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特開2024-35206製剤の品質予測装置および製剤組成作成装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035206
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】製剤の品質予測装置および製剤組成作成装置
(51)【国際特許分類】
   G16C 20/30 20190101AFI20240306BHJP
   A61K 47/00 20060101ALI20240306BHJP
   G01N 33/15 20060101ALN20240306BHJP
【FI】
G16C20/30
A61K47/00
G01N33/15 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023140145
(22)【出願日】2023-08-30
(31)【優先権主張番号】P 2022138276
(32)【優先日】2022-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022154732
(32)【優先日】2022-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000115991
【氏名又は名称】ロート製薬株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521069065
【氏名又は名称】Quantum Analytics合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉村 昌徳
(72)【発明者】
【氏名】久保 大空
(72)【発明者】
【氏名】堀田 敏行
(72)【発明者】
【氏名】田村 大介
(72)【発明者】
【氏名】古屋 俊和
【テーマコード(参考)】
4C076
【Fターム(参考)】
4C076DD00
4C076EE00
4C076FF36
(57)【要約】
【課題】新しく設計した製剤の保存効力を推定する製剤の品質予測装置を提供する。
【解決手段】品質予測装置1は、製剤の組成を構成する1種以上の成分データを少なくとも含む教師データを用いて知的情報処理技術によって作成された保存効力判定学習モデル11を記憶する学習モデル記憶部10と、評価対象の製剤の組成を構成する1つ以上の成分データを入力データとして保存効力判定学習モデル11に入力することで、保存効力を推定し出力する保存効力推定部12とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製剤の組成を構成する可能性のある1種以上の成分データを少なくとも含む教師データを用いて知的情報処理技術によって作成された品質判定学習モデルを記憶する学習モデル記憶部と、
評価対象の製剤の組成を構成する可能性のある1つ以上の成分データを少なくとも入力データとして前記品質判定学習モデルに入力することで、製剤の品質を推定し出力する品質推定部と、を有する、
品質予測装置。
【請求項2】
製剤の組成を構成する可能性のある1種以上の成分データを少なくとも含む教師データを用いて知的情報処理技術によって作成された品質判定学習モデルを1種以上記憶する学習モデル記憶部と、
製剤の種別と、該製剤の組成を構成する可能性のある1種以上の成分データを少なくとも含む成分基礎データを入力データとして、機械学習によって作成された学習モデルに入力することで、製剤の組成候補を設計し出力する組成設計部と、
前記製剤の組成候補を入力データとして、前記品質判定学習モデルに入力することで、製剤の品質を推定し、該品質の推定結果が適合である場合に、品質適合組成候補として出力する品質適合組成候補出力部と、
を有する、
製剤組成作成装置。
【請求項3】
2種以上の品質判定学習モデルのうちから1種の品質判定学習モデルを選択する選択部を有し、
前記品質適合組成候補出力部は、前記製剤の組成候補を入力データとして、選択された品質判定学習モデルに入力することで、製剤の品質を推定し、該品質の推定結果が適合である場合に、品質適合組成候補として出力する、
請求項2に記載の製剤組成作成装置。
【請求項4】
前記組成設計部で出力された製剤の組成候補から、前記各成分の配合量が所定の許容範囲内に合致する前記製剤の組成候補のみを抽出する抽出部を有し、
前記品質適合組成候補出力部は、前記抽出部から抽出された前記製剤の組成候補を入力データとして、前記品質判定学習モデルに入力することで、製剤の品質を推定し、該品質の推定結果が適合である場合に、品質適合組成候補として出力する、
請求項2に記載の製剤組成作成装置。
【請求項5】
前記品質適合組成候補出力部から出力された前記品質適合組成候補の類似度を演算する類似度演算部を有する、
請求項2に記載の製剤組成作成装置。
【請求項6】
前記品質適合組成候補出力部は、
前記組成設計部から出力された前記製剤の組成候補における各成分の配合量が、所定の許容範囲に合致する該製剤の組成候補を入力データとする、
請求項2に記載の製剤組成作成装置。
【請求項7】
前記組成設計部は、予め設定された制限タイム以内で前記製剤の組成候補を出力する、および/または、
前記品質適合組成候補出力部は、予め設定された制限タイム以内で前記品質適合組成候補を出力する、
請求項2に記載の製剤組成作成装置。
【請求項8】
品質予測プログラムであって、
1つ以上のプロセッサーあるいは情報処理装置に、
製剤の組成を構成する可能性のある1種以上の成分データを少なくとも含む教師データを用いて知的情報処理技術によって作成された品質判定学習モデルに、評価対象の製剤の組成を構成する1つ以上の成分データを少なくとも入力することで、製剤の品質を推定し出力する品質推定ステップを、実現させるためのプログラム。
【請求項9】
製剤組成作成プログラムであって、
1つ以上のプロセッサーあるいは情報処理装置に、
2種以上の品質判定学習モデルのうちから1種の品質判定学習モデルを選択する選択ステップと、
製剤の種別と、該製剤の組成を構成する可能性のある1種以上の成分データを少なくとも含む成分基礎データを入力データとして、機械学習によって作成された学習モデルに入力することで、製剤の組成候補を設計し出力する組成設計ステップと、
前記組成設計ステップで出力された製剤の組成候補から、前記各成分の配合量が所定の許容範囲内に合致する前記製剤の組成候補のみを抽出する抽出ステップと、
前記抽出ステップで抽出された前記製剤の組成候補を入力データとして、選択された品質判定学習モデルに入力することで、製剤の品質を推定し、該品質の推定の結果が適合である場合に、品質適合組成候補として出力する品質適合組成候補出力ステップと、
を実現させるためのプログラム。
【請求項10】
前記製剤組成作成プログラムは、1つ以上のプロセッサーあるいは情報処理装置に、
前記品質適合組成候補出力ステップで出力された前記品質適合組成候補の類似度を演算する類似度演算ステップをさらに実現させるための、請求項9に記載のプログラム。
【請求項11】
前記品質適合組成候補出力ステップは、
前記組成設計ステップで出力された前記製剤の組成候補における各成分の配合量が、所定の許容範囲に合致する該製剤の組成候補を入力データとする、
請求項9または10に記載のプログラム。
【請求項12】
前記組成設計ステップは、予め設定された制限タイム以内で前記製剤の組成候補を出力する、および/または、
前記品質適合組成候補出力ステップは、予め設定された制限タイム以内で前記品質適合組成候補を出力する、
請求項9または10に記載のプログラム。
【請求項13】
製剤組成作成方法であって、
1つ以上のプロセッサーあるいは情報処理装置で実行され、
2種以上の品質判定学習モデルのうちから1種の品質判定学習モデルを選択する選択ステップと、
製剤の種別と、該製剤の組成を構成する可能性のある1種以上の成分データを少なくとも含む成分基礎データを入力データとして、機械学習によって作成された学習モデルに入力することで、製剤の組成候補を設計し出力する組成設計ステップと、
前記組成設計ステップで出力された製剤の組成候補から、前記各成分の配合量が所定の許容範囲内に合致する前記製剤の組成候補のみを抽出する抽出ステップと、
前記抽出ステップで抽出された前記製剤の組成候補を入力データとして選択された上記品質判定学習モデルに入力することで、製剤の品質を推定し、該品質の推定の結果が適合である場合に、品質適合組成候補として出力する品質適合組成候補出力ステップと、
を含む、方法。
【請求項14】
製剤組成作成方法は、
前記品質適合組成候補出力ステップで出力された前記品質適合組成候補の類似度を演算する類似度演算ステップを、さらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記請求項13に記載の製剤組成作成方法を実行する工程と、
前記工程で出力された品質適合組成候補の組成に基づいて組成物を製造する工程と、
を含む組成物を製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製剤の品質予測装置および製剤組成作成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製剤の開発においては、製品開封後を含め、お客様が、安心・安全に使用できるよう、製剤の特性や使用環境に合わせて、十分な防腐効果を有していることが必要であるため、製品は、開発段階における評価の一つとしてその製剤が有する防腐効果を確認した上で販売されている。防腐効果を評価するための試験としては、実際に微生物(細菌や真菌等)を、一定量製剤に添加し、その数が、一定の基準に沿って減少するかを評価する試験が一般的に採用されており(保存効力試験)、該試験においては、菌を添加した製剤の一定期間の保管や、保管後の製剤中における菌数評価のための培養等に一定以上の期間を要する。
【0003】
特許文献1は、安全性評価システムを開示する。このシステムでは、特定の安全性(HPT,LLNA,反復投与毒性等)の予測モデルを開発していき、化粧品素材の安全性保証を網羅する為に必要な全ての項目についての予測モデルを集めることで、化粧品素材の安全性保証を網羅することを目的としている。感作性(LLNA)予測モデルでは、評価試験ではマウスを使用し、構造の判明している素材ごとの感作陽性データを使用する。刺激性(HPT)予測モデルは、構造の判明している素材ごとの刺激陽性データを使用する。反復投与毒性予測モデルは、反復経口投与毒性試験を使用する。3つのモデルでの段階的評価をしている。
特許文献2は、ディープラーニングを活用した飲食品の品質予測方法を開示する。特許文献2は、機器分析結果と官能評価結果とを結びつける解釈が不十分であったことから、ディープラーニングによる品質予測を採用することを提案している。
特許文献3は、飲食品中での微生物の生育性を予測する方法を開示している。特許文献3は、飲食品について成分分析値を定量データとして取得し、さらに微生物の生育性の有無を微生物の増殖有または微生物の増殖無のいずれかの定性データとして取得し、取得した両データを判別分析法により解析し、飲食品分析値から微生物の生育性を予測するための予測モデルを構築する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5512077号
【特許文献2】特開2018-18354号公報
【特許文献3】特開2007-312738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の通り、保存効力試験では一定以上の期間を要するためスピーディな製剤開発を目指す場合においては、その妨げとなり得る。したがって、製剤の組成を作成した際に、ほぼ同時に保存効力の適否について判断ができることは、製品の開発スピードを高める観点から求められている。
