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特開2024-35066未加硫ゴム用液状防着剤組成物、未加硫ゴム用液状防着剤組成物水希釈液、および未加硫ゴム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035066
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】未加硫ゴム用液状防着剤組成物、未加硫ゴム用液状防着剤組成物水希釈液、および未加硫ゴム
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/14 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
C08L101/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091359
(22)【出願日】2023-06-02
(31)【優先権主張番号】P 2022137161
(32)【優先日】2022-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390029458
【氏名又は名称】ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201732
【弁理士】
【氏名又は名称】松縄 正登
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(74)【代理人】
【識別番号】100227019
【弁理士】
【氏名又は名称】安 修央
(72)【発明者】
【氏名】長戸 大典
(72)【発明者】
【氏名】勢旗 志郎
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AB031
4J002AB052
4J002BE021
4J002BG011
4J002CH053
4J002EG026
4J002EG036
4J002EG046
4J002EV237
4J002FD207
4J002FD316
4J002HA06
(57)【要約】
【課題】 本発明は、防着性に優れ、かつ、送液性と安定性とのバランスが優れる未加硫ゴム用液状防着剤組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】 前記目的を達成するために、本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物は、
下記成分(A)~(D)および水を含み、
下記成分(A)と下記成分(D)との質量比(A)/(D)が5~500であることを特徴とする。

(A)成分(D)以外の水溶性高分子
(B)金属石鹸
(C)界面活性剤
(D20℃における2質量%水溶液のチクソトロピーインデックス(2rpm/20rpm)が、4.0以上である水溶性高分子から選ばれる1種以上の化合物
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)~(D)および水を含み、
下記成分(A)と下記成分(D)との質量比(A)/(D)が5~500であることを特徴とする未加硫ゴム用液状防着剤組成物。

(A)成分(D)以外の水溶性高分子
(B)金属石鹸
(C)界面活性剤
(D)20℃における2質量%水溶液のチクソトロピーインデックス(2rpm/20rpm)が、4.0以上である水溶性高分子から選ばれる1種以上の化合物
【請求項2】
水以外の成分の全質量100質量%に対し、
前記成分(A)を20質量%以上、前記成分(B)を20~60質量%、前記成分(C)を10~25質量%、および、前記成分(D)を0.01~10質量%を含む、請求項1記載の未加硫ゴム用液状防着剤組成物。
【請求項3】
前記成分(A)と前記成分(B)との質量比(A)/(B)が0.2~4.0の範囲である、請求項1または2記載の未加硫ゴム用液状防着剤組成物。
【請求項4】
請求項1または2記載の未加硫ゴム用液状防着剤組成物と、水と、を含むことを特徴とする未加硫ゴム用液状防着剤組成物水希釈液。
【請求項5】
請求項1または2記載の未加硫ゴム用液状防着剤組成物における前記成分(A)~(D)が表面に付着していることを特徴とする未加硫ゴム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未加硫ゴム用液状防着剤組成物、未加硫ゴム用液状防着剤組成物水希釈液、および未加硫ゴムに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴムの生産加工の現場においては、ゴム(例えば、未加硫ゴム)の密着防止目的で、ゴムの表面に防着剤を付着させることが行われる。
【0003】
ゴム用防着剤としては、無機粉末を主成分とするゴム用防着剤が広く用いられている。これらは、一般に、水希釈液の形態にしてからゴム表面に付着させて用いることができる(特許文献1~2)。また、無機粉末に由来する粉塵を低減するために、水溶性高分子等を使用した防着剤も、種々提案されている。例えば、特許文献3および4では、水溶性高分子(アルギン酸ナトリウム、CMC、ポリアクリル酸ナトリウム、PVA等)、水溶性多糖類(キサンタンガム)等を配合して防着剤水希釈液の粘度を上昇させ、ゴム表面への防着剤の付着性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭50-149770号公報
【特許文献2】特開2013-001720号公報
【特許文献3】特開昭62-032127号公報
【特許文献4】特開2009-161667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
防着剤の付着性を向上させるためには、未加硫ゴム用液状防着剤組成物の粘度を上げることが有効である。一方で、粘度が高くなりすぎると、未加硫ゴム用液状防着剤組成物の流動性が低下する等の理由により、送液性(ハンドリング性)に影響が出るおそれがある。
【0006】
また、未加硫ゴム用液状防着剤組成物の粘度を下げるために水溶性高分子を減量した場合、未加硫ゴム用液状防着剤組成物の安定性が低下するおそれがある。
【0007】
このように、これまでの水溶性高分子と有機粒子のような滑剤とを使用した組成物では、防着性を維持しつつ、送液性と安定性とを両立することが難しかった。
【0008】
そこで、本発明は、防着性に優れ、かつ、送液性と安定性とのバランスが優れる未加硫ゴム用液状防着剤組成物、未加硫ゴム用液状防着剤組成物水希釈液、および未加硫ゴムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物は、
下記成分(A)~(D)および水を含み、
下記成分(A)と下記成分(D)との質量比(A)/(D)が5~500であることを特徴とする。

(A)成分(D)以外の水溶性高分子
(B)金属石鹸
(C)界面活性剤
(D)20℃における2質量%水溶液のチクソトロピーインデックス(2rpm/20rpm)が、4.0以上である水溶性高分子から選ばれる1種以上の化合物
