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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035260
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】2次電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/36 20060101AFI20240307BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20240307BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20240307BHJP
   H01M 4/505 20100101ALN20240307BHJP
   H01M 4/525 20100101ALN20240307BHJP
【FI】
H01M4/36 D
H01M4/36 E
H01M10/058
H01M4/139
H01M4/505
H01M4/525
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139609
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】505083999
【氏名又は名称】ビークルエナジージャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】遠山 達哉
(72)【発明者】
【氏名】三木 健
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ02
5H029AJ03
5H029AJ06
5H029AK03
5H029AL07
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
5H029AM12
5H029BJ02
5H029CJ08
5H029DJ02
5H029HJ05
5H029HJ08
5H050AA02
5H050AA08
5H050AA12
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB08
5H050FA17
5H050GA10
5H050HA05
5H050HA08
(57)【要約】
【課題】高エネルギー密度であり、かつ、優れた出力特性を有する2次電池を実現する。
【解決手段】
正極活物質を有する正極11と負極活物質を有する負極12がセパレータ13を挟んで積層された2次電池であって、前記正極活物質が、平均粒子径(D50、メジアン径)が10μm以上で、20μm以下の第1活物質1、平均粒子径(D50、メジアン径)が3μm以上で5μm以下の第2活物質2、及び平均粒子径(D50、メジアン径)が前記第2活物質より大きく、かつ、タップ密度が前記第2活物質より低い第3活物質3、の混合物である、ことを特徴とする2次電池。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質を有する正極と負極活物質を有する負極が積層された2次電池であって、
前記正極活物質が、平均粒子径(D50、メジアン径)が10μm以上で、20μm以下の第1活物質、平均粒子径(D50、メジアン径)が3μm以上で、5μm以下の第2活物質、及び、平均粒子径(D50、メジアン径)が前記第2活物質より大きく、かつ、タップ密度が前記第2活物質より低い第3活物質、の混合物を有することを特徴とする2次電池。
【請求項2】
正極活物質層は、重量比が前記第1活物質>前記第2活物質>前記第3活物質となるように前記正極活物質が混合されている、ことを特徴とする請求項1に記載の2次電池。
【請求項3】
前記第2活物質と前記第3活物質は異なる材料組成で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の2次電池。
【請求項4】
前記正極と前記負極が積層された充放電体は、露出した第1の側部を有し、前記正極と接続している第1のタブと前記負極と接続している第2のタブは、前記第1の側部に存在し、
前記充放電体は、第1の面を含む複数の面を有する電池容器内に収容され、
前記第1の面には、第1の端子と第2の端子が配置し、
前記第1の面と前記第1の側部は対向していることを特徴とする請求項1に記載の2次電池。
【請求項5】
前記充放電体は、長辺と短辺を有する主面を有し、
前記第1の側部は、前記長辺側に存在していることを特徴とする請求項4に記載の2次電池。
【請求項6】
正極活物質を有する正極と負極活物質を有する負極がセパレータを挟んで積層された2次電池の製造方法であって、
正極活物質を、平均粒子径(D50、メジアン径)が10μm以上20μm以下の第1活物質と、平均粒子径(D50、メジアン径)が3μm以上で、5μm未満の第2活物質と、平均粒子径(D50、メジアン径)が前記第2活物質より大きく、かつ、タップ密度が前記第2活物質より低い第3活物質を混合することによって形成することを特徴とする2次電池の製造方法。
【請求項7】
重量比が前記第1活物質>前記第2活物質>前記第3活物質となるように前記正極活物質を混合することによって、正極活物質層を形成することを特徴とする請求項6に記載の2次電池の製造方法。
【請求項8】
前記第2活物質と前記第3活物質を異なる材料組成で形成することを特徴とする請求項7に記載の2次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車産業において、各国・各地域で燃費規制及び環境規制が強化されている。これらの規制に準拠するため、二酸化炭素を排出しない、電池を動力源とする電気自動車が普及し始めている。また、内燃機関エンジンと電池の両方を動力源とし、二酸化炭素の排出量が少ないPHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、及びHEV(Hybrid Electric Vehicle)が、一部で普及している。いずれの方式においても、効率向上には、高性能の電池の開発が鍵となっている。
【0003】
特許文献1には、正極における活物質の体積密度の向上を可能にする、活物質粒子の平均粒径と粒子崩壊率の関係が記載されている。特許文献2には、リチウムイオン2次電池の高容量化と高出力化を可能する正極活物質として、粒子構造、平均粒径、タップ密度、空隙の平均アスペクト比、重量比率等の関係が記載されている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-107727号公報
【特許文献2】特開2021-120937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電気自動車においては、十分なエネルギー密度を有するとともに、出力特性に優れた2次電池が求められている。本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、正極の高密度化によるセルの高エネルギー密度化を確保しつつ、高出力である2次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以上の課題を解決するものであり、主な手段は次のとおりである。すなわち、正極活物質が、平均粒子径(D50、メジアン径)が10μm以上で20μm以下の第1活物質、平均粒子径(D50、メジアン径)が3μm以上で5μm以下の第2活物質、及び、平均粒子径(D50、メジアン径)が前記第2活物質より大きく、かつ、タップ密度が前記第2活物質より低い第3活物質、の混合物である、ことを特徴とする2次電池である。
