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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035261
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】固定体および挟持機構
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/12 20060101AFI20240307BHJP
【FI】
H02G3/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139610
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 健太郎
【テーマコード(参考)】
5G361
【Fターム(参考)】
5G361AA02
5G361AB01
5G361AC01
(57)【要約】
【課題】壁材に対してより確実に固定することを可能とする固定体を提供する。
【解決手段】固定体は、固定体本体と、壁表側挟持部と、壁裏側挟持片と、を備える。壁裏側挟持片は、固定体本体が壁表側から壁孔に挿入されるときに壁材と干渉しない退避位置に配置され、固定体本体が壁孔に挿入された状態で壁材を挟持する挟持可能位置に移動するように構成された。固定体本体には、壁裏側挟持片を組み付けるための第1組付部と、壁裏側挟持片を組み付けるための第2組付部とが設けられている。第1組付部および第2組付部のいずれかを選択することで、壁裏側挟持片の移動経路を変更可能とした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁孔に壁表側から挿入された状態で壁材に対して固定される固定体であって、
前記壁孔に挿入される固定体本体と、
前記固定体本体に設けられ、前記固定体本体が前記壁孔に挿入された状態で壁表面に当接する壁表側挟持部と、
前記固定体本体に対して可動式に取り付けられ、前記固定体本体が壁表側から前記壁孔に挿入されるときに前記壁材と干渉しない退避位置に配置され、前記固定体本体が前記壁孔に挿入された状態で前記壁表側挟持部と協働して前記壁材を挟持する挟持可能位置に移動するように構成された壁裏側挟持片と、を備え、
前記固定体本体には、前記壁裏側挟持片を第1の位置に選択的に組み付けるための第1組付部と、前記壁裏側挟持片を第2の位置に選択的に組み付けるための第2組付部とが設けられ、
前記第1組付部が選択された場合、前記壁裏側挟持片が第1移動経路を通って前記退避位置から前記挟持可能位置へと移動し、前記第2組付部が選択された場合、前記壁裏側挟持片が、前記第1移動経路と異なる第2移動経路を通って前記退避位置から前記挟持可能位置へと移動するように構成され、前記第1組付部および前記第2組付部のいずれかを選択することで、前記壁裏側挟持片の移動経路を変更可能としたことを特徴とする固定体。
【請求項2】
前記第1組付部が選択された場合と、前記第2組付部が選択された場合とにおいて、前記壁裏側挟持片の前記挟持可能位置における前記固定体本体に対する突出方向が異なることを特徴とする請求項1に記載の固定体。
【請求項3】
前記固定体本体は、枠状の周壁を備え、
前記壁裏側挟持片は、前記退避位置において、前記壁裏側挟持片の一部または全部が前記周壁の内側に配置され、前記挟持可能位置において、前記周壁の外側に突出し、
前記第1組付部が選択された場合、および、前記第2組付部が選択された場合において、前記周壁の異なる位置に形成されるとともに異なる方向を向く第1および第2開口部を介して、前記壁裏側挟持片が前記周壁の内側から外側へとそれぞれ移動するように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の固定体。
【請求項4】
前記第1組付部が選択された場合の前記壁裏側挟持片の前記退避位置における第1配置空間と、前記第2組付部が選択された場合の前記壁裏側挟持片の前記退避位置における第2配置空間とが少なくとも部分的に重合することを特徴とする請求項1または2に記載の固定体。
【請求項5】
複数の前記壁裏側挟持片を備え、少なくとも2つの前記壁裏側挟持片は、共に前記第1組付部に組み付けた場合と、共に前記第2組付部に組み付けた場合のいずれの場合であっても、前記挟持可能位置における前記固定体本体からの突出方向が互いに相反するように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の固定体。
【請求項6】
前記固定体本体には、対向する一対一組の器具取付部が設けられ、
前記第1組付部および前記第2組付部の一方が選択された場合の前記挟持可能位置における前記壁裏側挟持片の突出方向が、前記器具取付部の対向方向と同じであり、前記第1組付部および前記第2組付部の他方が選択された場合の前記挟持可能位置における前記壁裏側挟持片の突出方向が、前記対向方向に直交する方向と同じであることを特徴とする請求項1または2に記載の固定体。
【請求項7】
壁孔に壁表側から挿入された状態で壁材に対して固定される固定体の被固定部位に設けられ、前記固定体の固定体本体が前記壁孔に挿入された状態で壁表面に当接する壁表側挟持部と協働して前記壁材を挟持するための挟持機構であって、
前記固定体本体に可動式に支持され、前記固定体本体が壁表側から前記壁孔に挿入されるときに前記壁材と干渉しない退避位置に配置され、前記固定体本体が前記壁孔に挿入された状態で前記壁表側挟持部と協働して前記壁材を挟持する挟持可能位置に移動するように構成された壁裏側挟持片と、
前記壁裏側挟持片を前記固定体本体の第1の位置に選択的に組み付けるための第1組付部と、
前記壁裏側挟持片を前記固定体本体の第2の位置に選択的に組み付けるための第2組付部と、を備え、
前記第1組付部が選択された場合、前記壁裏側挟持片が第1移動経路を通って前記退避位置から前記挟持可能位置へと移動し、前記第2組付部が選択された場合、前記壁裏側挟持片が、前記第1移動経路と異なる第2移動経路を通って前記退避位置から前記挟持可能位置へと移動するように構成され、前記第1組付部および前記第2組付部のいずれかを選択することで、前記壁裏側挟持片の移動経路を変更可能としたことを特徴とする挟持機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁孔を介して壁材に固定される固定体、および、固定体を壁材に固定するための挟持機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配線ボックスなどの固定体を、壁材に穿設された壁孔に壁表側から挿入した状態で壁材に固定するために種々の手段が用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1は、壁材に形成された壁孔に壁表側から挿入されて、当該壁材に取り付けられる器具固定具を開示する。以下、当該段落において、()内に特許文献1の符号を示す。器具固定具は、縦長の長方形状の底壁(1)の周縁に周壁(2)が立設された有底四角箱状をしたボックス本体(10)を備える。ボックス本体(10)は、一方の対角線方向に沿って対向する各角部に配置された一対の挟持片(A1)と、自身のボックス開口(6)の両側に設けられた左右一対の挟持鍔部(12)とで、壁材(W)を表裏から挟持することで、当該壁材(W)に取付けられる。当該挟持片(A1)は、壁材(W)の壁表から壁孔(82)にボックス本体(10)を挿入する際には、ボックス本体(10)内に収納されて、非挟持位置に配置させる必要がある。ボックス本体(10)を壁材(W)に取付ける際、挟持片(A1)は、ボックス本体(10)の挟持鍔部(12)と協働して壁材(W)を挟持することで、当該壁材(W)にボックス本体(10)を取付け可能にするために、ボックス本体(10)から外方に突出していることが必要である。挟持片(A1)は、皿ビス(D1)の回転によって共回り(連れ回り)することで、ボックス本体(10)内の非挟持位置から、ボックス本体(10)から突出する挟持位置へと回動する。ボックス本体(10)の一方の対角線方向に沿って対向する各角部には、ボックス本体(10)が壁材(W)の壁穴(82)に挿入された状態で、挟持片(A1)を壁材(W)の裏面に対して進退移動させる際に、当該進退移動を可能とさせる中空状の第1案内路(G1)がボックス本体(10)の奥行方向(深さ方向)に形成されている。第1案内路(G1)を定める下横側壁(3)又は上横側壁(4)の角部を形成する部分は、皿ビス(D1)の回転により、挟持片(A1)を共回りさせて、その基端支持板部(21)の端面を当接させることで、当該挟持片(A1)が横方向に配置された通常の挟持位置を定めるための第1当接部(3a)となっている。挟持位置で挟持片(A1)が第1当接部(3a)に当接した状態で、皿ビス(D1)を回転させると、挟持片(A1)を共回りさせずに壁材(W)に近接する方向に移動させることができる。