【0010】
本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物水希釈液は、本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物と、水と、を含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の未加硫ゴムは、本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物における前記成分(A)~(D)が表面に付着していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、防着性に優れ、かつ、送液性と安定性とのバランスが優れる未加硫ゴム用液状防着剤組成物、未加硫ゴム用液状防着剤組成物水希釈液、および未加硫ゴムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について、例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定されない。
【0014】
本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物は、例えば、水以外の成分の全質量100質量%に対し、前記成分(A)を20質量%以上、前記成分(B)を20~60質量%、前記成分(C)を10~25質量%、および、前記成分(D)を0.01~10質量%含んでいてもよい。これにより、例えば、優れた防着性および送液性と安定性とのバランスに加えて、抑泡性とコストとのバランスにも優れた未加硫ゴム用液状防着剤となる。
【0015】
本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物は、例えば、前記成分(A)と前記成分(B)との質量比(A)/(B)が0.2~4.0の範囲であってもよい。これにより、例えば、優れた防着性および送液性と安定性とのバランスに加えて、飛散性とのバランスにも優れた未加硫ゴム用液状防着剤となる。
【0016】
本発明の未加硫ゴムの防着処理方法は、例えば、本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物における前記成分(A)~(D)を未加硫ゴム表面に付着させて防着処理する防着処理工程を含むことを特徴とする、未加硫ゴムの防着処理方法であってもよい。前記防着処理工程は、例えば、本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物または本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物水希釈液を前記未加硫ゴムの表面に付着させ、さらに水を揮発させることにより、前記未加硫ゴムの表面に本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物における前記成分(A)~(D)を付着させる工程であってもよい。より具体的には、前記防着処理工程は、例えば、本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物を未加硫ゴムの表面に付着させる未加硫ゴム用液状防着剤組成物付着工程と、前記未加硫ゴムの表面の前記未加硫ゴム用液状防着剤組成物を乾燥して、被膜を未加硫ゴムの表面に形成する乾燥工程とを有していてもよい。
【0017】
以下、本発明の具体例について、さらに詳細に説明する。
【0018】
[1.未加硫ゴム用液状防着剤組成物]
本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物は、前述のとおり、
下記成分(A)~(D)および水を含み、
下記成分(A)と下記成分(D)との質量比(A)/(D)が5~500であることを特徴とする。

(A)成分(D)以外の水溶性高分子
(B)金属石鹸
(C)界面活性剤
(D)20℃における2質量%水溶液のチクソトロピーインデックス(2rpm/20rpm)が、4.0以上である水溶性高分子から選ばれる1種以上の化合物
【0019】
本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物は、前述の組成を有することにより、防着性に優れ、かつ、送液性と安定性とのバランスが優れる。
【0020】
以下、本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物の各成分について説明する。
【0021】
[1-1.成分(A):成分(D)以外の水溶性高分子]
前記成分(A)は、前述のとおり、前記成分(D)以外の水溶性高分子である。本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物において、前記成分(A)すなわち前記成分(D)以外の水溶性高分子(以下「水溶性高分子(A)」という場合がある。)とは、水中に入れる、または水中に入れた後に加熱をすることで、本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物中で分散または溶解することが可能な高分子化合物である。これにより、例えば、未加硫ゴムへの被覆効果が得られ、防着効果が得られる。このように、前記成分(A)は、例えば、皮膜化剤として働く。また、例えば、前記成分(A)と前記成分(B)との併用により、防着性を発揮する。
【0022】
本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物において、水溶性高分子(A)の含有率は、特に限定されないが、例えば、水以外の成分(固形分)の全質量に対し、下限が20質量%以上であってもよく、例えば、25質量%、30質量%以上、40質量%以上または50質量%以上でもよく、また、例えば、70質量%以下、60質量%以下、40質量%以下または35質量%以下であってもよい。水溶性高分子(A)の含有率が、水以外の成分の全質量に対し、20質量%以上であることにより、例えば、未加硫ゴムへの皮膜形成効果に優れる。また、本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物は、水溶性高分子(A)の含有率が、水以外の成分の全質量に対し、70質量%以下であることにより、例えば、乾燥性に優れ、速く乾燥させることができる。
【0023】
本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物中における前記成分(A)の含有率(配合量)は、特に限定されないが、例えば、本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物の全質量に対し1~20質量%、2~20質量%、3~20質量%、4~18質量%、または5~16質量%であってもよい。本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物の粘度が上昇し過ぎてハンドリングが悪化することを防止するためには、前記成分(A)の含有率が、本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物の全質量に対し20質量%以下であることが好ましい。
