(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035203
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】粉体混合物及びこれを用いるジオポリマー固化体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 28/26 20060101AFI20240306BHJP
C04B 22/06 20060101ALI20240306BHJP
C04B 22/08 20060101ALI20240306BHJP
C04B 14/10 20060101ALI20240306BHJP
C04B 18/14 20060101ALI20240306BHJP
C04B 18/08 20060101ALI20240306BHJP
B28B 1/32 20060101ALI20240306BHJP
B28B 1/38 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
C04B28/26
C04B22/06 Z
C04B22/08 A
C04B14/10 B
C04B18/14 Z
C04B18/08 Z
B28B1/32 B
B28B1/38 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023140119
(22)【出願日】2023-08-30
(31)【優先権主張番号】P 2022137986
(32)【優先日】2022-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(71)【出願人】
【識別番号】000198307
【氏名又は名称】株式会社IHI建材工業
(71)【出願人】
【識別番号】504085750
【氏名又は名称】アドバンエンジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001863
【氏名又は名称】弁理士法人アテンダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木作 友亮
(72)【発明者】
【氏名】高橋 幸一
(72)【発明者】
【氏名】小森 照夫
(72)【発明者】
【氏名】山村 有希
(72)【発明者】
【氏名】齋野 純
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 由貴子
(72)【発明者】
【氏名】聶 菁
(72)【発明者】
【氏名】井川 舜也
(72)【発明者】
【氏名】丸山 隼人
(72)【発明者】
【氏名】磯部 美希
(72)【発明者】
【氏名】笠原 健二
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112MA00
4G112MB02
4G112PA06
4G112PA27
4G112PA28
4G112PB03
4G112PB06
(57)【要約】
【課題】現場でのジオポリマー固化体の生成を容易に行うことができるとともに、強度の高いジオポリマー固化体を製造することのできる粉体混合物及びこれを用いるジオポリマー固化体を提供する。
【解決手段】活性フィラーとアルカリ粉体とを混合してなる粉体混合物に水または水及び骨材を加えて混合することによりジオポリマー固化体を生成するようにしたので、予め用意した粉体混合物を現場に搬入し、現場で水または水及び骨材と混合することによりジオポリマー固化体を生成することができる。また、粉体混合物のアルカリ粉体に、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム及び水酸化ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム及び水酸化カリウムの何れかの粉体を用いるようにしたので、強度の高いジオポリマーコンクリートを生成することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性フィラーとアルカリ粉体とを混合してなり、水または水及び骨材を加えることによりジオポリマー固化体を生成する粉体混合物であって、
前記アルカリ粉体がメタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム及び水酸化ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム及び水酸化カリウムの何れかの粉体からなり、
粉体混合物全体におけるナトリウム及びカリウムの合計とアルミニウムとのモル比((Na+K)/Al)が0.5よりも大きい
ことを特徴とする粉体混合物。
【請求項2】
前記メタケイ酸ナトリウムの平均粒径は1000μm以下である
ことを特徴とする請求項1記載の粉体混合物。
【請求項3】
前記水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの平均粒径は5000μm以下である
ことを特徴とする請求項1記載の粉体混合物。
【請求項4】
ケイ素とアルミニウムとのモル比(Si/Al)が1.8以上である
ことを特徴とする請求項1記載の粉体混合物。
【請求項5】
水酸化物中のナトリウム及びカリウムの合計とケイ酸含有アルカリ中のナトリウムの合計とのモル比が0.53以下である
ことを特徴とする請求項1記載の粉体混合物。
【請求項6】
前記活性フィラー全体に対してメタカオリンが質量比率10%以上含まれる
ことを特徴とする請求項1記載の粉体混合物。
【請求項7】
前記活性フィラー及びアルカリ粉体に繊維を混合した
