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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035277
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】通信装置、及び帯域保証方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/44 20060101AFI20240307BHJP
   H04L 49/9005 20220101ALI20240307BHJP
【FI】
H04L12/44 B
H04L12/44 200
H04L49/9005
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139637
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細川 晋平
(72)【発明者】
【氏名】駒崎 直人
【テーマコード(参考)】
5K030
5K033
【Fターム(参考)】
5K030HC14
5K030KX11
5K030LC11
5K033CB06
5K033DB13
(57)【要約】
【課題】 優先度と帯域が異なる複数種類のサービスを適切に運用できるようにする。
【解決手段】 相対的に高優先で低帯域の第1サービスと、相対的に低優先で広帯域の第2サービスとを提供する通信装置であって、前記第1サービス用の第1キューと、前記第2サービス用の第2キューと第3キューがあって、それぞれのキューのサービス種別が異なっており、前記通信装置は、割当対象のキューとして、前記第1キュー、前記第2キュー及び前記第3を含む共用バッファと、前記サービス種別ごとに通信パケットを分類し、分類した前記通信パケットを対応するキューに入れるパケット分類部と、前記キューそれぞれから前記通信パケットを取り出して出力するスケジュール管理部と、前記第1キューを用いる前記通信パケットの帯域保証処理を行う制御部と、を備え、前記帯域保証処理は、前記通信パケットの輻輳の有無に応じて前記第2キューと前記第3キューのバッファ使用可能量を変化させる処理を含む。
【選択図】 図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対的に高優先で低帯域の第1サービスと、相対的に低優先で広帯域の第2サービスとを提供する通信装置であって、
前記第1サービス用の第1キューと、前記第2サービス用の第2キューと第3キューがあって、それぞれのキューのサービス種別が異なっており、
前記通信装置は、
割当対象のキューとして、前記第1キュー、前記第2キュー及び前記第3を含む共用バッファと、
前記サービス種別ごとに通信パケットを分類し、分類した前記通信パケットを対応するキューに入れるパケット分類部と、
前記キューそれぞれから前記通信パケットを取り出して出力するスケジュール管理部と、
前記第1キューを用いる前記通信パケットの帯域保証処理を行う制御部と、を備え、
前記帯域保証処理は、
前記通信パケットの輻輳の有無に応じて前記第2キューと前記第3キューのバッファ使用可能量を変化させる処理を含む、通信装置。
【請求項2】
前記帯域保証処理は、
前記通信パケットの輻輳が未発生又は解消した場合に、前記第2キューと前記第3キューのバッファ使用可能量を第1設定値にする処理と、
前記通信パケットの輻輳が発生した場合に、前記第2キューと前記第3キューのバッファ使用可能量を前記第1設定値よりも小さい第2設定値にする処理と、を含む請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記第1設定値は、
前記共用バッファの総容量から前記第1サービスのバッファ使用可能量を引いた減算値以下に設定され、
前記第2設定値は、
前記減算値を前記第2サービスの種別数で割った除算値以下に設定される、請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
SoCよりなる信号処理部を更に備え、
前記共用バッファ、前記パケット分類部、前記スケジュール管理部及び、前記制御部は、前記信号処理部に含まれる、請求項1に記載の通信装置。
【請求項5】
前記通信装置は、
PONシステムのONUであり、
前記通信パケットは、
上り方向の通信パケットである、請求項1に記載の通信装置。
【請求項6】
前記通信装置は、
PONシステムのONUのLAN側に接続されるHGWであり、
前記通信パケットは、
