(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035100
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】積層体、積層体の製造方法、光学部材、及び画像表示装置
(51)【国際特許分類】
B32B 27/34 20060101AFI20240306BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20240306BHJP
B05D 7/02 20060101ALI20240306BHJP
G02B 1/14 20150101ALI20240306BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
B32B27/34
B05D7/24 302P
B05D7/24 302X
B05D7/02
B05D7/24 302Z
G02B1/14
G02B5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023125127
(22)【出願日】2023-07-31
(31)【優先権主張番号】P 2022137599
(32)【優先日】2022-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201732
【弁理士】
【氏名又は名称】松縄 正登
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(74)【代理人】
【識別番号】100227019
【弁理士】
【氏名又は名称】安 修央
(72)【発明者】
【氏名】河野 文彦
(72)【発明者】
【氏名】橋本 尚樹
【テーマコード(参考)】
2H149
2K009
4D075
4F100
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AA18
2H149AB16
2H149BA02
2H149CA02
2H149EA12
2H149FA02Z
2H149FA08X
2H149FD22
2H149FD25
2H149FD32
2H149FD41
2K009AA15
2K009BB28
2K009CC24
4D075BB26Z
4D075BB37Z
4D075BB92Y
4D075CA02
4D075CA13
4D075CA32
4D075CA47
4D075CA48
4D075CB06
4D075DB31
4D075DB33
4D075EB14
4D075EB22
4D075EB24
4D075EB39
4D075EB52
4D075EB56
4D075EC07
4D075EC54
4F100AJ06A
4F100AK01A
4F100AK25B
4F100AK26B
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100CB00C
4F100EH46
4F100EJ08
4F100EJ54
4F100GB41
4F100JA07B
4F100JK06
4F100JK12B
4F100JL09
4F100JN01
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】 本発明は、耐候性試験後においても樹脂基材と樹脂層の間の密着性に優れる、積層体の製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】 本発明の積層体は、樹脂基材の少なくとも一方の面上に樹脂層を積層した積層体であって、前記樹脂層が、無溶媒型硬化性樹脂組成物の硬化物で形成され、前記無溶媒型硬化性樹脂組成物が、(メタ)アクリルアミド及びその誘導体の少なくとも一方を含むことを特徴とする。また、本発明の積層体の製造方法は、樹脂基材と樹脂層とを含む積層体の製造方法であって、前記樹脂基材の少なくとも一方の面上に前記樹脂層を形成する、樹脂層形成工程を含み、前記樹脂層形成工程が、前記樹脂基材上に無溶媒型硬化性樹脂組成物を塗工して塗工層を形成する塗工工程と、前記塗工層を硬化させる硬化工程とを含み、前記無溶媒型硬化性樹脂組成物が、(メタ)アクリルアミド及びその誘導体の少なくとも一方を含むことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基材の少なくとも一方の面上に樹脂層を積層した積層体であって、
前記樹脂層が、無溶媒型硬化性樹脂組成物の硬化物で形成され、
前記無溶媒型硬化性樹脂組成物が、(メタ)アクリルアミド及びその誘導体の少なくとも一方を含み、
前記無溶媒型硬化性樹脂組成物が、実質的に溶媒を含まないことを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記樹脂基材と前記樹脂層との間の碁盤目密着性試験の密着率が、紫外線域の耐候性試験(ピーク波長380nm、照射強度500W/m2、照射時間240時間、温度63℃)において、70%以上である請求項1記載の積層体。
【請求項3】
前記樹脂基材が、トリアセチルセロース基材である請求項1または2記載の積層体。
【請求項4】
前記樹脂層が、ひっかき硬度(鉛筆法)が500g荷重で2H以上であり、かつ、スチールウール摩耗試験において400g荷重で傷が4本以下である請求項1または2記載の積層体。
【請求項5】
前記樹脂基材と前記樹脂層との間に、前記樹脂基材が溶解した成分と前記樹脂層の硬化前の組成物が混ざり合うことで形成される相溶層を含まない請求項1または2記載の積層体。
【請求項6】
前記樹脂基材の一方の面上に前記樹脂層が形成され、他方の面上に粘接着層が形成されている請求項1または2記載の積層体。
【請求項7】
前記無溶媒型硬化性樹脂組成物に含まれる溶媒の含有量が、前記無溶媒型硬化性樹脂組成物全体の重量に対して、0重量%以上0.10重量%未満である、請求項1または2記載の積層体。
【請求項8】
樹脂基材と樹脂層とを含む積層体の製造方法であって、
前記樹脂基材の少なくとも一方の面上に前記樹脂層を形成する、樹脂層形成工程を含み、
前記樹脂層形成工程が、前記樹脂基材上に無溶媒型硬化性樹脂組成物を塗工して塗工層を形成する塗工工程と、前記塗工層を硬化させる硬化工程とを含み、
前記無溶媒型硬化性樹脂組成物が、(メタ)アクリルアミド及びその誘導体の少なくとも一方を含むことを特徴とする、
積層体の製造方法。
【請求項9】