ことを特徴とする請求項1記載の粉体混合物。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項記載の粉体混合物に水または水及び骨材を加えて混合することによりジオポリマー固化体を生成する
ことを特徴とするジオポリマー固化体の製造方法。
【請求項9】
活性フィラーとアルカリ粉体とを混合してなる粉体混合物に、カリウムを含む低粘性のアルカリ水溶液及び骨材を加えることにより、ジオポリマー固化体を生成するジオポリマー固化体の製造方法であって、
前記アルカリ粉体がメタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム及び水酸化ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム及び水酸化カリウムの何れかの粉体からなり、
前記アルカリ粉体中のメタケイ酸ナトリウムに含まれるナトリウムとジオポリマー固化体全体におけるナトリウムとカリウムの合計とのモル比(Na/(Na+K))が0.4以上である
ことを特徴とするジオポリマー固化体の製造方法。
【請求項10】
前記アルカリ水溶液と前記粉体混合物全体におけるナトリウム及びカリウムの合計とアルミニウムとのモル比((Na+K)/Al)が0.5以上である
ことを特徴とする請求項9記載のジオポリマー固化体の製造方法。
【請求項11】
ジオポリマー固化体全体における水とアルミナとのモル比(H2O/Al2O3)が13以下である
ことを特徴とする請求項9記載のジオポリマー固化体の製造方法。
【請求項12】
前記粉体混合物に繊維を混合する
ことを特徴とする請求項9記載のジオポリマー固化体の製造方法。
【請求項13】
請求項1乃至7の何れか一項記載の粉体混合物に、低粘性のアルカリ水溶液と、70vol%以下の非固化状態の固化対象物とを加えることによりジオポリマー固化体を生成する
ことを特徴とするジオポリマー固化体の製造方法。
【請求項14】
請求項1乃至7の何れか一項記載の粉体混合物を水または低粘性のアルカリ水溶液とともに吹き付けることによりジオポリマー固化体を生成する
ことを特徴とするジオポリマー固化体の製造方法。
【請求項15】
請求項1乃至7の何れか一項記載の粉体混合物を透水性の袋体に収容し、袋体に外部から水を加えることによりジオポリマー固化体を生成する
ことを特徴とするジオポリマー固化体の製造方法。
【請求項16】
前記粉体混合物を収容した複数の袋体を重ねて配置し、袋体の外部から水を加える
ことを特徴とする請求項15記載のジオポリマー固化体の製造方法。
【請求項17】
前記袋体はアルカリ可溶性の材質からなる
ことを特徴とする請求項15または16記載のジオポリマー固化体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば土木、建築等における構造体の形成に用いられるジオポリマーコンクリートを製造するための粉体混合物及びこれを用いるジオポリマー固化体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、土木、建築等における構造体はコンクリートやモルタルによって形成されるのが一般的であるが、近年、コンクリートやモルタルに代わる材料としてジオポリマー組成物が注目されており、ジオポリマーコンクリートとして鉄道用まくら木、建築物の壁材等、各種構造物への適用が検討されている。
【0003】
ジオポリマー組成物は、フライアッシュ(石炭灰)、メタカオリン、高炉スラグ等、アルカリに活性な非晶質粉体(活性フィラー)とそれを活性化させるアルカリ溶液(ケイ酸ナトリウム水溶液、ケイ酸カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液)を混合させ、反応させることにより得られる固化体である。ジオポリマーコンクリートは、セメントコンクリートと同様に細骨材、粗骨材等を加えることにより(表1参照)、セメントコンクリートと同等の強度を発現するものである。
【0004】
【0005】
尚、表1において、FAはJIS1種フライアッシュ、BSは高炉スラグ微粉末(プレーン値4000cm2/g)、製作水ガラスはKOH、SiO2及び水を混合溶解して作製したものである。
【0006】
ジオポリマーコンクリートの従来の製造方法としては、
図15に示すように、まず混練ミキサに石炭灰、高炉スラグ、メタカオリン等の粉体(活性フィラー)、骨材(細骨材,粗骨材)等の材料を投入するとともに(S1)、所定時間(例えば2分間)だけ攪拌した後(S2)、水ガラス等のアルカリ溶液を加え(S3)、所定時間(例えば5分間)だけミキサで練混ぜを行った後(S4)、練混ぜを完了するようにしたものが一般的である。この後、混練物を型枠に投入し、数時間の養生を経て混練物の硬化後に脱型することにより構造体を形成するようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
また、アルカリ溶液の代わりに活性フィラーとアルカリ源としてのメタケイ酸ナトリウム粉体を使用し、これに細骨材と水を加えて混合する方法も研究されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】「報告 メタけい酸ナトリウムの添加方法と凝結遅延剤がジオポリマーモルタルの圧縮強さ特性とフロー値の経時変化に及ぼす影響」コンクリート工学年次論文集Vol.40, No.1, 2018,pp1821-pp1826
