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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035156
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】石綿検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/38 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
G01N33/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023138330
(22)【出願日】2023-08-28
(31)【優先権主張番号】P 2022137015
(32)【優先日】2022-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 2022年9月2日に日本分析化学会第71回予稿集にて公開 2022年9月16日に日本分析化学会第71回においてポスター講演にて公開
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)(1)令和3年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業、「色素染色による廃棄物建材等の石綿迅速可視化・リモート検査法の開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願(2)令和4年度、独立行政法人環境再生保全機構、環境研究総合推進費、「廃棄建材表面の石綿の可視化による迅速検出・画像解析法の開発と災害現場実証」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504209655
【氏名又は名称】国立大学法人佐賀大学
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】田端 正明
(57)【要約】
【課題】低コストかつ高精度で全体濃度も含めて石綿を検出できる石綿検出方法を提供する。
【解決手段】石綿検出方法は、建築材料中の石綿の含有状況を検出する石綿検出方法であって、石綿に反応して呈色する複数の色素染色剤を前記建築材料に重ねて染色する染色工程と、前記複数の色素染色剤の呈色に基づいて、前記建築材料の表面における石綿の所定面積当たりに占める占有面積を検出する面積検出工程と、前記占有面積に基づいて、前記
建築材料中の石綿の全体濃度を演算する濃度演算工程と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築材料中の石綿の含有状況を検出する石綿検出方法であって、石綿に反応して呈色する複数の色素染色剤を前記建築材料に重ねて染色する染色工程と、
前記複数の色素染色剤の呈色に基づいて、前記建築材料の表面における石綿の所定面積当たりに占める占有面積を検出する面積検出工程と、
前記占有面積に基づいて、前記建築材料中の石綿の全体濃度を演算する濃度演算工程と、
を含むことを特徴とする
石綿検出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の石綿検出方法において、
前記染色工程が、前記複数の色素染色剤を混合してなる色素混合溶液を用いて前記建築材料を染色することを特徴とする
石綿検出方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の石綿検出方法において、
前記染色工程により前記複数の色素染色剤が染色された前記建築材料を、溶液で洗浄する最終洗浄工程を含み、
前記面積検出工程が、前記複数の色素染色剤により染色された前記建築材料の呈色、及び洗浄された前記建築材料の呈色に基づいて、前記建築材料の表面における石綿の所定面積当たりに占める占有面積を検出することを特徴とする
石綿検出方法。
【請求項4】
請求項3に記載の石綿検出方法において、
前記面積検出工程が、前記複数の色素染色剤により染色された前記建築材料の明度、及び洗浄された前記建築材料の明度に基づいて、前記建築材料の表面における石綿の所定面積当たりに占める占有面積を検出することを特徴とする
石綿検出方法。
【請求項5】
請求項1に記載の石綿検出方法において、
前記染色工程により一の前記色素染色剤が染色された前記建築材料を、他の前記色素染色剤の染色前に、溶液で洗浄する中間洗浄工程を含むことを特徴とする
石綿検出方法。
【請求項6】
請求項3に記載の石綿検出方法において、
前記最終洗浄工程により溶液で洗浄された前記建築材料を水平位置から所定角度回転させる回転工程を含み
前記濃度演算工程が、前記回転工程により回転した前記建築材料の外観の変化に基づいて、前記建築材料中の石綿の全体濃度を演算することを特徴とする
石綿検出方法。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の石綿検出方法において、
前記複数の色素染色剤による前記呈色が、赤色、緑色、及び青色の3色を含むことを特徴とする
石綿検出方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築材料中の石綿(アスベスト)を検出する石綿検出方法に関し、特に、低コストかつ高精度で石綿を検出できる石綿検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石綿が人の健康に及ぼす影響から、石綿建築材料の製造は2006年に中止されている。しかし、それ以前の建築物には石綿建築材料は残っている。近年、築30年~40年の建物の解体件数が増大しており、解体時に石綿が飛散する危険性が高まっている。
【0003】
石綿による人の健康被害の恐れは石綿建築材料製造から石綿建築材料解体や処理へと変わってきている。環境省は飛散による石綿健康被害を防ぐために、2022年度から、解体予定の建物に対して、解体前に建物の石綿検査・報告を義務づけている。その結果、石綿検査の需要が従来の2~3倍増大すると予測されている。
【0004】
更に、近年災害が頻発し、その度に仮置き場や集積場に石綿建築材料が多数排出・集積されている。その結果、仮置き場や集積場での石綿被害の恐れが増大している。そのために、解体や災害現場で使える石綿の存在の有無を分析できる石綿検出方法への要求が高まっている。
【0005】
従来の石綿検出方法としては、例えば、判別を行う石綿を含む繊維補強材を物理的に粉砕した後、細粉試料を濾過後、沈殿物及び上澄み液をスライドガラス上に取る第1工程;スライドガラス上の粉砕粉に特定の屈折率を有する浸液を滴下し、カバーガラスを乗せて供試体とする第2工程;及び光源と、回転ステージと、分散染色レンズを備えている顕微鏡の回転ステージ上に、第2工程で得られた供試体を装着し、光源から供試体を通過した光を分散染色しレンズを介して観察する。石綿検出に最適な屈折率を有する溶媒の添加後の位相差顕微鏡での観察で石綿の種類を決定する。また、回転ステージを一方向に回転させるに伴い、赤橙色と青色あるいは青色と赤橙色の物理発色を交互に繰り返す繊維状物質を石綿と判別する第3工程から構成されるものが知られている(特許文献1参照)。