前記無溶媒型硬化性樹脂組成物が、分子量60~800g/molのモノマーを含む請求項8記載の積層体の製造方法。
【請求項10】
前記樹脂基材が、トリアセチルセルロース基材である請求項8または9記載の積層体の製造方法。
【請求項11】
前記樹脂層が、ひっかき硬度(鉛筆法)が500g荷重で2H以上であり、かつ、スチールウール摩耗試験において400g荷重で傷が4本以下である請求項8または9記載の積層体の製造方法。
【請求項12】
前記樹脂基材と前記樹脂層との間の碁盤目密着性試験の密着率が、紫外線域の耐候性試験(ピーク波長380nm、照射強度500W/m2、照射時間240時間、温度63℃)において、70%以上である請求項8または9記載の積層体の製造方法
【請求項13】
製造される積層体が請求項1または2記載の積層体である、請求項8または9記載の積層体の製造方法。
【請求項14】
請求項1記載の積層体を含む光学部材。
【請求項15】
ハードコートフィルムである請求項14記載の光学部材。
【請求項16】
偏光板である請求項14記載の光学部材。
【請求項17】
請求項1または2記載の積層体、または請求項14から16のいずれか一項に記載の光学部材を含む画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体、積層体の製造方法、光学部材、及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置等に用いる積層体には、画面の傷付き等を防止するために、樹脂基材表面に樹脂層が形成されたものがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記のような樹脂層を形成するためには、通常、樹脂層を形成するための塗工液に希釈溶媒を混合して、適度な流動性を有するよう粘度が調整される。
【0005】
一方で上記の希釈溶媒が、例えば有機溶媒である場合に、希釈溶媒が樹脂基材表面を侵すため、樹脂層を形成した際、樹脂基材と樹脂層との間が脆弱になる。このように形成された脆弱な部分(以下、単に「脆弱層」という場合もある。)は耐候性に乏しいため、樹脂基材と樹脂層との間の密着性を低下させる原因となる。
【0006】
そこで、本発明は、樹脂基材と樹脂層の間の密着性に優れる、積層体、積層体の製造方法、光学部材、及び画像表示装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の積層体は、
樹脂基材の少なくとも一方の面上に樹脂層を積層した積層体であって、
前記樹脂層が、無溶媒型硬化性樹脂組成物の硬化物で形成され、
前記無溶媒型硬化性樹脂組成物が、(メタ)アクリルアミド及びその誘導体の少なくとも一方を含み、
前記無溶媒型硬化性樹脂組成物が、実質的に溶媒を含まないことを特徴とする。
【0008】
本発明の積層体の製造方法は、
樹脂基材と樹脂層とを含む積層体の製造方法であって、
前記樹脂基材の少なくとも一方の面上に前記樹脂層を形成する、樹脂層形成工程を含み、
前記樹脂層形成工程が、前記樹脂基材上に無溶媒型硬化性樹脂組成物を塗工して塗工層を形成する塗工工程と、前記塗工層を硬化させる硬化工程とを含み、
前記無溶媒型硬化性樹脂組成物が、(メタ)アクリルアミド及びその誘導体の少なくとも一方を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明の光学部材は、本発明の積層体を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明の画像表示装置は、本発明の積層体、または本発明の光学部材を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、樹脂基材と樹脂層の間の密着性に優れる、積層体の製造方法、積層体、光学部材、及び画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1(a)及び(b)は、本発明の積層体の構成を例示する断面図である。
【
図2】
図2(a)及び(b)は、本発明の積層体の構成における別の例を示す断面図である。
【
図3】
図3(a)及び(b)は、本発明の積層体の構成におけるさらに別の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
つぎに、本発明について、例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により、なんら限定されない。
【0014】
本発明において、特に断らない限り、「質量%」と「重量%」とは互いに読み替えてもよく、「質量部」と「重量部」とは互いに読み替えてもよい。
【0015】
本発明において、「上に」または「面上に」は、上に、または面上に直接接触した状態でもよいし、他の層等を介した状態でもよい。
【0016】
本発明において、「粘接着層」は、粘着剤及び接着剤の少なくとも一方により形成された層をいう。本発明において、「粘接着層」は、特に断らない限り、粘着剤により形成された「粘着剤層」であってもよく、接着剤により形成された「接着剤層」であってもよく、粘着剤及び接着剤の両方を含む層であってもよい。また、本発明において、粘着剤と接着剤とをまとめて「粘接着剤」という場合がある。一般的に、粘着力または接着力が比較的弱い剤(例えば、被接着物の再剥離が可能な剤)を「粘着剤」と呼び、粘着力または接着力が比較的強い剤(例えば、被接着物の再剥離が不可能であるか、またはきわめて困難な剤)を「接着剤」と呼んで区別する場合がある。本発明において、粘着剤と接着剤とに明確な区別は無い。また、本発明において、「粘着力」と「接着力」とに明確な区別はない。
【0017】
本発明の積層体は、例えば、前記樹脂基材と前記樹脂層との間の碁盤目密着性試験の密着率が、紫外線域の耐候性試験(ピーク波長380nm、照射強度500W/m2、照射時間240時間、温度63℃)において、70%以上であってもよい。
【0018】
本発明の積層体は、例えば、前記樹脂基材が、トリアセチルセロース基材であってもよい。
【0019】
本発明の積層体は、例えば、前記樹脂層が、ひっかき硬度(鉛筆法)が500g荷重で2H以上であり、かつ、スチールウール摩耗試験において400g荷重で傷が4本以下あってもよい。
【0020】
本発明の積層体は、例えば、前記樹脂基材と前記樹脂層との間に、前記樹脂基材が溶解した成分と前記樹脂層の硬化前の組成物が混ざり合うことで形成される相溶層を含まなくてもよい。
