(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003524
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】杭打機
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20240105BHJP
E02F 9/16 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
E02F9/20 K
E02F9/16 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102724
(22)【出願日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】藤田 太一
(72)【発明者】
【氏名】磯貝 隆明
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
【Fターム(参考)】
2D003BA01
2D003BA06
2D003BB04
2D015EB01
2D015GA03
(57)【要約】
【課題】運転操作における居住性、操作性、安全性を同時に高めることが可能な操作装置を備えた杭打機を提供する。
【解決手段】操作レバー32a,33aの傾動操作に基づいてレバー操作信号を操作用制御回路に付与する操作装置を備えた杭打機において、操作装置は、杭打ち作業を行う主操作モードと、リーダの傾きを調整する副操作モードとに切り替え可能な操作モード切替スイッチ36を有し、操作レバー33aは、オペレータに握られて中立位置から前後左右方向に操作されるジョイスティック型操作レバーからなり、副操作モードの状態で、前後方向の操作がリーダ起伏シリンダを伸縮作動させるリーダ起伏制御弁へのレバー操作信号を生成し、左右方向の操作が前記リーダ傾動シリンダを伸縮作動させるリーダ傾動制御弁へのレバー操作信号を生成し、操作レバーを傾動操作する前後左右方向と、リーダの揺動する前後左右方向とがそれぞれ対応付けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、該下部走行体の上部に旋回可能に設けられた上部旋回体と、該上部旋回体に搭載され、内部に運転室を画成するキャブと、前記上部旋回体の前部に立設されるリーダと、該リーダに沿って昇降可能なオーガと、吊りロープの巻取り及び操出しを行うウインチと、前記運転室に配置された操作レバーの傾動操作に基づいてレバー操作信号を操作用制御回路に付与する操作装置とを備えた杭打機において、
前記リーダは、前記上部旋回体に対して前後左右方向に揺動自在に支持され、前後方向に対応するリーダ起伏シリンダ及び左右方向に対応するリーダ傾動シリンダによって前記リーダを前後左右方向に傾き調整することが可能とされ、
前記操作装置は、杭打ち作業を行う主操作モードと、前記リーダの傾きを調整する副操作モードとに切り替え可能な操作モード切替スイッチを有し、
前記操作レバーは、オペレータに握られて中立位置から前後左右方向に操作されるジョイスティック型操作レバーからなり、前記副操作モードの状態で、前後方向の操作が前記リーダ起伏シリンダを伸縮作動させるリーダ起伏制御弁へのレバー操作信号を生成し、左右方向の操作が前記リーダ傾動シリンダを伸縮作動させるリーダ傾動制御弁へのレバー操作信号を生成し、
前記操作レバーを傾動操作する前後左右方向と、前記リーダの揺動する前後左右方向とがそれぞれ対応付けられていることを特徴とする杭打機。
【請求項2】
前記操作装置は、前記主操作モードから前記副操作モードに切り替えられた状態であることを報知する報知手段を有していることを特徴とする請求項1記載の杭打機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭打機に関し、詳しくは、運転操作レバーを傾動操作することによって所望の動作を行うための操作装置を備えた杭打機に関する。
【背景技術】
【0002】
単一の操作レバーでオーガ操作及びリーダ操作の選択的な操作を可能とし、レバーの本数を減らした分のスペースを得て運転室の居住性を向上させた杭打機が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
杭施工において杭の鉛直度(傾斜状態)を適正に管理することは、既に一般的である。したがって、杭打機には、リーダの前後方向及び左右方向の傾斜角をそれぞれ独立して調整する操作用油圧回路が備えられている。こうしたリーダ操作のための軸数が増えると、特許文献1のような操作レバーの兼用という考えは、レバー本数を減らせる点で有効であるといえる。しかしながら、油圧回路の切替え操作を安易に許容すれば、オペレータの誤操作を招く危険が高まることから、実用レベルで満足できる操作性、安全性はこれまで得られていなかった。
