(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035099
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】二酸化炭素のメタン化触媒成型体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 23/46 20060101AFI20240306BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20240306BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20240306BHJP
C07C 1/12 20060101ALN20240306BHJP
C07C 9/04 20060101ALN20240306BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240306BHJP
【FI】
B01J23/46 301Z
B01J37/08 ZAB
B01J37/02 101D
C07C1/12
C07C9/04
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023122647
(22)【出願日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】P 2022136878
(32)【優先日】2022-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】山本 直生
(72)【発明者】
【氏名】則岡 慎平
(72)【発明者】
【氏名】大塚 浩文
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA09
4G169AA14
4G169BA04A
4G169BA04B
4G169BA05A
4G169BA05B
4G169BA43C
4G169BB02B
4G169BB06A
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4G169BC51A
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4G169BC70B
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4G169EC22X
4G169EC22Y
4G169EC29
4G169ED03
4G169FA02
4G169FB14
4G169FB19
4G169FB30
4G169FB45
4G169FB57
4G169FC04
4G169FC07
4G169FC08
4H006AA02
4H006AC29
4H006BA10
4H006BA23
4H006BA30
4H006BA55
4H006BA61
4H006BA81
4H006BE20
4H006BE41
4H039CL35
(57)【要約】
【課題】ルテニウムを活性金属として担持してなるメタン化触媒に関して、高い低温活性と、工業的に利用可能な十分な強度を具備した成型体触媒を提供する。
【解決手段】アナターゼ型酸化チタンの成型体にジルコニアおよびルテニウムが担持された二酸化炭素のメタン化触媒成型体であって、前記ジルコニアの担持量が酸化チタン成型体100質量部に対して3~10質量部であり、前記ルテニウムの担持量が酸化チタン成型体100質量部に対して0.1~5質量部であり、前記アナターゼ型酸化チタンの成型体の粒径が2~20mmの成型体である二酸化炭素のメタン化触媒成型体を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナターゼ型酸化チタンの成型体にジルコニアおよびルテニウムが担持された二酸化炭素のメタン化触媒成型体であって、
前記ジルコニアの担持量が前記酸化チタン成型体100質量部に対して3~10質量部であり、
前記ルテニウムの担持量が前記酸化チタン成型体100質量部に対して0.1~5質量部であり、
前記アナターゼ型酸化チタンの成型体の粒径が2~20mmである二酸化炭素のメタン化触媒成型体。
【請求項2】
前記ジルコニアが主として正方晶として存在している、請求項1に記載の二酸化炭素のメタン化触媒成型体。
【請求項3】
粒径2~20mmのアナターゼ型酸化チタンの成型体に、ジルコニウムの水溶性化合物を溶解した水溶液を含浸してジルコニウム含浸体を得るジルコニウム含浸工程と、
前記ジルコニウム含浸体を乾燥して乾燥体を得る乾燥工程と、
前記乾燥体を空気中400~800℃で焼成してジルコニアを分散担持してなる酸化チタンを得る焼成工程と、
前記ジルコニアを分散担持してなる酸化チタンに、ルテニウムの水溶性化合物を溶解した水溶液を含浸してルテニウム含浸体を得るルテニウム含浸工程と、