また、ボックス本体(10)の角部を形成する下横側壁(3)の下面は、第1案内路(G1)の底部の全体が除去可能に形成されている。当該第1当接部(3a)を折り取ると、底面開口(34)が第1案内路(G1)に形成され、当該底面開口(34)を介して、挟持片(A1)が第1案内路(G1)から離脱するようにさらに共回り可能となる。そして、折取り面には、第1案内路(G1)からほぼ半回転だけ共回りした挟持片(A1)が当接する第2当接部(35)が形成される。当該第2当接部(35)に挟持片(A1)が当接した状態で、当該挟持片(A1)の進退案内を行う第2案内路(G2)が形成される。すなわち、挟持片(A1)は、第1当接部(3a)を除去することによって、第1案内路(G1)による第1の挟持位置とは異なる位置にある第2案内路(G2)による第2の挟持位置においても、挟持鍔部(12)と協働して壁材(W)を挟持するように動作可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-220501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のボックス固定具は、壁材にボックス固定具を取付けるための挟持片の突出位置に障害物が存在している場合において、第1当接部を選択的に除去して当該挟持片の挟持位置を変更することで、壁材に対するボックス固定具の取付けを可能にするものである。しかしながら、従来のボックス固定具(固定体)では、ボックス本体が壁孔に挿入された状態で、挟持片が非挟持位置から第1の挟持位置まで共回りし、さらに第1当接部が選択的に除去された場合に、第1の挟持位置から第2の挟持位置まで共回りするように挟持片の共回り経路が定められている。そのため、非挟持位置から第1の挟持位置までの挟持片の移動経路に何らかの障害物があると、第1および第2の挟持位置のいずれを選択した場合であっても、挟持片を第1および第2の挟持位置のいずれにも移動させることができず、ボックス固定具を壁材に固定することができなかった。すなわち、従来の固定体において、挟持片の共回りの移動経路に何らかの障害物がある場合、障害物によって固定体の壁材への固定が阻害され、固定体を壁材に確実に取り付けることができないことが問題であった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、壁材に対してより確実に固定することを可能とする固定体、および、該固定体を壁材に固定するための挟持機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の固定体は、壁孔に壁表側から挿入された状態で壁材に対して固定される固定体であって、
前記壁孔に挿入される固定体本体と、
前記固定体本体に設けられ、前記固定体本体が前記壁孔に挿入された状態で壁表面に当接する壁表側挟持部と、
前記固定体本体に対して可動式に取り付けられ、前記固定体本体が壁表側から前記壁孔に挿入されるときに前記壁材と干渉しない退避位置に配置され、前記固定体本体が前記壁孔に挿入された状態で前記壁表側挟持部と協働して前記壁材を挟持する挟持可能位置に移動するように構成された壁裏側挟持片と、を備え、
前記固定体本体には、前記壁裏側挟持片を第1の位置に選択的に組み付けるための第1組付部と、前記壁裏側挟持片を第2の位置に選択的に組み付けるための第2組付部とが設けられ、
前記第1組付部が選択された場合、前記壁裏側挟持片が第1移動経路を通って前記退避位置から前記挟持可能位置へと移動し、前記第2組付部が選択された場合、前記壁裏側挟持片が、前記第1移動経路と異なる第2移動経路を通って前記退避位置から前記挟持可能位置へと移動するように構成され、前記第1組付部および前記第2組付部のいずれかを選択することで、前記壁裏側挟持片の移動経路を変更可能としたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の固定体は、請求項1に記載の固定体において、前記第1組付部が選択された場合と、前記第2組付部が選択された場合とにおいて、前記壁裏側挟持片の前記挟持可能位置における前記固定体本体に対する突出方向が異なることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の固定体は、請求項1または2に記載の固定体において、前記固定体本体は、枠状の周壁を備え、
前記壁裏側挟持片は、前記退避位置において、前記壁裏側挟持片の一部または全部が前記周壁の内側に配置され、前記挟持可能位置において、前記周壁の外側に突出し、
前記第1組付部が選択された場合、および、前記第2組付部が選択された場合において、前記周壁の異なる位置に形成されるとともに異なる方向を向く第1および第2開口部を介して、前記壁裏側挟持片が前記周壁の内側から外側へとそれぞれ移動するように構成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の固定体は、請求項1または2に記載の固定体において、前記第1組付部が選択された場合の前記壁裏側挟持片の前記退避位置における第1配置空間と、前記第2組付部が選択された場合の前記壁裏側挟持片の前記退避位置における第2配置空間とが少なくとも部分的に重合することを特徴とする。
【0011】
複数の前記壁裏側挟持片を備え、少なくとも2つの前記壁裏側挟持片は、共に前記第1組付部に組み付けた場合と、共に前記第2組付部に組み付けた場合のいずれの場合であっても、前記挟持可能位置における前記固定体本体からの突出方向が互いに相反するように構成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の固定体は、請求項1または2に記載の固定体において、前記固定体本体には、対向する一対一組の器具取付部が設けられ、
前記第1組付部および前記第2組付部の一方が選択された場合の前記挟持可能位置における前記壁裏側挟持片の突出方向が、前記器具取付部の対向方向と同じであり、前記第1組付部および前記第2組付部の他方が選択された場合の前記挟持可能位置における前記壁裏側挟持片の突出方向が、前記対向方向に直交する方向と同じであることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の挟持機構は、壁孔に壁表側から挿入された状態で壁材に対して固定される固定体の被固定部位に設けられ、前記固定体の固定体本体が前記壁孔に挿入された状態で壁表面に当接する壁表側挟持部と協働して前記壁材を挟持するための挟持機構であって、
前記固定体本体に可動式に支持され、前記固定体本体が壁表側から前記壁孔に挿入されるときに前記壁材と干渉しない退避位置に配置され、前記固定体本体が前記壁孔に挿入された状態で前記壁表側挟持部と協働して前記壁材を挟持する挟持可能位置に移動するように構成された壁裏側挟持片と、
前記壁裏側挟持片を前記固定体本体の第1の位置に選択的に組み付けるための第1組付部と、
前記壁裏側挟持片を前記固定体本体の第2の位置に選択的に組み付けるための第2組付部と、を備え、
前記第1組付部が選択された場合、前記壁裏側挟持片が第1移動経路を通って前記退避位置から前記挟持可能位置へと移動し、前記第2組付部が選択された場合、前記壁裏側挟持片が、前記第1移動経路と異なる第2移動経路を通って前記退避位置から前記挟持可能位置へと移動するように構成され、前記第1組付部および前記第2組付部のいずれかを選択することで、前記壁裏側挟持片の移動経路を変更可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、固定体本体の第1組付部に壁裏側挟持片が選択的に組み付けられた場合、壁裏側挟持片が第1移動経路を通って退避位置から挟持可能位置へと移動する。他方、固定体本体の第2組付部に壁裏側挟持片が選択的に組み付けられた場合、壁裏側挟持片が第2移動経路を通って退避位置から挟持可能位置へと移動する。そして、第1移動経路と第2移動経路とが異なることから、固定体本体を壁孔に挿入して設置した際、第1移動経路または第2移動経路のいずれか一方の移動経路に障害物があったとしても、障害物への干渉を回避する他方の移動経路を確保するように第1組付部または第2組付部を選択して、壁裏側挟持片を挟持可能位置へと確実に移動させることができる。このようにして挟持可能位置に配置された壁裏側挟持片は、壁表側挟持部とともに壁材を挟持することで、壁孔に挿入された固定体を壁材に対して固定することが可能である。すなわち、本発明の固定体は、障害物との干渉を回避するように壁裏側挟持片の移動経路を変更可能であり、壁材に対してより確実に固定することを可能とするものである。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の発明の効果に加えて、第1組付部および第2組付部の間で、壁裏側挟持片の挟持可能位置における固定体本体に対する突出方向が異なることにより、いずれか一方の突出方向に突出する壁裏側挟持片に対して障害物が干渉する場合に、突出方向を変更するように第1組付部および第2組付部を選択して、障害物との干渉を避けることが可能である。