【0021】
本発明の積層体は、例えば、前記樹脂基材の一方の面上に前記樹脂層が形成され、他方の面上に粘接着層が形成されていてもよい。
【0022】
本発明の積層体の製造方法は、例えば、前記無溶媒型硬化性樹脂組成物が、分子量60~800g/molのモノマーを含んでもよい。
【0023】
本発明の積層体の製造方法は、例えば、前記樹脂基材が、トリアセチルセロース基材であってもよい。
【0024】
本発明の積層体の製造方法は、例えば、前記樹脂層が、ひっかき硬度(鉛筆法)が500g荷重で2H以上であり、かつ、スチールウール摩耗試験において400g荷重で傷が4本以下であってもよい。
【0025】
本発明の積層体の製造方法は、例えば、前記樹脂基材と前記樹脂層との間の碁盤目密着性試験の密着率が、紫外線域の耐候性試験(ピーク波長380nm、500W/m2、照射時間240時間、温度63℃)において、70%以上であってもよい。
【0026】
本発明の積層体の製造方法は、例えば、製造される積層体が本発明の積層体であってもよい。
【0027】
本発明の光学部材は、例えば、ハードコートフィルムであってもよい。
【0028】
本発明の光学部材は、例えば、偏光板であってもよい。
【0029】
[1.積層体、積層体の製造方法]
図1(a)の断面図に、本発明の積層体、及び本発明の製造方法により製造される積層体における構成の一例を示す。図示のとおり、この積層体10は、樹脂基材11の片面に樹脂層12が直接積層されている。また、
図1(b)の断面図に、本発明の積層体における構成の別の一例を示す。図示のとおり、この積層体10aは、樹脂基材11の両面に樹脂層12が直接積層されている。
【0030】
また、
図2(a)の積層体10bは、図示のとおり、樹脂基材11の片面に、樹脂層12が表面処理層13を介して積層されている。この積層体10bは、樹脂基材11と樹脂層12との間に表面処理層13が存在していること以外は、
図1(a)の積層体10と同じである。表面処理層13は、コロナ処理、または易接着処理等により形成された層である。
図2(b)の積層体10cは、図示のとおり、樹脂基材11の両面に樹脂層12が表面処理層13を介して積層されている。この積層体10cは、樹脂基材11とそれぞれの樹脂層12との間に表面処理層13が存在していること以外は、
図1(b)の積層体10aと同じである。表面処理層13は、
図2(a)と同様に、コロナ処理、または易接着処理等により形成された層である。
【0031】
また、本発明の積層体、及び本発明の製造方法により製造される積層体は、前記樹脂基材、前記樹脂層、及び前記表面処理層以外の他の構成要素を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。前記他の構成要素も特に限定されないが、例えば、粘接着層等であってもよい。
図3に、そのような本発明の積層体の例を示す。
図3(a)の積層体10dは、図示のとおり、樹脂基材11における樹脂層12と反対側の面上に粘接着層14が直接接触して設けられていること以外は
図1(a)の積層体10と同じである。
図3(b)の積層体10eは、図示のとおり、樹脂層12における樹脂基材11と反対側の面上に、表面処理層13を介して粘接着層14が設けられている。しかし、本発明はこれに限定されず、例えば、粘接着層14と樹脂基材11又は表面処理層13との間に他の構成要素が存在していてもよい。前記他の構成要素も特に限定されないが、例えば、光学機能層でもよい。前記光学機能層も特に限定されず、例えば、一般的な光学フィルムに用いられる光学機能層でもよく、例えば、マイクロレンズフィルム、プリズムフィルム、拡散フィルム、偏光反射フィルム、偏光フィルム、位相差フィルム、高屈折率層等であってもよい。
【0032】
本発明における、前記樹脂基材は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー等があげられる。また、前記樹脂基材の形成材料としては、例えば、ポリスチレン、アクリロニトリル‐スチレン共重合体等のスチレン系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン‐プロピレン共重合体等のオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー等もあげられる。さらに、前記樹脂基材の形成材料としては、例えば、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマーや前記ポリマーのブレンド物等もあげられる。前記樹脂基材は、光透過性を有してもよいし、有さなくてもよい。
【0033】
本発明における、前記樹脂基材の形成材料としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアリールフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリウレタン樹脂、アセタール樹脂、セルロース樹脂等があげられ、前記形成材料のブレンド物等であってもよく、高透過性の観点から、好ましくは、セルロース樹脂、アクリル樹脂、及び環状オレフィン樹脂である。
【0034】
前記セルロース樹脂としては、例えば、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート(トリアセチルセルロース)、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等のセルロースエステル;メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロースエーテル;ニトロセルロース等があげられる。
【0035】
前記アクリル樹脂としては、例えば、メタクリル酸アルキルエステル又はアクリル酸アルキルエステルの単独重合体や、メタクリル酸アルキルエステルとアクリル酸アルキルエステルとの共重合体等があげられる。メタクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート等があげられ、アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレートなどがあげられる。
【0036】
前記環状オレフィン樹脂としては、例えば、ノルボルネン樹脂等があげられる。
【0037】