【0024】
水溶性高分子(A)は、例えば、水溶性高分子(A)の2質量%水溶液の25℃における粘度が3~300mPa・sとなる水溶性高分子であってもよい。前記2質量%水溶液の25℃における粘度が3mPa・s以上となる水溶性高分子であることにより、例えば、未加硫ゴムへの付着量向上という効果が得られる。前記2質量%水溶液の粘度が300mPa・s以下となる水溶性高分子であることにより、例えば、乾燥性に優れるという効果が得られる。前記2質量%水溶液の粘度は、例えば、10mPa・s以上または100mPa・s以上であってもよいし、200mPa・s以下または100mPa・s以下であってもよい。
【0025】
水溶性高分子(A)としては、特に限定されないが、例えば、25℃の水100gに対する溶解度の下限が1g以上、10g以上、または50g以上の高分子であってもよい。また、本発明において、「高分子」は、特に限定されないが、質量平均分子量の下限が、例えば、1000以上、5000以上、または1万以上であってもよく、質量平均分子量の上限は特に限定されないが、例えば、50万以下であってもよい。
【0026】
水溶性高分子(A)の種類は特に限定されず、また、1種類のみ用いても複数種類併用してもよい。水溶性高分子(A)は、例えば、合成水溶性高分子でもよいし、天然水溶性高分子でもよい。「合成水溶性高分子」は、例えば、天然に存在しない化学構造の高分子を人工的に合成したものでも、天然に存在する化学構造の高分子を人工的に合成したものでもよい。また、「天然水溶性高分子」は、例えば、天然に存在する化学構造の高分子を天然から抽出、生成等したものでもよい。合成水溶性高分子としては、特に限定されないが、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、水溶性ウレタン樹脂、水溶性メラミン樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性ブタジエン樹脂、水溶性フェノール樹脂等が挙げられる。天然水溶性高分子としては、特に限定されないが、例えば、タンパク質、ウェランガム、タマリンドガム、タマリンドシードガム、トラガントガム、アラビアガム、カラギーナン、ラムザンガム、サクシノグリカン、タラガム、カラヤガム、ペクチン、アルギン酸誘導体、セルロースエーテル類等が挙げられる。
【0027】
前記成分(A)は、好ましくは、ポリビニルアルコール、CMC、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる群から選択される少なくとも一つであり、さらに好ましくは、メチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースの少なくとも一方である。本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物の未加硫ゴムへの付着量向上の観点からは、前記成分(A)の粘度が低過ぎないことが好ましい。本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物の乾燥性向上の観点からは、前記成分(A)の粘度が高過ぎないことが好ましい。なお、本発明において、未加硫ゴム用液状防着剤組成物の「付着量」は、未加硫ゴム用液状防着剤組成物における水以外の全成分の、未加硫ゴム表面に対する付着量をいう。
【0028】
[1-2.成分(B):金属石鹸]
本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物において、成分(B)は、前述のとおり、金属石鹸である。金属石鹸(B)は、例えば、高級脂肪酸またはその誘導体の金属塩のうち、ナトリウム塩およびカリウム塩以外の塩であり、例えば、前記金属塩のうちリチウム塩を除くアルカリ金属塩以外の塩である。金属石鹸(B)は滑剤であるとともに、前記成分(A)との分散がよくなると防着性が向上する。
【0029】
金属石鹸(B)は、前述のとおり、例えば、高級脂肪酸またはその誘導体の金属塩のうち、ナトリウム塩およびカリウム塩以外の塩であり、例えば、前記金属塩のうちリチウム塩を除くアルカリ金属塩以外の塩であり、例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、アルミニウム塩、リチウム塩、バリウム塩である。高級脂肪酸とは、例えば、炭素数8以上、12以上、14以上の脂肪酸であり、炭素数の上限値は、特に限定されないが、例えば、炭素数22以下、20以下、18以下である。高級脂肪酸の誘導体とは、例えば、1または複数の置換基で置換された高級脂肪酸でもよい。金属石鹸(B)の具体例としては、例えば、カプリル酸カルシウム、カプリル酸リチウム、カプリル酸亜鉛、カプリル酸マグネシウム、カプリン酸カルシウム、カプリン酸リチウム、カプリン酸亜鉛、カプリン酸マグネシウム、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸リチウム、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸マグネシウム、ラウリン酸アルミニウム、ミリスチン酸カルシウム、ミリスチン酸リチウム、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、パルミチン酸カルシウム、パルミチン酸リチウム、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、トリオクタデカン酸アルミニウム、ジオクタデカン酸アルミニウム、モノオクタデカン酸アルミニウム、オクタデカン酸カルシウム、オクタデカン酸リチウム、オクタデカン酸亜鉛、オクタデカン酸マグネシウム、オレイン酸カルシウム、オレイン酸リチウム、オレイン酸亜鉛、オレイン酸マグネシウム、ベヘン酸カルシウム、ベヘン酸リチウム、ベヘン酸亜鉛、ベヘン酸マグネシウム、12-ヒドロキシステアリン酸カルシウム、12-ヒドロキシステアリン酸リチウム、12-ヒドロキシステアリン酸亜鉛、12-ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、14-オクタデカン酸カルシウム、14-オクタデカン酸リチウム、14-オクタデカン酸亜鉛、14-オクタデカン酸マグネシウム、8-オクタデカン酸カルシウム、8-オクタデカン酸リチウム、8-オクタデカン酸亜鉛、8-オクタデカン酸マグネシウム、6-オクタデカン酸カルシウム、6-オクタデカン酸リチウム、6-オクタデカン酸亜鉛、6-オクタデカン酸マグネシウム、ヤシ脂肪酸カルシウム、ヤシ脂肪酸リチウム、ヤシ脂肪酸亜鉛、ヤシ脂肪酸マグネシウム、パーム油脂肪酸カルシウム、パーム油脂肪酸リチウム、パーム油脂肪酸亜鉛、パーム油脂肪酸マグネシウム、パーム核油脂肪酸カルシウム、パーム核油脂肪酸リチウム、パーム核油脂肪酸亜鉛、パーム核油脂肪酸マグネシウム、牛脂脂肪酸カルシウム、牛脂脂肪酸リチウム、牛脂脂肪酸亜鉛、牛脂脂肪酸マグネシウム、ひまし油脂肪酸カルシウム、ひまし油脂肪酸リチウム、ひまし油脂肪酸亜鉛、ひまし油脂肪酸マグネシウム等が挙げられる。