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2の発明の効果に加えて、固定体本体が枠状の周壁を備えることにより、壁材への挟持の際の固定体本体の強度を十分に確保することができる。第1組付部および第2組付部の選択によって、周壁の内側から外側に移動する際の周壁を横切る位置および横切る方向を変更し、障害物との干渉をより効果的に避けることが可能である。また、第1および第2開口部によって周壁の内側空間が開放され、第1組付部および第2組付部の間で、壁裏側挟持片を相互に付け替える作業が容易となる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1または2の発明の効果に加えて、第1配置空間と第2配置空間とが少なくとも部分的に重合することにより、固定体における壁裏側挟持片の配置空間を効率的に活用し、固定体の全体形状をよりコンパクトに設計することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1または2の発明の効果に加えて、少なくとも2つの壁裏側挟持片の組付先について、第1組付部および第2組付部のいずれが選択された場合においても、2つの壁裏側挟持片が挟持可能位置で固定体本体から相反する方向に突出した状態で壁材を挟持する。これにより、固定体を壁材に対して安定的に固定することが可能である。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、請求項1または2の発明の効果に加えて、第1組付部および第2組付部の間で壁裏側挟持片の挟持可能位置における固定体本体に対する突出方向を、それぞれ、器具取付部の対向方向、および、該対向方向に直交する方向とにしたことにより、いずれか一方の突出方向に突出する壁裏側挟持片に対して障害物が干渉する場合に、突出方向を変更するように第1組付部および第2組付部を選択して、障害物との干渉を避けることが可能である。
【0020】
請求項7に記載の発明によれば、壁裏側挟持片、第1組付部および第2組付部から構成される挟持機構が固定体の被固定部位に設けられた。固定体本体の第1組付部に壁裏側挟持片が選択的に組み付けられた場合、壁裏側挟持片が第1移動経路を通って退避位置から挟持可能位置へと移動する。他方、固定体本体の第2組付部に壁裏側挟持片が選択的に組み付けられた場合、壁裏側挟持片が第2移動経路を通って退避位置から挟持可能位置へと移動する。そして、第1移動経路と第2移動経路とが異なることから、固定体本体を壁孔に挿入して設置した際、第1移動経路または第2移動経路のいずれか一方の移動経路に障害物があったとしても、障害物への干渉を回避する他方の移動経路を確保するように第1または第2組付部を選択して、壁裏側挟持片を挟持可能位置へと確実に移動させることができる。このようにして挟持可能位置に配置された壁裏側挟持片は、壁表側挟持部とともに壁材を挟持することで、壁孔に挿入された固定体本体を壁材に対して固定することが可能である。すなわち、本発明の挟持機構は、障害物との干渉を回避するように壁裏側挟持片の移動経路を変更可能であり、固定体の被固定部位を壁材に対してより確実に固定することを可能とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態の固定体の分解斜視図。
図2図1の固定体の固定体本体の(a)上方から見た概略斜視図、及び(b)下方から見た概略斜視図。
図3図2の固定体本体の(a)正面図、(b)背面図、(c)平面図、(d)底面図、(e)左側面図、および(f)右側面図。
図4図3の固定体本体の(a)A-A断面図、(b)B-B断面図、および(c)C-C断面図。
図5図3の固定体本体の(a)D-D断面図、および(b)E-E断面図。
図6図1の固定体の壁裏側挟持装置(壁裏側挟持片および操作ビスの組み合わせ体)の(a)上方から見た概略斜視図および(b)下方から見た概略斜視図。
図7図6の壁裏側挟持装置の(a)正面図、(b)背面図、(c)平面図、(d)底面図、(e)左側面図、および(f)右側面図。
図8図7の壁裏側挟持装置の(a)F-F断面図および(b)F’-F’断面図。
図9】第1組付部に壁裏側挟持装置を組み付けた状態の固定体の部分拡大斜視図であって、(a)壁裏側挟持片が退避位置にある状態を示し(b)壁裏側挟持片が挟持可能位置にある状態を示している。
図10図9の固定体の(a)正面図および(b)平面図であって、実線が壁裏側挟持片が挟持可能位置にある状態を示し、仮想線が壁裏側挟持片が退避位置にある状態を示している。
図11図10の固定体の(a)部分拡大A’-A’断面図、(b)部分拡大B’-B’断面図、および(c)部分拡大C’-C’断面図であって、実線が壁裏側挟持片が挟持可能位置にある状態を示し、仮想線が壁裏側挟持片が退避位置にある状態を示している。
図12図10の固定体のD’-D’断面図であって、実線が壁裏側挟持片が挟持可能位置にある状態を示し、仮想線が壁裏側挟持片が退避位置にある状態を示している。
図13】第2組付部に壁裏側挟持装置を組み付けた状態の固定体の部分拡大斜視図を示し、(a)壁裏側挟持片が退避位置にある状態を示し(b)壁裏側挟持片が挟持可能位置にある状態を示している。
図14図13の固定体の(a)正面図および(b)平面図であって、実線が壁裏側挟持片が挟持可能位置にある状態を示し、仮想線が壁裏側挟持片が退避位置にある状態を示している。
図15図14の固定体の(a)部分拡大A”-A”断面図、(b)部分拡大B”-B”断面図、および(c)部分拡大C”-C”断面図であって、実線が壁裏側挟持片が挟持可能位置にある状態を示し、仮想線が壁裏側挟持片が退避位置にある状態を示している。
図16図14の固定体のE”-E”断面図であって、実線が壁裏側挟持片が挟持可能位置にある状態を示し、仮想線が壁裏側挟持片が退避位置にある状態を示している。
図17】本発明の一実施形態の第1組付部を選択した固定体を壁材に対して設置した第1設置構造の(a)正面図および(b)背面図。
図18図17の第1設置構造のG-G断面図。
図19】本発明の一実施形態の第2組付部を選択した固定体を壁材に対して設置した第2設置構造の(a)正面図および(b)背面図。
図20図19の第2設置構造のH-H断面図。
図21】本発明の一実施形態の固定体を壁材に対して設置する方法において、第1組付部が選択された固定体を壁孔に挿入する工程を示す模式図。
図22】本発明の一実施形態の固定体を壁材に対して設置する方法において、第1組付部が選択された固定体を壁孔に配置した状態で、壁表側挟持片を壁裏面側に近接移動させるように操作ビスを回転操作する工程を示す模式図。
図23】本発明の一実施形態の固定体を壁材に対して設置する方法において、第1組付部から第2組付部へと壁裏側挟持装置を組み替える工程を示す模式図。
図24】本発明の一実施形態の固定体を壁材に対して設置する方法において、第2組付部が選択された固定体を壁孔に配置した状態で、壁表側挟持片を壁裏面側に近接移動させるように操作ビスを回転操作する工程を示す模式図。
図25】本発明の別実施形態の固定体を示す概略正面図。
図26】本発明の別実施形態の固定体を示す概略正面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において参照する各図の形状は、好適な形状寸法を説明する上での概念図又は概略図であり、寸法比率等は実際の寸法比率とは必ずしも一致しない。つまり、本発明は、図面における寸法比率に限定されるものではない。
【0023】
図1は、本発明に係る一実施形態の固定体100の分解斜視図である。本実施形態では、固定体100は、壁材に形成された壁孔に挿入された状態で壁材に対して固定される配線ボックスであり、スイッチやコンセント等の配線器具(図示せず)を壁表の所定位置に配設する用途に用いられる。しかしながら、当該用途は、例示にすぎず、本発明の固定体は種々の用途に用いられてもよい。
【0024】
図1に示すとおり、本発明の一実施形態の固定体100は、壁孔に挿入される固定体本体110と、該固定体本体110の鍔状の壁表側挟持部115と協働して壁材を挟持する壁裏側挟持装置150(壁裏側挟持片151および操作ビス155)とを備える。本実施形態では、固定体100には、2箇所の被固定部位が定められた。各被固定部位において、壁裏側挟持装置150が、固定体本体110の第1組付部121および第2組付部131のいずれかに選択的に組み付けられる。すなわち、本実施形態の固定体100には、固定体100の各被固定部位を壁材に対してより確実に固定すべく、壁裏側挟持装置150、第1組付部121および第2組付部131から構成される挟持機構が被固定部位のそれぞれに対して組み込まれている。なお、挟持機構(または壁裏側挟持装置150)は、固定体100に予め組付けられているが望ましいが、組み付けられていなくてもよい。以下、図2乃至図9を参照して、各構成要素について説明する。
