(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003513
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】純水製造システム又は超純水製造システムの監視装置、及び純水製造システム又は超純水製造システムの監視方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/00 20230101AFI20240105BHJP
C02F 1/469 20230101ALI20240105BHJP
C02F 9/00 20230101ALI20240105BHJP
C02F 1/42 20230101ALI20240105BHJP
C02F 1/20 20230101ALI20240105BHJP
C02F 1/32 20230101ALI20240105BHJP
B01D 61/58 20060101ALI20240105BHJP
B01D 65/00 20060101ALI20240105BHJP
C02F 1/44 20230101ALI20240105BHJP
【FI】
C02F1/00 D
C02F1/469
C02F9/06
C02F9/12
C02F1/42 A
C02F1/42 B
C02F1/20 Z
C02F1/32
B01D61/58
B01D65/00
C02F1/44 J
C02F1/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102707
(22)【出願日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000245531
【氏名又は名称】野村マイクロ・サイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野口 幸男
【テーマコード(参考)】
4D006
4D025
4D037
4D061
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA06
4D006GA07
4D006GA17
4D006HA49
4D006JA30A
4D006KA02
4D006KA53
4D006KA55
4D006KA57
4D006KA64
4D006KA71
4D006KB04
4D006KB11
4D006KB12
4D006KB13
4D006KB14
4D006KB17
4D006KC03
4D006KC16
4D006KE03P
4D006KE04P
4D006KE07P
4D006KE08P
4D006KE19P
4D006MA03
4D006MA13
4D006MA14
4D006PA01
4D006PB02
4D006PB04
4D006PB05
4D006PB06
4D006PC02
4D025AA04
4D025BB04
4D025CA04
4D025CA06
4D025DA01
4D025DA03
4D025DA04
4D025DA05
4D025DA06
4D025DA10
4D037AA03
4D037AA05
4D037BA18
4D037BA23
4D037BB02
4D037CA01
4D037CA02
4D037CA03
4D037CA04
4D037CA08
4D037CA15
4D061DA02
4D061DA03
4D061DB13
4D061EA09
4D061EB01
4D061EB04
4D061EB13
4D061EB17
4D061EB19
4D061EB37
4D061FA03
4D061FA06
4D061FA07
4D061FA08
4D061FA09
4D061FA13
4D061FA14
4D061GA01
4D061GA18
4D061GA19
4D061GA21
(57)【要約】
【課題】純水製造システム又は超純水製造システムを構成する装置から取得した複数の管理値のうちどの管理値が、予め設定された上限値又は下限値に到達しそうであるかを一目で把握することが可能となる。
【解決手段】監視装置84は、監視対象の純水製造システム又は超純水製造システムを構成する少なくとも一つの稼働状態の装置において複数の管理値を取得する取得部と、取得した複数の管理値を、それぞれの管理値毎に設定されている上限値及び下限値と、最初の値である初期値と、がグラフ上において同一の値となるように換算する換算部と、換算した複数の管理値を、同一のグラフ上に、それぞれ時系列で重畳表示する表示部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象の純水製造システム又は超純水製造システムを構成する少なくとも一つの稼働状態の装置において複数の管理値を取得する取得部と、
取得した複数の管理値を、それぞれの管理値毎に設定されている上限値及び下限値と、最初の値である初期値と、がグラフ上において同一の値となるように換算する換算部と、
換算した複数の管理値を、同一のグラフ上に、それぞれ時系列で重畳表示する表示部と、
を備える純水製造システム又は超純水製造システムの監視装置。
【請求項2】
前記純水製造システム又は超純水製造システムは、複数の装置により構成され、
前記複数の装置は、ろ過装置、活性炭塔、プレフィルタ、膜装置、電気式脱イオン装置、イオン交換装置、脱気装置、紫外線照射装置の少なくともいずれか2つを含む請求項1に記載の純水製造システム又は超純水製造システムの監視装置。
【請求項3】
前記表示部は、
装置の稼働状態が継続されると上昇傾向となる管理値を、前記初期値と前記上限値の間に表示し、
装置の稼働状態が継続されると下降傾向となる管理値を、前記初期値と前記下限値の間に表示する
請求項1に記載の純水製造システム又は超純水製造システムの監視装置。
【請求項4】
前記表示部は、
前記同一のグラフ上に、差圧、除去率、流量値、紫外線照射量、紫外線照射装置の過酸化水素発生量のうち、少なくともいずれか2つを表示し、
前記差圧を表示する場合には、前記初期値と前記上限値の間に表示し、
前記除去率と、前記流量値と、前記紫外線照射量と、前記紫外線照射装置の過酸化水素発生量のいずれかを表示する場合には、前記初期値と前記下限値の間に表示する