また、本発明における前記樹脂基材は、例えば、複数種類の樹脂基材を含む積層体であってもよく、複数種類の樹脂が混合された樹脂基材であってもよい。
【0038】
また、前記樹脂基材は、例えば、前記樹脂基材の少なくとも一方の面に、コロナ処理、易接着処理等の表面処理を行ったものを使用してもよい。前記表面処理は、例えば、前記樹脂層形成工程の前に表面処理工程を設けて行ってもよいし、前記樹脂層形成工程と同一の行程で同時に行ってもよい。
【0039】
前記樹脂基材の厚みは、特に制限されないが、例えば、強度、取り扱い性などの作業性および薄層性などの点を考慮すると、10~500μmの範囲が好ましく、より好ましくは20~300μmの範囲であり、最適には、30~200μmの範囲である。前記樹脂基材が光透過性を有する場合、屈折率は、特に制限されないが、例えば、1.30~1.80または1.40~1.70の範囲である。
【0040】
本発明における、前記無溶媒型硬化性樹脂組成物は、(メタ)アクリルアミド及びその誘導体の少なくとも一方を含む。なお、本発明において、「(メタ)アクリル」は、「アクリル及びメタクリルの少なくとも一方」を意味する。「(メタ)アクリルアミド」は、「アクリルアミド及びメタクリルアミドの少なくとも一方」を意味する。「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも一方」を意味する。「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート及びメタクリレートの少なくとも一方」を意味する。
【0041】
前記(メタ)アクリルアミド及びその誘導体は、例えば、前記樹脂基材と前記樹脂層との耐候性試験後の密着率を向上させる。前記(メタ)アクリルアミド及びその誘導体は、例えば、環状構造を含んでもよいし、環状構造を含まなくてもよい。本発明において「(メタ)アクリルアミド誘導体」は、例えば、(メタ)アクリルアミドにおけるアミノ基の水素原子の少なくとも一つが置換基で置換された化合物であってもよい。前記置換基は、例えば、前記アミノ基の窒素原子と共に環を形成していてもよい。前記置換基が直鎖アルキル基または分枝アルキル基を含む場合、アルキル基の炭素数は、例えば、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、または6以上であってもよく、例えば、18以下、16以下、14以下、12以下、10以下、または8以下であってもよい。前記アルキル基は、例えば、1または複数の置換基で置換されていても置換されていなくてもよい。前記置換基は、例えば、水酸基、アミノ基、アルコキシ基、メルカプト基等があげられ、複数の場合は、同一でも異なっていてもよい。前記置換基が前記アミノ基の窒素原子と共に環を形成している場合、環員数は、例えば、5、6、7、8、又は9であってもよい。
【0042】
(メタ)アクリルアミド誘導体は、例えば、N‐メチル(メタ)アクリルアミド、N,N‐ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N‐ジエチル(メタ)アクリルアミド、N‐イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N‐ブチル(メタ)アクリルアミド、N‐ヘキシル(メタ)アクリルアミドなどのN-アルキル基含有(メタ)アクリルアミド誘導体;N‐メチロール(メタ)アクリルアミド、N‐ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N‐メチロール-N-プロパン(メタ)アクリルアミドなどのN‐ヒドロキシアルキル基含有(メタ)アクリルアミド誘導体;アミノメチル(メタ)アクリルアミド、アミノエチル(メタ)アクリルアミドなどのN‐アミノアルキル基含有(メタ)アクリルアミド誘導体;N‐メトキシメチルアクリルアミド、N‐エトキシメチルアクリルアミドなどのN‐アルコキシ基含有(メタ)アクリルアミド誘導体;メルカプトメチル(メタ)アクリルアミド、メルカプトエチル(メタ)アクリルアミドなどのN‐メルカプトアルキル基含有(メタ)アクリルアミド誘導体;などがあげられる。また、(メタ)アクリルアミド基の窒素原子が環を形成している複素環含有(メタ)アクリルアミド誘導体としては、例えば、N‐アクリロイルモルフォリン、N‐アクリロイルピペリジン、N‐メタクリロイルピペリジン、N‐アクリロイルピロリジンなどがあげられる。前記(メタ)アクリルアミド及びその誘導体は、例えば、1種類のみ用いても、複数種類を併用してもよい。
【0043】
また、前記無溶媒型硬化性樹脂組成物は、例えば、(メタ)アクリル酸及びその誘導体の少なくとも一方を含んでもよい。前記(メタ)アクリル酸誘導体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸塩等があげられる。前記(メタ)アクリル酸及びその誘導体は、例えば、1種類のみ用いても、複数種類を併用してもよい。
【0044】
前記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸の直鎖または分枝アルキルエステル等があげられる。前記(メタ)アクリル酸の直鎖または分枝アルキルエステルにおいて、アルキル基の炭素数は、例えば、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、または6以上であってもよく、例えば、18以下、16以下、14以下、12以下、10以下、または8以下であってもよい。前記アルキル基は、例えば、1または複数の置換基で置換されていても置換されていなくてもよい。前記置換基は、例えば、水酸基等があげられ、複数の場合は、同一でも異なっていてもよい。
【0045】
前記(メタ)アクリル酸エステルは、例えば、1官能性であってもよく、多官能性であってもよい。多官能性である場合、前記(メタ)アクリル酸エステルは、例えば、2~10官能性、3~10官能性である。
【0046】
