(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035101
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】構造化光走査システムと方法、並びにその画像プロジェクター
(51)【国際特許分類】
G02B 27/09 20060101AFI20240306BHJP
G01B 11/02 20060101ALI20240306BHJP
G01B 11/24 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
G02B27/09
G01B11/02 H
G01B11/24 K
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023126231
(22)【出願日】2023-08-02
(31)【優先権主張番号】17/901,469
(32)【優先日】2022-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】507033211
【氏名又は名称】奇景光電股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】呂引棟
(72)【発明者】
【氏名】郭漢▲イ▼
(72)【発明者】
【氏名】呉世▲チェン▼
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA25
2F065AA51
2F065AA53
2F065DD03
2F065FF04
2F065HH07
2F065JJ19
2F065JJ26
2F065LL04
2F065QQ08
2F065QQ25
(57)【要約】
【課題】画像プロジェクターを提供する。
【解決手段】異なる光パターンに切り替えながら放射する光源と、光源が放射するビームを整形することで整形光パターンを発生させるために用いられ、シーン中の対象物に投射するためのビームシェイパーと、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる光パターンに切り替えながら放射する光源と、
前記光源が放射するビームを整形することで整形光パターンを発生させるために用いられ、シーン中の対象物に投射するためのビームシェイパーと、を備えていることを特徴とする、
画像プロジェクター。
【請求項2】
前記光源は、複数のレーザーダイオードで構成され、異なる光パターンを形成するようにオンまたはオフになるように個別にプログラミングされるレーザーアレイを備えていることを特徴とする、請求項1に記載の画像プロジェクター。
【請求項3】
前記光源と前記ビームシェイパーとの間に設置されている少なくとも1つのレンズを更に備えていることを特徴とする、請求項1に記載の画像プロジェクター。
【請求項4】
ビームを放射するために用いられている光源であって、前記光源は、複数のレーザーダイオードで構成されているレーザーアレイを備えている光源と、
前記複数のレーザーダイオードをオンまたはオフにするように個別にプログラミングされ、異なる光パターンに切り替えながら放射し、シーン中の対象物に投射する制御装置と、
シーン中の物品から反射された反射光パターンをキャプチャし、前記制御装置にフィードバックして深さ及び表面の情報を決定するために用いられているカメラと、を備えていることを特徴とする、
構造化光走査システム。
【請求項5】
光源を提供し、異なる光パターンに切り替えながら放射するステップと、
前記光源が光パターンを有するビームをシーン中の対象物に放射するステップと、
シーン中の対象物から反射された反射光パターンの変形に基づいて深さ及び表面の情報を決定するステップと、
深さ及び表面の情報を決定するステップにおいて獲得したデコードレートが所定の臨界値より大きいかどうかを判断するステップと、
前記デコードレートが所定の臨界値より大きくない場合、光パターンを変更すると共に変更光パターンを有するビームをシーン中の対象物に放射するステップと、を含むことを特徴とする、
構造化光走査法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像プロジェクター(image projector)に関し、より詳しくは、プログラマブル(プログラム可能)光源を備えた画像プロジェクターであり、異なる光パターンを放射するように切り替え可能なものに関する。
【背景技術】
【0002】
画像プロジェクター(プロジェクターと略称する)は光学装置であり、(静止)画像または一連の画像(或いは、ビデオ周波数)を投影スクリーンの表面に投射する。
【0003】
プロジェクターは構造化光走査システムに適用可能であり、既知のパターン(例えば、格子や横縞)をシーン中の対象物に投射する。構造化光三次元スキャナーは光の反射が導く変形を分析し、シーン中の対象物の深さ及び表面の情報を算出する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の構造化光走査システムにおいて、プロジェクターの光源は固定構造を有し、対象物に対し同じ光パターンを放射する。このため、従来の構造化光走査システムはデコードレートが低く、ダイナミックレンジが狭いという欠点を有し、対象物の深さ及び表面の情報を正確に獲得できなかった。
【0005】
そこで、本発明者は従来のプロジェクターと構造化光走査システムの欠点が改善可能と考え、鋭意検討を重ねた結果、合理的設計で上記の課題を効果的に改善する本発明の提案に至った。
