(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035122
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】欠陥のあるケーブルと導電性修理液との適合性のテスト方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
G01R 31/00 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
G01R31/00
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023134096
(22)【出願日】2023-08-21
(31)【優先権主張番号】202211062380.2
(32)【優先日】2022-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】520360121
【氏名又は名称】グアンジョウ パワー サプライ ビューロー オブ グァンドン パワー グリッド カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161746
【弁理士】
【氏名又は名称】地代 信幸
(72)【発明者】
【氏名】ホアン ジアション
(72)【発明者】
【氏名】ハン ジュオジャン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン フェイ
(72)【発明者】
【氏名】シュイ タオ
(72)【発明者】
【氏名】リ ハンル
(72)【発明者】
【氏名】ラン チエン
(72)【発明者】
【氏名】ワン ウジエ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン タオ
【テーマコード(参考)】
2G036
【Fターム(参考)】
2G036AA28
2G036BB20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】従来技術の短所及び欠点を克服するために、欠陥のあるケーブルと導電性修理液との適合性のテスト方法を提供すること。
【解決手段】当該方法は、人為的欠陥のあるケーブルを製造するステップと、局所放電信号を測定するステップと、ケーブルの両側に、修理液を注入するためのアダプタを取り付けるステップと、修理液を注入するステップと、局所放電信号を再び測定するステップと、各電圧レベルでの局所放電信号を比較することで、注入された修理液とケーブル本体との適合性を判定するステップと、を含む。本発明は修理液材料とケーブル緩衝防水テープとの間の適合性能を判定できるとともに、修理液の長いケーブル中の流動方向を制御でき、注入過程で修理液が弱点からオーバーフローすることを防止して、ケーブル修理の方向性、密閉及び効率の問題を効果的に実現する。また、本発明はさらに、修理液の緩衝防水テープに対する電気回復性能を検証できる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
欠陥のあるケーブルと導電性修理液との適合性のテスト方法であって、
人為的欠陥のあるケーブルを製造するステップと、
局所放電信号を測定するステップと、
ケーブルの両側に、修理液を注入するためのアダプタを取り付けるステップと、
修理液を注入するステップと、
局所放電信号を再び測定するステップと、
各電圧レベルでの局所放電信号を比較することで、注入された修理液とケーブル本体との適合性を判定するステップと、を含むことを特徴とする欠陥のあるケーブルと導電性修理液との適合性のテスト方法。
【請求項2】
前記人為的欠陥のあるケーブルを製造するステップは具体的に、
ケーブル絶縁遮蔽層の外側に緩衝防水テープを巻きつけ、
前記緩衝防水テープの外側に1層の非導電性巻き付けテープを巻きつけ、
