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特開2024-35224高温環境における使用のための可動式撮像装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035224
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】高温環境における使用のための可動式撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 23/24 20060101AFI20240306BHJP
   F27D 21/02 20060101ALN20240306BHJP
【FI】
G02B23/24 A
F27D21/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023141799
(22)【出願日】2023-08-31
(31)【優先権主張番号】10 2022 122 153.9
(32)【優先日】2022-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ホルガー フニウス
(72)【発明者】
【氏名】シュテファニー メッテン
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ヴァイザー
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ヒッツェル
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン ルップ
(72)【発明者】
【氏名】ヨナス ディーンスト
【テーマコード(参考)】
2H040
4K056
【Fターム(参考)】
2H040AA04
2H040DA01
2H040DA17
2H040FA02
4K056FA24
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、概して、とりわけ高温環境における使用に適している可動式撮像装置に関する。本発明はさらに、高温環境における場所または領域を視覚化するための方法に関する。
【解決手段】可動式撮像装置であって、少なくとも1つの光学素子、ならびに貫通孔を備えたケーシングを有しており、少なくとも1つの光学素子は、ケーシングの内部で貫通孔内に取り付けられている、可動式撮像装置が提供される。ケーシングの遠位領域は、作動中、高温環境にさらすことができ、この場合、作動中、ビームは、遠位端面の開口を通ってケーシング内に入射して、光学素子に到達することができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
好ましくは高温環境における使用のための、特に短時間使用のための、可動式撮像装置であって、
少なくとも1つの光学素子、ならびに
遠位端面、および近位端面、ならびに前記遠位端面から前記近位端面まで達する貫通孔によって画定されている、好ましくは細長く延在するケーシングを有しており、
前記少なくとも1つの光学素子は、前記ケーシングの内部で前記貫通孔内に取り付けられており、
前記ケーシングの遠位領域は、作動中、前記高温環境にさらすことができ、近位領域は、作動中、前記高温環境から離れた側にあり、前記高温環境の外側に留まっており、
作動中、ビームが、前記遠位端面の開口を通って前記ケーシング内に入射して、前記光学素子に到達することができ、
好ましくは、前記撮像装置は、作動中、冷却媒体の供給または添加なしで、少なくとも600℃の温度にさらすことができ、この場合、前記ケーシングは、前記温度で、少なくとも5秒、好適には少なくとも10秒の時間にわたって、前記光学素子のために熱保護を提供する、可動式撮像装置。
【請求項2】
前記ケーシングの内部の温度は、120℃を超えて上昇せず、好適には110℃を超えて上昇せず、特に好適には100℃、90℃、80℃、75℃またはそれどころか70℃を超えて上昇せず、これにより前記光学素子のための熱保護が生じる、請求項1記載の可動式撮像装置。
【請求項3】
前記熱保護を、作動中、少なくとも30秒の、好適には少なくとも60秒の時間にわたって提供することができる、請求項1または2記載の可動式撮像装置。
【請求項4】
前記撮像装置は、作動中、約1000℃以上の、好適には約1500℃以上の温度に、特に好適にはそれどころか1600℃以上の、約1750℃の温度にさらすことができる、請求項1から3までのいずれか1項記載の可動式撮像装置。
【請求項5】
前記ケーシングは、少なくとも1種の耐火性材料を含んでおり、または該材料をベースとしており、好ましくは、例えばケイ酸アルミニウム、ケイ酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、または酸化アルミニウムのようなシリカ(SiO)をベースとする少なくとも1種の耐火性セラミック材料を含んでいる、請求項1から4までのいずれか1項記載の可動式撮像装置。
【請求項6】
前記ケーシングは、少なくとも前記遠位端部の領域で、円筒対称に形成されていて、かつ/または前記貫通孔は円筒対称に形成されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の可動式撮像装置。
【請求項7】
前記ケーシングは、20mm~200mmの範囲の、好適には30mm~100mmの範囲の直径を有しており、かつ/または好ましくは、200mm~600mmの範囲の、好適には300mm~500mmの、特に好適には350mm~450mmの長さを有している、請求項6記載の可動式撮像装置。
【請求項8】
前記ケーシングの壁厚は、前記貫通孔と前記ケーシングの外周面との間で測定して、少なくとも8mm、好適には少なくとも10mm、特に好適には少なくとも15mmまたは20mmである、請求項1から7までのいずれか1項記載の可動式撮像装置。
【請求項9】
前記遠位端面における前記開口は、少なくとも1つの観察窓によって閉じられている、請求項1から8までのいずれか1項記載の可動式撮像装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つの観察窓は、好ましくは透明のガラス、好ましくはホウケイ酸ガラス、またはシリカガラス、または好ましくは透明のガラスセラミックスから成る少なくとも1つの保護ガラスまたはサファイアガラスを含む、請求項1から9までのいずれか1項記載の可動式撮像装置。
【請求項11】
前記少なくとも1つの保護ガラスは、少なくとも1つの片側コーティングを有しており、前記コーティングは、好ましくは前記保護ガラスの遠位側に配置されており、または前記少なくとも1つの保護ガラスは、両側コーティングを有している、前記両請求項のいずれか1項記載の可動式撮像装置。
【請求項12】
前記コーティングは、少なくとも1つの熱線反射層を、好ましくは銀コーティング、および/またはITOコーティング、および/または鏡面加工部および/または部分鏡面加工部を含む、請求項11記載の可動式撮像装置。
【請求項13】
前記観察窓は、好ましくは互いに間隔を置いて配置されている少なくとも1つの第1の保護ガラスおよび第2の保護ガラスを有しており、前記互いの間隔は、1mm~10mmである、請求項1から12までのいずれか1項記載の可動式撮像装置。
【請求項14】
前記光学素子は、電磁ビームを検出するための撮影ユニットおよび/または画像検出のための対物レンズを含む、請求項1から13までのいずれか1項記載の可動式撮像装置。
【請求項15】
前記撮影ユニットは、好ましくは可視波長範囲の電磁ビームを検出するために形成されていて、センサ、例えばCCDセンサまたはCMOSセンサ、フォトカメラ、またはビデオカメラを有している、請求項14記載の可動式撮像装置。
【請求項16】
前記対物レンズは、前記ケーシングの前記遠位領域において前記貫通孔内に配置されている、前記3つの請求項のいずれか1項記載の可動式撮像装置。
【請求項17】
前記撮影ユニットと前記対物レンズとは、前記ケーシングの前記遠位領域において前記貫通孔内に一緒に配置されている、前記3つの請求項のいずれか1項記載の可動式撮像装置。
【請求項18】
前記対物レンズは前記ケーシングの前記遠位領域に、前記撮影ユニットは前記ケーシングの前記近位領域に配置されている、前記3つの請求項のいずれか1項記載の可動式撮像装置。
【請求項19】
前記対物レンズは前記ケーシングの前記遠位領域に、前記撮影ユニットは前記ケーシングの外側に配置されている、前記3つの請求項のいずれか1項記載の可動式撮像装置。
【請求項20】
前記対物レンズと前記撮影ユニットとの間に、画像伝達のための装置が、好ましくは光ファイバイメージガイドが設けられている、前記両請求項のいずれか1項記載の可動式撮像装置。
【請求項21】
前記光ファイバイメージガイドが、絶縁被覆体または被覆管内に保持されている、請求項20記載の可動式撮像装置。