【0007】
本発明の他の態様は、上記構成に加え、正極活物質層は、重量比が第1活物質>第2活物質>第3活物質となるように前記正極活物質が混合されている、ことを特徴とする2次電池である。
【0008】
本発明のさらに他の態様は、前記正極と前記負極が積層された充放電体は、露出した第1の側面を有し、前記正極と接続している第1のタブと前記負極と接続している第2のタブは、前記第1の側面に存在し、前記充放電体は、第1の面を含む複数の面を有する電池容器内に収容され、前記第1の面には、第1の端子と第2の端子が配置し、前記第1の面と前記第1の積層面は対向していることを特徴とする2次電池である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、正極の高密度化による電池の高エネルギー密度化とともに出力特性に優れた2次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1活物質1、第2活物質2、第3活物質3を定義する模式図。
図2】特定の正極活物質におけるタップ密度と電極密度の関係を示すグラフ。
図3】本発明の実施例及び比較例の構成と、電池性能を示す表。
図4】電池5の外観を示す斜視図。
図5】電池5の負極端子42の周辺の構成部材を断面で示す斜視図。
図6】電池5の正極端子41の周辺の構成部材を断面で示す斜視図。
図7】電池5の分解斜視図。
図8】電池5の充放電体10を示す斜視図。
図9】電池5の蓋の詳細を示す斜視図。
図10】正極の製造方法を示す断面図。
図11】セパレータレスの電池を示す断面図である。
図12】セパレータレスの電池を示す詳細断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
電池5の構成について、図1から図9を参照して説明する。本発明の特徴は、正極の構成であるが、以下の電池の構成の説明の中で詳細に説明する。電池5は、主な構成部材として、電気を充放電する充放電体10、充放電体10と接続された集電体20、集電体20と接続された電流遮断体30、集電体20及び電流遮断体30と接続された外部端子40を有し、電池5の構成部材は外装体50に収容又は取付けられる。
【0012】
図8は充放電体10の斜視図である。充放電体10は、電気を充放電する。充放電体10は、正極11、負極12、セパレータ13、及び電解質を含んでいる。図8において、正極11は、長尺状の正極集電層11M、及び正極集電層11Mに接合された正極活物質層11Nを含んでいる。正極集電層11Mは、集電部11a及び正極タブ11bを含んでいる。集電部11aには、正極活物質層11Nが接合されている。正極タブ11bは、集電部11aの長手方向に沿った側縁11cから、集電部11aの短手方向に突出している。正極タブ11bは、集電部11aと一体に形成されている。正極タブ11bは、1つの集電部11aに、複数形成されている。集電部11aは、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金によって形成されている。
【0013】
正極活物質層11Nは、下記式(1):
Li1+X (1)
(式中、Xは、-0.15≦X≦0.15を満たし、Mは、Mn及びAlからなる群から選択される少なくとも一つ、Ni、並びにCoを含む元素群を表す)
で表される正極活物質を含む。
【0014】
-0.15≦X≦0.15であることにより、正極活物質は、高い真密度及び高い可逆性を有する。つまり、高い電池容量と優れたサイクル特性を有する。
【0015】
が、Ni及びCoに加えて、Mn及びAlからなる群から選択される少なくとも一つを含むことにより、正極活物質は、高い熱安定性及び高電位状態における高い安定性を有する。それにより、リチウムイオン2次電池は、高い安全性を有する。
【0016】
は、Zr、Ti、Cr、Fe、Cu、Zn、Ge、Sn、Mg、Ag、Ta、Nb、B、P、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも一つをさらに含んでもよい。MがZrを含む場合、低温時のリチウムイオン2次電池の内部抵抗が低減する。Zrの含有量は、Ni、Co、Mn及びAlの総量に対して、0.1~2.0mol%、特に0.2~1.0mol%であってよい。また、Mを構成する全元素中のNi、Co、Mn及びAl以外の元素の割合は、例えば、10mol%以下、特に、3mol%以下である。それにより、リチウムイオン2次電池が十分な放電容量を有することができる。
【0017】
正極活物質中の各元素の量は、ICP(Inductive Coupled Plasma)法により測定することができる。正極物質中の元素の量を電池から解体して調べる場合は、解体前の電池を例えば、2.7Vにまで放電した後、解体し、正極活物質を取り出す。取り出した正極活物質を、例えば、酸化分解法、アルカリ溶液分解法によって溶融状態となるようにして、ICP法による測定を行う。
【0018】
正極活物質は平均粒径の異なる三種以上を含む。平均粒径が最も大きい第1活物質1、平均粒子径が最も小さい第2活物質2、平均粒径が二番目に大きい第3活物質3とすると、第1活物質の粒子間の空隙を、第2活物質の粒子と第3活物質の粒子によって効率的に充填できるようになる。したがって、リチウムイオン2次電池用正極活物質が第3活物質を含む場合には、正極をより高密度化することが可能になる。
【0019】
正極活物質の平均粒径は、第1活物質の平均粒子径(D50、メジアン径)が10μm以上20μm以下、第2活物質の平均粒子径(D50、メジアン径)は3μm以上5μm以下である。第3活物質の平均粒径(D50、メジアン径)は、第1活物質の平均粒径(D50、メジアン径)よりも小さく、第2活物質の平均粒径よりも大きい。
【0020】
図1は、第1活物質1、第2活物質2、及び第3活物質3が混合した状態の正極の模式断面図である。図1において、粒径が最も大きい第1活物質1の間に第2活物質2及び第3活物質3が存在している構成であり、これによって、正極電極密度を上げることが出来る。すなわち、電池のエネルギー密度を向上させることが出来る。
【0021】
図1に示すように、第1活物質1、第2活物質2、及び第3活物質3は、1次粒子が凝集した2次粒子となっている。図1において、第3活物質3の1次粒子の密度は、第1活物質1及び第2活物質2の2次粒子のタップ密度よりも小さくなっている。
【0022】
このような構成は、第1活物質1及び第2活物質2を構成する材料と第3活物質3とを変えることによって、製造することも出来る。例えば、第1活物質と第2活物質はNiを60mol%以上含み、第3活物質は、Niを60mol%より少なく含む、という構成をとることも出来る。材料を変えることで所望の特性を実現する材料の組み合わせの自由度が高くなる。あるいは、第1活物質1及び第2活物質2を構成する材料と第3活物質3とが同じ材料であっても、製造方法を変えることによって実現することが出来る。同じ材料を用いることが出来るので優れた経済性を有する。また、基本特性が同様なので、取り扱いが容易になる。
