(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035065
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】バグフィルタ
(51)【国際特許分類】
B01D 46/02 20060101AFI20240306BHJP
B01D 46/06 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
B01D46/02 A
B01D46/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088246
(22)【出願日】2023-05-29
(31)【優先権主張番号】P 2022137601
(32)【優先日】2022-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023080345
(32)【優先日】2023-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100227695
【弁理士】
【氏名又は名称】有川 智章
(72)【発明者】
【氏名】笠田 正明
(72)【発明者】
【氏名】佐々本 悟
【テーマコード(参考)】
4D058
【Fターム(参考)】
4D058JA04
4D058KA08
4D058KC42
4D058KC62
4D058KC81
4D058KC83
4D058LA05
4D058LA10
(57)【要約】
【課題】製粉工場内等の比較的狭いスペースに設置された場合であっても簡易に濾布を交換可能なバグフィルタを提供する。
【解決手段】外面濾過方式のバグフィルタ1は、含塵空気が導入される濾過室R1の天井面10bに吊設されたリテーナ12と、リテーナ12を下方から覆う使用状態に着脱可能な上方に開口する袋状をなす濾布16とを有する。可動部材13及びワイヤロープ14は、濾布16を取付完了位置まで上昇させながら前記リテーナ12に取り付ける一方、濾布16を交換作業位置まで下降させながらリテーナ12から取り外していくよう構成されている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
含塵空気が導入される濾過室の天井面に吊設されたリテーナと、前記リテーナを下方から覆う使用状態に着脱可能な上方に開口する袋状をなす濾布と、を有する外面濾過方式のバグフィルタであって、
前記濾布を取付完了位置まで上昇させながら前記リテーナに取り付ける一方、前記濾布を交換作業位置まで下降させながら前記リテーナから取り外していく昇降部を備えていることを特徴とするバグフィルタ。
【請求項2】
請求項1に記載のバグフィルタにおいて、
前記昇降部は、昇降動作時に前記リテーナが挿通可能な上下に貫通する貫通孔を有する可動部材と、前記可動部材を昇降可能に吊持する吊持部と、を備え、
前記濾布の上端開口周縁は、前記可動部材の前記貫通孔周縁に対応するように前記可動部材に着脱自在に取り付けられていることを特徴とするバグフィルタ。
【請求項3】
請求項2に記載のバグフィルタにおいて、
前記可動部材の前記貫通孔周縁には、下方に突出する環状突条部が設けられ、
前記環状突条部の外周面には、前記濾布の上端開口周縁が着脱自在に取り付けられていることを特徴とするバグフィルタ。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のバグフィルタにおいて、
前記天井面と前記可動部材との少なくとも一方には、前記濾布が前記取付完了位置まで上昇した際において前記天井面と前記可動部材との間の間隙を埋めるシール部材が設けられていることを特徴とするバグフィルタ。
【請求項5】
請求項2に記載のバグフィルタにおいて、
前記濾過室を構成する側壁には、点検口が設けられ、
前記可動部材は、中心線が上下に向く円板状をなし、かつ、その内周領域において前記吊持部に吊持される一方、外周領域において前記貫通孔が前記中心線を中心とした周方向に複数設けられており、
前記吊持部の下側領域は、その上側領域に対して捩じることが可能であることを特徴とするバグフィルタ。
【請求項6】
請求項5に記載のバグフィルタにおいて、
前記点検口を開閉可能な点検扉を備え、
前記昇降部は、前記点検扉が開状態のときは、前記濾布を前記交換作業位置まで下降させる一方、前記点検口が閉状態のときは、前記濾布を前記取付完了位置まで上昇させることを特徴とするバグフィルタ。