【請求項22】
少なくとも前記対物レンズ、および前記画像伝達のための装置および/または前記撮影ユニットは、組立てユニットとしてまたはモジュールとして形成されている、請求項1から21までのいずれか1項記載の可動式撮像装置。
【請求項23】
好ましくは高温環境における場所または領域を視覚化するための方法であって、請求項1から22までのいずれか1項記載の可動式撮像装置を使用する、視覚化するための方法。
【請求項24】
作動中、前記可動式撮像装置の遠位端部は、開口を通じて前記高温環境に、少なくとも10mm、好適には少なくとも20mm、50mmまたはそれどころか100mm以上導入可能であり、そこで所定の時間、好ましくは5秒、10秒、30秒またはそれどころか60秒以上にわたってとどまる、請求項23記載の視覚化するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、とりわけ高温環境における使用に適している可動式撮像装置に関する。本発明はさらに、高温環境における場所または領域を視覚化するための方法に関する。
【0002】
プロセスを監視するために、撮像装置もしくはカメラシステムがますます頻繁に、多種多様な形式で使用されており、これにより進行中のプロセスを視覚化して、これによりプロセスを調整および最適化し、あるいは目標プロセスからの偏差を適時に識別することができる。
【0003】
比較的高い温度のもとでまたはそれどころか高温領域で進行するプロセスにおいても、視覚化のための装置がいっそう使用されるようになっている。したがって、例えば、冷却されるもしくは冷却可能なカメラまたはビデオシステムが開発されており、これらは例えば廃棄物焼却の際に産業炉で使用することができる。これらは、例えば火炎画像を分析し、それに応じて燃焼プロセスを調整し、最適化するために利用することができる。燃料もしくはその組成は頻繁に変化するので、まさに廃棄物焼却の分野ではこのようなことが極めて有効である。
【0004】
このようなカメラは、鉄産業および鋼産業分野においても使用することができる。そこで、または例えば発電所においても、このようなカメラは、例えば連続運転中にスラグ形成を観察し、相応にプロセスを調整および最適化するために、あるいはクリーニングサイクルおよび修正サイクルを適時に識別して計画するためにも、使用することができる。
【0005】
この場合、カメラは、開口、例えば観察穴を通して、大抵の場合は部分的に炉室または燃焼室内に導入され得る。しばしば明らかに500℃をまたは1000℃をも超える温度のもとでの大きな熱作用のために、カメラケーシングは通常、冷却可能であり、作動中に水冷可能であるので、カメラの高温は、通常は、冷却水温度の範囲内にある。
【0006】
撮像は、冷却されるカメラケーシングの開口を介して行われてよい。例えば、煤粒子または炎を窓から遠ざけておくことができるようにするために、開口を遮断空気でパージすることができる。
【0007】
これにより、水冷および/またはエアパージによって、このような極端な条件下で、比較的長期間の使用を可能とすることができる。
【0008】
設備の操作者は、これにより、設備の近傍に全く近づくことなく、燃焼室もしくは炉内を観察することができる。このことは、例えば燃焼室の壁における観察ガラスなどの他の解決手段に比べて大きな利点を提供する。
【0009】
メンテナンス目的で、カメラを燃焼室から取り出すことができる。これは、例えば冷却水または遮断空気がなくなった場合に、カメラの損傷を回避するために自動的に行うことができる。
【0010】
冷却可能なカメラ装置は、独国特許出願公開第102016202422号明細書に記載されている。このカメラ装置は、この場合、冷却媒体が供給され得る管アセンブリを有している。カメラは、この管アセンブリ内に保持されていて、装置の作動中、冷却することができる。この装置は、100℃の温度を有する熱設備に適している。
【0011】
ガラス産業の分野でも、このような冷却可能なカメラシステムのために様々な用途がある。例えば、冷却されるカメラは、溶融槽内の耐火材料の状態または液状のガラス溶融物上のバッチカーペットを視覚化および監視するために使用される。これにより、適時に修理を計画および実施することができるか、またはプロセスをより良好に調整および最適化することもできる。
【0012】
しかしながら、冷却されるカメラシステムの場合には、相応の冷却システムが十分確実に形成されることに永続的に留意しなければならず、これには例えば、流量モニタ等の適切な監視装置が必要である。
【0013】
これにより、カメラの迅速な組込みおよび取り外しは、常に可能というわけではく、しかしながらこれは、例えば、溶融槽の内壁の特定の箇所で耐火材料が損傷した場合に、正確にこの箇所をすぐに検査できるようにするために時として必要となる。
【0014】
カメラの永続的な組込みは、メンテナンスの手間に関する欠点も伴う場合がある。つまり、例えば溶融槽内の全領域を視覚化することができるようにするためには、複数のカメラが設けられなければならず、これらのカメラに相応の冷却媒体も供給されなければならない。
【0015】
カメラシステム用の冷却システムが故障した場合のために、例えば自動的な引き戻し装置のような相応の安全装置が設けられて、使用できるように維持されていなければならず、このことは、設備技術的なさらなる手間と、相応のスペースも必要とする。
【0016】
さらに、カメラの冷たいまたは冷却された部分におけるガラス凝縮物の問題が、まさにガラス溶融槽に関連して生じる。
【0017】
発明者らは、このような欠点を想定している。
【0018】
したがって、本発明の課題は、上述した問題を回避する、高温環境における使用のための可動式撮像装置を提供することである。
【0019】
この場合、撮像装置は、高温環境における可能性のある箇所、例えば内壁の領域を迅速に視覚化することができるように、簡単に操作され、かつ柔軟に使用可能であることが望ましい。
【0020】
この場合、撮像装置は、ほぼまたは理想的には、他の媒体なしで使用できることが望ましい。
【0021】
さらに、撮像装置は、500℃を上回る、好適には1000℃をも上回る高温のもとで使用できることが望ましい。
【0022】
この場合、撮像装置は、このような比較的高温のもとで、十分に長い時間であっても、理想的には、領域または場所を視覚化することを可能とする少なくとも数秒の時間にわたって、使用できることが望ましい。
【0023】
この課題は、驚くほど簡単に、独立請求項のうちの1つによる、高温環境における使用のための可動式撮像装置によりならびに高温環境における場所または領域を視覚化するための方法により解決される。
【0024】
特に、この場合、本開示の範囲内における「可動式」という用語は、本発明による撮像装置の持続的な取り付けが作動時に不要であり、本発明による撮像装置の柔軟な取り扱いが可能であることを意味し、これにより、例えば溶融装置または清澄装置の様々な場所における柔軟な撮像を短い時間間隔で提供することができる。
【0025】
本発明の好適な実施形態および別の態様は、各従属請求項に記載されている。
【0026】
したがって、第1の態様では、本発明は、好ましくは高温環における使用のための、特に短時間使用のための、可動式撮像装置であって、
少なくとも1つの光学素子、ならびに
遠位端面、および近位端面、ならびに遠位端面から近位端面まで達する貫通孔によって画定されている、好ましくは細長く延在するケーシングを有しており、
少なくとも1つの光学素子は、ケーシングの内部で貫通孔内に取り付けられており、
ケーシングの遠位領域は、作動中、高温環境にさらすことができ、近位領域は、作動中、高温環境から離れた側にあり、高温環境の外側にとどまっており、
作動中、ビームが、遠位端面の開口を通ってケーシング内に入射して、光学素子に到達することができる、可動式撮像装置に関する。
【0027】
この場合、高温環境は、高められた温度が、特に継続的に支配している場所または環境を意味する。この場合、高温とは、100℃超または100℃を明らかに上回る温度を意味するものとする。特に、高温とは、300℃、400℃、または500℃、または600℃を超える、好適には1000℃をも超える温度も意味する。
【0028】
このような温度は、例えば廃棄物焼却の際に、例えば産業焼却炉において、または鉄産業や鋼産業の様々な分野においても生じる可能性がある。特に、この場合、例えば、ガラス工業の分野で存在するこのような高温環境も意図されている。この場合、高温環境は、例えば、溶融槽の上炉の領域に見受けられる。
【0029】
有利には、本発明による撮像装置は、作動中、冷却媒体の供給または添加なしで動作することができる。これは、例えば、水冷用の冷却水、または冷却用の空気もしくは圧縮空気の相応の供給を省くことができることを意味している。したがって、特に好適な実施形態では、本発明による撮像装置は、作動中、冷却媒体の供給または添加なしでよい。