【0023】
第1活物質1、第2活物質2、及び第3活物質3を晶析法によって製造する場合、核生成工程と粒子成長工程とがあるが、第3活物質3の核生成工程を、第1活物質1と第2活物質2の核生成工程と変えることによってこのような構成とすることが出来る。なお、ボールミル等によって原料を破砕し、混合し、一定条件下で焼成して活物質を形成する場合であっても、混合、焼成等の条件を変えることによって、第1活物質1及び第2活物質2と、第3活物質3との構造を変えることができる。
【0024】
第3活物質3のタップ密度は、第2活物質2のタップ密度より小さい。一般的には、粒子径が大きいほどファンデルワールス力が大きくなり、タップ密度が大きくなる傾向がある。しかし、本発明では、平均粒子径が二番目に大きい第3活物質3のタップ密度を第2活物質2のタップ密度より小さくすることで、正極が高充填になっても電解液が正極電極中に万遍なく浸透可能な構成にすることができ、出力特性を高めることを可能にしている。
【0025】
正極活物質層11Nは、重量比が第1活物質>第2活物質>第3活物質となるように前記正極活物質が混合されている。第1活物質1、第2活物質2、第3活物質3を混合し、導電材、結着材を加えてペースト状にし、乾燥した後、例えばローラープレスによって、例えば、100N/mmの線圧によってプレスし、厚さを95程度に圧縮したとする。第3活物質3は、このような状態になっても、崩壊せず、80%以上は、2次粒子としての形状を維持している。
【0026】
つまり、正極活物質層11Nが、プレスされた後であっても、第1活物質1、第2活物質2、第3活物質3は判別可能である。例えば、正極活物質層11Nの断面写真をSEMで撮影することによって判別することが出来る。電池を解体して正極活物質層11Nを調べる場合は、解体前の電池を、例えば2.7Vまで放電させた後、解体する。そして、正極活物質層11Nの断面のSEM写真を複数撮影して、第1活物質1、第2活物質2、第3活物質3の存在を確認する。その後、結着材、導電材を除去し、第1活物質1、第2活物質2、第3活物質3についてタップ密度を測定する。第1活物質1、第2活物質2、第3活物質3の重量比についても同様である。なお、この電池は、完全充電した状態の端子間電圧が4.2V、完全放電した状態の端子間電圧が2.7Vであると仮定している。
【0027】
正極活物質の平均粒径は、たとえばレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置によって測定することができる。この場合の粒子群は、正極活物質層11Nから正極活物質を抽出し、粒度分布測定することになる。また、電池を解体して正極活物質の粒径を測定する場合は、電池を例えば2.7Vにまで放電させた後、電池を解体し、正極合剤から正極活物質を抽出し、粒度分布測定することになる。
【0028】
正極活物質のタップ密度は、粉体試料を入れた測定用メスシリンダー又は容器を機械的にタップすることにより得られる。粉体の初期質量を測定した後、測定用メスシリンダー又は容器を機械的にタップし、体積変化がほとんど認められなくなったら体積を読み取り、初期質量と最終体積からタップ密度を算出する。
【0029】
図2は、特定の粒子についての、タップ密度と、プレスされた後の正極合剤の電極密度、との関係を示すグラフである。図2に示すように、同一粒子群であれば、タップ密度と電極密度とは比例関係にある。図2において、Rは決定係数と呼ばれているパラメータである。本発明による正極活物質層11Nは3種類の正極活物質を含んでいるので、電極密度は各活物質の加重平均になる。所定のタップ密度の活物質をどの程度の割合で含ませるかによって、電極密度を推定することが出来る。すなわち、電池のエネルギー密度を設計することが出来る。また、タップ密度の小さい、第3活物質3の割合を制御することによって、どの程度のハイレートの電池にするかを設計することが出来る。
【0030】
正極活物質のタップ密度を上げるために、粒度分布の異なる正極材を組み合わせる手法は存在している。しかし、従来技術では、十分なエネルギー密度を実現出来ていない。また、1種類の正極活部材について、崩壊性の高い材料を用い、正極活物質層をプレスする際にこれを崩壊させ、粒子間の空隙を崩壊した粒子によって充填する技術も存在するが、この方法は、電子伝導ネットワークが崩壊し、入出力特性が低下する危険がある。また、寿命特性が低下する危険がある。
【0031】
電池の入出力を向上させる観点からは、正極用導電助剤の高比表面積や、繊維状化により性能向上を図る手段もある。しかし、この手段を用いると、正極合剤を形成するためのスラリーのハンドリング性の低下を招く。また、正極合剤の単価が高くなる。
【0032】
これに対して上記した本願発明の構成は、例えば、正極活物質が、平均粒子径(D50、メジアン径)が10μm以上20μm以下の第1活物質1、平均粒子径(D50、メジアン径)が3μm以上で5μm未満の第2活物質2、及び、平均粒子径(D50、メジアン径)が前記第2活物質2より大きく、かつタップ密度が前記第2活物質2より低い第3活物質3、の混合物である、という比較的単純な構成によって、高い正極電極密度、すなわち、高エネルギー密度で、かつ、高い入力出力特性を有する電池を実現することが出来る。
【0033】
例えば、第1活物質1と第2活物質2とは、粒子径の差が大きく、第2活物質はタップ密度が第3活物質よりも大きいので、効果的に高密度に充填できる。これにより、高密度充填により得られる電池特性を活用できる。第3活物質は第2活物質よりもタップ密度が低い。また、平均粒径は第2活物質よりも大きい。これにより、活物質の充填性はより低い状態でありつつ容量を有する粒子を備えるので、前記構造とは異なる出力特性を得ることが容易となる。例えばより高い入出力特性を活用できる。また、より好ましい前記出力特性を得るためには、第3の活物質は、第1活物質よりもタップ密度が低いことが好ましい。或いは、第1活物質よりも平均粒径が大きいことが好ましい。
【0034】
本実施例では、第1活物質、第2活物質、第3活物質の充填度(或いは空隙度)を、タップ密度を用いて比較した。実際の状態を評価する上ではタップ密度が好ましいが、一方、タップ密度が測定し難い場合等には、公知の密度或いは充填率(空隙率)を測定する方法によって、密度或いは充填率(空隙率)を比較してもよい。この場合、前記の「平均粒子径(D50、メジアン径)が前記第2活物質2より大きく、かつタップ密度が前記第2活物質2より低い第3活物質3」は、他の密度にて比較した場合は「平均粒子径(D50、メジアン径)が前記第2活物質2より大きく、かつ密度が前記第2活物質2より低い第3活物質3」、空隙率にて比較した場合は「平均粒子径(D50、メジアン径)が前記第2活物質2より大きく、かつ空隙率が前記第2活物質2より大きい第3活物質3」とすることが出来る。
【0035】
正極活物質に含まれる、多孔質の二次粒子である正極活物質の空隙率を比較する場合は、例えば、正極活物質の断面構造をSEMで観察し、画像処理などにより算出できる。算出には公知の算出方法を用いることができる。前記算出方法は、例えば、まず、SEMにより複数個、例えば100個以上の前記正極活物質の断面構造を観察し、対象となる正極活物質の空隙率の平均を用いて比較して求めることができる。