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、前記従来の製造方法の工程S3で加えるアルカリ溶液は、粘度が高く取り扱いが極めて難しいため、アルカリ溶液のための専用の設備や工程が別途必要となる。即ち、前記従来の製造方法で用いるケイ酸ナトリウム水溶液及びケイ酸カリウム水溶液は、温度依存性及び粘着性が高いため、流動性が悪く、投入場所における温度管理、アルカリ溶液(水ガラス)の計量、攪拌、練混ぜに長時間を要するという問題点がある。このため、前記従来の製造方法は、一般的なセメント製品とは異なり、現場での打設に適さない材料を用いる製造方法である。
【0011】
また、前記研究では、一般的な製造方法の改善を目的として、活性フィラーとアルカリ源としてのメタケイ酸ナトリウム粉体を使用しているが、一般的な製造方法で作製したジオポリマー組成物より強度に劣るという課題がある。
【0012】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、現場でのジオポリマー固化体の生成を容易に行うことができるとともに、強度の高いジオポリマー固化体を製造することのできる粉体混合物及びこれを用いるジオポリマー固化体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の粉体混合物は、前記目的を達成するために、活性フィラーとアルカリ粉体とを混合してなり、水または水及び骨材を加えて混合することによりジオポリマー固化体を生成する粉体混合物であって、前記アルカリ粉体がメタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム及び水酸化ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム及び水酸化カリウムの何れかの粉体からなり、粉体混合物全体におけるナトリウム及びカリウムの合計とアルミニウムとのモル比((Na+K)/Al)が0.7よりも大きいことを特徴とする。
【0014】
これにより、粉体混合物に水または水及び骨材を加えて混合することによりジオポリマー固化体が生成されることから、予め用意した粉体混合物を現場に搬入し、現場で水または水及び骨材と混合することによりジオポリマー固化体を生成することが可能となる。この場合、粉体混合物のアルカリ粉体に、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム及び水酸化ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム及び水酸化カリウムの何れかの粉体を用いられ、且つ粉体混合物全体におけるナトリウム及びカリウムの合計とアルミニウムとのモル比((Na+K)/Al)が0.5よりも大きいことから、強度の高いジオポリマーコンクリートが生成される。
【0015】
また、本発明のジオポリマー固化体の製造方法は、前記目的を達成するために、活性フィラーとアルカリ粉体とを混合してなる粉体混合物に、カリウムを含む低粘性のアルカリ水溶液および骨材を加えて混合することにより、ジオポリマー固化体を生成するジオポリマー固化体の製造方法であって、前記アルカリ粉体がメタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム及び水酸化ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム及び水酸化カリウムの何れかの粉体からなり、前記アルカリ粉体中のメタケイ酸ナトリウムに含まれるナトリウムとジオポリマー固化体全体におけるナトリウムとカリウムの合計とのモル比(Na/(Na+K))が0.4以上であることを特徴とする。
【0016】
これにより、粉体混合物に水及び低粘性のアルカリ水溶液、または水、低粘性のアルカリ水溶液水及び骨材を加えて混合することによりジオポリマー固化体が生成されることから、予め用意した粉体混合物を現場に搬入し、現場で低粘性のアルカリ水溶液と混合することによりジオポリマー固化体を生成することが可能となる。この場合、粉体混合物のアルカリ粉体に、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム及び水酸化ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム及び水酸化カリウムの何れかの粉体を用いられ、且つアルカリ粉体中のメタケイ酸ナトリウムに含まれるナトリウムとジオポリマー固化体全体におけるナトリウムとカリウムの合計とのモル比(Na/(Na+K))が0.4以上であることから、強度の高いジオポリマーコンクリートが生成される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、予め用意した粉体混合物を現場に搬入し、現場で水またはアルカリ水溶液を加えることによりジオポリマー固化体を生成することができるので、現場での生成を容易に行うことができるとともに、従来のアルカリ溶液の全部または大部分を「アルカリ粉体と水」に置き換えることにより、水ガラス等のアルカリ溶液を一時貯蔵するためのタンクのような大きな保管設備や計量器具等が不要になり、高価なアルカリ溶液を不使用または使用量を大幅に少なくしてジオポリマーコンクリートに用いる材料コストを低減することもできる。この場合、強度の高いジオポリマーコンクリートを生成することができるので、実用化に際して極めて有利である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係るジオポリマー固化体の製造工程を示す図
【
図2】本発明の他の実施形態に係るジオポリマー固化体の製造工程を示す図
【
図3】ジオポリマー固化体の比較例2を示す部分拡大写真
【
図4】ジオポリマー固化体の実施例10を示す部分拡大写真
【
図5】ジオポリマー固化体の実施例11を示す部分拡大写真