【0030】
本発明による撮像装置は、作動中、冷却媒体の供給または添加なしで、少なくとも600℃の温度にさらすことができ、この場合、ケーシングは、この温度で、少なくとも5秒、好適には少なくとも10秒の時間にわたって、光学素子のために熱保護を提供する。
【0031】
このことは、本発明による撮像装置を、特に簡単に、かつ高い柔軟性で使用可能とする。冷却媒体と共に動作する公知の炉ペリスコープでは、冷却管路および/またはパージ管路の敷設および事前設置に多くの時間を要し、これによりさらに、複数の操作者の存在も必要となることが多いが、本発明の撮像装置ではこのような状況が省かれる。
【0032】
高温環境では、ケーシングが光学素子に熱保護を提供するので、光学素子を、ケーシングの内部で少なくとも10秒の時間にわたって使用し続けることができる。
【0033】
これにより、光学素子を、ケーシングによって少なくとも上記の時間にわたって過熱から保護することができ、例えば、光学素子による画像検出および/または撮影ユニットまたは評価ユニットへの画像または信号伝達を行うことができる。
【0034】
この場合、可動式撮像装置は、取扱いが特に容易であり、需要が短時間であるならばさらなる媒体接続なしに使用することができる。
【0035】
公知の炉ペリスコープは、例えばガラス溶融物または炉室の、むしろ持続的な、つまり時間的に比較的長い観察には適しているが、これらのシステムは短時間の使用にはあまり適していない。
【0036】
その理由は例えば、持続的に設置される炉ペリスコープの、一方の位置から他方の位置への移転は、必要な冷却設備および保持部に基づき、常にこのために資格を有する操作者によってしか実施することができない、ということである。さらに、このような改造には、比較的多くの前処理時間が必要である。それというのも、例えば冷却管路およびパージ管路を敷設し直すまたは設置する必要があるため、相応の点検の前に数時間の前処理時間を見込まなければならないからである。
【0037】
これに対して、本発明による可動式撮像装置によって、操作者は、直接かつ短時間で、僅かな労力によって様々な場所で、相応の点検を行うことができる。
【0038】
これにより、例えば、設備状態、例えば溶融槽の上炉の迅速な鑑定および評価が特に簡単に可能である。これにより、保守措置および修理をより良好かつ簡単に計画することができる。
【0039】
このような設備の運転も改善することができる。すなわち、例えば、1つのガラスから別のガラスに「再溶融」すべき場合、ガラス溶融設備の運転を改善することができる。これにより、本発明による可動式撮像装置を迅速に利用できることにより、迅速に決定基準を提供することができる。これにより、溶融時間だけでなく原料およびエネルギも節約することができる。
【0040】
一般的に、溶融設備の内室もしくは上炉およびバッチカバーを鑑定するための撮像を実施する正確な時点を早期に確定することは困難である。この場合、本発明の可動式撮像装置は、迅速かつ単純に、複数回であっても様々な個所で使用することができるので、大きな利点を提供する。
【0041】
これにより、例えば、高温のもとで作動する設備の操作員に、設備の内室から相応の画像を迅速に提供することができる。
【0042】
冷却水のための冷却管路またはパージ管路、および相応の設備を省くことができるので、可動式撮像撮影装置の使用は特に簡単であり、1人だけの人によって実施することもできる。さらに、公知の炉室カメラで使用される冷却媒体は、例えば流量または冷却媒体の還流温度に関しても監視されなければならない。したがって、冷却媒体の提供のほか、故障が生じた場合に、炉室カメラの少なくとも一部がガラス溶融物内に達するおそれがあるので、これらの冷却媒体の監視も行われる。
【0043】
特に好適な実施形態では、可動式撮像装置は、遠位端部もしくは遠位端面で、このような炉ではしばしば設けられているような開口を通して、前方へ少なくとも部分的に挿入できるように構成されている。このような開口は、例えば、30mm~400mmの範囲の、典型的には50mm~250mmの外径をしばしば有し得る標準的な観察穴であってよい。
【0044】
ケーシングは、少なくともその遠位領域で、これらの開口を通じた簡単な挿入もしくは押込みが可能であるように、これらの開口に対応して同様に形成されていてよく、この場合、好ましくは、可動式撮像装置の可動性を得るために、ある程度の側方間隔がなお維持されることが望ましい。
【0045】
標準的な観察穴は、円形に形成されていることが多いので、ケーシングが、少なくとも遠位端部の領域で、円筒対称に形成されていることが提案されてよい。この場合、有利には、可動式撮像装置が問題なく遠位端部で前方に向かって観察穴内に導入され得るように、ケーシングの直径は、標準的な観察穴の直径よりも小さい。ケーシングは、このために、例えば、20mm~200mmの範囲の、好適には30mm~100mmの範囲の直径を有していてよい。
【0046】
少なくとも、作動中、高温環境にさらされるべき区分における、ケーシングの実質的に円筒対称の構成により、熱が、ケーシングの外面にわたって均一に内部へと貫通孔に到ることができるので、熱の入力および熱衝撃耐性に関する利点も提供される。
【0047】
可能な限り高い可動性を達成するために、ケーシングが過度に長く形成されないことが提案される。しかしながら、ある程度の長さにより、別の光学素子を、高温領域の外側にも配置することができる可能性が提供され、もしくは初めて、可動式撮像装置を観察穴から高温領域内に十分遠くまで導入することができるようになる。一般的に、約200~600mmの範囲の、好適には300~500mm、特に好適には350~450mmの範囲の、例えば400mmのケーシングの長さが特に有利であることがわかっている。
【0048】
高温環境内への導入後、ケーシングの加熱を可能な限り長く遅延させるためには、ケーシングの所定の壁厚が有利である。壁厚は、一方では外寸によって、つまり円筒対称のケーシングでは外径によって、かつ他方では貫通孔のサイズによって規定される。貫通孔の横断面形状は、好適な実施形態では、ケーシングの横断面形状に相当するので、均質な加熱を可能にする十分に一定の壁厚が与えられている。したがって、ケーシングが円筒対称である場合、貫通孔も同様に円筒対称である。
【0049】
光学素子を収容することができるように、貫通孔の所定の最小寸法が有利であり、この最小寸法は、好適には少なくとも0.5cm×0.5cmであり、もしくは円筒対称の形状の場合、直径は少なくとも0.5cm、好適には少なくとも1cmまたは例えば2cmであってもよい。
【0050】
ケーシングの必要な壁厚は、ケーシングの材料の熱特性、特に熱伝導率にも依存する。一般的に、ケーシングの壁厚は、相応の材料が選択されているならば、貫通孔とケーシングの外周面との間で測定して、少なくとも8mm、好適には少なくとも10mm、特に好適には少なくとも15mmまたはそれどころか20mmが有利であることがわかっており、これについてはさらに後述する。
【0051】
これにより、所定の時間にわたってケーシング内部の最も高温の個所の温度が120℃を超えて上昇せず、好適には110℃を超えて上昇せず、特に好適には100℃、90℃、80℃、75℃またはそれどころか70℃を超えて上昇せず、これにより、約600℃を超える約1500℃までの、またはそれどころか約1750℃までの温度で、内部に保持された光学素子のための熱保護を提供することができる可動式撮像装置の実施形態を提供することができる。撮像装置の遠位端面が相応の熱にさらされている時間は、この場合、少なくとも30秒、好適には少なくとも60秒であり得る。80℃以下の温度は、特に敏感な光学素子にとっても臨界的なものではないと見なされる。
【0052】
この場合、ケーシングの内部とは、特に、少なくとも1つの光学素子を収容および/または保持するために設けられた貫通孔の領域を意味する。ケーシングの内部における温度は、例えば保護目的で、遠位端部から約10mmの間隔を置いて貫通孔に取り付けられているサーモ素子によって測定することができる。
【0053】
このような形式の熱保護は、機能性を維持するためには、そこに取り付けられた光学素子のために十分であり得る。ケーシングの内部に取り付けられた光学素子を、このようにして、過熱に対して保護することができる。
【0054】
この場合、少なくとも1つの光学素子は、可動式撮像装置の、特に、作動中、所定の時間にわたって高温環境にさらされる領域または区分に取り付けることができる。換言すると、少なくとも1つの光学素子を少なくとも数ミリメートル、好適には数センチメートル、高温環境内に、例えばガラス溶融槽の上炉に差し込むことができ、この場合、光学素子は、ケーシングによって少なくとも短時間、高温環境に対して保護されている。所定の実施形態では、光学素子を、数デシメートルも、例えば、20dm、30dm、またはそれどころか40dm以上、上炉内に差し込むことができる。