【0006】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、上述のような問題点を解決することを課題の一例とする。すなわち、本発明は、異なる光パターンを生成することにより、好ましい構造化光走査デコードレートを獲得するプログラマブル光源を有する画像プロジェクターを提供することを目的の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施態様によれば、本発明は画像プロジェクターが提供される。本発明に係る画像プロジェクターは、光源及びビームシェイパーを備えている。光源は異なる光パターンに切り替えながら放射する。ビームシェイパーは光源が放射するビームを整形することで整形光パターンを発生させるために用いられ、シーン中の対象物に投射する。
【0008】
本発明の他の実施態様によれば、本発明は構造化光走査システムが提供される。本発明に係る構造化光走査システムは、光源と、制御装置と、カメラと、を含んで構成されている。光源はビームを放射するために用いられ、前記光源は、複数のレーザーダイオードで構成されているレーザーアレイを備えている。制御装置は複数のレーザーダイオードをオンまたはオフにするように個別にプログラミングし、異なる光パターンに切り替えながら放射し、シーン中の対象物に投射する。カメラはシーン中の対象物から反射された反射光パターンをキャプチャし、制御装置にフィードバックして深さ及び表面の情報を決定するために用いられている。
【0009】
本発明のさらなる他の実施態様によれば、本発明は構造化光走査方法が提供される。本発明に係る構造化光走査方法は、下記ステップを含む。光源を提供し、異なる光パターンに切り替えながら放射するステップ。光源が光パターンを有するビームをシーン中の対象物に放射するステップ。シーン中の対象物から反射された反射光パターンの変形に基づいて、深さ及び表面の情報を決定するステップ。深さ及び表面の情報を決定するステップにおいて獲得したデコードレートが所定の臨界値より大きいかどうかを判断するステップ。デコードレートが所定の臨界値より大きくない場合、光パターンを変更すると共に変更光パターンを有するビームをシーン中の対象物に放射するステップ。
【0010】
本発明の他の目的、構成及び効果については、以下の発明の実施の形態の項から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施例に係る画像プロジェクターの概略構成を示したブロックである。
【
図2】
図1に示す(光源の)垂直共振器型面発光レーザー(VCSEL)の概略図である。
【
図3】(
図3A)
図1の光源の(プログラマブル)VCSELによって異なる時間に放射される(異なる)光のパターンである。 (
図3B)
図1の光源の(プログラマブル)VCSELによって異なる時間に放射される(異なる)光のパターンである。 (
図3C)
図1の光源の(プログラマブル)VCSELによって異なる時間に放射される(異なる)光パターンである。 (
図3D)本実施形態を用いないプログラマブル垂直共振器型面発光レーザーの光パターンを示す。
【
図4】(
図4A)回折光学素子・マイクロレンズアレイ・多焦点回折レンズを用いて光源から放射たビームを直接に整形する例示を説明する。 (
図4B)回折光学素子・マイクロレンズアレイ・多焦点回折レンズを使用して、光源から放射されたビームを、レンズを介して間接的に整形する例示を説明する。 (
図4C)液晶レンズを用いて光源から放射されたビームを直接に整形する例示を説明する。
【
図5】本発明の一実施例に係る構造化光走査システムを示したブロックである。
【
図6】本発明の一実施例に係る構造化光走査方法を示すフローチャートである。
【
図7】(
図7A)第6図に示すフローチャートの光パターンに適用する。 (
図7B)第6図に示すフローチャートの光パターンに適用する。 (
図7C)第6図に示すフローチャートの光パターンに適用する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、記述した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0013】
まず、図面を参照しながら、本発明に係る画像プロジェクター100をさらに詳しく説明する。
図1は本発明の一実施例に係る画像プロジェクター100の概略構成を示したブロックである。本実施例の画像プロジェクター100は、画像をシーン中の対象物の表面に投射し、スマートフォン、光学スキャン、顔認証、指向性表示、及びLiDARに応用可能であるが、本発明はこれらに限られない。
【0014】
本実施例に係る画像プロジェクター100は、(可視または不可視)ビームを放射するために用いられる光源11を備えている。本実施例において、光源11は、レーザービームを放射するためのレーザーアレイを備え、電磁放射によりトリガーされて放射する光学増幅過程(すなわち、放射によりトリガーされて放射することで光を増幅する)に基づいてレーザービームを放射する。一実施例では、(光源11の)レーザーアレイは半導体レーザーダイオードアレイで構成されている垂直共振器型面発光レーザー(VCSEL)を含み、レーザービームはその上面から垂直に放射される。
【0015】
図2は
図1に示す(光源11の)垂直共振器型面発光レーザー(VCSEL)の概略図である。
図2に示す如く、(プログラマブル)垂直共振器型面発光レーザーは行と列に配列される複数のレーザーダイオード111を備えている。本実施例の特徴の1つに基づいて、制御装置12(例えば、中央処理装置)は対応する信号線112により個別のレーザーダイオード111をオンまたはオフにし、信号線112は基板110に設置され、基板110はレーザーダイオード111を載置するために用いられている。これにより、(プログラマブル)垂直共振器型面発光レーザーのレーザーダイオード111が異なる光パターンを形成するように光を切り替えながら放射する。
【0016】
