(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035045
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】TVCMに用いる複数の素材の割付を行う装置、方法及びそのためのプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/0241 20230101AFI20240306BHJP
【FI】
G06Q30/0241 444
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066780
(22)【出願日】2023-04-16
(62)【分割の表示】P 2022138634の分割
【原出願日】2022-08-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-12-01
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.THUNDERBOLT
(71)【出願人】
【識別番号】522166220
【氏名又は名称】ノバセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003605
【氏名又は名称】弁理士法人六本木通り特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】星野 昌太
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049BB08
(57)【要約】
【課題】所定期間内のTVCMに用いる複数の素材の割付を効率化して、当該期間内に素材割付の改善を可能とする方法を提供する。
【解決手段】装置100は、ユーザー端末110から、複数の素材を表す素材データ及び1又は複数のテレビ局ごとの広告枠データ並びに上記複数の素材の割付規則を受信する(S201~S202)。装置100は、各i(1≦i≦n(nは2以上の整数))について、一組の広告枠のそれぞれに対して上記複数の素材のうちのいずれかを割り付け、素材ごとに合計GRPを算出する処理を、Mi(Miは2以上の整数)個の割付を含む第iの組の割付について行う。そして、装置100は、第iの組の割付のうちの割付割合に適合した1又は複数の割付を選定し、選定された当該1又は複数の割付に基づいてMi+1個の割付を含む第i+1の組の割付を生成する(S203~S204)。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定期間内のTVCMに用いる複数の素材の割付を行う方法であって、
前記複数の素材の所定の単位の割付割合を含む割付規則を取得するステップと、
各i(1≦i≦n(nは2以上の整数))について、
前記TVCMに対して定められた一組の広告枠のそれぞれに対して前記複数の素材のうちのいずれかを割り付け、各広告枠について定まる前記所定の単位の値を用いて、素材ごとの合計値を算出する処理を、Mi(Miは2以上の整数)個の割付を含む第iの組の割付について行うステップと、
前記第iの組の割付のうちの前記割付規則に適合した1又は複数の割付を選定するステップと、
選定された前記1又は複数の割付に基づいてMi+1個の割付を含む第i+1の組の割付を生成するステップと、
第n+1の組の割付のそれぞれについて、各広告枠について定まる前記所定の単位の値を用いて、素材ごとの合計値を算出するステップと、
前記第n+1の組の割付のうちの前記割付規則に適合した割付を決定するステップと
を含む。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記Miは、各iについて、100000以下である。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、
前記nは、11以上である。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、
前記取得するステップは、前記所定期間内の第1の期間の放映に対する効果測定の結果に基づいて、前記第1の期間の後の第2の期間のために生成された割付割合を読み出すステップを含む。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、
前記割付割合は、前記一組の広告枠に与えられた複数の属性ごとに定められている。
【請求項6】
コンピュータに、所定期間内のTVCMに用いる複数の素材の割付を行う方法を実行させるためのプログラムであって、
前記複数の素材の所定の単位の割付割合を含む割付規則を取得するステップと、
各i(1≦i≦n(nは2以上の整数))について、
前記TVCMに対して定められた一組の広告枠のそれぞれに対して前記複数の素材のうちのいずれかを割り付け、各広告枠について定まる前記所定の単位の値を用いて、素材ごとの合計値を算出する処理を、Mi(Miは2以上の整数)個の割付を含む第iの組の割付について行うステップと、