【0025】
まず、図2図5を参照して、固定体本体110について説明する。図2(a),(b)は、固定体本体110の上方および下方から見た概略斜視図である。図3(a)~(f)は、当該固定体本体110の正面図、背面図、平面図、底面図、左側面図および右側面図である。図4(a)~(c)は、当該固定体本体110のA-A断面図、B-B断面図およびC-C断面図である。図5(a),(b)は、当該固定体本体110のD-D断面図およびE-E断面図である。
【0026】
固定体本体110は、図2および図3に示すように、正面視において横幅方向に長手状に形成された略直方体のボックスからなる。また、固定体本体110は、正面視において、その中心点を対称点とする点対称の構造を有している。そして、固定体本体110は、壁裏側に配置される矩形板状の後壁111と、後壁111の周縁から略直角に立設し、矩形枠状に形成された周壁112と、該周壁112の先端で後壁111と略平行に延在する前壁113とを備える。前壁113の内周側には、固定体本体110の内部空間を前面側(壁表)に臨ませて、スイッチやコンセントなどの器具を内部空間に挿入可能であるように、矩形状の前面開口部114が形成されている。また、図4および図5に示すように、周壁112の横幅方向の内側には、固定体本体110の内部空間を介して対向する一対の隔壁部117が形成されている。各隔壁部117は、前壁113から後壁111近傍まで延在し、後壁111との間に隙間を形成している。この隙間は、後述する第1配置空間124および第2配置空間134の一部をなすものである。そして、後壁111および周壁112は、正面視において、壁材に形成された壁孔を壁表から通過可能な形状寸法を有している。
【0027】
前壁113は、正面視において周壁112の外面から縦幅方向および横幅方向に張り出すように鍔状またはフランジ状に延在している。前壁113の外周形状は、壁表側から壁孔を通過できない形状寸法で構成された。すなわち、前壁113の鍔状部分の後面には、固定体本体110に設けられ、固定体本体110の後側の一部が壁孔に挿入された状態で壁表面に当接する壁表側挟持部115が形成されている。さらに、固定体本体110の前壁113には、前面開口部114を横幅方向に挟んで対向する一対一組の器具取付部118が設けられている。この器具取付部118は、前壁113から周壁112の肉部に穿設された、器具(図示せず)をビスで固定するためのビス孔である。そして、本実施形態では、固定体100の2箇所の被固定部位が、固定体本体110の横幅方向の両端部にそれぞれ定められている。
【0028】
また、固定体本体110の横幅方向の両端の被固定部位には、第1組付部121および第2組付部131の組がそれぞれ形成されている。第1組付部121および第2組付部131の2つの組は、点対称となるように固定体本体110に設けられている。このように点対称に配置したことにより、操作ビス155の回転操作の方向を両被固定部位で統一し、ユーザーに良好な操作性を提供することができる。そして、第1組付部121および第2組付部131の2つの組は、各被固定部位において、第1組付部121および第2組付部131の組から選択された1つの組付部に対して、一組の壁裏側挟持片151および操作ビス155からなる壁裏側挟持装置150が組み付けられるように構成されている。つまり、被固定部位ごとに1つの挟持機構として、第1組付部121、第2組付部131および壁裏側挟持装置150が1つずつ設けられている。
【0029】
第1組付部121は、図4(a)~(c)および図5(a)に示すように、固定体本体110の端部において縦幅方向の一方側(図中の右上および左下)に設けられている。第1組付部121は、構造的または空間的な構成要素として、第1前壁側軸孔122、第1後壁側軸孔123、第1配置空間124、第1開口部125および第1係合壁部126から構成されている。具体的には、前壁113には、操作ビス155の軸部156が貫通する第1前壁側軸孔122が形成され、かつ、後壁111には、該第1前壁側軸孔122と前後に連通し、操作ビス155の先端が配置される第1後壁側軸孔123が形成されている。第1前壁側軸孔122および第1後壁側軸孔123に操作ビス155の軸部156が配置される。つまり、第1前壁側軸孔122および第1後壁側軸孔123は、操作ビス155を前後に進退しない状態で回転可能に支持する第1支持部として機能する。そして、図5(a)に示すように、第1前壁側軸孔122と第1後壁側軸孔123との間には、軸部156に沿って壁裏側挟持片151が前後方向に移動するための第1案内通路127が定められている。第1案内通路127は、隔壁部117によって固定体本体110の内部空間と仕切られているとともに、周壁112から壁裏側挟持片151を突出させるべく、縦幅方向の一方向に開放されている。
【0030】
また、後壁111の前面に隣接するとともに第1案内通路127に横幅方向に連通する位置には、壁裏側挟持片151を周壁112(またはその正面視輪郭)の内側に配置するための第1配置空間124が設けられている。すなわち、第1配置空間124は、(第1組付部121が選択された際、)固定体本体110が壁表側から壁孔に挿入されるときに壁材と干渉しない退避位置に壁裏側挟持片151を配置するための空間である。この第1配置空間124は、ユーザーが壁表側から(退避位置の)壁裏側挟持片151を操作可能であるように、前面開口部114を介して前方(壁表側)に露出している。また、周壁112には、第1配置空間124を周壁112の外部に開放するとともに、壁裏側挟持片151の周壁112の内外への移動を許容する第1開口部125が形成されている。この第1開口部125は、周壁112の後端近傍で、縦幅方向の一方を向いて形成され、壁裏側挟持片151が通過可能な幅を有するスリットである。
【0031】
また、図4(b)、(c)に示すように、固定体本体110の周壁112の縦幅方向の一方(図中の右上および左下)の角隅部には、連れ回りする壁裏側挟持片151を係止するための第1係合壁部126が設けられている。この第1係合壁部126は、第1開口部125に連設され、周壁112の角隅部において、周壁112と後壁111とを繋ぐ細幅の補強リブである。第1係合壁部126は、ユーザーによって選択的に折り取り可能に構成されている。特には、第1係合壁部126には、溝などの脆弱部が形成され、工具等により力が付加されて脆弱部が破断されることで、第1係合壁部126が除去容易であることが好ましい。後述するように、第1開口部125から突出した壁裏側挟持片151は、第1係合壁部126に係合した状態での操作ビス155の順方向の回転操作に従って、その場に維持されつつ第1案内通路127を前方(壁材への近接方向)に螺進するように駆動される。
【0032】
第2組付部131は、図4(a)~(c)および図5(b)に示すように、固定体本体110の端部において縦幅方向の他方側(図中の右下および左上)に設けられている。第2組付部131は、第1組付部121と同様に、構造的または空間的な構成要素として、第2前壁側軸孔132、第2後壁側軸孔133、第2配置空間134、第2開口部135および第2係合壁部136から構成されている。具体的には、前壁113には、操作ビス155の軸部156が貫通する第2前壁側軸孔132が形成され、かつ、後壁111には、該第2前壁側軸孔132と前後に連通し、操作ビス155の先端が配置される第2後壁側軸孔133が形成されている。第2前壁側軸孔132および第2後壁側軸孔133に操作ビス155の軸部156が配置される。つまり、第2前壁側軸孔132および第2後壁側軸孔133は、操作ビス155を前後に進退しない状態で回転可能に支持する第2支持部として機能する。そして、図5(b)に示すように、第2前壁側軸孔132と第2後壁側軸孔133との間には、軸部156に沿って壁裏側挟持片151が前後方向に移動するための第2案内通路137が定められている。第2案内通路137は、隔壁部117によって固定体本体110の内部空間と仕切られているとともに、周壁112から壁裏側挟持片151を突出させるべく、横幅方向の一方向に開放されている。すなわち、第1案内通路127および第2案内通路137は、互いに独立し、離隔した位置に設けられている。
【0033】
また、後壁111の前面に隣接するとともに第2案内通路137の縦幅方向に連通する位置には、壁裏側挟持片151を周壁112(またはその正面視輪郭)の内側に配置するための第2配置空間134が設けられている。すなわち、第2配置空間134は、(第2組付部131が選択された際、)固定体本体110が壁表側から壁孔に挿入されるときに壁材と干渉しない退避位置に壁裏側挟持片151を配置するための空間である。この第2配置空間134は、ユーザーが壁表側から(退避位置の)壁裏側挟持片151を操作可能であるように、前面開口部114を介して前方(壁表側)に露出している。本実施形態では、第1配置空間124および第2配置空間134は、周壁112の内部で部分的に重合するように形成されている。これにより、固定体100のコンパクト化が可能である。また、周壁112には、第2配置空間134を周壁112の外部に開放するとともに、壁裏側挟持片151の周壁112の内外への移動を許容する第2開口部135が形成されている。この第2開口部135は、周壁112の後端近傍で、横幅方向の一方を向いて形成され、壁裏側挟持片151が通過可能な幅を有するスリットである。
