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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035258
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】移動体
(51)【国際特許分類】
   B64D 13/08 20060101AFI20240307BHJP
   B60H 1/22 20060101ALI20240307BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20240307BHJP
【FI】
B64D13/08
B60H1/22 651Z
B60L50/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139604
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】久保田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】福地 有一
(72)【発明者】
【氏名】市川 小月
(72)【発明者】
【氏名】平▲柳▼ 光
【テーマコード(参考)】
3L211
5H125
【Fターム(参考)】
3L211AA20
5H125AA20
5H125AC12
5H125CD07
5H125CD08
5H125FF22
5H125FF23
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電気部品の冷却を継続して行うことができる空調システムを備える移動体を提供する。
【解決手段】VTOL機(移動体)は、客室(乗員室)24と部品室26とを連通する第1連通路36と、部品室26を胴体12の外部に開放する第2連通路38と、を備え、客室24の一部の空気は、第1循環路42を流れて客室24に戻り、客室24の残りの空気は、第1連通路36を流れて部品室26に導入され、部品室26の一部の空気は、第2循環路52を流れて部品室26に戻り、部品室26の残りの空気は、第2連通路38を流れて胴体12の外部に排出される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人を収容する乗員室と、
電気機器と電気的に接続される複数の電気部品を収容する部品室と、
胴体の外部から内部に空気を導入するための第1導入口及び第2導入口と、
前記乗員室に接続された第1循環路を有し、前記第1導入口から前記胴体の内部に導入された空気を、前記乗員室と前記第1循環路とで形成される第1経路で循環させて、前記乗員室の空調を行う第1空調システムと、
前記部品室に接続された第2循環路を有し、前記第2導入口から前記胴体の内部に導入された空気を、前記部品室と前記第2循環路とで形成される第2経路で循環させて、前記部品室の空調を行う第2空調システムと、
を備える移動体であって、
前記乗員室と前記部品室とを連通する第1連通路と、
前記部品室を前記胴体の外部に開放する第2連通路と、
を備え、
前記乗員室の一部の空気は、前記第1循環路を流れて前記乗員室に戻り、前記乗員室の残りの空気は、前記第1連通路を流れて前記部品室に導入され、
前記部品室の一部の空気は、前記第2循環路を流れて前記部品室に戻り、前記部品室の残りの空気は、前記第2連通路を流れて前記胴体の外部に排出される、移動体。
【請求項2】
請求項1に記載の移動体であって、
前記部品室の廃熱により前記乗員室を温める熱利用回路を備え、
前記熱利用回路は、
前記第2循環路を流れる空気から吸熱するエバポレータと、
前記第1循環路を流れる空気に放熱するコンデンサと、
前記エバポレータと前記コンデンサとの間で熱媒体を循環させることにより前記エバポレータから前記コンデンサに熱を移動させる熱移動流路と、
を有する、移動体。
【請求項3】
請求項1に記載の移動体であって、
前記電気機器は、上方又は前方に推力を発生させるロータのモータであり、
前記電気部品は、前記モータに接続される回路部品である、移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調システムを備える移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、客室の空調システムを備える航空機(移動体)が開示される。この航空機において、客室の空気は、排出流路を流れて機体の外部に排出される。この排出流路には、アビオニクスが配置される。アビオニクスは、客室から排出される空気によって冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第11230384号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の空調システムにおいて、排出流路に障害が発生すると、アビオニクスを冷却できなくなる虞がある。