前記第iの組の割付のうちの前記割付規則に適合した1又は複数の割付を選定するステップと、
選定された前記1又は複数の割付に基づいてMi+1個の割付を含む第i+1の組の割付を生成するステップと、
第n+1の組の割付のそれぞれについて、各広告枠について定まる前記所定の単位の値を用いて、素材ごとの合計値を算出するステップと、
前記第n+1の組の割付のうちの前記割付規則に適合した割付を決定するステップと
を含む。
【請求項7】
所定期間内のTVCMに用いる複数の素材の割付を行う装置であって、前記装置の少なくとも1つのプロセッサが前記装置がアクセス可能な記憶媒体に記憶された指令を実行した場合に、前記装置が、
前記複数の素材の所定の単位の割付割合を含む割付規則を取得し、
各i(1≦i≦n(nは2以上の整数))について、
前記TVCMに対して定められた一組の広告枠のそれぞれに対して前記複数の素材のうちのいずれかを割り付け、各広告枠について定まる前記所定の単位の値を用いて、素材ごとの合計値を算出する処理を、Mi(Miは2以上の整数)個の割付を含む第iの組の割付について行い、
前記第iの組の割付のうちの前記割付規則に適合した1又は複数の割付を選定し、
選定された前記1又は複数の割付に基づいてMi+1個の割付を含む第i+1の組の割付を生成し、
第n+1の組の割付のそれぞれについて、各広告枠について定まる前記所定の単位の値を用いて、素材ごとの合計値を算出し、
前記第n+1の組の割付のうちの前記割付規則に適合した割付を決定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TVCMに用いる複数の素材の割付を行う装置、方法及びそのためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
インターネット広告の市場規模(日本)がテレビで放映されるCM(以下「TVCM」と呼ぶ。)の市場規模である2兆円弱を大きく超えて成長しつつも、テレビは、依然として最大の影響力をもつメディアである。音声と映像により反復してメッセージを伝達することで、強い印象を視聴者に与えることができる。
【0003】
TVCMは、通常、媒体社であるテレビ局が広告スペースとして提供する広告枠を、広告会社が広告主に販売する媒体枠取引により流通する。TVCMの放映を望む広告主は、広告会社に予算又は目標を伝え、広告会社から線引表と呼ばれるテレビ局ごとに一組の広告枠が定められた表を受け取る。そして、広告主又は広告会社がこれらの媒体枠にいずれの素材を放映するかを割り付けて、各テレビ局に伝える。
【0004】
たとえば、TVCMを1月間、1000GRP(Gross Rating Point)を目標として放映する場合を考える。広告主又はその依頼を受けた広告会社は、なんらかの基準に基づいて、複数の素材のGRP単位の割付割合を定めて、当該割付割合に近くなるように、各素材を媒体枠に割り付ける。素材数が4で、GRP単位の割付割合が均一であれば、各素材について、合計GRPが250GRPに近くなるように割付を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6953643号
【特許文献2】特許第6792694号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これまで、素材割付は、過去の経験に基づいて、属人的に手作業で行われてきており、数日を要することもある。一例として、広告枠の平均GRPが5GRPであると仮定して、素材数が4である場合、1000GRPに達するためには200枠に素材を割り付けることとなり、そのパターンは、4の200乗となる。4の20乗が約1兆であるので、そのパターン数が天文学的な数にのぼることが分かる。経験を積んだ者であれば、直観的な判断を適宜行い、定められた割付割合に近くなるパターンに絞り込むことが一定程度できるとしても、時間を要する作業であることには変わりはない。
【0007】
そのため、TVCMの効果を測定して、それを可視化するサービスが提供されているものの(特許文献1及び2参照)、放映期間内に効果測定の結果に基づいて素材割付を更新し、効果を高めていくというサイクルを回すことは負担が著しく重く、一般的になされてこなかった。