前記非導電性巻き付けテープの外側に螺旋波付きアルミシースをアルゴンアーク溶接し、ネジピッチは25mmであり、前記波付きアルミシースが使用するアルミテープはGB/T3880.1-2012の要求に合って、その延伸率は16%以上であることを特徴とする請求項1に記載の欠陥のあるケーブルと導電性修理液との適合性のテスト方法。
【請求項3】
前記緩衝防水テープは3層を含み、第1層は半導電性膨張綿であり、第3層は半導電性不織布であり、両層の中間には1層のポリアクリル酸ナトリウム膨張粉が塗布されることを特徴とする請求項2に記載の欠陥のあるケーブルと導電性修理液との適合性のテスト方法。
【請求項4】
前記局所放電信号を測定するステップは具体的に、
前記人為的欠陥のあるケーブルを15メートル以上切り取って、ケーブルの両側から露出する非導電性巻き付けテープに絶縁テープを巻くことで、実験過程で緩衝防水テープ及び非導電性巻き付けテープが緩まないことを確保し、
GB/T 11017.1-2014局所放電実験標準に基づいて局所放電テストを行って、開始放電電圧U1、対応する局所放電信号及び1.0U0、1.5U0、1.75U0電圧での対応する局所放電信号をそれぞれ記録することを特徴とする請求項1に記載の欠陥のあるケーブルと導電性修理液との適合性のテスト方法。
【請求項5】
前記アダプタはフロントガスケット、バックガスケット及びセンタースリーブを含み、何れも上下嵌合構造であり、
前記フロントガスケットはL字状の横断面を有する環状構造であり、横断面に沿って2つの部分に分けられ、センタースリーブの一端に並設され、高圧ケーブルのアルミシースに緊密に接触し、
前記バックガスケット全体は略中空の円柱体であり、円柱体の垂直二等分面に沿って2つの部分に分けられ、非導電性巻き付けテープの外部で接合され、センタースリーブの一端の内部に嵌着されるとともに、センタースリーブ内で締め付けられ、非導電性巻き付けテープに緊密に貼合され、前記バックガスケットの円柱体の天井面及び底面には弾性変形用保留空間がさらに設けられ、
前記センタースリーブ全体は円筒構造であり、その内部には3層の円環状仕切板が設けられ、その外部には4つのボルト穴及び2つの管路構造が設けられ、前記センタースリーブ内部の環状仕切板はアダプタの内部空間を前、中、後という3つの部分に仕切って、それぞれフロントガスケット接続箇所、修理液注入箇所及びバックガスケット接続箇所として機能し、前記管路構造は修理液をアダプタに導入して、さらに処理必要がある高圧ケーブルに注入し、前記ボルト穴はアダプタ構造全体とケーブルとをリベット結合し、
処理必要がある高圧ケーブルセグメントの他端にも、アダプタ構造が対称に設けられることで、余分な修理液を導出することを特徴とする請求項1に記載の欠陥のあるケーブルと導電性修理液との適合性のテスト方法。
【請求項6】
前記修理液を注入するステップは具体的に、アダプタを前記人為的欠陥のあるケーブルの両側に取り付けて、ガスボトル、修理液缶体及びアダプタを順に接続し、前記修理液缶体内には短入長出パイプが装着され、前記ガスボトルはアダプタを介して修理液をケーブルエアギャプ層に注入し、注入フローは、
修理液収集口の双方向ジョイントを閉じて、修理液注入口の双方向ジョイントを開けて、注入通路の気密性を検査し、
気密性検査が完了した後、修理液収集口の双方向ジョイントを開け、注入圧力を0.3~0.4MPaに設置し、ガスボトルスイッチを開けて、修理液をケーブルエアギャプ層に注入し、
修理液が収集口から流出した後、加圧を停止させ、
ケーブルの双方向ジョイントを閉じて、注入装置を取り外し、注入操作が完成することを特徴とする請求項1に記載の欠陥のあるケーブルと導電性修理液との適合性のテスト方法。
【請求項7】
前記各電圧レベルでの局所放電信号を比較することで、注入された修理液とケーブル本体との適合性を判定するステップは具体的に、
修理液注入前、ケーブルには各電圧レベルで何れも基準感度を超えた検出可能な放電信号が出現され、修理液注入後、ケーブルには各電圧レベルで何れも基準感度を超えた検出可能な放電信号が出現されていないと、修理液とケーブルとの適合性がよいと判定し、