【0030】
金属石鹸(B)は、好ましくは、平均炭素鎖長が12~22の脂肪酸の2価金属塩であり、より好ましくは、炭素数が14~20、または16~18の高級脂肪酸の2価金属塩である。また、金属石鹸(B)は、好ましくは、カルシウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩である。脂肪酸は飽和脂肪酸でも不飽和脂肪酸でもよいが、飽和脂肪酸が好ましい。その中でも、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸亜鉛が、流通量が多く低コストに入手しやすいという観点から好ましい。
【0031】
金属石鹸(B)の含有率(配合量)は、特に限定されないが、本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物の全質量に対し、例えば、1~20質量%、2~20質量%、または3~18質量%であり、水以外の全成分(固形分)の全質量に対し、例えば、20~60質量%である。水以外の全成分の全質量に対し、金属石鹸(B)の質量が20質量%以上であると、防着皮膜の滑性の観点から好ましく、60質量%以下であると、未加硫ゴム用液状防着剤組成物の粉末飛散抑制、および、高粘度によるハンドリング性の悪化抑制の観点から好ましい。金属石鹸(B)の含有率(配合量)は、水以外の全成分(固形分)の全質量に対し、例えば、25質量%以上または30質量%以上でもよく、例えば、50質量%以下、45質量%以下または40質量%以下であってもよい。
【0032】
また、前記成分(A)と金属石鹸(B)との質量比(A)/(B)は、特に限定されないが、例えば、前述のとおり、0.2から4.0の範囲であるとよい。0.2以上であれば、未加硫ゴム用液状防着剤組成物の粉末飛散を抑制しやすく、4.0以下であれば、前記成分(A)と金属石鹸(B)との混合分散による防着性向上効果が得られやすい。質量比(A)/(B)の下限値は、より好ましくは、0.3以上、または0.5以上であり、上限値は、より好ましくは、4.0以下、または3.0以下である。
【0033】
[1-3.成分(C):界面活性剤]
本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物において、前記成分(C)すなわち界面活性剤(以下「界面活性剤(C)」という場合がある。)の含有率は、特に限定されないが、本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物の全質量に対し、例えば、1~10質量%、または2~8質量%であり、水以外の全成分(固形分)の全質量に対し、例えば、10~25質量%である。界面活性剤(C)の含有率が、水以外の成分の全質量に対し、10質量%以上であることにより、例えば、金属石鹸(B)の分散効果が向上し分離しにくくなり、25質量%以下であると、例えば、分散性が適度に抑制されて付着性が良好になり、防着性も良好になる。界面活性剤(C)の含有率は、水以外の成分の全質量に対し、例えば、10質量%以上または12質量%以上でもよく、例えば、20質量%以下、18質量%以下または16質量%以下であってもよい。なお、未加硫ゴムへの付着性の測定方法は、特に限定されないが、例えば、後述の実施例に記載の測定方法により測定できる。
【0034】
界面活性剤(C)は、例えば、本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物に水への分散性を付与するとともに、濡れ性を向上させることで未加硫ゴムへの付着性を向上させる。界面活性剤(C)は、特に限定されず、1種類のみ用いても複数種類併用してもよく、例えば、アニオン界面活性剤およびノニオン界面活性剤の少なくとも一方でもよい。前記アニオン界面活性剤は、特に限定されないが、例えば、下記(i)~(iv)等が挙げられる。また、前記ノニオン界面活性剤は、特に限定されないが、例えば、下記(v)等が挙げられる。

(i)高級脂肪酸塩、アルキル(またはアルケニル)エーテルカルボン酸塩、ポリオキシアルキレンエーテルカルボン酸塩、アルキル(またはアルケニル)アミドエーテルカルボン酸塩、アシルアミノカルボン酸塩等のカルボン酸型アニオン界面活性剤
(ii)高級アルコール硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレン高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、グリセリン脂肪酸エステルモノ硫酸エステル塩等の硫酸エステル型アニオン界面活性剤
(iii)アルカンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-スルホ脂肪酸エステル塩、ジアルキルスルホコハク酸塩等のスルホン酸型アニオン界面活性剤
(iv)アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルリン酸エステル塩、グリセリン脂肪酸エステルモノリン酸エステル塩等のリン酸エステル型アニオン界面活性剤
(v)ポリオキシアルキレンアルキルエーテル型のノニオン界面活性剤
【0035】
アニオン界面活性剤の対イオンは、特に限定されないが、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミンが好ましい。これらは、1種類のみ用いても複数種類併用してもよい。
【0036】
アニオン界面活性剤としては、未加硫ゴムの表面との濡れ性により優れる防着剤組成物が得られることから、ジアルキルスルホコハク酸塩が好ましく、ジオクチルスルホサクシネートNa塩がより好ましい。
【0037】
ノニオン界面活性剤は、特に限定されないが、本発明では、例えば、下記式(1)で表されるノニオン界面活性剤を用いることができる。下記式(1)のノニオン界面活性剤は、アニオン界面活性剤とともに、防着剤組成物の未加硫ゴムの表面に対する表面張力を低下させることに加えて、防着剤組成物の未加硫ゴムの表面への付着性を効果的に高める作用を奏するものと推測される。ただし、この推測は、本発明をなんら限定しない。

RO-(AO)-H (1)
【0038】
前記式(1)中、Rは、炭素数が8~18の脂肪族炭化水素基を示す。該脂肪族炭化水素基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。また、飽和、不飽和のいずれであってもよい。Rの炭素数は、成分(A)の分散性に優れる点から、好ましくは12~16であり、12~13がさらに好ましい。AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基を示し、nはAOの平均付加モル数である。nは、例えば、1~30、1~25または2~15である。具体的には、界面活性能が低下し、成分(A)の分散性が低下することを防止する観点からは、nは、1以上である(すなわち、0ではない)。また、親水性が高くなりすぎることによる付着性低下を防止する観点からは、nは、30以下、または25以下である。nが、1~30の範囲または1~25の範囲であれば、成分(A)の分散性がさらに向上し、かつ、未加硫ゴム表面の疎水性が高い場合にも、未加硫ゴム用液状防着剤組成物の乾燥被覆に充分な粘弾性を与えることで付着性を向上させるものと推測される。ただし、この推測は、本発明をなんら限定しない。