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、その課題は、所定期間内のTVCMに用いる複数の素材の割付を効率化して、当該期間内に素材割付の改善を可能とする装置、方法又はそのためのプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために、本発明の第1の態様は、所定期間内のTVCMに用いる複数の素材の割付を行う方法であって、前記複数の素材の所定の単位の割付割合を含む割付規則を取得するステップと、各i(1≦i≦n(nは2以上の整数))について、(a)前記TVCMに対して定められた一組の広告枠のそれぞれに対して前記複数の素材のうちのいずれかを割り付け、各広告枠について定まる前記所定の単位の値を用いて、素材ごとの合計値を算出する処理を、Mi(Miは2以上の整数)個の割付を含む第iの組の割付について行うステップと、(b)前記第iの組の割付のうちの前記割付規則に適合した1又は複数の割付を選定するステップと、(c)選定された前記1又は複数の割付に基づいてMi+1個の割付を含む第i+1の組の割付を生成するステップと、第n+1の組の割付のそれぞれについて、各広告枠について定まる前記所定の単位の値を用いて、素材ごとの合計値を算出するステップと、前記第n+1の組の割付のうちの前記割付規則に適合した割付を決定するステップとを含む。
【0010】
また、本発明の第2の態様は、第1の態様の方法であって、前記Miは、各iについて、100000以下である。
【0011】
また、本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様の方法であって、前記Miは、少なくともいずれかのiについて、2000未満である。
【0012】
また、本発明の第4の態様は、第1又は第2の態様の方法であって、前記Miは、少なくともいずれかのiについて、5以上800未満である。
【0013】
また、本発明の第5の態様は、第1の態様の方法であって、前記nは、11以上である。
【0014】
また、本発明の第6の態様は、第1の態様の方法であって、前記取得するステップは、前記所定期間内の第1の期間の放映に対する効果測定の結果に基づいて、前記第1の期間の後の第2の期間のために生成された割付割合を読み出すステップを含む。
【0015】
また、本発明の第7の態様は、第1の態様の方法であって、前記取得するステップは、ユーザー端末に、前記所定期間内の第1の期間の放映に対する効果測定の結果に基づいて、前記第1の期間の後の第2の期間のための割付割合を生成して、生成した割付割合を提案として送信するステップと、前記ユーザー端末から、前記提案の承認を受信したことに応じて、又は前記提案若しくはその一部を変更した割付割合を受信したことに応じて、前記第2の期間のための割付割合を設定するステップと、設定された前記第2の期間のための割付割合を読み出すステップと
を含む。
【0016】
また、本発明の第8の態様は、第1の態様の方法であって、前記割付割合は、前記一組の広告枠に与えられた複数の属性ごとに定められている。
【0017】
また、本発明の第9の態様は、コンピュータに、所定期間内のTVCMに用いる複数の素材の割付を行う方法を実行させるためのプログラムであって、前記複数の素材の所定の単位の割付割合を含む割付規則を取得するステップと、各i(1≦i≦n(nは2以上の整数))について、(a)前記TVCMに対して定められた一組の広告枠のそれぞれに対して前記複数の素材のうちのいずれかを割り付け、各広告枠について定まる前記所定の単位の値を用いて、素材ごとの合計値を算出する処理を、Mi(Miは2以上の整数)個の割付を含む第iの組の割付について行うステップと、(b)前記第iの組の割付のうちの前記割付規則に適合した1又は複数の割付を選定するステップと、(c)選定された前記1又は複数の割付に基づいてMi+1個の割付を含む第i+1の組の割付を生成するステップと、第n+1の組の割付のそれぞれについて、各広告枠について定まる前記所定の単位の値を用いて、素材ごとの合計値を算出するステップと、前記第n+1の組の割付のうちの前記割付規則に適合した割付を決定するステップとを含む。
【0018】
また、本発明の第10の態様は、所定期間内のTVCMに用いる複数の素材の割付を行う装置であって、前記装置の少なくとも1つのプロセッサが前記装置がアクセス可能な記憶媒体に記憶された指令を実行した場合に、前記装置が、前記複数の素材の所定の単位の割付割合を含む割付規則を取得し、各i(1≦i≦n(nは2以上の整数))について、(a)前記TVCMに対して定められた一組の広告枠のそれぞれに対して前記複数の素材のうちのいずれかを割り付け、各広告枠について定まる前記所定の単位の値を用いて、素材ごとの合計値を算出する処理を、Mi(Miは2以上の整数)個の割付を含む第iの組の割付について行い、(b)前記第iの組の割付のうちの前記割付規則に適合した1又は複数の割付を選定し、(c)選定された前記1又は複数の割付に基づいてMi+1個の割付を含む第i+1の組の割付を生成し、第n+1の組の割付のそれぞれについて、各広告枠について定まる前記所定の単位の値を用いて、素材ごとの合計値を算出し、前記第n+1の組の割付のうちの前記割付規則に適合した割付を決定する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様によれば、広告枠に対する複数の素材の割付において、第iの組の割付の少なくとも一部に基づいて生成された第i+1の組の割付の中から割付規則に適合した割付を選定することを繰り返すことによって、計算量を大幅に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる装置を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態にかかる素材割付の方法の流れを示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態にかかる割付規則の入力画面の一例を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態にかかる素材割付の結果の一例を表す図である。
