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特開2024-35119電力ケーブル緩衝層のアブレーション故障に対する導電性修復液、ならびにその製造方法及び応用
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  • 特開-電力ケーブル緩衝層のアブレーション故障に対する導電性修復液、ならびにその製造方法及び応用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035119
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】電力ケーブル緩衝層のアブレーション故障に対する導電性修復液、ならびにその製造方法及び応用
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20240306BHJP
   H02G 1/00 20060101ALI20240306BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20240306BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240306BHJP
   C08K 3/38 20060101ALI20240306BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20240306BHJP
   C08K 5/103 20060101ALI20240306BHJP
   C08K 5/053 20060101ALI20240306BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
C08L83/07
H02G1/00
C08L83/05
C08K3/04
C08K3/38
C08K3/34
C08K5/103
C08K5/053
C08K5/17
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023133039
(22)【出願日】2023-08-17
(31)【優先権主張番号】202211052396.5
(32)【優先日】2022-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】523312439
【氏名又は名称】グアンジョウ・パワー・サプライ・ビューロー・オブ・グアンドン・パワー・グリッド・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】ジアシェン・フアン
(72)【発明者】
【氏名】メン・リー
(72)【発明者】
【氏名】チュオハン・ハン
(72)【発明者】
【氏名】インシア・シー
(72)【発明者】
【氏名】ゲンビン・チャン
(72)【発明者】
【氏名】フェイ・チャン
(72)【発明者】
【氏名】ヤオシュアン・ルアン
(72)【発明者】
【氏名】ハンルー・リー
【テーマコード(参考)】
4J002
5G352
【Fターム(参考)】
4J002BB063
4J002BG014
4J002CH025
4J002CP035
4J002CP042
4J002CP141
4J002CP185
4J002DA016
4J002DA036
4J002DD009
4J002DJ006
4J002DK007
4J002EC048
4J002EC058
4J002EH048
4J002EN108
4J002FD017
4J002FD116
4J002FD142
4J002FD159
4J002FD205
4J002FD318
4J002FD334
4J002GQ02
5G352AM04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、電力ケーブル緩衝層修復の技術分野に属し、電力ケーブル緩衝層のアブレーション故障に対する導電性修復液ならびにその製造方法及び応用を提供する。
【解決手段】本発明では、二成分AB付加型シリカゲルを修復液の基材とし、適切なナノ導電性フィラーを充填し、それを高速攪拌と超分散技術で硬化剤B修復液中に均一に分散することにより、材料全体の体積抵抗率を下げることができる。得られたB液と触媒A液とを適切な割合で反応させ、硬化により化学的に安定な導電シールド修復液層が形成できる。緩衝層に欠陥を有する電力ケーブルに修復液を注入することで、実験室条件下での電力ケーブルの部分放電を減らすことができる。白斑欠陥を有する電力ケーブルに注入すると、欠陥のある電力ケーブルの部分放電が1.5U(U=64kV)で20pC低減することが図れる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニルシリコーンオイル78~95.5質量部、