【0039】
炭素数2~4のオキシアルキレン基とは、例えば、炭素数2~4のアルキレンオキサイドが付加してなる(付加重合により形成される)重合単位である。炭素数2~4のオキシアルキレン基としては、具体的には、エチレンオキサイドが付加してなるオキシエチレン基(EO)、プロピレンオキサイドが付加してなるオキシプロピレン基(PO)、および、ブチレンオキサイドが付加してなるオキシブチレン基(BO)がある。(AO)は、その構造中に、少なくともオキシエチレン基を含む。(AO)が、オキシエチレン基(EO)と、オキシプロピレン基(PO)と、オキシブチレン基(BO)とのうち複数種類を含む場合は、これらの基はブロック状に配列していても、ランダムに配列していてもよい。好ましい(AO)は、親水性、疎水性のバランスに優れる点から、オキシエチレン基(EO)のみからなる。
【0040】
ノニオン界面活性剤の具体例としては、特に限定されないが、例えば、ラウリルエーテルEO、セチルエーテルEO、ステアリルエーテルEO、オレイルエーテルEO、デシルエーテルEO、イソデシルエーテルEO、トリデシルエーテルEO、セカンダリーアルコールエーテルEO、合成アルコールエーテルEOPO、ラウリルエーテルEOPO、デシルエーテルEOPO、イソデシルエーテルEOPO、トリデシルエーテルEOPO、ステアリルエーテルEOPO等が挙げられる。
【0041】
[1-4.成分(D)]
前記成分(D)は、前述のとおり、20℃における2質量%水溶液のチクソトロピーインデックス(2rpm/20rpm)(以下、単に「TI値」という場合がある。)が、4.0以上である水溶性高分子から選ばれる1種以上の化合物である。なお、前記TI値は、例えば、次のように測定することができる。水98gに水溶性高分子2gを加え、80℃で30分混合させて完全に溶解させた後、測定予定温度まで冷却する。その後、作成した水溶液をBH粘度計にて回転数を2rpm、20rpmに設定し粘度を測定する。それぞれ得られた粘度値を次式(2rpmで得られた粘度値/20rpmで得られた粘度値)でもとめる。TI値は、特に限定されないが、例えば、4.0以上、または6.0以上でもよく、例えば、15.0以下、12.0以下、10.0以下、または8.0以下であってもよい。これにより、例えば、本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物の安定化効果が得られる。このように、前記成分(D)は、例えば、安定化剤として働く。
【0042】
前記成分(D)の含有率は、特に限定されないが、本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物の全質量に対し、例えば、0.01~0.8質量%、0.03~0.6質量%、または0.05~0.5質量%であり、水以外の全成分(固形分)の全質量に対し、例えば、0.01~10質量%であってもよい。前記成分(D)の含有率が、水以外の成分の全質量に対し、0.01質量%以上であることにより、例えば、本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物が分離しにくくなり、10質量%以下であると、例えば、本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物の粘度が上昇し過ぎてハンドリングが悪化することを防止することができる。前記成分(D)の含有率は、水以外の成分の全質量に対し、例えば、0.1質量%以上、または0.5質量%以上でもよく、例えば、8.0質量%以下、または4.0質量%以下であってもよい。
【0043】
前記成分(D)は、例えば、前記成分(D)の2質量%水溶液の25℃における粘度が3~300mPa・sとなる水溶性高分子であってもよい。前記2質量%水溶液の25℃における粘度が3mPa・s以上となる水溶性高分子であることにより、例えば、未加硫ゴムへの付着量向上という効果が得られる。前記2質量%水溶液の粘度が300mPa・s以下となる水溶性高分子であることにより、例えば、乾燥性に優れるという効果が得られる。前記2質量%水溶液の粘度は、例えば、10mPa・s以上または100mPa・s以上であってもよいし、200mPa・s以下または100mPa・s以下であってもよい。
【0044】
前記成分(D)としては、特に限定されないが、例えば、25℃の水100gに対する溶解度の下限が1g以上、10g以上、または50g以上の高分子であってもよい。
【0045】
前記成分(D)の種類は特に限定されず、また、1種類のみ用いても複数種類併用してもよい。水溶性高分子(D)は、例えば、合成水溶性高分子でもよいし、天然水溶性高分子でもよい。「合成水溶性高分子」は、例えば、前記成分(A)で説明したものと同様である。また、「天然水溶性高分子」は、例えば、前記成分(A)で説明したものと同様である。
【0046】
前記成分(D)は、好ましくは、TI値が4.0以上である、ダイユータンガム、キサンタンガム、グアーガム、ローカストビーンガム、ジェランガム等からなる群から選択される少なくとも一つである。
【0047】
また、前記成分(A)と前記成分(D)との質量比(A)/(D)は、前述のとおり、5から500の範囲である。5以上であれば、良好な流動性(ハンドリング性)が確保でき、500以下であれば、安定性が良好となる。前記成分(A)と前記成分(D)との質量比(A)/(D)の下限値は、好ましくは、5以上、8以上、または10以上であり、上限値は、好ましくは、400以下、200以下、または100以下である。
【0048】
[1-5.水]
本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物において、水の含有率は、特に限定されないが、未加硫ゴム用液状防着剤組成物の全質量に対し、例えば、50質量%以上、60質量%以上または70質量%以上でもよく、例えば、95質量%以下、90質量%以下、85質量%以下または80質量%以下であってもよい。
【0049】
水は、例えば、本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物に流動性を付与し、取扱い易くする働きをする。また、水は特に限定されないが、例えば、水道水、蒸留水、イオン交換水等であってもよい。
【0050】
[1-5.任意成分等]
本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物は、前記成分(A)~(D)および水以外の任意成分を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。例えば、本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物には、必要に応じて、消泡剤、防腐剤、濡れ性補助剤、粘性補助剤、異物低減補助剤などの添加剤が任意成分として含まれていてもよい。