【0006】
また、例えば、従来の石綿検出方法としては、試料を灰化させることにより有機質繊維を灰化した灰化試料を得る有機質繊維灰化工程と、前記灰化試料をフーリエ変換赤外分光装置により測定し前記灰化試料のフーリエ変換赤外分光スペクトルを得るフーリエ変換赤外分光分析工程と、当該フーリエ変換赤外分光分析工程により得られたフーリエ変換赤外分光スペクトルから所定の無機質繊維状物質(石綿)を検出し得る無機質繊維検出工程とを少なくとも含んでいる石綿の定性分析方法が知られている(特許文献2参照)。
【0007】
また、例えば、従来の石綿検出方法としては、建築材料からなる硬化体の中に、蛇紋石の一種であって有害な繊維状石綿であるクリソタイルが含まれているか否かを判定するための方法であって、上記建築材料からなる硬化体から、質量分析(MS)用の試料を採取する試料採取工程と、上記試料について質量分析(MS)を行い、加熱温度(℃)と、加熱による上記建築材料からなる硬化体中の水分子のガス化によって検出される電流値(A;アンペア)の関係を調べる質量分析工程と、上記加熱温度(℃)を横軸としかつ上記電流値(A;アンペア)を縦軸として表したグラフにおいて、蛇紋石の一種であって有害な繊維状石綿ではないリザルダイトの存在によって表れるべきピークと、蛇紋石の一種であって有害な繊維状石綿ではないアンチゴライトの存在によって表れるべきピークの間の温度領域に、ピークが存在しない場合に、クリソタイルが含まれていないと判定し、それ以外の場合に、クリソタイルが含まれていると判定する判定工程、を含むことを特徴とする、建築材料からなる硬化体中のクリソタイルの有無の判定方法も知られている(特許文献3参照)。
【0008】
また、例えば、従来の石綿検出方法としては、捕集容器内に放電電極と、透光性があり、かつ、少なくとも表面が導電性を有する集塵電極を配置し、これらの両電極間に電位差を付与した状態で、捕集容器内に雰囲気を吸引し、その雰囲気中の石綿を含む浮遊物質を、放電電極で発生させた単極イオンで帯電させて集塵電極上に捕集し、その集塵電極上の浮遊物質に分散染色分析法を適用して顕微鏡観察し、石綿を弁別計数するものが知られている(特許文献4参照)。
【0009】
この他にも、従来の石綿検出方法としては、建築材料表面を色素染色することにより石綿を検出する石綿検出方法も知られている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平07‐181268号公報
【特許文献2】特開2008-101930号公報
【特許文献3】特開2021-85805号公報
【特許文献4】特開2007‐107970号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】田端正明ら、分析化学、Vol.68, No.6, pp.401‐409, 2019年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、従来の石綿検出方法は、特許文献1のように石綿を含む繊維補強材を物理的に粉砕するものがあるが、手間が掛かるのと、石綿を含む繊維補強材の粉砕に伴うリスクがあり、現場での即時分析に不向きであり、実用的ではない。また、特許文献2のように試料を高温加熱して灰化させた灰化試料に対してフーリエ変換赤外分光スペクトルで分析することや、特許文献3のように建築材料を加熱してガス化させてから電流測定する方法や、特許文献4のように、分散染色分析法を適用して顕微鏡観察し、石綿を弁別計数する等の各種の公定分析法が知られているが、高温に加熱する加熱処理や高額の測定機器が必要であり、時間や費用の面からも現場での即時分析に不向きであり、実用的ではない。
【0013】
また、非特許文献1に示されるような建築材料を染色する石綿検出では、建築材料中の石綿の有無を染色によって判別できるのが限度であり、それ以上の石綿についての情報は得られない。
【0014】
このように、従来の石綿検出方法では、作業現場で気兼ねなく使用できるような低コストかつ十分な実用性を有するものは未だ存在しない。また、作業現場では、石綿についての建築材料中の全体濃度も把握しておく必要があるが、従来の石綿検出方法では、建築材料中の石綿の有無を判別できるのが限度であり、そのような全体濃度を把握できるものは未だ存在しない。
【0015】
本発明は、前記課題を解消するためになされたものであり、低コストかつ高精度で全体濃度も含めて石綿を検出できる石綿検出方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者は、現場での実用に適する石綿検出方法について鋭意研究を行った結果、石綿が占める表面積と全体濃度との相関関係に着目し、染色剤を低コストで実用性の高い石綿検出方法が実現できることを見出し、本発明を完成させた。
【0017】
かくして、本願に開示する石綿検出方法は、建築材料中の石綿の含有状況を検出する石綿検出方法であって、石綿に反応して呈色する複数の色素染色剤を前記建築材料に重ねて染色する染色工程と、前記複数の色素染色剤の呈色に基づいて、前記建築材料の表面における石綿の所定面積当たりに占める占有面積を検出する面積検出工程と、前記占有面積に基づいて、前記建築材料中の石綿の全体濃度を演算する濃度演算工程と、を含むものである。
【0018】
このように、建築材料中の石綿の含有状況を検出する石綿検出方法であって、石綿に反応して呈色する複数の色素染色剤を前記建築材料に重ねて染色する染色工程と、前記複数の色素染色剤の呈色に基づいて、前記建築材料の表面における石綿の所定面積当たりに占める占有面積を検出する面積検出工程と、前記占有面積に基づいて、前記建築材料中の石綿の全体濃度を演算する濃度演算工程と、を含むことから、建築材料中の石綿に生じている電荷の偏りを複数の色素染色剤が満遍なく網羅的に捕らえて呈色し、前記濃度演算工程により、当該呈色からの前記占有面積に基づいて、前記建築材料中の石綿の全体濃度が容易に導出されることとなり、より高精度な石綿の検出が可能となる。
【0019】
また、本願に開示する石綿検出方法は、必要に応じて、前記染色工程が、前記複数の色素染色剤を混合してなる色素混合溶液を用いて前記建築材料を染色するものである。このように、前記染色工程が、前記複数の色素染色剤を混合してなる色素混合溶液を用いて前記建築材料を染色することから、一度の染色操作で建築材料中の石綿に生じている電荷の偏りを複数の色素染色剤が満遍なく網羅的に捕らえて呈色し、前記濃度演算工程により、当該呈色からの前記占有面積に基づいて、前記建築材料中の石綿の全体濃度が容易に導出されることとなり、より高精度な石綿の検出が可能となる。
【0020】
また、本願に開示する石綿検出方法は、必要に応じて、前記染色工程により前記複数の色素染色剤が染色された前記建築材料を、溶液で洗浄する最終洗浄工程を含み、前記面積検出工程が、前記複数の色素染色剤により染色された前記建築材料の呈色、及び洗浄された前記建築材料の呈色に基づいて、前記建築材料の表面における石綿の所定面積当たりに占める占有面積を検出するものである。このように、前記染色工程により前記複数の色素染色剤が染色された前記建築材料を、溶液で洗浄する最終洗浄工程を含み、前記面積検出工程が、前記複数の色素染色剤により染色された前記建築材料の呈色、及び洗浄された前記建築材料の呈色に基づいて、前記建築材料の表面における石綿の所定面積当たりに占める占有面積を検出することから、染色後の建築材料の呈色と、洗浄後の建築材料の呈色との比較によって、さらに正確性を増した石綿の検出ができることとなり、より高精度な石綿の検出が可能となる。