導電性フィラー3~10質量部、
触媒1~10質量部、
界面活性剤0.5~2質量部、
防水エマルション0.5~2質量部、
ナノ銅シリサイド0.1~0.5質量部、
窒化ホウ素2~3質量部
を含む成分Aと、
ビニルシリコーンオイル44.5~78.9質量部、
水素含有シリコーンオイル20~50質量部、
増稠剤1~5質量部、
消泡剤0.1~0.5質量部
を含む成分Bとを質量比で3:7~7:3(好ましくは1:1)含有することを特徴とする、電力ケーブル緩衝層のアブレーション故障に対する導電性修復液。
【請求項2】
前記ビニルシリコーンオイルが、ビニル末端ポリジメチルシロキサン及びビニル末端ポリメチルビニルシロキサンのうちの少なくとも1つであることを特徴とする、請求項1に記載の電力ケーブル緩衝層のアブレーション故障に対する導電性修復液。
【請求項3】
前記導電性フィラーが、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンブラックのうちの少なくとも1つと、ナノ銅シリサイドとの混合物であることを特徴とする、請求項1に記載の電力ケーブル緩衝層のアブレーション故障に対する導電性修復液。
【請求項4】
前記導電性フィラーにおいて、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンブラックのうちの少なくとも1つとナノ銅シリサイドとの質量比が6:1~100:1であることを特徴とする、請求項3に記載の電力ケーブル緩衝層のアブレーション故障に対する導電性修復液。
【請求項5】
前記防水エマルションは、酢酸ビニル-エチレン共重合体エマルジョンであり、好ましくは、pHが7でありかつ粘度が25℃温度下で600mpa.s以下であることを特徴とする、請求項1に記載の電力ケーブル緩衝層のアブレーション故障に対する導電性修復液。
【請求項6】
前記水素含有シリコーンオイルがメチルシロキサン、エチルシロキサン及びメチルフェニルシロキサンのうちの少なくとも1つであり、
前記触媒が白金化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の電力ケーブル緩衝層のアブレーション故障に対する導電性修復液。
【請求項7】
前記界面活性剤が脂肪酸グリセリド、ポリオール及びトリエタノールアミンからなる群より選ばれた少なくとも1つであり、
前記増稠剤がアクリル酸系であり、
前記消泡剤がノンシリコン系、ポリエーテル系、シリコーン系及びポリエーテル変性シリコーン系からなる群より選ばれた1つであることを特徴とする、請求項1に記載の電力ケーブル緩衝層のアブレーション故障に対する導電性修復液。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の電力ケーブル緩衝層のアブレーション故障に対する導電性修復液の製造方法であって、
(1)熱と減圧システムを備えた攪拌装置に成分Aの原材料を加え、均一に撹拌・混合し、成分Aを得る工程と、
(2)熱と減圧システムを備えた攪拌装置に成分Bの原材料を加え、均一に撹拌・混合し、成分Bを得る工程と、
(3)使用の際に、成分Aと成分Bを質量比で混合して硬化させる工程とを含むことを特徴とする、製造方法。
【請求項9】
前記の工程(1)における撹拌・混合が50~70℃温度下で1~3時間減圧撹拌することであり、
前記の工程(2)における撹拌・混合が50~70℃温度下で1~3時間減圧撹拌することであることを特徴とする、請求項8に記載の電力ケーブル緩衝層のアブレーション故障に対する導電性修復液の製造方法。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか1項に記載の電力ケーブル緩衝層のアブレーション故障に対する導電性修復液の、電力ケーブル緩衝層の修復における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力ケーブル緩衝層修復の技術分野に属し、特に、電力ケーブル緩衝層のアブレーション故障に対する導電性修復液ならびにその製造方法及び応用に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、中国で多数の使用中の高電圧架橋ポリエチレン(XLPE、cross-linked polyethylene)ケーブルには、主に金属シースと外側半導体層の間の大面積の「放電アブレーション」として現れる本体の故障が発生した。このような大面積放電は、従来の110kV以上の電圧レベルの電力ケーブル故障(すなわち、電力ケーブルの付属品や主絶縁体部に発生する故障)の放電と異なるのが、電力ケーブルの金属シースと絶縁シールド層との間に偏在し、図1の模式図に示される緩衝層領域における放電点の位置に発生することである。アブレーション点は、絶縁シールド層に多数存在し、主絶縁体まで損傷を付ける場合もある。このような緩衝層アブレーション欠陥はケーブル運用・保守担当者に多大な迷惑を与えていた。