下り方向の通信パケットである、請求項1に記載の通信装置。
【請求項7】
前記第1サービスは、電話サービスを含み、
前記第2サービスは、インターネットサービス及び映像配信サービスを含む、請求項1に記載の通信装置。
【請求項8】
相対的に高優先で低帯域の第1サービス用の第1キューと、相対的に低優先で広帯域の第2サービス用の第2キュー及び第3キューが、共用バッファに割り当てられ、それぞれのキューのサービス種別が異なる通信装置において実行される帯域保証方法であって、
通信パケットの輻輳の有無を検知するステップと、
前記輻輳の有無の検知結果に応じて、前記第2キューと前記第3キューのバッファ使用可能量を変化させるステップと、を含む、帯域保証方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、通信装置、及び帯域保証方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、送信帯域が動的に割り当てられるPONを構成するONUにおいて、送信の優先度が低い通信について送信間隔を保証することにより、ONUの通信状態に関わらず低い優先度の通信を継続するようにした、帯域保証方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-53793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、専用バッファを設定できないICチップを採用する、ONUなどの通信装置において、相対的に高優先でかつ狭帯域の第1サービスと、相対的に低優先でかつ広帯域の複数種類の第2サービスとを、どのように運用すべきかについては想定されていない。
本開示は、優先度と帯域が異なる複数種類のサービスを適切に運用できる通信装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る装置は、相対的に高優先で低帯域の第1サービスと、相対的に低優先で広帯域の第2サービスとを提供する通信装置であって、前記第1サービス用の第1キューと、前記第2サービス用の第2キューと第3キューがあって、それぞれのキューのサービス種別が異なっており、前記通信装置は、割当対象のキューとして、前記第1キュー、前記第2キュー及び前記第3を含む共用バッファと、前記サービス種別ごとに通信パケットを分類し、分類した前記通信パケットを対応するキューに入れるパケット分類部と、前記キューそれぞれから前記通信パケットを取り出して出力するスケジュール管理部と、前記第1キューを用いる前記通信パケットの帯域保証処理を行う制御部と、を備え、前記帯域保証処理は、前記通信パケットの輻輳の有無に応じて前記第2キューと前記第3キューのバッファ使用可能量を変化させる処理を含む。
【0006】
本開示の一態様に係る方法は、相対的に高優先で低帯域の第1サービス用の第1キューと、相対的に低優先で広帯域の第2サービス用の第2キュー及び第3キューが、共用バッファに割り当てられ、それぞれキューのサービス種別が異なる通信装置において実行される帯域保証方法であって、通信パケットの輻輳の有無を検知するステップと、前記輻輳の有無の検知結果に応じて、前記第2キューと前記第3キューのバッファ使用可能量を変化させるステップと、を含む。
【0007】
本開示は、上記のような特徴的な構成を備えるシステム及び装置として実現できるだけでなく、かかる特徴的な構成をコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現することができる。また、本開示は、システム及び装置の一部又は全部を実現する半導体集積回路として実現することができる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、優先度と帯域が異なる複数種類のサービスを適切に運用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、光通信システムの構成例を示す接続図である。
図2図2は、ONUの内部構成例を示すブロック図である。
図3図3は、上り方向の帯域保証の第1実装例を示すブロック図である。
図4図4は、上り方向の帯域保証の第2実装例を示すブロック図である。
図5図5は、第2実装例の問題点を示す説明図である。
図6図6は、第2実装例の問題点の解決方法の一例を示す説明図である。
図7図7は、フレーム処理部の構成例を示すブロック図である。
図8図8は、制御部による帯域保証処理の一例を示すフローチャートである。