【0036】
続いて、電池全体の構成について説明する。図4は2次電池の外観図斜視図である。2次電池は扁平な直方体であり、面積の大きい第1の主面と、第1の主面に対向する第2の主面、長方形の側面、長方形の底面、及び、長方形の蓋52で構成されている。長方形である蓋53の長辺は、長方形である側面の長辺よりも長い。
【0037】
言い換えると、面積の大きい第1の主面または第2の主面は、長方形であり、その長辺が長方形である蓋の長辺と一致し、その短辺が長方形である側面の長辺と一致する。上記主面の長辺と短辺の比は、1.5以上であることが好ましく、また、以下で説明する充放電体10の作りやすさを考慮すると、4.0以下であることが好ましい。より好ましくは、2.0以上で2.5以下である。
【0038】
図4において、蓋52には、負極端子42及び正極端子41が距離をもって配置している。蓋52の中央付近には、電池の内部が高圧になるのを防止するための開裂弁が配置している。また、電解液を注入するための、注入孔を封止するための、封止栓53が配置している。
【0039】
図8は充放電体10の斜視図である。図8において、負極12は、長尺状の負極集電層12M、及び負極集電層12Mに接合された負極活物資層12Nを含んでいる。負極集電層12Mは、集電部12a及び負極タブ12bを含んでいる。集電部12aには、負極活物資層12Nが接合されている。負極タブ12bは、集電部12aの長手方向に沿った側縁12cから、集電部12aの短手方向に突出している。負極タブ12bは、セパレータ13を介して正極11と積層された状態において、正極11の正極タブ11bと同じ方向に突出している。負極タブ12bは、セパレータ13を介して正極11と積層された状態において、正極11の正極タブ11bと離れている。負極タブ12bは、集電部12aと一体に形成されている。負極タブ12bは、1つの集電部12aに、複数形成されている。集電部12aは、例えば、銅又は銅合金によって形成されている。負極活物資層12Nには、炭素系の材料によって構成された負極活物質、バインダ、及び導電助剤等が含まれている。炭素系の材料には、例えば、黒鉛が用いられている。
【0040】
セパレータ13は、正極11と負極12との間を絶縁しつつ、リチウムイオンを通過させる。セパレータ13は、長尺状に形成されている。セパレータ13は、多孔質の材料によって構成されている。セパレータ13には、ポリエチレン(PE:polyethylene)やポリプロピレン(PP:polypropylene)が用いられている。電解質は、有機溶媒、支持塩、及び添加剤を含んでいる。有機溶媒には、例えば、炭酸エステル等が用いられている。支持塩には、例えば、リチウム塩が用いられている。
【0041】
図5は負極端子42付近の断面斜視図であり、図6は正極端子41付近の断面斜視図である。図5及び図6に示す集電体20は、充放電体10と接続されている。集電体20は、正極集電板21及び負極集電板22を含んでいる。
【0042】
図5において、負極集電板22は、充放電体10の負極タブ12bと負極端子42を導通させる。負極集電板22は、長方体板状の基部22a、及び基部22aを貫通した挿入孔22bを含んでいる。負極集電板22の挿入孔22bには、負極端子42の挿入部42bが挿入されている。負極集電板22は、例えば、銅又は銅合金によって形成されている。なお、図5において、70は封止体、72はガスケットである。
【0043】
図6は、正極端子付近の断面斜視図である。図6において、電流遮断体30を含む構成は、集電体20と正極端子41を導通させる。電流遮断体30は、ダイアフラム31、導通部材32、及び一対の支持台33を含んでいる。
【0044】
図7は、2次電池5の分解斜視図である。図7において、外部端子40は、集電体20又は電流遮断体30と接続されている。外部端子40は、正極端子41及び負極端子42を含んでいる。図7において、外装体50には、電池5の構成部材が収容又は取り付けられている。外装体50は、容器51、蓋52及び封止栓53を含んでいる。
【0045】
容器51は、充放電体10等を収容している。容器51は、長方体形状の金属缶によって構成されている。容器51は、長手方向に沿って開口した開口51aと、開口51aと連なる収容部51bを含んでいる。容器51は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金によって形成されている。
【0046】
図7及び図9において、蓋52は、容器51の開口51aを封止している。容器51は、長板形状の金属板によって形成されている。蓋52には、長手方向に一端側に、円形状の貫通孔によって構成された正極側挿入孔52aが形成されている。蓋52は、円形状の貫通孔によって構成された注液用挿入孔52cが形成されている。注液用挿入孔52cには、封止栓53の挿入部53bが挿入されている。蓋52は、長手方向の中央に、開裂弁52dが形成されている。蓋52は、容器51と溶接されている。蓋52は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金によって形成されている。
【0047】
封止栓53は、蓋52の注液用挿入孔52cを封止している。封止栓53は、円柱形状に形成されている。封止栓53は、相対的に外径が大きい頭部53a、及び頭部53aと連続し相対的に外径が小さい挿入部53bを含んでいる。封止栓53の頭部53aは、蓋52と溶接されている。封止栓53は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金によって形成されている。
【0048】
図7において、絶縁体60は、電池5の構成部材と外装体50を絶縁している。絶縁体60は、絶縁カバー61、正極側第1絶縁板、負極側第1絶縁板、正極側第2絶縁板及び負極側第2絶縁板を含んでいる。
【0049】
絶縁カバー61は、充放電体10を被覆している。絶縁カバー61は、充放電体10の一側部10aを外方に露出させ、充放電体10の一側部10a以外の部分を被覆している。絶縁カバー61は、例えば、5面体形状に形成され、箱状に折り畳まれて構成されている。絶縁カバー61は、例えば、ポリプロピレン(polypropylene)によって形成されている。
【0050】
図7に示すように、充放電体10の側部10aは露出している。そして、正極タブ11bと正極端子41は近接して配置している。また、負極タブ12bと負極端子42は近接して配置している。このような構成であれば、本発明による正極活物質を用いることによって、正極合剤を高密度化して、充放電にともなう、充放電体とその外部との熱の出入りが大きくなる場合であっても、充放電体とその外側との熱の移動が容易になる。したがって、電池出力を安定化させることが出来る。
【実施例0051】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下に示す構成は、特に断らない限り、実施例1~7及び比較例1~3において共通である。正極活物質としてLi1.0Ni0.6Co0.2Mn0.2粉末、導電助剤としてアセチレンブラック、及びバインダとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用意した。
【0052】