請求項1に記載の純水製造システム又は超純水製造システムの監視装置。
【請求項5】
重畳表示した複数の管理値のうち、いずれかの管理値と、当該管理値に対して設定されている上限値又は下限値との差が予め設定された値以下となった場合、当該管理値を取得した装置において、逆流洗浄若しくは薬品による再生を行う又は当該装置若しくは当該装置に使用する消耗品の交換時期であること通知する通知部をさらに備える請求項1に記載の純水製造システム又は超純水製造システムの監視装置。
【請求項6】
前記表示部は、前記複数の管理値を、それぞれ異なる態様で表示する請求項1に記載の純水製造システム又は超純水製造システムの監視装置。
【請求項7】
管理値を取得したそれぞれの装置における温度を用いて、複数の管理値をそれぞれ補正する補正部をさらに備え、
前記換算部は、前記補正部により補正した複数の管理値をそれぞれ換算し、
前記表示部は、換算した複数の管理値を、同一のグラフ上に、それぞれ時系列で重畳表示する請求項1に記載の純水製造システム又は超純水製造システムの監視装置。
【請求項8】
前記表示部は、換算した複数の管理値の予測曲線を、同一のグラフ上に、それぞれ時系列で重畳表示する請求項1に記載の純水製造システム又は超純水製造システムの監視装置。
【請求項9】
監視対象の純水製造システム又は超純水製造システムを構成する少なくとも一つの稼働状態の装置において複数の管理値を取得する工程と、
取得した複数の管理値を、それぞれの管理値毎に設定されている上限値及び下限値と、最初の値である初期値と、がグラフ上において同一の値となるように換算する工程と、
換算した複数の管理値を、同一のグラフ上に、それぞれ時系列で重畳表示する工程と、
を備える純水製造システム又は超純水製造システムの監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、純水製造システム又は超純水製造システムの監視装置、及び純水製造システム又は超純水製造システムの監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
純水を製造するための純水製造システム(超純水を製造するための超純水製造システムを含む)は、精密ろ過膜(MF膜)、限定ろ過膜(UF膜)、逆浸透膜(RO膜)等を備えた膜装置や、カチオン樹脂塔、アニオン樹脂塔、混床樹脂塔、電気脱イオン装置等のイオン交換装置、常圧脱気塔、真空脱気塔、脱気膜等の脱気装置、紫外線殺菌装置、紫外線照射TOC分解装置等の紫外線照射装置、砂ろ過装置、活性炭充填塔等のろ過装置、凝集沈殿装置等の複数のユニット(単位装置)を組み合わせて構成されうる。
【0003】
純水製造システムでは、被処理水を1次純水装置に通水させることにより純水を生成する。そして、超純水製造システムでは、1次純水装置に通水させることにより生成された純水を、2次純水装置に通水させることにより純水よりも純度の高い超純水を生成する。上述したような純水製造システム又は超純水製造システムでは、原水等の被処理水を複数のユニットに順に通すことで、ユニットを単体で用いる場合と比較して、被処理水の純度を高めることができる。
【0004】
例えば特許文献1には、前処理システムと、一次純水システムと、二次純水システムとを順に備えた超純水製造システムが開示されており、各々のシステムが上記のユニットを複数備える構成となっている。また、例えば特許文献2には、逆浸透膜ユニットを並列に3系列備えた逆浸透膜処理システムが開示されている。一般的に、前処理装置としては、2~4のユニット、1次純水装置は、6~10のユニット、2次純水装置は4~8のユニットで構成されている。さらに、それぞれのユニットは、しばしば、同じ構成のユニットを並列に、例えば、3~5系列備える構成となっている場合もある。
【0005】
上記装置では、それぞれ定期的にメンテナンスが行われる。例えば、膜装置であれば、膜モジュールの交換、洗浄、樹脂装置であれば、樹脂の洗浄、逆洗浄、再生等が行われ、そのメンテナンスの間隔は装置毎に異なる。また、メンテナンスは、ユニットごとに異なるタイミングで行うことにより、純水製造システム又は超純水製造システムが運転継続できるように工夫がされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-100733号公報
【特許文献2】特開2018-34093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述したような複数の装置から構成される純水製造システム又は超純水製造システムでは、これらのシステムを構成する各々の装置の設備が大きく、設置箇所も離れている。このため、管理者が、各々の装置における稼働状態を把握するのに時間も労力もかかってしまう。
【0008】
また、純水製造システム又は超純水製造システムを構成する装置の一つに不具合が発生すると、装置の交換や不具合の対応、装置の交換や不具合の対応に伴う純水製造システムの稼働停止などの問題が発生しうる。
【0009】
また、純水製造システム又は超純水製造システムを構成する各装置から取得した複数の管理値を、各々監視する場合であっても、取得した管理値が、装置の不具合を示す値に近づいているか把握し難い。例えば、純水製造システム又は超純水製造システムを構成するユニットの数は、12~22となり、それぞれに、例えば、3~5系列のユニットが備えられているとすると、稼働状態を把握すべきユニットの数は、ユニット数×系列となり、この場合、36~110のユニットの稼働状態を把握することが必要となる。さらに、それぞれのユニットのメンテナンス時期は同じにならないように運転されているため、全装置、全ユニットの運転状況を把握することは容易ではない。
【0010】