【
図6】ジオポリマー固化体の実施例11の他の部分を示す部分拡大写真
【
図8】ジオポリマー固化体の実施例12を示す部分拡大写真
【
図9】ジオポリマー固化体の実施例12の他の部分を示す部分拡大写真
【
図10】ジオポリマー固化体の実施例13を示す部分拡大写真
【
図11】ジオポリマー固化体の実施例13の他の部分を示す部分拡大写真
【
図13】ジオポリマー粉体入り袋体を二つ重ねた状態を示す写真
【
図14】袋体内のジオポリマー固化体の断面を示す写真
【
図15】従来のジオポリマーコンクリートの製造工程を示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は本発明の一実施形態を示すもので、例えば土木、建築等における構造体に用いられるジオポリマー固化体の製造方法を示すものである。
【0020】
本実施形態のジオポリマー固化体は、活性フィラーとアルカリ粉体とを混合してなる粉体混合物に、水または水及び骨材を加えて混合することにより生成される。
【0021】
活性フィラーは、アルカリ活性剤と混合することにより活性化されて固化する粉体であり、例えばフライアッシュ(石炭灰)、メタカオリン、高炉スラグ等、アルカリに活性な非晶質粉体からなる。
【0022】
アルカリ粉体には、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム及び水酸化ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム及び水酸化カリウムの何れかの粉体が用いられ、前記メタケイ酸ナトリウムの平均粒径は1000μm以下、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの平均粒径は5000μm以下である。
【0023】
骨材は、砂、砂利または人工骨材等からなり、粒子の大きさに応じて細骨材と粗骨材に分類される。
【0024】
以下、
図1を参照し、本実施形態におけるジオポリマー固化体の製造方法について説明する。
【0025】
まず、予め工場等で粉体混合物を用意する。この場合、粉体混合物全体におけるナトリウム及びカリウムの合計とアルミニウムとのモル比((Na+K)/Al)が0.5(好ましくは0.7)よりも大きく、ケイ素とアルミニウムとのモル比(Si/Al)が1.8以上とし、水酸化物中のナトリウム及びカリウムの合計とケイ酸含有アルカリ中のナトリウム及びカリウムの合計とのモル比が0.53以下とする。また、活性フィラー全体に対してメタカオリンが質量比率10%以上含まれるようにする。
【0026】
次に、前記粉体混合物を現場に搬入し、ミキサに粉体混合物を投入するとともに(S10)、骨材(細骨材及び粗骨材)を投入し(S11)、空練りする(S12)。続いて、所定量の水(純水)または水(純水)及び骨材をミキサに投入し(S13)、ミキサで練り混ぜることにより(S14)、練混ぜを完了させ(S15)、これを型枠等に注入し、0℃以上80℃以下で養生して硬化させることにより、ジオポリマー固化体が形成される。ここで、前記工程S13で投入される水の量は、ジオポリマー固化体全体における水とアルミナとのモル比(H2O/Al2O3)が13以下となるようにすることが好ましい。また、前記工程S13において、水と少量のアルカリ溶液の混合液を加えるようにしてもよい。
【0027】
このように、本実施形態によれば、活性フィラーとアルカリ粉体とを混合してなる粉体混合物に水または水及び骨材を加えて混合することによりジオポリマー固化体を生成するようにしたので、予め用意した粉体混合物を現場に搬入し、現場で水または水及び骨材を混合することによりジオポリマー固化体を生成することができる。これにより、現場での打設を容易に行うことができるとともに、従来のアルカリ溶液の全部または大部分を「アルカリ粉体と水」に置き換えることにより、水ガラス等のアルカリ溶液を一時貯蔵するためのタンクのような大きな保管設備や計量器具等が不要になり、高価なアルカリ溶液を不使用または使用量を大幅に少なくしてジオポリマーコンクリートに用いる材料コストを低減することもできる。
【0028】
また、粉体混合物のアルカリ粉体に、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム及び水酸化ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム及び水酸化カリウムの何れかの粉体を用いるとともに、粉体混合物全体におけるナトリウム及びカリウムの合計とアルミニウムとのモル比((Na+K)/Al)が0.7よりも大きくなるようにしたので、強度の高いジオポリマーコンクリートを生成することができ、実用化に際して極めて有利である。
【0029】
更に、粉体混合物に骨材を加えて空練りした後、水または水及びアルカリ溶液の混合液を加えて混合するようにしたので、水を加える前の空練りによって粉体混合物のアルカリ粉体が細かく砕かれて比表面積が大きくなり、化学反応速度を大きくすることができる。これにより、アルカリ粉体の水への溶解に要する時間を短縮することができるので、アルカリ溶液をアルカリ粉体と水に置き換えた場合でも、ジオポリマーコンクリートの強度発現性を向上させることができ、養生の手間と時間を大幅に軽減することができる。
【0030】
また、アルカリ粉体のメタケイ酸ナトリウムに平均粒径が1000μm以下の粉体を用いるとともに、アルカリ粉体の水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムに平均粒径が5000μm以下の粉体を用いるようにしたので、練混ぜ中に十分に溶解し、化学反応を促進することができる。
【0031】