【0034】
すなわち、第1開口部125および第2開口部135は、四角枠状の周壁112の各面(または各辺)に貫通形成された壁裏側挟持片151の出没口である。また、第1開口部125および第2開口部135は、互いに対して、周壁112の異なる位置に形成されるとともに異なる方向を向くように形成されている。さらに、本実施形態では、第1開口部125および第2開口部135は、折り取り可能な第1係合壁部126によって互い分離するように仕切られているが、第1係合壁部126を除去することで、互いに連通することが可能である。
【0035】
また、図4(b)、(c)に示すように、固定体本体110の周壁112の縦幅方向の他方(図中の右下および左上)の角隅部には、連れ回りする壁裏側挟持片151を係止するための第2係合壁部136が設けられている。この第2係合壁部136は、第2開口部135に連設された周壁112の一部である。第2係合壁部136は、第1係合壁部126とは異なり、折り取り可能に構成されていない。後述するように、第2開口部135から突出した壁裏側挟持片151は、第2係合壁部136に係合した状態での操作ビス155の順方向の回転操作に従って、その場に維持されつつ第2案内通路137を前方(壁材への近接方向)に螺進するように駆動される。
【0036】
次に、図6図8を参照して、壁裏側挟持装置150について説明する。図6(a)、(b)は、壁裏側挟持装置150の上方および下方から見た概略斜視図である。図7(a)~(f)は、壁裏側挟持装置150の正面図、背面図、平面図、底面図、左側面図、および右側面図である。図8(a)、(b)は、壁裏側挟持装置150のF-F断面図およびF’-F’断面図である。
【0037】
壁裏側挟持装置150は、固定体本体110が壁孔に挿入された状態で壁表面に当接する壁表側挟持部115と協働して壁材を挟持するように構成された装置である。また、壁裏側挟持装置150は、図6図8に示すように、壁裏側挟持片151と、操作ビス155とを組み合わせてなり、ユーザーに選択された第1組付部121または第2組付部131のいずれかに組み付けられて用いられる。壁裏側挟持片151は、固定体本体110に可動式に支持され、固定体本体110が壁表側から壁孔に挿入されるときに壁材と干渉しない退避位置(第1配置空間124または第2配置空間134)に配置され、そして、固定体本体110が壁孔に挿入された状態で壁表側挟持部115と協働して壁材を挟持する挟持可能位置に移動するように構成されている。操作ビス155は、固定体本体110に支持されるとともに壁裏側挟持片151に螺合し、壁表側からの順方向の回転操作に従って前記壁裏側挟持片と連れ回ることによって、壁裏側挟持片151を退避位置から挟持可能位置へと移動させ、挟持可能位置で壁材へ向けて近接移動させるように、壁裏側挟持片151を駆動するように構成されている。なお、操作ビス155が、固定体100の壁材からの固定解除の際、逆方向の回転操作によって、壁裏側挟持片151を上記と逆の行程で駆動することも可能であることは言うまでもない。
【0038】
具体的には、壁裏側挟持片151は、操作ビス155が螺合するためのネジ孔153が形成された基端部152と、該基端部152の先端側に連設され、壁裏面に当接する面を有する押圧部154とを備える。また、壁裏側挟持片151は、板状を成し、(固定体本体110に支持された状態で)基端部152よりも押圧部154が前側に位置するように段状に折れ曲がって形成されている。押圧部154は、その先端に近づくにつれて壁材に近接するように僅かに傾斜している。他方、操作ビス155は、軸方向に亘って外面にネジ山が形成された雄ネジ状の軸部156と、該軸部156の基端に形成された頭部157とを備える。軸部156は、第1前壁側軸孔122および第1後壁側軸孔123(第2前壁側軸孔132および第2後壁側軸孔133)内に配置されつつ、壁裏側挟持片151のネジ孔153に螺合するように構成されている。頭部157は、工具(具体的にはドライバー)によって操作ビス155を回転操作可能に構成されている。すなわち、壁裏側挟持片151は、操作ビス155の相対的な回転に従って、軸部156に螺合し、軸部156の軸方向に沿って螺進または螺退することが可能である。また、軸部156の先端近傍には、その外面が平面状に切り欠かれてなる切り欠き部158が形成されている。この切り欠き部158は、壁裏側挟持片151および操作ビス155の間の相対的な回転に対する抵抗として作用し、操作ビス155に対する壁裏側挟持片151の連れ回り(共回り)を助長するように作用する。
【0039】
以上の各構成要素の説明を踏まえ、固定体100の第1組付部121および第2組付部131に壁裏側挟持装置150が組み付けられた形態についてそれぞれ説明する。
【0040】
図9(a)、(b)は、固定体本体110の第1組付部121に壁裏側挟持装置150を組み付けた状態の固定体100の部分拡大斜視図であって、壁裏側挟持片151が退避位置にある状態、および、壁裏側挟持片151が挟持可能位置にある状態をそれぞれ示している。図10(a)、(b)は、固定体100の正面図および平面図を示し、実線が壁裏側挟持片151が挟持可能位置にある状態を示し、仮想線が壁裏側挟持片151が退避位置にある状態を示している。図11(a)~(c)は、固定体100の部分拡大A’-A’断面図、部分拡大B’-B’断面図、および部分拡大C’-C’断面図を示し、実線が壁裏側挟持片151が挟持可能位置にある状態を示し、仮想線が壁裏側挟持片151が退避位置にある状態を示している。図12は、固定体100のD’-D’断面図を示し、仮想線が壁裏側挟持片151が前側に螺進した状態を示している。
【0041】
図9図12に示すように、固定体100の各被固定部位の第1組付部121には、壁裏側挟持装置150が選択的に組み付けられている。この第1組付部121が選択された固定体100において、壁裏側挟持片151が固定体本体110に対して可動式に取り付けられているとともに、操作ビス155が第1前壁側軸孔122および第1後壁側軸孔123を介して固定体本体110に対して回転可能に取り付けられている。そして、図9(a)および図10に示すように、壁裏側挟持片151が退避位置にある場合、正面視において、壁裏側挟持片151全体が周壁112外周面(輪郭)から突出しないように固定体本体110の内部空間(第1配置空間124)に収められている。他方、図9(b)および図10に示すように、壁裏側挟持片151が挟持可能位置にある場合、正面視において、2つの壁裏側挟持片151が、縦幅方向に沿って互いに相反する方向に突出している。これら2つの壁裏側挟持片151の第1の突出方向は、対向する一対一組の器具取付部118,118の対向方向に直交する方向と同じである。
【0042】
図12に示すとおり、操作ビス155は、その軸部156が前壁113の前面側から第1前壁側軸孔122および第1後壁側軸孔123を貫通することで固定体本体110に回転可能に保持されている。操作ビス155の頭部157は、前面側から前壁113に当接し、壁表側から回転操作可能であるように前方に露出している。軸部156は、固定体本体110の第1案内通路127全体で前後方向に延伸している。そして、壁裏側挟持片151が軸部156に螺着することで固定体本体110に保持されている。壁裏側挟持片151は、操作ビス155と連れ回りすることにより、図9(a)の退避位置から図9(b)の挟持可能位置へと回動することが可能である。
【0043】
図11(c)に示すとおり、壁裏側挟持片151は、基端部152のネジ孔153を介して軸部156に螺合している。ここで、基端部152は、後壁111に当接し、軸部156上の壁材に対して最も後退した位置にある。そして、図10および図11で仮想線で示された退避位置の壁裏側挟持片151は、周壁112の外周(正面視輪郭)から突出することなく、第1配置空間124内に配置されている。図11(b)および図11(c)に示すように、基端部152および押圧部154に回動方向(時計回り方向)に対向する周壁112の部位には、第1開口部125が形成されている。第1開口部125は、壁裏側挟持片151が順方向(時計回り方向)に回動して周壁112を横切って移動することを許容する。一方で、壁裏側挟持片151は、図11(c)に示すように、押圧部154が周壁112内部の隔壁部117に当接することで、逆方向(反時計回り方向)に回動して周壁112のより内側に入り込むことが規制されている。
【0044】
