(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035285
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】ハンマドリル
(51)【国際特許分類】
B25D 16/00 20060101AFI20240307BHJP
【FI】
B25D16/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139651
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003052
【氏名又は名称】弁理士法人勇智国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 一
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 慶
【テーマコード(参考)】
2D058
【Fターム(参考)】
2D058AA14
2D058CA06
2D058DA45
(57)【要約】
【課題】モータ駆動用のスイッチの操作部材のロック構造に関する改善を提供する。
【解決手段】ハンマドリルは、先端工具が直線状にのみ駆動される第1モードと、先端工具が少なくとも回転駆動される第2モードとを含む複数のモードで選択的に動作する。ハンマドリルは、スイッチ、モータ、スイッチ操作部材、ロック部材、及びモード検出装置を備える。スイッチ操作部材は、本体と、突出位置と退避位置との間で移動可能な突起とを備える。本体には、モード検出装置の検出結果に基づいて動作するソレノイドが収容されている。ロック部材は、ロック解除位置と、突出位置にある突起に当接して、スイッチ操作部材をオン位置で保持するロック位置との間で移動可能である。突起は、ソレノイドのプランジャに一体化されており、現在のモードが第1モードの場合、突出位置に配置され、現在のモードが第2モードの場合、退避位置に配置される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端工具が駆動軸に沿って直線状にのみ駆動される第1モードと、前記先端工具が少なくとも前記駆動軸周りに回転駆動される第2モードとを含む複数のモードで選択的に動作するように構成されたハンマドリルであって、
スイッチと、
前記スイッチがオン状態のときに駆動されるように構成されたモータと、
常時には前記スイッチをオフ状態とするオフ位置で保持され、使用者の手動操作に応じて前記スイッチを前記オン状態とするオン位置に移動可能な本体と、前記本体から突出する突出位置と、前記本体から突出しない、又は、前記本体からの突出量が前記突出位置よりも小さい退避位置との間で移動可能な突起とを備えたスイッチ操作部材と、
前記スイッチ操作部材の前記オン位置と前記オフ位置との間の移動を許容するロック解除位置と、前記突出位置にある前記突起に当接して、前記スイッチ操作部材を前記オン位置で保持するロック位置との間で、前記使用者の手動操作に応じて移動可能なロック部材と、
前記ハンマドリルの現在のモードを電気的に検出するように構成されたモード検出装置とを備え、
前記スイッチ操作部材の前記本体には、前記モード検出装置の検出結果に基づいて動作するように構成されたソレノイドが収容されており、
前記突起は、前記ソレノイドのプランジャに一体化されており、前記現在のモードが前記第1モードである場合には前記突出位置に配置され、前記現在のモードが前記第2モードである場合には前記退避位置に配置されるように構成されていることを特徴とするハンマドリル。
【請求項2】
請求項1に記載のハンマドリルであって、
前記ソレノイドは、プル型ソレノイドであって、
前記突起は、前記ソレノイドがオフ状態のときには前記突出位置にあり、前記ソレノイドがオン状態とされるのに応じて前記退避位置に移動するように構成されていることを特徴とするハンマドリル。
【請求項3】
請求項2に記載のハンマドリルであって、
前記突起が前記突出位置にあることを検出するように構成された突出検出装置を更に備え、
前記モータは、前記現在のモードが前記第2モードであるときに前記突出検出装置によって前記突起が前記突出位置にあることが検出された場合には、駆動が禁止されるように構成されていることを特徴とするハンマドリル。
【請求項4】
請求項3に記載のハンマドリルであって、
前記突起の前記本体からの突出端には、磁石が配置されており、
前記突出検出装置は、前記突起が前記突出位置にあるときに前記磁石を検出するように構成されていることを特徴とするハンマドリル。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1つに記載のハンマドリルであって、
前記突起は、前記スイッチ操作部材の前記本体の移動方向と交差する方向に移動可能であることを特徴とするハンマドリル。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1つに記載のハンマドリルであって、
前記突起は、前記ロック部材の移動方向と交差する方向に移動可能であることを特徴とするハンマドリル。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のハンマドリルであって、
前記駆動軸は、前記ハンマドリルの前後方向を規定し、
前記駆動軸に直交する上下方向に延在する把持部を更に備え、
前記スイッチ操作部材の前記本体は、前記オフ位置と、前記オフ位置より後方の前記オン位置との間で実質的に前記前後方向に移動可能に前記把持部に支持されており、
前記突起は、前記スイッチ操作部材の上端部において、実質的に前記上下方向に移動可能であり、
前記ロック部材は、前記ロック位置において、前記突出位置に配置された前記突起の前側領域に当接し、前記スイッチ操作部材の前記オン位置から前記オフ位置への移動を妨げるように構成されていることを特徴とするハンマドリル。
【請求項8】
請求項7に記載のハンマドリルであって、
前記ロック部材は、前記前後方向及び前記上下方向に直交する左右方向に移動可能であることを特徴とするハンマドリル。
【請求項9】
請求項1~8の何れか1つに記載のハンマドリルであって、
前記駆動軸は、前記ハンマドリルの前後方向を規定し、
前記駆動軸に直交する上下方向に延在する把持部を更に備え、
前記スイッチは、前記把持部の内部に配置されており、
前記スイッチ操作部材は、前記オフ位置と、前記オフ位置より後方の前記オン位置との間で移動可能に前記把持部に支持されており
前記ソレノイドは、前記前後方向において、前記スイッチよりも前方にあることを特徴とするハンマドリル。
【請求項10】
請求項1~9の何れか1つに記載のハンマドリルであって、
前記モータを少なくとも収容する工具本体と、
把持部を含むハンドルとを更に備え、
前記スイッチ操作部材と前記ロック部材とは、前記ハンドルに支持され、
前記工具本体と前記ハンドルとは、少なくとも1つの弾性部材を介して連結されていることを特徴とするハンマドリル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ハンマドリルに関する。
【背景技術】
【0002】