特許文献1では3つのモデルを使用して判定していて複雑であり、保存効力に絞った簡便な方法が求められる。また、特許文献1および3は、複数成分の組合せによって生じる影響を考慮した、製剤全体としての保存効力の判定を行う方法を開示してはいない。
【0006】
また、医薬品の製剤開発においては、医薬品製造販売指針に準拠する必要があるため任意の有効成分の経時的安定性も重要である。
【0007】
本開示の目的は、新しく設計した製剤の保存効力や有効成分の安定性などの製剤の品質を予測するための品質予測装置を提供する。
他の開示の目的は、指定した保存効力のレベルや有効成分の安定性のレベルなどを有する処方を自動的に設計する製剤組成作成装置を提供する。
他の開示の目的は、品質予測の工程を含む、製剤を製造する方法を提供する。
他の開示の目的は、製剤組成作成の工程を含む、製剤を製造する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の製剤の品質予測装置は、
製剤の組成を構成する可能性のある1種以上の成分データを少なくとも含む教師データを用いて知的情報処理技術によって作成された品質判定学習モデルを記憶する学習モデル記憶部と、
評価対象の製剤の組成を構成する可能性のある1つ以上の成分データを少なくとも入力データとして前記品質判定学習モデルに入力することで、製剤の品質を推定し出力する品質推定部と、を有する。
前記品質推定部は、2種以上の品質判定学習モデルのうちから選択された1種または2種以上の品質判定学習モデルを使用してもよい。
前記品質予測装置または前記品質推定部は、
2種以上の品質判定学習モデルのうちから1種または2種以上の品質判定学習モデルを選択する選択部を有し、
前記品質推定部は、前記選択部で選択された1種または2種以上の品質判定学習モデルを使用してもよい。
前記品質推定部は、2種以上の品質判定学習モデルのすべてを使用し、それぞれで製剤の品質を推定し出力してもよい。
【0009】
本開示の製剤の品質予測方法は、
1つ以上のプロセッサーあるいは情報処理装置によって実行される製剤の品質予測方法であって、
製剤の組成を構成する可能性のある1種以上の成分を少なくとも含む教師データを用いて知的情報処理技術によって作成された品質判定学習モデルに、評価対象の製剤の組成を構成する1つ以上の成分データを少なくとも入力することで、製剤の品質を推定し出力する品質推定ステップを含む。
【0010】
本開示の製剤の品質予測プログラムは、
1つ以上のプロセッサーあるいは情報処理装置に、
製剤の組成を構成する可能性のある1種以上の成分を少なくとも含む教師データを用いて知的情報処理技術によって作成された品質判定学習モデルに、評価対象の製剤の組成を構成する1つ以上の成分データを少なくとも入力することで、製剤の品質を推定し出力する品質推定ステップを、実現させるためのプログラムである。
【0011】
別の開示の製剤組成作成装置は、
製剤の組成を構成する可能性のある1種以上の成分データを少なくとも含む教師データを用いて知的情報処理技術によって作成された品質判定学習モデルを1種以上記憶する学習モデル記憶部と、
2種以上の品質判定学習モデルのうちから1種または2種以上の品質判定学習モデルを選択する選択部と、
製剤の種別と、該製剤の組成を構成する可能性のある1種以上の成分データを少なくとも含む成分基礎データを入力データとして、機械学習によって作成された学習モデル(生成系AIモデル)に入力することで、製剤の組成候補を設計し出力する組成設計部と、
前記組成設計部で出力された製剤の組成候補から、前記各成分の配合量が所定の許容範囲内に合致する前記製剤の組成候補のみを抽出する抽出部と、
前記抽出部から抽出された前記製剤の組成候補を入力データとして選択された上記品質判定学習モデルに入力することで、製剤の品質を推定し、該品質の推定結果が適合である場合に、品質適合組成候補として出力する品質適合組成候補出力部と、を有していてもよい。
前記製剤組成作成装置は、
前記品質適合組成候補出力部から出力された前記品質適合組成候補の類似度(例えば、予め設定された基本組成との類似度)を演算する類似度演算部をさらに有していてもよい。
前記品質適合組成候補出力部は、前記抽出部から抽出された前記製剤の組成候補を入力データとして、すべての品質判定学習モデルのそれぞれに入力することで、製剤の品質を推定し、該品質の推定結果が適合である場合に、品質適合組成候補として出力してもよい。この場合、選択部の機能が省略されてもいてもよい。選択されたモデルを優先的に実行してもよく、品質適合組成候補の出力結果において、使用されたモデルの明示と、他との優劣の情報もさらに出力してもよい。
【0012】
別の開示の製剤組成作成方法は、
1つ以上のプロセッサーあるいは情報処理装置で実行され、
2種以上の品質判定学習モデルのうちから1種の品質判定学習モデルを選択する選択ステップと、
製剤の種別と、該製剤の組成を構成する可能性のある1種以上の成分データを少なくとも含む成分基礎データを入力データとして、機械学習によって作成された学習モデル(生成系AIモデル)に入力することで、製剤の組成候補を設計し出力する組成設計ステップと、
前記組成設計ステップで出力された製剤の組成候補から、前記各成分の配合量が所定の許容範囲内に合致する前記製剤の組成候補のみを抽出する抽出ステップと、
前記抽出ステップで抽出された前記製剤の組成候補を入力データとして選択された上記品質判定学習モデルに入力することで、製剤の品質を推定し、該品質の推定の結果が適合である場合に、品質適合組成候補として出力する品質適合組成候補出力ステップと、を含んでいてもよい。
前記製剤組成作成方法は、
前記品質適合組成候補出力ステップで出力された前記品質適合組成候補の類似度(例えば、予め設定された基本組成との類似度)を演算する類似度演算ステップをさらに含んでいてもよい。
前記品質適合組成候補出力ステップにおいて、前記抽出された前記製剤の組成候補を入力データとして、すべての品質判定学習モデルのそれぞれに入力することで、製剤の品質を推定し、該品質の推定結果が適合である場合に、品質適合組成候補として出力してもよい。この場合、選択ステップが省略されてもいてもよい。選択された学習モデルを優先的に実行してもよく、品質適合組成候補の出力結果において、使用された学習モデルの明示と、他との優劣の情報もさらに出力してもよい。
【0013】
別の開示の製剤組成作成プログラム(D0)は、
1つ以上のプロセッサーあるいは情報処理装置に、
2種以上の品質判定学習モデルのうちから1種の品質判定学習モデルを選択する選択ステップと、
製剤の種別と、該製剤の組成を構成する可能性のある1種以上の成分データを少なくとも含む成分基礎データを入力データとして、機械学習によって作成された学習モデル(生成系AIモデル)に入力することで、製剤の組成候補を設計し出力する組成設計ステップと、
前記組成設計ステップで出力された製剤の組成候補から、前記各成分の配合量が所定の許容範囲内に合致する前記製剤の組成候補のみを抽出する抽出ステップと、
前記抽出ステップで抽出された前記製剤の組成候補を入力データとして選択された上記品質判定学習モデルに入力することで、製剤の品質を推定し、該品質の推定の結果が適合である場合に、品質適合組成候補として出力する品質適合組成候補出力ステップと、を実現させるためのプログラムであってもよい。
前記製剤組成作成プログラム(D0)は、
前記品質適合組成候補出力ステップで出力された前記品質適合組成候補の類似度(例えば、予め設定された基本組成との類似度)を演算する類似度演算ステップをさらに実現させるためのプログラムであってもよい。
前記品質適合組成候補出力ステップにおいて、前記抽出された前記製剤の組成候補を入力データとして、すべての品質判定学習モデルのそれぞれに入力することで、製剤の品質を推定し、該品質の推定結果が適合である場合に、品質適合組成候補として出力してもよい。この場合、選択ステップが省略されてもいてもよい。選択された学習モデルを優先的に実行してもよく、品質適合組成候補の出力結果において、使用された学習モデルの明示と、他との優劣の情報もさらに出力してもよい。
【0014】
前記品質は、例えば、保存効力、任意の有効成分の経時的安定性、感作性や刺激性などの安全性が挙げられる。特に断らない限り以下同様である。
前記品質判定学習モデルは、教師データとして、さらに、保存効力試験、任意の有効成分の経時的安定性試験、感作性試験や刺激性試験などの安全性試験のうち1種または2種以上の試験の判定結果を含んでいてもよい。特に断らない限り以下同様である。
教師データの種類に対応して作成された品質判定学習モデルは、入力データが入力されることで、例えば、保存効力、任意の有効成分の経時的安定性、感作性や刺激性などの安全性試験のうち1種または2種以上の品質のレベルを推定し出力してもよい。
品質判定学習モデルは、保存効力試験、任意の有効成分の経時的安定性試験、感作性試験、刺激性試験の判定結果を教師データに含み、品質の推定としてもこれらすべての項目の品質を推定してもよい。
組成中に複数の有効成分が含まれる場合に、任意の1つあるいは2つ以上の有効成分の経時的安定性を評価する有効成分経時安定性判定学習モデルが、1つ以上作成され、記憶部に保存されていてもよい。
【0015】
他の開示の製剤の品質予測装置(A)は、
製剤の組成を構成する可能性のある1種以上の成分データを少なくとも含む教師データを用いて知的情報処理技術によって作成された保存効力判定学習モデルおよび/または有効成分経時安定性判定学習モデルを少なくとも記憶する学習モデル記憶部と、
評価対象の製剤の組成を構成する可能性のある1つ以上の成分データを少なくとも入力データとして前記保存効力判定学習モデルおよび/または前記有効成分経時安定性判定学習モデルに少なくとも入力することで、保存効力および/または有効成分経時安定性を少なくとも推定し出力する品質推定部と、を有する。
前記品質推定部は、前記保存効力判定学習モデルおよび前記有効成分経時安定性判定学習モデルのうちのいずれかを選択してもよい。
前記品質予測装置(A)または前記品質推定部は、
前記保存効力判定学習モデルおよび前記有効成分経時安定性判定学習モデルのうちのいずれかを選択する選択部を有し、
前記品質推定部は、前記選択部で選択された学習モデルを使用してもよい。
前記品質推定部は、学習モデルのすべてを使用し、それぞれの品質を推定し出力してもよい。
【0016】
別の開示の製剤組成作成装置(B0)は、
製剤の組成を構成する可能性のある1種以上の成分データを少なくとも含む教師データを用いて知的情報処理技術によって作成された保存効力判定学習モデルおよび有効成分経時安定性判定学習モデルを少なくとも記憶する学習モデル記憶部と、
前記保存効力判定学習モデルおよび前記有効成分経時安定性判定学習モデルのうちのいずれかを選択する選択部と、
製剤の種別と、該製剤の組成を構成する可能性のある1種以上の成分データを少なくとも含む成分基礎データを入力データとして、機械学習によって作成された学習モデル(生成系AIモデル)に入力することで、製剤の組成候補を設計し出力する組成設計部と、
前記組成設計部で出力された製剤の組成候補から、前記各成分の配合量が所定の許容範囲内に合致する前記製剤の組成候補のみを抽出する抽出部と、
前記抽出部から抽出された前記製剤の組成候補を入力データとして選択された学習モデルに入力することで、品質を推定し、該品質の結果が適合である場合に、品質適合組成候補として出力する品質適合組成候補出力部と、を有していてもよい。
前記製剤組成作成装置(B0)は、
前記品質適合組成候補出力部から出力された前記品質適合組成候補の類似度(例えば、予め設定された基本組成との類似度)を演算する類似度演算部をさらに有していてもよい。