正極活物質、導電剤、及びバインダを98:1:1となる重量比率で混合した。得られた混合物に、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)を加えて粘度を調整し、正極スラリーを得た。
【0053】
正極集電体として、厚さ12μmのアルミニウム箔を用意した。正極集電体の両面に溶接部(正極集電体露出部11a)となる未塗工部を残し、スロットダイコーティング方式で前記正極スラリーを用いて2層(表面及び裏面)同時塗布により、正極スラリーの層を形成した。次に正極スラリーの層を乾燥及びプレスして、正極活物質層11Nを形成し、図9に示す正極電極11を作製した。
【0054】
負極活物質としてピッチコート天然黒鉛粒子(負極活物質A)、人造黒鉛粒子(負極活物質B)、バインダとしてスチレンブタジエンゴム(SBR)、及び分散剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)を用意した。
【0055】
負極活物質A、負極活物質B、バインダ及び分散剤を、負極活物質A、負極活物質Bの合計:バインダ:分散剤が、100:1:1の重量比となるように混合した。得られた混合物にイオン交換水を加えて粘度を調整し、負極スラリーを得た。
【0056】
厚さ10μmの銅箔の両面に溶接部(負極集電体露出部12a)となる未塗工部を残し、スロットダイコーティング方式で前記負極スラリーを用いて2層(表面及び裏面)同時塗布により、負極スラリーの層を形成した。次に負極スラリーの層を乾燥及びプレスして、負極活物質層12Nを形成し、図10に示す負極電極12を作製した。
【0057】
続いて、作製した正極電極11と、負極電極12との間にセパレータ13を挟み、図8に示されるような構成で充放電体10を作製した。蓋52に接続された正極集電板21及び負極集電板22の正極側接続端部及び負極側接続端部と、充放電体10の未塗工部(正極集電体露出部11a、負極集電体露出部12a)とを溶接し、絶縁保護フィルムで充放電体10を覆い、容器51に封入し、蓋52と容器51とを溶接した。
続いて非水電解液として、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とを体積比で1:2の割合で混合した溶媒に、LiPFを1.0mol/Lの濃度で溶解させた電解液を調整した。調整した電解液を注液口9から注液後、注液栓11で封止して、リチウムイオン2次電池を作製した。
【0058】
実施例1乃至7及び比較例1乃至3の構成の差は図3の表に記載されているとおりである。すなわち、実施例1乃至7では、正極合剤として、第1活物質1、第2活物質2、第3活物質3の、3種の活物質を種々の組み合わせで配合している。これに対して比較例では、2種の活物質のみ使用している。すなわち、比較例1では第1活物質1と第2活物質2を、比較例2では第1活物質1と第3活物質3を、比較例3では第2活物質2の第3活物質3を使用している。図3においては、これらの実施例及比較例について、電池性能として、電池のエネルギー密度、すなわち、正極密度とレート特性、すなわち、(2C/0.2C)を評価している。
【0059】
図3における正極密度は次のようにして測定した。すなわち、正極プレス後に所定サイズの面積で正極を打ち抜き、重量と厚さを測定して正極密度を算出した。
【0060】
図3におけるレート特性は、次のようにして測定した。すなわち、作製したリチウムイオン2次電池を充放電することで初期化した後、0.2C及び2Cの電池容量を測定した。その後、電池電圧が4.2Vとなるまで定電圧-定電流充電(CC-CV充電)を充電電流1Cにて合計2.5時間実施した。そして30分間休止した後、電池電圧2.7Vまで放電電流0.1Cにて定電流放電(CC放電)し、初期容量を得た。その後、同様の充電条件で充電した後、放電電流を0.1Cから0.2C及び2Cに変更して0.2C及び2Cの電池容量を測定した。表1に示すレート特性(2C/0.2C)は、0.2Cの電池容量に対する2Cの電池容量の比率である。
【0061】
電池性能としては、正極密度、レート特性(2C/0.2C)ともに、高いほうが良いが、正極密度、レート特性のいずれかの性能が優れていても、他の性能が悪ければ、電池性能がアンバランスになり、電池としての性能は不十分となる。本発明における電池は、正極密度が3.5g/cm以上、レート特性として、(2C/0.2C)が85%以上の特性を兼ね備えることを目標としている。
【0062】
実施例1乃至7において、各活物質の重量比は、実施例1乃至6においては、第1活物質1が70%、第2活物質2が25%、第3活物質3が5%であり、実施例7においては、第1活物質1が70%、第2活物質2が20%、第3活物質3が10%である。図3に示すように、実施例1乃至7において、第1活物質1、第2活物質2、第3活物質3の平均粒径、タップ密度、及びそれらの組み合わせを変化させて電池性能を評価している。
【0063】
図3において、実施例1乃至7における、第1活物質1の平均粒径は10乃至20μmであり、タップ密度は、2.6乃至2.8g/cmである。第2活物質2の平均粒径は3.2乃至4.8μm であり、タップ密度は、2.0乃至2.3g/cmである。第3活物質3の平均粒径は10乃至20μm であり、タップ密度は、1.8乃至1.9g/cmである。すなわち、第1活物質1の粒径は10μm乃至20μmの範囲に、第2活物質2の粒径は3乃至5μmの範囲に、第3活物質の粒径>第2活物質の粒径の関係となっている。また、各実施例において、第1活物質の重量>第2活物質の重量>第3活物質の重量、の関係となっている。
【0064】
図3に示すように、実施例1乃至7は、正極密度、レート特性ともに、本発明の目標性能を満たしている。すなわち、いずれの実施例も、正極密度3.5g/cm以上となっており、かつ、レート特性(2C/0.2C)は85%以上となっている。したがって、エネルギー密度が高く、かつ、入出力特性も優れた電池を実現できている。
【0065】
これに対して、比較例1は、正極活物質として、第1活物質1と第2活物質2の2種類を使用した場合である。比較例1では、正極密度は3.8/cm3で許容範囲であるが、レート特性(2C/0.2C)は75%であり、不十分である。比較例2は、正極活物質として、第1活物質1と第3活物質3の2種類を使用した場合である。比較例2では、レート特性(2C/0.2C)は87%であり、許容範囲であるが、正極密度は3.3/cmであり、不十分である。比較例3は、正極活物質として、第2活物質2と第3活物質3の2種類を使用した場合である。比較例3では、レート特性(2C/0.2C)は96%と、非常に高い値であるが正極密度は2.7/cm3と非常に低く、不十分である。このように、2種の活物質のみ使用した比較例では、正極密度、レート特性ともに、許容範囲となる電池は実現することが出来ない。
【0066】
以上、説明したように、実施例1乃至7を含む、本発明によれば、正極密度とレート特性(2C/0.2C)のいずれも、高性能であり、特性のバランスが良い、優れた電池を実現することが出来る。言い換えると、エネルギー密度、入出力特性が共に優れた電池を実現することが出来る。
【0067】