また、図10および図11で実線で示された挟持可能位置の壁裏側挟持片151では、基端部152の一部と押圧部154とが、第1開口部125を介して周壁112の外周から突出している。ここで、壁裏側挟持片151が退避位置から挟持可能位置へと回動する際の固定体本体110外部の経路(移動軌跡)が第1移動経路128として定められた。そして、図11(c)に示すとおり、挟持可能位置において、壁裏側挟持片151の基端部152が順方向に第1係合壁部126と当接することにより、壁裏側挟持片151の順方向のさらなる回動が規制されている。この壁裏側挟持片151と第1係合壁部126との係合により、壁裏側挟持片151が第1の突出方向に突出した挟持可能位置に維持され得る。
【0045】
そして、壁裏側挟持片151は、図12の仮想線に示すように、挟持可能位置において、操作ビス155の順方向の回転操作に従って、第1案内通路127に沿って前後方向に螺進および螺退可能である。図11(a)および図11(b)に示すように、第1案内通路127は、後壁111から離隔した位置で、周壁112および隔壁部117によって三方から包囲されている。これにより、壁裏側挟持片151が、突出した状態で前後方向に螺進および螺退するときに連れ回りにより回動することが規制される。
【0046】
図13(a)、(b)は、固定体本体110の第2組付部131に壁裏側挟持装置150を組み付けた状態の固定体100の部分拡大斜視図であって、壁裏側挟持片151が退避位置にある状態、および、壁裏側挟持片151が挟持可能位置にある状態をそれぞれ示している。図14(a)、(b)は、固定体100の正面図および平面図を示し、実線が壁裏側挟持片151が挟持可能位置にある状態を示し、仮想線が壁裏側挟持片151が退避位置にある状態を示している。図15(a)~(c)は、固定体100の部分拡大A”-A”断面図、部分拡大B”-B”断面図、および部分拡大C”-C”断面図を示し、実線が壁裏側挟持片151が挟持可能位置にある状態を示し、仮想線が壁裏側挟持片151が退避位置にある状態を示している。図16は、固定体100のD”-D”断面図を示し、仮想線が壁裏側挟持片151が前側に螺進した状態を示している。
【0047】
図13図16に示すように、固定体100の各被固定部位の第2組付部131には、壁裏側挟持装置150が選択的に組み付けられている。この第2組付部131が選択された固定体100において、壁裏側挟持片151が固定体本体110に対して可動式に取り付けられているとともに、操作ビス155が第2前壁側軸孔132および第2後壁側軸孔133を介して固定体本体110に対して回転可能に取り付けられている。ここで、第2組付部131が選択された場合、周壁112の内外に回動する壁裏側挟持片151と干渉しないように、固定体本体110から第1係合壁部126が除去されている。この第1係合壁部126は、第1開口部125および第2開口部135の間で後壁111と周壁112とを連結する補強部であるが、これを除去することで、壁裏側挟持装置150を第1組付部121から第2組付部131へと組み替えて使用可能となる。そして、図13(a)および図14に示すように、壁裏側挟持片151が退避位置にある場合、正面視において、壁裏側挟持片151全体が周壁112外周面(輪郭)から突出しないように固定体本体110の内部空間(第2配置空間134)に収められている。他方、図13(b)および図14に示すように、壁裏側挟持片151が挟持可能位置にある場合、正面視において、2つの壁裏側挟持片151が、横幅方向に沿って互いに相反する方向に突出している。これら2つの壁裏側挟持片151の第2の突出方向は、対向する一対一組の器具取付部118,118の対向方向と同じである。つまり、第1組付部121が選択された場合の第1の突出方向と、第2組付部131が選択された場合の第2の突出方向とは互いに直交関係にある。
【0048】
図16に示すとおり、操作ビス155は、その軸部156が前壁113の前面側から第2前壁側軸孔132および第2後壁側軸孔133を貫通することで固定体本体110に回転可能に保持されている。操作ビス155の頭部157は、前面側から前壁113に当接し、壁表側から回転操作可能であるように前方に露出している。軸部156は、固定体本体110の第2案内通路137全体で前後方向に延伸している。そして、壁裏側挟持片151が軸部156に螺着することで固定体本体110に保持されている。壁裏側挟持片151は、操作ビス155と連れ回りすることにより、図13(a)の退避位置から図13(b)の挟持可能位置へと回動することが可能である。
【0049】
図15(c)に示すとおり、壁裏側挟持片151は、基端部152のネジ孔153を介して軸部156に螺合している。ここで、基端部152は、後壁111に当接し、軸部156上の壁材に対して最も後退した位置にある。そして、図14および図15で仮想線で示された退避位置の壁裏側挟持片151は、周壁112の外周(正面視輪郭)から突出することなく、第2配置空間134内に配置されている。図15(b)および図15(c)に示すように、基端部152および押圧部154に回動方向(時計回り方向)に対向する周壁112の部位には、第2開口部135が形成されている。第2開口部135は、壁裏側挟持片151が順方向(時計回り方向)に回動して周壁112を横切って移動することを許容する。一方で、壁裏側挟持片151は、図15(c)に示すように、押圧部154が周壁112内部の隔壁部117に当接することで、逆方向(反時計回り方向)に回動して周壁112のより内側に入り込むことが規制されている。
【0050】
また、図14および図15で実線で示された挟持可能位置の壁裏側挟持片151では、基端部152の一部と押圧部154とが、第2開口部135を介して周壁112の外周から突出している。ここで、壁裏側挟持片151が退避位置から挟持可能位置へと回動する際の固定体本体110外部の経路(移動軌跡)が第2移動経路138として定められた。図11および図15に示すように、第1移動経路128および第2移動経路138は異なる経路を画定し、かつ、互いに重合していない。つまり、第1組付部121が選択された場合の壁裏側挟持片151の第1移動経路128と、第2組付部131が選択された場合の壁裏側挟持片151の第2移動経路138とが重合しない。そして、図15(c)に示すとおり、挟持可能位置において、壁裏側挟持片151の基端部152が順方向に第2係合壁部136と当接することにより、壁裏側挟持片151の順方向のさらなる回動が規制されている。この壁裏側挟持片151と第2係合壁部136との係合により、壁裏側挟持片151が第2の突出方向に突出した挟持可能位置に維持され得る。
【0051】
そして、壁裏側挟持片151は、図16の仮想線に示すように、挟持可能位置において、操作ビス155の順方向の回転操作に従って、第2案内通路137に沿って前後方向に螺進および螺退可能である。図15(a)および図15(b)に示すように、第2案内通路137は、後壁111から離隔した位置で、周壁112および隔壁部117によって三方から包囲されている。これにより、壁裏側挟持片151が、突出した状態で前後方向に螺進および螺退するときに連れ回りにより回動することが規制される。
【0052】
次に、本実施形態の固定体100が壁孔13を介して壁材11に固定された設置構造について説明する。
【0053】
第1に、図17および図18を参照して、第1組付部121が選択された固定体100が、壁孔13が形成された壁材11に対して設置された第1設置構造10について説明する。図17(a)、(b)は、第1設置構造10の正面図および背面図である。図18は、そのG-G断面図である。ここで、第1設置構造10では、壁孔13の形状が周壁112の正面視外周形状とほぼ同じ矩形状を有し、また、配線配管材や壁裏の突起や柱などの障害物15が壁孔13の横幅方向の左右に隣接配置されているものとして例示される。
【0054】
図17(a)に示すように、固定体本体110の前壁113が、壁表側から壁孔13の周縁を被覆している。図17(b)に示すように、固定体100の第1の被固定部位(横幅方向の一端部分)および第2の被固定部位(横幅方向の他端部分)において、2つの壁裏側挟持片151が縦幅方向の相反する方向(つまり上下)にそれぞれ突出している。そして、図18に示すように、壁表側挟持部115が壁表側から壁材11の壁表面に当接しているとともに、各被固定部位において、壁裏側挟持片151が壁裏面に当接している。このとき、操作ビス155の軸部156と壁裏側挟持片151のネジ孔153との間のネジの締め付けトルクによって、壁材11が壁表側挟持部115および(相反する方向を向く)2つの壁裏側挟持片151によって安定的に挟持されている。その結果、固定体100が壁孔13を介して壁材11に対して固定されている。
【0055】
第2に、図19および図20を参照して、第2組付部131が選択された固定体100が、壁孔13が形成された壁材11に対して設置された第2設置構造10’について説明する。図19(a)、(b)は、第2設置構造10’の正面図および背面図である。図20は、そのH-H断面図である。ここで、第2設置構造10’では、壁孔13の形状が周壁112の正面視外周形状とほぼ同じ矩形状を有し、また、配線配管材や壁裏の突起や桟、胴縁などの障害物15が、壁孔13の縦幅方向の上下に隣接配置されているものとして例示される。