【0021】
また、本願に開示する石綿検出方法は、必要に応じて、前記面積検出工程が、前記複数の色素染色剤により染色された前記建築材料の明度、及び洗浄された前記建築材料の明度に基づいて、前記建築材料の表面における石綿の所定面積当たりに占める占有面積を検出するものである。このように、前記面積検出工程が、前記複数の色素染色剤により染色された前記建築材料の明度、及び洗浄された前記建築材料の明度に基づいて、前記建築材料の表面における石綿の所定面積当たりに占める占有面積を検出することから、染色後の建築材料の明度と、洗浄後の建築材料の明度との比較によって、石綿の存在の有無が強いコントラストで視認でき、さらに正確性を増した石綿の検出ができることとなり、より高精度な石綿の検出が可能となる。
【0022】
また、本願に開示する石綿検出方法は、必要に応じて、前記染色工程により一の前記色素染色剤が染色された前記建築材料を、他の前記色素染色剤の染色前に、溶液で洗浄する中間洗浄工程を含むものである。このように、前記染色工程により一の前記色素染色剤が染色された前記建築材料を、他の前記色素染色剤の染色前に、溶液で洗浄する中間洗浄工程を含むことから、溶液で洗浄により染色時のノイズが減少してより正確に石綿箇所が染色されることとなり、より高精度な石綿の検出が可能となる。
【0023】
また、本願に開示する石綿検出方法は、必要に応じて、前記最終洗浄工程により溶液で洗浄された前記建築材料を水平位置から所定角度回転させる回転工程を含み、前記濃度演算工程が、前記回転工程により回転した前記建築材料の外観の変化に基づいて、前記建築材料中の石綿の全体濃度を演算するものである。このように、前記最終洗浄工程により溶液で洗浄された前記建築材料を水平位置から所定角度回転させる回転工程を含み、前記濃度演算工程が、前記回転工程により回転した前記建築材料の外観の変化に基づいて、前記建築材料中の石綿の全体濃度を演算することから、溶液で洗浄により白色化された石綿の存在箇所が、石綿の偏光性によって前記回転に伴って消失又は出現を繰り返すこととなり、染色と偏光性の二重チェックによって正確性の高い石綿の検出が可能となる。
【0024】
また、本願に開示する石綿検出方法は、必要に応じて、前記複数の色素染色剤による前記呈色が、赤色、緑色、及び青色の3色を含むものである。このように、前記複数の色素染色剤による前記呈色が、赤色、緑色、及び青色の3色を含むことから、加色法により、石綿の存在により複数の色素染色剤が赤色、緑色、及び青色の全てに呈色した部分が黒色化して、石綿の存在の有無が高いコントラスト比で視認できることとなり、より高精度な石綿の検出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第1の実施形態に係る石綿検出方法のフローチャートを示す。
図2】本発明の第1の実施形態に係る石綿検出方法の染色の説明図を示す。
図3】本発明の第1の実施形態に係る石綿検出方法のフローチャートを示す。
図4】本発明の第1の実施形態に係る石綿検出方法のフローチャートを示す。
図5】本発明の第1の実施形態に係る石綿検出方法のフローチャートを示す。
図6】本発明の第2の実施形態に係る石綿検出方法のフローチャートを示す。
図7】本発明の第2の実施形態に係る石綿検出方法の染色の説明図を示す。
図8】本発明の第3の実施形態に係る石綿検出方法のフローチャートを示す。
図9】本発明の第3の実施形態に係る石綿検出方法のフローチャートを示す。
図10】本発明の第3の実施形態に係る石綿検出方法の染色後と洗浄後の建築材料の説明図を示す。
図11】本発明の実施例1に係る石綿検出方法のサンプルの建築材料の3D CT画像結果を示す。
図12】本発明の実施例1に係る石綿検出方法のサンプルの建築材料の画像結果を示す。
図13】本発明の実施例2に係る石綿検出方法の建築材料表面を直接吹き付けにより染色した結果を示す。
図14】本発明の実施例2に係る石綿検出方法の染色剤で染色した建築材料表面の顕微鏡画像を示す。
図15】本発明の実施例2に係る石綿検出方法の建築材料のXRD測定結果を示す。
図16】本発明の実施例2に係る石綿検出方法の建築材料のラマンスペクトル結果を示す。
図17】本発明の実施例3に係る石綿検出方法により色素混合液を用いて建築材料を染色した結果を示す。
図18】本発明の実施例4に係る石綿検出方法に用いた色素混合液の写真を示す。
図19】本発明の実施例4に係る石綿検出方法の色素混合溶液の粒度分布を動的光散乱法により測定した結果を示す。
図20】本発明の実施例5に係る石綿検出方法の染色剤で順次染色した建築材料表面の顕微鏡画像を示す。
図21】本発明の実施例5に係る石綿検出方法の色素混合液で染色した建築材料表面の顕微鏡画像を示す。
図22】本発明の実施例6に係る石綿検出方法の建築材料のエタノール洗浄と、試料台の45度回転に伴う建築材料の外観変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る石綿検出方法は、図1に示すように、建築材料中の石綿の含有状況を検出する石綿検出方法であって、石綿に反応して呈色する複数の色素染色剤を前記建築材料に重ねて染色する染色工程と、前記複数の色素染色剤の呈色に基づいて、前記建築材料の表面における石綿の所定面積当たりに占める占有面積を検出する面積検出工程と、前記占有面積に基づいて、前記建築材料中の石綿の全体濃度を演算する濃度演算工程と、を含むものである。
【0027】
建築材料中の石綿とは、特に限定されないが、例えば、クリソタイル(白石綿)、クロシドライト(青石綿)、アモサイト(茶石綿)、アンソフィライト、トレモライト、アクチノライトが挙げられる。また、一般に、建築材料中には、石綿以外の無害な繊維も含まれており、例えば、アンチゴライトやリザルダイトが含まれている。
【0028】
石綿に反応して呈色する色素染色剤の種類は、特に限定されないが、例えば、以下で示される、メチレンブルー、ローダミンB、エリスロシン、エオシン、TMPyP(α,β,γ,δ-テトラキス(1-メチルピリジニウム-4-イル))ポルフィリン p-トルエンスルホナート、銅クロロフィリンナトリウム、インジゴカルミンを挙げることができ、例えば、石綿に反応して赤色を呈する食用色素(エリスロシン;赤色3号)やローダミンB、石綿に反応して青色を呈するメチレンブルー(MB)やインジゴカルミンが挙げられる。
【0029】
【化1】
【0030】
本実施形態に係る石綿検出方法によって検出される石綿の含有状況とは、石綿の存在の有無を含む概念であり、さらに、建築材料に占める石綿の全体濃度も含む概念である。建築材料に占める石綿の全体濃度まで検出可能であることは、本発明者が見出した、石綿が占める表面積と全体濃度との相関関係に基づくものである(後述の実施例参照)。
【0031】