更に、粉体混合物全体にケイ素とアルミニウムとのモル比(Si/Al)を1.8以上とすることにより、安定した強度(例えば圧縮強度30Mpa以上)を示す固化体を作製することができる。
【0032】
また、水酸化物中のナトリウム及びカリウムの合計とケイ酸含有アルカリ中のナトリウム及び合計とのモル比を0.53以下とすることにより、安定した強度(例えば圧縮強度30Mpa以上)を示す固化体を作製することができる。
【0033】
この場合、活性フィラー全体に対してメタカオリンが質量比率10%以上含まれるようにしたので、メタカオリンによる強度発現効果を十分に得ることができる。
【0034】
更に、ジオポリマー固化体全体における水とアルミナとのモル比(H2O/Al2O3)を13以下とすることにより、ジオポリマー固化体の圧縮強度を高めることができる。
【0035】
図2は本発明の他の実施形態を示すものであり、粉体混合物に水とアルカリ水溶液の混合液を加えるようにしたものである。アルカリ水溶液にはカリウムを含む常温で低粘性を有するものを用いるとともに、アルカリ粉体中のメタケイ酸ナトリウムに含まれるナトリウムとジオポリマー固化体全体におけるナトリウムとカリウムの合計とのモル比(Na/(Na+K))を0.4以上とし、アルカリ水溶液と粉体混合物全体におけるナトリウム及びカリウムの合計とアルミニウムとのモル比((Na+K)/Al)が1.0以上になるようにする。
【0036】
本実施形態では、前記実施形態と同様、まず、予め工場等で粉体混合物を用意する。この場合、粉体混合物全体におけるナトリウム及びカリウムの合計とアルミニウムとのモル比((Na+K)/Al)が0.5(好ましくは0.7)よりも大きく、ケイ素とアルミニウムとのモル比(Si/Al)が1.8以上とし、水酸化物中のナトリウム及びカリウムの合計とケイ酸含有アルカリ中のナトリウム及びカリウムの合計とのモル比が0.53以下とする。また、活性フィラー全体に対してメタカオリンが質量比率10%以上含まれるようにする。
【0037】
次に、前記粉体混合物を現場に搬入し、ミキサに粉体混合物を投入するとともに(S20)、骨材(細骨材及び粗骨材)を投入し(S21)、空練りする(S22)。続いて、所定量の水(純水)とアルカリ水溶液の混合液、またはこの混合液及び骨材をミキサに投入し(S23)、ミキサで練り混ぜることにより(S24)、練混ぜを完了させ(S25)、これを型枠等に注入し、0℃以上80℃以下で養生して硬化させることにより、ジオポリマー固化体が形成される。ここで、前記工程S23で投入される水の量は、ジオポリマー固化体全体における水とアルミナとのモル比(H2O/Al2O3)が13以下となるようにすることが好ましい。
【0038】
このように、本実施形態では、粉体混合物に水と常温で低粘性を有するアルカリ水溶液の混合液を加えるようにしたので、現場での取扱い性を損なうことがなく、より強度の高いジオポリマー固化体を生成することができる。
【0039】
また、本発明は、第1の実施形態の粉体混合物に、低粘性のアルカリ水溶液と、70vol%以下の非固化状態の固化対象物とを加えてジオポリマー固化体を生成することにより、例えば固化対象物としてのイオン交換樹脂を固化することができる。
【0040】
イオン交換樹脂は、例えば原子力発電所の放射性廃棄物として廃棄されるものであるが、現在は処理方法が確立されておらず、水とともに貯蔵タンクに一時保管されている。また、新規で廃棄されるイオン交換樹脂は、熱処理等による減容のための処理がなされている場合もある。しかしながら、熱処理を前提とせずに廃棄された古いイオン交換樹脂や計画外に廃棄されたイオン交換樹脂は、熱処理や粉砕を行うことができずに貯蔵タンクで保管されている。
【0041】
一方、既存の固化材料であるコンクリートでは、放射線によってコンクリート内の結晶水が分解され、固化材料の健全性が失われるとともに、水素の発生によって安全性が懸念されるため放射性廃棄物としてのイオン交換樹脂を安定化することができない。
【0042】
また、結晶水を含有しないジオポリマーは放射性廃棄物固化材料としては適性があるが、イオン交換樹脂との密着性が悪く、活性フィラーとアルカリ溶液を十分に混錬する必要がある従来の製法では、イオン交換樹脂とジオポリマーが十分に混ざり合わないことや、イオン交換樹脂が含有する水分量が多すぎることが原因で熱処理や粉砕等の処理を行わないイオン交換樹脂を十分に安定化させることができない。
【0043】
そこで、水分とともに貯蔵されているイオン交換樹脂に本発明の粉体混合物と低粘性のアルカリ水溶液を加えてジオポリマー固化体を生成するようにすれば、放射性イオン交換樹脂と一緒に貯蔵されている水分もジオポリマーの原料として利用することができるので、イオン交換樹脂の表面をジオポリマーで満遍なく覆うことができ、熱処理や粉砕等の処理を行わないイオン交換樹脂を十分に安定して固化させることができる。
【0044】
この場合、活性フィラーとアルカリ溶液とを予め混合して生成したジオポリマースラリーをイオン交換樹脂に混合すると、スラリー状のジオポリマーとイオン交換樹脂との密着性が不十分となるが、ジオポリマーの粉体混合物を低粘性のアルカリ水溶液とともにイオン交換樹脂に混合すると、低粘性アルカリ溶液で濡れたイオン交換樹脂にジオポリマー粉体が付着し、良好なジオポリマー固化体が生成される。
【0045】
その際、ジオポリマー粉体と水だけでは反応速度が遅くなるため、低粘性アルカリ水溶液を加えることにより迅速にジオポリマー固化体を生成することができる。本発明のジオポリマーの組成では、メタケイ酸ナトリウムが多く含まれるため、ジオポリマーそのものの水分を十分に減らすことができ、イオン交換樹脂のような固化対象物の固化に極めて有利である。
【0046】