【0056】
図19(a)に示すように、固定体本体110の前壁113が、壁表側から壁孔13の周縁を被覆している。図19(b)に示すように、固定体100の第1の被固定部位(横幅方向の一端部分)および第2の被固定部位(横幅方向の他端部分)において、障害物15に干渉しないように、2つの壁裏側挟持片151が横幅方向の相反する方向(つまり左右)にそれぞれ突出している。そして、図20に示すように、壁表側挟持部115が壁表側から壁材11の壁表面に当接しているとともに、各被固定部位において、壁裏側挟持片151が壁裏面に当接している。このとき、操作ビス155の軸部156と壁裏側挟持片151のネジ孔153との間のネジの締め付けトルクによって、壁材11が壁表側挟持部115および(相反する方向を向く)2つの壁裏側挟持片151によって安定的に挟持されている。その結果、第2組付部131が選択された場合も同様に、固定体100が壁孔13を介して壁材11に対して固定されている。
【0057】
続いて、図21図24を参照して、第1設置構造10および第2設置構造10’を構築する方法について例示的に説明する。
【0058】
まず、第1組付部121が選択された場合、固定体100の各被固定部位について、壁裏側挟持装置150を第1組付部121に組み付けて壁裏側挟持片151を退避位置に配置する。図21に示すように、壁裏側挟持片151を壁材11に干渉させないように退避位置に維持しつつ、固定体100を壁表側から壁孔13へと挿入する。なお、第1組付部121のかわりに第2組付部131が選択された場合も同様に、壁裏側挟持装置150を第2組付部131の退避位置に維持しつつ、固定体100を壁表側から壁孔13へと挿入する。なお、壁裏側挟持片151の連れ回りによる第2移動経路138上に障害物15がある場合(図17(b)参照)、第1組付部121が好適に選択される。ただし、壁裏に障害物がない場合には、第1組付部121および第2組付部131のいずれが選択されてもよい。
【0059】
次いで、固定体本体110の壁表側挟持部115を壁表面に宛がい、固定体100をその場に保持する。固定体100の一方の被固定部位に対して、操作ビス155の頭部157に工具(ドライバー)の先端を合わせて、操作ビス155を壁表側から順方向(時計回り方向)に回転操作する。このドライバーによる回転操作によって、操作ビス155および壁裏側挟持片151が連れ回って、壁裏側挟持片151が第1開口部125を介して周壁112の内側から外側へと回動する。壁裏側挟持片151は、壁裏空間で周壁112から突出するとともに、第1係合壁部126によって係止され、挟持可能位置に維持される。さらに操作ビス155を回転操作すると、壁裏側挟持片151の順方向の回動が規制された状態で、軸部156がネジ孔153内で順方向に回転して螺進する。図22に示すように、この回転操作により、壁裏側挟持片151が、第1案内通路127に沿って軸部156上を壁材11に向かって進行する。そして、操作ビス155を強い力で締め付けることにより、壁表側挟持部115と壁裏側挟持片151とで壁材11を挟持し、固定体100の被固定部位を壁材11に対して固定することができる。他方の被固定部位についても同様の作業を行うことにより、固定体100を壁材11に対してしっかりと固定し、第1設置構造10を構築することができる。
【0060】
次に、例えば、第1組付部121が選択された固定体100を壁孔13に挿入した後、壁裏側挟持片151の連れ回りによる第1移動経路128上に障害物15(図19(b)参照)があった場合に、壁裏側挟持装置150を第1組付部121から第2組付部131へと組み替える工程について説明する。すなわち、第1組付部121が選択された際、障害物15により壁裏側挟持片151を挟持可能位置に移動できない場合、その移動経路を変更して障害物15を避けるべく、第1組付部121から第2組付部131への組み替えが必要となる。固定体100を壁孔13から引き抜いた後、組み替え作業が行われてもよいが、本実施形態の固定体100では、固定体100を壁孔13に挿入した状態で組み替え作業を行うことが可能である。例えば、固定体100が壁孔13に嵌まってその引き抜きが困難である場合や、固定体100が壁材11に仮固定されている場合等に、この工程が効果的に実施され得る。
【0061】
まず、固定体100の各被固定部位に対して、ユーザーが工具によって操作ビス155を逆方向に回転操作することにより、操作ビス155の軸部156を壁裏側挟持片151のネジ孔153から螺脱させる。壁裏側挟持片151および操作ビス155を分離した上で、操作ビス155を第1前壁側軸孔122から引き抜く。そして、図23に示すように、壁裏側挟持片151の基端部152を後壁111前面に沿ってスライドさせつつ、第1配置空間124から第2配置空間134へと移動させる。このとき、壁裏側挟持片151が前面開口部114を介して壁表側に露出しているので、ユーザーは指で壁裏側挟持片151をスライド操作することが可能である。また、第1開口部125および第2開口部135によって周壁112の内側空間が開放されていることから、周壁112と壁裏側挟持片151とを干渉させることなく、壁裏側挟持片151を周壁112の外側にはみ出させて移動させることができる。その結果、壁裏側挟持片151のスライド移動が容易となる。次いで、操作ビス155を壁表から第2前壁側軸孔132に挿入し、壁裏側挟持片151のネジ孔153に螺合し、そして、軸部156先端を第2後壁側軸孔133に挿入することで、壁裏側挟持装置150を第2組付部131に組み付けることができる。さらに、組み替えの前後のいずれかにおいて、壁表から前面開口部114を介して第1係合壁部126を工具で折り取ることによって、壁裏側挟持片151が第2開口部135を介して周壁112の内外に回動可能となる。
【0062】
第2組付部131に組み替えた後、固定体100の一方の被固定部位に対して、操作ビス155の頭部157に工具(ドライバー)の先端を合わせて、操作ビス155を壁表側から順方向(時計回り方向)に回転操作する。このドライバーによる回転操作によって、操作ビス155および壁裏側挟持片151が連れ回って、壁裏側挟持片151が第2開口部135を介して周壁112の内側から外側へと回動する。壁裏側挟持片151は、壁裏空間で周壁112から突出するとともに、第2係合壁部136によって係止され、挟持可能位置に維持される。さらに操作ビス155を回転操作すると、壁裏側挟持片151の順方向の回動が規制された状態で、軸部156がネジ孔153内で順方向に回転して螺進する。図24に示すように、この回転操作により、壁裏側挟持片151が、第2案内通路137に沿って軸部156上を壁材11に向かって進行する。そして、操作ビス155を強い力で締め付けることにより、壁表側挟持部115と壁裏側挟持片151とで壁材11を挟持し、固定体100の被固定部位を壁材11に対して固定することができる。他方の被固定部位についても同様の作業を行うことにより、固定体100を壁材11に対してしっかりと固定し、第2設置構造10’を構築することができる。
【0063】
以下、本発明に係る一実施形態の固定体100(および挟持機構)における作用効果について説明する。
【0064】
本実施形態の固定体100によれば、固定体本体110の第1組付部121に壁裏側挟持装置150(壁裏側挟持片151および操作ビス155)が選択的に組み付けられた場合、壁裏側挟持片151が操作ビス155との連れ回りにより第1移動経路128を通って退避位置から挟持可能位置へと移動する。他方、固定体本体110の第2組付部131に壁裏側挟持装置150が選択的に組み付けられた場合、壁裏側挟持片151が操作ビス155との連れ回りにより第2移動経路138を通って退避位置から挟持可能位置へと移動する。そして、第1移動経路128と第2移動経路138とが異なることから、固定体本体110を壁孔13に挿入して設置した際、第1移動経路128または第2移動経路138のいずれか一方の移動経路に障害物15があったとしても、障害物15への干渉を回避する他方の移動経路を確保するように第1組付部121または第2組付部131を選択して、壁裏側挟持片151を挟持可能位置へと確実に移動させることができる。このようにして挟持可能位置に配置された壁裏側挟持片151は、壁表側挟持部115とともに壁材11を挟持することで、壁孔13に挿入された固定体100を壁材11に対して固定することが可能である。すなわち、本実施形態の固定体100は、障害物15との干渉を回避するように壁裏側挟持片151の連れ回りによる移動経路を変更可能であり、壁材11に対してより確実に固定することを可能とするものである。
【0065】