【0005】
本発明は上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様は、人を収容する乗員室と、電気機器と電気的に接続される複数の電気部品を収容する部品室と、胴体の外部から内部に空気を導入するための第1導入口及び第2導入口と、前記乗員室に接続された第1循環路を有し、前記第1導入口から前記胴体の内部に導入された空気を、前記乗員室と前記第1循環路とで形成される第1経路で循環させて、前記乗員室の空調を行う第1空調システムと、前記部品室に接続された第2循環路を有し、前記第2導入口から前記胴体の内部に導入された空気を、前記部品室と前記第2循環路とで形成される第2経路で循環させて、前記部品室の空調を行う第2空調システムと、を備える移動体であって、前記乗員室と前記部品室とを連通する第1連通路と、前記部品室を前記胴体の外部に開放する第2連通路と、を備え、前記乗員室の一部の空気は、前記第1循環路を流れて前記乗員室に戻り、前記乗員室の残りの空気は、前記第1連通路を流れて前記部品室に導入され、前記部品室の一部の空気は、前記第2循環路を流れて前記部品室に戻り、前記部品室の残りの空気は、前記第2連通路を流れて前記胴体の外部に排出される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電気部品の冷却を継続して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、VTOL機の左側面図である。
図2図2は、VTOL機の内部における空気の流れを示す図である。
図3図3は、第1空調システム、第2空調システム、熱利用回路及び冷却回路を示す図である。
図4図4は、客室及び部品室を冷房している間の熱利用回路の状態及び各空調システムの状態を示す図である。
図5図5は、バッテリを冷却している間の熱利用回路の状態及び冷却回路の状態を示す図である。
図6図6は、バッテリを加熱している間の冷却回路の状態を示す図である。
図7図7は、客室を暖房している間の熱利用回路の状態、冷却回路の状態及び各空調システムの状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[1 VTOL機10の構成]
図1は、VTOL機10の左側面図である。VTOL機10(移動体)は、例えば電動垂直離着陸航空機、所謂eVTOL機である。VTOL機10は、胴体12と、前翼14と、後翼16と、左右のブーム18と、8つのVTOLロータ20と、左右のクルーズロータ22とを備える。なお、図1では、左右のブーム18のうち、左のブーム18のみが示される。また、図1では、8つのVTOLロータ20のうち、4つのVTOLロータ20のみが示される。また、図1では、左右のクルーズロータ22のうち、左のクルーズロータ22のみが示される。VTOL機10は、飛行用の電源として、1以上のバッテリ68(図3)及び1以上の発電機(不図示)を備える。
【0010】
前翼14は、胴体12の前部に接続される。後翼16は、胴体12の後部に接続される。前翼14及び後翼16は、VTOL機10の前方への移動に伴い揚力を発生させる。
【0011】
2つのブーム18の各々は、前翼14及び後翼16によって支持される。2つのブーム18のうちの一方のブーム18は、胴体12の左方に配置される。2つのブーム18のうちの他方のブーム18は、胴体12の右方に配置される。各々のブーム18は、前後方向に延びる。
【0012】
各々のブーム18には、後方に向かって順番に4つのVTOLロータ20が配置される。各々のVTOLロータ20は、離陸工程、鉛直方向の上昇工程、上昇工程から巡航への移行工程、巡航から下降工程への移行工程、鉛直方向の下降工程、着陸工程、及び、停止飛行工程で使用される。各々のVTOLロータ20は、鉛直方向の推力を発生させる。
【0013】
後翼16には、左右に並ぶ2つのクルーズロータ22が配置される。各々のクルーズロータ22は、巡航工程、上昇工程から巡航への移行工程、及び、巡航から下降工程への移行工程で使用される。各々のクルーズロータ22は、水平方向の推力を発生させる。
【0014】
胴体12の内部には、客室24及び部品室26が設けられる。客室24は、部品室26の前方に配置される。但し、客室24及び部品室26の配置は、これに限らない。客室24は、部品室26よりも広い。
【0015】
