(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035228
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】断熱シート及び曲げ加工品
(51)【国際特許分類】
B32B 29/02 20060101AFI20240306BHJP
B26F 1/18 20060101ALI20240306BHJP
B26D 3/08 20060101ALI20240306BHJP
B32B 27/10 20060101ALI20240306BHJP
F16L 59/07 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
B32B29/02
B26F1/18
B26D3/08 Z
B32B27/10
F16L59/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023142263
(22)【出願日】2023-09-01
(31)【優先権主張番号】63/403,090
(32)【優先日】2022-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】320007734
【氏名又は名称】株式会社KY7
(72)【発明者】
【氏名】林 裕義
【テーマコード(参考)】
3C060
3H036
4F100
【Fターム(参考)】
3C060AA01
3C060AA03
3C060BA10
3C060BF03
3H036AA09
3H036AB20
3H036AB24
3H036AB32
3H036AB45
3H036AC03
4F100AG00
4F100AG00A
4F100AK01
4F100AK01A
4F100BA02
4F100BA07
4F100DD02
4F100DD02A
4F100DG01
4F100DG01A
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4F100DG10A
4F100DG10B
4F100EJ17
4F100EJ17A
4F100EJ28
4F100EJ39
4F100GB16
4F100JJ03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】紙系素材を少なくとも一部に用いて断熱性能に優れた断熱シートを提供する。
【解決手段】断熱シート1が、繊維を有する紙系素材から形成され、一方面側に複数の凸部9を有する第1のシート3と、前記第1のシートの前記凸部に向かい合う第2のシート4と、を備え、少なくとも一部の前記凸部は、基端部9Bを有し、且つ、前記紙系素材を構成する前記繊維の密度として定められる繊維密度が前記基端部における前記繊維密度よりも小さい低密度部を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維を有する紙系素材から形成され、一方面側に複数の凸部を有する第1のシートと、
前記第1のシートの前記凸部に向かい合う第2のシートと、を備え、
少なくとも一部の前記凸部は、基端部を有し、且つ、前記紙系素材を構成する前記繊維の密度として定められる繊維密度が前記基端部における前記繊維密度よりも小さい低密度部を有する、
断熱シート。
【請求項2】
前記凸部は、先端部を有し、
前記低密度部は、前記先端部と前記基端部との間に形成されている、
請求項1に記載の断熱シート。
【請求項3】
前記凸部は、先端部を有し、
前記先端部は、前記紙系素材を構成する複数の前記繊維が横断する、
請求項1に記載の断熱シート。
【請求項4】
前記第1のシートは、前記凸部とは逆面側に突出した複数の外向き凸部を有する、
請求項1に記載の断熱シート。
【請求項5】
少なくとも一部の前記外向き凸部は、前記低密度部を有する、
請求項4に記載の断熱シート。
【請求項6】
さらに前記第1のシートに向かい合う第3のシートを有し、
前記第1のシートが前記第3のシートと前記第2のシートに挟まれている、
請求項1に記載の断熱シート。
【請求項7】
前記凸部は、スリット部を有する、
請求項1に記載の断熱シート。
【請求項8】
前記スリット部が、前記低密度部に繋がっている、
請求項7に記載の断熱シート。
【請求項9】
前記凸部は、開口部を有する、
請求項1に記載の断熱シート。
【請求項10】
前記第1のシートは、一方面側に、複数の前記凸部としての第1の凸部と、少なくとも2つの前記第1の凸部を含む領域に形成された第2の凸部とを有する、
請求項1に記載の断熱シート。
【請求項11】
前記低密度部の少なくとも一部に接着剤が付着している、
請求項1に記載の断熱シート。
【請求項12】
前記凸部として、高凸部と、前記高凸部の高さよりも高さの低い低凸部を有する、
請求項1に記載の断熱シート。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の断熱シートを用いた、
曲げ加工品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱シート及び曲げ加工品に関する。
【背景技術】
【0002】
断熱シートは、容器などの包装用部材等をはじめ様々な曲げ加工品等の用途で用いられている。断熱シートは、利用分野の拡大に伴い、より断熱性能を向上させることが要請されている。
【0003】
断熱シートの材質としては、プラスチック素材や紙系素材等様々なものが存在しているが、廃棄後における環境に対する影響に鑑み、紙系素材が少なくとも一部に用いられることが望まれている。
【0004】
したがって、断熱シートには、紙系素材を少なくとも一部に用いて断熱性能を向上させることが要請されている。
【0005】
特許文献1には紙製断熱シートを用いた容器が提案されている。特許文献1に提案された容器では、紙製断熱シートの内面側に多数のドット状凸部が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された容器に用いられる紙製断熱シートでは、断熱性能をより向上させる点で改良の余地がある。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みなされたもので、紙系素材を少なくとも一部に用いて断熱性能に優れた断熱シート及び曲げ加工品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、次の(1)から(12)にかかる発明を要旨とする。
(1)繊維を有する紙系素材から形成され、一方面側に複数の凸部を有する第1のシートと、
前記第1のシートの前記凸部に向かい合う第2のシートと、を備え、
少なくとも一部の前記凸部は、基端部を有し、且つ、前記紙系素材を構成する前記繊維の密度として定められる繊維密度が前記基端部における前記繊維密度よりも小さい低密度部を有する、
断熱シート。
(2)前記凸部は、先端部を有し、
前記低密度部は、前記先端部と前記基端部との間に形成されている、
上記(1)に記載の断熱シート。
(3)前記凸部は、先端部を有し、
前記先端部は、前記紙系素材を構成する複数の前記繊維が横断する、
上記(1)に記載の断熱シート。
(4)前記第1のシートは、前記凸部とは逆面側に突出した複数の外向き凸部を有する、
上記(1)に記載の断熱シート。
(5)少なくとも一部の前記外向き凸部は、前記低密度部を有する、
上記(4)に記載の断熱シート。
(6)さらに前記第1のシートに向かい合う第3のシートを有し、
前記第1のシートが前記第3のシートと前記第2のシートに挟まれている、
上記(1)に記載の断熱シート。
(7)前記凸部は、スリット部を有する、
上記(1)に記載の断熱シート。
(8)前記スリット部が、前記低密度部に繋がっている、
上記(7)に記載の断熱シート。
(9)前記凸部は、開口部を有する、
上記(1)に記載の断熱シート。
(10)前記第1のシートは、一方面側に、複数の前記凸部としての第1の凸部と、少なくとも2つの前記第1の凸部を含む領域に形成された第2の凸部とを有する、
上記(1)に記載の断熱シート。
(11)前記低密度部の少なくとも一部に接着剤が付着している、
上記(1)に記載の断熱シート。
請求項1に記載の断熱シート。
(12)前記凸部として、高凸部と、前記高凸部の高さよりも高さの低い低凸部を有する、
上記(1)に記載の断熱シート。
(13)上記(1)から(11)のいずれか1つに記載の前記断熱シートを用いた、
曲げ加工品。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、紙系素材を少なくとも一部に用いて断熱性に優れた断熱シートを得ることができる。
【0011】
本発明の断熱シートによれば、温度の高い物を取り扱う場合に、例えば、使用者が断熱シートを介在させて温度の高い物を手に取ることで、その物の熱が手に伝わるまでの時間を延ばすことができ、使用者が手にやけど等をすぐに生じる虞を低減することができる。
【0012】
また、本発明によれば、温度の低いものを取り扱う場合に、例えば、使用者が断熱シートを介在させて温度の低い物を手に取ることで、手が冷えるまでの時間を延ばすことができ、使用者が手に霜焼け等をすぐに生じてしまう虞を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1Aは、第1の実施形態の一実施例を説明するための平面図である。
図1Bは、