【0051】
消泡剤としては、特に限定されないが、例えば、ヒマシ油、ゴマ油、アマニ油、動植物油などの油脂系消泡剤;ステアリン酸イソアミル、コハク酸ジステアリル、エチレングリコールジステアレート、ステアリン酸ブチルなどの脂肪酸エステル系消泡剤;ポリオキシアルキレンモノハイドリックアルコール、ジ-t-アミルフェノキシエタノール、3-ヘプタノール、2-エチルヘキサノールなどのアルコール系消泡剤;ジ-t-アミノフェノキシエタノール、3-ヘプチルセロソルブ、ノニルセロソルブ、3-ヘプチルカルビトールなどのエーテル系消泡剤;トリブチルフォスフェート、トリス(ブトキシエチル)フォスフェートなどのリン酸エステル系消泡剤;ジアミルアミンなどのアミン系消泡剤;ポリアルキレンアミド、アシレートポリアミンなどのアミド系消泡剤;鉱物油;シリコーン油;などが挙げられる。前記消泡剤は、1種類のみ用いてもよいし、複数種類併用してもよい。
【0052】
防腐剤としては、特に限定されないが、例えば、イソチアゾリノン、ピリジン及びヨウ素の誘導体等が挙げられる。前記イソチアゾリノンの誘導体は、特に限定されないが、例えば、ベンズイソチアゾリノン(BIT)、メチルイソチアゾリノン(MIT、MI)、クロロメチルイソチアゾリノン(CMIT、CMI)、オクチルイソチアゾリノン(OIT、OI)、ジクロロオクチルイソチアゾリノン(DCOIT、DCOI)およびそれらの誘導体が挙げられる。前記ピリジンの誘導体は、特に限定されないが、ピリジンチオール及びそれらの誘導体があげられる。前記ヨウ素の誘導体は、特に限定されないが、ヨード-2-プロパギルブチルカルバミン酸及びそれらの誘導体があげられる。例えば、前記防腐剤は、1種類のみ用いてもよいし、複数種類併用してもよい。
【0053】
濡れ性補助剤としては、特に限定されないが、例えば、アルコール類が挙げられ、より具体的には、例えば、メタノール、エタノール、ヘキサノール、グリセリン、1,3-ブタンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、マルチトール、スクロース、エリスリトール、キシリトール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、多価アルコールのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドの付加物等が挙げられる。前記濡れ性補助剤は、1種類のみ用いてもよいし、複数種類併用してもよい。
【0054】
本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物の粘度は、特に限定されないが、例えば、分離し難く、ハンドリング性(取り扱い)が良好であるという理由により、未加硫ゴム用液状防着剤組成物の製造から3日経過後に25℃、BH型粘度計、20rpm、10回転後に測定した粘度で、好ましくは、25000mPa・s以下であり、より好ましくは1000~25000mPa・s、さらに好ましくは2000~25000mPa・sであり、特に好ましくは、3000~24000mPa・sである。未加硫ゴム用液状防着剤組成物の分離を抑制または防止する観点からは、未加硫ゴム用液状防着剤組成物の粘度が低すぎないことが好ましく、容器から出にくくなるなどハンドリングの悪化を抑制または防止する観点からは、未加硫ゴム用液状防着剤組成物の粘度が高すぎないことが好ましい。
【0055】
[2.未加硫ゴム用液状防着剤組成物の製造方法]
本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、未加硫ゴム用液状防着剤組成物の全ての成分(前記成分(A)~(D)および水と、必要に応じて配合される任意成分と)を混合することにより製造できる。混合順序や混合に用いる装置、設備等については、特に限定されない。例えば、水と水溶性高分子(前記成分(A)、前記成分(D))、界面活性剤(前記成分(C))を混合させた後、金属石鹸(前記成分(B))とその他の任意成分とを混合させる方法等が挙げられる。混合に用いる装置としては、前述のとおり、特に限定されないが、例えば、撹拌羽根を容器内に備えた構成の装置などを使用できる。具体的には、例えば、一般的な液体混合機、渦流ミキサー、スタティックミキサー、ホモジナイザー、ラインホモミキサーなどの液体混合機等を挙げることができる。
【0056】
[3.未加硫ゴム用液状防着剤組成物の使用方法等]
本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物の使用方法は、特に限定されず、例えば、一般的な未加硫ゴム用液状防着剤組成物の使用方法と同様またはそれに準じてもよい。本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物の使用方法は、具体的には、例えば以下のとおりであるが、これには限定されない。
【0057】
本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物を用いた未加硫ゴムの防着処理方法は、例えば、前述のとおり、本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物における前記成分(A)~(D)を未加硫ゴム表面に付着させて防着処理する防着処理工程を有していてもよい。未加硫ゴム表面への付着は、例えば、後述のウェット法などにより行うことができる。このようにして防着処理された防着処理済み未加硫ゴムは、例えば、積み重ねたり、折り畳んだりして貯蔵されても、未加硫ゴム同士が密着してしまうことがない。また、このような未加硫ゴムの防着処理方法は、例えば、防着処理済み未加硫ゴムの製造方法であるということもできる。
【0058】
本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物は、そのまま使用してもよいが、さらに水で希釈して、水希釈液(例えば、水分散液または水溶液)の状態で使用してもよい。本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物水希釈液は、例えば、未加硫ゴム用液状防着剤組成物水分散液であってもよいし、例えば、未加硫ゴム用液状防着剤組成物水溶液であってもよい。本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物において、未加硫ゴム表面に付着させる際の濃度は特に限定されないが、未加硫ゴム用液状防着剤組成物の全質量に対し、水以外の成分の全質量が、例えば0.5質量%以上、1質量%以上、または2質量%以上であってもよく、例えば15質量%以下、10質量%以下、または5質量%以下であってもよい。前記濃度が高すぎなければ、例えば、低飛散性かつ乾燥が速いという効果が得られる。前記濃度が低すぎなければ、例えば、高防着性かつ高滑性という効果が得られる。本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物は、例えば、未加硫ゴム表面に付着させる際の濃度が低くても高い防着性を発揮できるため、少ない付着量で高い防着性を発揮できる。また、未加硫ゴム表面に付着させる際の粘度も特に限定されないが、例えば1mPa・s以上、5mPa・s以上、または10mPa・s以上であってもよく、例えば30mPa・s以下、20mPa・s以下、または15mPa・s以下であってもよい。前記粘度が高すぎなければ、例えば、低飛散性かつ乾燥が速いという効果が得られる。前記粘度が低すぎなければ、例えば、高防着性かつ高滑性という効果が得られる。