【
図5】実施例で用いた200個の広告枠のそれぞれに定められたGRPをプロットした図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0022】
図1に、本発明の一実施形態にかかる装置を示す。装置100は、インターネット等のIPネットワークを介して、装置100により提供される素材割付サービスのユーザー企業が用いるユーザー端末110と通信して、複数の素材の割付結果をユーザー端末110に送信する。
【0023】
装置100は、通信インターフェースなどの通信部101と、プロセッサ、CPU等の処理部102と、メモリ、ハードディスク等の記憶装置又は記憶媒体を含む記憶部103とを備え、各処理又は各動作を行うためのプログラムを実行することによって構成することができる。装置100は、1又は複数の装置、コンピュータないしサーバを含むことがある。また、当該プログラムは、1又は複数のプログラムを含むことがあり、また、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記録して非一過性のプログラムプロダクトとすることができる。当該プログラムは、記憶部103又は装置100からIPネットワークを介してアクセス可能なデータベース104等の記憶装置又は記憶媒体に記憶しておき、処理部102の少なくとも1つのプロセッサにおいて当該プログラムに含まれる指令を実行することができる。以下で記憶部103に記憶されるものとして記述されるデータはデータベース104に記憶してもよく、またその逆も同様である。
【0024】
まず、装置100は、ユーザー端末110から、所定期間内のTVCMに用いる複数の素材を表す素材データ及びTVCMが放映される1又は複数のテレビ局ごとの広告枠データを受信する(S201)。たとえば、4つの素材を用いる場合が考えられ、素材データには、各素材を識別するコードが含まれる。また、装置100は、受信した1又は複数の広告枠データを用いて、TVCMを放映するすべてのテレビ局の広告枠を含む広告枠データを生成してもよい。ここでは、これらのデータがユーザー端末110から受信されるものとして記述したが、装置100が、所定期間内のTVCMに用いる複数の素材データ及び当該複数の素材データのいずれかが割り当てられる複数の広告枠を含む広告枠データを記憶部103から読み出すことができればよい。
【0025】
次に、装置100は、ユーザー端末110から、上記複数の素材の割付規則を受信する(S202)。
図3は、本発明の一実施形態にかかる割付規則の入力画面の一例である。入力画面300は、4つの素材のそれぞれについて、割付割合を入力するための第1の入力欄311、第2の入力欄312、第3の入力欄313及び第4の入力欄314を有する。
図3の例では、素材は「クリエイティブ」と呼ばれ、100%のうちのGRP単位の割合が各クリエイティブに対して入力されている。
【0026】
一般に、TVCMは関東、近畿、中京、福岡、北海道等の地域を指定して放映され、指定された地域内の複数のテレビ局で放映される。
図3の例においては、北海道内のA放送、B放送及びC放送で放映され、各クリエイティブについて入力された割合は、これらのテレビ局で放映されることによるGRPの合計値に対する設定割合である。代替例としては、各クリエイティブについて入力された割合が、各テレビ局のGRPの値に対する設定割合であってもよい。また、広告枠には、SB及びPTの枠区分、S、A、B及びCのタイムランク等の属性が与えられていることがある。属性ごとに割付割合を入力してもよく、
図3の例では、枠区分ごとに入力可能としている。広告枠の属性としては、朝、昼及び夜の時間帯、GRPの値又は幅、テレビ局、15秒又は30秒の秒数等がさらに挙げられる。上述の説明では、割付割合について説明をしたものの、割合以外のものも含めて割付規則と呼ぶ。たとえば、同一のテレビ局で同一の素材が連続して割り付けられていないこと、朝向き等の各素材に付与された属性が当該素材が割り付けられた広告枠の属性と合致する割付を高く評価すること等が割付規則の例として挙げられる。朝の時間帯の広告枠に朝と合致しにくいお酒を伴う素材を割り付けない、特定のタレント又はその属性が与えられた広告枠にそれと合致しないタレントを伴う素材を割り付けないといった例もさらに挙げられる。