【0055】
少なくとも5秒、好適には10秒の時間は、高温環境の内部から最初の画像を取得して、例えば上炉内の問題の場合に最初の見通しを得るためにはすでに十分であり得る。
【0056】
高温環境、ケーシングの材料およびケーシングの壁厚に応じて、より長い時間を実現することもでき、これにより相応により長い時間にわたって高温環境内の画像を検出することが可能となる。熱保護を、少なくとも30秒、好適には少なくとも60秒以上、例えば70秒、80秒または90秒の時間にわたって保証することができ、つまり所定の温度が超過されないならば、有利である。
【0057】
したがって、少なくとも遠位端面の領域で、約1000℃以上の、好適には約1500℃以上の温度に、特に好適にはそれどころか1600℃以上の、約1750℃の温度にさらすことができる可動式撮像装置を提供することができる。これにより、約1600℃の温度を有し得るガラス溶融槽の炉室または上炉を、内側から鑑定することもできる。約1600℃以上の温度のもとでも、ケーシングの内部に、5秒、またはそれどころか10秒の時間にわたって熱保護を維持することができた。
【0058】
ケーシングのためには、有利には、一方では特に良好に高い外気温にさらすことができ、したがって、高い熱負荷に耐え得ることから、温度安定性と見なすことができる材料が選択される。他方では、ケーシングが少なくとも遠位端面の領域において、作動中、高温環境にさらされた後、内部への伝熱を可能な限り長く遅延させるためには、高質量および大熱容量が有利である。外部からケーシング内部への可能な限りゆっくりかつ僅かな伝熱により、鑑定のための相応に長い所要時間が可能となる。さらに、高い熱衝撃耐性も有利であり、これにより、可動式撮像装置を、時間がかかる予熱なしに直接、高温環境内に導入することができる。さらに、ケーシングは片側で、極めて高い熱負荷にさらされるので、低い熱膨張係数も有利である。
【0059】
特に適切な材料として、耐火性材料、特に耐火性セラミック材料、つまりセラミックスまたはセラミックもしくは無機非金属材料が挙げられる。このような材料は、テクニカルセラミックスとも呼ばれ、複合セラミックスも可能であり考えられる。
【0060】
耐火性材料としては、一般的に、600℃超の使用温度を有する材料が該当し、この場合、ISO 150もしくはDIN 51 060に準拠したSK17よりも高いコーン溶倒点を有する材料が好ましく、このような材料は、1500℃までの温度またはそれどころかそれよりも高い温度において耐火性と見なされる。
【0061】
したがって、主要成分は、無機非金属系材料、すなわち酸化物、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウムまたは酸化クロム、炭素および炭化ケイ素である。
【0062】
特に適した材料は、例えば炉のライニングにも使用されるような、SiOをベースとするシリカ材料であり得る。シリカ材料には、例えば、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウムが含まれる。特に良好な経過は、Schott AG社(マインツ在)により「Quarzal」の名称で入手可能である、焼結された石英ガラスをベースとするセラミック材料から得られた。この材料は、泥漿鋳込み成形法で製作することができ、泥漿鋳込み成形により、すでに最終輪郭に近い構成部材を得ることができ、次いでそれらの構成部材からケーシングを比較的簡単に作り上げることができる。
【0063】
したがって、有利な材料は、以下の特性を有し得る:
- 20℃~1000℃での熱膨張係数:約0.2×10-61/K~2×10-61/K
- 150℃~1000℃の比熱容量:0.94~1.26kJ/kgK
- 1100℃での熱伝導率:0.5~2W/mK
- 放射率ε:0.3~0.8
【0064】
好適には、材料は、所定の用途、つまり所定の高温環境に応じて選択される。したがって、特に単純に、例えばケーシングのためには、炉ライニングのための材料と同じ材料を選択することができる。
【0065】
ケーシングの内部の温度経過は、ケーシングの壁を通る熱伝導によって大きな影響を受けするだけでなく、特に作動中、遠位端面における開口を介してケーシング内に進入し得る熱放射によっても影響を受ける。
【0066】
したがって、本発明の好適な実施形態では、開口が、遠位端面で、作動中に熱放射を低減する少なくとも1つの観察窓によって閉じられていることが想定されている。
【0067】
観察窓は、内室からの画像を得るために、好ましくは電磁放射の可視波長範囲または隣接する波長範囲において透過性に形成されている。さらに、ケーシングの場合と同様に、高い熱衝撃耐性が有利であり、さらには所望の温度での高い耐熱性が有利である。
【0068】
したがって、有利には、観察窓は、好ましくは透明なガラス、例えばホウケイ酸ガラスから成る少なくとも1つの保護ガラスを含むことができ、または特に約800℃を上回る計画された使用温度において、好ましくは透明なガラスセラミックスを含むことができる。
【0069】
例えばSchott AG社(マインツ在)により「Robax」の名称で入手可能であるような透明なガラスセラミックスから成る保護ガラスは、熱膨張係数が僅かであるという大きな利点を提供し、このことはケーシングの開口内に組み込む際に有利であり得る。そうでなければ、半径方向の膨張が、ケーシング材料における望ましくない応力状態をもたらすおそれがある。したがって、観察窓をルーズに挿入することもできる。このことは、熱衝撃耐性の観点からも有利である。
【0070】
発明者らは、保護ガラスが、高温環境において支配している放射線を特に関連する波長スペクトルにおいて反射するコーティングを有しているならば、ケーシングの内部への温度入力をさらに著しく低減できることを見出した。
【0071】
片側のコーティングによりすでに、作動中に高温環境に面した保護ガラスの側にコーティングが適用されていると特に、極めて良好な結果を達成することができた。この側は、保護ガラスの遠位側と呼ばれてもよい。両側のコーティングにより、さらなる改善が達成された。
【0072】
特に良好な結果は、赤外放射線を反射するコーティングにより得られた。
【0073】
このコーティングは、例えば、ITO層としても知られる、例えば酸化スズでドープされた酸化インジウム層であり得る。このような層は、真空下での、例えばカソードスパッタリングによる堆積によって、比較的容易に保護ガラス上に施与可能であり、この場合、数百ナノメートルから数マイクロメートルまでの層厚ですでに十分であり得る。
【0074】
さらに、薄い銀層もしくは観察窓の部分鏡面加工または鏡面加工は、これによって熱放射も同様に極めて良好に反射され得るので、特に良好に適していることが判明した。複数のこのような熱線反射層の組み合わせも可能であり、考えられる。
【0075】
このような層は、一方では、赤外線波長範囲において高い反射率を有するので特に有利である。他方では、このような層は、可視波長範囲で、典型的には80%超の、好適には85%超であり得る高い透過性を有しているので、本発明による撮像装置の視覚的な能力に関して殆ど悪影響を与えない。
【0076】
したがって、保護ガラスは、好適な実施形態では、少なくとも片側で、特に好適には両側で、少なくとも熱線反射層または(部分)鏡面加工部が設けられた透明なガラス板またはガラスセラミックス板を含んでいてよい。
【0077】
本発明の発展形態では、観察窓は、好適には互いに間隔を置いて配置されている少なくとも1つの第1の保護ガラスと第2の保護ガラスとを有していることが想定されている。少なくとも2つの保護ガラスは、好ましくは互いに同心的に、互いに1mm~10mmの間隔を置いて配置されている。この場合、遠位端部側に配置されている保護ガラスには、上述したように、放射線保護として、コーティングが設けられていてよく、この場合、これに対して間隔を置いて配置された第2の保護ガラスが、付加的な熱伝導保護を提供することができる。
【0078】
可動式撮像装置の光学素子は、電磁ビームを検出するための少なくとも1つの撮影ユニットおよび/または画像検出のための対物レンズを含んでいてよい。
【0079】
撮影ユニットは、好ましくは可視波長範囲の電磁放射を検出するように形成されていてよい。このためには、センサ、例えば、CCDセンサまたはCMOSセンサ、フォトカメラまたはビデオカメラが設けられていてもよい。
【0080】
可動式撮像装置は、光学素子を配置する様々な可能性を提供する。光学素子は、様々な位置に、例えば、ケーシングの貫通孔内に配置されてよい。
【0081】