図9図9は、光通信システムの変形例を示す接続図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<本開示の実施形態の概要>
以下、本開示の実施形態の概要を列記して説明する。
(1) 本実施形態の通信装置は、相対的に高優先で低帯域の第1サービスと、相対的に低優先で広帯域の第2サービスとを提供する通信装置であって、前記第1サービス用の第1キューと、前記第2サービス用の第2キューと第3キューがあって、それぞれのキューのサービス種別が異なっており、前記通信装置は、割当対象のキューとして、前記第1キュー、前記第2キュー及び前記第3を含む共用バッファと、前記サービス種別ごとに通信パケットを分類し、分類した前記通信パケットを対応するキューに入れるパケット分類部と、前記キューそれぞれから前記通信パケットを取り出して出力するスケジュール管理部と、前記第1キューを用いる前記通信パケットの帯域保証処理を行う制御部と、を備え、前記帯域保証処理は、前記通信パケットの輻輳の有無に応じて前記第2キューと前記第3キューのバッファ使用可能量を変化させる処理を含む。
【0011】
本実施形態の通信装置によれば、制御部が行う帯域保証処理に、通信パケットの輻輳の有無に応じて第2キューと第3キューのバッファ使用可能量を変化させる処理が含まれるので、例えば、輻輳有りの場合には第2キューと第3キューのバッファ使用可能量を低減することにより、相対的に高優先である第1サービスの帯域を保証できる。従って、優先度と帯域が異なる複数種類のサービスを適切に運用することができる。
【0012】
(2) 本実施形態の通信装置において、前記帯域保証処理は、前記通信パケットの輻輳が未発生又は解消した場合に、前記前記第2キューと前記第3キューのバッファ使用可能量を第1設定値にする処理と、前記通信パケットの輻輳が発生した場合に、前記前記第2キューと前記第3キューのバッファ使用可能量を前記第1設定値よりも小さい第2設定値にする処理と、を含んでもよい。
【0013】
この場合、第2設定値が第1設定値よりも小さい設定値であるから、通信パケットの輻輳が発生した場合に、相対的に高優先でかつ狭帯域の第1サービスの帯域を保証することができる。
【0014】
(3) 本実施形態の通信装置において、前記第1設定値は、前記共用バッファの総容量から前記第1サービスのバッファ使用可能量を引いた減算値以下に設定され、前記第2設定値は、前記減算値を前記第2サービスの種別数で割った除算値以下に設定されることにしてもよい。
【0015】
その理由は、第1設定値を上記の減算値以下に設定すれば、複数種類の第2サービスのそれぞれにできるだけ最大の帯域を割り当てることができるからである。
また、第2設定値を上記の除算値に設定すれば、第1サービスの通信が確保されるように、複数種類の第2サービスの帯域を絞ることができるからである。
【0016】
(4) 本実施形態の通信装置において、SoCよりなる信号処理部を更に備える場合には、前記共用バッファ、前記パケット分類部、前記スケジュール管理部及び、前記制御部は、前記信号処理部に含まれることにしてもよい。
【0017】
この場合、SoCよりなる信号処理部が、帯域保証処理を実行する制御部を含むので、該当制御部を他の集積回路のメモリに格納する場合に比べて、帯域保証処理を適切に実装することができる。
【0018】
(5) 本実施形態の通信装置において、前記通信装置は、PONシステムのONUであり、前記通信パケットは、上り方向の通信パケットであってもよい。
この場合、ONUが送信する上り方向の通信パケットについて、優先度と帯域が異なる複数種類のサービスを適切に運用することができる。
【0019】
(6) 本実施形態の通信装置において、前記通信装置は、PONシステムのONUのLAN側に接続されるHGWであり、前記通信パケットは、下り方向の通信パケットであってもよい。
この場合、HGWが送信する下り方向の通信パケットについて、優先度と帯域が異なる複数種類のサービスを適切に運用することができる。
【0020】
(7) 本実施形態の通信装置において、前記第1サービスは、電話サービスを含み、
前記第2サービスは、インターネットサービス及び映像配信サービスを含んでいてもよい。
この場合、高優先の電話サービスと低優先のインターネットサービス及び映像配信サービスとを適切に運用することができる。
【0021】
(8) 本実施形態の帯域保証方法は、相対的に高優先で低帯域の第1サービス用の第1キューと、相対的に低優先で広帯域の第2サービス用の第2キュー及び第3キューが、共用バッファに割り当てられ、それぞれのキューのサービス種別が異なる通信装置において実行される帯域保証方法であって、通信パケットの輻輳の有無を検知するステップと、前記輻輳の有無の検知結果に応じて、前記第2キューと前記第3キューのバッファ使用可能量を変化させるステップと、を含む。
