(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035102
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】成型品検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/88 20060101AFI20240306BHJP
G01J 5/48 20220101ALI20240306BHJP
G01J 5/00 20220101ALI20240306BHJP
B29C 71/00 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
G01N21/88 J
G01J5/48 A
G01J5/00 101Z
B29C71/00
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023126280
(22)【出願日】2023-08-02
【基礎とした実用新案登録】
【原出願日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】510010414
【氏名又は名称】大栄工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114661
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 美洋
(72)【発明者】
【氏名】干川 量也
(72)【発明者】
【氏名】太田 晴幸
(72)【発明者】
【氏名】林 伸也
(72)【発明者】
【氏名】古田 広紀
【テーマコード(参考)】
2G051
2G066
4F201
【Fターム(参考)】
2G051AA07
2G051AB02
2G051AC21
2G051CA04
2G051CA07
2G066AC16
2G066CA02
2G066CA04
4F201BR39
(57)【要約】
【課題】成形品の欠損の有無を正確に判定することができる成形品検査装置を提供すること。
【解決手段】本発明では、成形機(2)で成形された成形品(3)の欠損の有無を判定する成形品検査装置(1)において、成形機(2)から取出した成形品(3)の温度分布を撮像するためのサーモグラフィーカメラ(7)と、サーモグラフィーカメラ(7)で撮像した成形品(3)の温度分布から成形品(3)の欠損の有無を判定するための判定機(8)とを有することにした。また、本発明では、前記サーモグラフィーカメラ(7)と前記判定機(8)とを送受信機(9,10)を介して接続することにした。さらに、本発明では、前記成形機(2)で同時に成形される成形品(3)の個数と同じ台数のサーモグラフィーカメラ(7)を有し、各サーモグラフィーカメラ(7)で各成形品(3)の温度分布を撮像するように配置することにした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形機で成形された成形品の欠損の有無を判定する成形品検査装置において、
成形機から取出した成形品の温度分布を撮像するためのサーモグラフィーカメラと、
サーモグラフィーカメラで撮像した成形品の温度分布から成形品の欠損の有無を判定するための判定機と、
を有することを特徴とする成形品検査装置。
【請求項2】
前記サーモグラフィーカメラと前記判定機とを送受信機を介して接続したことを特徴とする請求項1に記載の成形品検査装置。
【請求項3】
前記成形機で同時に成形される成形品の個数と同じ台数のサーモグラフィーカメラを有し、各サーモグラフィーカメラで各成形品の温度分布を撮像するように配置したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の成形品検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形機で成形された成形品の欠損(欠肉)の有無を判定する成形品検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
成形機でプラスチック等の合成樹脂を射出成形等して成形品を製造する際には、成形機で成形された成形品に欠損(欠肉)が生じていないか成形品検査装置で検査している。
【0003】
従来の成形品検査装置では、成形品に照明(可視光)を照射するとともに、カメラを用いて成形品の画像を撮影し、撮影された画像の輝度に基づいて成形品の欠損の有無を判定するようにしている(たとえば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記従来の成形品検査装置では、カメラで撮影された画像の輝度、すなわち、照明から照射された光が成形品で反射された反射光の強さに基づいて成形品の欠損の有無を判定しているために、成形品の欠損の有無を正確に判定できるようにするには、光学系(照明やカメラ)の位置関係を厳格に調整することが必要であり、また、工場等内の室内光や外光などの明るさの変動に応じて光学系の撮影条件を調整することが必要であり、さらに、成形品の透明度(透明品と不透明品等)によって光学系を変更することが必要であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、請求項1に係る本発明では、成形機で成形された成形品の欠損の有無を判定する成形品検査装置において、成形機から取出した成形品の温度分布を撮像するためのサーモグラフィーカメラと、サーモグラフィーカメラで撮像した成形品の温度分布から成形品の欠損の有無を判定するための判定機とを有することにした。
【0007】
また、請求項2に係る本発明では、前記請求項1に係る本発明において、前記サーモグラフィーカメラと前記判定機とを送受信機を介して接続することにした。
【0008】