客室24は、複数の乗客を収容可能である。一方、部品室26は、予め複数の電気部品を収容する。各々の電気部品は、VTOL機10に搭載される電気機器と電気的に接続される。本実施形態において、電気機器というのは、各ロータ(VTOLロータ20及びクルーズロータ22)のモータ及び電源である。また、電気部品というのは、各モータに接続される回路部品である。回路部品は、1以上の電源から各々のモータに電力を分配するための部品、例えば、ハーネス、スイッチ、コンタクタ等を含む。なお、部品室26に収容される電気部品は、他の部品、例えばアビオニクス等に関わる回路部品等であってもよい。また、部品室26に収容される電気部品は、後述するバッテリ68以外のバッテリであってもよい。なお、部品室26は、部屋でなく、電気部品を収容する筐体であってもよい。各々の回路部品は、通電によって発熱する。回路部品の熱は、客室24の暖房に利用される。
【0016】
[2 VTOL機10の内部での空気の流れ]
図2は、VTOL機10の内部における空気の流れを示す図である。具体的には、図2は、客室24に出入りする空気の流れと、部品室26に出入りする空気の流れとを示す。VTOL機10は、第1空調システム28と、第2空調システム30と、第1導入口32と、第2導入口34と、第1連通路36と、第2連通路38と、排出口40とを備える。第1空調システム28及び第2空調システム30は、所謂HVACである。
【0017】
第1空調システム28は、客室24の空調を行う。第1空調システム28は、客室24を含む第1循環路42を有する。第1循環路42の入口42aと出口42bは、客室24に形成される。第1循環路42には、第1エバポレータ44と、内部コンデンサ46と、第1ブロアファン48と、第1フィルタ50とが配置される。第1循環路42のうち、入口42aよりも下流且つ第1ブロアファン48及び第1フィルタ50よりも上流の部分には、第1導入口32が接続される。第1導入口32は、胴体12の外周部分に形成され、胴体12の外部から内部に空気(外気)を導入する。
【0018】
第1循環路42のうち、客室24から流れる空気(内気)と、第1導入口32から流れる空気(外気)との合流部分には、第1ドア49が設けられる。第1ドア49は、位置に応じて、客室24に供給される空気のうちの内気と外気の割合を調整する。第1ドア49の位置を変化させるアクチュエータは、コントローラ(不図示)によって制御される。
【0019】
第1循環路42を流れる空気は、第1エバポレータ44を通過することにより冷やされる。また、第1循環路42を流れる空気は、内部コンデンサ46を通過することにより温められる。第1空調システム28においては、内部コンデンサ46を通過する空気の量を調整することが可能である。冷却後の空気及び加熱後の空気は、客室24に供給される。これにより、客室24の空調(冷暖房)が行われる。客室24の空調の詳細は、下記[3]で説明する。
【0020】
第2空調システム30は、部品室26の空調を行う。第2空調システム30は、部品室26を含む第2循環路52を有する。第2循環路52の入口52aと出口52bは、部品室26に形成される。第2循環路52には、第2エバポレータ54と、第2ブロアファン58と、第2フィルタ60とが配置される。第2循環路52のうち、入口52aよりも下流且つ第2ブロアファン58及び第2フィルタ60よりも上流の部分には、第2導入口34が接続される。第2導入口34は、胴体12の外周部分に形成され、胴体12の外部から内部に空気(外気)を導入する。
【0021】
第2循環路52のうち、部品室26から流れる空気(内気)と、第2導入口34から流れる空気(外気)との合流部分には、第2ドア59が設けられる。第2ドア59は、位置に応じて、部品室26に供給される空気のうちの内気と外気の割合を調整する。第2ドア59の位置を変化させるアクチュエータは、コントローラ(不図示)によって制御される。
【0022】
第2循環路52を流れる空気は、第2エバポレータ54を通過することにより冷やされる。冷却後の空気は、部品室26に供給される。これにより、部品室26の空調(冷房)が行われる。なお、電気部品を温める必要はないため、部品室26の暖房は不要である。部品室26の空調の詳細は、下記[3]で説明する。
【0023】
なお、第1導入口32と第2導入口34とが同じ位置に形成されてもよい。この場合、第1導入口32(第2導入口34)に接続される流路が2つに分岐し、一方の分流路が第1空調システム28に接続され、他方の分流路が第2空調システム30に接続される。
【0024】
第1連通路36は、客室24と部品室26との間に設けられ、客室24と部品室26とを連通する。第1連通路36は、空気を流すことが可能である。第1連通路36は、複数設けられてもよい。
【0025】