本開示の目的は、純水製造システム又は超純水製造システムを構成する装置から取得した複数の管理値のうちどの管理値が、予め設定された上限値又は下限値に到達しそうであるかを一目で把握することが可能な純水製造システム又は超純水製造システムの監視装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の第一態様の純水製造システム又は超純水製造システムの監視装置は、監視対象の純水製造システム又は超純水製造システムを構成する少なくとも一つの稼働状態の装置において複数の管理値を取得する取得部と、取得した複数の管理値を、それぞれの管理値毎に設定されている上限値及び下限値と、最初の値である初期値と、がグラフ上において同一の値となるように換算する換算部と、換算した複数の管理値を、同一のグラフ上に、それぞれ時系列で重畳表示する表示部と、を備える。
【0012】
本開示の第一態様の純水製造システム又は超純水製造システムの監視装置によれば、純水製造システム又は超純水製造システムを構成する装置から取得した複数の管理値が、同一グラフ上に、それぞれ時系列で一元化して表示される。これにより、純水製造システム又は超純水製造システムを構成する装置から取得した複数の管理値のうちどの管理値が、予め設定された上限値又は下限値に到達しそうであるかを一目で把握することが可能となる。
【0013】
本開示の第二態様の純水製造システム又は超純水製造システムの監視装置は、第一態様において、前記純水製造システム又は超純水製造システムは、複数の装置により構成され、前記複数の装置は、活性炭塔、プレフィルタ、膜装置、電気式脱イオン装置又は混床式イオン交換装置の少なくともいずれか2つを含む。
【0014】
本開示の第二態様の純水製造システム又は超純水製造システムの監視装置によれば、純水製造システム又は超純水製造システムは、複数の装置から構成されるため、原水等の被処理水を複数の装置に順に通すことで、単体の装置から構成される場合と比較して、被処理水の純度を高めることができる。
【0015】
本開示の第三態様の純水製造システム又は超純水製造システムの監視装置は、第一態様において、前記表示部は、装置の稼働状態が継続されると上昇傾向となる管理値を、前記初期値と前記上限値の間に表示し、装置の稼働状態が継続されると下降傾向となる管理値を、前記初期値と前記下限値の間に表示する。
【0016】
本開示の第三態様の純水製造システム又は超純水製造システムの監視装置によれば、稼働状態が継続されると上昇傾向となる管理値と稼働状態が継続されると下降傾向となる管理値とを同一のグラフ上に一元化して表示することにより、ユーザは、一目で対処すべき装置の優先順位を把握することができる。
【0017】
本開示の第四態様の純水製造システム又は超純水製造システムの監視装置は、第一態様において、前記表示部は、前記同一のグラフ上に、差圧、除去率、流量値、紫外線照射量、紫外線照射装置の過酸化水素発生量のうち、少なくともいずれか2つを表示し、前記差圧を表示する場合には、前記初期値と前記上限値の間に表示し、前記除去率と、前記流量値と、前記紫外線照射量と、前記紫外線照射装置の過酸化水素発生量のいずれかを表示する場合には、前記初期値と前記下限値の間に表示する。
【0018】
本開示の第四態様の純水製造システム又は超純水製造システムの監視装置によれば、稼働状態が継続されると上昇傾向となる管理値と稼働状態が継続されると下降傾向となる管理値とを同一のグラフ上に一元化して表示することにより、ユーザは、一目で対処すべき装置の優先順位を把握することができる。
【0019】
本開示の第五態様の純水製造システム又は超純水製造システムの監視装置では、第一態様において、重畳表示した複数の管理値のうち、いずれかの管理値と、当該管理値に対して設定されている上限値又は下限値との差が予め設定された値以下となった場合、当該管理値を取得した装置において、逆流洗浄若しくは薬品による再生を行う又は当該装置若しくは当該装置に使用する消耗品の交換時期であること通知する通知部をさらに備える。
【0020】
本開示の第五態様の純水製造システム又は超純水製造システムの監視装置によれば、不具合の発生する可能性のある装置における対応を、ユーザに把握させ易くすることが可能となる。
【0021】
本開示の第六態様の純水製造システム又は超純水製造システムの監視装置では、第一態様において、前記表示部は、前記複数の管理値を、それぞれ異なる態様で表示する。
【0022】
本開示の第六態様の純水製造システム又は超純水製造システムの監視装置によれば、不具合の発生する可能性のある装置又は当該装置における箇所を、ユーザに一目で把握させ易くすることができる。
【0023】
本開示の第七態様の純水製造システム又は超純水製造システムの監視装置では、第一態様において、管理値を取得したそれぞれの装置における温度を用いて、複数の管理値をそれぞれ補正する補正部をさらに備え、前記換算部は、前記補正部により補正した複数の管理値をそれぞれ換算し、前記表示部は、換算した複数の管理値を、同一のグラフ上に、それぞれ時系列で重畳表示する。
【0024】
本開示の第七態様の純水製造システム又は超純水製造システムの監視装置によれば、温度による影響を考慮しない場合と比較して、複数の管理値を、より精密に一元化して表示することが可能となる。
【0025】
本開示の第八態様の純水製造システム又は超純水製造システムの監視装置では、第一態様において、前記表示部は、換算した複数の管理値の予測曲線を、同一のグラフ上に、それぞれ時系列で重畳表示する。
【0026】
本開示の第八態様の純水製造システム又は超純水製造システムの監視装置によれば、純水製造システム又は超純水製造システムを構成する稼働状態の装置における複数の管理値を同一のグラフ上に一元化して予測することが可能となり、より早い段階で、装置の不具合の発生を抑制して、効率的な処理を維持することが可能である。
【0027】
本開示の他の態様の純水製造システム又は超純水製造システムの監視方法は、監視対象の純水製造システム又は超純水製造システムを構成する少なくとも一つの稼働状態の装置において複数の管理値を取得する工程と、取得した複数の管理値を、それぞれの管理値毎に設定されている上限値及び下限値と、最初の値である初期値と、がグラフ上において同一の値となるように換算する工程と、換算した複数の管理値を、同一のグラフ上に、それぞれ時系列で重畳表示する工程と、を備える。
【0028】