修理液注入前、ケーブルには各電圧レベルで何れも基準感度を超えた検出可能な放電信号が出現され、修理液注入後、ケーブルには前記電圧レベルで少なくとも1回の基準感度を超えた検出可能な放電信号が出現されていると、修理液とケーブルとの適合性が悪いこと判定し、
修理液注入後の開始放電電圧U2は修理液注入前の開始放電電圧U1よりも小さければ、修理液とケーブルとの適合性が悪いと判定することを特徴とする請求項1に記載の欠陥のあるケーブルと導電性修理液との適合性のテスト方法。
【請求項8】
欠陥のあるケーブルと導電性修理液との適合性のテストシステムであって、請求項1~7の何れか1項に記載の欠陥のあるケーブルと導電性修理液との適合性のテスト方法に適用され、
人為的欠陥のあるケーブルを製造するケーブル処理モジュールと、
修理液注入前、及び修理液注入後のケーブル局所放電信号を測定する局所放電信号測定モジュールと、
ケーブルの両側に、修理液を注入するためのアダプタを取り付けるアダプタモジュールと、
修理液を注入する注入モジュールと、
各電圧レベルでの局所放電信号を比較することで、注入された修理液とケーブル本体との適合性を判定する分析モジュールと、を含むことを特徴とする欠陥のあるケーブルと導電性修理液との適合性のテストシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル修理の技術分野に属し、具体的に欠陥のあるケーブルと導電性修理液との適合性のテスト方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中国の高圧ケーブルの利用率がますます高くなっていることに連れて、高圧XLPE絶縁ケーブルは一線都市の中心業務地区に大幅に適用され、都市送電網の電圧レベルが高くなっているため、ケーブル回路の運行・点検により深刻な問題が提示される。近年では、国内の多くの地区の高圧XLPEケーブルに本体故障が生じて、その主な例としては、金属シースと外半導電層との間の大面積の放電アブレーションがあり、緩衝層とアルミシースとの接触位置には非導電性白点が生成され、緩衝層とアルミシースとの間の電気接続が妨げられる。ケーブルエアギャプ層に導電性修理液を注入する方法で緩衝層とアルミシースとの間の電気接続を回復させることを提出したが、現在、依然的に導電性修理液と高圧ケーブルとの間の適合性に対する検証方法がない。本発明は欠陥のあるケーブルと導電性修理液との適合性のテスト方法に関する。なお、緩衝層の外側に完全に被覆するように非導電性ポリエステル繊維巻き付けテープを巻いて、欠陥のあるケーブルを手作業で製造する。そして、修理液注入前後の、欠陥のあるケーブルの局所放電信号をそれぞれ測定することで、修理液と欠陥のあるケーブルとの適合性を判定する。
【0003】
現在、高圧XLPEケーブル緩衝層修理装置及びその修理方法の関連研究技術が既に存在する。当該技術は導電性修理液圧力注入システム、補助真空抽出収集システム及び2つの修理液アダプタという4つの装置を有し、2つの修理液アダプタは高圧架橋ポリエチレンケーブルに挟まれる。導電性修理液圧力注入システムと第1修理液アダプタとは接続され、高圧XLPEケーブルに導電性修理液を注入し、補助真空抽出収集システムと第2修理液アダプタとは接続され、高圧XLPEケーブルにおける余分な導電性修理液を回収する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来技術の短所及び欠点を克服するために、欠陥のあるケーブルと導電性修理液との適合性のテスト方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は以下の技術案を採用し、
本発明の1つの態様によれば、欠陥のあるケーブルと導電性修理液との適合性のテスト方法を提供し、
人為的欠陥のあるケーブルを製造するステップと、
局所放電信号を測定するステップと、