第2連通路38は、部品室26と排出口40との間に設けられ、部品室26と排出口40とを連通する。つまり、第2連通路38は、部品室26を機体の外部に開放する。第2連通路38は、空気を流すことが可能である。第2連通路38は、複数設けられてもよい。排出口40は、胴体12の外周部分に形成される。排出口40は、複数設けられてもよい。
【0026】
第1ブロアファン48の作動に伴い、外部の空気(外気)は、第1導入口32から第1循環路42に流入する。この空気の量を「A」とする。また、第1ブロアファン48の作動に伴い、客室24の空気(内気)の一部は、入口42aから第1循環路42に流入し、第1循環路42を流れ、出口42bから客室24に流入する。この空気の量、すなわち、入口42aから第1循環路42を経由して客室24に戻る空気の量を「B」とする。
【0027】
この場合、図2で示されるように、第1循環路42の出口42bから客室24には量A+Bの空気が流入する。客室24の空気の量は一定である。つまり、量A+Bの空気が客室24に流入することにより、同量の空気が客室24から流出する。客室24から流出する空気のうち、量Bの空気は、上述したように、入口42aから第1循環路42に流入する。結果として、残りの空気、すなわち、量Aの空気は、第1連通路36に流入する。この空気は、第1連通路36を流れ、部品室26に流入する。
【0028】
第2ブロアファン58の作動に伴い、外部の空気(外気)は、第2導入口34から第2循環路52に流入する。この空気の量を「C」とする。また、第2ブロアファン58の作動に伴い、部品室26の空気(内気)の一部は、入口52aから第2循環路52に流入し、第2循環路52を流れ、出口52bから部品室26に流入する。この空気の量、すなわち、入口52aから第2循環路52を経由して部品室26に戻る空気の量を「D」とする。
【0029】
この場合、図2で示されるように、第2循環路52の出口52bから部品室26には量C+Dの空気が流入する。更に、上述したように、第1連通路36から部品室26には量Aの空気が流入する。部品室26の空気の量は一定である。つまり、量A+C+Dの空気が部品室26に流入することにより、同量の空気が部品室26から流出する。部品室26から流出する空気のうち、量Dの空気は、上述したように、入口52aから第2循環路52に流入する。結果として、残りの空気、すなわち、量A+Cの空気は、第2連通路38に流入する。この空気は、第2連通路38を流れ、排出口40から外部に排出される。
【0030】
本実施形態では、空気が第1連通路36を逆方向に流れることはない。すなわち、本実施形態では、空気が部品室26から第1連通路36に向かって流れることはない。これは、次の理由による。
【0031】
客室24には、第1導入口32から外部の空気が流入する。更に、客室24は、VTOL機10の外部に開放されていない。一方、客室24と同様に、部品室26には、第2導入口34から外部の空気が流入する。しかし、客室24とは異なり、部品室26は、第2連通路38及び排出口40によって、VTOL機10の外部に開放されている。つまり、部品室26には流入した量に相当する空気の逃げ場が、VTOL機10の外部である。一方、客室24には流入した量に相当する空気の逃げ場が、第1連通路36である。このため、第1連通路36において、空気は、客室24から部品室26にのみ流れ得る。
【0032】
部品室26の電気部品は、第2循環路52の出口52bから流入する空気によって冷却される。更に、部品室26の電気部品は、第1連通路36から流入する空気によって冷却される。このように、本実施形態では、電気部品を冷却するための2つの冷却システム(第2空調システム30及び第1連通路36)が設けられる。仮に、第2空調システム30に障害が発生しても、電気部品は、客室24の空気によって冷やされる。また、仮に、第1空調システム28又は第1連通路36に障害が発生しても、電気部品は、第2空調システム30の機能によって冷やされる。従って、本実施形態によれば、電気部品の冷却を継続して行うことができる。
【0033】
[3 VTOL機10の内部での流体回路]
図3は、第1空調システム28、第2空調システム30、熱利用回路64及び冷却回路66を示す図である。熱利用回路64は、部品室26とバッテリ68の少なくとも一方の廃熱により客室24を温めることができる。冷却回路66は、複数のバッテリ68を冷却することができる。複数のバッテリ68は、複数のロータ(VTOLロータ20、クルーズロータ22)の電源である。
【0034】
熱利用回路64は、コンプレッサ70と、内部コンデンサ46と、外部コンデンサ72と、第1エバポレータ44と、第2エバポレータ54と、チラー74と、アキュムレータ76と、複数の弁と、複数の流路とを有する。熱利用回路64の各々の構成要素は、冷媒(熱媒体)の循環路を形成する。熱利用回路64の各々の構成要素は、次のように接続される。