一実施形態では、対物レンズは、ケーシングの貫通孔内に配置されていてよい。この場合、好ましくは、可動式撮像装置の遠位端面が前方に向かって高温環境へと供給される際に、光学素子に少なくとも短時間、十分な熱保護を提供するために、遠位端面までの最小間隔が保たれ、この最小間隔は、好適には少なくとも5mm、特に好適には少なくとも10mmである。しかしながら、遠位端面から遠く離れて、対物レンズのための視野が著しく制限される可能性があり、このことはむしろ不都合である。この場合の対策として、貫通孔を遠位端面に向かって円錐状に拡開することができる。有利には、光学素子全体が、近位端部の方向で少なくとも1つの観察窓の後方に位置していて、これにより熱保護を提供することができる。
【0082】
本発明の一実施形態では、少なくとも撮影ユニットと対物レンズとは、ケーシングの遠位端部の領域で貫通孔内に共に配置されていてよい。このような配置は、数秒の、例えば5秒、好適には10秒の範囲の短時間の撮影には、または例えば1000℃未満、または好適には800℃未満または500℃未満の比較的低い温度での撮影にはすでに十分であり得、撮影ユニットにより撮影された画像は、例えば、有線でまたは遠隔伝送を介して無線でも、好ましくは高温環境の外側に配置されている受信器に伝送することができる。
【0083】
撮影ユニットと対物レンズならびに場合によっては別の光学素子は、コンパクトな配置形式で、例えば近位側から所望の位置まで貫通孔内に簡単に挿入することができ、作動後は、ケーシング材料の進行する過熱によって光学素子が損傷されるおそれが生じる前に、迅速に再びケーシングから引き出すことができる。
【0084】
しかしながら本発明の好適な実施形態では、撮影ユニットと対物レンズとは互いに間隔を置いて配置されている。
【0085】
対物レンズは、一般的に、撮影ユニットよりも耐熱性があるので、このような配置は、高すぎる温度のために撮像を終了させなければならなくなる前に、可動式撮像装置を、相応により長時間かつ/またはより高い温度で使用することができるという利点を提供する。
【0086】
本発明の一実施形態では、撮影ユニットをケーシングの近位端部の領域で貫通孔内に配置し、対物レンズをケーシングの遠位端部の領域に配置することが想定されている。作動時には、この配置では、まずは、対物レンズのみが高温環境にさらされていて、高温環境内に突入していない近位端部は、より長い時間、相対的に低い温度のもとにとどまる。遠位領域および近位領域という用語は、ケーシングに関してそれぞれ、ケーシングのほぼ中心から対応する遠位端面または近位端面の方向で続いている、ケーシングの区分を意味している。
【0087】
作動中、熱伝導によって、ケーシングはさらに加熱されるので、このような配置でも、撮影素子が、熱作用により損傷されることのないように、使用時間が制限されることになる。
【0088】
したがって、本発明のさらに別の実施形態では、少なくとも撮影ユニットをケーシングの外側に配置することが想定されている。このために、撮影ユニットを、例えば保持装置によって、近位端面から間隔を置いて保持することができる。これにより、ケーシングから撮影ユニットへの熱伝導が、著しく低減されるという大きな利点が得られる。これにより、耐用期間もしくは使用時間をさらに著しく延長することができ、もしくは可動式撮像装置を、相応により高い温度で使用することができ、好ましくは、1000℃よりも高い、または1200℃よりも高い、または1400℃よりも高い温度で、またはそれどころか1500℃以上の温度範囲まで使用することができる。
【0089】
画像を、対物レンズから撮影ユニットへと伝達するために、有利には、対物レンズと撮影ユニットとの間に、別の光学素子を、特に画像伝達のための装置を設けることができる。好適な実施形態では、画像伝達のための装置は、光ファイバイメージガイドを含んでいてよい。光ファイバイメージガイドの使用する場合は、対物レンズが、光ファイバイメージガイドの入射側端部に結像を行い、別の結像装置が、光ファイバイメージガイドの出射側端部を撮影ユニットに結像するように構成されていてよい。
【0090】
この場合、基本的には、例えば内視鏡において使用されるようなフレキシブルな可撓性のイメージガイドが考慮されるが、ボロスコープとも呼ばれることの多い剛性的なイメージガイドも考慮される。可撓性のイメージガイドは、通常、プラスチックから成る被覆体を備えて形成されており、これにより、このイメージガイドは、より高い温度に対してより敏感に反応することができる。剛性的なイメージガイドは、堅固なガラス被覆体を備えて形成されてよく、したがってこれにより、このイメージガイドは、本発明に特に適したものとなる。
【0091】
プラスチックから成るライトガイドファイバの他に、本発明による撮像装置における使用には、特にガラスから成るまたはガラスを含むライトガイドファイバ、つまりグラスファイバから成る束も適している。それというのも、グラスファイバは、比較的高い温度でも比較的良好な伝達特性を有しているからである。光ファイバイメージガイドのために、例えばサファイアファイバも考えられる。
【0092】
別の実施形態では、画像伝達は、無線でまたは有線で作動することも想定されている。
【0093】
有利には、イメージガイドは、相応に高い解像度を、例えば25μm以下の、好適には12.5μm、10μm、7μmまたはそれどころか2.5μmの直径を有するライトガイドファイバを有する。さらに、イメージガイドの小さな外径が有利であり、これにより、周囲の熱保護のために十分な空間が残り、他方では撮像装置の外寸、特に外径は過度に大きくならない。
【0094】
25μmのライトガイドファイバの直径により、10mm以下の、好適には6mm以下の外径を有する光ファイバイメージガイドを使用することができる。ライトガイドファイバの直径がより小さければ、画像伝送を損なうことなく、イメージガイドの外径をさらに大幅に減じることができ、例えば5mmまたはそれどころか3mmまたはそれよりも小さくすることができる。これにより、壁厚が同じ場合には、ケーシングの外寸をさらに減じることができ、このことは、一方では可動性を高め、他方ではケーシングの重量を減じる観点でも有利である。
【0095】
勿論、画像解像度を改善するために、より細いファイバを使用することも可能であり、想定されている。自明の通り、有利には撮影ユニットもしくはセンサは、イメージガイドの光学分解能に相応して選択され、その際に相応に必要とされる別の光学素子、例えば別の対物レンズもそれに応じて選択される。
【0096】
光ファイバイメージガイドを保護するために、光ファイバイメージガイドを収容し、軸方向でケーシングとイメージガイドとの間に配置されている絶縁被覆体または被覆管が設けられていてよい。これは、例えば、金属製の被覆管、例えば、ステンレス鋼またはアルミニウム製の被覆管であってよい。被覆管のための別の適切な材料は、セラミック材料、例えばシリカガラスまたは酸化アルミニウムをもむことができる。
【0097】
堅固な被覆管は、さらに改善された絶縁性の他、少なくとも対物レンズおよび画像伝達のための装置を撮影ユニットとも一緒に、モジュールとしてまたは組立てユニットとして形成する可能性を提供する。
【0098】
これにより、作動後、敏感な光学素子をケーシングから迅速に分離することができるという大きな利点が得られる。何故ならば、ケーシングは、高温環境から除去される前にすでに蓄えた熱を、引き続き、貫通孔の方向で内側に向かって熱伝導によって放出し、その結果、そこでは高温環境から除去された後も、内部における温度がさらに上昇するからである。
【0099】
ケーシングの貫通孔からの、好ましくはすべての光学素子の迅速な分離、例えば引出しにより、光学素子はそれ以上、加熱されなくなる。これにより、使用時間も、さらに改善される。
【0100】
例えば、可動式撮像装置を高温環境から取り出した後、約10分の時間にわたり、貫通孔の領域でなお、温度がさらに上昇することがあることを観察することができた。
【0101】
本発明の発展形態では、可動式撮像装置の近位端面の領域に、作動時における撮像装置の保持および/または移動のための手段を設けることが想定されている。これは例えば、熱保護された保持グリップであってよく、この保持グリップは、ケーシングに両側で取り付けられている。このために、さらなる取付装置が設けられていてよい。
【0102】
本発明のさらなる発展形態では、近位端面の領域に、操作者のためのさらなる保護装置を、例えば、観察穴の開放時に、高温環境から流出するおそれのある熱を遮るための防熱シールドを設けることが想定されている。
【0103】
さらなる態様では、本発明は、好ましくは高温環境における場所または領域を視覚化するための方法であって、好ましくは上述したような少なくとも1つの特徴を有した可動式撮像装置を使用する、視覚化するための方法に関する。
【0104】
この方法は、作動中、可動式撮像装置の遠位端部を、開口、例えば観察穴から高温環境内に、例えば燃焼室または炉室に導入もしくは挿入することができ、この場合、可動式撮像装置の近位端部は、開口の外側にとどまることを想定している。高温環境内への導入とはこの場合、好ましくは少なくとも1つの光学素子を備えた、撮像装置の遠位領域が、少なくとも10mm、好適には少なくとも20mm、50mmまたはそれどころか100mm以上、高温環境内に突入し、そこで所定の時間、例えば5秒、10秒、30秒またはそれどころか60秒以上にわたってとどまることを意味している。