【0003】
報道によると、電力ケーブル緩衝層のアブレーションによる電力ケーブル故障は、高電圧ケーブル本体に発生した故障に対して30~60%程度を占めているようである。2018年末時点で、中国国家電網公司の110kV以上の高電圧ケーブルが合計で14423本(cable lines)、全長が約三万キロメートルとなる。もし、その大半の電力ケーブルには緩衝層アブレーション欠陥が発生すると、電力ケーブルの取り替えコストが高すぎになる一方、欠陥発生恐れがある多く電力ケーブルがすぐに取り替えられないので、多数の電力ケーブルが損傷のままで運行することになり、電網の安全運行に極大なリスクをもたらす恐れがある。
【0004】
高分子分野において、液状の導電性シリコーンゴムは、良好な導電性と安定な化学特性を有するので、電磁波シールド、電波吸収及びセンシングなどの分野に広く用いられている。公開された導電性シリコーンゴムに関する製造方法には、ビニルシリコーンオイル、白金触媒、水素含有シリコーンオイル、抑制剤、導電性カーボンブラック、導電性炭素繊維、増稠剤、分散剤、ヒュームドシリカ及び揮発性溶剤が具体的に含まれ、それより得られた導電性シリコーンゴムが良好な導電性及び機械的特性を有する。
【0005】
電力ケーブルの緩衝層アブレーションの原因としては、電力ケーブルへの水分の浸入により緩衝層とアルミシースとの間の接触面に導電できない白斑が発生し、緩衝層とアルミシースとの間の良好な電気的接続が得られなくなるからである。このように、従来の技術には次の欠点がある。
【0006】
1、電力ケーブル本体の内部運行環境に対する互換性への改善を行わずに、むやみに導電性シリコーンゴムを電力ケーブル本体に注入すると、重大な悪影響が生じる恐れがある(腐食産物の生成が促進されたり、水トリーにより電力ケーブル本体が電気的に破壊されることなど)。
【0007】
2、電力ケーブル本体の内部構造に対して熱伝導性の改善が行われなくて、大半の欠陥電力ケーブルにおける金属シースと緩衝層との間の空隙が大きいため(高圧電力ケーブルのエアギャップ層の模式図を図2に示す)、修復液自体の熱伝導性を考慮する必要になる。
【0008】
3、今まで掲示されていた類似の文献は、いずれも電圧レベルが35kV以下の電力ケーブルに対する付属品に関するものであり、高電圧(110kV)のケーブル本体に対して開発された素材にも、電力ケーブル本体における部分放電量の低減に対する改善にも関係がない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述した従来技術の欠点と不足を克服するものであり、電力ケーブル緩衝層のアブレーション故障に対する導電性修復液を提供することを主な目的とする。
【0010】
また、本発明は、電力ケーブル緩衝層のアブレーション故障に対する導電性修復液の製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
さらに、本発明は、前記電力ケーブル緩衝層のアブレーション故障に対する導電性修復液の、電力ケーブル緩衝層の修復における使用を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的は、以下の技術案によって達成される。
【0013】
ビニルシリコーンオイル78~95.5質量部、
導電性フィラー3~10質量部、
触媒1~10質量部、
界面活性剤0.5~2質量部、
防水エマルション0.5~2質量部、
ナノ銅シリサイド0.1~0.5質量部、
窒化ホウ素2~3質量部
を含む成分Aと、
ビニルシリコーンオイル44.5~78.9質量部、
水素含有シリコーンオイル20~50質量部、
増稠剤1~5質量部、
消泡剤0.1~0.5質量部
を含む成分Bとを質量比で3:7~7:3(好ましくは1:1)含有する電力ケーブル緩衝層のアブレーション故障に対する導電性修復液。
【0014】
前記ビニルシリコーンオイルは、ビニル末端ポリジメチルシロキサン及びビニル末端ポリメチルビニルシロキサンのうちの少なくとも1つである。
【0015】
前記導電性フィラーは、ナノ導電性フィラーであるカーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンブラックのうちの少なくとも1つと、ナノ銅シリサイドとの混合物である。導電性フィラーにおいては、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンブラックのうちの少なくとも1つとナノ銅シリサイドとの質量比が6:1~100:1であり、好ましくは20:1~30:1である。
【0016】
前記導電性フィラーは、質量比を25:1としたカーボンナノチューブとナノ銅シリサイドとの混合物であることがより好ましい。だだし、カーボンナノチューブとしては嘉興ナノ新材料有限公司製SCC-8を使用し、ナノ銅シリサイドとしては中科科優社製のものを使用した。ナノ銅シリサイドとカーボンナノチューブ粉末との混合によれば、自体の導電性が向上するだけでなく、カーボンナノチューブ粉末の凝集も防止される。