【0035】
コンプレッサ70の吐出ポートと、内部コンデンサ46の流入ポートとは、第1流路92-1によって接続される。内部コンデンサ46の流出ポートと、三方弁78の流入ポートとは、第2流路92-2によって接続される。三方弁78の第1流出ポートと、外部コンデンサ72の流入ポートとは、第3流路92-3によって接続される。外部コンデンサ72の流出ポートと、第3逆止弁90の一次ポートとは、第4流路92-4によって接続される。第3逆止弁90の二次ポートと、三方弁78の第2流出ポートと、第1膨張弁80の流入ポートと、第2膨張弁82の流入ポートと、第3膨張弁84の流入ポートとは、第5流路92-5によって接続される。第1膨張弁80の流出ポートと、第1エバポレータ44の流入ポートとは、第6流路92-6によって接続される。第1エバポレータ44の流出ポートと第1逆止弁86の一次ポートとは、第7流路92-7によって接続される。第2膨張弁82の流出ポートと、第2エバポレータ54の流入ポートとは、第8流路92-8によって接続される。第2エバポレータ54の流出ポートと第2逆止弁88の一次ポートとは、第9流路92-9によって接続される。第3膨張弁84の流出ポートと、チラー74の第1流入ポートとは、第10流路92-10によって接続される。第1逆止弁86の二次ポートと、第2逆止弁88の二次ポートと、チラー74の第1流出ポートと、アキュムレータ76の一次ポートとは、第11流路92-11によって接続される。アキュムレータ76の二次ポートとコンプレッサ70の吸込ポートとは、第12流路92-12によって接続される。
【0036】
熱利用回路64のうちの第1エバポレータ44及び内部コンデンサ46は、上述したように、第1空調システム28の第1循環路42に配置される。また、熱利用回路64のうちの第2エバポレータ54は、上述したように、第2空調システム30の第2循環路52に配置される。
【0037】
第1空調システム28の第1循環路42の一部には、第1主路94及び第1側路96が形成される。第1側路96は、第1主路94を迂回する。第1ブロアファン48は、第1主路94及び第1側路96の上流に配置される。第1エバポレータ44は、第1ブロアファン48の下流であり、且つ、第1主路94及び第1側路96の上流に配置される。内部コンデンサ46は、第1主路94に配置される。第1主路94及び第1側路96の近辺には、第1フラップ98が設けられる。第1フラップ98は、第1主路94の開度及び第1側路96の開度を調整する。第1フラップ98を開閉させるアクチュエータは、コントローラ(不図示)によって制御される。
【0038】
第2空調システム30の第2循環路52の一部には、第2主路100及び第2側路102が形成される。第2ブロアファン58は、第2主路100及び第2側路102の上流に配置される。第2側路102は、第2主路100を迂回する。第2エバポレータ54は、第2主路100に配置される。第2側路102の出口近辺には、第2フラップ104が設けられる。第2フラップ104は、第2側路102(及び第2エバポレータ54)の上流と下流の圧力差によって開閉する。第2フラップ104は、基本的には第2側路102を閉める。第2エバポレータ54が凍結して詰まると、第2側路102(及び第2エバポレータ54)の上流の圧力が、第2側路102(及び第2エバポレータ54)の下流の圧力よりも高圧になる。この状態で、第2フラップ104は、第2側路102の上流の圧力を受けて、第2側路102を開く。
【0039】
コンプレッサ70は、アキュムレータ76から低温低圧のガス状の冷媒を吸い込む。コンプレッサ70は、吸い込んだ冷媒を圧縮する。これにより、低温低圧のガス状の冷媒は、高温高圧のガス状の冷媒へと変化する。コンプレッサ70は、冷媒を吐出する。
【0040】
内部コンデンサ46は、コンプレッサ70にて高温高圧となった冷媒を流す管路を有する。内部コンデンサ46の管路を流れる冷媒は、第1循環路42を流れる空気に放熱する。これにより、高温高圧のガス状の冷媒は、低温高圧の液状の冷媒へと変化する。
【0041】
三方弁78は、流入ポートから流入した冷媒を、第1流出ポート又は第2流出ポートのいずれか一方から流出させることが可能である。三方弁78における冷媒の流出方向の切り替えは、コントローラ(不図示)によって制御される。
【0042】
外部コンデンサ72は、第1循環路42及び第2循環路52の外部に配置される。外部コンデンサ72には、ファン106によって外部の空気(外気)が送風される。外部コンデンサ72は、内部コンデンサ46から流出する冷媒を流す管路を有する。外部コンデンサ72の管路を流れる冷媒は、外気に放熱する。これにより、内部コンデンサ46にて液化されなかったガス状の冷媒は、低温高圧の液状の冷媒へと変化する。