前記(メタ)アクリル酸エステルは、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロトリエン(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、アルキルオキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変成テトラフルフリル(メタ)アクリレート、エトキシカルボニルメチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルカルビトールアクリレート、1,4-ブタンジオール(メタ)アクリレート、アクリルニトリルブタジエンメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-メタクリルプロピル(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、ビス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス-(2-メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、ポリペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート等があげられる。前記(メタ)アクリル酸エステルは、例えば、1種類のみ用いても、複数種類を併用してもよい。
【0047】
前記(メタ)アクリル酸塩は、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、又はアンモニウム塩等があげられる。前記アルカリ金属塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等があげられる。前記アルカリ土類金属塩としては、例えば、マグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩等があげられる。前記(メタ)アクリル酸塩は、例えば、1種類のみ用いても、複数種類を併用してもよい。
【0048】
前記無溶媒型硬化性樹脂組成物は、例えば、分子量60~800g/molのモノマーを含んでもよい。前記モノマーは、例えば、前記(メタ)アクリルアミド、前記(メタ)アクリル酸、及び前記(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。前記分子量は、例えば、60g/mol以上、70g/mol以上、80g/mol以上、90g/mol以上、100g/mol以上、または200g/mol以上であってもよく、800g/mol以下、700g/mol以下、600g/mol以下、500g/mol以下、400g/mol以下、または300g/mol以下であってもよい。また、前記無溶媒型硬化性樹脂組成物の粘度を下げるために、前記モノマーは、前記(メタ)アクリルアミドのモノマーであることが好ましい。
【0049】
本発明における無溶媒型硬化性樹脂組成物は、実質的に溶媒を含まない硬化性樹脂組成物をいう。すなわち、実質的に溶媒を含む硬化性樹脂組成物は、本発明における無溶媒型硬化性樹脂組成物に該当しない。前記溶媒は、特に限定されないが、例えば、有機溶媒等の希釈溶媒であり、具体的には、例えば、後述する各溶媒等があげられる。「実質的に溶媒を含む硬化性樹脂組成物」は、例えば、希釈等を目的として有機溶剤等が添加されたものであり、前記有機溶剤等を加熱工程等で乾燥した後又は乾燥と同時に樹脂を硬化させるタイプの樹脂組成物である。例えば、本発明における無溶媒型硬化性樹脂組成物に対して溶媒を加えたものは、「実質的に溶媒を含む硬化性樹脂組成物」に該当する。なお、本発明において、「実質的に溶媒を含まない」とは、例えば、後述する実施例記載の密着率評価方法により、「OK」と判定される量の溶媒含有量である。本発明において、前記無溶媒型硬化性樹脂組成物が「実質的に溶媒を含まない」は、前記無溶媒型硬化性樹脂組成物が溶媒を全く含まないことが好ましいが、若干の溶媒を含んでいてもよい。本発明において、前記無溶媒型硬化性樹脂組成物が「実質的に溶媒を含まない」は、例えば、前記無溶媒型硬化性樹脂組成物に含まれる溶媒の含有量が、前記無溶媒型硬化性樹脂組成物全体の重量に対して、0重量%である(すなわち、前記無溶媒型硬化性樹脂組成物が溶媒を全く含まない)ものをいう。また、例えば、前記無溶媒型硬化性樹脂組成物に含まれる溶媒の含有量が、前記無溶媒型硬化性樹脂組成物全体の重量に対して、下限値が、0重量%を超え、上限値が、0.10重量%未満、0.08重量%以下、又は0.07重量%以下であるものをいう。
【0050】
前記溶媒は、例えば、水や有機溶媒等であり、前記硬化物の骨格形成に寄与しないものをいう。また、本発明における硬化性樹脂組成物は、例えば、光(紫外線等)、または電子線等の照射による重合により硬化する樹脂組成物をいう。前記有機溶媒は、特に限定されないが、例えば、塗液の希釈溶媒として使用される一般的な有機溶媒であり、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、ブタノール、t‐ブチルアルコール(TBA)、2‐メトキシエタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ジイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等があげられる。また、例えば、前記溶媒が、炭化水素溶媒と、ケトン溶媒とを含んでいてもよい。前記炭化水素溶媒は、例えば、芳香族炭化水素であってもよい。前記芳香族炭化水素は、例えば、トルエン、o‐キシレン、m‐キシレン、p‐キシレン、エチルベンゼン、およびベンゼンからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。前記ケトン溶媒は、例えば、シクロペンタノン、およびアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、アセトフェノンからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。したがって、本発明の樹脂組成物は、実質的に溶媒(例えば、前記希釈溶媒)を含まないため、前記樹脂基材のうち、例えば、耐溶剤性が乏しい樹脂基材を使用する場合に前記樹脂基材へのダメージを軽減できたり、あるいは前記樹脂基材の溶解を抑制できる。前記耐溶剤性が乏しい樹脂基材は、特に限定されないが、例えば、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー等があげられる。
【0051】