本発明の電池は、実施形態に記載された構成に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された内容に基づいて適宜構成できる。また、本発明の電池は、リチウムイオン電池に限定されない。本発明の電池は、例えば、ニッケル水素電池や鉛電池に適用できる。本発明の電池は、2次電池に限定されない。本発明の電池は、1次電池に適用できる。本発明の電池の充放電体は、それぞれ長尺状に形成された正極とセパレータと負極を束ねて捲いた捲回タイプの充放電体に限定されない。
【0068】
本発明の電池の充放電体には、それぞれ矩形状に形成された正極とセパレータと負極を交互に複数積層した積層タイプを適用できる。本発明の電池の充放電体には、長尺状に形成された1枚のセパレータに対して、相対的に短尺状に形成された複数枚の正極と複数枚の負極を、セパレータを介して対向させつつ交互に設ける積層タイプを適用できる。このような構成の充放電体は、セパレータを折り畳んで積層することによって、セパレータを介して正極と負極が対向する。本発明の電池は、充放電体を容器と蓋によって封止する構成に限定されない。本発明の電池は、充放電体をラミネートフィルムによって封止する構成に適用できる。
【0069】
以下に、正極の他の製造方法について説明する。実施形態に係る正極の製造方法としては、正極活物質層の正極第1活物質層及び正極第2活物質層を同時塗工で形成する製造方法を用いてもよい。以下、この製造方法について、図10を参照して説明する。
【0070】
この製造方法では、正極第1活物質層に含まれる材料(例えば、正極活物質、導電助剤、バインダ等)を用意する。この材料を混合し、得られた混合物を溶媒(例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)及び/又は水)に分散させて、正極第1スラリーを得る。また、正極第2活物質層に含まれる材料(例えば、正極活物質、導電助剤、バインダ等)を用意する。この材料を混合し、得られた混合物を溶媒(例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)及び/又は水)に分散させて、正極第2スラリーを得る。
【0071】
次に、例えば、図10に示すようなダイヘッド150を用いて、正極第1スラリー及び正極第2スラリーを正極集電体134a上に同時に塗布する。ダイヘッド150は、出側ブロック157、3次元シム158、及び入側ブロック159を有する。ダイヘッド150の内部には、正極第2スラリー用マニホールド152及び正極第1スラリー用マニホールド151が設けられている。バックローラ156に沿って搬送されている正極集電体134aに向かって、各マニホールド152、151から同時に正極第2スラリー及び正極第1スラリーを吐出する。それにより、正極第2スラリー層133d及び正極第1スラリー層133bが形成される。次に、乾燥炉等により、正極第1スラリー層133b及び正極第2スラリー層133dに含まれる溶媒を揮発させて、正極第1スラリー層133b及び正極第2スラリー層133dを乾燥させる。それにより、正極集電体134aの一方の面に正極第1活物質層(図示せず)及び正極第2活物質層(図示せず)が形成される。次に、正極集電体134a、正極第1活物質層及び正極第2活物質層をプレス加工する。具体的には、正極集電体134a、正極第1活物質層、及び正極第2活物質層を含む積層体を60~120℃に熱せられたローラで挟んで圧力をかける。その後、この積層体を所定の幅にスリット加工する。それにより、正極が得られる。
【0072】
以上の二層の同時塗工が適用された製造方法で製造された正極を備える電池では、正極第1スラリー層133b及び正極第2スラリー層133dの界面が凹凸形状を有するため、正極第1スラリー層133b及び正極第2スラリー層133dの密着性が向上し、充放電に伴う体積変化が発生しても二つの層が剥離することなく電池の信頼性を向上させることができる。
【0073】
本発明は、固体電池にも適用することが出来る。つまり、実施形態に係る電池としては、電解質として、固体電解質を備える電池であって、正極と、負極と、固体電解質を含む固体電解質層と、を有し、固体電解質層が正極と負極との間に介在する充放電体とを備えるものでもよい。
【0074】
例えば、前記の正極電子絶縁層及び負極電子絶縁層の各々が、固体電解質を含むことを特徴とする。前記正極電子絶縁性粒子及び前記負極電子絶縁性粒子が、いずれも固体電解質粒子であることを特徴とする。このような固体電解質を備える電池は、電解液を含む必要がないため、高い安全性有することができる。
【0075】
なお、固体電解質の例としては、硫化物系固体電解質、例えば、Li10GeP12、LiPSClや、LiS-P系ガラス、LiS-SiS系ガラス、LiS-P-GeS系ガラス、LiS-B系ガラス、酸化物系固体電解質、例えば、LiLaZr12、LiLaTiO、LiTi(PO、LiGe(PO、及び錯体水素化物系固体電解質、例えば、LiBH-LiI、LiBH-LiNH、並びにこれらの二種以上の混合物が挙げられる。
【0076】
さらに、本発明は、セパレータレスの電池にも使用することが出来る。以下に、このようなセパレータレスの電池の構成について、図11及び図12を参照して説明する。図11に示すように、実施形態に係る他の例の正極134を備えるセパレータレスの電池(チウムイオン二次電池)では、正極134は、正極集電体134aと、正極集電体134aの両面に接合された正極第1活物質層134b1と、正極第1活物質層134b1の各々に接合された正極第2活物質層134b2と、正極第2活物質層134b2の各々に接合された正極電子絶縁層134dとを備える。負極132は、負極集電体132aと、負極集電体132aの両面に接合された負極活物質層132bと、負極活物質層132bの各々に接合された負極電子絶縁層132dとを備える。
【0077】
正極集電体134aの一端には、正極第1活物質層134b1及び正極第2活物質層134b2を含む正極活物質層134b、又は正極電子絶縁層134dのいずれによっても被覆されていない部分(以後、「正極集電体露出部」と称する)134cが設けられる。正極集電体露出部134cは、捲回群(図示せず)の端面及びその近傍に設けられる。正極集電体露出部134cは、正極集電板(図示せず)の正極側接続端部(図示せず)に対向するともに電気的に接続される。同様に、負極集電体132aの一端には、負極活物質層132b又は負極電子絶縁層132dのいずれによっても被覆されていない部分(以後、「負極集電体露出部」と称する)132cが設けられる。負極集電体露出部132cは、捲回群の端面及びその近傍に設けられる。負極集電体露出部132cは、負極集電板(図示せず)の負極側接続端部(図示せず)に対向するともに電気的に接続される。
【0078】
正極電子絶縁層134d及び負極電子絶縁層132dは、正極活物質層134bと負極活物質層132bの間の短絡を防止する機能と、正極活物質層134bと負極活物質層132bの間でイオンを伝導する機能とを有する。正極電子絶縁層134d及び負極電子絶縁層132dは、電気絶縁性(すなわち、電子絶縁性且つイオン絶縁性)の材料から構成される多孔質層であってよい。多孔質層はその細孔中に電解液を保持することができ、この電解液を介して正極活物質層134bと負極活物質層132bの間でイオンを伝導することができる。
【0079】