【0022】
本実施形態の帯域保証方法によれば、輻輳の有無の検知結果に応じて、第2キューと第3キューのバッファ使用可能量を変化させるので、例えば、輻輳有りの場合には第2キューと第3キューのバッファ使用可能量を低減することにより、相対的に高優先である第1サービスの帯域を保証できる。従って、優先度と帯域が異なる複数種類のサービスを適切に運用することができる。
【0023】
<本開示の実施形態の詳細>
以下、図面を参照して、本開示の実施形態の詳細を説明する。なお、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0024】
〔システムの全体構成〕
図1は、本実施形態に係る光通信システム100の構成例を示す接続図である。
本実施形態の光通信システム100は、例えば、IEEE802.3ah又はIEEE802.3avなどの通信プロトコルに準拠する10G-EPON(10 Gigabit Ethernet(登録商標) Passive Optical Network)システムである。もっとも、光通信システム100は、伝送レートが10G以外のPONシステムであってもよい。
【0025】
光通信システム100は、OLT1と、複数のONU2と、光回線3とを備える。光回線3は、幹線である光ファイバ31と、光カプラ32と、光カプラ32から分岐する支線である光ファイバ33とを含む。
OLT1は、通信事業者の局側に設置される光回線終端装置である。OLT1の光信号の入出力端には、光ファイバ31の一端が光学的に接続される。光ファイバ31の他端は、光カプラ32に光学的に接続される。
【0026】
各々の光ファイバ33の一端は、光カプラ32に光学的に接続される。各々の光ファイバ33の他端は、ONU2の光信号の入出力端にそれぞれに光学的に接続される。
ONU2は、通信事業者の光回線サービスに加入する、ユーザ側の建物(たとえば加入者宅)に設置される光回線終端装置である。ONU2は、本開示の帯域保証が実装される「通信装置」の一種である。ONU2には、LAN(Local Area Network)ケーブルを介してホームゲートウェイ(HGW)4が接続される。
【0027】
HGW4は、IP(Internet Protocol)アドレスなどに基づくルーティング機能を有する通信装置である。HGW4には、ユーザ端末5、セットトップボックス(STB)6、及びIP通信を利用する電話機7などが接続される。
ユーザ端末5は、LANケーブル又は無線LANなどによりHGW4と接続される。STB6は、LANケーブルによりHGW4と接続される。電話機7は、専用の電話ケーブルによりHGW4と接続される。
【0028】
ユーザ端末5としては、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)、スマートフォン又はタブレットPCなどの無線LAN(Local Area Network)機器、インターネット通信が可能な家電製品であるIoT(Internet of Things)機器、及び、オンラインゲームに特化したゲーム用端末などが想定される。
図2に破線で示すように、ONU2が複数のUNIポート(例えばLANポート)を有する場合は、ユーザ端末5及びSTB6などをONU2に接続してもよい。
【0029】
HGW4は、インターネットサービスプロバイダ(ISP)のアカウント情報に基づいて、IPoE(Internet Protocol over Ethernet)又はPPPoE(Point-to-Point Protocol over Ethernet)の通信方式にて接続を確立し、DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)クライアントとしてグローバルIPアドレスを取得する。
HGW4は、ユーザ端末5などの配下の通信端末にインターネット接続を提供する、各種のサーバ及びゲートウェイとしても機能する。
【0030】
具体的には、HGW4は、プライベートIPアドレスを発行するDHCPサーバ機能、WAN(Wide Area Network)側とLAN側でアドレス変換を行うるNAPT(Network Address Port Translation)機能、及び、ユーザ設定による所定のルールに従って不審アクセスを遮断するフィルタ及びファイアウォール機能などを有する。
【0031】
〔ONUの内部構成〕