【0027】
装置100は、そして、読み出した広告枠データに含まれる複数の広告枠のそれぞれに対して、上記複数の素材のうちのいずれかを割り付け、素材ごとに合計GRPを算出する処理を複数の割付を含む第1の組の割付について行う(S203)。複数の素材のそれぞれの合計GRPが割付規則に適合した1又は複数の割付を選定し、当該1又は複数の割付に基づいて生成した第2の組の割付のそれぞれについて、素材ごとに合計GRPを算出する(S204)。
【0028】
より一般的には、装置100は、各i(1≦i≦n(nは2以上の整数))について、TVCMに対して定められた一組の広告枠のそれぞれに対して上記複数の素材のうちのいずれかを割り付け、素材ごとに合計GRPを算出する処理を、Mi(Miは2以上の整数)個の割付を含む第iの組の割付について行う。そして、装置100は、第iの組の割付のうちの割付割合に適合した1又は複数の割付を選定し、選定された当該1又は複数の割付に基づいてMi+1個の割付を含む第i+1の組の割付を生成する。
図2には、n=2の場合を示している。詳細は後述する。
【0029】
装置100は、第n+1の組の割付のうち、複数の素材のそれぞれの合計GRPを算出し(S205)、割付割合に適合した割付を決定し(S206)、当該割付をユーザー端末110に必要に応じて送信する(S207)。
【0030】
すべての割付のパターンを検証すると天文学的な数になってしまうところ、広告枠に対する複数の素材の割付において、このように第iの組の割付の少なくとも一部に基づいて生成された第i+1の組の割付の中から割付規則に適合した割付を選定することを繰り返すことによって、計算量を大幅に削減することができる。これにより、所定期間内のTVCMに用いる複数の素材の割付の改善が可能となる。
【0031】
上述の説明では、割付割合は複数の素材のGRP単位の割付割合として記述したが、出稿費用等の金額単位の割付割合とすることも考えられる。また、GRP以外の所定の単位の割付割合を用いることも考えられ、各広告枠について定量的な値を定めることができれば、素材ごとの合計値を算出することができ、本発明を適用可能である。例として、一組の広告枠のそれぞれについて、ゴールデン枠は3点、昼間枠は2点といった点数を定めておき、これらの値を用いてもよい。
【0032】
また、i=nの場合とi<nの場合で第i+1の組の割付のうちから割付割合に適合した割付を選定又は決定する手法の詳細は、必ずしも同一手法である必要はなく、異なっていてもよい。
【0033】
割付処理の詳細
割付処理の一例では、複数の広告枠のそれぞれに対して、複数の素材の中からランダムにいずれかの素材を選択して割り付ける。第1の組の割付としてこのような割付を500個用意して、各割付について、素材ごとの合計GRPを算出する。
図4は、広告枠のそれぞれに対して素材を割り付けた結果の一例を表す。
【0034】
そして、割付割合からのずれが少ない割付を当該割付割合により適合した割付として評価して、1又は複数の割付割合に適合した割付を選定する。たとえば、5個の割付を選定した場合、選定された各割付の一部を変更した99個の割付を生成して100個の割付を得ることで、合計500個の第2の組の割付が得られる。さらに第2の組の割付の中から選定された1又は複数の割付に基づいて第3の組の割付を生成することができる。このような割付の生成及び選択を必要な回数であるn回繰り返して、第n+1の組の割付の中から割付割合に適合する割付を決定することができる。第n+1の組の割付の中からの決定は、割付割合に最も適合する単一の割付を決定する場合のほか、複数の割付を決定し、たとえば、それらの割付をユーザー端末110に送信してユーザー端末110を用いるユーザー企業に最終的に選択させてもよい。
【0035】
第1の組の割付の中から単一の割付を選定してその一部を変更して第2の組の割付を得る場合は、割付割合との適合性が最大となる割付からは大きくずれ、極大となる割付にすぎない可能性があることから、第1の組の割付の中から複数の割付を選定して、当該複数の割付のそれぞれの一部を変更して第2の組の割付が得ることが好ましいことがある。
【0036】
上述した割付処理のアルゴリズムは、遺伝的アルゴリズムと呼ばれるものに該当するものである。しかしながら、第1の組の割付の少なくとも一部に基づいて生成された第2の組の割付の中から割付割合に適合した割付を選定するアルゴリズムであれば、計算量を削減する効果があり、本発明に適用可能である。
【0037】
上述の説明では、第1の組の割付をランダムに生成する例を挙げたが、手作業で人間が作成した割付を少なくとも1つ第1の組の割付に含めることで、人間の直観的な判断を取り入れて、計算時間を短縮することも考えられる。
【0038】
割付割合の詳細
割付割合は、