【請求項7】
請求項1に記載のバグフィルタにおいて、
前記交換作業位置は、前記濾布が前記リテーナの一部を覆った状態の位置であることを特徴とするバグフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井面に吊設されたリテーナを袋状の濾布で覆って使用する外面濾過方式のバグフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、製粉工場などの施設には、含塵空気を集塵するバグフィルタが設置されており、該バグフィルタには、内面濾過方式と外面濾過方式との2種類が存在している。
【0003】
内面濾過方式は、筒状の濾布の内側から外側に向けて含塵空気を通過させることで濾過する方式である。一方、外面濾過方式は、筒状の濾布の外側から内側に向けて含塵空気を通過させることで濾過する方式であって、濾過部分は、筒状の骨組み枠体であるリテーナに袋状の濾布を覆うように取り付けることにより構成され、リテーナが濾布を内側から支持して当該濾布の形状を維持している。
【0004】
ところで、バグフィルタの濾布は、使用を続けると性能が次第に低下していくため、定期的に交換することが求められる。例えば、特許文献1に開示されている外面濾過方式のバグフィルタでは、濾布とリテーナとで構成される濾筒を濾過室からバグフィルタの外側へと取り出すことが可能なリンク機構が設けられている。そして、バグフィルタの外側へと取り出された濾筒のリテーナに取り付けられている使用済みの濾布を使用前の濾布に交換した後、再度、リンク機構を用いて濾筒を濾過室に戻して濾布の交換作業を完了させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の如きバグフィルタは、濾筒自体を濾過室からバグフィルタの外側へと取り出す構造になっているので、作業者による濾布交換作業のための広いスペースがバグフィルタの周囲に必要となる。しかし、例えば、バグフィルタを製粉工場内に設置する場合、該バグフィルタの周囲には他の設備等が設置されているため、バグフィルタの周囲に作業者が濾布の交換作業を行うために必要充分な広いスペースをバグフィルタの周囲に確保できないおそれがある。
【0007】
また、特許文献1の如きバグフィルタでは、濾筒のリテーナから使用済みの濾布を取り外す作業と、使用前の濾布をリテーナに取り付ける作業とを作業員の手作業で行う必要があるので、作業者にとって濾布の交換作業が煩わしいという問題もある。
【0008】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、製粉工場内等の比較的狭いスペースに設置された場合であっても簡易に濾布を交換可能なバグフィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、濾過室の天井面に吊設されたリテーナに対して濾布を昇降動作により着脱させる構成にしたことを特徴とする。
【0010】
具体的には、含塵空気が導入される濾過室の天井面に吊設されたリテーナと、前記リテーナを下方から覆う使用状態に着脱可能な上方に開口する袋状をなす濾布と、を有する外面濾過方式のバグフィルタを対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0011】
すなわち、第1の発明では、前記濾布を取付完了位置まで上昇させながら前記リテーナに取り付ける一方、前記濾布を交換作業位置まで下降させながら前記リテーナから取り外していく昇降部を備えていることを特徴とする。
【0012】
第2の発明では、第1の発明において、前記昇降部は、昇降動作時に前記リテーナが挿通可能な上下に貫通する貫通孔を有する可動部材と、前記可動部材を昇降可能に吊持する吊持部と、を備え、前記濾布の上端開口周縁は、前記可動部材の前記貫通孔周縁に対応するように前記可動部材に着脱自在に取り付けられていることを特徴とする。
【0013】
第3の発明では、第2の発明において、前記可動部材の前記貫通孔周縁には、下方に突出する環状突条部が設けられ、前記環状突条部の外周面には、前記濾布の上端開口周縁が着脱自在に取り付けられていることを特徴とする。
【0014】
第4の発明では、第2又は第3の発明において、前記天井面と前記可動部材との少なくとも一方には、前記濾布が前記取付完了位置まで上昇した際において前記天井面と前記可動部材との間の間隙を埋めるシール部材が設けられていることを特徴とする。