図1AのA-A線縦断面の状態を模式的に示す断面図である。
【
図2B】
図2Bは、
図2AのB-B線縦断面に対応した図であり凸部及び凸部の周囲の状態を模式的に示す平面図、及び一点鎖線で囲まれた領域XSの部分を抜き出して拡大した部分拡大図である。
【
図2C】
図2Cは、
図1Bの破線で囲まれた領域X1の部分を拡大した状態を模式的に示す断面図である。
【
図3A】
図3Aは、第1の実施形態の断熱シートにおける凸部の一実施例を説明するための平面図である。
【
図3B】
図3Bは、第1の実施形態の断熱シートにおける凸部の一実施例を説明するための平面図である。
【
図3C】
図3Cは、第1の実施形態の断熱シートにおける凸部の一実施例を説明するための平面図である。
【
図4A】
図4Aは、第1の実施形態の断熱シートにおける凸部の一実施例を説明するための平面図である。
【
図4B】
図4Bは、第1の実施形態の断熱シートにおける凸部の一実施例を説明するための平面図である。
【
図5A】
図5Aは、第1の実施形態の断熱シートにおける凸部の一実施例を説明するための平面図である。
【
図5B】
図5Bは、第1の実施形態の断熱シートにおける凸部の一実施例を説明するための平面図である。
【
図5C】
図5Cは、第1の実施形態の断熱シートにおける凸部の一実施例を説明するための平面図である。
【
図7】
図7Aは、第2の実施形態の一実施例を説明するための平面図である。
図7Bは、
図7AのC-C線縦断面の状態を模式的に示す断面図である。
図7Cは、
図7AのD-D線縦断面の状態を模式的に示す断面図である。
【
図8】
図8は、
図7Bの破線で囲まれた領域X2の部分を拡大した状態を模式的に示す断面図である。
【
図9】
図9Aは、第2の実施形態の一実施例を説明するための平面図である。
図9Bは、
図9AのE-E線縦断面の状態を模式的に示す断面図である。
【
図10】
図10は、第2の実施形態の一実施例を説明するための平面図である。
【
図16】
図16は、断熱シートを用いた曲げ加工品の一実施例を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、本発明にかかる断熱シートについて、第1の実施形態、第2の実施形態、第3の実施形態、第4の実施形態、及び第5の実施形態の順に図面を参照しながら説明する。また、応用例についてもあわせて説明する。
【0015】
本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0016】
以下の説明は本発明の好適な具体例であり、本発明の内容は、これらの実施の形態等に限定されるものではない。また、以下の説明において、説明の便宜を考慮して、前後、左右、上下等の方向及び水平面の方向を示すが、本発明の内容はこれらの方向に限定されるものではない。
図1の例では、Z軸方向を上下方向(上側が+Z方向、下側が-Z方向)であるものとし、Z軸方向を法線とする平面上に定められた互いに直交するX軸及びY軸に沿った方向をX軸方向及びY軸方向とし、さらにX軸とY軸で貼られた平面であるXY平面が水平面であるものとし、これらに基づき説明を行う。X軸、Y軸、Z軸については、
図1の他の図面(
図2から
図16)についても同様である。
図1から
図16の各図に示す大きさ等の相対的な大小比率は便宜上の記載であり、実際の大小比率を限定するものではない。
【0017】
[1 第1の実施形態]
[1-1 構成]
第1の実施形態にかかる断熱シート1は、第1のシート3と第2のシート4を備える。
【0018】
(第1のシート)
第1のシート3は、少なくとも一部を紙系素材で形成された繊維シート18で構成されている。
図1の例では、第1のシートは、全体的に紙系素材を用いて形成されている。すなわちこの例において、繊維シート18は、紙系素材で形成された紙系シートである。繊維シート18を形成する紙系素材(繊維シート18の材質)としては、植物繊維、その他の繊維を膠着させて製造される、いわゆる紙類の他、化学繊維紙、合成紙、耐水紙、コート紙、代替紙、羊皮紙、羊毛紙、ガラス繊維紙、ストーンペーパー、陶紙等が挙げられる。紙系素材は、再生紙であってもよいし、非再生紙であってもよい。なお、第1のシート3の材質として、繊維素材を有するものが使用されていれば、非紙系素材が用いられることを禁止するものではない。非紙系素材としては、布巾系素材(織布素材や不織布素材)等を挙げることができる。不織布素材としては、例えば、空気流によって積繊した粉砕パルプを結合してシート状に形成したいわゆるエアレイドシート、パルプ系素材、天然繊維素材や合成繊維等の繊維の不織布を挙げることができる。繊維シート18の材質として、紙系素材と非紙系素材とを組み合わせたものを用いることも可能である。
【0019】
(凸部)
第1のシート3は、一方面側に複数の凸部9を有する。凸部9は、第1のシート3の面のうち後述する第2のシートとの向き合い面3A側に突出している。凸部9は、基端部9Bと先端部9Aを有している。凸部9のうち少なくとも一部の凸部9の先端部9Aは、第2のシート4に接している。なお、全ての凸部9の先端部9Aが第2のシート4に接していてもよい。
【0020】
また、
図1A、
図1Bの例に示す断熱シート1では、凸部9は、第1のシート3の平面視上、ドット状に形成されており、少なくとも一部の凸部9について、隣り合う凸部9の基端部9Bが離れている。ただし、これは一例であり、一部の凸部9について、ドット状とはことなる形状に形成されてもよい。また、隣り合う凸部9の基端部9Bがつながっていてもよい。
【0021】
(凸部のピッチ及びレイアウト)
凸部9のピッチPIは、特に限定されないが、凸部9の基端部9Bの外径(直径)よりも大きいことが好ましい。
図5Aの例に示すように、凸部9のピッチPIは、隣り合う凸部9の中心間距離を示すものとする。凸部9のピッチPIが大きいことで隣り合う凸部9の間がやや離れた状態を形成することができる。また、凸部9の間がやや離れた状態となっている場合、第1のシート3の製造工程上、後述する低密度部12を形成することが容易となる。また、隣り合う凸部9のピッチは、
図1A、
図6Aに示すように一定であってもよいし、
図6B、
図6Cに示すように均一でなくてもよい。
図6Aから
図6Cは、凸部9のレイアウトの一実施例を示す図である。
図1Aでは、凸部9がピッチの均一な千鳥状に配置されている。
図6Aでは、凸部9がピッチの均一な格子状に配置されており、
図6Bでは、凸部9のピッチが徐々に狭くなるようなレイアウトで形成されている。
図6Cでは、凸部9のピッチ及び配置が不規則なレイアウトで形成されている。凸部9のピッチは、隣り合う凸部9の中心間の距離を示す。
【0022】
(凸部の形状)
凸部9の凸面90の形状は、
図1A、
図1Bの例では、
図2A、
図2Bに示すように、略ドーム状に形成された主隆起部9Cの先端側に隆起した部分(副隆起部9Dと呼ぶことがある)を有する形状となっている。ただし、
図2A、
図2Bは、凸部9の一実施例を示す平面図と断面図である。
図2Aは、凸部9の部分を模式的に示す拡大平面図である。
図2Bは、
図2AのB-B線縦断面の状態を模式的に示し、凸部9及びその周囲を示す拡大断面図となっている。なお、
図2A、
図2Bに示す凸部9は、一例であり、凸部9の形状を限定するものではない。例えば、凸部9の主隆起部9Cの形状は、三角錐台状や四角錐台状などの垂台形状、円錐台状、柱状等であってもよい。また、副隆起部9Dは、主隆起部9Cの形状が、三角錐状や四角錐状などの垂形状、円錐台状、柱状等である場合も凸部9の先端側に形成されてよい。副隆起部9Dの形状は、
図2A、
図2Bの例では円盤状となっているが、これは一例であり、
図2A、
図2Bの形状に限定されるものではない。
【0023】
(基端部)
凸部9の基端部9Bは、凸部9の外側に形成される周辺部15から凸部9が立ち上がる部分で構成されている。周辺部15は、隣り合う凸部9の間に形成される。
図1A、
図1B、
図2B等の例では、第1のシート3のうち凸部9を除いた部分が周辺部15となっている。
【0024】
(先端部)
凸部9の先端部9Aは、凸部9の先端を含む所定の部分(先端及びそれに隣り合う部分)として定義することができる。
図3A、
図3Bの例では、凸部9の副隆起部9Dの中心を含む所定の部分(副隆起部9Dの前面部9D1)が凸部9の先端部9Aとなっている。先端部9Aは、繊維が存在する部分となっており、紙系素材を構成する複数の前記繊維が横断する部分となっている。
【0025】
(圧縮部)
凸部9の先端部9Aの構成は、特に限定されるものでないが、先端部9Aには、圧縮部16が形成されていることが好ましい。圧縮部16は、基端部9Bよりも第1のシート3を形成するための繊維シート18の圧縮率が高い部分である。
図3A、
図3Bの例では、凸部9の全体のうち基端部9Bと低密度部12を除く部分が圧縮部16となっている。したがって、この例において、圧縮部16が少なくとも先端部9Aには形成されている。少なくとも先端部9Aに圧縮部16が形成されていると、凸部9の少なくとも先端部9Aにコシがある状態が形成され、先端部9Aを第2のシート4に接触させた状態で凸部9の形状が崩れにくくなり、凸部9の形状が崩れて凸部9と第2のシート4との接触面積が必要以上に増加してしまう虞を低減することができる。
【0026】
(圧縮部の厚み)