本実施形態に係る石綿検出方法を、図1のフローチャートを用いて説明する。
【0032】
この複数の色素染色剤としては、2種類以上の色素染色剤であれば特に限定されないが、例えば、2種類の色素染色剤(第一の色素染色剤および第二の色素染色剤)を使用する場合として、図1(a)のフローチャートを用いて説明する。
【0033】
まず、第一の色素染色剤を建築材料に染色する(S11)。この染色は、第一の色素染色剤を建築材料に塗布することで行うことができる。これにより、建築材料表面を直接染色する。この染色後、第二の色素染色剤を建築材料に染色する(S12)。この染色は、第二の色素染色剤を建築材料に塗布することで行うことができる。これにより、建築材料表面を直接染色する。
【0034】
この色素染色剤の染色のメカニズムとしては、石綿に生じている電荷の偏りに対して、化学反応を起こすことで発色する。例えば、図2(a)に示すように、建築材料100中の石綿(例えばクリソタイル100a)に生じている正電荷に対して、第一の色素染色剤10Aの負電荷の部分が引き合うことで化学反応が生じて呈色する(S1)。次に、図2(b)に示すように、前記建築材料100中の石綿(例えばアモサイト100b)に生じている負電荷に対して、第二の色素染色剤10Bの正電荷の部分が引き合うことで化学反応が生じて呈色する。
【0035】
このように石綿に反応して呈色する複数の色素染色剤を前記建築材料に順番に重ねて染色する(S1:染色工程)。この染色には、電荷の異なる二つの色素を建材表面に順次滴下することが好適である。これにより、建築材料中の石綿に対して、網羅性の高い染色が行える。また、建築材料中に繊維状物質と石綿が混在する場合、最初に滴下した色素と次に滴下した色素で順次染色の変化が顕れることとなり、繊維状物質の検出がより明確且つ容易となる。このように色素染色剤を順番に重ねて染色する以外にも、予め複数の色素染色剤を混合して前記建築材料に染色することも可能である。
【0036】
複数の色素染色剤の呈色に基づいて、前記建築材料の表面における石綿の所定面積当たりに占める占有面積を検出する(S2:面積検出工程)。この検出に際しては、呈色の有無を視認することのみによって、石綿の存在の有無が容易に判別でき、石綿の所定面積当たりに占める占有面積も極めて簡易に検出できる。
【0037】
次に、この占有面積に基づいて、前記建築材料中の石綿の全体濃度を演算する(S3:濃度演算工程)。すなわち、この局所的な所定面積当たりに占める占有面積から、色素染色剤により呈色された局所的な表面積の比率Rが算出される。この比率Rを基にして、石綿の全体濃度Dが、表面積占有率Sとの関係で、D=aSとして演算される。ここで、aは体積と面積および建築材料の密度を含む比例係数である。実験の結果a≒1であることが確認されている(後述の実施例、表1参照)。この演算の根拠は、本発明者が導き出した知見に基づくものである(後述の実施例参照)。
【0038】
また、複数の色素染色剤としては、上記の2種類の色素染色剤の他にも、図1(b)のフローチャートに示すように、3種類の色素染色剤(第一の色素染色剤、第二の色素染色剤、および第三の色素染色剤)を使用することも可能である。
【0039】
また、複数の色素染色剤による前記呈色は、特にその呈色される色の種類は限定されないが、例えば、赤色、緑色、及び青色の少なくとも2色を含むことができる。
【0040】
例えば、2種類の色素染色剤を用いる場合には、まず青色を呈する色素染色剤で染色した後に、赤色を呈する色素染色剤で染色することが可能である。また、3種類の色素染色剤を用いる場合には、まず青色を呈する色素染色剤で染色した後に、赤色を呈する色素染色剤で染色し、その後に、緑色を呈する色素染色剤で染色することが可能である。
【0041】
このように、前記複数の色素染色剤による前記呈色が、赤色、緑色、及び青色の少なくとも2色を含むことから、建築材料中の石綿の電荷の偏りを複数の色素染色剤が明瞭に呈色し、より視認性の高い石綿の検出ができることとなり、より高精度な石綿の検出が可能となる。
【0042】
このように、石綿に反応して呈色する複数の色素染色剤を前記建築材料に重ねて染色する染色工程と、前記複数の色素染色剤の呈色に基づいて、前記建築材料の表面における石綿の所定面積当たりに占める占有面積を検出する面積検出工程と、前記占有面積に基づいて、前記建築材料中の石綿の全体濃度を演算する濃度演算工程と、を含むことから、建築材料中の石綿に生じている電荷の偏りを複数の色素染色剤が満遍なく網羅的に捕らえて呈色し、前記濃度演算工程により、当該呈色からの前記占有面積に基づいて、前記建築材料中の石綿の全体濃度が容易に導出されることとなり、より高精度な石綿の検出が可能となる。
【0043】
また、本実施形態に係る石綿検出方法は、染色工程(S1)において、複数の色素染色剤を混合してなる色素混合溶液を用いて建築材料を染色することがより好適である。
【0044】
この色素混合溶液としては、上記の第一の色素染色剤、および第二の色素染色剤の2種類を混合して使用することも可能であり、上記の第一の色素染色剤、第二の色素染色剤、および第三の色素染色剤の3種類を混合して使用することも可能である。
【0045】
複数の色素染色剤としてこの色素混合溶液を使用する場合として、図3のフローチャートに示すように、先ず、この色素混合溶液を建築材料に染色する(S1)。この染色は、この色素混合溶液を建築材料に塗布することで行うことができる。
【0046】
この色素混合溶液を建築材料に染色することで、建築材料において強い染色強度がより安定的に維持される(後述の実施例参照)。この優れた効果を奏するメカニズムは、未だ詳細には解明されていないが、この色素混合溶液の溶液中に微細なナノ粒子が形成されることで、石綿上の染色膜は、単分子膜ではなく多重層膜が形成され、これにより石綿上の染色膜は、染色強度の強度化と安定化が得られているものと推察される(後述の実施例参照)。このナノ粒子は、ゼータ電位の測定により正負のいずれか電荷を帯びているかを確認できる。この帯電特性は、色素混合溶液を構成する個々の色素の特徴に基づく。例えば、色素混合溶液がメチレンブルー(MB)とエリスロシン(RED-3)の混合溶液でエリスロシン(RED-3)過剰の場合には、この微細なナノ粒子は負電荷を帯びていることが確認される。このことから、負電荷特性を有する過剰量のエリスロシン(RED-3)が、正電荷特性を有するメチレンブルー(MB)を包み込んで覆うようにナノ粒子が形成されていると推察される。
【0047】
この後に、上記図1(a)と同様に、この複数の色素染色剤の呈色に基づいて、この建築材料の表面における石綿の所定面積当たりに占める占有面積を検出し(S2:面積検出工程)、この占有面積に基づいて、この建築材料中の石綿の全体濃度を演算する(S3:濃度演算工程)。
【0048】
このように、染色工程において、複数の色素染色剤を混合してなる色素混合溶液を用いてこの建築材料を染色することから、一度の染色操作で建築材料中の石綿に生じている電荷の偏りを複数の色素染色剤が満遍なく網羅的に捕らえて呈色し、この濃度演算工程により、この呈色の占有面積に基づいて、建築材料中の石綿の全体濃度が容易に導出されることとなり、より高精度な石綿の検出が可能となる。
【0049】