ケーブルの両側に、修理液を注入するためのアダプタを取り付けるステップと、
修理液を注入するステップと、
局所放電信号を再び測定するステップと、
各電圧レベルでの局所放電信号を比較することで、注入された修理液とケーブル本体との適合性を判定するステップと、を含む。
【0006】
好適な技術案として、前記人為的欠陥のあるケーブルを製造するステップは具体的に、
ケーブル絶縁遮蔽層の外側に緩衝防水テープを巻きつけ、
前記緩衝防水テープの外側に1層の非導電性巻き付けテープを巻きつけ、
前記非導電性巻き付けテープの外側に螺旋波付きアルミシースをアルゴンアーク溶接し、ネジピッチは25mmであり、前記波付きアルミシースが使用するアルミテープはGB/T3880.1-2012の要求に合って、その延伸率は16%以上である。
【0007】
好適な技術案として、前記緩衝防水テープは3層を含み、第1層は半導電性膨張綿であり、第3層は半導電性不織布であり、両層の中間には1層のポリアクリル酸ナトリウム膨張粉が塗布される。
【0008】
好適な技術案として、前記局所放電信号を測定するステップは具体的に、
前記人為的欠陥のあるケーブルを15メートル以上切り取って、ケーブルの両側から露出する非導電性巻き付けテープに絶縁テープを巻くことで、実験過程で緩衝防水テープ及び非導電性巻き付けテープが緩まないことを確保し、
GB/T 11017.1-2014局所放電実験標準に基づいて局所放電テストを行って、開始放電電圧U1、対応する局所放電信号及び1.0U0、1.5U0、1.75U0電圧での対応する局所放電信号をそれぞれ記録する。
【0009】
好適な技術案として、前記アダプタはフロントガスケット、バックガスケット及びセンタースリーブを含み、何れも上下嵌合構造であり、
前記フロントガスケットはL字状の横断面を有する環状構造であり、横断面に沿って2つの部分に分けられ、センタースリーブの一端に並設され、高圧ケーブルのアルミシースに緊密に接触し、
前記バックガスケット全体は略中空の円柱体であり、円柱体の垂直二等分面に沿って2つの部分に分けられ、非導電性巻き付けテープの外部で接合され、センタースリーブの一端の内部に嵌着されるとともに、センタースリーブ内に締め付けられ、非導電性巻き付けテープに緊密に貼合され、前記バックガスケットの円柱体の天井面及び底面には弾性変形用保留空間がさらに設けられ、
前記センタースリーブ全体は円筒構造であり、その内部には3層の円環状仕切板が設けられ、その外部には4つのボルト穴及び2つの管路構造が設けられ、前記センタースリーブ内部の環状仕切板はアダプタの内部空間を前、中、後という3つの部分に仕切って、それぞれフロントガスケット接続箇所、修理液注入箇所及びバックガスケット接続箇所として機能し、前記管路構造は修理液をアダプタに導入して、さらに処理必要がある高圧ケーブルに注入し、前記ボルト穴はアダプタ構造全体とケーブルとをリベット結合し、
処理必要がある高圧ケーブルセグメントの他端にも、アダプタ構造が対称に設けられることで、余分な修理液を導出する。
【0010】
好適な技術案として、前記修理液を注入するステップは具体的に、
アダプタを前記人為的欠陥のあるケーブルの両側に取り付けて、ガスボトル、修理液缶体及びアダプタを順に接続し、前記修理液缶体内には短入長出パイプが装着され、前記ガスボトルはアダプタを介して修理液をケーブルエアギャプ層に注入し、注入フローは、
修理液収集口の双方向ジョイントを閉じて、修理液注入口の双方向ジョイントを開けて、注入通路の気密性を検査し、
気密性検査が完了した後、修理液収集口の双方向ジョイントを開け、注入圧力を0.3~0.4MPaに設置し、ガスボトルスイッチを開けて、修理液をケーブルエアギャプ層に注入し、
修理液が収集口から流出した後、加圧を停止させ、
ケーブルの双方向ジョイントを閉じて、注入装置を取り外し、注入操作が完成する。
【0011】
好適な技術案として、前記各電圧レベルでの局所放電信号を比較することで、注入された修理液とケーブル本体との適合性を判定するステップは具体的に、