また、請求項3に係る本発明では、前記請求項1又は請求項2に係る本発明において、前記成形機で同時に成形される成形品の個数と同じ台数のサーモグラフィーカメラを有し、各サーモグラフィーカメラで各成形品の温度分布を撮像するように配置することにした。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、成形機で成形された成形品の欠損の有無を判定する成形品検査装置において、成形機から取出した成形品の温度分布を撮像するためのサーモグラフィーカメラと、サーモグラフィーカメラで撮像した成形品の温度分布から成形品の欠損の有無を判定するための判定機とを有することにしているために、光学系の調整や変更を行うことなく、透明品か不透明品にかかわらず、成形品から発せられた熱(赤外線)に基づいて成形品の欠損の有無を正確に判定することができる。
【0010】
特に、前記サーモグラフィーカメラと前記判定機とを送受信機を介して接続することにした場合には、サーモグラフィーカメラと判定機とをそれぞれ別の場所に設置することができる。
【0011】
また、前記成形機で同時に成形される成形品の個数と同じ台数のサーモグラフィーカメラを有し、各サーモグラフィーカメラで各成形品の温度分布を撮像するように配置することにした場合には、成形機で同時に成形される成形品の欠損の有無を同時に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る成形品検査装置の具体的な構成について図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1に示すように、成形品検査装置1は、成形機2で成形した成形品3に欠損(欠肉)が生じていないか否かを判定する装置である。
【0015】
成型品3は、溶融した合成樹脂等を成形機2で所定形状に成形して製造され、その後、搬出機4で成形機3から取出されてコンベア5に搬出され、その後、コンベア5で搬送される。成形機2で成形された直後の成形品3は、100℃程度の温度となっており、その後、コンベア5で搬送されながら常温程度にまで自然に冷却される。なお、この成形機2では、1個の製品に組み付けられる左右対称形状の1対(2個)の成形品3,3を左右同時に成形し、左右の成形品3,3を搬出機4のアーム6で同時に搬出するようにしている。
【0016】
成型品検査装置1では、成形機2で成形されてから搬出機4でコンベア5に搬出されるまでの間において、成形品3が所定範囲内の温度(たとえば、70℃程度)を有している時に、成形品3の欠損の有無を検査するようにしている。
【0017】
この成形品検査装置1は、
図2に示すように、成形機2から取出した成形品3の温度分布を撮像するためのサーモグラフィーカメラ7と、サーモグラフィーカメラ7で撮像した成形品3の温度分布から成形品3の欠損の有無を判定するための判定機8とを有している。なお、この成形品検査装置1では、左右同時に成形される一対の成形品3,3を同時に検査できるようにするために、2台のサーモグラフィーカメラ7が一対の成形品3,3のそれぞれに向けて配置されている。
【0018】
2台のサーモグラフィーカメラ7と判定機8とは、相互に通信可能な送受信機9,10を介して接続されており、サーモグラフィーカメラ7と判定機8とをそれぞれ別の場所に設置でき、遠隔操作ができるようにしている。
【0019】
また、判定機8には、光や音などによって作業者に異常を通知するための報知器11と、成形機2の稼働制御を行うための制御機12とが有線又は無線で接続されている。
【0020】
各サーモグラフィーカメラ7は、各成形品3の特定部位(成形時に欠損が生じやすいと考えられる部分)に向けられており、判定機8から送受信機9,10を介して送られる制御信号に基づいて各成形品3の特定部位から発せられる熱(赤外線)の分布(温度分布)を撮影し、撮影した画像の電子データを送受信機9,10を介して判定機8へと送信する。
【0021】
判定機8は、各サーモグラフィーカメラ7から送信された温度分布の電子データを処理するための処理ブロック13と、処理ブロック13で処理されたデータに基づいて成形品3に欠損が生じているか否かを判定するための判定ブロック14と、各種の制御を行うための制御ブロック15とを有している。なお、判定機8は、専用の回路で構成した専用機でもよく、コンピューター等の汎用機であってよく、処理ブロック13や判定ブロック14や制御ブロック15も回路等のハードウェアであってもプログラム等のソフトウェアであってもよい。
【0022】
この判定機8は、サーモグラフィーカメラ7で撮像した成形品3の温度分布から成形品3の欠損の有無を判定できればよく、たとえば、サーモグラフィーカメラ7で撮像した温度分布の平均温度に基づいて成形品3の欠損の有無を判定してもよく、また、サーモグラフィーカメラ7で撮像した温度分布における所定温度範囲内の画素数に基づいて成形品3の欠損の有無を判定してもよく、あるいは、サーモグラフィーカメラ7で撮像した画像(現実画像)を欠損の無い正常品の画像(理想画像)と比較して成形品3の欠損の有無を判定してもよい。
【0023】
図3に示すように、欠損が生じていない成形品3(
図3(a))をサーモグラフィーカメラ7で撮像した画像16(
図3(c))を処理ブロック13で処理して画像16全体の平均温度を求め(たとえば、77.9℃)、この平均温度が所定温度範囲内(たとえば、70℃以上)であれば判定ブロック14で成形品3に欠損が生じていないと判定し、判定結果を制御ブロック15に送る。
【0024】
一方、欠損が生じている成形品3(
図3(b))をサーモグラフィーカメラ7で撮像した画像17(
図3(d))を処理ブロック13で処理して画像17全体の平均温度を求め(たとえば、67.4℃)、この平均温度が所定温度範囲内(たとえば、70℃以上)でなければ判定ブロック14で成形品3に欠損が生じていると判定し、判定結果を制御ブロック15に送り、制御ブロック15によって報知器11を作動させて作業者に知らせたり、成形機2の制御機12で成形機2の稼働を一時的に停止させたりする。