前記品質適合組成候補出力部は、学習モデルのすべてを使用し、それぞれの品質を推定し、該品質の結果が適合である場合に、品質適合組成候補として出力してもよい。この場合選択部の機能は省略されてもよい。
【0017】
別の開示の製剤組成作成方法(BB0)は、
1つ以上のプロセッサーあるいは情報処理装置で実行され、
保存効力判定学習モデルおよび有効成分経時安定性判定学習モデルのうちのいずれかを選択する選択ステップと、
製剤の種別と、該製剤の組成を構成する可能性のある1種以上の成分データを少なくとも含む成分基礎データを入力データとして、機械学習によって作成された学習モデル(生成系AIモデル)に入力することで、製剤の組成候補を設計し出力する組成設計ステップと、
前記組成設計ステップで出力された製剤の組成候補から、前記各成分の配合量が所定の許容範囲内に合致する前記製剤の組成候補のみを抽出する抽出ステップと、
前記抽出ステップで抽出された前記製剤の組成候補を入力データとして選択された学習モデルに入力することで、品質を推定し、該品質の結果が適合である場合に、品質適合組成候補として出力する品質適合組成候補出力ステップと、を含んでいてもよい。
前記製剤組成作成方法(BB0)は、
前記品質適合組成候補出力ステップで出力された前記品質適合組成候補の類似度(例えば、予め設定された基本組成との類似度)を演算する類似度演算ステップをさらに含んでいてもよい。
前記品質適合組成候補出力ステップにおいて、学習モデルのすべてを使用し、それぞれの品質を推定し、該品質の結果が適合である場合に、品質適合組成候補として出力してもよい。この場合選択ステップは省略されてもよい。
【0018】
別の開示の製剤組成作成プログラム(D0)は、
1つ以上のプロセッサーあるいは情報処理装置に、
保存効力判定学習モデルおよび前記有効成分経時安定性判定学習モデルのうちのいずれかを選択する選択ステップと、
製剤の種別と、該製剤の組成を構成する可能性のある1種以上の成分データを少なくとも含む成分基礎データを入力データとして、機械学習によって作成された学習モデル(生成系AIモデル)に入力することで、製剤の組成候補を設計し出力する組成設計ステップと、
前記組成設計ステップで出力された製剤の組成候補から、前記各成分の配合量が所定の許容範囲内に合致する前記製剤の組成候補のみを抽出する抽出ステップと、
前記抽出ステップで抽出された前記製剤の組成候補を入力データとして選択された学習モデルに入力することで、品質を推定し、該品質の結果が適合である場合に、品質適合組成候補として出力する品質適合組成候補出力ステップと、を実現させるためのプログラムであってもよい。
前記製剤組成作成プログラム(D0)は、
前記品質適合組成候補出力ステップで出力された前記品質適合組成候補の類似度(例えば、予め設定された基本組成との類似度)を演算する類似度演算ステップをさらに実現させるためのプログラムであってもよい。
前記品質適合組成候補出力ステップにおいて、学習モデルのすべてを使用し、それぞれの品質を推定し、該品質の結果が適合である場合に、品質適合組成候補として出力してもよい。この場合選択ステップは省略されてもよい。
【0019】
別の開示の製剤組成作成装置(B1)は、
製剤の種別と、該製剤の組成を構成する可能性のある1種以上の成分データを少なくとも含む成分基礎データを記憶する成分基礎データ記憶部と、
前記製剤の組成を設計するための設計条件を設定する設計条件設定部と、
前記設計条件に合致するあるいは前記設計条件に拘束されない前記成分基礎データを入力データとして、機械学習によって作成された学習モデル(生成系AIモデル)に入力することで、製剤の組成候補を設計し出力する組成設計部と、
前記組成設計部から出力された前記製剤の組成候補を入力データとして上記品質判定学習モデル(例えば、保存効力判定学習モデル、有効成分経時安定性判定学習モデル)に入力することで、品質(例えば、保存効力、安定性)を推定し、該品質の結果が適合である場合に、品質適合組成候補として出力する品質適合組成候補出力部と、
を有する。
前記成分基礎データは、さらに、前記成分データの配合量の上下限閾値データを含んでいてもよい。
前記品質判定学習モデルは、同じ機械学習のアルゴリズムを使用して作成された1種以上の学習モデルを含んでいてもよく、異なる機械学習のアルゴリズムを使用して作成された1種以上の学習モデルを含んでいてもよい。
前記品質適合組成候補出力部は、2種以上の品質判定学習モデルのうちから選択された1種の品質判定学習モデルを使用してもよい。
前記製剤組成作成装置(B1)または前記品質適合組成候補出力部は、
2種以上の品質判定学習モデルのうちから1種の品質判定学習モデルを選択する選択部を有し、
前記品質適合組成候補出力部は、前記選択部で選択された1種の品質判定学習モデルを使用してもよい。
前記品質適合組成候補出力部は、2種以上の品質判定学習モデルのすべてを使用し、それぞれで品質を推定してもよい。
【0020】
前記品質適合組成候補出力部は、
前記組成設計部から出力された前記製剤の組成候補における各成分の配合量が、所定の許容範囲(任意の数値でもよく、任意の数値範囲でもよい。)に合致する該製剤の組成候補を入力データとしてもよい。
前記所定の許容範囲は、各成分で設定される上限値および下限値、中央値およびその中央値を基準とする予め設定された上下限値などであってもよい。これらのデータは手動入力されてもよく、外部装置から取得されてもよい。
前記製剤組成作成装置(B1)または前記品質適合組成候補出力部は、
各成分の配合量の所定の許容範囲を取得する取得部と、
前記取得部で得られた前記各成分の配合量の所定の許容範囲に合致する前記製剤の組成候補のみを抽出する抽出部と、を有し、
前記品質適合組成候補出力部は、前記抽出部で得られた前記各成分の配合量の所定の許容範囲に合致する前記製剤の組成候補のみを入力データとしてもよい。
【0021】
前記組成設計部は、予め設定された制限タイム以内で前記製剤の組成候補を出力してもよい。制限タイムを超えた場合に、組成設計部の機能が停止し、組成候補の出力は停止する。
前記品質適合組成候補出力部は、予め設定された制限タイム以内で前記品質適合組成候補を出力してもよい。制限タイムを超えた場合に、品質適合組成候補出力部の機能が停止し、品質適合組成候補の出力は停止する。
制限タイムの使用は、すべてにおいて実行されてもよく、組成設計の実行時に任意に指定されて実行されてもよい。
【0022】
前記品質適合組成候補出力部は、品質(例えば、保存効力、安定性)の結果が適合でない場合に、品質不適合組成候補として出力してもよい。
前記品質適合組成候補出力部は、品質(例えば、保存効力、安定性)の結果が準適合あるいは準不適合である場合に、品質準適合組成候補あるいは準不適合組成候補として出力してもよい。適合不適合を4分類として出力する場合に、適合度の大小関係として、適合>準適合>準不適合>不適合となる。
前記製剤組成作成装置は、さらに、
前記品質適合組成候補出力部から出力された、前記品質適合組成候補を、予め設定されている合格条件と比較し、合格の可能性を判定し、合格組成候補を出力する合格判定部を有していてもよい。
前記製剤組成作成装置は、さらに、
前記品質適合組成候補出力部から出力された前記品質適合組成候補の類似度、および/または、前記合格判定部から出力された合格組成候補の類似度(例えば、予め設定された基本組成との類似度)を演算する類似度演算部を有していてもよい。
【0023】
別の開示の製剤組成作成装置(B2)は、
製剤の種別と、該製剤の組成を構成する可能性のある1種以上の成分データを少なくとも含む成分基礎データを記憶する成分基礎データ記憶部と、
前記製剤の組成を設計するための設計条件を設定する設計条件設定部と、
前記設計条件に合致するあるいは前記設計条件に拘束されない前記成分基礎データを入力データとして、機械学習によって作成された学習モデル(生成系AIモデル)に入力することで、製剤の組成候補を設計し出力する組成設計部と、
前記組成設計部から出力された前記製剤の組成候補を、予め設定されている合格条件と比較し、合格の可能性を判定し、合格組成候補を出力する合格判定部を有していてもよい。
前記製剤組成作成装置は、
前記組成設計部から出力された前記製剤の組成候補の類似度、および/または、前記合格判定部から出力された合格組成候補の類似度(例えば、予め設定された基本組成との類似度)を演算する類似度演算部をさらに有していてもよい。
前記組成設計部は、予め設定された処理タイム以内で前記製剤の組成候補を出力してもよい。処理タイムを超えた場合に、組成設計部の機能が停止し、組成候補の出力は停止する。
前記成分基礎データは、さらに、前記成分データの配合量の上下限閾値データを含んでいてもよい。
【0024】
前記設計条件設定部は、設計条件を入力する入力手段で構成されていてもよく、外部装置から取得(受信など)する受信手段で構成されていてもよく、予めメモリに保存されている設計条件データから任意の設計条件を選択する構成でもよい。
前記設計条件設定部は、製剤の種別、組成に含ませる成分の種類(例えば、有効成分、安定化剤、防腐剤、保存剤など)、該種類のうち何種類まで選択できるとするか、該種類に分類される成分を何種類まで選択できるとするか、該成分の配合量を固定値とするか可変とするかなどを設定してもよい。前記設計条件設定部は、成分の配合量を可変とする場合に、数値の1桁、小数点第1位、第2位などのいずれかの桁単位で可変になるように設定してもよい。
前記設計条件設定部は、製剤(剤型の種類も含む)の有効成分を製品コンセプト(例えば、ドライアイ用点眼剤、眼精疲労・疲れ目用点眼剤、アレルギー用点眼剤、抗菌用点眼剤など)に合わせて設定できるように構成されていてもよい。前記設計条件設定部は、配合させたい有効成分に優先度を設定できるように構成されていてもよい。前記設計条件設定部は、製剤中の添加物を製品コンセプト(滞留性の強弱、清涼感の強弱、低刺激型、防腐剤無添加など)に合わせて選択できるように構成されていてもよい。
【0025】
前記合格条件としては、例えば、製剤の保存効力以外の品質条件、製剤の効果に基づく条件、過去販売した製剤の組成データに基づく条件、過去販売に至らなかった製剤の組成データに基づく条件であってもよい。
【0026】
他の本開示の製剤の品質予測方法(AA)は、1つ以上のプロセッサーあるいは情報処理装置によって実行され、
製剤の組成を構成する可能性のある1種以上の成分を少なくとも含む教師データを用いて知的情報処理技術によって作成された品質判定学習モデル(例えば、保存効力判定学習モデル、有効成分経時安定性判定学習モデル)に、評価対象の製剤の組成を構成する1つ以上の成分データを少なくとも入力することで、品質(例えば、保存効力、安定性)を推定し出力する品質推定ステップを含む。
前記品質推定ステップにおいて、2種以上の品質判定学習モデルのうちから選択された1種の品質判定学習モデルを使用してもよい。
前記品質予測方法(AA)または前記品質推定ステップは、
2種以上の品質判定学習モデルのうちから1種の品質判定学習モデルを選択する選択ステップを有し、
前記品質推定ステップは、前記選択ステップで選択された1種の品質判定学習モデルを使用してもよい。
前記品質推定ステップは、2種以上の品質判定学習モデルのすべてを使用し、それぞれで品質を推定し出力してもよい。
【0027】
別の開示の製剤組成作成方法(BB1)は、1つ以上のプロセッサーあるいは情報処理装置によって実行され、
製剤の種別と、該製剤の組成を構成する可能性のある1種以上の成分データを少なくとも含む成分基礎データが成分基礎データ記憶部に記憶されており、
前記製剤の組成を設計するための設計条件を設定する設計条件設定ステップと、
前記設計条件に合致するあるいは前記設計条件に拘束されない前記成分基礎データを入力データとして、機械学習によって作成された学習モデル(生成系AIモデル)に入力することで、製剤の組成候補を設計し出力する組成設計ステップと、