また、本実施形態に係る石綿検出方法は、複数の色素染色剤を順番に添加する場合には、前記染色工程により一の色素染色剤が染色された建築材料を、他の色素染色剤の染色前に、溶液で洗浄する中間洗浄工程を含むことがより好適である。
【0050】
この溶液としては、水でもよいし、エタノールやメタノールなどのアルコールでもよいが、取り扱いの容易さから、水やエタノールを用いることができる。建築材料表面に残った色素を洗浄するには水を使う。これにより、後続の染色による正確な加色化を促進することができる。また、染色した石綿の色素を脱色する場合は、エタノールを使う。これにより、後続の色素染色剤による染色で、石綿領域は、後続の色素染色剤の色素自身の色に近くなり、後続の色素染色剤による呈色を明瞭化することができる。その一方で、建築材料の非石綿領域(建築材料の素材自体)は混合色となる。このように、洗浄溶液を選定することによって、染色後の建築材料において異なった着色状態が得られることから、確認者が所望とする比較・確認しやすい着色状態となるように自在に選択することができる。
【0051】
複数の色素染色剤として2種類の色素染色剤(第一の色素染色剤および第二の色素染色剤)を使用する場合として、図4(a)のフローチャートに示すように、上記図1(a)と同様に、第一の色素染色剤を建築材料に染色する(S11)。この後に、水やエタノールを用いて(S41)。この溶液洗浄後に、上記図1(a)と同様に、第二の色素染色剤を建築材料に染色し(S12)、この複数の色素染色剤の呈色に基づいて、前記建築材料の表面における石綿の所定面積当たりに占める占有面積を検出し(S2:面積検出工程)、この占有面積に基づいて、前記建築材料中の石綿の全体濃度を演算する(S3:濃度演算工程)。色素染色後建築材料をエタノールで洗浄すると石綿は白色になるので、白色化した石綿の占有表面積を算出することもできる。
【0052】
各色素染色剤による前記建築材料の染色(S1:染色工程)間に、この水やエタノールを用いて行う溶液洗浄(S41)が、中間洗浄工程(S4)に該当する。
【0053】
また、3種類の色素染色剤(第一の色素染色剤、第二の色素染色剤、および第三の色素染色剤)を使用する場合も同様に、図4(b)のフローチャートに示すように、上記図1(b)と同様に、第一の色素染色剤を建築材料に染色する(S11)。この後に、水やエタノールを用いて溶液洗浄を行う(S41:中間洗浄工程)。
【0054】
この溶液洗浄後に、上記図1(a)と同様に、第二の色素染色剤を建築材料に染色する(S12)。この後に、再度、水やエタノールを用いて溶液洗浄を行う(S42:中間洗浄工程)。この溶液洗浄後に、上記図1(b)と同様に、第三の色素染色剤を建築材料に染色し(S13)、複数の色素染色剤の呈色に基づいて、前記建築材料の表面における石綿の所定面積当たりに占める占有面積を検出し(S2:面積検出工程)、この占有面積に基づいて、前記建築材料中の石綿の全体濃度を演算する(S3:濃度演算工程)。
【0055】
各色素染色剤による前記建築材料の染色(S1:染色工程)間に、この水やエタノールを用いて行う溶液洗浄(S41、S42)が、中間洗浄工程(S4)に該当する。
【0056】
このように、前記染色工程により一の前記色素染色剤が染色された前記建築材料を、他の前記色素染色剤の染色前に、溶液で洗浄する中間洗浄工程を含むことから、溶液で洗浄により染色時の汚れやノイズが減少してより正確に石綿箇所が染色されることとなり、より高精度な石綿の検出が可能となる。
【0057】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る石綿検出方法は、第1の実施形態と同様に、前記染色工程と、前記面積検出工程と、前記濃度演算工程と、を含み、さらに、図5に示すように、前記染色工程により前記複数の色素染色剤が染色された前記建築材料を、溶液で洗浄する最終洗浄工程を含み、前記面積検出工程が、前記複数の色素染色剤により染色された前記建築材料の呈色、及び洗浄された前記建築材料の呈色に基づいて、前記建築材料の表面における石綿の所定面積当たりに占める占有面積を検出する構成である。
【0058】
この溶液としては、水でもよいし、エタノールやメタノールなどのアルコールでもよいが、取り扱いの容易さから、水やエタノールを用いることができる。
【0059】
例えば、図5のフローチャートに示すように、上記図1(b)と同様に、第一の色素染色剤を建築材料に染色(S11)した後に、第二の色素染色剤を建築材料に染色する(S12)。この後に、水やエタノールを用いて溶液洗浄を行う(S5)。
【0060】
染色後に水を用いて溶液洗浄することで、染色後に建築材料に残っている色素を除去し、後続の色素染色剤による染色効果を高めることができる。すなわち、染色後の水を用いた溶液洗浄によって、複数の色素染色剤により染色されるべき石綿領域が正確に反映された複合色の呈色が得られる。同一色素に染色する場合でも、染色後に水を用いて溶液洗浄することで、非石綿の領域(建築材料の素材自体)と石綿領域では、染色後に着色状況が区別されて明瞭化される。
【0061】
また、染色後にエタノールを用いて溶液洗浄することで、色素染色剤で染色された石綿領域の色素が取れて、白色化する。この溶液洗浄によって、建築材料の染色された箇所のみが選択的に脱色する(後述の実施例参照)。その一方で、建築材料の非石綿領域(建築材料の素材自体)では、色素染色剤による着色状態がそのまま維持される。その一方で、建築材料の非石綿領域(建築材料の素材自体)は混合色となることから、染色された箇所のみが白色化して、石綿の存在箇所が明瞭となり、石綿領域と非石綿領域とが強コントラスト化され、石綿領域の検出精度を高めることができる。
【0062】
この染色された箇所のみが洗浄により白色化するメカニズムは、建築材料の染色された箇所において石綿は電荷を持つなめらかな表面であり、色素染色剤の色素はエタノールに溶けやすいので、弱く吸着・結合した色素が選択的に脱色されるためである。一方、建材素材(非石綿領域)は、石綿とは異なった表面電荷を有し小さな凹凸のために表面電荷密度が増大し色素染色剤の色素は強く結合する。その結果、エタノールによる建材素材(非石綿領域)の脱色は困難である。また、異なった色で染色された石綿以外の混入繊維物質(草木片など)はエタノールで脱色されないので残る。
【0063】
この複数の色素染色剤の呈色に基づいて、前記建築材料の表面における石綿の所定面積当たりに占める占有面積を検出し(S2:面積検出工程)、この占有面積に基づいて、前記建築材料中の石綿の全体濃度を演算する(S3:濃度演算工程)。
【0064】
このように、前記染色工程により前記複数の色素染色剤が染色された前記建築材料を、溶液で洗浄する最終洗浄工程を含み、前記面積検出工程が、前記複数の色素染色剤により染色された前記建築材料の呈色、及び洗浄された前記建築材料の呈色に基づいて、前記建築材料の表面における石綿の所定面積当たりに占める占有面積を検出することから、染色後の建築材料の呈色と、洗浄後の建築材料の呈色との比較によって、さらに正確性を増した石綿の検出ができることとなり、より高精度な石綿の検出が可能となる。
【0065】