前記ルテニウム含浸体を乾燥してルテニウムを固定化するルテニウム固定化工程と、を含む二酸化炭素のメタン化触媒成型体の製造方法。
【請求項4】
前記ジルコニウム含浸工程が、ジルコニウムの水溶性化合物を溶解した硝酸酸性の水溶液を用いて行われる、請求項3に記載の二酸化炭素のメタン化触媒成型体の製造方法。
【請求項5】
前記ジルコニアが主として正方晶として存在している、請求項3又は4に記載の二酸化炭素のメタン化触媒成型体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素と二酸化炭素とを反応させてメタンを主成分とする燃料ガスを製造するための触媒成型体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化対策の観点から、燃焼利用しても大気中の二酸化炭素濃度を実質的に増加させることがないカーボンニュートラル燃料に注目が集まっている。
【0003】
工業プロセスや火力発電などで発生する排ガスから二酸化炭素を回収し、再生可能エネルギーである太陽光発電や風力発電などによる電力を用いた電気分解により得られた水素と反応させれば、メタンが得られる。この方法によって得られたメタンは、燃焼利用しても追加的な二酸化炭素の発生がないことから、地球温暖化に影響しないカーボンニュートラル燃料と考えることができる。
【0004】
二酸化炭素と水素とを反応してメタンを得るメタン化反応(式1)は公知である。
【0005】
CO2+4H2 → CH4+2H2O (式1)
特許文献1には、COおよびH2を含むガスをメタン化するに際し、上流側にCu-Zn系低温シフト触媒を配し且つ下流側にメタン化触媒を配置したメタン化反応器を使用することを特徴とするCOおよびH2を含むガスのメタン化方法が開示されている。上流側の低温シフト反応器ではCOシフト反応(式2)が進行するので、原料ガスに含まれる一酸化炭素の大部分は水蒸気と反応して二酸化炭素に転換され、下流側のメタン化触媒上では二酸化炭素のメタン化反応が進行しているものと考えられる。
【0006】
CO+H2O → CO2+H2 (式2)
メタン化反応はアンモニア合成用の水素から一酸化炭素および二酸化炭素を除去する目的で古くから使用されており、NiやRuなどを担持した触媒が高活性を示すことが知られている(非特許文献1、2)。
【0007】
二酸化炭素と水素を反応させてメタンを得るメタン化反応は、工業的にも確立された技術(たとえば非特許文献3)であるが、都市ガス原料として使用できる品質の燃料ガスを得るにはなお課題がある。
【0008】
都市ガス原料として一般に利用されているのは天然ガスであり、メタンを主成分とし、少量のエタン、プロパン、およびブタンを含有する。天然ガスには、水素は通常含まれず、二酸化炭素は天然ガスの精製過程で除去される。特に、液化天然ガスを原料として製造される都市ガスの場合には、水素および二酸化炭素は液化精製の過程でほぼ完全に除去されるので、実質的にほとんど含まれない。
【0009】
水素および二酸化炭素が都市ガスに含まれると以下のような問題を引き起こす可能性がある。
【0010】
二酸化炭素は、不燃性であるだけでなく、燃焼を抑える働きがある。従って、燃料ガスに高濃度で混入した場合、燃料ガスの発熱量の低下に伴う導管でのガス輸送の効率を低下させるだけでなく、燃焼機器の効率の低下を引き起こす恐れもある。
【0011】
水素は、燃料ガスではあるものの、都市ガスの主成分であるメタンと比較すると単位体積当たりの発熱量が約3分の1しかない。従って、メタン主成分の燃料ガスに水素が混入すると、単位体積当たりの発熱量が低下する。さらに水素は、燃焼速度が速いことから、燃焼機器への影響が大きいことも知られている。
【0012】
二酸化炭素のメタン化反応(式1)は、平衡反応であり、通常の工業的な操作条件では、二酸化炭素と水素とを完全にメタンに転化することはできない。化学量論比(水素:二酸化炭素=4:1)の混合ガスを、常圧(0.1MPa)で反応させた場合の二酸化炭素のメタンへの平衡転化率は、反応温度が300℃の場合において95.0%であり、反応温度が250℃の場合において97.5%であり、反応温度が200℃の場合において98.9%である。
【0013】
このように常圧では、多量に水素を含む燃料ガスしか得られない。メタン化反応は発熱反応であるため、低温になるほど、平衡転化率は向上するが、触媒反応の場合、低温になるほど触媒活性が低下する。このため、反応温度には下限があり、通常のメタン化触媒の場合、実用的な反応速度を得るには250℃以上が必要とされる(非特許文献4、特許文献2および3)。
【0014】
二酸化炭素のメタン化反応(式1)は、物質量(モル数)が減少する反応であるため、圧力が高いほど平衡転化率は高くなる。メタン化反応を高圧で行うと、メタン純度の高い燃料ガスが得られるが、高圧に耐える反応設備は高価になるほか、原料ガスの圧縮動力が多く必要となるなどの問題がある。低温活性に優れた触媒を用いてメタン化反応を行えば、反応圧力を極端に高めることなく、メタン純度の高い燃料ガスを得ることができ、経済的に有利である。
