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特開2024-35146機械式継手接合用治具、機械式継手の接合方法、構造体及び構造体の施工方法
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  • 特開-機械式継手接合用治具、機械式継手の接合方法、構造体及び構造体の施工方法 図1
  • 特開-機械式継手接合用治具、機械式継手の接合方法、構造体及び構造体の施工方法 図2
  • 特開-機械式継手接合用治具、機械式継手の接合方法、構造体及び構造体の施工方法 図3
  • 特開-機械式継手接合用治具、機械式継手の接合方法、構造体及び構造体の施工方法 図4
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  • 特開-機械式継手接合用治具、機械式継手の接合方法、構造体及び構造体の施工方法 図6
  • 特開-機械式継手接合用治具、機械式継手の接合方法、構造体及び構造体の施工方法 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035146
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】機械式継手接合用治具、機械式継手の接合方法、構造体及び構造体の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/24 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
E02D5/24 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023137666
(22)【出願日】2023-08-28
(31)【優先権主張番号】P 2022136420
(32)【優先日】2022-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】田近 久和
(72)【発明者】
【氏名】市川 和臣
【テーマコード(参考)】
2D041
【Fターム(参考)】
2D041AA02
2D041CA01
2D041CB01
2D041DB02
2D041DB13
(57)【要約】
【課題】C型リング部材に加工が不要で、特殊な作業も必要としない機械式継手接合用治具、機械式継手の接合方法、構造体及び構造体の施工方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る機械式継手接合用治具15は、内側継手5の外周面と外側継手7の内周面のそれぞれに形成された環状溝11を有し、環状溝11内で内側継手5側と外側継手7側に跨るように配置可能なC型リング部材13を備えた機械式継手1を接合するために用いるものであって、第1板状部材17と、第2板状部材19と、第1板状部材17と第2板状部材19を連結する連結部21とを備え、第2板状部材19は、連結部21材を介して第1板状部材17に連結された状態で縮径状態のC型リング部材13の外周面が当接することでC型リングの縮径状態を維持し、C型リング部材13の外周面との当接を解除することでC型リングを拡径可能状態とできるようにした。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側継手の外周面と外側継手の内周面のそれぞれに継手組合せ完了状態で対向するように形成された環状溝を有し、前記内側継手の前記環状溝に格納可能、かつ組合せ完了状態において前記環状溝内で前記内側継手側と前記外側継手側に跨るように配置可能なC型リング部材を備えた機械式継手を接合するために用いる機械式継手接合用治具であって、
前記内側継手の前記環状溝内に配置される第1板状部材と、前記C型リング部材を挟んで前記第1板状部材に対向配置される第2板状部材と、前記C型リング部材の端部同士の隙間に配置されて前記第1板状部材と前記第2板状部材を連結する連結部とを備え、
前記第2板状部材は、
前記連結部材を介して前記第1板状部材に連結された状態で縮径状態の前記C型リング部材の外周面が当接することで前記C型リングの縮径状態を維持し、前記C型リング部材の外周面との当接を解除することで前記C型リングを拡径可能状態とできるようにした機械式継手接合用治具。
【請求項2】
前記連結部材の一端と前記第1板状部材とが連結されると共に前記連結部材の他端と前記第2板状部材とが分離可能になっているか、又は、前記連結部材の他端と前記第2板状部材が連結されると共に前記連結部材の一端と前記第1板状部材が分離可能になっている請求項1に記載の機械式継手接合用治具。