前記組成設計ステップで出力された、前記製剤の組成候補を入力データとして上記品質判定学習モデルに入力することで、品質を推定し、該品質の結果が適合である場合に、品質適合組成候補として出力する品質適合組成候補出力ステップと、を含む。
前記成分基礎データは、さらに、前記成分データの配合量の上下限閾値データを含んでいてもよい。
前記品質判定学習モデルは、同じ機械学習のアルゴリズムを使用して作成された1種以上の学習モデルを含んでいてもよく、異なる機械学習のアルゴリズムを使用して作成された1種以上の学習モデルを含んでいてもよい。
前記品質適合組成候補出力ステップは、2種以上の品質判定学習モデルのうちから選択された1種の品質判定学習モデルを使用してもよい。
前記製剤組成作成方法(BB1)または前記品質適合組成候補出力ステップは、
2種以上の品質判定学習モデルのうちから1種の品質判定学習モデルを選択する選択ステップを有し、
前記品質適合組成候補出力ステップは、前記選択ステップで選択された1種の品質判定学習モデルを使用してもよい。
前記品質適合組成候補出力ステップは、2種以上の品質判定学習モデルのすべてを使用し、それぞれで品質を推定してもよい。
【0028】
前記品質適合組成候補出力ステップは、
前記組成設計ステップで出力された前記製剤の組成候補における各成分の配合量が、所定の許容範囲(任意の数値でもよく、任意の数値範囲でもよい。)に合致する該製剤の組成候補を入力データとしてもよい。
前記所定の許容範囲は、各成分で設定される上限値および下限値、中央値およびその中央値を基準とする予め設定された上下限値などであってもよい。これらのデータは手動入力されてもよく、外部装置から取得されてもよい。
前記製剤組成作成方法(BB1)または前記品質適合組成候補出力ステップは、
各成分の配合量の所定の許容範囲を取得する取得ステップと、
前記取得ステップで得られた前記各成分の配合量の所定の許容範囲に合致する前記製剤の組成候補のみを抽出する抽出ステップと、を含み、
前記品質適合組成候補出力ステップは、前記抽出ステップで得られた前記各成分の配合量の所定の許容範囲に合致する前記製剤の組成候補のみを入力データとしてもよい。
【0029】
前記組成設計ステップは、予め設定された制限タイム以内で前記製剤の組成候補を出力してもよい。制限タイムを超えた場合に、組成設計ステップの機能が停止し、組成候補の出力は停止する。
前記品質適合組成候補出力ステップは、予め設定された制限タイム以内で前記品質適合組成候補を出力してもよい。制限タイムを超えた場合に、品質適合組成候補出力ステップの機能が停止し、品質適合組成候補の出力は停止する。
【0030】
前記品質適合組成候補出力ステップは、品質の結果が適合でない場合に、品質不適合組成候補として出力してもよい。
前記品質適合組成候補出力ステップは、品質の結果が準適合あるいは準不適合である場合に、品質準適合組成候補あるいは準不適合組成候補として出力してもよい。適合不適合を4分類として出力する場合に、適合度の大小関係として、適合>準適合>準不適合>不適合となる。適合不適合を3分類として出力する場合に、適合度の大小関係として、適合>準適合(あるいは準不適合)>不適合となる。
前記製剤組成作成方法は、さらに、
前記品質適合組成候補出力ステップで出力された、前記品質適合組成候補を、予め設定されている合格条件と比較し、合格の可能性を判定し、合格組成候補を出力する合格判定ステップを含んでいてもよい。
前記合格判定ステップは、前記判定を2種以上に分類して判定してもよい。分類としては、合格、準合格、準不合格、不合格から選択される2種以上であってもよい。
前記製剤組成作成方法は、さらに、前記品質適合組成候補の類似度、および/または、前記合格組成候補の類似度(例えば、予め設定された基本組成との類似度)を演算する類似度演算ステップを有していてもよい。
【0031】
別の開示の製剤組成作成方法(BB2)は、情報処理装置によって実行され、
製剤の種別と、該製剤の組成を構成する可能性のある1種以上の成分データを少なくとも含む成分基礎データを成分基礎データ記憶部に記憶しており、
前記製剤の組成を設計するための設計条件を設定する設計条件設定ステップと、
前記設計条件に合致するあるいは前記設計条件に拘束されない前記成分基礎データを入力データとして、機械学習によって作成された学習モデル(生成系AIモデル)に入力することで、製剤の組成候補を設計し出力する組成設計ステップと、
前記組成設計ステップで出力された前記製剤の組成候補を、予め設定されている合格条件と比較し、合格の可能性を判定し、合格組成候補を出力する合格判定ステップと、を含む。
前記合格判定ステップは、前記判定を2種以上に分類して判定してもよい。分類としては、合格、準合格、準不合格、不合格から選択される2種以上であってもよい。
前記製剤組成作成方法は、さらに、前記組成候補の類似度、および/または、前記合格組成候補の類似度(例えば、予め設定された基本組成との類似度)を演算する類似度演算ステップを有していてもよい。
前記成分基礎データは、さらに、前記成分データの配合量の上下限閾値データを含んでいてもよい。
【0032】
前記設計条件設定ステップは、設計条件を入力する入力手段で構成されていてもよく、外部装置から取得(受信など)する手段で構成されていてもよく、予めメモリに保存されている設計条件データから任意の設計条件を選択する構成でもよい。
前記設計条件設定ステップは、製剤の種別、組成に含ませる成分の種類(例えば、有効成分、安定化剤、防腐剤、保存剤など)、該種類のうち何種類まで選択できるとするか、該種類に分類される成分を何種類まで選択できるとするか、該成分の配合量を固定値とするか可変とするかなどを設定してもよい。前記設計条件設定ステップは、成分の配合量を可変とする場合に、数値の1桁、小数点第1位、第2位などのいずれかの桁単位で可変になるように設定してもよい。
前記設計条件設定部は、製剤(剤型の種類も含む)の有効成分を製品コンセプト(例えば、ドライアイ用点眼剤、眼精疲労・疲れ目用点眼剤、アレルギー用点眼剤、抗菌用点眼剤など)に合わせて設定できるように構成されていてもよい。前記設計条件設定部は、配合させたい有効成分に優先度を設定できるように構成されていてもよい。前記設計条件設定部は、製剤中の添加物を製品コンセプト(滞留性の強弱、清涼感の強弱、低刺激型、防腐剤無添加など)に合わせて選択できるように構成されていてもよい。
【0033】
前記合格条件としては、例えば、製剤の保存効力以外の品質条件、製剤の効果に基づく条件、過去販売した製剤の組成データに基づく条件、過去販売に至らなかった製剤の組成データに基づく条件であってもよい。
【0034】
他の開示の品質判定学習モデル(例えば、保存効力判定学習モデル)の生成方法は、情報処理装置によって実行され、
製剤の組成を構成する可能性のある1種以上の成分を少なくとも含む教師データを作成あるいは取得する教師データ作成ステップと、
前記教師データを用いて知的情報処理技術によって品質判定学習モデルを生成する学習モデル生成ステップとを含む。
教師データは、さらに、前記成分データの配合量、前記製剤の1種以上の菌種における保存効力試験の判定結果のうちから選択される1種以上のデータを含んでいてもよい。
教師データは、さらに、該製剤のpH、該製剤の浸透圧、該製剤の粘度のうち1種以上のデータを含んでいてもよい。
前記保存効力判定学習モデルは、同じ機械学習のアルゴリズムを使用して作成された1種以上の学習モデルを含んでいてもよく、異なる機械学習のアルゴリズムを使用して作成された1種以上の学習モデルを含んでいてもよい。
【0035】
他の開示の製剤の品質予測プログラム(C)は、
1つ以上のプロセッサーあるいは情報処理装置に、
製剤の組成を構成する可能性のある1種以上の成分データを少なくとも含む教師データを用いて知的情報処理技術によって作成された品質判定学習モデルに、評価対象の製剤の組成を構成する1つ以上の成分データを少なくとも入力することで、品質を推定し出力する品質推定ステップを、実現させるためのプログラムである。
前記品質推定ステップにおいて、2種以上の品質判定学習モデルのうちから選択された1種の品質判定学習モデルを使用してもよい。
前記保存力推定ステップは、
2種以上の品質判定学習モデルのうちから1種の品質判定学習モデルを選択する選択ステップを有し、
前記品質推定ステップは、前記選択ステップで選択された1種の品質判定学習モデルを使用してもよい。
前記品質推定ステップは、2種以上の品質判定学習モデルのすべてを使用し、それぞれで品質を推定し出力してもよい。
【0036】
他の開示の製剤組成作成プログラム(D1)は、
1つ以上のプロセッサーあるいは情報処理装置に、
製剤の組成を設計するための設計条件を設定する設計条件設定ステップと、
前記設計条件に合致するあるいは前記設計条件に拘束されない成分基礎データを入力データとして、機械学習によって作成された学習モデル(生成系AIモデル)に入力することで、製剤の組成候補を設計し出力する組成設計ステップと、
前記組成設計ステップで出力された前記製剤の組成候補を入力データとして上記品質判定学習モデルに入力することで、品質を推定し、該品質の結果が適合である場合に、品質適合組成候補として出力する品質適合組成候補出力ステップと、を実現させるためのプログラムである。
前記プログラム(D1)は、
前記品質適合組成候補出力ステップで出力された前記品質適合組成候補を、予め設定されている合格条件と比較し、合格の可能性を判定し、合格組成候補を出力する合格判定ステップを、さらに実現させるためのプログラムであってもよい。
前記成分基礎データは、さらに、前記成分データの配合量の上下限閾値データを含んでいてもよい。
前記品質判定学習モデルは、同じ機械学習のアルゴリズムを使用して作成された1種以上の学習モデルを含んでいてもよく、異なる機械学習のアルゴリズムを使用して作成された1種以上の学習モデルを含んでいてもよい。
前記品質適合組成候補出力ステップは、2種以上の品質判定学習モデルのうちから選択された1種の品質判定学習モデルを使用してもよい。
前記品質適合組成候補出力ステップは、
2種以上の品質判定学習モデルのうちから1種の品質判定学習モデルを選択する選択ステップを有し、
前記品質適合組成候補出力ステップは、前記選択ステップで選択された1種の品質判定学習モデルを使用してもよい。
前記品質適合組成候補出力ステップは、2種以上の品質判定学習モデルのすべてを使用し、それぞれで品質を推定してもよい。
【0037】
前記品質適合組成候補出力ステップは、
前記組成設計ステップで出力された前記製剤の組成候補における各成分の配合量が、所定の許容範囲(任意の数値でもよく、任意の数値範囲でもよい。)に合致する該製剤の組成候補を入力データとしてもよい。
前記所定の許容範囲は、各成分で設定される上限値および下限値、中央値およびその中央値を基準とする予め設定された上下限値などであってもよい。これらのデータは手動入力されてもよく、外部装置から取得されてもよい。
前記製剤組成作成プログラム(D1)または前記品質適合組成候補出力ステップは、
各成分の配合量の所定の許容範囲を取得する取得ステップと、
前記取得ステップで得られた前記各成分の配合量の所定の許容範囲に合致する前記製剤の組成候補のみを抽出する抽出ステップと、を含み、
前記品質適合組成候補出力ステップは、前記抽出ステップで得られた前記各成分の配合量の所定の許容範囲に合致する前記製剤の組成候補のみを入力データとしてもよい。
【0038】
前記組成設計ステップは、予め設定された制限タイム以内で前記製剤の組成候補を出力してもよい。制限タイムを超えた場合に、組成設計ステップの機能が停止し、組成候補の出力は停止する。