修理液注入前、ケーブルには各電圧レベルで何れも基準感度を超えた検出可能な放電信号が出現され、修理液注入後、ケーブルには各電圧レベルで何れも基準感度を超えた検出可能な放電信号が出現されていないと、修理液とケーブルとの適合性がよいと判定し、
修理液注入前、ケーブルには各電圧レベルで何れも基準感度を超えた検出可能な放電信号が出現され、修理液注入後、ケーブルには前記電圧レベルで少なくとも1回の基準感度を超えた検出可能な放電信号が出現されていると、修理液とケーブルとの適合性が悪いこと判定し、
修理液注入後の開始放電電圧U2は修理液注入前の開始放電電圧U1よりも小さければ、修理液とケーブルとの適合性が悪いと判定する。
【0012】
本発明の別の態様によれば、欠陥のあるケーブルと導電性修理液との適合性のテストシステムを提供し、前記欠陥のあるケーブルと導電性修理液との適合性のテスト方法に適用され、
人為的欠陥のあるケーブルを製造するケーブル処理モジュールと、
修理液注入前、及び修理液注入後のケーブル局所放電信号を測定する局所放電信号測定モジュールと、
ケーブルの両側に、修理液を注入するためのアダプタを取り付けるアダプタモジュールと、
修理液を注入する注入モジュールと、
各電圧レベルでの局所放電信号を比較することで、注入された修理液とケーブル本体との適合性を判定する分析モジュールと、を含む。
【発明の効果】
【0013】
従来技術に比べると、本発明は以下の利点及び有益な効果を具備する:
(1)本発明は修理液材料とケーブル緩衝防水テープとの間の適合性能を判定できる。緩衝防水テープの外側に非導電性巻き付けテープを巻きつけて、その被覆率は50%を超え、これによって、ケーブル緩衝防水テープと波付きアルミシースとの間の電気接続を完全に遮断できる。修理液がケーブルエアギャプ層に注入された後、非導電性巻き付けテープと緩衝防水テープとの材質が同様である(何れもポリエステル繊維である)ため、修理液とケーブル緩衝防水テープとの適合性が良ければ、修理液は非導電性巻き付けテープを浸潤させることができ、絶縁遮蔽層とアルミシースとの間の電気接続を回復させ、局所放電量を大幅に低減し、適合性が不良(修理液材料とケーブル緩衝防水テープとは互いに排斥する)であれば、修理液は非導電性巻き付けテープによって絶縁遮蔽層と電気接続できず、この場合、導電性修理液は緩衝層の電気性能を回復させることができず、局所放電信号も大きくなる。
(2)本発明は修理液の長いケーブル中の流動方向を制御でき、注入過程で修理液が弱点からオーバーフローすることを防止する。発明が提供するアダプタ注入方法は、ケーブル修理の方向性、密閉及び効率の問題を効果的に実現する。アダプタセンタースリーブ上の前へ傾斜する2つの管筒構造は、修理液の注入に初期の方向ガイドを提供し、バックガスケットの密閉構造は修理液の流動方向をさらに保障し、修理液がケーブルジョイント内に流入して他の事故を招致することを防止し、フロントガスケット構造はアルミシースとケーブルとを効果的に接合することで、ケーブル内部に入る時、修理液はオーバーフローすることがない。
(3)本発明は修理液の緩衝防水テープに対する電気回復性能を検証できる。本発明の局所放電信号の大きさの判定方法によれば、修理液はケーブルエアギャプ層に注入された後、緩衝防水テープを完全に浸潤させるかどうかを判定できる。完全に浸潤しなければ、非導電性巻き付けテープとアルミシースとの界面には電界強度集中の現象が出現して、局所放電信号があり、完全に浸潤すれば、修理液自体の導電性能は非導電性巻き付けテープ及び緩衝防水テープの抵抗率を大幅に低減して、ケーブル絶縁層と波付きアルミシースとの間の電気接続を回復させる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】従来の導電性修理液注入技術の装置図である。
【
図2】本発明の実施例の欠陥のあるケーブルと導電性修理液との適合性のテスト方法のフローチャートである。
【