また、前記面積検出工程が、前記複数の色素染色剤により染色された前記建築材料の明度、及び洗浄された前記建築材料の明度に基づいて、前記建築材料の表面における石綿の所定面積当たりに占める占有面積を検出することも可能である。
【0066】
ここで、明度とは、色の明るさの度合いを意味する。白色に近づくにつれて明度は高くなり(明るくなり)、黒色に近づくにつれて明度は高くなる(暗くなる)。
【0067】
染色された前記建築材料は、前記複数の色素染色剤により重ねて染色されることで、石綿の所在領域の明度が徐々に低くなる。また、洗浄された前記建築材料は、石綿の所在領域が白色化することで明度が最大となる。このため、染色された前記建築材料の明度と、洗浄された前記建築材料の明度は、石綿の所在領域において、互いに著しく高いコントラスト差が顕出化する。
【0068】
このように、前記面積検出工程が、前記複数の色素染色剤により染色された前記建築材料の明度、及び洗浄された前記建築材料の明度に基づいて、前記建築材料の表面における石綿の所定面積当たりに占める占有面積を検出することから、染色後の建築材料の明度と、洗浄後の建築材料の明度との比較によって、石綿の存在の有無が強いコントラストで視認でき、さらに正確性を増した石綿の検出ができることとなり、より高精度な石綿の検出が可能となる。
【0069】
(第3の実施形態)
第3の実施形態に係る石綿検出方法は、第2の実施形態と同様に、前記染色工程と、前記面積検出工程と、前記濃度演算工程と、前記最終洗浄工程と、を含み、さらに、図6に示すように、前記最終洗浄工程により溶液で洗浄された前記建築材料を水平位置から所定角度回転させる回転工程を含み、前記検出工程が、前記濃度演算工程が、前記回転工程により回転した前記建築材料の外観の変化に基づいて、前記建築材料中の石綿の全体濃度を演算する構成である。
【0070】
前記回転工程により、洗浄された前記建築材料を水平位置から所定角度回転させる方法は、特に限定されないが、例えば、前記建築材料を試料台に載置して、この試料台を所定角度回転させることで可能である。回転させる所定角度としては、特に限定されないが、例えば、15度、30度、45度、60度、75度、90度のいずれかから選択することができる。例えば、回転させる所定角度が45度の場合には、前記建築材料を初期の水平な載置位置から45度、90度、135度、180度、・・・と回転させる。
【0071】
図7に示すように、洗浄された石綿(例えばクリソタイル100a)の所在領域について、回転前に可視光の入射光Lから反射光Lとして白色光が視認される一方で、回転A後(例えば45度回転後)の可視光の入射光Mから、石綿の偏光性により、反射光Mとして白色光が視認されなくなる(消失する)。さらに回転B後(例えばさらに45度回転後)の可視光の入射光から反射光として再度白色光が視認される。
【0072】
この水平位置から所定角度回転させた建築材料の外観と、複数の色素染色剤の呈色に基づいて、前記建築材料の表面における石綿の所定面積当たりに占める占有面積を検出する(S2‘:面積検出工程)、この占有面積に基づいて、前記建築材料中の石綿の全体濃度を演算する(S3:濃度演算工程)。
【0073】
このように、前記最終洗浄工程により溶液で洗浄された前記建築材料を水平位置から所定角度回転させる回転工程を含み、前記検出工程が、前記濃度演算工程が、前記回転工程により回転した前記建築材料の外観の変化に基づいて、前記建築材料中の石綿の全体濃度を演算することから、溶液で洗浄により白色化された石綿の存在箇所が、石綿の偏光性によって前記回転に伴って消失又は出現を繰り返すこととなり、染色と偏光性の二重チェックによって正確性の高い石綿の検出が可能となる。
【0074】
(第4の実施形態)
第4の実施形態に係る石綿検出方法は、第1の実施形態と同様に、前記染色工程と、前記面積検出工程と、前記濃度演算工程と、を含み、さらに、図8に示すように、前記複数の色素染色剤による前記呈色が、赤色、緑色、及び青色の3色を含む構成である。
【0075】
図8のフローチャートに示すように、上記図1(b)と同様に染色工程(S1)として、石綿と反応して赤色に呈色する第一の色素染色剤を建築材料に染色し(S11)、この後に、石綿と反応して青色に呈色する第二の色素染色剤を建築材料に染色し(S12)、この後に、石綿と反応して緑色に呈色する第三の色素染色剤を建築材料に染色する(S13)。
【0076】
この複数の色素染色剤の呈色に基づいて、前記建築材料の表面における石綿の所定面積当たりに占める占有面積を検出し(S2:面積検出工程)、この占有面積に基づいて、前記建築材料中の石綿の全体濃度を演算する(S3:濃度演算工程)。
【0077】
複数の色素染色剤が建築材料に染色する順番は、上記に限定されず、例えば、(第一の色素染色剤、第二の色素染色剤、および第三の色素染色剤)の呈色が、各々、(赤色、緑色、および青色)、(緑色、赤色および青色)、(緑色、青色、および赤色)、(青色、赤色、および緑色)、又は(青色、緑色、および赤色)であってもよい。
【0078】
建築材料中の石綿に生じている各種の電荷に対して、第一の色素染色剤、第二の色素染色剤、および第三の色素染色剤の石綿に対応する電荷の部分が引き合うことで化学反応が生じて呈色する。
【0079】
例えば、図9(a)に示すように、建築材料100中の石綿(例えばクリソタイル100a)に生じている正電荷に対して、第一の色素染色剤10Aの負電荷の部分が引き合うことで化学反応が生じて赤色(R)に呈色する。
【0080】
次に、図9(b)に示すように、前記建築材料100中の石綿(例えばアモサイト100b)に生じている負電荷に対して、第二の色素染色剤10Bの正電荷の部分が引き合うことで化学反応が生じて青色(B)に呈色する。
【0081】
次に、図9(c)に示すように、前記建築材料100中の石綿(例えばクロシドライト100c)に生じている正電荷に対して、第三の色素染色剤10Cの負電荷の部分が引き合うことで化学反応が生じて緑色(G)に呈色する。
【0082】
この呈色が、赤色(R)、緑色(G)、及び青色(B)の三原色であることから、図9(c)に示すように、いわゆる加色法により、三原色の重なりが増すことで、明度が低下して黒色(K)に近くなる。
【0083】
この明度の観点から、本実施形態では、第2の実施形態と同様に、前記最終洗浄工程を含み、前記面積検出工程が、前記複数の色素染色剤により染色された前記建築材料の呈色、及び洗浄された前記建築材料の呈色に基づいて、前記建築材料の表面における石綿の所定面積当たりに占める占有面積を検出する構成とすることができる。
【0084】
この場合には、この溶液洗浄によって、建築材料の染色された箇所のみが選択的に脱色し、染色された箇所のみが白色化して、石綿の存在箇所が明瞭となるとともに、洗浄前の石綿の存在箇所の呈色が、加色法により、黒色化していることから、洗浄前後の石綿の存在箇所が、白対黒のように、コントラスト差が最大となる。
【0085】
これにより、第2の実施形態と同様に、前記面積検出工程が、前記複数の色素染色剤により染色された前記建築材料の明度、及び洗浄された前記建築材料の明度に基づいて、前記建築材料の表面における石綿の所定面積当たりに占める占有面積を検出することも可能である。
【0086】