前記品質適合組成候補出力ステップは、予め設定された制限タイム以内で前記品質適合組成候補を出力してもよい。制限タイムを超えた場合に、品質適合組成候補出力ステップの機能が停止し、品質適合組成候補の出力は停止する。
【0039】
前記製剤組成作成プログラム(D1)は、
前記品質適合組成候補の類似度、および/または、前記合格組成候補の類似度(例えば、予め設定された基本組成との類似度)を演算する類似度演算ステップを、さらに実現させるためのプログラムであってもよい。
【0040】
他の開示の製剤組成作成プログラム(D2)は、
1つ以上のプロセッサーあるいは情報処理装置に、
製剤の組成を設計するための設計条件を設定する設計条件設定ステップと、
前記設計条件に合致するあるいは前記設計条件に拘束されない成分基礎データを入力データとして、機械学習によって作成された学習モデル(生成系AIモデル)に入力することで、製剤の組成候補を設計し出力する組成設計ステップと、
前記組成設計ステップで出力された前記製剤の組成候補を、予め設定されている合格条件と比較し、合格の可能性を判定し、合格組成候補を出力する合格判定ステップと、を実現させるためのプログラムである。
前記プログラム(D2)は、
前記組成候補の類似度、および/または、前記合格組成候補の類似度(例えば、予め設定された基本組成との類似度)を演算する類似度演算ステップを、さらに実現させるためのプログラムであってもよい。
【0041】
前記組成設計部は、生成部(generator)と識別部(discriminator)を有し、製剤の組成を設計してもよい。
生成部は、ランダムに組成候補を生成し、識別部は、該ランダムに生成された組成候補が前記設計条件のうち一種以上の設計条件項目に適合するか否かを判断し、適合する組成候補を出力してもよい。
前記機械学習のアルゴリズムは、特に制限されず、従来のアルゴリズムを用いてもよい。教師あり学習として、例えば、線形回帰、一般化線形モデル、サポートベクター回帰、ガウス過程回帰、アンサンブル法、決定木、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシン、判別分析、単純ベイズ、最近傍法などの各種アルゴリズムを採用してもよい。
前記組成設計部は、敵対的生成ネットワーク(Generative adversarial networks)の学習モデル(生成系AIモデル)を有して構成されていてもよい。
【0042】
前記保存効力の推定は、1種あるいは1種以上の菌種における保存効力試験の基準に対する適合または不適合を推定してもよく、保存効力の適合性の程度をランキング(例えば、数値化、分類など)して推定してもよい。
前記製剤は、医薬品(医療用医薬品、要指導医薬品、一般医薬品(第1類、第2類、第3類)をすべて含む。)、医薬部外品、薬用化粧品、化粧品を含む。
前記保存効力試験は、例えば、日本薬局方18局保存効力試験、ISO 11930に記載の保存効力試験、EUROPEAN PHARMACOPO£IA 9.0の「5.1.3.EFHCACY OF ANTIMICRO81AL PRESERVATION」、PCPC(Personal Care Products Council) MICROBIOLOGY GUIDELINESに記載の保存効力試験、USP32 「<51>ANTIMICROBIAL EFFECTIVENESS TESTING」などが挙げられる。しかしこれらの試験に限定されず、他の試験方法や将来にわたり試験方法が改訂されてもよい。学習モデルを更新あるいはメンテナンスする際に、変更された試験方法による結果を教師データに使用してもよい。
【0043】
「知的情報処理技術」は、例えば、機械学習の決定木が挙げられる。決定木の勾配ブースティング(GBDT: Gradient Boosting Decision Tree)として、例えば、XGBoost(eXtreme Gradient Boosting)、LightGBM(Light Gradient Boosting Machine)が挙げられる。
また、「知的情報処理技術」は、例えば、ラッソ回帰学習モデル(Lassoモデル)、リッジ回帰学習モデル(Ridgeモデル)が挙げられる。
【0044】
保存効力判定学習モデルにおいて、その教師データは、さらに、前記成分データの配合量、前記製剤の1種以上の菌種における保存効力試験の判定結果のうちから選択される1種以上のデータを含んでいてもよい。教師データは、さらに、該製剤のpH、該製剤の浸透圧[mOsm]、該製剤の粘度[mPa・s]のうちから選択される1種以上のデータを含んでいてもよい。教師データは、有効成分経時安定性試験、製剤の安全性試験、感作性試験および刺激性試験の判定結果のうち1種以上をさらに含んでいてもよい。
入力データは、さらに、前記成分データの配合量を含んでいてもよい。入力データは、さらに、該評価対象の製剤のpH、該評価対象の製剤の浸透圧、該評価対象の製剤の粘度のうちから選択される1種以上のデータを含んでいてもよい。製剤の配合量は、例えば、液剤の場合、w/v%の単位であってもよい。
前記保存効力判定学習モデルは、同じ機械学習のアルゴリズムを使用して作成された1種以上の学習モデルを含んでいてもよく、異なる機械学習のアルゴリズムを使用して作成された1種以上の学習モデルを含んでいてもよい。
【0045】
他の開示の品質判定学習モデル(例えば、有効成分経時安定性判定学習モデル)の生成方法は、情報処理装置によって実行され、
製剤の組成を構成する可能性のある1種以上の成分を少なくとも含む教師データを作成あるいは取得する教師データ作成ステップと、
前記教師データを用いて知的情報処理技術によって品質判定学習モデルを生成する学習モデル生成ステップとを含む。
有効成分経時安定性判定学習モデルにおいて、その教師データは、さらに、前記成分データの配合量、前記製剤中の有効成分の経時安定性試験の判定結果のうちから選択される1種以上のデータを含んでいてもよい。教師データは、さらに、該製剤のpH、該製剤の浸透圧[mOsm]、該製剤の粘度[mPa・s]のうちから選択される1種以上のデータを含んでいてもよい。教師データは、製剤の安全性試験、感作性試験および刺激性試験の判定結果のうち1種以上をさらに含んでいてもよい。
入力データは、さらに、前記成分データの配合量を含んでいてもよい。入力データは、さらに、該評価対象の製剤のpH、該評価対象の製剤の浸透圧、該評価対象の製剤の粘度のうちから選択される1種以上のデータを含んでいてもよい。製剤の配合量は、例えば、液剤の場合、w/v%の単位であってもよい。
前記有効成分経時安定性判定学習モデルは、同じ機械学習のアルゴリズムを使用して作成された1種以上の学習モデルを含んでいてもよく、異なる機械学習のアルゴリズムを使用して作成された1種以上の学習モデルを含んでいてもよい。
【0046】
前記情報処理装置は、1つ以上のAI専用プロセッサー、GPU、MPUあるいはCPUとメモリなどのハードウエアなどを備えて構成されていてもよい。情報処理装置は、携帯端末(例えば、スマートフォン、タブレット)、コンピュータ、オンプレミスサーバ、クラウドサーバであってもよい。
各構成要素(保存効力推定部、有効成分経時安定性推定部、設計条件設定部、組成設計部、品質適合組成候補出力部、合格判定部)は、1つ以上のGPU、MPUあるいはCPUと、メモリに記憶されている処理プログラムで構成され、1つ以上のGPU、MPUあるいはCPUがメモリから処理プログラムを読み出し、実行することで実現されていてもよい。
【0047】
前記類似度は、例えば、コサイン類似度、ピアソンの積率相関係数、ユークリッド距離などの手法で演算されてもよい。
【0048】
他の開示のコンピュータ命令が記憶されているコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、
製剤の組成を構成する可能性のある1種以上の成分データを少なくとも含む教師データを用いて知的情報処理技術によって作成された品質判定学習モデルを記憶するコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
教師データは、製剤の組成を構成する(1)1種以上の成分、(2)該成分の配合量と、(3)該製剤の安全性試験、感作性試験、刺激性試験、1種以上の菌種における保存効力試験および有効成分経時安定性試験の判定結果のうち1種以上と、を含んでいてもよい。
教師データは、さらに、該製剤のpH、該製剤の浸透圧[mOsm]、該製剤の粘度[mPa・s]のうちから選択される1種以上のデータを含んでいてもよい。
【0049】
他の開示の組成物(製剤)を製造する方法は、
前記製剤の品質予測方法(AA)を実行する工程(S1)と、
前記工程(S1)で推定された保存効力の結果が適合であった製剤の組成に基づいて組成物を製造する工程(S2)と、
を含む方法である。
前記工程(S1)は、前記製剤の品質予測装置(A)または前記製剤の品質予測プログラムを使用して実行されてもよい。
【0050】
他の開示の組成物(製剤)を製造する方法は、
前記製剤組成作成方法(BB1、BB0)を実行する工程(S11)と、
前記工程(S11)で出力された品質適合組成候補の組成に基づいて組成物を製造する工程(S12)と、
を含む方法である。
前記工程(S11)は、前記製剤組成作成装置(B1、B0)または前記製剤組成作成プログラム(D1、D0)を使用して実行されてもよい。
前記方法は、前記品質適合組成候補を、予め設定されている合格条件と比較し、合格の可能性を判定し、合格組成候補を出力する工程を含んでいてもよい。前記工程(S12)は、合格と判定された合格組成候補である品質適合組成候補の組成に基づいて組成物を製造してもよい。
【0051】
他の開示の組成物(製剤)を製造する方法は、
前記製剤組成作成方法(BB2)を実行する工程(S21)と、
前記工程(S21)で出力された製剤の組成候補の組成に基づいて組成物を製造する工程(S22)と、
を含む方法である。
前記工程(S21)は、前記製剤組成作成装置(B2)または前記製剤組成作成プログラム(D2)を使用して実行されてもよい。
【0052】
他の開示の組成物は、
製剤の組成を構成する可能性のある1種以上の成分データを少なくとも含む教師データを用いて知的情報処理技術によって作成された品質判定学習モデルに、評価対象の製剤の組成を構成する1つ以上の成分データを入力することで、製剤の品質を推定し、該品質の結果が適合であった製剤の組成に基づいて製造して得られる組成物(製剤)である。
前記品質は、例えば、保存効力、有効成分の経時的安定性、感作性、刺激性などが挙げられる。
【0053】
他の開示の組成物は、
設計条件に合致するあるいは設計条件に拘束されない成分基礎データを、機械学習によって作成された学習モデルに入力することで出力された製剤の組成候補のデータを、品質判定学習モデルに入力することで品質を推定し、該品質の結果が適合である品質適合組成候補の組成に基づいて製造して得られる組成物(製剤)である。
前記成分基礎データは、製剤の種別と、該製剤の組成を構成する可能性のある1種以上の成分データと、該成分の配合量の上下限閾値データを含んでいてもよい。
前記設計条件は、製剤の組成を設計するための条件である。
【0054】
他の開示の組成物は、
設計条件に合致するあるいは設計条件に拘束されない成分基礎データを、機械学習によって作成された学習モデルに入力することで出力された製剤の組成候補を、予め設定されている合格条件と比較し、合格と判定された製剤の組成候補の組成に基づいて製造して得られる組成物(製剤)である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】品質予測装置の機能の一例を示す機能ブロック図である。
図2A】教師データの一例を示す図である。
図2B】教師データの一例を示す図である。
図3A】保存効力推定の実施例の一例を示す図である。