図3に示す入力画面からユーザー企業が入力する場合のほか、TVCMを放映する所定期間(1月間等)内の第1の期間(最初の1週間等)の放映に対する効果測定の結果に基づいて、当該第1の期間の後の第2の期間(2週目の1週間等)のために装置100が生成してもよい。効果測定の手法は、特許文献1及び2に示されているものを含めて適宜採用すればよい。たとえば、最初は割付割合をGRP単位で均等にしておき、効果測定の結果に基づいて、クリエイティブAを60%、クリエイティブBを20%、クリエイティブC及びDをそれぞれ10%に変更するような場合が挙げられる。
【0039】
生成された割付割合は自動的に第2の期間の割付割合として用いられてもよいが、ユーザー端末110に提案として送信して、ユーザー端末110から当該提案の承認を受信したことに応じて、又は当該提案若しくはその一部を変更した割付割合を受信したことに応じて、装置100が第2の期間の割付割合を設定し、それを読み出してもよい。
【0040】
実施例
プロセッサとしてIntel Core (登録商標) i7-8569U CPU、メモリとしてバスクロック2133 MHzの1MB DDR4 SDRAMを備えたMacBook Pro (登録商標) (13-inch, 2019, Four Thunderbolt 3 port)上で以下の計算を行った。OSは、macOS (登録商標) Catalina (version 10.15.7)である。
【0041】
5つの素材数を1200GRPを目標として200枠に割り付けることとした。200個の広告枠のそれぞれに定められたGRPをプロットした図が
図5であり、枠ごとにGRPが異なるため、単純に5つの素材を割付割合に応じた数の枠に割り付けても、素材ごとの合計GRPは割付割合には合致しないことが分かる。割付規則は、割付割合とし、割付割合は、クリエイティブA~Eについて60%、20%、10%、10%及び0%に設定した。
【0042】
割付処理アルゴリズムとして、遺伝的アルゴリズムを採用し、より具体的にはDEAPと呼ばれるライブラリを用いた。次世代の割付を生成するために前の世代から3つの割付を選定し、各世代の割付数は100個とした。世代数は100世代、すなわち、n=99とした。
【0043】
以下の表1に、100世代目の割付のうちの上記割付割合に最も適合した割付を示す。いずれの素材についても、設定した割付割合からのずれが1%より明らかに小さく、割付割合に極めて適合した結果が得られた。
【0044】
【0045】
ここで、素材ごとの割付比と合計GRP比との差を算出し、これらの差に応じたスコアを各割付について計算し、スコアが大きいものを割付割合により適合した割付と判定した。
【0046】
各世代の割付数を100個から変えたときに最大スコアとなる割付が何世代目で現れるかを100個の場合を含めてさらに検証した結果を以下の表2に示す。最大スコアに到達するまでの世代数及びその世代の処理完了までの時間は、試行ごとに異なり得ることから、複数回の試行結果から得られた結果の平均とした。
【0047】
【0048】
使用するプロセッサ及びメモリによって計算時間は変動するものの、表1及び表2の結果から、以下のようなことが分かる。
【0049】
まず、世代ごとの割付数が大きくなるにつれて、必要な世代数が少なくなるものの、各世代の割付数が10万個になると100分程度の計算時間を要している。これは、従来の数日を要する素材割付の作業と比較すれば短時間であるから、本発明の範囲から10万個以上の割付数を除外するものではないが、各世代について、10万個未満、さらには1万個とすることが好ましい。少なくともいずれかの世代の割付数を10万個未満、さらには1万個とすることが好ましい。
【0050】
また、各世代の割付数を2000個未満としたときに1分程度又はそれ未満で計算ができており、素材割付が大幅に短時間化されることから、少なくともいずれかの世代の割付数を2000個未満とすることが好ましい。各世代の割付数が5個以上800個以下の場合には計算時間が1分を切っており、著しく短時間化されることから、少なくともいずれかの世代の割付数を5個以上800個以下とすることが好ましい。
【0051】
また、各世代の割付数が10万個になると100分程度の計算時間を要しており、必ずしも最適な例ではないが、このように割付数が大きくなっても12世代は必要であることから、nは少なくとも11以上であることが好ましい。
【0052】
なお、上述の実施形態において、「のみに基づいて」、「のみに応じて」、「のみの場合」というように「のみ」との記載がなければ、本明細書においては、付加的な情報も考慮し得ることが想定されていることに留意されたい。また、一例として、「aの場合にbする」という記載は、明示した場合を除き、「aの場合に常にbする」こと、「aの直後にbする」ことを必ずしも意味しないことに留意されたい。また、「Aを構成する各a」という記載は、必ずしもAが複数の構成要素によって構成されることを意味するものではなく、構成要素が単数であることを含む。
【0053】