【0043】
第1膨張弁80、第2膨張弁82及び第3膨張弁84の各々は、内部コンデンサ46又は外部コンデンサ72から流出する冷媒を噴霧して膨張させる。噴霧された冷媒は急激に気化し、周囲から吸熱する。なお、各々の膨張弁においては、流入ポートと流出ポートとの連通と遮断とが切り替え可能である。この切り替えは、コントローラ(不図示)によって制御される。
【0044】
第1エバポレータ44は、第1膨張弁80にて噴霧された冷媒を流す管路を有する。第1エバポレータ44の管路を流れる冷媒は、第1循環路42を流れる空気から吸熱する。これにより、第1エバポレータ44は、第1循環路42を流れる空気を冷却する。更に、第1エバポレータ44は、第1循環路42を流れる空気を除湿する。
【0045】
第2エバポレータ54は、第2膨張弁82にて噴霧された冷媒を流す管路を有する。第2エバポレータ54の管路を流れる冷媒は、第2循環路52を流れる空気から吸熱する。これにより、第2エバポレータ54は、第2循環路52を流れる空気を冷却する。更に、第2エバポレータ54は、第2循環路52を流れる空気を除湿する。
【0046】
アキュムレータ76は、第1エバポレータ44、第2エバポレータ54及びチラー74の少なくとも1つから流出するガス状の冷媒と液状の冷媒とを溜める。このうち、ガス状の冷媒は、コンプレッサ70に吸い込まれる。
【0047】
各々の逆止弁(第1逆止弁86、第2逆止弁88、第3逆止弁90)は、一次ポートから二次ポートへ冷媒を流し、二次ポートから一次ポートへは冷媒を流さない。
【0048】
冷却回路66は、2つのウォータポンプ108と、ヒータ110と、チラー74と、複数の冷却流路とを有する。冷却回路66の各々の構成要素は、冷却液の循環路を形成する。冷却回路66の各々の構成要素は、次のように接続される。
【0049】
各々のウォータポンプ108の吐出ポートと、ヒータ110の流入ポートとは、第1冷却流路112-1によって接続される。ヒータ110の流出ポートと、チラー74の第2流入ポートとは、第2冷却流路112-2によって接続される。チラー74の第2流出ポートと、各々のウォータポンプ108の吸込ポートとは、第3冷却流路112-3によって接続される。
【0050】
各々のウォータポンプ108は、第3冷却流路112-3を流れた冷却液を吸い込み、第1冷却流路112-1に冷却液を吐出する。第1冷却流路112-1の一部は、各々のバッテリ68の周囲に設けられる。第1冷却流路112-1を流れる冷却液は、各々のバッテリ68の周囲を流れることにより、各々のバッテリ68から吸熱することが可能である。ヒータ110のオンとオフは、コントローラ(不図示)によって制御される。
【0051】
チラー74は、熱利用回路64の第10流路92-10から流入する冷媒を流す第1管路を有する。また、チラー74は、冷却回路66の第2冷却流路112-2から流入する冷却液を流す第2管路を有する。チラー74に内部では、第1管路の冷媒と第2管路の冷却液との間で熱交換が行われる。冷媒は、冷却液から吸熱する。これにより、冷媒の温度は上昇する。一方、冷却液は、冷媒に放熱する。これにより、冷却液の温度は低下する。
【0052】
[4 VTOL機10の内部での熱移動]
[4-1 客室24及び部品室26の冷房]
図4は、客室24及び部品室26を冷房している間の熱利用回路64の状態及び各空調システムの状態を示す図である。ここでは、冷却回路66を流れる冷却液に関する説明を割愛する。図4では、以下で説明する部分が実線で示され、説明を割愛する部分が破線で示される。客室24は冷暖房される一方で、部品室26は常時冷房される。
【0053】
客室24及び部品室26の冷房時には、第1膨張弁80と第2膨張弁82とが開けられる。また、三方弁78において、第1流出ポートが開けられ、第2流出ポートが閉められる。従って、第2流路92-2と第3流路92-3とが連通する。また、第1循環路42において、第1フラップ98の位置が調整されて、第1側路96が全開とされる。一方、第1主路94の開度は、客室24の設定温度に応じて調整される。
【0054】
アキュムレータ76に蓄積される冷媒は、コンプレッサ70に吸い込まれて圧縮される。コンプレッサ70から吐出される冷媒は、内部コンデンサ46及び外部コンデンサ72を流れる。外部コンデンサ72から流出する冷媒の一部は、第1膨張弁80及び第1エバポレータ44を流れ、アキュムレータ76に戻る。また、外部コンデンサ72から流出する冷媒の一部は、第2膨張弁82及び第2エバポレータ54を流れ、アキュムレータ76に戻る。
【0055】