図3B】保存効力推定の実施例の一例を示す図である。
図3C】有効成分経時的安定性の実施例の一例を示す図である。
図3D】有効成分経時的安定性の実施例の一例を示す図である。
図4】第一製剤組成作成装置の機能の一例を示す機能ブロック図である。
図5】成分基礎データの一例を示す図である。
図6】合格判定結果の一例を示す図である。
図7】合格候補の結果の一例を示す図である。
図8】第二製剤組成作成装置の機能の一例を示す機能ブロック図である。
図9】第四製剤組成作成装置における操作フローの一例を示す図である。
図10A】操作画面の一例を示す図である。
図10B】操作画面の一例を示す図である。
図10C】操作画面の一例を示す図である。
図10D】操作画面の一例を示す図である。
図10E】操作画面の一例を示す図である。
図10F】操作画面の一例を示す図である。
図10G】操作画面の一例を示す図である。
図11】学習モデル作成の操作画面の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0056】
(品質予測装置)
図1に品質予測装置1の一例を示す。
品質予測装置1は、学習モデル記憶部10、品質推定部12(保存効力推定部121、有効成分経時安定性判定推定部122)、入力装置15、記憶装置16、表示装置17、通信装置18などを備える。
学習モデル記憶部10は、製剤の組成を構成する可能性のある1種以上の成分、該成分の配合量、該製剤のpH、該製剤の浸透圧、該製剤の粘度、該製剤の1種以上の菌種における保存効力試験の判定結果のうち1種以上のデータを含む教師データを用いて知的情報処理技術によって作成された保存効力判定学習モデル11を記憶する。
【0057】
(保存効力判定学習モデル)
本実施形態において、保存効力判定学習モデル11は、LightGBMの学習モデル(ソフトウエアプログラム)である。
保存効力判定学習モデルの生成方法は、情報処理装置によって実行され、製剤の組成を構成する1種以上の成分、該成分の配合量、該製剤のpH、該製剤の浸透圧、該製剤の粘度、該製剤の1種以上の菌種における保存効力試験の判定結果のうち1種以上のデータを含む教師データを作成あるいは取得する教師データ作成ステップと、前記教師データを用いて知的情報処理技術によって保存効力判定学習モデルを生成する学習モデル生成ステップとを含んでいてもよい。
品質予測装置1は、教師データ作成部と、学習モデル生成部を備えていてもよい。教師データ作成部は、製剤の組成を構成する1種以上の成分、該成分の配合量、該製剤のpH、該製剤の浸透圧、該製剤の粘度、該製剤の1種以上の菌種における保存効力試験の判定結果のうち1種以上のデータを含む教師データを作成あるいは取得する。学習モデル生成部は、教師データ作成部で得られた教師データを用いて知的情報処理技術によって保存効力判定学習モデルを生成する。教師データにおける各種データはすべてに数値が入っているものとは限らず、零であってもよい。
図11に、学習モデル作成の操作画面の一例を示す。「タイプ」で学習タイプを選択できる。「モデル名」に作成するモデルの識別情報を入力できる。「作成済みAI一覧」には過去に作成した学習モデルが表示される。
【0058】
図2Aに教師データの一例を示す。保存効力を推定させたい製剤の種類に対応した教師データが作成される。つまり、保存効力判定学習モデルは、製剤の種類に対応して1種以上のモデルが生成されてもよい。
有効成分は所望の効果等に応じて有効成分の種類、配合量が設定されている。添加剤は1種以上が設定される。保存効力試験判定結果は、各種試験方法の結果であり、図2Aでは適合(2)、準適合(1)、不適合(0)の3段階の結果で示されている。本実施形態の保存効力試験は、例えば、日本薬局方18局保存効力試験である。点眼剤の場合は3菌種(Staphylococcus aureus(Sta.)、Escherichia coli(E.coli)、Pseudomonas aeruginosa(Ps.))で試験してもよい。
【0059】
(有効成分経時安定性判定学習モデル)
本実施形態において、有効成分経時安定性判定学習モデル112は、Lassoの学習モデル(ソフトウエアプログラム)である。
有効成分経時安定性判定学習モデル112の生成方法は、情報処理装置によって実行され、製剤の組成を構成する1種以上の成分、該成分の配合量、該製剤のpH、該製剤の浸透圧、該製剤の粘度、該製剤の各有効成分における経時安定性試験の判定結果のうち1種以上のデータを含む教師データを作成あるいは取得する教師データ作成ステップと、前記教師データを用いて知的情報処理技術によって有効成分経時安定性判定学習モデルを生成する学習モデル生成ステップとを含んでいてもよい。
品質予測装置1は、教師データ作成部と、学習モデル生成部を備えていてもよい。教師データ作成部は、製剤の組成を構成する1種以上の成分、該成分の配合量、該製剤のpH、該製剤の浸透圧、該製剤の粘度、該製剤の各有効成分における経時安定性試験の判定結果のうち1種以上のデータを含む教師データを作成あるいは取得する。学習モデル生成部は、教師データ作成部で得られた教師データを用いて知的情報処理技術によって有効成分経時安定性判定学習モデルを生成する。教師データにおける各種データはすべてに数値が入っているものとは限らず、零であってもよい。
【0060】
図2Bに教師データの一例を示す。有効成分における経時安定を推定させたい製剤の種類に対応した教師データが作成される。つまり、有効成分経時安定性判定学習モデル112は、製剤の種類に対応して1種以上のモデルが生成されてもよい。本実施形態では、有効成分のパルミチン酸レチノール(ビタミンA)の経時安定性を評価する教師データを示す。
有効成分は所望の効果等に応じて有効成分の種類、配合量が設定されている。添加剤は1種以上が設定される。有効成分における経時安定性試験判定結果は、パルミチン酸レチノールの残存率の結果(数値)である。経時安定性試験は、例えば、初期の定量値と50℃の恒温槽で1か月保存した後の定量値から、残存率を求めた。本実施形態では、残存率80%を閾値として合格、不合格とした。なお、合格と不合格の閾値は有効成分によって変更可能である。また、有効成分における経時安定性試験は、例えば、安定性試験ガイドラインに従ってもよい。
【0061】
(製剤)
製剤の一例として点眼剤(点眼薬)を示す。その有効成分の一例を示すが以下に限定されない。
抗ヒスタミン剤又は抗アレルギー剤として、例えば、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、フマル酸ケトチフェン、ペミロラストカリウム、クロモグリク酸ナトリウム等が挙げられる。
血管収縮剤として、例えば、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、硫酸ナファゾリン、塩酸エピネフリン、塩酸エフェドリン、塩酸メチルエフェドリン等が挙げられる。眼筋調節剤としては、例えば、メチル硫酸ネオスチグミン等が挙げられる。
ビタミンとしては、例えば、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン、酢酸レチノール、酢酸トコフェロール、パルミチン酸レチノール、塩酸ピリドキシン、パンテノール、パントテン酸カルシウム等が挙げられる。
アミノ酸としては、例えば、アスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウム、アミノエチルスルホン酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム等が挙げられる。
抗炎症剤としては、例えば、ブロムフェナクナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、プラノプロフェン、アラントイン、アズレン、アズレンスルホン酸ナトリウム、グアイアズレン、塩化ベルベリン、硫酸ベルベリン、塩化リゾチーム、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、甘草、サリチル酸及びその誘導体(例えば、サリチル酸グリコール、サリチル酸メチル)等が挙げられる。
その他として、例えば、ヒアルロン酸ナトリウム、スルファメトキサゾール、スルファメトキサゾールナトリウム等が挙げられる。
【0062】
点眼剤の添加物の一例を示すが以下に限定されない。
緩衝剤として、例えば、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤等の無機緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、トリス緩衝剤、イプシロンアミノカプロン酸緩衝剤、AMPD緩衝剤等の有機緩衝剤、等が挙げられる。
界面活性剤として、例えば、POEソルビタン脂肪酸エステル、POEヒマシ油等の非イオン界面活性剤、アルキルジアミノエチルグリシン又はその塩(例えば、塩酸塩等)等の両性界面活性剤、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩等の陰イオン性界面活性剤、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム等の陽イオン性界面活性剤が挙げられる。
糖として、例えば、シクロデキストリン等が挙げられる。
糖アルコールとして、例えば、キシリトール、ソルビトール、マンニトール等が挙げられる。
防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤として、例えば、塩化亜鉛、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、エタノール、クロロブタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、グルコン酸クロルヘキシジン、安息香酸、安息香酸ナトリウム、パラベン類等が挙げられる。
清涼化剤又はテルペノイドとして、例えば、メントール、オイゲノールおよびリモネン等の単環式モノテルペン、カンフル、ボルネオールおよびシネオール等の二環式モノテルペン、並びにゲラニオール、ネロールおよびミルセン等の非環式モノテルペン、クールミント油、ペパーミント油およびハッカ油等のテルペノイドを含有する精油等が挙げられる。
増粘剤としては、例えば、アラビアゴム末、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステルソルビトール、デキストラン70等が挙げられる。
抗酸化剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、トコフェロール及びその誘導体などの脂溶性抗酸化剤、ピロ亜硫酸酸ナトリウム、エデト酸ナトリウムなどの水溶性抗酸化剤などが挙げられる。
pH調整剤として、例えば、無機酸、有機酸、無機塩基、有機塩基等が挙げられる。
油類として、例えば、ゴマ油、ヒマシ油、ワセリン、流動パラフィン等が挙げられる。
【0063】
点眼剤の基剤又は担体の一例を示すが以下に限定されない。
水等の水性基剤、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、ゲル化炭化水素(プラスチベース等)、オゾケライト、α-オレフィンオリゴマー、及び軽質流動パラフィン等の炭化水素等の油性ないしは疎水性基剤が挙げられる。
【0064】
次に製剤の一例として外用薬を示す。その有効成分(薬理活性成分又は生理活性成分)の一例を示すが以下に限定されない。