【0105】
可動式撮像装置は、この場合、近位端面の領域で唯一人の操作者によって、保持することおよび動かすことができ、これによりその使用は極めて柔軟かつ簡単になる。このようにして、高温環境内の可能性のある場所を、例えばガラス溶融設備の内壁の領域を迅速に視覚化して検査することができる。
【0106】
この場合、有利には、可動式撮像装置は、冷却水または冷却空気や遮断空気などの媒体なしで作動するので、インフラストラクチャを提供する必要はない。
【0107】
本発明のさらなる詳細は、図示の実施例および添付の特許請求の範囲の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0108】
図1】可動式撮像装置の一実施形態の側面図である。
図2図1の可動式撮像装置の実施形態の縦断面図である。
図3図1の可動式撮像装置の実施形態の平面図である。
図4】様々な光学素子およびその配置と共に可動式撮像装置の一実施形態を示す別の側面図である。
図5】熱保護シールドの一例を示す図である。
図6】可動式撮像装置内の光ファイバイメージガイドの先端における経時的な温度推移を示す図である。
図7】プロトタイプで測定した、観察窓の様々な態様におけるケーシングの内部の温度推移の比較を示す図である。
【0109】
好適な実施形態の詳細な説明
好適な実施形態の以下の詳細な説明では、明瞭性のため、各実施形態において実質的に同一の要素には同一の参照番号を付してある。ただし、本発明をより明確にするために、図面に示された好適な実施形態は、必ずしも縮尺通りに示されていない。
【0110】
図1は、本発明の主旨での可動式撮像装置10の一実施形態の側面図を示す。
【0111】
図2は、図1の可動式撮像装置10の実施形態の縦断面図を、図3は、可動式撮像装置10のこの実施形態の平面図を示している。
【0112】
図4は、分解図の形式で様々な光学素子およびその配置を示す、可動式撮像装置10の一実施形態の別の側面図を示している。
【0113】
可動式撮像装置10は、高温環境での使用を、特に短時間使用をコンセプトとしており、撮像装置10は、作動中、本発明によれば、冷却媒体の供給または添加なしで動作する。
【0114】
このために、示された実施形態の図示の撮像装置10は、少なくとも1つの光学素子、例えば撮影エレメント27と、対物レンズ24(図1には示されていない)と、中心軸線31に沿った細長く延在するケーシング30とを有している。ケーシング30は、遠位端面35と、対向する近位端面33とによって画定されている。中心軸線31に沿って、貫通孔36(図1では見えていない)が延在していて、したがって貫通孔は、遠位端面から近位端面まで達している。
【0115】
遠位端面35もしくは隣接する遠位領域34は、作動中、高温環境52にさらすことができ、例えば開口51から炉室50内に挿入することができる。図1により明らかであるように、作動中、近位端面33もしくは隣接する近位領域32は、高温環境52の外側にとどまる。
【0116】
対物レンズ24は、貫通孔36内で、ケーシング30の遠位領域34に取り付けられ、そこで保持されている。作動中、ビーム、例えば可視波長範囲の電磁ビームは、遠位端面35の開口を通ってケーシング30内に入射して、対物レンズ24に到達することができる。
【0117】
高温環境52は、高められた温度が、特に継続的に支配している場所または環境である。この場合、高温とは、100℃超または100℃を明らかに上回る温度を意味するものとする。特に、高温とは、300℃、400℃、または500℃、または600℃を超える、好適には1000℃をも超える温度も意味する。
【0118】
このような温度は、例えば廃棄物焼却の際に、例えば産業焼却炉において、または鉄産業や鋼産業の様々な分野においても生じる可能性がある。特に、この場合、例えば、ガラス工業の分野で存在するこのような高温環境も意図されている。したがって、高温環境52はガラス溶融槽の上炉であってよい。
【0119】
可動式撮像装置10は、作動中、冷却媒体の供給または添加なしで動作する。これは、例えば、水冷用の冷却水、または冷却用の空気もしくは圧縮空気の相応の供給を省くことができることを意味している。
【0120】
可動式撮像装置10は、作動中、冷却媒体の供給または添加なしで、少なくとも600℃以上の温度に、例えば約1000℃以上の、好適には約1500℃以上の温度に、特に好適にはそれどころか1600℃以上の、約1750℃の温度にさらすことができ、この場合、ケーシング30は、この温度で、少なくとも5秒、好適には少なくとも10秒以上の時間にわたって、貫通孔内に保持された対物レンズ24内の光学素子のための温度保護を提供する。
【0121】
可動式撮像装置10は、取扱いが容易であり、需要が短時間であるならばさらなる媒体接続なしに使用することができる。これにより、可動式撮像装置10によって、操作者は、直接かつ短時間、僅かな労力で、様々な場所で使用することができ、相応の検査を行うことができる。
【0122】
可動式撮像装置10は、遠位端部もしくは遠位端面35で、このような炉50ではしばしば設けられているような開口51を通して、前方へ少なくとも部分的に挿入できるように構成されている。図1に概略的に示された配置では、可動式撮像装置10は遠位端面35で、僅かに炉50内に挿入されている。開口51は、この場合、約100mmの外径を備えた標準的な観察穴である。
【0123】
ケーシング30は、図2図4でも良好に認識されるように、円筒対称に形成されている。この場合、ケーシングの直径は、ケーシングを通すべき観察穴の直径よりも小さい。この実施例では、ケーシング30は、約75mmの外径を有しており、別のジオメトリおよび寸法も可能であり、例えば、20~200mmの範囲の、または30mm~100mmの範囲の直径を有したケーシング30も考えられる。
【0124】
ケーシング30は、さらに、約400mmの長さを有しており、別のジオメトリおよび寸法も可能であり、例えば、約200~600mmの範囲の、または300~500mmの、または350~450mmの範囲のケーシングの長さも考えられる。
【0125】
貫通孔36は、ケーシング30と同様に、円筒対称に形成されている。貫通孔36は、この場合、約30mmの直径を有しており、勿論、他の直径およびジオメトリも可能であり、考えられる。
【0126】
したがってケーシング30の壁厚は、約22.5mmとなり、勿論、別の寸法およびジオメトリも可能であり、考えられる。したがって、ケーシング30の好適な壁厚は、少なくとも8mm、好適には少なくとも10mm、特に好適には少なくとも15mmまたはそれどころか20mmの範囲にあってよい。過度に厚い壁厚、例えば100mmを超える壁厚は、ケーシングの外寸を相応に大きくしてしまい、このことは、取扱い性および可動性に悪影響を及ぼしかねない。したがって、壁厚は、100mm未満、または特に50mm、40mm、または25mm未満であることが望ましい。過剰に薄い壁厚も、ケーシング30の迅速な加熱をまねき、これにより、熱保護を殆どまたは極めて短時間しか利用することができなくなる。
【0127】
所定の時間にわたってケーシング内部の温度が120℃を超えて上昇せず、好適には110℃を超えて上昇せず、特に好適には100℃、90℃、80℃、75℃またはそれどころか70℃を超えて上昇しない可動式撮像装置10を提供することができ、これにより、内部に保持された光学素子のための、例えば、ケーシング30内に保持された対物レンズ24のための熱保護を提供することができる。この熱保護は、高温環境52において、約600℃を上回る、1000℃~約1500℃の、またはそれどころか約1750℃までの温度においても可能であり得る。撮像装置10の遠位端面35が相応の熱にさらされている時間は、この場合、少なくとも30秒、好適には少なくとも60秒であり得る。
【0128】
光学素子、例えば対物レンズ24は、この場合、貫通孔36内で遠位領域34で保持されていて、ケーシングによって過熱から保護されている。光学素子、例えば対物レンズ24を収容するための好適な領域は、図2に遠位収容領域37として概略的に記入されている。この収容領域37は、作動中、少なくとも部分的に、高温環境52内に突入することができ、この場合、ケーシングによって少なくとも短時間、高温環境から保護されている。
【0129】
可動式撮像装置10は、少なくとも遠位端面の領域で短時間、約1000℃以上の、好適には約1500℃以上の温度に、特に好適にはそれどころか約1750℃の温度にさらすことができる。可動式撮像装置10は、このような高温のもとでさえ、ケーシングの内部の熱保護を5秒またはそれどころか10秒の時間にわたって提供し、これは、貫通孔内の温度が120℃を超えて上昇せず、好適には110℃を超えて上昇せず、特に好適には100℃、90℃、80℃、75℃またはさらには70℃を超えて上昇しないことを意味する。