第1ブロアファン48の作動に応じて、客室24及び第1導入口32から第1循環路42に導入された空気は、第1エバポレータ44を通過する。一部の空気は、第1側路96を通過する。また、残りの空気は、第1主路94の内部コンデンサ46を通過する。第1エバポレータ44にて、空気は冷媒に放熱し、冷媒は空気から吸熱する。内部コンデンサ46にて、空気は冷媒から吸熱し、冷媒は空気に放熱する。これにより、第1循環路42の出口42bから客室24には、第1エバポレータ44にて冷やされた空気と、内部コンデンサ46にて温められた空気とが混合されて送風される。混合された空気の温度は、第1主路94の開度に応じ変化する。
【0056】
第2ブロアファン58の作動に応じて、部品室26及び第2導入口34から第2循環路52に導入された空気は、第2エバポレータ54を通過する。第2エバポレータ54にて、空気は冷媒に放熱し、冷媒は空気から吸熱する。これにより、第2循環路52の出口52bから部品室26には、第2エバポレータ54にて冷やされた空気が送風される。なお、凍結等により第2エバポレータ54が詰まった場合には、第2フラップ104が開く。このため、第2循環路52の出口52bから部品室26には、第2エバポレータ54を迂回した空気が送風される。
【0057】
なお、冷媒は、内部コンデンサ46から外部コンデンサ72に流入し、外部コンデンサ72にて外部の空気に放熱する。これにより、冷媒は更に冷やされる。
【0058】
[4-2 バッテリ68の冷却]
図5は、バッテリ68を冷却している間の熱利用回路64の状態及び冷却回路66の状態を示す図である。ここでは、熱利用回路64の各エバポレータを流れる冷媒に関する説明及び各空調システムを流れる空気に関する説明を割愛する。図5では、以下で説明する部分が実線で示され、説明を割愛する部分が破線で示される。
【0059】
バッテリ68の冷却時には、第3膨張弁84が開けられる。また、三方弁78において、第1流出ポートが開けられ、第2流出ポートが閉められる。従って、第2流路92-2と第3流路92-3とが連通する。また、ヒータ110は、オフ状態にされる。
【0060】
アキュムレータ76に蓄積される冷媒は、コンプレッサ70に吸い込まれて圧縮される。コンプレッサ70から吐出される冷媒は、内部コンデンサ46及び外部コンデンサ72を流れる。外部コンデンサ72から流出する冷媒の一部は、第3膨張弁84及びチラー74を流れ、アキュムレータ76に戻る。
【0061】
ウォータポンプ108の作動に応じて、冷却液は冷却回路66を循環する。チラー74にて、冷却液は熱利用回路64の冷媒に放熱し、熱利用回路64の冷媒は冷却液から吸熱する。冷却液はバッテリ68から吸熱し、バッテリ68は冷却液に放熱する。これにより、バッテリ68は冷やされる。
【0062】
なお、熱利用回路64の冷媒は、内部コンデンサ46から外部コンデンサ72に流入し、外部コンデンサ72にて外部の空気に放熱する。これにより、冷媒は冷やされる。
【0063】
[4-3 バッテリ68の加熱]
図6は、バッテリ68を加熱している間の冷却回路66の状態を示す図である。図6では、以下で説明する部分が実線で示され、説明を割愛する部分が破線で示される。バッテリ68の加熱時には、第3膨張弁84が閉められる。その結果、冷却回路66は、熱利用回路64から熱的に切り離される。ヒータ110は、オン状態にされる。
【0064】
ウォータポンプ108の作動に応じて、冷却液は冷却回路66を循環する。ヒータ110にて、冷却液は加熱される。冷却液はバッテリ68に放熱し、バッテリ68は冷却液から吸熱する。これにより、バッテリ68は温められる。
【0065】
[4-4 バッテリ68の廃熱による客室24の暖房]
図7は、客室24を暖房している間の熱利用回路64の状態、冷却回路66の状態及び各空調システムの状態を示す図である。図7では、以下で説明する部分が実線で示され、説明を割愛する部分が破線で示される。
【0066】
客室24の暖房時には、第2膨張弁82と第3膨張弁84の少なくとも一方が開けられる。一方、第1膨張弁80は閉められる。また、三方弁78において、第2流出ポートが開けられ、第1流出ポートが閉められる。従って、第2流路92-2と第5流路92-5とが連通する。また、第1循環路42において、第1フラップ98の位置が調整されて、第1側路96が閉められる。一方、第1主路94は全開とされる。
【0067】
アキュムレータ76に蓄積される冷媒は、コンプレッサ70に吸い込まれて圧縮される。コンプレッサ70から吐出される冷媒は、内部コンデンサ46を流れる。内部コンデンサ46から流出する冷媒の一部は、第2膨張弁82及び第2エバポレータ54を流れ、アキュムレータ76に戻る。また、内部コンデンサ46から流出する冷媒の一部は、第3膨張弁84及びチラー74を流れ、アキュムレータ76に戻る。