ハンマドリルは、駆動軸に沿って先端工具を直線状にのみ駆動するモードと、先端工具を少なくとも駆動軸周りに回転駆動するモードとを有する。駆動軸に沿って先端工具を直線状にのみ駆動するモードでは、一般的に、ハツリ作業やケレン作業が行われる。かかる作業中に使用者が操作部材の押圧操作を継続する煩わしさを解消するために、スイッチの操作部材をオン位置で保持するロック構造が知られている。例えば、特許文献1に開示されているハンマドリルは、モードに応じて作動するアクチュエータ要素と、アクチュエータ要素によって移動されるロック要素とを含むロックユニットを備える。ロック要素は、スイッチの操作部材に設けられたガイド要素の係合凹部に係合することで、操作部材をオン位置で保持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
。
特許文献1のハンマドリルでは、把持部内の限られたスペースに複雑なロック構造が配置されている。よって、このロック構造には改善の余地がある。
【0005】
上述の状況に鑑み、本開示は、モータ駆動用のスイッチの操作部材のロック構造に関する改善を提供することを、非限定的な1つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の非限定的な1つの態様によれば、先端工具が駆動軸に沿って直線状にのみ駆動される第1モードと、先端工具が少なくとも駆動軸周りに回転駆動される第2モードとを含む複数のモードで選択的に動作するように構成されたハンマドリルが提供される。なお、ここでいう第2モードは、先端工具が回転駆動されるだけのモードであってもよいし、先端工具が回転駆動されるのと同時に直線状に駆動されるモードであってもよい。
【0007】
ハンマドリルは、スイッチと、モータと、スイッチ操作部材と、ロック部材と、モード検出装置とを備える。モータは、スイッチがオン状態のときに駆動されるように構成されている。スイッチ操作部材は、本体と、突起とを備える。本体は、常時にはオフ位置で保持され、使用者の手動操作に応じてオン位置に移動するように構成されている。本体は、オフ位置ではスイッチをオフ状態とし、オン位置ではスイッチをオン状態とするように構成されている。突起は、突出位置と退避位置との間で移動可能である。突起は、突出位置では本体から突出する。突起は、退避位置では本体から突出しない。あるいは、退避位置にあるときの本体からの突起の突出量は、突出位置にあるときの突出量よりも小さい。ロック部材は、ロック解除位置とロック位置との間で、使用者の手動操作に応じて移動可能である。ロック部材は、ロック解除位置では、スイッチ操作部材のオン位置とオフ位置との間の移動を許容するように構成されている。ロック部材は、ロック位置では、突出位置にある突起に当接して、スイッチ操作部材をオン位置で保持する(オフ位置への移動を妨げる)ように構成されている。モード検出装置は、ハンマドリルの現在のモードを電気的に検出するように構成されている。
【0008】
スイッチ操作部材の本体には、モード検出装置の検出結果に基づいて動作するように構成されたソレノイドが収容されている。なお、ソレノイドは、コイルに電流を流すことで発生する磁界を利用して、電気的エネルギを、直線運動の機械的エネルギに転換するように構成された周知の電気部品であって、アクチュエータ、リニアアクチュエータとも称される。突起は、ソレノイドのプランジャに一体化されている。突起は、現在のモードが第1モードである場合には突出位置に配置され、現在のモードが第2モードである場合には退避位置に配置されるように構成されている。
【0009】
本態様のハンマドリルでは、スイッチ操作部材の本体に、ソレノイドが収容されている。スイッチ操作部材の突起は、ソレノイドのプランジャに一体化されているため、ソレノイドの動作に応じて突出位置と退避位置との間で移動する。ソレノイドはモード検出装置の検出結果、つまり、現在のモードに基づいて動作し、第1モードではスイッチ操作部材をオン位置で保持可能とする一方、第2モードではスイッチ操作部材をオン位置で保持不能とする。このように、本態様によれば、スイッチ操作部材の本体の内部がソレノイドの収容空間として有効活用され、モードに応じて動作可能なコンパクトなロック構造が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】スイッチ操作部材がオフ位置にあり、突起が突出位置にあり、ロック部材がロック解除位置にある状態のハンマドリルの断面図である。
【
図4】
図3に対応する断面図であって、突起が退避位置にある状態を示す。
【
図5】
図3に対応する断面図であって、スイッチ操作部材がオン位置にある状態を示す。
【
図6】
図2に対応する断面図であって、スイッチ操作部材がオン位置にある状態を示す。
【
図7】
図2に対応する断面図であって、スイッチ操作部材がオン位置にあり、ロック部材がロック位置にある状態を示す。
【
図8】
図3に対応する断面図であって、スイッチ操作部材がオン位置にあり、ロック部材がロック位置にある状態を示す。
【
図9】
図3に対応する断面図であって、スイッチ操作部材がオン位置にあり、突起が退避位置にある状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の非限定的な一実施形態において、ソレノイドは、プル型ソレノイドであってもよい。突起は、ソレノイドがオフ状態のときには突出位置にあり、ソレノイドがオン状態とされるのに応じて退避位置に移動するように構成されていてもよい。この実施形態によれば、ロック部材が突出位置にある突起に当接してスイッチ操作部材をオン位置で保持するときには、ソレノイドはオフ状態である。また、ソレノイドがオン状態のときには、突起は退避位置にある。このように、ソレノイドのプランジャは、突起の移動のみを担えばよく、スイッチ操作部材をオン位置で保持するための余分な負荷を必要としないため、ソレノイドの耐久性を向上することができる。
【0012】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、ハンマドリルは、突起が突出位置にあることを検出するように構成された突出検出装置を更に備えてもよい。モータは、現在のモードが第2モードであるときに突出検出装置によって突起が突出位置にあることが検出された場合には、駆動が禁止されるように構成されていてもよい。なお、駆動を禁止するとは、具体的には、例えば、駆動を停止すること、及び、駆動を開始しないことである。この実施形態によれば、先端工具が回転駆動される第2モードにおいて、何らかの原因でソレノイドが動作せず、スイッチ操作部材をオン位置で保持可能な状態となったとしても、モータの駆動が禁止される。よって、ハンマドリルの安全性が向上する。
【0013】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、突起の本体からの突出端には、磁石が配置されていてもよい。突出検出装置は、突起が突出位置にあるときに磁石を検出するように構成されていてもよい。突出検出装置は、例えば、磁界検出式のセンサ(例えば、ホールセンサ)を備えてもよい。この実施形態によれば、合理的な構成の突出検出装置が実現される。
【0014】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、突起は、スイッチ操作部材の本体の移動方向と交差する方向に移動可能であってもよい。この実施形態によれば、突起が本体と同じ方向に移動可能な場合に比べ、本体の移動方向における大型化を回避することができる。