圧縮部16の厚みは、基端部9Bの厚みよりも薄いことが好ましい。このような構成は、後述する繊維シート18にエンボス加工を施す際に、圧縮部16に対応する部分が基端部9Bに対応する部分よりも高い所定の圧力で押圧されることで、実現することができる。
【0027】
(平坦面)
図2A、
図2Bの例に示すように、凸部9の先端部9Aに平坦面17が形成されていることが好適である。先端部9Aに平坦面17が形成されている場合、第1のシート3を第2のシート4と接合させた場合に、先端部9Aで第2のシート4の表面に接触した状態を安定的に形成することが容易となる。ただし、このことは、第1のシート3において凸部9の先端部9Aが平坦面17である場合に限定するものではない。第1のシート3における凸部9の先端部9Aが、凹面を有してもよいし、凸面を有してもよい。
【0028】
(低密度部)
複数の凸部9のうち少なくとも一部の凸部9は、
図2A、
図2Bに示すように、低密度部12を有する。低密度部12は、紙系素材を形成する繊維18Aの密度(繊維密度)が基端部9Bにおける繊維18Aの密度(繊維密度)よりも小さい部分として定めることができる。紙系素材を形成する繊維18Aの密度は、第1のシート3を形成した状態における繊維シート18を構成する繊維18Aの密度を示す。
【0029】
低密度部12は、
図2A、
図2Bの例では、凸部9の凸面90に沿って基端部9Bと先端部9Aの間の位置に形成されている。
図2A、
図2Aの例では、低密度部12は、凸部9の凸面90に沿って先端部9Aの外周縁よりも基端部9B側の位置に形成されており、すなわち副隆起部9Dの側面部9D2に形成されている。
【0030】
低密度部12は、先端部9Aにおける繊維18Aの密度(繊維密度)よりも密度が小さい部分であることが好ましい。また、低密度部12は、周辺部15における繊維18Aの密度よりも密度が小さいことが好ましい。ただし、低密度部12は、複数の繊維18Aが存在する部分であるものとする。なお、低密度部12は、後述するスリット状構造部35と同様に、繊維シート18に対して該繊維シート18の面方向に引っ張り力を付加された場合に低密度部12の輪郭形状の変化を規制される程度に繊維18Aが存在する部分、となっていることが好適である。また、低密度部12は、低密度部12の輪郭位置近傍の繊維18Aを凸部9の凸面90から外側に向かって変位させることを規制する程度に繊維18Aが存在する部分、となっていることが好適である。
【0031】
(繊維密度)
繊維密度(繊維18Aの密度)は、緊度を示すものとする。繊維密度は、例えば、凸部9の所定部分を切り出して切り出された部分における坪量と厚みを測定し、坪量を厚みで除してられた値(坪量/厚み)に基づき特定することができる。
【0032】
切り出された部分については、特定しようとする部分に応じて定めることができる。例えば、基端部9Bの繊維18Aの密度は、基端部9Bから任意に選択された複数個所における所定の部分を切り出し、その切り出された部分における繊維18Aの密度の算術平均値として定めることができる。先端部9Aの繊維18Aの密度は、先端部9Aを切り出し、その切り出された部分における繊維18Aの密度として定めることができる。また、周辺部15の繊維18Aの密度は、周辺部15から任意に選択された複数個所における所定の部分を切り出し、その切り出された部分における繊維18Aの密度の算術平均値として定めることができる。ただし、ここに記載する繊維密度の特定方法は、一例であり、他の方法を用いられることを禁止するものではない。上記の他にも、光透過率の測定等を特定方法として繊維密度が小さくなることが特定されてもよい。
【0033】
(低密度部の形状)
低密度部12の形状は、特に限定されないが、
図1A、
図1B、
図2A、
図2Bの例では、上下方向の位置(Z軸方向の位置)において凸部9の基端部9Bから先端部9Aまで間の位置に、XY平面方向に曲線状に延びる裂け目状に形成されている。なお、低密度部12が裂け目状に形成されているとは、繊維シート18の目視外観上において繊維18Aの量が少ないように認識される部分が線状に延びていることを示す。この場合、線状には、直線状、折れ線状及び曲線状、それらの組み合わせが含まれる。
【0034】
低密度部12は、凸部9の先端部9Aの周囲を取り巻くように形成されていることが好ましい。
図2A、
図2Bの例では、低密度部12が、第1のシート3の平面視上、凸部9の先端部9Aの全周囲を取り巻くように形成されている。ただし、このことは、低密度部12のレイアウトを限定するものではない。例えば、
図3Aに示すように低密度部12が、凸部9の先端部9Aから基端部9Bの方向に延びる部分を有してもよい。
図3Bに示すように低密度部12が、凸部9の先端部9Aの周囲の一部に形成されてよい。また、低密度部12は、凸部9の凸面90に沿って互いに異なる位置に形成されてよい。例えば、
図3Cに示すように、複数の低密度部12が、凸部9の先端部9Aに近い位置と基端部9Bに近い位置に離れて形成されてもよい。
【0035】
(第1の部分)
低密度部12は、第1の部分19を有することが好ましい。低密度部12における第1の部分19は、先端部9Aから基端部9Bに向かって凸部9を形成する紙系素材を構成する繊維18Aの密度(繊維密度)が小さくなる部分として定義される。
図2Bの例では、第1の部分19は、低密度部12のうち先端部9Aに近い端部12A側の位置に形成されている。
【0036】
繊維密度が小さくなることは、例えば、第1の部分19を複数の区画に均等寸法に分割して各区画における密度を定め、それらの区画のうち、先端部9Aに近い区画における密度と、基端部9Bに近い位置における密度を対比することで特定することができる。
【0037】
(第2の部分)
低密度部12は、第2の部分20を有することが好ましい。低密度部12における第2の部分20は、基端部9Bから先端部9Aに向かって凸部9を形成する紙系素材を構成する繊維18Aの繊維密度が小さくなる部分として定義される。
図2Bの例では、低密度部12のうち基端部9Bに近い端部12B側の位置に形成されている。
【0038】
第2の部分20について繊維密度が小さくなることは、例えば、第1の部分19と同様にして特定することができる。
【0039】
(第1の部分と第2の部分の位置関係)
低密度部12は、第1の部分19と第2の部分20とがつながるように形成されていることが好ましい。すなわち、低密度部12では、先端部9Aから基端部9Bに向かって紙系素材を構成する繊維18Aの繊維密度が小さくなる部分と、基端部9Bから先端部9Aに向かって紙系素材を構成する繊維18Aの繊維密度が小さくなる部分がつながっていることが好ましい。
【0040】
なお、低密度部12には、第1の部分19と第2の部分20の間に、繊維密度がおおむね一定である部分が介在してもよい。繊維密度がおおむね一定である部分には、繊維密度が均一である場合のほか、第1の部分19と第2の部分20よりも繊維密度のばらつきが小さい部分が含まれる。
【0041】
(非向き合い面)
第1のシート3において、第2のシート4との非向き合い面3B側には、
図1A、
図1B、
図2A、
図2Bの例では、凸部9の凸面90に対応した部分(裏面側)に凹面91が形成されている。凹面91は、凸部9の凸面90に対応した形状に形成されてよい。したがって、非向き合い面3Bには、複数の凹面91の形成領域が形成されている。複数の凹面91の形成領域のレイアウトやピッチは、凸部9のレイアウトやピッチに対応している。ただし、これは非向き合い面3Bの一例であり、非向き合い面3Bに、後述するように凸状の構造が形成されてもよい。
【0042】
(隠蔽部)
凸部9には、低密度部12よりも先端部9Aに寄った位置に隠蔽部21が形成されていることが好ましい。隠蔽部21は、第1のシート3の露出面側からの第2のシートの露出を規制する。ここに、隠蔽部21としては、第2のシートを外部から完全に隠蔽するように形成されている場合のほか、隠蔽部21を介して第1のシート3の露出面側から第2のシートの一部又は全部が透けて見えるように形成されている場合も含まれるものとする。隠蔽部21は、第1のシート3の厚み方向に対して交差する方向に沿って延びるように形成されていることが好ましい。隠蔽部21は、平板状に形成されている場合のほか、湾曲や屈曲した形状に形成されていてよい。隠蔽部21は、低密度部12よりも繊維の密度が高い部分として構成されていることが好適である。
【0043】
凸部9において、隠蔽部21は、凸部9のうち先端部9Aの少なくとも一部を含む部分に形成されてよい。また、先端部9Aが隠蔽部21を兼ねてよく、先端部9Aの一部に隠蔽部21が形成されてよい。隠蔽部21が先端部9Aを含む部分にて形成されてよい。
図2A、
図2Bの例では、先端部9Aが隠蔽部21を兼ねている。なお、先端部9Aが隠蔽部21を含む場合(先端部9Aの内側に隠蔽部21が形成される場合と、先端部9Aに隠蔽部21の一部が形成される場合のいずれでもよい)には、先端部9Aに隙間や孔が形成されることで先端部9Aが隠蔽部21のほかに隙間や孔の構成を有する場合が、含まれる。
【0044】
(凸部の形成)
凸部9は、第1のシート3を形成するシート材(繊維シート18)に例えば特定のエンボス加工を施すことによって形成することができる。この場合、凸部9は、凸状エンボス部として形成され、向き合い面3A側に凸面90を形成し、凸面90の形成部分に対応する非向き合い面3B側の位置には、凹面91が形成されている。凹面91は、凸面90に対応した形状に形成されてよい。
【0045】