【0015】
第5の発明では、第2の発明において、前記濾過室を構成する側壁には、点検口が設けられ、前記可動部材は、中心線が上下に向く円板状をなし、かつ、その内周領域において前記吊持部に吊持される一方、外周領域において前記貫通孔が前記中心線を中心とした周方向に複数設けられており、前記吊持部の下側領域は、その上側領域に対して捩じることが可能であることを特徴とする。
【0016】
第6の発明では、第5の発明において、前記点検口を開閉可能な点検扉を備え、前記昇降部は、前記点検扉が開状態のときは、前記濾布を前記交換作業位置まで下降させる一方、前記点検口が閉状態のときは、前記濾布を前記取付完了位置まで上昇させることを特徴とする。
【0017】
第7の発明では、第1の発明において、前記交換作業位置は、前記濾布が前記リテーナの一部を覆った状態の位置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明では、昇降部によって使用済みの濾布が交換作業位置まで下ろされると、使用済みの濾布が濾過室の床面に接近した位置においてリテーナから取り外された状態か、或いは、リテーナから取り外される途中の状態になるので、作業者による濾布の交換作業が濾過室の床面に近い位置で可能になる。したがって、特許文献1のように濾布及びリテーナを濾過室からバグフィルタの外側へと取り出す必要がないので、例えば、製粉工場内の比較的狭いスペースにバグフィルタが設置された場合であっても濾布の交換を適切に実施することができる。また、昇降部によって使用前の濾布を上昇させることでリテーナに対して濾布が自動的に取り付けられるようになる。このように、作業者は、特許文献1の如き使用済みの濾布をリテーナから抜き取ったり、或いは、リテーナを覆うように使用前の濾布を取り付けたりする必要がなくなるので、濾布の交換作業を簡易に行うことができる。
【0019】
第2の発明では、可動部材を昇降させると、リテーナが貫通孔周縁に摺接しながら可動部材の昇降動作を案内するようになる。これにより、濾布を取付完了位置へとスムーズに到達させることができるようになり、効率良くリテーナに濾布を取り付けることができる。
【0020】
第3の発明では、濾布を着脱させる環状突条部が可動部材の下方に突出しているので、濾布を可動部材に対して下方から着脱させる際の着脱作業の位置が作業者に近くなる。したがって、作業者による濾布の交換作業を簡易に行うことができる。
【0021】
第4の発明では、濾布が取付完了位置となるまで可動部材を上昇させると、可動部材と天井面との間隙がシール部材により確実にシールされるようになる。したがって、バグフィルタの稼働時に上記間隙から含塵空気が濾布を介さずに濾布の下流側に流れ出てしまい、バグフィルタから含塵空気が排出されてしまうのを防ぐことができる。
【0022】
第5の発明では、例えば、作業者が点検口を介して濾過室にアクセスした際、交換作業位置まで下ろした状態の可動部材を吊持部に取り付けられた内周領域を中心として水平面に沿って回動させて可動部材において周方向に沿って配設された各濾布を作業者の正面へと順次移動させることが可能となる。これにより、濾過室において点検口からアクセスし難い遠い箇所に濾布が取り付けられている場合であっても作業者まで容易に濾布を引き寄せることができ、簡易に濾布の交換作業を行うことができる。
【0023】
第6の発明では、濾布の交換の際、点検扉を閉状態から開状態にすると、昇降部により濾布が自動的に下降するので、交換作業位置において可動部材に取り付けられた使用済みの濾布を使用前の濾布に交換することができる。また、使用前の濾布を可動部材に取り付けた後、点検扉を開状態から閉状態にすると、昇降部により濾布が自動的に上昇するようになるので、点検扉の開閉動作以外に特別な操作を要さずに使用前の濾布をリテーナにセットすることができる。
【0024】