抗炎症成分としては、例えば、アラントイン及びその誘導体、トラネキサム酸、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸、酸化亜鉛、アミノカプロン酸、アズレン及びその誘導体、酢酸トコフェロール、塩酸ピリドキシン、メントール、カンフル、テレピン油、インドメタシン、サリチル酸又はその誘導体、ステロイド類及びその塩、ウフェナマート、イブプロフェンピコノール、カラミン、アゼライン酸等が挙げられる。
抗菌・殺菌成分としては、例えば、クロルヘキシジン、サリチル酸、塩化ベンザルコニウム、エタノール、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、クレゾール、グルコン酸及びその誘導体、ヨウ素及びその誘導体、イソプロピルメチルフェノール、フェノキシエタノール、塩酸アルキルジアミノグリシン、塩化セチルピリジニウム、ピロクトオラミン、ミコナゾール若しくはその塩、クロロブタノール等が挙げられる。
血行促進成分としては、例えば、カフェイン、トウガラシチンキ、アセチルコリン、イクタモール、カンタリスチンキ、ガンマーオリザノール、カプサイシン、ショオウキョウチンキ、ジンゲロン等が挙げられる。
抗酸化成分としては、例えば、アスコルビン酸及びその塩、トコフェロール及びその誘導体、トコトリエノール、L-システイン塩酸塩、コエンザイムQ10等のユビキノン類等が挙げられる。
抗糖化成分としては、例えば、植物エキス、月見草油、アムラーの果実、果汁又はそれらの抽出物、L-アルギニン、L-リジン、加水分解カゼイン、加水分解性タンニン、カルノシン等が挙げられる。
抗老化成分としては、例えば、加水分解大豆タンパク、レチノイド等が挙げられる。
美白成分としては、例えば、プラセンタ、ハイドロキノン、アスコルビン酸、ビタミンA油、トウキンセンカ、ハマメリス、ヨクイニン、ハトムギエキス、月見草油、ビルベリー葉エキス等が挙げられる。
紫外線散乱剤としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化鉄、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、ケイ酸チタン、ケイ酸亜鉛、無水ケイ酸、ケイ酸セリウム、含水ケイ酸等の無機化合物等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えば、サリチル酸系紫外線吸収剤、ケイ皮酸系紫外線吸収剤、ベンゾイルメタン系紫外線吸収剤、安息香酸エステル誘導体紫外線吸収剤、トリアジン誘導体等が挙げられる。
【0065】
外用剤の添加物の一例を示すが以下に限定されない。
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤等のいずれでもよい。
油剤としては、極性油、非極性油が挙げられる。極性油としては、例えば、エステル油、油脂、ロウ類、高級脂肪酸、高級アルコール、フィトステロール、コレステロール等のステロール類等が挙げられる。非極性油としては、例えば、炭化水素油、シリコーン油等が挙げられる。
増粘剤としては、例えば、アクリル酸系増粘剤、セルロース系増粘剤、ポリビニルアルコール、キサンタンガム、ゼラチン、カラギーナン、寒天等が挙げられる。
保湿成分としては、例えば、ヒアルロン酸又はその塩又はその誘導体、コンドロイチン硫酸又はその塩、ヘパリン類似物質、アラニン、セリン、アスパラギン酸、グリシン、アルギニンなどのアミノ酸及びその誘導体、多価アルコール、糖アルコール等が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ソルビン酸、亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、トコフェロール、トコフェロール誘導体等が挙げられる。
保存剤又は防腐剤としては、例えば、安息香酸、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ベンジル、パラオキシ安息香酸メチル、フェノキシエタノール、ベンジルアルコール、チモール、イソプロピルメチルフェノール、カプリルヒドロキサム酸、クロロブタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、等が挙げられる。
pH調整剤としては、例えば、無機酸、有機酸、無機塩基、有機塩基等が挙げられる。
皮脂吸着成分としては、例えば、タルク、マイカ、ヒドロキシアパタイト、酸化亜鉛、ケイ酸アルミニウム等が挙げられる。
キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン4酢酸(エデト酸)、エチレンジアミン4酢酸塩(ナトリウム塩(エデト酸ナトリウム:日本薬局方、EDTA-2Naなど)、カリウム塩など)、フィチン酸、グルコン酸、ポリリン酸、メタリン酸等が挙げられる。
清涼化剤としては、例えば、メントール及びその誘導体、カンフル、クロロブタノール、ボルネオール、ゲラニオール、シネオール、アネトール、リモネン、オイゲノール等のテルペン類、精油等が挙げられる。
【0066】
外用剤の基剤又は担体の一例を示すが以下に限定されない。
基剤又は担体としては、水などの水系基剤、炭化水素、高級アルコール、高級脂肪酸、セルロース誘導体、エステル類、油脂、ビニル系高分子、低級アルコール、糖アルコール等が挙げられる。
【0067】
入力装置15は、評価対象の製剤の各種データを入力するための装置である。評価対象の製剤の各種データは、例えば、製剤の組成を構成する1つ以上の成分、該成分の配合量、該評価対象の製剤のpH、該評価対象の製剤の浸透圧、該評価対象の製剤の粘度である。配合量、pH、浸透圧、粘度の各データは「0」であってもよい。入力されたデータは記憶装置16に記憶される。
入力装置15は、キーボード、マウス、タッチパネル、音声入力などの入力インターフェースで構成される。学習モデル記憶部10および記憶装置16は、EPROM、HDD、SSD、Nasなどの不揮発性メモリ、DRAMなどの揮発性メモリであってもよい。学習モデル記憶部10および記憶装置16は同じメモリで構成されていてもよい。学習モデル記憶部10が揮発性メモリで構成される場合は、実行時に通信装置18あるいは記憶媒体読取装置などで保存効力判定学習モデル、有効成分経時安定性判定学習モデルなどの学習モデルなどを取得し、学習モデル記憶部10に記憶される構成である。
【0068】
表示装置17は、品質予測の実行画面として、評価対象の製剤の各種データを入力するための画面、品質予測を開始し結果を出力するための画面などを表示する。品質予測の実行画面は、アプリケーションとして品質予測装置1にインストールされており、アプリケーション起動で自動的に品質予測の実行画面が立ち上がる。
表示装置17は、液晶モニター、有機ELモニター、タッチパネルモニターなどの表示装置で構成される。
【0069】
通信装置18は、有線通信手段、無線通信手段で構成され、外部装置(サーバ、外部記憶装置)とデータ通信可能に構成される。
【0070】
品質推定部12の保存効力推定部121は、評価対象の製剤の組成を構成する1つ以上の成分、該成分の配合量、該評価対象の製剤のpH、該評価対象の製剤の浸透圧、該評価対象の製剤の粘度のうち1種以上のデータを入力データとして、保存効力判定学習モデル11に入力することで、保存効力を推定し出力する。
品質推定部12の有効成分経時安定性推定部122は、評価対象の製剤の組成を構成する1つ以上の成分、該成分の配合量、該評価対象の製剤のpH、該評価対象の製剤の浸透圧、該評価対象の製剤の粘度のうち1種以上のデータを入力データとして、有効成分経時安定性判定学習モデル112に入力することで、有効成分経時安定性を推定し出力する。
評価対象の製剤の各種データは、入力装置15から入力可能であり、後述する通信装置18によりデータを受信してもよく、記憶媒体読取装置からデータを読み取ってもよい。
出力された推定結果は、表示装置17の品質予測の実行画面に推定結果として表示される。また、通信装置17によって、外部装置へ送信され、外部装置で推定結果を表示されてもよい。
【0071】
(実施例1)
保存効力判定学習モデル11は、点眼剤における保存効力判定を可能に学習されている。3種の菌種のそれぞれに対する約300の教師データで学習をさせ、3種の菌種ごとの保存効力判定学習モデル11を3つ作成した。評価対象として10種類の点眼剤の組成データとその日本薬局方18局保存効力試験を行いその結果を準備した。
保存効力推定部121は、3種の保存効力判定学習モデル11のそれぞれに対し、評価対象として10種類の点眼剤の組成データを入力し推定を行った。推定した10種類の点眼剤の組成に基づいて製造し、それぞれ日本薬局方18局保存効力試験を行った。保存効力推定部121による推定結果と、日本薬局方18局保存効力試験の結果を比較した。
【0072】
図3Aに、評価対象の製剤の各種データを示す。配合量の「0」は、成分そのものが含まれていないことを意味する。pHと浸透圧の「ND」は測定データなしを意味する。
図3Bに、推定結果と日本薬局方18局保存効力試験の比較結果を示す。「予測結果」は保存効力推定部121による推定結果である。「真の答え」は、日本薬局方18局保存効力試験の結果を示す。結果の「0」は不適合、「1」は準適合、「2」は適合であることを示す。「信頼確率」は、各推定結果の信頼度を示し、保存効力判定学習モデル11により算出される。
この結果から保存効力判定学習モデルによる推定と、実際の試験結果とで、点眼剤4、5を除き同じであることが確かめられた。
防腐剤を含まない評価対象(点眼剤3から5)についても、予測できることが確かめられた。
保存効力判定では、各成分が有する保存効力を個々に算出するのではなく、成分の組合せによって生じる相乗効果としての保存効力を予測できることが確認できた。
【0073】
(実施例2)
有効成分経時安定性判定学習モデル112は、点眼剤における有効成分(パルミチン酸レチノール)経時安定性の判定が可能に学習されている。
有効成分経時安定性推定部122は、有効成分経時安定性判定学習モデル112に対し、評価対象として14種類の点眼剤の組成データを入力し推定を行った。
【0074】
図3Cに、評価対象の製剤の各種データを示す。配合量の「0」は、成分そのものが含まれていないことを意味する。pHの「ND」は測定データなしを意味する。
図3Dに、推定結果と有効成分(パルミチン酸レチノール)経時安定性試験の比較結果を示す。「予測結果」は有効成分経時安定性推定部122による推定結果である。「真の答え」は、有効成分(パルミチン酸レチノール)経時安定性試験の結果を示す。相対誤差は、「予測結果」と「真の答え」の相対誤差であり、「合格」は「〇」で「不合格」は「×」で示した。「真の答え」の数値が80%以上を合格とし、それ未満を不合格とした。点眼剤21の「真の答え」が80%未満であり「×」であった。
この結果から有効成分経時安定性判定学習モデルによる推定と、実際の試験結果とで、点眼剤21を除き同じであることが確かめられた。
【0075】
(別実施形態)
(1)品質予測装置1は、学習モデル記憶部10および保存効力推定部12を組み込んでおらず、ネットワークを介して接続された構成であってもよい。
(2)クラウドサーバあるいはオンプレミスサーバに、学習モデル記憶部10および/または保存効力推定部12が配置され、汎用パソコンあるいは携帯端末が、サーバにアクセスし、評価対象の製剤のデータをアップロードし、サーバにおいて品質予測が実行され、その結果が汎用パソコンあるいは携帯端末へ送られる構成であってもよい。この場合、品質予測装置1は、クラウドサーバあるいはオンプレミスサーバおよび汎用パソコンあるいは携帯端末で構成される。
(3)日本薬局方18局保存効力試験の結果に限定されず、他の保存効力試験の結果であってもよい。
(4)保存効力判定学習モデルは、LightGBMの学習モデルに限定されず、XGBoostの学習モデルを使用してもよい。