【0015】
特許文献4には、粉末状の担体にナノ粒子が分散担持された二酸化炭素の水素還元用触媒であって、 前記ナノ粒子のうち90%以上は粒径が10nm未満の粒子であり、前記ナノ粒子は、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Ag、Ir、PtおよびAuからなる群から選択される少なくとも一の金属粒子または該金属粒子を含む材料粒子であることを特徴とする二酸化炭素の水素還元用触媒が開示されている。
【0016】
この文献には、内部の断面形状が多角形を有する真空容器を、前記断面に対して略垂直方向を回転軸として回転または振り子動作させることにより、該真空容器内の粉末状の担体を攪拌、回転あるいは振り子動作させながらスパッタリングを行うことで、該粉末状の担体の表面にナノ粒子を分散担持でき、そのようにして調製されたメタン化触媒では、反応温度200℃において100%のCO2転化率が得られ、一般的な含浸法で得られたメタン化触媒よりも低温活性が優れることが示されている。
【0017】
特許文献5には、担体に、触媒金属ナノ粒子と前記触媒金属ナノ粒子の粒成長を抑制するための金属酸化物とが分散担持されている、二酸化炭素の水素還元用触媒が開示されている。
【0018】
この文献には、触媒金属としてのルテニウム金属と、金属酸化物としての酸化チタンまたは酸化ジルコニウムとを含むターゲットを用い、担体である酸化チタン粉末を転動させながら、スパッタリングを行って、前記担体の表面に、前記ルテニウム金属を含むナノ粒子と前記金属酸化物とを分散担持できること、そのようにして調製されたメタン化触媒では、金属酸化物を含まない触媒と比較して、金属ナノ粒子の粒径が小さく、メタン化活性が高いことが示されている。
【0019】
しかし、これらの文献に示された、スパッタリングを用いる活性金属の担持は、担体が粉末状である場合には適用が容易であるが、予め所定の形状に成型された担体を用いる場合には、担体の最表面にしか活性金属が担持できないという問題がある。
【0020】
特許文献6には、チタニア、ジルコニアおよびアルミナからなる群から選択される少なくとも1種の金属酸化物からなる担体と、前記担体に担持されたセリア粒子と、前記担体に担持されたルテニウム粒子とを含有し、前記セリア粒子の平均粒子径が8nm以下であり、前記セリア粒子の担持量が前記担体100質量部に対して0.3~10質量部であり、 前記ルテニウム粒子の平均粒子径が8nm以下であり、前記ルテニウム粒子の担持量が前記担体100質量部に対して0.5~5質量部である、ことを特徴とするメタン化触媒が開示されている。
【0021】
この文献によれば、セリア粒子およびルテニウム粒子による担体表面の被覆率が1~80%、好ましくは3~75%、より好ましくは5~70%であると、高い触媒活性が得られるとされる。
【0022】
しかし、特許文献4~6のいずれにも、実用上十分な強度を有する成型体のメタン化触媒を製造する方法については記載されていない。
【0023】
触媒の成型方法としては、転動造粒、打錠成型、押出成型などの方法があるが、いずれの方法で成型する場合でも、十分な強度を付与するためには、成型後に熱処理を行う必要があるため、この過程で触媒活性が低下することが懸念される。
【0024】
酸化チタンは、例えば含水酸化チタン(TiO2・nH2O)を転動造粒したのち、空気中で焼成して酸化チタンとするなどの方法で、高い強度を持った成型体が容易に得られること、高水蒸気分圧下でも、比表面積の低下や相変化を起こすことなく、物性が安定していることから、工業触媒の担体として幅広く利用されている。
【0025】
特許文献7には、ルテニウム化合物と周期表IVa族元素の化合物を含有する水溶液で、pHが3以下であることを特徴とするルテニウム触媒製造用含浸液、およびこの含浸液を担体に接触させ、ルテニウム成分と周期表IVa族元素成分を該担体に担持し、得られたルテニウム担持組成物を、乾燥後、焼成することを特徴とするルテニウム触媒の製造方法が開示されている。
【0026】
しかし、この文献は、電子顕微鏡観察の結果としての、担持されたルテニウムの粒径及び担持量を示すのみであり、カルボニル化合物、芳香族化合物、オレフィンやジエン類等の不飽和化合物の選択的水素化触媒、アンモニア合成触媒、FT合成用触媒、COやCO2のメタン化触媒、COやCO2のアルコール等への水素化触媒、ニトロ化合物の水素化触媒、炭化水素類の水素化分解触媒、芳香族アミン類の選択的水素化触媒、NOxの還元浄化触媒、炭化水素等の水蒸気改質触媒、低温型完全酸化触媒、光半導体触媒、電極触媒といった多様な反応を例示するものの、どの反応についても、具体的な触媒活性を確認した例を示していない。
【0027】
特許文献8には、硝酸ジルコニウムと塩化チタニウムの混合水溶液に炭酸ソーダを添加して得られる沈殿をろ過、水洗、乾燥後500℃で焼成して得たジルコニウムおよびチタニウムからなる非晶質の複合酸化物を粒径2~4mmのペレットに成型したのち、ランタンおよびルテニウムを担持してなる酸化触媒が開示されている。