本発明は、前記無溶媒型硬化性樹脂組成物を使用するため、従来、塗液の粘度を調整するために使用していた有機溶媒を削減できる。したがってCO2を削減できる点に効果がある。また、前記無溶媒型硬化性樹脂組成物を使用することで、溶媒を使用した場合と比較して積層体としてのヘイズ値を下げる効果もある。さらに、耐候性試験後の条件であっても密着性を確保できる点に発明の効果がある。
【0052】
本発明の積層体において、前記樹脂基材と前記樹脂層との間の碁盤目密着性試験の密着率は、前述のとおり、紫外線域の耐候性試験(ピーク波長380nm、照射強度500W/m2、照射時間240時間、温度63℃)において、例えば、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、または100%であってもよい。前記密着率は、例えば、後述する実施例記載の方法により試験することができる。
【0053】
本発明において、前記樹脂層は、例えば、ひっかき硬度(鉛筆法)が500g荷重で2H以上であり、かつ、スチールウール摩耗試験において400g荷重で傷が4本以下であってもよい。前記ひっかき硬度(鉛筆法)、及び前記スチールウール摩耗試験は、例えば、後述する実施例記載の方法により試験することができる。
【0054】
本発明における、前記樹脂層の厚み(以下、単に「膜厚」という場合がある。)は、例えば、0.5μm以上、1μm以上、1.5μm以上、2μm以上、2.5μm以上、または3μm以上であってもよいし、30μm以下、20μm以下、15μm以下、10μm以下、8μm以下、7μm以下、6μm以下、5μm以下、または4μm以下であってもよい。
【0055】
本発明の積層体は、前述のとおり、例えば、前記樹脂基材と前記樹脂層との間に、前記樹脂基材が溶解した成分と前記樹脂層の硬化前の組成物が混ざり合うことで形成される相溶層を含まなくてもよい。前記相溶層は、例えば、前記樹脂層形成前の塗液に含まれる有機溶媒によって前記樹脂基材が溶け、溶けた前記樹脂基材の成分と前記塗液の成分とが混ざりあい形成されたものである。前記相溶層は、脆弱な層(脆弱層)であるため、例えば、前記相溶層を有する積層体は、耐候性が悪くなる。
【0056】
本発明の積層体は、例えば、全光線透過率が90%以上、92%以上、または95%以上であってもよく、例えば、97%以下、98%以下、または100%未満であってもよい。全光線透過率は、例えば、後述する実施例記載の方法により測定することができる。
【0057】
本発明の積層体は、例えば、ヘイズ値が0.35%以下、0.3%以下、または0.25%以下であってもよく、例えば、0.1%以上、0.15%以上、または0.2%以上であってもよい。ヘイズ値は、例えば、後述する実施例記載の方法により測定することができる。
【0058】
本発明の積層体は、前述のとおり、例えば、前記樹脂基材の一方の面上に前記樹脂層が形成され、他方の面上に粘接着層が形成されていてもよい。前記粘接着層を形成する粘着剤または接着剤は特に限定されず、例えば、一般的な粘着剤または接着剤等が使用できる。前記粘着剤または接着剤としては、例えば、アクリル系、ビニルアルコール系、シリコーン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリエーテル系等のポリマー製接着剤、ゴム系接着剤等があげられる。また、グルタルアルデヒド、メラミン、シュウ酸等のビニルアルコール系ポリマーの水溶性架橋剤等から構成される接着剤等もあげられる。粘着剤としては、例えば、前述した粘着剤があげられる。これら粘着剤および接着剤は、1種類のみ用いても、複数種類を併用(例えば、混合、積層等)しても良い。また、前記粘接着層の厚みは、特に制限されないが、例えば、0.1~100μm、5~50μm、10~30μm、または12~25μmである。
【0059】
本発明の積層体の製造方法は、前記樹脂基材の少なくとも一方の面上に樹脂層を形成する、樹脂層形成工程を含む。前記樹脂層形成工程は、例えば、前記樹脂基材の一方の面上にのみ前記樹脂層を形成してもよい。
【0060】
また、本発明の積層体の製造方法は、前記樹脂層形成工程が、前記樹脂基材上に前記無溶媒型硬化性樹脂組成物を塗工して塗工層を形成する塗工工程と、前記塗工層を硬化させる硬化工程とを含む。
【0061】
前記塗工工程は、例えば、ファウンテンコート法、ダイコート法、スプレーコート法、コンマコート法、グラビアコート法、ロールコート法、バーコート法等の塗工方法を用いることができる。
【0062】
前記硬化工程は、例えば、光(紫外線等)、または電子線等による硬化工程であってもよい。前記硬化工程が紫外線硬化である場合、紫外線の波長は、例えば、290~400nm、好ましくは320~400nm、さらに好ましくは330~380nmである。また、紫外線の照射時間は、例えば、1~10分、好ましくは1~5分、さらに好ましくは1~3分である。紫外線の照射強度は、例えば、10~200mW/cm2、好ましくは20~150mW/cm2、さらに好ましくは30~160mW/cm2である。また、エネルギー線源の照射量は、紫外線波長365nmでの積算露光量として、例えば、50~500mJ/cm2、好ましくは100~450mJ/cm2、さらに好ましくは150~400mJ/cm2である。照射量が、50mJ/cm2以上であれば、硬化が十分に進行しやすく、形成される樹脂層の硬度が高くなりやすい。また、500mJ/cm2以下であれば、形成される樹脂層の着色を防止することができる。前記硬化工程が電子線硬化である場合、線量は、樹脂基材を劣化、着色させないため、例えば、5~50kGy、好ましくは5~40kGyである。電子線の加速電圧は、100~3000kV、好ましくは150~300kVである。
【0063】
前記塗工工程は、前述のとおり、前記樹脂基材上に前記無溶媒型硬化性樹脂組成物を塗工して塗工層を形成する。したがって、本発明の積層体の製造方法は、例えば、前記塗工工程と前記硬化工程との間に乾燥工程を含まなくてもよい。本発明において、乾燥工程とは、例えば、基材に塗液を塗布した後の未乾燥の塗工面に熱を加え、塗液に含まれる希釈溶媒を蒸発させる工程をいう。前記乾燥工程を含まないということは、すなわち、前記希釈溶媒を乾燥する時間を削減することができるということであるため、例えば、ロールtoロール加工の場合、加工速度を早くすることができる。特に、乾燥時間がさらにかかる、水などを希釈溶媒とした場合と比べて、より効果がある。
【0064】