【請求項3】
前記第2板状部材は、前記連結部材に回動可能に取り付けられ、回動することで前記C型リング部材に当接した状態と当接していない状態にすることができるように構成されている請求項1に記載の機械式継手接合用治具。
【請求項4】
前記第1板状部材は、一方の幅が広く他方の幅が狭い長形であり、狭い方の幅は前記C型リング部材の自然状態の隙間よりも狭く、広い方の幅は前記隙間よりも広く設定されており、
前記第2板状部材は、前記第1板状部材に対して離接可能に設置できるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の機械式継手接合用治具。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の機械式継手接合用治具を用いた前記機械式継手の接合方法であって、
前記C型リングを前記内側継手の前記環状溝に格納し、該環状溝内から突出しないようにC型リングを縮径して前記機械式継手接合用治具によって縮径状態を維持した状態にする工程と、該内側継手と前記外側継手を組み合わせて組合せ完了状態とする工程と、前記外側継手に設けたアクセス孔から前記第2板状部材にアクセスして該第2板状部材が前記C型リングに当接しないようにすることで前記C型リングの縮径状態を解除して、前記C型リングを前記環状溝内で前記内側継手側と前記外側継手側に跨るように配置して接合完了状態とする工程とを備えた機械式継手の接合方法。
【請求項6】
請求項5に記載の機械式継手の接合方法によって連結された複数の鋼管を備えた構造体。
【請求項7】
請求項6に記載の構造体の施工方法であって、連結対象となる継手付き鋼管の一方の鋼管軸方向の位置を拘束した状態で、他方の継手付き鋼管を前記一方の継手付き鋼管に位置合わせして差込嵌合する構造体の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管杭又は鋼管矢板に適用される機械式継手の接合に用いられる機械式継手接合用治具、該機械式継手接合治具を用いた機械式継手の接合方法、該接合方法よって連結された複数の鋼管を備えた構造体及び構造体の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼管杭又は鋼管矢板の接合については、従来から現場溶接主体で行われてきたが、近年は技能者減少、工期短縮、品質管理などの観点から機械式継手による接合が増加してきている。
【0003】
機械式継手として、C字状のリング部材(以下、「C字状リング」という)を用いたものが、例えば特許文献1に柱状体接続構造として開示されている。
特許文献1に開示の柱状接続構造は、第一柱状体(1)の一端部と第二柱状体(2)の一端部とに、一対の内側柱部(11)と外側管部(21)とを振り分けて設け、その内側柱部(11)と外側管部(21)とを互いに接続した柱状体接続構造である。そして、前記内側柱部(11)の外周面に環状の外溝部(12)を少なくとも1カ所設けるとともに、前記外側管部(21)の内周面に環状の内溝部(22)を少なくとも1カ所設けている。さらに、径変化自在で、前記外溝部(12)もしくは内溝部(22)の入り口から奥に引退した状態に収容可能なリング状部材(3)を設けている。そして、前記内側柱部(11)を前記外側管部(21)に嵌入した状態で、前記リング状部材(3)を、前記外溝部(12)と前記内溝部(22)との両者間にわたって介在して、その両者に係合状態に保持している(特許文献1の請求項2参照)。
【0004】
特許文献1において、リング状部材としてのCリングを縮径させた状態で内側柱部に収容し、内側柱部を外側管部に嵌入した状態で、Cリングの縮径状態を解除する態様が実施の形態2-2に記載されている。この態様は、熱可塑性樹脂製の接続部材でCリングの両端部を接続して縮径状態とし、内側柱部を外側管部に嵌入した状態で接続部材を加熱融解させるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-36285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示の方法では、Cリングに加工が必要であり、また加熱融解という特殊な作業が必要である。
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、内側継手側と外側継手側に跨るように配置可能なC型リング部材を備えた機械式継手を接合するために用いるものであって、C型リング部材に加工が不要で、特殊な作業も必要としない機械式継手接合用治具を提供することを目的としている。