【0005】
そこで本発明は、運転操作における居住性、操作性、安全性を同時に高めることが可能な操作装置を備えた杭打機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の杭打機は、下部走行体と、該下部走行体の上部に旋回可能に設けられた上部旋回体と、該上部旋回体に搭載され、内部に運転室を画成するキャブと、前記上部旋回体の前部に立設されるリーダと、該リーダに沿って昇降可能なオーガと、吊りロープの巻取り及び操出しを行うウインチと、前記運転室に配置された操作レバーの傾動操作に基づいてレバー操作信号を操作用制御回路に付与する操作装置とを備えた杭打機において、前記リーダは、前記上部旋回体に対して前後左右方向に揺動自在に支持され、前後方向に対応するリーダ起伏シリンダ及び左右方向に対応するリーダ傾動シリンダによって前記リーダを前後左右方向に傾き調整することが可能とされ、前記操作装置は、杭打ち作業を行う主操作モードと、前記リーダの傾きを調整する副操作モードとに切り替え可能な操作モード切替スイッチを有し、前記操作レバーは、オペレータに握られて中立位置から前後左右方向に操作されるジョイスティック型操作レバーからなり、前記副操作モードの状態で、前後方向の操作が前記リーダ起伏シリンダを伸縮作動させるリーダ起伏制御弁へのレバー操作信号を生成し、左右方向の操作が前記リーダ傾動シリンダを伸縮作動させるリーダ傾動制御弁へのレバー操作信号を生成し、前記操作レバーを傾動操作する前後左右方向と、前記リーダの揺動する前後左右方向とがそれぞれ対応付けられていることを特徴としている。
【0007】
また、前記操作装置は、前記主操作モードから前記副操作モードに切り替えられた状態であることを報知する報知手段を有していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の杭打機によれば、操作モード切替スイッチによって、主操作モードと副操作モードとを切り替えることで、杭打ち作業として必要な旋回、ウインチ巻上巻下、オーガ正転逆転のうち、いずれか2つの操作と、リーダの傾き調整に必要なリーダ起伏及びリーダ傾動の2つの操作とを、1本のジョイスティック型操作レバーで選択的に操作することができる。しかも、操作レバーを傾動操作する前後左右方向と、リーダの揺動する前後左右方向とをそれぞれ対応付けているので、リーダの傾き調整を行うオペレータの操作感覚に合致したものとなる。すなわち、操作レバーの本数を減らした分のスペースを得て、運転操作における居住性が高まり、これと同時に操作性、安全性をも高まるものである。
【0009】
また、操作装置が主操作モードから副操作モードに切り替えられた状態であることを報知する報知手段を有しているので、リーダの傾き調整時には、オペレータがその状態を確実に認識することができ、安全性がより高まるものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一形態例を示す杭打機の側面図である。
【
図5】同じく操作モード切替スイッチの説明図である。
【
図6】同じく操作モード切替スイッチを設ける電気回路図である。
【
図7】同じく操作系及び駆動系の油圧回路図である。
【
図8】操作モード切替の変形例を示す操作系及び駆動系の油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1乃至
図8は、本発明の杭打機を示す図である。杭打機11は、
図1に示すように、鋼管杭施工と地盤改良施工とを切り替えて行うことができる兼用機であって、クローラを備えた下部走行体12と、該下部走行体12上に旋回可能に設けられた上部旋回体13とで構成されたベースマシン14と、上部旋回体13の前部に立設したリーダ15とを備えている。また、上部旋回体13の前部には、リーダ15を起伏可能に支持するリーダサポート16が設けられている。さらに、上部旋回体13の前後左右の4箇所に安定用のジャッキ17が設けられるとともに、上部旋回体13の後端部に杭打機11のバランスをとるためのカウンタウエイト18が搭載されている。
【0012】
リーダ15は、複数のリーダ部材を互いに着脱可能に連結したもので、上端部にはウインチロープ(吊りロープ)19が巻き掛けられるトップシーブ20が、下端部には施工部材(例えば鋼管杭)の振れ止め用として下部ガイド21がそれぞれ装着されており、リーダ15の前面には回転駆動装置の一例であるオーガ22が昇降可能に装着されている。また、リーダ15は、上部旋回体13に対して前後左右方向に揺動自在に支持され、前後方向(