【0015】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、突起は、ロック部材の移動方向と交差する方向に移動可能であってもよい。この実施形態によれば、突起がロック部材と同じ方向に移動可能な場合に比べ、ロック部材の移動方向における大型化を回避することができる。
【0016】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、駆動軸は、ハンマドリルの前後方向を規定してもよい。ハンマドリルは、駆動軸に直交する上下方向に延在する把持部を更に備えてもよい。スイッチ操作部材の本体は、オフ位置と、オフ位置より後方のオン位置との間で実質的に前後方向に移動可能に把持部に支持されていてもよい。突起は、スイッチ操作部材の上端部において、実質的に上下方向に移動可能であってもよい。ロック部材は、ロック位置において、突出位置に配置された突起の前側領域に当接し、スイッチ操作部材のオン位置からオフ位置への移動を妨げるように構成されていてもよい。この実施形態によれば、スイッチ操作部材をオン位置で保持可能な簡易で合理的な構成が実現される。
【0017】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、ロック部材は、前後方向及び上下方向に直交する左右方向に移動可能であってもよい。この実施形態によれば、スイッチ操作部材とロック部材の移動方向、つまり、操作方向が異なるため、使用者が何れか一方の部材を操作するときに、他方の部材を誤って操作してしまうのを防止することができる。
【0018】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、駆動軸は、ハンマドリルの前後方向を規定してもよい。ハンマドリルは、駆動軸に直交する上下方向に延在する把持部を更に備えてもよい。スイッチは、把持部の内部に配置されていてもよい。スイッチ操作部材は、オフ位置と、オフ位置より後方のオン位置との間で移動可能に前記把持部に支持されていてもよい。ソレノイドは、前後方向において、スイッチよりも前方にあってもよい。この実施形態によれば、把持部内の空間とスイッチ操作部材内の空間を利用して、スイッチとソレノイドとを、互いに隣接した位置に合理的に配置可能である。
【0019】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、ハンマドリルは、モータを少なくとも収容する工具本体と、把持部を含むハンドルとを更に備えてもよい。スイッチ操作部材とロック部材とは、ハンドルに支持されていてもよい。工具本体とハンドルとは、少なくとも1つの弾性部材を介して連結されていてもよい。この実施形態によれば、工具本体の振動が把持部へ伝達されるのを抑制することができる。
【0020】
以下、図面を参照して、本開示の代表的且つ非限定的な実施形態について、具体的に説明する。
【0021】
<第1実施形態>
以下、
図1~
図9を参照して、第1実施形態に係るハンマドリル1Aについて説明する。まず、ハンマドリル1Aの概略構成について説明する。ハンマドリル1Aは、打撃動作及び回転動作を行うことが可能な電動工具である。打撃動作は、ツールホルダ30に取り外し可能に保持された先端工具300を打撃し、ツールホルダ30の長軸(駆動軸DX)に沿って直線状に駆動する動作である。回転動作は、先端工具300を駆動軸DX周りに回転駆動する動作である。
【0022】
図1に示すように、ハンマドリル1Aは、工具本体10と、工具本体10に連結されたハンドル15とを備える。
【0023】
工具本体10は、本体ハウジングとも称されうる。本実施形態の工具本体10は、駆動機構収容部11と、モータ収容部13とを含む。駆動機構収容部11は、主に、ツールホルダ30と、駆動機構3とを収容する部分であって、駆動軸DXに沿って延在している。ツールホルダ30は、駆動機構収容部11の長軸方向における一端部内に配置されている。モータ収容部13は、主に、モータ21を収容する部分であって、駆動機構収容部11の一端部から、駆動軸DXに交差する(詳細には直交する)方向に突出している。つまり、工具本体10は、全体としてはL字状に形成されている。
【0024】
ハンドル15は、全体としてはU字状の中空部材であって、使用者によって把持される把持部16と、第1連結部17と、第2連結部18とを含む。把持部16は、駆動軸DXに交差する方向(詳細には、実質的に直交する方向)に延在している。第1連結部17は、把持部16の長軸方向の一端部と駆動機構収容部11とを連結する部分である。第2連結部18は、把持部16の長軸方向の他端部とモータ収容部13とを連結する部分である。把持部16には、使用者によって押圧操作されるスイッチ操作部材71が設けられている。把持部16内には、スイッチ75が収容されている。スイッチ操作部材71の押圧操作に応じてスイッチ75がオンとされると、モータ21の駆動が開始され、駆動機構3によって、先端工具300が往復動される、及び/又は、回転駆動される。
【0025】
以下、ハンマドリル1Aの詳細構成について説明する。なお、以下の説明では、便宜上、駆動軸DXの延在方向をハンマドリル1Aの前後方向と規定する。前後方向において、ツールホルダ30の先端側(先端工具300が挿入される側)をハンマドリル1Aの前側と規定し、反対側を後側と規定する。また、駆動軸DXに直交し、把持部16の延在方向に対応する方向を、ハンマドリル1Aの上下方向と規定する。上下方向において、第1連結部17の側を上側と規定し、反対側(第2連結部18の側)を下側と規定する。更に、前後方向及び上下方向に直交する方向を、左右方向と規定する。
【0026】
まず、工具本体10(モータ収容部13及び駆動機構収容部11)内に配置されている要素(構成)について、順に説明する。
【0027】
図1に示すように、モータ収容部13には、モータ21と、コントローラ20とが収容されている。
【0028】
本実施形態のモータ21は、ブラシモータである。モータ21は、電源コード29を介して外部の交流電源から供給された電力により駆動される。本実施形態では、モータ21は、モータシャフト215の回転軸RXが駆動軸DXに交差する(より詳細には直交する)ように配置されている。
【0029】
コントローラ20は、モータ収容部13内で、モータ21の後側に配置されている。コントローラ20は、ハンマドリル1Aの動作を制御するように構成された制御装置である。詳細な図示は省略するが、本実施形態のコントローラ20は、回路基板と、回路基板に搭載された制御回路とを備える。コントローラ20によるハンマドリル1Aの動作制御については後述する。
【0030】
図1に示すように、駆動機構収容部11には、ツールホルダ30と、駆動機構3と、モード切替機構51と、モード検出装置6とが収容されている。
【0031】
ツールホルダ30は、長軸を有する長尺の筒状部材である。ツールホルダ30は、先端工具300の一部を取り外し可能に受け入れ、先端工具300を、長軸の延在方向に直線状に摺動可能、且つ、ツールホルダ30に対して回転不能に保持するように構成されている。また、ツールホルダ30は、長軸周りに回転可能に工具本体10(駆動機構収容部11)に支持されている。よって、先端工具300は、ツールホルダ30と一体的に長軸周りに回転可能である。このように、ツールホルダ30の長軸は、先端工具300の駆動軸DXを規定する。
【0032】