また、前記機械式継手接合治具を用いた機械式継手の接合方法、該接合方法よって連結された複数の鋼管を備えた構造体及び構造体の施工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る機械式継手接合用治具は、内側継手の外周面と外側継手の内周面のそれぞれに継手組合せ完了状態で対向するように形成された環状溝を有し、前記内側継手の前記環状溝に格納可能、かつ組合せ完了状態において前記環状溝内で前記内側継手側と前記外側継手側に跨るように配置可能なC型リング部材とを備えた機械式継手を接合するために用いるものであって、
前記内側継手の前記環状溝内に配置される第1板状部材と、前記C型リング部材を挟んで前記第1板状部材に対向配置される第2板状部材と、前記C型リング部材の端部同士の隙間に配置されて前記第1板状部材と前記第2板状部材を連結する連結部とを備え、
前記第2板状部材は、
前記連結部材を介して前記第1板状部材に連結された状態で縮径状態の前記C型リング部材の外周面が当接することで前記C型リングの縮径状態を維持し、前記C型リング部材の外周面との当接を解除することで前記C型リングを拡径可能状態とできるようにしたものである。
【0008】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記連結部材の一端と前記第1板状部材とが連結されると共に前記連結部材の他端と前記第2板状部材とが分離可能になっているか、又は、前記連結部材の他端と前記第2板状部材が連結されると共に前記連結部材の一端と前記第1板状部材が分離可能になっているものである。
【0009】
(3)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記第2板状部材は、前記連結部材に回動可能に取り付けられ、回動することで前記C型リング部材に当接した状態と当接していない状態にすることができるように構成されているものである。
【0010】
(4)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記第1板状部材は、一方の幅が広く他方の幅が狭い長形であり、狭い方の幅は前記C型リング部材の自然状態の隙間よりも狭く、広い方の幅は前記隙間よりも広く設定されており、
前記第2板状部材は、前記第1板状部材に対して離接可能に設置できるように構成されていることを特徴とするものである。
【0011】
(5)また、上記(1)~(4)のいずれかに記載の機械式継手接合用治具を用いた前記機械式継手の接合方法であって、
前記C型リングを前記内側継手の前記環状溝に格納し、該環状溝内から突出しないようにC型リングを縮径して前記機械式継手接合用治具によって縮径状態を維持した状態にする工程と、該内側継手と前記外側継手を組み合わせて組合せ完了状態とする工程と、前記外側継手に設けたアクセス孔から前記第2板状部材にアクセスして該第2板状部材が前記C型リングに当接しないようにすることで前記C型リングの縮径状態を解除して、前記C型リングを前記環状溝内で前記内側継手側と前記外側継手側に跨るように配置して接合完了状態とする工程とを備えたものである。
【0012】
(6)また、本発明に係る構造体は、上記(5)に記載の機械式継手の接合方法によって連結された複数の鋼管を備えたものである。
【0013】
(7)また、本発明に係る構造体の施工方法は、上記(6)に記載の構造体の施工方法であって、連結対象となる継手付き鋼管の一方の鋼管軸方向の位置を拘束した状態で、他方の継手付き鋼管を前記一方の継手付き鋼管に位置合わせして差込嵌合するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の機械式継手接合用治具によれば、C型リング部材に加工が不要で、特殊な作業も必要とせずに、C型リング部材を備えた機械式継手の接合作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態1に係る機械式継手接合用治具の説明図である。
図2】本発明の機械式継手接合用治具を用いて接合される機械式継手の説明図である。
図3】機械式継手接合用治具を用いて機械式継手を接合する方法の説明図である(その1)。
図4】機械式継手接合用治具を用いて機械式継手を接合する方法の説明図である(その2)。
図5】本発明の実施の形態2に係る機械式継手接合用治具の説明図である。
図6】本発明の実施の形態3に係る機械式継手接合用治具の説明図である(その1)。
図7】本発明の実施の形態3に係る機械式継手接合用治具の説明図である(その2)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施の形態1]