図1の左右方向)に対応するリーダ起伏シリンダ23及び左右方向(
図1の紙面方向)に対応するリーダ傾動シリンダ24を伸縮作動することで、リーダ15を前後左右方向に傾き調整することが可能である。
【0013】
オーガ22は、油圧で回転駆動され、出力軸に連結した施工部材に回転力を付与するものである。オーガ22の上下には、リーダ15の下端部に設けられた駆動スプロケット25と、上端部に設けられた従動スプロケット26との間に架け渡された昇降用チェーン27の両端がそれぞれ取り付けられ、チェーン式の昇降装置を構成する。昇降装置は、駆動スプロケット25を油圧で回転駆動し、該駆動スプロケット25と従動スプロケット26とに掛け回された昇降用チェーン27を上下方向に移動させることにより、リーダ15の前面に沿ってオーガ22を昇降させる。
【0014】
上部旋回体13は、運転用のキャブ28や動力部29としてエンジンパワーユニットが搭載される旋回フレーム30を備えている。キャブ28は、杭打機11の仕様に応じて、旋回フレーム30上の右側部又は左側部に搭載されるものである。キャブ28内にはオペレータが搭乗する運転室が画成され、走行や旋回、オーガ22の昇降・回転駆動などを行う操作レバーや押しボタンスイッチ、タッチパネル式のモニタなどの機器が操作性を考慮して運転座席の近傍に集約的に配置されており、さらに、これらの機器と電気的に接続された施工管理装置が設置されている。
【0015】
図2乃至
図6は、運転室に配置された操作装置を示すものである。ここで、
図2は、
図1の杭打機11の向きに整合し、左側が前部、右側が後部、紙面方向の奥側が右側方部、手前側が左側方部を示している。各種操作系は、運転座席31に着座した状態で操作入力が容易に行え、
図3及び
図4にも示すように、室内空間のうち、左側部には左手で操作を行う左側操作入力部32が、右側部には右手で操作を行う右側操作入力部33が、前側部には両手あるいは片手で操作を行う前側操作入力部34がそれぞれ配置されている。前側操作入力部34には、例えば、オペレータの目線高さに配置されたモニタ35が含まれる。
【0016】
各種操作入力部32,33,34には、中立位置から所定位置に傾動操作が可能な既知の操作レバー32a,33a,34a,34bが備えられ、各操作レバー32a,33a,34a,34bは、例えば、前側操作入力部34に属する左右2本の走行操作レバー34a,34bの傾動操作によって、左右のクローラによる直進走行や旋回走行などが行え、左側操作入力部32に属する旋回・オーガ昇降操作レバー(ジョイスティック型操作レバー)32aの傾動操作によって、上部旋回体13の左旋回・右旋回及びオーガ22の上昇・下降の各操作が行え、右側操作入力部33に属するウインチ・オーガ回転操作レバー(ジョイスティック型操作レバー)33aの傾動操作によって、ウインチ巻上・巻下(ロープ巻取り・繰出し)及びオーガ22の正転・逆転の各操作が行える。また、旋回・オーガ昇降操作レバー32a及びウインチ・オーガ回転操作レバー33aは、両方ともマグネット機構が備えられており、オーガ22の上昇・下降操作及び正転・逆転操作が行われるレバー傾動操作のみが操作状態で保持可能に構成されている。
【0017】
ここで、杭打機11は、杭打ち作業(例えばオーガ作業)を行う主操作モードと、リーダ15の傾きを調整する副操作モードとに操作モードを切り替えることが可能であり、副操作モードでは、例えば、右側の操作レバー33aを傾動操作する前後左右方向と、リーダ15の揺動する前後左右方向とがそれぞれ対応付けられている。
図5にも示すように、前側操作入力部34に属する操作モード切替スイッチ36を操作すると、主操作モードであるウインチ・オーガ回転操作と、副操作モードであるリーダ起伏・チルト(傾動)操作とに選択的に切り替えられる。
【0018】
操作レバー33aを傾動操作する前後左右方向の対応付けとしては、例えば、ウインチ巻下操作を行う前方向がリーダ15を前方向に起こす起仰に、ウインチ巻上操作を行う後方向がリーダ15を後方向に倒す倒伏に、オーガ正転操作を行う右方向がリーダ15を右方向に傾ける右傾動に、オーガ逆転操作を行う左方向がリーダ15を左方向に傾ける左傾動に、それぞれ対応付けられている。
【0019】
操作モード切替スイッチ36は、
図6の電気回路図に示すように、1つの可動接点と2つの固定接点とからなるC接点を備えた位置保持型スイッチ(オルタネートスイッチ)である。また、2つの固定接点のうちの一方は、
図7に示すように、操作系の油圧回路(操作用制御回路)に介設された4つの切替弁37の各ソレノイド(sol)に接続され、他方は、