駆動機構3は、モータ21(モータシャフト215)に動作可能に連結されており、モータ21の動力によって駆動される。本実施形態の駆動機構3は、打撃動作用の運動変換機構31及び打撃要素33と、回転動作用の回転伝達機構37とを含む。
【0033】
運動変換機構31は、モータ21に動作可能に連結されており、モータシャフト215の回転運動を、先端工具300の駆動のための駆動軸DXに沿った直線運動(詳細には、ピストン315の直線運動)に変換するように構成されている。本実施形態では、運動変換機構31として、周知の構成を有するクランク機構が採用されている。
【0034】
簡単に説明すると、運動変換機構31は、クランクシャフト311と、連接ロッド313と、ピストン315とを含む。クランクシャフト311は、モータシャフト215に動作可能に連結されており、モータシャフト215によって回転される。クランクシャフト311は、偏心ピンを有する。連接ロッド313は、偏心ピンとピストン315とに動作可能に連結されている。ピストン315は、シリンダ32に収容されており、シリンダ32内を摺動可能である。シリンダ32は、ツールホルダ30と同軸状にツールホルダ30内に配置されている。ピストン315は、モータ21の駆動に応じて、シリンダ32内を、駆動軸DXに沿って往復動する。
【0035】
打撃要素33は、ピストン315の往復動に応じて直線状に移動して先端工具300を打撃することで、先端工具300を駆動軸DXに沿って直線状に駆動するように構成されている。本実施形態では、打撃要素33は、ストライカ34と、インパクトボルト35とを含む。ストライカ34は、シリンダ32内に摺動可能に配置されている。インパクトボルト35は、ストライカ34の前側で、ツールホルダ30内に摺動可能に配置されている。ストライカ34とピストン315との間には、空気室が形成されている。ピストン315が往復動されるのに応じて空気室内に生じる圧力変動により、ストライカ34も駆動軸DXに沿って往復動する。ストライカ34がインパクトボルト35に衝突すると、インパクトボルト35が運動エネルギを先端工具300に伝達する。
【0036】
回転伝達機構37は、モータシャフト215に動作可能に連結されており、モータシャフト215の回転を、ツールホルダ30に伝達するように構成されている。回転伝達機構37は、ギヤ減速機構である。簡単に説明すると、回転伝達機構37は、小ベベルギヤ372と、大ベベルギヤ376と、クラッチ機構374とを含む。
【0037】
小ベベルギヤ372は、モータシャフト215に減速ギヤを介して連結された中間シャフト371に設けられている。大ベベルギヤ376は、ツールホルダ30の周囲に配置されている。大ベベルギヤ376は、小ベベルギヤ372に噛合しており、モータシャフト215の回転に応じて回転される。
【0038】
クラッチ機構374は、ギヤスリーブ375と、ドライビングスリーブ378とを含む。ギヤスリーブ375は、ツールホルダ30の後端部の周囲に、ツールホルダ30に対して回転可能に支持されている。大ベベルギヤ376は、ギヤスリーブ375と一体的に設けられている。ドライビングスリーブ378は、ギヤスリーブ375の前側で、ツールホルダ30の外周にスプライン結合されており、ツールホルダ30に対して回転不能、且つ、前後方向に移動可能である。
【0039】
ドライビングスリーブ378の後端部がギヤスリーブ375の前端部と係合しているときには、クラッチ機構374は伝達状態にある。よって、モータ21が駆動されると、回転伝達機構37によって、ツールホルダ30、ひいてはツールホルダ30に保持された先端工具300が、駆動軸DX周りに回転駆動される。一方、ドライビングスリーブ378の後端部がギヤスリーブ375の前端部から前方に離間しているときには、クラッチ機構374は遮断状態にある。よって、ギヤスリーブ375からドライビングスリーブ378には回転が伝達されない。つまり、モータ21が駆動されても、ツールホルダ30及び先端工具300は、駆動軸DX周りに回転駆動されない。
【0040】
モード切替機構51は、ハンマドリル1Aのモード(動作モードともいう)を切り替えるように構成されている。より詳細には、本実施形態の駆動機構3は、打撃のみモードと回転打撃モードの2つのモードを有し、何れか一方のモードで選択的に動作するように構成されている。打撃のみモードでは、クラッチ機構374が遮断状態とされ、打撃動作のみが行われる。回転打撃モードでは、クラッチ機構374が伝達状態とされ、打撃動作と回転動作とが同時に行われる。モード切替機構51は、クラッチ機構374の状態を遮断状態と伝達状態との間で切り替えることで、ハンマドリル1A(駆動機構3)のモードを、打撃のみモードと回転打撃モードとの間で切り替えるように構成されている。
【0041】
より詳細には、モード切替機構51は、モード設定部材50と、クラッチ機構374のドライビングスリーブ378とに動作可能に連結されている。モード切替機構51は、モード設定部材50の移動に応じて、ドライビングスリーブ378を前後方向に移動させるように構成されている。
【0042】
モード設定部材50は、モードを設定(選択)する(打撃のみモードと回転打撃モードとの間で切り替える)ために、使用者によって手動操作される部材である。本実施形態のモード設定部材50は、スライドレバーであって、工具本体10の後端部に、左右方向に摺動可能に支持されている。モード設定部材50は、打撃のみモードに対応する第1位置と、回転打撃モードに対応する第2位置との間で移動可能である。
【0043】
本実施形態のモード切替機構51は、可動部材52と、運動変換機構53とを含む。可動部材52は、駆動機構3の運動変換機構31(クランク機構)の上方に配置されている。可動部材52は、複数の連結部材を介してドライビングスリーブ378に動作可能に連結されており、ツールホルダ30に対して前後方向に直線状に移動可能である。運動変換機構53は、モード設定部材50と可動部材52とに動作可能に連結されており、モード設定部材50の左右方向の直線運動を、可動部材52の前後方向の直線運動に変換するように構成されている。
【0044】
以上の構成により、可動部材52は、モード設定部材50が第2位置から第1位置に移動されるのに応じて(つまり、打撃のみモードの設定に応じて)前方へ移動する。これにより、可動部材52は、ドライビングスリーブ378を前方へ移動させ、クラッチ機構374を遮断状態に切り替える。また、可動部材52は、モード設定部材50が第1位置から第2位置に移動されるのに応じて(つまり、回転打撃モードの設定に応じて)後方へ移動する。これにより、可動部材52は、ドライビングスリーブ378を後方へ移動させ、クラッチ機構374を伝達状態に切り替える。
【0045】
モード検出装置6は、現在のモード(モード設定部材50により設定(選択)されているモード)を電気的に検出するように構成されている。
【0046】
より詳細には、
図2に示すように、モード検出装置6は、コントローラ20に夫々電気的に接続された第1スイッチ61と第2スイッチ62とを含む。本実施形態では、第1スイッチ61と第2スイッチ62とは、押し込み式のマイクロスイッチである。第1スイッチ61と第2スイッチ62とは、押圧に応じてオンとされ、コントローラ20に所定の信号(オン信号)を出力するように構成されている。
【0047】