本実施の形態に係る機械式継手接合用治具を説明する前に、機械式継手接合用治具が用いられる機械式継手について図2に基づいて説明する。
【0017】
本発明が対象としている機械式継手1は、図2に示すように、鋼管3の端部に備えられる管状の内側継手5と、他の鋼管3の端部に備えられて内側継手5と接合される管状の外側継手7と、を有している。
そして、内側継手5の基端側には段差部9が形成され、内側継手5と外側継手7とを組み合わせた状態(図2(b)参照)で、外側継手7の先端部が段差部9に当接して組合せ完了状態となるように構成されている。
【0018】
内側継手5の外周面と外側継手7の内周面のそれぞれには環状溝11が形成されており、この環状溝11は継手の組合せ完了状態で対向するように配置されている。なお、図2に示す環状溝11は一段であるが、本発明が対象としている機械式継手1における環状溝11は一段に限られず、複数段であってもよい。
【0019】
また、内側継手5の環状溝11に内側継手5の外側継手7への組合せを妨げないように格納可能なC型リング部材13を備えている。このC型リング部材13は、継手の組合せ完了状態において環状溝11内で内側継手5側と外側継手7側に跨るように配置される。このため、C型リング部材13は、自然状態から外力を加えることで縮径可能であり、図2(a)に示すように、内側継手5の環状溝11に格納可能な状態になる。そして、縮径状態を解除する、すなわち縮径状態を保持している外力を除くことで、拡径して環状溝11内で内側継手5側と外側継手7側に跨るように配置される。
【0020】
上記のような機械式継手1の接合に用いられる機械式継手接合用治具15(以下、単に「治具15」という)を図1に基づいて説明する。
図1は、内側継手5の環状溝11に配置されたC型リング部材13の端部付近を示しており、図1(a)はC型リング部材13が拡径状態(自然状態)で、図1(b)はC型リング部材13を縮径して治具15によって縮径状態を保持している状態を示している。
【0021】
本実施の形態の治具15は、第1板状部材17と、第2板状部材19と、連結部21とを備えている。
第1板状部材17は、内側継手5の環状溝11内に配置される。第2板状部材19は、C型リング部材13を挟んで第1板状部材17に対向配置される。連結部21は、C型リング部材13の端部同士の隙間に配置されて第1板状部材17と第2板状部材19を連結する。
【0022】
本実施の形態では、第1板状部材17と連結部21が一体的に接続され、連結部21と第2板状部材19が例えばボルト23によって着脱可能に接合されている。そのため、第2板状部材19と連結部21にはボルト接合するためのボルト穴24が形成されている。
もっとも、本発明の治具15はこのようなものに限定されず、連結部21と第2板状部材19が一体的に接続され、連結部21と第1板状部材17が着脱可能であってもよいし、連結部21と第1板状部材17及び第2板状部材19がともに着脱可能であってもよい。
【0023】
第2板状部材19は、図2に示すように、連結部21を介して第1板状部材17に連結された状態で縮径状態のC型リング部材13の外周面が当接することでC型リングの縮径状態を維持することができる。
また、C型リング部材13の外周面との当接を解除する、すなわち図1(a)に示すように、第2板状部材19と連結部21を分離することでC型リング部材13を拡径可能状態とできる。
【0024】
上記のように構成された治具15の使用方法は、以下の通りである。
C型リング部材13と連結部21が接続された状態の第1板状部材17を内側継手5の環状溝11に配置する。C型リング部材13を端部が連結部21に当接するまで押し縮め、この状態で、第2板状部材19を連結部21に接合する。このとき、C型リング部材13は自らの弾性によって拡径しようとするが、端部が第2板状部材19の内面に当接しているので、それ以上に拡径することができず、縮径状態が維持される。
これによって、C型リング部材13を縮径した状態で内側継手5の環状溝11に格納することができる。
【0025】
このように、本実施の形態の治具15は、C型リング部材13の拡径しようとする力を利用して縮径状態を維持する機構であり、縮径状態の維持に大きな力が不要で、極めて単純な構造で足りる。
【0026】
次に、上記のように構成された本実施の形態の治具15を用いて機械式継手1を接合する機械式継手1の接合方法を図3に基づいて説明する。
C型リング部材13を内側継手5の環状溝11に格納し、環状溝11内から突出しないようにC型リング部材13を縮径して治具15によって縮径状態を維持した状態にする(図3(a)参照)。
【0027】