第1のシート材を形成するためのシート材は、凸部9を形成することができるものであり且つ紙系素材を用いたシート(繊維シート18)であれば特に限定されず、表面の平坦なシートであってもよいし、表面の非平坦なシートであってもよい。表面の非平坦なシートの例としては、表面に微細な波面(凸部9(後述する第2の実施形態では第1の凸部22と第2の凸部23)よりも小さな高さの波面)等の連続凹凸面を形成したシートを例示することができる。
【0046】
(第2のシート)
第2のシート4は、その材質等を特に限定されるものではないが、第1のシート3との接合が可能であるようなシート材を好適に用いることができる。第2のシート4は、第1のシートと同様に紙系素材で形成されてもよいし、樹脂素材で形成された樹脂フィルムであってもよい。また、第2のシート4は、紙系素材の表面に樹脂層を形成したシート材や、樹脂フィルムの表面に金属層を形成した複合フィルム材であってもよい。リサイクル性や断熱性の観点からは、第2のシート4は、紙系素材で形成されていることが好ましい。第2のシート4の厚みは、断熱シート1の用途等の諸条件に応じて適宜定められてよい。なお、加工容易性と断熱性の両立の観点からは、第1のシート3と第2のシート4の厚みの差が大きくならならない程度であることが好ましい。
【0047】
(第1のシートと第2のシートの接合)
断熱シート1は、第1のシート3と第2のシート4とを接合した状態で接合部11を有している。第1のシート3と第2のシート4の接合部11の位置や範囲は、特に限定されない。例えば、第1のシート3の先端部9Aと第2のシート4の面とが接合され、その部分に接合部11が形成されてよい。第1のシート3の凸部9の少なくとも一部について、凸部9の先端部9Aが第2のシート4に接合されてもよいし、全ての凸部9について先端部9Aが第2のシート4に接合されてもよい。ただし、このことは、接合部11が第1のシート3の凸部9のうち先端部9A以外の部分に接合されることを規制するものではない。接合部11は、例えば、先端部9Aの近傍に形成されてもよいし、凸部9の先端部9A及び先端部9Aの近傍に形成されてもよい。また、接合部11が、凸部9の基端部9Bの近傍に形成されてもよい。凸部9の少なくとも一つについて、凸部9の凸面90の全体が第2のシート4に接合されてもよい。また、周辺部15が第2のシート4に接合されてもよい。
【0048】
接合部11のレイアウトとしては、例えば、一つ又は複数おきに凸部9の先端部9Aに接合部11が形成されるパターンでもよい。このことは、接合部11が、凸部9のうち先端部9A以外の部分に形成されている場合についても同様である。
【0049】
第1のシート3と第2のシート4の接合部11は、第1のシート3と第2のシート4の直接的な接合部分でもよいし、第1のシート3と第2のシート4が接着剤を介して相互に接合された部分であってもよい。接合部11が、第1のシート3と第2のシート4が接着剤を介して相互に接合された部分である場合、第1のシート3の少なくとも一部の凸部9に接着剤が設けられることが好ましい。なお、凸部9に接着剤を設けるとは、凸部9を構成する繊維18Aに接着剤が付着している状態を示しており、繊維18Aの周囲のみに接着剤が付着する場合や、繊維18Aの内部に浸透する場合や、接着剤の層が凸部9の一定領域を被覆する場合等の各場合を含む概念であるものとする。ただし、このことは、第5の実施形態で詳述するように、少なくとも一部の凸部9に設けられた接着剤が、第1のシート3と第2のシート4の接合に寄与していないことを禁止するものではない。
【0050】
凸部9に接着剤を設ける方法は、特に限定されず、例えば、第1のシート3における凸部9の凸面90の形成面側に接着剤を噴霧する方法等を挙げることができる。接着剤の種類は、断熱シート1の用途などの条件に応じて選択されていればよく、でんぷん糊等を適宜用いられてよい。
【0051】
第1のシート3の少なくとも一部の凸部9に接着剤を設ける場合においては、特に、凸部9の先端部9A又は先端部9Aの近傍に接着剤が設けられていること、及び、凸部9の先端部9A及び先端部9Aの近傍に接着剤が設けられていることが好ましい。この場合、第1のシートと第2のシートとの接合を実現するとともに、第1のシートの柔軟性を保持しつつ、凸部9の形状の安定性を向上させることができる。
【0052】
第1のシート3の凸部9に接着剤が設けられている場合において、低密度部12に接着剤が設けられていてもよい。ただし、この場合、接着剤は、低密度部12の通気性が失われない程度に設けられていることが好適である。また、この場合においても、第1のシート3の凸部9の形状の安定性を向上させることが期待できる。
【0053】
接合部11は、凸部9の有無を条件とせずに異なる2か所で上下方向にのびる線状に形成されてもよい。例えば、第2のシート4の所定の位置に線状に接着剤を塗布し、第1のシート3と第2のシート4を相互に固定することで、接合部11を線状に形成することができる。なお、ここに説明した接合部11は一例であり、例えば、複数の凸部9を含むドット状に形成されてもよいし、複数の凸部9を含む所定の面積を有する面状に形成されてもよい。
【0054】
[1-2 製造方法]
次に、第1の実施形態にかかる断熱シート1の製造方法について述べる。
【0055】
第1のシート3を形成する紙系素材のシート(繊維シート18と呼ぶ)を準備する。この繊維シート18にエンボス加工を施すことで繊維シート18に凸部9の構造を形成することができる。このとき凸部9の低密度部12は、エンボス加工の条件や金型の形状などの各種の条件を設定することで形成することができる。
【0056】
低密度部12は、エンボス加工時に、繊維シート18を構成する繊維18Aを凸部9内の所定部分で局所的にほぐれさせることや、凸部9内の所定部分で局所的に繊維18Aの切断を生じさせることで形成することができる。たとえば、
図15A、
図15Bに示すように、エンボス加工の工程において、繊維シート18の凸部9の先端部9Aに対応する部分N1が穿孔される前にエンボス型に挟まれ、さらに圧力Pが負荷されて繊維シート18の部分N1がエンボス型で押圧されることで、凸部9に対応する部分における先端部9Aよりも基端部9B側の所定位置で繊維18Aの少なくとも一部でほぐれや破壊を生じさせ、低密度部12を生じさせることが可能である。このとき、エンボス型において凸部9の先端部9Aの近傍に対応する部分が繊維シート18と面接触することで、低密度部12を生じさせる際に先端部9Aを穿孔されることを抑制するとともに隠蔽部21を形成することができる。隠蔽部21は、好ましくは、先端部9Aの少なくとも一部を含む部分に形成される。
【0057】
そして、エンボス加工を施された繊維シート18(エンボスシート)として第1のシート3が得られる。さらに第1のシート3となる繊維シート18を第2のシート4に重ねあわせて、繊維シート18と第2のシート4とが接合される。これにより、断熱シート1が製造される。
【0058】
[1-3 作用及び効果]
第1の実施形態にかかる断熱シート1によれば、第1のシート3に複数の凸部9が形成されており、凸部9の先端部9Aが第2のシート4に向かい合っている。凸部9には低密度部12が形成されている。これにより、第2のシート4の露出面側に温度の高い物が触れた場合に、第2のシート4から凸部9の先端部9Aに熱が伝達されたとしても、先端部9Aから凸部9の基端部9Bまでの間に低密度部12が形成されているため、先端部9Aの熱が繊維18Aを介して凸部9の基端部9Bまで繊維シート18を伝って到達しにくくなる。また、第2のシート4に対して第1のシート3全体ではなく第1のシート3のうち凸部9の先端部9Aが接触するため、第1のシート3と第2のシート4との接触面積が小さい。これにより、第2のシート4から第1のシート3に熱が伝達されにくい。また、凸部9は、
図2Cに示すように、第1のシート3と第2のシート4との間に隙間27を形成するためのスペーサとして機能することができる。これにより、隙間27で空気層が形成され、空気層によっても熱伝導の抑制効果を得ることができる。
【0059】
また、第1の実施形態に用いられる第1のシート3においては、
図2B、
図2Cに示すように、低密度部12が隠蔽部21よりも基端部9B側に形成されるため、低密度部12の少なくとも一部を第2のシート4に接触させずに、低密度部12の少なくとも一部を隙間27に向けた状態とすることができる。断熱シート1において隙間27の空気層が温められた場合に、低密度部12の部分で、第1のシート3に低密度部12から外部にむけた方向に空気AHを徐々に拡散させることができ、温められた空気層に含まれる空気AHを徐々に外部に放出させることができる。これによっても、第1のシート3の露出面側の温度の上昇を抑制することができると考えられる。なお、
図2Cは、
図1の領域X1の部分を拡大した状態を説明する図であり、第1のシートの凸部9と第2のシート4との接触した状態を説明するための断面図である。また、低密度部12の少なくとも一部を第2のシート4に接触させることを抑制できることで、第1のシート3の外側から第2のシート4に向かって押圧力がかかっても、低密度部12の繊維18Aが第2のシート4に広範囲に接触することを抑制することができ、第1のシート3の厚み方向に見た場合に内側に位置する繊維18Aと第2のシート4との接触面積を低減することができる。
【0060】