多孔質の正極電子絶縁層134d及び負極電子絶縁層132dは、リチウムイオン二次電池の充放電に伴う電極合剤層134b、132bの膨張収縮を緩衝する機能も有し得る。電池の充放電に伴う負極活物質層132bの膨張収縮は、一般に正極活物質層134bの膨張収縮よりも大きい。そこで、より大きい負極活物質層132bの膨張収縮を緩衝することができるように、負極電子絶縁層132dは正極電子絶縁層134dの平均細孔径よりも大きい平均細孔径を有してよい。なお、本願において、正極電子絶縁層134d及び負極電子絶縁層132dの平均細孔径は、水銀圧入法により測定される容積基準の細孔径の平均値を意味する。
【0080】
正極電子絶縁層134d及び負極電子絶縁層132dのNa及びFeの含有量の合計は、正極電子絶縁層134d及び負極電子絶縁層132dの重量を基準として300ppm以下であってよい。正極電子絶縁層134d及び負極電子絶縁層132dに含有される各元素の量は、ICP(Inductive Coupled Plasma)法により測定することができる。
【0081】
正極電子絶縁層134dは正極電子絶縁性粒子を含んでよく、負極電子絶縁層132dは負極電子絶縁性粒子を含んでよい。以下、適宜、正極電子絶縁性粒子及び負極電子絶縁性粒子を合わせて電子絶縁性粒子と称する。電子絶縁性粒子は、電気絶縁性粒子であってよい。電気絶縁性粒子の例として、セラミック粒子が挙げられる。セラミック粒子は、アルミナ(Al)、ベーマイト(Al水和物)、マグネシア(MgO)、ジルコニア(ZrO)、チタニア(TiO2)、酸化鉄、シリカ(SiO)、及びチタン酸バリウム(BaTiO)からなる群から選択される少なくとも一種を含有してよく、好ましくは、アルミナ、ベーマイト、マグネシア、ジルコニア、及びチタニアからなる群より選択される少なくとも一種を含有する。電子絶縁性粒子は、0.7~1.1μmの範囲内の平均粒子径を有してよい。電子絶縁性粒子の平均粒子径は、正極電子絶縁層134d及び負極電子絶縁層132dの顕微鏡観察画像に基づき、無作為に選択した100個以上の電子絶縁性粒子の投影面積円相当径の算術平均を計算することによって求めることができる。電子絶縁性粒子は、電子絶縁性粒子の重量を基準として、100~200ppmのNa、50~100ppmのFe、又は50~100ppmのCaの少なくとも一つを含有してよい。
【0082】
正極電子絶縁層134d及び負極電子絶縁層132dは、さらに、バインダを含んでよい。バインダは、水系溶媒又は非水系溶媒(例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP))に分散又は溶解するものであってよく、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアクリル酸(PAA)、及びカルボキシメチルセルロース(CMC)からなる群から選択される少なくとも一種を含有してよい。
【0083】
正極電子絶縁層134d及び負極電子絶縁層132dは、さらに、分散剤を含んでよい。分散剤は、カルボン酸化合物及びリン酸化合物からなる群から選択される少なくとも一種を含有してよい。
【0084】
正極電子絶縁層134dと正極活物質層134bの間の界面134eは凹凸形状を有し、その凹凸高さは、2μm以上であり、好ましくは2~4μmの範囲内である。負極電子絶縁層132dと負極活物質層132bの間の界面132eは凹凸形状を有し、その凹凸高さは、2μm以上であり、好ましくは2~4μmの範囲内である。正極電子絶縁層134dと正極活物質層134bの間の界面134e及び負極電子絶縁層132dと負極活物質層132bの間の界面132eの凹凸高さが2μm以上であることより、正極電子絶縁層134dと正極活物質層134bの間の密着性、及び負極電子絶縁層132dと負極活物質層132bの間の密着性を向上させることができる。それにより、正極電子絶縁層134d及び負極電子絶縁層132dがそれぞれ正極活物質層134b及び負極活物質層132bから剥離することを防止又は低減することができ、リチウムイオン二次電池の信頼性を向上させることができる。
【0085】
正極第2活物質層134b2(正極活物質層134b)と正極電子絶縁層134dの間の界面134eの凹凸高さは、例えば、正極活物質粒子及び正極電子絶縁性粒子の粒子径により制御することができる。図12に示すように、正極第2活物質層134b2に含まれる正極第2活物質粒子134b2p(正極第2活物質)の平均粒子径が、正極電子絶縁性粒子134dpの平均粒子径よりも大きい場合、正極電子絶縁性粒子134dpが正極第1活物質134b1pの間の間隙に入り込み、正極活物質層134bと正極電子絶縁層134dの間の界面134eが凹凸形状になる。例えば、4.5~5.5μmの範囲内の平均粒子径を有する球状の正極第1活物質134b1p、及び0.7~1.1μmの範囲内の平均粒子径を有する正極電子絶縁性粒子134dpを用いることにより、正極活物質層134bと正極電子絶縁層134dの間の界面134eの凹凸高さを2μm以上、好ましくは2~4μmの範囲内とすることができる。
【0086】
負極活物質層132bと負極電子絶縁層132dの間の界面132eの凹凸高さも同様に、負極活物質粒子及び負極電子絶縁性粒子の粒子径により制御することができる。例えば、9~11μmの範囲内の平均粒子径を有する鱗片の負極活物質粒子、及び0.7~1.1μmの範囲内の平均粒子径を有する負極電子絶縁性粒子を用いることにより、負極活物質層132bと負極電子絶縁層132dの間の界面132eの凹凸高さを2μm以上、好ましくは2~4μmの範囲内とすることができる。
【0087】
本願において、正極電子絶縁層134dと正極活物質層134bの間の界面134e、負極活物質層132bと負極電子絶縁層132dの間の界面132eの凹凸高さは、以下のようにして測定される。走査型電子顕微鏡(SEM)により正極134又は負極132の任意の3か所の断面SEM像を得、各断面SEM像において、界面134e、132e上の任意の10個以上の点から所定の基準面までの距離(例えば、界面134e、132e上の任意の10個以上の点から正極電子絶縁層134dの表面134f、負極電子絶縁層132dの132fまでの距離、すなわち、任意の10箇所以上の正極電子絶縁層134dの厚さ及び負極電子絶縁層132dの厚さ)を測定する。得られた距離の値の標準偏差を、界面134e、132eの凹凸高さとする。なお、正極電子絶縁層134dの表面134fと負極電子絶縁層132dの表面132fは、互いに対向する面であり、界面134e、132eと比較して十分に平坦であってよい。例えば、正極電子絶縁層134d及び負極電子絶縁層132dの表面134f、132fの凹凸高さは、それぞれ、界面134e、132eの凹凸高さの10分の1以下であってよい。
【0088】
「正極電子絶縁層134dと正極活物質層134bの間の界面134eが凹凸形状を有する」は、「正極電子絶縁層134dと正極活物質層134bの間に、正極活物質及び電子絶縁性材料を含む正極混合層を有する」と言い換えることもできる。同様に、「負極電子絶縁層132dと負極活物質層132bの間の界面132eが凹凸形状を有する」は、「負極電子絶縁層132dと負極活物質層132bの間に、負極活物質及び電子絶縁性材料を含む負極混合層を有する」と言い換えることができる。正極混合層の厚さは、2μm以上、好ましくは2~4μmの範囲内である。負極混合層の厚さは、2μm以上、好ましくは2~4μmの範囲内である。正極混合層及び負極混合層の厚さは、上述した正極電子絶縁層134d及び負極電子絶縁層132dと電極合剤層134b、132bの間の界面134e、132eの凹凸高さと同様に測定することができる。