また、本発明の積層体の製造方法は、前記樹脂基材の一方の面上に前記樹脂層を形成し、他方の面上に前記粘接着層を形成する、粘接着層形成工程を含んでもよい。具体的には、例えば、前記樹脂基材上に、粘着剤または接着剤を塗布(塗工)することにより、前記粘接着層を形成しても良い。また、基材上に前記粘接着層が積層された粘着テープ等の、前記粘接着層側を、前記樹脂基材に貼り合せることにより、前記樹脂基材上に前記粘接着層を形成しても良い。この場合、前記粘着テープ等の基材は、そのまま貼り合せたままにしても良いし、前記粘接着層から剥離しても良い。
【0065】
本発明の積層体、及び本発明の製造方法により製造される積層体は、例えば、保護フィルムとして偏光板に使用することもでき、この場合には、前記樹脂基材としては、トリアセチルセルロース、ポリカーボネート、アクリル樹脂、アクリル系ポリマー、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン等から形成されたフィルムが好ましい。また、本発明において、前記樹脂基材は、偏光子自体であってもよい。このような構成であると、TAC等からなる保護層を不要とし偏光板の構造を単純化できるので、偏光板若しくは画像表示装置の製造工程数を減少させ、生産効率の向上が図れる。また、このような構成であれば、偏光板を、より薄層化することができる。なお、前記樹脂基材が偏光子である場合には、樹脂層が、従来の保護層としての役割を果たすことになる。また、このような構成であれば、積層体は、液晶セル表面に装着されるカバープレートとしての機能を兼ねることになる。
【0066】
[2.光学部材および画像表示装置]
本発明の光学部材は、例えば、ハードコートフィルムであってもよく、偏光板であってもよい。前記偏光板は、例えば、本発明の積層体を含み、前記積層体において、前記樹脂基材における前記樹脂層の反対側の面上に偏光子が配置されたものである。
【0067】
本発明の画像表示装置は、どのような画像表示装置でもよいが、例えば、液晶表示装置、有機EL表示装置等があげられる。
【0068】
本発明の積層体の用途は、特に限定されず、任意の用途に使用可能である。その用途としては、例えば、パソコンモニター、ノートパソコン、コピー機等のOA機器、携帯電話、時計、デジタルカメラ、携帯情報端末(PDA)、携帯ゲーム機等の携帯機器、ビデオカメラ、テレビ、電子レンジ等の家庭用電気機器、バックモニター、カーナビゲーションシステム用モニター、カーオーディオ等の車載用機器、商業店舗用インフォメーション用モニター等の展示機器、監視用モニター等の警備機器、介護用モニター、医療用モニター等の介護・医療機器等があげられる。
【実施例0069】
つぎに、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0070】
なお、以下の参考例、実施例および比較例において、各物質の部数(相対的な使用量)は、特に断らない限り、質量部(重量部)である。
【0071】
また、以下の実施例および比較例において、膜厚、全光線透過率、ヘイズ値、ひっかき硬度(鉛筆法)、耐擦傷性、及び密着率は、それぞれ、下記の方法により評価した。
【0072】
<膜厚>
反射分光膜厚計(FE-300 大塚電子(株)製)を用いて、ハードコート層表面の鏡面反射率スペクトルを測定した。鏡面反射率の実測値と理論式を用い、膜厚をフィッティングパラメーターとして、最小二乗法による膜厚を算出した。
【0073】
<全光線透過率、ヘイズ値>
樹脂層が設けられた樹脂基材の試験片(5cm×5cm)を準備し、全光線透過率及びヘイズを測定した。全光線透過率、及びヘイズは、それぞれJIS K7361、及びJIS K7136に準じて、ヘイズメーター(装置名;HM―150、村上色彩技術研究所社製)を用いて測定した。
【0074】
<ひっかき硬度(鉛筆法)>
JIS K 5600‐5‐4に準拠して行った。各種硬度の鉛筆を45度の角度で樹脂層の表面に当て、荷重をかけてひっかき試験を行い、傷がつかない最も硬い鉛筆の硬さをひっかき硬度とした。
【0075】
<耐擦傷性>
樹脂層が設けられた樹脂基材の試験片(5cm×5cm)を準備し、樹脂層が形成されていない面を下にして、ガラス板に載せた。直径25mmの円柱の平滑な断面に、スチールウール#0000を均一に取り付け、荷重400gにて上記試験片の樹脂層表面を、毎秒約100mmの速度で10往復した後に、サンプル表面に入った傷の本数を目視により数え、下記の指標により判定した。
【0076】
耐擦傷性評価基準
OK:傷の本数が、4本以下
NG:傷の本数が、5本以上
【0077】
<密着率>
下記の碁盤目密着性試験を行い、耐候性試験前(初期)の密着率を算出した。また、下記の耐候性試験を行った後に、下記の碁盤目密着性試験を行い、耐候性試験後の密着率を算出した。また、下記の指標により判定した。
【0078】
(碁盤目密着性試験)
樹脂層が設けられた樹脂基材の試験片(5cm×5cm)を準備し、碁盤目密着性試験を行った。碁盤目密着性試験は旧JIS K 5400の碁盤目テープ法に準じて、碁盤目を100個作り、その表面にセロハンテープを密着させ、剥がした後の樹脂層の残存数を数え、残存する碁盤目の割合から密着率を算出した。
【0079】
密着率評価基準
OK:初期及び耐候性試験後のいずれにおいても密着率が100%
NG:初期及び耐候性試験後のいずれかの密着率が100%未満
【0080】
(耐候性試験)
樹脂層が設けられた樹脂基材の試験片(5cm×5cm)を準備し、紫外線フェードメーター(装置名;U48、スガ試験機社製)にブラックパネルの温度を63℃として、分光放射照度のピークを波長380nmに有する紫外線(照射強度500W/m2)を240時間照射した。
【0081】
[実施例1]
トリアセチルセルロース基材(厚み40μm、富士フィルム(株)製)を準備し、前記トリアセチルセルロース基材の片面に、ペンタエリスリトールアクリレートを主成分とする紫外線硬化型樹脂モノマー(大阪有機化学工業株式会社製、商品名「ビスコート#300」)にN,N‐ジメチルアクリルアミドを主成分とする紫外線硬化型モノマー(KJケミカルズ(株)製)を混合させた無溶媒型硬化性樹脂組成物100部に対して、光重合開始剤(Omnirad127)3部を添加した塗工溶液を塗布し、熱オーブンには投入せず、紫外線照射(積算光量300mJ/cm2)を行い、塗膜を硬化させることにより、7μmの樹脂層を形成し、これによりトリアセチルセルロース基材面に樹脂層を有する実施例1の積層体を作製した。
【0082】
[実施例2]