【0068】
熱利用回路64を流れる冷媒は、第2エバポレータ54にて、第2循環路52を流れる空気から電気部品の廃熱を吸収する。また、熱利用回路64を流れる冷媒は、チラー74にて、冷却回路66を流れる冷却液からバッテリ68の廃熱を吸収する。
【0069】
第1ブロアファン48の作動に応じて、客室24及び第1導入口32から第1循環路42に導入された空気は、第1主路94の内部コンデンサ46を通過する。内部コンデンサ46にて、空気は冷媒から吸熱し、冷媒は空気に放熱する。内部コンデンサ46にて、冷媒から空気へ、電気部品の廃熱及びバッテリ68の廃熱の熱移動が行われる。これにより、第1循環路42の出口42bから客室24には、内部コンデンサ46にて温められた空気が送風される。このように、本実施形態によれば、電気部品の廃熱とバッテリ68の廃熱とを有効に利用することができる。
【0070】
[5 実施形態から得られる発明]
上記実施形態から把握しうる発明について、以下に記載する。
【0071】
本発明の態様は、人を収容する乗員室(24)と、電気機器と電気的に接続される複数の電気部品を収容する部品室(26)と、胴体(12)の外部から内部に空気を導入するための第1導入口(32)及び第2導入口(34)と、前記乗員室に接続された第1循環路(42)を有し、前記第1導入口から前記胴体の内部に導入された空気を、前記乗員室と前記第1循環路とで形成される第1経路で循環させて、前記乗員室の空調を行う第1空調システム(28)と、前記部品室に接続された第2循環路(52)を有し、前記第2導入口から前記胴体の内部に導入された空気を、前記部品室と前記第2循環路とで形成される第2経路で循環させて、前記部品室の空調を行う第2空調システム(30)と、を備える移動体(10)であって、前記乗員室と前記部品室とを連通する第1連通路(36)と、前記部品室を前記胴体の外部に開放する第2連通路(38)と、を備え、前記乗員室の一部の空気は、前記第1循環路を流れて前記乗員室に戻り、前記乗員室の残りの空気は、前記第1連通路を流れて前記部品室に導入され、前記部品室の一部の空気は、前記第2循環路を流れて前記部品室に戻り、前記部品室の残りの空気は、前記第2連通路を流れて前記胴体の外部に排出される。
【0072】
上記構成によれば、部品室内の電気部品を冷却するための2つの冷却システム(第2空調システム及び第1連通路)が設けられる。仮に、第2空調システムに障害が発生しても、電気部品は、乗員室の空気によって冷やされる。また、仮に、第1空調システム又は第1連通路に障害が発生しても、電気部品は、第2空調システムの機能によって冷やされる。従って、本実施形態によれば、電気部品の冷却を継続して行うことができる。
【0073】
上記態様において、前記部品室の廃熱により前記乗員室を温める熱利用回路(64)を備え、前記熱利用回路は、前記第2循環路を流れる空気から吸熱するエバポレータ(54)と、前記第1循環路を流れる空気に放熱するコンデンサ(46)と、前記エバポレータと前記コンデンサとの間で熱媒体を循環させることにより前記エバポレータから前記コンデンサに熱を移動させる熱移動流路(92-1~92-12)と、を有してもよい。
【0074】
上記構成によれば、電気部品の廃熱を使用して乗員室を暖房することができる。従って、電気部品の廃熱を無駄にすることなく有効に利用することができる。また、乗員室を暖房するためのエネルギーを節約することができる。
【0075】
上記態様において、前記電気機器は、上方又は前方に推力を発生させるロータ(20、22)のモータであり、前記電気部品は、前記モータに接続される回路部品であってもよい。
【0076】
移動体のロータに使用されるモータには大きな電力が必要である。このため、モータに接続される電気部品の廃熱は大きい。上記構成によれば、この廃熱が利用されるため、暖房効率をより高くすることができる。
【0077】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【0078】
例えば、本発明は、電動車両、電動船舶等の移動体にも利用可能である。
【符号の説明】
【0079】
10…VTOL機(移動体) 12…胴体
20…VTOLロータ(ロータ)
22…クルーズロータ(ロータ)24…客室(乗員室)
26…部品室 28…第1空調システム 30…第2空調システム 32…第1導入口 34…第2導入口 36…第1連通路 38…第2連通路 42…第1循環路
46…内部コンデンサ(コンデンサ) 52…第2循環路
54…第2エバポレータ(エバポレータ) 64…熱利用回路
92-1~92-12…第1流路~第12流路(熱移動流路)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7