本実施形態では、モード切替機構51の可動部材52が、モードに応じて第1スイッチ61及び第2スイッチ62の何れかを押圧する。より詳細には、可動部材52は、左方に延びる左アーム521と、右方に延びる右アーム522とを有する。第1スイッチ61は、左アーム521の前方に配置され、第2スイッチ62は、右アーム522の後方に配置されている。上述のように、可動部材52は、設定されたモードに応じて前後の位置が変化する。設定されたモードが打撃のみモードの場合、可動部材52(左アーム521)は第1スイッチ61を後方から押圧し、オンとする。設定されたモードが回転打撃モードの場合、可動部材52(右アーム522)は第2スイッチ62に前方から押圧し、オンとする。コントローラ20は、第1スイッチ61と第2スイッチ62のどちらがオン信号を出力しているかに基づき、現在のモードを認識することができる。
【0048】
以下、ハンドル15に配置されている要素(構成)について説明する。
【0049】
図3及び
図4に示すように、本実施形態では、ハンドル15には、主に、スイッチ操作部材71と、スイッチ75と、ロック部材8と、突出検出装置9とが配置されている。
【0050】
スイッチ操作部材71は、スイッチレバー又はトリガとも称される操作部材である。本実施形態のスイッチ操作部材71は、本体710と、突起72と、ソレノイド73とを備えている。
【0051】
本体710は、把持部16に沿って概ね上下方向に延びる長尺の中空部材である。本体710は、下端部に設定された回動軸周りに回動可能に把持部16に支持されている。回動軸は実質的に左右方向に延びており、本体710は、実質的に前後方向に移動可能である。本体710は、前壁部711と、左右の側壁部713と、上壁部715とを有する。なお、前壁部711は、把持部16の前壁部165に形成された開口を通じて把持部16の外部に露出している。
【0052】
突起72は、後述のロック部材8と協働し、スイッチ操作部材71をオン位置で保持するために設けられている。本実施形態では、突起72は、上壁部715の上面よりも上方に突出する突出位置(
図3に示す位置)と、上壁部715の上面から突出しない退避位置(
図4に示す位置)との間で移動可能に構成されている。より詳細には、突起72は、スイッチ操作部材71内に配置されたソレノイド73のプランジャ733と一体化されており、ソレノイド73のオン、オフの切替に応じて移動するように構成されている。
【0053】
ソレノイド73は、本体710の上部内に配置されている。ソレノイド73は、本体731と、プランジャ733と、付勢バネ735とを含む。なお本体731は、本体710に支持されたフレーム(ケース)と、フレームに収容されたコイルを含むが、図では、フレームとコイルとは簡略化されて一体的に図示されている。プランジャ733は、部分的にコイル内に配置され、軸方向に直線状に移動可能である。
【0054】
本実施形態のソレノイド73はプル型ソレノイドである。プランジャ733は、付勢バネ735によって、プランジャ733の先端部が本体731から突出する方向に付勢されている。これにより、ソレノイド73のオフ状態(非作動状態、通電されない初期状態)では、プランジャ733の先端部は本体731から突出している。ソレノイド73は、スイッチ操作部材71の長手方向(概ね上下方向)にプランジャ733の軸が延在し、プランジャ733の先端部が上方を向くように配置されている。スイッチ操作部材71の突起72は、プランジャ733の先端部と、先端部に取り付けられたキャップ734とによって構成されている。なお、突起72は、左右方向において、ハンドル15の実質的な中心に配置されている。
【0055】
ソレノイド73がオフ状態にあるとき、
図3に示すように、突起72は、上壁部715に形成された開口716を通じて上壁部715の上面から突出し、突出位置で保持されている。一方、ソレノイド73がオンとされると(通電されると)、
図4に示すように、プランジャ733が本体731内に引き込まれる方向(下方)に移動し、通電状態にある間、突起72は退避位置で保持される。ソレノイド73への通電が停止されると、付勢バネ735の付勢力により、突起72は突出位置に復帰する。ソレノイド73は、コントローラ20(
図1参照)に電気的に接続されており、コントローラ20がソレノイド73への通電を制御する。
【0056】
より詳細には、コントローラ20は、モード検出装置6(
図2参照)による検出結果(つまり、現在のモード)に応じて、ソレノイド73の通電を制御する。第1スイッチ61からオン信号が出力されており、現在のモードが打撃のみモードである間は、コントローラ20は、ソレノイド73に通電しない。よって、ソレノイド73はオフ状態(初期状態)で維持され、突起72は突出位置で保持される。一方、第2スイッチ62からオン信号が出力されており、現在のモードが回転打撃モードである間は、コントローラ20は、ソレノイド73に通電する。よって、ソレノイド73はオン状態で維持され、突起72は退避位置で保持される。
【0057】
スイッチ75は、把持部16の内部(詳細には、スイッチ操作部材71の真後ろ)に配置されている。スイッチ75は、本体751と、本体751から前方へ突出するように付勢されたプランジャ753とを備える。
【0058】
プランジャ753は、ソレノイド73よりも下方で、スイッチ操作部材71の前壁部711に後方から当接し、スイッチ操作部材71を前方へ付勢している。このため、スイッチ操作部材71は、後方への押圧力が加えられない初期状態では、回動範囲内の最前方位置(
図3に示す位置)で保持されている。このとき、スイッチ75(本体751)はオフ状態である。よって、以下では、スイッチ操作部材71の最前方位置を、オフ位置ともいう。
【0059】
一方、
図5及び
図6に示すように、使用者が、スイッチ操作部材71を押圧して後方へ移動させると、プランジャ753が本体751内に押し込まれる。スイッチ操作部材71が所定位置に配置されるのに応じて、スイッチ75(本体751)がオンとされる。スイッチ操作部材71が回動範囲内において所定位置と最後方位置の間にある間は、スイッチ75はオン状態で維持される。よって、以下では、上述の所定位置と最後方位置の間の任意のスイッチ操作部材71の位置(例えば
図5に示す位置)を、オン位置ともいう。
【0060】
スイッチ75(本体751)は、コントローラ20に電気的に接続されており、オンとされるのに応じて、コントローラ20に所定の信号(オン信号)を出力するように構成されている。コントローラ20は、基本的には、スイッチ75からのオン信号を認識すると、モータ21の駆動を開始する。
【0061】
図2及び
図3に示すように、ロック部材8は、ハンドル15に、左右方向に移動可能に支持されている。より詳細には、ロック部材8は、長尺状の本体81を含む。ハンドル15の第1連結部17の左右の側壁部171には、夫々、開口172が形成されている。本体81は、開口172に挿通された状態で、側壁部171によって支持されており、左右方向に摺動可能である。本体81の左端部811及び右端部812は、開口172から外部に露出している。使用者は、左端部811又は右端部812を指で押すことで、ロック部材8を左右方向に移動させることができる。
【0062】