本開示の他の態様の純水製造システム又は超純水製造システムの監視方法によれば、純水製造システム又は超純水製造システムを構成する装置から取得した複数の管理値が、同一グラフ上に、それぞれ時系列で一元化して表示される。これにより、純水製造システム又は超純水製造システムを構成する装置から取得した複数の管理値のうちどの管理値が、予め設定された上限値又は下限値に到達しそうであるかを一目で把握することが可能となる。
【発明の効果】
【0029】
本開示によれば、純水製造システム又は超純水製造システムを構成する装置から取得した複数の管理値のうちどの管理値が、予め設定された上限値又は下限値に到達しそうであるかを一目で把握することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本開示の一実施形態の純水製造システムを示す構成図である。
【
図2】本開示の一実施形態の純水製造システムを監視する監視装置の制御構成を示すブロック図である。
【
図3】本開示の一実施形態の監視装置の記憶部に記憶されるデータの一例を示す図である。
【
図4】本開示の一実施形態の監視装置により、稼働状態の複数の装置からそれぞれ取得した管理値を、同一のグラフ上にプロットした例を示した図である。
【
図5】
図4の状態からさらに時間が経過した後の、稼働状態の複数の装置からそれぞれ取得した管理値を、同一のグラフ上にプロットした例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して本実施形態の純水製造システム12について説明する。なお、本開示は、当該図面に記載された態様に限定されるものではない。
【0032】
図1に示すように、純水製造システム12は、供給水の一例である原水の流れ方向上流側から順に、前処理装置として、タンク14、配管16、活性炭塔18を備え、配管20で接続され、1次純水装置として、プレフィルタ22、配管24、膜装置26、配管28、排水配管29、タンク30、配管32、電気式脱イオン装置34、配管36、排水配管41、混床式イオン交換装置38、配管40を有している。すなわち、純水製造システム12は、1以上のユニットを備える複数の装置と複数の配管により構成されている。なお、本開示は、この後段に2次純水装置が備えられた超純水製造システムにも適用可能である。よって、純水製造システム12は、以下において超純水製造システムを含むものとして説明する。2次純水装置には、紫外線照射装置、脱気膜装置、非再生型混床式イオン交換装置、限外ろ過装置等の1以上のユニットを備え、限外ろ過装置を経て製造された超純水がPOU(ユースポイント)に供給される。
【0033】
ここで、原水としては、たとえば水道水、地下水、河川水、工業用水等が用いられる。また、原水中の不純物の濃度によっては、活性炭塔18、プレフィルタ22による前処理を行うことなく、膜装置26に原水を送ることも可能である。
【0034】
タンク14は、原水を一時的に貯留する。
【0035】
配管16は、タンク14と活性炭塔18を接続する。配管16には、上流側からポンプ44と圧力計46が設けられている。
【0036】
ポンプ44は、タンク14内の原水を活性炭塔18へ送水する。
【0037】
圧力計46は、配管16を流れる原水(被処理水)の圧力を検出する。
【0038】
活性炭塔18は、容器内に粒子状の活性炭が充填された構成である。この活性炭には、多数の細孔が形成されており、供給された被処理水をこの活性炭に通過させることで、残留塩素や有機物等の異物を活性炭の細孔に捕捉し、被処理水から除去あるいは分解する。
【0039】
配管20は、活性炭塔18とプレフィルタ22を接続する。配管20には、圧力計48が設けられている。
【0040】
圧力計48は、配管20を流れる処理水の圧力を検出する。
【0041】
プレフィルタ22は、活性炭塔18によって異物が除去された処理水中に含まれる、残留塩素、遊離塩素や微粒子等の懸濁物を除去する。プレフィルタ22は、膜装置26の上流側に設けられ、逆浸透膜(RO膜)を保護する。
【0042】
配管24は、プレフィルタ22と膜装置26を接続する。配管24には、上流側から圧力計50、ポンプ52、圧力計54、導電率計56が設けられている。
【0043】
圧力計50は、配管24の、プレフィルタ22とポンプ52の間を流れる処理水の圧力を検出する。すなわち、圧力計50は、プレフィルタ22の下流側における処理水の圧力を検出する。
【0044】
ポンプ52は、プレフィルタ22を通過した処理水を、膜装置26へ送水する。
【0045】
圧力計54は、配管24の、ポンプ52と膜装置26の間を流れる処理水の圧力を検出する。すなわち、圧力計54は、膜装置26の上流側における被処理水の圧力を検出する。
【0046】
導電率計56は、配管24を流れる処理水の導電率を検出する。すなわち、導電率計56は、膜装置26の上流側における被処理水の導電率を検出する。
【0047】
膜装置26は、逆浸透膜を有し、逆浸透膜に被処理水を透過させることで、被処理水に対して無機物、有機物、微粒子、微生物等の不純物を除去する。これにより逆浸透膜を透過した透過水と、逆浸透膜に透過されない濃縮水と、に分けられる。透過水は、処理水として配管28を介して、タンク30に一時的に貯留される。これに対し、濃縮水は、排水配管29を介して、排水される。
【0048】
配管28は、膜装置26とタンク30を接続する。配管28には、上流側から流量計58、圧力計60、導電率計62が設けられている。
【0049】
流量計58は、配管28を流れる処理水の流量を検出する。すなわち、流量計58は、膜装置26の下流側における処理水の流量を検出する。
【0050】
圧力計60は、配管28を流れる処理水の圧力を検出する。すなわち、圧力計60は、膜装置26の下流側における処理水の圧力を検出する。
【0051】
導電率計62は、配管28を流れる処理水の導電率を検出する。すなわち、導電率計62は、膜装置26の下流側における処理水の導電率を検出する。
【0052】
また、排水配管29には、圧力計66が設けられている。圧力計66は、排水配管29を流れる濃縮水の圧力を検出する。すなわち、圧力計66は、膜装置26の下流側における濃縮水の圧力を検出する。
【0053】
タンク30は、膜装置26を通過した処理水を一時的に貯留する容器である。