【0130】
ケーシング30のためには、有利には、耐火性材料、特に耐火性セラミック材料が設けられており、したがって、セラミック材料もしくは無機非金属材料が設けられている。複合セラミックスも可能であり、考えられる。したがって、ケーシング30の主要成分は、無機非金属系材料、すなわち酸化物またはケイ酸塩二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウムまたは酸化クロム、炭素および炭化ケイ素であってよい。
【0131】
特に適した材料は、例えば炉のライニングにも使用されるように、シリカ材料であり得る。シリカ材料には、例えば、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウムが含まれる。
【0132】
図示した実施例では、ケーシング30は、Schott AG社(マインツ在)により「Quarzal(登録商標)」の名称で入手可能である、焼結された石英ガラスをベースとするセラミック材料から製造されている。この材料は、泥漿鋳込み成形法で製作することができ、泥漿鋳込み成形により、すでに最終輪郭に近い構成部材を得ることができ、次いでそれらの構成部材からケーシングを作り上げることができる。したがって、例えば最終輪郭に近い円筒状の構成部材を鋳込むことができ、この部材には、焼結後、中心の貫通孔36を切削加工により設けることができる。「Quarzal(登録商標)」に関するさらなる記載は、Schott AG社の対応するデータシート、例えば2007年7月の「STF-1 Produktion Keramik und Sonderbauteile, Anwendungsbeispiele und Empfehlungen(STF-1製造セラミックス、特殊構成部材、使用例および推奨事項)」に記載されている。
【0133】
図示した実施形態では、貫通孔36が、遠位端面35で、作動中に熱放射を低減する少なくとも1つの観察窓25によって閉じられていることが想定されている。
【0134】
観察窓25は、透明に形成されている。この実施例では、観察窓25は、保護ガラスとしての透明のガラス、例えば、ホウケイ酸ガラスを含む。しかしながら、特に、計画された使用温度が約800℃を上回る場合は、観察窓は、例えばSchott AG社(マインツ在)により「Robax」の名称で入手可能であるような透明なガラスセラミックスを含んでいてもよい。観察窓25は緩く挿入されており、この場合、収容部として半径方向の凹部38が貫通孔に設けられている。
【0135】
観察窓25は、図示の実施形態では、片面コーティングを有するように構成されていて、この片面コーティングは、作動中、高温環境に向けられている。別の実施形態では、観察窓25の両面にコーティングが施されている。この実施例では、コーティングは、銀コーティングであり、一般的には、可視波長範囲で高い透過率を有する層、および/または赤外線放射を反射する層が好ましい。観察窓25の部分鏡面加工または鏡面加工またはこれらの組み合わせも可能である。
【0136】
本発明の発展形態では、観察窓25は、互いに間隔を置いて配置されている少なくとも1つの第1の保護ガラスと第2の保護ガラスとを有していることが想定されている。これらの少なくとも2つの保護ガラスは、互いに同心的に、互いに1mm~10mmの間隔を置いて配置されている。この場合、遠位端部側に配置されている保護ガラスにも同様に、放射線保護として、片面コーティングまたは両面コーティングが設けられていてよい。
【0137】
図4に示された実施形態は、別の光学素子としての撮影ユニット27をさらに含んでおり、この撮影ユニットは、本実施例ではフォトカメラとして形成されており、電磁放射の検出に用いられる。撮影ユニット27は、可視波長範囲の電磁放射を検出するように形成されている。このためには、一般に、センサ、例えば、CCDセンサまたはCMOSセンサが設けられていてもよく、またはビデオカメラが設けられていてもよい。例えば図4に示されているような画像伝送のための装置が、光ファイバイメージガイドを有している場合、嵌め込み枠23によって、光ファイバイメージガイドの入射側端部を対物レンズ24に接続することができる。
【0138】
光ファイバイメージガイドは、そのファイバエレメントが画像出口側で撮影ユニット27に当て付けられることにより、直接、撮影ユニット27に連結されていてよい。有利には、これに対して代替的に、結像装置26によって、光ファイバイメージガイドの出口側端部を、撮影ユニット27上に結像することができる。この場合、結像装置26の光学的なフリービームガイドにより、光ファイバイメージガイドと撮影装置27との間を離隔することができ、このような離隔により、光ファイバイメージガイドから撮影装置27への熱伝達を減じることができる。さらに、光ファイバイメージガイドおよび/または結像装置26は、オプションとしての光学フィルタを有していてよく、光学フィルタは例えば、光学的なバンドパスフィルタの形態で、観察にとって望ましい波長を透過させるが、望ましくないスペクトル成分を遮断または反射させ、これにより撮影ユニット27への熱放射の直接的な入射をさらに低減し、またはそれどころか遮断する。
【0139】
可動式撮像装置10は、光学素子を配置する様々な可能性を提供する。光学素子は、様々な位置に、例えば、ケーシングの貫通孔内に、または貫通孔の外側にも配置されてよい。
【0140】
一実施形態では、対物レンズ24は、ケーシングの貫通孔内に配置されていてよく、好ましくは、遠位収容領域37に配置されてよい。
【0141】
この場合、好ましくは、好適には少なくとも5mm、特に好適には少なくとも10mmである、遠位端面35までの最小間隔が保たれる。図2の実施例では、画像フィールドを拡大するために、遠位端面35には円錐状の拡開部36がさらに設けられている。
【0142】
本発明の一実施形態では、撮影ユニット27と対物レンズ24とは、ケーシング30の遠位端部の領域で貫通孔36内に、例えば、遠位収容領域37に共に配置されていてよい。このような配置は、数秒の、例えば5秒、好適には10秒の範囲の短時間の撮影には、または例えば1000℃未満、または好適には800℃未満または500℃未満の比較的低い温度での撮影はすでに十分であり得、撮影ユニット27により撮影された画像は、例えば、有線でまたは遠隔伝送を介して無線でも、好ましくは高温環境の外側に配置されている受信器(図示せず)に伝送することができる。
【0143】
撮影ユニット27と対物レンズ24ならびに場合によっては別の光学素子は、コンパクトな配置形式で、例えば近位端面33から所望の位置まで貫通孔36内に簡単に挿入することができ、作動後は、ケーシング材料の進行する過熱によって光学素子が損傷されるおそれが生じる前に、迅速に再びケーシング30から引き出すことができる。
【0144】
しかしながら本発明の好適な実施形態では、撮影ユニット27と対物レンズ24とは互いに間隔を置いて配置されている。
【0145】
対物レンズ24は、一般的に撮影ユニット27よりも耐熱性があるので、このような配置は、高すぎる温度のために撮像を終了させなければならなくなる前に、可動式撮像装置10を、相応により長時間かつ/またはより高い温度で使用することができるという利点を提供する。
【0146】
本発明の一実施形態では、撮影ユニット27をケーシング30の近位端部の領域で貫通孔内に配置し、対物レンズ24をケーシングの遠位端部の領域に配置することが想定されている。図2では、これら両領域が明らかに示されており、この場合、遠位収容領域37の側方に、例えば撮影ユニット27を収容することができる近位収容領域39が示されている。
【0147】
作動時には、この配置では、まず、対物レンズ24のみが高温環境にさらされていて、高温環境内に突入していない近位端部は、より長い時間、相対的に低い温度のもとにとどまる。
【0148】
作動中、熱伝導によって、ケーシング30はさらに加熱されるので、このような配置でも、撮影素子27が、過剰に高い熱作用により損傷されることのないように、使用時間が制限されることになる。
【0149】
したがって、本発明のさらに別の実施形態では、少なくとも撮影ユニット27をケーシング30の外側に配置することが想定されている。このために、撮影ユニット27を、図2の実施例に示されているように、保持装置41によって、近位端面33から離隔して保持することができる。これにより、ケーシング30から撮影ユニット27への熱伝導が再度、著しく低減されるという大きな利点が得られる。したがって、このようにして、停止時間もしくは使用時間を著しく延長することができ、もしくは可動式撮像装置10を、相応により高い温度で使用することができ、例えば、1000℃よりも高い、または1200℃よりも高い、または1400℃よりも高い温度で、またはそれどころか1500℃以上の温度範囲まで使用することができる。