より詳細に説明すると、内側継手5の環状溝11に第1板状部材17を配置し、次に、C型リング部材13を環状溝11内に配置する。このとき、C型リング部材13の端部同士の隙間が第1板状部材17の中央に位置するようにする。
次に、C型リング部材13を端部が連結部21に当接するまで押し縮め、この状態で、第2板状部材19を連結部21に接合する。これによって、C型リング部材13の端部が第2板状部材19の内面に当接して縮径状態が維持される。
【0028】
次に、内側継手5と外側継手7を組み合わせて組合せ完了状態とする(図3(b)参照)。より具体的には、内側継手5を外側継手7に挿入し、外側継手7の先端部を内側継手5の段差部9に当接させて組合せ完了状態となる。
【0029】
その後、外側継手7に設けたアクセス孔25(図4参照)から第2板状部材19にアクセスして第2板状部材19がC型リング部材13に当接しないようにすることでC型リング部材13の縮径状態を解除する。具体的には、図4に示すように、アクセス孔25から第2板状部材19と連結部21を接合しているボルト23にアクセスしてこのボルト23を外し、第2板状部材19を取り外すことで、C型リング部材13の縮径状態を解除する。
C型リング部材13の縮径状態が解除されると、C型リング部材13は弾性により自然状態まで拡径し、内側継手5と外側継手7に環状溝11の両方に跨るように配置され、これによって機械式継手1が接合完了状態となる。
【0030】
以上のように、本実施の形態の治具15を使用することで、C型リング部材13を用いた機械式継手1の接合を極めて簡単に行うことができる。
【0031】
なお、図2、3に示した機械式継手1は、内側継手5が上側に配置され、外側継手7が下側に配置される例であったが、内側継手5が下側に配置され、外側継手7が上側に配置されるものであってもよい。
【0032】
[実施の形態2]
実施の形態1の治具26は、第2板状部材19とC型リング部材13の外周面との当接を解除する構成として、第2板状部材19を連結部21から取り外すか、あるいは連結部21を第1板状部材17から分離することで連結部21と共に第2板状部材19を取り外すようにしていた。
実施の形態2の治具26は、図5に示すように、第2板状部材27は小さな2枚の板材27a、27bからなり、それぞれの板材27a、27bが連結部21材に回動可能に取り付けられている。そして、板材27a、27bを回動することでC型リング部材13に当接した状態(図5(b)参照)と当接していない状態とにすることができる。
【0033】
本実施の形態の治具26によれば、C型リング部材13の縮径状態を維持するときや縮径を解除するときに、板材27a、27bを回転させればよいだけであり、作業が極めて簡単で、効率的な作業となる。
【0034】
なお、機械式継手1の接合完了後に、施工上の都合で、接合された機械式継手1の接合状態を解除して継がれた鋼管3を切り離したい場合がある。この場合には、このアクセス孔25および、他に設けられた外側継手7のリングアクセス孔25があれば、そこから、縮径方向にC型リング部材13を強制変形させ、その状態で板材27a、27bを回転させてC型リング部材13の外周面に当接させるようにすればよい。これにより、C型リング部材13が縮径状態を維持することになり、C型リング部材13は内側継手5の環状溝11に格納され、内側継手5と外側継手7の接合が解除される。
【0035】
このように、本実施の形態の治具26によれば、一旦接合された継手の解除を行うのも容易である。この点、特許文献1のように、加熱融解させる接続部材でC型リング部材の端部を接続して縮径させるものでは、一旦接合された継手の接合を解除することはできない。
継手の接合解除作業を容易にするために、上述したように、アクセス孔25に加えてC型リング部材13の縮径のための強制力を加える作業を行うためのリングアクセス孔25を設けるのが好ましい。
【0036】
[実施の形態3]
実施の形態1、2においては、第1板状部材17と第2板状部材19、27との隙間を自在に調整できるものではなかった。
そのため、C型リング部材13の縮径状態を第2板状部材19、27で確実に保持するには、第1板状部材17と第2板状部材19、27の間隔を精度良く設定する必要がある。
【0037】
また、実施の形態1、2においては、第1板状部材17の大きさとC型リング部材13の自然状態における端部同士の隙間(以下、単に「自然状態隙間C」という)との関係を規定していなかった。
そのため、C型リング部材13の自然状態隙間Cが狭い場合、実施の形態1のものでは、第1板状部材17と連結部21を一体化したものを先に内側継手5の環状溝11内に配置し、その後でC型リング部材13を設置し、その後、第2板状部材19をボルトで固定する必要がある。