第7の発明では、交換作業位置における交換後の使用前の濾布がリテーナから完全には離れていない状態になる。したがって、濾布を上昇させる際に、使用前の濾布がリテーナを覆うように移動せずに当該リテーナから外れた状態のまま上昇してしまって取り付けに失敗するといったことが回避されるようになり、濾布の交換作業を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態に係るバグフィルタを示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るバグフィルタの内部構成を示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るバグフィルタの内部構成の一部を示す斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るバグフィルタの内部構成の一部を示す概略断面図である。
【
図5】ワイヤロープの配索状態を示す概略側面図である。
【
図6】濾布を取付完了位置から交換作業位置に下降させた状態を示す概略側面図である。
【
図7】濾布を交換作業位置から取付完了位置に上昇させた状態を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0027】
図1は、本発明の実施形態に係るバグフィルタ1を示す。該バグフィルタ1は、外面濾過方式であって、本体部2と、支持部3とを備えている。本体部2には、略八角柱形状をなす上側本体部4と、該上側本体部4の下方に連続して設けられ、かつ、頭頂点が下方位置とされた略四角錐形状をなす下側本体部5とが設けられている。
【0028】
支持部3は、上下方向に延びる四本の脚部3aを備え、各脚部3aの上端部分が矩形状をなす下側本体部5の上縁部分の四隅にそれぞれ連結されるとともに、その下端部分が地面に接するようになっている。また、バグフィルタ1の正面側の2本の脚部3aの間、及び、その背面側の2本の脚部3aの間は、脚部3aと交差する水平方向に延びる連結部3bにより連結されており、正面側の連結部3bには、バグフィルタ1の作業者が使用可能な梯子部3cが取り付けられている。
【0029】
上側本体部4は、平面視で略八角形状をなす上板6と、該上板6の各辺に対応する幅寸法を有する略矩形状をなす上側側板7とを備えており、上板6が上側本体部4の天井壁、該上側側板7が上側本体部4の側壁をそれぞれ構成するようになっている。また、正面側に配設された上側側板7の下部領域には、該上側側板7を貫通する点検口7aが設けられ、該点検口7aには、開閉可能な点検扉7bが設けられている。
【0030】
下側本体部5は、三角形状をなす下側側板8がバグフィルタ1の正面側、背面側、右側面側及び左側面側にそれぞれに設けられており、各下側側板8が下方に行くに従ってバグフィルタ1の中央側の位置となるように傾斜配置されている。該下側本体部5の下端には、ロータリーバルブ9が備えられており、該ロータリーバルブ9を介して下側本体部5の内側に回収された塵埃をバグフィルタ1の外部に排出できるようになっている。
【0031】
次に、
図2~
図6を用いて、バグフィルタ1の内部構成について説明する。なお、
図2では、説明の便宜上、上板6及び上側側板7について、その外形のみ示している。
【0032】
上側本体部4は、
図2に示すように、その内部空間が上板6と略同形状をなす天井板10により、濾過室R1と清浄室R2とに仕切られている。該濾過室R1は、天井板10の下方空間、つまり、下側本体部5の各下側側板8、上側側板7及び天井板10で囲まれた空間であって、天井板10により天井壁、並びに、上側側板7及び下側側板8により側壁がそれぞれ構成されるようになっている。一方、清浄室R2は、天井板10の上方空間、つまり、上板6、上側側板7及び天井板10で囲まれた空間であって、上板6により天井壁、上側側板7により側壁、及び、天井板10により底壁がそれぞれ構成されるようになっている。
【0033】
天井板10には、
図3に示すように、上下に貫通する複数の第1貫通孔10aと、該第1貫通孔10aよりも小径の1つの連通孔10dとがそれぞれ形成されている。該連通孔10dは、天井板10の中央部分に形成される一方、各第1貫通孔10aは、連通孔10dを中心とした周方向に所定の間隔をあけて等間隔に設けられ、
図4に示すように、各第1貫通孔10aと連通孔10dとを介して濾過室R1と清浄室R2とが連通している。また、天井板10の下面における各第1貫通孔10aの外周側には、連通孔10dを中心とした環状をなすととともに、外周側に行くに従って次第に下方に位置するよう傾斜して延びる傘状をなす第1傘部10cが取り付けられている。本実施形態では、天井板10の下面及び第1傘部10cが天井面10bを構成している。
【0034】