【0089】
正極電子絶縁層134dと負極電子絶縁層132dは互いに接触していてよい。好ましくは、正極電子絶縁層134dと負極電子絶縁層132dは互いに固定されずに接触していてよい。正極電子絶縁層134dと負極電子絶縁層132dが互いに固定されていないことにより、リチウムイオン二次電池の充放電に伴う負極活物質層132b及び正極活物質層134bの膨張収縮により生じる応力を緩和することができるとともに、正極活物質層134bと負極活物質層132bの間の短絡を引き起こし得るデンドライトが、正極電子絶縁層134d及び負極電子絶縁層132dを貫通して成長することを防止又は低減させることができる。
【0090】
正極電子絶縁層134dの正極活物質層134bに対する剥離強度、及び負極電子絶縁層132dの負極活物質層132bに対する剥離強度は、正極電子絶縁層134dの負極電子絶縁層132dに対する剥離強度よりも大きくてよい。剥離強度は、例えば、JIS C 0806-3 1999に準拠した180°テープ剥離試験にて測定することができる。
【0091】
正極活物質層134bと正極電子絶縁層134dの間の界面134eの凹凸高さは、上述した正極活物質粒子及び正極電子絶縁性粒子の粒子径に加えて、正極合剤スラリー及び正極電子絶縁材スラリーの溶媒の種類及び粘度等によっても制御することができる。同様に、負極活物質層132bと負極電子絶縁層132dの間の界面132eの凹凸高さも、負極合剤スラリー及び負極電子絶縁材スラリーの溶媒の種類及び粘度等により制御することができる。
【0092】
電子絶縁性粒子の粒子径、並びにプレス加工におけるプレス圧等により、正極電子絶縁層134d及び負極電子絶縁層132dの平均細孔径を制御することができる。具体的には、プレス圧が高いほど平均細孔径が小さくなり、電子絶縁性粒子の粒子径が小さいほど、平均細孔径が小さくなる。
【0093】
以上の他の例の正極134を備えるセパレータレスの電池では、電子絶縁層の強度がセパレータより高いため、電池の安全性が向上するといった効果が得られる。
【0094】
さらに、以上の他の例の正極134を備えるセパレータレスの電池の変形例では、正極電子絶縁層134d及び負極電子絶縁層132dの各々が固体電解質(すなわち、電子絶縁性且つイオン伝導性の材料)を含む層である。この変形例の電池(リチウムイオン二次電池)は、電解液を含む必要がないため、高い安全性有することができる。この変形例において、正極電子絶縁層134d及び負極電子絶縁層132dに含まれる電子絶縁性粒子は、固体電解質粒子であってよい。固体電解質はプレス成形により良好に成形することができるので、この場合には、正極電子絶縁層134d及び負極電子絶縁層132dがバインダ及び分散剤を含むことは必須ではない。
【0095】
さらに、正極活物質層134bに含まれる正極第1活物質層134b1及び正極第2活物質層134b2の少なくとも一方が、活物質、並びに任意選択のバインダ、導電助剤、及び分散剤に加えて、固体電解質をさらに含有してもよい。それにより、正極第1活物質層134b1及び正極第2活物質層134b2の少なくとも一方のイオン伝導性を向上させることができる。
【0096】
負極活物質層132bが、電極活物質、並びに任意選択のバインダ、導電助剤、及び分散剤に加えて、固体電解質をさらに含有してもよい。それにより負極活物質層132bのイオン伝導性を向上させることができる。
【0097】
以上の変形例の電池1では、電解液を含む必要がなく、かつ電子絶縁層の強度がセパレータより高いため、高い安全性を有することができる。正極集電体、前記正極集電体上に設けられた正極合剤層、及び前記正極合剤層上に設けられた正極電子絶縁層を備える正極と、負極集電体、前記負極集電体上に設けられた負極合剤層、及び前記負極合剤層上に設けられた負極電子絶縁層を備える負極と、を備え、前記正極電子絶縁層と前記負極電子絶縁層が互いに接触している。さらには、前記正極電子絶縁層と前記負極電子絶縁層が互いに固定されずに接触している。
【0098】
実施形態に係る他の例の正極は、例えば、以下のようにして、正極活物質層の正極第1活物質層及び正極第2活物質層並びに正極電子絶縁層を同時塗工で製造できる。まず、正極第1活物質層に含まれる材料(例えば、正極活物質、導電助剤、バインダ等)を用意する。この材料を混合し、得られた混合物を溶媒(例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)及び/又は水)に分散させて、正極第1スラリーを得る。また、正極第2活物質層に含まれる材料(例えば、正極活物質、導電助剤、バインダ等)を用意する。この材料を混合し、得られた混合物を溶媒(例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)及び/又は水)に分散させて、正極第2スラリーを得る。さらに、正極電子絶縁層134dに含まれる材料(例えば、正極電子絶縁性粒子、バインダ、分散剤等)を用意する。この材料を混合し、得られた混合物を溶媒(例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)及び/又は水)に分散させて、正極電子絶縁材スラリーを得る。
【0099】
次に、正極第1スラリー、正極第2スラリー、及び正極電子絶縁材スラリーを正極集電体上に同時に塗布する。それにより、正極第2スラリー層、正極第1スラリー層、及び正極電子絶縁材スラリー層が形成される。次に、乾燥炉等により、正極第2スラリー層、正極第1スラリー層、及び正極電子絶縁材スラリー層に含まれる溶媒を揮発させて、正極第2スラリー層、正極第1スラリー層、及び正極電子絶縁材スラリー層を乾燥させる。それにより、正極集電体の一方の面に正極第1活物質層及び正極第2活物質層並びに正極電子絶縁層が形成される。次に、正極集電体、正極第1活物質層及び正極第2活物質層、並びに正極電子絶縁層をプレス加工する。具体的には、正極集電体、正極第1活物質層及び正極第2活物質層、並びに正極電子絶縁層を含む積層体を60~120℃に熱せられたローラで挟んで圧力をかける。その後、この積層体を所定の幅にスリット加工する。それにより、正極が得られる。
【0100】
以上の三層の同時塗工が適用された製造方法で製造された正極を備える電池では、電解液を含む必要がなく、かつ各層の界面に凹凸を有するため強固に密着されているため、高い安全性と信頼性を得られる。
【符号の説明】
【0101】
1…正極第1活物質、 2…正極第2活物質、 3…正極第3活物質、 5…電池、 10…充放電体、 10a…充放電体の側部、 11…正極、 11a…集電部、 11b…正極タブ、 11c…側縁、 11M…正極集電層、 11N…正極活物質層、 12…負極、 12a…集電部、 12b…負極タブ、 12c…側縁、 12M…負極集電層、 12N…負極活物質層、 13…セパレータ、 20…集電体、 21…正極集電板、 22…負極集電板、 30…電流遮断体、 40…外部端子、 50…外装体、 60…絶縁体、 70…封止体
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