図3】本発明の実施例の緩衝防水テープ構造の模式図である。
【
図4】本発明の実施例の非導電性巻き付けテープの構造模式図である。
【
図5】本発明の実施例の人為的欠陥のあるケーブルの断面模式図である。
【
図6】本発明の実施例の人為的欠陥のあるケーブルの両端に絶縁テープを巻く模式図である。
【
図7】本発明の実施例の局所放電実験の配線及び配置の模式図である。
【
図8】本発明の実施例のアダプタ構造全体の模式図である。
【
図9】本発明の実施例のアダプタの内部平面図である。
【
図10】本発明の実施例のフロントガスケット、バックガスケット構造の模式図である。
【
図11】本発明の実施例のセンタースリーブ構造の模式図である。
【
図12】本発明の実施例のセンタースリーブの下半分の模式図である。
【
図13】本発明の実施例の修理液注入回路の模式図である。
【
図14】本発明の実施例を示し、欠陥のあるケーブルと導電性修理液との適合性のテストシステムの構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
当業者に本出願の解決策をよりよく理解させるために、以下、本出願の実施例の図面を結合して、本出願の実施例の技術案を明らか且つ完全に記載する。明らかに、記載する実施例は全ての実施例ではなく、本出願の一部の実施例に過ぎない。本出願の実施例に基づいて、当業者は進歩性に値する労働をしないことを前提として取得した他の全ての実施例は何れも本出願の保護範囲に属している。
【0016】
実施例
図1は、従来の導電性修理液注入技術の装置図であり、修理液注入端は順に接続されている高圧エアポンプ、圧力制御弁、圧力計、修理液缶吸気管、修理液缶、修理液缶液体排出管、圧力制御弁、第1エアチューブサブジョイント、第1接続装置、架橋ポリエチレンケーブル緩衝層及び第1修理液アダプタを含み、修理液収集端は順に接続されている真空ポンプ、圧力制御弁、圧力計、修理液収集缶排気管、修理液収集缶、修理液収集缶給液管、圧力制御弁、第2エアチューブサブジョイント、第2接続装置及び第2修理液アダプタを含む。実際の工事応用において、修理対象となる欠陥のあるケーブルは一般的に長いケーブルであり、必要な注入圧力は相応的に大きくなるため、修理液注入ケーブルのアダプタに対する要求が高く、さもなければ、修理液のオーバーフローという状況が生じやすい。また、修理液とケーブルとの間の適合性は従来欠陥のあるケーブル又は正常ケーブルの分圧電圧検出に基づいて判定されにくい。分圧電圧の測定は、局所電気接触良好の結果を反映し、緩衝層とアルミシースとの間に接触良好の1つの点があれば、修理液とケーブルとの適合性が悪くても、ケーブル端末で測定された分圧電圧が低下するため、これに基づいて、修理液をケーブルに注入した後、全体の適合性を判定できない。
【0017】
図2に示すように、本実施例は欠陥のあるケーブルと導電性修理液との適合性のテスト方法を提供し、以下のステップを含み、
(1)人為的欠陥のあるケーブルを製造する。
まず、110kVの高圧ケーブルは、その3層共押出成形工程が終了した後、ケーブル絶縁遮蔽層の外側に緩衝防水テープを巻きつけ、当該緩衝防水テープは3層から構成され、
図3に示すように、第1層は半導電性ポリエステル繊維(材質はポリエステル繊維である)であり、第3層は半導電性不織布(材質はポリエステル繊維である)であり、前記両層の中間には1層のポリアクリル酸ナトリウム膨張粉が塗布される。前記緩衝防水テープの厚さは2mm以下であり、幅は80mm以下であり、50%の被覆率で絶縁遮蔽層の外側に巻きつけられる。当該緩衝防水テープのBDD-2型ケーブル半導電性抵抗測定装置での抵抗率テスト結果は1000~1500Ω・mの間に位置すべきである。
【0018】
そして、前記緩衝防水テープの外側に1層の非導電性ポリエステル繊維巻き付けテープ(以下、非導電性巻き付けテープと総称される)を巻きつけ、当該巻き付けテープは両層から構成され、第1層は非導電性膨張綿(材質はポリエステル繊維である)であり、第2層は非導電性不織布(材質はポリエステル繊維である)である。前記非導電性巻き付けテープの厚さは1mm以上、且つ2.5mm以下であり、幅は80mm以下であり、50%超えの被覆率で前記緩衝防水テープの外側に巻きつけられる。