天井面10bにおける各第1貫通孔10aに対応する位置、つまり、各第1貫通孔10aの周縁には、リテーナ12が吊設されている。各リテーナ12は、筒状の骨組み枠体をなし、その筒中心線が上下方向に延びる姿勢において、上端部分が天井面10bに固定されている。
【0035】
天井板10の下方には、中心線が上下に向く円板状をなす可動部材13が配設されており、該可動部材13は、その内周領域においてワイヤロープ14により昇降可能に吊持されている。該ワイヤロープ14は、上側本体部4内の略中央部分において上下方向に延びる姿勢で配索されており、天井板10の連通孔10dに挿通されるとともに、一端部分が可動部材13の中央部分に固定されている。また、ワイヤロープ14の可動部材13に固定されている下側領域は、ワイヤロープ14の上側領域に対して捩じることが可能となっている。これにより、ワイヤロープ14によって可動部材13を吊持した状態において、可動部材13の内周領域を中心として可動部材13を水平面に沿って回動させることができるようになっている。
【0036】
可動部材13の外周領域には、リテーナ12が挿通可能な上下方向に貫通する第2貫通孔13aが設けられ、該第2貫通孔13aは、可動部材13の中心線を中心として周方向に沿って複数設けられている。
【0037】
可動部材13の下面における各第2貫通孔13aの周縁には、下方に突出する環状突条部13cが設けられている。
【0038】
また、可動部材13の外周縁部分は、外周側に行くに従って次第に下方に位置するよう傾斜する傘状をなす、つまり、第1傘部10cに対応する形状をなす第2傘部13bが設けられている。さらに、第1傘部10cと第2傘部13bとの間には、
図4に示すように、シール部材15が設けられ、該シール部材15は、第1傘部10cと第2傘部13bとが近接した際(例えば、シール部材15が第1傘部10cと第2傘部13bとで圧縮されることにより変形した際)に両傘部の間隙を埋めることが可能となっている。
【0039】
濾布16は、上方に開口する袋状をなすとともに、リテーナ12の外形よりも大きな内部空間を有している。濾布16は、その上端開口周縁が可動部材13における環状突条部13cの外周面にバンド部材16aによって着脱可能に取り付けられるようになっていて、環状突条部13cに取り付けた状態で上下方向に延びる姿勢となるようになっている。また、該濾布16の内部空間には、天井板10の上方に配設されたエアノズル17(
図2参照)から圧縮空気が供給されるようになっていて、該圧縮空気により、濾布16の外面に付着した塵埃が払い落とされて、下側本体部5の内側に回収されるようになっている。なお、説明の便宜上、
図3~
図7では、エアノズル17が省略されている。
【0040】
また、上側本体部4の上面には、
図5に示すように、第1滑車18及び第2滑車19が取り付けられ、第1滑車18及び第2滑車19には、ワイヤロープ14が巻き掛けられている。該ワイヤロープ14は、その一端が可動部材13に固定される一方、他端が点検扉7bに固定されている。そして、点検扉7bの開閉動作により、該点検扉7bに固定されたワイヤロープ14が動作して、該ワイヤロープ14に固定された可動部材13が上下動することで、該可動部材13に取り付けられた濾布16が昇降するようになっている。本実施形態では、点検扉7bが閉状態のときは、濾布16を交換作業位置から取付完了位置まで上昇させる一方、点検扉7bが開状態のときは、濾布16を取付完了位置から交換作業位置まで下降させるようになっている。なお、
図1及び
図2では、説明の便宜上、ワイヤロープ14、第1滑車18及び第2滑車19を省略している。
【0041】
取付完了位置は、
図4及び
図5に示すように、濾布16がリテーナ12を下方から覆う使用状態となるように該リテーナ12に装着された状態の位置である。そして、濾布16が取付完了位置に位置している状態において、バグフィルタ1を稼働させると(例えば、図示しないファンを稼働させると)、
図4に示すように、濾過室R1に導入された含塵空気が濾布16の外側領域から内側領域に向けて通過することによって濾過されるようになっている。該濾布16により濾過されることで清浄になった空気は、濾布16の内側領域から天井板10の第1貫通孔10aを介して清浄室R2に送られ、該清浄室R2から排出部11を介してバグフィルタ1の外部に排出されるようになっている。本実施形態では、バグフィルタ1の稼働時において、天井板10の第1傘部10cと可動部材13の第2傘部13bとの間隙に設けられたシール部材15により、該間隙から含塵空気が濾布16を介さずに該濾布16の下流側に流れ出るのを阻止されるようになっている。