図5に示すように、操作モード切替スイッチ36の隣に設けられた報知手段としてランプ38や、図示は省略するが、運転室に設けられた報知手段としてブザーに接続されている。
【0020】
ここで、杭打ち作業を行う主操作モードの状態、つまり、一方側の固定接点が通電状態では、各ソレノイドが励磁し、4つの切替弁37を同時に作動(
図7の位置からスプールを右動)して油路が切り替えられる。そして、操作レバー33aに組み込まれたリモコン弁39は、操作レバー33aの前後傾動操作に従って、ウインチ駆動機構のウインチ駆動モータ40を回転駆動させるウインチ回転制御弁41へのレバー操作圧力信号(操作パイロット圧)を生成する。さらにリモコン弁39は、操作レバー33aの左右傾動操作に従って、オーガ駆動機構のオーガ駆動モータ42を回転駆動させるオーガ回転制御弁43,44へのレバー操作圧力信号を生成する。
【0021】
一方、リーダ15の傾きを調整する副操作モードの状態、つまり、他方側の固定接点が通電状態では、各ソレノイドが非励磁となって、4つの切替弁37を作動(内蔵バネの弾性力で
図7の位置に復帰)して油路が切り替えられる。そして、リモコン弁39は、操作レバー33aの前後傾動操作に従って、リーダ起伏シリンダ23を伸縮作動させるリーダ起伏制御弁45へのレバー操作圧力信号を生成する。さらにリモコン弁39は、操作レバー33aの左右傾動操作に従って、リーダ傾動シリンダ24を伸縮作動させるリーダ傾動制御弁46へのレバー操作圧力信号を生成する。
【0022】
また、図示は省略するが、副操作モードの状態で、リーダ15を水平に倒伏させると、杭打機11の輸送姿勢が得られる。この場合、杭打機11は、キャブ干渉防止機能が働くように制御される。キャブ干渉防止機能は、例えば、起立姿勢(
図1)のリーダ15を所定角度チルトさせると、付設のリミットスイッチが作動して、リーダ15を後方へ倒伏させる操作が不可能になる(倒伏規制状態)。一方、ひとたび輸送姿勢となれば、リーダ15のチルト操作が不可能になる(チルト規制状態)。これにより、副操作モードにおいて動作条件が課され、キャブ28とリーダ15との干渉が防止される。
【0023】
以下では、このように形成された杭打機11を運転操作して、リーダ15の前後方向及び左右方向の傾きをそれぞれ調整する場合を説明する。まず、運転室のモニタ35には、施工管理装置で取得した現在のリーダ傾斜角度情報が数値や画像によって表示されており、オペレータは、こうした視覚的な情報に基づいてリーダ15の傾きを調整することとなる。
【0024】
操作モード切替スイッチ36をウインチ・オーガ回転からリーダ起伏・チルトに切り替えると(
図5)、スイッチの接点が切り替えられ、ランプ38の点灯及びブザーの鳴動(音声出力)によって主操作モードから副操作モードに切り替えられた状態であることが報知される。そして、オペレータは、操作レバー33aを握った状態から、モニタ35の画面に表示されたリーダ操作表示に基づき操作レバー33aを前後方向あるいは左右方向に傾動操作してリーダ15の傾きを調整する。
【0025】
こうして、リーダ15の鉛直性が得られた後、操作モード切替スイッチ36をリーダ起伏・チルトからウインチ・オーガ回転に切り替え、主操作モードに復帰させると、スイッチの接点が再び切り替えられ、ランプ38が消灯し、同時にブザー音も鳴り止む。そして、操作レバー33aを左右方向に傾動操作することで、オーガ22の出力軸に連結した施工部材に回転力が付与され、オーガ22の下降動作に従って、鉛直性を保持したまま施工部材が地中に圧入される。
【0026】
このように、本発明の杭打機11によれば、操作モード切替スイッチ36によって、主操作モードと副操作モードとを切り替えることで、杭打ち作業として必要な旋回、ウインチ、オーガ昇降及び回転のうち、いずれか2つの操作と、リーダ15の傾き調整に必要なリーダ起伏及びリーダ傾動の2つの操作とを、1本のジョイスティック型操作レバー33aで選択的に操作することができる。しかも、操作レバー33aを傾動操作する前後左右方向と、リーダ15の揺動する前後左右方向とをそれぞれ対応付けているので、リーダ15の傾き調整を行うオペレータの操作感覚に合致したものとなる。すなわち、操作レバーの本数を減らした分のスペースを得て、運転操作における居住性が高まり、これと同時に操作性、安全性をも高まるものである。
【0027】
また、操作装置が主操作モードから副操作モードに切り替えられた状態であることを報知する報知手段(例えばランプ38、ブザー)を有しているので、リーダ15の傾き調整時には、オペレータがその状態を確実に認識することができ、安全性がより高まるものである。
【0028】