図2は、ONU2の内部構成例を示すブロック図である。
図2に示すように、ONUは、筐体20と、筐体20内の回路基板(図示せず)に実装された複数の電子部品とを備える。
【0032】
複数の電子部品には、PON側(図2の左側)からユーザ側(図2の右側)に向かって順に、PON側送受信部21、管理制御部22、信号処理部23、及び複数のUNI(ユーザネットワークインターフェース)ポート24が含まれる。
PON側送受信部21は、光信号と電気信号を相互に変換する光トランシーバの機能を有する送受信部である。PON側送受信部21は、例えば、レーザダイオード、レーザドライバ、フォトダイオード、及びポストアンプなどを含む。
【0033】
レーザドライバは、信号処理部23から入力される所定の伝送レートの電気信号によりレーザダイオードを駆動する。レーザダイオードは、所定の伝送レートの電気信号を光信号に変換し、変換後の光信号を光ファイバ33に送出する。
フォトダイオードは、光ファイバ33から入力される所定の伝送レートの光信号を電気信号に変換し、変換後の電気信号をポストアンプに入力する。ポストアンプは、入力された電気信号を増幅して信号処理部23に出力する。
【0034】
管理制御部22は、例えばCPU(Central Processing Unit)及び揮発性のメモリなどを含む演算処理装置である。管理制御部22は、後述の信号処理部23とは別個の集積回路で構成される。管理制御部22は、FPGAなどを含んでいてもよい。
管理制御部22は、通信事業者の管理用装置(図示せず)と通信して、所定の設定情報を取得可能である。管理制御部22は、取得した設定情報に基づいて、QoS(Quality of Service)設定などの、信号処理部23に対する各種の設定を実行可能である。
【0035】
UNIポート24は、ユーザ側において電気信号を入出力するためのポートである。UN1ポート24には、例えばRJ-45コネクタ24A,24B,24Cが含まれる。UNIポート24には、無線LANの通信ポート24Dが含まれていてもよい。
図2では、UNIポート24が複数設けられているが、ONU2は、HGW4用のUNIポート24を1つだけ有する構成であってもよい。
【0036】
信号処理部23は、例えば1つのSoC(System on a Chip)により構成される電子回路である。信号処理部23には、複数の機能部25~28が構成される。
複数の機能部25~28は、例えばFPGA(Field-Programmable Gate Array)に対するコンフィギュレーションにより実現される。複数の機能部25~28は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)で構成されてもよいし、FPGA及びASICの双方で構成されてもよい。
【0037】
複数の機能部25~28には、フレーム処理部25、L2スイッチ26、複数のPHY部27、及び制御部28が含まれる。複数のPHY部27は、同じ数のUNIポート24A,24B,24C,24Dと一対一で対応している。
フレーム処理部25のPON側は、PON側送受信部21と電気的に接続される。フレーム処理部25のユーザ側は、L2スイッチ26のポートと電気的に接続される。
【0038】
フレーム処理部25は、PONに関する所定の通信プロトコルに則ってOLT1と制御通信を行うための、PONのMAC(Media Access Control)機能を有する。
例えば、OLT1は、MPCP(Multi-Point Control Protocol)に則った時分割多重と動的帯域割当(DBA)を実行する。従って、フレーム処理部25は、自身の上りバッファ(図2では省略)に蓄積されたデータ量を記したリクエストをOLT1に送信し、OLT1は、リクエストに含まれるデータ量に基づいてDBAを実行する。
【0039】
また、フレーム処理部25は、OLT1から受信するグラントで指定された時刻に、当該グラントで許可されたデータ量の通信パケットを上りバッファから取り出し、取り出した通信パケットをOLT1に送信する。
なお、フレーム処理部25は、イーサネットOAM(Operation, Administration, and Maintenance)フレーム(「イーサネット」は登録商標である。)などの所定の制御フレームを、OLT1との間で送受信することもできる。
【0040】
L2スイッチ26は、IPアドレスとMACアドレスの対応情報に基づいて通信パケットの出力先を決定する。