【0059】
前記防着処理工程は、例えば、前述のとおり、本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物または本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物水希釈液を前記未加硫ゴムの表面に付着させ、さらに水を揮発させることにより、前記未加硫ゴムの表面に本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物における前記成分(A)~(D)を付着させる工程であってもよい。より具体的には、前記防着処理工程は、例えば、本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物を未加硫ゴムの表面に付着させる未加硫ゴム用液状防着剤組成物付着工程と、前記未加硫ゴムの表面の前記未加硫ゴム用液状防着剤組成物を乾燥して、被膜を未加硫ゴムの表面に形成する乾燥工程とを有していてもよい。このような防着処理工程を、例えば、ウェット法という。前記ウェット法は、特に限定されず、例えば、一般的な未加硫ゴム用液状防着剤組成物におけるウェット法と同様にして行うことも可能である。
【0060】
前記未加硫ゴム用液状防着剤組成物付着工程では、例えば、シート状などに成形された時の熱により高温状態(例えば80~150℃程度)である未加硫ゴムに対して、未加硫ゴム用液状防着剤組成物を付着させることが好ましい。
【0061】
前記未加硫ゴム用液状防着剤組成物付着工程の具体的方法としては、例えば、未加硫ゴム用液状防着剤組成物を未加硫ゴムにシャワー装置で散布する方法、未加硫ゴム用液状防着剤組成物の入った槽に未加硫ゴムを短時間浸漬するディップ法等が挙げられる。また、塗布装置を用いて未加硫ゴム用液状防着剤組成物を未加硫ゴムに塗布する方法などを採用してもよく、これらの方法を適宜併用してもよい。
【0062】
本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物によれば、前述のとおり、防着性に優れ、かつ、送液性と安定性とのバランスが優れる。
【0063】
本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物が適用可能なゴム種には特に制限はなく、未加硫のゴムであればよい。前記ゴム種としては、例えば、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、IIR(ブチルゴム)、EPDM(エチレンプロピレンゴム)等のゴムや、これらのうちの複数種が混合されたゴムが挙げられる。
【実施例0064】
つぎに、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0065】
[実施例1]
以下のようにして、実施例1の未加硫ゴム用液状防着剤組成物を製造した。
【0066】
水903.5gを反応容器に入れ80℃以上に加熱した。その後、前記反応容器内に、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(メトローズ60SH-4000、メトキシ基置換度1.9、ヒドロキシプロポキシ基置換モル数0.25、2%粘度4000mPa・s、信越化学工業(株)製)40g、ジェランガム(ケルコゲルAFT、三昌株式会社製(TI値=6.4))0.5g、を入れて2時間混合した。なお、前記ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、水溶性高分子であり、本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物における前記成分(A)に該当する。前記ジェランガムは、本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物における前記成分(D)に該当する。このように2時間混合して得られた混合物を30℃以下に冷却した後、さらに、ラウリン酸カルシウム(太平化学産業株式会社製)40g、ヤシアルコールEO付加物(レオックス(登録商標)CC-150、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製)10g、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム(リポラン(登録商標)LB-840、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製)5g、および防腐剤(スラオフEX、大阪ガスケミカル株式会社製)1gを加えて攪拌することにより、未加硫ゴム用液状防着剤組成物を得た。なお、前記ラウリン酸カルシウムは、金属石鹸であり、本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物における前記成分(B)に該当する。前記ヤシアルコールEO付加物および前記アルファオレフィンスルホン酸ナトリウムは、いずれも界面活性剤であり、本発明の未加硫ゴム用液状防着剤組成物における前記成分(C)に該当する。前記防腐剤は、前記成分(A)~(D)以外の任意成分に該当する。
【0067】
[実施例2~33、比較例1~6]
原料の種類および組成を後述の表2~5のとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2~33および比較例1~6の未加硫ゴム用液状防着剤組成物を製造した。なお、実施例2~33および比較例1~6の未加硫ゴム用液状防着剤組成物の製造に用いた各原料の商品名(品名)、メーカーおよび特性(組成)を、下記表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
[未加硫ゴム用液状防着剤組成物水希釈液の製造および性能評価]
前記各実施例および比較例の未加硫ゴム用液状防着剤組成物を水で20倍(質量比)に希釈し、未加硫ゴム用液状防着剤組成物水希釈液(防着剤懸濁液)を製造した。この未加硫ゴム用液状防着剤組成物水希釈液を用いて未加硫ゴムの防着処理を行い、防着性、滑性、飛散性、安定性、送液速度(送液性)、および粘度の各性能を評価した。防着処理方法および前記各性能の評価方法を、以下に示す。
【0070】
<評価>
(1)評価用ゴム
各種評価には、評価用ゴムとして下記の未加硫NRゴムを用いた。
