(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035012
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】貫通電極付きガラス基板の貫通孔充填方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/40 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
H05K3/40 K
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199293
(22)【出願日】2022-12-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-02-16
(31)【優先権主張番号】111133007
(32)【優先日】2022-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】517370630
【氏名又は名称】晶呈科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳 筱儒
(72)【発明者】
【氏名】劉 埃森
(72)【発明者】
【氏名】馮 祥▲アン▼
(72)【発明者】
【氏名】陳 亞理
【テーマコード(参考)】
5E317
【Fターム(参考)】
5E317AA24
5E317BB01
5E317BB11
5E317CC25
5E317CD21
5E317GG01
5E317GG11
(57)【要約】
【課題】本発明は、溶剤やフラックスを使用する必要がないことにより、複数の貫通孔内の固体金属の導電性が高くなる、貫通電極付きガラス基板の貫通孔充填方法を提供する。
【解決手段】本発明は、金属球を貫通電極付きガラス基板の複数の貫通孔内に充填し、加熱工程により金属球を溶融して液体金属を生成し、最後にこの液体金属を冷却して前記複数の貫通孔内において固体金属を形成する方法である。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
A.治具の上表面に離型剤を塗布するステップと、
B.複数の貫通孔を有する貫通電極付きガラス基板を前記治具の前記上表面に載置するステップと、
C.複数の金属球を前記複数の貫通孔に充填するステップと、
D.前記複数の金属球を溶融して液体金属を形成するステップと、
E.前記複数の貫通孔内の前記液体金属を冷却して固体金属を生成するステップと、
F.前記固体金属が前記複数の貫通孔にフルに充填されるまでステップCからステップEを繰り返すステップと、
G.前記貫通電極付きガラス基板の表面を洗浄し、前記貫通電極付きガラス基板を前記治具から取り外すステップと、
を含む、貫通電極付きガラス基板の貫通孔充填方法。
【請求項2】
前記ステップDは、リフロー工程により前記複数の金属球を溶融することを含む、請求項1に記載の貫通電極付きガラス基板の貫通孔充填方法。
【請求項3】
前記リフロー工程は、
第1加熱段階において、毎秒1度から2度の割合で前記貫通電極付きガラス基板の温度を第1温度から第2温度まで上昇させることと、
第2加熱段階において、毎秒1度から2度の割合で前記貫通電極付きガラス基板の温度を前記第2温度から第3温度まで上昇させることを含む、請求項2に記載の貫通電極付きガラス基板の貫通孔充填方法。
【請求項4】
前記リフロー工程は、前記第1加熱段階と前記第2加熱段階の間に恒温段階をさらに含み、前記恒温段階において、前記貫通電極付きガラス基板の温度は前記第2温度に維持される、請求項3に記載の貫通電極付きガラス基板の貫通孔充填方法。
【請求項5】
前記第1温度は25度であり、前記第2温度は180度であり、前記第3温度は230度である、請求項3に記載の貫通電極付きガラス基板の貫通孔充填方法。
【請求項6】
前記ステップDは、レーザー加熱工程により前記複数の金属球を溶融することを含む、請求項1に記載の貫通電極付きガラス基板の貫通孔充填方法。
【請求項7】
前記レーザー加熱工程は、前記貫通電極付きガラス基板の複数の領域に6ワットから8ワットのパワーのレーザービームを順次照射して前記複数の金属球を溶融することを含み、前記領域の照射時間は一領域につき5秒から9秒である、請求項6に記載の貫通電極付きガラス基板の貫通孔充填方法。
【請求項8】
各前記貫通孔の体積は各前記金属球の体積の整数倍である、請求項1に記載の貫通電極付きガラス基板の貫通孔充填方法。
【請求項9】