本発明は、上記実施形態に限定されず、種々の実施形態および変形例を取り得る。以下、本発明の別実施形態および変形例を説明する。なお、各実施形態および変形例において、下二桁の符番が共通する構成要素は、説明がない限り、同一又は類似の特徴を有し、その説明を一部省略する。
【0066】
(1)本発明の固定体は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態では、固定体の被固定部位は、固定体本体の2箇所に設けられたが、本発明はこれに限定されず、被固定部位は適宜増減され得る。例えば、固定体は、ボックスの4隅に被固定部位を設け、4つの被固定部位に、挟持機構(第1組付部、第2組付部および壁裏側挟持装置)をそれぞれ形成したものであってもよい。あるいは、固定体の1箇所のみを被固定部位とし、そこに挟持機構が形成されてもよい。さらに、上記実施形態では、1つの被固定部位に第1組付部および第2組付部が(配置空間が部分的に重合するように)纏まって配置されているが、第1組付部および第2組付部が互いにばらばら(離間、独立して)配置されてもよい。
【0067】
(2)本発明の固定体は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態では、第1組付部が選択された場合の壁裏側挟持片の第1突出方向と、第2組付部が選択された場合の壁裏側挟持片の第2突出方向とが互いに直交するように構成されたが、本発明はこれに限定されない。例えば、図25に示すとおり、固定体200は、第1組付部221が選択された場合の壁裏側挟持片251の第1突出方向と、第2組付部231が選択された場合の壁裏側挟持片251の第2突出方向とが同じ向きとなるように構成されている。また、図25に示すように、第1移動経路228および第2移動経路238が部分的に重合してもよい。すなわち、当該形態の固定体200は、重合部分以外の第1移動経路228および第2移動経路238上に障害物がある場合、障害物との干渉を回避するように壁裏側挟持片251の連れ回りによる移動経路を変更可能であり、壁材に対してより確実に固定することを可能とするものである。
【0068】
(3)本発明の固定体は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態では、第2組付部が選択された場合、第1係合壁部が折り取られることが必要であったが、本発明はこれに限定されない。例えば、図26に示す固定体300のように、第1係合壁部326が第1組付部321の壁裏側挟持片351の回動を係止するとともに、第2組付部331の壁裏側挟持片351と当接しないように各構成要素が配置されてもよい。この場合、第1係合壁部326が折り取りされなくてもよい。
【0069】
(4)本発明の固定体および挟持機構は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態では、固定体および挟持機構は、壁裏側挟持片が退避位置から挟持可能位置へと移動した後に、壁材(壁表側挟持部)に向けて前進駆動されるように構成されたが、本発明はこれに限定されない。すなわち、固定体および挟持機構は、壁裏側挟持片の壁表側への引き寄せ途中に、その相対姿勢を変化させて退避位置から挟持可能位置へと移動するように構成されてもよい。例えば、第1および第2開口部が固定体本体の底壁から前壁側に離隔した位置に形成されることで、壁裏側挟持片が壁材(壁表側挟持部)に向けて前進を開始した後に、退避位置から挟持可能位置へと移動するように構成され得る。このような構成であっても本発明の同様の作用効果を発揮し得ることは言うまでもない。
【0070】
(5)本発明の固定体および挟持機構は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態では、固定体および挟持機構は、ユーザーが操作ビスを回転操作することにより、壁裏側挟持片が退避位置から挟持可能位置へと連れ回って移動し、かつ、壁裏側挟持片が壁材に向けて近接移動するように駆動されるが、本発明はこれに限定されず、操作ビス(ならびに、第1および第2前壁側軸孔、第1および第2後壁側軸孔)が固定体および挟持機構から省略されてもよい。例えば、ユーザーが壁裏側挟持片を手指で直接的または間接的に周壁の外側に押し出すことで退避位置から挟持可能位置へと移動経路に沿って移動させてもよい。また、壁表側挟持部と協働して壁材を挟持するように壁裏側挟持片を壁材に向けて移動させる壁裏側挟持片の前進駆動手段も同様に、操作ビス以外の駆動手段が採用されてもよい。例えば、駆動手段として、壁裏側挟持片を前方(壁材に向けて)付勢する付勢バネが壁裏側挟持片と固定体本体との間に設けられてもよい。または、ユーザーが壁裏側挟持片を摘まんで前進させ、壁裏側挟持片と固定体本体との間の摩擦抵抗や、壁裏側挟持片の後退を規制するラッチ機構によって、壁表側挟持部との壁材の挟持状態が形成されてもよい。さらに、器具取付部のビス孔と壁裏側挟持片のビス孔とが重なるように構成し、ユーザーが壁裏側挟持片を摘まんで前進させた後、器具の器具取付部への取付ビスによる固定とともに、当該取付ビスを用いて壁裏側挟持片を挟持状態に固定してもよい。すなわち、本発明では、操作ビスの代わりに、当業者にとって既知の機構が採用され得る。
【0071】
(6)本発明の固定体および挟持機構は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態では、挟持機構は、第1組付部、第2組付部および壁裏側挟持装置から構成されたが、本発明はこれに限定されない。すなわち、第1組付部および第2組付部に加えて、異なる箇所に第3組付部が追加されてもよい。
【0072】
(7)本発明の固定体および挟持機構は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態では、挟持機構は、退避位置において、壁裏側挟持片の全体が周壁の正面視輪郭の内側に収まるように構成されたが、本発明はこれに限定されない。すなわち、挟持機構は、壁表から壁孔を介して壁裏に通過可能であればよく、退避位置において、壁裏側挟持片の一部が周壁の正面視輪郭から突出していてもよい。さらに、上記実施形態では、第1組付部および第2組付部は、固定体本体の周壁の異なる面(または辺)に形成されたが、本発明はこれに限定されない。すなわち、第1組付部および第2組付部は、固定体本体の周壁の同一の面(または辺)に形成されてもよく、さらに、第1開口部および第2開口部が同一方向を向いて開口してもよい。
【0073】
(8)本発明の固定体は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態では、固定体は、全ての被固定部位で、同様の挟持機構が設けられ、同じ組付部が選択されるように説明されたが、本発明はこれに限定されない。すなわち、一方の被固定部位と、他方の被固定部位とにおいて、第1および第2組付部のうち異なる組付部がそれぞれ選択されてもよい。さらに、被固定部位ごとに、異なる形状特徴を有する挟持機構が設けられてもよい。
【0074】
(9)本発明の固定体は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態では、固定体は、壁裏に隠蔽されて配設される四角箱状の配線ボックスとして例示されたが、本発明は、上記構成に限定されるものではない。例えば、ボックスは丸型であってもよい。また、固定体は、壁裏に隠蔽されるものに限らない。さらに、固定体は、ボックスの形態に限らず、配線・配管材を取り付けるための配線・配管材取付具であったり、水栓器具を取り付ける継手などの配管用継手取付具であってもよい。また、固定体の壁表側挟持部は、壁孔の全周を覆うように壁面に当接する鍔状またはフランジ状に形成されたが、本発明はこれに限定されず、壁孔の周方向の一部で壁面に当接する任意の形状の突出片であってもよい。
【0075】
本発明は上述した実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限りにおいて種々の態様で実施しうるものである。
【符号の説明】
【0076】
10 第1設置構造
10’ 第2設置構造
11 壁材
13 壁孔
15 障害物
100 固定体
110 固定体本体
111 後壁
112 周壁
113 前壁
114 前面開口部
115 壁表側挟持部
117 隔壁部
118 器具取付部
121 第1組付部
122 第1前壁側軸孔
123 第1後壁側軸孔
124 第1配置空間
125 第1開口部
126 第1係合壁部
127 第1案内通路
128 第1移動経路
131 第2組付部
132 第2前壁側軸孔
133 第2後壁側軸孔
134 第2配置空間
135 第2開口部
136 第2係合壁部
137 第2案内通路
138 第2移動経路
150 壁裏側挟持装置
151 壁裏側挟持片
152 基端部
153 ネジ孔
154 押圧部
155 操作ビス
156 軸部
157 頭部
158 切り欠き部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26