【0028】
この文献は、空気中に含まれる水素、一酸化炭素、メタンなどの可燃性ガスの酸化反応に対する活性を開示するに留まる。また、ジルコニウム化合物とチタン化合物の混合水溶液から共沈法により複合酸化物を得る方法は、多量の廃液を生じることなどから、経済的に有利とはいえない方法で触媒を合成している点も問題である。
【0029】
特許文献9には、アルミナ、チタニア、ジルコニアの1種以上を含有する担体上にルテニウムおよびロジウムからなる群の1種以上の金属を担持させたメタノール又はメタノールと水の混合物を原料としたメタン含有ガス製造用触媒が開示されている。
【0030】
この文献には、オキシ塩化ジルコニウムの水溶液に酸化チタン粉末を添加し、さらにアンモニア水を滴下して、水酸化ジルコニウムと酸化チタンの混合ゲルとし、これをろ過、洗浄、乾燥、焼成して得た、TiO2とZrO2からなり、TiO2:ZrO2の重量比が20:80または50:50である担体に、ルテニウムまたはルテニウムおよびロジウムを担持した触媒を用いて、メタノールを原料としてメタン含有ガスの製造を行った例が開示されている。しかし、前記のようにして調製されたTiO2とZrO2の両方を含有する担体を用いた触媒は、TiO2のみ、あるいはZrO2のみを担体として用いた触媒と比較して、メタン反応率および生成ガス中のメタン濃度のいずれの観点でも同等か、劣っており、TiO2とZrO2とを複合化した効果は見られていない。
【0031】
以上のように、酸化チタン担体にルテニウムを活性金属として担持してなるメタン化触媒に関して、高い低温活性と、工業的に利用可能な十分な強度を具備した成型体触媒は、なお確立されていないのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0032】
【特許文献1】特開昭60-235893号公報
【特許文献2】特開2015-124217号公報
【特許文献3】特開2018-135283号公報
【特許文献4】特開2009-131835号公報
【特許文献5】特開2019-48249号公報
【特許文献6】特開2019-76862号公報
【特許文献7】特開平7-116516号公報
【特許文献8】特開平4-330940号公報
【特許文献9】特開昭61-82842号公報
【非特許文献】
【0033】
【非特許文献1】社団法人化学工学協会編、化学プロセス集成、1970年、p.153
【非特許文献2】触媒学会編、触媒便覧、2008年、p.535
【非特許文献3】川越、松田、松島および植松、日立評論、68巻10号、1986年、p.73
【非特許文献4】E.I.KoytsoumpaおよびS.Karellas、Renewable and Sustainable Energy Reviews、94巻、2018年、p.536
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
本発明が解決しようとする課題は、以上の問題に鑑み、ルテニウムを活性金属として担持してなるメタン化触媒に関して、高い低温活性と、工業的に利用可能な十分な強度を具備した成型体触媒およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0035】
本発明に係るメタン化触媒成型体の特徴構成は、アナターゼ型酸化チタンの成型体にジルコニアおよびルテニウムが担持された二酸化炭素のメタン化触媒成型体であって、前記ジルコニアの担持量が前記酸化チタン成型体100質量部に対して3~10質量部であり、前記ルテニウムの担持量が前記酸化チタン成型体100質量部に対して0.1~5質量部であり、前記アナターゼ型酸化チタンの成型体の粒径が2~20mmである二酸化炭素のメタン化触媒成型体である点にある。
【0036】
本特徴構成によれば、メタン化触媒成型体(以下、単に触媒成型体と称する場合がある)が、メタン化反応に対して高い低温活性と、工業的に利用可能な十分な強度を具備する。
【0037】
本発明のメタン化触媒成型体の製造方法の特徴構成は、粒径2~20mmのアナターゼ型酸化チタンの成型体に、ジルコニウムの水溶性化合物を溶解した水溶液を含浸してジルコニウム含浸体を得るジルコニウム含浸工程と、前記ジルコニウム含浸体を乾燥して乾燥体を得る乾燥工程と、前記乾燥体を空気中500~800℃で焼成してジルコニアを分散担持してなる酸化チタンを得る焼成工程と、前記ジルコニアを分散担持してなる酸化チタンに、ルテニウムの水溶性化合物を溶解した水溶液を含浸してルテニウム含浸体を得るルテニウム含浸工程と、前記ルテニウム含浸体を乾燥してルテニウムを固定化するルテニウム固定化工程と、を含む点にある。
【0038】
この方法によれば、経済的に有利な方法で、メタン化反応に対して高い低温活性と、工業的に利用可能な十分な強度を具備した二酸化炭素のメタン化触媒成型体を製造することができる。
【0039】