【0017】
前記触媒は、白金化合物であり、好ましくは塩化白金酸である。
【0018】
前記界面活性剤は、脂肪酸グリセリド、ポリオール及びトリエタノールアミンからなる群より選ばれた少なくとも1つである。
【0019】
前記防水エマルションは、酢酸ビニル-エチレン共重合体エマルジョンであり、好ましくは、pHが7でありかつ粘度が25℃温度下で600mpa.s以下である。防水エマルションを添加することで、空気中の水蒸気の浸入を緩和させることができる。
【0020】
前記ナノ窒化ホウ素を添加することで、硬化後のシリカゲルの熱伝導率を効果的に改善させるとともに、硬化後の強度を高めることができる。
【0021】
前記水素含有シリコーンオイルは、メチルシロキサン(methyl siloxane)、エチルシロキサン(ethyl siloxane)及びメチルフェニルシロキサン(methylphenyl siloxane)のうちの少なくとも1つである。使用される水素含有シリコーンオイルの粘度は1000~3000であることが好ましい。
【0022】
前記増稠剤はアクリル酸系であり、好ましくは、アニオン型アクリル酸系である。成分Bに増稠剤を添加することにより、成分Bの粘度が導電性フィラー添加後の成分Aの粘度に近くなるように、液体の粘度を調整することができる。
【0023】
前記消泡剤は、ノンシリコン系、ポリエーテル系、シリコーン系、及びポリエーテル変性シリコーン系からなる群より選ばれた少なくとも1つである。
【0024】
(1)熱と減圧システムを備えた攪拌装置に成分Aの原材料を加え、均一に撹拌・混合し、成分Aを得る工程と、
(2)熱と減圧システムを備えた攪拌装置に成分Bの原材料を加え、均一に撹拌・混合し、成分Bを得る工程と、
(3)使用の際に、成分Aと成分Bを質量比で混合して硬化させる工程とを含る、前記電力ケーブル緩衝層のアブレーション故障に対する導電性修復液の製造方法。
【0025】
前記の工程(1)における撹拌・混合は、50~70℃温度下で1~3時間減圧撹拌することである。前記の工程(2)における撹拌・混合は、50~70℃温度下で1~3時間減圧撹拌することである。
【0026】
本発明に係る導電性修復液は、室温で硬化してよく、加熱で硬化してもよい。この製品では、温度が高いほど硬化が早いという特徴を有し、また硬化反応中にいかなる副生成物も生成しない。
【0027】
前記製造方法においては、いずれの工程にも水を添加しない。電力ケーブルに水分が導入されると、電力ケーブルの長期運行による電-熱結合の作用下で、電力ケーブルの絶縁層に水トリー欠陥が発生する恐れがある。この欠陥のせいで、絶縁層表面に電界集中が発生する状況になり、そして絶縁層の性能欠損や電力ケーブルの絶縁破壊が引き起こされるようなひどい場合もある。本発明では、製造過程に対する厳密な制御及び防水エマルションの添加により、本発明の製品への水の悪影響を最小限に抑えることが図れる。
【0028】
上記の電力ケーブル緩衝層のアブレーション故障に対する導電性修復液は、電力ケーブル緩衝層の修復に用いられる。
【0029】
本発明では、二成分AB付加型シリカゲル(addition silicone)を修復液の基材とし、適切なナノ導電性フィラーを充填し、それを高速攪拌と超分散技術で硬化剤Bの修復液中に均一に分散することにより、材料全体の体積抵抗率を下げることができる。得られたB液と触媒A液を適切な割合で反応させ、硬化により化学的に安定な導電シールド修復液層が形成し得る。なお、そのA液とB液の反応機構は、Pt触媒の作用下で、ビニルシリコーンオイルと水素含有シリコーンオイルとがケイ素水素付加反応を起こし、架橋高分子を形成することと考えられる。修復液が緩衝層に浸透すると、腐食生成物による電位差の降下、部分放電のリスクの低減が図れる。
【発明の効果】
【0030】
従来技術と比べると、本発明では、以下の利点及び有利な効果が得られる。
(1)水分が導入されると、電力ケーブル本体の緩衝層及び絶縁層の電気的特性が劣化し、電力ケーブル本体の運行中の信頼性が損になる。そのため、製造過程に水を添加しないことで、導電性修復液と電力ケーブル本体との互換性を高めることができる(具体的には、導電性シリコーンゴムと電力ケーブル緩衝層とアルミニウムシース(aluminum sheath)との互換性である)。
(2)硬化した導電シリコーンゴムは、良好な分散性を有し、欠陥のある電力ケーブルに注入すると、緩衝層とアルミニウムシースとの間の等価抵抗を効果的に低減することができる。
(3)ナノ充填材料によれば、修復液の熱抵抗を効果的に低減でき、修復液を電力ケーブル本体に注入すると、電力ケーブルの電流容量を増加させることができる。経済性と熱伝導性の観点から、ナノ銅シリサイド0.1~0.5質量部及び窒化ホウ素2~3質量部を添加するとよい。