また、粉体混合物に混合するイオン交換樹脂が全体の70vol%を超えると、粉体に対するイオン交換樹脂の分量が過剰になり、ジオポリマー固化体にクラックが生じやすくなるため、イオン交換樹脂は70vol%以下であることが好ましい。
【0047】
尚、前記実施形態では、イオン交換樹脂を固化対象物とした場合を示したが、例えば下水処理や工場廃水処理の際に出る沈殿物、ボイラーやタンクの沈積物、有機物を含む汚泥やヘドロ等の固化処理にも本発明を適用することができる。
【0048】
また、本発明は、第1の実施形態の粉体混合物を水または低粘性のアルカリ水溶液とともに吹き付けることにより、壁面等にジオポリマー固化体を生成することができる。
【0049】
一般に、広い面積への施工や穴の補修施工等に用いられるコンクリートの施工方法として吹付工法が知られている。現在では、水と混合されたポリマーセメントをノズルに送り込みながら圧縮空気とともに吹き付ける、いわゆる湿式吹付工法が広く用いられている。湿式吹付工法は材料を事前に混合するため、材料の品質が安定するというメリットがある。しかしながら、ジオポリマーに適用する場合には可使時間の制約やポンプ内の詰まりのリスクがあることから、長距離輸送が困難であった。特に、トンネル内補修や原子炉内作業では長距離圧送の必要があり、湿式吹付工法では対応が困難であった。
【0050】
そこで、本発明の第1の実施形態の粉体混合物を水または低粘性のアルカリ水溶液とともに吹き付けるようにすれば、事前にジオポリマースラリーの状態に混合せずとも、水または低粘性アルカリ溶液とジオポリマー粉体で原料を供給することができるため、長距離施工が必要な場面で乾式吹付施工に活用することができる。
【0051】
また、本発明は、第1の実施形態の粉体混合物を収容した透水性の袋体を水中に投入するなど、袋体の外部から水を加え、袋体内に水を浸入させてジオポリマー固化体を生成することにより、流水環境においても所望の形状のジオポリマー固化体を生成することができる。
【0052】
一般に、ジオポリマーの構造体を製造する場合は、固化前のスラリー状のジオポリマーを任意の形状の容器または型枠に注入して成型するようにしているが、流水環境ではスラリーが流れて所望の形状を保つことができず、ジオポリマー構造体を製造することが極めて困難であった。
【0053】
そこで、本発明の第1の実施形態の粉体混合物を透水性の袋体に収容して水中に投入し、袋体内に侵入する水を原料として取り入れることにより、袋体によって形状を保持したままジオポリマー固化体を生成することができる。透水性の袋体としては、繊維質のポリエステルまたはポリエチレンからなる袋体や麻袋等を用いることができる。
【0054】
また、粉体混合物を収容した複数の袋体を水中で重ねて配置することにより、各袋体内のジオポリマー組成物同士が袋体を介して結合した状態で固化し、各ジオポリマー詰め袋を互いに接着させることができるので、互いに接着した複数のジオポリマー詰め袋の集合体を形成することができる。
【0055】
これにより、ジオポリマー詰め袋を単体または集合体で用いることにより、例えば水をせき止める土嚢など、流水環境下での各種の用途に適用することができる。
【0056】
ジオポリマー粉体混合物入り袋体を土嚢として用いる場合は、粉体混合物を予め充填した袋体を使用現場に搬入し、または現場で袋体内に粉体混合物を充填した後、現場の水を利用して袋体内の粉体混合物を固化させることができる。この場合、現場に設置した袋体に、散水等により外部から水をかけたり、或いは雨水、流水または水溜まりの水に接触させるようにしてもよい。
【0057】
これにより、水分を含まない粉体混合物を充填した袋体は、土や砂を詰めた従来の土嚢よりも軽量であるため、現場での運搬作業や設置作業における労力を大幅に軽減することができ、水害発生時における浸水対策や工事現場における土砂の遮蔽等に使用する場合に極めて有利である。更に、水分を含んでスラリー状になったジオポリマーは、袋体に充填された状態で自重により上面及び下面が平坦状になりやすいため、複数の袋体を容易に積み重ねることができるとともに、各袋体の隙間も生じにくいという利点がある。
【0058】
また、袋体には不織布または織布を用いることができ、いずれの布であっても、使用する糸の密度を変えることにより、糸間の隙間(通水性)を所望の間隔に設定することができる。即ち、使用する糸の密度を小さくすると袋体内の空気により浮力が生ずるため、水に浮くか否かをコントロールすることができる。また、密度を大きくして袋体の隙間(孔)を大きくすれば、通水が可能であり、流水の影響を低減することができる。また、隙間の大きさによって通水させ且つ粘性のあるジオポリマーの透過を規制することが可能となるので、例えば隙間を大きめにすることにより、通水させつつジオポリマーを染み出させることもできる。これにより、ジオポリマーを袋体から染み出させることで、ジオポリマーの付着強度の高さを活かし、前述したように他の土嚢と接着することができるので、土嚢群の遮水性を高めることができる。尚、袋体内の粉体混合物は固化すれば袋体から漏出することがないので、袋体の開口部は必ずしも封止しておかなくてもよい。
【0059】
更に、例えば粉体混合物を充填した袋体をピンポン玉程度の大きさに形成すれば、高圧空気を流通するチューブ等を用いて大量のジオポリマー入り袋体を連続的に空気搬送することも可能である。この場合、吐出ノズルの先端で袋体の飛翔エネルギーを吸収する装置を設ければ、ノズルから吐出した袋体が飛散しないようにすることができる。
【0060】
また、前記ジオポリマー詰め袋は中身が全て無機物(ジオポリマー固化体)であるため、袋体の材質をガラスクロス(ガラス繊維)等の無機物にすることにより、例えば原子力発電所の廃炉や放射性廃棄物の固化材料として使用する場合など、有機物を使用することのできない場合でも使用することが可能となる。