前記のメタン化触媒成型体の製造方法において、その特徴構成はジルコニウム含浸工程が、ジルコニウムの水溶性化合物を溶解した硝酸酸性の水溶液を用いて行われる点にある。本特徴構成によれば、メタン化反応に対する低温活性、工業的に利用可能な十分な強度の、いずれの点においても優れたメタン化触媒成型体を製造することができる。また、本特徴構成によれば、ジルコニウムの水溶性化合物が安定化され、メタン化触媒成型体内に、好適な分布でジルコニアを担持させやすい。
【0040】
前記ジルコニアは、主として正方晶として存在していることが好ましい。
【0041】
本特徴構成によれば、メタン化反応に対して特に高い低温活性と、工業的に利用可能な十分な強度を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本発明の実施例および比較例による触媒のX線回折パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明に係るメタン化触媒成型体およびメタン化触媒成型体の製造方法の実施形態について説明する。
【0044】
本発明のメタン化触媒成型体の主成分は、アナターゼ型酸化チタンである。アナターゼ型酸化チタンは、例えば800℃以上の高温で焼成するなどの方法によりルチル型に相転移するが、ルチル型の酸化チタンは比表面積が小さいので、ジルコニアおよびルテニウムを高分散に担持できないことから本発明のメタン化触媒成型体の担体として好適ではない。本発明のメタン化触媒成型体においては、酸化チタン中にルチル型の酸化チタンを含有しないか、含有していても酸化チタン全体に対する質量比で5%以下とすることが好ましい。
【0045】
本発明のメタン化触媒成型体は、アナターゼ型酸化チタンの成型体に担持されたジルコニアおよびルテニウムを含有し、前記ジルコニアの担持量が前記活性酸化チタン成型体100質量部に対して3~10質量部であり、前記ルテニウムの担持量が前記酸化チタン成型体100質量部に対して0.1~5質量部である。
【0046】
ジルコニアの担持量が酸化チタン成型体100質量部に対して3質量部よりも小さいと、ジルコニア添加の効果が小さくなり、メタン化活性が低下する恐れがある。
【0047】
ジルコニアの担持量が酸化チタン成型体100質量部に対して10質量部よりも大きいと、酸化チタン成型体中に形成された気孔がジルコニアで閉塞されて、ガスの拡散性が低下することにより、触媒活性が低下する恐れがある。
【0048】
ジルコニアの結晶相には、正方晶、単斜晶、立方晶があり、1100℃以下では単斜晶が安定とされる。しかし、本発明のメタン化触媒成型体においては、ジルコニアは、主として正方晶の形で高分散に担持されている。本発明のメタン化触媒成型体に、単斜晶のジルコニアが含まれていても差し支えないが、ジルコニアが主として単斜晶として存在している場合は、酸化チタンに担持されたジルコニアの分散度が低いことから、メタン化活性の向上効果が十分に得られない場合がある。
【0049】
ルテニウムの担持量が酸化チタン成型体100質量部に対して0.1質量部よりも小さいと、十分なメタン化活性が得られない。一方、ルテニウムの担持量が酸化チタン成型体100質量部に対して5質量部よりも大きいと、担持されたルテニウムの分散度が低くなり、担持量に見合ったメタン化活性が得られない。また、ルテニウムの担持量は、より担持量に見合った十分なメタン化活性を得るという観点から、酸化チタン成型体100質量部に対して0.5~2質量部であると好ましい。
【0050】
本発明のメタン化触媒成型体に用いられるアナターゼ型酸化チタンの成型体は、粒径2~20mmの成型体である。ここで、粒径が2~20mmとは、成型体が球状である場合には、その直径が2~20mmの範囲にあることを言い、成型体が円筒形状である場合には、その直径および長さが2~20mmの範囲にあることを言い、その他の形状にある場合は、流体力学的な等価直径が2~20mmの範囲にあることを言う。
【0051】
アナターゼ型酸化チタンの成型体の粒径が2mmよりも小さいと、メタン化触媒成型体を充填した反応槽に反応ガスを流通した際の圧力損失が高くなり、メタン化プロセスの経済性が悪化する。一方、粒径が20mmよりも大きいと、成型体の幾何学的な表面積が相対的に小さくなることから、メタン化活性が低下する。
【0052】
触媒活性を担うルテニウムは、触媒成型体において、中心部よりも表面部により高濃度で担持されていることが好ましい。これは、触媒成型体内の反応ガスの拡散性の問題から、触媒成型体の表面近傍にあるルテニウムのほうが、触媒成型体中心部にあるルテニウムよりも有効に触媒として作用するためである。ただし、触媒成型体の最表面部は、摩擦によって摩耗しやすく、最表面だけにルテニウムを担持した場合、摩耗によるルテニウムの損耗が大きくなること、加えて、一定の分散度を確保することも考慮すると、ルテニウムは、触媒成型体の表面から一定の深さまで、均等に担持し、それよりも中心側には、担持しないか、担持濃度を低くすると、少ないルテニウム担持量で、高いメタン化活性が得られやすい。