しかし、第1板状部材17と連結部21が一体化されたものを先に配置し、C型リング部材13を設置した後で、連結部材21に第2板状部材19を取り付けるのは、細かい作業となり、作業性が悪いという課題がある。
そこで、本実施の形態では、これらの課題を解決するものである。
【0038】
本実施の形態3を、図6に基づいて説明する。
実施の形態3の機械式継手接合用治具29(以下、単に「治具29」)は、図6に示すように、矩形の第1板状部材31と、連結部としてのネジ棒33と、第1板状部材31と同形状の第2板状部材35と、ネジ棒33に螺合するナット37と、を備えている。以下、各構成を詳細に説明する。
なお、図6はC型リング部材13の自然状態隙間Cが狭い場合を示している。
【0039】
<第1板状部材>
第1板状部材31は、矩形状であり、短辺の長さはC型リング部材13の自然状態隙間Cよりも短く、長辺の長さは自然状態隙間Cよりも長くかつ溝幅よりも短く設定されている。
したがって、第1板状部材31の短辺を周方向に向けた状態では、第1板状部材31は溝幅内に収まり、自然状態隙間Cを通過させることができる(図6(a)参照)。
【0040】
なお、矩形は、一方の幅が広く他方の幅が狭い長形の一態様であり、短辺の長さは狭い方の幅に相当し、長辺の長さは広い方の幅に相当する。
【0041】
<ネジ棒>
ネジ棒33は、第1板状部材31と第2板状部材35を連結する本発明の連結部に相当するものである。ネジ棒33の径は第1板状部材31の短辺よりも小径である。
ネジ棒33と第1板状部材31は一体化されたものでもよいし、あるいは第1板状部材31に形成されたネジ孔にネジ棒33の一端をねじ込んで固定できるものでもよい。
ネジ棒33の他端には、ナット37が螺合するネジ(図示なし)が形成されている。
ネジ棒33は全長に亘ってネジが形成されていてもよいし、第1板状部材31やナット37と螺合する部分のみにネジが形成されていてもよい。
ネジ棒33の長さは、図6(c)に示すように、第1板状部材31と第2板状部材35でC型リング部材13を挟んで、さらにナット37を螺合できる長さが必要である。
【0042】
<第2板状部材>
第2板状部材35は、外形が第1板状部材31と同じ矩形状をしている。第2板状部材35には、図6に示すように、ネジ棒33が挿通可能な挿通孔39が設けられている(図6(a)参照)。そして、第2板状部材35は、挿通孔39にネジ棒33を挿通することで、第1板状部材31との距離を離したり近づけたりできる、すなわち離接可能な状態となっている。
【0043】
<ナット>
ナット37は、ネジ棒33の他端に螺合して締めることで、第2板状部材35を第1板状部材31側に動かしてC型リング部材13に押し付ける機能を有している。
【0044】
次に、上記のように構成された本実施の形態の治具29の使用方法を説明する。
まず、内側継手5の環状溝11にC型リング部材13を設置する。次に、治具29を組んだ状態で、第1板状部材31及び第2板状部材35の向きを、短辺がC型リング部材13の周方向に向くように配置し(図6(a)参照)、第1板状部材31を、内側継手5の径内方向に移動して自然状態隙間Cを通過させる。
なお、図6(a)では、第2板状部材35及びナット37がネジ棒33から分離した状態を示しているが、これは各部材が分離可能であることを説明するためであり、治具29の設置に際しては組んだ状態(図6(b)参照)にして行うのが好ましい。
【0045】
次に、治具29を回転させ(図6(b)参照)、第1板状部材31及び第2板状部材35の長辺がC型リング部材13の周方向を向くように90°(図6(c)参照)回転させる。
続いて、C型リング部材13を縮径し、C型リング部材13の両端をネジ棒33に当接する程度まで近づける。この状態で、ナット37を締めることで、第2板状部材35がC型リング部材13に押し付けられ、これによってC型リング部材13の縮径状態を確実に維持することができる。
【0046】
なお、実施の形態1、2では、第1板状部材31と第2板状部材35の間隔を積極的に調整できるようにしていない。そのため、第1板状部材31と第2板状部材35は予め設定された間隔になっており、そこにC型リング部材13が挿入されて、C型リング部材13が広がろうとすることによって発生する摩擦抵抗により縮径状態を維持されていた。
この点、本実施の形態では、ナット37を締め込むことで、第2板状部材35をC型リング部材13に積極的に押し付けることができるので、C型リング部材13の縮径状態をより確実に維持することができる。
また、C型リング部材13の縮径状態を解除する場合にも、ナット37を緩めるだけでよく、作業性に優れる。
【0047】