さらに、第2のシート4の露出面側(第1のシート3との非対向面側)に温度の低い物が触れた場合に、第2のシートを介して凸部9の先端部9Aが冷却されたとしても、先端部9Aから凸部9の基端部9Bまでの間に低密度部12が形成されるため、先端部9Aの冷却が繊維18Aを介して凸部9の基端部9Bまで波及しにくくなる。また、また、第2のシートに対して第1のシート全体ではなく第1のシートのうち凸部9の先端部9Aが接触するため、第1のシートと第2のシートとの接触面積が小さい。これにより、第1のシート3が冷えにくい。また、隙間27で空気層が形成されることにより、第1のシートが冷えにくくなる。
【0061】
[1-4 変形例]
次に第1の実施形態の変形例について詳細に説明する。
【0062】
(変形例1)
第1に実施形態の説明では、凸部9は、副隆起部9Dを有していたが、第1の実施形態における断熱シート1の凸部9においては、副隆起部9Dは省略されてもよい(変形例1)。変形例1は、凸部9において副隆起部9Dが省略されている他の構成については、上記した第1の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0063】
変形例1の例においては、主隆起部9Cが凸部9の先端まで形成され、主隆起部9Cが凸部9を形成する。主隆起部9Cは、先端を開口させた形状でも、先端を閉じた形状でもよい。また、先端部9Aは、主隆起部9Cの突端を含む所定の範囲に形成されている。先端部9Aを含む部分が隠蔽部21となっており、隠蔽部21の周囲(主隆起部9Cに沿った基端部9B側の所定部分)に低密度部12が形成されている。なお、凸部9に副隆起部9Dが形成されていない場合には、凸部9の主隆起部9Cの先端及びその近傍の部分が凸部9の先端部9Aとして定められる。
【0064】
(変形例2)
第1の実施形態にかかる断熱シート1において、
図5Aに示すように、第1のシート3は、凸部9にスリット部34が形成されてもよい(変形例2)。
図5Aは、変形例2の一実施例を説明するための平面図である。
図5Aの例では、凸部9の先端部9Aよりも基端部9B側にスリット部34が形成されている。
【0065】
(スリット部)
第1の実施形態の変形例2において、スリット部34は、
図5Aの例では凸部9の低密度部12よりも基端部9B側に形成されているが、
図5Bに示すように低密度部12に交差してもよいし、低密度部12よりも先端部9A側に形成されてもよく、また、スリット部34は、低密度部12に合流するように形成されていてもよい。スリット部34が低密度部12の形成領域内にあってもよい。
【0066】
(スリット部の形成方法)
凸部9がエンボス加工で形成される場合に、繊維シート18のうち凸部9に対応する部分で複数の繊維18Aに破断を生じさせるように繊維シート18を押圧し、破断した繊維18Aの少なくとも一部を互いに離間させる。このとき、凸部9に対応する部分において繊維18Aに破断を生じた部分のうち、先端部9Aよりも基端部9B側の繊維シート18の一部を破断させる。繊維シート18の破断に至る部分でスリット部34が形成される。これにより、凸部9にスリット部34が形成される。なお、繊維シート18の破断に至らない部分で、低密度部12を形成することができる。
【0067】
(変形例3)
第1の実施形態の変形例2にかかる断熱シート1において、
図5Aに示すように、第1のシート3は、凸部9にスリット部34が形成されていたが、
図5Cに示すように、スリット部34にかえて開口孔36が形成されていてもよい。開口孔36は、円形状等の長手方向を特定されない孔構造を示す。
図5Cは、変形例2の一実施例を説明するための平面図である。
図5Cの例では、凸部9の先端部9Aよりも基端部9B側に開口孔36が形成されている。開口孔36の形成位置は、これに限定されず、先端部9Aに形成されてもよい。開口孔36は、繊維シート18の凸部9の所定位置に穿設孔を設けることで、穿設孔として形成することができる。
【0068】
(変形例4)
第1の実施形態にかかる断熱シート1において、
図4Aに示すように、第1のシート3は、凸部9の先端部9Aにスリット状構造部35が形成されてもよい(変形例4)。
図4Aは、変形例4の一実施例を説明するための平面図である。
【0069】
(スリット状構造部)
スリット状構造部35は、繊維シート18に対して該繊維シート18の面方向に引っ張り力を付加された場合に繊維シート18を構成する繊維18Aの一部の切断等で形成される。なお、スリット状構造部35は、そのスリット状構造部35内でおおむね繊維シート18の切断が完全にされている点で低密度部12と異なり、切断された繊維の重なり合いが残っている状態となっている点でスリット部34と異なる部分として定められる。スリット状構造部35は、繊維シート18に対して該繊維シート18の面方向に引っ張り力を付加された場合に繊維シート18を構成する繊維18Aの一部の切断等で形成される。なお、スリット状構造部35は、低密度部12と同様に、繊維シート18に対して該繊維シート18の面方向に引っ張り力を付加された場合にスリット状構造部35の輪郭形状の変化を規制される程度に繊維18Aが存在する部分、となっていることが好ましい。スリット状構造部35は、
図4Aに示すように、後述する低密度部12に繋がっていてもよい。スリット状構造部35は、低密度部12よりも繊維輝度が高くても低くても同程度でもよいが、低密度部12よりも繊維輝度が高いことが好ましい。なお、
図4Aでは、スリット状構造部35が先端部9Aを横断するように直線状に形成されているが、スリット状構造部35の形状はこれに限定されない。また、スリット状構造部35は、
図4Bに示すように、先端部9Aからさらに基端部9B側に延びていてもよい。
【0070】
[2 第2の実施形態]
第2の実施形態にかかる断熱シートについて説明する。
【0071】
[2-1 構成]
第2の実施形態にかかる断熱シート1は、
図7Aから
図10に示すように、第1の凸部22として、第1の実施形態における凸部9と同様の構造部分を有する。また、第2の実施形態においては、断熱シート1は、後述する第2の凸部23を有する。第2の実施形態は、第1の凸部22と第2の凸部23を除く他の構成については、第1の実施形態と同じであるので、説明を省略する。
図7Aは、第2の実施形態にかかる断熱シート1の一実施例を示す斜視図である。
図7Bは、第2の実施形態にかかる断熱シート1について、
図7AのC-C線断面に対応する一実施例を示す断面図が示されている。
図7Cは、
図7AのD-D線断面に対応する一実施例を示す図であり、第2の凸部23の一例を説明するための断面図である。
図8は、
図7Bの領域X2を拡大した状態を模式的に示す図であり、第1の凸部22と第2の凸部23の一例を説明するための断面図である。
図8では、第1の凸部22が
図2Bに示す凸部9に対応する構造を有する場合の例が示されている。
【0072】
(第1の凸部)
第1の凸部22は、
図7A、
図7B、
図7C、
図8に示すように、第2の凸部23とつながっている他は、上記したように第1の実施形態における凸部9と同様に構成される。したがって、
図8に示すように、第1の凸部22には、先端部22Aと基端部22Bとの間に低密度部12が形成される。なお、
図7A、
図7B、
図7C、
図8において、符号92Aは、第1の凸部22の凸面を示し、符号92Bは、第1の凸部22の凹面を示す。
【0073】
図7Bの例では、第1の凸部22は、第2の凸部23の上からさらに第2の凸部23の突出方向と同じ方向に突出した形状に形成されている。したがって第1の凸部22において基端部22Bが第2の凸部23の上に位置しており、第1の凸部22の先端部22Aが第2の凸部23の上からさらに突出した位置に形成されている。なお、周辺部15は、第1の凸部22と第2の凸部23を除いた部分で形成されており、
図7Aに示す例では、隣り合う第2の凸部23の間に形成されている。
【0074】
ただし、第2の凸部23の上からさらに第2の凸部23の突出方向と同じ方向に突出した形状に形成されている場合において、第1のシートにおいて少なくとも一部の第1の凸部22の基端部22Bについて、基端部22Bの少なくとも一部が第2の凸部23から外れた位置に形成されてよい。また、基端部22Bの少なくとも一部が第2の凸部23の基端部23Bに一致してもよい。例えば、
図9A、
図9Bに示す例では、第2の凸部23の長手方向に沿った端部付近に形成された第1の凸部22の基端部22Bの一部が第2の凸部23の基端部23Bに一致している。
図9Aは、第2の実施形態にかかる断熱シート1の一実施例を模式的に示す平面図である。
図9Bは、
図9AのE-E線縦断面の状態を示す断面図であり、第1の凸部22と第2の凸部23を示す図である。
【0075】
(第2の凸部)
第1のシート3は、第2の凸部23を複数有する。第2の凸部23は、第1の凸部22と同じく、第2のシート4との向き合い面3A側に突出している。また、
図7Cに示すように、第2の凸部23は、少なくとも異なる2つの第1の凸部22を含む領域に形成されている。第2の凸部23は、少なくとも異なる2つの第1の凸部22をつなぐように形成されている。
図9、
図7A、
図7Bの例では、第2の凸部23は、隣接する2つの異なる第1の凸部22を繋ぐように形成されている。なお、
図7A、
図7Bにおいて、符号93Aは、第2の凸部23の凸面を示し、符号93Bは、第2の凸部23の凹面を示す。符号23Aは、第2の凸部23の先端部、符号23Bは、第2の凸部の基端部を示す。これらは、
図7C、
図8、
図9A、
図9B、
図10等についても同様である。
【0076】