【0054】
配管32は、タンク30と電気式脱イオン装置34を接続する。配管32には、上流側からポンプ68、圧力計70が設けられている。
【0055】
ポンプ68は、タンク30内の被処理水を電気式脱イオン装置34へ送水する。
【0056】
圧力計70は、配管32を流れる被処理水の圧力を検出する。すなわち、圧力計70は、電気式脱イオン装置34の上流側における被処理水の圧力を検出する。
【0057】
電気式脱イオン装置(EDI)34は、直流電源35に接続されている。電気式脱イオン装置34は、陰イオン交換膜と陽イオン交換膜で形成された空隙にイオン交換樹脂を充填して、脱塩室と、濃縮室を形成し、直流電流を印加して被処理水中の不純物イオンを除去するよう構成されている。
【0058】
電気式脱イオン装置34おいて、例えば、被処理水は脱塩室及び濃縮室に供給され、脱塩室の陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂の混合体が被処理水中のイオン成分を吸着する。吸着されたイオン成分は直流電流の作用により濃縮室に移行されて、濃縮室の濃縮水は排水配管41を介して排水される。電気式脱イオン装置34では、被処理水中の陽イオンと陰イオンが除去される。
【0059】
配管36は、電気式脱イオン装置34と混床式イオン交換装置38を接続する。配管36には、上流側から圧力計72、抵抗率計74、流量計76が設けられている。
【0060】
圧力計72は、配管36を流れる処理水の圧力を検出する。すなわち、圧力計72は、電気式脱イオン装置34の下流側における処理水の圧力を検出する。
【0061】
抵抗率計74は、配管36を流れる処理水の電気抵抗率を検出する。すなわち、抵抗率計74は、電気式脱イオン装置34の下流側における処理水の電気抵抗率を検出する。
【0062】
流量計76は、配管36を流れる処理水の流量を検出する。すなわち、流量計76は、電気式脱イオン装置34の下流側における処理水の流量を検出する。
【0063】
また、排水配管41には、流量計80が設けられている。流量計80は、排水配管41を流れる濃縮水の流量を検出する。すなわち、流量計80は、電気式脱イオン装置34の下流側における濃縮水の流量を検出する。
【0064】
混床式イオン交換装置38は、例えば、円筒形の密閉容器に陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂が混合された混床式イオン交換樹脂が充填されて構成されている。混床式イオン交換装置38では、被処理水を混床式イオン交換装置38に通過させることで、陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂の未結合手に、被処理水中の陽イオンと陰イオンが吸着され、電気式脱イオン装置34において除去しきれなかった不純物イオンが除去される。
【0065】
混床式イオン交換装置38の下流側には、配管40が接続される。配管40には、抵抗率計82が設けられている。
【0066】
抵抗率計82は、配管40を流れる処理水の電気抵抗率を検出する。すなわち、抵抗率計82は、混床式イオン交換装置38の下流側における処理水の電気抵抗率を検出する。
【0067】
ここで、圧力計46、48、50、54、60、66、70、72、導電率計56、62、流量計58、76、80、抵抗率計74、82は、後述する測定値を測定する測定装置として用いられる。
【0068】
また、
図1では、各配管に設けられるバルブの図示を省略しているが、各配管の適所にバルブが設けられる。
【0069】
すなわち、純水製造システム12において、活性炭塔18、プレフィルタ22、膜装置26、電気式脱イオン装置34及び混床式イオン交換装置38等の複数の装置を介して、原水に対して、吸着、濾過、イオン交換等の各処理が施されることで、純度の高い純水が生成される。
【0070】
図2は、本開示の一実施形態における監視装置84の制御構成の一例を示す図である。
【0071】
図2に示すように、監視装置84は、表示部86と、取得部88と、算出部90と、換算部92と、記憶部94と、補正部96と、通知部98と、を有する。
【0072】
監視装置84は、監視対象の純水製造システム12の各測定装置から所定間隔で取得された測定値に基づいて、複数の管理値を、表示画面の同一のグラフ上に、プロットして表示する。ここで取得された測定値は、管理値として記憶部94に記憶される。また、ここで取得された測定値は、管理値を算出する際に用いられる。
【0073】
ここで、管理値とは、同一のグラフ上にプロットする項目であって、装置の不具合の発生を判断するための指標となるものである。管理値として、例えば、
図3に示すように、活性炭塔18における活性炭差圧、プレフィルタ22におけるプレフィルタ差圧、膜装置26における逆浸透膜の単位圧力当たりの流量、逆浸透膜の塩除去率、逆浸透膜の濃縮水差圧、電気式脱イオン装置34の電気抵抗値、電気式脱イオン装置34の下流側の電気抵抗率、電気式脱イオン装置34の差圧、電気式脱イオン装置34の下流側の流量値、濃縮側流量値、混床式イオン交換装置38の下流側の電気抵抗率等が用いられる。
【0074】
記憶部94は、測定値を用いて設定される複数の管理値毎の、計算式と、単位と、下限値、初期値(適正値ともいう)、上限値をそれぞれ記憶する。
図3は、記憶部94に記憶されるデータの一例を示す図である。
【0075】
具体的には、例えば記憶部94には、管理値としての活性炭差圧が、圧力計48により検出される圧力値Pbと圧力計46により検出される圧力値Paとの差を用いて算出されることが記憶され、さらに活性炭差圧の初期値は0.07MPaで、上限値が1MPaであることが記憶されている。
【0076】
また、例えば記憶部94には、管理値としてのプレフィルタ差圧が、圧力計50により検出される圧力値Pcと圧力計48により検出される圧力値Pbとの差を用いて算出されることが記憶され、さらにプレフィルタ差圧の初期値が0.03MPaで、上限値が0.5MPaであることが記憶されている。
【0077】