【0053】
より具体的には、触媒成型体において、ルテニウムがシェル部の厚さ0.2~0.4mmのエッグシェル状に酸化チタン成型体に担持されている、換言すれば、触媒成型体の表面から0.2~0.4mmのシェル部にルテニウムが担持されていると、少ないルテニウム担持量で、高いメタン化活性が得られやすい。
【0054】
本発明のメタン化触媒成型体の製造方法は、粒径2~20mmのアナターゼ型酸化チタンの成型体に、ジルコニウムの水溶性化合物を溶解した水溶液を含浸してジルコニウム含浸体を得るジルコニウム含浸工程と、前記ジルコニウム含浸体を乾燥して乾燥体を得る乾燥工程と、前記乾燥体を空気中500~800℃で焼成してジルコニアを分散担持してなる酸化チタンを得る焼成工程と、前記ジルコニアを分散担持してなる酸化チタンに、ルテニウムの水溶性化合物を溶解した水溶液を含浸してルテニウム含浸体を得るルテニウム含浸工程と、前記ルテニウム含浸体を乾燥してルテニウムを固定化するルテニウム固定化工程と、を含む。
【0055】
酸化チタン成型体は、直径2mm~20mmの球状、円柱状などに成型されたものである。このような成型体は、転動造粒法や打錠成型法によって得られる。
【0056】
ジルコニウムの水溶性化合物としては、硝酸ジルコニウム(Zr(NO3)4)、硝酸酸化ジルコニウム(Zr(NO3)2O)、酢酸ジルコニウム(Zr(CH3COO)4)、酢酸酸化ジルコニウム(Zr(CH3COO)2O)などが使用できる。
【0057】
ジルコニウムの水溶性化合物の中には、水への溶解性が十分でないものや、水溶液の安定性が十分でないものがある。このような場合には、水溶液に硝酸や塩酸などを添加してもよい。硝酸酸性の水溶液とすると、ジルコニウムの水溶性化合物が安定化され、メタン化触媒成型体内に、好適な分布でジルコニアを担持させやすいことから、特に好ましい。
【0058】
ジルコニウム含浸工程の温度や時間は、特に制約はないが、たとえば室温で1~20時間程度行われうる。
【0059】
乾燥工程の温度や時間は、特に制約はないが、たとえば80℃~200℃で1~20時間程度行われうる。
【0060】
焼成工程の温度は、あまりに低すぎると、ジルコニウム化合物の分解が不十分となって、ルテニウムの担持工程において溶出する恐れがあり、あまりに高すぎても酸化チタンの焼結が進行して、その比表面積を低下させる恐れがある。従って、400℃以上800℃以下、より好ましくは500℃以上800℃以下とするのがよい。
【0061】
焼成工程の時間は、あまりに短すぎるとジルコニウム化合物の分解が不十分となる恐れがあり、あまりに長すぎると経済的に不利となるほか、酸化チタンの比表面積を低下させる恐れもあるため、1時間以上20時間以下程度とするのが好ましい。
【0062】
焼成工程において流通するガスは、空気でよいが、必要に応じて酸素あるいは窒素を添加して、酸素濃度を調整しても差し支えはない。
【0063】
ルテニウムの水溶性化合物としては、塩化ルテニウム(RuCl3)、硝酸ルテニウム(Ru(NO3)3)などが使用できる。
【0064】
ルテニウム含浸工程の温度や時間は、特に制約はないが、たとえば室温で1~20時間程度行われうる。
【0065】
ルテニウムを固定化するルテニウム固定化工程は、含浸したルテニウムが流出せずに成型体上に固定でき、かつ触媒上に活性を阻害する残留物を残さない限り、その方法は問わないが、例えば水酸化ナトリウムなどのアルカリ溶液にルテニウム含浸体を浸漬して、ルテニウムを水酸化物として固定し、さらにヒドラジンなどの還元剤を用いて還元して金属ルテニウムとし、洗浄して、ナトリウムイオン、塩素イオンや硝酸イオンなどを除去したのち、空気中60℃~100℃程度で乾燥することにより実施できる。
【0066】
本発明のメタン化触媒成型体は、二酸化炭素のメタン化に高い活性を有する。水素と二酸化炭素の反応によりメタンを得る反応は、比較的大きな発熱を伴うため、断熱的に反応を行うと、触媒層の温度が200℃~400℃程度上昇する場合がある。触媒層の温度が上昇すると、担持されたルテニウムが凝集することによって触媒活性が低下して、触媒の強度が低下する懸念がある。
【0067】
そのため、水素と二酸化炭素のメタン化反応を実施する際には、反応器出口ガスの一部を反応器入口にリサイクルして、発熱を緩和することが行われる。この場合、メタン化触媒成型体に導入されるガスは、水素と二酸化炭素に加えて、メタン、水蒸気、さらにはCOシフト反応の逆反応により生成する一酸化炭素も含まれることになるが、本発明の触媒は、水蒸気が共存しても高いメタン化活性を示し、また、一酸化炭素のメタン化にも活性を示すため、リサイクルのあるメタン化反応の条件でも好適に使用することができる。
【0068】
本発明のメタン化触媒成型体を用いるメタン化反応は、触媒が活性を示す範囲であれば、使用条件に特段の制約はないが、通常は200℃~600℃の温度、常圧~10MPaの圧力のもとで実施される。