【0042】
一方、交換作業位置は、
図6に示すように、取付完了位置よりも下方、かつ、濾布16がリテーナ12の一部を覆った状態の位置である。該交換作業位置では、濾布16が点検口7aに対応する上下方向位置まで下降されているので、作業者は、点検口7aを介して濾過室R1にアクセスすることで、濾布16の交換作業を簡易に行うことが可能となる。
【0043】
次に、
図5~
図7を用いて、濾布16の交換作業方法について説明する。
【0044】
濾布16が交換前の状態、つまり、バグフィルタ1の稼働状態では、
図5に示すように、点検扉7bが閉状態となっているため、濾布16が取付完了位置に位置している。そして、作業者が濾布16を交換するために、バグフィルタ1を停止させた後に点検扉7bを開けると、
図6に示すように、点検扉7bの開動作に連動したワイヤロープ14の動作により、該ワイヤロープ14に固定された可動部材13が下降する。これにより、可動部材13に取り付けられた使用後の濾布16が取付完了位置から交換作業位置まで下降しながらリテーナ12から自動的に取り外される。
【0045】
次に、作業者は、交換作業位置にある使用後の濾布16を可動部材13から取り外した後、使用前の濾布16を可動部材13に装着する。
【0046】
しかる後、作業者が点検扉7bを閉じると、
図7に示すように、点検扉7bの閉動作に連動したワイヤロープ14の動作により、該ワイヤロープ14に固定された可動部材13が上昇する。これにより、可動部材13に取り付けられた使用前の濾布16が交換作業位置から取付完了位置まで上昇しながらリテーナ12に自動的に取り付けられて、濾布16の交換作業が完了する。
【0047】
以上より、本実施形態では、可動部材13及びワイヤロープ14によって使用済みの濾布16が交換作業位置まで下ろされると、使用済みの濾布16が濾過室R1の床面に接近した位置においてリテーナ12から取り外される途中の状態になるので、作業者による濾布16の交換作業が濾過室R1の床面に近い位置で可能になる。したがって、特許文献1のように濾布及びリテーナを濾過室からバグフィルタの外側へと取り出す必要がないので、例えば、製粉工場内の比較的狭いスペースにバグフィルタ1が設置された場合であっても濾布16の交換を適切に実施することができる。また、可動部材13及びワイヤロープ14によって使用前の濾布16を上昇させることでリテーナ12に対して濾布16が自動的に取り付けられるようになる。このように、作業者は、特許文献1の如き使用済みの濾布をリテーナから抜き取ったり、或いは、リテーナを覆うように使用前の濾布を取り付けたりする必要がなくなるので、濾布16の交換作業を簡易に行うことができる。
【0048】
また、可動部材13を昇降させると、リテーナ12が第2貫通孔13a周縁に摺接しながら可動部材13の昇降動作を案内するようになる。これにより、濾布16を取付完了位置へとスムーズに到達させることができるようになり、効率良くリテーナ12に濾布16を取り付けることができる。
【0049】
また、濾布16を着脱させる環状突条部13cが可動部材13の下方に突出しているので、濾布16を可動部材13に対して下方から着脱させる際の着脱作業の位置が作業者に近くなる。したがって、作業者による濾布16の交換作業を簡易に行うことができる。
【0050】
また、濾布16が取付完了位置となるまで可動部材13を上昇させると、可動部材13と天井面10bとの間隙がシール部材15により確実にシールされるようになる。したがって、バグフィルタ1の稼働時に上記間隙から含塵空気が濾布16を介さずに濾布16の下流側に流れ出てしまい、バグフィルタ1から含塵空気が排出されてしまうのを防ぐことができる。
【0051】
また、濾布16の交換の際、点検扉7bを閉状態から開状態にすると、可動部材13及びワイヤロープ14により濾布16が自動的に下降するので、交換作業位置において可動部材13に取り付けられた使用済みの濾布16を使用前の濾布16に交換することができる。また、使用前の濾布16を可動部材13に取り付けた後、点検扉7bを開状態から閉状態にすると、可動部材13及びワイヤロープ14により濾布16が自動的に上昇するようになるので、点検扉7bの開閉動作以外に特別な操作を要さずに使用前の濾布16をリテーナ12にセットすることができる。
【0052】