また、ロック部材8は、本体81の下端部から下方へ突出する突起83を有する。突起83の下端は、スイッチ操作部材71がオフ位置とオン位置の間のどの位置にあるときにも、上壁部715の上面より上方にある。また、スイッチ操作部材71の突起72が突出位置にあるときには、ロック部材8の突起83の下端は、突起72の上端よりも下方にある。突起83は、本体81の左右方向の中心よりも右側に配置されている。但し、突起83は、本体81の左右方向の中心よりも左側に配置されていてもよい。
【0063】
本実施形態のロック部材8には、ロック解除位置とロック位置とが設定されている。
【0064】
ロック解除位置は、左右方向において、突起83がスイッチ操作部材71の突起72の移動経路と干渉しない位置として設定されている。上述のように、スイッチ操作部材71の突起72はハンドル15の左右方向の中心にある。そこで、本実施形態では、
図2及び
図3に示すように、ロック部材8のロック解除位置は、ロック部材8の左右方向の中心が、ハンドル15の左右方向の中心と実質的に一致する位置として設定されている。ロック部材8がロック解除位置にあるとき、ロック部材8の突起83は、スイッチ操作部材71の突起72よりも右側に配置される。よって、ロック部材8は、突起72が突出位置にあっても、スイッチ操作部材71が、オフ位置(
図2、
図3参照)とオン位置(
図5、
図6参照)との間で移動するのを許容する。また、突起72が突出位置にあるときには、突起72は、突起83に左方から当接することで、ロック部材8がロック解除位置からロック位置へ移動するのを妨げる。
【0065】
ロック位置は、左右方向において、突起83が、スイッチ操作部材71の突起72のオン位置からオフ位置への移動経路上に配置される位置として設定されている。具体的には、ロック位置は、
図7及び
図8に示すように、突起83が、ハンドル15の左右方向の中心と実質的に一致する位置として設定されている。ロック位置は、ロック部材8の左右方向の中心がハンドル15の左右方向の中心から左方にずれた位置ともいえる。ロック部材8がロック位置にあり、突起72が突出位置にあるときには、突起83は、オン位置にあるスイッチ操作部材71の突起72に前方から当接することで、スイッチ操作部材71がオフ位置へ移動するのを妨げる(オン位置で保持する)。
【0066】
また、
図3に示すように、ハンドル15には、ロック部材8をロック解除位置又はロック位置で保持するように構成された保持部材86が配置されている。より詳細には、保持部材86は、板バネであって、第1連結部17内でロック部材8の上方に配置されている。詳細な図示は省略するが、保持部材86は、後方に突出する凸部を有する。一方、ロック部材8は、保持部材86の後方で本体81から上方に突出するバネ受け部85を有する。バネ受け部85は、ロック部材8がロック解除位置にあるときと、ロック位置にあるときに、夫々、保持部材86の凸部に係合する2つの凹部を有する。保持部材86は、何れか一方の凹部に係合することで、ロック部材8を、ロック解除位置又はロック位置で保持する。
【0067】
上述のように、スイッチ操作部材71の突起72は、現在のモードが打撃のみモードの場合は突出位置で保持され、現在のモードが回転打撃モードの場合は退避位置で保持されている。よって、ロック部材8は、打撃のみモードが設定されている場合にのみ、スイッチ操作部材71をオン位置で保持することができる。
【0068】
突出検出装置9は、スイッチ操作部材71の突起72が突出位置にあることを検出するために設けられている。より詳細には、
図3及び
図8に示すように、本実施形態の突出検出装置9は、基板91と、基板91に搭載され、磁石を検出可能なホールセンサ93とを含む。基板91は、ロック部材8に固定されている。より詳細には、ロック部材8は、本体81から後方に突出する延出部89を有する。延出部89は、突起83よりも後方、且つ、上方に配置されている。基板91は、ホールセンサ93が下方を向くように延出部89に取り付けられている。
【0069】
本実施形態では、ホールセンサ93の検出対象である磁石95は、スイッチ操作部材71の突起72の突出端(キャップ734)に取り付けられている。そこで、ホールセンサ93の位置は、ロック部材8がロック位置に配置されたときに、ホールセンサ93が、実質的にハンドル15の左右方向の中心に配置されるように設定されている。スイッチ操作部材71がオン位置にあり、突起72が突出位置にあり、且つ、ロック部材8がロック位置にあるときにのみ、磁石95はホールセンサ93の検出範囲内に位置し、ホールセンサ93は、磁石95を検出する。
【0070】
このように、突出検出装置9は、突起72に取付けられた磁石95を検出することで、オン位置にあるスイッチ操作部材71の突起72が突出位置にあることを検出する。突出検出装置9は、コントローラ20に電気的に接続されており、磁石95の検出に応じて、コントローラ20に所定の信号(オン信号)を出力するように構成されている。詳細は後述するが、突出検出装置9による検出結果は、モータ21の制御に利用される。
【0071】
以下、ハンマドリル1Aの動作(特に、コントローラ20(制御回路)による制御)について説明する。
【0072】
使用者はまず、実際に行われる加工作業に応じて適宜モード設定部材50を移動させ、ハンマドリル1Aのモードを設定する。
【0073】
ハンマドリル1Aのモードが打撃のみモードの場合、コントローラ20は、モード検出装置6の第1スイッチ61からのオン信号を認識するため、ソレノイド73に通電しない。よって、
図3に示すように、突起72は突出位置で保持されている。
【0074】
図5に示すように、使用者が把持部16と共にスイッチ操作部材71を握り、スイッチ操作部材71を押圧してオン位置まで後方に移動させると、スイッチ75がオンとされる。コントローラ20は、第1スイッチ61がオン状態であり、スイッチ75がオン状態である間、モータ21を駆動する。
図7及び
図8に示すように、スイッチ操作部材71がオン位置にある状態で、使用者がロック部材8をロック解除位置からロック位置へ移動させると、スイッチ操作部材71はオン位置で保持される。よって、使用者がスイッチ操作部材71を押圧し続けなくても、コントローラ20はモータ21の駆動を継続する。
【0075】
使用者がロック部材8をロック解除位置へ戻し、スイッチ操作部材71の押圧も解除すると、スイッチ操作部材71はオフ位置へ戻る。スイッチ75がオフとされるのに応じて、コントローラ20は、モータ21の駆動を停止する。
【0076】
ハンマドリル1Aのモードが回転打撃モードの場合、コントローラ20は、モード検出装置6の第2スイッチ62からのオン信号を認識し、ソレノイド73をオン状態とする。よって、
図4に示すように、突起72は、突出位置から退避位置に移動され、保持される。
【0077】
図9に示すように、使用者がスイッチ操作部材71を押圧してオン位置まで後方に移動させると、スイッチ75がオンとされる。コントローラ20は、第2スイッチ62がオン状態である場合、スイッチ75がオンとされるのに応じて、モータ21の駆動を開始する。なお、モータ21の駆動中に使用者がロック部材8をロック位置に移動させても、突起72が退避位置にあるため、ロック部材8はスイッチ操作部材71をロックできない。使用者がスイッチ操作部材71の押圧を解除し、スイッチ75がオフとされるのに応じて、コントローラ20は、モータ21の駆動を停止する。
【0078】
また、回転打撃モードでは、コントローラ20は、モータ21の駆動中、突出検出装置9からオン信号が出力されているか否かを監視する。上述のように、突出検出装置9がオン信号を出力するのは、スイッチ操作部材71がオン位置にあり、突起72が突出位置にあり、且つ、ロック部材8がロック位置にあるときである(