【0069】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0070】
(実施例1)
硝酸酸化ジルコニウム2水和物(Zr(NO3)2O・2H2O)5.40gを60%硝酸6.6gと純水26gを混合した希硝酸に溶解して、ジルコニウム化合物を溶解する水溶液を得た。アナターゼ型酸化チタン(堺化学工業製、CS-750-24、2~4mm球状の成型体)50gを、前記の水溶液に浸漬し、15時間かけて含浸させてジルコニウム含浸体を得た。このジルコニウム含浸体を110℃に保持した乾燥器で1.5時間かけて乾燥して乾燥体を得た。この乾燥体を電気炉に装填して、空気を流通しながら、常温から3時間かけて700℃まで昇温し、700℃で4時間保持して焼成した。その後、3時間かけて常温まで放冷して、ジルコニア担持酸化チタンaを得た。
【0071】
ジルコニア担持酸化チタンaの98質量部に対して、2質量部のルテニウムを含有する塩化ルテニウム水溶液を含浸し、80℃で4時間乾燥し、0.375N-NaOH水溶液で15時間浸漬処理し、0.3%ヒドラジン水溶液で液相還元し、80℃の熱水で洗浄処理した後、80℃で4時間乾燥することにより、触媒Aを得た。
【0072】
(比較例)
実施例で用いたものと同じアナターゼ型酸化チタンの98質量部に対して、2質量部のルテニウムを含有する塩化ルテニウム水溶液を含浸し、80℃で4時間乾燥し、0.375N-NaOH水溶液で15時間浸漬処理し、0.3%ヒドラジン水溶液で液相還元し、80℃の熱水で洗浄処理した後、80℃で4時間乾燥することにより、触媒Bを得た。
【0073】
(実施例2)
硝酸酸化ジルコニウム2水和物(Zr(NO3)2O・2H2O)5.40gを60%硝酸6.6gと純水26gを混合した希硝酸に溶解して、ジルコニウム化合物を溶解する水溶液を得た。アナターゼ型酸化チタン(堺化学工業製、CS-750-24、2~4mm球状の成型体)50gを、前記の水溶液に浸漬し、15時間かけて含浸させてジルコニウム含浸体を得た。このジルコニウム含浸体を110℃に保持した乾燥器で1.5時間かけて乾燥して乾燥体を得た。この乾燥体を電気炉に装填して、空気を流通しながら、常温から3時間かけて450℃まで昇温し、450℃で4時間保持して焼成した。その後、3時間かけて常温まで放冷して、ジルコニア担持酸化チタンcを得た。
【0074】
ジルコニア担持酸化チタンcの98質量部に対して、2質量部のルテニウムを含有する塩化ルテニウム水溶液を含浸し、80℃で4時間乾燥し、0.375N-NaOH水溶液で15時間浸漬処理し、0.3%ヒドラジン水溶液で液相還元し、80℃の熱水で洗浄処理した後、80℃で4時間乾燥することにより、触媒Cを得た。
【0075】
(組成分析、BET比表面積、Ru分散度および圧壊強度の測定結果)
触媒A、触媒Bおよび触媒Cについて、組成分析ならびにBET比表面積、担持されたルテニウムの金属分散度および圧壊強度の測定を行った。表1に、それぞれの触媒のRu、ZrO2およびTiO2含有率ならびにBET比表面積、ルテニウム分散度、圧壊強度を示す。
【0076】
【0077】
《Ru、ZrO2およびTiO2含有量の測定方法》
触媒A、触媒Bおよび触媒Cについて、酸分解してICP発光分析法により、Ru、ZrおよびTiを定量し、Ruはそのまま、ZrおよびTiについては酸化物に換算して含有量を求めた。
【0078】
《BET比表面積の測定方法》
各試料について、液体窒素温度における相対圧(P/P0)=0.3の条件での窒素吸着量を用いるBET1点法により、BET比表面積を測定した。
【0079】
《金属ルテニウム表面積の測定方法》
各試料について、COパルス法による金属表面積測定法(触媒学会参照触媒委員会、「触媒」、31巻、317頁、1989年)に従い、CO吸着量を測定し、金属ルテニウムあたりのCO吸着量(CO/Ruのモル比)(すなわちルテニウム分散度)として示した。
【0080】
《圧壊強度の測定方法》
アイコーエンジニアリング製卓上荷重試験機FTN1-13Aを用い、成型体触媒15粒の圧壊強度を測定し、その平均値を用いた。
【0081】
(X線回折測定結果)
触媒A、触媒Bおよび触媒Cについて、X線回折測定を行った。結果を
図1に示す。触媒A、触媒Bおよび触媒Cのいずれも、25.3°(±0.1°)、37.8°(±0.1°)、48.1°(±0.1°)、53.9°(±0.1°)、55.1°(±0.1°)に強い回折線が観測された。これらは、アナターゼ型酸化チタンの回折線である。触媒Aでは、アナターゼ型酸化チタンの回折線に加えて、30.3°(±0.3°)、50.3°(±0.3°)にも弱い回折線が観測された。これらは正方晶ジルコニアの回折線であり、触媒Aにおいて、ジルコニアは正方晶の形で酸化チタンに担持されていることがわかる。触媒Cにもジルコニアが担持されているが、正方晶ジルコニアの回折線は明瞭には観察されていない。ジルコニア担持酸化チタンcを得る際の焼成温度が450℃と低かったために、触媒Cにおいては、ジルコニアが十分に結晶化していないものと推測される。