また、例えば記憶部94には、管理値としての逆浸透膜の単位圧力当たりの流量が、流量計58により検出される流量値Faを、圧力計54により検出される圧力値Pdと圧力計60により検出される圧力値Peとの差で除して算出されることが記憶されている。さらに記憶部94には、逆浸透膜の単位圧力当たりの流量の下限値が2m3/hr/MPa、初期値が3.4m3/hr/MPa、上限値が4m3/hr/MPaであることが記憶されている。
【0078】
また、例えば記憶部94には、管理値としての逆浸透膜の塩除去率が、導電率計56により検出される導電率Caと、導電率計62により検出される導電率Cbとの差を、導電率計56により検出される導電率Caで除してパーセント(%)で示して算出されることが記憶され、さらに逆浸透膜の塩除去率の下限値が90%、初期値が97.1%であることが記憶されている。
【0079】
また、例えば記憶部94には、管理値としての逆浸透膜の濃縮水差圧が、圧力計54により検出される圧力値Pdと、圧力計66により検出される圧力値Pfとの差を用いて算出されることが記憶され、さらに逆浸透膜の濃縮水差圧の初期値が0.14MPa、上限値が0.5MPaであることが記憶されている。
【0080】
また、例えば記憶部94には、管理値としての電気式脱イオン装置34の電気抵抗値が、電気式脱イオン装置34を流れる電圧値Vを電流値Iで除して算出されることが記憶され、さらに電気式脱イオン装置34の電気抵抗値の下限値が100Ω、初期値が199Ω、上限値が400Ωであることが記憶されている。
【0081】
また、例えば記憶部94には、管理値として電気式脱イオン装置34の下流側の電気抵抗率であって、抵抗率計74により検出される電気抵抗率Raを用いることが記憶され、さらに電気式脱イオン装置34の下流側の電気抵抗率の下限値が10MΩ・cm、初期値が17.4MΩ・cmであることが記憶されている。
【0082】
また、例えば記憶部94には、管理値としての電気式脱イオン装置34の差圧が、圧力計70により検出される圧力値Pgと、圧力計72により検出される圧力値Phとの差を用いて算出されることが記憶され、さらに電気式脱イオン装置34の差圧の初期値が0.15MPa、上限値が0.3MPaであることが記憶されている。
【0083】
また、例えば記憶部94には、管理値として電気式脱イオン装置34の下流側の流量値であって、流量計76により検出される流量値Fbを用いることが記憶され、さらに電気式脱イオン装置34の下流側の流量値の下限値が2m3/hr、初期値が2.9m3/hrであることが記憶されている。
【0084】
また、例えば記憶部94には、管理値として電気式脱イオン装置34の濃縮側の流量値であって、流量計80により検出される流量値Fcを用いることが記憶され、さらに電気式脱イオン装置34の濃縮側の流量値の下限値が0.2m3/hr、初期値が0.3m3/hrであることが記憶されている。
【0085】
また、例えば記憶部94には、管理値として混床式イオン交換装置38の下流側の電気抵抗率であって、抵抗率計82により検出される電気抵抗率Rbを用いることが記憶され、さらに混床式イオン交換装置38の下流側の電気抵抗率の下限値が17.5MΩ・cm、初期値が18.2MΩ・cmであることが記憶されている。
【0086】
すなわち、純水製造システム12の最下流側の装置である混床式イオン交換装置38の下流側における電気抵抗率の初期値は、理想的な純水の電気抵抗率である18.2MΩ・cmに近づけることが望ましい。
【0087】
取得部88は、測定値として、圧力計46、48、50、54、60、66、70、72により検出された圧力値、導電率計56、62により検出された導電率、流量計58、76、80により検出された流量値、抵抗率計74、82により検出された電気抵抗率を取得する。
【0088】
また、取得部88は、電気式脱イオン装置34を流れる電流値Iと電圧値Vを取得する。
【0089】
算出部90は、取得部88により取得した測定値を用いて管理値を算出する。
【0090】
具体的には、算出部90は、圧力計46、48によりそれぞれ検出された圧力値Pa、Pbを用いて、管理値の一つとなる活性炭差圧を算出する。
【0091】
また、算出部90は、圧力計48、50によりそれぞれ検出された圧力値Pb、Pcを用いて、管理値の一つとなるプレフィルタ差圧を算出する。
【0092】
また、算出部90は、圧力計54、60によりそれぞれ検出された圧力値Pd、Peと、流量計58により検出された流量値Faを用いて、管理値の一つとなる逆浸透膜の単位圧力当たりの流量を算出する。また、算出部90は、導電率計56、62によりそれぞれ検出された導電率Ca、Cbを用いて、管理値の一つとなる逆浸透膜の塩除去率を算出する。また、圧力計54、66によりそれぞれ検出された圧力値Pd、Pfを用いて、管理値の一つとなる逆浸透膜の濃縮水の差圧を算出する。
【0093】
また、算出部90は、電気式脱イオン装置34における電流値Iと電圧値Vを用いて、管理値の一つとなる電気式脱イオン装置34の電気抵抗値を算出する。また、算出部90は、圧力計70、72によりそれぞれ検出された圧力値Pg、Phを用いて、管理値の一つとなる電気式脱イオン装置34の差圧を算出する。
【0094】
換算部92は、複数の管理値を、それぞれの管理値毎に設定されている上限値及び下限値と、最初の値である初期値と、がグラフ上において同一の値となるように換算する。具体的には、換算部92は、例えば上限値を100、下限値を-100、初期値を0となるように換算する。
【0095】
なお、換算部92は、ユニットごとの初期値にばらつきがある場合に、通水開始直後であって、ユニットごとの初期値が安定するまでの期間のデータ、例えば通水開始から30分から2時間のデータを基に算出した値を用いて、初期値を0となるように換算する様にしてもよい。
【0096】
例えば取得部88が圧力計48、50により圧力値P
b、P
cをそれぞれ取得し、算出部90により算出されたプレフィルタ差圧P
c-P
b=0.1MPaだった場合について説明する。この場合、
図3に示すように、プレフィルタ差圧の初期値0.03MPa、上限値0.5MPaが、それぞれ初期値0、上限値100となるように換算すると、プレフィルタ差圧0.1MPaは、下限値-100、初期値0、上限値100のグラフ上では約15に換算される。そして、表示部86は、下限値-100、初期値0、上限値100のグラフ上の現在の日時の15の位置にプレフィルタの差圧を示す新たなプロットとして表示する。