また、交換作業位置における交換後の使用前の濾布16がリテーナ12から完全には離れていない状態になる。したがって、濾布16を上昇させる際に、使用前の濾布16がリテーナ12を覆うように移動せずに当該リテーナ12から外れた状態のまま上昇してしまって取り付けに失敗するといったことが回避されるようになり、濾布16の交換作業を確実に行うことができる。
【0053】
なお、本実施形態では、交換作業位置は、濾布16がリテーナ12の一部を覆った状態の位置としていたが、濾布16がリテーナ12から完全に取り外された状態の位置としてもよい。このようにすることで、作業者による濾布16の交換作業が濾過室R1の床面に近い位置で可能となり、濾過室R1内において梯子等を用いずに濾布16の交換作業を簡易に行うことができる。また、例えば、作業者が点検口7aを介して濾過室R1にアクセスした際、交換作業位置まで下ろした状態の可動部材13をワイヤロープ14に取り付けられた内周領域を中心として水平面に沿って回動させて可動部材13において周方向に沿って配設された各濾布16を作業者の正面へと順次移動させることが可能となる。これにより、濾過室R1において点検口7aからアクセスし難い遠い箇所に濾布16が取り付けられている場合であっても作業者まで容易に濾布16を引き寄せることができ、簡易に濾布16の交換作業を行うことができる。
【0054】
また、本実施形態では、バグフィルタ1の本体部2は、略八角柱形状をなしていたが、略円柱形状をなすようにしてもよい。
【0055】
また、本実施形態では、ワイヤロープ14に吊持された可動部材13に濾布16を取り付けるようにしていたが、ワイヤロープ14に濾布16を固定することにより可動部材13を省略するようにしてもよい。
【0056】
また、本実施形態では、円板状をなす可動部材13が設けられていたが、該可動部材13に代えて、多角形状或いは楕円状をなす可動部材を備えるようにしてもよい。
【0057】
また、本実施形態では、可動部材13には、第2貫通孔13aが周方向に沿って複数設けられていたが、可動部材13の径方向に沿って第2貫通孔13aを複数設けるようにしてもよい。
【0058】
また、本実施形態では、ワイヤロープ14によって可動部材13が吊持されていたが、可動部材13を吊持可能であればワイヤロープ14以外であってもよく、例えば、チェーンやスリングであってもよい。
【0059】
また、本実施形態では、濾布16は、点検扉7bの開閉状態に応じて昇降するようになっていたが、点検扉7bの開閉状態にかかわらず濾布16を昇降するようにしてもよく、例えば、手巻き式或いは電動式のウインチに巻き掛けられたワイヤロープにより濾布16を昇降させるようにしてもよい。
【0060】
また、本実施形態におけるワイヤロープ14に代えて、
図8及び9の変形例で示す上下動機構20を採用してもよい。該上下動機構20は、パンタグラフ式のリンク構造21を備えている。該リンク構造21は、上端が天井面10bに固定されているとともに、下端が可動部材13の上面に固定されている。また、リンク構造21には、螺子孔部(不図示)が設けられている。該螺子孔部は、略水平方向に延びるアジャストボルト22が挿通されている。該アジャストボルト22には、その外面に螺子山部(不図示)が設けられており、該螺子山部が螺子孔部と螺合している、つまり、螺子機構を構成している。そして、例えば、工具(図示しない)を用いてアジャストボルト22を一側に回転させると、上記の螺子機構によりリンク構造21が上下方向に屈曲した第1状態(
図8)とされる。一方、例えば、工具(不図示)を用いてアジャストボルト22を他側に回転させると、上記螺子機構によりリンク構造21が上下方向に伸長した第2状態(
図9)とされる。換言すると、アジャストボルト22を回転させることで、可動部材13に取り付けられた濾布16が取付完了位置となる第1状態と、可動部材13に取り付けられた濾布16が交換作業位置となる第2状態とを切り換えることが可能となっている。このように構成された
図8及び9の変形例によれば、パンタグラフ式のリンク構造21を用いて可動部材13を吊持することで、可動部材13がワイヤロープ14により吊持されている場合に比べて、可動部材13を水平状態に維持しながら上下動させることが可能となる。これにより、可動部材13を上下動させる際、該可動部材13が他の部品等(例えば、リテーナ12)と干渉するのを抑制することができる。
【0061】