【0082】
《X線回折測定方法》
X線回折測定は、グラファイトモノクロメータを備えたX線回折計(島津製作所製XRD-6100)を用いて、次の条件で行った。
X線源:X線管(Cuターゲット、管電圧40kV、管電流40mA)から放射されるCu-Kα線(0.1542nm)。
測定条件:ステップスキャン法、0.02°ステップ、各ステップでの積算時間1.2秒、検出スリット0.15mm。
【0083】
(メタン化活性の評価結果)
触媒A、触媒Bおよび触媒Cのそれぞれについて、メタン化活性を評価した。結果を表2に示す。
【0084】
【0085】
《メタン化活性の評価方法》
ステンレス製反応管(内径24mm)に触媒5mLを充填し、触媒層を形成した。そして、この触媒層の温度を250℃に保持するように加熱しながら、窒素ガスに10%の水素ガス(体積基準)を混合した還元ガスを毎時150リットル(0℃、1気圧の標準状態における体積、以下同様)で流通し、3時間還元処理を行った。
【0086】
上記還元処理後、触媒層の温度を225℃に変更し、反応管内の圧力を0.7MPa(絶対圧)に保って、二酸化炭素2%と水素8%(いずれも体積基準)を含む窒素ガス(試験ガス)を毎時150リットルの流量で触媒層に流通し、触媒層出口ガス中の二酸化炭素、水素、窒素、およびメタン濃度を、ガスクロマトグラフ(島津製作所製GC―14B、TCD検出器付き)で分析した。その後、試験ガスを流通したまま、触媒層の温度を250℃、300℃に順次変更し、同様に触媒層出口ガスをガスクロマトグラフで分析した。
触媒層出口ガスのメタンおよび二酸化炭素濃度(いずれも体積%)から、試験ガス中のCO2の転化率を次の式により計算した。なお、触媒層出口ガスに一酸化炭素は検出されなかった。
【0087】
(CO2転化率[%])=100×(CH4濃度)/{(CH4濃度)+(CO2濃度)}
【0088】
《実施例および比較例の評価》
BET比表面積は、触媒Aが28.9m2/g、触媒Bが30.6m2/g、触媒Cが32.1m2/gで、触媒AのBET比表面積は、触媒BのBET比表面積よりも、わずかに小さくなった。触媒Aは、ジルコニア担持酸化チタンaを得る過程で、空気中700℃での焼成工程を経ており、その過程で比表面積が低下したものと推測される。しかしながら、その低下度合いはわずかであった。逆に、触媒CのBET比表面積は、触媒BのBET比表面積よりも、わずかに大きくなり、担持されたジルコニアが、十分に焼結せずに、比表面積の高い状態で酸化チタンに担持されていると推測される。
【0089】
触媒Aおよび触媒Bに担持されたルテニウムの濃度は、いずれも1.7wt%と同等であった。また、担持されたルテニウムの分散度は、触媒Aでは0.52、触媒Bでは0.53と明確な差は見られなかった。特許文献5には、酸化チタン担体にルテニウムをスパッタリング法で担持する際に、ジルコニアを同時に担持した場合には、ルテニウムの粒径が小さくなる、すなわちルテニウムが高分散になると記載されている。しかしながら、本発明の方法で得られた、酸化チタンにルテニウムおよびジルコニアを担持した触媒では、酸化チタンにルテニウムのみを担持した触媒と、ルテニウムの分散度において同程度であった。
【0090】
一方で、メタン化反応に対する活性では、触媒Aは触媒Bよりも顕著に優れており、特に低温域(225℃~250℃)での活性は、大きな向上がみられた。
【0091】
触媒Aおよび触媒Bの担持量およびルテニウムの分散度が同等であるにもかかわらず、触媒Aのほうが高い活性を示した。これは、ルテニウム表面積当たりで比較して、触媒Aの活性は、触媒Bの活性よりも高いことを示しており、酸化チタン上に担持されたジルコニアとルテニウムとの間に何らかの相互作用を生じて、活性を向上させたものと推測される。
【0092】
触媒Cのルテニウム担持量は、触媒Aおよび触媒Bのルテニウム担持量と同程度であり、分散度はやや高かった。225℃でのメタン化活性は、触媒Bよりも顕著に高かった。しかし、触媒Cの250℃および300℃でのメタン化活性は、触媒Bと同程度か、むしろ劣っていた。この結果からは、ジルコニアが正方晶として存在していると、幅広い温度域で高いメタン化活性が得られることを示している。
【0093】
圧壊強度に関しては、本発明の触媒Aは、触媒Bと比較して顕著な強度の向上が見られた。酸化チタン成型体にジルコニアを担持してから焼成することで、酸化チタンの焼結による比表面積の低下を抑制しつつ、成型体としての強度が増大したものと推測される。触媒Cにおいても、触媒Bと比較して強度の向上が見られた。
【0094】
以上の結果から、本発明のメタン化触媒成型体が、高い低温活性と、工業的に利用可能な十分な強度を具備することが明らかである。
【0095】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、たとえば、二酸化炭素と水素とを反応させて都市ガスとして利用できるメタンを主成分とする燃料ガスを製造するための触媒として利用することができる。