【0097】
また、例えば取得部88が抵抗率計74により検出された電気抵抗率R
a=17MΩ・cmだった場合について説明する。この場合、
図3に示すように、電気式脱イオン装置34の下流側の電気抵抗率の下限値10MΩ・cm、初期値17.4MΩ・cmが、下限値-100、初期値0となるように換算すると、電気抵抗率17MΩ・cmは、下限値-100、初期値0、上限値100のグラフ上では約-5.4に換算される。そして、表示部86は、下限値-100、初期値0、上限値100のグラフ上の現在の日時の-5.4の位置に電気式脱イオン装置の電気抵抗率を示す新たなプロットとして表示する。
【0098】
同様に、活性炭差圧、逆浸透膜の単位圧力当たりの流量、逆浸透膜の塩除去率、逆浸透膜の濃縮水差圧、電気式脱イオン装置の電気抵抗値、電気式脱イオン装置の差圧、電気式脱イオン装置の下流側の流量値、濃縮側の流量値、混床式イオン交換装置の下流側の電気抵抗率をそれぞれ、下限値が-100、初期値が0、上限値が100になるように換算部92により換算して、同一グラフ上にそれぞれプロットとして表示部86により表示する。
【0099】
すなわち、表示部86は、換算した複数の管理値を、同一のグラフ上に、それぞれ時系列で重畳表示していく。例えば、表示部86は、換算した差圧、塩除去率等の除去率、流量値、紫外線照射量、紫外線照射装置の過酸化水素発生量等を、同一のグラフ上に、それぞれ時系列で重畳表示していく。
【0100】
このとき、表示部86は、換算された複数の管理値を、それぞれ例えば異なる色や、異なる形状のプロット等の異なる態様で表示する。
【0101】
また、補正部96は、測定値を取得したそれぞれの装置における水温、気温等の温度等の外乱を用いて、取得部88により取得された測定値を、それぞれ補正する。
【0102】
この場合、換算部92は、補正部96により補正した複数の管理値をそれぞれ、同一グラフ上において下限値が-100、初期値が0、上限値が100になるように換算する。そして、表示部86は、換算した複数の管理値を、同一のグラフ上に、それぞれ時系列で重畳表示する。
【0103】
通知部98は、重畳表示した複数の管理値のうち、いずれかの管理値と、この管理値に対して設定されている上限値又は下限値との差が予め設定された値以下となった場合、この管理値に対応する装置において、逆流洗浄若しくは薬品による再生を行う又は当該装置若しくは当該装置に使用する消耗品の交換時期であること通知する。通知は、アラームでも点滅でも再生や交換等を促す表示でもよい。
【0104】
そして、ユーザは、表示部86に表示されたそれぞれの管理値における傾向であって、上限値又は下限値に到達しそうである場合であって、上限値又は下限値との差が予め設定された値以下となるプロット表示に応じて、逆流洗浄若しくは薬品による再生を行う又は当該装置若しくは当該装置に使用する消耗品の交換を行う。
【0105】
ここで、逆流洗浄とは、フィルタ等を被処理水の通流方向と逆方向に流して洗浄することをいう。また、薬品による再生とは、活性炭やイオン交換樹脂等を、薬品を用いて再生することをいう。また、消耗品には、例えばプレフィルタ、逆浸透膜、イオン交換樹脂、活性炭等が含まれる。
【0106】
また、表示部86は、換算した複数の管理値の予測曲線を、同一のグラフ上に、それぞれ時系列で重畳表示する。
【0107】
図4は、監視装置84の表示部86により表示される表示画面の一例を示す図である。なお、簡略化及び説明のため、活性炭塔18、プレフィルタ22、膜装置26、電気式脱イオン装置34、混床式イオン交換装置38それぞれの1系列のデータのみ表示しているが、他のユニットおよび系列を重ねて表示することも可能である。なお、さらに複数のデータを重ねて表示した場合、これらの装置が正常に運転されている場合、管理値が0に重ねて表示される。そのため、個々のデータが何のデータかは判断できなくなるが、正常に運転できている装置なので、特に問題はない。
【0108】
図4に示すように、表示画面には、縦軸に、複数の管理値の同一の指標(共通して用いる値)として、初期値を0、上限値を100、下限値を-100とし、横軸に時間軸が示されている。
【0109】
図4には、7月18日時点の表示画面が示されている。この装置は3月20日に本格的に運転開始し、その直後である7月18日現在における表示例である。
図4に示すように、表示画面には、各管理値が、異なる態様でプロットとして時系列に表示され、7月18日以降の各管理値の予測曲線が破線で表示されている。ここで、異なる態様とは、色やプロットの形状等が異なる他、ユーザが他の管理値と識別できる程度に異なることをいう。
【0110】
7月18日時点においては、装置の運転開始直後であるにも関わらず、プレフィルタ差圧の若干の上昇がみられ、膜装置26(逆浸透膜)の若干の塩除去率、流量の減少がみられる。すなわち、プレフィルタ22、膜装置26、若しくはその前段に何らかの問題があることが示唆される。これらの装置では、まずプレフィルタの交換が10月に、次いで逆浸透膜の交換もしくは洗浄等の対応が、11月15日以降に必要になる可能性が判断できる。このように、各装置の差圧はグラフ上に比較可能に表示される。同様に、水質の悪化は、管理値が下がる方向に全てプロットされるので、各装置の水質の変動を比較することが容易である。
【0111】
図5には、
図4の装置をさらに運転継続し、11月15日現在における表示画面が示されている。プレフィルタは9月10日ごろに交換したため、差圧が初期値に下がっている。しかし、活性炭の差圧が上昇し始めている。また、逆浸透膜の濃縮水の差圧が急激に増加し始めていることもわかる。活性炭の差圧の上昇と逆浸透膜の差圧の上昇から、膜装置26の方が先に洗浄もしくは交換等の対応が必要なことが判断できる。なお、この膜装置26における逆浸透膜の洗浄もしくは交換等の対応が必要な時期は、この図から3月15日以降になると予測できる。
【0112】