具体的には、L2スイッチ26は、上記の対応情報に従って、フレーム処理部25から入力される下り方向の通信パケット(以下、「下りパケット」ともいう。)を所定のPHY部27に出力し、各PHY部27から入力される上り方向の通信パケット(以下、「上りパケット」ともいう。)をフレーム処理部25に出力する。
【0041】
PHY部27は、L2スイッチ26から入力される所定の電気信号(下りパケット)を所定周波数の搬送信号に変換し、変換後の搬送信号をUNIポート24に出力する。
PHY部27は、UNIポート24から入力される搬送信号から所定の電気信号(上りパケット)を抽出し、抽出した電気信号をL2スイッチ26に出力する。
【0042】
制御部28は、ユーザが作成した所定のソフトウェアを実行するCPU及びメモリを含む機能部である。制御部28が実行するソフトウェアには、例えば、後述の帯域保証処理(図8)を実現するためのコンピュータプログラム29が格納される。
具体的には、制御部28は、例えばSoC23の外部メモリ(図示せず)から帯域保証処理(図8)のためのプログラム29を読み出し、読み出したプログラム29を制御部28が実行することにより、帯域保証処理(図8)が実現される。なお、プログラム29は、SoC23の内部メモリに格納されていてもよい。
【0043】
〔帯域保証の実装例〕
図3は、フレーム処理部25における、上り方向の帯域保証の第1実装例を示すブロック図である。図4は、フレーム処理部25における、上り方向の帯域保証の第2実装例を示すブロック図である。
【0044】
図3における、バッファ容量のパラメータBC,DB,SBの定義は次の通りである。
「BC」:フレーム処理部25の上りバッファの総容量である。ここでは、BC=1024KB(Kilo Byte)であるとする。
「DB」:相対的に高優先に指定された「狭帯域サービス」の最大使用可能帯域(1Mbps)のデータ量を流すのに必要なバッファ容量である。具体的には、DB=32KBである。ここでは、狭帯域サービスは、例えば「電話」であるとする。
【0045】
「SB」:相対的に低優先に指定された「広帯域サービス」の最大使用可能帯域(10Gbps)のデータ量を流すのに必要なバッファ容量である。
具体的には、SB=992KBである。ここでは、広帯域サービスは、複数種類の指定が可能であり、複数種類の高帯域サービスは、2種類であり例えば「インターネット」と「映像配信」であるとする。
【0046】
図3及び図4に示すように、フレーム処理部25は、ユーザ側(図示右側)からPON側(図示左側)に向かって順に、UNI側ポート41、パケット分類部42、パケット処理部43、スケジュール管理部44、及びPON側ポート45を備える。
パケット処理部43は、複数のキュー43A,43B,43Cを含む。第1キュー43Aは、電話用であり高優先に設定される。第2キュー43Bは、インターネット用であり低優先に設定される。第3キュー43Cは、映像配信用であり低優先に設定される。
【0047】
UNI側ポート41に入力された上りパケットは、パケット分類部42においてサービスごとに分類される。
すなわち、パケット分類部42には、上りパケットのヘッダ情報などから通信サービスの種別を判定し、判定結果に応じて上りパケットをいずれかのキュー43A,43B,43Cに入れる。
【0048】
スケジュール管理部44は、OLT1のグラントで許可されたデータ量の範囲内で、各キュー43A,43B,43Cから上りフレームを取り出し、取り出した上りフレームをPON側ポート45から送出する。
図3の第1実装例では、狭帯域サービス(電話)に専用バッファが割り当てられ、その他の広帯域サービスに共用バッファが割り当てられるので、広帯域サービスの通信の輻輳は狭帯域サービスに影響しない。従って、狭帯域サービスの帯域が保証される。
【0049】
これに対して、図4の第2実装例では、信号処理部23(SoC)を構成するICチップに専用バッファを設定できず、狭帯域サービス(電話)と複数の広帯域サービス(インターネット及び映像配信)がすべて共用バッファを用いる仕様となっている。
図4の第2実装例においては、広帯域サービスが1種類の場合に倣い、各サービスのバッファ使用可能量を以下のように設定するのが一般的である。
【0050】
1)狭帯域サービス(電話)のバッファ使用可能量を、DB(=32KB)とする。
2)高帯域サービス(インターネット)のバッファ使用可能量を、(BC-DB)=SB(=992KB)とする。
3)高帯域サービス(映像配信)のバッファ使用可能量を、(BC-DB)=SB(=992KB)とする。
【0051】
図5は、第2実装例の問題点を示す説明図である。
図5に示すように、ここでは、PON側の上り帯域が100Mbpsに制限された状態で、ユーザ側から800Mbpsの上り方向のデータ通信が発生したとする。