各前記貫通孔の高さは200μm、直径は125μmであり、各前記金属球の直径は105μmである、請求項1に記載の貫通電極付きガラス基板の貫通孔充填方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガラス貫通電極(TGV:Through-Glass Via) 付きの基板に関し、特に、貫通電極付きガラス基板の貫通孔充填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、三次元(3D)パッケージング技術が広く発展している。3Dパッケージングにおいては通常、貫通電極付きガラス基板をインターポーザーとして用いることで貫通電極付きガラス基板上方のチップと同基板下方のチップを電気的に接続させており、インターポーザーはインサート又は中間板とも呼ばれている。この上方のチップと下方のチップは貫通電極付きガラス基板の複数の貫通孔内の固体金属を介して電気的に相互接続する。現在の貫通電極付きガラス基板の貫通孔充填方法は、印刷方式により貫通電極付きガラス基板の貫通孔に金属ペーストを充填した後、焼結工程により金属ペーストを硬化させてこれら複数の貫通孔内に固体金属を形成するものである。従来の充填方式は印刷時に金属ペーストを充填しやすくするために、流動性を持たせる溶剤やフラックスを添加する必要がある。しかし、添加された溶剤やフラックスは蒸発しにくいため、焼結工程によって形成された固体金属内部に穴が開き、導電性が悪くなることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、導電性を高める貫通電極付きガラス基板の貫通孔充填方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の貫通電極付きガラス基板の貫通孔充填方法は、次のAからGのステップを含む。
A.治具の上表面に離型剤を塗布する。
B.複数の貫通孔を有する貫通電極付きガラス基板を前記治具の前記上表面に載置する。
C.複数の金属球を前記複数の貫通孔に充填する。
D.前記複数の金属球を溶融して液体金属を形成する。
E.前記複数の貫通孔内の前記液体金属を冷却して固体金属を生成する。
F.前記固体金属が前記複数の貫通孔にフルに充填されるまでステップCからステップEを繰り返す。
G.前記貫通電極付きガラス基板の表面を洗浄し、前記貫通電極付きガラス基板を前記治具から取り外す。
【発明の効果】
【0005】
金属ペーストを用いて貫通孔を埋める方式の従来技術に比べ、本発明は溶剤やフラックスを使用する必要がないため、複数の貫通孔内の固体金属の内部に穴ができることがなく、導電性が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】貫通孔が空の状態のガラス基板の上面図である。
【
図3】貫通電極付きガラス基板を治具上に載置した実施形態を示す図である。
【
図4】金属球を貫通電極付きガラス基板上に流し込んだ実施形態を示す図である。
【
図5】金属球を貫通電極付きガラス基板上の貫通孔に充填した後の上面図及び断面図である。
【
図6】金属球を溶融及び冷却した後に形成された固体金属を示す図である。
【
図7】固体金属が貫通孔にフルに充填された実施形態を示す図である。
【
図8】充填完了後の貫通電極付きガラス基板上の上面図及び断面図である。
【
図9】本発明の貫通電極付きガラス基板の貫通孔充填方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1から
図8を参照して本発明の貫通電極付きガラス基板の貫通孔充填方法を説明する。まず、
図1に示すように、貫通電極付きガラス基板10を取得する。貫通電極付きガラス基板10はその上表面と下表面を連通する複数の貫通孔12を有する。次に、
図2に示すように、治具20の上表面に耐高温性の離型剤22を塗布するが、この離型剤22の機能は、貫通孔充填工程完了後に貫通電極付きガラス基板10を治具20からより容易に取り外すことができるようにするためのものである。
図2の上側の図は治具20の上面図であり、下側の図は治具20の断面図である。離型剤22を塗布した後、
図3に示すように、貫通電極付きガラス基板10を治具20の上表面に載置する。
【0008】
貫通電極付きガラス基板10を治具20に載置した後、
図4及び
図5に示すように、貫通電極付きガラス基板10の複数の貫通孔12に複数の金属球30を充填する。まず、
図4に示すように、貫通電極付きガラス基板10に複数の金属球30を流し込み、次に
図5に示すように、治具20を軽く振動させたり揺らしたりして金属球30を転がして貫通孔12の中に落し入れる。
図5において、上側は貫通電極付きガラス基板10及び治具20の上面図であり、下側は上側の上面図中のA-A′線断面図である。金属球30を貫通孔12に充填する方法はいくつもあり、
図4及び
図5に示すのはその中の一つにすぎない。
図4及び
図5の実施形態において、貫通電極付きガラス基板10の各貫通孔12の高さをHとし、半径をR1とし、各金属球の半径をR2とすると、貫通孔12の高さHは貫通電極付きガラス基板10の厚さであり、貫通孔12の半径R1は金属球の半径R2以上である。各貫通孔12の体積は数式(1)により求められ、各金属球30の体積は数式(2)により求められ、これらの数式におけるπは円周率である。本発明では、貫通孔12の体積を金属球30の体積で割った余りがゼロに近づくほど良い。言い換えると、貫通孔12の体積が金属球30の体積の整数倍であることが最も好ましく、その場合、貫通孔12の高さHと半径R1が既に分かっていれば、適切な半径R2を有する金属球を設計することが可能である。一実施形態において、貫通孔12の高さH及び直径D1は数式(3)により求められて200μmとなり、金属球30の直径D2は数式(4)により求められて105μmとなる。