ここに、1つの第1の凸部22に対して隣接する第1の凸部22は、その1つの第1の凸部22に対して直接的に向かい合う第1の凸部22を示す。
【0077】
図7Bに示すように第2の凸部23の上に第1の凸部22が形成されているようなレイアウトとなることで2つの第1の凸部22を繋いでもよいが、第2の凸部23は、このようなレイアウトに限定されない。第2の凸部23は、2つの第1の凸部22の凸面92Aを繋ぐように形成されてもよい。この場合、第1の凸部22の基端部22Bの一部は、第2の凸部23から外れた位置に形成される。
【0078】
(第2の凸部)
第2の凸部23は、
図7Aに示す例では、斜め方向に帯状に伸びる形状に形成され、間隔あけて複数の第2の凸部23が並ぶように形成されている。それぞれの第2の凸部23は、斜めに隣り合う第1の凸部22をつなぐとともに、第2の凸部23の上側(凸面93A側)に第2の凸部23の長手方向に沿って複数の第1の凸部22を形成させている。このとき、第2の凸部23の上側で、複数の第1の凸部22が所定の間隔で並んでいる。隣り合う第1の凸部22の間隔は一定でもよいし、異なってもよい。
【0079】
(第2の凸部の形状)
第2の凸部23の形状は、
図7Cの例では、断面台形状に形成されている。なお、第2の凸部23の形状は、
図7Cの例に限定されず、その他の形状であってもよい。例えば、第2の凸部23の形状は、断面U字状でもよいし、断面矩形状でも、断面山形状でも、不定形でもよい。第2の凸部23の平面視上の形状は、
図7Aでは帯状の形状で直線状に延びるように形成されているが、このような場合に限定されず、第2の凸部の形状は、折れ線状でもよいし曲線状でもよい。また、第2の凸部の形状は、帯状に限定されず、ドット状でもよいし、矩形状でもよい。
【0080】
(第2の凸部の高さ)
第2の凸部23の高さ(周辺部15から先端部23Aまでの高低差)(H2)は、
図7Bに示すように、第1の凸部22の全高さ(周辺部15から先端部22Aまでの高低差)(H1)よりも低くなるように形成される。これにより、第1のシート3を第2のシート4に取り付けた場合に、第1の凸部22の先端部9Aが第2のシート4に接した状態とし、且つ、第2の凸部23が第2のシート4から離間した状態とすることができる。このように第2の凸部23の高さが第1の凸部22よりも低くなるように形成されていることで、第1のシート3と第2のシート4との接触面積が過剰に増える虞を抑制することができ、第1のシート3の断熱性を保持することができる。
【0081】
(第1の凸部と第2の凸部の形成)
第1の凸部22は、第1の実施形態における凸部9と同様に、エンボス加工によるエンボス部(第1の凸状エンボス部)として形成することができる。第2の凸部23は、エンボス加工によって形成されたエンボス部(第2の凸状エンボス部)として形成することができる。第2の凸部23は、第1の凸部22をエンボス加工で形成する際に、第1の凸部22と一体的に形成されてよい。また、第1の凸部22と第2の凸部23は、個別にエンボス加工されてもよい。
【0082】
[2-2 作用及び効果]
第2の実施形態にかかる断熱シート1によれば、第1の凸部22が形成されていることで、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0083】
第2の実施形態にかかる断熱シート1によれば、第2の凸部23が形成されていることで、第1のシート3の形状を安定化させることができる。第2の実施形態にかかる断熱シート1によれば、第1のシート3の非向き合い面3B側から向き合い面3A側に向かって力が加えられても、第2の凸部23が形成されていることで、第1のシート3は向き合い面3A側をさらに突出させるような変形を生じにくくなっており、第1のシート3の周辺部15が第2のシート4に接触する虞を抑制することができる。ところで、第2の凸部23は、向き合い面3A側に突出している。したがって第2の凸部23の形成位置では、第2の凸部23を形成していない場合に比べて、第1のシート3と第2のシート4との離間距離が小さくなる。しかしながら、第2の実施形態では、第2の凸部23は、2つの異なる第1の凸部22を繋ぐように形成されている。このため、第1のシート3が変形しにくくなり、周辺部15が第2のシート4に接触する虞が抑制されることとなる。
【0084】
[2-3 変形例]
第2の実施形態においては、第2の凸部23のレイアウトは、上記したようなレイアウトに限定されず、
図10の例に示すように、単数もしくは複数の第2の凸部23が一つの文字や絵柄を表示するように、第2の凸部23のレイアウトが定められていてもよい(この形態を、第2の実施形態の変形例と呼ぶ)。
図10は、第2の実施形態の変形例にかかる断熱シート1の第1のシート3に形成された第2の凸部23のレイアウトの一実施例を示す図である。
図10の例ではアルファベットの大文字でYの文字となるように第2の凸部23のレイアウトが定められている。
【0085】
[3 第3の実施形態]
第3の実施形態にかかる断熱シート1について説明する。
【0086】
[3-1 構成]
第3の実施形態にかかる断熱シート1は、
図11A、
図11Bに示すように、第1のシートと第2のシートを有し、第1の実施形態と同様に、第1のシート3の面のうち第2のシート4との向き合い面3Aに突出した凸部9を有する。凸部9には、低密度部12が形成されている。さらに、第3の実施形態にかかる断熱シート1は、第1のシート3と第2のシート4との隙間27の内部に向かう方向とは逆向き(外向き)に第1のシート3から突出した外向き凸部37を有する。
【0087】
第3の実施形態は、外向き凸部37を除く他の構成については、第1の実施形態と同じであるので、他の構成についての説明を省略する。
図11Aは、第3の実施形態にかかる断熱シート1の一実施例を説明するための平面図である。
図11Bは、
図11AのF-F線縦断面の構成を模式的に示す断面図である。
【0088】
(外向き凸部)
第3の実施形態にかかる断熱シート1には、外向き凸部37は、第1のシート3の非向き合い面3B側から第2のシート4から離れる方向に突出した凸型構造を有する。外向き凸部37は、非向き合い面3B側に突出した面として凸面137Aを有しており、凸面137Aに対応する位置における向き合い面3A側には凹面137Bを形成している。凹面137Bの形状は、凸面137Aに対応した形状に形成されていることが好適である。
【0089】
外向き凸部37の突出高さは特に限定されない。また、第1のシート3の平面視上における、外向き凸部37の形成位置、形状及び大きさは、特に限定されない。ただし、
図11Aに示すように、外向き凸部37と凸部9とが重ならないように外向き凸部37の形成位置、形状及び大きさが定められていることが好適である。
図11Aの例では、外向き凸部37の形成位置は、格子状に配置された凸部9の間に形成されている。そして凸部9と外向き凸部37とで千鳥状の配置となるように凸部9と外向き凸部37が形成されている。
【0090】
断熱シート1の断熱性を高める観点からは、外向き凸部37にも、凸部9の低密度部12と同様の低密度部が形成されていることが好適である。この場合、外向き凸部37の低密度部は、外向き凸部37の先端部37Aと基端部37Bとの間の位置に形成される。また、断熱シート1の断熱性を高める観点から、外向き凸部37は、突出方向を除いて凸部9と同様の構成(例えば、スリット部34等)を備えることが好ましい。
【0091】
[3-2 作用及び効果]
第3の実施形態にかかる断熱シート1によれば、第1のシート3に凸部9が形成されていることで、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0092】
また、第3の実施形態においては、第1のシート3に外向き凸部37が設けられているため、第1のシート3の表面積を拡大させることができ、熱が第1のシート3の全体に伝わるスピードを抑制することができる。
【0093】
第3の実施形態にかかる断熱シート1の変形例について説明する。
【0094】
[3-3 変形例]
上記した第3の実施形態の説明では、第1のシート3の向き合い面3Aに凸部9が形成されていた。第3の実施形態にかかる断熱シート1においては、第1のシート3の向き合い面3Aに、
図12A、
図12B、
図12Cに示すように、第2の実施形態で説明した第1の凸部22及び第2の凸部23が形成されていてもよい。この形態を、第3の実施形態の変形例と呼ぶ。
図12Aは、第3の実施形態の変形例にかかる断熱シート1の一実施例を模式的に示す平面図である。
図12Bは、
図12AのG-G線縦断面の状態を模式的に示す断面図である。
図12Cは、
図12CのH-H線縦断面の状態を模式的に示す断面図である。
【0095】
第3の実施形態の変形例にかかる断熱シート1において、外向き凸部37の位置は、少なくとも第1の凸部22に重ならないように外向き凸部37の形成位置、形状及び大きさが定められていることが好適である。
図12の例では、外向き凸部37として、第2の凸部23の形成領域内に設けられている第1の外向き凸部38と、第2の形成領域外に設けられている第2の外向き凸部39が形成されている。なお、これは一例であり、第1の外向き凸部38と、第2の外向き凸部39がいずれか一方だけが設けられていてもよい。また、第2の凸部23の基端部23Bを跨ぐように外向き凸部37が形成されてもよい(図示しない)。
【0096】
(第1の外向き凸部の高さ)