(5)有効成分経時安定性判定学習モデルは、ラッソ回帰学習モデル(Lassoモデル)に限定されず、リッジ回帰学習モデル(Ridgeモデル)であってもよい。
(6)有効成分経時安定性判定学習モデルは、パルミチン酸レチノール(ビタミンA)に限定されず、他の有効成分において、同様の学習を実行しモデルを作成してもよい。
【0076】
(第一製剤組成作成装置)
図4に第一製剤組成作成装置2の一例を示す。
第一製剤組成作成装置2は、成分基礎データ記憶部20、設計条件設定部21、組成設計部22、品質適合組成候補出力部23、合格判定部24、入力装置25、記憶装置26、表示装置27、通信装置28を備える。
成分基礎データ記憶部20は、製剤の種別と、該製剤の組成を構成する可能性のある1種以上の成分データと、該成分の配合量の上下限閾値データと、を少なくとも含む成分基礎データを記憶する。図5に成分基礎データ(有効成分、添加物、基剤)および組成基礎データ(pH、浸透圧、粘度、有効成分種類数、添加物種類数、基剤または担体の種類数)の一例を示す。
【0077】
設計条件設定部21は、製剤の組成を設計するための設計条件を設定する。設計条件設定部21は、入力装置25を用いて、設計条件を入力する構成である。入力装置25による入力に限定されず、設計条件を通信装置28によりデータを受信してもよく、記憶媒体読取装置からデータを読み取ってもよい。入力されたデータは記憶装置26に記憶される。
設計条件設定部21は、製剤の種類、有効成分、添加物、基剤または担体を個別に入力できる構成である。また、各成分の配合量を固定値とするか可変とするかなども設定できる。可変としたときは、成分基礎データの上下限値の範囲で任意の数値が設定される。なお、製剤の種類を選択した後で、その選択された製剤に使用可能な成分のみが選択可能になっていてもよい。
【0078】
入力装置25は、キーボード、マウス、タッチパネル、音声入力などの入力インターフェースで構成される。成分基礎データ記憶部20および記憶装置26は、EPROM、HDD、SSD、Nasなどの不揮発性メモリ、DRAMなどの揮発性メモリであってもよい。成分基礎データ記憶部20および記憶装置26は同じメモリで構成されていてもよい。入力装置25により、成分基礎データ、設計条件、製剤の組成候補における各成分の配合量に設定される所定の許容範囲などが入力されてもよい。
表示装置27は、製剤組成作成の実行画面として、設計したい製剤組成の設計条件を入力する画面、成分基礎データ、設計条件、製剤の組成候補における各成分の配合量に設定される所定の許容範囲などの各種データを入力するための画面、製剤の組成候補および品質適合組成候補、合格した製剤組成を出力するための画面などを表示する。製剤組成作成の実行画面は、アプリケーションとして製剤組成作成装置2にインストールされており、アプリケーション起動で自動的に製剤組成作成の実行画面が立ち上がる。
表示装置27は、液晶モニター、有機ELモニター、タッチパネルモニターなどの表示装置で構成される。
通信装置28は、有線通信手段、無線通信手段で構成され、外部装置(サーバ、外部記憶装置)とデータ通信可能に構成される。
【0079】
組成設計部22は、成分基礎データを入力データとして、機械学習によって作成された学習モデルに入力することで、製剤の組成候補を設計し出力する。設計条件に合致する成分基礎データがない場合はエラー表示されてもよい。この場合成分基礎データが更新されてもよい。
本実施形態において、組成設計部22は、敵対的生成ネットワーク学習モデル221を用いて組成を設計する。敵対的生成ネットワーク学習モデル221は、GANアルゴリズムにより構成されている。敵対的生成ネットワーク学習モデル221は、入力された成分基礎データからランダムに組成候補を生成し、設計条件に適合する製剤の組成候補を順次生成する。生成された製剤の組成候補は、例えば、図3Aのようなデータとして出力される。
【0080】
品質適合組成候補出力部23は、組成設計部22から出力された、製剤の組成候補(例えば、図3A)を入力データとして保存効力判定学習モデル11に入力することで、保存効力を推定し、該保存効力の結果が適合である場合に、品質適合組成候補として出力する。
本実施形態では、品質適合組成候補出力部23は、上記実施形態の品質予測装置1の保存効力判定学習モデル11による推定結果から品質適合組成候補を出力する。つまり、図3Bの予測結果のように、適合、準適合、不適合のいずれかが判定される。
【0081】
合格判定部24は、品質適合組成候補出力部23から出力された、品質適合組成候補(図3B)を、予め設定されている合格条件と比較し、合格の可能性を判定し、合格組成候補を出力する。合格判定部24は、判定を2種以上に分類して判定してもよい。分類としては、合格、準合格、準不合格、不合格から選択される2種以上であってもよい。
合格条件としては、法規制の条件、製剤の効果に基づく条件、過去販売した製剤の組成データに基づく条件である。合格条件は入力装置25から入力されてもよく、成分基礎データ記憶部20あるいは記憶装置26に記憶されていてもよい。
図6に、設定された設計条件、製剤の組成候補、品質適合組成候補、合格判定の結果データを示す。製剤組成作成の実行画面に表示されてもよい。
【0082】
組成設計部22および品質適合組成候補出力部23は、合格判定部24により予め設定された数(たとえば、1から20)の合格の組成データが出力されるまで実行されてもよい。合格の組成データは、ランキングされて出力されてもよい。実行時間が制限タイム(例えば、秒単位、分単位など任意に設定できる)を超えた場合に、各部の機能が停止されてもよい。
【0083】
(実施例)
第一製剤組成作成装置2を用いて、合格候補を出力した結果を図7に示す。合格候補のそれぞれについて製造し、Escherichia coli(E.coli)における保存効力試験を行い、合格候補8のうち7つは保存効力試験において適合であった。
この結果から、第一製剤組成作成装置2を使用して、保存効力試験に適合できる新規な製剤組成を簡単に作成できることが確かめられた。
【0084】
(第二製剤組成作成装置)
図8に第二製剤組成作成装置4の一例を示す。第二製剤組成作成装置4は、第一製剤組成作成装置2のうち品質適合組成候補出力部23が省略された構成である。
第二製剤組成作成装置4は、成分基礎データ記憶部20、設計条件設定部21、組成設計部22、合格判定部24、入力装置25、記憶装置26、表示装置27、通信装置28を備える。第一製剤組成作成装置2と異なる構成について説明し、同じ機能は説明を省略する。
【0085】
合格判定部24は、組成設計部22から出力された、製剤の組成候補を、予め設定されている合格条件と比較し、合格の可能性を判定し、合格組成候補を出力する。
【0086】
(第三製剤組成作成装置)
第三製剤組成作成装置は、第二製剤組成作成装置2において、合格判定部24で合格として出力された組成データ入力データとして、保存効力判定学習モデル11に入力することで、保存効力を推定し、該保存効力の結果が適合である場合に、品質適合組成候補として出力してもよい。
【0087】
(第四製剤組成作成装置(B0))
図9、10A、10B、10C、10D、10Eに第四製剤組成作成装置(プログラムがインストールされている情報処理装置)の実行フローの一例を示す。第四製剤組成作成装置は、2種以上の品質判定学習モデルのうちから1種の品質判定学習モデルを選択する選択部を有する。品質適合組成候補出力部は、選択部で選択された1種の品質判定学習モデルを使用する。
【0088】
ステップ1(S1)において、プログラムを起動し、AI利用の画面として図10Aがモニターに表示される。この画面で、品質判定学習モデルの選択ができる。すでに作成された学習モデルのAI名を選択(クリック)する。本実施形態では、保存効力判定学習モデルとして決定木学習モデル(LightGBM)、有効成分経時安定性判定学習モデルとしてラッソ回帰学習モデル(Lassoモデル)を選択できる。
ステップ2(S2)において、大腸菌の保存効力判定学習モデル「ECOLI」を選択する。このモデルは決定木学習モデル(LightGBM)である。図10Bの画面へ遷移する。
ステップ3(S3)において、図10Bの画面で、「予測」ボタンを指定する。この指定により、組成設計部は、敵対的生成ネットワーク学習モデル(TGAN)を使用し、所定数(例えば、10から500の任意の値)の製剤の組成候補を自動的に設計し出力する。図10Cの画面へ遷移する。
【0089】
ステップ4(S4)において、図10Cの操作画面から、各成分の配合量の所定の許容範囲を設定する。図10Cの画面において、各成分の配合量の最大値(上限)、最小値(下限)を入力する。予め設定されている初期値を変更して入力することができる。予測結果の条件として合格(2)、準合格(2)、不合格(0)を指定する。その他、出力される品質適合組成候補の最大数を指定できる。配合量を小数点何位まで入力できるかも指定できる。次いで、「生成」ボタンを指定する。図10Dの画面へ遷移する。
【0090】
ステップ5(S5)において、図10Dの操作画面から、成分ごとにcos類似度計算の際に基準となる値を指定する。予め設定されている初期値を変更して入力することができる。次いで、「生成」ボタンを指定する。
ステップ6(S6)において、敵対的生成ネットワーク学習モデル(TGAN)で生成された製剤の組成候補は、配合量の最大値と最小値の範囲にはいる組成候補が抽出される。この抽出された組成候補が入力データとして、決定木学習モデル(LightGBM)(保存効力判定学習モデル)に入力される。決定木学習モデル(LightGBM)(保存効力判定学習モデル)は、入力された組成候補の保存効力を推定し、保存効力の結果が合格(2)の組成候補を品質適合組成候補として出力する。図10Eの画面へ遷移する。
図10Eの画面に、合格(2)の品質適合組成候補の出力結果を示す。予測精度、生成データ、信頼確率、cos類似度、各成分の配合比を表示する。縦列のセルは、昇順、降順にソートできる。各データは記憶媒体へ保存でき、外部装置へ転送できる。
【0091】
次に、有効成分経時安定性判定学習モデルとしてラッソ回帰学習モデル(Lassoモデル)を使用する例を示す。
図10Aの画面で、有効成分経時安定性判定学習モデルとしてラッソ回帰学習モデル(Lassoモデル)を選択する。図10Fの画面へ遷移する。
「予測」ボタンを指定し、敵対的生成ネットワーク学習モデル(TGAN)を使用し、所定数(例えば、10から500の任意の値)の製剤の組成候補を設計し出力する。
敵対的生成ネットワーク学習モデル(TGAN)で生成された製剤の組成候補は、配合量の最大値と最小値の範囲にはいる組成候補が抽出される。この抽出された組成候補が入力データとして、有効成分経時安定性判定学習モデルに入力される。図10Gの画面において、有効成分経時安定性判定学習モデルは、入力された組成候補の有効成分(パルミチン酸レチノール)の残存率を推定し、予測結果、真の答え、予測精度などを出力する。
【0092】
(組成物(製剤)を製造する方法)
製剤を製造する方法は、特に制限されず、従来公知の調剤方法を採用できる。
【符号の説明】
【0093】
1 品質予測装置
10 学習モデル記憶部
11 保存効力判定学習モデル
112 有効成分経時安定性判定学習モデル
12 品質推定部
121 保存効力推定部
122 有効成分経時安定性判定推定部
15 入力装置
16 記憶装置
17 表示装置
18 通信装置
2 第一製剤組成作成装置
20 成分基礎データ記憶部
21 設計条件設定部
22 組成設計部
221 敵対的生成ネットワーク学習モデル
23 品質適合組成候補出力部
24 合格判定部
25 入力装置
26 記憶装置
27 表示装置
28 通信装置
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F
図10G
図11