図8及び9の変形例では、リンク構造21を上下方向に伸縮するためにアジャストボルト22を採用したが、これに限られるものではなく、他の構成でも良い。例えば、リンク構造21が上下方向に伸長するように付勢する付勢部材(例えば、スプリング)が設けられ、該付勢部材の付勢力を逆らうように上下方向にリンク構造21を屈曲させるワイヤ機構を設けても良い。
【0062】
また、
図8及び9に示す変形例では、可動部材13が上側側板7の内面に沿う形状をなしている(例えば、平面視で略八角形)。そして、可動部材13の外周には、清掃部23(例えば、ブラシ、ゴム製のスクレーパ)が取り付けられている。これにより、可動部材13が下動した際に、清掃部23により上側側板7の内面に付着した粉塵等が掻き落とされるようになるので、該上側側板7の内面を清掃することが可能となる。したがって、例えば、点検時等に作業者がバグフィルタ1の内部の清掃に費やす時間を削減することができる。
【0063】
また、本実施形態におけるワイヤロープ14に代えて、
図10及び11の別の変形例で示す他の上下動機構24を採用してもよい。該他の上下動機構24は、シリンダ25及びピストンロッド26を備えている。シリンダ25は、例えば、エアシリンダや油圧シリンダであり、圧縮エアや油圧を制御することで、ピストンロッド26を上下動させることが可能となっている。ピストンロッド26は、その下端が可動部材13の上面に固定されている。換言すると、可動部材13は、他の上下動機構24により、吊持されるとともに上下動可能に構成されている。
【0064】
そして、他の上下動機構24は、シリンダ25によりピストンロッド26を上下動させることで、該ピストンロッド26に固定された可動部材13を可動部材13に取り付けられた濾布16が取付完了位置となる第1状態(
図10)と、可動部材13に取り付けられた濾布16が交換作業位置となる第2状態(
図11)とを切り換えることが可能となっている。
【0065】
また、
図10及び11に示す別の変形例では、ガイド27及びガイド支持部28を更に備えている。ガイド27は、上下方向に延びる円柱状をなし、かつ、その下端が可動部材13の上面に固定されている。ガイド支持部28は、その下端が天井板10の上面に固定されており、その内部にガイド27を挿通させることが可能な挿通孔(不図示)が設けられている。なお、
図10及び11では図示されていないが、天井板10には、ピストンロッド26及びガイド27を挿通させることが可能な挿通孔が設けられている。さらに、
図10及び11に示す別の変形例では、
図8及び9に示す変形例と同様に清掃部23が設けられている。
【0066】
以上より、
図10及び11に示す別の変形例によれば、可動部材13が上下動する際、該可動部材13に固定されたガイド27の上下動がガイド支持部28によって案内されるようになるので、可動部材13を水平状態に維持しながらスムーズに上下動させることができる。これにより、可動部材13を上下動させる際、該可動部材13が他の部品等(例えば、リテーナ12)と干渉するのを抑制することができる。さらに、
図10及び11に示す別の変形例では、シリンダ25(例えば、エアシリンダや油圧シリンダ)を用いて可動部材13を上下動させているので、該上下動させる作業が作業者の負担となるのを抑えることができる。
【0067】
なお、
図8及び9に示す変形例、並びに、
図10及び11に示す別の変形例では、清掃部23が設けられているが、該清掃部23を設けなくてもよい。
【0068】
図10及び11に示す別の変形例で示すガイド27及びガイド支持部28を
図8及び
図9に示す変形例に加えても良い。その場合には、ガイド27及びガイド支持部28を複数設けても良い。
【0069】
本実施形態で示すワイヤロープ14、
図8及び9の変形例で示す上下動機構20及び
図10及び11の別の変形例で示す他の上下動機構24は例示であって、これらに限られるものではない。可動部材13を上下動させることが可能であれば他の機構を採用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、天井面に吊設されたリテーナを袋状の濾布で覆って使用する外面濾過方式のバグフィルタに適している。
【符号の説明】
【0071】
1 バグフィルタ
10b 天井面
12 リテーナ
13 可動部材(昇降部)
13a 第2貫通孔(貫通孔)
13c 環状突条部
14 ワイヤロープ(吊持部、昇降部)
15 シール部材
16 濾布
20 上下動機構(吊持部、昇降部)
24 他の上下動機構(吊持部、昇降部)