調整ユニット510は、互いに異なる幅をもつスペーサ120を備えた3つ以上の調整部材により構成してもよい。この場合、調整部材の数をnとすると、注射器ユニット800は、薬液Cの投与量を2n段階で調整可能となる。
【0137】
上述した各実施の形態は、側面押下型の注射器及び注射器ユニットにおける具体例であり、本発明の技術的範囲は、これらの態様に限定されるものではない。例えば、各実施の形態の注射器100、100A、200、300、400、500(以下、符号は省略する。)において、シリンジ部10、110、210の先端側の形状は、各図の例に限らず、適宜変更することができ、ガスケット20の前端部21の形状は、シリンジ部10、110、210の先端側の形状に合わせて調整するとよい。蓋部13の形状等は、各図の例に限らず、適宜変更することができる。もっとも、注射器は、蓋部13を有しない構成としてもよい。上記各実施の形態におけるシリンジ部10、110、210は、開口部15に段差部15sを設けなくてもよく、開口部15における後壁15d近傍の幅W3が相対的に狭くなる構成を採らなくてもよい。すなわち、シリンジ部10、110、210は、開口部15の幅が先端方向に沿った全域で均一であってよく、段差部15sだけが設けられていてもよく、後壁15d近傍の幅W3だけが他の箇所の幅と異なっていてもよい。ところで、調整ユニット510は、開口部15において、前壁15c側の幅と後壁15d側の幅とが異なる場合など、前壁15c側への取付用の調整部材と、後壁15d側への取付用の調整部材とを、別個に有する構成を採ってもよい。
【0138】
上記の説明では、ボタン部40、40B、40Cにおける一対の脚部42が、それぞれ、第1脚部42aと第2脚部42bとにより構成された例を示したが、これに限定されない。すなわち、脚部42は、第1脚部42aだけで構成されてもよく、第2脚部42bだけで構成されてもよい。脚部42が第1脚部42aだけで構成される場合、変換部30の係合部34は第1係合部34aだけで構成してもよい。脚部42が第2脚部42bだけで構成される場合、変換部30の係合部34は第2係合部34bだけで構成してもよい。ただし、ボタン部40の安定載置性及び押し下げ時の安定性等の観点から、脚部42は、第1脚部42aと第2脚部42bとにより構成するのが望ましい。
【0139】
実施の形態1(変形例Aを除く)、4、及び5では、第1脚部42a及び第2脚部42bのそれぞれに窪み4kが形成されたボタン部40、40B、40Cを例示したが、これに限定されない。ボタン部40、40B、40Cは、第1脚部42aだけに窪み4kが形成されたものであってよく、窪み4kを有しない構成を採ってもよい。一方、実施の形態2及び3のボタン部40は、第1脚部42a及び第2脚部42bのそれぞれに窪み4kが形成されたものであってよく、第1脚部42aだけに窪み4kが形成されたものであってもよい。同様に、変形例Aの脚部42は、開口部15の側壁15b側における先端方向側の位置に、内側に凹んだ窪み4kを有していてもよい。
【0140】
各実施の形態におけるボタン部40、40A~40Cの脚部42における沿部4bの形状は、各図の例に限定されない。各沿部4bは、対向面4rが本体部12の内壁12rに沿わないものであってよく、突起部4mを設けずに構成してもよい。実施の形態1及び2のボタン部40、40B、40Cは、抜け防止部43を設けずに構成してもよい。一方、実施の形態3のボタン部40は、抜け防止部43を有する構成を採ってもよい。ボタン部40、40A~40Cにおける表壁41aの形状は、各図の例に限らず、任意に変更することができる。表壁41aは、表面に摩擦を高めるための種々の加工を施してもよい。なお、各実施の形態において、変換部30、30Aは、係合部34が第1係合部34a及び第2係合部34bのうちの何れか一方を有していればよい。ただし、ボタン部40の安定載置性及び押し下げ時の安定性等の観点から、係合部34は、第1係合部34aと第2係合部34bとにより構成するのが望ましい。実施の形態1のスライダ部50は、安全突起55を設けずに構成してもよいが、誤操作防止等の観点から、安全突起55を設けた方がよい。実施の形態2の第2部材70は、安全突起76を設けずに構成してもよいが、誤操作防止等の観点から、安全突起76を設けた方がよい。なお、上記の説明では、人又は動物に薬液Cを注入する例を示したが、注射器は、当該用途以外に用いることもできる。例えば注射器は、肉片などの食材や細胞などに液体を注入する際に用いることも可能である。
【0141】
3s 後斜面、3t 前方補助斜面、4a 基部、4b、4j 沿部、4f 平坦面、4h 平坦部、4k 窪み、4m、54、64、74、85a 突起部、4r 対向面、4s 前斜面、4t 後方補助斜面、10、110、210 シリンジ部、11 筒先部、11a 吐出穴、12 本体部、12a 薬液貯留部、12b 機構組込み部、12c 補助部、12m 側壁部、12n 先端部、12r 内壁、13 蓋部、15 開口部、15b 側壁、15c 前壁、15d 後壁、15s 段差部、18 後退防止部、18h 段部、20 ガスケット、21 前端部、30、30A 変換部、31 嵌入部、32 首部、33 芯部、34 係合部、34a 第1係合部、34b 第2係合部、40、40A、40B、40C ボタン部、41 ボタン本体、41a 表壁、41b 側壁、41c 前端面、41d 後端面、42 脚部、42a 第1脚部、42b 第2脚部、43 抜け防止部、45 挟持溝、45u 底面、50、150、250、350 スライダ部、51 操作部、51a 操作面、51c 押端面、51d 後端面、52 挟持部、52b 底部、53 補助部、53c 補助端面、55、76 安全突起、55c、65c、75c、76c 先端面、58 引っ掛け部、58a 前方端部、58b 後方端部、60、160 第1部材、60d 背端面、61 第1操作部、62 第1挟持部、62b 底部、63 第1補助部、65 連通穴、70、170 第2部材、70c 当接端面、71 第2操作部、72 第2挟持部、73 第2補助部、75 連通部、75a 案内溝、75b 固定溝、75m 基部、75n 先端部、76、175 安全突起、80 第3部材、85 嵌め溝、90 間隙、100、100A、200、300、400、500 注射器、120、121w、122w スペーサ、121 第1調整部材、121u、122u 枠部材、122 第2調整部材、160 第1スライダ、160A 第1本体、161 第1操作部、162 第1挟持部、163 第1補助部、164 突起部、165 制限突起、170 第2スライダ、170A 第2本体、171 第2操作部、172 第2挟持部、173 第2補助部、510 調整ユニット、800 注射器ユニット、C 薬液、H ストローク、L 移動量、R1 領域、R2 領域、V 投薬量、θ 設定角度。