すなわち、ユーザは、各管理値のプロットの推移や予測曲線によって、対応が必要な装置や、必要な対応を予測できる。
【0113】
つまり、表示部86は、装置の稼働状態が継続されると、例えばプレフィルタ差圧や活性炭差圧や装置下流側の圧力値等の上昇傾向となる管理値を表示する場合には、初期値0と上限値100の間にプロットとして表示していく。また、表示部86は、装置の稼働状態が継続されると、例えば塩除去率等の除去率、流量値、紫外線照射量、紫外線照射装置の過酸化水素発生量等のいずれかを表示する場合には、下降傾向となる管理値を、初期値0と下限値-100の間にプロットとして表示していく。
【0114】
すなわち、
図4及び
図5に示すように、複数の管理値が同一のグラフ上に一元化して表示されることにより、ユーザは、一目で対処すべき装置の優先順位を把握することができる。例えば、純水装置を構成するユニットの数は、12~22程度であるが、それぞれの装置の状態を、このように同一のグラフ上に一元化した表示を用いて示すことで容易に把握することができる。
【0115】
また、複数の管理値を同一のグラフ上に表示することにより、それぞれの管理値の傾向によって、対応が必要な装置や、逆流洗浄や薬品による再生や、消耗品の交換等の必要な対応をユーザに把握させることができ、それぞれの管理値の上限値又は下限値との差が所定値未満となる管理値に対応する装置や消耗品を、再生や交換等の目安とすることができる。
【0116】
以上のように、本実施形態の監視装置84を用いることによって、純水製造システム12を構成する稼働状態の各装置における複数の管理値を同一のグラフ上に一元化して表示することができる。これによって、純水製造システムを構成する装置から取得した複数の管理値のうちどの管理値が、予め設定された上限値又は下限値に到達しそうであるかを一目で把握することが可能となる。よって、不具合の発生する可能性のある装置又は当該装置における箇所を、ユーザに一目で把握させ易くすることが可能となる。
【0117】
また、本実施形態の監視装置84を用いることによって、全装置、全ユニットの稼働状態(運転状況ともいう)を把握できるので、メンテナンス計画を立てることに活用できる。また、全ユニットの稼働状態を基に運転条件を変えることにも活用できる。例えば、膜装置で膜のつまりが激しいユニットがある場合、例えば膜装置の供給水量を減らす、水回収率を下げる等の膜装置の負荷量を減らすことができる。
【0118】
図6は、本開示の他の実施形態を示す図である。
図6に示すように、純水装置100a、100b、100cは、それぞれ監視装置84にネットワークを介して接続されている。つまり、監視装置84は、別の場所に設置された純水装置100a、100b、100cの管理情報を、ネットワーク経由で収集するよう構成されている。監視装置84は、例えばデータ集計センターで用いられ、収集された情報を集計して状況を解析する際に利用することができる。この場合、データが一元化されているため、たとえ、運転条件やシステム、製造する超純水の水質が異なる純水装置間であっても、データをそのまま比較できる。すなわち、多数現場の運転管理にも適用できる。
【0119】
以上、本開示の実施形態及び他の実施形態を具体的に説明した。しかしながら、本開示は上述の実施形態及び他の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0120】
例えば、純水製造システム12は、上記した構成に限定されない。例えば、純水製造システム12を構成する上記装置のうち、少なくとも一つの装置を備えていれば良い。
【0121】
例えば、純水製造システム12として混床式イオン交換装置38以外のイオン交換装置、例えば、単層床式、複層床式イオン交換装置を有していても良い。この場合、混床式イオン交換装置38以外のイオン交換装置の塩除去率、通水差圧を測定して管理値として監視してもよい。
【0122】
また、被処理水中の気体として特に炭酸ガスを除去する常圧脱気装置を有していても良く、被処理水中の気体として特に溶存酸素を除去する減圧脱気装置を有していても良い。常圧脱気装置では、装置前後の水の導電率から計算される除去率を管理値として監視する。減圧脱気装置では、例えば、装置前後の溶存酸素量(DO)を溶存酸素計で測定した除去率を管理値として監視する。すなわち、脱気装置では、炭酸除去率と溶存酸素除去率のいずれかであって除去率を監視する。また、脱気装置の前後の差圧を管理値として監視してもよい。
【0123】
また、例えば他に、被処理水中の有機物を酸化分解する目的で紫外線照射装置を有していても良い。紫外線照射装置では、照射量(光の量)を測定して、管理値として監視する。また、発生する過酸化水素量を測定して、管理値として監視するようにしても良い。この場合、紫外線照射装置とその直後に設置されるイオン交換装置をセットにして、これらの前後でのTOCをTOC計で測定して管理値として監視するようにしても良い。TOC値から除去率を計算する。
【0124】
また、上述では、装置上流側の圧力と、当該装置下流側の圧力により差圧を算出して管理値として用いる構成について説明したが、本開示はこれに限定されるものではなく、例えば、装置下流側の圧力値を管理値として用いても良い。
【0125】
また、上述した管理値の一例である塩除去率は、処理水の水質で代用することも可能であって、例えば、装置下流側の電気抵抗率を管理値として監視するようにしてもよい。
【0126】
また、膜装置26の上流側に、例えば、凝集沈殿処理装置、マイクロフィルタや限外ろ過装置等の濁質除去装置等を有していても良い。また、純水製造システム12を構成する装置の上流側からの順序や数も上記した構成に限定されるものではない。
【0127】
また、上述した純水製造システムは、複数の装置が直列で配置される構成について説明したが、本開示はこれに限定されるものではなく、複数の装置が並列で配置される構成においても適用することができる。
【符号の説明】
【0128】
12 純水製造システム
18 活性炭塔
22 プレフィルタ
26 膜装置
34 電気式脱イオン装置
38 混床式イオン交換装置
84 監視装置
86 表示部
88 取得部
90 算出部
92 換算部
94 記憶部
96 補正部
98 通知部