図8は、本発明の杭打機の変形例を示している。なお、以下の説明において、前記形態例に示した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0029】
本変形例では、前記形態例の操作モード切替スイッチ36、ランプ38及びブザーなどの電気部品をそのまま有しており、副操作モードにおける操作レバーの割り当てを、ウインチ・オーガ回転に代えて左右のクローラによる走行としたものである。具体的には、左走行操作レバー34aを傾動操作する前後方向の対応付けとしては、前進走行操作を行う前方向がリーダ15を右方向に傾ける右傾動に、後進走行操作を行う後方向がリーダ15を左方向に傾ける左傾動に、それぞれ対応付けられている。一方、右走行操作レバー34bを傾動操作する前後方向の対応付けとしては、前進走行操作を行う前方向がリーダ15を前方向に起こす起仰に、後進走行操作を行う後方向がリーダ15を後方向に倒す倒伏に、それぞれ対応付けられている。また、図示は省略するが、ランプ38及びブザーは、操作モード切替スイッチ36を設ける電気回路において、切替弁ソレノイド側に結線されている。
【0030】
ここで、走行を行う主操作モードの状態では、各ソレノイドが非励磁状態に置かれ、4つの切替弁37の切替位置(
図8の位置)が内蔵バネの弾性力で保持される。そして、左走行操作レバー34aに組み込まれた左リモコン弁47は、左走行操作レバー34aの前後傾動操作に従って、左クローラの左走行駆動モータ48を回転駆動させる左走行制御弁49へのレバー操作圧力信号を生成する。さらに右走行操作レバー34bに組み込まれた右リモコン弁50は、右走行操作レバー34bの前後傾動操作に従って、右クローラの右走行駆動モータ51を回転駆動させる右走行制御弁52へのレバー操作圧力信号を生成する。
【0031】
一方、リーダ15の傾きを調整する副操作モードの状態では、各ソレノイドが励磁し、4つの切替弁37を同時に作動(
図8の位置からスプールを右動)して油路が切り替えられる。そして、左リモコン弁47は、左走行操作レバー34aの前後傾動操作に従って、リーダ傾動シリンダ24を伸縮作動させるリーダ傾動制御弁46へのレバー操作圧力信号を生成する。さらに右リモコン弁50は、右走行操作レバー34bの前後傾動操作に従って、リーダ起伏シリンダ23を伸縮作動させるリーダ起伏制御弁45へのレバー操作圧力信号を生成する。
【0032】
そして、このように構成された本形態例においても、リーダ15の傾き調整時には、ランプ38やブザーを機能させて、オペレータがその状態を確実に認識することができ、安全性がより高まるものである。さらに、本形態例では、独立した2本の操作レバー34a,34bによって、リーダ操作時における前後方向及び左右方向の複合的なレバー操作が容易なものとなる。
【0033】
なお、本発明は、前記各形態例に限定されるものではなく、副操作モードにおける操作レバーの割り当ては任意であり、例えば、ウインチ・オーガ回転に代えて旋回・オーガ昇降としてもよい。また、各形態例において、主操作が作業系では、切替弁ソレノイドの非励磁(スプールの弾性的な復帰状態)でリーダ操作が可能になるものとし、一方、主操作が走行系では、その逆に励磁でリーダ操作が可能になるものとしているが、これは動作仕様の最適化を図るもので、特に限定されるものではない。さらに、操作レバーは、斜め方向の傾動を許容して複数軸の出力を合成することができ、加えて、操作信号には電気信号が用いられてもよい。また、杭打機の現場移動(輸送)にリーダ操作は不可欠であるが、その場合においてもブザーなどで注意喚起がなされることから、キャブ干渉防止機能と相俟って、安全性がより一層高まるものである。
【符号の説明】
【0034】
11…杭打機、12…下部走行体、13…上部旋回体、14…ベースマシン、15…リーダ、16…リーダサポート、17…ジャッキ、18…カウンタウエイト、19…ウインチロープ、20…トップシーブ、21…下部ガイド、22…オーガ、23…リーダ起伏シリンダ、24…リーダ傾動シリンダ、25…駆動スプロケット、26…従動スプロケット、27…昇降用チェーン、28…キャブ、29…動力部、30…旋回フレーム、31…運転座席、32…左側操作入力部、32a…旋回・オーガ昇降操作レバー、33…右側操作入力部、33a…ウインチ・オーガ回転操作レバー、34…前側操作入力部、34a,34b…走行操作レバー、35…モニタ、36…操作モード切替スイッチ、37…切替弁、38…ランプ、39…リモコン弁、40…ウインチ駆動モータ、41…ウインチ回転制御弁、42…オーガ駆動モータ、43,44…オーガ回転制御弁、45…リーダ起伏制御弁、46…リーダ傾動制御弁、47…左リモコン弁、48…左走行駆動モータ、49…左走行制御弁、50…右リモコン弁、51…右走行駆動モータ、52…右走行制御弁