【0150】
画像を、対物レンズ24から撮影ユニット27へと伝達するために、有利には、対物レンズ24と撮影ユニット27との間に、別の光学素子を、特に画像伝達のための装置22を設けることができる。好適な実施形態では、画像伝達のための装置は、光ファイバイメージガイドを含んでいてよい。別の実施形態では、画像伝達は、無線でまたは有線で行われてもよい。
【0151】
有利には、イメージガイドは、相応に高い解像度を、例えば25μm以下の、好適には12.5μm、10μm、7μmまたはそれどころか2.5μmの直径を有するライトガイドファイバを有する。さらに、イメージガイドの小さな外径が有利であり、これにより、周囲の熱保護のために十分な空間が残り、他方では撮像装置10の外寸、特に外径は過度に大きくならない。
【0152】
図4の実施例で設けられているように、25μmのライトガイドファイバの直径により、例えば、10mm以下の、好適には6mm以下の外径を有する光ファイバイメージガイドを使用することができる。ライトガイドファイバの直径がより小さければ、画像伝送を損なうことなく、イメージガイドの外径をさらに大幅に減じることができ、例えば5mmまたはそれどころか3mmまたはそれよりも小さくすることができる。ライトガイドファイバは、この実施例では、グラスファイバである。
【0153】
光ファイバイメージガイドを保護するために、光ファイバイメージガイドを収容し、保持する絶縁被覆体または被覆管21が設けられていてよい。被覆管21は、金属材料またはセラミック材料から形成することができ、この実施例では、ステンレス鋼またはアルミニウムから製作されている。堅固な被覆管は、さらに改善された絶縁性の他、少なくとも対物レンズ24および画像伝達のための装置22を撮影ユニット27とも一緒に、モジュールとしてまたは組立てユニット20として形成する可能性を提供する。
【0154】
これにより、作動後、敏感な光学素子をケーシング30から迅速に分離することができるという大きな利点が得られる。何故ならば、ケーシングは、高温環境から除去される前にすでに蓄えた熱を、引き続き、貫通孔36の方向で内側に向かって熱伝導によって放出する可能性もあり、その結果、そこでは高温環境から除去された後も、内部における温度がさらに上昇するおそれがあるからである。
【0155】
ケーシングの貫通孔からの、好ましくはすべての光学素子の迅速な分離、例えば引出しにより、光学素子はそれ以上、加熱されなくなる。これにより、使用時間も、さらに大幅に改善される。
【0156】
図2に示された実施形態では、可動式撮像装置10の近位端面33の領域に、作動時における撮像装置10の保持および/または移動のための手段を設けることが想定されている。このために、熱保護された保持グリップ42が設けられており、保持グリップは、取付装置40によってケーシング30の両側に接続されている(例えば図3も参照)。
【0157】
本発明のさらなる発展形態では、近位端面31の領域に、操作者のためのさらなる保護装置を、例えば、観察穴の開放時に、高温環境から流出するおそれのある熱を遮るための防熱シールド43を設けることが想定されている。
【0158】
図5は、このような防熱シールド43のための実施例を示している。
【0159】
例えばガラス溶融槽の上炉内で生じる可能性のあるような、1400℃の温度を有する高温環境にさらされる本発明によるケーシング30の内部における温度の経過が、様々な時点でシミュレーションに基づいて求められた。
【0160】
この場合、約22mm~約70mmの壁厚を有するケーシング30の遠位領域が高温環境内に挿入されると仮定した。また、シミュレーションでは保護ガラスであることを基本とした。
【0161】
材料としては、シミュレーションでは、ケーシング30のために焼結石英ガラスが使用され、この場合、ケーシングの外径は約75mmであった。開始温度または出発温度としては、約30℃の温度であることを基本とした。
【0162】
その結果、60秒後であってもなお貫通孔36内の領域全体が100℃未満の温度、特に30℃~100℃の温度を有しているのに対し、ケーシングの周辺領域、特に遠位端面35の領域は、すでに1000℃超~1400℃までの温度を有していることが示されている。したがって、ケーシング30内部の光学素子は、少なくとも上記の時間にわたり過度に高い熱作用から保護されている。
【0163】
しかしながら、ケーシングの内側では、極めて短い距離で大きな温度差が生じるので、低い熱膨張特性もしくは極めて良好な熱衝撃特性を有する材料を選択することが特に重要である。
【0164】
1400℃の温度を有する高温環境にさらされる本発明によるケーシング30の内部における温度の経過もシミュレーションされ、この場合、貫通孔36内では、被覆管を備えた光ファイバイメージガイドが使用され、特に様々な時点でさらなるシミュレーションに基づき求められた。
【0165】
この場合も、ケーシングの内部の温度を30秒間、100℃未満で維持できることが示されており、このことは、設けられている光学素子にとっては臨界的なものではないと考察されるので、対物レンズ24および光ファイバイメージガイドおよび/または撮影ユニット27を、ケーシングの内部で上記時間にわたり確実に使用することができる。この光ファイバイメージガイドは、60秒間使用した後に、30℃~約90℃の温度にさらされていることが示されている。
【0166】
図6は、FEMシミュレーションによって求められた、ケーシング30内に挿入された光ファイバのイメージガイドの先端における時間的な温度推移を示している。この場合、被覆管が設けられている。遠位開口は、観察窓25によって閉じられている。本発明による可動式撮像装置は、有利には動作中に約1000℃以上の、好適には約1500℃以上の、特に好適にはそれどころか1600℃以上の、それどころか約1750℃までの温度を有する高温環境にさらされ可能性があるが、1400℃においてシミュレーションによって得られた結果もすでに、その重要な利点を示している。
【0167】
最後に図7は、ケーシングの様々な構成および観察窓25のコーティングの様々な態様におけるケーシングの内部の実際の温度推移の比較を示している。測定もしくは推移aおよびbは、予備テストとして観察窓のないケーシングの5mmの袋孔直径の袋孔内において(推移a)、および30mmの袋孔直径の袋孔内において(推移b)、サーモ素子を用いて実施した。測定もしくは推移c、d、eおよびfは、観察窓および保護ガラスの様々なコーティングを備えたケーシング内で行われ、この場合、サーモ素子は、直接、ケーシングを通して保護ガラスに押し当てられた。遠位端部は、30秒の時間にわたって、1400℃の温度にさらされた。
【0168】
両推移aおよびbは、5mm(推移a)および30mm(推移b)である異なる直径の袋孔における温度推移を示している。この比較例では、試験的に、遠位開口を有していないケーシングが使用された。したがって、サーモ素子は、15mmの厚さの壁およびケーシングの端面によってのみ高温環境から分離されている。
【0169】
推移c、d、eおよびfにおけるコーティングは以下の通りである:
c:コーティングなし
e:内側コーティング
d:外側コーティング
f:内側および外側コーティング
【0170】
推移c(コーティングなし)では、熱放射に基づき、高温環境下への構造の挿入と共に温度がほぼ急激に著しく上昇することが明確に認められる。5秒後、100℃の限界に達するか、またはこれを上回る。
【0171】
コーティングの影響は、推移d、eおよびfの例において明確に認められ、両側でコーティングされた保護ガラスを使用する場合、温度最大値には、保護ガラスの後方、つまり例えば光学素子のための可能な収容領域37の後方で、約60秒後に初めて達し、この場合、約80℃である。
【0172】
可動式撮像装置10は、高温環境52内の場所または領域の視覚化のために使用することができる。
【0173】
このために、作動中、可動式撮像装置10の遠位端部を、開口51から高温環境52内に挿入することができ、この場合、可動式撮像装置10の近位端部は、開口51の外側にとどまる。
【0174】
シミュレーションは、例えば5秒、10秒、30秒または60秒以上の使用時間が可能であることを示している。
【0175】
可動式撮像装置は、この場合、唯一人の操作者によって、保持することおよび動かすことができ、これによりその使用は極めて柔軟かつ簡単になる。このようにして、高温環境52、例えばガラス溶融設備の内壁領域において、可能な場所を迅速に視覚化して検査することができる。
【0176】
この場合、有利には、可動式撮像装置10は、冷却水または冷却空気や遮断空気などの媒体なしで作動するので、インフラストラクチャを提供する必要はない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【外国語明細書】