【0025】
あるいは、欠損が生じていない成形品3(
図3(a))をサーモグラフィーカメラ7で撮像した画像16(
図3(c))を処理ブロック13で処理して画像16を構成する各画素の温度の画像18(
図3(e))を求めるとともに、所定温度範囲内(たとえば、70℃以上)の画素の個数(たとえば、153画素)を求め、この画素の個数(画素数)が所定個数範囲内(たとえば、140個以上)であれば判定ブロック14で成形品3に欠損が生じていないと判定し、判定結果を制御ブロック15に送る。
【0026】
一方、欠損が生じている成形品3(
図3(b))をサーモグラフィーカメラ7で撮像した画像17(
図3(d))を処理ブロック13で処理して画像17を構成する各画素の温度の画像19(
図3(f))を求めるとともに、所定温度範囲内(たとえば、70℃以上)の画素の個数(たとえば、117画素)を求め、この画素の個数(画素数)が所定個数範囲内(たとえば、140個以上)でなければ判定ブロック14で成形品3に欠損が生じていると判定し、判定結果を制御ブロック15に送り、制御ブロック15によって報知器11を作動させて作業者に知らせたり、成形機2の制御機12で成形機2の稼働を一時的に停止させたりする。
【0027】
あるいは、
図3(g)に示すように、サーモグラフィーカメラ7で撮像した画像17(現実画像)を欠損の無い正常品の画像20(理想画像)と比較し、具体的には、欠損の無い正常品の画像20とサーモグラフィーカメラ7で撮像した画像17とを差分抽出した画像21を生成し、その画像21の面積や画素数が所定未満であれば成形品3に欠損が生じていないと判定し、一方、所定以上であれば成形品3に欠損が生じていると判定するようにしてもよい。
【0028】
以上に説明したように、上記成形品検査装置1は、成形機2から取出した成形品3の温度分布を撮像するためのサーモグラフィーカメラ7と、サーモグラフィーカメラ7で撮像した成形品3の温度分布から成形品3の欠損の有無を判定するための判定機8とを有する構成となっている。
【0029】
そのため、上記構成の成形品検査装置1では、光学系の調整や変更を行うことなく、透明品か不透明品にかかわらず、成形品3から発せられた熱(赤外線)に基づいて成形品3の欠損の有無を正確に判定することができる。
【0030】
また、上記成形品検査装置1は、サーモグラフィーカメラ7と判定機8とを送受信機9,10を介して接続した構成となっている。
【0031】
そのため、上記構成の成形品検査装置1では、サーモグラフィーカメラ7と判定機8とをそれぞれ別の場所に設置することができ、成形品検査装置1の使い勝手を向上させることができる。
【0032】
また、上記成形品検査装置1は、成形機2で同時に成形される成形品3,3の個数(ここでは、2個)と同じ台数(ここでは、2台)のサーモグラフィーカメラ7,7を有し、各サーモグラフィーカメラ7で各成形品3の温度分布を撮像するように配置した構成となっている。
【0033】
そのため、上記構成の成形品検査装置1では、成形機2で同時に成形される成形品3,3の欠損の有無を同時に判定することができ、これによっても、成形品検査装置1の使い勝手を向上させることができる。
【符号の説明】
【0034】
1 成形品検査装置 2 成形機
3 成形品 4 搬出機
5 コンベア 6 アーム
7 サーモグラフィーカメラ 8 判定機
9,10 送受信機 11 報知器
12 制御機 13 処理ブロック
14 判定ブロック 15 制御ブロック
16~21 画像
【手続補正書】
【提出日】2024-01-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形機で成形された成形品の欠損の有無を判定する成形品検査装置において、
成形機から取出した成形品の温度分布を撮像するためのサーモグラフィーカメラと、
サーモグラフィーカメラで撮像した成形品の温度分布から成形品の欠損の有無を判定するための判定機と、
を有し、
判定機は、サーモグラフィーカメラで撮像した成形品の温度分布の平均温度が所定温度範囲内でない場合、又は、サーモグラフィーカメラで撮像した成形品の温度分布における所定温度範囲内の画素数が所定個数範囲内でない場合、若しくは、サーモグラフィーカメラで撮像した成形品の現実の温度分布の画像と欠損の無い正常品の理想の温度分布とを差分抽出した画像の面積や画素数が所定以上の場合、に成形品に欠肉が生じていると判定することを特徴とする成形品検査装置。
【請求項2】
前記サーモグラフィーカメラと前記判定機とを送受信機を介して接続したことを特徴とする請求項1に記載の成形品検査装置。
【請求項3】
前記成形機で同時に成形される成形品の個数と同じ台数のサーモグラフィーカメラを有し、各サーモグラフィーカメラで各成形品の温度分布を撮像するように配置したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の成形品検査装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
そこで、請求項1に係る本発明では、成形機で成形された成形品の欠損の有無を判定する成形品検査装置において、成形機から取出した成形品の温度分布を撮像するためのサーモグラフィーカメラと、サーモグラフィーカメラで撮像した成形品の温度分布から成形品の欠損の有無を判定するための判定機とを有し、判定機は、サーモグラフィーカメラで撮像した成形品の温度分布の平均温度が所定温度範囲内でない場合、又は、サーモグラフィーカメラで撮像した成形品の温度分布における所定温度範囲内の画素数が所定個数範囲内でない場合、若しくは、サーモグラフィーカメラで撮像した成形品の現実の温度分布の画像と欠損の無い正常品の理想の温度分布とを差分抽出した画像の面積や画素数が所定以上の場合、に成形品に欠肉が生じていると判定することにした。