第1の外向き凸部38の高さは、第2の凸部23の高さよりも大きいことが好ましい。この場合、第1のシートの非向き合い面3Bから周辺部15の位置よりも外側に突出した状態を形成することが容易となり、断熱シート1の第1のシート3に対して使用者の手が触れた際に、周辺部15に接触する前に第1の外向き凸部38に接することができ、使用者の手と第1のシート3との接触面積を減じることが期待できる。
【0097】
(第2の外向き凸部の高さ)
第2の外向き凸部39の高さは、特に限定されない。
【0098】
断熱シート1の断熱性を高める観点からは、第1の外向き凸部38と、第2の外向き凸部39との少なくともいずれか一方には、凸部9の低密度部12と同様の低密度部が形成されていることが好適である。この観点から、第1の外向き凸部38と、第2の外向き凸部39との少なくともいずれか一方には、突出方向を除いて凸部9と同様の構成を備えられていることが好適である。
【0099】
第3の実施形態の変形例によれば、第3の実施形態の作用及び効果で説明したことと同様の効果が得られる。また、第3の実施形態の変形例によれば、第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0100】
[4 第4の実施形態]
第4の実施形態にかかる断熱シート1について説明する。
【0101】
[4-1 構成]
第4の実施形態にかかる断熱シート1は、
図13A、
図13Bに示すように、第1の実施形態における第1のシート3の面の非向き合い面3B側に第3のシート5を積層した構成を有しており、第1のシート3が第3のシート5と第2のシート4に挟まれている。第4の実施形態は、第3のシート5を設けた構成を除く他の構成については、第1の実施形態と同じであるので、他の構成についての説明を省略する。
図13Aは、第3の実施形態にかかる断熱シート1の一実施例を説明するための平面図である。
図13Bは、
図13AのI-I線縦断面の状態を模式的に示す断面図である。
【0102】
(第3のシート)
第3のシート5は、第1の実施形態で説明した繊維シート18と同様の紙系素材から形成されたシート(繊維シート)を採用されてよい。また、第3のシート25は、繊維シートではないシート材として定義される非繊維シートであってもよい。非繊維シートとしては、例えば樹脂フィルム等を例示することができる。
【0103】
第3のシート5と第1のシート3との接合方法は、特に限定されない。第3のシート5と第1のシート3との接合方法、例えば、第2のシート4と第1のシート3との接合と同様の方法等を用いることができる。例えば、非向き合い面3Bに第3のシート5を貼り合わせることで製造することができる。貼り合わせ方法としては、接着剤による貼付や、ヒートシールを用いた方法等を適宜使用することができる。
【0104】
[4-2 作用及び効果]
第4の実施形態にかかる断熱シート1によれば、第1のシート3に凸部9が形成されていることで、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0105】
また、第4の実施形態においては、第1のシート3の非向き合い面3B上に第3のシート5が設けられているため、エンボス加工による凸部9の凸面90に対応した凹面91の露出を抑制することができ、断熱シート1の外側表面(露出面)に印刷を施すことが容易となり、断熱シート1の意匠性を高めることができる。
【0106】
また、第4の実施形態においては、第3のシート5が第1のシート3に積層されていることで、凸部9の基端部9Bの形状を安定化させることができ、凸部9の形状の変形を抑制することができ、凸部9をより潰れにくくすることが可能となる。
【0107】
[4-3 変形例]
第4の実施形態にかかる断熱シート1の変形例について説明する。
【0108】
(変形例1)
上記で説明した第4の実施形態にかかる断熱シート1は、第1の実施形態にかかる断熱シート1に対して、非向き合い面3B側に第3のシート5を積層した構成を有していた。第4の実施形態にかかる断熱シート1はこれに限定されず、第2の実施形態における断熱シート1の非向き合い面3B側に第3のシート5を積層した構成を有してもよい(図示しない)。この形態を第4の実施形態の変形例1と呼ぶ。
【0109】
第4の実施形態の変形例1によれば、断熱シート1が、第2の実施形態で説明したような第1の凸部22及び第2の凸部23を第1のシート3に形成している場合においても、上記した第3の実施形態の作用及び効果に記載した効果と同様の効果を得ることができる。
【0110】
(変形例2)
第4の実施形態にかかる断熱シート1は、
図14A、
図14Bに示すように、第3の実施形態における断熱シート1の非向き合い面3B側に第3のシート5を積層した構成を有してもよい。この形態を第4の実施形態の変形例2と呼ぶ。
【0111】
第4の実施形態の変形例2では、第1のシート3の外向き凸部37が第3のシート5に接合されることが好ましい。外向き凸部37と第3のシート5との接合は、第1の実施形態で説明した凸部9と第2のシート4との接合と同様に形成されてよい。第4の実施形態の変形例2にかかる断熱シート1においては、
図14Bに示すように、第1のシート3と第3のシート5との間に隙間40が形成されている。隙間40には空気層が形成される。
【0112】
第4の実施形態の変形例2によれば、第1のシート3と第3のシート5との接触面積を減じることができ、より断熱性を高めることができる。また、第4の実施形態の変形例2によれば、隙間40の空気層が形成されることで、さらに断熱性を高めることができる。
【0113】
[5 第5の実施形態]
第5の実施形態にかかる断熱シート1について説明する。
【0114】
[5-1 構成]
第5の実施形態にかかる断熱シート1は、第1の実施形態から第4の実施形態のいずれかにおける第1のシート3の向き合い面3A側の少なくとも一部の凸部9に接着剤を設けた構成を有している。ただし、第5の実施形態にかかる断熱シート1においては、少なくとも一部の凸部9に設けられた接着剤には、第1のシート3と第2のシート4の接合に寄与していないものが存在している。
【0115】
第5の実施形態は、第1のシート3の向き合い面3A側の少なくとも一部の凸部9が接着剤を有する構成の他の構成については、第1の実施形態から第4の実施形態と同じであるので、他の構成についての説明を省略する。以下の説明では、第1の実施形態にかかる断熱シート1において向き合い面3A側の凸部9に接着剤を有する場合について説明する。ただし、このことは、第2の実施形態から第4の実施形態にかかる断熱シート1について、凸部9に接着剤を設けることを禁止するものではない。上述したように、第2の実施形態から第4の実施形態にかかる断熱シートについて、凸部9に接着剤を設けられてよい。なお、凸部9に接着剤を設けるとは、凸部9を構成する繊維に接着剤が付着している状態を示しており、繊維の周囲のみに接着剤が付着する場合や、繊維の内部に浸透する場合や、接着剤の層が凸部9の一定領域を被覆場合等の場合を含む概念であるものとする。
【0116】
断熱シート1は、向き合い面3A側において、少なくとも一部の凸部9に対して凸部9に接着剤が設けられている。すなわち第1のシート3において、接着剤を設けられる部分は、向き合い面3Aの凸部9の全てでもよいし、向き合い面3Aの一部の領域に設けられた凸部9でもよい。接着剤を設ける方法は、特に限定されず、例えば、向き合い面3A側に接着剤を噴霧することで向き合い面3Aに接着剤を設けることができる。接着剤の種類は、断熱シート1の用途などの条件に応じて選択されていればよく、でんぷん糊等を適宜用いられてよい。
【0117】
少なくとも一部の凸部9に接着剤を設ける場合においては、特に、凸部9の先端部9A又は先端部9Aの近傍に接着剤が設けられていること、及び、凸部9の先端部9A及び先端部9Aの近傍に接着剤が設けられていることが好ましい。この場合、断熱シート1の柔軟性に優れつつ、凸部9の形状の安定性を向上させることができる。先端部9Aの近傍には、低密度部12の先端部9A側の一部分が含まれていてもよい。この場合、凸部9の形状の安定性をより向上させることが期待できる。また、凸部9の先端部9Aに接着剤が設けられる場合、向き合い面3Aの全ての凸部9の先端部9Aに接着剤が設けられてよく、また、向き合い面3Aの一部の領域に形成された凸部9の先端部9Aに接着剤が設けられもよい。また、第1の実施形態でも接合部11の説明において前述したように、選択された凸部9の先端部9Aに接着剤が設けられてもよい。例えば、一つ又は複数おきに凸部9の先端部9Aに接着剤が設けられてもよい。なお、このことは、凸部9の少なくとも一部について先端部9Aの周囲や基端部9Bに接着剤が設けられる場合を禁止するものではない。
【0118】
第1のシート3の凸部9に接着剤が設けられている場合において、低密度部12に接着剤が設けられていてもよい(低密度部12に接着剤が付着してもよい)。ただし、この場合、接着剤は、低密度部12の通気性が失われない程度に設けられていることが好適である。また、この場合においても、第1のシート3の凸部9の形状の安定性を向上させることが期待できる。
【0119】
第1のシート3の向き合い面3A側に凸部9に接着剤が設けられていることで、第1のシート3の凸部9の形状の強度をより強くすることができ、接着剤を設けられた凸部9の形状を安定化させることができる。したがって、強い外力が第1のシート3に付与されてもその外力で凸部9の形状を変形が生じにくくなる。また、凸部9の低密度部12に接着剤を設けている場合には、低密度部12の形状の強度をより強化することができる。