【0019】
特に、
図4に示すように、上記技術手段における非導電性巻き付けテープ構造の被覆率、厚さ及び幅を50%、2mm及び80mmにそれぞれ設置し、以上のパラメータは他の数値に設置されてもよいが、非導電性巻き付けテープ構造は絶縁遮蔽層とアルミシースとの電気接続を完全に遮断できることを保証しなければならない。また、局所放電結果から修理液と緩衝防水テープとの適合性能を反映するために、非導電性巻き付けテープの主な材質は緩衝防水テープと同様である必要がある。
【0020】
最後、前記非導電性巻き付けテープの外側に螺旋波付きアルミシースをアルゴンアーク溶接し、ネジピッチは25mmであり、前記波付きアルミシースが使用するアルミテープはGB/T3880.1-2012の要求に合って、その延伸率は16%以上である。
【0021】
人為的欠陥のあるケーブル構造の断面模式図について
図5を参照すればよい。
【0022】
(2)局所放電信号を測定する。前記人為的欠陥のあるケーブルを15メートル以上(好ましくは、17m)切り取って、ケーブルの両側から露出する非導電性巻き付けテープに絶縁テープを巻く(
図6を参照)ことで、実験過程で緩衝防水テープ及び非導電性巻き付けテープが緩まないことを確保する。そして、前記人為的欠陥のあるケーブルを局所放電テスト回路(
図7を参照)に接続し、GB/T11017.1-2014局所放電実験標準に基づいて局所放電信号テストを行って、開始放電電圧U
1、対応する局所放電信号及び1.0U
0、1.5U
0、1.75U
0電圧での対応する局所放電信号(U
0=64kV)をそれぞれ記録する。
【0023】
(3)ケーブルの両側に、修理液を注入するためのアダプタを取り付ける。以上のように製造された人為的欠陥のあるケーブルによれば、当該ステップに記載のアダプタはフロントガスケット、バックガスケット及びセンタースリーブから構成され、当該3つの部分は何れも嵌合可能な上下の2つの部分から構成される。その構造について、それぞれ
図8、
図9を参照する。
【0024】
なお、フロントガスケットはL字状の横断面を有する環状構造(
図10を参照)であり、横断面に沿って上下の2つの部分に分けられ、センタースリーブの一端に並設され、高圧ケーブルのアルミシースに緊密に接触し、アダプタと高圧ケーブルとの接触の密閉性を保証する。
【0025】
バックガスケット全体は略中空の円柱体であり、円柱体の天井面及び底面には弾性変形用保留空間が設けられる。バックガスケットも円柱体の垂直二等分面に沿って上下の2つの部分に分けられ、非導電性巻き付けテープの外部で接合され、センタースリーブの一端の内部に嵌着されるとともに、センタースリーブ内で締め付けられ、非導電性巻き付けテープに緊密に貼合されることで、注入された修理液が当該方向から流出することを防止する。
【0026】
センタースリーブ全体は円筒構造(
図11、
図12を参照)であり、その内部には3層の円環状仕切板が設けられ、その外部には4つのボルト穴及び2つの管路構造が設けられる。その内部の環状仕切板はアダプタの内部空間を前、中、後という3つの部分に仕切って、それぞれフロントガスケット接続箇所、修理液注入箇所及びバックガスケット接続箇所として機能する。修理液は2つの管路構造からアダプタに注入され、さらに処理必要がある高圧ケーブルに注入される。4つのボルト穴はボルトを使用してアダプタ構造全体とケーブルとをリベット結合する。処理必要がある高圧ケーブルセグメントの他端にも、アダプタ構造が対称に配置されることで、余分な修理液を導出する。
【0027】
(4)修理液を注入する。