図8参照)。
【0079】
回転打撃モードでは、突起72は退避位置に配置される前提であるが、ソレノイド73が何らかの理由で作動せず、突起72が突出位置に配置されたままとなる可能性がある。この状態で、使用者がスイッチ操作部材71を押圧操作し、ロック部材8をロック位置へ移動させると、スイッチ操作部材71がオン位置で保持され、先端工具300の回転動作が継続される。回転動作中には、先端工具300が不意にロックされ、工具本体10が過度に回転する可能性があるため、スイッチ操作部材71をオン位置で保持することは好ましくない。そこで、本実施形態では、コントローラ20は、モータ21の駆動中に突出検出装置9からのオン信号を認識した場合、直ちにモータ21の駆動を停止する。これにより、先端工具300がロックされたとしても、工具本体10が過度に回転することが回避されるため、安全性が向上する。
【0080】
以上に説明したように、本実施形態のハンマドリル1Aでは、ロック部材8の突起83がスイッチ操作部材71の突起72に当接することで、スイッチ操作部材71をオン位置で保持可能である。突起72は、ソレノイド73のプランジャ733に一体化されているため、ソレノイド73の動作に応じて突出位置と退避位置との間で移動する。スイッチ75が把持部16内に配置される一方、ソレノイド73は、スイッチ操作部材71の本体710に収容されている。つまり、本実施形態では、把持部16ではなく、スイッチ操作部材71の本体710の内部が、モードに応じて突起72を突出位置と退避位置との間で移動させるソレノイド73の収容空間として有効活用されている。よって、モードに応じて動作可能なコンパクトなロック構造が実現されている。
【0081】
特に、本実施形態では、ロック部材8の突起83が、突出位置にあるスイッチ操作部材71の突起72の前側領域に当接することで、スイッチ操作部材71をオン位置で保持する。よって、使用者は、スイッチ操作部材71を、突起72が突起83よりも後方に配置される任意の位置まで後方に移動させれば、ロック部材8をロック位置に移動し、スイッチ操作部材71をオン位置で保持させることができる。よって、突起72と突起83の厳密な位置合わせが不要であるため、凹部と凸部との係合によりスイッチ操作部材71をロックする構造に比べ、利便性が高い。
【0082】
また、本実施形態では、ソレノイド73に、プル型ソレノイドが採用されている。このため、突出位置にある突起72にロック部材8が当接し、スイッチ操作部材71をオン位置で保持するときには、ソレノイド73はオフ状態である。また、ソレノイド73がオン状態のときには、突起72は退避位置にある。このように、本実施形態では、ソレノイド73のプランジャ733は、突起72の移動のみを担えばよく、オン状態において、スイッチ操作部材71をオン位置で保持するための余分な負荷を必要としない。よって、プッシュ型ソレノイドが採用される場合に比べ、ソレノイド73の耐久性を向上することができる。
【0083】
<第2実施形態>
以下、
図10及び
図11を参照して、第2実施形態に係るハンマドリル1Bについて説明する。なお、第2実施形態のハンマドリル1Bは、工具本体10とハンドル15との連結態様において第1実施形態のハンマドリル1Aとは異なるが、その他の構成は、ハンマドリル1Aと実質的に同一である。よって、以下では、ハンマドリル1Aと実質的に同一の構成については、同一の符号を付して説明を簡略化又は省略する。
【0084】
図10及び
図11に示すように、本実施形態のハンマドリル1Bでは、工具本体10とハンドル15とは、弾性部材191、193を介して相対移動可能に連結されている。
【0085】
より詳細には、工具本体10の上後端部(詳細には、駆動機構収容部11の後壁部115)と、ハンドル15の第1連結部17の前端部(詳細には、第1連結部17の前壁部175)との間には、2つの弾性部材191が配置されている。また、工具本体10の下後端部(詳細には、モータ収容部13の後壁部135)と、ハンドル15の第2連結部18の前端部(詳細には、第2連結部18の前壁部185)との間には、2つの弾性部材193が配置されている。
【0086】
本実施形態では、弾性部材191、193には、圧縮コイルバネが採用されている。但し、他の種類の機械バネ(例えば、捩りバネ、皿バネ)、ゴム、又は弾性を有する合成樹脂が採用されてもよい。弾性部材191、193は、夫々、工具本体10とハンドル15とを、前後方向において互いから離れる方向に付勢している。このような弾性連結構造により、工具本体10からハンドル15への振動伝達が抑制される。
【0087】
ハンマドリル1Bにおいても、第1実施形態と同様、ハンドル15には、ソレノイド73が収容されたスイッチ操作部材71と、スイッチ75と、ロック部材8と、突出検出装置9とが配置されている。よって、第1実施形態で説明したのと同様、スイッチ操作部材71の本体710内の空間を利用して、モードに応じて動作可能なコンパクトなロック構造が実現されている。
【0088】
従来、工具本体から後方に延び、モード切替機構の動作に応じて前後方向に移動する可動部材を利用して、設定されたモードに応じて、スイッチレバーのロック部材の移動を選択的に規制することが可能なハンマドリルが知られている。具体的には、このような可動部材は、先端工具が回転駆動されるモードでは、ロック部材に干渉し、ロック位置への移動を妨げる。しかしながら、本実施形態では、ロック部材8が配置されている第1連結部17が、弾性部材191を介して工具本体10に連結されている。このような防振構造を有するハンマドリル1Bでは、従来のような可動部材を採用すると、工具本体10とハンドル15との位置関係の変化により、可動部材がロック部材8に対して適切に配置されない可能性がある。よって、モード検出装置6(
図2参照)を用いて設定されたモードを電気的に検出し、モードに応じてソレノイド73を制御することで、スイッチ操作部材71のオン位置での保持を可能又は不能とすることは有用である。
【0089】
なお、上記実施形態は単なる例示であり、本開示に係る打撃工具は、例示されたハンマドリル1A、1Bに限定されるものではない。例えば、下記に例示される変更を加えることができる。また、これらの変更のうち少なくとも1つが、実施形態に例示されるハンマドリル1A、1B、及び各請求項に記載された特徴の少なくとも1つと組み合わされて採用されうる。
【0090】
本開示に係るハンマドリルは、打撃のみモード及び回転打撃モードに加え、あるいは代えて、他のモード(例えば、回転動作のみが行われる回転のみモード、先端工具が駆動されない駆動禁止モード等)を有してもよい。例えば、ハンマドリルは、打撃のみモードと、回転打撃モードと、回転のみモードとを有してもよい。なお、回転のみモードにおけるハンマドリルの動作は、上記実施形態で説明した回転打撃モードにおける動作と実質的に同じであればよい。また、モードを変更するモード切替機構やモード設定部材は、上記実施形態の例に限られず、いかなる公知の構成が用いられてもよい。
【0091】