【0061】
更に、袋体をガラス繊維等のアルカリ可溶性の材質によって形成することにより、袋体を溶解して消滅させることができ、無機物であるジオポリマー固化体のみとして処理することができる。
【0062】
また、前記各実施形態において、活性フィラー及びアルカリ粉体からなる粉体混合物に繊維を混合することにより、クラックの発生を効果的に防止することができる。特に、粉体混合物を水または低粘性のアルカリ水溶液とともに吹き付ける場合は、繊維が混合されていることにより吹付対象物への付着性を向上させることができる。また、混合する繊維としては、金属、有機物、無機繊維(ガラス繊維を含む)等からなる繊維を用いることができ、繊維長の短いものや長いものを用いることができる。
【実施例0063】
[第1の実施例]
以下、本発明の第1の実施例として、粉体混合物に水または低粘性のアルカリ水溶液を混合してジオポリマー固化体生成した実施例1~9及び比較例1を示す。尚、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0064】
[使用材料]
実施例1~9及び比較例1のジオポリマー固化体は、結合材(活性フィラー)にメタカリオン及びシリカフュームを用い、骨材に細骨材及び粗骨材を用いた。
【0065】
また、実施例1~9では、アルカリ粉体としてメタケイ酸ナトリウム及び水酸化ナトリウムを用い、水には純水を用いた。低粘度アルカリ水溶液には、普通アルカリ溶液(固形分55~50wt%のアルカリ水溶液であって、例えば1K珪酸カリの名称で市販されている1号水ガラス(JISK1408))を水で希釈して固形分40wt%以下にしたアルカリ水溶液を用い、実施例9では場合は固形分35wt%のものを用いた。
【0066】
比較例1では、アルカリ溶液として、メタケイ酸ナトリウム及び水酸化ナトリウムを用い、水には純水を用いた。
【0067】
[原子量のモル比]
実施例1~9及び比較例1におけるSi/Alは、実施例1~3、実施例5~9及び比較例1では2.2、実施例4では2.4とした。
【0068】
実施例1~9及び比較例1におけるNa/Alは、実施例1、3、4、6、7、8及び比較例1では1、実施例2では0.6、実施例5では1.1、実施例9では0.3とした。尚、本実施例では、カリウムを含まない活性フィラーを用いているためNa/Alとなるが、カリウムを含む場合は(Na+K)/Alとなる。
【0069】
実施例1~9及び比較例1におけるH2O/Al2O3は、実施例1、4~8では11、実施例2では7.8、実施例3では14、実施例9では6.5、比較例1では10とした。
【0070】
[作製方法1]
実施例1~5、7、9は、以下の工程(1)~(6)に示す方法(粉体混合法)により、加温養生条件の下で作製し、性能試験を行った。
(1)パン型ミキサを用いて、結合材(活性フィラー)とアルカリ固体材料と骨材とを空練りする。
(2)前記工程(1)の粉体混合物と骨材に水を加えて混合する(実施例9では、粉体混合物と骨材に水及び低粘度アルカリ水溶液を加えて混合)。
(3)練り終わったジオポリマーコンクリートをモールドに充填する。
(4)脱気を行う。
(5)恒温器により60℃で68時間の封緘加温養生を行う。
(6)自然冷却の後、試験日まで封緘室温養生を行う。
【0071】
[作製方法2]
実施例6及び8は、以下の工程(1)~(5)に示す方法(粉体混合法)により、常温養生条件の下で作製し、性能試験を行った。
(1)パン型ミキサを用いて、結合材(活性フィラー)とアルカリ固体材料と骨材とを空練りする。
(2)前記工程(1)の粉体混合物と骨材に水を加えて混合する。
(3)練り終わったジオポリマーコンクリートをモールドに充填する。
(4)脱気を行う。
(5)試験日まで封緘室温養生を行う。
【0072】
[作製方法3]
比較例1は、以下の工程(1)~(7)に示す方法(液体混合法)により、加温養生条件の下で作製し、性能試験を行った。
(1)純水にメタケイ酸ナトリウム、水酸化ナトリウムを溶解させ、20℃以下まで冷却する。
(2)スタンドミキサを用いて、上記(1)の冷却アルカリ溶液と結合材(活性フィラー)とを混合する。
(3)パン型ミキサを用いて、上記(2)のジオポリマースラリーと予め空練りした骨材を混合する。
(4)練り終わったジオポリマーコンクリートをモールドに充填する。
(5)脱気を行う。
(6)恒温器により60℃で68時間の封緘加温養生を行う。
(7)自然冷却の後、試験日まで封緘室温養生を行う。
【0073】
[試験結果]
実施例1~9及び比較例1について圧縮強度試験を行った結果を以下の表2及び表3に示す。
【0074】
【0075】
【0076】
試験結果によれば、実施例1、4~9は、常温養生及び加温養生の何れの条件でも材齢10日以下で比較例1とほぼ同等の高強度を発現した。一方、H2O/Al2O3が14の実施例3は、水分量が多い分、他の実施例に比べて強度が低い結果となった。
【0077】
これにより、粉体混合物と骨材に水を加えて混合した実施例1~8と、粉体混合物と骨材に低粘度アルカリ水溶液を加えて混合した実施例9は、アルカリ溶液と結合材(活性フィラー)とを混合して生成したジオポリマースラリーに骨材を加えて混合した比較例1に比べ、いずれも十分な圧縮強度を有する結果が得られた。
【0078】
[第2の実施例]
次に、本発明の第2の実施例として、イオン交換樹脂をジオポリマーで固化した実施例10、11及び比較例2を示す。尚、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0079】
[製造方法]