【0120】
なお、上記で説明した向き合い面3A側の少なくとも一部の凸部9に設けられた接着剤は、第1のシート3の凸部9の形状の安定化に用いられ、第1のシート3と第2のシート4との接合に寄与しない。ただし、少なくとも一部の凸部9に設けられた接着剤の少なくとも一部が、第1のシート3の凸部9の形状の安定化に用いられ、且つ、第1のシート3と第2のシート4との接合に寄与してもよい。この場合、接着剤は、前述した接合部11を兼ねることになる。すなわち、少なくとも一部の接着剤は、第1のシート3と第2のシート4との接合に用いられていなくてもよいし、第1のシート3と第2のシート4との接合に用いられてもよい。
【0121】
[5-2 作用及び効果]
第5の実施形態にかかる断熱シート1によれば、第1のシート3に凸部9に接着剤が付着されていることで、凸部9の形状が安定化しやすくなる。このため、低密度部12の形状も安定化しやすくなり、断熱シート1の厚み方向に強い力が付与されても低密度部12を安定的に断熱効果に寄与させることができ、第1の実施形態と同様の効果を安定的に得ることができる。
【0122】
[6 第5の実施形態]
第6の実施形態にかかる断熱シートについて説明する。
【0123】
[6-1 構成]
第6の実施形態にかかる断熱シート1は、
図17A、
図17Bに示すように、第1の実施形態から第5の実施形態のいずれかにおける第1のシート3の向き合い面3A側に形成された凸部9として、高凸部50と、高凸部50の高さよりも高さの低い低凸部51を有してもよい。
図17A、
図17Bは、第6の実施形態にかかる断熱シート1の一実施例を示すそれぞれ平面図及び断面図である。
図17Bは、
図17AのK-K線縦断面の状態を模式的に示す図である。
【0124】
低凸部51は、隣接する高凸部50の間に且つ高い凸部から離間した位置に配置されている。したがって、低凸部51と高凸部50の離間距離DIは、低凸部51の径(
図17Aの例では半径)と高凸部50の径(
図17Aの例では半径)の合計よりも大きい。また、少なくとも一部の低凸部51に低密度部12を形成されている。高凸部50についても低密度部12を形成されてよい。高凸部50と低凸部51における低密度部12の構成は、第1の実施形態などで説明したことと同様であるので詳細な説明を省略する。
【0125】
断熱シート1の状態において、低凸部51は、第2のシート4に対して非接着となっており、高凸部50は第2のシート4に接着されている。すなわち、接合部11が高凸部50と第2のシート4と接着する部分となっている。
【0126】
後述する曲げ加工品Mを形成するためのシートとして用いられた場合、断熱シート1を所定形状に打ち抜き形成されたブランク材が折り曲げ加工される。ブランク材の折り曲げ位置で第1のシート3の周辺部15と第2のシート4との離間距離が小さくなりやすいため、折り曲げ位置の近傍で高凸部50を押しつぶす力が負荷される虞を生じる。第6の実施形態にかかる断熱シート1によれば、高凸部50が潰された場合にあっても、低凸部51が潰されずに残されやすくなる。また、第1のシート3の周辺部15と第2のシート4との離間距離が小さくなることで低凸部51が第2のシート4に接して第2のシート4と第1のシート3とのスペーサとして機能することができる。そして、低凸部51には低密度部12が形成されていることで、低密度部12による熱伝導を緩やかにする機能を発揮することができる。
【0127】
なお、第6の実施形態にかかる断熱シート1は、第2の実施形態のように、第1の凸部22と第2の凸部23を有する場合には、第1の凸部22について、高凸部50と低凸部51を有するように構成される。この場合、第2の凸部23の形状安定性の観点からは、低凸部51の高さは第2の凸部23の高さよりも高いことが好ましい。
【0128】
[6 応用例]
上記第1の実施形態から第5の実施形態に示す断熱シート1は、緩衝材や容器等といった断熱性を求められる可能性のあるものに用いられる。断熱シート1は、曲げ加工を施された加工品(曲げ加工品M)の材料として好適に用いることができる。
【0129】
曲げ加工品Mとしては、例えば、
図16に示すような箱体を挙げることができる。
図16に示す曲げ加工品Mは、箱体の展開平面図に対応した形状のブランク材を折り曲げ加工することで製造することができる。このとき、ブランク材は、断熱シート1をブランク材に応じた形状とすることで形成することができる。ブランク材に応じた形状とする方法は、特に限定されず、例えば、断熱シート1を所定形状に切り出す方法や、ブランク材に対応した型を用いた打ち抜き等の方法を例示することができる。
【0130】
また、断熱シート1は、容器の周囲に着脱自在に取り付けられて用いられるスリーブとして用いられてもよい。スリーブは、例えば、断熱シート1を所定形状に切り出し、容器の周面形状に合わせて湾曲加工を施すことで製造することができる。なお、ブランク材を形成する際は、断熱シート1に化粧シート等を積層した積層シートが用いられてよい。
【0131】
以上、本発明の実施形態、その変形例、およびその製造方法の例について具体的に説明したが、本発明は、上述の実施形態、変形例、製造方法の例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0132】
また、上述の実施形態、その変形例およびその製造方法の例において挙げた構成、方法、工程、形状、材料および数値等は、本発明の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【0133】
上述の実施形態に例示した材料は、特に限定しない限り、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0134】
なお、本明細書中に例示された作用及び効果は、本発明の内容を限定するものではない。
【0135】
本発明は、以下の構成を採用することができる。
(E1)
繊維を有する紙系素材から形成され、一方面側に複数の凸部を有する第1のシートと、
前記第1のシートの前記凸部に向かい合う第2のシートと、を備え、
少なくとも一部の前記凸部は、基端部を有し、且つ、前記紙系素材を構成する前記繊維の密度として定められる繊維密度が前記基端部における前記繊維密度よりも小さい低密度部を有する、
断熱シート。
(E2)
前記凸部は、先端部を有し、
前記低密度部は、前記先端部と前記基端部との間に形成されている、
上記(E1)に記載の断熱シート。
(E3)
前記凸部は、先端部を有し、
前記先端部は、前記紙系素材を構成する複数の前記繊維が横断する、
上記(E1)または(E2)に記載の断熱シート。
(E4)
前記第1のシートは、前記凸部とは逆面側に突出した複数の外向き凸部を有する、
上記(E1)から(E3)のいずれか1つに記載の断熱シート。
(E5)
少なくとも一部の前記外向き凸部は、前記低密度部を有する、
上記(E4)に記載の断熱シート。
(E6)
さらに前記第1のシートに向かい合う第3のシートを有し、
前記第1のシートが前記第3のシートと前記第2のシートに挟まれている、
上記(E1)から(E5)のいずれか1つに記載の断熱シート。
(E7)
前記凸部は、スリット部を有する、
上記(E1)から(E6)のいずれか1つに記載の断熱シート。
(E8)
前記スリット部が、前記低密度部に繋がっている、
上記(E7)に記載の断熱シート。
(E9)
前記凸部は、開口部を有する、
上記(E1)から(E8)のいずれか1つに記載の断熱シート。
(E10)
前記第1のシートは、一方面側に、複数の前記凸部としての第1の凸部と、少なくとも2つの前記第1の凸部を含む領域に形成された第2の凸部とを有する、
上記(E1)から(E9)のいずれか1つに記載の断熱シート。
(E11)
前記低密度部の少なくとも一部に接着剤が付着している、
上記(E1)から(E10)のいずれか1つに記載の断熱シート。
(E12)
前記凸部として、高凸部と、前記高凸部の高さよりも高さの低い低凸部を有する、
上記(E1)から(E11)のいずれか1つに記載の断熱シート。
(E13)
上記(E1)から(E12)のいずれか1つに記載の前記断熱シートを用いた、
曲げ加工品。
【符号の説明】
【0136】
1 :断熱シート
3 :第1のシート
3A :向き合い面
3B :非向き合い面
4 :第2のシート
5 :第3のシート
9 :凸部
9A :先端部
9B :基端部
9C :主隆起部
9D :副隆起部
9D1 :前面部
9D2 :側面部
11 :接合部
12 :低密度部
12A :端部
12B :端部
15 :周辺部
16 :圧縮部
17 :平坦面
18 :繊維シート
18A :繊維
19 :第1の部分
20 :第2の部分
21 :隠蔽部
22 :第1の凸部
22A :先端部
22B :基端部
23 :第2の凸部
23A :先端部
23B :基端部
25 :第3のシート
27 :隙間
34 :スリット部
35 :スリット状構造部
36 :開口孔
37 :外向き凸部
37A :先端部
37B :基端部
38 :第1の外向き凸部
39 :第2の外向き凸部
40 :隙間
90 :凸面
91 :凹面
92A :凸面
93A :凸面
137A :凸面
137B :凹面
AH :空気
M :曲げ加工品
N1 :部分
P :圧力
PI :ピッチ
X1 :領域
X2 :領域
XS :領域