図13に示すように、アダプタは前記人為的欠陥のあるケーブルの両側に取り付けられ、ガスボトル、修理液缶体及びアダプタを順に接続する。缶体内には短入長出パイプが装着され、ガスボトルの圧力で修理液はアダプタを介してケーブルエアギャプ層に注入される。注入フローは以下の通りであり、
1) まず、修理液収集口の双方向ジョイントを閉じて、修理液注入口の双方向ジョイントを開けて、注入通路の気密性を検査する;
2) 気密性検査が完了した後、修理液収集口の双方向ジョイントを開け、注入圧力を0.3~0.4MPaに設置し、ガスボトルスイッチを開けて、修理液をケーブルエアギャプ層に注入する;
3) 修理液が収集口から流出した後、加圧を停止させる。双方向ジョイントは何れもケーブルの上方に接続されるため、この場合、ケーブルエアギャプ層には完全に修理液で満たされている;
4) ケーブルの双方向ジョイントを閉じて、注入装置を取り外し、注入操作が完成する。
【0028】
(5)局所放電信号を再び測定する。開始放電電圧U2、対応する局所放電信号、及び1.0U0、1.5U0、1.75U0電圧で対応する局所放電信号(U0=64kV)をそれぞれ記録する。各電圧レベルでの局所放電信号を比較することで、注入された修理液とケーブル本体との適合性を判定できる。判定方法は以下の通りであり、
1) 修理液注入前、ケーブルには各電圧レベルで何れも基準感度を超えた検出可能な放電信号が出現され、修理液注入後、ケーブルには各電圧レベルで何れも基準感度を超えた検出可能な放電信号が出現されていないと、修理液とケーブルとの適合性がよい;
2) 修理液注入前、ケーブルには各電圧レベルで何れも基準感度を超えた検出可能な放電信号が出現され、修理液注入後、ケーブルには前記電圧レベルで少なくとも1回の基準感度を超えた検出可能な放電信号が出現されると、修理液とケーブルとの適合性が悪い;
3) 開始放電電圧U2がU1より小さければ、修理液とケーブルとの適合性が悪い。
【0029】
図14に示すように、本出願の別の実施例において、欠陥のあるケーブルと導電性修理液との適合性のテストシステムを提供し、当該システムは、
前記人為的欠陥のあるケーブルを製造するケーブル処理モジュールと、
前記修理液注入前、及び修理液注入後のケーブル局所放電信号を測定する局所放電信号測定モジュールと、
ケーブルの両側に、修理液を注入するためのアダプタを取り付けるアダプタモジュールと、
修理液を注入する注入モジュールと、
各電圧レベルでの局所放電信号を比較することで、注入された修理液とケーブル本体との適合性を判定する分析モジュールと、を含む。
【0030】
ここで、上記実施例が提供するシステムは上記各機能モジュールの区分に基づいて例を挙げて説明し、実際応用において、ニーズに応じて、異なる機能モジュールによって完成されるように、上記機能を割り当て、即ち、内部構造を異なるモジュールに区分することで、以上に記載の全て又は一部の機能を完成してもよく、当該システムは、上記実施例の欠陥のあるケーブルと導電性修理液との適合性のテスト方法に適用される。
【0031】
ここで、本出願の各部分はハードウェア、ソフトウェア、ファームウエア又はこれらの組み合わせで実現される。上記実施形態において、複数のステップ又は方法は、メモリに記憶されて、適切な指令実行システムが実行するソフトウェア又はファームウエアによって実現される。例えば、ハードウェアで実現されると、別の実施形態と同じように、当分野の以下の公知技術のうちの何れか1項又はこれらの組み合わせで実現され、即ち、データ信号に対して論理機能を実現する論理ゲート回路を有するディスクリート論理回路、適切な組み合わせた論理ゲート回路を有する特定用途向け集積回路、プログラム可能なゲートアレイ(PGA)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などである。
【0032】
上記の実施例は本発明の好適な実施形態であり、本発明の実施形態は上記実施例に限定されず、本発明の精神実質及び原理から逸脱しない場合、完成した変更、修飾、置換、組み合わせ、簡略化は何れも等価な置換方式であり、本発明の保護範囲内に含まれる。