実施例11、12では、未処理のイオン交換樹脂と水にジオポリマー粉体混合物と第1の実施例と同様の低粘性アルカリ溶液を加えて混合し、型に流入してジオポリマー固化体を生成した。
【0080】
比較例2では、活性フィラーとアルカリ溶液を予め混合して作成したジオポリマースラリーに未処理イオン交換樹脂を入れて混合し、型に流入してジオポリマー固化体を生成した。
【0081】
[原子量のモル比]
実施例10、11及び比較例2におけるSi/Alは2.2とし、固化体全体における(Na+K)/Alは、実施例10及び11では0.8、比較例2では1とした。
【0082】
実施例10及び11における粉体混合物中のNa/Alは0.4、粉体混合物中のNa/固化体全体の(Na+K)は0.5とした。
【0083】
実施例10、11及び比較例2におけるH2O/Al2O3は、実施例10及び11では8.5、比較例2では10とした。
【0084】
[イオン交換樹脂の含有率]
実施例10、11及び比較例2のジオポリマー固化体におけるイオン交換樹脂の含有率は、実施例10では20vol%、実施例11では70vol%、比較例2では16vol%とした。
【0085】
[試験結果]
実施例10、11及び比較例2について目視による外観評価試験を行った結果を以下の表4に示す。
【0086】
【0087】
試験結果によれば、活性フィラーとアルカリ溶液とを予め混合して生成した比較例2では、
図3に示すようにスラリー状態のジオポリマーとイオン交換樹脂との密着性が不十分となり、試験体にクラックが発生した。
【0088】
一方、ジオポリマーの粉体混合物を低粘性のアルカリ水溶液とともにイオン交換樹脂に混合した実施例10及び11では、
図4及び
図5に示すようにジオポリマーとイオン交換樹脂とが良好に密着し、安定したジオポリマー固化体が生成された。この場合、イオン交換樹脂の含有率が70vol%の実施例11では、全体としては安定したジオポリマー固化体が生成されたが、
図6に示すように一部に微小なクラックが発生したため、イオン交換樹脂の含有率を70vol%以下にすれば、常に安定したジオポリマー固化体が生成されることが確認された。
【0089】
[第3の実施例]
次に、本発明の第3の実施例として、粉体混合物を水または低粘性のアルカリ水溶液とともに吹き付ける実施例12及び13を示す。尚、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0090】
[使用材料]
実施例12及び13のジオポリマー粉体には、結合材(活性フィラー)にメタカリオン、フライアッシュ及びシリカフュームを用い、アルカリ粉体には、メタケイ酸ナトリウム及び水酸化ナトリウムを用いた。また、実施例12の液体原料には水(純水)を用い、実施例13の液体原料には、第1の実施例と同様の希釈水酸化ナトリウム水溶液1号からなる低粘度アルカリ水溶液を用いた。
【0091】
[原子量のモル比]
実施例12及び13におけるSi/Alは、実施例12は2.2、実施例13は2.0とした。また、粉体原料における(Na+K)/Alは、実施例12では0.8、実施例13では0.6とした。
【0092】
[試験方法]
実際の乾式吹付工法は、
図7に示すようにジオポリマー粉体混合物を吹付ノズル1に圧送するとともに、吹付ノズル1に接続された液体管路2から水またはアルカリ溶液を吹付ノズル1内のジオポリマー粉体混合物に供給して混合し、吹付ノズル1から吹き付けるようになっているが、本試験では以下の方法により、乾式吹付工法と同様の状態を再現した模擬的な試験を行った。
【0093】
まず、鉄板の上に、水または低粘性アルカリ溶液を薄く伸ばして塗布し、その上にジオポリマー粉体混合物を均一にふりかける。これを2回ほど繰り返した後、上面に錘を載せて圧力を付与する(吹き付けられた際の圧力の再現)。これを常温保管し、鉄板の表面に板状のジオポリマー固化体が形成されるか否かにより乾式吹付工法への適性の有無を確認した。
【0094】
[試験結果]
実施例12及び13についての試験結果を以下の表5に示す。
【0095】
【0096】
試験結果によれば、
図8乃至
図11に示すように実施例12及び13のいずれも鉄板の表面で板状のジオポリマー固化体が形成され、ジオポリマー化することが確認された。従って、本発明の粉体混合物を水または低粘性のアルカリ水溶液とともに吹き付けることにより、乾式吹付工法が実現可能であることが確認された。
【0097】
[第4の実施例]
次に、本発明の第4の実施例として、粉体混合物を袋体に収容して水中に投入した実施例14を示す。尚、本発明はこの実施例に限定されない。
【0098】
[使用材料]
実施例14のジオポリマー粉体には、結合材(活性フィラー)にメタカリオン、フライアッシュ及びシリカフュームを用い、アルカリ粉体には、メタケイ酸ナトリウム及び水酸化ナトリウムを用いた。また、ジオポリマー粉体を収容する袋体には透水性を有する繊維質のポリエステルからなる袋を用いた。
【0099】
[原子量のモル比]
実施例14における粉体原料のSi/Alは2.2、粉体原料における(Na+K)/Alは1とした。
【0100】
[試験方法]
図12に示すようにジオポリマー粉体を袋体に収容するとともに、
図13に示すようにジオポリマー粉体入り袋体を二つ重ねて水中に静置し、96時間が経過した後、ジオポリマーの固化及び袋体同士の接着の有無を確認した。
【0101】
[試験結果]
実施例14についての試験結果を以下の表6に示す。
【0102】
【0103】
試験結果によれば、袋体内のジオポリマーが固化するとともに、袋体同士が接着していることが確認された。また、袋体内のジオポリマー固化体の断面を確認したところ、
図14に示すようにジオポリマー固化体の内部まで固化していることが確認された。