染色された前記建築材料は、前記複数の色素染色剤により赤色、緑色、及び青色の三原色で染色されることで、図10(a)に示すように、加色法により、石綿(例えばクリソタイル100a、アモサイト100b)の所在領域が黒色化(グレー化)して明度が他領域と比較して最小となる(暗くなる)。また、図10(b)に示すように、洗浄された建築材料100は、石綿(例えばクリソタイル100a、アモサイト100b)の所在領域が白色化することで明度が他領域と比較して最大となる(明るくなる)。このため、染色された前記建築材料の明度と、洗浄された前記建築材料の明度は、石綿の所在領域において、互いに著しく高いコントラスト差が顕出化する。
【0087】
この場合、洗浄前後の建築材料の明度の比較のみによって、極めて容易に石綿の所在領域を検出でき、前記建築材料の表面における石綿の所定面積当たりに占める占有面積を高精度に検出できる。この比較については、洗浄前後の建築材料の明度の突き合わせ(照合)のみによって、コントラストが黒から白に反転した領域を、石綿の所在領域として検出可能となる。
【0088】
このように、前記面積検出工程が、前記複数の色素染色剤により染色された前記建築材料の明度、及び洗浄された前記建築材料の明度に基づいて、前記建築材料の表面における石綿の所定面積当たりに占める占有面積を検出することで、染色後の建築材料の明度と、洗浄後の建築材料の明度との比較によって、石綿の存在の有無が強いコントラストで視認でき、さらに正確性を増した石綿の検出ができることとなり、前記建築材料の表面における石綿の所定面積当たりに占める占有面積を高精度に検出できる。
【0089】
このように、前記複数の色素染色剤による前記呈色が、赤色、緑色、及び青色の3色を含むことから、加色法により、石綿の存在により複数の色素染色剤が赤色、緑色、及び青色の全てに呈色した部分が黒色化して、石綿の存在の有無が強いコントラストで視認できることとなり、より視認性の高い石綿の検出が可能となる。
【0090】
このように、上記の各実施形態に係る石綿検出方法は、建築材料を破砕することなく建築材料表面に分布する石綿を色素染色し、実体顕微鏡で直接石綿を迅速に・簡単に観察・識別でき、全体濃度を検出可能となる。石綿の解体現場や災害廃棄物置き場などの現場分析に適しており、しかも、建築材料表面に特徴が表れる点を利用し、識別が困難な場合は、その画像の送信よって遠隔地から専門家による判断が可能である。そのため、上記の各実施形態に係る石綿検出方法は、その利用分野は幅広く、建設業、環境分析、解体業、産業廃棄物処理業、自治体まで及ぶものである。
【0091】
以下に、本発明の特徴をさらに具体的に示すために実施例を記すが、本発明は以下の実施例によって制限されるものではない。
【0092】
(実施例1)
(1)3D CT画像
本実施例に係る石綿検出方法では、上述の第1の実施形態に従って石綿検出方法を行った。まず、本実施例に係る石綿検出方法の適用可能性を確認する目的で、サンプルの建築材料中の石綿の分布状態を3D CT画像(3次元X線CT画像)を用いて確認した。得られた結果を図11に示す。得られた結果から、細い繊維状物質(画像において少し白く光っている部分)が石綿であることが確認された。石綿は建築材料の表面に主に分布しており(図A)、内部の中央部は、X線吸収が弱い物質(おそらくセメント)からなり空洞となっていた(図B)。すなわち、建築材料を破砕することなく、表面染色で石綿を十分に検出可能であることが確認された。
【0093】
ここで、本発明者は、建築材料に占める石綿の全体濃度Dについて、表面積占有率Sとの関係では、D=aS(aは体積と面積および建築材料の密度を含む比例係数)の一次関数として演算可能であるという仮説を立てた。建築材料の体積と面積との関係では、1 cm x 2 cm x 0.5 cmの建築材料の試料の体積は1cm3であり、片面の表面積も1cm2である。上述の図11の結果から、石綿はほとんど表面に分布していることが確認されたことから、a=1と求められた。すなわち、厚さが0.5 cmの建築材料の試料ではa=1となり、d cmの建築材料の試料の場合ではd/0.5だけ濃度表示は薄くなるものの、石綿を含む代表的な建築材料であるスレートの比重は0.8~1.0であることから、多くの廃棄建築材料を用いる実験ではa≒1であることが確認された(表1参照)。
【0094】
(2)石綿専有面積と全体濃度
次に、図12に示す得られた画像から、石綿分析として、計測されたサンプル建築材料の表面上に分布する石綿の占有面積(表面積占有率S)を実際に算出した。この図12では、画像A: 建築材料中の染色した石綿、画像B: 顕微拡大鏡画像(x 50倍 )、画像C: 画像解析プログラム(WinRoof2018、三谷商事株式会社製)による染色石綿を示している。この画像Cより石綿専有面積(表面積占有率S)を決定した。その結果を以下の表に示す。
【0095】
以下の表では、本実施例に係る石綿検出方法を用いて検出した画像から計測されたサンプル表面上に分布する石綿の面積率NoとSampleは試料番号と建築材料名を表す。surface areaは石綿専有面積(表面積占有率S)であり、concentrationは既存の公定法(厚生労働省による石綿の公定分析法)で測定した石綿濃度(全体濃度D)である。上述した本手法の全体濃度をD=aSとして算出した結果は公定法で得られた濃度と極めてよく一致しており、本実施例に係る石綿検出方法の適用可能性が確認された。
【0096】
【表1】
【0097】
(実施例2)
(1)使用中の建物の壁の石綿検出
次の方法で建築材料表面中の石綿を検査した。災害地や家屋の解体現場で建築材料を採取し、それらの汚れを水洗いし落とした。石綿繊維は正電荷(クリソタイル)および負電荷(その他の石綿)を帯びている。そこで、建築材料を水に数時間浸したあと、湿った状態で小片(約1 cm x 2 cm)に裁断し、乾燥した建築材料試料を、図13に示すように、電荷の異なる2種の色素(メチレンブルーと赤色3号)で建築材料表面を直接吹き付けにより染色した。石綿は色素によって染色され、建物は石綿を含むことが確認された。すなわち、表面染色で石綿を十分に検出可能であることが確認された。
【0098】
染色前の建築材料表面の処理法と色素濃度を変えて、染色した建築材料表面を実体顕微鏡(x 50)で観察した。
【0099】
次の4つの方法で処理し、それぞれの染色結果を比較した。(1)洗剤による洗浄、(2)1M、HCl、(3)20%蟻酸、(4)エッチング剤。(2)~(4)の順で建築材料素材の主成分であるカルサイトが一部溶出するが、石綿には全く影響しなかった。エッチング剤で表面処理した建築材料を色素(メチレンブルー(MB))とエリスロシン(RED-3)で染色した建築材料表面の顕微鏡画像を図14に示す。図14の上段に色素(メチレンブルー(MB))の顕微鏡画像を、図14の下段にエリスロシン(RED-3)の顕微鏡画像を示す。
【0100】
図14において、青色及び紫色に染色された物質が石綿であることが確認された。含有石綿はXRDよりクリソタイルであることを確認した。色素を溶かした溶媒(水、又はエタノール)、色素添加後の建築材料表面の洗浄溶媒(水、又はエタノール)、色素濃度(0.0001~0.1M)の影響について実験を行い、それぞれの測定結果を比較し、建築材料を破砕することなく現場で使える建築材料表面の石綿の最適検出法および全体濃度を確認できた。