本開示に係るモード検出装置は、少なくとも、現在のモードが特定のモードであるか否かを電気的に検出できればよく、いかなる構成を有してもよい。例えば、打撃のみモードと、回転打撃モード(又は他の1つのモード)のみを有するハンマドリル1A、1Bでは、モード検出装置6は、第1スイッチ61及び第2スイッチ62の何れか一方のみを備えてもよい。また、モード検出装置は、モード切替機構の何れかの構成部材の動きを検出してもよいし、モード設定部材の動きを検出してもよい。あるいは、モード検出装置は、入力機器(例えば、押しボタンスイッチ、スライドスイッチ、タッチスクリーン)を介して設定されたモードを検出するように構成されてもよい。
【0092】
工具本体10及び/又はハンドル15の構成は、適宜変更されうる。例えば、側面視L字状以外の形状を有する工具本体が採用されてもよい。両端部が工具本体10に連結されるのではなく、一端部のみが片持ち梁状に工具本体に連結されたハンドルが採用されてもよい。
【0093】
工具本体10内のモータ21及び駆動機構3の構成及び/又は配置は、工具本体10の変更に応じて、又は変更にかかわらず適宜変更されうる。例えば、モータ21に代えて、ブラシレスモータが採用されてもよい。モータは、充電式のバッテリから供給される電力により駆動されてもよい。モータは、回転軸RXが駆動軸DXに対して斜めに交差するように配置されてもよいし、駆動軸DXと平行となるように配置されてもよい。駆動機構3の運動変換機構31に代えて、回転体の回転に応じて揺動する部材(例えば、swash bearing、wobble plate/bearing)を用いてピストンを往復動させるように構成された周知の運動変換機構が採用されてもよい。
【0094】
本開示に係るスイッチ操作部材は、本体と、突起と、本体に収容されたソレノイドとを備える限りにおいて、その構成(例えば、形状、構成部材)及び/又は支持態様は適宜変更されうる。
【0095】
例えば、スイッチ操作部材は、スイッチのプランジャとは別個の付勢バネによって、オフ位置に付勢されていてもよい。スイッチ操作部材の突起は、ソレノイドのプランジャの先端部のみで構成されていてもよい。また、突起の退避位置は、ロック位置に配置されたロック部材に干渉しなければ、突起の突出端がスイッチ操作部材から若干突出していてもよい。
【0096】
また、上記実施形態では、ソレノイド73はプル型であるが、プッシュ型が採用されることが排除されるものではない。プッシュ型が採用される場合、ソレノイドがオフ状態のときには、スイッチ操作部材の突起は退避位置で保持され、ソレノイドオン状態のときには突起は突出位置で保持される。この変形例では、コントローラ20は、モード検出装置6の検出結果に基づき、現在のモードが、先端工具が回転駆動されるモード(回転打撃モード又は回転のみモード)であると判断した場合には、ソレノイドをオフ状態のままとする。また、コントローラ20は、現在のモードが打撃のみモードであると判断した場合には、ソレノイドをオン状態とする。
【0097】
本開示に係るロック部材は、スイッチ操作部材をオン位置で保持できる限りにおいて、その構成及び/又は配置は適宜変更されうる。例えば、ロック部材は、左右方向に延び、スイッチ操作部材の突起に当接可能な突起を有していてもよい。ロック部材は、例えば、上下方向に移動可能、又は、軸周りに回動可能に構成されてもよい。
【0098】
また、保持部材86に代えて、ロック部材8をロック解除位置に付勢して保持するように構成された保持部材(例えば、バネ)が採用されてもよい。この場合、ロック部材8は、オフ位置へ向けて付勢されるスイッチ操作部材71によってロック位置で保持されてもよい。あるいは、保持部材86は、ロック部材8に係合してロック部材8をロックする部材に変更されてもよいし、省略されてもよい。
【0099】
突出検出装置9は、適宜変更されてもよいし、省略されてもよい。例えば、ホールセンサ93や磁石95の取付け位置は、ロック部材8の位置にかかわらず、スイッチ操作部材71がオフ位置にあり、突起72が突出位置にあるときに磁石95を検出可能に変更されてもよい。この変形例では、コントローラ20は、現在のモードが回転打撃モード(又は回転のみモード)であり、突起72が突出位置にあると認識した場合、モータ21の駆動を開始しないように構成されればよい。また、ホールセンサ93に代えて、他の種類の磁界検出式のセンサが採用されてもよいし、光学式のセンサ、接触式のスイッチが採用されてもよい。
【0100】
上記実施形態では、コントローラ20の制御回路がソレノイド73及びモータ21の動作を制御するが、複数の制御回路が、ソレノイド73の動作とモータ21の動作とを別個に制御してもよい。
【0101】
本発明及び上記実施形態の趣旨に鑑み、以下の態様が構築される。以下の態様のうち少なくとも1つが、実施形態及びその変形例の特徴、あるいは各請求項に記載された特徴の少なくとも1つと組み合わされて採用されうる。
[態様1]
前記突起は、前記プランジャの先端部を含む。
[態様2]
前記ソレノイドは、前記プランジャを前記突出位置に向けて付勢する付勢部材を備える。
[態様3]
ハンマドリルは、前記モード検出装置の検出結果に基づいて前記ソレノイドの動作を制御するように構成された制御装置を備える。
[態様4]
前記制御装置は、少なくとも前記スイッチの状態に基づいて、前記モータの駆動を制御するように構成されている。
[態様5]
前記制御装置は、前記モード検出装置の検出結果と、前記突出検出装置の検出結果とに基づいて、前記モータの駆動を制御するように構成されている。
[態様6]
ハンマドリルは、前記スイッチ操作部材を前記オフ位置に向けて付勢する付勢部材を更に備える。
上記実施形態のスイッチ75のプランジャ753は、本態様の「付勢部材」の非限定的な一例である。
[態様7]
ハンマドリルは、前記ロック部材を、前記ロック位置及び前記ロック解除位置の夫々において保持可能な保持部材を備える。
[態様8]
前記ロック部材は、前記ハンドルの上端部内に配置されており、
前記ハンドルの上端部は、少なくとも1つの弾性部材を介して前記工具本体と連結されている。
【符号の説明】
【0102】
1A、1B:ハンマドリル、10:工具本体、11:駆動機構収容部、115:後壁部、13:モータ収容部、135:後壁部、15:ハンドル、16:把持部、165:前壁部、17:第1連結部、171:側壁部、172:開口、175:前壁部、18:第2連結部、185:前壁部、191:弾性部材、193:弾性部材、20:コントローラ、21:モータ、215:モータシャフト、29:電源コード、3:駆動機構、30:ツールホルダ、300:先端工具、31:運動変換機構、311:クランクシャフト、313:連接ロッド、315:ピストン、32:シリンダ、33:打撃要素、34:ストライカ、35:インパクトボルト、37:回転伝達機構、371:中間シャフト、372:小ベベルギヤ、374:クラッチ機構、375:ギヤスリーブ、376:大ベベルギヤ、378:ドライビングスリーブ、50:モード設定部材、51:モード切替機構、52:可動部材、521:左アーム、522:右アーム、53:運動変換機構、6:モード検出装置、61:第1スイッチ、62:第2スイッチ、71:スイッチ操作部材、710:本体、711:前壁部、713:側壁部、715:上壁部、716:開口、72:突起、73:ソレノイド、731:本体、733:プランジャ、734:キャップ、735:付勢バネ、75:スイッチ、751:本体、753:プランジャ、8:ロック部材、81:本体、811:左端部、812:右端部、83:突起、85:バネ受け部、86:保持部材、89:延出部、9:突出検出装置、91:基板、93:ホールセンサ、95:磁石、DX:駆動軸、RX:回転軸