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
【0009】
複数の金属球30を貫通電極付きガラス基板10の複数の貫通孔12に充填した後、貫通孔12内の複数の金属球30を加熱処理し、複数の金属球30を溶融して液体金属を形成する。複数の金属球30がすべて完全に液体化した後、冷却工程に進んで複数の貫通孔12内の前記液体金属を冷却し、
図6に示すように、固体金属32を生成する。
【0010】
一実施形態において、加熱工程はリフロー工程を含む。このリフロー工程は第1加熱段階、恒温段階及び第2加熱段階を含む。前記リフロー工程では貫通電極付きガラス基板10全体を加熱することができる。前記第1加熱段階では、毎秒1度から2度の割合で前記貫通電極付きガラス基板10の温度を第1温度から第2温度まで上昇させる。第2温度まで加熱した後、第1加熱段階を終了して前記恒温段階に進む。前記恒温段階では、貫通電極付きガラス基板10の温度は前記第2温度に維持される。前記恒温段階を終了した後、前記第2加熱段階に進む。前記第2加熱段階では、毎秒1度から2度の割合で貫通電極付きガラス基板10の温度を前記第2温度から第3温度まで上昇させる。第2温度まで加熱した後、前記リフロー工程を終了する。一実施形態において、前記第1温度は25度であってもよく、第2温度は180度であってもよく、第3の温度は230度であってもよいが、これらの温度に限定されない。
【0011】
一実施形態において、加熱工程はレーザー加熱工程を含む。このレーザー加熱工程では、レーザービームを複数の金属球30に照射してこれらの金属球30を溶融する。一般的に、レーザービームは一度につき貫通電極付きガラス基板10の一部の領域しか照射できないため、このレーザー加熱工程では、貫通電極付きガラス基板10の複数の領域にレーザービームを順次照射してすべての貫通孔12内の金属球30を溶融する。一実施形態において、このレーザー加熱工程では、6ワットから8ワットのパワーのレーザービームを用い、貫通電極付きガラス基板10の各領域の照射時間は一領域につき5秒から9秒である。
【0012】
従来技術の焼結工程と比較して、本発明で用いるリフロー工程又はレーザー加熱工程は、加熱時間を短縮できるため、加熱工程中に貫通電極付きガラス基板10が破損する可能性が低減される。
【0013】
図6のように貫通電極付きガラス基板10の貫通孔12内に固体金属32が完全に充填されていない状態の場合、
図7のように貫通電極付きガラス基板10のすべての貫通孔12に固体金属がフルに充填されるまで、
図4から
図6のステップを繰り返す。貫通電極付きガラス基板10のすべての貫通孔12に固体金属がフルに充填された後、まず、貫通電極付きガラス基板10の表面をアルコールで洗浄するが、洗浄方法はこれに限定されない。洗浄後、
図8に示すように、貫通電極付きガラス基板10を治具20から取り外し、貫通電極付きガラス基板10の貫通孔充填工程を終了する。金属ペーストで貫通孔を充填する方式が用いられる従来技術と比べ、本発明では、固体の金属球を貫通孔12内に充填し、その金属球を加熱して溶融するため、溶剤やフラックスが不要となり、固体金属32の内部に穴ができず、より良い導電性を得ることができる。
【0014】
上述の説明から、本発明の貫通電極付きガラス基板の貫通孔充填方法は、
図9に示すように、次のステップを含むことが理解される。
ステップS10:治具の上表面に離型剤を塗布する。
ステップS11:貫通電極付きガラス基板を前記治具の前記上表面に載置する。
ステップS12:複数の金属球を貫通電極付きガラス基板の複数の貫通孔に充填する。
ステップS13:複数の金属球を溶融して液体金属を形成する。
ステップS14:複数の貫通孔内の液体金属を冷却して固体金属を生成する。
ステップS15:複数の貫通孔に固体金属がフルに充填されたか否かを判断し、フルに充填されていない場合にはステップS12からステップS14までを繰り返し、フルに充填されている場合はステップS16に進む。
ステップS16:貫通電極付きガラス基板の表面を洗浄し、貫通電極付きガラス基板を治具から取り外す。
【0015】
以上の記載は本発明の実施形態にすぎず、本発明を形式的に制限するものではない。本発明はすでに上記のように実施形態が開示されているが、これは本発明を限定するものではない。当業者は、本発明の技術案を逸脱しない範囲で、開示された上述の技術内容を利用して変更や修飾を加え、同等に変化した等価の実施形態としてもよい。本発明の技術案を逸脱しない内容であれば、本発明の技術に基づいて実質的に以上の実施形態に加えた簡単な修正、同等の変更及び修飾は、すべて本発明の技術案の範囲内に属する。
【符号の説明】
【0016】
10 貫通電極付きガラス基板
12 貫通孔
20 治具
22 離型剤
30 金属球
32 固体金属
H 高さ
R1 半径
R2 半径