【0101】
(2)XRD測定
建築材料表面の石綿は建築材料のXRDを測定した。建築材料のXRDと染色画像を比較した結果を図15に示す。建築材料Aは石綿(クリソタイル)を含み、建築材料Bは石綿を含まない石膏である。得られたXRD結果から、その石綿の有無の違いは染色画像と一致していることが確認された。
【0102】
(3)ラマンスペクトル測定
さらに、同一試料のラマンスペクトルより、建築材料中の石綿の分布状態を調べた。得られた結果を図16に示す。廃棄建築材料のラマンスペクトルは標準石綿(クリソタイル)と一致した。廃棄建築材料のラマンラマンスペクトルの測定例は少なく、本結果は廃棄建築材料の貴重なラマンスペクトルデータである。また、石綿分析の専門機関に依頼して、石綿含有量を確認した。
【0103】
(実施例3)
上記実施例に係る石綿検出方法においてサンプルの建築材料を色素混合液を用いて染色した。色素混合液は、メチレンブルー(MB)とエリスロシン(RED-3)を混合させた色素混合液を用いた。図17に得られた染色結果を示す。
【0104】
図17中の染色結果A~Fは、色素混合液を用いて染色した結果であり、このうち染色結果A~Dは、メチレンブルー(MB)の濃度(0.01%)一定でエリスロシン(RED-3)の濃度を減少させた結果を示す(A: RED-3 = 0.1%, B: RED-3 = 0.05%, C: RED-3 = 0.025%, D: RED-3 = 0.0125%)。
【0105】
図17中の染色結果Eは、メチレンブルー(MB)0.02%とエリスロシン(RED-3)0.2 %の色素混合液による染色結果であり、染色結果Fは、メチレンブルー(MB)0.02%とエリスロシン(RED-3)0.1%の色素混合液による染色結果である。
【0106】
図17中の染色結果GとHは、メチレンブルー(MB)0.01%とエリスロシン(RED-3)0.1%の単一溶液を順に添加して染色した結果であり、このうち染色結果Gは、最初にメチレンブルー(MB)を添加した後にエリスロシン(RED-3)を添加したものであり、染色結果Hは、最初にエリスロシン(RED-3)を添加した後にメチレンブルー(MB)を添加したものである。
【0107】
得られた結果から、色素混合溶液を用いた場合でも染色による石綿検出が可能であり、色素混合溶液は1回の添加で済み、2種の色素の混合溶液による染色は、2種の色素で順次染色した場合よりも染色操作時間が半分で完了して染色時間を短縮できた。このことから、色素混合溶液を用いることでより現場で操作しやすい石綿検出が可能となることが確認された。
【0108】
(実施例4)
上記実施例3に係る石綿検出方法に用いた色素混合液の溶液状態を確認した。図18の下段にメチレンブルー(MB)とエリスロシン(RED-3)を混合させた色素混合液の溶液状態を示す(色素混合液の配合率は、下段の左から、(MB = 0.025%, RED-3 = 0.0125%)、(MB = 0.01%, RED-3 = 0.025%),(MB = 0.01%, RED-3 = 0.1%),(MB = 0.01%, RED-3 = 0.05%),(MB = 0.01%, RED-3 = 0.0125%))。また、比較例として、図18の上段にエリスロシン(RED-3)のみの単一成分の溶液状態と、メチレンブルー(MB)のみの単一成分の溶液状態を示す。
【0109】
得られた結果から、色素混合溶液(下段)にはチンダル現象が目視にて確認された。これに対して、単一成分の溶液(上段)にはチンダル現象が観測されなかった。
【0110】
チンダル現象の発現から色素混合溶液中に微粒子の存在が予測されたことから、次に、色素混合溶液の粒度分布を動的光散乱法により測定した。得られた結果を図19に示す。この結果から、色素混合溶液の平均粒径が140nmであったことが確認された。
【0111】
このように、2種の色素の混合液は微細なナノ粒子(140nm)が形成されていたことから、石綿上の染色膜は、単分子膜でなく多重層膜が形成されていると推察される。このために石綿上の染色膜は、染色強度が強く安定していると考えられる。事実として、実際に染色した石綿は半年以上安定的な染色状態が維持された。
【0112】
また、2種の色素で順次染色する場合においても、2番目の色素の添加による着色は色の変化だけでなく、最初に加えた色素との相互作用によりナノ粒子が生成していると考えられ、これにより石綿への染色が長期間安定的に維持されたものと考えられる。
【0113】
(実施例5)
上記実施例3に係る石綿検出方法と同様の手順にて、メチレンブルー(MB)とエリスロシン(RED-3)の代わりに、インジゴカルミンとローダミンBを用いてサンプルの建築材料を染色した。サンプルの建築材料にこの2つの色素を順次加えて染色した結果を図20に示す。インジゴカルミンの濃度は各々0.05%で同じであるが、図20の左側写真は、ローダミンBの濃度が0.05%の結果であり、図20の右側写真は、ローダミンBの濃度が0.02%の結果である。
【0114】
また、サンプルの建築材料を2つの色素の混合溶液で染色した結果を図21に示す。図21の左側写真は、インジゴカルミン(0.05%)とローダミンB(0.2%)の色素混合溶液を用いた結果であり、図21の右側写真は、インジゴカルミン(0.05%)とローダミンB(0.02%)の色素混合溶液を用いた結果である。得られた結果から、色素混合溶液でも個々の色素溶液による染色と同様に石綿が染色されて検出されたと共に、色素混合溶液を1回のみ添加するという染色時間の短縮化が実現された。
【0115】
(実施例6)
上記実施例に係る石綿検出方法において染色したサンプルの建築材料をエタノールで洗浄した。図22(a)のAに示すように、エタノールで洗浄された石綿部分(実線の楕円部分)は、脱色して白くなったことが確認され、その一方で、非石綿部分(点線の楕円部分)は脱色されなかったことが確認された。
【0116】
サンプルの建築材料を偏光顕微鏡のクロスニコルの状態で載置した試料台を45度ごとに回転させると、図22(a)に示すように、AからB、BからC、CからDのように画像が推移し、エタノールで洗浄された石綿部分(実線の楕円部分)は、45度回転させるとBに示すように一旦白色物質の画像は消えた(消光作用)が、さらに45度回転させるとCに示すように再び出現した。この石綿部分(実線の楕円部分)の様子は、図22(b)で拡大して、AからB、BからC、CからDに推移していることが示されている。この一方で、非石綿物質(点線の楕円部分)は、図22(b)に示すように、サンプルの建築材料を偏光顕微鏡のクロスニコルの状態で載置した試料台を45度ごとに回転して、AからB、BからC、CからDに画像が推移しても、消失しなかった。この石綿の偏光顕微鏡での消光作用によって、染色状態が違う繊維状物質について石綿か非石綿であるかを明瞭に区別できることが確認された。
【符号の説明】
【0117】
10A 第一の色素染色剤
10B 第二の色素染色剤
10C 第三の色素染色剤
100 建築材料
100a クリソタイル
100b アモサイト
100c クロシドライト

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