(4)修復液材料のpHを7に制御することで、塩基性または酸性環境下、電力ケーブルのアルミニウムシースや緩衝層への腐食が防止され、修復液と電力ケーブル本体の間の互換性が良好であることが保証される。
(5)修復液は、緩衝層に欠陥がある電力ケーブルに注入することで、実験室条件下での電力ケーブルの部分放電を減らすことができ、また白斑欠陥を有する電力ケーブルに注入すると、欠陥のある電力ケーブルの部分放電が1.5U(U=64kV)で20pC低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は緩衝層領域の放電位置の模式図である。
図2図2は高圧電力ケーブルにおけるエアギャップ層の模式図である。
図3図3は部分放電試験の配線と配置の模式図である。
図4図4は欠陥のある電力ケーブルを修復する前の部分放電の信号図である。
図5図5は欠陥のある電力ケーブルを修復する後の部分放電の信号図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、実施例及び図面を参照しながら本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の実施形態はこれらに限定されるものではない。実施例に具体的な条件が示されていない場合は、通常の条件またはメーカーが推奨する条件に従って実施すればよい。使用される試薬や器具はメーカーの指定がない場合は、市販で購入できる通常の製品であればよい。
【0033】
実施例においては、ビニルシリコーンオイルとして山東興隆達製 5846を、導電性フィラーとしてカーボンナノチューブ(嘉興ナノ新材料有限公司製SCC-8)とナノ銅シリサイド(中科科優社製)を質量比で25:1混合した混合物を、触媒として白金触媒(上海Aladdin生化科技有限公司製)を、界面活性剤としてトリエタノールアミン(上海Aladdin生化科技有限公司製)を、防水エマルションとしてENCOR 5132(Arkema)を、ナノ窒化ホウ素として広州宏武新材料公司製のものを、水素含有シリコーンオイルとしてJF-201シリコーンオイル(浙江嘉善製、粘度2000)を、消泡剤としてPLX-4060(衢州市博特化工製)を、増稠剤としてVISCOATEX 46増稠剤(使用前にアンモニア水でpH=7に中和した)を使用した。
【0034】
なお、実施例中の「部」とは、「質量部」のことである。
【実施例0035】
ビニルシリコーンオイル91.2質量部、導電性フィラー3質量部、触媒1質量部、界面活性剤1質量部、防水エマルション1.5質量部、ナノ銅シリサイド0.3質量部及び窒化ホウ素2質量部を加熱と減圧システムを備えた攪拌装置に添加して、60℃までに昇温させ、1時間減圧攪拌し、成分Aを得た。
【0036】
ビニルシリコーンオイル73.7質量部、水素含有シリコーンオイル25質量部、消泡剤0.3質量部及び増稠剤1質量部を加熱と減圧システムを備えた攪拌装置に添加して、60℃までに昇温させ、1時間減圧攪拌し、成分Bを得た。
【0037】
使用の際に、表1に示されている質量比で成分AとBを混合して硬化させた。
【0038】
製品は、室温下で硬化してよく、加熱で硬化してもよく、また温度が高いほど硬化が早いという特徴を有し、硬化反応中にいかなる副生成物も生成しなかった。
【0039】
以下の表1に、測定した各性能指標のデータを示す。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
実施例3で作製した成分Aと成分Bを上記の割合で十分に攪拌して混合した混合物を、緩衝層に欠陥がある高圧電力ケーブルに注入するにより、電力ケーブルの部分放電を効果的に低減することができた。部分放電信号の測定には、「GB/T 11017.1-2014」部分放電試験規格を基準とし、1.5Uでの部分放電信号を記録した。試験場のバックグラウンドノイズが約1.22pCであり、部分放電信号のフィルタの中心周波数を205kHzとし、部分放電信号フィルタの帯域幅が350kHzであった。試験の配線及び配置を図3に模式的に示す。電力ケーブルの修復前に測定した部分放電を図4に示す(だだし、PDが21.97pCで、HVが96.38kVである)。電力ケーブルの修復後に測定した部分放電を図5に示す(PDが1.12pCで、HVが96.07kVである)。その結果、修復液を白斑欠陥のある電力ケーブルに注入すると、欠陥のある電力ケーブルの部分放電が1.5U(U=64kV)で20pC低減した。
【0043】
上記の実施例は、本発明における好適な実施形態である。しかし、本発明の実施形態は、上記の実施例に限定されているわけではない。本発明の趣旨及び原理から逸脱しないで得られた他の変更、修正、置換、組み合わせ、及び簡略化は、等価的に置換されたものと見なされ、本発明の保護範囲に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5