また、念のため、なんらかの方法、プログラム、端末、装置、サーバ又はシステム(以下「方法等」)において、本明細書で記述された動作と異なる動作を行う側面があるとしても、本発明の各態様は、本明細書で記述された動作のいずれかと同一の動作を対象とするものであり、本明細書で記述された動作と異なる動作が存在することは、当該方法等を本発明の各態様の範囲外とするものではないことを付言する。
【0054】
また、
図2において示される「開始」及び「終了」は、一例を示すものに過ぎず、本実施形態にかかる方法が図示された手順で必ず開始され、図示された手順で必ず終了することを意味するものではない。
【符号の説明】
【0055】
100 装置
101 通信部
102 処理部
103 記憶部
104 データベース
110 ユーザー端末
300 割付規則入力画面
311 第1の入力欄
312 第2の入力欄
313 第3の入力欄
314 第4の入力欄
【手続補正書】
【提出日】2023-11-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定期間内のTVCMに用いる複数の素材の割付をコンピュータが行う方法であって、
前記複数の素材の所定の単位の割付割合を含む割付規則を取得するステップと、
各i(1≦i≦n(nは2以上の整数))について、
前記TVCMに対して定められた一組の広告枠のそれぞれに対して前記複数の素材のうちのいずれかを割り付け、各広告枠について定まる前記所定の単位の値を用いて、素材ごとの合計値を算出する処理を、Mi(Miは2以上の整数)個の割付を含む第iの組の割付について行うステップと、
前記第iの組の割付のうちの前記割付規則に適合した1又は複数の割付を選定するステップと、
選定された前記1又は複数の割付に基づいてMi+1個の割付を含む第i+1の組の割付を生成するステップと、
第n+1の組の割付のそれぞれについて、各広告枠について定まる前記所定の単位の値を用いて、素材ごとの合計値を算出するステップと、
前記第n+1の組の割付のうちの前記割付規則に適合した割付を決定するステップと
を含む。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記Miは、各iについて、100000以下である。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、
前記nは、11以上である。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、
前記取得するステップは、前記所定期間内の第1の期間の放映に対する効果測定の結果に基づいて、前記第1の期間の後の第2の期間のために生成された割付割合を読み出すステップを含む。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、
前記割付割合は、前記一組の広告枠に与えられた複数の属性ごとに定められている。
【請求項6】
コンピュータに、所定期間内のTVCMに用いる複数の素材の割付を行う方法を実行させるためのプログラムであって、
前記複数の素材の所定の単位の割付割合を含む割付規則を取得するステップと、
各i(1≦i≦n(nは2以上の整数))について、
前記TVCMに対して定められた一組の広告枠のそれぞれに対して前記複数の素材のうちのいずれかを割り付け、各広告枠について定まる前記所定の単位の値を用いて、素材ごとの合計値を算出する処理を、Mi(Miは2以上の整数)個の割付を含む第iの組の割付について行うステップと、
前記第iの組の割付のうちの前記割付規則に適合した1又は複数の割付を選定するステップと、
選定された前記1又は複数の割付に基づいてMi+1個の割付を含む第i+1の組の割付を生成するステップと、
第n+1の組の割付のそれぞれについて、各広告枠について定まる前記所定の単位の値を用いて、素材ごとの合計値を算出するステップと、
前記第n+1の組の割付のうちの前記割付規則に適合した割付を決定するステップと
を含む。
【請求項7】
所定期間内のTVCMに用いる複数の素材の割付を行う装置であって、前記装置の少なくとも1つのプロセッサが前記装置がアクセス可能な記憶媒体に記憶された指令を実行した場合に、前記装置が、
前記複数の素材の所定の単位の割付割合を含む割付規則を取得し、
各i(1≦i≦n(nは2以上の整数))について、
前記TVCMに対して定められた一組の広告枠のそれぞれに対して前記複数の素材のうちのいずれかを割り付け、各広告枠について定まる前記所定の単位の値を用いて、素材ごとの合計値を算出する処理を、Mi(Miは2以上の整数)個の割付を含む第iの組の割付について行い、
前記第iの組の割付のうちの前記割付規則に適合した1又は複数の割付を選定し、
選定された前記1又は複数の割付に基づいてMi+1個の割付を含む第i+1の組の割付を生成し、
第n+1の組の割付のそれぞれについて、各広告枠について定まる前記所定の単位の値を用いて、素材ごとの合計値を算出し、
前記第n+1の組の割付のうちの前記割付規則に適合した割付を決定する。