また、本実施の形態では、C型リング部材13の自然状態隙間Cが狭い場合も、治具29を組んだ状態で設置できる。すなわち、組んだ状態の治具29を、自然状態隙間Cに挿入、治具29の回転、ナット37の締め付け、という簡単な作業で行うことができ、作業性に優れる。
【0048】
治具29を撤去する場合には、ナット37を緩めることで、C型リング部材13の端部の隙間を自然状態隙間Cにし、治具29を90°回転して短辺が周方向に向くようし、治具29を自然状態隙間Cから引き抜くようにすればよい。
【0049】
なお、C型リング部材13の自然状態隙間Cが広く、第1板状部材31及び第2板状部材35の長辺を周方向に向けたままで自然状態隙間Cを通過できる場合(図7(a)参照)には、以下のような作業工程とすればよい。
C型リング部材13を内側継手5の環状溝11に設置し、治具29を組んだ状態で、第1板状部材31及び第2板状部材35の長辺を周方向に向けた状態で、C型リング部材13の自然状態隙間Cに設置する。この状態で、C型リング部材13を縮径して、ナット37を締めつける(図7(b)参照)。
なお、図7(a)では、第2板状部材35及びナット37がネジ棒33から分離した状態を示しているが、これは図6(a)と同様に、各部材が分離可能であることを説明するためであり、治具29の設置に際しては組んだ状態にして行うのが好ましい。
【0050】
なお、上記の実施の形態3では、第1板状部材31と第2板状部材35が同形状のものであったが、これらが同形状である必要はない。
また、C型リング部材13の自然状態隙間Cが狭い場合において、治具29を組んだ状態で設置可能にするには、第1板状部材31のみが自然状態隙間Cを通過できればよい。したがって、第1板状部材31の短辺がC型リング部材13の自然状態隙間Cよりも短ければよく、第2板状部材35の短辺は自然状態隙間Cよりも長くてもよい。
【0051】
また、上記の実施の形態3では、第1板状部材31が矩形状のものを示したが、第1板状部材31は、矩形に限られず、例えば楕円形のような形状であってもよい。
すなわち、第1板状部材は、一方の幅が広く他方の幅が狭い長形であり、狭い方の幅がC型リング部材の自然状態隙間Cよりも狭く、広い方の幅が自然状態隙間Cよりも広く設定されておればよい。
【0052】
また、上記の実施の形態3では、ナット37を用いたものであったが、第2板状部材35に設ける挿通孔39をネジ棒33のネジに螺合する雌ネジとすれば、ナット37を不要とすることができる。
ナット37を不要とした方が、治具29が環状溝11内に収まりやすくなるので、より好ましい。
また、上記の実施の形態3では、連結部としてネジ棒33を例示しているが、本発明の連結部はネジ棒33に限らず、例えば実施の形態1の連結部21のような矩形状の部品の上端にネジが突出するようなものであってもよい。すなわち、連結部の形状にかかわらず、第2板状部材35を第1板状部材31に対して離接可能に設置できればよい。
【0053】
上記の実施の形態1~3の説明では、C型リング部材13が、図2に示すように、継手の軸線に対して傾斜する傾斜型のC型リング部材13について説明したが、本発明のC型リング部材13はこれに限られず、特許文献1に開示されたような、C型リング部材が継手の軸線に直交する水平タイプのものであってもよい。
なお、傾斜型のC型リング部材の場合には、継手が接合完了された後に、C型リング部材自体が反転防止機構として機能するので、この点では、別途反転防止機構を設ける必要がなく好ましい。そして、本発明の機械式継手接合用治具26であれば、水型及び傾斜型のいずれのC型リング部材であっても同様に適用できる。
【0054】
なお、上記のような機械式継手1の接合方法によって複数の鋼管3を連結することで杭や、鋼管矢板等の構造体を構築することができる。
このような構造体の施工方法としては、連結対象となる継手付き鋼管の一方の鋼管軸方向の位置を拘束した状態で、他方の継手付き鋼管を前記一方の継手付き鋼管に位置合わせして差込嵌合するようにすればよい。
【符号の説明】
【0055】
1 機械式継手
3 鋼管
5 内側継手
7 外側継手
9 段差部
11 環状溝
13 C型リング部材
15 機械式継手接合用治具(治具)(実施の形態1)
17 第1板状部材
19 第2板状部材
21 連結部
23 ボルト
24 ボルト穴
25 アクセス孔
26 機械式継手接合用治具(治具)(実施の形態2)
27 第2板状部材
27a、b 板材
29 機械式継手接合用治具(治具)(実施の形態3)
31 第1板状部材(実施の形態3)
33 ネジ棒
35 第2板状部材(実施の形態3)
37 ナット
39 挿通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7