この場合、2種類の広帯域サービスのバッファ使用可能量が、いずれも最大帯域相当量SB(=992KB)であると、2種類の広帯域サービスがいずれもバッファをSBまで使用しようと試みる。
【0052】
また、上りトラフィックに含まれる広帯域サービスのパケットは、狭帯域サービスのパケットに比べて圧倒的に多い(約10の5乗倍)。従って、広帯域サービスがバッファの総容量BCを互いに分け合い、狭帯域サービス(電話)のパケットが廃棄され得る。
従って、広帯域サービスが2種類である場合に、2種類のサービスのバッファ使用可能量をいずれもSBに設定すると、狭帯域サービス(電話)の帯域を保証できない場合がある。なお、広帯域サービスが3種類以上の場合も同様の問題が生じる。
【0053】
図6は、第2実装例の問題点の解決方法の一例を示す説明図である。
図6に示すように、本実施形態では、上りトラフィックにおける輻輳の存否に応じて、複数の高帯域サービス(インターネット及び映像配信)のバッファ使用可能量を変更することにより、狭帯域サービス(電話)に必要なバッファ量を確保する。
具体的には、輻輳の検出結果が下記の結果Aの場合は、下記の設定処理Xを行い。輻輳の検出結果が下記の結果Bの場合は、下記の設定処理Yを行う。
【0054】
結果A:輻輳を未検出(又は輻輳が解消)
設定処理X:
狭帯域サービス(電話)のバッファ使用可能量
→DB(=32KB)とする。
広帯域サービス(インターネット)のバッファ使用可能量
→BC-DB=SB(=992KB)とする。
広帯域サービス(映像配信)のバッファ使用可能量サービス
→BC-DB=SB(=992KB)とする。
【0055】
結果B:輻輳を検出
設定処理Y
狭帯域サービス(電話)のバッファ使用可能量
→DB(=32KB)とする。
広帯域サービス(インターネット)のバッファ使用可能量
→(BC-DB)/2=SB/2(=496KB)とする。
広帯域サービス(映像配信)のバッファ使用可能量
→(BC-DB)/2=SB/2(=496KB)とする。
【0056】
上記の解決方法によれば、輻輳を検出した場合(結果B)に2つの広帯域サービスのバッファ使用可能量が半分になるので、上りトラフィックの輻輳時においては、低優先の広帯域サービスの上りパケットが廃棄され、狭帯域サービス(電話)の上りパケットは廃棄されなくなる。このため、狭帯域サービスの帯域が保証される。
従って、信号処理部23(SoC)が専用バッファを割り当てできないICチップであっても、1つの狭帯域サービスと2つの広帯域サービスを適切に運用可能となる。
【0057】
もっとも、結果Aの場合の設定処理Xにおいて、広帯域サービスのバッファ使用可能量は、必ずしも最大値SBとする必要はなく最大値SB以下であってもよい。
また、結果Bの場合の設定処理Yにおいて、広帯域サービスのバッファ使用可能量の最大値Bmaxの算出式は、次の式(1)の通りである。この場合、広帯域サービスのバッファ使用可能量は、最大値Bmax以下の所定値に設定すればよい。
Bmax=(BC-DB)/N ……(1)
ただし、N:広帯域サービスの種別数
【0058】
〔フレーム処理部の構成例〕
図7は、図6の解決方法を実現するための、フレーム処理部25の構成例を示すブロック図である。
図7に示すように、フレーム処理部25は、上述の各部41~45に加えて、カウンタ部46とバッファ割当部47を有する。
【0059】
カウンタ部46は、各キュー43A,43B,43Cのデータ蓄積量、及び各キュー43A,43B,43Cにおける廃棄パケットのカウント値などを監視する。カウンタ部46は、監視対象のうち、廃棄パケットのカウント値を制御部28に出力する。
バッファ割当部47は、制御部28から入力される下記の変更指令の種別に従って、第2キュー43Bと第3キュー43Cのバッファ使用可能量を変更する。
【0060】
制御部28は、所定の制御周期(例えば1m秒)ごとに、カウンタ部46から入力される廃棄パケットのカウント値に応じて、バッファ割当部47に指示する変更指令の種別を決定する。変更指令には、第1指令と第2指令が含まれる。
第1指令は、第2キュー43Bと第3キュー43Cのバッファ使用可能量を「SB」とする指令である。第2指令は、第2キュー43Bと第3キュー43Cの使用可能量を「SB/2」とする指令である。
【0061】
〔制御部による帯域保証処理〕
図8は、制御部28による帯域保証処理の一例を示すフローチャートである。
図8に示すように、制御部28は、カウンタ部46から廃棄パケットのカウント値を取得する(ステップST11)。