塗工液として、N,N‐ジメチルアクリルアミドからN‐アクリロイルモルフォリン(KJケミカルズ(株)製)に変更したこと以外は実施例1と同様とした。
【0083】
[比較例1]
塗工液として、N,N‐ジメチルアクリルアミドから1,6‐ヘキサンジオールジアクリレート(大阪有機化学工業(株)製のビスコート#230)に変更したこと以外は実施例1と同様とした。
【0084】
[比較例2]
塗工溶液として、ウレタンアクリレートを主成分とする紫外線硬化型の硬化性樹脂組成物(DIC(株)製、商品名「ルクシディア17‐806」、固形分濃度80%)の固形分100部に対して、光重合開始剤(Omnirad127)5部、レベリング剤(DIC(株)製、製品名「GRANDIC PC4100」)0.01部を添加した。その後、前記溶液中の固形分濃度が36%となるようにシクロペンタノン(以下、「CPN」) とプロピレングリコールモノメチルエーテル(以下、「PGME」)を加え、塗工溶液を調整した。これを、前記トリアセチルセルロース基材の片面に塗布し、80℃で2分間乾燥し、紫外線照射(積算光量300mJ/cm2)を行い塗膜を硬化させることにより、7μmの樹脂層を形成し、これによりトリアセチルセルロース基材及びハードコート層を有する比較例2の積層体を作製した。
【0085】
このようにして得られた実施例および比較例の各積層体について、各種特性を測定もしくは評価した。その結果を、下記表1に示す。なお、すべての実施例及び比較例において、樹脂組成物の硬化性に問題はなかった。
【0086】
【0087】
前記表1に示すように、(メタ)アクリルアミド及びその誘導体の少なくとも一方を含む無溶媒型硬化性樹脂組成物を使用した実施例1及び2は、初期及び耐候性試験後の密着率がともに100%であり良好であった。また、反応性希釈剤として一般的に用いられるアクリレートを含む場合(比較例1)や、溶剤型硬化性樹脂を使用した場合(比較例2)と同等の全光線透過率、ヘイズを維持していた。
【0088】
膜厚が厚い場合、一般的に密着率が低下する傾向にあるが、実施例1のとおり、膜厚を7μmとしても高いひっかき硬度と耐擦傷性を維持しつつ、密着が良好であった。また、膜厚が薄い場合、一般的にひっかき硬度や耐擦傷性は低下する傾向にあるが、実施例2のとおり、膜厚を3μmとしても密着を維持しつつ、高いひっかき硬度と耐擦傷性を維持していた。
【0089】
これに対し、(メタ)アクリルアミド及びその誘導体の少なくとも一方を含む無溶媒型硬化性樹脂組成物を使用しなかった比較例1の積層体は、初期の密着率が悪かった。また、比較例2の積層体は、耐候性試験後の密着率が悪かった。
【0090】
<付記>
上記実施形態及び実施例の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載し得るが、以下には限定されない。
(付記1)
樹脂基材の少なくとも一方の面上に樹脂層を積層した積層体であって、
前記樹脂層が、無溶媒型硬化性樹脂組成物の硬化物で形成され、
前記無溶媒型硬化性樹脂組成物が、(メタ)アクリルアミド及びその誘導体の少なくとも一方を含み、
前記無溶媒型硬化性樹脂組成物が、実質的に溶媒を含まないことを特徴とする積層体。
(付記2)
前記樹脂基材と前記樹脂層との間の碁盤目密着性試験の密着率が、紫外線域の耐候性試験(ピーク波長380nm、照射強度500W/m2、照射時間240時間、温度63℃)において、70%以上である付記1記載の積層体。
(付記3)
前記樹脂基材が、トリアセチルセロース基材である付記1または2記載の積層体。
(付記4)
前記樹脂層が、ひっかき硬度(鉛筆法)が500g荷重で2H以上であり、かつ、スチールウール摩耗試験において400g荷重で傷が4本以下である付記1から3のいずれかに記載の積層体。
(付記5)
前記樹脂基材と前記樹脂層との間に、前記樹脂基材が溶解した成分と前記樹脂層の硬化前の組成物が混ざり合うことで形成される相溶層を含まない付記1から4のいずれかに記載の積層体。
(付記6)
前記樹脂基材の一方の面上に前記樹脂層が形成され、他方の面上に粘接着層が形成されている付記1から5のいずれかに記載の積層体。
(付記7)
前記無溶媒型硬化性樹脂組成物に含まれる溶媒の含有量が、前記無溶媒型硬化性樹脂組成物全体の重量に対して、0重量%以上0.10重量%未満である、請求項1から6のいずれかに記載の積層体。
(付記8)
樹脂基材と樹脂層とを含む積層体の製造方法であって、
前記樹脂基材の少なくとも一方の面上に前記樹脂層を形成する、樹脂層形成工程を含み、
前記樹脂層形成工程が、前記樹脂基材上に無溶媒型硬化性樹脂組成物を塗工して塗工層を形成する塗工工程と、前記塗工層を硬化させる硬化工程とを含み、
前記無溶媒型硬化性樹脂組成物が、(メタ)アクリルアミド及びその誘導体の少なくとも一方を含むことを特徴とする、
積層体の製造方法。
(付記9)
前記無溶媒型硬化性樹脂組成物が、分子量60~800g/molのモノマーを含む付記8記載の積層体の製造方法。
(付記10)
前記樹脂基材が、トリアセチルセルロース基材である付記8または9記載の積層体の製造方法。
(付記11)
前記樹脂層が、ひっかき硬度(鉛筆法)が500g荷重で2H以上であり、かつ、スチールウール摩耗試験において400g荷重で傷が4本以下である付記8から10のいずれかに記載の積層体の製造方法。
(付記12)
前記樹脂基材と前記樹脂層との間の碁盤目密着性試験の密着率が、紫外線域の耐候性試験(ピーク波長380nm、照射強度500W/m2、照射時間240時間、温度63℃)において、70%以上である付記8から11のいずれかに記載の積層体の製造方法
(付記13)
製造される積層体が付記1から7のいずれかに記載の積層体である、付記8から12のいずれかに記載の積層体の製造方法。
(付記14)
付記1から7のいずれかに記載の積層体を含む光学部材。
(付記15)
ハードコートフィルムである付記14記載の光学部材。
(付記16)
偏光板である付記14記載の光学部材。
(付記17)
付記1から7のいずれかに記載の積層体、または付記14から16のいずれかに記載の光学部材を含む画像表示装置。
以上、説明したとおり、本発明によれば、例えば、耐候性試験後の条件においても樹脂基材と樹脂層の間の密着性に優れる、積層体の製造方法、積層体、光学部材および画像表示装置を提供することができる。本発明の用途は特に限定されない。さらに、本発明の積層体の用途は、本発明の光学部材および画像表示装置に限定されず任意であり、広範な用途に使用可能である。