図3A乃至
図3Cは
図1の光源の(プログラマブル)VCSELによって異なる時間に放射される(異なる)光のパターンである。中実の点はレーザーダイオード111に対応する放射光を示し、中空の点はレーザーダイオード111に対応する未放射光を示す。
図3Dは本実施形態を用いないプログラマブル垂直共振器型面発光レーザーの光パターンを示す。
図3Dの例では、垂直共振器型面発光レーザーの全てのレーザーダイオードが同時に発光する。換言すれば、垂直共振器型面発光レーザーが放射する光パターンは固定されているか、変更不可能である。
【0017】
図1に戻って、本実施例に係る画像プロジェクター100は、光源11が放射するビームを整形することで整形光パターンを発生させ、シーン中の対象物に投射するためのビームシェイパー13を備えている。
【0018】
一実施例では、ビームシェイパー13は回折光学素子(diffractive optical element, DOE)、マイクロレンズアレイ(micro lens array, MLA)、または多焦点回折レンズ(multifocal diffractive lens, MDL)を含み、光源11から放射されたビームを整形及び分裂させ、単一の入射ビームを複数個所に同時に集光することで、整形光パターンを生成してシーン中の対象物に投射する。
図4Aは回折光学素子・マイクロレンズアレイ・多焦点回折レンズを用いて光源から放射されたビームを直接的に整形する例示を説明する。
【0019】
一実施例では、光源11とビームシェイパー13との間にはレンズが設置されておらず、レンズシステムが形成されていない。他の実施例では、画像プロジェクター100が、光源11とビームシェイパー13との間に設置されている少なくとも1つのレンズ14を備えている。レンズ14は光透過光学素子であり、屈折させることで(光源11からの)ビームを集光、コリメート、または発散させる。一実施例では、複数のレンズ14を含むと共に共有軸に沿って設置されている複合レンズを使用する。
【0020】
他の実施例では、レンズ14は光透過光学素子であり、屈折させることで(光源11からの)ビームを集光、コリメート、または発散させる。一実施例では、フレネル(Fresnel)レンズまたはメタ(Meta)レンズ14を使用しているが、本発明はこれらに限られない。
図4Bは回折光学素子・マイクロレンズアレイ・多焦点回折レンズを使用して、光源から放射されたビームをレンズを介して間接的に整形する例示を説明する。
【0021】
他の実施例では、ビームシェイパー13は、光源11から放射されたビームを整形及び分裂させ、整形光パターンを生成してシーン中の対象物に投射する液晶(LC)レンズを含む。
図4Cは液晶レンズを用いて光源から放射されたビームを直接的に整形する例示を説明する。
【0022】
図5は本発明の一実施例に係る構造化光走査システム500を示したブロックである。本実施例に係る構造化光走査システム500は
図1の画像プロジェクター100を含むが、その説明は繰り返さない。
【0023】
本実施例では、構造化光走査システム500は、シーン中の対象物から反射された(整形光パターンの)反射光パターンをキャプチャするためのカメラ101を備えている。キャプチャされた反射光パターンは制御装置12(例えば、デジタル画像処理装置)にフィードバックし、反射光パターンが光源11に対し発生させる光パターンの変形に基づいて深さ及び表面の情報を決定する。
【0024】
図6は本発明の一実施例に係る構造化光走査方法600を示すフローチャートである。ステップ61において、光源11(例えば、実施例の垂直共振器型面発光レーザーのようなレーザーアレイ)が(第一または現在の)光パターンを有するビームを放射し、この光パターンは制御装置12によりプログラミングされて制御される。ステップ62において、制御装置12は(第一または現在の)光パターンが光源11に対し放射する(第一)光パターンの変形に基づいて深さ及び表面の情報を決定する。
【0025】
続いて、ステップ63において、制御装置12が深さ及び表面の情報を決定するステップ(ステップ62)において獲得したデコードレートが所定の臨界値より大きいかどうかを判断する。デコードレートが所定の臨界値より大きくない場合、制御装置12は現在の光パターンを変更(またはプログラミング)する(ステップ64)。続いて、ステップ61のフローチャートに戻り、光源11が(第二)変更光パターン(現在の光パターンとする)を有するビームを放射し、制御装置12によりプログラミングされて制御される。デコードレートが所定の臨界値より大きくなるまで上記のフローチャートを継続的に実行する。
図7A乃至
図7Cには、
図6に示すフローチャートに順次使用する光パターンを示す。
【0026】
上記の実施例に基づいて、(プログラマブル垂直共振器型面発光レーザーが発生させる)異なる光パターンをシーン中の異なる対象物に適用し、或いは光源11/カメラ101に対し異なる距離を有する対象物に適用する。こうすることで、構造化光走査システム500及び方法600が更に好適なデコードレート(及び更に精確な深さ及び表面の情報)を獲得し、且つ更に広いダイナミックレンジを獲得する。
【0027】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0028】
100 画像プロジェクター
500 構造化光走査システム
11 光源
12 制御装置
13 ビームシェイパー
14 レンズ
101 カメラ
110 基板
111 レーザーダイオード
112 信号線
600 構造化光走査法
61 パターンを有するビームを放射する
62 深さの決定
63 デコードレートが臨界値より大きいかどうかを判断する
64 パターン変更
DOE 回折光学素子
MLA マイクロレンズアレイ
MDL 多焦点回折レンズ