次に、制御部28は、前回取得時と今回取得時を比較して、廃棄パケットのカウント値が計上されているか否かを判定する(ステップST12)。
【0062】
ステップST12の判定結果が否定的である場合は、制御部28は、処理をステップST11の前に戻す。
ステップST12の判定結果が肯定的である場合は、制御部28は、バッファ割当部47に、「第2指令」を出力する(ステップST13)。これにより、バッファ割当部47は、第2キュー43Bと第3キュー43Cのバッファ使用可能量を「SB/2」(輻輳時の設定値)に変更する。
【0063】
次に、制御部28は、カウンタ部46から廃棄パケットのカウント値を取得する(ステップST14)。
次に、制御部28は、前回取得時と今回取得時を比較して、廃棄パケットのカウント値が計上されているか否かを判定する(ステップST15)。
【0064】
ステップST15の判定結果が否定的である場合は、制御部28は、処理をステップST14の前に戻す。
ステップST15の判定結果が肯定的である場合は、制御部28は、バッファ割当部47に、「第1指令」を出力する(ステップST16)。これにより、バッファ割当部47は、第2キュー43Bと第3キュー43Cのバッファ使用可能量を「SB」(通常時の設定値)に復元させる。
【0065】
〔光通信システムの変形例〕
図9は、光通信システム100の変形例を示す接続図である。
図9の光通信システム100では、下り方向の伝送レートが10GであるPONシステムのONU2のユーザ側に、下り方向の伝送レートが1GであるHGW4が接続される構成である。
【0066】
HGW4には、上述の帯域保証処理(図8)を下りパケットについて実行可能な、下りパケット用のフレーム処理部25が搭載されている。
従って、変形例に係るHGW4によれば、下りパケットに関して、高優先の狭帯域サービス(電話)の帯域を保証しつつ、低優先の複数の広帯域サービス(インターネット及び映像配信)を適切に運用することができる。このように、本開示の帯域保証が実装される「通信装置」はHGW4であってもよい。
【0067】
図9の変形例によれば、ONU2とHGW4の双方の局面において、SoC23を用いて、電話サービス、インターネットサービスと映像配信サービスなどを同時に提供できる点で有益である。
【0068】
〔広帯域サービスがN種類である場合のキューの定義〕
上述の実施形態(変形例を含む)において、広帯域サービスの種別は、インターネットと映像配信だけに限らず、オンラインゲーム、Web会議及びオンライン学習などの特定のインターネットサービスの利用が想定される場合には、想定するサービスごとに個別にキューを設定してもよい。従って、広帯域サービスの種別数Nは、必ずしも2種類に限らず3種類以上であってもよい。
【0069】
この場合、相対的に高優先でかつ狭帯域のサービス(例えば「電話サービス」)を「第1サービス」と呼び、相対的に低優先でかつ広帯域のN種類のサービス(例えば「電話サービス」以外のN種類のサービス)を「第2サービス」と呼ぶこととすれば、各キューの定義は、例えば次のように一般化できる。
第1キュー:相対的に高優先でかつ狭帯域の第1サービス用のキュー
第nキュー:相対的に低優先でかつ広帯域のN種類の第2サービスのうち、n番目のサービス用のキュー(ただし、nは2≦n≦N+1を満たす自然数列であり、Nは2以上の自然数である。)
【0070】
〔その他の変形例〕
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0071】
1 OLT(光回線終端装置)
2 ONU(光回線終端装置:通信装置)
3 光回線
4 HGW(ホームゲートウェイ:通信装置)
5 ユーザ端末
6 STB(セットトップボックス)
7 電話機
21 PON側送受信部
20 筐体
22 管理制御部
23 信号処理部
24 UNIポート
24A,24B,24C,24D UNIポート
25 フレーム処理部
26 L2スイッチ
27 PHY部
28 制御部
29 コンピュータプログラム
31 光ファイバ
32 光カプラ
33 光ファイバ
41 UNI側ポート
42 パケット分類部
43 パケット処理部
43A 第1キュー(高優先:狭帯域サービス用)
43B 第2キュー(低優先:広帯域サービス用)
43C 第3キュー(低優先:広帯域サービス用)
44 スケジュール管理部
45 PON側ポート
46 カウンタ部
47 バッファ割当部
100 光通信システム
図1
図2
図3
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図8
図9