(未加硫NRゴム)
NR(RSS♯3)100質量部に対して、ホワイトカーボン(東ソー・シリカ(株)製、商品名「ニップシールVN-3」)10質量部と、ISAF(Intermediate Super Abrasion Furnace)ブラック(東海カーボン(株)製、商品名「シースト6」)30質量部と、JSRAROMA(プロセスオイル)(日本サン石油(株)製、商品名「アロマ790」)15質量部と、亜鉛華(ハクスイテック(株)製、亜鉛華2種)3質量部と、ステアリン酸(日油(株)製、椿)1質量部と、6PPD(大内新興化学工業(株)製、商品名「ノクラック6C」)1質量部、CBS(大内新興化学工業(株)製、商品名「ノクセラーCZ-G」)1質量部、硫黄(鶴見化学(株)製)1.5質量部を配合した(合計162.5質量部)未加硫NRゴムを用いた。
【0071】
(2)防着性の評価
上記の未加硫ゴムを温度80~120℃のオープンロールで練り出してゴムシート(厚さ:5~8mm、60cm×15cm)とし、繰り出された直後の該ゴムシートを、実施例1~33および比較例1~6の各例で得られた未加硫ゴム用液状防着剤組成物を水で20倍に希釈して得られた未加硫ゴム用液状防着剤組成物水希釈液(防着剤懸濁液、温度40℃)1Lに約1秒間浸漬した。その後、ゴムシートをすばやく垂直に引き上げ、室温下において垂直状態で静置し、自然乾燥した。このようにして、前記ゴムシート(未加硫ゴム)の防着処理を行った。
【0072】
前記防着処理後のゴムシートを6cm×15cmにカットして2枚を重ね合わせて積層状態の試験片とし、その積層状態にある試験片に対して、一方の面から垂直方向に1t/mの荷重をかけ、60℃、12時間放置した。
【0073】
さらにその後、前記試験片を室温に戻し、引張り試験機〔AGS-500D型、SHIMADZU〕を用いて180°剥離試験を行い、引っ張り速度300mm/minで剥離抗力(N/cm)を測定した。剥離抗力(N/cm)が小さいほど防着性が優れていることを示す。
【0074】
(3)滑性の評価
前記(2)防着性の評価と同じ方法でゴムシート(未加硫ゴム)の防着処理を行った。つぎに、前記防着処理後の乾燥した未加硫ゴムシートを5×15cmの長方形に裁断した。このゴムをステンレス板上に置き、板を徐々に傾斜させ、滑り落下する時の傾斜角度を測定した。滑り出し角度が低いほど滑性に優れることを示す。
【0075】
(4)飛散性の評価
前記(2)防着性の評価と同じ方法でゴムシート(未加硫ゴム)の防着処理を行った。つぎに、前記防着処理後の乾燥した未加硫ゴムシートを6×15cmの長方形に裁断し、重量を測定した。このゴムの表裏面をハケで10回掃きその後再び重量を測定し、飛散量を算出した。飛散量が少ないほど飛散性に優れることを示す。
【0076】
(5)安定性の評価
水で20倍(質量比)に希釈する前の未加硫ゴム用液状防着剤組成物100mLを密閉容器に入れ、20℃の恒温槽にて静置し、1週間静置後の外観を目視で分離の有無を確認した。ゴム用防着剤組成物の分離が目視で確認できなければ安定性が良好であることを示す。
【0077】
(6)送液速度(送液性)の評価
水で20倍(質量比)に希釈する前の未加硫ゴム用液状防着剤組成物100kgを20℃において、ダイヤフラムポンプ(アネスト岩田社製 製品名『DDP-120B』送液速度30L/分)にて直径20mm、長さ7mの塩ビ製配管を通じ高さ3mまで移送した。移送した未加硫ゴム用液状防着剤組成の重量と移送に要した時間とから、送液速度を算出した。送液速度が速いほど流動性に優れることを示す。
【0078】
(7)粘度の評価
水で20倍(質量比)に希釈する前の未加硫ゴム用液状防着剤組成物の粘度を、製造から3日経過後に測定した。粘度の測定にはBH型粘度計(株式会社トキメック、商品名「粘度計 BII形」)を用い、25℃で、20rpmで10回転後の粘度を測定した。
【0079】
実施例1~33および比較例1~6の未加硫ゴム用液状防着剤組成物における原料の種類および組成と、前述のとおり評価した防着性、滑性、飛散性、安定性、送液速度、および粘度の各性能の評価結果とを、下記表2~5にまとめて示す。下記表2~5中において、各原料(水を含む)の使用量を示す数値は、未加硫ゴム用液状防着剤組成物の全質量(水を含む)に対する含有率(質量%)である。
【0080】
【表2】
【0081】
【表3】
【0082】
【表4】
【0083】
【表5】
【0084】
前記表2~5に示すとおり、実施例1~33の未加硫ゴム用液状防着剤組成物は、防着性、滑性、飛散性、安定性、および送液性(粘度)がいずれも良好であった。これに対し、成分(A)を用いなかった比較例1の未加硫ゴム用液状防着剤組成物は、滑性、飛散性、安定性、および送液性は良好であったが、防着性が、実施例と比較して大幅に劣っていた。成分(B)を用いなかった比較例2の未加硫ゴム用液状防着剤組成物は、防着性、飛散性、および安定性は良好であったが、滑性および送液性が、実施例と比較して劣っていた。(A)/(D)質量比が5未満であった比較例3の未加硫ゴム用液状防着剤組成物は、防着性、滑性、飛散性、および安定性は良好であったが、送液性が、実施例と比較して大幅に劣っていた。(A)/(D)質量比が500を超えた比較例4の未加硫ゴム用液状防着剤組成物は、防着性、滑性、飛散性、および送液性は良好であったが、安定性が、実施例と比較して劣っていた。成分(D)を用いなかった比較例5の未加硫ゴム用液状防着剤組成物は、防着性、滑性、飛散性、および送液性は良好であったが、安定性が、実施例と比較して劣っていた。成分(C)を用いなかった比較例6の未加硫ゴム用液状防着剤組成物は、滑性、飛散性、および送液性は良好であったが、防着性および安定性が、実施例と比較して劣っていた。
【0085】
<付記>
上記実施形態及び実施例の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載し得るが、以下には限定されない。
(付記1)
下記成分(A)~(D)および水を含み、
下記成分(A)と下記成分(D)との質量比(A)/(D)が5~500であることを特徴とする未加硫ゴム用液状防着剤組成物。

(A)成分(D)以外の水溶性高分子
(B)金属石鹸
(C)界面活性剤
(D)20℃における2質量%水溶液のチクソトロピーインデックス(2rpm/20rpm)が、4.0以上である水溶性高分子から選ばれる1種以上の化合物
(付記2)
水以外の成分の全質量100質量%に対し、
前記成分(A)を20質量%以上、前記成分(B)を20~60質量%、前記成分(C)を10~25質量%、および、前記成分(D)を0.01~10質量%を含む、付記1記載の未加硫ゴム用液状防着剤組成物。
(付記3)
前記成分(A)と前記成分(B)との質量比(A)/(B)が0.2~4.0の範囲である、付記1または2記載の未加硫ゴム用液状防着剤組成物。
(付記4)
付記1から3のいずれかに記載の未加硫ゴム用液状防着剤組成物と、水と、を含むことを特徴とする未加硫ゴム用液状防着剤組成物水希釈液。
(付記5)
付記1から3のいずれかに記載の未加硫ゴム用液状防着剤組成物における前記成分(A)~(D)が表面に付着していることを特徴とする未加硫ゴム。